(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-07
(45)【発行日】2022-09-15
(54)【発明の名称】スポンジ部材
(51)【国際特許分類】
B23K 3/02 20060101AFI20220908BHJP
【FI】
B23K3/02 H
(21)【出願番号】P 2018090564
(22)【出願日】2018-05-09
【審査請求日】2021-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000234339
【氏名又は名称】白光株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100137143
【氏名又は名称】玉串 幸久
(72)【発明者】
【氏名】関守 宣久
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 裕美
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 充彦
【審査官】黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/173208(WO,A1)
【文献】登録実用新案第3214856(JP,U)
【文献】登録実用新案第3099004(JP,U)
【文献】実開昭63-85374(JP,U)
【文献】実開平2-118661(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周壁面を有する凹部が形成された収容部に、水分を吸収して膨張した状態で収容されて
加熱工具に付着した接合材料の除去に使用されるスポンジ部材であって、
ベース領域と、
前記ベース領域の外周面から外方に突出する突出部を有するとともに、前記スポンジ部材が前記収容部に収容されたときに前記内周壁面の少なくとも一部に当接する外周領域と、を備え、
前記ベース領域の前記外周面の周方向において前記突出部の隣には空間が形成されて
おり、
前記スポンジ部材は、木質パルプシートで形成されている、
スポンジ部材。
【請求項2】
前記突出部は、前記周方向に互いに間隔をおいて配置された複数の突部を含み、
前記空間が前記ベース領域と前記内周壁面との間に位置するように前記スポンジ部材が前記収容部に収容されたときに、前記複数の突部は前記内周壁面に接触し前記空間を前記周方向に間隔を空けて並んだ複数の空領域に仕切る
請求項1に記載のスポンジ部材。
【請求項3】
前記外周領域は、前記スポンジ部材が前記収容部に収容されたときにおいて、隣り合う角隅部が前記内周壁面に当接する一方で前記隣り合う角隅部の間において前記外周領域と前記内周壁面とによって囲まれた空領域を生じさせる多角形を形成し、
前記ベース領域は前記多角形の内接円によって囲まれた領域であり、
前記複数の突部は前記内接円から突出した部位である
請求項2に記載のスポンジ部材。
【請求項4】
前記外周領域は前記空間を前記ベース領域との間に形成するように前記突出部に繋がる外縁部を含み、
前記スポンジ部材が前記収容部に収容されたときに、前記外縁部は前記内周壁面に当接する
請求項1に記載のスポンジ部材。
【請求項5】
前記空間は、前記スポンジ部材を厚さ方向に貫通している
請求項4に記載のスポンジ部材。
【請求項6】
前記空間は、前記周方向に長い形状を有する
請求項4又は5に記載のスポンジ部材。
【請求項7】
前記突出部は、前記空間を前記周方向に並んだ複数の貫通孔に仕切るように前記周方向に互いに間隔をおいて配置された複数の突部を含む
請求項4乃至6のいずれか1項に記載のスポンジ部材。
【請求項8】
前記スポンジ部材は円形に形成され、
前記複数の突部及び前記複数の貫通孔は、前記スポンジ部材の半径に相当する長さの直径を有しているとともに
前記スポンジ部材と同心の円形領域よりも外側の領域に形成されている
請求項7に記載のスポンジ部材。
【請求項9】
前記複数の突部は前記ベース領域の中心において直交する2つの対称軸について線対称である
請求項2、3、7及び8のいずれか1項に記載のスポンジ部材。
【請求項10】
前記ベース領域には
、前記加熱工具が挿通される挿通孔が形成されている
請求項1乃至9のいずれか1項に記載のスポンジ部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱工具に付着した接合材料の除去に用いられる清掃用のスポンジ部材に関する。
【背景技術】
【0002】
加熱工具(たとえば、半田ごてやツイーザ)に付着した接合材料(たとえば、半田)を除去するためにスポンジ部材が使用されている(特許文献1乃至3を参照)。加熱工具を清掃する前に使用者はスポンジに水を供給する。水を吸収したスポンジ部材は膨張する。膨張したスポンジ部材は、スポンジ部材を収容する収容部に形成された所定の凹部に押し込まれる。この結果、スポンジ部材は収容部内で固定される。収容部に収容されたスポンジ部材に使用者は加熱工具の先端部を押し当て、加熱工具に付着した接合材料や汚れを除去することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開昭62-101662号公報
【文献】実開平2-16263号公報
【文献】実開平3-85165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スポンジ部材の膨張率はスポンジ部材の材質に大きく依存する。スポンジ部材に加工される材料の品質がばらつくならば、スポンジ部材の膨張率は大きく変動することもある。スポンジ部材が想定された膨張率を大幅に上回る膨張率で膨張するならば、使用者がスポンジ部材を収容部に押し込むことが困難になる。反対に、スポンジ部材が想定された膨張率を大幅に下回る膨張率で膨張するならば、スポンジ部材は収容部よりも大幅に小さくなり収容部内でがたつくことになる。この場合、スポンジ部材はスポンジ部材に擦りつけられた加熱工具の先端部とともに収容部内で移動する。この結果、加熱工具の先端部はスポンジ部材に十分に擦りつけられず、使用者は加熱工具の先端部を効率的に清掃することができない。加えて、加熱工具が素早く移動されると、加熱工具の先端に引っ掛かったスポンジ部材は収容部から飛び出ることもある。
【0005】
