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特許7137909多液混合塗料の供給システムを用いた多液混合塗料の供給方法
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  • 特許-多液混合塗料の供給システムを用いた多液混合塗料の供給方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-07
(45)【発行日】2022-09-15
(54)【発明の名称】多液混合塗料の供給システムを用いた多液混合塗料の供給方法
(51)【国際特許分類】
   B05B 7/26 20060101AFI20220908BHJP
   B05B 7/04 20060101ALI20220908BHJP
   B01F 23/40 20220101ALI20220908BHJP
   B01F 25/40 20220101ALI20220908BHJP
   B01F 35/71 20220101ALI20220908BHJP
【FI】
B05B7/26
B05B7/04
B01F23/40
B01F25/40
B01F35/71
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018168385
(22)【出願日】2018-09-08
(65)【公開番号】P2020040010
(43)【公開日】2020-03-19
【審査請求日】2021-06-03
(73)【特許権者】
【識別番号】593081224
【氏名又は名称】タクボエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104488
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 良夫
(72)【発明者】
【氏名】西川 俊博
(72)【発明者】
【氏名】小島 光
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-302315(JP,A)
【文献】特開2011-020107(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 1/00- 3/18
7/00- 9/08
B05C 7/00-21/00
B05D 1/00- 7/26
B01F 1/00- 5/26
15/00-15/06
21/00-25/90
35/00-35/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の液を混合して多液混合塗料を生成して、該生成した多液混合塗料を1又は複数のスプレーガンに供給するための多液混合塗料の供給方法であって、
多液混合塗料を生成するための液を収容する複数の収容部(2、7、12)と、
供給ホース(3、8、13)を介して前記収容部(2、7、12)のそれぞれが連結されて、収容部(2、7、12)内の液を合流させて通過させるためのマニホールド(21)と、
前記マニホールド(21)に連結された、マニホールド(21)内で合流された液を混合するスタティックミキサー(22)と、
塗料充填用ホース(32)を介して前記スタティックミキサー(22)に連結された複数個のメインシリンジ(31)と、
前記塗料充填用ホース(32)の途上に配置された塗料充填用バルブ(33)と、
供給ホース(3、8、13)の途上に配置した、複数の液をそれぞれ前記メインシリンジ(31)側に送り出すことで、メインシリンジ(31)内に多液混合塗料を貯留させるためのポンプ(4、9、14)と、を具備し、
前記メインシリンジ(31)はそれぞれ、
先端部が閉鎖された円筒状のシリンジ本体(23)と、該シリンジ本体(23)内に進退移動自在に挿設されたピストン(24)と、該ピストン(24)に連結されたピストンロッド(25)と、前記シリンジ本体(23)の先端部に形成された、塗料供給バルブ(34)を介して、スプレーガンに多液塗料を供給するための塗料供給ホース(35)が連結される塗料吐出口と、前記ピストン(24)に形成された充填口(27)と、前記ピストンロッド(25)内に形成された、前記充填口(27)に連通した充填路(26)と、を具備するとともに、
前記ピストンロッド(25)に作動板(28)が取り付けられ、該作動板(28)は、モーター(30)の軸に連結されたボールネジ(29)に螺合された可動ベース(37)に固定され、モーター(30)の駆動でボールネジ(29)を回動し、可動ベース(37)を往復移動することで、作動板(28)を介してピストンロッド(25)を移動させ、ピストンを同時に往復移動させることを可能にした、多液混合塗料の供給システムを用いて、
前記塗料充填用バルブ(33)を開放するとともに前記塗料供給用バルブ(34)を閉鎖し、その状態で、ポンプ(4、9、14)を駆動することで、前記複数の収容部(2、7、12)内の液を、マニホールド(21)内を通過させながらスタティックミキサー(22)に送り出すとともに、それぞれのメインシリンジ(31)のピストン(24)を後方側に移動させてピストン本体(24)の内部を負圧にすることで、スタティックミキサー(22)に送り出された液を、スタティックミキサー(22)内で混合して多液混合塗料を生成しながらメインシリンジ(31)のシリンジ本体(24)内に充填し、
その後に、塗料充填用バルブ(33)を閉鎖し、塗料供給用バルブ(34)を開放し、その状態で、メインシリンジ(31)のピストン(24)をシリンジ本体(23)の先端側に移動することで、メインシリンジ(31)内の多液混合塗料を、塗料供給ホース(35)を介してスプレーガンに供給する、ことを特徴とする多液混合塗料の供給方法。
【請求項2】
供給ホース(3、8、13)の途上に配置した前記ポンプ(4、9、14)の少なくとも一つがシリンジポンプであることを特徴とする請求項1に記載の多液混合塗料の供給方法
【請求項3】
