(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-07
(45)【発行日】2022-09-15
(54)【発明の名称】丸形鋼管の製造方法、丸形鋼管製造設備
(51)【国際特許分類】
B21D 5/01 20060101AFI20220908BHJP
B21C 37/08 20060101ALI20220908BHJP
B21D 3/14 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
B21D5/01 S
B21C37/08 E
B21D3/14 C
(21)【出願番号】P 2018127931
(22)【出願日】2018-07-05
【審査請求日】2021-07-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000110446
【氏名又は名称】ナカジマ鋼管株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中島 功雄
(72)【発明者】
【氏名】中島 伸
【審査官】石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第01852101(US,A)
【文献】特開昭61-099522(JP,A)
【文献】特開2007-090406(JP,A)
【文献】実開昭60-176816(JP,U)
【文献】国際公開第2014/024287(WO,A1)
【文献】特開2015-199126(JP,A)
【文献】特開2002-102931(JP,A)
【文献】特開2005-324255(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 5/01
B21C 37/08
B21D 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼板から丸形鋼管を製造する方法であって、
前記鋼板において前記丸形鋼管の内壁を形成する面を三つに区分した面のうちの一方側の第1面
の一端縁に形成される開先の先端位置が金型の載置面の高さより所定高さだけ低い位置となるように前記第1面を下方に押し切ることで、前記第1面の全面をプレス成形の成形範囲として前記第1面を円弧状に折り曲げ、
前記第1面を折り曲げた鋼板において前記丸形鋼管の内壁を形成する面を三つに区分した面のうちの他方側の第2面
の一端縁に形成される開先の先端位置が金型の載置面の高さより所定高さだけ低い位置となるように前記第2面を下方に押し切ることで、前記第2面の全面をプレス成形の成形範囲として前記第2面を円弧状に折り曲げ、
前記第1面及び前記第2面を折り曲げた鋼板において前記丸形鋼管の内壁を形成する面を三つに区分した面のうちの前記第1面と前記第2面とに挟まれた第3面の全面をプレス成形の成形範囲として前記第3面を円弧状に折り曲げ、
前記第1面側の鋼板の側縁と前記第2面側の鋼板の側縁とを突き合わせて溶接することにより半成形丸形鋼管を造管し、
造管した前記半成形丸形鋼管の壁面を加圧することにより前記半成形丸形鋼管を前記丸形鋼管に成形すること
を特徴とする丸形鋼管の製造方法。
【請求項2】
造管した前記半成形丸形鋼管の内壁を加圧することにより前記半成形丸形鋼管を前記丸形鋼管に成形すること
を特徴とする請求項1に記載の丸形鋼管の製造方法。
【請求項3】
鋼板から丸形鋼管を製造する丸形鋼管製造設備であって、
前記鋼板において前記丸形鋼管の内壁を形成する面をプレス成形により折り曲げる折り曲げ装置と、
前記折り曲げ装置により折り曲げられた鋼板の両側縁を突き合わせて溶接する溶接装置と、
前記溶接装置により溶接されて造管される半成形丸形鋼管の壁面を加圧する加圧装置と、
を備え、
前記折り曲げ装置は、
前記鋼板において前記丸形鋼管の内壁を形成する面を三つに区分した面のうちの一方側の第1面
の一端縁に形成される開先の先端位置が金型の載置面の高さより所定高さだけ低い位置となるように前記第1面を下方に押し切ることで、前記第1面の全面をプレス成形の成形範囲として前記第1面を円弧状に折り曲げ、
