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特許7137821移動体誘導システム、移動体誘導方法、プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-07
(45)【発行日】2022-09-15
(54)【発明の名称】移動体誘導システム、移動体誘導方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/10 20060101AFI20220908BHJP
   G01S 5/14 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
G05D1/10
G01S5/14
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018097343
(22)【出願日】2018-05-21
(65)【公開番号】P2019204172
(43)【公開日】2019-11-28
【審査請求日】2021-04-27
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 1.移動体誘導システム、移動体誘導方法、プログラムの刊行物での発表 刊行物:情報処理学会第80回全国大会講演論文集 発行者:一般社団法人情報処理学会 発行日:平成30年3月13日 2.移動体誘導システム、移動体誘導方法、プログラムの集会での発表 集会名:情報処理学会第80回全国大会 開催場所:早稲田大学西早稲田キャンパス 開催日:平成30年3月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】507234427
【氏名又は名称】公立大学法人岩手県立大学
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】大門 雅尚
(72)【発明者】
【氏名】岡本 東
(72)【発明者】
【氏名】堀川 三好
【審査官】今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-030407(JP,A)
【文献】国際公開第2018/021300(WO,A1)
【文献】特開2015-180873(JP,A)
【文献】特開2016-075669(JP,A)
【文献】国際公開第2018/078859(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/00-1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体を目標位置に誘導する移動体誘導システムであって、
前記移動体が前記目標位置を含む所定領域内に存在する場合に、前記所定領域内の複数の位置の各々に設けられた複数の第1通信装置と、前記移動体に設けられた第2通信装置との何れか一方から送信された無線信号を他方が受信したときの受信信号強度に関する情報を経時的に取得する取得手段と、
前記複数の第1通信装置の各々が送信又は受信した無線信号の受信信号強度に基づいて前記移動体の位置を推定する位置推定手段と、
推定された位置に基づいて、前記移動体が前記目標位置に近づくように前記移動体を制御する制御手段と、
前記複数の第1通信装置の各々が送信又は受信した無線信号の受信信号強度の経時的な変化に基づいて前記移動体の移動方向を推定する方向推定手段と、を備え
前記制御手段は、推定された移動方向と推定された位置とに基づいて、前記移動体が前記目標位置に近づくように前記移動体を制御し、
前記方向推定手段は、前記複数の第1通信装置のうち送信又は受信した無線信号の受信信号強度が減少した第1通信装置から前記複数の第1通信装置のうち送信又は受信した無線信号の受信信号強度が増加した第1通信装置に向くベクトルを、対応する受信信号強度の減少量及び増加量に基づいて、無線信号の受信信号強度が減少した第1通信装置毎に生成し、生成したベクトルを合成した合成ベクトルに基づいて前記移動体の移動方向を推定する、移動体誘導システム。
【請求項2】
前記位置推定手段は、前記複数の第1通信装置のうち少なくとも3つの第1通信装置の各々に対応する無線信号の受信信号強度に基づいて生成された、前記少なくとも3つの第1通信装置の各々と前記第2通信装置との距離を要素とする第1ベクトルと、前記所定領域内の所定位置に対応する第2ベクトルであって、前記少なくとも3つの第1通信装置の各々と前記所定位置との距離を要素とする第2ベクトルとの類似度に基づいて、前記移動体の位置を推定する、請求項1に記載の移動体誘導システム。
【請求項3】
移動体を目標位置に誘導する移動体誘導システムであって、
前記移動体が前記目標位置を含む所定領域内に存在する場合に、前記所定領域内の複数の位置の各々に設けられた複数の第1通信装置と、前記移動体に設けられた第2通信装置との何れか一方から送信された無線信号を他方が受信したときの受信信号強度に関する情報を経時的に取得する取得手段と、
前記複数の第1通信装置の各々が送信又は受信した無線信号の受信信号強度に基づいて前記移動体の位置を推定する位置推定手段と、
推定された位置に基づいて、前記移動体が前記目標位置に近づくように前記移動体を制御する制御手段と、
を備え、
前記複数の第1通信装置のうち何れかの第1通信装置は、前記目標位置に設けられており、
前記目標位置に設けられた第1通信装置が送信又は受信した無線信号の受信信号強度が所定の条件を満たす場合に、前記移動体が前記目標位置に到達したことを検知する検知手段を備え、
前記所定の条件は、前記目標位置に設けられた第1通信装置が送信又は受信した無線信号の受信信号強度が、前記所定領域内の複数の位置に設けられた第1通信装置が送信又は受信した無線信号の受信信号強度よりも高いことを含む、移動体誘導システム。
【請求項4】
前記所定の条件は、前記目標位置に設けられた第1通信装置が送信又は受信した無線信号の受信信号強度が所定値以上であることを含む、請求項に記載の移動体誘導システム。
【請求項5】
前記移動体が前記目標位置に到達したことを検知した場合に、前記移動体から前記目標位置の方向を撮像する撮像手段と、
撮像された画像に基づいて前記移動体の移動を制御する第2制御手段と、を備える、請求項3又は4に記載の移動体誘導システム。
【請求項6】
人工衛星から送信された測位信号を取得する第2取得手段と、
取得した測位信号に基づいて前記移動体の位置を推定する第2位置推定手段と、
前記移動体の位置が前記所定領域外の場合に、前記移動体を前記所定領域内に移動させる第2制御手段と、を備える、請求項1~の何れかに記載の移動体誘導システム。
【請求項7】
コンピュータを用いて移動体を目標位置に誘導する移動体誘導方法であって、
前記コンピュータは、
前記移動体が前記目標位置を含む所定領域内に存在する場合に、前記所定領域内の複数の位置の各々に設けられた複数の第1通信装置と、前記移動体に設けられた第2通信装置との何れか一方から送信された無線信号を他方が受信したときの受信信号強度に関する情報を経時的に取得するステップと、
前記複数の第1通信装置の各々が送信又は受信した無線信号の受信信号強度に基づいて前記移動体の位置を推定するステップと、
推定された位置に基づいて、前記移動体が前記目標位置に近づくように前記移動体を制御するステップと、
前記複数の第1通信装置の各々が送信又は受信した無線信号の受信信号強度の経時的な変化に基づいて前記移動体の移動方向を推定するステップと、の各ステップを実行し、
前記制御するステップにおいて、推定された移動方向と推定された位置とに基づいて、前記移動体が前記目標位置に近づくように前記移動体を制御し、
前記移動体の移動方向を推定するステップにおいて、前記複数の第1通信装置のうち送信又は受信した無線信号の受信信号強度が減少した第1通信装置から前記複数の第1通信装置のうち送信又は受信した無線信号の受信信号強度が増加した第1通信装置に向くベクトルを、対応する受信信号強度の減少量及び増加量に基づいて、無線信号の受信信号強度が減少した第1通信装置毎に生成し、生成したベクトルを合成した合成ベクトルに基づいて前記移動体の移動方向を推定する、移動体誘導方法。
【請求項8】
コンピュータを用いて移動体を目標位置に誘導するためのプログラムであって、
前記コンピュータに、
前記移動体が前記目標位置を含む所定領域内に存在する場合に、前記所定領域内の複数の位置の各々に設けられた複数の第1通信装置と、前記移動体に設けられた第2通信装置との何れか一方から送信された無線信号を他方が受信したときの受信信号強度に関する情報を経時的に取得する機能と、
前記複数の第1通信装置の各々が送信又は受信した無線信号の受信信号強度に基づいて前記移動体の位置を推定する機能と、
推定された位置に基づいて、前記移動体が前記目標位置に近づくように前記移動体を制御する機能と、
前記複数の第1通信装置の各々が送信又は受信した無線信号の受信信号強度の経時的な変化に基づいて前記移動体の移動方向を推定する機能と、を実現させ
前記制御する機能が、推定された移動方向と推定された位置とに基づいて、前記移動体が前記目標位置に近づくように前記移動体を制御し、
前記移動体の移動方向を推定する機能が、前記複数の第1通信装置のうち送信又は受信した無線信号の受信信号強度が減少した第1通信装置から前記複数の第1通信装置のうち送信又は受信した無線信号の受信信号強度が増加した第1通信装置に向くベクトルを、対応する受信信号強度の減少量及び増加量に基づいて、無線信号の受信信号強度が減少した第1通信装置毎に生成し、生成したベクトルを合成した合成ベクトルに基づいて前記移動体の移動方向を推定する、プログラム。
