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特許7137667均一なRV及び低いゲル含量を有する高分子量ポリアミド及びコポリアミド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-06
(45)【発行日】2022-09-14
(54)【発明の名称】均一なRV及び低いゲル含量を有する高分子量ポリアミド及びコポリアミド
(51)【国際特許分類】
   C08G 69/26 20060101AFI20220907BHJP
   C08G 69/46 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
C08G69/26
C08G69/46
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2021102178
(22)【出願日】2021-06-21
(62)【分割の表示】P 2018528347の分割
【原出願日】2016-11-29
(65)【公開番号】P2021155755
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2021-06-29
(31)【優先権主張番号】62/261,392
(32)【優先日】2015-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509354042
【氏名又は名称】アセンド・パフォーマンス・マテリアルズ・オペレーションズ・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ASCEND PERFORMANCE MATERIALS OPERATIONS LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100168066
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 雄太
(72)【発明者】
【氏名】ポーク,ジェームズ・イー
(72)【発明者】
【氏名】シュヴィアー,クリス・イー
(72)【発明者】
【氏名】セン,アシシュ
(72)【発明者】
【氏名】トラスク,クレイグ・エイ
(72)【発明者】
【氏名】ウズンプナール,ジハン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,チー-ション
(72)【発明者】
【氏名】ザブチク,ジェイ・マーティ
【審査官】中川 裕文
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-176324(JP,A)
【文献】米国特許第03280079(US,A)
【文献】特開昭61-095026(JP,A)
【文献】特開2015-081338(JP,A)
【文献】特開平01-153725(JP,A)
【文献】国際公開第2015/156363(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 69/00- 69/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
濃度90%のギ酸溶液中で測定して60より高い精密相対粘度を有することを特徴とし、精密相対粘度は1.25以下のRV標準偏差を有し、25℃において90%のギ酸中で10ミクロンより大きい不溶分のppmによって求めて50ppm未満のゲル含量パラメーターを有することを特徴とする、高分子量ナイロン6,6ポリアミドポリマー。
【請求項2】
濃度90%のギ酸溶液中で測定して70より高い精密相対粘度を有することを特徴とする、請求項1に記載のナイロン6,6ポリアミドポリマー。
【請求項3】
濃度90%のギ酸溶液中で測定して80より高い精密相対粘度を有することを特徴とする、請求項1に記載のナイロン6,6ポリアミドポリマー。
【請求項4】
濃度90%のギ酸溶液中で測定して80より高く97.5以下の精密相対粘度を有することを特徴とする、請求項1に記載のナイロン6,6ポリアミドポリマー。
【請求項5】
相対粘度が、濃度90%のギ酸溶液中で測定して60より高く200以下の範囲である、請求項1に記載のナイロン6,6ポリアミドポリマー。
【請求項6】
相対粘度が、濃度90%のギ酸溶液中で測定して75~100の範囲である、請求項1に記載のナイロン6,6ポリアミドポリマー。
【請求項7】
精密相対粘度が1.0未満のRV標準偏差を有する、請求項1に記載のナイロン6,6ポリアミドポリマー。
【請求項8】
レットの光学走査によって測定して2,000ppm未満の平均光学欠陥レベルを有することを特徴とする、請求項1に記載のナイロン6,6ポリアミドポリマー。
【請求項9】
相対粘度が、濃度90%のギ酸溶液中で測定して75~100の範囲である、請求項に記載のナイロン6,6ポリアミドポリマー。
【請求項10】
更に、ナイロン6,6ポリマーが25℃において90%のギ酸中で10ミクロンより大きい不溶分のppmによって求めて40ppm未満のゲル含量パラメーターを示す、請求項に記載のナイロン6,6ポリアミドポリマー。
【請求項11】
(a)第1の相対粘度を有する第1のナイロン6,6ポリアミドポリマーを含む第1のナイロン6,6ポリアミドポリマー溶融体を与え;
(b)第1のナイロン6,6ポリアミドポリマー溶融体を二軸押出機に供給し;
(c)第1のナイロン6,6ポリアミドポリマー溶融体を、添加水蒸気の不存在下二軸押出機内において真空下で溶融加工してそれから水蒸気及び他の揮発性物質を除去し、それによってポリマー溶融体の分子量を増加させて、第2の相対粘度を有する第2のナイロン6,6ポリアミドポリマーを含む第2のナイロン6,6ポリアミドポリマー溶融体を与え;
(d)場合によっては、第2のナイロン6,6ポリマー溶融体を滞留時間保持容器に供給して、滞留時間保持容器内で第2のナイロン6,6ポリマー溶融体を溶融加工して、第2のナイロン6,6ポリアミドポリマーの第2の相対粘度よりも高い第3の相対粘度を有する第3のナイロン6,6ポリアミドポリマーを含む第3のナイロン6,6ポリアミドポリマー溶融体を与え;そして
(e)請求項1に記載の生成物ナイロン6,6ポリアミドポリマーを回収する;
ことを含む、請求項1に記載の高分子量ナイロン6,6ポリアミドポリマーの製造方法。
【請求項12】
ナイロン6,6ポリアミドポリマー溶融体を二軸押出機内において280℃~350℃の範囲の温度で溶融加工する、請求項11に記載の高分子量ナイロン6,6ポリアミドポリマーの製造方法。
【請求項13】
ナイロン6,6ポリアミドポリマー溶融体を二軸押出機内において600mmHgの真空度乃至725mmHgの真空度の範囲の真空下で溶融加工する、請求項11に記載の高分子量ナイロン6,6ポリアミドポリマーの製造方法。
【請求項14】
ナイロン6,6ポリアミドポリマー溶融体を二軸押出機内において30秒間未満の押出機内における滞留時間の間溶融加工する、請求項11に記載の高分子量ナイロン6,6ポリアミドポリマーの製造方法。
【請求項15】
ナイロン6,6ポリアミドポリマー溶融体を二軸押出機内において20秒間未満の押出機内における滞留時間の間溶融加工する、請求項11に記載の高分子量ナイロン6,6ポリアミドポリマーの製造方法。
【請求項16】
ナイロン6,6ポリアミドポリマー溶融体を二軸押出機内において10秒間以上30秒間未満の押出機内における滞留時間の間溶融加工する、請求項11に記載の高分子量ナイロン6,6ポリアミドポリマーの製造方法。
【請求項17】
第2のナイロン6,6ポリマー溶融体を滞留時間保持容器に供給し、第2のナイロン6,6ポリマー溶融体を滞留時間保持容器内で溶融加工して、第2のナイロン6,6ポリアミドポリマーの第2の相対粘度よりも高い第3の相対粘度を有する第3のナイロン6,6ポリアミドポリマーを含む第3のナイロン6,6ポリアミドポリマー溶融体を与えることを含む、請求項11に記載の高分子量ナイロン6,6ポリアミドポリマーの製造方法。
【請求項18】
ナイロン6,6ポリアミドポリマー溶融体を滞留時間保持容器内において280℃~350℃の範囲の温度で溶融加工する、請求項17に記載の高分子量ナイロン6,6ポリアミドポリマーの製造方法。
【請求項19】
ナイロン6,6ポリアミドポリマー溶融体を滞留時間保持容器内において少なくとも1分間の滞留時間保持容器内での滞留時間の間溶融加工する、請求項17に記載の高分子量ナイロン6,6ポリアミドポリマーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、2015年12月1日出願の「低いゲル含量及び低い不純物を有する高分子量ポリアミド及びコポリアミド」と題された米国仮出願62/261,392に基づき、その優先権をここに主張し、その開示事項を参照として本明細書中に包含する。
【0002】
本発明は、均一なRV及び低いゲル含量を有する、ナイロン66、ナイロン6、及びコポリアミドなどを含むカスタマイズ可能な高分子量ポリアミドに関する。得られるポリマーは、繊維及びフィルム形成の種々の用途、特に繊維紡糸のために好適である。
【背景技術】
【0003】
伝統的に、連続的なポリアミドの製造、特にナイロン6(N6(ポリカプロアミド)とも呼ぶ)及びナイロン6,6(N66又はヘキサメチレンアジパミド)の重合プロセスは、最終的な所望の相対粘度(RV)を達成するために巨大で集中的な複数容器の設備を伴う。これは、現在実施されている触媒及び/又は非触媒系による重合反応速度のために必要な長い持続時間に加えて、大量の溶液水を蒸発除去する必要性のためである。
【0004】
本発明の目的は、均一なRV及び低いゲル含量を有するカスタマイズ可能なナイロン6又はナイロン66ポリマー又はコポリマーを生成させることができるようにすることである。別の目的は、ポリマーの滞留時間、及びしたがってポリマーの分解を減少させることによって、連続的なN6及びN66の重合プロセスを単純化することである。得られるポリマーは、射出成形、フィルム、及び繊維産業のためのN6又はN66ポリマーを製造するために有用である。
【0005】
本発明は、ポリアミド、特にナイロンポリマー、並びにニート、及び直接供給されるポリマー溶融体流からの分子量(MW)の増加及び添加剤の配合を同時に行うために押出機及び真空技術を用いることによって配合した生成物を連続的に製造するための低い滞留時間のプロセスの必要性に取り組んでいる。
【0006】
ポリアミド及びコポリアミド、これらの材料から形成される繊維及びフィルム、並びにポリマー及び物品を製造するための手順が数多くの参照文献において記載されている。以下は関連する技術の概要である。
【0007】
Glenn Alan SchwinnらのUS-6,235,390においては、製紙機フェルト及び他のステープル繊維用途において用いるための、少なくとも140のギ酸相対粘度及び4.5~7gpdの範囲のテナシティーを有するポリアミドフィラメントが開示されている。この特許においては向上した相対粘度が開示されているが、得られるモノフィラメントのテナシティーの範囲は、ポリアミドフィラメントのより低い強度を示している。
