(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-07
(45)【発行日】2022-09-15
(54)【発明の名称】カルスト地域の農業残留有機農薬の除去に適した人工湿地システム
(51)【国際特許分類】
C02F 3/32 20060101AFI20220908BHJP
C02F 1/28 20060101ALI20220908BHJP
B01D 29/11 20060101ALI20220908BHJP
B01D 35/027 20060101ALI20220908BHJP
A01G 7/00 20060101ALI20220908BHJP
A01G 24/12 20180101ALI20220908BHJP
【FI】
C02F3/32
C02F1/28 D
B01D29/10 510C
B01D35/02 F
A01G7/00 602B
A01G24/12
(21)【出願番号】P 2021004319
(22)【出願日】2021-01-14
【審査請求日】2021-01-14
(31)【優先権主張番号】202011389025.7
(32)【優先日】2020-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520489802
【氏名又は名称】桂林理工大学
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】曾 鴻鵠
(72)【発明者】
【氏名】梁 延鵬
(72)【発明者】
【氏名】朱 宗強
(72)【発明者】
【氏名】羅 爽
(72)【発明者】
【氏名】陸 燕青
(72)【発明者】
【氏名】覃 礼堂
(72)【発明者】
【氏名】莫 凌雲
【審査官】目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第101999289(CN,A)
【文献】中国実用新案第204939093(CN,U)
【文献】中国実用新案第204588914(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第106277344(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102381767(CN,A)
【文献】特開平05-031494(JP,A)
【文献】特開2006-102689(JP,A)
【文献】特表2017-506580(JP,A)
【文献】特開昭58-070891(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F3/00-3/34
A01G2/00-33/02
B09C1/00-1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルスト地域の農業残留有機農薬の除去に適した人工湿地システムであって、
下から上に順次に小石層、土壌層、植物層を設置し、
前記人工湿地システムの頂部には水入口が設置され、前記人工湿地システムの底部には排水収集システムが設置され、
前記排水収集システムには、複数個の直径0.5~
5cmの穿孔パイプ
と、集水メインパイプ
と、が含まれ、前記穿孔パイプの表面がストレーナーに包まれ、前記集水メインパイプの水出口は、前記人口湿地システムの外部に配置され、
前記植物層には、ショウブ、カンナ、タリア、ホソバヒメガマの1つまたは複数が植えられ、
前記小石層と土壌層の厚さ比が1:(1.5~2.5)であること、を特徴とする人工湿地システム。
【請求項2】
前記土壌層には、赤土及び/又はバイオチャーが含まれることを特徴とする請求項1に記載の人工湿地システム。
【請求項3】
前記赤土の添加量は、土壌層の総質量の1%~3%であることを特徴とする請求項2に記載人工湿地システム。
【請求項4】
前記バイオチャーの添加量は、土壌層の総質量の3%~5%であり、バイオチャーの粒径が10~40メッシュであることを特徴とする請求項2に記載の人口湿地システム。
