(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-07
(45)【発行日】2022-09-15
(54)【発明の名称】代掻き作業機
(51)【国際特許分類】
A01B 35/04 20060101AFI20220908BHJP
A01B 33/16 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
A01B35/04 F
A01B33/16
(21)【出願番号】P 2019136527
(22)【出願日】2019-07-25
【審査請求日】2021-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000171746
【氏名又は名称】株式会社ササキコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】戸舘 裕紀
(72)【発明者】
【氏名】野村 拓未
(72)【発明者】
【氏名】久保 陽拓
【審査官】櫻井 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-220597(JP,A)
【文献】実開昭59-090305(JP,U)
【文献】特開2004-089071(JP,A)
【文献】特開2008-005796(JP,A)
【文献】特開2013-132246(JP,A)
【文献】特開昭54-111403(JP,A)
【文献】実開昭58-189702(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 27/00 - 49/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機から伝達される動力によって駆動される耕耘ロータと、前記耕耘ロータの上部を覆う耕耘部カバーと、前記耕耘部カバーの進行方向後側端部に上下方向に回動自在に設けられた整地板と、前記整地板の前記耕耘ロータ側に配置したレーキ体と、を備えた代掻き作業機において、
前記レーキ体は、整地板前方から後方に延びるレーキと、を備え、
前記レーキは、前記整地板の上下回動中心と同軸上に回動中心が設けられていて、前記整地板に対し回動自在及び接離自在であるとともに、前記整地板に対し離反する方向に弾圧部材で付勢され、
前記弾圧部材は、前記レーキの回動軸から前記整地板の上面側に突出させたアームの端部と、前記アームを貫通させるとともに一端側を前記整地板に取り付けた位置決め部材の他端側との間に配置し、
前記弾圧部材は、前記整地板の外側面側で前記位置決め部材によって前記レーキの付勢力を調整可能である、
ことを特徴とした代掻き作業機。
【請求項2】
前記整地板は、前記耕耘部カバーの進行方向後側端部に進行方向と直交する左右方向を軸にして上下方向に回動自在に設けられ
た第1整地板と、前記第1整地板の後端部に進行方向と直交する左右方向を軸にして上下方向に回動自在に設けられた第2整地板と、を備え、
前記位置決め部材の他端は、前記アームの上方且つ前記第1整地板の上方に位置する、
ことを特徴とした請求項1に記載の代掻き作業機。
【請求項3】
前記位置決め部材
は前記第1整地板と垂直に設け、
前記アームの端部の面は
前記レーキが前記第1整地板から離間する方向にあるときにおいて前記第1整地板の面とほぼ平行に配置されている、
ことを特徴とした請求項2に記載の代掻き作業機。
【請求項4】
前記位置決め部材はボルトからなり、前記位置決め部材の他端部はボルトの頭部であり、前記弾圧部材は圧縮ばねである、
ことを特徴とした請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の代掻き作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタに装着されて使用される農作業機であり、複数の耕耘爪を設けた耕耘ロータを回転させ耕耘する耕耘装置に関する。詳細には、耕耘ロータの後方に設けた整地板部の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
