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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-06
(45)【発行日】2022-09-14
(54)【発明の名称】乗物
(51)【国際特許分類】
   B62M 6/45 20100101AFI20220907BHJP
   B62J 45/413 20200101ALI20220907BHJP
【FI】
B62M6/45
B62J45/413
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021099062
(22)【出願日】2021-06-14
【審査請求日】2022-01-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521431099
【氏名又は名称】カワサキモータース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】牧村 和樹
(72)【発明者】
【氏名】石井 宏志
(72)【発明者】
【氏名】中島 健志
(72)【発明者】
【氏名】鳴海 将
【審査官】伊藤 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-082978(JP,A)
【文献】特開2020-082996(JP,A)
【文献】特開平09-207862(JP,A)
【文献】特開平09-286373(JP,A)
【文献】特開2020-069985(JP,A)
【文献】特開2001-239979(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0214675(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62M 6/45
B62J 45/413
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物の走行モードを、原動機が出力した動力で走行する駆動モード、及び、前記駆動モードでの出力よりも出力が抑制された抑制モードの間で切替可能な制御部を備え、
前記駆動モード及び前記抑制モードは、前記乗物の運転者が乗車している状態でのモードであり、
前記乗物の停止に対応する停止推定条件が満たされた場合に、前記駆動モードと前記抑制モードの間での切替が許容されることを特徴とする乗物。
【請求項2】
請求項1に記載の乗物であって、
前記駆動モードは、運転者の人力を必要とせずに乗車走行可能な電動車モードであることを特徴とする乗物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の乗物であって、
走行駆動力を路面に伝達する駆動輪として機能する後輪を備え、
前記後輪が回転しない状態で、前記駆動モードと前記抑制モードの間での切替が許容されることを特徴とする乗物。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載の乗物であって、
前記停止推定条件は、乗物が走行停止状態となっているときに利用者に取り扱われる装置に関する条件を含むことを特徴とする乗物。
【請求項5】
請求項に記載の乗物であって、
乗物が走行状態であるときに動く可動部材と、
前記可動部材の動きを検出するセンサと、
を備え、
前記停止推定条件は、前記装置に関する条件に加えて、前記センサの検出結果に関する条件を含むことを特徴とする乗物。
【請求項6】
請求項1からまでの何れか一項に記載の乗物であって、
走行又は運転のために備えられる可動部材と、
前記可動部材を動かないようにロック可能なロック装置と、
を備え、
前記ロック装置は、前記可動部材をロックするロック状態と、ロックを解除するロック解除状態と、の間で切替可能であり、
前記停止推定条件は、前記ロック装置が前記ロック状態であることを含み、前記ロック状態を経由しなければ、前記駆動モードと前記抑制モードとの間の切替ができないことを特徴とする乗物。
【請求項7】
請求項に記載の乗物であって、
前記ロック装置は、盗難防止装置であることを特徴とする乗物。
【請求項8】
請求項1からまでの何れか一項に記載の乗物であって、
前記制御部は、乗物が停止しているか否かを判断可能であることを特徴とする乗物。
【請求項9】
乗物の走行モードを、原動機が出力した動力で走行する駆動モード、及び、前記駆動モードでの出力よりも出力が抑制された抑制モードの間で切替可能であり、
前記駆動モード及び前記抑制モードは、前記乗物の運転者が乗車している状態でのモードであり、
