(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-07
(45)【発行日】2022-09-15
(54)【発明の名称】成形体の製造方法、成形用金型及び成形体の製造装置
(51)【国際特許分類】
B29C 49/50 20060101AFI20220908BHJP
B29C 49/70 20060101ALI20220908BHJP
B29C 33/10 20060101ALI20220908BHJP
B29C 49/72 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
B29C49/50
B29C49/70
B29C33/10
B29C49/72
(21)【出願番号】P 2018201484
(22)【出願日】2018-10-26
【審査請求日】2021-08-26
(31)【優先権主張番号】P 2017237467
(32)【優先日】2017-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126398
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】島田 憲吾
(72)【発明者】
【氏名】丹治 忠敏
(72)【発明者】
【氏名】谷 奈央人
【審査官】神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-276125(JP,A)
【文献】特開2002-292642(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00-33/76
B29C 49/00-49/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形体の成形を行う金型を備え、金型内で成形体の成形を行うとともに、前記成形体の周囲に形成されるバリを前記成形体から分断する成形体の製造装置であって、
前記金型は、成形体の周囲に形成されるバリの少なくとも一部に対してエアブローを行って冷却するエアー吹き出し機構と、冷却されたバリに対して突き出され、前記バリを成形体から分断する突き出し部材を備える成形体の
製造装置と、
その周囲に配置される成形体取り出し機構、バリ掴み取りロボット、バリ搬送コンベア、加工機、成形体搬出コンベアとから構成される成形ライン。
【請求項2】
前記成形体取り出し機構は先端に成形体を吸着保持するヘッド部を有する多関節アームを備え、当該多関節アームが回転することで、成形体が加工機、成形体搬出コンベアへと順次移送されることを特徴とする
請求項1記載の成形ライン。
【請求項3】
前記成形体の製造装置の成形用金型のうち、一方の金型の捨て袋部分の成形位置に係止具が設置されていることを特徴とする
請求項1または2記載の成形ライン。
【請求項4】
前記係止具は、キャップボルトであることを特徴とする請求項3記載の成形ライン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形体の製造方法、成形用金型及び成形体の製造装置に関するものであり、特に、金型内でバリ取りを行うようにした新規な成形体の製造方法、成形用金型及び成形体の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂材料を成形した成形品として、例えば自動車のインストルメントパネル内に取り付けられる各種空調ダクトが知られている。これら空調ダクトは、押出機のダイから押し出されるパリソンをブロー成形することにより容易に製造することができる。
【0003】
ブロー成形を行った成形品(ダクト)においては、型締めされた金型の周囲にバリが形成され、これを除去することが必須の工程となる。一般に、ブロー成形後のバリ取りは、プレス機を用いて行うことが多く、成形品の外形形状に対応した型を用いてバリを打ち抜くことにより、金型周囲のバリが一括して除去される。
【0004】