【請求項9】
コンピュータを用いて移動体を目標位置に誘導する移動体誘導方法であって、
前記コンピュータは、
前記移動体が前記目標位置を含む所定領域内に存在する場合に、前記所定領域内の複数の位置の各々に設けられた複数の第1通信装置と、前記移動体に設けられた第2通信装置との何れか一方から送信された無線信号を他方が受信したときの受信信号強度に関する情報を経時的に取得するステップと、
前記複数の第1通信装置の各々が送信又は受信した無線信号の受信信号強度に基づいて前記移動体の位置を推定するステップと、
推定された位置に基づいて、前記移動体が前記目標位置に近づくように前記移動体を制御するステップと、の各ステップを実行し、
前記複数の第1通信装置のうち何れかの第1通信装置は、前記目標位置に設けられており、
前記目標位置に設けられた第1通信装置が送信又は受信した無線信号の受信信号強度が所定の条件を満たす場合に、前記移動体が前記目標位置に到達したことを検知するステップをさらに実行し、
前記所定の条件は、前記目標位置に設けられた第1通信装置が送信又は受信した無線信号の受信信号強度が、前記所定領域内の複数の位置に設けられた第1通信装置が送信又は受信した無線信号の受信信号強度よりも高いことを含む、移動体誘導方法。
【請求項10】
コンピュータを用いて移動体を目標位置に誘導するためのプログラムであって、
前記コンピュータに、
前記移動体が前記目標位置を含む所定領域内に存在する場合に、前記所定領域内の複数の位置の各々に設けられた複数の第1通信装置と、前記移動体に設けられた第2通信装置との何れか一方から送信された無線信号を他方が受信したときの受信信号強度に関する情報を経時的に取得する機能と、
前記複数の第1通信装置の各々が送信又は受信した無線信号の受信信号強度に基づいて前記移動体の位置を推定する機能と、
推定された位置に基づいて、前記移動体が前記目標位置に近づくように前記移動体を制御する機能と、を実現させ、
前記複数の第1通信装置のうち何れかの第1通信装置は、前記目標位置に設けられており、
前記目標位置に設けられた第1通信装置が送信又は受信した無線信号の受信信号強度が所定の条件を満たす場合に、前記移動体が前記目標位置に到達したことを検知する機能をさらに実現させ、
前記所定の条件は、前記目標位置に設けられた第1通信装置が送信又は受信した無線信号の受信信号強度が、前記所定領域内の複数の位置に設けられた第1通信装置が送信又は受信した無線信号の受信信号強度よりも高いことを含む、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体を所定の目標位置に誘導する移動体誘導システム、移動体誘導方法、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば小型の無人マルチコプター等の移動体を様々な産業分野で活用することが期待されている。かかる移動体の活用例としては、例えば、警備員が発見した不審者をカメラで撮像しながら追尾することや、人間が近くに存在しない環境で野生動物を観察することや、工場や倉庫内の見廻りや点検を行うことや、物品を所定の位置まで搬送すること等が挙げられる。
【0003】
このように、様々な領域で移動体の活用が期待されている一方で、当該移動体の操作者が操作を習熟するためには相当の訓練期間が必要になる。そこで、移動体を自律制御させるための技術が提案されている。
【0004】
かかる技術としては、例えば、GPS(Global Positioning System)信号を用いて無人マルチコプターの位置制御を行うものが知られている(例えば、非特許文献1参照)。また、無人マルチコプターの誘導制御を、当該マルチコプターに搭載されたカメラを用いて撮像された画像情報に基づいて行うものも知られている(例えば、非特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】鈴木智他、「拡張カルマンフィルタを用いたGPS/非GPS空間における自立飛行ドローンのナビゲーション」、計測と制御、Vol.56、No.9、pp.675-678、2017年
【文献】森亮介、他3名、「視覚情報に基づく小型無人ヘリコプタの誘導制御」、日本ロボット学会誌、2008年11月、第26巻、第8号、p.905-912
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非特許文献1に記載された技術では、GPS衛星から受信したGPS信号に基づいて無人マルチコプターの位置制御を行うようになっているので、例えば屋内、建造物の近辺、橋梁下等のようにGPS信号を受信し難い環境下では、無人マルチコプターの位置制御を正確に行うことができず、結果として、無人マルチコプターを目標位置に誘導するのが困難になる虞があった。
【0007】
また、非特許文献2に記載された技術では、画像処理のために十分な特徴量を取得する必要があるので、例えば暗所等のように輝度の低い環境においては、撮像対象の特徴量を十分に取得することができず、結果として、小型無人マルチコプターの誘導制御を行うのが困難になる虞があった。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、例えば屋内や暗所等の環境下であっても、移動体を目標位置に誘導することの可能な移動体誘導システム、移動体誘導方法、プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、第一に本発明は、移動体を目標位置に誘導する移動体誘導システムであって、前記移動体が前記目標位置を含む所定領域内に存在する場合に、前記所定領域内の複数の位置の各々に設けられた複数の第1通信装置と、前記移動体に設けられた第2通信装置との何れか一方から送信された無線信号を他方が受信したときの受信信号強度に関する情報を継時的に取得する取得手段と、前記複数の第1通信装置の各々が送信又は受信した無線信号の受信信号強度に基づいて前記移動体の位置を推定する位置推定手段と、推定された位置に基づいて、前記移動体が前記目標位置に近づくように前記移動体を制御する制御手段と、を備える移動体誘導システムを提供する(発明1)。
【0010】
ここで、受信信号強度に関する情報とは、例えば、受信信号強度の値であってもよいし、受信信号強度の値を所定の計算式に代入することによって得られた値であってもよいし、受信信号強度の度合いを表す情報であってもよい。
【0011】
かかる発明(発明1)によれば、第1通信装置又は第2通信装置が受信した無線信号の受信信号強度に関する情報に基づいて移動体の位置が推定され、推定された位置に基づいて移動体が目標位置に近づくように制御されるので、第1通信装置又は第2通信装置が受信した無線信号の受信信号強度に基づいて移動体を目標位置に誘導することが可能になる。ここで、目標位置を含む所定領域が例えば屋内や暗所等の環境下に設けられている場合であっても、第1通信装置と第2通信装置との間で無線信号を送受信することが可能であることから、移動体が所定領域内に存在する場合には、常に目標位置に向かって移動するように移動体を制御することができる。これにより、例えば屋内や暗所等の環境下であっても、移動体を目標位置に誘導することができる。
【0012】
上記発明(発明1)においては、前記位置推定手段は、前記複数の第1通信装置のうち少なくとも3つの第1通信装置の各々に対応する無線信号の受信信号強度に基づいて生成された、前記少なくとも3つの第1通信装置の各々と前記第2通信装置との距離を要素とする第1ベクトルと、前記所定領域内の所定位置に対応する第2ベクトルであって、前記少なくとも3つの第1通信装置の各々と前記所定位置との距離を要素とする第2ベクトルとの類似度に基づいて、前記移動体の位置を推定してもよい(発明2)。
【0013】
ここで、第1通信装置及び第2通信装置のうち無線信号を受信する一方の通信装置の受信特性(例えばアンテナ利得等)は、例えば当該一方の通信装置の種類毎及び/又は個体毎に異なり得ることから、第2通信装置が所定領域内の或る位置に存在する場合に当該一方の通信装置が受信した無線信号の受信信号強度は、当該一方の通信装置の種類毎及び/又は個体毎に異なる場合がある。すなわち、複数の第1通信装置の各々と第2通信装置との距離と、受信信号強度との関係は、第1通信装置及び第2通信装置のうち無線信号を受信する一方の通信装置の種類毎及び/又は個体毎に異なる場合がある。
【0014】
かかる発明(発明2)によれば、少なくとも3つの第1通信装置の各々に対応する受信信号強度に関する情報に基づいて、少なくとも3つの第1通信装置の各々と第2通信装置との距離を要素とする第1ベクトルを生成しているので、例えば第1通信装置及び第2通信装置のうち無線信号を受信する一方の通信装置の受信特性が当該一方の通信装置の種類毎及び/又は個体毎に異なる場合であっても、第1ベクトルを、少なくとも3つの第1通信装置の各々に対応する受信信号強度と、少なくとも3つの第1通信装置の各々と第2通信装置との距離との関係に基づいて、少なくとも3つの第1通信装置毎に生成することができる。そして、第1ベクトルと、少なくとも3つの第1通信装置の各々と所定領域内の所定位置との距離を要素とする第2ベクトルとの類似度に基づいて第2通信装置の位置を推定しているので、例えば第1ベクトルと第2ベクトルとの類似度が高い場合には、第2ベクトルに対応する所定位置を第2通信装置の位置と推定することができる。このように、受信信号強度に関する情報に基づいてもとめた第1通信装置及び第2通信装置間の距離を単に比較するのではなく、第1ベクトルと第2ベクトルとの類似度から第2通信装置の位置を推定することにより、第1通信装置及び第2通信装置のうち無線信号を受信する一方の通信装置の受信特性の違いに拘らずに第2通信装置の位置を正確に推定することができる。
