(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-07
(45)【発行日】2022-09-15
(54)【発明の名称】中通浮セット及び中通浮
(51)【国際特許分類】
A01K 93/00 20060101AFI20220908BHJP
【FI】
A01K93/00 H
(21)【出願番号】P 2022090049
(22)【出願日】2022-06-02
【審査請求日】2022-06-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】316007609
【氏名又は名称】有限会社エムアンドエム
(74)【代理人】
【識別番号】110003225
【氏名又は名称】弁理士法人豊栖特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森本 稔
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-164243(JP,A)
【文献】特開2017-12021(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 93/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
後記釣糸を挿通するための糸通孔を直線状に貫通させた浮本体と、
前記浮本体に埋設された重り部と、
を備える中通浮と、
前記中通浮の糸通孔に挿通され、先端を釣針に、後端を釣竿に、それぞれ固定する前記釣糸と、
前記糸通孔に移動自在に配置され、前記釣糸を挿通する貫通孔を有するシモリ玉と、
前記釣糸の中間に固定され、前記シモリ玉の貫通孔の外側の内、釣竿側でかつ前記糸通孔の内部に位置される、前記シモリ玉の貫通孔よりも外径の大きい浮き止めと、
前記浮き止めよりも釣竿側で、前記糸通孔の内壁に向かって拡開するように突出された突起部と、
を備える中通浮セットであって、
前記浮本体は、前記糸通孔から連通された釣竿側開口端と釣針側開口端を有しており、
前記釣針側開口端の内径は、前記糸通孔の内径よりも小さくしており、
前記糸通孔の内壁は、前記釣竿側開口端の近傍に、前記糸通孔の内径よりも大きい内径となるように該内壁の面から窪ませた環状の凹部を形成しており、
前記釣糸が、釣竿側に引かれた際、前記突起部が前記糸通孔内を後退して、前記凹部に係止され、前記釣糸と中通浮が保持されるよう構成されてなる中通浮セット。
【請求項2】
請求項1に記載の中通浮セットであって、
前記釣竿側開口端の内径を、前記糸通孔の内径よりも大きくしており、
前記釣竿側開口端に、該釣竿側開口端に挿入可能でかつ前記糸通孔よりも大きい外径を有するリング部を設置することで、前記リング部の下部に、前記凹部を形成してなる中通浮セット。
【請求項3】
請求項2に記載の中通浮セットであって、
前記リング部の内径が、前記糸通孔の内径と同じか、これよりも狭くしてなる中通浮セット。
【請求項4】
請求項1に記載の中通浮セットであって、
前記突起部が、前記浮き止めよりも釣竿側に、V字状に分岐されたヒゲ状に形成されてなる中通浮セット。
【請求項5】
請求項1に記載の中通浮セットであって、
前記浮き止めが、前記釣糸と同じ素材の糸片が前記釣糸に結わえられた結び目である中通浮セット。
【請求項6】
請求項5に記載の中通浮セットであって、
前記突起部が、前記結び目を構成する糸片の一対の端縁を、それぞれV字状に突出させたものである中通浮セット。
【請求項7】
請求項1に記載の中通浮セットであって、
前記重り部が、前記釣針側開口端から該釣針側開口端と糸通孔の界面に至る領域の周囲を覆うように配置されており、
前記重り部が前記糸通孔の側面と接する面と、前記重り部が前記浮本体に埋設されて接する面とが、鈍角に形成されてなる中通浮セット。