本発明は、使用者が収容部に無理なく押し込むことができるとともに収容部内で位置ズレしないスポンジ部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一局面に係るスポンジ部材は、内周壁面を有する凹部が形成された収容部に、水分を吸収して膨張した状態で収容されて加熱工具に付着した接合材料の除去に使用される。スポンジ部材は、ベース領域と、前記ベース領域の外周面から外方に突出する突出部を有するとともに、前記スポンジ部材が前記収容部に収容されたときに前記内周壁面の少なくとも一部に当接する外周領域と、を備える。前記ベース領域の前記外周面の周方向において前記突出部の隣には空間が形成されている。前記スポンジ部材は、木質パルプシートで形成されている。
【0007】
上記の構成によれば、外周領域が収容部の内周壁面の少なくとも一部に当接すると、内周壁面から外周領域が受けた反力に応じて外周領域の突出部は圧縮変形する。これに伴い、突出部はベース領域の外周面の周方向において膨張する。突出部の膨張方向(すなわち、周方向)には空間が形成されているので突出部の膨張は突出部の隣の空間によって吸収され、突出部は無理なく変形することができる。すなわち、外周領域は収容部の形状に適合するように無理なく変形することができる。この結果、使用者はスポンジ部材を収容部に無理なく押し込むことができる。
【0008】
スポンジ部材が大きく膨張しても、使用者はスポンジ部材を圧縮しながら収容部に無理なく押し込むことができるので、スポンジ部材を設計する設計者は水分を吸収する前のスポンジ部材の大きさを収容部が形成する凹部の大きさに比して過度に小さくしなくてもよい。すなわち、設計者は水を吸収する前のスポンジ部材の大きさを低い膨張率に基づいて決定することができる。この場合スポンジ部材があまり膨張しなくてもスポンジ部材の外周領域は収容部の内周壁面の少なくとも一部に当接し、スポンジ部材は収容部にしっかりと嵌り込み収容部内で位置ズレしない。
【0009】
上記の構成に関して、前記突出部は前記周方向に互いに間隔をおいて配置された複数の突部を含んでもよい。前記空間が前記ベース領域と前記内周壁面との間に位置するように前記スポンジ部材が前記収容部に収容されたときに、前記複数の突部は前記内周壁面に接触し前記空間を前記周方向に間隔を空けて並んだ複数の空領域に仕切ってもよい。
【0010】
上記の構成によれば、複数の突部が収容部の内周壁面に当接すると、内周壁面からの反力に応じて複数の突部は反力の作用方向において圧縮変形する一方で周方向において膨張する。このとき複数の突部はベース領域と内周壁面との間の空間を周方向に間隔を空けて並んだ複数の空領域に仕切る。これらの空領域は圧縮変形に伴う複数の突部の膨張を吸収するので、複数の突部は無理なく変形することができる。この結果、使用者はスポンジ部材を収容部に無理なく押し込むことができる。
【0011】
上記の構成に関して前記外周領域は、前記スポンジ部材が前記収容部に収容されたときにおいて、隣り合う角隅部が前記内周壁面に当接する一方で前記隣り合う角隅部の間において前記外周領域と前記内周壁面とによって囲まれた空領域を生じさせる多角形を形成してもよい。前記ベース領域は前記多角形の内接円によって囲まれた領域であってもよい。前記複数の突部は前記内接円から突出した部位であってもよい。
【0012】
上記の構成によれば、多角形の内接円から突出した部位として形成された複数の突部が内周壁面に当接すると多角形の角隅部が鈍るように変形する。角隅部での周方向の変形は外周領域と内周壁面とによって囲まれた空間によって吸収されるので、スポンジ部材は無理なく変形することができる。スポンジ部材の角隅部の変形の結果、スポンジ部材の外周領域は角隅部の周囲において広い面積で内周壁面に接触し、スポンジ部材は外周領域と内周壁面との間の高い静止摩擦力の下で収容部内に固定される。したがって、スポンジ部材は収容部内で位置ズレしにくくなる。
【0013】
上記の構成に関して、前記外周領域は前記空間を前記ベース領域との間に形成するように前記突出部に繋がる外縁部を含んでもよい。前記スポンジ部材が前記収容部に収容されたときに、前記外縁部は前記内周壁面に当接する。
【0014】
上記の構成によれば突出部は外縁部に繋がるので、外縁部が収容部の内周壁面に当接すると内周壁面からの反力に応じて突出部は圧縮変形する。この圧縮変形機能に加えて、突出部はベース領域から突出し外縁部に繋がるので、外縁部をベース領域に一体化する機能をも有する。
【0015】
外縁部とベース領域との間に空間が形成されているので、外縁部は空間の外側の位置において突出部に妨げられることなく収容部の形状に適合するように無理なく変形することができる。したがって、スポンジ部材は収容部に無理なく収容される。
【0016】
スポンジ部材の空間はベース領域とベース領域の外周面から外方に突出した突出部に繋がる外縁部との間に形成されているので、外縁部は空間の外側に位置している。したがって、外縁部は空間の外側においてもスポンジ部材及び収容部の接触をもたらす。この結果、スポンジ部材は広い面積で内周壁面に接触しスポンジ部材と内周壁面との間の高い静止摩擦力の下で収容部内に固定される。すなわち、スポンジ部材は収容部内で位置ズレしにくくなる。
【0017】
上記の構成に関して前記空間は、前記スポンジ部材を厚さ方向に貫通していてもよい。
【0018】
上記の構成によれば、空間はスポンジ部材を厚さ方向に貫通しているので、反力の作用方向への突出部の圧縮変形に伴う周方向への突出部の膨張をスポンジ部材の厚さ方向において全体的に吸収することができる。
【0019】
上記の構成に関して前記空間は、前記周方向に長い形状を有してもよい。
【0020】
上記の構成によれば、外縁部は突出部に対応する位置において圧縮変形した突出部の復元力を直接的に受ける一方で、空間に対応する位置においては復元力を直接的には受けない。復元力は外縁部をベース領域へ近づける外周領域の圧縮変形に抗するので、外周領域は突出部に対応する位置よりも空間に対応する位置において変形しやすい。空間は周方向に長い形状を有しているので、外周領域は周方向の長い区間に亘って収容部の形状に適合するように無理なく変形することができる。
【0021】
上記の構成に関して、前記突出部は前記空間を前記周方向に並んだ複数の貫通孔に仕切るように前記周方向に互いに間隔をおいて配置された複数の突部を含んでもよい。
【0022】
上記の構成によれば、外縁部が収容部の内周壁面に当接すると内周壁面からの反力に応じて複数の突部は圧縮変形する。複数の突部によって仕切られた複数の貫通孔は周方向に並んでいるので、圧縮変形に伴う複数の突部の周方向の膨張は複数の貫通孔によって吸収される。したがって、複数の突部は無理なく変形することができる。複数の突部によって外縁部はベース領域に一体化されているので、複数の突部の一部が千切れても外縁部及びベース領域の一体性は維持される。