【0015】
上記発明(発明1~2)においては、前記複数の第1通信装置の各々が送信又は受信した無線信号の受信信号強度の経時的な変化に基づいて前記移動体の移動方向を推定する方向推定手段を備え、前記制御手段は、推定された移動方向と推定された位置とに基づいて、前記移動体が前記目標位置に近づくように前記移動体を制御してもよい(発明3)。
【0016】
かかる発明(発明3)によれば、第1通信装置又は第2通信装置が受信した無線信号の受信信号強度に関する情報に基づいて移動体の移動方向及び位置が推定され、推定された移動方向及び位置に基づいて、移動体が目標位置に近づくように制御する(例えば、移動体の移動方向を目標位置に向ける等)ことが可能になるので、第1通信装置又は第2通信装置が受信した無線信号の受信信号強度に基づいて移動体を目標位置に容易に誘導することができる。
【0017】
上記発明(発明3)においては、前記方向推定手段は、前記複数の第1通信装置のうち送信又は受信した無線信号の受信信号強度が減少した第1通信装置から前記複数の第1通信装置のうち送信又は受信した無線信号の受信信号強度が増加した第1通信装置に向くベクトルを、対応する受信信号強度の減少量及び増加量に基づいて、無線信号の受信信号強度が減少した第1通信装置毎に生成し、生成したベクトルを合成した合成ベクトルに基づいて前記移動体の移動方向を推定してもよい(発明4)。
【0018】
かかる発明(発明4)によれば、無線信号の受信信号強度が減少した(つまり、移動体が離れていった)第1通信装置から無線信号の受信信号強度が増加した(つまり、移動体が近づいてきた)第1通信装置に向くベクトルを合成した合成ベクトルに基づいて移動体の移動方向が推定されるので、無線信号の受信信号強度に基づいて移動体の移動方向を推定することができる。これにより、移動体の移動方向を、例えば方向センサ等を用いることなく推定することができるので、移動体誘導システムの製造コストを抑えることができる。
【0019】
上記発明(1~4)においては、前記複数の第1通信装置のうち何れかの第1通信装置は、前記目標位置に設けられており、前記目標位置に設けられた第1通信装置が送信又は受信した無線信号の受信信号強度が所定の条件を満たす場合に、前記移動体が前記目標位置に到達したことを検知する検知手段を備えてもよい(発明5)。
【0020】
かかる発明(発明5)によれば、目標位置に設けられた第1通信装置が送信又は受信した無線信号の受信信号強度が所定の条件を満たす場合に移動体が目標位置に到達したことを検知することが可能になるので、移動体が目標位置に到達したことを容易に認識することができる。
【0021】
上記発明(発明5)においては、前記所定の条件は、前記目標位置に設けられた第1通信装置が送信又は受信した無線信号の受信信号強度が、前記所定領域内の複数の位置に設けられた第1通信装置が送信又は受信した無線信号の受信信号強度よりも高いことを含んでもよい(発明6)。
【0022】
かかる発明(発明6)によれば、目標位置に設けられた第1通信装置が送信又は受信した無線信号の受信信号強度が、所定領域内の複数の位置に設けられた第1通信装置が送信又は受信した無線信号の受信信号強度よりも高い場合(つまり、目標位置に設けられた第1通信装置と移動体との距離が、所定領域内の複数の位置の各々に設けられた第1通信装置と移動体との距離よりも短い場合)に、移動体が目標位置に到達したと検知することが可能になる。
【0023】
上記発明(発明5~6)においては、前記所定の条件は、前記目標位置に設けられた第1通信装置が送信又は受信した無線信号の受信信号強度が所定値以上であることを含んでもよい(発明7)。
【0024】
かかる発明(発明7)によれば、目標位置に設けられた第1通信装置が送信又は受信した無線信号の受信信号強度が所定値以上の場合(つまり、目標位置に設けられた第1通信装置と移動体との距離が所定値以下になった場合)に、移動体が目標位置に到達したと検知することが可能になる。
【0025】
上記発明(発明5~7)においては、前記移動体が前記目標位置に到達したことを検知した場合に、前記移動体から前記目標位置の方向を撮像する撮像手段と、撮像された画像に基づいて前記移動体の移動を制御する第2制御手段と、を備えてもよい(発明8)。
【0026】
かかる発明(発明8)によれば、移動体が目標位置に到達した場合に移動体から目標位置の方向を撮像することができるので、撮像画像に基づいて目標位置及びその周辺の安全等を確認することができる。したがって、例えば障害物等の物体が目標位置に存在しているのを撮像画像に基づいて検知した場合には、当該物体を避けて目標位置の近辺に停止又は降下するように移動体を制御することが可能になり、例えば移動体の位置が目標位置からずれているのを撮像画像に基づいて検知した場合には、移動体の位置を目標位置に合わせるように移動体を制御することが可能になる。
【0027】
上記発明(発明1~8)においては、人工衛星から送信された測位信号を取得する第2取得手段と、取得した測位信号に基づいて前記移動体の位置を推定する第2位置推定手段と、前記移動体の位置が前記所定領域外の場合に、前記移動体を前記所定領域内に移動させる第2制御手段と、を備えてもよい(発明9)。
【0028】
かかる発明(発明9)によれば、移動体が所定領域外に存在する場合には、人工衛星から送信された測位信号に基づいて、移動体を所定領域内に移動させるように制御することができる。
【0029】
第二に本発明は、コンピュータを用いて移動体を目標位置に誘導する移動体誘導方法であって、前記コンピュータは、前記移動体が前記目標位置を含む所定領域内に存在する場合に、前記所定領域内の複数の位置の各々に設けられた複数の第1通信装置と、前記移動体に設けられた第2通信装置との何れか一方から送信された無線信号を他方が受信したときの受信信号強度に関する情報を継時的に取得するステップと、前記複数の第1通信装置の各々が送信又は受信した無線信号の受信信号強度に基づいて前記移動体の位置を推定するステップと、推定された位置に基づいて、前記移動体が前記目標位置に近づくように前記移動体を制御するステップと、の各ステップを実行する移動体誘導方法を提供する(発明10)。
【0030】
第三に本発明は、コンピュータを用いて移動体を目標位置に誘導するためのプログラムであって、前記コンピュータに、前記移動体が前記目標位置を含む所定領域内に存在する場合に、前記所定領域内の複数の位置の各々に設けられた複数の第1通信装置と、前記移動体に設けられた第2通信装置との何れか一方から送信された無線信号を他方が受信したときの受信信号強度に関する情報を継時的に取得する機能と、前記複数の第1通信装置の各々が送信又は受信した無線信号の受信信号強度に基づいて前記移動体の位置を推定する機能と、推定された位置に基づいて、前記移動体が前記目標位置に近づくように前記移動体を制御する機能と、を実現させるためのプログラムを提供する(発明11)。
【発明の効果】
【0031】
本発明の移動体誘導システム、移動体誘導方法、プログラムによれば、例えば屋内や暗所等の環境下であっても、移動体を目標位置に誘導することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の第1実施形態に係る移動体誘導システムの基本構成を概略的に示す図である。
図2】第2通信装置の構成を示すブロック図である。
図3】移動体誘導システムで主要な役割を果たす機能を説明するための機能ブロック図である。
図4】領域内での移動体の移動方向の一例を示す図である。
図5】取得データの構成例を示す図である。
図6】第1通信装置及び第2通信装置間の距離と、受信信号強度との関係を示す図である。
図7】合成ベクトルの一例を示す図である。
図8】移動体の移動方向及び目標位置の方向の一例を示す図である。
図9】本発明の第1実施形態に係る移動体誘導システムの主要な処理の一例を示すフローチャートである。
図10】本発明の第2実施形態に係る移動体誘導システムにおける、位置推定の対象となる複数のサブ領域の一例を示す図である。
図11】第2ベクトルデータの構成例を示す図である。
図12】ベクトル空間モデルの一例を示す図である。
図13】本発明の第2実施形態に係る移動体誘導システムの変形例における、位置推定の対象となる複数のサブ領域の一例を示す図である。
図14】変形例に係る移動体誘導システムで主要な役割を果たす機能を説明するための機能ブロック図である。
図15】変形例に係る移動体誘導システムで主要な役割を果たす機能を説明するための機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について添付図面を参照して詳細に説明する。ただし、この実施形態は例示であり、本発明はこれに限定されるものではない。
【0034】
(1)移動体誘導システムの基本構成
図1は、本発明の第1実施形態に係る移動体誘導システムの基本構成を概略的に示す図である。図1に示すように、この移動体誘導システムは、マルチコプターMを所定領域R内の目標位置Gに誘導するためのシステムであって、マルチコプターMが領域R内に存在する場合に、目標位置G及び領域R内の複数の位置の各々に設けられた複数(図1の例では5つ)の第1通信装置10から送信された無線信号をマルチコプターMに設けられた第2通信装置20が受信したときの受信信号強度(RSSI:Received Signal Strength Indicator)に基づいてマルチコプターMの移動方向及び位置を推定し、推定した移動方向及び位置に基づいてマルチコプターMの移動方向を目標位置の方向に変更することによって、マルチコプターMを目標位置に誘導するようになっている。なお、領域Rは、屋外の領域であってもよいし、例えば、人工衛星から送信された測位信号(例えば、GPS信号等)を受信し難い環境下(例えば、屋内、建造物の近辺、橋梁下等)に設けられた領域であってもよい。