【請求項8】
請求項7に記載の中通浮セットであって、
水に浮かべた際の姿勢が、前記糸通孔が鉛直姿勢となる向きに設計されてなる中通浮。
【請求項9】
請求項1~6のいずれか一項に記載の中通浮セットであって、
前記重り部が、前記釣針側開口端から該釣針側開口端と糸通孔の界面に至る領域の周囲を覆うように配置されており、
水に浮かべた際の姿勢が、前記糸通孔が水平姿勢となる向きに設計されてなる中通浮セット。
【請求項10】
釣糸を挿通するための糸通孔を直線状に貫通させた浮本体と、
前記浮本体に埋設された重り部と、
を備える中通浮であって、
前記浮本体は、前記糸通孔から連通された釣竿側開口端と釣針側開口端を有しており、
前記釣針側開口端の内径は、前記糸通孔の内径よりも小さくしており、
前記糸通孔の内壁は、前記釣竿側開口端の近傍に、前記糸通孔の内径よりも大きい内径となるように該内壁の面から窪ませた環状の凹部を形成しており、
釣糸を前記糸通孔に通した状態で、釣糸が釣竿側に引かれた際に、釣糸に固定された、前記糸通孔の内壁に向かって拡開するように突出された突起部が、前記糸通孔内を後退して、前記凹部に係止され、釣糸と中通浮が保持されるようにした中通浮。
【請求項11】
請求項10に記載の中通浮であって、
前記重り部が、前記釣針側開口端から該釣針側開口端と糸通孔の界面に至る領域の周囲を覆うように配置されており、
前記重り部が前記糸通孔の側面と接する面と、前記重り部が前記浮本体に埋設されて接する面とが、鈍角に形成されてなる中通浮。
【請求項12】
請求項10に記載の中通浮であって、
前記重り部が、前記釣針側開口端から該釣針側開口端と糸通孔の界面に至る領域の周囲を覆うように配置されており、
水に浮かべた際の姿勢が、前記糸通孔が水平姿勢となる向きに設計されてなる中通浮。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、魚釣り用の中通浮セット及びこれに用いる中通浮に関する。
【背景技術】
【0002】
魚釣り用の中通浮900は、例えば
図11に示すように、木製の、ほぼ逆円錐形の浮本体910の縦中心軸線に糸通孔911を設け、その糸通孔911にパイプ915を挿入し、パイプ915を浮本体910に接着固定している。
【0003】
この中通浮900を使用する際には、
図11に示すように、釣糸1に浮き止め5を設け、その下方の釣糸1をシモリ玉3の貫通孔4に挿通し、その下方をパイプ915に挿通し、その釣糸1の先端部に釣針を取り付けている。シモリ玉3は浮き止め5をシモリ玉3にて停止させるためのものである。この場合、シモリ玉3が、パイプ915を通り抜けては目的を達しないので、シモリ玉3の径はパイプ915の径よりも大きくしており、従って、浮が水面に浮いたときにはシモリ玉3はパイプ915の上端に載置した状態となっている。
【0004】
上記の状態で使用中に、釣糸1を引いて、浮を移動させることがある。ところが、シモリ玉3が管3の上端に載置された状態であるので、シモリ玉3や浮き止め5が浮本体910から離れて引かれ、この状態では魚が食いついて釣糸1を引いても、浮き止め5がシモリ玉3に抵触するまでのストロークが長くなる結果、魚が餌に食いついた際の、いわゆるアタリが生じるまでにタイムラグが生じるという問題があった。
【0005】
これに対し、本願発明者は
図12、
図13に示す魚釣り用浮800を開発した(特許文献1)。この魚釣り用浮800は、浮本体810の縦中心軸線の位置に、下方で縮径して、上部にシモリ玉3を挿通しうる大径の糸通孔811を設け、下部にシモリ玉3を挿通させない小径の狭窄部814を設けている。また大径の糸通孔811と小径の狭窄部814との連結部に段部を形成する。これによって、