【0023】
上記の構成に関して、前記スポンジ部材は円形に形成されていてもよい。前記複数の突部及び前記複数の貫通孔は、前記スポンジ部材の半径に相当する長さの直径を有しているとともに前記スポンジ部材と同心の円形領域よりも外側の領域に形成されていてもよい。
【0024】
上記の構成によれば、複数の突部及び複数の貫通孔は、スポンジ部材の半径に相当する長さの直径を有しているとともにスポンジ部材と同心の円形領域よりも外側の領域に形成されているので、内周壁面から複数の突部までの距離が短くなり、複数の突部が配列された領域の外側で無理な変形が生ずるリスクは小さくなる。
【0025】
上記の構成に関して、前記複数の突部は前記ベース領域の中心において直交する2つの対称軸について線対称であってもよい。
【0026】
上記の構成によれば、複数の突部はベース領域の中心において直交する2つの対称軸について線対称であるので、スポンジ部材は優れた美観を有する。
【0027】
上記の構成に関して、前記ベース領域には、前記加熱工具が挿通される挿通孔が形成されていてもよい。
【0028】
上記の構成によればベース領域には加熱工具が挿通される挿通孔が形成されているので、スポンジ部材は挿通孔に挿入された加熱工具に広い面積で接触し加熱工具を効果的に清掃することができる。
【発明の効果】
【0029】
使用者は上述のスポンジ部材を収容部内で位置ズレしないように収容部に無理なく押し込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】第1実施形態のセルロース製のスポンジ部材の概略的な平面図である。
【
図2】第2実施形態のスポンジ部材の概略的な平面図である。
【
図3】第3実施形態のスポンジ部材の概略的な平面図である。
【
図4】第4実施形態のスポンジ部材の概略的な平面図である。
【
図5】第5実施形態のスポンジ部材の概略的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態のセルロース製のスポンジ部材100の概略的な平面図である。
図1を参照して、スポンジ部材100が説明される。
【0032】
スポンジ部材100は圧延加工された木質パルプシートに打ち抜き加工することによって形成されている。木質パルプシートは一般的に様々な木材(たとえば、針葉樹、広葉樹、雑木、間伐材や建築廃材)から形成されている。木質パルプシートに加工される木材の組成はスポンジ部材100の膨張率に大きく影響するので、スポンジ部材100の膨張率は大きくばらつく。すなわち、スポンジ部材100は想定された膨張率よりも高い又は低い膨張率で膨張することもある。
図1に示されるスポンジ部材100は水を吸収し、膨張率のばらつきの範囲内の膨張率で膨張した状態である。
【0033】
スポンジ部材100は平面視において略円形の凹部を形成する収容部に収容される。収容部が形成する略円形の凹部(すなわち、スポンジ部材100が収容される収容空間)の中心は、
図1において符号「CTR」によって示されている。
図1の点線円は略円形の凹部を形成する収容部の内周壁面IWSを示している。内周壁面IWS及び中心CTRを基準に、スポンジ部材100の形状が以下に説明される。スポンジ部材100の形状に関する説明において用いられる「周方向」との用語は内周壁面IWSが形成する平面視形状(本実施形態に関しては円)の輪郭に沿う方向を意味している。内周壁面IWSが形成する平面視形状を包含する仮想平面に直交する方向は「厚さ方向」と称される。内周壁面IWSが形成する平面視形状の中心CTRから離れる方向は「外方」と称される。中心CTRに近づく方向は「内方」と称される。
【0034】
スポンジ部材100全体は所定の厚さを有する柔らかな多孔質部材である。スポンジ部材100は円板状のベース領域110とベース領域110の外周面から外方に突出した突出部120とを含む。ベース領域110は多量の水分を保持する部位である。突出部120は水分を保持する保水機能を有しているとともにベース領域110よりも圧縮性に優れた部位である。
【0035】
ベース領域110の中心が収容部の中心CTRに一致するようにスポンジ部材100は
図1に描かれている。
図1に示される中心CTRは収容部の中心だけでなくベース領域110の中心をも表している。しかしながら、ベース領域110の中心はスポンジ部材100が収容部に収容されたときに収容部の中心CTRからずれることもある。したがって、ベース領域110及び収容部の中心の位置関係は限定的に解釈されるべきではない。
【0036】
ベース領域110から外方に突出する突出部120として、スポンジ部材100は略台形板状の8つの突部121~128を含んでいる。複数の突部121~128はベース領域110の外周を略等分するように周方向に間隔を空けて配置されている。すなわち、複数の突部121~128はベース領域110を取り囲むように放射状に配置され、周方向において環状に延びる外周領域を形成している。
【0037】
突部121~128は対称的に配置されている。突部121~128の対称的な配置を表すために、
図1には中心CTRで直交する2つの対称軸SA1,SA2が描かれている。対称軸SA1は、互いに反対方向に突出する突部121,125及び中心CTRを通過している。対称軸SA2上で突部123,127は反対方向に突出している。突部121~128は対称軸SA1,SA2それぞれについて線対称となるように配置されている。
【0038】
突部121~128が配列された周方向において突部121~128の隣には8つの空領域141~148がそれぞれ形成されている。突部121~128及び空領域141~148は周方向において交互に並んでいる。
【0039】
突部121~128及び空領域141~148によって周方向に囲まれたベース領域110には厚さ方向においてスポンジ部材100をそれぞれ貫通する3つの挿通孔131,132,133が形成されている。挿通孔131はベース領域110の表面上で直線的に延びる開口領域を形成するスロットである。挿通孔132,133はベース領域110の表面上で正五角形状の開口領域を形成する貫通孔である。これらの挿通孔131,132,133の開口形状は使用対象の加熱工具(たとえば、半田ごてやツイーザ)の先端形状に適合するように決定されている。たとえば、挿通孔131は半田ごての先端に対する清掃用に形成されていてもよい。挿通孔132,133はツイーザの先端に対する清掃用に使用できる。
