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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-07
(45)【発行日】2022-09-15
(54)【発明の名称】内面研削装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 5/10 20060101AFI20220908BHJP
   B24B 5/12 20060101ALI20220908BHJP
   B24B 5/40 20060101ALI20220908BHJP
   B24B 41/04 20060101ALI20220908BHJP
   B24B 41/06 20120101ALI20220908BHJP
   B24B 47/14 20060101ALI20220908BHJP
   F16C 32/06 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
B24B5/10
B24B5/12
B24B5/40 Z
B24B41/04
B24B41/06 K
B24B47/14
F16C32/06 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2017148776
(22)【出願日】2017-08-01
(65)【公開番号】P2019025612
(43)【公開日】2019-02-21
【審査請求日】2020-06-03
(73)【特許権者】
【識別番号】391011102
【氏名又は名称】株式会社岡本工作機械製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100165423
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 雅久
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 暁
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 浩嗣
(72)【発明者】
【氏名】白井 雄一
【審査官】山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-079831(JP,A)
【文献】国際公開第2016/202729(WO,A1)
【文献】特開2001-157961(JP,A)
【文献】特表2018-518379(JP,A)
【文献】特開2002-361543(JP,A)
【文献】特開2000-218527(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0299806(US,A1)
【文献】特開2014-079832(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 5/10
B24B 5/12
B24B 5/40
B24B 41/04
B24B 41/06
B24B 47/14
F16C 32/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状のワークの穴の内周を研削する内面研削装置であって、
前記ワークを回転可能に水平に支持するワーク支持装置と、
前記ワークの一方の端部側に配設された第1の研削ユニットと、
前記ワークの他方の端部側に配設された第2の研削ユニットと、
前記第1の研削ユニットに回転可能に支持されて前記一方の端部側から前記ワークの前記穴に挿入される第1の研削といしと、
前記第2の研削ユニットに回転可能に支持されて前記他方の端部側から前記ワークの前記穴に挿入される第2の研削といしと、
前記ワークの回転軸方向に延在するよう基台の上部に固定された一対のレールと、を有し、
前記第1の研削ユニット及び前記第2の研削ユニットは、それぞれ前記一対のレールに沿ってスライド可能に前記一対のレール上に支持されていると共に前記ワークの径方向に水平移動可能であり、
前記ワーク支持装置は、前記一対のレールを跨ぐように前記基台の上部に固定されており、
前記一対のレールは、前記ワーク支持装置の下方を貫通するよう設けられて前記ワーク支持装置を支持せず一端側で前記第1の研削ユニットを支持し他端側で前記第2の研削ユニットを支持していることを特徴とする内面研削装置。
【請求項2】