【請求項5】
バイオチャーは、土壌層の表面から
3cm以上の深さに添加されることを特徴とする請求項2又は4に記載の人口湿地システム。
【請求項6】
前記ショウブ、カンナの高さがそれぞれ1.3~1.5mであることを特徴とする請求項1に記載の人口湿地システム。
【請求項7】
前記小石の粒径が3~4cmであることを特徴とする請求項1に記載の人口湿地システム。
【請求項8】
前記穿孔パイプ表面に巻くストレーナーの孔径が80~200メッシュであることを特徴とする請求項1に記載の人口湿地システム。
【請求項9】
前記人口湿地システムがコンテナに組み込まれていることを特徴とする請求項1に記載の人口湿地システム。
【請求項10】
前記コンテナがアルミ製コンテナであることを特徴とする請求項9に記載の人口湿地システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は下水処理の技術分野に属し、特にカルスト地域の農業残留有機農薬の除去に適した人工湿地システムに関する。
【背景技術】
【0002】
カルストエリアは、カルスト地形地域ともいい、カルシウムが豊富でアルカリ性が高い(炭酸塩濃度が高く、pH値が高い)という明らかな特徴を持つ地域であり、中国は、該地域が一番広く分布している国で、この地域が広西、貴州、雲南など省に集中し、四川、重慶、湖南、山西、甘粛、チベットなどの省(県相当)や自治区の一部にも分布している。カルスト地域での農業は、地質学と地質形態学の影響により、農業残留農薬の除去は独特であり、従来の精製技術は特別なプロセス設計と処理を受けて初めて適用できることとなる。
【0003】
有機塩素系農薬(organochlorine pesticides、OCPs)は、環境に耐える典型的な持続性有機汚染物質(pesticides organic pollutants, POPs)の1つであり、分解困難であり、生体蓄積、半揮発性、及び高い毒性などの特徴を有する。OCPsの半揮発性特性により、OCPsは水や土壌から大気に揮発したり、大気粒子に吸着して長距離の移動や沈殿を引き起こしたりして、グローバル的な汚染を引き起こす。しかも、環境中のOCPsは、フードチェーンの作用によってさまざまな生物の体内に蓄積して、生物体内の神経、免疫、内分泌系、その他の器官に損傷を及ぼして、人間と生態系に深刻な危険をもたらし、国際社会の注目を集め、国連環境プログラムによって公布された「持続性有機汚染物質に関するストックホルム条約」にも、有機塩素系農薬を含む21種類の持続性有機汚染物質の使用を徐々に削減及び/又は排除することが提案された。1970年以来、世界中の国々がOCPsの製造と使用を次々と禁止し、中国も1980年にその製造と使用の禁止を始めた。禁止されから既に何十年が経ったけど、OCPsは難分解性であるため、中国だけでなく世界中にも残留物が依然としてたくさん存在している。
【0004】
ヘキサクロロシクロヘキサン(HCHs)は一般的な有機塩素系農薬であり、環境中での検出量が多い。そのうち、β-HCHはその各種の異性体の中で最も安定するものとして、自然環境下では光分解や加水分解などの非生物分解で分解されにくく、微生物による分解でも比較的遅いため、環境媒体への残留量は依然として多い。
【0005】
人工湿地は、地面の土とフィラー(基質)を人工的に利用し、選択的に設計された基質で植物を育てることによって、下水を処理するエコシステムであり、農薬汚染処理に潜在力一番よい方法の1つであると考えられる。