【0035】
第1通信装置10は、例えばBluetooth(登録商標) Low Energy(BLE)ビーコン等の通信装置であってもよく、マルチコプターMが領域R内に存在する場合に、例えばBLE等の無線通信規格を用いて第2通信装置20と無線通信を行うように構成されている。例えば、第1通信装置10は、BLEのアドバタイジングにおいてアドバタイズ信号(無線信号)を所定間隔(例えば100ミリ秒間隔)で送信してもよい。
【0036】
第2通信装置20は、マルチコプターMに設けられており、マルチコプターMと有線又は無線で通信可能に構成されている。また、第2通信装置20は、マルチコプターMが領域R内に存在する場合に複数の第1通信装置10の各々と無線通信を行い、複数の第1通信装置10の各々から送信された無線信号を受信する毎に、受信した無線信号の受信信号強度を測定するように構成されている。さらに、第2通信装置20は、測定した受信信号強度に基づいてマルチコプターMの移動方向及び位置を推定し、推定した移動方向及び位置に基づいてマルチコプターMの移動を制御するように構成されている。第2通信装置20は、例えばBLEのアドバタイズ信号等の無線信号を受信する装置であってもよいし、携帯端末、スマートフォン、PDA(Personal Digital Assistant)、パーソナルコンピュータ、双方向の通信機能を備えたテレビジョン受像機(いわゆる多機能型のスマートテレビも含む。)等の通信装置であってもよい。
【0037】
マルチコプターMは、複数(図1の例では4つ)のローターを搭載した小型の無人回転翼機であって、第2通信装置20から送信された制御コマンド(例えば、離着陸、停止、前後左右の移動、上下方向の移動、移動速度、回転、回転角度、カメラを用いた撮像等)に従って動作するようになっている。なお、本実施形態において、マルチコプターMは、本発明の「移動体」の一例である。
【0038】
なお、ここでは、BLEを用いて無線通信を行う場合を一例として説明しているが、この場合に限られない。第1通信装置10及び第2通信装置20は、例えば、無線LAN(例えばWi-Fi(登録商標))、ZigBee(登録商標)、UWB、光無線通信(例えば赤外線)等の無線通信方式を用いて無線通信を行ってもよい。
【0039】
(2)第2通信装置の構成
図2を参照して第2通信装置20について説明する。図2は、第2通信装置20の内部構成を示すブロック図である。図2に示すように、第2通信装置20は、CPU(Central Processing Unit)21と、ROM(Read Only Memory)22と、RAM(Random Access Memory)23と、記憶装置24と、通信インタフェース部25とを備えており、各部間の制御信号又はデータ信号を伝送するためのバス20aが設けられている。
【0040】
CPU21は、電源が第2通信装置20に投入されると、ROM22又は記憶装置24に記憶された各種のプログラムをRAM23にロードして実行する。本実施形態では、CPU21は、ROM22又は記憶装置24に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、後述する取得手段31、方向推定手段32、位置推定手段33、制御手段34、検知手段35及び第2制御手段36(図3に示す)の機能を実現する。また、CPU21は、マルチコプターMを操作するためのプログラムを実行して、マルチコプターMの制御コマンド(例えば、離着陸、停止、前後左右の移動、上下方向の移動、移動速度、回転、回転角度、カメラを用いた撮像等)を、通信インタフェース部25を介してマルチコプターMに送信してもよい。
【0041】
記憶装置24は、例えば、フラッシュメモリ、SSD(Solid State Drive)、磁気記憶装置(例えばHDD(Hard Disk Drive)、フロッピーディスク(登録商標)、磁気テープ等)、光ディスク等の不揮発性の記憶装置であってもよいし、RAM等の揮発性の記憶装置であってもよく、CPU21が実行するプログラムやCPU21が参照するデータを格納する。また、記憶装置24には、後述する取得データ(図5に示す)が記憶されている。
【0042】
通信インタフェース部25は、複数の第1通信装置10と通信を行うためのインタフェース回路と、マルチコプターMと通信を行うためのインタフェース回路とを含む。複数の第1通信装置10と通信を行うためのインタフェース回路には、第1通信装置10から送信された無線信号を受信したときに当該無線信号の受信信号強度(RSSI)を検出するRSSI回路が設けられている。
【0043】
なお、第1通信装置10から送信される無線信号には、無線信号を送信した第1通信装置10の識別情報(例えば、MAC(Media Access Control)アドレス等)が含まれていてもよい。
【0044】
(3)移動体誘導システムにおける各機能の概要
本実施形態の移動体誘導システムで実現される機能について、図3を参照して説明する。図3は、本実施形態の移動体誘導システムで主要な役割を果たす機能を説明するための機能ブロック図である。図3の機能ブロック図では、取得手段31、位置推定手段33及び制御手段34が本発明の主要な構成に対応している。他の手段(方向推定手段32、検知手段35及び第2制御手段36)は必ずしも必須の構成ではないが、本発明をさらに好ましくするための構成要素である。
【0045】
なお、本実施形態の移動体誘導システムにおける各機能を説明するにあたって、領域Rは、図4に示すように、重力方向に対して垂直な水平方向に延びる平面をxy平面とした場合に、xy平面において矩形状に設けられている場合を想定する。また、ここでは、領域Rの中心(x軸及びy軸の原点)に目標位置Gが設定されており、目標位置G及び目標位置Gを囲む領域Rの四隅の合計5箇所に第1通信装置10が配置されている場合を想定する。なお、5つの第1通信装置10のうち領域Rの四隅に配置されている第1通信装置10を、第1通信装置A、第1通信装置B、第1通信装置C、第1通信装置Dと適宜表記し、目標位置Gに配置されている第1通信装置10を第1通信装置Eと適宜表記する。
【0046】
取得手段31は、マルチコプターM(移動体)が目標位置Gを含む所定領域R内に存在する場合に、所定領域R内の複数の位置の各々に設けられた複数の第1通信装置10と、マルチコプターMに設けられた第2通信装置20との何れか一方から送信された無線信号を他方が受信したときの受信信号強度に関する情報を継時的に取得する機能を備える。ここで、受信信号強度に関する情報とは、例えば、受信信号強度の値(RSSI値)であってもよいし、受信信号強度の値を所定の計算式に代入することによって得られた値であってもよいし、受信信号強度の度合いを表す情報であってもよい。
【0047】
取得手段31の機能は、例えば以下のように実現される。なお、ここでは、取得手段31が、複数の第1通信装置10から送信された無線信号を第2通信装置20が受信したときの受信信号強度に関する情報を取得する場合を一例として説明する。第2通信装置20のCPU21は、マルチコプターMが領域R内に存在する場合に、複数の第1通信装置10の各々から送信された無線信号を通信インタフェース部25を介して受信(取得)する毎に、通信インタフェース部25で検出された受信信号強度の値と、当該無線信号を送信した第1通信装置10の識別情報とを対応付けて、例えば図5に示す取得データに記憶する。取得データは、複数の第1通信装置(図5の例では、A~E)毎に、対応する第1通信装置から受信した無線信号の受信信号強度の値が記述されているデータである。
【0048】
方向推定手段32は、複数の第1通信装置10の各々が送信又は受信した無線信号の受信信号強度の経時的な変化に基づいてマルチコプターM(移動体)の移動方向を推定する機能を備える。
【0049】
また、方向推定手段32は、複数の第1通信装置10のうち送信又は受信した無線信号の受信信号強度が減少した第1通信装置10から複数の第1通信装置10のうち送信又は受信した無線信号の受信信号強度が増加した第1通信装置10に向くベクトルを、対応する受信信号強度の減少量及び増加量に基づいて、無線信号の受信信号強度が減少した第1通信装置10毎に生成し、生成したベクトルを合成した合成ベクトルに基づいてマルチコプターM(移動体)の移動方向を推定してもよい。この場合、無線信号の受信信号強度が減少した(つまり、マルチコプターMが離れていった)第1通信装置10から無線信号の受信信号強度が増加した(つまり、マルチコプターMが近づいてきた)第1通信装置10に向くベクトルを合成した合成ベクトルに基づいてマルチコプターMの移動方向が推定されるので、無線信号の受信信号強度に基づいてマルチコプターMの移動方向を推定することができる。これにより、マルチコプターMの移動方向を、例えば方向センサ等を用いることなく推定することができるので、移動体誘導システムの製造コストを抑えることができる。
【0050】
