(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-07
(45)【発行日】2022-09-15
(54)【発明の名称】スライス食品搬送装置
(51)【国際特許分類】
B65B 25/06 20060101AFI20220908BHJP
【FI】
B65B25/06 B
(21)【出願番号】P 2020197817
(22)【出願日】2020-11-30
【審査請求日】2021-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】503049427
【氏名又は名称】匠技研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076406
【氏名又は名称】杉本 勝徳
(74)【代理人】
【識別番号】100171941
【氏名又は名称】辻 忠行
(74)【代理人】
【識別番号】100150762
【氏名又は名称】阿野 清孝
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 郷将
(72)【発明者】
【氏名】今浦 博志
【審査官】杉田 剛謙
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-011744(JP,A)
【文献】特表2000-504297(JP,A)
【文献】特開2020-066441(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0042612(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0090956(US,A1)
【文献】特開平7-315310(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 25/06
B65B 35/00-35/58
B26B 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品原木をスライスしてスライス食品を作製するスライサーと、当該スライス食品を、ポケットが形成されたパッケージの当該ポケットに収容した後、当該ポケットを密封する包装機との間に設置され、前記スライサーで作製されたスライス食品を前記包装機まで搬送するスライス食品搬送装置であって、
前記スライサーから受け取ったスライス食品を下流側に搬送する第1の搬送手段と、
前記第1の搬送手段から引き渡されたスライス食品を下流側に搬送すると共に、搬送方向と直交する横方向の位置を、前記パッケージのポケットの位置に合わせて調節する第2の搬送手段と、を備え、
当該第2の搬送手段は、
長尺のフレームの両端部に一対のプーリが取り付けられ、かつ当該一対のプーリに平ベルトが捲回されたコンベアと、
前記一対のプーリのうち一方のプーリを回転して前記平ベルトを走行させる搬送機構と、
前記コンベアのフレームに連結されたプッシュロッドを、前記コンベアの搬送方向と略直交する方向に前進または後退させることにより、前記コンベアの搬入側端部近傍を中心として当該コンベアを水平面内で旋回させる旋回機構と、で構成され、
前記コンベアのフレームと前記プッシュロッドとの連結は、前記プッシュロッドの先端に取り付けられ、かつ楕円形の孔が形成されたプレートの当該孔に、前記フレームに固定されたピンを、ブッシュを介して挿入することにより行われることを特徴とするスライス食品搬送装置。
【請求項2】
前記一方のプーリを回転させる第1のモータおよび前記プッシュロッドを前進または後退させる第2のモータは、平面上、前記コンベアが設置されているエリアとは異なるエリアに設置され、かつそれぞれのエリアは、壁によって空間的に分離されている、請求項1に記載のスライス食品搬送装置。
【請求項3】
前記スライサーによって、複数の食品原木が同時にスライスされて複数のスライス食品が作製される場合、前記第2の搬送手段は、それぞれのスライス食品を搬送する複数のコンベアで構成される、請求項1または2に記載のスライス食品搬送装置。
【請求項4】
前記複数のコンベアのそれぞれを旋回させる複数のプッシュロッドは、コンベアの搬送方向と略直交する方向に延在し、かつそれぞれのコンベアのフレームに連結された位置が搬送方向で異なっている、請求項3に記載のスライス食品搬送装置。
【請求項5】
前記プッシュロッドを前進または後退させる手段は、前記第2のモータと、当該第2のモータの回転運動を前記プッシュロッドの直進運動に変換するラック・アンド・ピニオンとで構成される、請求項3または4に記載のスライス食品搬送装置。
【請求項6】
前記コンベアの上方に設置され、コンベア上を搬送されるスライス食品によって反射される光を検出する光センサと、
前記光センサの検出信号を受信したとき、前記スライス食品の平均偏移量に対応した前記第2のモータの回転数を記憶部から読み出し、前記第2のモータに指示して、前記平均偏移量を打ち消すように前記コンベアを旋回させるコントローラと、を更に備えた、請求項2乃至5のいずれかに記載のスライス食品搬送装置。
【請求項7】
前記コンベアのフレームは、鉛直面内で折り曲げることができるように構成されている、請求項1乃至6のいずれかに記載のスライス食品搬送装置。
【請求項8】
前記コンベアの平ベルトは、搬送方向に対して直交する方向に2分割され、
かつ前記コンベアのフレームの下流側端部のうち、前記2分割された平ベルト間には、前記平ベルトに貼り付いたスライス食品をはがすバーが取り付けられている、請求項1乃至7のいずれかに記載のスライス食品搬送装置。
【請求項9】