外国の研究や調査によると、北米や北欧諸国は、自国の農薬の非点源汚染の問題を解決するために、汚染された河川を人工湿地によって処理するのが普通であるが、人工湿地のため選択された植物は、カルシウムが豊富で且つアルカリ性高い土壌に適応性が悪く、汚染物質への生体濃縮/浄化速度が遅いなどの欠陥が示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これらを考慮して、本発明は、カルスト地域の農業残留有機農薬の除去に適した人工湿地システムを提供することを目的とし、本発明によって提供される垂直伏流式人工湿地システムは、カルスト水文地質条件に強い適応性を有し、持続性有機農薬には優れた生体濃縮や植物による吸収及び分解効果がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、人工湿地には多様な充填層の設計を、土壌層には豊富なカルシウム及び高アルカリ性への耐性が高い設計を実施して、植物種は、カルスト水の化学的特性に適した多様な植物を提供し、システムは、高カルシウム且つ高アルカリ性の水質に耐える利点を有し、また、Ca2+及びHCO3
2-イオンの悪い影響を受けたOCPsには効率的な浄化効果を有する。
【0008】
本発明の上記の目的を達成するために、本発明は以下の技術的解決策を提供する。
本発明はカルスト地域の農業残留有機農薬の除去に適した人工湿地システムを提供し、下から上に順次に小石層、土壌層、植物層を設置し、
前記人工湿地システムの頂部には水入口が設置され、前記人工湿地システムの底部には排水収集システムが設置され、
前記排水収集システムには、複数個の直径0.5~5cmの穿孔パイプと、集水メインパイプと、が含まれ、前記穿孔パイプの表面はストレーナーに包まれ、前記集水メインパイプの水出口は、前記人口湿地システムの外部に配置され、
前記植物層には、ショウブ、カンナ、タリア(ラテン語表記:Thalia dealbata Fraser)、ホソバヒメガマ(ラテン語表記:Typha angustifolia L.)の1つまたは複数は植えられ、
前記小石層と土壌層の厚さ比は1:(1.5~2.5)である。
【0009】
好ましくは、前記土壌層には、赤土及び/又はバイオチャーは含まれる。
【0010】
好ましくは、前記赤土の添加量は、土壌層の総質量の1%~3%である。
【0011】
好ましくは、前記バイオチャーの添加量は、土壌層の総質量の3%~5%であり、バイオチャーの粒径は10~40メッシュである。
【0012】
好ましくは、バイオチャーは、土壌層の表面から3cm以上の深さに添加される。
【0013】
好ましくは、前記ショウブ、カンナの高さはそれぞれ1.3~1.5mである。
【0014】
好ましくは、前記小石の粒径は3~4cmである。
【0015】
好ましくは、前記穿孔パイプ表面に巻くストレーナーの孔径は80~200メッシュである。
【0016】
好ましくは、前記人口湿地システムはコンテナに組み込まれている。
【0017】
好ましくは、コンテナはアルミコンテナである。
【発明の効果】
【0018】
本発明に提供されるカルスト地域の農業残留有機農薬の除去に適した人工湿地システムは、構造がシンプルで、コストが低く、小石層、土壌層、植物層の協力、特に土壌層へのバイオチャーのドーピングや特殊植物の選択などの技術的操作により、システムのカルスト水文地質条件への適応性が向上し、持続性有機農薬に優れた生体濃縮や植物の吸収及び分解効果がある。実施例の記載によれば、本発明に提供される人工湿地システムは、低濃度の有機塩素系農薬β-HCHに汚染された水域についてよい処理効果がある上に、異なる植物が栽培される人工湿地がβ-HCHを浄化する効果について参考としてデータを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施例1で調製された有機農薬を処理するための垂直伏流式人工湿地システムの概略図。1は水入口、2は植物のない領域、3は植物領域、4は土壌層(赤土、バイオチャーをドープ)、5は小石層、6は排水口である。
【
図2A】本発明の実施例1において、異なる植物を有する人工湿地水中のβ-HCH含有量の変化。Kはブランク比較グループ、
図2Aの1-1、
図2Bの2-1、及び
図2Cの3-1は並列のショウブ栽培人工湿地の3つのグループ、
図2Aの1-2、
図2Bの2-2、及び
図2Cの3-2は並列のカンナ栽培人工湿地の3つのグループである。
図2A、
図2B、
図2Cは、それぞれ異なる植物の第1、第2、第3グループの人工湿地におけるβ-HCH含有量の時間の経過にともなう変化を表したライングラフである。