前記乗物の停止に対応する停止推定条件が満たされた場合に、前記駆動モードと前記抑制モードの間での切替が許容されることを特徴とする乗物の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行モードを切替可能な乗物に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、モーターによって駆動可能であり、2つの方法で駆動可能な車両を開示する。第1の駆動方法では、第1の操作子を用いてモーターを駆動させる。第2の駆動方法では、第1の操作子とは異なる第2の操作子を用いてモーターを駆動させる。2つの駆動方法の切替は、キースイッチのオン/オフによって実現される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許6814501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1が述べる第1の駆動方法と、第2の駆動方法とで、乗物に適用される法規が異なる場合がある。従って、乗物が現在どの走行モードで使用されているかを運転者が正しく理解することが重要である。
【0005】
特許文献1において、駆動方法を切り替えることに関する制限は特に開示されていない。駆動方法の切替の自由度が高過ぎると、現在何れの駆動方法で乗物を使用しているかに関し、運転者の意識が不明確になるおそれがある。
【0006】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、走行モードの切替時に、走行モードに関する運転者への意識付けを促すことにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0008】
本発明の第1の観点によれば、以下の構成の乗物が提供される。即ち、乗物は、乗物の走行モードを、原動機が出力した動力で走行する駆動モード、及び、前記駆動モードでの出力よりも出力が抑制された抑制モードの間で切替可能な制御部を備える。前記駆動モード及び前記抑制モードは、前記乗物の運転者が乗車している状態でのモードである。前記乗物の停止に対応する停止推定条件が満たされた場合に、前記駆動モードと前記抑制モードの間での切替が許容される。
【0009】
本発明の第2の観点によれば、以下の乗物の制御方法が提供される。即ち、乗物の走行モードを、原動機が出力した動力で走行する駆動モード、及び、前記駆動モードでの出力よりも出力が抑制された抑制モードの間で切替可能である。前記駆動モード及び前記抑制モードは、前記乗物の運転者が乗車している状態でのモードである。前記乗物の停止に対応する停止推定条件が満たされた場合に、前記駆動モードと前記抑制モードの間での切替が許容される。
【0010】
これにより、走行モードの切替の際に乗物の停止を強制することで、走行モードの変更に関する運転者への意識付けを効果的に行うことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、走行モードの切替時に、走行モードに関する運転者への意識付けを促すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】3輪型車両を示す斜視図。
図2】第1実施形態の3輪型車両の電気的構成を示すブロック図。
図3】第2実施形態の3輪型車両の電気的構成を示すブロック図。
図4】第3実施形態の3輪型車両の電気的構成を示すブロック図。
図5】電動車モードにおいてペダルの構成を変更する例を示す斜視図。
図6】電動車モードにおいてペダルの構成を変更する別の例を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。初めに、図1及び図2を参照して、本発明の一実施形態に係る3輪型車両1について説明する。図1は、3輪型車両1を示す斜視図である。図2は、3輪型車両1の電気的構成を示すブロック図である。
【0014】
以下の説明では、3輪型車両1に乗車した運転者から見た方向で、3輪型車両1の左右方向を定義する。従って、3輪型車両1が図1に示すように直立している状態では、前後方向は車長方向に一致し、左右方向は車幅方向に一致する。また、上下方向(鉛直方向)は高さ方向に一致する。
【0015】
本実施形態に係る乗物は、3輪型車両(鞍乗型車両)1である。3輪型車両1は、前側(車長方向における一方側)に2つの前輪2,3を備え、後側(車長方向における他方側)に1つの後輪4を備える。
【0016】
3輪型車両1は、車体10を備える。車体10は、左前輪2、右前輪3及び後輪4を支持している。
【0017】
車体10は、3輪型車両1の骨格となるフレーム11を備える。フレーム11は、ベース部分11aと、左右輪連結部分11bと、シート支持部分11cと、ハンドル支持部分11dと、を有する。
