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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-07
(45)【発行日】2022-09-15
(54)【発明の名称】ゴルフクラブヘッド
(51)【国際特許分類】
   A63B 53/04 20150101AFI20220908BHJP
【FI】
A63B53/04 A
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2017228360
(22)【出願日】2017-11-09
(65)【公開番号】P2019084325
(43)【公開日】2019-06-06
【審査請求日】2020-10-29
(73)【特許権者】
【識別番号】304020052
【氏名又は名称】富澤 正
(72)【発明者】
【氏名】富澤 正
【審査官】石原 豊
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-525214(JP,A)
【文献】特開2011-173013(JP,A)
【文献】特表2008-525117(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0124433(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0266545(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0190975(US,A1)
【文献】米国特許第06299547(US,B1)
【文献】米国特許第05669829(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 53/00-53/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボールを打撃するフェース部がヘッド本体の前面の開口に装着されゴルフクラブヘッドであって、
前記フェース部の内面には、金属板により形成された弾性板が当接され、
前記弾性板は、前記ヘッド本体の内部に固定される支持部と、この支持部の一端側から一体に立ち上げられた前記フェース部の内面に当接する作用部が形成され、前記作用部から立ち上げ部分を介して前記支持部まで連続して補強用のビードが形成され、
前記フェース部に前記ボールを打撃したときの前記フェース部の弾性変形を前記弾性板の前記作用部が受けて弾性により前記フェース部とともに反発させるように構成したことを特徴とするゴルフクラブヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッド本体の前面にボールを打撃するフェース部を備えたゴルフクラブヘッドに関し、強力な打撃力により大きな飛距離が得られるゴルフクラブヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
ドライバーやスプーンなどのゴルフクラブヘッドに求められる性能としては、特に、打撃後のボールの飛距離を伸ばすことが望まれている。ボールの飛距離を伸ばすには、打球時にフェース部材が大きく弾性変形し、その撓み量が大きくなるように構成してウッドヘッドとボールとの間の反撥係数を高めればよい。これにより、打撃後のボールのスピードを高め、その飛距離を効果的に伸ばすことが可能となる。このような要求を満たすべく、従来から採用されている手段としては、特開2016-221168号公報(特許文献1)、特開2013-202143号公報(特許文献2)、及び、特開2008-36050号公報(特許文献3)に開示されているように、フェースの裏面に肉厚部と肉薄部を設けることにより飛距離を伸ばすように工夫している。また、特開2016-158915号公報(特許文献4)には、フェースの裏面を押圧するスプリング部材をヘッド本体内に設けることが開示されている。さらに、特開2015-85069号公報(特許文献5)には、中空のヘッド本体を気密状態として内部に加圧気体を注入することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-221168号公報
【文献】特開2013-202143号公報
【文献】特開2008-36050号公報
【文献】特開2016-158915号公報