【0008】
Swu-Chen ShenらのUS-8,211,340においては、溶融押出技術を用いて未被
覆エアバッグ布帛のための正方形様の断面のポリアミドフィラメントを製造する方法が開示されている。得られるポリアミドフィラメントは、7.5~9.5g/デニールの範囲のテナシティー及び18~30%の破断伸びを有すると報告されている。
【0009】
Tsujii YasuhitoらのUS-7,381,788においては、低い標準偏差を有する相
対粘度を有するポリアミドポリマーの連続製造方法が開示されている。これはまた、この特許の表1において詳説されている。
【0010】
Yuoの特許であるUS-5,298,598、US-5,298,597、US-5,
298,594、US-5,290,747、US-5,264,541、US-5,264,406、US-5,260,246においては、それぞれポリアミド及びアルカリ金属次亜リン酸塩化合物を用いる反応押出プロセスが開示されている。
【0011】
RoyerのUS-6,900,267においては、押出機内で少なくとも1種類のポリマ
ー、オリゴマー、又はこれらの組合せ、及び二酸化炭素含有流体を化合させる反応押出プロセスが開示されている。
【0012】
AudaのUS-5,651,927においては、複数の反応区域内で複数の逐次化学反応を行う押出機が開示されている。
IllingのUS-5,169,582においては、上昇した温度及び真空度で与えられている押出機に物質を供給して所望の重合度を達成することによってカプロラクタムを製造する方法が開示されている。
【0013】
BurletのUS-5,102,594においては、ベント式押出機を用いて熱可塑性ポリマーを製造する方法が開示されている。
WobbeのUS-4,902,455においては、複数の逐次脱気セクションを含む脱気
押出機を用いて広範囲の粘度にわたる熱可塑性溶融体を脱気する方法が開示されている。
【0014】
DoerfelのUS-3,657,195においては、自己洗浄式スクリュー押出機反応器
内で低分子量のナイロン6,6を連続的に更に縮合することによって高分子量ナイロン6,6を製造する方法が開示されている。押出機は、上昇した温度及び圧力における少なくとも1つの脱気オリフィスを含む。
【0015】
HaeringのUS-4,760,129においては、1~4分間の滞留時間を有する押出
機及び水蒸気又はガスの噴射を用いて、高粘度のポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン6,6)を製造する方法が開示されている。
【0016】
TaylorらのUS-5,079,307においては、二軸押出機及び重合助剤として触媒を用いる、カルボキシ末端ポリアミドプレポリマーからの高分子量ポリアミドの製造が開示されている。
【0017】
AnolickらのUS-5,543,495においては、気体下の二軸押出機を用い、触媒
、活性化剤、及び数秒間~数分間の滞留時間を用いて、ポリアミド及び他の縮合ポリマーの分子量を増加させる方法が開示されている。
【0018】
Earl Blaine AdamsらのUS-5,683,808においては、少なくとも60のギ酸
相対粘度、10グラム/デニール(gpd)より高いテナシティー、0.1gpd未満のテナシティーのアロングエンド(along end)標準偏差、及び15%未満の177℃におけ
る熱風収縮率を有するポリアミドモノフィラメントが開示されている。このポリアミドモノフィラメントは、低圧水蒸気を噴射することによって押出すか又は加熱しており、これによりポリアミドフィラメントが汚染される可能性があり、更に全体的な引張り強さが低下する可能性がある。
【0019】
Max KurtらのUS-5,707,733においては、標準的なポリアミド(PA66)モノフィラメントと比べて向上した初期弾性率、強度、LASE、及び湿潤緩和を有するナイロン6,6モノフィラメントが開示されている。この特許においてはまた、ナイロン6,6モノフィラメントは25%未満の破断伸びを有することも開示されている。特定の
最終用途のための所望の特性(即ち、高い分子量、分子量の高い均一性、低いゲル含量)を有するカスタマイズ可能なポリマー、及び当該技術において現在公知のものよりも大きな効率性でポリアミドを製造する方法に対する必要性が継続して存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【文献】US-6,235,390
【文献】US-8,211,340
【文献】US-7,381,788
【文献】US-5,298,598
【文献】US-5,298,597
【文献】US-5,298,594
【文献】US-5,290,747
【文献】US-5,264,541
【文献】US-5,264,406
【文献】US-5,260,246
【文献】US-6,900,267
【文献】US-5,651,927
【文献】US-5,169,582
【文献】US-5,102,594
【文献】US-4,902,455
【文献】US-3,657,195
【文献】US-4,760,129
【文献】US-5,079,307
【文献】US-5,543,495
【文献】US-5,683,808
【文献】US-5,707,733
【発明の概要】
【0021】
本発明は、相対粘度(RV)が約50程度乃至200の範囲である、ゲルを実質的に含まない均一な粘度を有する高分子量ポリアミドに関する。目的は、最小乃至実質的にゼロのゲル含量を有するカスタマイズ可能な均一なポリアミドポリマーを製造することである。ゲルを実質的に含まない本高分子量ポリマー、主としてナイロン6及びナイロン6,6ポリマー並びにそれらのランダムコポリマーは、好ましくは、好ましくは50RVより高い粘度、1.0未満の標準偏差を有する均一な粘度(RV)、10ミクロンより大きい不溶分によって測定して50ppm未満のゲル含量、及び光学制御システム(OCS)走査技術によって測定して2000ppm未満の光学欠陥含量を有する。得られるポリマーは熱安定化させて繊維(モノフィラメント又はマルチフィラメント)に成形することができる。
【0022】
本発明のポリアミドは、RV均一性、ゲル含量、光学的外観、及び繊維紡糸性能の点で、既存の製品と比べて予期しなかった優れた特性を有する。更に、本発明のポリマーは、繊維に紡糸すると、予期しなかった低いパック圧力の上昇(pack pressure rise)を示し、これにより例えば10日間より長く、好ましくは15日間より長い、より長いパック寿命(pack life)がもたらされる。このポリマーに関する用途としては、次の特性:9.0グ
ラム/デニール(g/d)より高いテナシティー;18%より大きい伸び;及び20ポンドボビンあたり2未満の破断フィラメントを有するモノフィラメント又はマルチフィラメント繊維(ヤーン)に加工することが含まれる。
【0023】
本発明の他の形態は、N66と示されるポリアミドを、加熱排気真空プロセス押出機内
において、添加水蒸気又はガスの不存在下で、活性リンベースのポリアミド化触媒の存在下で高分子量ポリマーに溶融重合する方法に関する。
【0024】
本発明をポリアミド、特にナイロン66、ナイロン6、及びこれらのコポリアミドに関して記載するが、本発明は、脂肪族ポリアミド(伝統的にN6及びN66又は他の脂肪族ナイロン)から、芳香族成分(例えばパラフェニレンジアミン及びテレフタル酸)を有するポリアミドまでの範囲の全てのポリアミド、アジペートと2-メチルペンタメチレンジアミン及び3,5-ジカルボキシベンゼンスルホン酸(又はそのナトリウムスルホネート塩の形態のスルホイソフタル酸)のようなコポリマーに適用することができる。
【0025】
当該技術においては、これまでは本明細書に記載するような高いレベルのRV均一性及び低いレベルのゲルを有する調節可能な精密RV(precision RV)を有するポリマーを製造するプロセスを与えることはみられていなかった。
【0026】
一般に、ゲル体は、光学顕微鏡なしではポリマー中において肉眼で見ることはできない。また、例えば蛍光励起のために広範囲の紫外(UV)又は近紫外(UV)光を用いてポリマーとゲルの間のコントラストを増大させる方法を与えることも必要である。US-4,760,129(1988年、Werner & Pfleidererに譲渡)においては、重縮合後の
反応において添加過熱水蒸気を用いて、高粘度(4以上のRV)で高分子量(Mn=34000、Mw=2.1)のナイロン6,6ポリマーを製造することが開示されている。データは、得られるポリマー中に存在しているか又は存在していないかという観点でゲルを報告している。想定された視覚観察試験以外のゲル又は不純物含量の測定に関する詳細は与えられていない。現在では、ゲルが肉眼で見えるためには、ポリマー中のゲル含量は非常に高いことが知られている。成人が識別できる最小の寸法は30ミクロン程度のオーダーである。したがって、US‘129のプロセスによって高い分子量を達成することができるが、本発明において規定する低ゲルポリマーは示唆されていない。
【0027】
本発明の有利性は、縮合後の段階(その間にプレポリマー又は好適な材料から出発してN66の完全な重合が達成される)における、添加水蒸気又はガスの不存在下での潜在的に低い滞留時間(数分間及び数時間に対して数秒間)である。有意なプロセスの単純化の可能性、及び反応押出によるN66の部分的及び/又は完全なポリアミド化を迅速に完了する能力によって、化合物の重合とポリマーのブレンドをインラインで連続的に、即ち同じプロセス工程において行う能力のような数多くの他のプロセス単純化の機会が与えられる。
【0028】
真空を印加することによりプロセスから揮発性成分を除去することによって、ポリマーの品質が上昇し、成形体、フィルム、及び繊維の製造などの用途におけるゲル化及びガス化の傾向が減少する。本発明方法はまた、揮発性有機化合物が存在せず、プロセス滞留時間が大きく減少されるので、架橋のような望ましくない副反応の傾向も減少させる。減少した滞留時間を用いる本発明方法によって、得られるポリマーにおけるゲル形成が減少する。
【0029】
「減少したか又は短い」滞留時間に加えて狭い滞留時間分布は2つの別々の概念である。ここでは短い滞留時間を議論するが、狭い滞留時間も本発明に適用される。狭い滞留時間の分布曲線は狭くなっており(又は急になっており)、ゲル形成の向上(又はゲル形成の欠如)を促進する。具体的には、これはゲル化に至る高い滞留時間の長い後半部(tail)であり、平均滞留時間が短い場合であっても長い後半部を有することはあり得る。二軸押出機は、デッドゾーンを排除する全面的に拭われる表面を有しているために狭い滞留時間分布を有することが周知である。
【0030】