【
図2B】本発明の実施例1において、異なる植物を有する人工湿地水中のβ-HCH含有量の変化。Kはブランク比較グループ、
図2Aの1-1、
図2Bの2-1、及び
図2Cの3-1は並列のショウブ栽培人工湿地の3つのグループ、
図2Aの1-2、
図2Bの2-2、及び
図2Cの3-2は並列のカンナ栽培人工湿地の3つのグループである。
図2A、
図2B、
図2Cは、それぞれ異なる植物の第1、第2、第3グループの人工湿地におけるβ-HCH含有量の時間の経過にともなう変化を表したライングラフである。
【
図2C】本発明の実施例1において、異なる植物を有する人工湿地水中のβ-HCH含有量の変化。Kはブランク比較グループ、
図2Aの1-1、
図2Bの2-1、及び
図2Cの3-1は並列のショウブ栽培人工湿地の3つのグループ、
図2Aの1-2、
図2Bの2-2、及び
図2Cの3-2は並列のカンナ栽培人工湿地の3つのグループである。
図2A、
図2B、
図2Cは、それぞれ異なる植物の第1、第2、第3グループの人工湿地におけるβ-HCH含有量の時間の経過にともなう変化を表したライングラフである。
【
図3A】本発明の実施例1において、異なる植物を有する人工湿地のルートゾーン基質中のβ-HCHの含有量の移行で、ここで、Kはブランク比較グループ、
図3Aの1-1、
図3Bの2-1、及び
図3Cの3-1は並列のショウブ栽培人工湿地の3つのグループ、
図3Aの1-2、
図3Bの2-2、及び
図3Cの3-2は並列のカンナ栽培人工湿地の3つのグループである。
図3A、
図3B、
図3Cはそれぞれ異なる植物の第1、第2、第3グループの人工湿地におけるβ-HCH含有量の時間の経過にともなう変化を表したライングラフである。
【
図3B】本発明の実施例1において、異なる植物を有する人工湿地のルートゾーン基質中のβ-HCHの含有量の移行で、ここで、Kはブランク比較グループ、
図3Aの1-1、
図3Bの2-1、及び
図3Cの3-1は並列のショウブ栽培人工湿地の3つのグループ、
図3Aの1-2、
図3Bの2-2、及び
図3Cの3-2は並列のカンナ栽培人工湿地の3つのグループである。
図3A、
図3B、
図3Cはそれぞれ異なる植物の第1、第2、第3グループの人工湿地におけるβ-HCH含有量の時間の経過にともなう変化を表したライングラフである。
【
図3C】本発明の実施例1において、異なる植物を有する人工湿地のルートゾーン基質中のβ-HCHの含有量の移行で、ここで、Kはブランク比較グループ、
図3Aの1-1、
図3Bの2-1、及び
図3Cの3-1は並列のショウブ栽培人工湿地の3つのグループ、
図3Aの1-2、
図3Bの2-2、及び
図3Cの3-2は並列のカンナ栽培人工湿地の3つのグループである。
図3A、
図3B、
図3Cはそれぞれ異なる植物の第1、第2、第3グループの人工湿地におけるβ-HCH含有量の時間の経過にともなう変化を表したライングラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明はカルスト地域の農業残留有機農薬の除去に適した人工湿地システムを提供し、下から上に順次に小石層、土壌層、植物層を設置し、前記人工湿地システムの頂部には水入口が設置され、前記人工湿地システムの底部には排水収集システムが設置され、前記排水収集システムには、複数個の直径0.5~2cmの穿孔パイプと集水メインパイプが含まれ、前記穿孔パイプの表面はストレーナーに包まれ、前記穿孔パイプの水出口は、前記人口湿地システムの外部に配置され、前記植物層には、ショウブ、カンナ、タリア、ホソバヒメガマの1つまたは複数は植えられ、前記小石層と土壌層の厚さ比は1:(1.5~2.5)である。
【0021】
本発明において、前記人工湿地システムは、好ましくは、現場の条件に応じて形状を設置し、好ましくは長方形であり、選択肢として、前記人工湿地システムは、コンテナとして、矩形溝を掘る。本発明では、アルミニウムコンテナ、ステンレス鋼コンテナ又はプラスチックプレートコンテナなどの他の材料で作られたコンテナも使用できる。