供給ホース(3、8、13)の途上に配置した前記ポンプ(4、9、14)の少なくとも一つがダイヤフラムポンプであることを特徴とする請求項1に記載の多液混合塗料の供給方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の液を混合することで生成される多液混合塗料をスプレーガンに供給するための多液混合塗料の供給方法に係り、より詳しくは、多液混合塗料の生成に際して液の混合を確実に行うとともに、混合した塗料を一定の圧力を維持しながらスプレーガンに供給可能にした多液混合塗料の供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ワークの塗装に際しては、1液塗料による塗装の他に、複数の液を混合して生成した多液混合塗料を用いることが行われている。そして、この多液混合塗料には、例えば主剤の他に硬化剤等の添加剤を加えることで生成されるものがあり、その生成に際しては、主剤に添加剤を加えることで、多液混合塗料の原料となる主剤と添加剤を混合しつつスプレーガンに供給する方法が採用されることが行われている。
【0003】
ここで、従来の多液混合塗料を用いた塗料供給方法について説明すると、多液混合塗料を供給する方法は一般的に、複数の液を、マニホールド等の合流手段を通過させつつでスタティックミキサー等の混合手段に送り出し、このスタティックミキサーにおいて複数の液を混合して多液混合塗料を生成しながら、この生成した多液混合塗料をスプレーガンに供給する方法が採用されている。
【0004】
この従来の方法を、図5を参照して説明すると、図5は従来の多液混合塗料の供給システムのイメージを示す図であり、図において52がスプレーガン、53がスプレーガン52に塗料を供給するための供給ホースである。
【0005】
また、図において、64は主剤を貯留させてある主剤タンクであり、65は硬化剤等の添加剤を貯留してある添加剤タンクである。
【0006】
一方、図において55は、主剤と添加剤を合流させるための合流部であり、合流部55は、主剤搬送ホース56を介して前記主剤タンク64に連結されるとともに、添加剤搬送ホース57によって添加剤タンク65に連結されている。
【0007】
また、合流部55の放出側には混合手段としてのスタティックミキサー54が連結されており、スタティックミキサー54の放出側には、スプレーガン52に塗料を供給するための前記供給ホース53が連結されている。
【0008】
次に、主剤搬送ホース56及び添加剤搬送ホース57の途上にはそれぞれ、圧送式ポンプ62、63が配置されているとともに、圧送式ポンプ62、63と合流部55間にはそれぞれ、流量計60、61が配置され、更に、流量計60、61と合流部55間にはそれぞれ、バルブ58、59が配置されている。そして、バルブ58、59を開放して圧送式ポンプ62、63を作動させることで、主剤タンク64内の主剤と、添加剤タンク65内の添加材を、合流部55で合流させつつ合流部を通過させながらスタティックミキサー54に送り出すことを可能にしている。
【0009】
即ち、図5に示す供給システムで、主剤と添加剤を混合してスプレーガン52に供給する場合には、主剤用バルブ58を開放した状態で、主剤用流量計60で主剤の容量を監視しながら主剤用ポンプ62を駆動することで適量の主剤を、合流部55を通過させながらスタティックミキサー54に送り出す。そして、それとともに、添加剤用バルブ59を開放した状態で、添加剤用流量計61で添加剤の容量を監視しながら添加剤用ポンプ63を駆動することで適量の添加剤を、合流部55を通過させながらスタティックミキサー54に送り出す。そうすると、主剤と硬化剤は、最適な容量と配合比で、合流部55で合流しつつ合流部を通過してスタティックミキサー54に送りだされた後に、スタティックミキサー54内で混合されて混合塗料に生成されながら、供給ホース53を通ってスプレーガン52に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2009-254982号公報
【文献】特開2009-233631号公報
【文献】特開2006-212604号公報
【文献】特開2004-008844号公報
【文献】特開2001-310143号公報
【文献】特開2000-135454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、主剤に硬化剤を混合して混合塗料を生成する場合を例にすると、一般的に、主剤に対する硬化剤の配合比率は、10対1、4対1のようにごく少量である。そのために前述した従来のシステムでは、前述したように、スタティックミキサー54に送り出される主剤及び硬化剤の容量を流量計60、61により計測することで、主剤と硬化剤の配合比を維持しながら、スタティックミキサー54内で混合塗料を生成するのが一般的である。
【0012】
このとき、例えば手動のスプレーガンを用いて手吹きする場合のように連続して塗料を吐出させて塗装を行う場合には特に問題は生じないが、塗装ロボット等の自動機を用いて、スプレーガンのオンとオフを繰り返してワークの塗装を行う場合には、主剤と硬化剤との配合比が一定せずにずれてしまうことがある。
【0013】
また、塗装ロボット等の自動機で塗装を行う場合には、塗装を均一に行うためには、スプレーガンに供給される塗料の圧力は一定でなければならないが、前述した従来の供給システムでは、スタティックミキサー等の混合手段内で多液混合塗料を生成しながらこの生成した混合塗料をスプレーガンに供給するため、オンオフ時のスプレーガンに供給される塗料の圧力が、塗料の供給を継続している場合の塗料の圧力と異なってしまうことがあり、この場合には塗装面にムラが生じてしまう恐れがある。
【0014】
更に、複数の液をスタティックミキサー等の混合手段内で混合して多液混合塗料を生成しながらスプレーガンに供給する方法では、特にスプレーガンのオンオフによって塗料の供給が停止する場合には、スタティックミキサー等の混合手段内における確実な混合が達成できないという問題点も指摘できる。
【0015】
また、圧送式のポンプを用いて主剤や添加剤を合流部に供給する場合には、供給する主剤、添加剤の容量や配合比を維持するために、前述したように流量計を用いることが行われるが、この場合には、防爆仕様の流量計を用いる必要があるため、コストが上がってしまうという問題点も指摘されていた。
【0016】
更に、前述した従来の供給システムのように、スタティックミキサーで混合しながら塗料をスプレーガンに供給する場合には、スプレーガンの数を増加させる場合には、それに応じてスタティックミキサーや合流部を増やす必要があるために、それによってもコストが上がってしまうという問題点が指摘できる。
【0017】
そこで本発明は、多液混合塗料によるワークの塗装において、確実な配合比を維持しながら多液の混合を確実に行うことができるとともに、スプレーガンに供給する塗料の吐出量を一定に維持することが可能な多液混合塗料の供給方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の多液混合塗料の供給方法は、
