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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-07
(45)【発行日】2022-09-15
(54)【発明の名称】内燃機関のピストン
(51)【国際特許分類】
   F02F 3/00 20060101AFI20220908BHJP
   F16J 1/02 20060101ALI20220908BHJP
   F16J 1/16 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
F02F3/00 L
F02F3/00 Z
F02F3/00 Q
F16J1/02
F16J1/16
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018178850
(22)【出願日】2018-09-25
(65)【公開番号】P2020051278
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-07-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】須田 尚幸
【審査官】楠永 吉孝
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-500505(JP,A)
【文献】米国特許第3319535(US,A)
【文献】実開平03-027852(JP,U)
【文献】特開2001-336447(JP,A)
【文献】特表2002-528669(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02F 3/00~ 3/28
F16J 1/00~ 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストンヘッドの下面に設けられ、互いに間隔を空けて対向するように配置された2つのピンボスと、前記ピストンヘッドの下面に設けられ、前記各ピンボスの両側に配置されているサイドウォールと、該サイドウォールに連続して設けられているスカートと、を有し、2つの前記ピンボスのそれぞれには、ピストンピンが挿入可能なピン孔が形成されている、内燃機関のピストンにおいて、
前記サイドウォール及び前記スカートの内壁は連続しており、該内壁は、2つの前記ピン孔の中心を結ぶピンボス軸線を間に置いて前記ピンボス軸線の両側に対向して配置されており、
前記各内壁の水平断面は、特定の楕円形状に沿って形成され、
前記ピストンヘッドと前記サイドウォールとの間に設けられた連結部には、2つの貫通孔が設けられ、2つの前記貫通孔は、前記サイドウォールの上方に互いに間隔を空けて配置され、該間隔は、前記スカートの下端の幅と同じに設定され、
前記各貫通孔の中心線は、前記スカートの外周面を前記サイドウォールに向かって延長させた延長線と、前記サイドウォールの外周面を前記スカートに向かって延長させた延長線との交点に交差するように設定されており、
前記スカートの上端の前記幅は、2つの前記貫通孔の中心間の距離よりも、短く設定されていることを特徴とする内燃機関のピストン。
【請求項2】
前記楕円形状の短軸は、前記ピンボス軸線に対して直交していることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関にピストン。
【請求項3】
前記ピンボス軸線と前記楕円形状の長軸との間の距離は、
前記スカートの外壁に接し前記ピンボス軸線に平行なスカート接線と、前記楕円形状の長軸との距離よりも長いことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の内燃機関のピストン。
【請求項4】
記楕円形状の長軸の真上に位置する前記連結部のピストン径方向の壁厚は、軸方向の壁厚に比べて、薄いことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の内燃機関のピストン。
【請求項5】