前記一対のレールのそれぞれの上部には、前記第1の研削ユニット及び前記第2の研削ユニットをスライド可能に支えるV字状の溝が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の内面研削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒状のワークの内周をワークの両端側から研削する内面研削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、円筒状のワークの穴に研削といしを挿入し、研削といしによってワークの穴の内周を研削する内面研削装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、左右方向及び前後方向に移動可能な砥石台に搭載された1台の砥石主軸頭と、ワークが回転可能に装着されるワークホルダーを0~180度旋回可能なスイベル機構に搭載したワークステージと、を有する内面研削装置が開示されている。同文献の内面研削装置によれば、ワークホルダーを180度旋回させることにより、1台の砥石主軸頭でワークの両端側から内面研削加工を行うことができる。
【0004】
また例えば、特許文献2には、第1の砥石及び第2の砥石を有し、ワークである円筒体の一端から第1の砥石を挿入し、他端から第2の砥石を挿入して、円筒体の両端の円形状内面を研削する内面研削装置が開示されている。同文献の内面研削装置は、第1の砥石を支持して回転駆動する第1の駆動ユニットと、第2の砥石を支持して回転駆動する第2の駆動ユニットと、を有し、第1の駆動ユニット及び第2の駆動ユニットは、それぞれ独立して砥石の回転軸方向に移動可能に設けられている。
また、円筒体を保持して回転させるワーク保持ユニットは、円筒体の回転軸に対して垂直な水平方向に移動可能である。
【0005】
また、特許文献2に開示された内面研削装置のように、ワーク保持ユニットをワークの回転軸に対して垂直な水平方向に移動させる構成では、第1の駆動ユニットと第2の駆動ユニットの間にワーク保持ユニットを移動自在に支持するレールが配置されることになる。そのため、この種の内面研削装置においては、第1の駆動ユニット及び第2の駆動ユニットを移動自在に支持するレールは、ワーク保持ユニットが設けられる内面研削装置の中央部において分断されている。つまり、第1の駆動ユニット及び第2の駆動ユニットは、それぞれ別々のレールによって支持されている。
【0006】
また、特許文献2の図4等にも見られるように、従来技術の内面研削装置においては、ワークである円筒体は、一般に、転がり軸受を介して回転自在に支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2014-79832号公報
【文献】特開2002-361543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示された従来技術のように、ワークの一端側の穴の内周を研削した後にワークを反転して他端側の穴の内周を研削する方式の内面研削装置では、2つの穴について高精度な幾何公差を確保することが困難であった。具体的には、ワーク反転前後においてワークの回転軸に僅かなずれが生じる恐れがあり、ワークの回転軸にずれが生じると、ワーク両端の穴の軸がずれてしまい、両端の穴を所定の同心度及び同軸度範囲内に仕上げることができない。
【0009】
また、特許文献1に開示された従来技術では、ワークの両端側を同時に加工することができず、ワークの一方の端部側が研削された後に、他方の端部側が研削されるので、研削加工時間が長いという問題点もある。また、ワークを反転させる工程が必要であり、反転されたワークの位置合わせも煩雑であり時間を要する。
【0010】
これに対して、特許文献2に開示された従来技術の内面研削装置では、2つの砥石によってワーク両端の内周を同時に研削加工することができる。しかしながら、同文献の内面研削装置では、第1の駆動ユニット及び第2の駆動ユニットがワークの回転軸に垂直な切り込み方向に移動しないので、ワーク両端の穴をそれぞれ所定の寸法精度に仕上げることが難しい。
【0011】
詳しくは、同文献の内面研削装置では、第1の駆動ユニット及び第2の駆動ユニットはワークの回転軸に対して垂直な切り込み方向に移動せず、ワーク保持ユニットが移動することにより、ワーク両端の穴について同時に径方向への研削が行われる。そのため、ワークの回転軸に対して垂直な方向について、ワークの回転軸に対する第1の砥石及び第2の砥石の位置は、予め高精度に調整されなければならない。
【0012】
即ち、第1の砥石及び第2の砥石について、ワークの回転軸を基準とした径方向への偏心位置が予め高精度に設定されていないと、ワーク両端の穴の径がそれぞれ所定の寸法公差の範囲内になるよう高精度に研削加工をすることができない。具体的には、ワークの両端に同径の穴を研削加工する場合においては、第1の砥石及び第2の砥石について、ワークの回転軸を基準とした径方向への偏心量は高精度に一致していなければならない。ワークの回転軸に対する第1の砥石及び第2の砥石の偏心量が高精度に一致していないと、ワーク両端の穴を高精度に同じ寸法に仕上げることができない。