複数の液を混合して多液混合塗料を生成して、該生成した多液混合塗料を1又は複数のスプレーガンに供給するための多液混合塗料の供給方法であって、
多液混合塗料を生成するための液を収容する複数の収容部と、
供給ホースを介して前記収容部のそれぞれが連結されて、収容部内の液を合流させて通過させるためのマニホールドと、
前記マニホールドに連結された、マニホールド内で合流された液を混合するスタティックミキサーと、
塗料充填用ホースを介して前記スタティックミキサーに連結された複数個のメインシリンジと、
前記塗料充填用ホースの途上に配置された塗料充填用バルブと、
供給ホースの途上に配置した、複数の液をそれぞれ前記メインシリンジ側に送り出すことで、メインシリンジ内に多液混合塗料を貯留させるためのポンプと、を具備し、
前記メインシリンジそれぞれ、
先端部が閉鎖された円筒状のシリンジ本体と、該シリンジ本体内に進退移動自在に挿設されたピストンと、該ピストンに連結されたピストンロッドと、前記シリンジ本体の先端部に形成された、塗料供給バルブを介して、スプレーガンに多液塗料を供給するための塗料供給ホースが連結される塗料吐出口と、前記ピストンに形成された充填口と、前記ピストンロッド内に形成された、前記充填口に連通した充填路と、を具備するとともに、
前記ピストンロッド作動板が取り付けられ、該作動板は、モーターの軸に連結されたボールネジに螺合された可動ベースに固定され、モーターの駆動でボールネジを回動し、可動ベースを往復移動することで、作動板を介してピストンロッドを移動させ、ピストンを同時に往復移動させることを可能にした、多液混合塗料の供給システムを用いて、
前記塗料充填用バルブを開放するとともに前記塗料供給用バルブを閉鎖し、その状態で、ポンプを駆動することで、前記複数の収容部内の液を、マニホールド内を通過させながらスタティックミキサーに送り出すとともに、それぞれのメインシリンジのピストンを後方側に移動させてピストン本体の内部を負圧にすることで、スタティックミキサーに送り出された液を、スタティックミキサー内で混合して多液混合塗料を生成しながらメインシリンジのシリンジ本体内に充填し、
その後に、塗料充填用バルブを閉鎖し、塗料供給用バルブを開放し、その状態で、メインシリンジのピストンをシリンジ本体の先端側に移動することで、メインシリンジ内の多液混合塗料を、塗料供給ホースを介してスプレーガンに供給する、ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0020】
本発明の多液混合塗料の供給方法では、多液混合塗料をスプレーガンに供給するメインシリンジと、複数の液のそれぞれをメインシリンジ側に送り出すことで、メインシリンジ内に多液混合塗料を貯留させるためのポンプを具備しており、ポンプを駆動することで、メインシリンジ内に多液混合塗料を一旦貯留し、その後に、メインシリンジを駆動することで、メインシリンジ内に一旦貯留した多液混合塗料を、スプレーガンに供給することとしている。即ち、本発明では、従来のシステムのような、スタティックミキサー等の混合手段内で多液混合塗料を生成しながらこの生成した混合塗料をリアルタイムでスプレーガンに供給する方法とは異なり、ポンプを駆動することで多液混合塗料をメインシリンジに一旦貯留し、その後に、メインシリンジを駆動することでメインシリンジ内一旦貯留した多液混合塗料をスプレーガンに供給することとしている。
【0021】
そのために、塗装ロボット等の自動機を用いて、スプレーガンのオンとオフを繰り返してワークの塗装を行う場合でも、主剤と添加剤の混合比を一定に維持することが可能であるとともに、確実な混合を達成することができる。
【0022】
また、多液混合塗料をメインシリンジに一旦貯留した後に、貯留した塗料をスプレーガンに供給することとしているため、スプレーガンのオンオフ時においても、スプレーガンに供給される塗料の圧力を一定に維持することが可能であり、塗装面にムラガ生じてしまう恐れがないとともに、スプレーガンに供給する塗料の吐出量を一定に維持することが可能である。
【0023】
更に、多液混合塗料をメインシリンジに一旦貯留し、その後にメインシリンジからスプレーガンに供給することとしているために、スプレーガンの数を増加させた場合でも、メインシリンジ内に多液混合塗料を貯留させるためのポンプ等を増やす必要が無く、コストが上がることを防止することができる。
【0024】
従って、本発明では、多液混合塗料によるワークの塗装において、確実な配合比を維持しながら混合を確実に行うことができるとともに、スプレーガンに供給する塗料の吐出量を一定に維持することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の多液混合塗料の供給方法を実施するための多液混合塗料の供給システムのイメージを示した図である。
図2】本発明の多液混合塗料の供給方法を実施するための多液混合塗料の供給システムにおけるシリンジを説明するための図である。
図3】本発明の多液混合塗料の供給方法を実施するための多液混合塗料の供給システムにおけるメインシリンジの駆動方法を説明するための図である。
図4】本発明の多液混合塗料の供給方法を実施するための多液混合塗料の供給システムにおけるシリンジの他の構成を示す図である。
図5】従来の多液混合塗料の供給システムを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の多液混合塗料の供給方法を実施するための多液混合塗料の供給システムでは、多液混合塗料を複数のスプレーガンに供給する複数個のメインシリンジと、複数の液のそれぞれをメインシリンジ側に送り出すことで、メインシリンジ内に多液混合塗料を貯留させるためのポンプを具備している。そして、ポンプを駆動して、複数の液のそれぞれをメインシリンジ側に送り出すことで、メインシリンジ内に多液混合塗料を一旦貯留し、その後に、メインシリンジを駆動することで、メインシリンジ内に一旦貯留した多液混合塗料をスプレーガンに供給することとしている。
【0027】
ここで、前記メインシリンジの手前側にスタティックミキサー等の混合部を配置し、複数の液を、それぞれメインシリンジ側に送り出すとともに、送り出している複数の液を混合部内で混合しながらメインシリンジに充填することで、メインシリンジ内に多液混合塗料を一旦貯留することとするとよく、これにより、容易にメインシリンジ内に多液混合塗料を貯留することが可能となる。
【0028】