【0040】
挿通孔131,132,133が形成されたベース領域110は、スポンジ部材100が膨張した後においても内周壁面IWSによって囲まれた円形領域よりも小さくなるように設計されている。したがって、スポンジ部材100が収容部に押し込まれると、ベース領域110の外周面と内周壁面IWSとの間に空間が形成される。ベース領域110の外周面と内周壁面IWSとの間の空間は、周方向に間隔を空けて並んだ空領域141~148に突部121~128によって仕切られる。
【0041】
突部121~128の一部が内周壁面IWSによって囲まれた円形領域からはみ出すように突部121~128は
図1に描かれている。内周壁面IWSによって囲まれた円形領域からはみ出た部分が円形領域に収まるように、突部121~128はスポンジ部材100が収容部に押し込まれるときに収容部内で圧縮変形される。圧縮変形された突部121の形状が
図1において一点鎖線で概略的に描かれている。一点鎖線で描かれた突部121の形状は他の突部122~128にも援用される。
【0042】
突部121~128の外端はスポンジ部材100が収容部に収容されると内周壁面IWSに当接する一方で、突部121~128と周方向において交互に並ぶ空領域141~148が形成された位置においてスポンジ部材100は内周壁面IWSから離間する。すなわち、内周壁面IWSの一部にスポンジ部材100の外周領域は当接する。このとき、突部121~128に隣り合う空領域141~148それぞれは、隣り合う2つの突部、ベース領域110及び内周壁面IWSによって囲まれる。
【0043】
内周壁面IWSに当接した突部121~128は、外方に作用するスポンジ部材100の膨張力に抗する反力を受ける。反力によって突部121~128は内方に圧縮変形する。このとき、突部121~128は周方向に膨張する。
【0044】
突部121~128の隣には空領域141~148が形成されているので、周方向における突部121~128の膨張は空領域141~148によって吸収され、突部121~128は無理なく変形することができる。したがって、スポンジ部材100は収容部に無理なく嵌り込むように圧縮変形される。
【0045】
一般的にスポンジ部材が無理に変形されると、無理な変形が生じた部分から大きな復元力が生ずる。スポンジ部材の復元力はスポンジ部材を収容部から押し出す方向に作用することもある。しかしながら、
図1に示されるスポンジ部材100は上述の如く無理なく変形するのでスポンジ部材100の復元力は小さい。したがって、スポンジ部材100が復元力によって収容部から押し出されるリスクも小さくなる。
【0046】
内周壁面IWSに当接する突部121~128の外端によって定められるスポンジ部材100の外径寸法(すなわち、対称軸SA1上の2つの突部121,125の外端間の距離)が、スポンジ部材100が膨張する前において内周壁面IWSによって囲まれた円形領域の直径よりも小さくなるように、スポンジ部材100は設計される。想定される膨張率の範囲の中で低い値でスポンジ部材100が膨張したときに突部121~128の外端が内周壁面IWSに当接するように、スポンジ部材100を設計する設計者はスポンジ部材100の外径寸法を決定することが好ましい。この結果、低い膨張率で膨張したスポンジ部材100であっても収容部にぴったりと嵌り込むことができる。スポンジ部材100が大きな膨張率で変形したときであっても、使用者はスポンジ部材100を無理なく圧縮し収容部に容易に収容することができる。
【0047】
スポンジ部材100の突部121~128によって形成される外周領域はベース領域110を周方向において全体的に取り囲む。加えて、これらの突部121~128は対称的に配置されベース領域110の外周に亘って周方向に略等間隔に並べられている。したがって、ベース領域110が突部121~128を通じて収容部の内周壁面IWSからの反力を受ける位置は周方向において対称的にに配分される。この結果ベース領域110は略対称的に圧縮される。
【0048】
ベース領域110は上述の如く略対称的に圧縮されるので、ベース領域110に形成された挿通孔131,132,133も略対称的に縮小する。したがって、ベース領域110内の挿通孔131は直線的な開口形状を維持することができる。同様に、挿通孔132,133は五角形状の開口形状を維持することができる。すなわち、ベース領域110の圧縮変形の結果これらの挿通孔131,132,133は縮小するけれども、これらの挿通孔131,132,133の形状的な歪みは生じにくい。すなわち、収容部に収容される前のスポンジ部材100の挿通孔131,132,133の形状は、収容部に収容された後のスポンジ部材100の挿通孔131,132,133の形状と略相似的な関係を維持することができる。したがって、打ち抜き加工において挿通孔131,132,133が清掃対象の加熱工具の先端の清掃に適した形状に形成されているならば、スポンジ部材100が圧縮された後も清掃に適した形状を維持することができる。
【0049】
上述の実施形態に関して、収容部は平面視において略円形である。しかしながら収容部は平面視において他の形状(たとえば、多角形状や楕円形状)を有してもよい。
【0050】
上述の実施形態に関して、スポンジ部材100の外周領域は8つの突部121~128によって形成されている。しかしながら、外周領域を形成する突部は8を下回る数であってもよいし、8を上回る数であってもよい。
【0051】
上述の実施形態に関して、突部121~128はベース領域110の外周を略等分するように配置されている。すなわち、突部121~128の配置密度はベース領域110を周方向に取り囲む外周領域において略一定である。しかしながら、複数の突部の配置の粗密はベース領域の形状に適合するように決定されてもよい。
【0052】
上述の実施形態に関して、8つの突部121~128は収容部の中心CTRにおいて直交する2つの対称軸SA1,SA2それぞれについて線対称となるように配置されている。しかしながら、スポンジ部材の複数の突部は非対称的に配置されていてもよい。
【0053】
複数の突部の配置及び数は、スポンジ部材が収容部に収容されたときに隣り合う突部が干渉しないように決定されることが好ましい。したがって、スポンジ部材を設計する設計者は、想定される最大の膨張率の下で隣り合う突部が干渉しないようにスポンジ部材の形状を決定することが好ましい。