例えば特許文献1には、金型内でブロー成形を行うブロー成形方法及びブロー成形装置が開示されており、バリを積極的に金型と接触させることで冷却効率を向上し、バリの冷却効率を向上することが記載されている。ブロー成形においては、バリが十分に冷却するまで待ってからプレス機によるバリ打ち抜きを行っており、時間的な損失が大きく、生産性を損なう要因となっている。特許文献1記載の技術によれば、ブロー成形からバリ取りまでの一連の工程に要する時間が短時間で済み、生産性が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ブロー成形に限らず、成形体の周囲にバリが形成される成形においては、バリ取り作業は、成形体を金型から取り出した後に、プレス機や手作業等で行うというのが基本的な考えであり、例えば特許文献1記載の発明も例外ではない。しかしながら、プレス機を用いてバリ取りを行う場合、成形品のサイズが大きいと、プレス機もこれに対応して大型化せざるを得ず、多大な設備投資が必要となるという問題がある。また、成形品の大きさや形状が異なると、プレス機の型もこれに対応して大きさや形状を変更する必要があり、さらに設備投資が増大することになる。
【0007】
このような状況から、特に大型の成形品の成形においては、成形品の周囲に形成されるバリを、手作業で切除しているのが実情である。具体的には、製品である成型体を金型からバリが付いたまま取り出し、その後、ナイフ処理等を人の手で実施する方法が基本である。手作業により大型の成形品のバリを一つ一つ切除する方法では、金型から取り出した後にバリ除去作業を行うことになり、工数も多く、成形品1個当たりのバリ取りに要する時間も長くなり、生産性を大きく損なう要因となっている。
【0008】
本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、大掛かりな装置を必要とすることなく効率的なバリ取りが可能な成形体の製造方法を提供することを目的とし、さらには、成形用金型、成形体の製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述の目的を達成するために、本発明の成形ラインは、成形体の成形を行う金型を備え、金型内で成形体の成形を行うとともに、前記成形体の周囲に形成されるバリを前記成形体から分断する成形体の製造装置であって、前記金型は、成形体の周囲に形成されるバリの少なくとも一部に対してエアブローを行って冷却するエアー吹き出し機構と、冷却されたバリに対して突き出され、前記バリを成形体から分断する突き出し部材を備える成形体の製造装置と、その周囲に配置される成形体取り出し機構、バリ掴み取りロボット、バリ搬送コンベア、加工機、成形体搬出コンベアとから構成される。
【0010】
また、本発明の成形用金型は、成形体の成形を行う成形用金型であって、成形体の外周部分をピンチするピンチ部の外側にバリを収容する空間が設けられ、この空間に臨んでエアブローするエアー吹き出し機構と、空間内に突き出される突き出し部材とを備えることを特徴とする。
【0011】
本発明の成形体の製造装置は、成形体の成形を行う金型を備え、金型内で成形体の成形を行うとともに、前記成形体の周囲に形成されるバリを前記成形体から分断する成形体の製造装置であって、前記金型は、成形体の周囲に形成されるバリの少なくとも一部に対してエアブローを行って冷却するエアー吹き出し機構と、冷却されたバリに対して突き出され、前記バリを成形体から分断する突き出し部材を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明は、金型内でバリ取りを行うことを基本的な考えとするもので、エアブローによるバリの冷却と、突き出し部材によるバリの分断により、成形サイクルの低下を抑えながら、効率的なバリ取りを実現するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、大掛かりな装置を必要とすることなく効率的なバリ取りが可能である。特に、本発明によれば、成形完了後の成形体の取り出し時には、バリ処理が完結されていることになり、成形工程の大幅な合理化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】成形体をブロー成形する際の態様を模式的に示す概略断面図である。
【
図2】バリを除去する前の成形体の一例を示す概略平面図である。
【
図3】成形からバリ取りまでの動作を説明する図であり、成形体の成形工程を示す概略断面図である。
【
図4】エアブローによるバリ冷却工程を示す概略断面図である。
【
図5】突き出し部材の突き出し工程を示す概略断面図である。