走行車両に装着するレーキ体を有した代掻き作業機の従来技術は、特許文献1によって開示されている。この代掻き作業機は、耕耘ロータ後方に位置する第1整地板の耕耘ロータ側にレーキ体42が設けられ、このレーキ体は、第1レーキと、第2レーキで構成されている。第1レーキは、第1整地板40の上下回動中心と同軸上に回動中心を設け、第1整地板に対し離反する方向に弾圧部材で付勢していて、第1整地板の外側から付勢力を調整可能である、とするものである。さらに、第1整地板の後方側上面の付勢力調整プレートに、弾圧部材を掛ける複数の孔を設け、この孔に対し弾圧部材を掛け替えることにより、付勢力を調整できるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、耕耘作業機を含む代掻き作業機の進行方向に直交する左右の作業幅は、使用者が作業する圃場の大きさや、作業者の使用状況等を鑑みて、複数の作業幅を品揃えすることが慣例となっている。作業幅に応じ、第1レーキも進行方向に対する左右方向に幅が増減するため、間隔を置いて配置された丸棒状部材も、作業幅に応じて増減することになる。すると、丸棒状部材の1本当たりの土壌に対する付勢力は、変化することになる。このため、作業幅が異なる状況においても、土壌および泥水に対する第1レーキの付勢力は一定であることが望ましく、第1レーキの付勢力は細やかに調整できることが望ましい。
【0005】
また、圃場の土壌条件および土質条件によっては、第1レーキの後方の先端部が土壌面および泥水面に反発して、土壌に埋没しないため、夾雑物を土壌に埋没させることが困難な場合がある。このため、作業幅によらず、第1レーキの付勢力を調整する必要がある、という課題を持つ。
また、特許文献1に記載の構成では、付勢力の調整は、孔の掛け替えによる方法であり、数多く存在する使用条件や土壌条件には対応しきれない問題がある。また、弾圧部材に泥土等の異物が噛み込むと安定した付勢力を与えることができなくなる、という課題を持つ。
【0006】
したがって、本発明は上記課題に着眼してなされたものであり、レーキの土壌に対する付勢力を細やかに調整できるとともに、安定した付勢力を与えることが可能な構成とした代掻き作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一態様は、走行機から伝達される動力によって駆動される耕耘ロータと、耕耘ロータの上部を覆う耕耘部カバーと、耕耘部カバーの進行方向後側端部に上下方向に回動自在に設けられた整地板と、整地板の耕耘ロータ側に配置したレーキ体と、を備えた代掻き作業機において、レーキ体は、整地板前方から後方に延びるレーキと、を備え、レーキは、整地板の上下回動中心と同軸上に回動中心が設けられていて、整地板に対し回動自在および接離自在であるとともに、整地板に対し離反する方向に弾圧部材で付勢され、弾圧部材は、レーキの回動軸から整地板の上面側に突出させたアームの端部と、アームを貫通させるとともに一端側を第1整地板に固定させた位置決め部材の他端側との間に配置し、弾圧部材は、整地板の外側面側で位置決め部材によってレーキの付勢力を調整可能とした代掻き作業機であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、レーキの土壌に対する付勢力を細やかに調整できるとともに、安定した付勢力を与えることが可能な構成とした代掻き作業機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施の形態を示す代掻き作業機の作業状態を進行方向左側から見た正面図である。
【
図2】本発明の実施の形態の要部である整地板を作業状態で進行方向と平行に断面した正面断面図である。
【
図3】本発明の実施の形態の要部である整地板を作業状態で進行方向と平行に断面し第1レーキが上方に回動した状態の正面断面図である。
【
図4】本発明の実施の形態の要部である整地板を耕耘ロータ側から見た図であり、第1レーキと第2レーキの位置関係を示した説明図である。
【
図5】本発明の実施の形態の耕耘ロータの要部を進行方向と平行に断面した正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の一形態を、
図1乃至
図5に基づいて説明する。
図1に示すように、走行機であるトラクタ1の後部に設ける昇降リンクである3点リンク機構に、代掻き作業機Aに設けたフレーム2の前方部に位置した装着部8であるクイックヒッチフレーム20を介して連結する。代掻き作業機Aは、3点リンク機構によって昇降自在であるとともに、トラクタ1側から出力される動力を獲得することによって駆動される。獲得した動力を耕耘ロータ6に伝達し、これを回転駆動させることで土壌を耕耘あるいは砕土する。耕耘あるいは砕土した土壌は、整地板4によって整地するとともに、整地板4に設けたレーキ体42で土壌表面に浮いた夾雑物を埋没させる。代掻き作業機Aは、土壌を耕耘あるいは砕土しながら整地を行うものである。本実施例の説明においては、