【0013】
また、ワークの両端に異径の穴を研削する場合においても同様に、ワークの回転軸に対する第1の砥石及び第2の砥石の回転軸の偏心量は、それぞれ、研削加工の都度、予め高精度に設定されていなければならない。
【0014】
また、従来技術の内面研削装置のように、ワークの両端側に設けられた2つの駆動ユニットがそれぞれ別々のレールによって支持されている構成では、2つの砥石の回転軸を高精度に一致させることが難しく、ワーク両端の穴を所定の幾何公差の範囲内となるよう高精度に仕上げることが困難であった。
【0015】
また、転がり軸受を介してワークを回転自在に支持する構成では、研削加工中に軸受の転動体が移動することによって、極僅かではあるが、ワークが径方向にずれてしまう。そのため、ワークの穴について、高精度な真円度及び円筒度を確保すること困難であるという問題点があった。
【0016】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ワークの両端の穴を同時に研削することができ、且つ高精度な寸法公差及び幾何公差を容易に確保することができる内面研削装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の内面研削装置は、円筒状のワークの穴の内周を研削する内面研削装置であって、前記ワークを回転可能に水平に支持するワーク支持装置と、前記ワークの一方の端部側に配設された第1の研削ユニットと、前記ワークの他方の端部側に配設された第2の研削ユニットと、前記第1の研削ユニットに回転可能に支持されて前記一方の端部側から前記ワークの前記穴に挿入される第1の研削といしと、前記第2の研削ユニットに回転可能に支持されて前記他方の端部側から前記ワークの前記穴に挿入される第2の研削といしと、前記ワークの回転軸方向に延在するよう基台の上部に固定された一対のレールと、を有し、前記第1の研削ユニット及び前記第2の研削ユニットは、それぞれ前記一対のレールに沿ってスライド可能に前記一対のレール上に支持されていると共に前記ワークの径方向に水平移動可能であり、前記ワーク支持装置は、前記一対のレールを跨ぐように前記基台の上部に固定されており、前記一対のレールは、前記ワーク支持装置の下方を貫通するよう設けられて前記ワーク支持装置を支持せず一端側で前記第1の研削ユニットを支持し他端側で前記第2の研削ユニットを支持していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の内面研削装置によれば、円筒状のワークを回転可能に支持するワーク支持装置と、ワークの一方の端部側に配設されて一方の端部側からワークの穴に挿入される第1の研削といしを回転可能に支持する第1の研削ユニットと、ワークの他方の端部側に配設されて他方の端部側からワークの穴に挿入される第2の研削といしを回転可能に支持する第2の研削ユニットと、を有し、第1の研削ユニット及び第2の研削ユニットは、それぞれワークの回転軸方向及び回転軸方向に対して垂直な方向に移動可能である。これにより、第1の研削といし及び第2の研削といしによって、ワーク両端の穴の内周を同時且つ高精度に研削することができる。具体的には、ワーク両端からの同時加工により、ワーク両端の穴は、高精度に同心度及び同軸度が確保され、独立してワークの径方向に移動する第1の研削といし及び第2の研削といしによって、それぞれ所望の寸法公差の範囲内に研削される。よって、研削加工時間が短縮されて研削加工の生産性が高められると共に、ワーク両端の穴について高精度な幾何公差が確保され、研削加工の品質が向上する。
【0019】
また、本発明の内面研削装置によれば、ワークの回転軸方向に延在する一対のレールを有し、第1の研削ユニット及び第2の研削ユニットは、前記レールに沿ってスライド可能に該レール上に支持されていても良い。これにより、第1の研削ユニット及び第2の研削ユニットは、高精度に真直度が確保された共通のレール上に支持されるので、ワークの回転軸に対して垂直な方向について、互いの位置が高精度に揃えられる。よって、ワーク両端の穴を所望の幾何公差の範囲内で高精度に研削することができる。
【0020】
また、本発明の内面研削装置によれば、ワーク支持装置は、ワークを支持して回転する回転体と、回転体を回転自在に支持する基体部と、を有し、回転体は、流体静圧軸受によって基体部に支持されていても良い。これにより、ワークの回転時の径方向へのずれが抑制され、高精度な真円度の穴加工が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態に係る内面研削装置の概略を示す斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る内面研削装置の正面図である。