【0018】
ベース部分11aは、前輪2,3と後輪4との間を車長方向に延びて、前後輪を支持する。左右輪連結部分11bは、ベース部分11aに接続されて、左前輪2と右前輪3とを連結して車幅方向に延びる。シート支持部分11cは、ベース部分11aから上方に延びて、シート15を支持する。ハンドル支持部分11dは、ベース部分11aから上方に延びて、ハンドル12を支持する。
【0019】
本実施形態では、3輪型車両1は、リーン型車両の一種である。リーン型車両とは、車体10の路面に対する姿勢を変更可能であり、操舵による旋回走行に伴って車体10が路面に対して傾斜状態となる車両を意味する。図1では、3輪型車両1は、操舵のためのハンドル12が中立位置に操作され、かつ、車体10が路面に対して直立となっている状態(言い換えれば、通常の直進走行の状態)となっている。以下では、特に説明がない限り、この状態を前提として説明する。
【0020】
左前輪2と右前輪3とは、車幅方向に間隔をあけて隣り合うように並べられている。本実施形態では、それぞれの前輪2,3は、従動輪として機能する。左前輪2及び右前輪3は、車体10の路面に対する姿勢が変更可能となるように、フレーム11の前部に支持されている。各前輪2,3は、操舵輪として機能し、ハンドル12の回動操作に応じて向きが変化する。
【0021】
フレーム11の左右輪連結部分11bは、公知の平行リンク構造を有している。平行リンク構造は、各前輪2,3を、フレーム11のベース部分11aにそれぞれ連結する。この平行リンク構造によって、正面視において、ベース部分11aの姿勢変化に応じて、各前輪2,3の姿勢が連動して変化する。
【0022】
後輪4は、車幅方向で車体10の中央位置に配置されている。後輪4は、フレーム11の後部に回転可能に支持されている。本実施形態では、後輪4は走行駆動力を路面に伝達する駆動輪として機能する。
【0023】
3輪型車両1は、シート15と、左右のペダル(操作子)16と、原動機として機能する電動モータ21と、バッテリー22と、コントローラ(制御部)23と、を備える。
【0024】
シート15は、フレーム11の車長方向中間部分のうち上側に設けられている。運転者は、シート15に座ることができる。運転者は、シート15に跨るように座り、左右のペダル16に足を載せることができる。
【0025】
左右のペダル16は、シート15の下方に設けられている。シート15に跨った運転者が足でペダル16を踏む力を後輪4に伝達して、後輪4を人力で回転駆動することができる。具体的には、3輪型車両1は、ペダル16に接続されるクランク軸の回転を後輪に伝達する動力伝達機構を有する。従って、3輪型車両1は、運転者の人力で走行駆動する、いわゆる自転車としての機構を備える。
【0026】
電動モータ21は、本実施形態では、後輪4の車軸部分に設けられている。電動モータ21は、図2に示すように、コントローラ23に電気的に接続されている。電動モータ21は、コントローラ23により制御され、後輪4を回転駆動することができる。
【0027】
電動モータ21は、運転者の人力が与えられていない状態で、駆動輪に動力を伝達させることができる。また、電動モータ21は、運転者の人力が与えられた状態に加えて、駆動輪に動力を伝達させることもできる。コントローラ23は、電動モータ21に適宜の指令を与えることによって、電動モータ21の出力を調整する。本実施形態では、コントローラ23は、運転者の与える人力に応じて、電動モータ21が駆動力を出力して支援するように制御する。即ち、本実施形態では、3輪型車両1は、運転者の人力を必要とせず走行可能な電動車として機能するとともに、運転者による走行駆動を電動支援する電動アシスト自転車としても機能する。
【0028】
本実施形態の3輪型車両1は、運転者の人力が不要な電動車モードと、運転者の人力が必要な自転車モードとの2つの走行形態を切り替えることができる。2つの走行形態が切り替わると、コントローラ23が電動モータ21に対して行う制御が変化する。
【0029】
電動車モードでは、原動機である電動モータ21が出力した動力で走行する。自転車モードでは、電動モータ21の出力は、電動車モードと比較して抑制される。電動車モードは、駆動モードの一例である。自転車モードは、抑制モードの一例である。
【0030】
自転車モードにおいて、電動車モードと比較して、利用域の全域でなく一部だけにおいて出力が抑制されても良い。自転車モードにおいて、例えば、電動モータ21によって出力される最大出力が抑制されてもよいし、電動モータ21によって走行可能な最大車速が抑制されても良い。自転車モードにおいて、所定車速を超えると、人力に対する電動モータ21の支援比率が下がっても良い。自転車モードにおいて、電動モータ21が動作可能な車速域が、電動車モードと比較して低く設定されても良い。自転車モードにおいて、電動モータ21が動力を全く発生させず、ゼロとなるように抑制されても良い。