また、複数の液を送り出すためのポンプの形態は特に限定されないが、シリンジポンプやダイヤフラムポンプを用いるとよく、送り出す液によって、シリンジポンプやダイヤフラムポンプを使い分けても良い。そして、特にシリンジポンプを用いた場合には、定量を送り出すことができるために、圧送式のポンプを用いた従来のシステムと異なり、流量計を用いる必要が無くなり、コストを抑えることが可能となる。
【0029】
また、メインシリンジは、先端部が閉鎖された円筒状のシリンジ本体と、シリンジ本体内に進退移動自在に挿設されたピストンと、ピストンに連結されたピストンロッドを具備し、シリンジ本体の先端部に、先端にスプレーガンが連結される塗料供給ホースの基端部が連結される塗料吐出口が形成され、ピストンに塗料充填口が形成されるとともに、塗料充填口に連通した塗料充填路がピストンロッド内に形成された構成にするとよく、これにより、メインシリンジ内への混合塗料の充填を容易に行うことが可能であるとともに、充填した塗料をスプレーガンへ供給するに際しては、確実に定量の塗料を供給することが可能である。
【0032】
そして、このように構成される多液塗料の供給システムを用いた本発明の多液塗料の供給方法では、ポンプを駆動することで、複数の液のそれぞれをメインシリンジ側に送り出すことで、メインシリンジ内に多液混合塗料を一旦貯留する。そして次に、メインシリンジを駆動することで、メインシリンジ内に一旦貯留した多液混合塗料をスプレーガンに供給する。
【実施例1】
【0033】
本発明の多液混合塗料の供給方法の実施例に用いる多液混合塗料の供給システム(以下単に「本実施例に用いる塗料供給システム」と言う。)について図面を参照して説明すると、図1は、本実施例に用いる塗料供給システムの全体構成を説明するためのイメージ図であり、図において、36はスプレーガンであり、35はスプレーガン36に多液塗料を供給するための塗料供給ホースである。
【0034】
そして、本実施例に用いる塗料供給システム1では、2個のスプレーガンを備え、複数の液を混合して生成した多液混合塗料を、2個のスプレーガンに供給するシステムとしている。但し、本発明の塗料供給システムでは、必ずしも2個のスプレーガンに塗料を供給するシステムに限定されるものではなく、3個以上のスプレーガンに塗料を供給するシステムとしてもよい。
【0035】
次に図において2、7、12は、本実施例に用いる塗料供給システムで供給する多液混合塗料を生成するための液を収容した収容部であり、本塗料供給システムではタンクとしている。そして、2が主剤を収容した主剤タンク、7が硬化剤を収容した硬化剤タンク、及び12が希釈用シンナーを収容した希釈用シンナータンクである。即ち、塗料供給システム1は、主剤、硬化剤及び希釈用シンナーの3液を混合した3液混合塗料をスプレーガンに供給するシステムとしている。
【0036】
但し、本実施例に用いる供給システムでは、多液混合塗料を生成するための液の種類や数は特に限定されない。従って、2液を混合する場合でもよく、あるいは、4液以上を混合する場合でもよい。また、収容部2、7、12は必ずしもタンクである必要はなく、パウチのような袋状のものでもよい。
【0037】
次に、図1において、22は3液を混合して3液混合塗料を生成するための混合部であり、21は、3液を合流させて通過させる合流部である。そして、本実施例では、合流部としてマニホールドを用い、混合部としてスタティックミキサーを用いている。即ち、本実施例の塗料供給システムでは、マニホールド21内を介して、主剤タンク2、硬化剤タンク7及び希釈用シンナータンク12がスタティックミキサー22に連結されており、主剤タンク2内の主剤、硬化剤タンク7内の硬化剤、及び希釈用シンナータンク12内の希釈用シンナーは、マニホールド21内で合流しつつマニホールド21を通過してスタティックミキサー22内に供給され、スタティックミキサー22を通過する過程で混合されて、3液混合塗料が生成されることとしている。但し、混合部は、必ずしもスタティックミキサーにする必要はなく、複数の液を混合可能な手段であればいずれを用いても良い。
【0038】
ここで、3液を混合する方法について説明すると、前記主剤タンク2は、主剤供給用ホース3によって前記マニホールド21における主剤用バルブ5に連結されており、主剤供給用ホース3の途上にはダイヤフラムポンプ4が配置されている。そしてこれにより、主剤用バルブ5を開放した状態でダイヤフラムポンプ4を駆動することで、主剤タンク2内の主剤は、マニホールド21内を通過してスタティックミキサー22内に送り出される。但し、必ずしもダイヤフラムポンプを用いる必要はなく、シリンジポンプ等のその他のポンプを用いてもよい。
【0039】
なお、図において6は主剤循環用ホースである。即ち、本実施例においては、前記主剤用バルブ5として三方弁を用いて、主剤をスタティックミキサー22に送り出すときは、三方弁としての主剤用バルブ5によって主剤供給用ホース3とマニホールド21を連結させ、主剤をスタティックミキサー22に送り出さないときには、主剤用バルブ5によって主剤供給用ホース3とマニホールド21の連結を遮断して、主剤供給用ホース3を主剤循環用ホース6に連結し、主剤タンク2内の主剤を、主剤供給用ホース3、主剤供給用ポンプ4、主剤用バルブ5及び主剤循環用ホース6を介して、主剤タンク2に循環させることとしている。そしてこれによって、主剤をスタティックミキサー22に送り出さないときに、主剤に含まれるパール等の骨材が主剤タンク2の底部に沈殿してしまうことを防止している。但し、必ずしも主剤循環用ホース6は必要なものでは無く、例えば、主剤が骨材を含まない塗料である場合等、スタティックミキサー22に送り出さないときでも主剤を循環させる必要が無いときには、主剤循環用ホース6は不要である。
【0040】
次に、前記硬化剤タンク7は、硬化剤供給用ホース8によって前記マニホールド21における硬化剤供給用バルブ11に連結されている。即ち、硬化剤タンク7内には硬化剤供給用ホース8の基端が位置し、硬化剤供給用ホース8の先端は前記マニホールド21における硬化剤供給用バルブ11に連結されている。
【0041】
また、硬化剤供給用ホース8の途上には、硬化剤タンク7内の硬化剤をスタティックミキサー22に供給するためのポンプとして、硬化剤供給用のシリンジ9が配置されている。即ち、硬化剤供給用ホース8は、硬化剤供給用のシリンジ9と硬化剤供給用バルブ11間の部分と、硬化剤供給用のシリンジ9と硬化剤供給タンク7間の部分とを有している。更に、硬化剤供給用ホース8における硬化剤供給用のシリンジ9と硬化剤供給タンク7間の部分には、硬化剤充填用バルブ10が配置されている。