前記第1面を折り曲げた鋼板において前記丸形鋼管の内壁を形成する面を三つに区分した面のうちの他方側の第2面
の一端縁に形成される開先の先端位置が金型の載置面の高さより所定高さだけ低い位置となるように前記第2面を下方に押し切ることで、前記第2面の全面をプレス成形の成形範囲として前記第2面を円弧状に折り曲げ、
前記第1面及び前記第2面を折り曲げた鋼板において前記丸形鋼管の内壁を形成する面を三つに区分した面のうちの前記第1面と前記第2面とに挟まれた第3面の全面をプレス成形の成形範囲として前記第3面を円弧状に折り曲げること
を特徴とする丸形鋼管製造設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼板から丸形鋼管を製造する方法及びその方法により丸形鋼管を製造する丸形鋼管製造設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鋼板から丸形鋼管を製造する方法としては、特許文献1及び特許文献2に示すような製造方法がある。特許文献1の丸形鋼管の製造方法は、板をUプレスによりU字形に曲げ、次いで段階的なプレス工具を備えたOプレスにより管状に成形し、被接合部をシーム溶接した後、エキスパンダで拡管する方法である。
【0003】
また、特許文献2の丸形鋼管の製造方法は、幅方向の両端に開先を形成した所定幅の鋼板を、その幅方向における中間複数箇所のプレス成形によって、幅方向における両端部分と中間の特定部分とに、それぞれ所望長さの直状部が残存しかつ直状部間を円弧部として曲げ形成し、曲げ形成体を、その開先の部分を相当接させた状態で溶接接合して半成形丸形鋼管を形成し、この半成形丸形鋼管の全体を加熱したのち、その成形面を最終半径に対応する半円状とした複数の成形ロール間に通して熱間成形する方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平2002-102931号公報
【文献】特開2005-324255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の丸形鋼管の製造方法では、被接合部を適切にシーム溶接するために、板をUプレスにより曲げる前に、予め板の両側縁を折り曲げる端曲げプレス(はな曲げ加工)を行うことで被接合部を平面状にする必要がある。そのため、製造工程が煩雑となるという問題があった。また、特許文献1の丸形鋼管の製造方法では、UプレスとOプレスとを別体の金型で行うため、設備構成が複雑化して製造工程が煩雑となるという問題があった。
【0006】
また、特許文献2の丸形鋼管の製造方法では、半成形丸形鋼管に残存した直状部を円弧状に成形するために当該半成形丸形鋼管全体を加熱するため、半成形丸形鋼管から丸形鋼管を成形する際に半成形丸形鋼管全体を加熱する工程が必要である。そのため、製造工程が煩雑となるという問題があった。
【0007】
さらに、従来の丸形鋼管の製造方法では、プレス成形機(折り曲げ装置)によって鋼板の多数箇所を数十回以上プレスすることにより、多数の小径のアール部の集まりとしての半成形丸形鋼管を造管し、さらに、造管した半成形丸形鋼管の断面形状を真円状とするために手作業による精整作業を行うことから、上記プレス加工及び精整作業に時間を要し、製造工程が煩雑となるという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、簡素化された設備構成で簡易な製造工程により鋼板から丸形鋼管を製造可能な丸形鋼管の製造方法及び丸形鋼管製造設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上であり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0010】