【0031】
電動車モードでは、3輪型車両1が電動車として走行することが可能な出力条件を満足するように出力が設定される。自転車モードでは、3輪型車両1が自転車、本実施形態では電動アシスト自転車として走行することが可能な出力条件を満足するように出力が設定される。
【0032】
バッテリー22は、フレーム11の前後途中部のうち下側に設けられている。バッテリー22は、電動モータ21、コントローラ23及び各種の補器類等に電力を供給することができる。
【0033】
コントローラ23は、車体10の適宜の位置に設けられている。コントローラ23は、公知のコンピュータによって構成されており、電動モータ21を制御することができる。
【0034】
3輪型車両1は、アクセルレバー(操作子)13を備える。アクセルレバー13は、ハンドル12の近傍に配置される。3輪型車両1が電動車モードで走行する場合、運転者がアクセルレバー13を操作することで、電動モータ21が制御される。一方、3輪型車両1が自転車モードで走行する場合、運転者がペダル16を踏む踏力に基づいて電動モータ21が制御される。
【0035】
3輪型車両1は、ブレーキレバー14を備える。ブレーキレバー14は、ハンドル12の近傍に左右1対で配置される。運転者は、一方のブレーキレバー14を操作することで、前輪2,3を制動することができ、他方のブレーキレバー14を操作することで、後輪4を制動することができる。
【0036】
3輪型車両1は、リーンロックレバー17を備える。リーンロックレバー17は、ハンドル12の近傍に配置される。運転者は、リーンロックレバー17を操作することで、車体のリーン姿勢を固定することができる。リーンロックレバー17には、図示しない操作ロック機構が設けられている。リーンロックレバー17を操作した状態でロックすることで、運転者が3輪型車両1から離れても、車体のリーン姿勢が固定された状態を維持することができる。
【0037】
3輪型車両1は、ナンバープレート装置31を備える。ナンバープレート装置31には、ナンバープレート32が取り付けられている。ナンバープレート32は、電動車両としての走行を許可されるために、車両に装備されて、車両個別の識別番号(識別情報)が付されたプレートである。ナンバープレート32は、識別番号が容易に視認可能となるように配置されている。
【0038】
ナンバープレート装置31には、ナンバープレート表示切替装置35が設けられている。ナンバープレート表示切替装置35は、ナンバープレート32の表示を、自転車モードにおいて実質的に無効化するように動作する。
【0039】
ナンバープレート32の表示を実質的に無効にする方法は任意である。例えば、ナンバープレート表示切替装置35は、板状のカバー部材36を備えるように構成することができる。カバー部材36は、電動モータ等の適宜の駆動部により、ナンバープレート32を露出させる非被覆位置と、ナンバープレート32を覆う被覆位置と、の間で移動することができる。カバー部材36がナンバープレート32を被覆することにより、ナンバープレート32の識別番号が有効に表示されなくなる。
【0040】
フレーム11が後輪4を支持する部分の近傍には、盗難防止装置としてのロック装置70が取り付けられている。
【0041】
ロック装置70は、公知のリングロック装置として構成されている。ロック装置70は、図2に示すように、ハウジング71と、ロックバー72と、ロック用つまみ73と、シリンダ部(操作部材)74と、を備える。
【0042】
ハウジング71は、フレーム11の適宜の位置に固定される。ハウジング71は、C字状に形成される。ハウジング71には、開放部が形成されている。C字状のハウジング71は、後輪4の周縁を取り囲むように配置される。
【0043】
ロックバー72は、細長い円弧状に形成されている。ロックバー72は、ハウジング71に対し、円弧状の経路に沿ってスライド可能に支持されている。ロックバー72がスライド移動することで、ロックバー72がハウジング71の開放部を閉鎖する進出位置と、開放する退避位置と、の間で切り替えることができる。
【0044】
進出位置では、ロックバー72が後輪4のスポークに干渉するため、後輪4は回転することができない。ロックバー72の進出位置はロック装置70のロック状態に対応し、ロックバー72の退避位置はロック装置70のロック解除状態に対応する。
【0045】
ハウジング71には図略のバネが配置されている。このバネは、ロックバー72を退避位置に向けて付勢する。
【0046】