本発明システムは、小型で、シンプルで、従来のSSP(固相重合)プロセスとは異なり、高RV材料を製造するために用いられる低RV材料の原材料在庫を必要としない。このシステムの他の有利性は真空部品であり、これにより揮発性物質及び他の不純物が除去され、架橋及びゲル形成の傾向が減少し、これによりポリマーの品質が向上する。
【0031】
更に、本発明により、再押出によって反応する揮発性物質が存在せず、したがって反応することができないという点で、繊維紡糸、成形、及びフィルム製造のような操作における向上した性能がもたらされる。
【0032】
図面は本発明の可能性のある適用を示し、代表的な態様を表すものであり、本明細書において他の形態で記載する本発明の説明を限定するようには意図しない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1図1は、真空機能を有する本発明の好ましい重合システムの一態様を示す。
図2図2は、高い原材料在庫を有する従来の高分子量固相仕上げ処理プロセスを示す。
図3図3A~3Dは、ナイロン66繊維におけるフィラメント破断に関係するゲル体を示す。
図4図4は、本発明の好ましい方法によって製造された85のみかけRVを有するポリマーのRV分布を示すヒストグラムである。
図5図5は、図2の装置を用いたSSPプロセスによって製造された85のみかけRVを有するポリマーのRV分布を示すヒストグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明を、例示のみの目的の図面に関連して下記に詳細に記載する。本発明は添付の特許請求の範囲において規定される。本明細書において用いる用語は、下記に示す定義と合致するその通常の意味で与えられる。例えば、真空度は0℃におけるmmHgとして表される。
【0035】
明細書及び特許請求の範囲において用いる単数形の「a」、「an」、及び「the」は、記載が他に明確に示していない限りにおいて複数の対象物を包含する。例えば、「物品」という用語は、記載が他に明確に示していない限りにおいて複数の物品を包含することができる。
【0036】
「実質的に構成される」及び同様の用語は、列挙されている構成要素を指し、組成物又は物品の基本的で新規な特徴を実質的に変化させる他の構成成分は排除される。他に示していないか又は容易に明らかでない限りにおいて、組成物又は物品は、組成物又は物品が90重量%以上の列記されているか又はリストされている構成要素を含む場合には、列記されているか又はリストされている構成要素から実質的に構成される。即ち、この用語は、10%より多い列記されていない構成要素を排除する。本発明のポリマー組成物は、列記されている成分から実質的に構成することができる。
【0037】
本明細書において用いる「ポリアミド」、「コポリアミド」、及び同様の用語は、ポリアミドを含む組成物を指す。代表的なポリアミド及びポリアミド組成物は、Kirk-Othmer,
Encyclopedia of Chemical Technology, vol.18, pp.328-371 (Wiley 1982)(その開示
事項を参照として本明細書中に包含する)に記載されている。簡単に言うと、ポリアミドは、主ポリマー鎖の不可欠部分として繰り返しアミド基を含む製品である。線状ポリアミドが特に興味深く、これは当該技術において周知なように二官能性モノマーの縮合によって形成することができる。ポリアミドは、しばしばナイロンと呼ばれる。特定のポリマー及びコポリマー並びにそれらの製造は、次の特許:「高粘度ポリヘキサメチレンアジパミ
ドの製造方法」と題されたHaeringらの米国特許4,760,129;「ポリアミドの製
造方法、かかる方法によって製造されるポリアミド、及びポリアミドフィルム又はシート」と題されたTokiらの米国特許5,504,185;「ポリアミド及び他の縮合ポリマーの分子量を増加させる方法」と題されたAnolickらの米国特許5,543,495;「線
状極高分子量ポリアミド及びその製造方法」と題されたDujariらの米国特許5,698,658;「モノメチルアジペート及びヘキサメチレンジアミンからポリ(ヘキサメチレンアジパミド)を製造する方法」と題されたMarksらの米国特許6,011,134;「ポ
リアミドの規格化連続製造のための方法及び装置」と題されたWiltzerらの米国特許6,
136,947;「連続ポリアミド化方法」と題されたBushらの米国特許6,169,162;Zahrの「ポリアミド連鎖延長方法及び関連するポリアミド生成物」;「ポリアミドの製造方法」と題されたTanakaらの米国特許7,138,482;「ポリアミドの連続製造方法」と題されたTsujiiらの米国特許7,381,788;及び「ポリアミドの連続製造」と題されたThierryらの米国特許8,759,475;において見られる。
【0038】
パーセント、ppmなどは、他に示していない限りにおいて、組成物の重量を基準とする重量%又は重量部を指す。
プロセス温度は、他に示していない限りにおいて、押出機の設定点を指す。
【0039】
当業者であれば、図面中の部材は簡潔さ及び明確さのために示すものであり、必ずしも等縮尺で描かれていないことを認識するであろう。例えば、図面中の幾つかの部材の寸法は、本発明の理解を向上させるために他の部材と比べて拡大している場合がある。
【0040】
記載された図面の1つにおいて示されていない、上記の出願において記載されている更なる構成要素が存在する可能性がある。そのような構成要素が図面には示されていないが記載されている場合には、かかる図が存在しないことはかかるデザインが明細書から脱落しているとみなすべきではない。
【0041】
本発明のポリマーはモノフィラメント又はマルチフィラメントに成形することができる。本発明のポリマーは、ブローンフィルム及びキャストフィルムに成形することができる。本ポリマーはまた、その後に熱成形するためのゲルフリーのシート押出物として、及びケーブルタイのような射出成形部品として製造又は使用することもできる。モノフィラメントは、3D印刷用途、インク用途等において用いることができる。これらのポリマーは、優れた一軸又は二軸延伸技術を必要とする任意の用途、及び工業用布帛などにおいて用いるための高強度の繊維が必要な用途に適用することができる。
【0042】
高分子量ナイロン6,6ポリマー:
本明細書に開示する高分子量ポリマーは、50より高い相対粘度(RV)、通常は1未満の標準偏差を有する均一な粘度、50ppm未満のゲル含量、2000ppm未満(又は以下)の光学欠陥を有するポリアミドポリマーを含む。
【0043】
特に、概して、濃度90%のギ酸溶液中で測定して50より高い相対粘度;1.0未満の標準偏差を有する安定した粘度;10ミクロンより大きい不溶分によって測定して50ppm未満のゲル含量;及び好ましくは光学制御システム(OCS GMBH)分析器を用いるペレットの光学走査によって測定して2,000ppm未満の光学欠陥レベルを有する高分子量ポリアミドポリマーを開示する。得られるポリマーは、熱安定化させることができ、又はさせなくてもよい。
【0044】
任意の態様において、ナイロン6,6ポリマーのRVは、50、60、70、80、及び90より高くてよい。RVは、濃度90%のギ酸中で測定する。他の態様においては、ポリマーの均一な粘度の標準偏差は、1.2、1.1、1.0、0.9未満であってよい
。ポリマーは、それぞれ50ppm未満及び2000ppm未満のゲル含量及び光学欠陥レベルを有していてよい。一態様においては、ゲル含量及び汚染度は、好ましくはそれぞれ50ppm未満及び100ppm未満である。ゲル含量は、10ミクロンより大きい不溶分によって測定される。本ポリマーから形成される得られる繊維は、低いパック圧力上昇(15日間より長いパック寿命)を有する。一態様においては、本ポリマーから形成される得られる繊維は、10、20、30日間より長く、また40日間より長いパック寿命を有する。
【0045】
本重合プロセスは、場合によって、次亜リン酸及びその塩のような1種類以上のポリアミド化触媒を用いることを含む。具体例としては、次亜リン酸ナトリウム、リン酸一ナトリウム(MSP)、次亜リン酸マンガン、及びベンゼンホスフィン酸(フェニルホスフィン酸又はPPAとも呼ばれる)が挙げられる。
【0046】
本ポリマーには、ガラス繊維、ワックス、無機化合物、炭素繊維、繊維強化材、熱安定剤、カラーコンセントレート、耐衝撃性改良剤、及び難燃添加剤のような1種類以上の添加剤を含ませることができる。本ポリマーにはまた、当業者に公知の他の通常用いられる添加剤を含ませることもできる。ナイロン6及びナイロン66のための添加剤(最終用途による)としては、アルキレンジアミン、及びモノカルボン酸、或いは第1級又は第2級モノアミンを挙げることができる。下記に示す他の添加剤及び変性剤を、本発明の任意の態様に関して用いることができる。
【0047】
カナダ特許963594においては、重合反応の前に次亜リン酸ナトリウム及びジフェニルアミンをナイロン塩溶液中に加えることによる、向上した可染性を有する熱安定性ナイロン66繊維が開示されている。米国特許4,113,708においては、ポリアミドの溶融製造中におけるアンモニアの形成を減少させるためにフェニルホスフィン酸を用いる方法が開示されている。ドイツ公開DE-2158014においては、重合の前にアルカリ金属次亜リン酸塩をアミド及びアジペート中に加えることによってナイロン66を安定化する方法が開示されている。特願平1-179534及び特願平2-111015においては、まず次亜リン酸塩の存在下で二酸をジアミンと重合してオリゴマーを与え、次にオリゴマーをポリエチレンワックスの存在下で溶融重合することによってポリアミドを製造する方法が開示されている。英国特許出願GB-6648485においては、重縮合の後又はその間に、次亜リン酸ナトリウム、並びに少なくとも1つの炭化水素ラジカル及びCOOH基を有するラジカルを含むフェノール類又は誘導体をポリアミドに加えることによる、ポリアミドのための熱及び光安定化添加剤が開示されている。特願平1-212160においては、重合添加剤は、次亜リン酸マンガン、ヘキサメチレンジアミン、及びトリアジン化合物を含んでおり、これを難燃剤として反応物質に加えている。
【0048】
次亜リン酸塩はまた、重合反応が完了した後にポリアミド及び/又はコポリアミドの特性を変性するための添加剤;ハロゲン化ヒドロキシルアンモニウム化合物、水硫化物、重亜硫酸塩、リン、及びホスフェートからの低温酸化防止剤、並びに金属次亜リン酸塩及び次亜リン酸アンモニウムからの還元剤としても用いられている。ドイツ公開DE-3636023においては、コポリアミドを精製パラフィン及び次亜リン酸ナトリウムと混合することによるホットメルト接着剤のための粒状の熱可塑性物質が開示されている。特願昭60-198900においては、ポリアミドを、変性ポリオレフィン樹脂、並びにHPO、HPO、及びHPOの金属塩とブレンドすることによるポリアミド樹脂組成物が開示されている。特願昭56-34897においては、水酸化ナトリウム及び次亜リン酸ナトリウムによってポリアミドを表面感受性化する方法が開示されている。特願昭53-97229においては、コポリアミドのための熱安定剤として次亜リン酸ナトリウムを用いることが開示されている。ベルギー特許BE-875530においては、ポリマー又はコポリマーをホスフィネート塩と混合することによる不燃性ポリエステル、ポリア
