(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-07
(45)【発行日】2022-09-15
(54)【発明の名称】仕切体
(51)【国際特許分類】
B65D 25/04 20060101AFI20220908BHJP
B65D 5/495 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
B65D25/04 Z
B65D5/495
(21)【出願番号】P 2020020242
(22)【出願日】2020-02-10
【審査請求日】2020-02-14
【審判番号】
【審判請求日】2020-12-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】392006558
【氏名又は名称】イワキパックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 亮
【合議体】
【審判長】一ノ瀬 覚
【審判官】内田 博之
【審判官】芦原 康裕
(56)【参考文献】
【文献】実開平5-94115(JP,U)
【文献】実開昭49-100972(JP,U)
【文献】米国特許第3343742(US,A)
【文献】実開昭48-41671(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 5/00-5/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の縦仕切板と複数の横仕切板とが共に起立した状態で互いに交差して組み立てられ、各縦仕切板と各横仕切板とで区画された空間に物品を個別に収容する仕切体であって、
前記各縦仕切板は、その上端縁から下方に延びる第1上スリットと、該縦仕切板の下端縁から上方に延びる第1下スリットとを所定間隔を存して交互に備えると共に、互いに隣り合う縦仕切板のうち一方の縦仕切板の第1上スリット及び第1下スリットは、夫々他方の縦仕切板の第1下スリット及び第1上スリットに対向する位置に設けられ、
前記各横仕切板は、その上端縁から下方に延びる第2上スリットと、該横仕切板の下端縁から上方に延びる第2下スリットとを所定間隔を存して交互に備えると共に、互いに隣り合う横仕切板のうち一方の横仕切板の第2上スリット及び第2下スリットは、他方の横仕切板の第2下スリット及び第2上スリットに対向する位置に設けられ、
前記縦仕切板と前記横仕切板とは、各第1上スリットと各第2下スリットとを互いに係合し、各第1下スリットと各第2上スリットとを互いに係合して組み立てられている仕切体において、
各縦仕切板と各横仕切板との交差位置の少なくとも上端部
に凹部を設けたことを特徴とする仕切体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仕切体に関し、例えば、容器等の内部を複数に区画する仕切体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の縦仕切板と複数の横仕切板とが共に起立した状態で互いに交差して組み立てられた仕切体が知られている(例えば下記特許文献1参照)。
【0003】
この種の仕切体は、トレー箱やコンテナボックス等の容器の内部を仕切るために用いられる。仕切体によって形成される区画内には、例えば、工場の製造ラインで使用する組み立て部品等の物品が収容される。
【0004】
仕切体によって区画される各区画空間は、上記物品を隙間なく収容することが好ましい。このため、具体的には、例えば、円柱形状の物品を収容するための仕切体は、各区画空間の平面視形状が正方形とされ、各区画空間の高さが当該物品と同等に形成される。これによって、各区画空間に収容される物品は、互いに隣り合うもの同士の接触が各仕切板によって防止され、物品を収容した容器の移動中に振動が生じても物品同士の接触による物品の損傷を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、仕切体によって区画される各区画空間を上述のように物品の形状に対応させると、仕切体の各区画空間に収容された物品の露出部分が極めて小さくなる。このため、各区画空間に収容されている物品を取り出すときに、物品を把持する部分が殆どなく、物品の取り出し作業が困難となる不都合がある。