即ち、本発明の丸形鋼管の製造方法は、鋼板から丸形鋼管を製造する方法であって、前記鋼板において前記丸形鋼管の内壁を形成する面を三つに区分した面のうちの一方側の第1面の一端縁に形成される開先の先端位置が金型の載置面の高さより所定高さだけ低い位置となるように前記第1面を下方に押し切ることで、前記第1面の全面をプレス成形の成形範囲として前記第1面を円弧状に折り曲げ、前記第1面を折り曲げた鋼板において前記丸形鋼管の内壁を形成する面を三つに区分した面のうちの他方側の第2面の一端縁に形成される開先の先端位置が金型の載置面の高さより所定高さだけ低い位置となるように前記第2面を下方に押し切ることで、前記第2面の全面をプレス成形の成形範囲として前記第2面を円弧状に折り曲げ、前記第1面及び前記第2面を折り曲げた鋼板において前記丸形鋼管の内壁を形成する面を三つに区分した面のうちの前記第1面と前記第2面とに挟まれた第3面の全面をプレス成形の成形範囲として前記第3面を円弧状に折り曲げ、前記第1面側の鋼板の側縁と前記第2面側の鋼板の側縁とを突き合わせて溶接することにより半成形丸形鋼管を造管し、造管した前記半成形丸形鋼管の壁面を加圧することにより前記半成形丸形鋼管を前記丸形鋼管に成形する方法である。
【0011】
本発明の丸形鋼管の製造方法は、上記丸形鋼管の製造方法において、造管した前記半成形丸形鋼管の内壁を加圧することにより前記半成形丸形鋼管を前記丸形鋼管に成形する方法である。
【0012】
本発明の丸形鋼管製造設備は、鋼板から丸形鋼管を製造する丸形鋼管製造設備であって、前記鋼板において前記丸形鋼管の内壁を形成する面をプレス成形により折り曲げる折り曲げ装置と、前記折り曲げ装置により折り曲げられた鋼板の両側縁を突き合わせて溶接する溶接装置と、前記溶接装置により溶接されて造管される半成形丸形鋼管の壁面を加圧する加圧装置と、を備え、前記折り曲げ装置は、前記鋼板において前記丸形鋼管の内壁を形成する面を三つに区分した面のうちの一方側の第1面の一端縁に形成される開先の先端位置が金型の載置面の高さより所定高さだけ低い位置となるように前記第1面を下方に押し切ることで、前記第1面の全面をプレス成形の成形範囲として前記第1面を円弧状に折り曲げ、前記第1面を折り曲げた鋼板において前記丸形鋼管の内壁を形成する面を三つに区分した面のうちの他方側の第2面の一端縁に形成される開先の先端位置が金型の載置面の高さより所定高さだけ低い位置となるように前記第2面を下方に押し切ることで、前記第2面の全面をプレス成形の成形範囲として前記第2面を円弧状に折り曲げ、前記第1面及び前記第2面を折り曲げた鋼板において前記丸形鋼管の内壁を形成する面を三つに区分した面のうちの前記第1面と前記第2面とに挟まれた第3面の全面をプレス成形の成形範囲として前記第3面を円弧状に折り曲げるものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の丸形鋼管の製造方法及び丸形鋼管製造設備によれば、丸形鋼管の前段階である半成形丸形鋼管を造管する際に、鋼板の両側縁付近をプレス成形により折り曲げることから、鋼板の両側縁を突き合わせて溶接する際に鋼板の両側縁の突き合わせ部が平面状になる。そのため、鋼板をプレス成形する前に予め端曲げプレス(はな曲げ加工)を行う必要がなく、鋼板から丸形鋼管を製造する製造工程を簡略化することができる。また、半成形丸形鋼管を造管する際に、同一の金型によって鋼板の所定の3箇所を折り曲げることができる。そのため、簡素化された設備構成で簡易な製造工程により丸形鋼管を製造することができる。さらに、造管された半成形丸形鋼管に直状部が残存しないため、半成形丸形鋼管から丸形鋼管を成形する際に半成形丸形鋼管全体を加熱する必要がない。そのため、簡素化された設備構成で簡易な製造工程により丸形鋼管を製造することができる。さらにまた、鋼板の所定の3箇所を折り曲げることにより丸形鋼管を製造することから、半成形丸形鋼管を造管するためのプレス加工の回数を削減できるとともに、3つの大径のアール部によって管の断面形状を丸形状に成形することができる。そのため、簡易な製造工程により丸形鋼管を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る丸形鋼管設備における丸形鋼管の製造工程を示す説明図である。
【
図2】本発明に係る丸形鋼管設備の成形プレスにおけるプレス成形の工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施例を図面に基づき説明する。
【0016】