【文献】特開2015-85069号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的には、特許文献1~3に示すように、フェースに肉薄部を設けることにより飛距離を伸ばすことができることから、多くの中空のゴルフクラブに採用されている。しかしながら、ボールを打撃するときに1tonを超える圧力がフェースに加えられるため、亀裂が生ずることから、肉薄部の厚さを減少させることが困難であり、このため、飛距離を伸ばすことは限界に達しているのが現状である。この課題を解消するために、特許文献4においては、フェースをコイル状のスプリング部材によって反発させるようにしたゴルフクラブヘッドが提案されているが、スプリング部材及びこれを固定するための部材の重量が加わるため、クラブヘッドの重量が増加することからバランス調整が困難となり、期待されたような飛距離を伸ばすことができない問題がある。また、特許文献5に開示される中空のゴルフクラブヘッドは、ヘッド本体に注入した気体によって反発力を得ようとしているが、ヘッド本体を完全な気密状態とすることは困難であり、時間とともに内部に加圧気体が漏洩するため、初期はある程度飛距離を伸ばせたとしても、後日には飛距離が低下する問題があった。
【0005】
本発明の課題は、ボールを打撃するフェース部の内面に当接させた弾性板により、飛距離を増大させることができ、しかも、クラブヘッドの重量を抑制することが可能なゴルフクラブヘッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明によるゴルフクラブヘッドは、ボールを打撃するフェース部がヘッド本体の前面の開口に装着されゴルフクラブヘッドであって、前記フェース部の内面には、金属板により形成された弾性板が当接され、前記弾性板は、前記ヘッド本体の内部に固定される支持部と、この支持部の一端側から一体に立ち上げられた前記フェース部の内面に当接する作用部が形成され、前記作用部から立ち上げ部分を介して前記支持部まで連続して補強用のビードが形成され、前記フェース部に前記ボールを打撃したときの前記フェース部の弾性変形を前記弾性板の前記作用部が受けて弾性により前記フェース部とともに反発させるように構成したことを要旨としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明のゴルフクラブヘッドによれば、ヘッド本体の前面の開口に装着されたボールを打撃するフェース部の内面に、金属板により形成された弾性板を当接しているので、ボールを打撃することによりフェース部が弾性変形して弾性板を押圧すると、弾性板の弾性によりボールを反発させることから、フェース部の弾性反発力に弾性板の弾性反発力が加えられて飛距離を増大させることができる。さらに、弾性板の作用部から支持部にわたり連続して長手方向に長細いビードを形成することによって、弾性板の強度が平坦な板厚の金属板に対して4倍以上に補強されるので、弾性板の板厚を数分の1に薄くすることが可能なことから、弾性板の重量を軽減することができるもで、弾性板を設けてもクラブヘッド自体の重量を最小限に抑制することが可能になる。また、弾性板に形成されるビードの溝の幅、深さ及び長さや位置を適宜に設定することによって最適な弾性力を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明によるゴルフクラブヘッドを示す正面図である。
図2】本発明によるゴルフクラブヘッドを示す斜視図である。
図3】本発明によるゴルフクラブヘッドを示す平面図である。
図4】弾性板の一部を示す平面図である。
図5】本発明によるゴルフクラブヘッドを示す平面図である。
図6】ゴルフクラブヘッドのボール打撃時の状態を示す断面図である。
図7】ゴルフクラブヘッドのボール打撃時の状態を示す要部平面図である。
図8】弾性板の変形例を側面図である。
図9】弾性板の第2の実施例を示す正面図である。
図10】弾性板の第3の実施例を示す正面図である。
図11】弾性板の他の変形例を示す斜視図である。
図12】(A)~(D)は、さらに他の変形例を示す要部平面図である。
図13】弾性板の第4の実施例を示す断面図である。
図14】弾性板の第4の実施例におけるゴルフクラブヘッドのボール打撃時の状態を示す断面図である。
図15】本発明によるゴルフクラブヘッドとしてアイアンクラブの実施例を示す正面図である。