【0022】
本発明において、前記小石層として小石を敷いて、前記小石の粒径は好ましくは3~4cmであり、前記小石層の厚さは好ましくは10~50cm、より好ましくは20~40cmであり、前記小石層の機能は、土壌が集水システムに入らないように遮断し、処理された排水の収集効率を向上させることである。本発明において、前記小石層と土壌層の厚さ比は、好ましくは1:(1.8~2.2)、より好ましくは1:2である。
【0023】
本発明において、前記土壌層には土壌が敷設され、前記土壌層の厚さは好ましくは20~100cmである。本発明において、前記土壌層は、好ましくは、赤土及び/又はバイオチャーを含む。本発明において、前記赤土の添加量は、好ましくは、土壌層の総質量の1%~3%、より好ましくは2%であり、前記赤土は、好ましくは、元の土壌と均一に混合されて、元の土壌の粘度を向上させる。本発明は、赤土の出所は特に限定されておらず、本分野の従来の赤土を使用できる。本発明において、赤土の機能は、土壌粘度を増加させ、土壌損失を減少させることである。本発明において、前記バイオチャーの添加量は、好ましくは、土壌層の総質量の3%~5%、より好ましくは4%であり、本発明において、前記バイオチャーの粒径は、好ましくは10~40メッシュであり、前記バイオチャーは、好ましくはモウソウチク炭及び/又はユーカリ炭であり、本発明では、好ましくは土壌層の表面から3~5cm以下にバイオチャーを添加し、前記バイオチャーが添加される土壌の厚さは、好ましくは、植える植物の種類や根系に応じて、10~30cmと設定される。本発明において、前記バイオチャーの機能は、土壌の緻密性を低下させることであり、前記バイオチャー添加される土壌は、汚染物質の吸着及び濃縮の機能を強化でき、植物の根による標的汚染物質の吸収及び浄化に有益である。
【0024】
本発明において、前記植物層は、好ましくは、ショウブ又はカンナで植えられ、好ましくは、前記ショウブ、カンナの高さがそれぞれ1.3~1.5mであり、より好ましくは、1.4mである。本発明では、好ましくは、移植のために茂る植物を選択する。本発明において、前記ショウブ、カンナ、タリア、ホソバヒメガマは、カルシウムが豊富で高アルカリ性(高炭酸塩濃度、高pH値)の土壌に高度に適応可能である。
【0025】
本発明において、前記水入口は人工湿地システムの頂部に設置される。本発明は、前記水入口機能が実現可能である限り、水入口を特に制限しない。
【0026】
本発明において、前記人口湿地システムの底部に排水収集システムが設置され、前記排水収集システムには、複数の直径が0.5~5cmの穿孔分岐パイプが含まれ、穿孔分岐パイプは集水メインパイプに「非」字型に接続され、集水メインパイプの直径は2~10cmであり、集水メインパイプは取り外し可能なコネクタを介して水出口に接続されている。前記穿孔パイプの表面はストレーナーに包まれており、前記ストレーナーのメッシュは好ましくは、80~200メッシュ、より好ましくは100メッシュであり、前記ストレーナーの機能は、泥サンプルがパイプに入って詰まりを引き起こすことを防ぐことである。本発明において、前記穿孔パイプの水出口は、人工湿地システムの外部に配置される。本発明において、前記水出口には、好ましくは、水の排出のためのアウトレットバルブが接続される。本発明において、好ましくは前記排水口に定圧ベントパイプが設置され、前記定圧ベントパイプの高さは、人工湿地システムの高さに等しく、前記定圧ベントパイプの機能は、排水パイプの修理可能性及び定圧且つ安定に排水することを保障することである。本発明の特定の実施プロセスにおいて、流入水は、人工湿地システムの頂部から入り、自然に平均分布され、人工湿地システムを通過し、排水収集システムに浸透し、集中して排水する。
【0027】