前記ピン孔に隣接する前記ピンボスの壁部の水平方向厚さの中心を通り前記ピンボス軸線に平行な基準線と、前記スカートの壁厚中心を通る中心線との交点は、ピンボス軸線方向で、前記楕円形状の焦点の外側に設定されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の内燃機関のピストン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のピストンに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関のピストンは、ピンボスに取り付けられたピストンピン等を介して、燃焼圧力をクランク軸の回転力に変換する装置である。例えば、特許文献1に開示されているように、ピストンは、燃焼圧力及びピストンの慣性等により生ずるスラスト力をシリンダボアに分散して伝えるために、ピストンピンボスの両側にスカートを有している。また、スカートとピンボスはサイドウォールで繋がれている。
【0003】
ピストンとシリンダの間の摺動はスカートで発生する。燃焼圧が負荷されると、スカートは、ピストン中心に向かって径方向内側に変形し、サイドウォールは、径方向外側に向かって変形する。ピストンは、ピストンピン中心軸を中心に回転自由度を有するため、スカートが内側に変形すると、ピストンは回転し傾斜する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-303674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記例では、ピストン内面のサイドウォールとスカートの稜線に、曲率の変化が大きい変化点がある。該変化点では、燃焼圧を受けた場合において、スカートに集中的な変形が発生し、スカートがピストン中心に向かって変形し、ピストンが傾斜し、摩擦損失が発生する可能性がある。
【0006】
燃焼圧を受けた場合において、ピストンの下端側におけるサイドウォールについて、ピストンの外側方向(ピストン中心から外側に向かう方向)へ変形し、スカート下端ほどサイドウォールの変形領域がピストン外側方向に広がる「ハ」の字形状となり、ピストンが傾斜し、摩擦損失が発生する。そのため、スカート及びサイドウォールの曲げ剛性の向上には、改善の余地があった。
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、スカートからサイドウォールまでを偏りなく広範囲に均一に変形させ、ピストンの下端側におけるサイドウォールについて、ピストン外側方向への変形量を低減し、ピストンの傾斜を抑制でき、摩擦損失を低減可能な内燃機関のピストンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係る内燃機関のピストンは、ピストンヘッドの下側
面に設けられ互いに間隔を空けて対向するように配置された2つのピンボスと、前記ピス
トンヘッドの下側面に設けられ、前記各ピンボスの両側に配置されているサイドウォール
と、該サイドウォールに連続して設けられているスカートと、を有し、2つの前記ピンボ
スのそれぞれには、水平に延びるピストンピンが挿入可能なピン孔が形成されている。当
該内燃機関のピストンにおいて、前記サイドウォール及び前記スカートの内壁は連続して
おり、該内壁は、2つの前記ピン孔の中心を結ぶピンボス軸線を間に置いて前記ピンボス
軸の両側に対向して配置されており、前記各内壁の水平断面は、特定の楕円形状に沿って
形成され、前記ピストンヘッドと前記サイドウォールとの間に設けられた連結部には、2つの貫通孔が設けられ、2つの前記貫通孔は、前記サイドウォールの上方に互いに間隔を空けて配置され、該間隔は、前記スカートの下端の幅と同じに設定され、前記各貫通孔の中心線は、前記スカートの外周面を前記サイドウォールに向かって延長させた延長線と、前記サイドウォールの外周面を前記スカートに向かって延長させた延長線との交点に交差するように設定されており、前記スカートの上端の前記幅は、2つの前記貫通孔の中心間の距離よりも、短く設定されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、スカートからサイドウォールまでを偏りなく広範囲に均一に変形させ、ピストンの下端側におけるサイドウォールについて、ピストン外側方向への変形量を低減し、ピストンの傾斜を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る内燃機関のピストンの正面図である。
図2図1のA1-A1断面図である。
図3図1のA2-A2断面図である。