図14に示すように使用時に魚釣り用浮800が安定し、また、魚を誘うために釣糸1を少々引いて魚釣り用浮800を移動させる程度では、シモリ玉3が浮本体810の糸通孔811から抜け出さず、浮本体810と釣針との間隔がほとんど変わらない魚釣り用浮800を実現している。
【0006】
この魚釣り用浮800は、釣糸1に浮き止め5を設け、その下方をシモリ玉3の貫通孔4に通し、シモリ玉3を挿通して出た釣糸1を糸通孔811および狭窄部814を通し、狭窄部814の下端開口より出た釣糸1に釣針を取り付ける。釣針にえさを付けて水面に浮を浮かすと、えさの重りで釣糸1が下方に引かれシモリ玉3は、浮き止め5に阻止され押されて糸通孔811内に挿入されるが、段部に当接して停止する。
【0007】
この魚釣り用浮800を使用すると、釣糸1に設けられた浮き止め5によって、魚の引きに対しては、すなわち釣糸1が下方に引っ張られる方向に対しては、
図12に示すように魚釣り用浮800自体を移動させることができる。このため魚が餌に食いついた際のアタリに対して、魚釣り用浮800が沈むため、反応性がよい。
【0008】
しかしながら、釣糸1を引く方向、すなわち
図13の上方向に対しては、何ら規制がないため、無制限に釣糸1が出ていく。この結果、釣糸1を引きすぎると、
図14に示すように浮き止め5とシモリ玉3との間が相当広くなる。この状態では、魚が食いついて釣糸1を引いても、浮き止め5がシモリ玉3に抵触するまでのストロークが長くなる結果、アタリが生じるまでにタイムラグが生じるという問題があった。
【0009】
かといって、釣糸1に浮本体810を固定してしまうと、釣竿の長さを超える水深を探りにくくなるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本開示の目的の一は、反応性をよくした中通浮セット及び中通浮を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0012】
本発明の第1の側面に係る中通浮セットによれば、後記釣糸を挿通するための糸通孔を直線状に貫通させた浮本体と、前記浮本体に埋設された重り部と、を備える中通浮と、前記中通浮の糸通孔に挿通され、先端を釣針に、後端を釣竿に、それぞれ固定する釣糸と、前記糸通孔に移動自在に配置され、前記釣糸を挿通する貫通孔を有するシモリ玉と、前記釣糸の中間に固定され、前記シモリ玉の貫通孔の外側の内、釣竿側でかつ前記糸通孔の内部に位置される、前記シモリ玉の貫通孔よりも外径の大きい浮き止めと、前記浮き止めよりも釣竿側で、前記糸通孔の内壁に向かって拡開するように突出された突起部と、を備える中通浮セットであって、前記浮本体は、前記糸通孔から連通された釣竿側開口端と釣針側開口端を有しており、前記釣針側開口端の内径は、前記糸通孔の内径よりも小さくしており、前記糸通孔の内壁は、前記釣竿側開口端の近傍に、前記糸通孔の内径よりも大きい内径となるように該内壁の面から窪ませた環状の凹部を形成しており、前記釣糸が、釣竿側に引かれた際、前記突起部が前記糸通孔内を後退して、前記凹部に係止され、前記釣糸と中通浮が保持されるよう構成することができる。上記構成により、釣糸を糸通孔に通した状態で釣糸に固定した突起部を凹部に係止することで、釣糸を多く繰り出しても、浮き止めが糸通孔から出て離れてしまいアタリの反応が鈍くなる事態を回避することができる。
【0013】
また、第2の側面に係る中通浮セットによれば、上記側面において、前記釣竿側開口端の内径を、前記糸通孔の内径よりも大きくしており、前記釣竿側開口端に、該釣竿側開口端に挿入可能でかつ前記糸通孔よりも大きい外径を有するリング部を設置することで、前記リング部の下部に、前記凹部を形成することができる。上記構成により、浮本体の釣竿側開口端にリング部を設置することで釣竿側開口端の開口径を狭くしつつ、リング部の下に凹部を容易に形成できる。