ミド、及びポリエステル-ポリアミド組成物が開示されている。特願平2-208135においては、制限された三次元構造を有するポリヘキサメチレンアジパミドが開示されている。酢酸銅、ヨウ化カリウム、及び次亜リン酸ナトリウムを、安定剤として最終重合生成物に加えている。特願平2-116874においては、変色を抑止するために次亜リン酸ナトリウム又は次亜リン酸カルシウムをポリアミドと混合することが開示されている。特願昭63-331806においては、ポリアミド充填剤のための着色防止剤としての次亜リン酸又は次亜リン酸塩の使用が開示されている。特願昭63-273373においては、ポリアミド、並びにオルトリン酸、次亜リン酸、アルカリ金属塩及びアルカリ塩から選択される添加剤を含む射出成形脂肪族ポリアミド容器が開示されている。ヨーロッパ特許出願EP-88-305493においては、次亜リン酸ナトリウム及び架橋剤を線状脂肪族ポリアミドに加えてその溶融粘度を向上させる方法が開示されている。
【0049】
ポリアミド前駆体を、5-スルホイソフタル酸又は塩或いは他の誘導体のようなカチオン染料変性剤と塩ブレンドすることによって、幾つかのポリアミドの汚染抵抗性を向上させることができ;或いは電気/電子及び自動車用成形用途のためのポリアミドを安定化するためにヨウ化銅を用いることができることが見出された。
【0050】
本発明の多くの態様に関して必ずしも必要ではないが、所望の場合には連鎖延長剤を用いることができる。好適な連鎖延長剤化合物としては、ビス-N-アシルビスラクタム化合物、イソフタロイルビスカプロラクタム(IBC)、アジポイルビスカプロラクタム(ABC)、テレフタロイルビスカプロラクタム(TBS)、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0051】
更に、本ポリマーはフィラメントに加工される。本フィラメントは、9.0グラム/デニール(gpd)より高いテナシティー、及び18%より大きい伸びを有する。一態様においては、本フィラメントのテナシティーは、9.0、9.5、10、10.5、11、11.5、及び12.0gpdより高くすることができ、本フィラメントの伸びは、18、19、20、21、22、23、24、及び25%より大きくすることができる。延伸したフィラメントは、16ポンド(lbs)ボビンあたり2未満の破断フィラメントを有する。より好ましくは、延伸された破断フィラメントは、20ポンドボビンあたり2未満、22ポンドボビンあたり2未満、24ポンドボビンあたり2未満、及び26ポンドボビンあたり2未満である。更に、本ポリマーは、繊維、エアバッグ、及び他の工業用途のような幾つかの用途において用いられる。
【0052】
溶融重合プロセス:
低いRV標準偏差を有し、ゲル及び光学欠陥を実質的に有しない本発明の高分子量ポリアミドを製造するための種々の経路又はオプションが存在する。通常は、温度要件、押出機、変性剤、真空部材等のタイプ、並びにその運転のような本発明のインラインプロセスにおけるバリエーションは、当業者の知識の範囲内である。所望のポリマーを製造するための複数の方法が存在する。本明細書における教示は、所望のRVを有し、ゲル含量又は微粒子が僅かしか乃至全く存在せず、低い光学欠陥を有し、また高い収量及び高いテナシティーの得られる繊維及びヤーンを製造する能力も有するカスタマイズ可能なポリアミドポリマーの製造を示す。
【0053】
一般的に言うと、ポリアミドを製造するための公知のプロセスは、低分子量のポリマーを製造し、次に通常は高い温度及び比較的長い滞留時間を伴う種々の手段によって分子量を増加させることである。低分子量の生成物は、バッチ(オートクレーブ)プロセスによって製造される(Big Chemical Encyclopedia, V19, [c.272], D.B. Jacobs及びJ. Zimmerman, C.E. Schildknecht及びI. Skeist編, Polymerisation Prosesses, High Polymers,
Vol. XXIX, Wiley-Interscience, New York, 1977, pp.424-467を参照)。これは、ナイ
ロン-6,6の重合[c.277]又は連続プロセス(US-6472501を参照)の非常に
詳細な総説である。この低分子量のポリマーを、次に固相重合プロセスに供給して、分子量を所望の高いレベルに増大させる(図2を参照)。
【0054】
本発明の生成物を製造するために、低分子量のポリマーをバッチオートクレーブプロセスによって製造して、続いて固相重合(SSP)によって処理して高分子量にすることができる。オートクレーブプロセスは、比較的低いゲル含量を有するポリアミドを生成することが知られているが、バッチプロセスはRVにおける高い変動性をもたらす傾向がある。バッチオートクレーブプロセスにおいて固有のRVの変動性を補償するためには、より狭いRV変動を有するオートクレーブバッチの部分を選択し、SSP処理の前に材料の大半を廃棄する必要があり、これにより比較的高価で集中的な取り組みが必要な手順が与えられる。
【0055】
1つの代替法は、連続重合プロセスによって低分子量のポリマーを製造し、続いてSSPによってポリマーを処理して高分子量にすることである。連続プロセスは非常に均一なRVを生成させることが知られているが、従来の連続プロセスは、固有のデッドゾーン及び不均一な滞留時間のために高いゲル含量になって、これによりポリマーの分解及びゲル化が引き起こされる傾向がある。連続重合プロセスにおいて固有のゲル生成を補償するためには、生成物の全てのペレットをゲルに関して検査してそれらを取り除くことが必要な場合がある。光学式/空気圧式自動処理を用いることができるが、ここでも生成物品質における変動性をもたらす傾向がある比較的高価で集中的な取り組みが必要が手順が与えられる。
【0056】
第3のオプション(オプション3)は、本明細書において詳細に記載する本発明方法であり、これは比較的短い滞留時間での真空仕上げ処理技術を伴い、直ぐ上で議論した手順のような相当量の原材料在庫を必要としない。
【0057】
オプション3は、真空仕上げ処理技術によって高分子量のポリアミドポリマーを製造する方法である。真空仕上げ処理によって揮発性成分が除去され、ゲルを実質的に含まない得られる高分子量のポリマーを製造することが可能になる。揮発性物質及びゲルを存在させないことによって、成形部品、繊維、及びフィルムの製造に特に適したより純粋なポリマーが製造される。また、揮発性物質のより低いレベルによって、繊維フィラメント、成形部品、及びフィルム中のガス生成及び空洞部も減少し、これにより優れた物理特性及び生産性を有する生成物が得られる。ゲルを存在させないことによって、より低い汚染物質、成形部品及びフィルムの欠陥のために、スピンパックの寿命(spin pack life)、及び生産性も向上する。
【0058】
本発明方法は、反応器の第2の部分又は重合プロセス(二軸押出機内における真空下での反応押出)中に、添加又は注入水蒸気又はガスの不存在下で行う。初期ポリマー供給材料に関する投入温度は約285℃であり、押出機の出口点において最高で約350℃、好ましくは310℃未満、最も好ましくは290℃未満まで上昇する。押出機内に保持されるポリマーに関する滞留時間は、60秒間未満、より好ましくは30秒間未満、更により好ましくは20秒間未満である。プロセスに関する真空度は約26~28水銀柱インチであり、所望の場合には触媒(例えばPPA(フェニルリン酸))を用いることができる。反応水蒸気又は蒸気は約30秒間以内に押出機から除去されることが分かった。押出機から排出されるポリマーは、場合によっては更なる反応のためのパイプ(滞留時間ブロック(RTB);本明細書においては時には滞留時間保持容器(residence time dwell vessel)と呼ぶ)に供給することができる。RTBには、場合によっては均一な滞留時間分布及
び均一な溶融温度を確保するためにチューブインサートを装備する。チューブインサートはスタティックミキサーインサートであってよく;種々の構造及びタイプのチューブイン
サートがKoch Heat Transfer Companyから商業的に入手でき、これらの使用はChemical Engineering Process, 2012年9月, p.19-25, Shilling, Richard, L.において議論されて
いる。RTB内における滞留時間は、30秒間~5分間、及び10分間以下で変化させることができる。溶融温度は290℃以上であってよく、好ましくは最高で350℃までであってよい。
【0059】
本発明の好ましいプロセスにおいては、熱と機械的仕事(押出機を通るポリマーの動き)を組み合わせることによって、重合反応中に生成する水が除去される。しかしながら、(従来技術とは異なり)縮合後の段階における反応中に更なる水蒸気を注入しないことによって水の形成を最小にすることが目的である。水蒸気は初期重合工程において加える。反応は、従来技術において通常開示されている更なる水蒸気を用いないで進行することが見出された。これにより、ポートが滞留又は閉塞するようになる可能性が低くなるので、装置のより高い効率及びより連続的な運転がもたらされる。US-5,543,495(1996年の特許、DuPontに譲渡)においては高分子量のナイロン6,6の製造が開示されているが、これはプロセス全体を通して添加水蒸気及び触媒の使用を伴っている。生成物のRVが増加することが示されたが、ゲル又は不純物の形成に関する議論はなかった。
【0060】
本発明は、以下の試験方法、更なる規定、添付の図面、及び以下の実施例を参照することによってより良好に理解される。
試験方法:
ポリマー及び延伸したフィラメントの機械及び化学特性は、次の試験法を用いて測定した。
【0061】
ナイロンの相対粘度(RV)は、毛細管粘度計内で25℃において測定される溶液又は溶媒粘度の比を指す(ASTM-D789)。溶媒は、10重量%の水及び90重量%のギ酸を含むギ酸である。溶液は、溶媒中に溶解した8.4重量%のポリマーである。相対粘度(η)は、ギ酸のものに対するポリマー溶液の絶対粘度の比である。
【0062】
η=(η/η)=(f×d×t)/η
(式中、dは25℃におけるギ酸-ポリマー溶液の密度;
=ギ酸-ポリマー溶液に関する平均流出時間(秒);
η=ギ酸の絶対粘度:kPa・秒(E+6cP);
=粘度計チューブファクター:mm/秒(cSt)/秒=η/t
である)
50RV試料に関する通常の計算は、
η=(f×d×t)/η
(式中、
=粘度計チューブファクター、通常は0.485675cSt/秒;
=ポリマー-ギ酸溶液の密度、通常は1.1900g/mL;