【0042】
ここで、図2を参照して、前記硬化剤供給用のシリンジ9について説明すると、図2は前記硬化剤供給用のシリンジ9を説明するための図であり、図において9が硬化剤供給用のシリンジである。そして図2において、硬化剤供給用のシリンジ9は、シリンジ本体23を有しており、このシリンジ本体23は、先端を閉鎖した円筒状としいるとともに、先端部には塗料吐出口が形成され、塗料吐出口には、前記硬化剤供給用バルブ11に連結された硬化剤供給用ホース8が連結されている。
【0043】
また、シリンジ本体23内には、進退移動自在にしてピストン24が挿設されており、このピストン24における反塗料吐出口側にはピストンロッド25が連結されている。
【0044】
更に、ピストンロッド25の内部には充填路26が形成され、前記ピストン24には、充填路26に連続した充填口27が形成されている。そして、充填路26には、前記硬化剤充填用バルブ10を介して、基端が硬化剤タンク7内に配置されている硬化剤供給用ホース8が連結されている。
【0045】
そして、この構成により、硬化剤充填用バルブ10を開放し、硬化剤供給用バルブ11を閉鎖した状態で、ピストン24をシリンジ本体23の後方側に移動し、シリンジ本体23の内部を負圧にすると、硬化剤供給用ホース8、硬化剤充填用バルブ10、充填路26及び充填口27を介して、硬化剤タンク7内の硬化剤をシリンジ本体23内に充填することが可能となる。
【0046】
そして、シリンジ本体23内に硬化剤を充填してある状態において、硬化剤充填用バルブ10を閉鎖し、硬化剤供給用バルブ11を開放した状態で、ピストン24をシリンジ本体23の先端側に押し込んでいくことで、シリンジ本体23内の硬化剤を、マニホールド21内を通過させてスタティックミキサー22に送り出すことが可能である。
【0047】
なおここで、ピストン24を移動するための機構について説明すると、図2において、本実施例においては、前記ピストンロッド25に作動板28が取り付けられており、作動板28は、ボールネジ29に螺合しており、このボールネジ29は、駆動手段としてのモーター30の軸に連結されている。そして、この構成により、モーター30を駆動し、ボールネジ29を回動することで、ボールネジ29に沿って作動板28を定速で往復移動し、それにより、ピストンロッド25を介して、ピストン24をシリンジ本体23内で進退自在としている。
【0048】
なお、硬化剤タンク7内の硬化剤をスタティックミキサー22に送り出すためのポンプは、いずれのポンプを用いてもよく、必ずしもシリンジポンプを用いる必要はない。従って、例えばダイヤフラムポンプ等を用いてもよい。
【0049】
また、シリンジポンプを用いる場合でも、必ずしも前述した構成のシリンジを用いる必要はない。従って、充填路26を有さないピストンロッド25及び充填口27を有さないピストン24を用いて、シリンジ本体23の先端からシリンジ本体23内に硬化剤を充填することとしてもよい。そしてこの場合には、例えば、前記主剤用バルブ5と同様に、硬化剤供給用バルブ11として三方弁を用いるとともに、硬化剤充填用バルブ10を無くし、硬化剤供給用ホース8における硬化剤供給用のシリンジ9と硬化剤供給タンク7間の部分の先端を、硬化剤供給用バルブ11に連結し、硬化剤供給用バルブ11の切り替えにより、硬化剤供給用のシリンジ9への硬化剤の充填とシリンジ本体23内の硬化剤のスタティックミキサー22への送り出しを行うこととすると良い。
【0050】
次に、前記希釈用シンナータンク12は、希釈用シンナー供給用ホース13によって前記マニホールド21における希釈用シンナー供給用バルブ16に連結されている。即ち、希釈用シンナータンク12内には希釈用シンナー供給用ホース13の基端が位置しており、希釈用シンナー供給用ホース13先端は、前記マニホールド21における希釈用シンナー供給用バルブ16に連結されている。
【0051】
また、希釈用シンナー供給用ホース13の途上には、希釈用シンナータンク12内の希釈用シンナーをスタティックミキサー22に供給するための希釈用シンナー供給用のシリンジ14が配置されている。即ち、希釈用シンナー供給用ホース13は、希釈用シンナー供給用のシリンジ14と希釈用シンナー供給用バルブ16と間の部分と、希釈用シンナー供給用のシリンジ14と希釈用シンナータンク12と間の部分とを有している。更に、希釈用シンナー供給用ホース13における希釈用シンナー供給用のシリンジ14と希釈用シンナー供給タンク12間の部分には、希釈用シンナー充填用バルブ15が配置されている。
【0052】
なお、希釈用シンナー供給用のシリンジ14の構成は前述の硬化剤供給用のシリンジ9と同様であり、先端を閉鎖した円筒状のシリンジ本体23の先端に塗料吐出口が形成され、この塗料吐出口に、希釈用シンナー供給用バルブ16に連結された希釈用シンナー供給用ホース13が連結され、シリンジ本体23内には、進退移動自在にしてピストン24が挿設され、ピストン24にはピストンロッド25が連結されている。また、ピストンロッド25の内部には充填路26が形成され、ピストン24には、充填路26に連続した充填口27が形成され、充填路26には、希釈用シンナー充填用バルブ15を介して基端が希釈用シンナータンク12内に配置されている希釈用シンナー供給用ホース13が連結されている。
【0053】
更に、図2に示すように、ピストンロッド25には、モーター30の軸に連結されたボールネジ29に螺合した作動板28が取り付けられ、モーター30を駆動し、ボールネジ29を回動することで、ボールネジ29に沿って作動板28を定速で往復移動し、それにより、ピストンロッド25を介して、ピストン24をシリンジ本体23内で進退自在としている。
【0054】
そして、この構成により、希釈用シンナー充填用バルブ15を開放し、希釈用シンナー供給用バルブ16を閉鎖した状態で、ピストン24をシリンジ本体21の後方側に移動し、シリンジ本体23の内部を負圧にすると、希釈用シンナー供給用ホース13、希釈用シンナー充填用バルブ15、充填路26及び充填口27を介して、希釈用シンナータンク12内の希釈用シンナーをシリンジ本体23内に充填することが可能となる。
【0055】
そして、シリンジ本体23内に希釈用シンナーを充填してある状態において、希釈用シンナー充填用バルブ15を閉鎖し、希釈用シンナー供給用バルブ16を開放し、ピストン24をシリンジ本体23の先端側に押し込んでいくことで、シリンジ本体23内の希釈用シンナーを、マニホールド21内を通過させてスタティックミキサー22に送り出すことが可能である。