【0014】
さらにまた、第3の側面に係る中通浮セットによれば、上記いずれかの側面において、前記リング部の内径が、前記糸通孔の内径と同じか、これよりも狭くすることができる。
【0015】
さらにまた、第4の側面に係る中通浮セットによれば、上記いずれかの側面において、前記突起部が、前記浮き止めよりも釣竿側に、V字状に分岐されたヒゲ状に形成することができる。
【0016】
さらにまた、第5の側面に係る中通浮セットによれば、上記いずれかの側面において、前記浮き止めを、前記釣糸と同じ素材の糸片が前記釣糸に結わえられた結び目とすることができる。
【0017】
さらにまた、第6の側面に係る中通浮セットによれば、上記いずれかの側面において、前記突起部が、前記結び目を構成する糸片の一対の端縁を、それぞれV字状に突出させたものである。
【0018】
さらにまた、第7の側面に係る中通浮セットによれば、上記いずれかの側面において、前記重り部が、前記釣針側開口端から該釣針側開口端と糸通孔の界面に至る領域の周囲を覆うように配置されており、前記重り部が前記糸通孔の側面と接する面と、前記重り部が前記浮本体に埋設されて接する面とが、鈍角に形成されている。上記構成により、重り部を浮本体の先端側に沿わせて配置することで、中通浮の重心を釣針側開口端により近接させ、中通浮をコントロールし易くできる。
【0019】
さらにまた、第8の側面に係る中通浮セットによれば、上記いずれかの側面において、水に浮かべた際の姿勢が、前記糸通孔が鉛直姿勢となる向きに設計されている。
【0020】
さらにまた、第9の側面に係る中通浮セットによれば、上記いずれかの側面において、前記重り部が、前記釣針側開口端から該釣針側開口端と糸通孔の界面に至る領域の周囲を覆うように配置されており、水に浮かべた際の姿勢が、前記糸通孔が水平姿勢となる向きに設計されている。上記構成により、使用時に糸通孔を水平姿勢に近付けることで、釣糸を釣竿から釣針に向かってスムーズに延長でき、コントロールし易くできる。
【0021】
さらにまた、第10の側面に係る中通浮によれば、釣糸を挿通するための糸通孔を直線状に貫通させた浮本体と、前記浮本体に埋設された重り部と、を備える中通浮であって、前記浮本体は、前記糸通孔から連通された釣竿側開口端と釣針側開口端を有しており、前記釣針側開口端の内径は、前記糸通孔の内径よりも小さくしており、前記糸通孔の内壁は、前記釣竿側開口端の近傍に、前記糸通孔の内径よりも大きい内径となるように該内壁の面から窪ませた環状の凹部を形成しており、釣糸を前記糸通孔に通した状態で、釣糸が釣竿側に引かれた際に、釣糸に固定された、前記糸通孔の内壁に向かって拡開するように突出された突起部が、前記糸通孔内を後退して、前記凹部に係止され、釣糸と中通浮が保持されるようにしている。上記構成により、シモリ玉の貫通孔に釣糸を挿通した状態で、前記中通浮の糸通孔に挿入された釣糸の中間であって、前記糸通孔に移動自在に配置されたシモリ玉の貫通孔の外側で、釣竿側でかつ前記糸通孔の内部に位置される、シモリ玉の貫通孔よりも外径の大きい浮き止めよりも釣竿側で、前記糸通孔の内壁に向かって拡開するように突出された突起部が、釣糸が釣竿側に引かれた際に、前記糸通孔内を後退して、前記凹部に係止され、前記釣糸と中通浮が保持されるよう構成できる。この結果、釣糸を糸通孔に通した状態で釣糸に固定した突起部を凹部に係止することで、釣糸を多く繰り出しても、浮き止めが糸通孔から出て離れてしまいアタリの反応が鈍くなる事態を回避することができる。
【0022】