前記第1のモータの回転を前記コンベアの一方のプーリに伝達するシャフトは、当該一方のプーリのシャフトとカップリングを介して連結されている、請求項2乃至8のいずれかに記載のスライス食品搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライス食品を包装用パッケージに収容する際に用いる搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、スライスされたハムを包装用パッケージに形成されたポケットに投入してスライスハムの商品を生産する場合、1~2mのハム原木を一定の厚さでスライスし、それを所定枚数重ねた後、コンベアに送り出す。コンベアに送り出された一塊のスライスハムは、包装機まで搬送された後、パッケージのポケットに投入され、更にカバーフィルムで密閉されて商品の形態となる。
【0003】
上述の工程によってスライス商品を生産する場合、生産性を高めるために、複数本(例えば3本)のハム原木を1つの切断刃で切断している。その際、スライスさ
れたハム間のピッチと、パッケージに形成されたポケットのピッチが異なり、またスライスの状態によってハムが落下する位置が微妙にずれるため、コンベアに載置されたスライスハムを、そのまま包装機に搬送した場合、スライスハムがパッケージのポケットにうまく投入できないという問題がある。
【0004】
上述の問題を解決するため、発明者は、ハム原木をスライスした後、ハムの位置を搬送方向と直交する方向にずらして、スライス食品がパッケージのポケットに正確に投入されるようにした搬送装置を提案した(特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1記載の搬送装置では、平ベルトを一対のプーリに捲回したコンベアを用い、かつこのコンベアを、搬送側端部近傍を中心として、水平面内で旋回する機構を採用しており、スライスされた食品を包装機に装着されたパッケージのポケットに正確に投入できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、食品の搬送に用いるコンベアでは、衛生上の観点から、使用する都度、食品が接触するベルトやプーリ等を洗浄する必要がある。
【0008】
特許文献1記載の搬送装置を用いれば、ベルト、プーリおよびコンベアフレームを簡単に筐体から取り外して洗浄することができるため、搬送装置の保守作業が楽になる。
【0009】
その一方で、コンベアベルトを駆動し、およびコンベアを旋回する機構が、ベルトの下方に配置された筐体内に収容されている。そのため、モータやその支持部材がスライス食品から垂れる液体等によって汚れるが、これらの部材を筐体から取り外すことができない。
【0010】
従って、使用の都度、洗浄機等を用いてモータ等に付着した液体等を洗い流すしか方法がなく、衛生上および保守上の両面から改善が求められていた。
【0011】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたもので、モータ等の汚れを考慮する必要がなく、しかも分解や洗浄が容易なスライス食品搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため本発明に係るスライス食品搬送装置は、
食品原木をスライスしてスライス食品を作製するスライサーと、当該スライス食品を、ポケットが形成されたパッケージの当該ポケットに収容した後、当該ポケットを密封する包装機との間に設置され、前記スライサーで作製されたスライス食品を前記包装機まで搬送するスライス食品搬送装置であって、
前記スライサーから受け取ったスライス食品を下流側に搬送する第1の搬送手段と、
前記第1の搬送手段から引き渡されたスライス食品を下流側に搬送すると共に、搬送方向と直交する横方向の位置を、前記パッケージのポケットの位置に合わせて調節する第2の搬送手段と、を備え、
当該第2の搬送手段は、
長尺のフレームの両端部に一対のプーリが取り付けられ、かつ当該一対のプーリに平ベルトが捲回されたコンベアと、
前記一対のプーリのうち一方のプーリを回転して前記平ベルトを走行させる搬送機構と、
前記コンベアのフレームに連結されたプッシュロッドを、前記コンベアの搬送方向と略直交する方向に前進または後退させることにより、前記コンベアの搬入側端部近傍を中心として当該コンベアを水平面内で旋回させる旋回機構と、で構成され、
前記コンベアのフレームと前記プッシュロッドとの連結は、前記プッシュロッドの先端に取り付けられ、かつ楕円形の孔が形成されたプレートの当該孔に、前記フレームに固定されたピンを、ブッシュを介して挿入することにより行われることを特徴とする。
【0013】
ここで、前記一方のプーリを回転させる第1のモータおよび前記プッシュロッドを前進または後退させる第2のモータは、平面上、前記コンベアが設置されているエリアとは異なるエリアに設置され、かつそれぞれのエリアは、壁によって空間的に分離されていることが好ましい。
【0014】
また前記スライサーによって、複数の食品原木が同時にスライスされて複数のスライス食品が作製される場合、前記第2の搬送手段は、それぞれのスライス食品を搬送する複数のコンベアで構成されることが好ましい。
【0015】
前記複数のコンベアのそれぞれを旋回させる複数のプッシュロッドは、コンベアの搬送方向と略直交する方向に延在し、かつそれぞれのコンベアのフレームに連結された位置が搬送方向で異なっていることが好ましい。
【0016】
前記プッシュロッドを前進または後退させる手段は、前記第2のモータと、当該第2のモータの回転運動を前記プッシュロッドの直進運動に変換するラック・アンド・ピニオンとで構成されることが好ましい。
【0017】
また本発明に係るスライス食品用搬送装置は、
前記コンベアの上方に設置され、コンベア上を搬送されるスライス食品によって反射される光を検出する光センサと、