図1の誌面左側を進行方向の前方側とし、誌面右側を後方側として説明する。
【0011】
クイックヒッチフレーム20は、代掻き作業機Aの前方中央部に位置し、上部中央のトップリンクピン81と、その下方の左右に位置する一対のロアリンクピン80により、3点リンク機構のトップリンク10とロアリンク11に連結されている。フレーム2の中央部から上方且つ前方に突出したトップマスト21と、フレーム2の中央部の左右それぞれから下方且つ前方に突出したロワマスト22に、クイックヒッチフレーム20を係合させることで、代掻き作業機Aはトラクタ1に装着される。
【0012】
フレーム2の中央部には、入力ケース31が設けられ、前方に向け入力軸32が突設されている。入力軸は、トラクタ1の出力軸とユニバーサルジョイント12で連結されトラクタ側の動力が入力される。
【0013】
代掻き作業機Aの全体を保持するフレーム2は、入力ケース31、パイプ33、伝動ケース51、サポートフレーム52を有している。パイプ33は、入力ケース31の進行方向左右それぞれの側面から左あるいは右方向に突出させている。入力ケース31から突出したパイプ33の左右いずれか一方側のパイプ33の端部には、下方に向けて設けた伝動ケース51が設け、他方側のパイプ33の端部には、下方に向けて配置したサポートフレーム52を設けている。
伝動ケース51下端部とサポートフレーム52の下端部との間には、回転自在に架設支持したロータ軸60が配置される。
【0014】
ロータ軸60には、放射状に一定間隔を設けて耕耘爪61が多数取り付けられ、耕耘ロータ6を構成している。
図2に示すように、耕耘ロータ6は未耕地側である前方側がダウンカットされるように左回転としている。
【0015】
入力ケース31の入力軸32から入力された動力は、入力ケースに内装されるギヤによって減速され、左右一方側の側方に突設したパイプ33内を通る出力軸(図示せず)により伝動ケース51内に伝達される。伝動ケース51内の出力軸端部に固着された出力スプロケットと、伝動ケース51下端部に支持されたロータ軸60の端部固着されたロータ軸スプロケットとの間に巻着されたローラチェーン(図示せず)により、動力がロータ軸60に伝達されて、ロータ軸60は回転駆動が可能である。
【0016】
ロータ軸60の両端側の支持部は、ベアリングにより回転自在に支持されている。伝動ケース51の上部にはオイル給油口が設けられ、給油された潤滑オイルによりローラチェーンやベアリングが潤滑される。
【0017】
耕耘ロータ6の上方部には、耕耘爪61の回転外周端に沿うように離間して耕耘部カバー7が設けられている。耕耘部カバー7は、耕耘ロータ6の上方部を覆っている。耕耘部カバー7は、耕耘ロータ6によって耕耘された土壌の上方への飛散を防ぐとともに、砕土や整地の性能を向上させるように補助する役割がある。耕耘部カバー7は、伝動ケース51とサポートフレーム52の、それぞれ上下中央部同士を架け渡すように配置されている。
【0018】
耕耘ロータ6後方部および耕耘部カバー7後方部には、整地板4が設けられている。整地板4は、耕耘部カバー7の後端部に前端側を上下方向に回動自在に連結された第1整地板40と、第1整地板40の後端部に、前端側を上下方向に回動自在に設けられた第2整地板41で構成されている。整地板4は、耕耘ロータ6により耕耘された土壌の後方側への飛散を受け止めるとともに、整地板4の耕耘ロータ6側の面を土壌に接地させて前進することで耕耘後の均平に整地が行われる。
【0019】
第1整地板40と第2整地板41の左右幅は、耕耘部カバー7とほぼ同じか、やや長くなるとように設定されている。こうすることで、耕耘ロータ6で耕耘後の土壌を漏れなく整地できる。整地板4は、整地板4とフレーム2側に架け渡されたコンプレッションロッド46によって連結することで、整地圧力が調整可能となっている。
【0020】
耕耘部カバー7の後端部には、進行方向と直交する水平方向に設けた第1整地板の回動軸43を設けている。これに第1整地板40の前端部を取り付けることで、第1整地板40の後方が上下方向に回動自在にされている。さらに、第1整地板40後端部には第2整地板41が連結されている。第2整地板41は、第1整地板40後端部に設けた進行方向と直交する水平方向に設けた第2整地板の回動軸45に前端部を保持されて、後方側が上下方向に回動自在に設けられている。
【0021】
作業時の第1整地板40は、耕耘部カバー7後端部から下方斜め後方側に傾斜した状態で、耕耘ロータ6によって耕耘され後方側に撥ね飛ばされた泥土を受け止め、後方に傾斜した斜面によって盛り上げられた泥土をトラクタ1の進行とともに押圧し整地していく。第1整地板40上面部とフレーム2側に架け渡されたコンプレッションロッド46によって整地圧力が調整可能となっている。代掻き整地作業時の第2整地板41は、接地面をほぼ水平状態に維持して第1整地板40によって整地した面をさらに押圧して整地する。