さらにまた、第11の側面に係る中通浮によれば、上記側面において、前記重り部が、前記釣針側開口端から該釣針側開口端と糸通孔の界面に至る領域の周囲を覆うように配置されており、前記重り部が前記糸通孔の側面と接する面と、前記重り部が前記浮本体に埋設されて接する面とを、鈍角に形成することができる。上記構成により、重り部を浮本体の先端側に沿わせて配置することで、中通浮の重心を釣針側開口端により近接させ、中通浮をコントロールし易くできる。
【0023】
さらにまた、第12の側面に係る中通浮によれば、上記いずれかの側面において、前記重り部が、前記釣針側開口端から該釣針側開口端と糸通孔の界面に至る領域の周囲を覆うように配置されており、水に浮かべた際の姿勢が、前記糸通孔が水平姿勢となる向きに設計されている。上記構成により、使用時に糸通孔を水平姿勢に近付けることで、釣糸を釣竿から釣針に向かってスムーズに延長でき、コントロールし易くできる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】実施形態1に係る中通浮セットを示す断面図である。
【
図2】
図1の中通浮セットで釣糸を上方に引いて保持された状態を示す断面図である。
【
図5】
図3のリング部を固定した状態を示す断面図である。
【
図6】
図5の中通浮にシモリ玉と釣糸をセットする状態を示す断面図である。
【
図8】
図6の中通浮の使用状態を示す断面図である。
【
図9】実施形態2に係る中通浮の使用状態を示す断面図である。
【
図12】本願発明者が先に開発した中通浮を示す断面図である。
【
図14】
図13の中通浮の使用時の釣糸の動きを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための例示であって、本発明は以下のものに限定されない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
[実施形態1]
【0026】
本発明の実施形態1に係る中通浮セット1000を、
図1~
図2に示す。これらの図において、
図1は実施形態1に係る中通浮セット1000を示す断面図、
図2は
図1の中通浮セット1000で釣糸1を上方に引いて保持された状態を示す断面図を、それぞれ示している。これらの図に示す中通浮セット1000は、中通浮100と、釣糸1と、シモリ玉3で構成される。
(中通浮100)
【0027】
中通浮100は、浮本体10と重り部20を備える。浮本体10は、縦長の中心に、釣糸1を挿通するための糸通孔11を直線状に貫通させている。この浮本体10は浮力のある木製や樹脂製とできる。
(糸通孔11)
【0028】
糸通孔11は、浮本体10に開口された釣竿側開口端12と釣針側開口端13を連通している。釣竿側開口端12から糸通孔11にシモリ玉3を挿入できるよう、糸通孔11の内径はシモリ玉3の外径よりも大きくしている。ただし釣針側開口端13では、シモリ玉3が抜けないように、その内径をシモリ玉3の外径よりも小さくしている。すなわち釣針側開口端13で、その内径を他の糸通孔11の内径よりも小さくした狭窄部14を設けている。狭窄部14は、シモリ玉3の外径よりも小さい内径とする。このように浮本体10の糸通孔11を下すぼみの二段パイプ状として、シモリ玉3が釣針側開口端13から抜ける事態を阻止する。このような二段パイプ状の糸通孔11は、
図1等に示すように予め成型した二段パイプ15を浮本体10に埋設することで容易に形成できる。一方で糸通孔11の釣竿側開口端12の近傍では、糸通孔11の内径よりも大きい内径となるように、その内壁の面から窪ませた環状の凹部16を形成している(詳細は後述)。
(重り部20)
【0029】
重り部20は、浮本体10に埋設されている。
図1に示す重り部20は、釣針側開口端13から該釣針側開口端13と糸通孔11の界面に至る領域の周囲を覆うように配置されている。また重り部20が糸通孔11の側面と接する面と、重り部20が浮本体10に埋設されて接する面とを、鈍角に形成させている。このような構成により、重り部20を浮本体10の先端側に沿わせて配置することで、中通浮100の重心を釣針側開口端13により近接させ、中通浮100をコントロールし易くできる。