前記光センサからの検出信号を受信したとき、前記スライス食品の平均偏移量に対応した前記第2のモータの回転数を記憶部から読み出し、前記第2のモータに指示して、前記平均偏移量を打ち消すように前記コンベアを旋回させるコントローラと、を更に備えることが好ましい。
【0018】
前記コンベアのフレームは、鉛直面内で折り曲げることができるように構成されていることが好ましい。
【0019】
前記コンベアの平ベルトは、搬送方向に対して直交する方向に2分割され、
かつ前記コンベアのフレームの下流側端部のうち、前記2分割された平ベルト間には、前記平ベルトに貼り付いたスライス食品をはがすバーが取り付けられていることが好ましい。
【0020】
前記第1のモータの回転を前記コンベアの一方のプーリに伝達するシャフトは、当該一方のプーリのシャフトとカップリングを介して連結されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るスライス食品搬送装置は、コンベアを駆動したり旋回させたりするモータやその支持部材が、平面上、コンベアが設置されているエリアとは異なるエリアに設置されているため、モータ等の汚れを考慮する必要がない。しかもベルトを含む構成部材の分解や洗浄が容易であるため、衛生面ばかりでなく、保守性の面でも優れている。
また本発明に係るスライス食品搬送装置は、コンベアのフレームとプッシュロッドとの連結点において、フレームに固定されたピンがプッシュロッドに接触することによって生じる摩耗を防止し、結果として、摩耗により生じた金属粉が飛散し、スライス食品に付着することによって生じる汚染を防止し、更には旋回機構の長寿命化を実現している。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施の形態に係るスライス食品搬送装置の平面図である。
【
図2】同実施の形態の第2の搬送手段を構成する3つのコンベアのうち搬送方向左側のコンベアの一部切欠平面図である。
【
図7】スライス食品搬送装置の制御系の構成を示すブロック図である。
【
図8】第2の搬送手段の動作を説明する平面図である。
【
図9】スライス食品搬送装置の基本的な構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態に係るスライス食品搬送装置について、図面を参照して説明する。
【0024】
<スライス食品搬送装置の基本的構成と機能>
本実施の形態に係るスライス食品搬送装置の具体的な構成について説明する前に、
図9を参照して、スライス食品搬送装置の基本的な構成と機能について説明する。
【0025】
図9に示すように、スライス食品搬送装置100は、紙面に向って右端に設置されたスライサー5と、図では省略しているが、紙面の左端に設置された包装機との間に配置され、スライサー5で作製されたスライス食品Sを包装機まで搬送する。
【0026】
スライス食品搬送装置100は、スライサー5において回転刃51によってスライスされ、落下したスライス食品Sを受ける第1の搬送手段1、包装機側に配置され、スライス食品をパッケージのポケットに投入する第4の搬送手段4、第1の搬送手段1と第4の搬送手段4との間に配置された第2および第3の搬送手段2、3で構成されている。
【0027】
第2の搬送手段2は、搬送方向と直交する方向(以降、「横方向」という)におけるスライス食品の位置を調節するために用いられ、第3の搬送手段3は、搬送方向におけるスライス食品の位置を調節するために用いられる。
【0028】
図9を参照して、スライス食品Sが作製されてから、包装機に配置されたパッケージのポケットに投入されるまでの流れを簡単に説明する。以下、一例としてスライスハムを作製する場合について説明する。
【0029】
スライサー5は、円板状の切断刃51を備えている。1~2mの円柱状のハム原木Rを3本用意し、軸52を中心に一定速度で回転する切断刃51に対してハム原木Rを一定量送り出すと共に、上方から切断刃51を降下させると、ハム原木Rが先端から順次所定の厚さでスライスされ、円形のスライスハムが作製される。
【0030】
ハム原木Rは、図示しない個別の送り手段によって、左側に送り出される。またハム原木Rは、紙面に向って右側が上、左側が下になるように傾斜しており、切断刃51によってスライスされたハムSは、第1の搬送手段1の上に落下する。第1の搬送手段1を停止させた状態で、切断刃51によるスライスを繰り返すことにより、第1の搬送装置1に、複数枚のスライスハムが重なった一塊のスライス食品Sが作製される。
【0031】
第1の搬送手段1は幅広のベルトコンベアで構成され、スライサー5によって3本の原木からスライスされ、落下した3つのスライス食品Sが載置される。
図9に示すように、3つのスライス食品Sの落下位置は、3本の原木Rがスライスされた位置で決まり、搬送方向および横方向のそれぞれにおいてずれている。
【0032】
第2の搬送手段2および第3の搬送手段3は、第1の搬送手段1から受け取った3つのスライス食品Sを、包装機に向けて搬送すると共に、搬送方向および横方向の位置を調節する。
【0033】
図示しないが、包装機には、スライス食品収納用のポケットが横方向に一定のピッチで3つ、更に搬送方向に一定のピッチで連続して形成されたパッケ-ジが装着されている。第2および第3の搬送手段2、3で横方向および搬送方向の位置が調整されたスライス食品Sは、第4の搬送手段4に引き渡された時点で、スライス食品Sが、パッケージに形成されたポケットと、搬送方向、横方向共に同じピッチで整列される。
【0034】
幅広のベルトコンベアで構成された第4の搬送手段4は、スライス食品Sの位置を保ったままそれらを包装機まで搬送し、各スライス食品Sをパッケージのポケットに投入する。その後、ポケットに投入されたスライス食品Sは、包装機によってカバーフィルムで密閉される。
【0035】