=ポリマー-ギ酸溶液に関する平均流出時間、通常は135.00秒;
η=ギ酸に関する絶対粘度、通常は1.56cP;
である)
であり、
η=(0.485675cSt/秒×1.1900g/mL×135.00秒)/1.56cP=50.0のRVが与えられる。
【0063】
の用語は、ASTM-D789において求められているギ酸の絶対粘度を求める際に用いられるS-3キャリブレーション油の流出時間である。
下表において、ASTM-D789-RV試験法を他の標準粘度測定法と比較する。
【0064】
【表1】
【0065】
標準偏差及びRV標準偏差:
本発明の生成物は、上述したように濃度90%のギ酸溶液中で測定して50より高い精密相対粘度(precision Relative Viscosity)を有することを特徴としており、精密相対粘度は1.25以下のRV標準偏差を有する。材料のRV標準偏差は、その材料のランダムに選択される少なくとも15の試料について測定した材料の相対粘度における標準偏差である。好ましくは、ランダムに選択される試料は、5ポンド以上の量のよく混合された生成物からランダムに選択される。更により好ましくは、よく混合された10ポンド以上の量の生成物から少なくとも25の試料を選択して分析する。
【0066】
試料の標準偏差は次のように規定される。
【0067】
【数1】
【0068】
式中、
【0069】
【数2】
【0070】
は試料の事項の観測される値であり、
【0071】
【数3】
【0072】
はこれらの観測値の平均値であり、一方で分母Nは試料の寸法を表す。これは、試料平均に関する平方偏差の平均である試料の分散の平方根である。
デニール(ASTM-D1577)は、繊維9000メートルの重量(グラム)として表される繊維の線密度である。モノフィラメントを製造してから10日より長く経時変化させた時点で、モノフィラメントをボビン上で55±2%の相対湿度及び75±2°Fにおいて24時間コンディショニングする。モノフィラメントの0.9メートルの試料を秤量し、デニールを9000メートルの試料の重量(グラム)として計算する。デニール×(10/9)はデシテックス(dtex)に等しい。短繊維の試料について行うデニール及びテナシティーの試験は、ASTM手順によって規定されている標準の温度及び相対湿度条件で行う。具体的には、標準条件とは、70±2°F(21±1℃)の温度及び65%±2%の相対湿度を意味する。
【0073】
モノフィラメント又はマルチフィラメントのテナシティー、破断強度、及び伸びのような引張特性は、ASTM-D885Mにしたがって求めた。紡糸した状態のモノフィラメントの引張試験の前に、モノフィラメントをパッケージ(ボビン)上で、55±2%の相対湿度及び75±2°Fにおいて最小の規定時間コンディショニングする。この時間は(他に規定されていない限りにおいて)、フィラメントを紡糸してから10日より長く経時変化させた時点で24時間である。試料は、試験の前にエアストリッピングする。記録を用いてコンディショニングされたモノフィラメントの応力/歪み挙動を特徴付ける。試料を、少なくとも40psiの圧力に維持された空気駆動のクランプ内に把持する。モノフィラメント応力を歪みの関数として連続的に記録しながら試料を破断点まで伸長する。当初のゲージ長さは10インチ(25.4cm)であり、クロスヘッド速度は一定の6インチ(15.3cm)/分に維持する。当業者であれば、ポリマーの本発明は主としてモノフィラメントにおいて用いるためのものであってよいが、カスタマイズ可能な本ポリマーからマルチフィラメントを製造することができることを認識するであろう。破断強度は、最大荷重として重量ポンド又は重量キログラムで記録し、伸びは、試料が破断する前の歪みとしてパーセントで記録する。テナシティーは、破断強度をデニール(フィラメント上の接着剤に関する補正を行った後)で割ることによって算出され、グラム/デニール(gf/d)で表される。
【0074】
不溶性材料試験及びゲル含量パラメーター:
代表的な試料である生成物ポリマー(好ましくは少なくとも50グラム)を、25℃において適当な溶媒、この場合には90%のギ酸中に溶解し、次のように処理する不溶性材料試験を行う。得られるポリマー-ギ酸溶液を濾過(EMD Mullipore、径47mm、タイプAN1H04700、10ミクロンの細孔径を有するポリプロピレンフィルター)し、次にフィルターを25℃において新しいギ酸溶液で洗浄して残留しているポリマーを除去する。試薬グレードのメタノールによる更なる洗浄を行い、次にフィルター及びその上に残留している物質を一定重量になるまで乾燥する。濾過後の重量と使用前のフィルターの風袋重量との差を、生成物中の不溶性材料の質量とみなす。用いる濃度及び試料のサイズは、正確に秤量することができる不溶性材料の量を得ることを可能にするように選択する。不溶性材料としては、ゲル、環境汚染物質、金属、分解した添加剤、及び他のプロセス及び非プロセス関連の汚染物質を挙げることができる。不溶性物質は殆どの場合においてゲル含量と密接に相関していることが見出されているので、この結果は、次の計算例において見られるように、25℃における90%ギ酸中のゲル含量パラメーターとして表される。
【0075】
通常の手順/試料の計算:
88.0グラムの樹脂を、25℃において800mLの90%ギ酸/10%水中に溶解し、真空濾過する。
【0076】
フィルターの開始重量は85.000ミリグラムである。
清浄なギ酸及びメタノールですすぎ、一定重量になるまで乾燥した後、ゲルを有するフィルターは86.375mgと秤量される。
【0077】
(86.375-85.000)/1000mg/g)/88.0)×1E6=15.6ppmの不溶性物質、又は15.6ppmのゲル含量パラメーター。
光学制御システム(OSC)測定及び平均光学欠陥レベル:
光学欠陥は、用いる装置(Optical Control Systems GmbH,モデルPS-25C)に基づいて
製造元が供給する試験を用いて測定する。ユニットは、集束/拡大レンズを備えた高速CCDカメラを用いて、30フレーム/秒(fps)で記録する。カメラの解像度は63マイクロメートル(μm)/ピクセルである。カメラを、試料移動システムの上方に90°の角度で直交させて配置する。この移動システムは、試料を一定の速度でカメラの視野を通過させて移動させるために振動プラットホームを用いる。このプラットホームは、純白の材料であり、分析のためのバックグラウンドとしても機能する。通常の試料サイズは、0.5~5キログラム(kg)の2.5~3mmの円筒形のペレットである。試料視野とカメラの間に、通常は400~700ナノメートル(nm)の間の可視光を発光する環状の光源を配置する。光源は、蛍光タイプの環状の電球又は発光ダイオード(LED)の列であってよい。カメラによって、光源内のリング形の開口を通して試料の視野を撮像する。視野を通して試料を移動させながら、カメラシステムによって反射した可視画像を記録する。このソフトウエアによってまた、欠陥の色(5つ以下の異なるカテゴリー)及び寸法に基づいてこれらの欠陥を特徴付ける。欠陥の寸法は、63μmから選択される最大寸法までの10の異なる数のカテゴリーに分類する。みかけ直径を算出し、これから欠陥体積を導き出すことができる。システムは、25ミクロン~5mmの寸法範囲の欠陥に基づいて、(一定の密度であると仮定して)平均光学欠陥レベルをppmで表す。この分析によって、ゲル、黒点、フィッシュアイ、孔、及び皺、擦過、コーティングボイド、水滴、油染み、虫、ダイライン、汚染物質、及びバブルが検出される。欠陥レベルを求めるこの方法は、ASTM-7310においてペレットではなくフィルムに関して一般的に規定されているが、その他の点は実質的に同じである。
【0078】
図1を参照すると、本発明のポリアミド生成物を製造するために好ましい装置10が示されている。装置10は、蒸発器12、減圧装置/フラッシャーを備えた栓流反応器14、熱交換器16、相分離器18、仕上げ処理容器20、モーター24を備えた二軸押出機22、滞留時間ブロック又は滞留時間保持容器26、並びにペレタイザー28を含む。
【0079】
運転においては、示されているように、ナイロン塩溶液を蒸発器12に供給し、そこで溶液を濃縮し、触媒と共に栓流反応器14に供給し、そこでナイロンを重合して約3~20のRVにする。ポリマーを減圧して溶融状態に維持し、熱交換器16で加熱した後、相分離器18に供給して、そこで揮発性物質を除去する。
【0080】
相分離器から、低分子量のナイロンを仕上げ処理容器20に供給し、そこで湿分を除去し、ナイロンを更に重合して約30~45のRVにする。容器20内において、ポリマー溶融体を不活性ガス及び/又は水蒸気で覆う。容器20の後、好ましくは触媒を含む溶融体を、モーター24によって駆動されている二軸押出機22に供給する。二軸押出機は、湿分及び他の揮発性物質を除去するために高真空下、通常は600mmHgより高い真空度で運転し、ポリマー溶融体のRVを50より高く、場合によっては又は好適には75程度よりも高くまで上昇させるために、低分子量のナイロンを、押出機内における比較的短い滞留時間の間、通常は1分間未満、そこで更に重合する。二軸押出機は、通常は275
又は285乃至350℃の間のバレル設定温度で運転する。好ましくは、280~290℃のように285℃により近い温度が好ましい。300℃程度より高いようなより高い押出機温度によって、75以上のRVのようなより高い分子量が達成される。場合によっては、押出機を300℃より低い温度で運転し、ポリマー溶融体を滞留時間保持容器26に供給して、そこで材料を更に重合した後にペレタイザー28に供給して、300℃より低い溶融温度を用いて75以上のRVを達成することができるようにする。
【0081】
下記の実施例において分かるように、80以上の精密RV及び低いゲル含量を有するポリアミドが装置10内で容易に製造される。
本発明の装置10は、図2から認められるように、材料の大きな在庫を必要とするSSPプロセスに対する代替法である。
【0082】
図2においては、ウェットチップサイロ32、供給ホッパー34、35、及び晶析装置38を含むSSP装置30が示されている。更に、SSP塔40、並びに生成物ホッパー42、44、熱及び湿分の調節装置(46、48によって示される)、並びに湿分調節サイロ50及びバッファーホッパー52も与えられている。
【0083】
運転においては、35~45程度のRV値を有する商業的プロセスによって製造されたポリマーチップをSSP塔40に供給し、150℃~190℃の温度に1~48時間の滞留時間の間保持して分子量を増加させる。装置及び原材料在庫の点で増加した費用にもかかわらず、上記に記載したSSPプロセスによって、上記に記載した装置10よりも高いRV標準偏差を有するポリアミドが製造される。ゲル含量パラメーター及び光学欠陥レベルも制御するのが困難であり、SSP塔に供給される低分子量の材料の品質、及びSSPプロセスに対して行う制御の度合いによって左右する。
【0084】