(シモリ玉3)
【0030】
シモリ玉3は全体を球状とし、糸通孔11に移動自在に配置される。このシモリ玉3は、釣糸1を挿通する貫通孔4を有する。
(釣糸1)
【0031】
釣糸1は、中通浮100の糸通孔11に挿通される。また釣糸1の先端は釣針2に、後端は釣竿に、それぞれ固定される。また釣糸1の中間には、浮き止め5と突起部6が固定される。このような釣糸1には、ナイロン糸など、既存の材質を適用できる。
(浮き止め5)
【0032】
浮き止め5は、釣糸1がシモリ玉3の貫通孔4に挿通され、かつ中通浮100の糸通孔11に挿入された状態で、シモリ玉3の貫通孔4の外側の内、釣竿側でかつ糸通孔11の内部に位置される。浮き止め5は、シモリ玉3の貫通孔4よりも外径の大きくしている。このような浮き止め5は、釣糸自体を結んだ結び目で形成してもよい。あるいは釣糸とは別の糸片を結わえて形成してもよい。
(突起部6)
【0033】
突起部6は、
図1に示すように釣糸1の中間であって、浮き止め5よりも釣竿側に固定されている。突起部6の先端は、凹部16に係止されるように、糸通孔11の内壁に向かって拡開するように突出されている。この突起部6は、釣糸1が釣竿側に引かれると、
図2に示すように糸通孔11内を後退して(図において突起部6が上方に移動して)、突起部6の先端が凹部16に係止され、釣糸1が中通浮100に保持される。このような構成により、釣糸1を糸通孔11に通した状態で釣糸1に固定した突起部6を凹部16に係止することで、釣糸1を多く繰り出しても、浮き止め5が糸通孔11から出て離れてしまいアタリの反応が鈍くなる事態を回避することができる。
【0034】
突起部6は、浮き止め5よりも釣竿側に突出されている。好ましくは、V字状に分岐されたヒゲ状に形成されている。このような形状とすることで、突起部6を付加した釣糸1を糸通孔11の釣竿側開口端12に挿入し易くしつつ、釣糸1を釣竿側に引いた際には、突起部6を凹部16に係止し易くできる。すなわち、釣竿側開口端12から挿入させ易く、抜け難い構成を実現できる。
【0035】
一方で浮き止め5は、釣糸1と同じ素材の糸片が釣糸1に結わえられた結び目とすることができる。これにより、浮き止め5を釣糸1に容易に付加できる。また浮き止め5を、釣糸1自体を結んだ結び目としてもよい。
【0036】
さらに突起部6は、結び目を構成する糸片の一対の端縁を、それぞれV字状に突出させて形成してもよい。これにより、浮き止め5の付加により、突起部6も釣糸1に付加できる。好ましくは、釣糸1に糸片を結んで結び目を浮き止め5とし、さらにこの糸片の端部でV字状の突起部6も形成している。また突起部6を釣糸1と同じ素材とすることで、適度の硬度と柔軟性を付加できる。なお、浮き止め5と突起部6を別部材としたり、これらを別個に設けてもよいことはいうまでもない。
【0037】
このように突出部には弾性変形可能な材質のものを選択する。これにより、釣りの際には糸を釣竿側に引いて突起部6を凹部16に係止し、釣糸1と中通浮100を一体的に操作できる。その一方、仕掛け時には
図2の状態から釣糸1を強く引っ張ると、突起部6が弾性変形して釣竿側開口端12から突起部6を設けた釣糸1を引き抜くことが可能となる。
(凹部16)
【0038】
図1に示すように、糸通孔11の釣竿側開口端12の近傍には、その内壁に環状の凹部16を形成している。凹部16は、糸通孔11の内壁の面から窪ませており、
図2に示すように突起部6の先端を係止するポケットとして機能する。突起部6の先端が凹部16に係止されると、釣糸1と中通浮100の相対移動が停止される。また凹部16と釣竿側開口端12との間(