【0054】
上述の実施形態に関して、8つの突部121~128が配置される領域はベース領域110の外周面の全周長に亘って割り当てられている。しかしながら、複数の突部が配置される領域はベース領域の外周面の全周長の一部の周長区間にのみ割り当てられていてもよい。
【0055】
上述の実施形態に関して、挿通孔131,132,133として直線状のスロット及び五角形状の貫通孔がベース領域110に形成されている。しかしながら、ベース領域110に形成される挿通孔は洗浄対象の加熱工具の先端の形状に適した他の形状を有していてもよい。あるいは、挿通孔はベース領域に形成されなくてもよい。
【0056】
<第2実施形態>
第1実施形態のスポンジ部材100は全体的に円形である。しかしながら、スポンジ部材は他の形状(多角形や楕円)を有してもよい。正方形状の全体形状を有するスポンジ部材が第2実施形態において説明される。
【0057】
図2は、第2実施形態のスポンジ部材100Aの概略的な平面図である。
図1及び
図2を参照して、スポンジ部材100Aが説明される。
【0058】
図2は
図1と同様に中心CTRと2つの対称軸SA1,SA2とを示す。これらに加えて
図2は、平面視において正方形状の凹部を形成する内周壁面IWTを点線の矩形枠として示す。内周壁面IWTによって囲まれた凹部にはスポンジ部材100Aが収容される。凹部の中心が中心CTRに一致し且つ内周壁面IWTが形成する正方形状の辺が対称軸SA1,SA2に平行となるように、内周壁面IWTは
図2に描かれている。中心CTR、対称軸SA1,SA2及び内周壁面IWTを基準にスポンジ部材100Aの形状が説明される。スポンジ部材100Aは形状においてのみ
図1を参照して説明されたスポンジ部材100とは相違する。したがって、スポンジ部材100の製法及び材質に関する説明は、スポンジ部材100Aに援用される。
【0059】
スポンジ部材100Aは、
図1を参照して説明された8つの突部121~128に対応する12個の突部151~156,161~166と、これらの突部151~156,161~166が接続されたベース領域110Aと、を含む。ベース領域110Aは、
図1を参照して説明されたベース領域110に対応する。しかしながらベース領域110とは異なり、ベース領域110Aは略正方形の板状部材(柔らかな多孔質板)である。ベース領域110Aの中心が中心CTRに一致するように、ベース領域110Aは
図2に描かれている。
【0060】
ベース領域110Aは正方形の4つの辺をそれぞれ形成する4つの外縁面111~114を含む。外縁面111,113は対称軸SA2に平行である。すなわち、外縁面111,113は正方形の対辺の関係を有している。外縁面112,114は対称軸SA1に平行である。すなわち、外縁面112,114は正方形の対辺の関係を有している。
【0061】
外縁面111からは3つの突部151,152,153が対称軸SA1と平行に突出している。突部151,153は外縁面111の両端に接続されている一方で、突部151,153の間の突部152は対称軸SA1上で外縁面111に接続されている。
【0062】
突部151,152,153と同様に、突部154,155,156も対称軸SA1と平行に突出している。突部154,155,156の突出方向は突部151,152,153の突出方向とは逆である。突部154,156は外縁面113の両端に接続されている一方で、突部154,156の間の突部155は対称軸SA1上で外縁面113に接続されている。
【0063】
突部151~156が対称軸SA1と平行に突出しているのに対し、突部161~166は対称軸SA1に直交する対称軸SA2に平行に突出している。突部161,162,163は外縁面112から突出している。突部161,163は外縁面112の両端に接続されている一方で、突部161,163の間の突部162は対称軸SA2上で外縁面112に接続されている。突部161,162,163とは反対向きに突部164,165,166は突出している。突部164,166は外縁面114の両端に接続されている一方で、突部164,166の間の突部165は対称軸SA2上で外縁面114に接続されている。突部151~156,161~166は、
図1を参照して説明された突部121~128と同様に、対称軸SA1,SA2それぞれについて線対称である。
【0064】
突部151~156,161~166が配列された周方向において突部151~156,161~166の隣には12個の空領域171~178,181~184がそれぞれ形成されている。空領域181~184は内周壁面IWTによって形成された正方形の角隅部に形成されている。他の空領域171~178は内周壁面IWTによって形成された正方形の辺に沿ってそれぞれ形成されている。突部151~156,161~166及び空領域171~178,181~184は周方向において交互に並んでいる。
【0065】
突部151~156,161~166の一部は、
図2において内周壁面IWTによって囲まれた正方形領域からはみ出している。内周壁面IWTからはみ出た部分が正方形領域に収まるように突部151~156,161~166は収容部内で圧縮変形される。圧縮変形された突部152の形状が
図2において一点鎖線で概略的に描かれている。一点鎖線で描かれた突部152の形状は他の突部151,153~156,161~166にも援用される。
【0066】
突部151~156,161~166の外端はスポンジ部材100Aが収容部に収容されると内周壁面IWTに当接する一方で、突部151~156,161~166と周方向において交互に並ぶ空領域171~178,181~184が形成された位置においてスポンジ部材100Aは内周壁面IWTから離間している。すなわち、内周壁面IWTの一部にスポンジ部材100Aの外周領域に当接する。このとき、突部151~156,161~166に隣り合う空領域171~178,181~184それぞれは、隣り合う2つの突部、ベース領域110Aの外縁面111~114及び内周壁面IWTによって囲まれる。
【0067】
内周壁面IWTに当接した突部151~156,161~166はスポンジ部材100Aの膨張力に抗する反力を受け、反力の作用方向に圧縮変形する。このとき、突部151~156,161~166は周方向に膨張する。
【0068】
突部151~156,161~166の隣には空領域171~178,181~184が形成されているので、周方向における突部151~156,161~166の膨張は空領域171~178,181~184によって吸収される。したがって、スポンジ部材100Aは正方形状の凹部に無理なく嵌り込むように圧縮変形することができる。