生成物の品質は、部分的にゲル含量パラメーターに反映され、これは生成物中の不溶性物質に相関し、生成物の外観及び繊維形成性に関係する可能性があり、ゲル寸法及び体積基準のゲルレベルによって左右する。ゲルは、大部分は系中のポリマー、触媒、及び添加剤の熱分解によって生成すると考えられている。いかなる特定の理論によっても縛られないが、ゲル化は時間及び温度の関数であると考えられる。図3の顕微鏡写真は、それぞれ、ナイロン6,6からの繊維製造中に観察された第1(図3A、3B)及び第2(3C、3D)のフィラメントの破断部の明視野及び蛍光顕微鏡写真である。破断部は、蛍光によって明示されるようにゲル物質を有しており、これらはギ酸中に不溶であった。観察されたゲル体は、約18ミクロン以下の寸法範囲のものであった。ゲル体はしばしば高速製造中の破断に関係し、多くの破断の原因であると考えられることが図3から分かる。
【0085】
生成物の品質はまた、部分的にRV標準偏差に反映され、これは予期しなかったことに、以下の実施例においてわかるように、繊維、フィルム、及び成形部品へのポリアミドの加工性に密接に相関する。図1の方法及び装置を用いて製造された85のRVを有するナイロン6,6は0.83のRV標準偏差を有しており、一方で図2の方法及び装置を用いて製造された85のRVを有するナイロン6,6は1.4のRV標準偏差を有しており、これは約75%高い変動のレベルであった。生成物のRV分布に関する詳細は図4、5において見られる。
【実施例
【0086】
実施例1:
PA66(N66としても知られる)の連続重縮合:
図1の装置を用いて出発してPA66の連続重縮合を行い、AH-塩溶液を2barの圧力で約85%の固形分まで濃縮した。次に、この高温の塩溶液を、204~270℃の3段階でジャケット加熱した重縮合反応器中に供給し、溶液温度を18.5barの圧力
で230℃に上昇させた。押出ポンプによって反応器端部の液溜めから初期縮合体を取り出し、僅か1barの最終圧力で290℃に加熱した減圧器/フラッシャー上に押出した。次に、初期重縮合体を相分離器、続いて仕上げ処理装置を通して流して、最後に残留している微量の水を蒸発させ、275℃の温度で初期縮合体を回収した。押出ポンプによって、材料を、ポリマーパイプを通して、275℃のバレル区域温度設定値を有する二軸押出機に押出した。温度を350℃に上昇させ、約20~30秒間保持した。押出機は、28インチ-Hgの真空度で運転する2つの真空ベントを有していた。排出されたポリマーを、ストランドダイを通してポンプで押出して、ペレット化した。
【0087】
このナイロン66生成物ポリマーは、通常は1.25以下のRV標準偏差を有する50より高い精密RV、25℃において90%のギ酸中で10ミクロンより大きい不溶分のppmによって求めて50ppm未満のゲル含量パラメーター;及びペレットの光学走査によって測定して2,000ppm未満の平均光学欠陥レベルを有していた。
【0088】
実施例2~5:
図1に示すクラスのW/P(Werner and Pfleiderer)40mm二軸押出機を用いて、
揮発性物質除去実験を行った。押出機のL/Dは56であり、押出機は14のバレルを有していた。スクリューは、溶融セクション及び2つの揮発性物質除去区域を有して設計されていた。真空ベント(ベントスタッファー)を押出機に装備した。ベントスタッファーのそれぞれを液封真空ポンプに接続し、これらのベントにおいて所定の真空度を維持するように運転した。スクリューは、それぞれの真空ベントの上流に溶融体シールを形成するように設計した。フィーダーを用いてポリマーペレットを正確に供給した。5穴式ダイ(直径4mm)を押出機の端部に装備した。実験を、125~200ポンド/時、及び300~500rpmの間のスクリュー速度で行った。加工温度は265~350℃の間であった。5フィートの水浴を用いてストランドを冷却し、ストランドペレタイザーを用いてペレット化した。EDLからの携帯電子温度プローブを用いて、ダイの出口における溶融温度を測定した。
【0089】
ギ酸中で粘度の測定(RV)を行った。着色ペレットを用いて滞留時間を測定した。
詳細及び結果を下記の表に示す。
【0090】
【表2】
【0091】
実施例6~8:
実施例2~5の手順にしたがい、滞留時間(RT)ブロック(滞留時間保持容器)を押出機の端部に取り付けた。RTブロックの端部にペレット化ダイを装備した。RTBパイプの直径は2.2インチであり、長さ3フィートであった。このRTBパイプ中に、Ross
Engineeringからの低圧力損失(LPD)スタティックミキサーを挿入した。このRTBブロックの主目的は、低い溶融温度で高RVのポリマーを製造することである。より高い温度によって、より高いゲル、黒点が形成される。実施例6、7から、溶融温度はより低い速度及び同じrpmにおいてより高いことが分かる。より高い溶融温度はRVを増加させるだけでなく、より高い分解生成物も生成させる。平衡な湿分含量においてRVに到達させるのに十分な反応時間を、滞留時間ブロック(RTB)の内部でとることができた。
【0092】
詳細及び結果を下記の表に示す。
【0093】
【表3】
【0094】
実施例9:
比較の目的のために、低分子量のナイロン66ポリマーフレークを、図2に関連して示し且つ記載したSSPカラムに供給して固相重合し、最終生成物が85のRVを有するようにすることによってナイロン66ポリマーを製造した。
【0095】
実施例10~13:
これらの実施例においては、実施例1~8において概説した反応押出プロセスにしたがって製造したポリマーから、タイヤコードのために好適な高テナシティーのナイロン66マルチフィラメントヤーンを紡糸した。150ppmのベンゼンホスフィン酸、70ppmの臭化銅の形態の銅、並びに臭化カリウム及びヨウ化カリウムの形態のカリウムを含み、約85のRVを有し、平衡状態のアミン及びカルボキシル末端基を有するフレーク形態のナイロン66ポリマーを、通常の方法で溶融紡糸して紡糸した状態のマルチフィラメントヤーンを与えた。実施例2~8に記載した本発明によるフレーク形態のナイロン66ポリマーを、別のサイロから押出機に供給し、次にクエンチ区域及び延伸区域に供給した。延伸比は、最も高いロール速度と最も低いロール速度の比によって定められる。結果を、フレーク形態のナイロン66ポリマーを連続重合ラインから製造し、次にポリマーのRVを85に増加させるために固相重合カラムで処理したSSPプロセス(実施例9)と比較した。延伸比を段階的に増加させ、オンライン破断フィラメント検出器を用いてそれぞれの段階に関する平均破断フィラメント数を記録するストレス試験によって、それぞれの方法からのポリマーフレークの紡糸性能を求めた。それぞれの延伸比からのボビンを回収し、得られたヤーンの物理特性を試験した。ヤーンの品質は、ヤーンを9.5g/デニールに到達する程度まで延伸した際の紡糸中の破断フィラメントカウント数の平均値によって求められる。下表中の結果は、実施例1~8において概説したプロセスからのナイロン66フレークから製造した紡糸した状態のヤーンは、1分あたりのより低い平均破断フィラメントカウント数で9.5g/デニールのテナシティーを得ることができたことを示している。ギ酸中に可溶でなかったゲルの量も報告する。反応真空押出プロセスからのポリマーは、連続重合から製造して次にSSPプロセスにかけたポリマーよりも少ない不溶分を示した。
【0096】
詳細及び結果を下記の表に示す。
【0097】
【表4】
【0098】
SSP材料は光学欠陥レベルの点で優れていたが、より多いフィラメントの破断を示した。いかなる理論によっても縛られることは意図しないが、紡糸性能は、光学欠陥レベルよりもゲル含量及び/又はRV標準偏差とより強く相関していると考えられる。
【0099】
マルチフィラメントナイロンヤーン及びタイヤコードにおけるそれらの使用は、米国特許7,159,381、米国特許4,720,943、及び米国特許4,416,935においてかなり詳しく議論されている。
【0100】
本発明の好ましい態様の列記:
而して、本発明の第1のポリアミドポリマーの態様においては、濃度90%のギ酸溶液中で測定して50より高い精密相対粘度を有することを特徴とし、精密相対粘度は1.25以下のRV標準偏差を有する高分子量ポリアミドポリマーが提供される。
【0101】
第2のポリアミドポリマーの態様は、
濃度90%のギ酸溶液中で測定して50より高い相対粘度;
25℃において90%のギ酸中で10ミクロンより大きい不溶分のppmによって求めて50ppm未満のゲル含量パラメーター;及び
ペレットの光学走査によって測定して2,000ppm未満の平均光学欠陥レベル;
を有することを特徴とする高分子量ポリアミドポリマーの形態で提供される。
【0102】
第3のポリアミドポリマーの態様は、
濃度90%のギ酸溶液中で測定して50より高い相対粘度;及び
25℃において90%のギ酸中で10ミクロンより大きい不溶分のppmによって求めて50ppm未満のゲル含量パラメーター:
を有することを特徴とする高分子量ポリアミドポリマーの形態で提供される。
【0103】
更には、本発明の第4のポリアミドポリマーの態様は、
濃度90%のギ酸溶液中で測定して50より高い精密相対粘度(精密相対粘度は1.25以下のRV標準偏差を有する);
25℃において90%のギ酸中で10ミクロンより大きい不溶分のppmによって求めて50ppm未満のゲル含量パラメーター:及び
ペレットの光学走査によって測定して2,000ppm未満の平均光学欠陥レベル;
を有することを特徴とする高分子量ポリアミドポリマーの形態で提供される。
【0104】
更なる態様としては次のものが挙げられる。
ポリアミドポリマーの態様5は、ポリマーがナイロン6,6ポリマーである、ポリアミドポリマーの態様1~4のいずれかのポリアミドポリマーである。
【0105】
ポリアミドポリマーの態様6は、ポリマーがナイロン6ポリマーである、ポリアミドポリマーの態様1~4のいずれかのポリアミドポリマーである。
ポリアミドポリマーの態様7は、ポリマーがナイロン6,6とナイロン6のランダムコポリマーである、ポリアミドポリマーの態様1~4のいずれかのポリアミドポリマーである。
【0106】
ポリアミドポリマーの態様8は、相対粘度が濃度90%のギ酸溶液中で測定して70より高い、上記のポリアミドポリマーの態様のいずれかのポリアミドポリマーである。
ポリアミドポリマーの態様9は、相対粘度が濃度90%のギ酸溶液中で測定して90より高い、上記のポリアミドポリマーの態様のいずれかのポリアミドポリマーである。
【0107】
ポリアミドポリマーの態様10は、相対粘度が濃度90%のギ酸溶液中で測定して50~200の範囲である、上記のポリアミドポリマーの態様のいずれかのポリアミドポリマーである。
【0108】
ポリアミドポリマーの態様11は、相対粘度が濃度90%のギ酸溶液中で測定して75~100の範囲である、上記のポリアミドポリマーの態様のいずれかのポリアミドポリマーである。
【0109】
ポリアミドポリマーの態様12は、相対粘度が濃度90%のギ酸溶液中で測定して80~97.5の範囲である、上記のポリアミドポリマーの態様のいずれかのポリアミドポリマーである。