上述したように、第2の搬送手段2は、横方向のスライス食品Sの位置ずれを調節するために用いられ、第3の搬送手段3は、横方向の位置が調節されたスライス食品Sを受け取り、搬送方向のスライス食品Sの位置を調節するために用いられる。
【0036】
ここで、スライス食品Sの位置を、搬送方向をX軸、搬送方向と直交する横方向をY軸としたX-Y平面上の座標で表す。
図9に示した、第1の搬送手段1から第2の搬送手段2に引き渡されたときのスライスハムSの中心O
1、O
2、O
3のY座標をY
21、Y
22、Y
23、第2の搬送手段2から第3の搬送手段3に引き渡されたときのスライス食品Sの中心O
1、O
2、O
3のY座標をY
31、Y
32、Y
33とする。
【0037】
第3の搬送手段3に載置されたスライス食品SのY座標Y31、Y32、Y33は、下流側に設置された包装機に装着されているパッケージのポケットの中心座標と一致しており、それぞれポケットのピッチPと同じだけ離れて配置されている。
【0038】
一方、第2の搬送手段2に載置されたスライス食品Sの中心O1、O2、O3のY座標Y21、Y22、Y23は、スライス食品Sが第1の搬送手段1から第2の搬送手段2に引き渡されたときのY座標によって決まる。
【0039】
前述したように、第1の搬送手段1上に載置されたスライス食品Sの位置は、スライサー5において3本のハム原木Rが切断刃51を用いてスライスされ、コンベア上に落下した位置で決まるため、一定していない。第1の搬送手段1上のスライス食品Sは、落下した際の相互の位置を保ったまま、第2の搬送手段2に引き渡される。
【0040】
そのため、スライス食品Sを第2の搬送手段2で搬送している間に、それぞれの中心O
1、O
2、O
3のY座標Y
21、Y
22、Y
23を、パッケージのポケットのY座標であるY
31、Y
32、Y
33と一致させる必要がある。本発明では、
図1に示す第2の搬送手段2を用いて、スライス食品SのY座標をパッケージのポケットのY座標と一致させている。
【0041】
<スライス食品搬送装置の構成と機能>
以下、本発明の実施の形態に係るスライス食品搬送装置100の具体的構成と各部の機能について、
図1~
図6を参照して説明する。
【0042】
図1は、スライス食品搬送装置100を構成する第1、第2および第3の搬送手段1、2、3を上方から見た図、
図2は、第2の搬送手段2を構成する3つのコンベア20のうち搬送方向左側のコンベア20aの一部切欠平面図で、ベルトを取り外した状態を示している。
図3は、同コンベア20aの正面図、
図4は、
図1のA-A線矢視断面図で、コンベア20aを水平面内で旋回させる旋回機構7の主要部を示す。
図5は、
図2のB-B線矢視正面図で、コンベア20aの要部を示す。
図6は、
図1のC-C線矢視正面図で、旋回機構7を構成するプッシュロッドとハウジングを示す。
図7は、スライス食品搬送装置100の制御系のブロック図である。
【0043】
前述したように、本実施の形態では、3つのスライス食品Sを同時に作製および搬送する形態を採用しており、それぞれのスライス食品Sを搬送する3台のコンベア20a~20c(以降、総称して「コンベア20」とも云う)が、第1の搬送手段1の下流側に並置されている。若干の隙間を隔てて配置された3台のコンベア20a~20cは同一の構成を備え、かつ後述するように同一の駆動手段を用いて駆動される。
【0044】
図1および
図3に示すように、コンベア20aは、所定の間隔を隔てて配置された一対のプーリ21および22に平ベルト23が捲回されて構成されている。また
図2に示すように、プーリ21、22はそれぞれ左右に2分割され、中心部はシャフト211、221で連結されている。また一対の平ベルト23は、2分割されたプーリ21、22のそれぞれに捲回されている。平ベルト23を2分割した理由については後述する。
【0045】
コンベア20のフレームは、断面が長方形状で下面が開放された長尺のフレーム本体24(
図4参照)、フレーム本体24の上流側端部の左右に取り付けられた一対のプレート25および下流側の端部に取り付けられた一対のプレート26で構成されている。
図2に示すように、プーリ21は一対のプレート25の先端に取り付けられ、同じくプーリ22は一対のプレート26の先端に取り付けられている。
【0046】
また
図1に示すように、上流側プーリ21のシャフト211は、カップリング67を介してベルト駆動用のシャフト66に連結されている。シャフト66を含むコンベア20の搬送機構6については、後に図面を参照して詳述する。
【0047】
断面が長方形状のフレーム本体24は、防錆性に優れたステンレス合金製の平板を、下側が開放されるように折り曲げて作製したものであり、フレーム本体24の中間部側面には補強用ガイド27が取りつけられている。
【0048】
上述したように、フレーム本体24の下流側側面には、プーリ22が、一対のプレート26を介して取り付けられている。一対のプレート22は、ガイド261によって一定の間隔が保たれ、更に、
図3に二点鎖線で示すように、軸262を中心に回動して、鉛直方向に折り曲げることができる。
【0049】
、プレート26の下部には、切欠き263が形成されており、プレート26を水平に保持した状態で、切欠き263をフレーム本体24の側面に取り付けられたボルト264に係合させ、その状態でボルト264を締め付けることにより、プレート26はフレーム本体24に固定される。
【0050】
前述したように、平ベルト23は、スライス食品Sを搬送する都度、洗浄する必要がある。その際には、ボルト264を緩め、プレート26を時計回りに回転させた後、
図3に二点鎖線で示した状態に保持する。この状態では、平ベルト23は緩でいるため、簡単にフレーム本体24から取り外すことができる。フレーム本体24から取り外された平ベルト23は洗浄・乾燥された後、上述したのと逆の手順でフレーム本体24に取り付けられる。