図1、
図2において凹部16の上部)には、凹部16よりも内径を小さくしたストッパ部分17を形成している。このようなストッパ部分17の形成には、例えばリング部30を用いることができる。
(リング部30)
【0039】
ここで中通浮100に凹部16を形成する方法の一例として、リング部30を用いて凹部16を形成する手順を
図3~
図7に基づいて説明する。これらの図において、
図3は中通浮100の製造工程を示す分解断面図、
図4は
図3の分解斜視図、
図5は
図3のリング部30を固定した状態を示す断面図、
図6は
図5の中通浮100にシモリ玉3と釣糸1をセットする状態を示す断面図、
図7はシモリ玉3と突起部6を示す斜視図を、それぞれ示している。
【0040】
まず
図3に示すように、糸通孔11を貫通させた中通浮100を準備する。この中通浮100は、予め糸通孔11の釣竿側開口端12の内径を、糸通孔11の内径よりも大きくした段差状に形成している。この段差部分18の内径が、凹部16の内径となる。
【0041】
次に中通浮100の釣竿側開口端12に、リング部30を固定する。リング部30は、
図4に示すように、釣竿側開口端12に挿入可能でかつ糸通孔11よりも大きい外径を有する。またリング部30の内径は、シモリ玉3の外径よりも大きくする。好ましくは、リング部30の内径を糸通孔11の内径とほぼ等しくする。このリング部30は、耐水性、耐久性を有する材質、例えばSiC等の金属やABS等の樹脂で構成できる。またリング部30は、接着剤などによって釣竿側開口端12に固定される。また、リング部30を段差部分18に仮止めし易いよう、段差部分18の内径をリング部30の外径と同じか、これよりも若干小さくして、リング部30を段差部分18に圧入すると共に、瞬間接着剤等により固定する。これにより、
図5に示すように、リング部30を設置した下部に、凹部16が形成される。なおリング部30は、
図4の例では断面を円形状としているが、この構成に限らず、断面を楕円形や、四角形、八角形等の多角形状としてもよい。
【0042】
この状態で、
図6、
図7に示すように、予めシモリ玉3を通し、かつ浮き止め5と突起部6をセットした釣糸1を、中通浮100のリング部30を設けた糸通孔11の釣竿側開口端12から挿入する。糸通孔11に挿入されたシモリ玉3は、狭窄部14に当接して、釣針側開口端13から抜けないように保持される。また釣糸1の先端には、釣針が固定される。なお
図7に示すように、釣糸1には予めシモリ玉3を通しておく。さらに釣糸1の、シモリ玉3の上側には、浮き止め5と突起部6をセットしておく。このように、浮本体10の釣竿側開口端12にリング部30を設置することで釣竿側開口端12の開口径を狭くしつつ、リング部30の下に凹部16を容易に形成できる。
【0043】
以上のようにして得られた中通浮セット1000は、
図8に示すように水に浮かべた際の姿勢が、糸通孔11が鉛直姿勢となる向きに設計されている。特に重り部20が糸通孔11の側面と接する面と、浮本体10に埋設されて接する面の接線とがなす角度αが鈍角になるように、重り部20を浮本体10の先端側に添わせて配置することで、中通浮100の重心を、より釣針側開口端13側に近接させることができる。このような構成とすることで、中通浮100を水面に投入し浮力が0になった時点で(「なじむ」という。)、糸通孔11を通じて水中に垂下された釣針が水流によって流されると、流れの方向に中通浮100が傾いた姿勢となる。特に、地上の風の流れと水中の水の流れの方向が異なる場合でも、水面に浮かんだ中通浮100の傾きを見て、水面下の水の流れの方向を判断できるという利点が得られる。なお本明細書において、「水に浮かべた際の姿勢」が、「糸通孔が鉛直姿勢となる向き」とは、糸通孔が常時完全に鉛直姿勢となることを意味するのでなく、実際には海面下の潮の流れ等によって中通浮が傾くため、中通浮のタイプとして、水面に浮かせた際の姿勢が、糸通孔が鉛直方向となる姿勢、すなわち中通浮が縦長の姿勢で浮いて使用されることを企図したに過ぎない。