図1に示すように、本発明に係る丸形鋼管製造設備10は、厚さ12mmから70mmの鋼板90から丸形の鋼管(丸形鋼管99)を製造するための設備である。丸形鋼管製造設備10は、鋼板90から曲げ鋼板92を形成し、続いて、曲げ鋼板92から半成形丸形鋼管96を形成し、さらに、半成形丸形鋼管96から丸形鋼管99を成形する。
【0017】
丸形鋼管製造設備10においては、まず、所定長さの鋼板90を長さ方向Nに搬送し、開先加工機11に導入する。開先加工機11は、鋼板90の幅方向Wにおける両側縁に開先91を形成する。
【0018】
次いで、鋼板90を成形プレス12(「折り曲げ装置」の一例)に導入する。成形プレス12においては、鋼板90において丸形鋼管99の内壁を形成する面を鋼板90の幅方向Wに三つに区分した第1面90a、第2面90b、第3面90cをそれぞれ順番にプレス成形により折り曲げる。ここで、鋼板90の第1面90aとは、鋼板90において丸形鋼管99の内壁を形成する面を鋼板90の幅方向Wに三つに区分した面のうちの一方側(例えば、鋼板90の幅方向Wの右側)の面をいい、その面の一端縁に開先91が形成されている。また、鋼板90の第2面90bとは、鋼板90において丸形鋼管99の内壁を形成する面を鋼板90の幅方向Wに三つに区分した面のうちの他方側(第1面90aが形成される側と反対側、例えば、鋼板90の幅方向Wの左側)の面をいい、その面の一端縁に開先91が形成されている。さらに、鋼板90の第3面90cとは、鋼板90において丸形鋼管99の内壁を形成する面を鋼板90の幅方向Wに三つに区分した面のうちの第1面90aと第2面90bとに挟まれた面(鋼板90の幅方向Wの中央部に形成される面)をいう。丸形鋼管製造設備10においては、三つに区分した第1面90a、第2面90b、第3面90cのそれぞれの面が成形プレス12におけるプレス成形の成形範囲となる。すなわち、丸形鋼管製造設備10では、鋼板90において成形プレス12によりプレス成形する範囲を所定の三つの範囲に区分している。
【0019】
成形プレス12は、エヤーベンド形式のプレス手段であり、左右方向に互いに近接離間動自在な一対の下金型12Aと、下金型12Aに対して上下方向に近接離間動自在な上金型12Bと、から構成される。一対の下金型12Aは、互いに所定の間隔を有することで上向きの凹状成形面を形成する。一対の下金型12Aは、鋼板90の折り曲げ角度に応じて互いの間隔が設定される。上金型12Bは、その先端部に、鋼板90の折り曲げ角度に応じた円弧状の凸状成形面が形成されている。
【0020】
成形プレス12において、鋼板90を載置した下金型12Aに対して上金型12Bを昇降動させることにより第1面90aから第3面90cのプレス成形を行う。すなわち、丸形鋼管製造設備10においては、共通する1体の金型(下金型12A及び上金型12B)によって鋼板90の所定の3面(3箇所)を折り曲げる。
【0021】
具体的には、
図2に示すように、まず、成形プレス12の下金型12Aに鋼板90の第1面90a側の端部を載置させる。この時、鋼板90の第1面90aの裏面であって、第1面90aにおける幅方向Wの両端側のそれぞれの裏面が下金型12Aの載置面12aのそれぞれに載置される。そして、下金型12Aに載置された鋼板90の第1面90aの全面に対して上金型12Bを近接動させる。この時、上金型12Bは、鋼板90の第1面90a側の開先91(鋼板90の幅方向Wの一方側縁部)の先端位置が下金型12Aの載置面12aの高さより所定高さDだけ低い位置となるように、鋼板90の第1面90aを下方に押し切る。これにより、鋼板90の第1面90a側における幅方向Wの一方側端部に直状部が残存することなく、鋼板90の第1面90aの全面をプレス成形の成形範囲として第1面90aを円弧状に折り曲げることができる。このような成形プレス12による1回目のプレス成形によって、鋼板90の第1面90a側を、中心角が略120度の円弧形状に折り曲げる。
【0022】
続いて、