図3】本発明の実施形態に係る内面研削装置の平面図である。
図4】本発明の実施形態に係る内面研削装置のワーク保持装置の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態に係る内面研削装置を図面に基づき詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る内面研削装置1の概略を示す斜視図である。なお、以下の説明では、作業者側となる正面から見て左右水平方向を、適宜「Z方向」と言い、前後水平方向を、適宜「X方向」と言う。
【0023】
図1に示すように、本願発明の内面研削装置1は、第1の研削といし31と第2の研削といし41とを有し、第1の研削といし31及び第2の研削といし41によって円筒状のワークWの両端からワークWの穴の内周を研削する装置である。
【0024】
内面研削装置1は、基台10と、ワーク支持装置20と、第1の研削ユニット30と、第2の研削ユニット40と、を有する。
基台10は、床面等に設置されワーク支持装置20、第1の研削ユニット30及び第2の研削ユニット40を支える台であり、Z方向に長く略直方体状に形成されている。
【0025】
基台10の上部には、第1の研削ユニット30及び第2の研削ユニット40を支える一対のレール11、12が設けられている。レール11及びレール12は、Z方向に延在しており、レール11、12の上部には、それぞれ略V字状の溝が形成されている。
【0026】
ワーク支持装置20は、ワークWを回転可能に支持する装置であり、一対のレール11、12を跨ぐように基台10の上部に固定されている。ワーク支持装置20によって支持されるワークWは、回転軸がZ方向を向く。即ち、円筒状のワークWは、その開口が左右方向を向くように支持される。また、ワーク支持装置20は、例えば、モータ等の回転駆動装置29を有する。ワーク支持装置20に支持されたワークWは、回転駆動装置29によって駆動されて回転する。
【0027】
第1の研削ユニット30は、第1の研削といし31を水平方向に移動可能に支持すると共に第1の研削といし31を回転駆動する装置である。第1の研削ユニット30は、基台10のレール11、12上に移動可能に支持されたスライドテーブル36を有する。スライドテーブル36の上部には、スライドテーブル33がX方向に移動可能に支持されている。スライドテーブル33の上部には、といし軸頭32が設けられており、といし軸頭32には、Z方向に延在するといし軸を介して第1の研削といし31が回転可能に支持されている。
【0028】
第2の研削ユニット40は、第2の研削といし41を水平方向に移動可能に支持すると共に第2の研削といし41を回転駆動する装置である。第2の研削ユニット40は、基台10のレール11、12上に移動可能に支持されたスライドテーブル46を有する。スライドテーブル46の上部には、スライドテーブル43がX方向に移動可能に支持されている。スライドテーブル43の上部には、といし軸頭42が設けられており、といし軸頭42には、Z方向に延在するといし軸を介して第2の研削といし41が回転可能に支持されている。
【0029】
なお、内面研削装置1には、図示されていない研削といしカバーや研削液供給装置等、他の装置が設けられていても良い。
【0030】
図2は、内面研削装置1の正面図である。図2に示すように、ワーク支持装置20は、基台10の上部に固定されており、基台10の左右方向の略中央に設けられている。第1の研削ユニット30は、ワーク支持装置20に支持されたワークWの一方の端部側、具体的には左側、に配設されている。第2の研削ユニット40は、ワーク支持装置20に支持されたワークWの他方の端部側、具体的には右側、に配設されている。
【0031】
第1の研削ユニット30及び第2の研削ユニット40は、それぞれレール11、12上をスライド可能に設けられている。これにより、第1の研削ユニット30及び第2の研削ユニット40をZ方向に移動させて、第1の研削といし31及び第2の研削といし41をそれぞれワークWの穴内に挿入及び抜去することができる。
【0032】
図3は、内面研削装置1の平面図である。図3に示すように、第1の研削ユニット30のスライドテーブル36は、円筒状ころ等の転動体を介してレール11、12に対してスライド可能に支持されている。スライドテーブル36は、駆動力伝達装置としてのボールねじ軸13に螺合する図示しないボールねじ用ナットに固定されている。ボールねじ軸13には、駆動装置としての、例えば、サーボモータ15が接続されており、サーボモータ15が駆動することにより、ボールねじ軸13が回転し、それによって、スライドテーブル36は、Z方向に移動する。