【0110】
態様13は、精密相対粘度が1.0未満のRV標準偏差を有する、上記のポリアミドポリマーの態様のいずれかのポリアミドポリマーである。
ポリアミドポリマーの態様14は、精密相対粘度が0.9未満のRV標準偏差を有する、上記のポリアミドポリマーの態様のいずれかのポリアミドポリマーである。
【0111】
ポリアミドポリマーの態様15は、精密相対粘度が0.5~1.25のRV標準偏差を有する、上記のポリアミドポリマーの態様のいずれかのポリアミドポリマーである。
ポリアミドポリマーの態様16は、ポリマーが次の特徴:9.0g/dより高いテナシティー;18%より大きい伸び;及び20ポンドボビンあたり2未満の破断フィラメント;を有するマルチフィラメントヤーンに成形されているナイロン6,6ポリマーである、ポリアミドポリマーの態様1~5及び8~15のいずれかのポリアミドポリマーである。
【0112】
ポリアミドポリマーの態様17は、次の特徴:9.0g/dより高いテナシティー;18%より大きい伸び;及び20ポンドボビンあたり1未満の破断フィラメント又は0.5未満の破断フィラメント;を有するマルチフィラメントヤーンに成形されている、ポリアミドポリマーの態様16のポリアミドポリマーである。
【0113】
ポリアミドポリマーの態様18は、ヤーンが、タイヤ、エアバッグ、シートベルト、及び工業用布帛の1以上に導入されている、ポリアミドポリマーの態様16又は17にしたがうナイロン6,6マルチフィラメントヤーンである。
【0114】
ポリアミドポリマーの態様19は、更にポリアミドが25℃において90%のギ酸中で10ミクロンより大きい不溶分のppmによって求めて40ppm未満のゲル含量パラメーターを示すナイロン6,6ポリマーである、ポリアミドポリマーの態様1~5及び8~18のいずれかのポリアミドポリマーである。
【0115】
ポリアミドポリマーの態様20は、更にナイロン6,6ポリマーが25℃において90%のギ酸中で10ミクロンより大きい不溶分のppmによって求めて25ppm未満のゲル含量パラメーターを示す、ポリアミドポリマーの態様19のポリアミドポリマーである。
【0116】
ポリアミドポリマーの態様21は、更にナイロン6,6ポリマーが25℃において90%のギ酸中で10ミクロンより大きい不溶分のppmによって求めて1ppm乃至10ppm未満のゲル含量パラメーターを示す、ポリアミドポリマーの態様19のポリアミドポリマーである。
【0117】
ポリアミドポリマーの態様22は、更にナイロン6,6ポリマーが25℃において90%のギ酸中で10ミクロンより大きい不溶分のppmによって求めて10ppm未満のゲル含量パラメーターを示す、ポリアミドポリマーの態様19のポリアミドポリマーである。
【0118】
ポリアミドポリマーの態様23は、更にポリアミドが1000ppm以下の平均光学欠陥レベルを示すナイロン6,6ポリマーである、ポリアミドポリマーの態様1~5及び8~22のいずれかのポリアミドポリマーである。
【0119】
ポリアミドポリマーの態様24は、更にナイロン6,6ポリマーが500ppm以下の平均光学欠陥レベルを示す、ポリアミドポリマーの態様23のポリアミドポリマーである。
【0120】
本発明の更なる形態は、上述のポリアミドポリマーの態様1~24の特徴のいずれかを有する高分子量ポリアミドの製造方法を包含する。
本発明の第1の方法の態様においては、
(a)第1の相対粘度を有する第1のポリアミドポリマーを含む第1のポリアミドポリマー溶融体を与え;
(b)第1のポリアミドポリマー溶融体を二軸押出機に供給し;
(c)第1のポリアミドポリマー溶融体を、二軸押出機内において真空下で溶融加工してそれから水蒸気及び他の揮発性物質を除去し、それによってポリマー溶融体の分子量を増加させて、第2の相対粘度を有する第2のポリアミドポリマーを含む第2のポリアミドポリマー溶融体を与え(第2のポリアミドポリマーは、(i)濃度90%のギ酸溶液中で測定して、1.25以下のRV標準偏差を有する50より高い精密相対粘度;又は(ii)25℃において90%のギ酸溶液中で10ミクロンより大きい不溶分のppmによって求めて50ppm未満のゲル含量パラメーター、及び50ミクロンの解像度での光学走査によって測定して2000ppm未満の平均光学欠陥レベル;のいずれかを有することを特徴とする);
(d)場合によっては、第2のポリマー溶融体を滞留時間保持容器に供給して、滞留時間保持容器内で第2のポリマー溶融体を溶融加工して、第2のポリアミドポリマーの第2の相対粘度よりも高い第3の相対粘度を有する第3のポリアミドポリマーを含む第3のポリアミドポリマー溶融体を与え(第3のポリアミドポリマーは、(i)濃度90%のギ酸溶液中で測定して、1.25以下のRV標準偏差を有する50より高い精密相対粘度;又は(ii)25℃において90%のギ酸溶液中で10ミクロンより大きい不溶分のppmによって求めて50ppm未満のゲル含量パラメーター、及び50ミクロンの解像度での光学走査によって測定して2000ppm未満の平均光学欠陥レベル;のいずれかを有することを特徴とする);そして
(e)(i)濃度90%のギ酸溶液中で測定して、1.25以下のRV標準偏差を有する50より高い精密相対粘度;又は(ii)25℃において90%のギ酸溶液中で10ミクロンより大きい不溶分のppmによって求めて50ppm未満のゲル含量パラメーター、及び50ミクロンの解像度での光学走査によって測定して2000ppm未満の平均光学欠陥レベル;のいずれかを有することを特徴とする生成物ポリアミドポリマーを回収する;
ことを含む、精密相対粘度及び低いゲル含量を有する高分子量ポリアミドポリマーの製造方法が提供される。
【0121】
方法の態様2は、ポリアミドポリマー溶融体を二軸押出機内において280℃~350℃の範囲の温度で溶融加工する、方法の態様1にしたがう精密相対粘度及び低いゲル含量を有する高分子量ポリアミドポリマーの製造方法である。
【0122】
方法の態様3は、ポリアミドポリマー溶融体を二軸押出機内において285℃~305℃の範囲の温度で溶融加工する、方法の態様1にしたがう精密相対粘度及び低いゲル含量を有する高分子量ポリアミドポリマーの製造方法である。
【0123】
方法の態様4は、ポリアミドポリマー溶融体を二軸押出機内において600mmHgの真空度乃至725mmHgの真空度の範囲の真空下で溶融加工する、上記の方法の態様のいずれかにしたがう精密相対粘度及び低いゲル含量を有する高分子量ポリアミドポリマーの製造方法である。
【0124】
方法の態様5は、ポリアミドポリマー溶融体を二軸押出機内において650mmHgの真空度乃至725mmHgの真空度の範囲の真空下で溶融加工する、上記の方法の態様のいずれかにしたがう精密相対粘度及び低いゲル含量を有する高分子量ポリアミドポリマーの製造方法である。
【0125】
方法の態様6は、ポリアミドポリマー溶融体を二軸押出機内において60秒間未満の押出機内における滞留時間の間溶融加工する、上記の方法の態様のいずれかにしたがう精密相対粘度及び低いゲル含量を有する高分子量ポリアミドポリマーの製造方法である。
【0126】
方法の態様7は、ポリアミドポリマー溶融体を二軸押出機内において30秒間未満の押出機内における滞留時間の間溶融加工する、上記の方法の態様のいずれかにしたがう精密相対粘度及び低いゲル含量を有する高分子量ポリアミドポリマーの製造方法である。
【0127】
方法の態様8は、ポリアミドポリマー溶融体を二軸押出機内において20秒間未満の押出機内における滞留時間の間溶融加工する、上記の方法の態様のいずれかにしたがう精密相対粘度及び低いゲル含量を有する高分子量ポリアミドポリマーの製造方法である。
【0128】
方法の態様9は、ポリアミドポリマー溶融体を二軸押出機内において10秒間~60秒間の押出機内における滞留時間の間溶融加工する、上記の方法の態様のいずれかにしたがう精密相対粘度及び低いゲル含量を有する高分子量ポリアミドポリマーの製造方法である。
【0129】
方法の態様10は、第2のポリマー溶融体を滞留時間保持容器に供給し、第2のポリマー溶融体を滞留時間保持容器内で溶融加工して、第2のポリアミドポリマーの第2の相対粘度よりも高い第3の相対粘度を有する第3のポリアミドポリマーを含む第3のポリアミドポリマー溶融体を与えることを含み、第3のポリアミドポリマーは、(i)濃度90%のギ酸溶液中で測定して、1.25以下のRV標準偏差を有する50より高い精密相対粘度;又は(ii)25℃において90%のギ酸溶液中で10ミクロンより大きい不溶分のppmによって求めて50ppm未満のゲル含量パラメーター、及び50ミクロンの解像度での光学走査によって測定して2000ppm未満の平均光学欠陥レベル;のいずれかを有することを特徴とする、上記の方法の態様のいずれかにしたがう精密相対粘度及び低いゲル含量を有する高分子量ポリアミドポリマーの製造方法である。
【0130】
方法の態様11は、ポリアミドポリマー溶融体を滞留時間保持容器内において280℃~350℃の範囲の温度で溶融加工する、方法の態様10にしたがう精密相対粘度及び低いゲル含量を有する高分子量ポリアミドポリマーの製造方法である。
【0131】
方法の態様12は、ポリアミドポリマー溶融体を滞留時間保持容器内において285℃~305℃の範囲の温度で溶融加工する、方法の態様10にしたがう精密相対粘度及び低いゲル含量を有する高分子量ポリアミドポリマーの製造方法である。
【0132】
方法の態様13は、ポリアミドポリマー溶融体を滞留時間保持容器内において30秒間~5分間の滞留時間保持容器内での滞留時間の間溶融加工する、方法の態様10、11、又は12にしたがう精密相対粘度及び低いゲル含量を有する高分子量ポリアミドポリマーの製造方法である。
【0133】
方法の態様14は、ポリアミドポリマー溶融体を滞留時間保持容器内において少なくとも1分間の滞留時間保持容器内での滞留時間の間溶融加工する、方法の態様10、11、12、又は13にしたがう精密相対粘度及び低いゲル含量を有する高分子量ポリアミドポリマーの製造方法である。
【0134】
方法の態様15は、ポリアミドポリマー溶融体を滞留時間保持容器内において1.5~3分間の滞留時間保持容器内での滞留時間の間溶融加工する、方法の態様10、11、12、13、又は14にしたがう精密相対粘度及び低いゲル含量を有する高分子量ポリアミドポリマーの製造方法である。
【0135】
方法の態様1~15のいずれかから回収される生成物のポリアミド生成物は、ポリアミドポリマーの態様1~24に関連して上記に示した特徴及び組合せのいずれか又は全部を有することができる。
【0136】
本発明を詳細に記載したが、発明の精神及び範囲内の修正は当業者に容易に明らかになるであろう。かかる修正もまた、本発明の一部とみなすべきである。上記の議論、当該技術における関連する知識、並びに関連技術及び幾つかの態様の詳細な説明に関連して上記で議論した参照文献(これらの開示事項は全て参照として本明細書中に包含する)を考慮すると、更なる記載は不要であると考えられる。更に、本発明の複数の形態及び種々の態様の複数の部分を、完全か又は部分的に結合又は交換することができることが上記の議論から理解される。更に、当業者であれば、上記の記載は例示のみの目的であり、本発明を限定することは意図しないことを認識するであろう。