【0056】
従ってこれにより、硬化剤用シリンジ9に硬化剤を充填し、希釈用シンナー用シリンジ14に希釈用シンナーを充填した状態において、主剤供給用ポンプ4を駆動するとともに、硬化剤用シリンジ9及び希釈用シンナー用シリンジ14におけるピストン24をシリンジ本体23の先端側に押し込んでいくことで、主剤、硬化剤及び希釈用シンナーを、マニホールド21内で合流させつつマニホールド21を通過させてスタティックミキサー22内に送り出し、スタティックミキサー22を通過する過程で、混合して3液混合塗料を生成することが可能となる。
【0057】
なお、硬化剤をスタティックミキサー22に送り出すためのポンプの場合と同様に、希釈用シンナーをスタティックミキサー22に送り出すためのポンプも、必ずしもシリンジポンプを用いる必要はなく、いずれのポンプを用いてもよく、例えばダイヤフラムポンプ等を用いてもよい。
【0058】
また、硬化剤をスタティックミキサー22に送り出すためのポンプの場合と同様に、希釈用シンナーをスタティックミキサー22に送り出すポンプとしてシリンジポンプを用いる場合でも、必ずしも前述した構成のシリンジを用いる必要はない。従って、充填路26を有さないピストンロッド25及び充填口27を有さないピストン24を用いて、シリンジ本体23の先端からシリンジ本体23内に希釈用シンナーを充填することとしてもよい。そしてこの場合は、例えば、前記硬化剤供給用バルブ11と同様に、希釈用シンナー供給用バルブ16として三方弁を用いるとともに、希釈用シンナー充填用バルブ15を無くし、希釈用シンナー供給用ホース13における希釈用シンナー供給用のシリンジ14と希釈用シンナー供給タンク12間の部分の先端を、希釈用シンナー供給用バルブ16に連結し、希釈用シンナー供給用バルブ16の切り替えにより、希釈用シンナー供給用のシリンジ14への希釈用シンナーの充填とシリンジ本体23内の希釈用シンナーのスタティックミキサー22への送り出しを行うこととすると良い。
【0059】
次に、図において17は、洗浄用シンナーを貯蔵した洗浄用シンナータンクであり、この洗浄用シンナータンク17は、洗浄用シンナー供給用ホース18によって前記マニホールド21における洗浄用シンナー供給用バルブ20に連結されている。即ち、洗浄用シンナータンク17内には洗浄用シンナー供給用ホース18の基端が位置しており、洗浄用シンナー供給用ホース18先端は前記マニホールド21における洗浄用シンナー供給用バルブ20に連結されている。
【0060】
また、洗浄用シンナー供給用ホース18の途上には、洗浄用シンナータンク17内の洗浄用シンナーをマニホールド21に供給するための洗浄用シンナー供給用の圧送ポンプ19が配置されている。即ち、洗浄用シンナー供給用ホース18は、洗浄用シンナー供給用の圧送ポンプ19と洗浄用シンナー供給用バルブ20間の部分と、洗浄用シンナー供給用の圧送ポンプ19と洗浄用シンナータンク17間の部分とを有している。
【0061】
そしてこれにより、主剤供給用バルブ5、硬化剤供給用バルブ11及び希釈用シンナー供給用バルブ16によって、主剤供給用ホース3、硬化剤供給用ホース8及び希釈用シンナー供給用ホース13とマニホールド21の連結を遮断し、洗浄用シンナー供給用バルブ20を開放した状態で、洗浄用シンナー供給用の圧送ポンプ19を駆動することで、マニホールド21及びスタティックミキサー22に洗浄用シンナーを供給して、マニホールド21及びスタティックミキサー22内の洗浄を行うことを可能としている。
【0062】
なお、マニホールド21は単に、主剤、硬化剤及び希釈用シンナーの3液を受け入れ、この受け入れた3液をスタティックミキサー22に供給するための回路であり、3液を受け入れて通過させつつスタティックミキサー22に供給することが可能であればよく、特に構造等は限定されない。
【0063】
次に、図において31は、スタティックミキサー22内で生成された3液混合塗料を一旦貯留し、その後に、一旦貯留した3液混合塗料をスプレーガンに供給するためのメインシリンジである。即ち、本実施例に用いる塗料供給システムでは、多液を、スタティックミキサーで混合しながらリアルタイムでスプレーガンに供給する従来の方法と異なり、スタティックミキサーで生成した3液混合塗料をメインシリンジに充填して一旦貯留し、その後に、一旦貯留しているメインシリンジ31内の3液混合塗料をスプレーガンに供給する方法を採用している。
【0064】
そして、前述したように本実施例に用いる塗料供給システムでは、2個のスプレーガンを備えているために、メインシリンジ31も2個備え、各メインシリンジ31とスプレーガン36を塗料供給用ホース35で連結しており、これにより、スタティックミキサーで生成された3液混合塗料を2個のメインシリンジ31に充填し、その後に、それぞれのメインシリンジ31からスプレーガン36に、3液混合塗料を供給することとしている。
【0065】
即ち、前記スタティックミキサー22の吐出側には、塗料充填用ホース32の基端が連結されている。そして、2個のメインシリンジ31を有している本実施例に用いる塗料供給システムにおいては、塗料充填用ホース32は、スタティックミキサー22に連結した後に2系統に分岐し、分岐したそれぞれの先端側に前記メインシリンジ31が連結されている。
【0066】
また、スタティックミキサー22とメインシリンジ31間には、塗料充填用バルブ33が配置されており、本実施例に用いる塗料供給システムにおいて塗料充填用バルブ33は、塗料充填用ホース32における分岐した部分以降とメインシリンジ31間に配置されており、従ってメインシリンジ31と同様に2個としている。
【0067】
従って、前記塗料充填用ホース32は、塗料充填用バルブ33とスタティックミキサー22間の部分を構成する基端側塗料充填ホース32aと、塗料充填用バルブ33とメインシリンジ31間の部分を構成する先端側塗料充填ホース32bとを有している。
【0068】
また、前記メインシリンジ31の吐出側には塗料供給用バルブ34が配置されており、これにより、メインシリンジ31内への塗料の充填と、充填した塗料のスプレーガンへの供給の切り替えを可能にしている。
【0069】
なお、メインシリンジ31の構成は、前述の硬化剤供給用のシリンジ9や希釈用シンナー供給用のシリンジ14と同様であり、先端を閉鎖した円筒状のシリンジ本体23の先端に塗料吐出口が形成され、この塗料吐出口に、塗料供給用バルブ34を介して塗料供給用ホース35が連結されている。そして、シリンジ本体23内には、進退移動自在にしてピストン24が挿設され、ピストン24にはピストンロッド25が連結されている。また、ピストンロッド25の内部には充填路26が形成され、ピストン24には、充填路26に連続した充填口27が形成され、充填路26には、先端側塗料充填用ホース32bが連結されている。