【0007】
上記の点に鑑み、本発明は、収容する物品同士の接触が防止できてしかも、物品の取り出し作業を容易とした仕切体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するために、本発明は、複数の縦仕切板と複数の横仕切板とが共に起立した状態で互いに交差して組み立てられ、各縦仕切板と各横仕切板とで区画された空間に物品を個別に収容する仕切体であって、前記各縦仕切板は、その上端縁から下方に延びる第1上スリットと、該縦仕切板の下端縁から上方に延びる第1下スリットとを所定間隔を存して交互に備えると共に、互いに隣り合う縦仕切板のうち一方の縦仕切板の第1上スリット及び第1下スリットは、夫々他方の縦仕切板の第1下スリット及び第1上スリットに対向する位置に設けられ、 前記各横仕切板は、その上端縁から下方に延びる第2上スリットと、該横仕切板の下端縁から上方に延びる第2下スリットとを所定間隔を存して交互に備えると共に、互いに隣り合う横仕切板のうち一方の横仕切板の第2上スリット及び第2下スリットは、他方の横仕切板の第2下スリット及び第2上スリットに対向する位置に設けられ、前記縦仕切板と前記横仕切板とは、各第1上スリットと各第2下スリットとを互いに係合し、各第1下スリットと各第2上スリットとを互いに係合して組み立てられている仕切体において、各縦仕切板と各横仕切板との交差位置の少なくとも上端部に凹部を設けたことを特徴とする。
【0009】
本発明は、前記凹部を設けたことにより、当該凹部を介して物品の側面の一部(上端部)を把持することが可能となる。更に、前記凹部は、各縦仕切板と各横仕切板との交差位置に形成されているので、交差位置以外の部分が互いに隣り合う物品間に介在し、物品同士の接触が防止される。このように、本発明によれば、収容する物品同士の接触が防止できてしかも、物品の取り出し作業を容易に行うことができる。
【0011】
更に上記構成により、前記縦仕切板と前記横仕切板とは、前記第1上スリットと前記第2下スリットとが互いに係合され、前記第1下スリットと前記第2上スリットとが互いに係合されている。即ち、前記縦仕切板の第1上スリットは、前記横仕切板の第2下スリットを下方から受け止めるように係合されていると同時に、前記横仕切板の第2上スリットは、前記縦仕切板の第1下スリットを下方から受け止めるように係合されている。
【0012】
これにより、例えば、前記縦仕切板に対して前記横仕切板を上方に持ち上げても、縦仕切板と横仕切板とは係合状態が互いに外れ難く、組み立て状態が維持される。更に、前記縦仕切板と前記横仕切板とを上記のように組み立てたことにより、その組み立てられた状態で偏平状態とすることが可能となる。
【0013】
ところで、前記縦仕切板の各第1上スリットと前記横仕切板の各第2下スリットとを互いに係合させる作業、及び、前記縦仕切板の各第1下スリットと前記横仕切板の各第2上スリットとを互いに係合させる作業は、各スリットの係合方向が互い違いになるために、比較的手間がかかる作業となる。
【0014】
これに対し、本発明においては、前記縦仕切板と前記横仕切板との交差位置に前記凹部が形成されていることによって、少なくとも前記縦仕切板の上端縁から下方に延びる第1上スリットと前記横仕切板の上端縁から下方に延びる第2上スリットとは、その長さ寸法が比較的小さくなる。従って、各スリットの係合方向が互い違いになっていても、各スリットを互いに係合させる作業を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図5】本実施形態の仕切体を偏平状態にする作業工程を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態の仕切体1は、
図1に示すように、縦方向を長手方向とした合成樹脂製の板材からなる4枚の縦仕切板2a,2b,2c,2dと、横方向を長手方向とした合成樹脂製の板材からなる4枚の横仕切板3a,3b,3c,3dと、横方向を長手方向とした合成樹脂製の板材からなる2枚の端部仕切板4a,4bとが起立した状態で平面視格子状に組み立てられている。