図16図15に示すアイアンクラブの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明によるゴルフクラブヘッドは、ボールを打撃するフェース部がヘッド本体の前面 の開口に装着され、前記フェース部の内面には、金属板により形成された弾性板が当接され、前記弾性板は、前記ヘッド本体の内部に固定される支持部と、この支持部の一端側か ら一体に立ち上げられた前記フェース部の内面に当接する作用部が形成され、前記作用部から立ち上げ部分を介して前記支持部まで連続して補強用のビードが形成され、 前記フェース部に前記ボールを打撃したときの前記フェース部の弾性変形を前記弾性板の前記作用部が受けて弾性により前記フェース部とともに反発させるように構成している。
【0018】
以下、図面に基づいて本発明の好適な実施例について説明する。図1から図3は、本発明によるゴルフクラブヘッドを示している。図示のゴルフクラブヘッドは、ウッド型を例示している。ヘッド本体1は、二点鎖線で示すように、上面をなすクラウン部1aと、下面をなすソール部1bによって構成されている。さらに、ヘッド本体1には、ボールを打撃するフェース部2が前面の開口に装着されている。また、ヘッド本体1の一端には、図示しないシャフトを装着するための筒状のネック部1cが形成されている。
【0019】
ヘッド本体1のフェース部2の内面には、金属板により形成された弾性板3の作用部3aを当接させている。弾性板3は、ヘッド本体1の内部に固定される支持部3bと、フェース部2の内面に当接する作用部3aが形成され、作用部3aから支持部3bに連続して長手方向に補強用のビードBDが形成されている。
【0020】
弾性板3は、チタン合金、ステンレス、ばね鋼、りん青銅などの弾性を有する金属板によって形成されている。ゴルフクラブヘッド1は、ヘッド本体1自体の重量を概ね200gにしているため、弾性板3としては比較的軽量で強度があり、しかも所定の弾性を有する金属板を選択することが望ましい。このような条件を満たすものとしては、フェース部2にも使用されているα-β型チタン合金、β型チタン合金が好適である。その他、弾性板3には補強用のビードを形成することによって金属板の板厚を薄くできるので、比重の大きいステンレス、ばね鋼、りん青銅を使用してもチタン合金と同様に軽量化が可能である。これらの金属板は、上述した素材によって異なるが、0.1mm~1.0mmの薄い板厚としている。このため、弾性板3の重量は3g~6g程度と計量のため、ゴルフクラブヘッド1として求められる200g前後の範囲の重量にすることが可能となる。
【0021】
弾性板3は、図1から図3に示すように、支持部3bの一端側から3本の作用部3aが所定の間隔を設けて一体に立ち上げている。支持部3bからの立ち上げ角度は、80度乃至120度としている。また、支持部3bと3本の作用部3aの立ち上げ部分は、図5に示すように、所定の半径で円弧状に形成している。さらに、3本の作用部3a全体の横幅は、フェース部2のスイートスポットの幅と同じかやや狭くすることが望ましい。そして、各々の作用部3aには、長手方向に補強用のビードBDが形成されている。このビードBDは、作用部3aから支持部3bまで連続して形成されている。弾性板3に形成されているビードBDは、図4に示すように、開口側の両側に鍔部3cが形成されている。
【0022】
ビードBDとは、金属板にプレス加工によって断面形状を半円状等の細長い蒲鉾状に隆起させた突起であり、凹側はハーフパイプのように形成される。このビードは、板のうちにプレス加工し、その後に曲げるようにすることが望ましい。このビード加工を施すことによって、金属板の折り曲げ強度、屈曲強度を平板に対して4倍以上に高めることができ、しかも、作用部3aの弾性変形量を変化することができる。そして、3本の作用部3aに形成されたビードBDは、作用部3aの幅方向の中央に幅W1のハーフパイ状の溝が形成され、その両側に幅W2の鍔部3cが形成されている。また、ビードBDの溝の深さD、及び、幅W1を変化することにより、作用部3aの弾性変形量を適宜に設定することができる。このビードBDは、作用部3aから立ち上げ部分を介して支持部3bまで連続して形成されている。ビードBDを立ち上げ部分に形成していることから、立ち上げ部分における屈曲強度が高められる。さらに、ビードBDは支持部3bにも形成されていて、支持部3bの強度を高めている。
【0023】
弾性板3の支持部3bは、図2図3に示すように板状に形成されていて、ヘッド本体1のソール部1bの内面に接合するようにしている。支持部3bとソール部1bの内面とは、図示のようなリベット32で固着するか、ねじ、溶接或いは接着により固定される。この固定強度は、フェース部2にボールを打撃した押圧力に耐えるように設定される。
【0024】