図4図1のピストンを右方から見た側面図である。
図5図2の楕円形状の水平断面の変形の様子を示す模式図である。
図6図1の断面図であり、(A)は図1のB1-B1断面を示し、(B)はB2-B2断面を示し、(C)はB3-B3断面を示す。
図7図4のA3-A3断面図である。
図8図2の水平断面の変形例を示す断面図であり、(A)は、スカートの上部の断面を示し、(B)は(A)よりも下方の断面を示し、(C)は(B)よりも下方の断面を示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る内燃機関のピストン1の実施形態について、図面(図1図7)を参照しながら説明する。なお、図において、矢印Uは上方、矢印Dは、下方を示している。また、ピストン中心Oとは、円形のピストンヘッド2の中心を示し、ピストン径方向は、ピストンヘッド2の径方向を示している。
【0012】
本実施形態のピストン1は、ピストンヘッド2の下面に設けられ互いに間隔を空けて対向するように配置された2つのピンボス3と、ピストンヘッド2の下側面に設けられ各ピンボス3の両側に配置されているサイドウォール4と、サイドウォール4に連続して設けられているスカート5と、を有している。また、2つのピンボス3のそれぞれには、水平に延びるピストンピン1aが挿入可能なピン孔3aが形成されている。当該内燃機関のピストン1において、サイドウォール4及びスカート5の内壁10は連続しており、該内壁10は、2つのピン孔3aの中心を結ぶピンボス軸線C1を間に置いてピンボス軸線C1の両側に対向して配置されており、各内壁10の水平断面は、特定の楕円形状Eに沿って形成されている。以下、各部について説明する。
【0013】
ピストンヘッド2は、図1に示すように、円筒状で、外周部には、オイルリング溝2aが形成されている。
【0014】
2つのピンボス3は、図1及び図2に示すように、ピストン中心Oを間に置いて互いに間隔を空けて、ピストン1の外周付近に配置されている。2つのピンボス3のそれぞれには、ピストン1の径方向に貫通するピン孔3aが設けられている。2つのピン孔3aには、ピストンピン1aが挿入可能である。
【0015】
2つのピン孔3aは、図2に示すように、互いに対向するように配置されている。ピンボス軸線C1は、上記したように、対向するピン孔3aの孔中心を結ぶ直線として定義される。ピストンピン1aは、ピンボス軸線C1に沿って水平に延びている。
【0016】
各ピンボス3は、ピストンヘッド2の下面から下方に突出しており、ピンボス3の下部には、所定の曲率の曲面が形成されている。また、ピン孔3aの両側部(ピンボス軸線C1に直交する方向に配置される側部)は、所定の壁厚(ピンボス軸線C1に直交する方向の厚み)を有している。また、ピンボス3のピストン径方向外側は、ピンボス3の両側のサイドウォール4よりも、外側に突出している。
【0017】
サイドウォール4は、図2に示すように、ピンボス3の側部から、ピストン1の外周に沿って延びており、サイドウォール4の外側部には、所定の曲率を有する曲面が形成されている。サイドウォール4は、各ピンボス3の両側に設けられている。すなわち、各ピンボス3に繋がるサイドウォール4は、対向配置されている。サイドウォール4の内壁10については、後で説明する。
【0018】
スカート5は、図2に示すように、対向するサイドウォール4を繋ぐように連続して、ピストン1の外周に沿って設けられている。スカート5は、ピンボス軸線C1を間に置いて両側に配置されている。すなわち、2つのスカート5は、ピンボス軸線C1を挟んで対向するように配置されている。スカート5の外側部には、サイドウォール4の外面の曲率とは異なる所定の曲率を有する曲面が形成されている。
【0019】
サイドウォール4及びスカート5の内壁10は、図2に示すように、連続している。詳細には、対向するサイドウォール4の内壁10と、これらを繋ぐスカート5の内壁10とは、連続している。当該内壁10は、上記の通り、ピンボス軸線C1を間に置いてピンボス軸線C1の両側に対向配置されている。内壁10の水平断面は、単一の定義された特定の楕円形状Eに沿って形成されている。この例では、楕円形状Eは、ピンボス3の両側に配置され、ピンボス軸線C1に沿って延びている。
【0020】
上記のように内壁10を特定の楕円形状Eに沿って形成することにより、スカート5とサイドウォール4の境界において、内面の稜線における極端に曲率が変化するような変化点を発生させないことを可能とする。