ロック用つまみ73は、ロックバー72に連結され、ロックバー72と一体的に移動する。前述のバネの力に抗して運転者がロック用つまみ73を押すことで、ロックバー72を退避位置から進出位置に切り換えることができる。
【0047】
シリンダ部74は、円柱状に形成されている。シリンダ部74にはキー穴が形成され、このキー穴にキーを差し込むことができる。シリンダ部74は、ハウジング71に回転可能に支持されている。シリンダ部74は、回転させることにより、3つの操作位置の間で切り替えることができる。
【0048】
3つの操作位置とは、「電動車モード」位置、「ロック」位置、及び「自転車モード」位置である。図2において、EVは電動車モード、Lはロック、Aは自転車モードをそれぞれ意味する。シリンダ部74は公知のシリンダ錠として機能する。従って、キー穴に正しいキーが差し込まれないと、シリンダ部74を「ロック」位置から「電動車モード」位置及び「自転車モード」位置に回転させることができない。
【0049】
「電動車モード」位置は、走行モードを電動車モードとする旨をコントローラ23に指示する操作位置である。この操作位置では、ロックバー72は退避位置となっている。
【0050】
「ロック」位置は、ロックバー72を進出位置として後輪4の回転をロックするときの操作位置である。
【0051】
「自転車モード」位置は、走行モードを自転車モードとする旨をコントローラ23に指示する操作位置である。この操作位置では、ロックバー72は退避位置となっている。
【0052】
シリンダ部74には、キー保持機構が設けられている。このキー保持機構は、シリンダ部74が「自転車モード」位置又は「電動車モード」位置にあるときは、キー穴に差し込まれたキーが抜けないように機械的に保持する。シリンダ部74が「ロック」位置にあるときは、キー穴に差し込まれたキーを抜くことができる。
【0053】
ロック装置70には、連動機構が設けられている。この連動機構は、シリンダ部74が「自転車モード」位置又は「電動車モード」位置にあるときに、ロック用つまみ73を押してロックバー72が進出位置へ操作された場合は、シリンダ部74が自動的に「ロック」位置へ移動するように動作する。また、連動機構は、ロックバー72を進出位置で自動的に固定する。
【0054】
ロックバー72が進出位置へ移動しないと、シリンダ部74は、「自転車モード」位置又は「電動車モード」位置から「ロック」位置へ移動することができない。
【0055】
連動機構は、シリンダ部74のキー穴にキーが差し込まれた状態で、「ロック」位置から「自転車モード」位置又は「電動車モード」位置へ操作された場合は、ロックバー72の進出位置での固定を自動的に解除するように動作する。この結果、ロックバー72は、バネの力によって退避位置へ自動的に移動する。
【0056】
キー保持機構及び連動機構は、カム、リンク等を用いた適宜の機構によって実現することができる。
【0057】
図2に示すように、ロック装置70は、シリンダ部74の操作位置を検出する操作検出センサ75を備える。操作検出センサ75は、コントローラ23及びナンバープレート表示切替装置35に電気的に接続される。操作検出センサ75は、シリンダ部74の3つの操作位置に応じた信号をコントローラ23に出力する。
【0058】
コントローラ23は、操作検出センサ75から入力された信号が「電動車モード」位置又は「自転車モード」位置を示す場合、対応する走行モードとする。
【0059】
ナンバープレート表示切替装置35は、操作検出センサ75から入力された信号が「電動車モード」位置を示す場合、カバー部材36を非被覆位置とし、信号が「自転車モード」位置を示す場合、カバー部材36を被覆位置とする。
【0060】
シリンダ部74の操作位置に着目すると、「電動車モード」位置と「自転車モード」位置の間に、「ロック」位置が配置されている。従って、電動車モードと自転車モードの間で走行モードを切り替える際は、必ず、ロック装置70のロックバー72をいったん進出位置にしなければならないことになる。本実施形態において、この制御方法は、ロック装置70とコントローラ23の連携により実現される。
【0061】
通常、3輪型車両1が停止していなければロックバー72を進出位置にできない。従って、ロックバー72が進出位置にある状況は、3輪型車両1が停止していることを強く推定させる。
【0062】
本実施形態では、ロックバー72を進出位置にした状態を経由しなければ、電動車モードと自転車モードの間で走行モードを切り替えることができない。この制御方法によって、電動車モードと自転車モードの間で走行モードが切り替えられる際、3輪型車両1が停止状態となることが確保される。
【0063】