【0022】
耕耘部カバー7の後端部の第1整地板の回動軸43下方部には、耕耘部カバー7から後方側に向け片持ち状に設けられた連結部カバー70が設けられる。連結部カバー70は左右方向に長い帯状の弾性体の板状となっていて、耕耘ロータ6によって撥ね上げられた土壌あるいは泥土が第1整地板40との連結部から飛び出さないようにガードするとともに、土壌あるいは泥土を後方に案内する。
【0023】
第1整地板40の耕耘ロータ6側の面には、レーキ体42が設けられている。レーキ体42は、
図4に示すように、進行方向に延びる棒状部材を進行方向に対し左右方向に所定の間隔を置いて複数設けられている。レーキ体42は、第1レーキ420と、第2レーキ421とで構成している。
【0024】
第1レーキ420は、進行方向に向けた棒状部材423を第1整地板40の前方部から第1整地板40の後端側に設ける。複数の棒状部材423の前端部は、進行方向の左右に延びる連結部材424によって一体にされている。第1レーキ420は、第1整地板40の耕耘ロータ6側に、進行方向左右に複数並べて設けている。
第2レーキ421は、第1整地板40の後端部に取り付けられ、第1レーキ420の棒状部材423の間に第2レーキ421の棒状部材425を位置させている。第2レーキ421の棒状部材425は第1レーキ420より、前後方向の距離が短い。
【0025】
第1レーキ420の前端は、第1整地板の回動軸43と同軸上に、第1レーキ420の回動軸である回動ボス426を設けて取り付ける。回動ボス426によって、第1レーキ420は、第1整地板40に対して上下に第1整地板と同軸上で回動自在であり、第1レーキ420の後部は第1整地板40の後部に接離自在である。
【0026】
第1レーキ420は、前端の回動ボス426の後方側から上部に向けて突出させたアーム422を有している。アーム422は、上下方向に長い帯状部材であり、棒状部材423および連結部材424とともに一体となって回動ボス426を軸にして回動する。この実施形態に示すアーム422は、第1レーキ420の左右それぞれの端部に2か所設けている。アーム422の端部は第1整地板40の上面側に突出していて、端部を後方側に曲げている。アーム422の曲げられた面は、第1整地板40の前方側の上面とほぼ平行に設ける。
【0027】
アーム422の先端部は孔427を設けていて、この孔427に位置決め部材403が貫通している。この実施の形態では、位置決め部材403はボルトを採用している。位置決め部材403の一端側は、第1整地板40の耕耘ロータ6側に固着されたナット404に差し込まれる。さらに、第1整地板40の上面からナット405で締め付けることにより位置決め部材403は固定される。位置決め部材403は、第1整地板40の前方側の上面に対して、ほぼ垂直に設けている。位置決め部材403の他端であるボルト頭部は、第1整地板40の前方側の上面より上方且つ、アーム422の先端部の孔427よりも情報に位置する。
【0028】
位置決め部材403の周囲には、弾圧部材44である圧縮バネが配置されている。弾圧部材44の両端は、位置決め部材403の他端部であるボルト頭部と、アーム422の先端部の上面との間に配置されている。弾圧部材44は、位置決め部材403の軸部およびボルト頭部の下面およびアーム422によって、位置がずれないようになっている。このように構成することで、第1レーキ420は、第1整地板40から離間する方向、すなわち、耕耘ロータ6側に向けて、弾圧部材44によって付勢された状態で取り付けることが可能となる。
【0029】
図2に示すように、第1レーキ420が第1整地板40から離間する方向にあるときは、アーム422の上部に位置する先端部の面は、が第1整地板40の上面とほぼ平行に設定されている。その後、第1レーキ420が土壌及び泥土によって上方に押圧されると、上方に回動する。回動の最後には、
図3に示すように、第1レーキ420の後端部が第1整地板40の後端部に当接して回動が止まる。この状態のアーム422は、第1整地板40の上面から相対的に持ち上げられたようになることで、弾圧部材44をアーム422の先端部と位置決め部材403の他端部との間で圧縮される。
【0030】