ソール部1bの内面に固定された弾性板3は、図5に示すように、作用部3aの先端側をフェース部2の中央部分のスイートスポットに当接している。3本の作用部3aのうち中央の作用部3aの先端側は、スイートスポットの中央に当接させ、両側の作用部3aの先端側は、スイートスポットの両側に当接させている。また、フェース部2の内面には、作用部3aに形成された鍔部3cの平面を当接させることが望ましく、これによりフェース部2の内面を損傷させることが防止される。また、フェース部2の内面には、作用部3aの先端側が比較的広く当接させるため、図5に示すように、作用部3aの先端側をフェース部2の内面形状に沿って僅かに湾曲させている。さらに、支持部3bから立ち上げた作用部3aの基端は、ビードBDを連続して形成していること、及び、作用部3aが弾性変形したときの屈曲応力に耐えるように、比較的大きな円弧で曲げることが望ましい。なお、支持部3bとソール部1bの内面とは、リベット32等で固着することにより強度としては十分に耐えるようにしているが、ヘッド本体1を低重心化するために、ソール部1bの内面にウエイト4を設置する場合には、図5に二点鎖線で示すように、ウエイト4の端面に作用部3aの端部を当接させることが望ましい。なお、3本の作用部3aは、1枚の支持部3bの一端側から立ち上げているが、3本の作用部3aに個別に支持部を設け、この支持部の一端側から立ち上げるようにしても良い。
【0025】
次に、弾性板3の作用について説明する。常時は、図5に示すように、フェース部2の内面に弾性板3の作用部3aが当接している。そして、図6に示すように、ボール5をフェース部2の中央部分(スイートスポット)に打撃するとき、フェース部2には1ton以下圧力が印加され、フェース部2の中央部分が撓んで屈曲する。この撓み寸法Lは、スイングスピード(ヘッドスピード)によって異なるが、一般的なウッド型ゴルフクラブヘッドにおいては、概ね0.1mm~1.0mmの範囲である。そして、ボール5の打撃によって、フェース部2のスイートスポットの中央部分が弾性変形して撓むときに、同時に弾性板3の作用部3aが弾性変形してヘッド本体1のテール側に撓む。次の瞬間、作用部3aは押圧された直後に復帰することから、フェース部2の方向に大きな弾力によって反発する。この反発力はフェース部2に伝達し、フェース部2が図5に示すような状態に復帰する弾力に作用部3aの大きな反発力が加えられて、ボール5が大きな反発力によって打撃される。このように、ボール5がスイートスポットの中央部分によって打撃される場合は、図7に示すように、フェース部2のスイートスポットの中央部分が弾性変形して撓み、主として中央部分に対応した中央の作用部3aが弾性変形して反発する。一方両側の作用部3aは、フェース部2の撓みに応じて弾性変形する。このため、フェース部2の自由な弾性変形を妨げることが防止される。また、ボール5がスイートスポットを外れたオフセンターヒットの場合には、ボール5の打撃位置に対応した左右のいずれか一方の作用部3aが作用してボール5を反発させるので、オフセンターヒットであっても飛距離を増大させることができる。
【0026】
ボール5を打撃するとき、ボール5とフェース部2との接触時間は、弾性板3の反発力によって短縮され、例えフェース部2の弾性率が低い場合であっても、接触時間は全米ゴルフ協会(United States Golf Association)(USGA)によって定められた257μsの範囲内になる。このように、フェース部2の反発力に加えて弾性板3の反発力によってボール5を打撃するので、ボール5は強力な反発力によって大きな初速を得ながら飛距離を大幅に伸ばすことができる。
【0027】
図8は、弾性板の変形例を示し、弾性板13の支持部13bの一端側から作用部13aを大きな円弧状に屈曲形成している。図1図3に示した作用部13aは、支持部13bの一端側から比較的小さな円弧により立ち上げているが、作用部13aを数千回以上弾性変形させた場合には立ち上がり部分のストレスが大きくなり、金属疲労を生ずる可能性がある。図8に示す例のように、作用部13aを大きな円弧状に形成することにより、局部的なストレスが解消するので、弾性板13を長寿命にすることが可能となる。
【0028】