本発明では、前記人工湿地システムには、好ましくは、プレハブ反応器が設置でき、好ましくはプレハブ反応器がステンレス鋼、アルミニウム板又はプラスチック板で作られ、本発明の前記プレハブ反応器は、建設現場の外で試運転を行ってから初めて現場に設置されることができる。本発明の前記プレハブ反応器は、具体的には現場外での試運転中に、植物が栽培されてから20~40日後にプレハブ反応器内の水を全部放出することができ、好ましくは、植物が栽培された30日後に、プレハブ反応器の水を全部放出して、反って実験用の水を追加し、前記実験用の水は、有機塩素系農薬を含む汚染水であり、好ましくはβ-HCHを含む調製水であり、実験中は、好ましくはシステム内の液面が変化しないように、適切な時点で水道水を追加する。
【0028】
本発明によって提供される技術的解決策は、以下に実施形態と併せて詳細に説明されるが、それらは、本発明の保護範囲を限定するものとして理解されるべきではない。
【0029】
〔実施例1〕
有機農薬を処理するための垂直伏流式人工湿地システムであって、
小型模擬垂直伏流式人工システムは、長方形のアルミニウムのコンテナ(仕様:長さ×幅×高さ= 1m×0.5m×0.6m)に組み込まれ、コンテナの底から1cmのところに直径2cmの排水口を設置し、集水メインパイプは、水サンプルを収集するために、排水口の内部に接続され、穿孔分岐パイプは集水メインパイプに「非」字型に接続され、前記穿孔パイプは、直径が2cmであり、穿孔パイプには、直径が0.5cmの穴があり、泥がパイプを詰まらせるのを防ぐために、3層の100メッシュの濾布に包まれ、排水口の外部には、排水用の蛇口が接続されている。コンテナの中央部を、300メッシュのストレーナーで同じ容積の二つのエリアに分けて(エリアの仕様:長さ×幅×高さ= 0.5m×0.5m×0.6m)、当該2つのエリアの底には、両方とも10cmの厚さの小石(粒径3~4cm)が敷設され、小石の上方には20cmの厚さの土壌が敷設され、土壌の粘度を高めて土の損失を減らすために、土層の総質量の2%の赤土が追加され、3%のモウソウチク炭を追加し、モウソウチク炭の粒径範囲は、20メッシュのふるいを通過できる成分を使用し、モウソウチク炭を添加した土壌は、通常、土壌層の3cm以下に設置され、ショウブとカンナを2つの湿地装置うちの1つのエリアに植え、もう1つのエリアには植物を植えない(人工湿地システムの具体的な構造については
図1を参照)。
【0030】
本実施例において、植えられたショウブ、カンナはフラワーベースから購入したもので、主に高さ約1.4mの茂っているショウブ、カンナを選んで、人工湿地システムに移植して新しい成長環境に適応させて、植物を植えた後、システムに水道水(PHは6.9、溶存酸素は4.70mg/L)を加え、水位を土壌から5cmに保ち、植物が30日間成長した後、水を全部排出し、システムずつ濃度が20μg/Lであるβ-HCH実験室構成水を60L準備して追加し、ここで植物に十分な栄養素を供給するために、60Lの汚染水ずつホーグランド栄養溶液を500mL加える。植物の品種ごとに3つの並列を作成し、また、同じ基板であるが植物のないブランク比較システムを一つ設置し、即ち、3つのショウブ人工湿地システム、3つのカンナ人工湿地システム及び1つの植物のないブランク比較システムである。実験中、システム内の液面を変化させないために、適時に水道水を追加した。
【0031】
本実施例の人工湿地システムを使用して60日間試運転して、7つの人工湿地水サンプルを定期的に収集し、計画の試験方法に従って、固相抽出ガスクロマトグラフィーによって異なる植物の人工湿地水中のΒ-HCHの含有量(結果は表1を参照)、各グループの人工湿地水中のΒ-HCH含有量の変化傾向(結果は
図2A~
図2Cに示す)を検出した。
その中で、ショウブ湿地システムは、95.03%でΒ-HCHの平均除去率が最も高く、その次は、カンナ湿地システムが93.35%である。
【0032】
【0033】
注:Kは植物のない人工湿地、1-1、2-1、及び3-1は3つの並列のショウブ人工湿地、1-2、2-2、及び3-2は3つの並列のカンナ人工湿地である。
【0034】