方向推定手段32の機能は、例えば以下のように実現される。なお、ここでは、図4に示すように、マルチコプターMが領域R内の位置P1から位置P2に向かって移動している場合を想定する。第2通信装置20のCPU21は、先ず、複数の第1通信装置10の各々から受信した無線信号の受信信号強度の経時的な変化に基づいて、複数の第1通信装置10を、マルチコプターMが離れていく第1通信装置10と、マルチコプターMが近づいてくる第1通信装置10とに分類する。ここで、第2通信装置20が何れかの第1通信装置10から受信した無線信号の受信信号強度と、第2通信装置20と当該第1通信装置10との距離との関係は、以下の式(1)を用いて表される。
【数1】
【0051】
式(1)中、dは、マルチコプターMと第1通信装置10との距離(m)を示しており、λは、無線信号の波長(m)を示している。ここで、λは、例えば、無線信号の電波速度が光の速度と同じであり、無線信号の周波数が2.4(Ghz)と想定した場合、約0.125(m)である。すなわち、第2通信装置20が何れかの第1通信装置10から受信した無線信号の受信信号強度と、第2通信装置20と当該第1通信装置10との距離との関係は、例えば図6に示すような対数関数で表すことが可能であり、第2通信装置20と第1通信装置10との距離が短いほど受信信号強度の値が大きくなる。
【0052】
このため、CPU21は、複数の第1通信装置10のうち対応する無線信号の受信信号強度の値が小さくなっていく第1通信装置10を、マルチコプターMが離れていく第1通信装置10と判別し、複数の第1通信装置10のうち対応する無線信号の受信信号強度の値が大きくなっていく第1通信装置10を、マルチコプターMが近づいてくる第1通信装置10と判別する。なお、図4の例では、複数の第1通信装置A~Dのうち第1通信装置C,Dが、マルチコプターMが離れていく第1通信装置10と判別され、第1通信装置A,Bが、マルチコプターMが近づいてくる第1通信装置10と判別され得る。
【0053】
次に、CPU21は、マルチコプターMが離れていく第1通信装置10(ここでは、第1通信装置C,D)毎に、マルチコプターMが離れていく第1通信装置10の各々からマルチコプターMが近づいてくる第1通信装置10(ここでは、第1通信装置A,B)の各々に向かうベクトルを生成する。生成されるベクトルの大きさは、例えば、無線信号の受信信号強度の経時的な変化を時系列データとした場合の回帰直線の傾きであってもよい。そして、CPU21は、全てのベクトルを生成した後に、以下の式(2)を用いて、生成したベクトルの合成ベクトルvを生成する。
【数2】
【0054】
式(2)中、bは、マルチコプターMが離れていく第1通信装置10の位置(∀b∈B)であり、bは、マルチコプターMが近づいてくる第1通信装置10の位置(∀b∈B)である。また、ib+は受信信号強度の増加量であり、db-は受信信号強度の減少量である。このようにして生成された合成ベクトルv図7に示す。ここで、合成ベクトルvを極座標方式で表した場合の角度(ここでは、合成ベクトルvとx軸とのなす角)θ1をもとめることによって、マルチコプターMの移動方向が推定される。
【0055】
位置推定手段33は、複数の第1通信装置10の各々が送信又は受信した無線信号の受信信号強度に基づいてマルチコプターM(移動体)の位置を推定する機能を備える。
【0056】
位置推定手段33の機能は、例えば以下のように実現される。第2通信装置20のCPU21は、先ず、xy平面上のx軸及びy軸の各々について、正側に存在する第1通信装置10(図の例では、x軸の正側に存在する第1通信装置10が第1通信装置C,Dであり、y軸の正側に存在する第1通信装置10が第1通信装置B,Cである)の最新の受信信号強度の平均値と、負側に存在する第1通信装置10(図の例では、x軸の負側に存在する第1通信装置10が第1通信装置A,Bであり、y軸の負側に存在する第1通信装置10が第1通信装置A,Dである)の最新の受信信号強度の平均値と、をもとめる。次に、CPU21は、以下の式(3)を用いて、マルチコプターMの位置P2のxy平面上の座標(x,y)を推定する。
【数3】
【0057】
制御手段34は、位置推定手段33によって推定された位置に基づいて、マルチコプターM(移動体)が目標位置Gに近づくようにマルチコプターMを制御する機能を備える。
【0058】
また、制御手段34は、方向推定手段32によって推定された移動方向と、位置推定手段33によって推定された位置とに基づいて、マルチコプターM(移動体)が目標位置Gに近づくようにマルチコプターMを制御してもよい。
【0059】
制御手段34の機能は、例えば以下のように実現される。なお、ここでは、制御手段34が、方向推定手段32によって推定された移動方向と、位置推定手段33によって推定された位置とに基づいて、マルチコプターM(移動体)が目標位置Gに近づくようにマルチコプターMを制御する場合を一例として説明する。第2通信装置20のCPU21は、位置推定手段33の機能に基づいて推定されたマルチコプターMの位置P2から目標位置Gのxy平面上の座標(つまり、原点の座標)に向かうベクトルAdを生成し、ベクトルAdの角度(ここでは、ベクトルAdとx軸とのなす角)θ2をもとめることによって、マルチコプターMの位置P2から目標位置Gへの方向を推定する。そして、CPU21は、マルチコプターMの移動方向を合成ベクトルvの方向からベクトルAdの方向に変更する(つまり、x軸となす角度をθ1からθ2に変更する)ことによって、マルチコプターMの移動方向を目標位置Gの方向に変更する。
【0060】
検知手段35は、目標位置Gに設けられた第1通信装置10が送信又は受信した無線信号の受信信号強度が所定の条件を満たす場合に、マルチコプターM(移動体)が目標位置Gに到達したことを検知する機能を備える。これにより、目標位置Gに設けられた第1通信装置10が送信又は受信した無線信号の受信信号強度が所定の条件を満たす場合にマルチコプターMが目標位置Gに到達したことを検知することが可能になるので、マルチコプターMが目標位置Gに到達したことを容易に認識することができる。
【0061】
ここで、所定の条件は、目標位置Gに設けられた第1通信装置10が送信又は受信した無線信号の受信信号強度が、所定領域R内の複数の位置に設けられた第1通信装置10が送信又は受信した無線信号の受信信号強度よりも高いことを含んでもよい。これにより、目標位置Gに設けられた第1通信装置10が送信又は受信した無線信号の受信信号強度が、所定領域R内の複数の位置に設けられた第1通信装置10が送信又は受信した無線信号の受信信号強度よりも高い場合(つまり、目標位置Gに設けられた第1通信装置10とマルチコプターMとの距離が、所定領域R内の複数の位置の各々に設けられた第1通信装置10とマルチコプターMとの距離よりも短い場合)に、マルチコプターMが目標位置Gに到達したと検知することが可能になる。
【0062】
また、所定の条件は、目標位置Gに設けられた第1通信装置10が送信又は受信した無線信号の受信信号強度が所定値以上であることを含んでもよい。これにより、目標位置Gに設けられた第1通信装置10が送信又は受信した無線信号の受信信号強度が所定値以上の場合(つまり、目標位置Gに設けられた第1通信装置10とマルチコプターMとの距離が所定値以下になった場合)に、マルチコプターMが目標位置Gに到達したと検知することが可能になる。
【0063】
検知手段35の機能は、例えば以下のように実現される。第2通信装置20のCPU21は、取得手段31の機能に基づいて、複数の第1通信装置10の各々から送信された無線信号の受信信号強度に関する情報を取得したときに、例えば、目標位置Gに設けられた第1通信装置10(ここでは、第1通信装置E)が送信した無線信号の受信信号強度が、領域R内の複数の位置に設けられた第1通信装置10(ここでは、第1通信装置A~D)が送信した無線信号の受信信号強度よりも高い場合に、マルチコプターMが目標位置Gに到達したことを検知してもよい。また、CPU21は、例えば、目標位置Gに設けられた第1通信装置10(第1通信装置E)が送信した無線信号の受信信号強度が所定値(例えば-50dBm等)以上の場合に、マルチコプターMが目標位置Gに到達したことを検知してもよい。
【0064】
さらに、CPU21は、目標位置Gに設けられた第1通信装置10(第1通信装置E)が送信した無線信号の受信信号強度が、領域R内の複数の位置に設けられた第1通信装置10(第1通信装置A~D)が送信した無線信号の受信信号強度よりも高い場合であって、目標位置Gに設けられた第1通信装置10(第1通信装置E)が送信した無線信号の受信信号強度が所定値(例えば-50dBm等)以上の場合に、マルチコプターMが目標位置Gに到達したことを検知してもよい。
【0065】
なお、検知手段35は、目標位置Gに設けられた第1通信装置10を含む少なくとも2つの第1通信装置10に対応する受信信号強度の所定期間内の平均値の有意差があるか否かを検定し、有意差があると検定した場合にマルチコプターMが目標位置Gに到達したことを検知してもよい。これにより、複数の第1通信装置10の各々に対応する受信信号強度を単に大小比較するのではなく、例えば目標位置Gに設けられた第1通信装置10に対応する受信信号強度と他の第1通信装置10に対応する受信信号強度との間に有意差があるのか否か(つまり、受信信号強度の差が偶然的なものであるのか否か)に基づいてマルチコプターMが目標位置Gに到達したことを検知することによって、電波のゆらぎの影響を低減させた上でマルチコプターMが目標位置Gに到達したこと正確に検知することができる。
【0066】