[実施形態2]
【0044】
一方で本発明に係る中通浮100や中通浮セット1000は、重り部20の位置を変更することで、水に浮かべた際の姿勢を変更できる。例えば
図9に示す実施形態2に係る中通浮セット2000では、中通浮200を水に浮かべた際の姿勢が、糸通孔11が水平姿勢となる向きに設計されている。具体的には、重り部20Bが、釣針側開口端13から該釣針側開口端13と糸通孔11の界面に至る領域の周囲を覆うように配置されている。これにより、特に使用時に糸通孔11を水平姿勢に近付けることで、釣糸1を釣竿から釣針に向かってスムーズに延長でき、コントロールし易くできる。具体的には、中通浮200を水面に浮かべた際の姿勢が、横向きとなることで、釣糸1が釣竿側開口部12から釣針側開口部13を通じて水中に沈下するまでの抵抗を軽減し、より早くシモリ玉3が糸通孔11を通り狭窄部14で止まり、逆に突起部6はよりスムーズに凹部16で係止される。なお上述の通り、本明細書において「水に浮かべた際の姿勢」が、「糸通孔が水平姿勢となる向き」とは、糸通孔が常時完全に水平姿勢となることを意味するのでなく、実際には海面下の潮の流れ等によって中通浮が傾くため、中通浮のタイプとして、水面に浮かせた際の姿勢が、糸通孔が水平方向となる姿勢、すなわち中通浮が横長の姿勢で浮いて使用されることを企図したに過ぎない。このように本発明は、中通浮100を水に浮かべた際の姿勢や角度を、重り部20の位置や形状によって調整できる。
[実施形態3]
【0045】
なお、糸通孔11に形成する凹部16の形状は、
図1等に示したように矩形状とする他、他の形状、例えば
図10に示す実施形態3に係る中通浮300のように傾斜状としてもよい。このような傾斜状の凹部16Cは、V字状の突起部6の先端を凹部16に案内して係止し易くできる利点が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明に係る中通浮は、海釣り用や川釣り用の浮としてとして好適に利用できる。
【符号の説明】
【0047】
1000、2000…中通浮セット
100、200、300…中通浮
1…釣糸
2…釣糸
3…シモリ玉
4…貫通孔
5…浮き止め
6…突起部
10…浮本体
11…糸通孔
12…釣竿側開口端
13…釣針側開口端
14…狭窄部
15…二段パイプ
16、16C…凹部
17…ストッパ部分
18…段差部分
20、20B…重り部
30…リング部
800…魚釣り用浮
810…浮本体
811…糸通孔
814…狭窄部
900…中通浮
910…浮本体
911…糸通孔
915…パイプ
【要約】
【課題】反応性をよくした中通浮等を提供する。
【解決手段】中通浮セット1000は、中通浮100と、シモリ玉3と、釣糸1の中間に固定され、シモリ玉3の貫通孔4の外側の内、釣竿側でかつ糸通孔11の内部に位置される、シモリ玉3の貫通孔4よりも外径の大きい浮き止め5と、浮き止め5よりも釣竿側で、糸通孔11の内壁に向かって拡開するように突出された突起部6とを備える。浮本体10は、糸通孔11から連通された釣竿側開口端12と釣針側開口端13を有しており、釣針側開口端13の内径は、糸通孔11の内径よりも小さくしており、糸通孔11の内壁は、釣竿側開口端12の近傍に、糸通孔11の内径よりも大きい内径となるように該内壁の面から窪ませた環状の凹部16を形成しており、釣糸1が、釣竿側に引かれた際、突起部6が糸通孔11内を後退して、凹部16に係止され、釣糸1と中通浮100が保持されるよう構成される。
【選択図】
図1