図1に示すように、第1面90a側が円弧状に折り曲げられた鋼板90を幅方向Wに移動させ、成形プレス12の下金型12Aに鋼板90の第2面90b側の端部を載置させる。この時、鋼板90の第2面90bの裏面であって、第2面90bにおける幅方向Wの両端側のそれぞれの裏面が下金型12Aの載置面12aのそれぞれに載置される。そして、下金型12Aに載置された鋼板90の第2面90bの全面に対して上金型12Bを近接動させる。この時、上金型12Bは、鋼板90の第2面90b側の開先91(鋼板90の幅方向Wの他方側縁部)の先端位置が下金型12Aの載置面12aの高さより所定高さDだけ低い位置となるように、鋼板90の第2面90bを下方に押し切る。これにより、鋼板90の第2面90b側における幅方向Wの一方側端部に直状部が残存することなく、鋼板90の第2面90bの全面をプレス成形の成形範囲として第2面90bを円弧状に折り曲げることができる。このように成形プレス12による2回目のプレス成形によって、鋼板90の第2面90b側を、中心角が略120度の円弧形状に折り曲げる。
【0023】
続いて、第1面90a及び第2面90bが円弧状に折り曲げられた鋼板90を幅方向Wに移動させ、成形プレス12の下金型12Aに第3面90cを形成する鋼板90の中央部を載置させる。そして、下金型12Aに載置された鋼板90の第3面90cの全面に対して上金型12Bを近接動させる。これにより、鋼板90の第3面90cに直状部が残存することなく、鋼板90の第3面90cの全面をプレス成形の成形範囲として第3面90cを円弧状に折り曲げる。このように成形プレス12による3回目のプレス成形によって、鋼板90の中央部(第3面90c)を、中心角が略120度の円弧形状に折り曲げ、鋼板90の第1面90aから第3面90cが円弧状に折り曲げられた曲げ鋼板92を形成する。
【0024】
このように、成形プレス12においては、鋼板90において丸形鋼管99の内壁を形成する側の面を三つに区分し、三つに区分した面(第1面90aから第3面)のそれぞれをプレス成形の成形範囲として当該面側からの1面ずつの3回のプレス成形によって折り曲げることにより曲げ鋼板92を形成する。つまり、鋼板90において丸形鋼管99の内壁を形成する面を三つに区分した所定の3面に、丸形鋼管99の内壁となる側から順次力を加えることにより曲げ鋼板92を形成する。
【0025】
また、成形プレス12においては、鋼板90において開先91が形成されている両側縁付近(第1面側及び第2面側)をプレス成形により折り曲げることから、後述のように、鋼板90(曲げ鋼板92)の両側縁を突き合わせて溶接する際に鋼板90の両側縁の突き合わせ部が平面状になる。そのため、鋼板90をプレス成形する前に予め端曲げプレス(はな曲げ加工)を行う必要がなく、丸形鋼管99を製造する製造工程を簡略化することができる。
【0026】
続いて、成形プレス12によって折り曲げられた曲げ鋼板92を長さ方向Nに移動させて仮付け溶接機14(「溶接装置」の一例)に導入する。仮付け溶接機14において曲げ鋼板92の外側(丸形鋼管99の外壁となる側)から加圧することにより開先91同士を突き合わせして突き合わせ部を形成させる。そして、仮付け溶接機14が、当該突き合わせ部に対して仮付け溶接95を施工する。すなわち、曲げ鋼板92の両側縁を突き合わせた状態で、仮付け溶接機14が曲げ鋼板92に対して仮付け溶接95を行う。このように、仮付け溶接機14が曲げ鋼板92に対して仮付け溶接95を行うことで、半成形丸形鋼管96が造管される。ここで、半成形丸形鋼管96とは、丸形鋼管99の製造工程の中間成形過程における半成形品の丸形鋼管であり、最終製品である丸形鋼管99よりも管の丸形の断面形状の径が不均一な粗成丸形鋼管をいう。
【0027】
さらに、仮付け溶接95が行われた半成形丸形鋼管96を内面溶接機21(「溶接装置」の一例)に導入する。内面溶接機21は、半成形丸形鋼管96に対して内面溶接97を施工する。さらにまた、半成形丸形鋼管96を外面溶接機22(「溶接装置」の一例)に導入する。外面溶接機22は、半成形丸形鋼管96に対して外面溶接98を施工する。
【0028】