この場合、CPU21は、例えば、目標位置Gに設けられた第1通信装置10(第1通信装置E)が送信した無線信号の受信信号強度が、領域R内の複数の位置に設けられた第1通信装置10(第1通信装置A~D)が送信した無線信号の受信信号強度よりも高い場合に、領域R内の複数の位置に設けられた第1通信装置10(第1通信装置A~D)のうち対応する受信信号強度が最も高い第1通信装置10を選択し、選択された第1通信装置10に対応する受信信号強度と、目標位置Gに設けられた第1通信装置10(第1通信装置E)に対応する受信信号強度とが正規分布に従うか否か(正規性を有しているか否か)を、正規性検定(例えば、Kolmogorv-Smirnov検定やShapiro-Wilk検定等)を行うことにより判別してもよい。
【0067】
次に、CPU21は、正規性を有していると判別した場合に、パラメトリック検定を行ってもよい。具体的には、CPU21は、選択された第1通信装置10に対応する受信信号強度と、目標位置Gに設けられた第1通信装置10(第1通信装置E)に対応する受信信号強度とが等分散性を有しているか否かを、例えばF検定を行うことにより判別してもよい。
【0068】
次いで、CPU21は、等分散性を有していると判別した場合に、選択された第1通信装置10に対応する受信信号強度と、目標位置Gに設けられた第1通信装置10(第1通信装置E)に対応する受信信号強度との間に受信信号強度の平均値の有意差があるか否かを、例えばt検定を行うことにより判別してもよい。また、CPU21は、等分散性を有していないと判別した場合に、選択された第1通信装置10と、目標位置Gに設けられた第1通信装置10(第1通信装置E)との間に受信信号強度の所定期間内の平均値の有意差があるか否かを、例えばWelchのt検定を行うことにより判別してもよい。
【0069】
さらに、CPU21は、正規性を有していないと判別した場合に、選択された第1通信装置10と、目標位置Gに設けられた第1通信装置10(第1通信装置E)との間に受信信号強度の所定期間内の平均値の有意差があるか否かを、例えばMann-WhitneyのU検定やWilcoxonの順位和検定等のノンパラメトリック検定を行うことにより判別してもよい。
【0070】
そして、CPU21は、選択された第1通信装置10と、目標位置Gに設けられた第1通信装置10(第1通信装置E)との間に受信信号強度の所定期間内の平均値の有意差があると判別した場合に、マルチコプターMが目標位置Gに到達したことを検知してもよい。
【0071】
第2制御手段36は、マルチコプターM(移動体)が目標位置Gに到達したと検知した場合に、マルチコプターMの移動を制御する機能を備える。
【0072】
第2制御手段36の機能は、例えば以下のように実現される。第2通信装置20のCPU21は、検知手段35の機能に基づいて、マルチコプターMが目標位置Gに到達したことを検知した場合、マルチコプターMの移動を停止させる(つまり、マルチコプターMの移動速度がゼロになる)ための制御コマンドを通信インタフェース部25を介してマルチコプターMに送信してもよいし、マルチコプターMを降下させるための制御コマンドを通信インタフェース部25を介してマルチコプターMに送信してもよい。
【0073】
(4)本実施形態の移動体誘導システムの主要な処理のフロー
次に、本実施形態の移動体誘導システムにより行われる主要な処理のフローの一例について、図9のフローチャートを参照して説明する。
【0074】
先ず、第2通信装置20のCPU21は、マルチコプターMが領域R内に存在する場合に、複数の第1通信装置10の各々から送信された無線信号を通信インタフェース部25を介して受信(取得)すると(ステップS100)、通信インタフェース部25で検出された受信信号強度の値と、当該無線信号を送信した第1通信装置10の識別情報とを対応付けて、取得データに記憶する。
【0075】
次に、第2通信装置20のCPU21は、複数の第1通信装置10の各々が送信した無線信号の受信信号強度の経時的な変化に基づいて、マルチコプターM(移動体)の移動方向を推定する(ステップS102)。具体的に説明すると、CPU21は、先ず、複数の第1通信装置10の各々から受信した無線信号の受信信号強度の経時的な変化に基づいて、複数の第1通信装置10を、マルチコプターMが離れていく第1通信装置10と、マルチコプターMが近づいてくる第1通信装置10とに分類する。次に、CPU21は、マルチコプターMが離れていく第1通信装置10(例えば、第1通信装置C,D)毎に、マルチコプターMが離れていく第1通信装置10の各々からマルチコプターMが近づいてくる第1通信装置10(例えば、第1通信装置A,B)の各々に向かうベクトルを生成する。そして、CPU21は、生成したベクトルの合成ベクトルvを生成する。マルチコプターMの移動方向は、合成ベクトルvを極座標方式で表した場合の角度θ1をもとめることによって推定され得る。
【0076】
次いで、第2通信装置20のCPU21は、複数の第1通信装置10の各々が送信した無線信号の受信信号強度に基づいて、マルチコプターM(移動体)の位置を推定する(ステップS104)。具体的に説明すると、CPU21は、xy平面上のx軸及びy軸の各々について、正側に存在する第1通信装置10の最新の受信信号強度の平均値と、負側に存在する第1通信装置10の最新の受信信号強度の平均値と、をもとめる。次に、CPU21は、上述した式(3)を用いて、マルチコプターMの位置P2のxy平面上の座標(x,y)を推定する。
【0077】
次に、第2通信装置20のCPU21は、推定された移動方向及び位置に基づいて、マルチコプターM(移動体)の移動方向を変更する(ステップS106)。具体的に説明すると、CPU21は、推定されたマルチコプターMの位置P2から目標位置Gのxy平面上の座標(つまり、原点の座標)に向かうベクトルAdを生成し、ベクトルAdの角度θ2をもとめることによって、マルチコプターMの位置P2から目標位置Gへの方向を推定する。そして、CPU21は、マルチコプターMの移動方向を合成ベクトルvの方向からベクトルAdの方向に変更することによって、マルチコプターMの移動方向を目標位置Gの方向に変更する。
【0078】
次いで、第2通信装置20のCPU21は、複数の第1通信装置10のうち目標位置Gに設けられた第1通信装置10が送信した無線信号の受信信号強度が所定の条件を満たすか否かを判別する(ステップS108)。ここで、所定の条件は、目標位置Gに設けられた第1通信装置10が送信した無線信号の受信信号強度が、所定領域R内の複数の位置に設けられた第1通信装置10が送信した無線信号の受信信号強度よりも高いことであってもよいし、目標位置Gに設けられた第1通信装置10が送信した無線信号の受信信号強度が所定値以上であることであってもよいし、これらの組み合わせであってもよい。また、所定の条件は、目標位置Gに設けられた第1通信装置10を含む少なくとも2つの第1通信装置10に対応する受信信号強度の所定期間内の平均値の有意差があると検定されたことであってもよい。
【0079】
次に、第2通信装置20のCPU21は、目標位置Gに設けられた第1通信装置10が送信した無線信号の受信信号強度が所定の条件を満たすと判別した場合に(ステップS108:YES)、マルチコプターMが目標位置Gに到達したことを検知し(ステップS110)、マルチコプターMの移動を制御する(ステップS112)。例えば、CPU21は、マルチコプターMの移動を停止させるための制御コマンドを通信インタフェース部25を介してマルチコプターMに送信してもよいし、マルチコプターMを降下させるための制御コマンドを通信インタフェース部25を介してマルチコプターMに送信してもよい。
【0080】
なお、CPU21は、ステップS108において、目標位置Gに設けられた第1通信装置10が送信した無線信号の受信信号強度が所定の条件を満たしていない判別した場合に(ステップS108:NO)、ステップS100の処理に移行してもよい。
【0081】
このようにして、第2通信装置20が複数の第1通信装置10から受信した無線信号の受信信号強度に基づいて、マルチコプターMを目標位置Gに誘導することが可能になる。
【0082】
上述したように、本実施形態の移動体誘導システム、移動体誘導方法、プログラムによれば、第2通信装置20が受信した無線信号の受信信号強度に関する情報に基づいてマルチコプターMの位置が推定され、推定された位置に基づいてマルチコプターMが目標位置Gに近づくように制御されるので、第2通信装置20が受信した無線信号の受信信号強度に基づいてマルチコプターMを目標位置Gに誘導することが可能になる。ここで、目標位置Gを含む所定領域Rが例えば屋内や暗所等の環境下に設けられている場合であっても、第1通信装置10と第2通信装置20との間で無線信号を送受信することが可能であることから、マルチコプターMが所定領域R内に存在する場合には、常に目標位置Gに向かって移動するようにマルチコプターMを制御することができる。これにより、例えば屋内や暗所等の環境下であっても、マルチコプターMを目標位置Gに誘導することができる。
【0083】
また、本実施形態では、方向推定手段32を備えることによって、複数の第1通信装置10の各々が送信又は受信した無線信号の受信信号強度に関する情報に基づいてマルチコプターMの移動方向及び位置が推定され、推定された移動方向及び位置に基づいて、マルチコプターMが目標位置Gに近づくように制御する(例えば、マルチコプターMの移動方向を目標位置Gに向ける等)ことが可能になるので、第1通信装置10又は第2通信装置20が受信した無線信号の受信信号強度に基づいてマルチコプターMを目標位置Gに容易に誘導することができる。
【0084】
(第2実施形態)