【
図6】突き出し棒の一例を示す要部概略斜視図である。
【
図7】突き出し棒の他の例を示す要部概略斜視図である。
【
図8】突き出し棒のさらに他の例を示す要部概略斜視図である。
【
図9】バリの突き出し棒側への押し付け状態及びエアー排出ピンのバリへの突き刺し状態を示す要部概略断面図である。
【
図10】成形体間の空間に傾斜面を形成した金型例を示す概略平面図である。
【
図12】
図10及び
図11に示す金型を用いた場合のバリ取り工程を一部拡大して示す概略断面図である。
【
図13】傾斜面に座ぐりを形成した状態を示す要部概略断面図である。
【
図14】バリや成形品の取り出しを自動で行う成形ラインを示すものであり、成形品の取り出し工程を示す図である。
【
図17】成形品の捨て袋部分の成形状態を示す図であり、(A)は係止具を設置していない場合の成形状態、(B)は係止具を設置した場合の成形状態をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を適用した成形体の製造方法、成形用金型、及び成形体の成形装置の実施形態を、ダクトのブロー成形を例に図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
図1は、成形体であるダクトをブロー成形する際のブロー成形方法を説明するための図である。 ブロー成形に際しては、先ず、押出機内で成形に用いる樹脂材料を溶融混練して成形用樹脂を調製する。例えばバージン樹脂のみを用いて成形する場合であれば、各種樹脂材料のバージン樹脂に、必要に応じて改質材を加えて溶融混練し、成形用樹脂を作製する。回収樹脂材料を用いる場合には、粉砕された回収樹脂材料にバージン樹脂を所定割合加え、混練して成形用樹脂を作製する。
【0017】
成形に用いる樹脂材料は任意であり、例えばポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂のような熱可塑性樹脂が用いられる。成形体(ダクト1)が発泡成形体である場合には、成形用樹脂に発泡剤を添加する。
【0018】
こうして準備した成形用樹脂を押出機内で溶融混練した後、ダイ内アキュムレータに貯留し、続いて、所定の樹脂量が貯留された後にリング状ピストンを水平方向に対して直交する方向(垂直方向)に押し下げる。そして、
図1に示す環状ダイ11のダイスリットより、所定の押出速度で円筒状のパリソンPを押し出し、金型12,13の間に押し出す。その後、金型12,13を型締してパリソンPを挟み込み、さらにパリソンP内に所定の圧力範囲でエアーを吹き込み、ダクト1を成形する。
【0019】
図2は、成形されたダクト1の形状例を示すものであり、ブロー成形後のダクト1を金型12,13から取り出した状態を示す図である。本例のダクトは、2本の平行に配置されたダクト部2,3と、これらダクト部2,3を繋ぐ連結ダクト部4とから構成されている。また、成形体であるダクト1の周囲には、余分なパリソンPがバリBとして残存している。
【0020】
本実施形態のブロー成形方法では、前ダクト1の成形からバリBの分断までを金型12,13内で行う。以下、金型12,13の構成、及びこれを用いた成形方法について
図3~
図5を参照して説明する。なお、
図3~
図5は、
図2に示すダクト1のx-x線に対応する位置での断面を示すものである。
【0021】
ダクト1の成形に用いられる金型12,13には、ダクト1の形状に対応した凹部が形成されており、
図3に示すように、金型12,13には、ダクト部2に対応する凹部31,32、及びダクト部3に対応する凹部33,34が形成されている。ここで、凹部31,32により金型12,13間にダクト部2に対応するキャビティ(空間)c1が形成され、凹部33,34により金型12,13間にダクト部3に対応するキャビティ(空間)c2が形成される。
【0022】
金型12,13の材質は特に限定されない。例えば、アルミニウムやスチールを用いることができる。熱伝導率が高く、打ち抜くバリを効率的に冷却できることから、アルミニウムを用いるのが好ましい。
【0023】
金型12,13間に供給されたパリソンPは、型締め後に内部にエアブローすることにより金型12,13の凹部31,32、あるいは凹部33,34に沿った形に賦形され、金型12,13の凹部31,32、あるいは凹部33,34によって形成されるキャビティc1,c2の形状に賦形される。