【0033】
第2の研削ユニット40のスライドテーブル46は、第1の研削ユニット30のスライドテーブル36と同様に、円筒状ころ等の転動体を介してレール11、12にスライド可能に支持されている。また、スライドテーブル46は、駆動力伝達装置としてのボールねじ軸14に螺合する図示しないボールねじ用ナットに固定されており、ボールねじ軸14に接続されている駆動装置としての、例えば、サーボモータ16によって駆動されて、Z方向に移動する。
【0034】
第1の研削ユニット30及び第2の研削ユニット40は、高精度に真直度が確保された共通のレール11及びレール12上に支持されている。これにより、第1の研削ユニット30及び第2の研削ユニット40は、X方向について、互いの位置が高精度に揃えられる。よって、ワークW(図2参照)両端の穴を所望の幾何公差の範囲内で高精度に研削することができる。
【0035】
また、第1の研削ユニット30及び第2の研削ユニット40は、上部が略V字状に形成されたレール11、12に支持されることにより、X方向のずれが抑制される。これにより、ワークWを高精度に研削することができる。
【0036】
第1の研削ユニット30は、スライドテーブル36の上部に設けられてX方向に延在するレール34、35を有する。レール34、35は、例えば、滑り式の直動ガイドであり、レール34、35の上部には、スライドテーブル33がX方向にスライド可能に設けられている。
【0037】
スライドテーブル33は、駆動力伝達装置としてのボールねじ軸37に螺合する図示しないボールねじ用ナットに固定されている。ボールねじ軸37の一端には、駆動装置としての、例えば、サーボモータ38が取り付けられており、サーボモータ38によって駆動されてボールねじ軸37が回転し、それによってスライドテーブル33は、X方向に移動する。
【0038】
また、第2の研削ユニット40は、スライドテーブル46の上部に設けられてX方向に延在するレール44、45を有する。レール44、45は、例えば、滑り式の直動ガイドであり、レール44、45の上部には、スライドテーブル43がX方向にスライド可能に設けられている。
【0039】
スライドテーブル43は、駆動力伝達装置としてのボールねじ軸47に螺合する図示しないボールねじ用ナットに固定されている。ボールねじ軸47には、駆動装置としての、例えば、サーボモータ48が取り付けられており、スライドテーブル43は、サーボモータ48によって駆動されて、X方向に移動する。
【0040】
上記のように、スライドテーブル33、43がX方向に移動することにより、第1の研削といし31及び第2の研削といし41をそれぞれ切り込み方向に移動させることができる。これにより、第1の研削といし31及び第2の研削といし41の回転軸を高精度に一致させることができ、ワークWの両端の穴を所定の幾何公差の範囲内になるように高精度に仕上げることができる。
【0041】
また、第1の研削といし31及び第2の研削といし41を独立してX方向に移動させることができるので、ワークWの回転軸に対する第1の研削といし31及び第2の研削といし41の回転軸の偏心量をそれぞれ個別に設定して研削することができる。よって、ワークWの両端に異径の穴を研削する場合においても、ワークWの穴を所定の寸法精度の範囲内で高精度に仕上げることができる。
【0042】
上記のように、第1の研削ユニット30及び第2の研削ユニット40は、それぞれX方向及びZ方向に移動可能である。これにより、内面研削装置1では、第1の研削といし31及び第2の研削といし41をそれぞれワークWの穴に挿入して、ワークWの左右両端から穴の内周を同時に研削することができる。そのため、従来技術の内面研削装置のように1つ研削といしによってワークWの穴の内周を片方ずつ研削する場合と比べて、研削加工時間を短縮することができる。
【0043】
また更に、第1の研削ユニット30及び第2の研削ユニット40が、それぞれX方向及びZ方向に移動可能であることにより、第1の研削といし31及び第2の研削といし41によって、ワークWの両端の穴の内周を高精度に研削することができる。
【0044】
具体的には、独立してワークWの径方向に移動する第1の研削といし31及び第2の研削といし41によって、ワークWの両端の穴は、高精度に同心度及び同軸度が確保され、それぞれ所望の寸法公差の範囲内に研削される。
【0045】
このように、内面研削装置1では、ワークWの両端からの同時加工により研削加工時間が短縮されて研削加工の生産性が高められると共に、ワークWの両端の穴について高精度な寸法公差及び幾何公差が確保され、研削加工の品質を向上させることができる。