走行モードを切り替えたい場合、運転者は、3輪型車両1を停止した状態でシリンダ部74を操作する。このとき、運転者は、3輪型車両1の停止を、走行モードの変更のための一種の区切りとして認識し易くなる。従って、現在の走行モードに関する正しい理解を運転者に促すことができる。
【0064】
以上に説明したように、本実施形態の3輪型車両1は、走行モードを、電動車モード及び自転車モードの間で切替可能なコントローラ23を備える。電動車モードにおいて、3輪型車両1は、電動モータ21が出力した動力で走行する。自転車モードにおいて、電動モータ21の出力は、電動車モードでの出力よりも抑制される。3輪型車両1の停止に対応する停止推定条件(具体的にいえば、ロック装置70のロックバー72が進出位置にあること)が満たされた場合に、駆動モードと抑制モードの間での切替が許容される。
【0065】
これにより、走行モードの切替の際に3輪型車両1の停止を強制することで、走行モードの変更に関する運転者への意識付けを効果的に行うことができる。
【0066】
本実施形態の3輪型車両1において、停止推定条件は、3輪型車両1が走行停止状態となっているときに利用者に取り扱われるロック装置70に関する条件を含む。
【0067】
これにより、ロック装置70を用いて、3輪型車両1の停止を確保することができる。
【0068】
本実施形態の3輪型車両1は、後輪4と、ロック装置70と、を備える。後輪4は、走行のために備えられる。ロック装置70は、後輪4を動かないようにロック可能である。ロック装置70は、後輪4をロックするロック状態と、ロックを解除するロック解除状態と、の間で切替可能である。停止推定条件は、ロック装置70がロック状態であることを含む。
【0069】
これにより、走行のために回転が必要な後輪4をロックすることで、確実に、3輪型車両1の停止を確保することができる。
【0070】
本実施形態の3輪型車両1において、ロック装置70は、盗難防止のために備えられる。
【0071】
これにより、ロック装置70によって、走行モード切替時に3輪型車両1の走行の停止を確保する機能と、盗難防止機能と、の両方を実現することができる。従って、構成の簡素化を実現できる。
【0072】
次に、第2実施形態を説明する。図3は、第2実施形態の3輪型車両1pの電気的構成を示すブロック図である。なお、本実施形態以降の説明においては、前述の実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0073】
第2実施形態では、ロック装置70の操作に代えて、ブレーキレバー14の操作が、電動車モードと自転車モードの間で走行モードを切り替えるための条件となっている。
【0074】
図3には、後輪4を制動するためのブレーキレバー14が描かれている。ブレーキレバー14は、後輪4を制動するためのブレーキ装置18と、第1ブレーキワイヤ81を介して連結されている。
【0075】
ブレーキ装置18は、3輪型車両1の走行中に後輪4を制動するものであるが、停止中においても後輪4の制動のために用いることができる。従って、ブレーキ装置18は、3輪型車両1が走行停止状態となっているときに利用者に取り扱われる装置の一種である。
【0076】
ブレーキレバー14は、ナンバープレート表示切替装置35と、第2ブレーキワイヤ82を介して連結されている。
【0077】
ナンバープレート表示切替装置35は、表示コントローラ37と、センサ38と、切替操作部材(操作部材)39と、を備える。
【0078】
表示コントローラ37は、公知のコンピュータによって構成されている。表示コントローラ37は、カバー部材36を駆動するために備えられる駆動部(例えば、電動モータ)を制御することができる。表示コントローラ37は、コントローラ23に電気的に接続されている。
【0079】
センサ38は、接触式又は非接触式のセンサとして構成されている。センサ38は、第2ブレーキワイヤ82の位置を検出することができる。
【0080】
切替操作部材39は、例えばスイッチ等により構成されている。切替操作部材39は、走行モードを電動車モードと自転車モードとの間で切り替えるために、運転者によって操作される。切替操作部材39の位置は任意であるが、例えば、図1に示すナンバープレート32の近傍に配置することができる。
【0081】
表示コントローラ37は、第2ブレーキワイヤ82の位置をセンサ38によって監視する。表示コントローラ37は、ブレーキレバー14が制動位置に操作された場合にのみ、切替操作部材39の操作を受け付ける。
【0082】
ナンバープレート表示切替装置35は、切替操作部材39が電動車モードに操作された場合、カバー部材36を退避位置とし、切替操作部材39が自転車モードに操作された場合、カバー部材36をカバー位置とする。
【0083】