ところで、作業状態の代掻き作業機Aは、進行とともに土壌あるいは泥土を耕耘、砕土を行うことは上述した通りである。特に泥土を耕耘、砕土した場合、代掻き作業機Aの進行および耕耘ロータ6の回転駆動によって、代掻き作業機Aの周囲に泥流が発生する。この泥流は激しく乱れているので、互いが干渉や衝突しあって上方にしぶきが上がることがある。このしぶきは、泥土に起因するものであるため、他の場所に付着すると徐々に堆積し、その後、このしぶきが乾燥すると固まった土になる。特に耕耘部カバー7の上面と、整地板4の上面は、このしぶきがかかりやすく、耕耘部カバー7および整地板4の上面部に機能部品を取り付けている場合、乾燥したしぶきによって不都合が生じることがある。
【0031】
整地板4の上面部に位置する弾圧部材44は、第1整地板40の回動軸43の後方側近傍に位置し、且つ、第1整地板40の前方側上面に対し垂直に突き出すように設けている。また、弾圧部材44は第1整地板40の上面から情報に離間して配置されている。このため、弾圧部材44はしぶきが発生する作業土壌面から相対的に上方に位置させることができ、代掻き作業時に発生するしぶきの付着を防ぐことができる。結果的に、弾圧部材44である圧縮ばねのコイル間には固まった土が付着しないため、弾圧部材44の圧縮不良に起因する第1レーキ420の回動不良がない。
【0032】
さらに、第1整地板の上面から上方に向けて突出している弾圧部材44および位置決め部材403の周囲は、カバー47で覆われている。これにより、代掻き作業時に発生するしぶきの付着防止性をさらに向上させることができる。また、作業時において、第1レーキ420の回動に伴う、アーム422の回動および弾圧部材44の伸縮をカバー47で覆うことで、可動する部分の露出を可及的に抑えることができ、異物の挟み込み等を未然に防ぐ。
【0033】
ねじによって取り付けた位置決め部材403は、捻じ込む位置を調整することで弾圧部材44の反発力を微調整できる。弾圧部材によって付勢されている第1レーキ420の付勢力も微調整が可能となる。これにより、第1レーキ420の付勢力は、第1整地板40の上面側の位置決め部材403を操作することによって、作業者の好みあるいは土壌条件等に合わせた任意の付勢力に微調整が容易にできる。
【0034】
第2レーキ421は、第1整地板40の後方部に前方部が取り付けられ、後方に向けられるとともに第1整地板40の整地面より下方側に突出して設けられる。本例においては、第1レーキ420より径が細い部材で形成されていて、自身の弾性力で撓むことができる。また、第2レーキ421の棒状部材425は、左右方向に離間して複数設けられた第1レーキ420の棒状部材の左右間にそれぞれ配置されている。
【0035】
レーキ体42は、耕耘ロータ6によって耕耘砕土された泥土中の稲わらなどの夾雑物を整地と同時に土中に押し込んで埋め込むためのもので、作業状態では前方が高く後方側が低い傾斜した姿勢となっている。前進走行によって、前方側でとらえた夾雑物を斜面で土中に誘導して埋め込む。前方側が第1レーキ420のみであり、左右方向の間隔が棒状部材423によってレーキ体42の後方側に対し比較的広く設けられている。レーキ体42の後方側には第2レーキ421の棒状部材425が、棒状部材423の間に位置するため左右方向の間隔が狭い状態となっている。このため、第1レーキ420前方側で泥土を濾し出す作用をさせ、水と土と夾雑物に分離させる。
【0036】
レーキ体42は夾雑物を後方に誘導すると、後方に位置する第2レーキの棒状部材425と第1レーキの棒状部材423とによって後方側の間隔を狭くして、レーキ体42から上方に夾雑物が逃げないように押し込むことができる。また、第1レーキ420と第1整地板40の回動軸中心が同軸に設けられているとともに、第1レーキ420に付勢力を加えている弾性部材44が第1整地板40の前方上面部に設けられていることで、耕耘深さが変化して第1整地板40の角度が変化しても第1レーキ420の押し込み圧力は変化しない。
【0037】
図3に示すように、第1整地板40は、第1レーキ420が第1整地板40側に回動して後端側が第1整地板40に当接した状態で、第1レーキ420の前方から中間部上方部に空間部402が形成されるように山形に外側へ膨らんだ形状となっている。これによって、前記の第1レーキ420前方側で泥土を濾し出す作用を促進させることができる。
【0038】
耕耘ロータ6の耕耘爪61は、
図5に示すように、全体として湾曲あるいは傾斜した平面状からなっている。ロータ軸60に基部が取り付けられ、回転方向の後方側に弯曲していて、後方側の端部はロータ軸60の回転軸方向に曲げられた泥土撥ね上げ面62を有している。泥土撥ね上げ面62は、