次いで、半成形丸形鋼管96をエキスパンダ15(「加圧装置」の一例)に導入する。エキスパンダ15は、ダイスセグメント16Aを円周方向に多数並べて形成した円筒状のダイ16内にジョー17を介してテーパーの付いたコーン18を装着し、このコーン18をドローバー19で引っ張ることによりダイ16の外径を押し広げて拡管を行う装置である。エキスパンダ15においては、拡管ヘッド20が半成形丸形鋼管96の管端から挿入される。そして、ドローバー19に連結されたコーン18を軸方向に移動させ、或いは半成形丸形鋼管96を軸方向に移動させることにより、コーン18とジョー17のくさび作用によってジョー17が広がる。これにより、ジョー17の外側に取り付けられたダイ16が半成形丸形鋼管96の内壁に当接し、半成形丸形鋼管96の内壁を加圧することで半成形丸形鋼管96を内側から外側に押し広げる。そして、ダイ16が半成形丸形鋼管96の全長にわたって半成形丸形鋼管96の内壁を加圧することで、半成形丸形鋼管96の全長が拡管される。エキスパンダ15は、半成形丸形鋼管96を内側から外側に押し広げることで、半成形丸形鋼管96を側面視丸形に成形する。エキスパンダ15は、半成形丸形鋼管96の内壁をダイ16により加圧することで、半成形丸形鋼管96の内径が半成形丸形鋼管96の全周にわたって均一となるように成形する。これにより、製品としての丸形鋼管99が造管される。
【0029】
以上のように、本実施形態に係る丸形鋼管99の製造方法及び丸形鋼管製造設備10によれば、丸形鋼管99の前段階である半成形丸形鋼管96を造管する際に、鋼板90の両側縁付近をプレス成形により折り曲げることから、鋼板90(曲げ鋼板92)の両側縁を突き合わせて溶接する際に鋼板90の両側縁の突き合わせ部が平面状になる。そのため、鋼板90をプレス成形する前に予め端曲げプレス(はな曲げ加工)を行う必要がなく、鋼板90から丸形鋼管99を製造する製造工程を簡略化することができる。また、半成形丸形鋼管96を造管する際に、同一の金型(下金型12A及び上金型12B)によって鋼板90の所定の3箇所を折り曲げることができる。そのため、簡素化された設備構成で簡易な製造工程により丸形鋼管99を製造することができる。さらに、造管された半成形丸形鋼管96に直状部が残存しないため、半成形丸形鋼管96から丸形鋼管99を成形する際に半成形丸形鋼管96全体を加熱する必要がない。そのため、簡素化された設備構成で簡易な製造工程により丸形鋼管99を製造することができる。さらにまた、鋼板90の所定の3箇所を折り曲げることにより丸形鋼管99を製造することから、半成形丸形鋼管96を造管するためのプレス加工の回数を削減できるとともに、3つの大径のアール部によって管の断面形状を丸形状に成形することができる。そのため、簡易な製造工程により丸形鋼管99を製造することができる。
【0030】
なお、本実施の形態においては、折り曲げ装置の一例としてエヤーベンド形式の成形プレス12が示されているが、これに限定されるものではなく、下金型12Aを上向きの凹状成形面を有した一体の金型とし、当該金型に対して上金型を近接動させる押し切り形式の折り曲げ装置であっても構わない。
【0031】
また、本実施の形態においては、エキスパンダ15のダイ16によって半成形丸形鋼管96を内側から外側に押し広げることにより丸形鋼管99を成形しているが、この方法に限定されるものではなく、半成形丸形鋼管96の内壁を加圧して半成形丸形鋼管96を内側から外側に押し広げる構成であれば、例えば、水圧式の拡管機(半成形丸形鋼管96の管内に水を満たし圧力をかける方式)を用いた方法により成形しても構わない。
【0032】
さらに、本実施の形態においては、エキスパンダ15によって半成形丸形鋼管96を内側から外側に押し広げることにより丸形鋼管99を成形しているが、この方法に限定されるものではなく、半成形丸形鋼管96を真円の丸形鋼管99に成形可能な方法であれば、半成形丸形鋼管96の外壁を外側から内側に押し縮めることにより丸形鋼管99を成形しても構わない。この場合、半成形丸形鋼管96の外壁側から下型と上型とを嵌め合わせてプレスするプレス形式の加圧装置により丸形鋼管99を成形する。また、半成形丸形鋼管96の外壁側から複数のロールにより加圧するロール形式の加圧装置により丸形鋼管99を成形する。
【符号の説明】
【0033】
10 丸形鋼管製造設備
12 成形プレス(折り曲げ装置)
14 仮付け溶接機(溶接装置)
15 エキスパンダ(加圧装置)
21 内面溶接機(溶接装置)
22 外面溶接機(溶接装置)
90 鋼板
90a 第1面
90b 第2面
90c 第3面
96 半成形丸形鋼管
99 丸形鋼管