【0051】
上述したように、一対のプレート26間は、ガイド261によって一定の間隔が保たれ、更に、ガイド261の上部中央には、棒状のバー265が取り付けられている。
【0052】
バー265は、スライス食品Sを、コンベア20aからコンベア30aに引き渡すときに、スライス食品Sがコンベア間に巻き込まれることを防止している。スライス食品Sは、粘着力によって一部が平ベルト23に貼り付いた状態で搬送されるため、そのままではコンベア20と30の間に巻き込まれる。平ベルト23によってプーリ22上まで搬送されたスライス食品Sは、バー265によって平ベルト30から剥がされた後、次段のコンベア30aに引き渡される。
【0053】
次に、プーリ21を回転して平ベルト23を走行させる搬送機構6、およびコンベア20を水平面内で旋回させる旋回機構7について説明する。最初に、これらの機構の空間的な配置について説明する。
【0054】
図1に示すように、第2の搬送手段2の構成部材は、鉛直方向に配置された平板状のフレーム60によって、空間的に2つのエリアに分離して配置されており、搬送機構6および旋回機構7のそれぞれの駆動用モータは、平面上、コンベア20が設置されたエリアとは異なるエリアに設置されている。以降、コンベア20が設置されたエリアを「第1のエリア」といい、駆動用モータが設置されたエリアを「第2のエリア」という。
【0055】
図示しないが、ステンレス合金製のフレーム60は、溶接によって同合金製のベースに固定されており、搬送機構6の支持部材611やハウジング65、旋回機構7のシャーシ70やハウジング75を支持する上で十分な厚みと強度を備えている。
【0056】
第2の搬送手段2が設置される場所を第1のエリアと第2のエリアに分けたのは、洗浄が必要な部材が配置されたエリアと、必要でない部材が配置されたエリアとを平面上で分離することにより、保守性を改善するためである。
【0057】
本実施の形態では、エリアを分離するための手段として、搬送機構6については、シャフト66を第1のエリアと第2のエリアを跨ぐように配置し、旋回機構7については、プッシュロッド76a~76cを第1のエリアと第2のエリアを跨ぐように配置している。
【0058】
このような配置とすることにより、モータや支持部材については洗浄が不要となるため、搬送装置の保守性が大幅に改善される。なお、シャフト66とプッシュロッド76a~76cの機能については後述する。
【0059】
本実施の形態では、更に、鉛直方向に設置されたフレーム60を、第1のエリアと第2のエリアとを分離する壁として機能させている。エリア間を壁で分離すれば、第1のエリアと第2のエリアが近接していても、2つのエリアを空間的に分離することができ、コンベア20を洗浄する際の水や洗剤によってモータや電気配線が濡れることを防止できる。更に、第2のエリアの上方をフレーム60と一体となったステンレス板で覆うようにすれば、完全な防水性を確保できる。
【0060】
次に、搬送機構6について説明する。搬送機構6は、モータ61、プーリ62および63、ベルト64、ハウジング65、シャフト66ならびにカップリング67で構成されている。
【0061】
図1に示すように、フレーム60の第2のエリア側に支持部材611を介してモータ61が取り付けられており、モータ61の回転は、一対のプーリ62、63およびベルト64を介してシャフト66に伝達される。
【0062】
フレーム60の第1のエリア側には、ボルトによって円柱状のハウジング65が取り付けられ、中心部に形成された孔に、ベアリングを介してシャフト66が挿通されている。本実施の形態では、ハウジング65およびシャフト66を、防錆性に優れたステンレス合金で作製した。
【0063】
シャフト66の一方の端はプーリ63の回転軸に連結され、他方の端にはカップリング67が取り付けられている。また、コンベア20a~20cのそれぞれのプーリ21のシャフト211は、カップリング67を介してシャフト66に連結されている。
【0064】
従って、モータ61の回転は、シャフト66、カップリング67およびシャフト211を介してプーリ21に伝達され、2つのプーリ21、22間に捲回された平ベルト23を走行させ、その上に載置されたスライス食品Sを下流側に搬送する。
【0065】
ここで、カップリング67の働きについて説明する。カップリング67は、軸と軸とを連結し、2軸の取り付け誤差等を吸収して、動力を駆動側から従動側に伝達する部品である。カップリング67を用いた場合、単に回転を正確に伝達するだけでなく、駆動軸と従動軸の取り付け誤差を吸収できる利点がある。
【0066】
後述するように、コンベア20a~20cは、回転軸を中心として水平面内で旋回する。その場合、プーリ21のシャフト211は、駆動シャフト66および他のプーリ21のシャフト211に対して軸が若干傾き、またズレが生じる。回転軸にズレがあると周辺の部材に余分な力が加わり、その力が回転に従って繰り返し作用して騒音や振動の原因となる。
【0067】
このような場合でも、シャフト間をカップリングで連結することにより、シャフト間のズレを吸収して、プーリ21の円滑な回転を実現できる。本実施の形態では、カップリングとして、三木プーリ株式会社製のCHPモデルを採用した。
【0068】
次に、3台のコンベア20a~20cを水平面内で旋回させる旋回機構7について説明する。本実施の形態では、コンベア20で搬送されるスライス食品Sの位置を横方向にずらす手段として、特許文献1記載の装置と同様に、搬送側端部近傍を中心として水平面内で旋回させる機構を採用しているが、旋回機構の構造が特許文献1記載の装置とは大きく異なっている。
【0069】
具体的には、旋回機構7は、各コンベア20a~20cを、軸を中心に回転可能に支持する機構と、各コンベア20a~20cを水平面内で旋回させる機構とで構成されている。