図9は、弾性板の第2の実施例を示し、弾性板23の作用部23aは1枚の金属板によって形成し、ビードBDを3本形成している。この支持部23bは、前述した実施例と同様に、支持部23bの一端側から所定の円弧を形成して立ち上げている。なお、支持部23bの構成は前述した実施例と同様であり、4本のビードBDは、支持部23bまで連続して形成されている。このように、作用部23aが1枚の金属板であっても、複数本のビードBDを形成することにより、必要な強度を得ること可能であり、前述した実施例と同様に、フェース部2の反発力に加えて弾性板23の反発力によってボール5を打撃することができる。なお、作用部23aに形成するビードBDは、幅や深さ或いは間隔を変化させ、当接するフェース部2の位置に応じて弾性変形量が最適になるように設定している。また、図9に示すように、作用部23aの上端を湾曲させて高さを異ならせても良い。このように、作用部23aは1枚の金属板によって形成した場合、例え、ボール5がスイートスポットを外れたオフセンターヒットの場合であっても、作用部23aが捻れによる弾性変形が生じて反発するので、オフセンターヒットであっても飛距離を増大させることができる。
【0029】
図10は、弾性板の第3の実施例を示し、弾性板33をヘッド本体1のクラウン部1aとソール部1bに分割して設けた例である。ソール部1bに設けられた下セットの弾性板33は、図1に示した弾性板3のうち、中央の作用部3aを除いた構成であり、左右に離間して2本の作用部33aが形成され、これらの作用部33aは支持部33bから立ち上げられている。ソール部1bの弾性板34は、前述した実施例と同様に固定されている。一方、クラウン部1aに設けられた上セットの弾性板34は、1本の作用部34aは支持部34bから立ち上げられ、支持部34bはクラウン部1aの内面に固定されている。これら、弾性板33、34には、前述した実施例と同様に、ビードBDが形成され、各々の作用部33a、34aの鍔33b、34bが形成されている。そして、クラウン部1aの弾性板34の作用部34aは、ソール部1bに設けられた弾性板33の間に両側に隙間を設けて配置される。クラウン部1aの作用部34aの先端側は、フェース部2のスイートスポットの中央部分に当接させ、ソール部1bの弾性板33の作用部34aは、フェース部2のスイートスポットの側方に当接させている。このように、各々のセットの作用部33a、34aをフェース部2の内面に当接させると、各々のセットの作用部33a、34aの弾性変形方向が異なるので、フェース部2の撓みを均一にすることが可能となり、ボール5の打撃方向を安定にできる。
【0030】
図11は、弾性板の他の変形例を示している。前述した実施例では、ビードBDをプレス加工によって断面形状を半円状等の帯状に隆起させていたが、図11に示す弾性板3のビードBDは、断面略三角形の山形に形成している。このビードBDは、図2に示した弾性板3と同様に、作用部3aから立ち上げ部分を介して支持部3bまで連続して形成している。ビードBDは、作用部3aの強度を高めるとともに、立ち上げ部分における屈曲強度を高めるために形成しているが、支持部3bに必要な強度が得られるならば、図11に示すように、支持部3bの一端の屈曲した立ち上げ部分のみに形成し、板金加工におけるリブの機能を与えるようにしても良い。
【0031】
図12(A)~(D)は、弾性板3の作用部3aのさらに他の変形例を示している。図12(A)に示す作用部3aは、断面形状を半円状のハーフパイプ状に形成してビードBDとし、鍔部3cを省略している。図12(A)は、断面形状を略三角形の山形に形成してビードBDとしている。これら作用部3aは、ビードBDの開口側をフェース部2の内面に当接させている。この例においては、開口側端面の角を滑らかにすることにより、フェース部2の内面を損傷しないようにしている。図12(C)は、断面形状を半円状のハーフパイプ状に形成してビードBDとし、図12(D)は、断面形状を矩形状に形成してビードBDとした例であり、いずれも鍔部3cを省略している。これらは、ビードBD開口側とは反対の頂部側をフェース部2の内面に当接させることによって、フェース部2の内面を損傷しないようにしている。このように、本発明においては、少なくとも作用部3aの長手方向を例えばハーフパイプ状に形成することによって強度を高めるようにしたものもビードとして定義している。
【0032】
図13は、弾性板の第4の実施例を示している。弾性板40は、支持部40aをヘッド本体1の上下のラウン部1aとソール部1bの内面に固定され、この上下の支持部40aの間に作用部40bが形成されている。弾性板40の作用部40bは、中央部がフェース部2のスイートスポットに対応させて隆起させ、その中央部の頂部を内面に当接させている。この弾性板40は、図1図3に示した弾性板3の実施例と同様に、作用部40bが3本形成され、上下の支持部40aと3本の作用部40bの立ち上げ部分は、所定の半径で円弧状に形成している。さらに、3本の作用部40b全体の横幅は、フェース部2のスイートスポットの幅と同じかやや狭くすることは前述した実施例と同様である。そして、各々の作用部40bには、長手方向に補強用のビードBDが形成されている。このビードBDは、作用部3aから支持部3bまで連続して形成されている。さらに、各々のビードBDの開口側の両側には鍔部が形成されている。