本発明は以下の実施態様を含む。
(1)濃度90%のギ酸溶液中で測定して50より高い精密相対粘度を有することを特徴とし、精密相対粘度は1.25以下のRV標準偏差を有する高分子量ポリアミドポリマー。
(2)ポリマーがナイロン6,6ポリマーである、(1)に記載のポリアミドポリマー。
(3)ポリマーがナイロン6ポリマーである、(1)に記載のポリアミドポリマー。
(4)ポリマーがナイロン6,6とナイロン6のランダムコポリマーである、(1)に記載のポリアミドポリマー。
(5)相対粘度が、濃度90%のギ酸溶液中で測定して70より高い、(1)に記載のポリアミドポリマー。
(6)相対粘度が、濃度90%のギ酸溶液中で測定して90より高い、(1)に記載のポリアミドポリマー。
(7)相対粘度が、濃度90%のギ酸溶液中で測定して50~200の範囲である、(1)に記載のポリアミドポリマー。
(8)相対粘度が、濃度90%のギ酸溶液中で測定して75~100の範囲である、(1)に記載のポリアミドポリマー。
(9)相対粘度が、濃度90%のギ酸溶液中で測定して80~97.5の範囲である、(1)に記載のポリアミドポリマー。
(10)精密相対粘度が1.0未満のRV標準偏差を有する、(1)に記載のポリアミドポリマー。
(11)精密相対粘度が0.9未満のRV標準偏差を有する、(1)に記載のポリアミドポリマー。
(12)精密相対粘度が0.5~1.25のRV標準偏差を有する、(1)に記載のポリアミドポリマー。
(13)次の特性:9.0g/dより高いテナシティー;18%より大きい伸び;及び20ポンドボビンあたり2未満の破断フィラメント;を有するマルチフィラメントヤーンに成形されている、(2)に記載のナイロン6,6ポリマー。
(14)次の特性:9.0g/dより高いテナシティー;18%より大きい伸び;及び20ポンドボビンあたり1未満の破断フィラメント;を有するマルチフィラメントヤーンに成形されている、(2)に記載のナイロン6,6ポリマー。
(15)ヤーンが、タイヤ、エアバッグ、シートベルト、及び工業用布帛の1以上の中に導入されている、(14)に記載のナイロン6,6マルチフィラメントヤーン。
(16)濃度90%のギ酸溶液中で測定して50より高い相対粘度;
25℃において90%のギ酸中で10ミクロンより大きい不溶分のppmによって求めて50ppm未満のゲル含量パラメーター;及び
ペレットの光学走査によって測定して2,000ppm未満の平均光学欠陥レベル;
を有することを特徴とする高分子量ポリアミドポリマー。
(17)ポリマーがナイロン6,6ポリマーである、(16)に記載のポリアミドポリマー。
(18)更に、ナイロン6,6ポリマーが25℃において90%のギ酸中で10ミクロンより大きい不溶分のppmによって求めて40ppm未満のゲル含量パラメーターを示す、(17)に記載のポリアミドポリマー。
(19)更に、ナイロン6,6ポリマーが25℃において90%のギ酸中で10ミクロンより大きい不溶分のppmによって求めて25ppm未満のゲル含量パラメーターを示す、(17)に記載のポリアミドポリマー。
(20)更に、ナイロン6,6ポリマーが25℃において90%のギ酸中で10ミクロンより大きい不溶分のppmによって求めて1ppm乃至10ppm未満のゲル含量パラメーターを示す、(17)に記載のポリアミドポリマー。
(21)更に、ナイロン6,6ポリマーが25℃において90%のギ酸中で10ミクロンより大きい不溶分のppmによって求めて10ppm未満のゲル含量パラメーターを示す、(17)に記載のポリアミドポリマー。
(22)更に、ナイロン6,6ポリマーが50ミクロンの解像度での走査によって求めて1000ppm以下の平均光学欠陥レベルを示す、(17)に記載のポリアミドポリマー。
(23)更に、ナイロン6,6ポリマーが500以下の平均光学欠陥レベルを示す、(17)に記載のポリアミドポリマー。
(24)濃度90%のギ酸溶液中で測定して50より高い相対粘度;及び
25℃において90%のギ酸中で10ミクロンより大きい不溶分のppmによって求めて50ppm未満のゲル含量パラメーター;
を有することを特徴とする高分子量ポリアミドポリマー。
(25)濃度90%のギ酸溶液中で測定して50より高い精密相対粘度(精密相対粘度は、1.25以下のRV標準偏差を有する);
25℃において90%のギ酸中で10ミクロンより大きい不溶分のppmによって求めて50ppm未満のゲル含量パラメーター;及び
ペレットの光学走査によって測定して2,000ppm未満の平均光学欠陥レベル;
を有することを特徴とする高分子量ポリアミドポリマー。
(26)(a)第1の相対粘度を有する第1のポリアミドポリマーを含む第1のポリアミドポリマー溶融体を与え;
(b)第1のポリアミドポリマー溶融体を二軸押出機に供給し;
(c)第1のポリアミドポリマー溶融体を、二軸押出機内において真空下で溶融加工してそれから水蒸気及び他の揮発性物質を除去し、それによってポリマー溶融体の分子量を増加させて、第2の相対粘度を有する第2のポリアミドポリマーを含む第2のポリアミドポリマー溶融体を与え(第2のポリアミドポリマーは、(i)濃度90%のギ酸溶液中で測定して、1.25以下のRV標準偏差を有する50より高い精密相対粘度;又は(ii)25℃において90%のギ酸溶液中で10ミクロンより大きい不溶分のppmによって求めて50ppm未満のゲル含量パラメーター、及び50ミクロンの解像度での光学走査によって測定して2000ppm未満の平均光学欠陥レベル;のいずれかを有することを特徴とする);
(d)場合によっては、第2のポリマー溶融体を滞留時間保持容器に供給して、滞留時間保持容器内で第2のポリマー溶融体を溶融加工して、第2のポリアミドポリマーの第2の相対粘度よりも高い第3の相対粘度を有する第3のポリアミドポリマーを含む第3のポリアミドポリマー溶融体を与え(第3のポリアミドポリマーは、(i)濃度90%のギ酸溶液中で測定して、1.25以下のRV標準偏差を有する50より高い精密相対粘度;又は(ii)25℃において90%のギ酸溶液中で10ミクロンより大きい不溶分のppmによって求めて50ppm未満のゲル含量パラメーター、及び50ミクロンの解像度での光学走査によって測定して2000ppm未満の平均光学欠陥レベル;のいずれかを有することを特徴とする);そして
(e)(i)濃度90%のギ酸溶液中で測定して、1.25以下のRV標準偏差を有する50より高い精密相対粘度;又は(ii)25℃において90%のギ酸溶液中で10ミクロンより大きい不溶分のppmによって求めて50ppm未満のゲル含量パラメーター、及び50ミクロンの解像度での光学走査によって測定して2000ppm未満の平均光学欠陥レベル;のいずれかを有することを特徴とする生成物ポリアミドポリマーを回収する;
ことを含む、精密相対粘度及び低いゲル含量を有する高分子量ポリアミドポリマーの製造方法。
(27)ポリアミドポリマー溶融体を二軸押出機内において280℃~350℃の範囲の温度で溶融加工する、(26)に記載の精密相対粘度及び低いゲル含量を有する高分子量ポリアミドポリマーの製造方法。
(28)ポリアミドポリマー溶融体を二軸押出機内において285℃~305℃の範囲の温度で溶融加工する、(26)に記載の精密相対粘度及び低いゲル含量を有する高分子量ポリアミドポリマーの製造方法。
(29)ポリアミドポリマー溶融体を二軸押出機内において600mmHgの真空度乃至725mmHgの真空度の範囲の真空下で溶融加工する、(26)に記載の精密相対粘度及び低いゲル含量を有する高分子量ポリアミドポリマーの製造方法。
(30)ポリアミドポリマー溶融体を二軸押出機内において650mmHgの真空度乃至725mmHgの真空度の範囲の真空下で溶融加工する、(26)に記載の精密相対粘度及び低いゲル含量を有する高分子量ポリアミドポリマーの製造方法。
(31)ポリアミドポリマー溶融体を二軸押出機内において60秒間未満の押出機内における滞留時間の間溶融加工する、(26)に記載の精密相対粘度及び低いゲル含量を有する高分子量ポリアミドポリマーの製造方法。
(32)ポリアミドポリマー溶融体を二軸押出機内において30秒間未満の押出機内における滞留時間の間溶融加工する、(26)に記載の精密相対粘度及び低いゲル含量を有する高分子量ポリアミドポリマーの製造方法。
(33)ポリアミドポリマー溶融体を二軸押出機内において20秒間未満の押出機内における滞留時間の間溶融加工する、(26)に記載の精密相対粘度及び低いゲル含量を有する高分子量ポリアミドポリマーの製造方法。
(34)ポリアミドポリマー溶融体を二軸押出機内において10秒間~60秒間の押出機内における滞留時間の間溶融加工する、(26)に記載の精密相対粘度及び低いゲル含量を有する高分子量ポリアミドポリマーの製造方法。
(35)第2のポリマー溶融体を滞留時間保持容器に供給し、第2のポリマー溶融体を滞留時間保持容器内で溶融加工して、第2のポリアミドポリマーの第2の相対粘度よりも高い第3の相対粘度を有する第3のポリアミドポリマーを含む第3のポリアミドポリマー溶融体を与えることを含み、第3のポリアミドポリマーは、(i)濃度90%のギ酸溶液中で測定して、1.25以下のRV標準偏差を有する50より高い精密相対粘度;又は(ii)25℃において90%のギ酸溶液中で10ミクロンより大きい不溶分のppmによって求めて50ppm未満のゲル含量パラメーター、及び50ミクロンの解像度での光学走査によって測定して2000ppm未満の平均光学欠陥レベル;のいずれかを有することを特徴とする、(26)に記載の精密相対粘度及び低いゲル含量を有する高分子量ポリアミドポリマーの製造方法。
(36)ポリアミドポリマー溶融体を滞留時間保持容器内において280℃~350℃の範囲の温度で溶融加工する、(35)に記載の精密相対粘度及び低いゲル含量を有する高分子量ポリアミドポリマーの製造方法。
(37)ポリアミドポリマー溶融体を滞留時間保持容器内において285℃~305℃の範囲の温度で溶融加工する、(35)に記載の精密相対粘度及び低いゲル含量を有する高分子量ポリアミドポリマーの製造方法。
(38)ポリアミドポリマー溶融体を滞留時間保持容器内において30秒間~5分間の滞留時間保持容器内での滞留時間の間溶融加工する、(35)に記載の精密相対粘度及び低いゲル含量を有する高分子量ポリアミドポリマーの製造方法。
(39)ポリアミドポリマー溶融体を滞留時間保持容器内において少なくとも1分間の滞留時間保持容器内での滞留時間の間溶融加工する、(35)に記載の精密相対粘度及び低いゲル含量を有する高分子量ポリアミドポリマーの製造方法。
(40)ポリアミドポリマー溶融体を滞留時間保持容器内において1.5~3分間の滞留時間保持容器内での滞留時間の間溶融加工する、(35)に記載の精密相対粘度及び低いゲル含量を有する高分子量ポリアミドポリマーの製造方法。
図1
図2
図3
図4
図5