図5に示すように、回転外周円の接線線63に対して回転方向の前方側から後方側に向かい回転中心側に傾斜していて、耕耘された泥土は第1整地板40の空間部402に向け泥土が撥ね上げられるように設定される。泥土撥ね上げ面62は、回転方向に直面する平面部を有し、前方側から後方側に向かい
図5に示す傾斜角64を有した平面である。泥土が第1整地板40の空間部402に向け撥ね上げられると、空間部402前方に位置する第1レーキ420に衝突する。この衝突によって、泥土中の水分、土壌、夾雑物が分離しやすくなり、このうち、夾雑物は第1レーキ420に沿って下方に誘導される。土壌は水分より比較的早く空間部402から下方に落ちて、水分は土壌にやや遅れて第1整地板40の内面から落下あるいは第1整地板40の内面に沿って落下する。第2レーキはこのように耕耘ロータ6と第1整地板40と第1レーキ420の協働によって、表面が柔らかい苗の植付けに適する圃場表面を形成できる。
【0039】
第1レーキ420と第2レーキ421後端部は、第1整地板後端部401の整地面より後方側に位置しているとともに、第2整地板41の整地面より前方に位置して設けられている。この構成により、レーキ体42によって土中に押し込まれた夾雑物が浮上する前に第2整地板41により抑え込まれ確実に夾雑物を埋め込むことができる。
【0040】
次に、本発明の代掻き作業機Aによって代掻き作業を行うには、走行機であるトラクタの3点リンク機構に装着部8のロアリンクピン80及びトップリンクピン81により連結させ、トラクタの3点リンク機構により上下に昇降可能な状態とする。また、トラクタの出力軸とユニバーサルジョイント12で入力軸と連結させ動力の入力が可能な状態とする。
【0041】
代掻き圃場において、トラクタ1を操作して耕耘ロータ6を回転させ、3点リンク機構を下降させると、耕耘ロータ6の耕耘爪61により土壌が耕耘される。この状態でトラクタ1を走行させると、順次圃場を耕耘して代掻き作業を行うことができる。また、耕耘ロータ6の後方部には整地板4が位置していて、耕耘された土壌表層部を整地しながら作業が行われる。整地板4の圃場面側にはレーキ体42が位置していて、夾雑物を土中に埋没させる。第1整地板40と第1レーキ420は、耕耘ロータ6により耕耘され飛散した土壌の水と土と夾雑物を分離させる作用を有する。夾雑物は、第1レーキ420と第2レーキ421によって、後方に案内されるとともに土中に埋没される。その後、第2整地板41によって土壌および泥土を均平に仕上げることができる。
【0042】
土壌及び泥土の状態によって第1レーキ420の付勢力を調整する場合は、位置決め部材403を回して調整することで、任意の付勢力を弾圧部材44によって与えることができる。第1レーキ420の付勢力の微調整が可能であるため、多数ある圃場の条件に対し適正な付勢力を第1レーキ420に与えることができ、夾雑物を土中に埋没させることができる。夾雑物が土中に埋没された泥土あるいは土壌の表面は、異物がなく均平に整地されているため、その後に行われる苗の植付けに最適な圃場表面となる。
【0043】
また、位置決め部材403による弾圧部材44での第1レーキ420への付勢力の調整は、同様の構成で作業幅が異なる複数の作業機を品揃えしても、圃場面に対する第1レーキ420が土壌面に接したときの棒状部材423の1本当たりそれぞれの押圧力を一定にできる。このことから、製品出荷時の初期設定において、作業幅が異なっても第1レーキ体420の接地押圧力を同一にできるため、作業幅の変化による夾雑物の埋没性が変化しない。
【0044】
以上に開示した構成の代掻き作業機によって、レーキの土壌に対する付勢力を細やかに調整できるとともに、安定した付勢力を与えることが可能となった。
本発明は、上記の実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。例えば、代掻き作業機を作業幅方向の任意の部分で折り畳み可能な構造であったとしても、上記に開示した構造は適用可能である。また、第1レーキは第1整地板に作業幅方向に複数設けると説明したが、1つでも実施可能である。このように、上記した開示に基づく実施形態、実施例及び運用技術の改変は、特許請求の範囲に記載された範囲内で可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0045】
この発明は、整地板にレーキ体を備えた作業機に適応できる。
【符号の説明】
【0046】
4 整地板
40 第1整地板
401 第1整地板後端部
403 位置決め部材
41 第2整地板
42 レーキ体
420 第1レーキ
421 第2レーキ
422 アーム
44 弾圧部材
47 カバー
6 耕耘ロータ
7 耕耘部カバー