【0033】
このように構成した弾性板40は、常時は、図13に示すように、フェース部2の内面に弾性板40の作用部3aの頂部が当接している。そして、図14に示すように、ボール5をフェース部2の中央部分(スイートスポット)に打撃すると、中央部分が撓んで屈曲する。そして、ボール5の打撃によって、フェース部2のスイートスポットの中央部分が弾性変形して撓むときに、同時に弾性板40の作用部40bが弾性変形してヘッド本体1のテール側に撓む。次の瞬間、作用部40bは押圧された直後に復帰することから、フェース部2の方向に大きな弾力によって反発する。この反発力はフェース部2に伝達し、フェース部2が図13に示すような状態に復帰する弾力に加えて作用部40bの大きな反発力が加えられて、ボール5が大きな反発力によって打撃される。
【0034】
また、ボール5の打撃によって、弾性板40の作用部40bが撓み量Lの寸法で弾性変形して矢示で示すヘッド本体1のテール側に撓むことにより、上下の支持部40aが矢示のように、互いに引き寄せられるように作用する。通常のウッド型のヘッド本体1においては、ボール5を打撃するインパクトのとき、フェース部2が撓んでヘッド本体1内の容積が減少することから、上下のクラウン部1aとソール部1bが外方に膨出してヘッド本体1内の容積が減少する。この膨出によってエネルギーが分散することから、反発力が減少して所定のボール5の飛距離を減少させる問題がある。これに対して、この第4の実施例によれば、弾性板40によってクラウン部1aとソール部1bの膨出を阻止するので、フェース部2本来の反発力を得ることが可能となる。フェース部2本来の反発力に加えて、弾性板40の作用部40bの反発力により、ボール5の飛距離を増大することが可能になる。
【0035】
なお、図示しないが、作用部40bを3本形成し、フェース部2のスイートスポットの中心に中央の作用部40bを当接し、両側の作用部40bをスイートスポットの中心の両側に当接させると、ボール5がスイートスポットの中央部分によって打撃される場合は、フェース部2のスイートスポットの中央部分が弾性変形して撓み、主として中央部分に対応した中央の作用部40bが弾性変形して反発し、両側の作用部40bは、フェース部2の撓みに応じて弾性変形する。また、ボール5がスイートスポットを外れたオフセンターヒットの場合には、ボール5の打撃位置に対応した左右のいずれか一方の作用部40bが作用してボール5を反発させるので、オフセンターヒットであっても飛距離を増大させることができることは、前述した実施例と同様である。
【0036】
図15図16は、本発明によるゴルフクラブヘッドとしてアイアンクラブに適用した実施例を示している。図15に示すアイアン型ゴルフクラブヘッド(以下、「アイアンヘッド」と略記する。)50は一般的な構成であり、その詳細な説明は省略するが、本発明にとって必要な構成について概要を説明する。
【0037】
アイアンヘッド50は、ヘッド本体51と、シャフトを差し込み固定するホーゼル部52から構成される。ヘッド本体51は、前側にフェース部材53が固着されている。フェース部材53及びヘッド本体51は、いずれも金属材料で構成される。フェース部材53には、ヘッド本体51よりも比重が小さい金属材料が用いられる。フェース部材53に使用される金属材料としては、例えばチタン、チタン合金、アルミニウム合金、マレージング鋼又はアモルファス合金等が好適であり、とりわけ低比重かつ高強度のチタン合金が好ましい。また、ヘッド本体51には、例えばSUS630、SUS255又はSUS450等のようなステンレス鋼、マレージング鋼、Ni系合金又は軟鉄が好適であり、とりわけステンレス鋼、軟鉄又はマレージング鋼が好ましい。
【0038】
フェース部材51は、フェースラインFLなどを除いて実質的に一定の厚さtfで形成されている。なお、フェース部材53は、周辺部が薄くかつ中央部が厚く形成されても良い。フェース部材53の厚さtfは、使用する材料に応じて適宜定めることができるため特に限定はされないが、小さすぎると耐久性が悪化する傾向があり、大きすぎると打球時に十分な撓みが得られず飛距離が低下する傾向がある。このため、厚さtfは、1.0mm~4.0mmが望ましい。
【0039】