ナンバープレート表示切替装置35の表示コントローラ37は、切替操作部材39の操作を受け付けた場合、切替操作部材39によって指示された走行モードを示す信号をコントローラ23に出力する。コントローラ23は、表示コントローラ37から入力された信号に応じて、走行モードを電動車モード及び自転車モードの間で切り替える。
【0084】
ブレーキレバー14が操作されている状況は、3輪型車両1pが停止していることを推定させる。本実施形態では、運転者がブレーキレバー14を操作した状態でないと、走行モードを切り替えることができない。従って、電動車モードと自転車モードの間で走行モードが切り替えられる際、3輪型車両1pが停止状態となることが確保される。
【0085】
変形例として、3輪型車両1pが、後輪4の回転を検出する回転センサ(センサ)90を備えるように構成することができる。回転センサ90は、例えば光センサとして構成することができる。回転センサ90が後輪4の回転を検出していない状況は、3輪型車両1pが停止していることを強く推定させる。この構成では、ブレーキレバー14が操作されていることに加えて、後輪4が回転していないことを、走行モードを切り替える条件とすることができる。これにより、3輪型車両1pの停止状態を確実に検出することができる。
【0086】
以上に説明したように、本実施形態の3輪型車両1pにおいて、停止推定条件は、3輪型車両1pが走行停止状態となっているときに利用者に取り扱われるブレーキ装置18に関する条件を含む。
【0087】
これにより、ブレーキ装置18を用いて、3輪型車両1pの停止を確保することができる。
【0088】
本実施形態の変形例において、3輪型車両1pは、後輪4と、回転センサ90と、を備える。後輪4は、3輪型車両1pが走行状態であるときに回転する。回転センサ90は、後輪4の回転を検出する。停止推定条件は、ブレーキ装置18に関する条件に加えて、回転センサ90の検出結果に関する条件を含む。
【0089】
これにより、回転センサ90を用いて、3輪型車両1pの停止を正確に判定することができる。
【0090】
回転センサ90を設けることに代えて、機械的な構成(ブレーキワイヤ等)によってロック装置70のロックを解除してもよい。
【0091】
次に、第3実施形態を説明する。図4は、第3実施形態の3輪型車両1qの電気的構成を示すブロック図である。
【0092】
第3実施形態の3輪型車両1qにおいては、シート15の下方に収容容器95が備えられている。収容容器95は中空状に形成されている。収容容器95の上方は開放されている。
【0093】
シート15は、収容容器95に対し、ヒンジ機構96によって連結されている。シート15は、回転することで、収容容器95の開放部分を開閉することができる。収容容器95は中空状に構成され、荷物を収容することができる。シート15を開いた状態とすることで、荷物を収容容器95に出し入れすることができる。
【0094】
本実施形態において、運転者が走行モードの切替を指示するための切替操作部材39が、収容容器95の内部に配置されている。従って、本実施形態では、シート15を開いた状態としない限り、運転者は切替操作部材39に物理的にアクセスできないため、電動車モードと自転車モードの間で走行モードを切り替えることができない。
【0095】
通常、運転者がシート15から降りないと、シート15を開くことはできない。従って、シート15が開いている状況は、3輪型車両1qが停止していることを強く推定させる。
【0096】
本実施形態においても、変形例として、3輪型車両1qが、後輪4の回転を検出する回転センサ(センサ)90を備えるように構成することができる。回転センサ90は、コントローラ23に電気的に接続される。この構成では、シート15が開いていることに加えて、後輪4の回転を回転センサ90が検出していないことが、走行モードを切り替える条件になる。これによって、より確実に、3輪型車両1qの停止状態を確保することができる。
【0097】
以上に説明したように、本実施形態の3輪型車両1qは、シート15と、切替操作部材39と、を備える。シート15には、運転者が座る。切替操作部材39は、電動車モードと自転車モードの間での切替を指示するために運転者によって操作される。切替操作部材39は、シート15に座った状態の運転者が操作不能な場所に配置されている。
【0098】
これにより、運転者が走行モードを切り替える際に、シート15から降りることを強制することができる。従って、確実に3輪型車両1qを停止させることができる。
【0099】
本実施形態の3輪型車両1qにおいて、コントローラ23は、3輪型車両1qが停止しているか否かを判断可能である。
【0100】
これにより、コントローラ23が、走行モードの切替の許容/阻止を適切に判断することができる。