以下、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態に係る移動体誘導システム、移動体誘導方法、プログラムは、方向推定手段32が設けられていない点において第1実施形態と異なっている。また、本実施形態では、位置推定手段33による位置推定方法が第1実施形態と異なっている。以下、第1実施形態と異なる構成について説明する。
【0085】
本実施形態において、位置推定手段33は、複数の第1通信装置10のうち少なくとも3つの第1通信装置10の各々に対応する無線信号の受信信号強度に基づいて生成された、少なくとも3つの第1通信装置10の各々と第2通信装置20との距離を要素とする第1ベクトルと、所定領域R内の所定位置に対応する第2ベクトルであって、少なくとも3つの第1通信装置10の各々と当該所定位置との距離を要素とする第2ベクトルとの類似度に基づいて、マルチコプターM(移動体)の位置を推定する機能を備える。
【0086】
本実施形態における位置推定手段33の機能は、例えば以下のように実現される。なお、本実施形態における位置推定手段33の機能を説明するにあたって、第2通信装置20を設けたマルチコプターMは、図10に示すように、領域Rをx方向及びy方向の各々に沿って区分する複数のサブ領域(図10の例では、R11~R33の9つのサブ領域)のうち何れかのサブ領域に存在している場合を想定する。
【0087】
先ず、第2通信装置20のCPU21は、取得手段31の機能に基づいて、複数の第1通信装置10(図10の例では、複数の第1通信装置A,B,C,D,E)から送信された無線信号を第2通信装置20が受信したときの受信信号強度に関する情報を取得すると、取得した受信信号強度に関する情報(例えばRSSI値)を用いて、複数の第1通信装置A,B,C,D,Eの各々と第2通信装置20との距離をもとめる。ここで、複数の第1通信装置A,B,C,D,Eの各々と第2通信装置20との距離は、上記の式(1)を用いてもとめられてもよい。
【0088】
次に、第2通信装置20のCPU21は、複数の第1通信装置A,B,C,D,Eのうち少なくとも3つ(ここでは、第1通信装置A,B,Cの3つ)と第2通信装置20との距離を要素とする第1ベクトルu(図12に示す)を生成する。本実施形態では、第1ベクトルuは3次元ベクトルである。例えば、CPU21は、第1通信装置Aと第2通信装置20との距離をd、第1通信装置Bと第2通信装置20との距離をd、第1通信装置Cと第2通信装置20との距離をdとすると、d、d、dを要素とする第1ベクトルuを生成し、d、d、dの値を例えばRAM23に記憶する。
【0089】
次いで、第2通信装置20のCPU21は、複数のサブ領域R11~R33毎に、複数の第1通信装置A,B,C,D,Eのうち少なくとも3つ(ここでは、第1通信装置A,B,Cの3つ)と各サブ領域R11~R33との距離を要素とする第2ベクトルv(図12に示す)を生成する。ここで、複数の第1通信装置A,B,C,D,Eの各々と各サブ領域R11~R33との距離は予め計測されていてもよい。また、CPU21は、複数のサブ領域R11~R33の各々に対応する第2ベクトルvの各要素を、例えば図11に示す第2ベクトルデータに記憶してもよい。第2ベクトルデータは、複数の第1通信装置A,B,C,D,Eの各々と各サブ領域R11~R33の所定位置(例えばサブ領域の中央の位置)との距離が複数のサブ領域R11~R33毎に記述されているデータである。第2ベクトルデータは、例えば第2通信装置20の記憶装置24に記憶されている。
【0090】
次に、第2通信装置20のCPU21は、複数のサブ領域R11~R33毎に、第1ベクトルuと第2ベクトルvとの類似度をもとめる。ここで、類似度は、例えばコサイン類似度であってもよく、コサイン類似度は、以下の式(4)を用いてもとめることができる。また、第1ベクトルuと、第2ベクトルvと、角度θとの関係は、図12のように示される。なお、図12の例では、第1ベクトルuと、領域R11に対応する第2ベクトルvとの関係を示している。
【数4】
【0091】
cosθの最大値は1であり、この場合には、第1ベクトルuと第2ベクトルvとが互いに同じ方向に向いていることを示している。また、cosθの最小値は-1であり、この場合には、第1ベクトルuと第2ベクトルvとが互いに逆の方向に向いていることを示している。さらに、cosθの値が0の場合には、第1ベクトルuと第2ベクトルvとが互いに直交する方向に向いていることを示している。例えば、第1ベクトルuの各要素の値(第1通信装置A,B,Cの各々と第2通信装置20との距離)と、第2ベクトルv(第1通信装置A,B,Cと各サブ領域R11~R33の所定位置との距離)の各要素の値とが近似しているほど、ベクトルの類似度が高くなる。
【0092】
そして、CPU21は、例えば、複数のサブ領域R11~R33のうち最大の類似度に対応するサブ領域(例えばサブ領域R11)を、第2通信装置20の位置と推定する。なお、ここでは、複数のサブ領域R11~R33のうち最大の類似度に対応するサブ領域を第2通信装置20の位置と推定する場合を一例として説明したが、この場合に限られない。例えば、類似度が所定値以上のサブ領域を第2通信装置20の位置と推定してもよい。
【0093】
また、本実施形態における制御手段34の機能は、例えば以下のように実現される。第2通信装置20のCPU21は、位置推定手段33の機能によって第2通信装置20の位置が推定されると、マルチコプターMを、第2通信装置20の推定位置(例えばサブ領域R11)から目標位置Gが存在するサブ領域(ここでは、サブ領域R22)に向けて移動するように制御してもよい。
【0094】
上述したように、本実施形態の移動体誘導システム、移動体誘導方法、プログラムによれば、少なくとも3つの第1通信装置10の各々に対応する受信信号強度に関する情報に基づいて、少なくとも3つの第1通信装置10の各々と第2通信装置20との距離を要素とする第1ベクトルuを生成しているので、例えば第1通信装置10及び第2通信装置20のうち無線信号を受信する一方の通信装置の受信特性が当該一方の通信装置の種類毎及び/又は個体毎に異なる場合であっても、第1ベクトルuを、少なくとも3つの第1通信装置10の各々に対応する受信信号強度と、少なくとも3つの第1通信装置10の各々と第2通信装置20との距離との関係に基づいて、少なくとも3つの第1通信装置10毎に生成することができる。そして、第1ベクトルuと、少なくとも3つの第1通信装置10の各々と領域R内の所定位置との距離を要素とする第2ベクトルvとの類似度に基づいて第2通信装置20の位置を推定しているので、例えば第1ベクトルuと第2ベクトルvとの類似度が高い場合には、第2ベクトルvに対応する所定位置を第2通信装置20の位置と推定することができる。このように、受信信号強度に関する情報に基づいてもとめた第1通信装置10及び第2通信装置20間の距離を単に比較するのではなく、第1ベクトルuと第2ベクトルvとの類似度から第2通信装置20の位置を推定することにより、第1通信装置10及び第2通信装置20のうち無線信号を受信する一方の通信装置の受信特性の違いに拘らずに第2通信装置20の位置を正確に推定することができる。
【0095】
なお、上記第2実施形態では、図10に示すように、第1通信装置Eが目標位置Gに設けられている場合を一例として説明したが、例えば、図13に示すように、第1通信装置10を目標位置Gに配置しなくてもよい。この場合、第2実施形態の移動体誘導システムには、検知手段35が設けられていなくてもよい。上述したように、第2実施形態では、第1ベクトルuと第2ベクトルvとの類似度から第2通信装置20の位置を推定することができるので、例えば、目標位置Gが存在するサブ領域(ここでは、サブ領域R22)に第2通信装置20が存在すると推定された場合には、検知手段35の機能を用いることなく、第2通信装置20が目標位置Gに到達したと判断してもよい。
【0096】
以下、上述した各実施形態の変形例について説明する。
(変形例1)
上記各実施形態では、取得手段31が、複数の第1通信装置10から送信された無線信号を第2通信装置20が受信したときの受信信号強度に関する情報を取得する場合を一例として説明したが、この場合に限られない。例えば、取得手段31は、第2通信装置20から送信された無線信号を複数の第1通信装置10が受信したときの受信信号強度に関する情報を取得してもよい。ここで、複数の第1通信装置10には、第2通信装置20から送信された無線信号を受信したときの受信信号強度の値を検出するRSSI回路が設けられていてもよい。
【0097】
この場合、第2通信装置20のCPU21は、取得手段31の機能として、複数の第1通信装置10に対して、第2通信装置20から受信した無線信号の受信信号強度の値を第2通信装置20に送信するように要求してもよい。そして、CPU21は、複数の第1通信装置10から送信された情報(無線信号の受信信号強度の値)を通信インタフェース部25を介して受信(取得)すると、受信した情報を取得データに記憶してもよい。なお、方向推定手段32、位置推定手段33、制御手段34、検知手段35及び第2制御手段36の機能は、上述した各実施形態と同様であってもよい。
【0098】
このように、本変形例にかかる移動体誘導システム、移動体誘導方法、プログラムによれば、上述した各実施形態と同様の作用効果を発揮することが可能である。
【0099】
(変形例2)
上記各実施形態では、目標位置Gと、当該目標位置G以外の4つの位置とに第1通信装置10が設けられている場合を一例として説明したが、目標位置G以外に第1通信装置10が設けられる位置の数は5つ以上であってもよい。この場合においても、上述した各実施形態と同様の作用効果を発揮することが可能である。