【0021】
また、一定の領域に収まる楕円と、同様の領域に収まる円(楕円短軸を直径とする円)との対比において、楕円短軸方向に圧縮の力が負荷された際の変形領域と、円における径方向に力が負荷された際の変形領域とを比較すると、楕円の変形領域は、円の変形領域よりも広い。すなわち、本実施形態では、スカート5からサイドウォール4までの広範囲で、変形が可能となる(図5)。
【0022】
また、燃焼圧を受けた場合において、燃焼圧をスカート5とサイドウォール4の両方が、広範囲で受けることができるため、スカート5からサイドウォール4までを偏りなく広範囲に均一に変形させることができる。上記のような曲率の変化点の存在する場合に比べて、スカート5側への集中した変形の発生を抑制できる。
【0023】
また、スカート5のピストン中心Oに向かう方向への変形量を低減できる。その結果、ピストン1の傾斜を抑制できる。さらに、スカート5に作用するシリンダの面圧を低減で、摩擦抵抗を低減でき、摩擦損失を低減できる。
【0024】
また、内壁10の水平断面が楕円形状Eであるために、ピストン1の下部の断面が中空の中空楕円柱となる。一般に、中空楕円柱は、中空円柱に対して約10倍の高い剛性を得られるため、スカート5及びサイドウォール4の剛性が向上する。
【0025】
また、燃焼圧を受けた場合において、ピストン1の下端側におけるサイドウォール4について、ピストン1の外側方向への変形量を低減できる。すなわち、スカート5の下部ほどサイドウォール4の変形領域がピストン1の外側方向に広がること、例えば「ハ」の字形状になることを抑制できる。
【0026】
また、図2に示すように、本実施形態の内壁10の楕円形状Eの短軸は、ピンボス軸線C1に対して直交している。このように構成することで、スカート5が燃焼圧を受けた場合、短軸方向に力を受けることとなる。その結果、水平断面が楕円曲線からなり、上下方向に延びる楕円柱は、短軸方向の力に対して、上下方向に延びる円柱と比較して、広範囲で圧力を分担する特性を有する。このため、短軸方向に力を受けて変形した場合、その変形は、広範囲に及ばずに長軸付近で止まる。そのため、サイドウォール4が外側方向に変形する範囲は、主に長軸X1よりも、スカート5に近い側、すなわち、従来に対してスカート5に近い側に設定され、さらに、当該変形する範囲は、略円柱を有する従来に比べ、狭い範囲となる。
【0027】
また、燃焼圧を受けた場合において、ピストン1の下端側におけるサイドウォール4について、ピストン1の外側方向への変形量を低減できる。
【0028】
また、図2に示すように、ピンボス軸線C1と楕円形状Eの長軸X1との間の距離L1は、スカート5の外壁面に接しピンボス軸線C1に平行なスカート接線Hと、楕円形状Eの長軸X1との距離L2よりも大きい。このように構成することで、楕円形状Eの重心軸(長軸X1)は、ピンボス軸線C1よりも、スカート5に近い方に設定されることになる。サイドウォール4が外側方向に変形する範囲(サイドウォール4の変形範囲)は、スカート5に、より近い方に設定できる。
【0029】
また、図1図3及び図4に示すように、ピストンヘッド2とサイドウォール4と間には、連結部7が設けられている。連結部7は、オイルリング溝2aの下部に設けられている。楕円形状Eの長軸X1の真上に位置する連結部7のサイドウォール4の径方向壁厚D1は、長軸方向壁肉厚に比べて薄い。すなわち、連結部7に対応する位置のサイドウォール4には、径方向壁厚が薄くなる薄肉部9が設けられる。
【0030】
連結部7に設けられた後述する貫通孔6の上方側のピストン1の内部の水平方向幅は、図6に示すように、図6(B)に示す長軸X1に対応する位置の水平方向幅との対比において、図6(A)に示すピンボス軸線C1に近い方は狭く、図6(C)に示す遠い方は広くなるように形成されている。
【0031】
短軸方向の変形の軸となる長軸X1上に薄肉部9を設けることで、連結部7の剛性を低下させることができる。その結果、連結部7、すなわち、スカート上端5aでの変形量を大きくでき、スカート5の上下間での変形量の差を低減できる。
【0032】