【0024】
また、各キャビティc1,c2(すなわち成形体であるダクト1)の外周部分においては、各金型12,13は、互いに突き当てられるピンチ部を有する。ダクト部2に対応するキャビティの周囲にはピンチ部35を有し、ダクト部3に対応するキャビティの周囲にはピンチ部36を有する。これらピンチ部35,36において、パリソンPが押し潰され、この部分が成形体のパーティングライン(PL)となる。
【0025】
ここで、前記ピンチ部35,36の外側に残存するパリソンPがバリBとなるが、本実施形態においては、このバリBを成形体であるダクト1から分断する機構が金型12,13に設けられている。
【0026】
先ず、金型12,13のピンチ部35,36の外側においては、金型12の金型面が後退されてバリBを収容する空間37,38が形成されている。
図3において、ダクト部2に対応するキャビティc1の左側のピンチ部35の外側に空間37が形成され、ダクト部3に対応するキャビティc2の右側のピンチ部36の外側に空間38が形成されている。これら空間37や空間38内に、ピンチ部c1,c2近傍のバリBが収容される形になる。
【0027】
また、前記空間37,38は、前記ピンチ部35,36から所定の距離をもって形成されるピンチ部39,40によって反対側の端部が塞がれる形となっている。すなわち、前記空間37,38は、ピンチ部35,36を第1のピンチ部、ピンチ部39,40を第2のピンチ部とし、これらピンチ部間の空間として形成されている。このように空間37,38を閉鎖空間とすることで、後述のエアー吹き付け機構から吹き付けられるエアー(冷気)が空間37,38から逃げないような構造とされている。なお、エアー吹き付けの際に、これら空間37,38からエアーを逃がすために、空間37,38にエアー逃がし用のピンを挿入するようにしてもよいし、他のエアー逃がし機構を設けるようにしてもよい。
【0028】
各空間37,38には、エアー吹き付け機構及び突き出し部材が設けられ、これを用いてバリBの成形体(ダクト1)からの分断が行われる。具体的には、本実施形態の場合、図中、上側の金型12には、前記空間37,38に対応してエアー吹き付け用の吹き出し孔50が形成されている。このエアー吹き出し孔50からエアー(冷気)が吹き出され、バリBに冷気が吹き付けられる。
【0029】
一方、図中、下側の金型13には、ピンチ部35,36に近い位置に、またピンチ部35,36に沿って配列する形で突き出し部材である突き出し棒60が設置されている。突き出し棒60は、直径20mm~30mm程度の棒状部材であり、突き出し棒60の先端は金型13の金型面から若干突出するように設置しておく。この突き出し棒60を金型面から突き出すことでバリBを向かい合う金型12の金型面に向けてバリBを押し付ける。
【0030】
前記突き出し棒60の形態は任意であり、例えば
図6に示すように、断面円形の棒状体を用いてもよいし、
図7に示すように、先端面の中央に凹部60aを有し円環状の突出部を有する棒状体を用いてもよい。あるいは、
図8に示すように、先端に若干径の小さな凸部60bを有する棒状体等も使用可能である。いずれにしても、突き出し棒60の先端は、溶融状態のバリBがエアー吹き付けによって押し付けられた際にその形状が転写され、押し出し時にバリBを係止することでバリBがずれるのを防止し得る形態とすることが好ましい。このような観点から、突き出し棒60の先端を
図7や
図8に示す形状とすることが好ましい。
【0031】
突き出し棒60は、前記の通り、ピンチ部35,36に沿って配列されるが、その間隔が狭いほど切断性が向上する。したがって、突き出し棒60の配列ピッチ(配列間隔)は170mm以内とすることが好ましい。
【0032】
また、突き出し棒60の稼動手段としては、例えば油圧方式を採用することができ、各突き出し棒60を独立に稼動させる方式としてもよいし、金型背板等を利用して同時に稼動する方式としてもよい。成形体の形状によっては、突き出し棒60が当たるタイミングを可変とすることで、バリ処理が円滑に行われることも考えられるが、その場合には、各突き出し棒60のストロークを調整することで適宜調整可能である。
【0033】