【0070】
そして、この構成により、塗料充填用バルブ33を開放し、塗料供給用バルブ34を閉鎖した状態で、ピストン24をシリンジ本体23の後方側に移動し、ピストン本体24の内部を負圧にすると、スタティックミキサー22内で生成された3液混合塗料をメインシリンジ31のシリンジ本体23内に充填することができる。
【0071】
そして次に、メインシリンジ31内に3液混合塗料を充填した状態で、塗料充填用バルブ33を閉鎖し、塗料供給用バルブ34を開放し、ピストン24をシリンジ本体23の先端側に移動すると、メインシリンジ31内の3液混合塗料をスプレーガン36に供給することが可能となる。
【0072】
ここで、図3を参照して、メインシリンジ31におけるピストン24の進退方法について説明すると、図3において、駆動手段としてのモーター30の軸にボールネジ29が連結されており、このボールネジ29には、可動ベース37が螺合され、モーター30を駆動してボールネジ29を回動することで、ボールネジ29に沿って可動ベース37が往復移動することとしている。
【0073】
また、図において39は取付ベースであり、この取付ベース39にはガイド38が立設されており、このガイド38は前記可動ベース37を貫通し、これにより、可動ベース37はガイド38に沿って往復移動可能としている。
【0074】
一方、2個のメインシリンジ31におけるピストンロッド25にはそれぞれ、作動板28が取り付けられており、この作動板28は、前記可動ベース37に固定されている。そしてこれにより、モーター30の駆動でボールネジ29を回動し、それぞれの可動ベース37を往復移動することで、作動板28を介してピストンロッド25を移動させ、ピストン24をシリンジ本体23内で進退自在としている。
【0075】
そしてこのとき、本実施例に用いる塗料供給システムでは、それぞれのメインシリンジ31のピストンロッド25に取り付けられた作動板28が可動ベース37に固定され、これにより、モーター30を駆動することで、2個のメインシリンジのピストン24を同時に同じストロークで往復移動させることができるために、2個のスプレーガン31から同じ吐出量で精度よく多液混合塗料を吐出することが可能である。
【0076】
なお、硬化剤供給用シリンジ、希釈用シンナー供給用シリンジ及びメインシリンジは必ずしも、前述の方法にする必要は無く、硬化剤、希釈用シンナー、多液混合塗料を充填し、その後に供給可能であればいずれの構成としてもよい。例えば、図4に示す構成では、シリンジ本体23の先端側に充填口40と吐出口41を有し、前述のようなピストンロッド25の内部を介してシリンジ本体内に塗料を充填する方法と異なり、充填口40からシリンジ本体23内に直接に塗料等を充填し、吐出口41からシリンジ本体内23内の塗料用を吐出する構成としており、このような構成でもよい。
【0077】
次に、このように構成される塗料供給システム1を用いてスプレーガンに3液混合塗料を供給する方法について説明すると、本実施例の3液混合塗料の供給方法では、まず、前述の方法により、硬化剤供給用シリンジ9に必要量の硬化剤を充填するとともに、希釈用シンナー供給用シリンジ13に必要量の希釈用シンナーを充填する。
【0078】
即ち、硬化剤充填用バルブ10を開放し、硬化剤供給用バルブ11を閉鎖した状態で、硬化剤供給用のシリンジ9のピストン24をシリンジ本体21の後方側に移動してシリンジ本体23の内部を負圧にすることで、シリンジ本体23内に硬化剤を充填する。またそれとともに、希釈用シンナー充填用バルブ15を開放し、希釈用シンナー供給用バルブ16を閉鎖した状態で、希釈用シンナー供給用のシリンジ14のピストン24をシリンジ本体21の後方側に移動してシリンジ本体23の内部を負圧にすることで、シリンジ本体23内に希釈用シンナーを充填する。
【0079】
そして、その後に、主剤、硬化剤及び希釈用シンナーを、マニホールド21を通過させてスタティックミキサー22に送り出し、スタティックミキサー22内で混合して3液混合塗料を生成して、この生成した3液混合塗料を、メインシリンジ31に充填してメインシリンジ内で一旦貯留する。そして、その後に、メインシリンジ31に充填して貯留した3液混合塗料をスプレーガンに供給する。
【0080】
まず、3液混合塗料を生成してその生成した3液混合塗料をメインシリンジに充填する方法について説明すると、メインシリンジ31の準備として、塗料充填用バルブ33を開放し、塗料供給用バルブ34を閉鎖する。
【0081】
また、主剤用バルブ5としての三方弁を用いて、主剤供給用ホース3とマニホールド21を連結させ、硬化剤充填用バルブ10を閉鎖するとともに硬化剤供給用バルブ11を開放し、希釈用シンナー充填用バルブ15閉鎖するとともに希釈用シンナー供給用バルブ16を開放する。
【0082】
次にその状態で、主剤用ポンプ4を駆動して、主剤を、マニホールド21内を通過させながらスタティックミキサー22に送り出す。そしてそれとともに、硬化剤供給用シリンジ9と希釈用シンナー供給用シリンジ14のピストン24を先端側に移動して、シリンジ本体内の硬化剤及び希釈用シンナーを、マニホールド21内を通過させながら、スタティックミキサー22に送り出す。そして更に、メインシリンジ31のピストン24を後方側に移動させ、ピストン本体24の内部を負圧にする。そうすると、スタティックミキサー22に送り出された主剤、硬化剤及び希釈用シンナーは、スタティックミキサー22を通過するとともに、通過する過程で混合され、スタティックミキサー22内で3液混合塗料が生成される。そして、スタティックミキサー22を通過する過程で生成された3液混合塗料は、負圧となったメインシリンジ31のシリンジ本体24内に充填されていく。
【0083】
なお、この場合、メインシリンジ31内に確実な配合による適量の3液混合塗料を充填可能なように、硬化剤供給用シリンジ9及び希釈用シンナー供給用シリンジ14内に充填する硬化剤と希釈用シンナーの量を予め決めておくとともに、その充填量を達成するための、主剤供給用ポンプ4の駆動時間、硬化剤供給用シリンジ9及び希釈用シンナー供給用シリンジ14におけるピストン24の移動距離等を予め決めておく。従って、そのために、硬化剤供給用シリンジ9、希釈用シンナー供給用シリンジ14、メインシリンジ31のピストン24を駆動するためのモーター30や、主剤供給用ポンプ4等を、制御手段に接続しておき、制御手段によって、硬化剤供給用シリンジ9、希釈用シンナー供給用シリンジ14、メインシリンジ31のピストン24を駆動するためのモーター30や、主剤供給用ポンプ4等の駆動を制御するとよい。