ヘッド本体51には、開口部の回りの前側にフェース受け部54が設けられている。フェース受け部54は、フェース部材53の外周面を支持する内周面部54aと、フェース部材53の周縁部を支持する受け面54bからなる断面略ステップ状に形成されている。そして、フェース部材53は、ヘッド本体51のフェース受け部54に嵌め込まれて、例えば接着、圧入、かしめ、溶接又はネジ止め等の接合手段により一体に固着される。
【0040】
フェース部材53は、中央部に円形状の中央厚肉部53aと、この中央厚肉部53aの外縁を囲むように形成された環状溝53bが形成されている。中央厚肉部53aは、スイートスポット点Sと中心が一致させることが望ましい。また、この実施例においては、中央厚肉部53aの厚さt5は、フェース部材53の厚さと同じにしているが、ボールが中央厚肉部53aに打球したときに生ずる撓み方による打球の打ち出し初速によって増減させても良い。
【0041】
中央厚肉部53aの外縁に形成された環状溝53bは、中央厚肉部53aの周縁から環状溝53bの底部に向けて傾斜させた斜面53cが形成され、さらに環状溝53bの外縁側はフェース部材53のフェース面に対してほぼ垂直な壁面53eが形成され、これにより、断面形状を略V字状に形成している。また、環状溝53bの底部とフェース面との間の厚さt6は0.1mm~0.9mmとしている。
【0042】
さらに、斜面53cも、中央厚肉部53aの周縁から環状溝53bの底部に向けて厚さを滑らかに減少させている。これにより、中央厚肉部53aと環状溝53bとのとの間で大きな剛性段差が生じるのを防止し、打球時の応力集中による耐久性悪化を効果的に防止している。なお、斜面53cを断面形状において凹面状に形成しても良い。また、環状溝53bの外縁側をフェース部53に対してほぼ垂直な壁面53eに形成することにより、厚肉のフェース部53における剛性によって環状溝53bを重点的に撓ませ、この結果、ヘッドの反発性能をさらに向上させて、飛距離を増大させることに寄与する。
【0043】
以上のように構成したアイアンヘッド50には、前述した実施例と実質的に同様の弾性板60が設けられている。弾性板60は、ヘッド本体51のソールの内面であるキャビティ内にカシメ、溶接、ねじ等の適宜の固定手段によって固定される支持部60bと、この支持部60bの一端から屈曲形成した作用部60aが形成されている。作用部60aは、アイアンヘッド50が比較的小型なことから1本としている。そして、作用部60aの先端側は、フェース部材53の中央部に形成された円形状の中央厚肉部53aの中央に当接させている。また、アイアンヘッド50に設けられる弾性板60も作用部60aから支持部60bに連続して長手方向に補強用のビードBDが形成されている。
【0044】
アイアンヘッド50のフェース部材53のボールを打撃すると、中央部に形成された円形状の中央厚肉部53aが押圧されて0.1mm~0.5mm程度弾性変形するとともに弾性板60の作用部60aの先端側を押圧して弾性変形させる。その直後、フェース部材53の反発力に弾性板60の作用部60aの反発力が加えられ、ボールが大きな反発力によって打撃される。なお、上述したように、フェース部材53には、中央厚肉部53aの外縁には環状溝53bが形成されていることから、ボールを中央厚肉部53aに打撃したとき、周囲の環状溝53bによって撓み量が大きくなるので、ボールをホールドするために大きな反発力を得ることが可能となる。ところが、環状溝53bの底部は肉薄なことから、ボールを打撃した後に元に位置まで復帰しないことがある。ところが、中央部に形成された中央厚肉部53aの内面に弾性板60の作用部60aの先端側を当接することにより、作用部60aの反発力によって中央厚肉部53a復帰方向に押圧するので、常に原点位置までリセットさせることが可能となる。
【0045】
以上、本発明を実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形可能である。例えば、上述した実施例においては、弾性板の作用部の長手方向をゴルフクラブの垂直方向としているが、水平方向または傾斜方向に設けても良い。また、弾性板の作用部を複数とした場合、ビードの幅や深さを個々に変えてもよく、さらに、板厚を変えるようにしても良い。
【符号の説明】
【0046】
1 ヘッド本体
1a クラウン部
1b ソール部
2 フェース部
3 弾性板
3a 作用部
3b 支持部
3c 鍔部
5 ボール
BD ビード
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