ダクト部2,3の外側にバリBに関しては、前記の通りであるが、ダクト部2,3間のバリBについても同様の構成で対応可能である。ただし、ダクト2,3間のバリBに関しては、第2のピンチ部を形成する必要はなく、ダクト部2のピンチ部35とダクト部3のピンチ部36の間に空間41を形成し、ここにエアー吹き付け用の吹き出し孔50や突き出し棒60を設置すればよい。なお、突き出し棒60に関しては、前記空間37,38においては成形体側(ダクト部2側あるいはダクト部3側)に一箇所(一列)配列したが、空間41においては、ダクト部2側とダクト部3側の2箇所に突き出し棒60を配列する。
【0034】
次に、これら金型12,13を用いてブロー成形を行う場合の各工程について説明する。成形体であるダクト1をブロー成形するには、前述の通り、環状ダイ11のダイスリットより供給されるパリソンPを金型12,13で挟み込み、パリソンP内にエアブローしてこれを金型12,13のキャビティ形状に賦形する。この状態を示すのが
図3である。金型12,13間にパリソンPが挟み込まれて賦形され、金型12,13のキャビティc1,c2においてダクト部2及びダクト部3が成形される。
【0035】
ダクト部2,3の成形が完了した後、
図4に示すように金型12に設けられた吹き出し孔50からエアーを供給し、バリBの表面に対してエアブローを行う。供給するエアーは冷気であることが好ましい。また、ここでのエアブローは、ピンチ部35,36近傍のバリBにエアーが当たるように行うことが好ましい。このエアブローにより、バリBが冷却されて短時間のうちに剛性が増す。
【0036】
なお、前記エアブローは、バリBを冷却する機能を有する他、バリBを突き出し棒60側に押し付けるという役割も有している。バリBを突き出し棒60側に押し付けておくことで、突き出し棒60の突き出しにより大きなストロークでバリBを反対側の金型12に押し付けることができ、バリBを成形体から確実に分断することができる。
【0037】
図9は、吹き出し孔50からのエアブローにより、バリBが突き出し棒60が設けられた金型13側に押し付けられた状態を示すものである。エアブローにより押し付けられたバリBは、初期の段階では溶融状態にあり、前記押し付けにより僅かに突出された突き出し棒60の先端形状が転写され、凹部が形成される。この時、突き出し棒60の先端の少なくとも一部が金型13から突出した状態にあればよく、例えば突き出し棒60の形態を
図7や
図8に示すようなものとした場合には、凹部60aの周囲の円環状の突出部や中央の凸部60bを金型13から突出させ、その他の部分は金型13と面一としてもよい。凹部が形成された状態で冷却されたバリBを突き出し棒60で押圧すると、前記凹部に突き出し棒60の先端が係止され、バリBがすべる等して位置ズレを起こすことがなくなり、突き出し棒60でバリBを確実に押圧して、成形体から分離することができる。
【0038】
また、
図9に示す例おいては、金型13にエア逃がし用のエア排出ピン70が設けられているが、このエア排出ピン70は、前記エアブローにより押し付けられたバリBに突き刺さり、バリBと金型12間のエアーも効果的に排出する。したがって、エア排出ピン70の金型13からの突出量は、エアブローにより押し付けられたバリBを貫通し得るように設定することが好ましい。ただし、エア排出ピン70の突出量があまり大きすぎると、バリBに奥深く突き刺さり、バリBを突き出し棒60で押圧する際にバリBから抜け難くなることがあるので、エアブローにより押し付けられたバリBから僅かに突き出る程度とすることが好ましい。
【0039】
前記エアブローによるバリBの冷却の後、
図5に示すように、剛性の増したバリBを突き出し棒60により反対側の金型12に押し付け、バリBを成形体から引きちぎる形で分断(切断)する。ダクト部2,3の外側のバリBは、空間37,38において、ピンチ部35,36近傍に設けられた突き出し棒60の突き出しにより成形体から分断される。ダクト部2,3間のバリBは、空間41において、ピンチ部35,36近傍にそれぞれ設けられた2本の突き出し棒60の突き出しにより成形体から分断される。
【0040】
以上により、金型12,13内においてバリBの成形体からの分断が行われる。すなわち、本実施形態のブロー成形方法では、成形体の成形及びバリ処理が金型内で完結し、これまでになく効率的な成形及びバリ処理が可能である。
【0041】