【0069】
第1実施形態と第2実施形態との比較から、設計者が収容部の凹部の形状に適合するようにスポンジ部材の形状を変更する結果、収容部へのスポンジ部材の無理のない嵌め込みが可能になることが分かる。したがって、設計者がスポンジ部材が嵌め込まれる収容部の凹部の形状に基づいてスポンジ部材の形状を決定することが好ましい。
【0070】
<第3実施形態>
突部の間の空領域が広くなればなるほど、スポンジ部材が吸収することができる水分量は低減する。したがって、スポンジ部材が水分を保持している期間を長くするためには、狭い空領域が好ましい。狭い空領域を有するスポンジ部材が第3実施形態において説明される。
【0071】
図3は、第3実施形態のスポンジ部材100Bの概略的な平面図である。
図2及び
図3を参照して、スポンジ部材100Bが説明される。
【0072】
スポンジ部材100Bはベース領域110Aから突出する突出部のみにおいて
図2に示されるスポンジ部材100Aと相違する。したがって、第2実施形態の説明は突出部以外の部位に援用される。
【0073】
突出部として、スポンジ部材100Bは4つの突部157,158,167,168を有する。突部157は突出方向及び配置位置において
図2を参照して説明された3つの突部151,152,153の群に対応している。突部158は突出方向及び配置位置において
図2を参照して説明された3つの突部154,155,156の群に対応している。突部167は突出方向及び配置位置において
図2を参照して説明された3つの突部161,162,163の群に対応している。突部168は突出方向及び配置位置において
図2を参照して説明された3つの突部164,165,166の群に対応している。
図2に示される突部151~156,161~166の突出方向及び配置位置に関する説明は突部157,158,167,168に援用される。
【0074】
突部157,158はスポンジ部材100Bが内周壁面IWTに囲まれた収容空間に押し込まれたときに突部157,158の外端縁が対称軸SA2に接近するように圧縮変形する一方で、突部167,168は突部167,168の外端縁が対称軸SA1に接近するように圧縮変形する。この間、突部157,158は対称軸SA2に平行な方向へ膨張する一方で、突部167,168は対称軸SA1に平行な方向へ膨張する。
【0075】
突部157,158,167,168の間には、
図2を参照して説明された空領域181~184が形成されているので、突部157,158,167,168の上述の膨張は空領域181~184によって吸収される。したがって、スポンジ部材100Bは
図2を参照して説明されたスポンジ部材100Aと同様に、内周壁面IWTによって囲まれた収容部に無理なく嵌め込まれる。
【0076】
スポンジ部材100Bの外周領域(すなわち、突部157,158,167,168が配置されている領域)には空領域181~184が形成されている一方で、
図2を参照して説明された空領域171~178は形成されていない。すなわち、空領域171~178に対応する領域は突部157,158,167,168によって占められている。したがって、
図3に示される突部157,158,167,168は、
図2に示される突部151~156,161~166よりも空領域171~178の分だけ多くの水分を吸収することができる。
【0077】
突部157,158,167,168の圧縮しやすさを向上させるために、設計者は突部157,158,167,168に追加的な貫通孔を形成してもよい。この場合、貫通孔の体積の分だけ突部157,158,167,168の保水量は下がるけれども、無理な内部変形は突部157,158,167,168に生じにくくなる。
【0078】
<第4実施形態>
複数の突部がベース領域と視覚的に一体性を保つならば、スポンジ部材は優れた美観を有することができる。複数の突部及びベース領域が一体的に視認されるスポンジ部材が第4実施形態において説明される。
【0079】
図4は、第4実施形態のスポンジ部材100Cの概略的な平面図である。
図1及び
図4を参照して、スポンジ部材100Cが説明される。
【0080】
図4は
図1と同様に、中心CTRと対称軸SA1,SA2と内周壁面IWSとを示す。内周壁面IWSを表す点線円の中の正12角形はスポンジ部材100Cの外周面を表している。内周壁面IWSは正12角形の外接円として
図4に描かれている。すなわち、
図4に示されるスポンジ部材100Cは内周壁面IWSによって形成された凹部に収容されている。内周壁面IWSを表す円と正12角形とによって囲まれた12個の領域それぞれ(すなわち、隣り合う角隅部の間においてスポンジ部材100Cの外周面と内周壁面IWSとによって囲まれた扇形状の空間)は
図1を参照して説明された空領域141~148それぞれに相当する空領域140である。
【0081】
スポンジ部材100Cの外周面を表す正12角形の内接円が
図4において点線で描かれている。内接円で囲まれた領域は、
図1を参照して説明されたベース領域110に対応するベース領域110Cである。内接円からはみ出した部位(すなわち、正12角形の角隅部及びこれらの角隅部の周囲の領域)は、
図1を参照して説明された突出部120に対応する突出部120Cである。突出部120Cは12個の角隅部及びこれらの角隅部の周囲の領域を有する。内接円からはみ出した12個の部位それぞれは上述の実施形態に関連して説明された突部に相当する。内接円からはみ出した12個の部位の圧縮変形が以下に説明される。
【0082】
内接円からはみ出した12個の部位がスポンジ部材100Cの膨張前において収容部内に収まり且つこれらの部位がスポンジ部材100Cの膨張後であって収容部への収容前において内周壁面IWSによって囲まれた円形領域からはみ出すように、スポンジ部材100Cは設計されている。スポンジ部材100Cが水分を供給された後に(すなわち、膨張した後に)内周壁面IWSによって囲まれた円形領域に押し込まれると、スポンジ部材100Cの12個の角隅部それぞれは内周壁面IWSに当接する。このとき、これらの角隅部が鈍るようにスポンジ部材100Cは変形する。これらの角隅部それぞれの隣には空領域140が形成されているので、角隅部での周方向の変形は空領域140によって吸収される。したがって、スポンジ部材100Cは角隅部の周囲において無理なく変形することができる。スポンジ部材100Cが角隅部の周囲において変形すると、角隅部の周囲においてスポンジ部材100C及び内周壁面IWSの大きな接触面積が得られ、スポンジ部材100Cは大きな摩擦力の下で収容部内で固定される。したがって、スポンジ部材100Cは収容部内で位置ズレしにくくなる。