【0017】
また、本実施形態の仕切体1は、縦仕切板2a,2b,2c,2dと横仕切板3a,3b,3c,3dとの各交差位置に凹部5が形成されている。凹部5は、後述する凹状切欠8,11によって構成される。この凹部5が設けられていることにより、区画された空間に収容された物品を把持するときに手指の仕切体1への干渉が少ない。よって、物品を取り出すときに、物品を把持し易くなっており、物品の取り出し作業を容易に行うことができる。
【0018】
また、凹部5が形成されている各交差位置以外では、縦仕切板2a,2b,2c,2dと横仕切板3a,3b,3c,3dとに形成されている突出形状部6,7によって隣り合う区画空間に収容された物品同士の接触が防止され、物品の損傷等を防止することができる。
【0019】
この仕切体1は、図示しないトレー箱内に設けられ、縦仕切板2a,2b,2c,2dと横仕切板3a,3b,3c,3dとによって区画された空間、及び、縦仕切板2a,2b,2c,2dと横仕切板3a,3b,3c,3dと端部仕切板4a,4bとで区画された空間に、図示しない物品が個別に収容される。
【0020】
本実施形態の説明においては、縦仕切板2a~2d、横仕切板3a~3d、端部仕切板4a,4bを起立させたときの夫々の高さ方向の寸法を幅寸法とする。
【0021】
縦仕切板2a~2dと横仕切板3a~3dの最大幅寸法は、互いに等しく形成されている。端部仕切板4a,4bの幅寸法は、縦仕切板2a~2dや横仕切板3a~3dの最大幅寸法よりも小さく形成されている。
【0022】
縦仕切板2a~2dは、
図2に示すように、上端部と下端部との夫々に所定間隔を存して複数の凹状切欠8が形成されている。凹状切欠8は、全て同一形状の半円状に形成されている。上下の凹状切欠8の位置の幅寸法が縦仕切板2a~2dの最小幅寸法となっている。更に、凹状切欠8を形成したことにより、凹状切欠8の間には前述した突出形状部6が形成される。
【0023】
また、縦仕切板2a~2dは、上端部の凹状切欠8の位置で上端が開放されて下方に延びる複数の第1上スリット9と、下端部の凹状切欠8の位置で下端が開放されて上方に延びる複数の第1下スリット10とが、その長さ方向に所定間隔を存して交互に形成されている。
【0024】
第1上スリット9と第1下スリット10の長さ寸法は共に等しく、縦仕切板2a~2dの最小幅寸法の1/2とされている。
【0025】
更に、縦仕切板2a~2dの第1上スリット9と第1下スリット10とは、縦仕切板2a~2dが互いに隣り合ったとき、一方の縦仕切板2a~2dの第1上スリット9と他方の縦仕切板2a~2dの第1下スリット10とが互いに対向する位置に形成されている。
【0026】
横仕切板3a~3dは、
図3に示すように、上端部と下端部との夫々に所定間隔を存して複数の凹状切欠11が形成されている。凹状切欠11は、全て同一形状の半円状に形成されている。上下の凹状切欠11の位置の幅寸法が横仕切板3a~3dの最小幅寸法となっている。更に、凹状切欠11を形成したことにより、凹状切欠11間には前述した突出形状部7形成される。
【0027】
横仕切板3a~3dは、上端部の凹状切欠11の位置で上端が開放されて下方に延びる第2上スリット12と、下端部の凹状切欠11の位置で下端が開放されて上方に延びる第2下スリット13とが、その長さ方向に所定間隔を存して交互に形成されている。第2上スリット12と第2下スリット13の長さ寸法は共に等しく、横仕切板3a~3dの最小幅寸法の1/2とされている。
【0028】
端部仕切板4a,4bは、
図4に示すように、上端縁から下方に延びる第3上スリット14と、下端縁から上方に延びる第3下スリット15とが、その長さ方向に所定間隔を存して交互に形成されている。第3上スリット14と第3下スリット15の長さ寸法は共に等しく、端部仕切板4a,4bの幅寸法の1/2とされている。
【0029】
更に、横仕切板3a~3dの第2上スリット12と端部仕切板4a,4bの第3上スリット14とは、縦仕切板2a~2dの第1下スリット10に対応する位置に形成され、横仕切板3a~3dの第2下スリット13と端部仕切板4a,4bの第3下スリット15とは、縦仕切板2a~2dの第1上スリット9に対応する位置に形成されている。