【0070】
各コンベア20a~20cを、軸を中心に回転可能に支持する機構について説明する。
図3に示すように、フレーム本体24の側面には矩形状の開口241が形成され、その開口241を貫くように断面が矩形状のハリ71が設置されている。
図1に示すように、ステンレス合金で作製されたハリ71は、取付部材72を介してフレーム60に水平状態を保った状態で固定されており、付根付近の厚みを、開口241を貫通する部分のそれより厚くすることによりハリの強度を高めている。
【0071】
図5にフレーム本体24内の状態を示すが、ハリ71の側面に、中心部に円形の孔が形成された矩形状のプレート74がボルトによって固定され、孔には、樹脂製のブッシュ731を介して、直径が2段に変化するピン73が挿入されている。
【0072】
フレーム本体24の開口の横幅は、ハリ71の断面より若干広めに形成されており、またピン73の頂部はフレーム本体24の天井に溶接されているため、後述するプッシュロッド76aによってフレーム本体24が水平面内で移動させられると、フレーム本体24はピン73の軸を中心に旋回する。
【0073】
次に、各コンベア20a~20cを水平面内で旋回させる機構について説明する。コンベア20を水平面内で旋回させる機構は、コンベア20a~20cの搬送方向と略直交する方向に配置されたプッシュロッド76a~76cと、モータ70a~70c(
図7参照)の回転運動をプッシュロッド76a~76cの直進運動に変換するラック・アンド・ピニオンで構成されている。
【0074】
これらの部材のうちモータ70a~70cとラック・アンド・ピニオン(図示せず)はシャーシ70内に収容されている。またプッシュロッド76a~76cの先端は、コンベア20a~20cのフレーム本体24の側面に形成された開口を貫通して、フレーム本体24の天井に溶接されたピン78に、若干の間隙を隔てて連結されている。
【0075】
図4を参照して、プッシュロッド76aによるコンベア20aの旋回について説明する。後端部がピニオン(図示せず)に固定されたプッシュロッド76aは、フレーム60に固定されたハウジング75の中心部に形成された孔に挿通され、先端部がフレーム本体24の内部空間に突き出ている。
【0076】
ハウジング75は、フレーム60に固定され、更に、
図6に示すように、付け根部分がブッシュ751に溶接されて一体化した状態で、フレーム60に取り付けられているため、ハウジング75の先端が垂れ下がることなく、水平状態に維持される。
【0077】
図2に示すように、プッシュロッド76aの先端には、楕円形の孔が形成されたプレート77がボルトを用いて固定され、その穴にピン78が挿入されている。
図4に示すように、直径が2段に変化するピン78は、フレーム本体24の上面に溶接され、かつプレート77の孔とピン78の小径部との隙間にブッシュ79が挿入されている。
【0078】
モータ70a(
図7参照)が回転し、ラック・アンド・ピニオンによってプッシュロッド76aが前進または後退すると、プレート77の孔に係合するピン78が前後に移動し、フレーム本体24は、ピン73を回転軸として水平面内で旋回する。
【0079】
プレート77の孔とピン78の間に介在する樹脂製のプッシュ79は、プレート77とピン78が接触して摩耗することを防止するために設けられている。
【0080】
上述した旋回機構7によるコンベア20aの旋回について説明する。後述するコントローラ8(
図7参照)からモータ70aに対して駆動信号が送信されると、モータ70aの回転運動が図示しないラック・アンド・ピニオンによってプッシュロッド76aの直進運動に変換され、コンベア20aがピン73を軸として水平面内で旋回する。旋回の方向はモータ70aの回転方向によって決定される。
【0081】
図1に示すように、3台のコンベア20a~20cに取り付けられたピン78の位置はスライス食品Sの搬送方向にずれており、3本のプッシュロッド76a~76cは、それぞれが平行に配置されているため、相互に干渉することはない。同様に、モータ61によるシャフト66の回転と、モータ70a~70cによるコンベア20a~20cの旋回も独立して行われ、相互に干渉することはない。
【0082】
次に、
図7を参照して、コンベア20の制御系について説明する。コンベア20の制御系は、コントローラ8、光センサ91a~91c、92a~92c、モータ61およびモータ70a~70cで構成されており、各部材の間は信号伝達用および電力供給用のケーブルで接続されている。
【0083】
図1に示すシャーシ70内には旋回用のモータ70a~70cが収容されており、これらモータの駆動はコントローラ8によって制御される。モータ70aはプッシュロッド76aの前進/後退に用いられ、モータ70bはプッシュロッド76bの前進/後退に用いられ、モータ70cはプッシュロッド76cの前進/後退に用いられる。
【0084】
コンベア20aの下流側上方には、スライス食品Sの横方向の位置を検出する光センサ91aと92aが設置されている(
図1参照)。図では、煩雑さを避けるため、光センサ91a、92aを支持するアームは省略している。同様に、コンベア20bの下流側上方には光センサ91bと92bが設置され、コンベア20cの下流側上方には光センサ91cと92cが設置されている。
【0085】
光センサ91a、92aは、包装機のパッケージに形成された3列の円盤状のポケットのうち、搬送方向に向かって左側のポケットの左右の壁に対応した位置に設置されている。またポケットの直径は、スライス食品Sの直径より若干広めに設定されている。
。
【0086】