【0083】
スポンジ部材100Cのベース領域110Cと突出部120Cとを仮想的に分ける内接円は視認されないので、スポンジ部材100Cを使用する使用者はベース領域110C及び突出部120Cを一体的に視認することができる。
【0084】
スポンジ部材100Cの12個の角隅部それぞれは鈍角である。したがって角隅部の周囲の領域は屈曲することなく変形することができる。
【0085】
スポンジ部材100Cは、第1実施形態乃至第3実施形態のスポンジ部材100,100A,100Bとは異なり、スポンジ部材100Cの外周面から凹没した部位を有していない。したがって、スポンジ部材100Cは内周壁面IWSによって囲まれた空間の広い部分を占めることができ多くの水分を保持することができる。
【0086】
本実施形態に関して、スポンジ部材100Cは正12角形である。しかしながら、スポンジ部材は12を超える角隅部を有する多角形であってもよい。スポンジ部材が収容される凹部が円形であるならば、角隅部が増えるほど隣り合う角隅部の間でスポンジ部材の外周面と収容部の内周壁面との間の空領域は狭くなる。この結果、スポンジ部材は多くの水分を吸収することができ、長期間に亘って水分を保持することができる。一方、スポンジ部材は12を下回る角隅部を有してもよい。この場合、スポンジ部材の保水能力は低下するけれども、角隅部の隣の空領域は広くなるので無理な変形が角隅部に生ずるリスクは低下する。
【0087】
本実施形態に関して、スポンジ部材100Cは正多角形である。しかしながら、スポンジ部材は正多角形でなくてもよい(たとえば、長方形)。
【0088】
本実施形態に関して説明された正12角形は対称軸SA1,SA2それぞれについて線対称である。しかしながら、非対称的な形状にスポンジ部材は形成されてもよい。
【0089】
本実施形態に関して、スポンジ部材100Cの角隅部それぞれは鈍角である。しかしながら、角隅部の周囲において屈曲変形が生じないならばスポンジ部材の角隅部のうち一部又は全部は鋭角に形成されていてもよい。
【0090】
<第5実施形態>
スポンジ部材が収容部の内周壁面に広い面積で接触すると、スポンジ部材と収容部との間に高い静止摩擦力が生じスポンジ部材は収容部内で動きにくくなる。すなわちスポンジ部材は、スポンジ部材の表面に押し当てられながら移動する加熱工具とともに移動しにくくなる。スポンジ部材が静止している一方で加熱工具が移動することができるので、加熱工具の清掃部位はスポンジ部材の表面に擦れ加熱工具に付着した接合材料や汚れは効率的に除去される。加熱工具に対する効率的な清掃が可能になるように収容部の内周壁面に広い面積で接触するスポンジ部材が第5実施形態において説明される。
【0091】
図5は、第5実施形態のスポンジ部材100Dの概略的な平面図である。
図1及び
図5を参照して、スポンジ部材100Dが説明される。
【0092】
図5は
図1と同様に、中心CTRと対称軸SA1,SA2と内周壁面IWSとを示す。これらに加えて、
図5は小円SCLと小円SCLより大きな大円LCLとを点線で示す。小円SCL及び大円LCLの中心は中心CTRに一致している。小円SCLによって囲まれた領域は、
図1を参照して説明されたベース領域110に対応するベース領域110Dである。ベース領域110D内には挿通孔132D,133Dが形成されている。これらの挿通孔132D,133Dはツイーザの清掃に利用可能である。小円SCLと大円LCLとの間の環状領域においてベース領域110Dから外方に突出する部位は、
図1を参照して説明された突出部120に相当する突出部120Dである。突出部120Dは、8つの突部121D~128Dを含む。これらの突部121D~128Dは、
図1を参照して説明された突部121~128にそれぞれ対応している。突部121~128の配置及び突出方向に関する説明は、突部121D~128Dに援用される。
【0093】
突部121D~128D及びベース領域110Dに加えて、スポンジ部材100Dは大円LCLの外に位置する円環状の外縁部190を備える。外縁部190の中心が中心CTRに一致するようにスポンジ部材100Dは
図5に描かれている。外縁部190は周方向に延び、突部121D~128Dの外端にそれぞれ接続されている。外縁部190とベース領域110Dとの間(すなわち、大円LCLと小円SCLとの間)には、突部121D~128Dと周方向に交互に並ぶ貫通孔141D~148Dが形成されている。貫通孔141D~148Dは外縁部190とベース領域110Dとの間で突部121D~128Dによって仕切られ、間隔を空けて形成されている。貫通孔141D~148Dはスポンジ部材100Dを厚さ方向に貫いているとともに周方向に長い非円形の開口領域を形成している。これらの貫通孔141D~148Dは、
図1を参照して説明された空領域141~148にそれぞれ対応する。空領域141~148の配置に関する説明は貫通孔141D~148Dに援用される。
【0094】
貫通孔141D~148Dの一部、突部121D~128Dの一部及び外縁部190が内周壁面IWSによって囲まれた円形領域からはみ出すようにスポンジ部材100Dは
図5に描かれている。内周壁面IWSによって囲まれた円形領域からはみ出た部分が円形領域に収まるように、小円SCLの外側の外周領域(すなわち、突部121D~128D、貫通孔141D~148D及び外縁部190)はスポンジ部材100Dが収容部に押し込まれるときに収容部内で圧縮変形される。このとき、スポンジ部材100Dを厚さ方向に貫く貫通孔141D~148Dは内方への突部121D~128Dの圧縮に伴う周方向への突部121D~128Dの膨張を突部121D~128Dの厚さ全体に亘って吸収する。したがって、突部121D~128Dの無理な変形は生じない。
【0095】
スポンジ部材100Dの外周領域が圧縮されると外縁部190の外周縁面は内周壁面IWSに周方向において全体的に当接する。したがって、スポンジ部材100Dは広い面積で内周壁面IWSに接触することができる。内周壁面IWSに接触する外縁部190の外周縁面は突部121D~128Dの復元力によって内周壁面IWSに押し付けられる。したがって、スポンジ部材100Dは収容部内でしっかりと固定される。
【0096】