【0030】
そして、
図1に示すように、縦仕切板2a~2dと横仕切板3a~3dとは、第1上スリット9と第2下スリット13とにより互いに係合され、且つ、第1下スリット10と第2上スリット12とにより互いに係合されて組み立てられている。
【0031】
同じく、縦仕切板2a~2dと端部仕切板4a,4bとは、第1上スリット9と第3下スリット15とにより互いに係合され、且つ、第1下スリット10と第3上スリット14とにより互いに係合されて組み立てられている。
【0032】
このとき、縦仕切板2a~2dの第1上スリット9は、横仕切板3a~3dの第2下スリット13と端部仕切板4a,4bの第3下スリット15とを下方から受け止めるようにして係合されており、同時に、横仕切板3a~3dの第2上スリット12と端部仕切板4a,4bの第3上スリット14とは、縦仕切板2a~2dの第1下スリット10を下方から受け止めるように係合されている。
【0033】
このように互い違いの係合状態により、例えば、縦仕切板2a~2dに対して横仕切板3a~3dを上方に持ち上げても、それらの係合状態が互いに外れ難く、組み立て状態が維持される。
【0034】
仕切体1の組み立て作業の際には、第1上スリット9、第1下スリット10、第2上スリット12、及び第2下スリット13が、縦仕切板2a~2dと横仕切板3a~3dの夫々の凹部5の位置(最小幅寸法の位置)に設けられているので、第1上スリット9、第1下スリット10、第2上スリット12、及び第2下スリット13の全長は何れも比較的短く形成され、各スリットを係合させることによる仕切体1の組み立て作業が比較的容易となる。
【0035】
以上のように構成された本実施形態の仕切体1を、組み立てられた状態で偏平状態とする場合には、先ず、
図5Aに示すように、仕切体1の対角線方向に収束させる。これにより、
図5Bに示すように、仕切体1が畳み込まれて縦仕切板2a~2d、横仕切板3a~3d、及び端部仕切板4a,4bが積層状態となる。続いて、積層状態の仕切体1を、縦仕切板2a~2d、横仕切板3a~3d、及び端部仕切板4a,4bを夫々の面に対して水平に広げる。これにより、
図5Cに示すように、横仕切板3a~3d、縦仕切板2a~2d、及び端部仕切板4a,4bが面方向に展開され、第1上スリット9と第2下スリット13及び第3下スリット15との係合及び第1下スリット10と第2上スリット12及び第3上スリット14との係合を維持した状態で偏平とすることができる。そして、このような偏平状態の仕切体1は、複数を安定して上下に重ねることができるので、搬送や保管を容易に行うことができる。しかも、端部仕切板4a,4bの幅寸法を縦仕切板2a~2dや横仕切板3a~3dの最大幅寸法よりも小さく(最小幅寸法と同等に)したので、
図1に示すような組み立て状態にある仕切体1の全体の底面積と、
図5Cに示すような偏平状態となったときの仕切体1の面積とが同じとなり、仕切体1を使用するトレー箱内に扁平の状態で収容することが可能となる。
【0036】
そしてまた、
図5Cに示すような偏平状態の仕切体1を、
図1に示すような使用状態とする場合には、前記した偏平状態とする作業工程を逆に行えばよい。これにより、仕切体1は、偏平状態で輸送や保管が行われた後に、容易且つ迅速に使用状態とすることができる。
【0037】
なお、本発明の仕切体は、上記の実施形態に限定されるものでなく、例えば、端部仕切板4a,4bを設けなくてもよく、縦仕切板及び横仕切板の長さ寸法や数量も収容する物品に応じて適宜設定することができる。
【0038】
また、実施形態においては、仕切体1の上下に凹部5を設けたものを示したが、凹部5は、仕切体1の上端部側にのみ設けておけば、内部の物品の取り出しが容易となる。ただし、仕切体1の上下に凹部5を設けておけば、仕切体1を天地反転させても同じ形状となるため、取り扱いが容易となって有利である。
【符号の説明】
【0039】
1…仕切体、2a,2b,2c,2d…縦仕切板、3a,3b,3c,3d…横仕切板、5…凹部、9…第1上スリット、10…第1下スリット、12…第2上スリット、13…第2下スリット。