また、本実施形態では、図2に示すように、サイドウォール4及びスカート5の壁厚中心を通る中心線C2と、ピン孔3aの外側に位置するピンボス3の壁厚中心を通る中心線C3(基準線)との交点Q1は、ピンボス軸線C1の方向で、楕円形状Eの焦点S1,S2の外側(2つの焦点S1,S2が互いに離れる方向)に設定されている。ここで、スカート5の壁圧中心を通る中心線C2は、スカート5等の外壁と内壁10との中心位置を通る曲線である。また、ピンボス3の壁厚中心を通る中心線C3は、サイドウォール4から突出する部分の外壁面で、ピン孔3aの開口縁からのピンボス3の端まで距離の中心を示している。
【0033】
図5に示すように、短軸X2の方向からの荷重Fが作用するとき、楕円形状Eは、楕円形状E’に示すように変形する。楕円形状Eの焦点S1,S2より、ピストン1の外側(長軸X1の方向の外側)では、図5のZ2の領域に示されるように、楕円曲線Eは外側への変形(プラス変形)となる。逆に、焦点S1,S2よりピストン1の内側(図5のZ1に示す領域)では、楕円曲線Eはピストン1の内側への変形(マイナス変形)となる。外側への変形(プラス変形)の領域Z2でサイドウォール4とピンボス3を繋ぐことで、サイドウォール4のピストン中心Oの方向への変形を抑制できる。その結果、スカート5のピストン中心Oに向かう方向に変形する量を低減できる。
【0034】
図4に示すように、ピストンヘッド2とサイドウォール4と間に設けられた連結部7には、剛性を低下させるために、2つの貫通孔6が設けられている。2つの貫通孔6は、スカート上端5aの上方に配置され、且つピストン1の周方向に互いに間隔を空けて配置されている。当該間隔は、スカート下端5bの幅W2と同じに設定されている。ここで、スカート下端5bの幅W2は、図4に示すように、スカート5の下部の最も幅広の部分に相当する。また、スカート上端5aの幅W1は、サイドウォール4との境界から反対側の境界までの距離を示す。スカート下端5bの幅W2は、スカート上端5aの幅W1よりも大きい。
【0035】
燃焼圧が負荷されたスカート上端5aの変形量は、スカート5のピストン周方向領域の中心位置から離れるに従い減少する。しかしながら、サイドウォール4がピストンヘッド2の裏側に位置しており、連結部7とスカート5とサイドウォール4の境界を結ぶ領域の剛性は、周辺の領域の比べて高いため、変形しにくい。すなわち、スカート上端5aの剛性が高いため、スカート5とサイドウォール4までの広範囲で変形ができない。
【0036】
この高剛性の領域に貫通孔6を設け、更にスカート上端5aの幅を下端の幅より狭くすると、サイドウォール4とスカート5の境界となる位置に、貫通孔6が形成されることになる。その結果、スカート5の上下間における剛性の差を小さくすることが可能となる。
【0037】
図7に示すように、2つの貫通孔6の貫通方向に延びる中心線C3は、スカート5の外周面をサイドウォール4に向かって延長させた延長線5eと、サイドウォール4の外周面をスカート5に向かって延長させた延長線4eとの交点Q2に交差するように設定されている。
【0038】
このように設定することで、連結部7の剛性が低下し、スカート5の上下端での変形量の差を小さくすることができる。これにより、ピストン1の傾斜角とシリンダとの接触面圧が抑制され摩擦損失が低減される。
【0039】
本実施形態の説明は、本発明を説明するための例示であって、特許請求の範囲に記載の発明を限定するものではない。また、本発明の各部構成は上記実施形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。
【0040】
例えば、図8(A)~(C)に示すように、薄肉部9を、サイドウォール4の内壁10において上下方向に延びるように設けてもよい。この場合、薄肉部9は、図8(A)に示す位置から、図8(B)に示す断面を経て、図8(C)に示す断面に向かって、重心線上(長軸X1に対応する位置)に上下に繋がっている。この場合、図8(C)に示すスカート下端5bでの薄肉部9は、図8(A)に示す薄肉部9に比べて小さい。当該薄肉部9は、上方に向かうに従い大きくなる。これにより、前述した上下方向におけるスカート5の剛性差を小さくし、スカート5の上下の変形を小さくすることが可能となる。
【符号の説明】
【0041】
1 ピストン
1a ピストンピン
2 ピストンヘッド
2a オイルリング溝
3 ピンボス
3a ピン孔
4 サイドウォール
5 スカート
5a スカート上端
5b スカート下端
6 貫通孔
7 連結部
9 薄肉部
10 内壁

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8