【0101】
本実施形態の3輪型車両1qは、後輪4と、回転センサ90と、を備える。後輪4は、3輪型車両1qが走行状態であるときに回転する。回転センサ90は、後輪4の動きを検出する。コントローラ23は、回転センサ90の検出結果に基づいて、3輪型車両1qが停止しているか否かを判断する。
【0102】
これにより、3輪型車両1qの停止状態をコントローラ23が確実に検出することができる。
【0103】
次に、ペダル16周辺の構成について説明する。
【0104】
ペダル16は、自転車モードにおいて運転者の踏力を入力する機能を有するが、電動車モードにおいては当該機能が不要になる。そこで、電動車モードではペダル16の位置又は向きを自転車モードと異ならせても良い。
【0105】
図5には、ペダル16が左右で同一の位相となるように、左右一側のクランクの取付位相を180°を変更した例が示されている。この構成は、例えば、クランクをクランク軸に着脱可能とし、かつ、取付時の位相を180°切替可能とすることで実現できる。自転車モードから電動車モードに切り替えるときは、運転者は、図1の状態から図5の状態に変更する作業を行う。電動車モードから自転車に切り替えるときは、運転者は、図5の状態から図1の状態に変更する作業を行う。
【0106】
図6には、ペダル16の回転軸の向きがクランクの長手方向と一致するように向きを変更した例が示されている。この構成は、例えば、クランクとペダル16の連結部分にヒンジ機構を設けることによって実現できる。
【0107】
電動車モードにおいてペダル16がクランクから取り外されても良いし、ペダル16とクランクの両方が車両から取り外されても良い。
【0108】
これらの構成により、3輪型車両を自転車として使用していないこと、言い換えれば電動車モードで使用していることを、周囲に分かり易く示すことができる。
【0109】
以上に本発明の好適な実施の形態及び変形例を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。変更は単独で行われても良いし、複数の変更が任意に組み合わせて行われても良い。
【0110】
走行又は運転のために備えられる可動部材としては、後輪4に限らず、例えば、前輪2,3、ハンドル12、ハンドル軸、ペダル16、クランク等を挙げることができる。これらの部材の動きを適宜のロック装置でロックすることで、3輪型車両1の停止を実現することができる。
【0111】
3輪型車両1が走行停止状態となっているときに利用者に取り扱われる装置としては、上記のロック装置70、ブレーキ装置18のほか、例えば、リーンロックレバー17、スタンド、バッテリー、充電器等を挙げることができる。走行停止状態では、リーンロックレバー17がロック状態に操作されたり、スタンドが使用されたり、バッテリーが取り外されたり、充電器が外部電源に接続されたりする。上記の現象のうち少なくとも1つを適宜のセンサで検出して、走行モードの切替を許容する条件に含めることができる。
【0112】
3輪型車両においてコントローラ23又は表示コントローラ37が車両の停止状態を判断するために利用されるセンサとしては、回転センサ90に代えて、例えば、(1)後輪4の回転速度を検出する車輪速センサ、(2)電動モータ21の電流を検出する電流センサ、(3)アクセルレバー13の操作位置を検出するアクセルセンサ、(4)ペダル16の回転を検出するペダル回転センサ、(5)ブレーキ装置18の動作を検出するブレーキセンサ、(6)車体のリーン姿勢を検出する姿勢センサ、(7)車体の測位を行うGNSS測位装置、(8)前輪2,3又は後輪4の空気圧を検知するセンサ、(9)図示しないサスペンション装置が備えるサスペンションセンサ等を用いることができる。
【0113】
本発明は、3輪型車両1に限られず、乗物、例えば、電動モータを備える足漕ぎボートに適用することもできる。
【符号の説明】
【0114】
1 3輪型車両(乗物)
14 ブレーキレバー
15 シート
21 電動モータ(原動機)
23 コントローラ(制御部)
38 センサ
39 切替操作部材(操作部材)
70 ロック装置
70 ロック装置(盗難防止装置)
74 シリンダ部(操作部材)
90 回転センサ(センサ)
【要約】
【課題】走行モードの切替時に、走行モードに関する運転者への意識付けを促す。
【解決手段】乗物は、乗物の走行モードを、原動機が出力した動力で走行する駆動モード、及び、前記駆動モードでの出力よりも出力が抑制された抑制モードの間で切替可能な制御部を備える。前記乗物の停止に対応する停止推定条件が満たされた場合に、前記駆動モードと前記抑制モードの間での切替が許容される。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6