試運転から60日以内に、定期的に人工湿地の土壌サンプルを採取し、計画の試験方法に従い、固相抽出ガスクロマトグラフィーにより、異なる植物の人工湿地の土壌中のΒ-HCHの含有量を検出し、植物根域の土壌中のΒ-HCHの含有量(表2参照)及び変化傾向(
図3A~
図3Cを参照)を求めた。その中で、ルートゾーンの土壌について、ショウブ湿地システムは、Β-HCHの平均除去率が57.21%と最も高くなって、その次はカンナ湿地システムであり、52.65%である。
【0035】
【0036】
注:Kは植物のない人工湿地、1-1、2-1、及び3-1は3つの並列のショウブ人工湿地、1-2、2-2、及び3-2は3つの並列のカンナ人工湿地である。
【0037】
〔実施例2〕
有機農薬を処理するための垂直伏流式人工湿地システムであって、
垂直伏流式人工湿地システムは、桂林市ある村の農地における自然湿地に構築され、マルチユニットになっている。以下、ユニット構造のサイズと処理について説明する。
【0038】
本ユニットシステムは、掘削されたトラフを処理コンテナとして使用し(仕様:長さ×幅×高さ= 5m×2.5m×1.2m)、コンテナの底から5cmのところに直径10cmの排水口を設置し、集水メインパイプは、水サンプルを収集するために、排水口の内部に接続され、穿孔分岐パイプは集水メインパイプに「非」字型に接続され、前記穿孔パイプは、直径が10cmであり、穿孔パイプには、直径が1.0cmの穴があり、泥がパイプを詰まらせるのを防ぐために、3層の100メッシュの濾布に包まれ、排水口の外部には、排水を制御するために、ボールバルブが接続されている。コンテナの底には、25cmの厚さの小石(粒径3~4cm)が敷設され、小石の上部には50cmの厚さの土壌が敷設され、土壌の粘度を高めて土壌の損失を減らすために、土層の総質量の2%の赤土が追加され、3%のモウソウチク炭を追加し、モウソウチク炭の粒径範囲は、20メッシュのふるいを通過できる成分を使用し、モウソウチク炭を添加した土壌は、土壌層の5cm以下に設置され、茂っているショウブを四角いトラフ式人工湿地に植える。
【0039】
本実施例において、植えられたショウブは地元のフラワーベースから購入したもので、高さは1.4mの茂っているショウブを選んで、人工湿地システムに移植し、新しい成長環境に適応させて、植物を植えた後、システムに自然湿地から農地の溝水(PHは7.9、溶存酸素は6.5mg/L、平均全窒素値は2.55mg/L、平均全リン値は0.16mg/L))を加え、水位を土壌の上方5cmに保ち、植物が30日間成長した後、水を全部排出し、試験基地の農地溝水を使用して、2~7μg/L(平均値5μg/L)のβ-HCHを含む、模擬農地溝水を準備して追加し、農地溝水に含まれる窒素とリンの栄養素は、植物の成長に十分な栄養素を提供できる。実験中、流量計を使用して処理する水の量を制御し、人工湿地システムの液面を基本的に安定に保つように、排水パイプのボールバルブの開口部を調整する。
【0040】
本実施例における人工湿地について入水と放水を連続的に行って、試運転から60日以内に、定期的に人工湿地の土壌サンプルを採取し、計画の試験方法に従い、固相抽出ガスクロマトグラフィーにより、人工湿地の排水におけるΒ-HCHの含有量を検出し、植物根域の土壌中のΒ-HCHの含有量(表3参照)を測定した。運転結果によれば、模擬農地溝水について、Β-HCHの除去率が83.5%ないし95.2%であり、その平均除去率が89.5%である。
【表3】
【0041】
上記実施例のデータから、本発明によって提供される人工湿地システムは、水及び土壌中のβ-HCHを効果的に除去でき、人工湿地システムは、水環境及び土壌環境の有機汚染に対して良好な浄化効果を有し、また、β-HCHの浄化プロセスにおけるさまざまな植物の人工湿地の浄化効果に関するデータ参照を提供できることが分かる。
【0042】
上記は、本発明の好ましい実施形態にすぎず、本発明の原理から逸脱することなく、当業者にとって、いくつかの改善及び修正を行うことができ、これらの改善及び修正も、また、本発明の保護範囲と見なされるべきである。