光センサ91a、92aは、下方に向かって光ビームを照射し、その反射光を受光することによって対象物の有無を検出するもので、スライス食品Sが光センサ91a、92a間を通過する際に、光センサ91a、92aから照射された光ビームがスライス食品Sに当たると、反射光が光センサに入射し、信号が出力されてコントローラ8に送信される。光センサ91b、92b、91c、92cについても同様の機能を発揮する。
【0087】
図7に示すように、コントローラ8は、制御部81、記憶部82、入力部83および表示部84で構成され、一般的なパーソナルコンピュータによって実現される。このうち制御部81の機能は、記憶部82に記憶されたソフトウェアによって実現される。
【0088】
制御部81は、光センサ91a~91c(以降、総称して「光センサ91」ともいう)、92a~92c(同「光センサ92」)の出力信号に基いてモータ70a~70c(同「モータ70」)の回転を制御し、コンベア20を所定の角度、旋回させる。制御部81によるコンベア20の旋回について説明する。
【0089】
光センサ91、92間の距離はスライス食品Sの直径より若干広めに設定されているため、スライス食品Sが通過した際、両方の光センサ91、92の出力が0となるか、一方の光センサしか出力信号が得られない。
【0090】
スライス食品Sをパッケージのポケットに投入するためには、光センサ91、92の出力信号に基いてスライス食品Sの横方向の位置ずれ(以降「偏移量」という)を算出し、その偏移量を打ち消すようにコンベア20を旋回させる必要がある。
【0091】
しかし、3本のコンベア20では、プッシュロッド76が連結された位置が異なっているため、コンベア20を一定角度旋回させようとすると、プッシュロッド76の移動距離の計算が煩雑になる。
【0092】
一方、発明者等が実験によって確認したところ、コンベア20毎のスライス食品Sの偏移量について、変動が少ないことが分かった。従って、コンベア20毎に平均偏移量を求め、それを打ち消すようにコンベアを旋回させれば、スライス食品Sをパッケージのポケットに確実に投入できる。
【0093】
本実施の形態では、上述の確認結果を利用し、いずれか一方の光センサ91、92の出力信号を検出したときに、コンベア20を一定角度旋回させる代わりに、コンベア20の下流側端部を平均偏移量だけ移動させている。
【0094】
具体的には、コンベア20へのプッシュロッド76の連結位置はコンベア毎に異なるため、予め、コンベア20の下流側端部の移動距離(平均偏移量)に対応したプッシュロッド76の移動量を算出し、更にその移動量に対応したモータ70の回転数を算出し、その値を記憶部82に記憶しておく。
【0095】
コンベア20の下流側端部を横方向に一定距離移動させる場合、ピン73を頂点とする相似形の三角形の底辺の長さからプッシュロッド76の移動距離を簡単に算出できる。従って、予め、プッシュロッド76毎に、平均偏移量に対応したモータ70の回転数を算出し、その値を記憶部82に記憶しておくだけで、コンベアの旋回を簡単に制御できる。
【0096】
いずれか一方の光センサ91、92の出力信号を検出した場合、制御部81は、スライス食品Sの平均偏移量を打ち消す方向にコンベア20の下流側端部を一定距離移動させ、次の出力信号を検出するまで、その位置を保持する。
【0097】
図7の説明に戻り、入力部83および表示部84は、タッチパネル式の液晶ディスプレイで構成されている。このうち入力部83は、上述したモータの回転数や回転速度等のデータを入力するのに用いられ、表示部84は、入力部83で入力されたデータ等を表示するのに用いられる。
【0098】
<スライス食品搬送装置の動作>
次に、前述の
図1および新たな
図8を用いて本実施の形態に係るスライス食品搬送装置の動作を説明する。
図8は、スライサー5で作製され、第1の搬送手段1から引き渡されたスライス食品Sがコンベア20aによって横方向の位置が調節された後、コンベア30aに引き渡されるまでのステップを示す。
【0099】
スライサー5でスライスされ、積層されたスライス食品Sは、第1の搬送手段1に落下した際の位置を保ったまま、コンベア20aに引き渡される。
【0100】
スライス食品Sの横方向の偏移量は、スライサー5でスライスされ、第1の搬送手段1に落下した位置によって決まるため、コンベア20aに引き渡された3つのスライス食品Sの横方向の位置はほとんど変わらない。
【0101】
一方、
図8(a)に示すように、コンベア20aで3つのスライス食品Sを搬送する際、コンベア20aの横方向(Y軸方向)の中心位置は、包装機に装着されているパッケージのポケットの中心座標と一致している。
【0102】
この状態でスライス食品Sが下流側に搬送され、先頭のスライス食品Sが光センサ91aと92aの間を通過したとき、スライス食品Sの横方向の偏移に応じて、光センサ91a、92aのいずれかから信号が出力される。
【0103】
具体的に説明すると、
図8(a)に示すように、コンベア20aで搬送されるスライス食品Sは、搬送方向に対して右側に偏移しているため、光センサ92aから放射された光ビームは、スライス食品Sによって反射され、光センサ92aに入力する。これに対し、光センサ91aから放射された光ビームは、途中に遮るものがないため、光センサ91aに戻らない。従って、光センサ92aからは出力信号が得られ、光センサ91aの出力は0となる。
【0104】
光センサ92aの出力信号は、コントローラ8に送信される。前述したように、記憶部82には、予め、光センサ92aの出力信号が得られたときのコンベアの平均偏移量に対応したモータ70aの回転数が記憶されている。
【0105】
コントローラ8の制御部81は、旋回用モータ70aを駆動し、算出された偏移量を打ち消し、コンベア30aに引き渡される際のスライス食品Sの中心位置が、パッケージのポケットの中心位置と一致するようにコンベア20aを旋回させる。その状態を
図8(b)に示す。
【0106】
その間、コンベア20aとコンベア30aは同一速度で下流側に移動するため、スライス食品Sは、