【0084】
またその他、シリンジ本体の内径を異なった径にすることで、例えば、添加容量の少ない硬化剤を供給するシリンジ9の内径を小さくすることで、硬化剤供給用のシリンジ9のピストン24の移動距離を希釈用シンナー供給用のシリンジ14のピストン移動距離と異なった距離にすることなく、硬化剤供給用のシリンジ9への硬化剤の充填、及びスタティックミキサー22への供給を適量にしても良い。
【0085】
次に、このようにして3液混合塗料をメインシリンジ31に充填した後に、塗料充填用バルブ33を閉鎖し、塗料供給用バルブ34を開放する。そしてその状態で、メインシリンジ31のピストン24を、シリンジ本体23の先端側に移動する。そうすると、メインシリンジ31内の3液混合塗料が、塗料供給ホース35を介してスプレーガン36に供給される。
【0086】
このように、本実施例に用いる塗料供給システムでは、複数の液を混合して多液混合塗料を生成して吐出するための混合部にメインシリンジが連結され、混合部で生成された多液混合塗料は、メインシリンジに一旦貯留され、その後にメインシリンジからスプレーガンに供給することとしている。
【0087】
そのために、従来のシステムのような、多液混合塗料を生成しながら、生成している多液塗料をリアルタイムでスプレーガンに供給する方法とは異なり、塗装ロボット等の自動機を用いて、スプレーガンのオンとオフを繰り返してワークの塗装を行う場合でも、主剤と、硬化剤や希釈用シンナー等の添加剤の混合比を一定に維持することが可能である。
【0088】
また、混合部で混合された多液混合塗料をメインシリンジに充填するときに、多液混合塗料はメインシリンジ内で更に混合されるため、複数の液をスタティックミキサー等の混合手段内で混合しながらリアルタイムでスプレーガンに供給する方法と異なり、スプレーガンのオンオフによって塗料の供給が停止する場合でも、多液の確実な混合を達成することが可能である。
【0089】
また、プレーガンのオンオフ時においても、スプレーガンに供給される塗料の圧力を一定に維持することが可能であり、塗装面にムラガ生じてしまう恐れもない。
【0090】
また、3液混合塗料をスプレーガンに供給する手段として、シリンジポンプであるメインシリンジを用いて、このメインシリンジ31のピストン24をシリンジ本体23の先端側に移動することで、メインシリンジ31内の3液混合塗料をスプレーガン36に供給することとしているために、スプレーガンに供給する塗料の吐出量を一定に維持することが可能である。
【0091】
更に、混合部としてスタティックミキサーを用いているために、複数の液をスタティックミキサーに通過させるだけで、混合塗料を容易に生成することが可能となる。
【0092】
また、スタティックミキサーで生成した多液混合塗料をメインシリンジに一旦貯留し、メインシリンジからスプレーガンに供給することとしており、更に、硬化剤及び希釈用シンナーをスタティックミキサーに送り出すためのポンプとしてシリンジを用いているために、多液混合塗料を定量でスプレーガンに供給することができるとともに、硬化剤、希釈用シンナーも定量でスタティックミキサーに送り出すことができ、圧送式のポンプを用いた従来のシステムと異なり、流量計を用いる必要が無く、コストを抑えることが可能である。
【0093】
更にまた、スタティックミキサー内で生成した多液混合塗料を一旦メインシリンジに充填し、その後にメインシリンジからスプレーガンに供給することとしているために、スプレーガンの数を増加させた場合でも、スタティックミキサー等を増やす必要が無く、コストが上がることを防止することができる。
【0094】
また、本実施例では、スプレーガンの数に対応させてメインシリンジを有しているために、即ち、スプレーガンを2個にするとともに、メインシリンジの数も2個にしているために、2個のスプレーガンから同じ吐出量で精度よく多液混合塗料を吐出することができる。
【0095】
なお、前述の説明では、主剤、硬化剤、希釈用シンナーの3液を混合する場合について説明したが、前述したように本発明では、3液混合塗料に限定されず、2液を混合する場合でもよく、あるいは、4液以上を混合する場合でもよい。
【0096】
また、混合する液の種類も特に限定されず、必ずしも、主剤、硬化剤、希釈用シンナーを混合する場合には限定されない。
【0097】
更に、前述したように、スプレーガンの数は特に限定されず、3個以上でも良く、更にメインシリンジと塗料充填用バルブはスプレーガンの個数と同数備えるとよく、それにより、メインシリンジを同時に駆動することで、前述したように、2個のスプレーガンから同じ吐出量で精度よく多液混合塗料を吐出することができる。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明の多液塗料の供給方法では、複数の液を混合して生成する多液混合塗料を用いた塗装において、確実な配合比を維持しながら混合を確実に行うことができるとともに、スプレーガンに供給する塗料の吐出量を一定に維持することを可能にしているため、多液混合塗料を供給する塗料供給方法の全般に適用可能である。
【符号の説明】
【0103】
1 塗料供給システム
2 主剤タンク
3 主剤供給用ホース
4 主剤供給用ポンプ(ダイヤフラムポンプ)
5 主剤用バルブ
6 主剤循環用ホース
7 硬化剤タンク
8 硬化剤供給用ホース
9 硬化剤供給用シリンジ
10 硬化剤充填用バルブ
11 硬化剤供給用バルブ
12 希釈用シンナータンク
13 希釈用シンナー供給用ホース
14 希釈用シンナー供給用シリンジ
15 希釈用シンナー充填用バルブ
16 希釈用シンナー供給用バルブ
17 洗浄用シンナータンク
18 洗浄用シンナー供給用ホース
19 洗浄用シンナー供給用ポンプ
20 洗浄用シンナー供給用バルブ
21 マニホールド
22 スタティックミキサー
23 シリンジ本体
24 ピストン
25 ピストンロッド
26 充填路
27 充填口
28 作動板
29 ボールネジ
30 モーター
31 メインシリンジ
32 塗料充填用ホース
32a 基端側塗料充填用ホース
32b 先端側塗料充填用ホース
33 塗料充填用バルブ
34 塗料供給用バルブ
35 塗料供給用ホース
36 スプレーガン
37 可動ベース
38 ガイド
39 取付ベース
図1
図2
図3
図4
図5