【0100】
(変形例3)
以下、変形例3について説明する。本変形例にかかる移動体誘導システム、移動体誘導方法、プログラムは、図14に示すように、第2取得手段37及び第2位置推定手段38を備える点において上記各実施形態と異なっている。以下、上記各実施形態と異なる構成について説明する。
【0101】
第2取得手段37は、人工衛星から送信された測位信号を取得する機能を備える。ここで、人工衛星は、例えば、GPS等の衛星測位システム(NSS:Navigation Satellite System)で用いられる人工衛星であってもよい。
【0102】
第2取得手段37の機能は、例えば以下のように実現される。第2通信装置20のCPU21は、例えば、複数(例えば4つ)の人工衛星の各々から送信された測位信号を通信インタフェース部25を介して経時的に受信(取得)し、取得した測位信号を例えばRAM23又は記憶装置24に記憶する。なお、本変形例において、通信インタフェース部25には、人工衛星から送信された測位信号を受信するためのアンテナが設けられていてもよい。
【0103】
第2位置推定手段38は、取得した測位信号に基づいてマルチコプターM(移動体)の位置を推定する機能を備える。第2位置推定手段38の機能は、例えば以下のように実現される。第2通信装置20のCPU21は、例えば、複数の人工衛星の各々から取得した測位信号に基づいて第2通信装置20と複数の人工衛星の各々との距離を測定し、各測定距離が一致する位置(緯度、経度、高度)を第2通信装置20(つまり、マルチコプターM)の位置と推定してもよい。
【0104】
本変形例において、第2制御手段36は、マルチコプターM(移動体)の位置が所定領域R外の場合に、マルチコプターMを所定領域R内に移動させてもよい。本変形例における第2制御手段36の機能は、例えば以下のように実現される。第2通信装置20のCPU21は、第2位置推定手段38の機能に基づいて推定されたマルチコプターMの位置が領域Rの範囲外であると判別した場合に、マルチコプターMを領域R内に移動させるための制御コマンドを通信インタフェース25を介してマルチコプターMに送信する。ここで、領域Rの位置(緯度、経度、高度)は、例えばRAM23又は記憶装置24に記憶されていてもよい。
【0105】
本変形例によれば、マルチコプターM(移動体)が領域R外に存在する場合には、人工衛星から送信された測位信号に基づいて、マルチコプターMを領域R内に移動させるように制御することができる。
【0106】
(変形例4)
以下、変形例4について説明する。本変形例にかかる移動体誘導システム、移動体誘導方法、プログラムは、図15に示すように、撮像手段39を備える点において上記各実施形態と異なっている。以下、上記各実施形態と異なる構成について説明する。
【0107】
撮像手段39は、マルチコプターM(移動体)が目標位置Gに到達したことを検知した場合に、マルチコプターMから目標位置Gの方向を撮像する機能を備える。本変形例における撮像手段39の機能は、例えば以下のように実現される。なお、ここでは、目標位置Gの方向としてマルチコプターMの鉛直下方を撮像するための撮像装置(例えば、デジタルカメラやデジタルビデオカメラ等)がマルチコプターMによって制御可能に設けられている場合を一例として説明する。
【0108】
第2通信装置20のCPU21は、検知手段35の機能に基づいてマルチコプターMが目標位置Gに到達したことを検知すると、マルチコプターMから目標位置Gの方向(マルチコプターMの鉛直下方)を撮像するための制御コマンドを通信インタフェース部25を介してマルチコプターMに送信する。一方、マルチコプターMは、制御コマンドを受信すると、撮像装置を用いて目標位置Gの方向を撮像し、撮像画像を第2通信装置20に送信する。そして、第2通信装置20のCPU21は、通信インタフェース部25を介して撮像画像を受信(取得)すると、受信した撮像画像を例えばRAM23又は記憶装置24に記憶する。
【0109】
本変形例において、第2制御手段36は、撮像された画像に基づいてマルチコプターM(移動体)の移動を制御してもよい。本変形例における第2制御手段36の機能は、例えば以下のように実現される。第2通信装置20のCPU21は、例えば、目標位置Gの方向の撮像画像に対して例えば周知の画像認識処理を用いることによって、目標位置G及びその周辺に障害物等の物体が存在しているか否かを判別してもよいし、マルチコプターMの位置と目標位置Gとがずれているか否かを判別してもよい。
【0110】
ここで、目標位置G及びその周辺に障害物等の物体が存在している場合には、CPU21は、当該物体とマルチコプターMとが接触するのを抑制するために、例えばマルチコプターMを現在位置から水平方向に所定距離だけ移動させた(つまり、目標位置Gから水平方向に所定距離だけずれるように移動させた)後に降下させるための制御コマンドを通信インタフェース25を介してマルチコプターMに送信してもよい。
【0111】
また、マルチコプターMの位置と目標位置Gとが水平方向にずれている場合には、CPU21は、マルチコプターMの位置を目標位置Gに一致させるようにマルチコプターMを水平方向に移動させるための制御コマンドを通信インタフェース25を介してマルチコプターMに送信してもよい。そして、CPU21は、マルチコプターMの位置と目標位置Gとが一致した場合に、マルチコプターMを降下させるための制御コマンドを通信インタフェース25を介してマルチコプターMに送信してもよい。
【0112】
なお、ここでは、マルチコプターMによって制御される撮像装置を用いて目標位置Gの方向を撮像する場合を一例として説明したが、例えば、第2通信装置20のCPU21は、通信インタフェース部25を介して通信可能に接続された撮像装置が設けられている場合に、当該撮像装置を直接制御してもよい。
【0113】
本変形例によれば、マルチコプターMが目標位置Gに到達した場合にマルチコプターMから目標位置Gの方向を撮像することができるので、撮像画像に基づいて目標位置G及びその周辺の安全等を確認することができる。したがって、例えば障害物等の物体が目標位置Gに存在しているのを撮像画像に基づいて検知した場合には、当該物体を避けて目標位置Gの近辺に停止又は降下するようにマルチコプターMを制御することが可能になり、例えばマルチコプターMの位置が目標位置Gからずれているのを撮像画像に基づいて検知した場合には、マルチコプターMの位置を目標位置Gに合わせるようにマルチコプターMを制御することが可能になる。
【0114】
なお、本発明のプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記憶されていてもよい。このプログラムを記録した記憶媒体は、図2に示された記憶装置24であってもよい。また、例えばCD-ROMドライブ等のプログラム読取装置に挿入されることで読み取り可能なCD-ROM等であってもよい。さらに、記憶媒体は、磁気テープ、カセットテープ、フレキシブルディスク、MO/MD/DVD等であってもよいし、半導体メモリであってもよい。
【0115】
以上説明した各実施形態及び変形例は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記各実施形態及び変形例に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0116】
例えば、上述した各実施形態では、1つのマルチコプターMを誘導する場合を一例として説明していたが、誘導対象のマルチコプターMの数は複数であってもよい。
【0117】
上述した各実施形態では、マルチコプターMを移動体として用いた場合を一例として説明したが、移動体は、例えば、他の無人の移動体(例えば車両、船舶、航空機等)であってもよいし、有人の移動体であってもよい。
【0118】
上述した各実施形態では、第2通信装置20によって、取得手段31、方向推定手段32、位置推定手段33、制御手段34、検知手段35、第2制御手段36、第2取得手段37、第2位置推定手段38及び撮像手段39の各機能を実現する構成としたが、この構成に限られない。例えば、インターネットやLAN(Local Area Network)等の通信網を介して第2通信装置20と通信可能に接続されたコンピュータ等(例えば、汎用のパーソナルコンピュータやサーバコンピュータ等)によって、上記各手段31~39の機能を実現する構成としてもよい。また、上記各手段31~39のうち少なくとも1つの手段の機能を上記端末装置によって実現する構成としてもよい。さらに、これらの全ての手段をマルチコプターM又は第1通信装置10によって実現する構成としてもよいし、少なくとも1つの手段をマルチコプターM又は第1通信装置10によって実現する構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0119】
上述したような本発明の移動体誘導システム、移動体誘導方法、プログラムは、例えば屋内や暗所等の環境下であっても、移動体を目標位置に誘導することができ、例えば、物品を所定の位置まで搬送するサービス等に好適に利用することができるので、その産業上の利用可能性は極めて大きい。
【符号の説明】
【0120】
10…第1通信装置
20…第2通信装置
31…取得手段
32…方向推定手段
33…位置推定手段
34…制御手段
35…検知手段
36…第2制御手段
37…第2取得手段
38…第2位置推定手段
39…撮像手段
G…目標位置
M…マルチコプター
R…領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15