図8(c)に示すようにコンベア20aが旋回した状態でコンベア30aに引き渡される。
【0107】
2番目のスライス食品Sが光センサ91a、92a間を通過するとき、
図8(d)に示すように、スライス食品Sによって光センサ91aおよび92aの光が遮られることがないため、コンベア20aは左方に旋回した状態を維持したまま搬送を続ける。3番目のスライス食品Sが光センサ91aおよび92a間を通過するときも、2番目のスライス食品Sと同様の状態が維持される。
【0108】
3つのスライス食品Sの引き渡しが終了した後、
図8(e)に示すように、コンベア20aは旋回した状態を維持する。この状態で、コンベア20aは第1の搬送手段1から新たに3つのスライス食品Sを受け取るが、前述したように、スライス食品Sの偏移量には、ほとんど変動がないため、その状態を維持したまま、搬送が継続されることになる。
【0109】
コンベア20aからコンベア30aに引き渡されたスライス食品Sは、搬送方向(X軸方向)の位置調整が行われる。コンベア30aによる搬送方向の位置調整についての説明は省略するが、上述した処理により、包装機においてスライス食品Sがパッケージのポケットに投入される際には、搬送方向(X軸)および横方向(Y軸)の位置およびピッチがポケットの位置およびピッチと一致するため、スライス食品Sをポケットのそれぞれに確実に投入できる。
【0110】
<コンベアの洗浄>
次に、コンベア20を洗浄する際の手順について説明する。衛生上の観点より、コンベア20を構成するプーリ21、22、平ベルト23およびフレーム本体24はスライス食品Sを搬送する都度、洗浄する必要がある。
【0111】
最初に、平ベルト23をプーリ21および22から取り外す。その際には、ボルト264を緩め、プレート26を時計回りに回転させた後、
図3に二点鎖線で示した状態に保持する。この状態では、平ベルト23は緩んでいるため、簡単にフレーム本体24から取り外すことができる。
【0112】
3台のコンベア20a~20cのそれぞれについて、プレート26を時計回りに回転させた後、全てのコンベアの平ベルト23をプーリ21、22から取り外し、コンベアの搬送方向に対して左方向(
図1では下側)に移送すれば、フレーム本体24から簡単に取り外すことができる。
【0113】
全ての平ベルト23を取り外した状態で、フレーム本体24と2つのプーリ21、22を洗浄し、更に平ベルト23を洗浄、乾燥させる。平ベルト23が乾燥した後、上述した手順と逆の手順で平ベルトを2つのプーリの間に取り付ける。その際には、プレート26を反時計回りに回転させ、ボルト264で固定するだけで、簡単に元の状態に戻すことができる。
【0114】
前述したように、コンベア20a~20cのプーリ21を回転させるモータ61およびコンベア20a~20cを水平面内で旋回させるモータ70a~70cは、コンベア20とは、平面上、異なるエリアに設置され、更にフレーム60が壁となって空間的にも分離されている。そのため、これらのモータがスライス食品Sから垂れる液体によって汚れることがなく、また洗浄の際に配線等が水にぬれて漏電することもない。
【0115】
必要であれば、モータ61、70a~70cが設置されたエリアを、フレーム60と一体化した金属板で覆うことにより、洗浄の際に配線等がぬれることを完全に防止できる。
【0116】
また、平ベルト23がフレーム本体24から取り外された状態では、フレーム本体24および2つのプーリ21、22が露出し、その下には部材が何も配置されていないため、洗浄が容易である。
【0117】
以上説明したように、本実施の形態に係るスライス食品搬送装置を用いれば、スライサーによってスライスされた食品を包装機に装着されたパッケージのポケットに確実に投入できる。
【0118】
更に、コンベアを駆動したり旋回させたりするモータやその支持部材が、平面上、コンベアが設置されたエリアとは異なるエリアに設置されているため、モータ等の汚れを考慮する必要がない。しかもベルトを含む構成部材の分解や洗浄が容易であるため、衛生面ばかりでなく、保守性の面でも優れている。
【0119】
なお、本実施の形態において、3本のハム原木を同時にスライスするスライサーに対応して、第2および第3の搬送手段を3台のコンベアで構成したが、コンベアの数は3台に限定されない。それ以上の数のハム原木を同時にスライスする場合は、第2および第3の搬送手段を、原木の数に対応した数のコンベアで構成すればよい。
【0120】
また、本実施の形態において、第2の搬送手段に載置されたスライス食品の位置データを取得する手段として一対の光センサを用いたが、スライス食品の横方向の位置に応じた強さの信号を出力するものであれば、どのような光センサ(例えばカメラ)を用いてもよい。
【0121】
更に、本実施の形態では、円形のスライスハムを搬送する場合について説明したが、円形のスライスハムに限定されず、楕円形や四角形のスライス食品の搬送にも適用できることは云うまでもない。
【符号の説明】
【0122】
R ハム原木
S スライスハム
1 第1の搬送手段
2 第2の搬送手段
3 第3の搬送手段
4 第4の搬送手段
5 スライサー
6 搬送機構
7 旋回機構
8 コントローラ
20、20a~20c、30a~30c コンベア
21、22、62、63 プーリ
23 平ベルト
24 フレーム本体
25、26、77 プレート
27、261 ガイド
51 切断刃
61、70a~70c モータ
64 ベルト
65、75 ハウジング
66、211、221 シャフト
67 カップリング
70 シャーシ
71 ハリ
72 取付治具
73、78 ピン
76a~76c プッシュロッド
91a~91c、92a~92c 光センサ
100 スライス食品搬送装置
262 軸
265 バー
611 支持部材
752 固定治具