収容部に対するスポンジ部材100Dの広い接触面積に寄与する外縁部190は、突部121D~128Dに直接的に繋がる接続部位と、接続部位から周方向に延設され外縁部190及びベース領域110Dの間で貫通孔141D~148Dを形成する空間形成部位とに分けられる。接続部位の変形は突部121D~128Dによってある程度拘束される一方で、突部121D~128Dは空間形成部位の変形を拘束しない。したがって、空間形成部位は接続部位よりも収容部の形状に合わせて無理なく変形しやすくなる。空間形成部位の内側の貫通孔141D~148Dは周方向に長いので、空間形成部位も周方向に長くなる。収容部の形状に合わせて無理なく変形することができる長さが長くなるので、突部121D~128Dだけでなく外縁部190にも無理な変形は生じにくい。
【0097】
8つの突部121D~128Dはスポンジ部材100Dの無理のない変形に寄与するだけでなくベース領域110Dと外縁部190との一体性を保つことにも寄与する。これらの突部121D~128Dのうち一部が千切れても、ベース領域110D及び外縁部190の一体性は保たれる。
【0098】
上述の実施形態に関して、スポンジ部材100Dは略円形である。しかしながら、スポンジ部材の形状が収容部の凹部の形状に一致するように、設計者はスポンジ部材の形状を決定してもよい。たとえば、正方形状のスポンジ部材は
図2を参照して説明された内周壁面IWTによって形成される正方形状の凹部に対して好適に利用可能である。この場合、正方形に囲まれた領域内で正方形の辺に沿って複数の貫通孔が形成及び配列されることが好ましい。
【0099】
複数の貫通孔を仕切る複数の突部の変形に内周壁面からの反力のエネルギは消費されるので、複数の突部及び複数の貫通孔に囲まれたベース領域には減衰された反力のエネルギが伝達される。したがって、ベース領域には無理な変形は生じにくい。ベース領域を取り囲む複数の突部及び複数の貫通孔がスポンジ部材の外周縁の近くに形成されると、内周壁面から複数の突部までの距離が短くなり、複数の突部が配列された領域の外側で無理な変形が生ずるリスクは小さくなる。したがって、複数の突部及び複数の貫通孔がスポンジ部材の外周縁の近くに形成されることが好ましい。複数の突部及び複数の貫通孔が円形のスポンジ部材に形成されるときは、スポンジ部材の半径に相当する長さの直径を有しているとともにスポンジ部材と同心の円形領域よりも外側の領域が複数の突部及び複数の貫通孔の形成領域として好適に利用可能である。複数の突部及び複数の貫通孔が正方形のスポンジ部材に形成されるときは、正方形の辺の半分に相当する長さの辺を有しているとともにスポンジ部材の対角線上に4つの角隅部を有する正方形領域よりも外側の領域が複数の突部及び複数の貫通孔の形成領域として好適に利用可能である。
【0100】
上述の実施形態に関して、スポンジ部材100Dは8つの突部121D~128Dを有している。しかしながら、スポンジ部材は8を下回る突部を有してもよい。スポンジ部材100Dから突部122D~128Dが除去されるならば、外縁部190は突部121Dのみによってベース領域110Dに接続される。このとき、突部121Dに両端を有する環状のスロットが小円SCLと大円LCLとの間に形成される(すなわち、上述の空間形成部位は周方向に非常に長くなる)。この結果、外縁部190の無理な変形は生じにくくなる。外縁部及びベース領域の接続構造の強度を考慮して、8を超える突部がスポンジ部材に形成されてもよい。突部の増加は外縁部及びベース領域の接続構造を強化するだけでなく、追加的な突部の分だけスポンジ部材の保水機能をも向上させる。したがって、スポンジ部材を設計する設計者が外縁部及びベース領域の接続構造の強度、外縁部の変形しやすさ及びスポンジ部材の保水機能を考慮していくつの突部をスポンジ部材に形成するかを決定することが好ましい。
【0101】
上述の実施形態に関して、スポンジ部材100Dには周方向に長い貫通孔141D~148Dが形成される。しかしながら、円形の貫通孔がスポンジ部材に形成されてもよい。円形の貫通孔は周方向に長い非円形孔よりも周方向に短くなるので、スポンジ部材を設計する設計者は周方向に長い非円形孔よりも多い円形貫通孔をスポンジ部材内で周方向に配列することができる。貫通孔の数、形状及び配置位置は突部の数、形状及び配置位置に直接的に関係する。したがって、突部と同様に、貫通孔は外縁部及びベース領域の接続構造の強度、外縁部の変形しやすさ及びスポンジ部材の保水機能を考慮して設計されることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0102】
上述の実施形態の原理は、加熱工具を利用する様々な技術分野に好適に利用される。
【符号の説明】
【0103】
100,100A~100D・・・・・・・・・・・・・・・スポンジ部材
110,110A,110C,110D・・・・・・・・・・ベース領域
120,120C,120D・・・・・・・・・・・・・・・突出部
121~128・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・突部
121D~128D・・・・・・・・・・・・・・・・・・・突部
131~133,132D,133D・・・・・・・・・・・挿通孔
140~148・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・空領域
141D~148D・・・・・・・・・・・・・・・・・・・貫通孔
151~158・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・突部
161~168・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・突部
171~178・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・空領域
181~184・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・空領域
190・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・外縁部
IWS,IWT・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・内周壁面
SA1,SA2・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・対称軸