以上、本発明を適用した実施形態についてを説明してきたが、本発明が前述の実施形態に限られるものでないことは言うまでもなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の変更を加えることが可能である。
【0042】
例えば、金型内において、成形体の全周囲においてバリBを分断する形にしてもよいが、その場合、完全に分離されたバリが金型内に残ってしまう可能性がある。そのような場合には、バリBの一部が成形体と連結された状態となるようにバリBの分断を行うようにしてもよい。前記連結部の分断は、成形体を金型から取り出した後、簡単に行うことができる。
【0043】
また、前記金型構成において、例えば成形体が大型で、ダクト部2とダクト部3の間の距離が大きい場合、バリBの寸法も大きくなって突き出し棒60の力が十分にバリBに伝わらない場合がある。このような場合には、金型に傾斜面を有する突出部を設け、傾斜面の頂部において対向する金型間の間隔が狭めることでこの間にバリBを挟みこみ、各突き出し棒60による押し込みが確実に行われるようにしてもよい。
【0044】
図10は、ダクト部2,3の間の領域において、図中上方の金型12に傾斜面を形成した例を示すものであり、
図11は
図10に示す金型の概略断面図である。
【0045】
図10に示すように、ダクト部2,3の間の領域においては、ダクト部2,3のピンチ部35,36に沿って突き出し棒60が配列される。ダクト2,3間の寸法が大きいと、エアブローによってバリBを冷却してもバリBは自由に動いてしまい、十分に突き出し棒60の力が加わらない。
【0046】
そこで、本例の場合、金型12に傾斜面81を有する台状部82を形成し、ここにバリBを挟み込むようにしている。なお、
図10において斜線領域が傾斜面81である。
【0047】
金型12に前記傾斜面81を有する台状部82を形成すると、
図11に示すように、この部分において金型12と金型13の間隔が小さくなる。この間隔をバリBを保持し得る程度とすれば、金型12,13間にバリBが挟まれる形となり、
図12に示すように、ここを支点として、バリBに突き出し棒60の力が確実に伝わり、バリBの分断が円滑に行われる。
【0048】
なお、前記傾斜面81を形成する場合において、例えば金型13にエア排出ピン70を設置する場合、
図13に示すように、これに対向する部分に座ぐり部83を設け、金型12の傾斜面81にエア排出ピン70が衝突しないようにすることが好ましい。
【0049】
成形体の製造方法について言えば、先の実施形態では、パリソンPをブロー成形する場合を例に説明したが、シートを金型で成形する方法等、成形体の周囲にバリが形成される製造方法、成形用金型、製造装置であれば、いずれにおいても本発明を適用することが可能である。
【0050】
次に、前述の成形体の製造装置を組み込んだ成形ラインについて説明する。前述の通り、先の実施形態では、成形体の成形及びバリ処理が金型内で完結し、これまでになく効率的な成形及びバリ処理が可能である。これをさらに効率化するために、バリの排出から成形体の搬送までの一連の工程を自動化することも可能である。
【0051】
図14から
図16は、成形ラインの一例を示すものである。この成形ラインでは、成形体90(先の実施形態におけるダクト1に相当)を成形する金型12,23を備えた成形装置を中心に、その周囲に成形体取り出し機構91、バリ排出機構(バリ掴み取りロボット92及びバリ搬送コンベア93)、成形体90の加工機94、成形体90を搬出する成形体搬出コンベア95が配置されている。
【0052】
成形体取り出し機構91は、ここでは多関節ロボットであり、回転する多関節アーム91Aを備え、その先端に成形体90を真空吸引等により吸着するヘッド部91Bを有している。成形された成形体90は、多関節アーム91Aの先端のヘッド部91Bで吸着保持され、多関節アーム91Aが回転することで、加工機94、成形体搬出コンベア95へと順次移送される。
【0053】
バリ排出機構は、バリ掴み取りロボット92及びバリ搬送コンベア93とから構成され、金型12、13内で成形体90から分離されたバリ(図示は省略する。)をバリ掴み取りロボット92の2本のアーム92A,92Bで挟み込み、金型12,13からバリ搬送コンベア93へと引き出す。成形体90のバリは、金型12,13からはみ出す形で形成されるので、この部分をバリ掴み取りロボット92の2本のアーム92A,92Bで簡単に挟み込むことができる。
【0054】
加工機94は、金型12,13から取り出された成形体90を加工するものであり、例えば細かなバリの切除等が行われる。
【0055】
金型12,13での成形体90の成形及びバリの分離が終わると、
図14に示すように金型12,13が型開きされ、それと同時にバリがバリ掴み取りロボット92の2本のアーム92A,92Bで引き出され、バリ搬送コンベア93により排出される。また、成形体90は、多関節アーム91Aの先端のヘッド部91Bで吸着保持され、金型12,13から取り出される。
【0056】
次いで、
図15に示すように成形体90は多関節アーム91Aの水平回転運動により、加工機94へと移送される。加工機94に移送された成形体90は、細かなバリの切除等が行われ、製品として完成する。
【0057】
加工機94での処理が終わった成形体90は、
図16に示すように、多関節アーム91Aの水平回転運動により成形体搬出コンベア95へと移送され、搬出される。すなわち、多関節アーム91Aが1回転することで、成形体90の金型12,13からの取り出しから製品の搬出までの一連の工程が行われることになる。
【0058】
このような成形ラインを考えた場合、金型12,13を型開きした時に、必ず特定の金型(ここでは金型13)に成形体90が保持されていることが必要である。成形体90が保持されている金型が成形のたびに異なると、成形体取り出し機構91において、成形体90を確実に取り出すことが難しい。例えば、成形体取り出し機構91において、金型13に保持されている成形体90を取り出すように設定されていると、成形体90が金型12に保持されていた場合、取り出すことができない。
【0059】
このような不都合を解消するためには、一方の金型に成形体90を係止し得る工夫を施しておくことが好ましい。ただし、成形体90の製品部分の形状に影響を与えることは避けなければならない。
【0060】
これを実現するためには、成形体90を保持させる側の金型(例えば金型13)の捨て袋部分に、キャップボルト96を設置しておき、その頭部96Aを成形体90の捨て袋部分に食い込ませることが有効である。例えば開口部を有する成形体(ダクト等)のブロー成形においては、成形の際に成形体90に開口部を形成することができず、成形時にはこれを閉塞する形で捨て袋部分を形成しておき、後にこれを切除することで開口部を形成することが行われている。捨て袋部分は製品からは切除されるため、ここにキャップボルト96を食い込ませても、製品に影響を与えることなく特定の金型13に成形体90を確実に残すことが可能である。
【0061】
図17は、捨て袋部分の成形状態を示すものであり、(A)は係止具であるキャップボルト96を設置していない場合の成形状態、(B)はキャップボルト96を設置した場合の成形状態を示す。キャップボルト96を設置していない場合、金型12,13に対して捨て袋部分90Aの成形状態は等価である。この状態で金型12,13を型開きすると、成形体90は金型12側に残る場合と金型13側に残る場合とがある。
【0062】
これに対して、金型13にキャップボルト96を設置しておくと、捨て袋部分90Aの所定の箇所90Bにキャップボルト96の頭部96Aが食い込む形となり、捨て袋部分90Aが引っ掛かって成形体90は確実に金型13側に残ることになる。
【0063】
なお、キャップボルト96は、成形体90のサイズや引っ掛かり具合等に応じて適正なサイズのものを選択すればよい。キャップボルト96のサイズはM8,M6等、規格化されており、これらの中から適正なサイズのものを選択して金型の捨て袋部分に設置すればよい。キャップボルト96は通常のボルトと同様に金型に取り付けることができ、交換も容易である。
【符号の説明】
【0064】
1 ダクト
2,3 ダクト部
4 連結ダクト部
11 環状ダイ
12,13 金型
31,32,33,34 凹部
35,36 ピンチ部(第1のピンチ部)
37,38 空間
39,40 ピンチ部(第2のピンチ部)
41 空間
50 エアー吹き付け孔
60 突き出し棒
70 エア排出ピン
81 傾斜面
82 台状部
c1,c2 キャビティ
90 成形体
91 成形体取り出し機構
92 バリ掴み取りロボット
93 バリ搬送コンベア
94 加工機
95 成形体搬出コンベア
96 キャップボルト