【0046】
また、ワーク支持装置20は、ワークWの回転軸の傾きを調整可能に設けられても良い。これにより、第1の研削といし31及び第2の研削といし41の回転軸と、ワークWの回転軸と、の位置を微調整することができ、研削加工の精度を高めることができる。
【0047】
ワーク支持装置20の左右両側には、第1の研削といし31及び第2の研削といし41のドレッシングを行うドレッサ装置51、52が設けられている。具体的には、ドレッサ装置51は、ワーク支持装置20の左側で、第1の研削ユニット30とワーク支持装置20との間に設けられており、第1の研削といし31のドレッシングを行う。また、ドレッサ装置52は、ワーク支持装置20の右側で、第2の研削ユニット40とワーク支持装置20の間に設けられており、第2の研削といし41のドレッシングを行う。これにより、第1の研削といし31及び第2の研削といし41を良好な状態に保つことができ、研削の精度及び加工品質を維持することができる。
【0048】
また、2つのドレッサ装置51、52が設けられていることにより、第1の研削といし31及び第2の研削といし41を同時にドレッシングすることができ、ドレッシング作業の効率化を図ることができる。
【0049】
図4は、ワーク支持装置20の縦断面図である。図4に示すように、ワーク支持装置20は、ワークWを支持して回転する回転体21と、回転体21を回転自在に支持する基体部28と、を有する。
【0050】
回転体21は、略筒状に形成されており、回転体21の外周に設けられた略筒状の流体静圧軸受27によって、基体部28に対して回転自在に支持されている。
基体部28の左側には、例えば、深溝玉軸受等の軸受26を介してプーリ25が回転自在に支持されている。また、回転体21の左側の端部には、回転動力を伝達するための継手フランジ24が設けられている。継手フランジ24は、図示しないボルト及びピン等によって回転体21及びプーリ25に固定されている。
【0051】
プーリ25には、回転駆動装置29(図1参照)に取り付けられた図示しないベルト等が巻き掛けられている。回転駆動装置29が駆動することにより、プーリ25が回転して、継手フランジ24が回転し、これにより、回転体21が回転する。
【0052】
なお、前述のとおり、プーリ25が軸受26を介して基体部28に支持されることにより、プーリ25に巻き掛けられたベルトの張力を基体部28で受けることができる。また、継手フランジ24とプーリ25を固定するボルトやピン等の接続部には、穴とボルト等との間に弾性体からなるブッシュ等が設けられても良い。これにより、プーリ25に作用するベルトの張力や軸受26の転動体の移動によるプーリ25の径方向への僅かな振れをブッシュ等で吸収することができ、回転体21の径方向へのずれを抑制することができる。よって、高精度な研削加工が可能となる。
【0053】
流体静圧軸受27は、油供給孔27cを経由して流体静圧軸受27と回転体21との間に高圧の軸受油を供給する図示しない油供給手段を有する。また、流体静圧軸受27の左右両端近傍には、図示しない接触式のオイルシールが設けられている。該オイルシールによって、油供給手段から供給された軸受油が流体静圧軸受27と回転体21との間から漏れ出ないように軸受面の周囲が密封されている。
【0054】
前記油供給手段によって軸受油が供給されることにより、軸受面となる流体静圧軸受27と回転体21との間隙に軸受油の膜が形成され、該軸受油の膜によって回転体21が支持される。これにより、回転体21を滑らかに回転させることができると共に、回転体21の回転時の径方向へのずれが抑制され、高精度な真円度の穴加工が実現される。
【0055】
また、回転体21は、一方の端部側の外径が他方の端部側の外径よりも小さくなるよう段付き軸状に形成されている。具体的には、回転体21は、左端側に外径が小さい小径部21b、右端側に外径が大きい大径部21cを有する。
【0056】
そして、回転体21の小径部21b及び大径部21cに対応して、流体静圧軸受27の軸受面についても、左端側に内径が小さい小径部27a、右端側に内径が大きい大径部27bが形成されている。
【0057】
上記のように、回転体21が小径部21b及び大径部21cを有し、これに対応する軸
受面に小径部27a及び大径部27bが形成されていることにより、基体部28の流体静圧軸受27に回転体21を組み付ける作業が容易になる。
【0058】
また、回転体21が小径部21b及び大径部21cを有する段付き軸状に形成され、これに対応して流体静圧軸受27の内径も小径部27a及び大径部27bを有する段差状に形成されていることにより、流体静圧軸受27は、小径部27aと大径部27bの間の段差部で回転軸方向の荷重を支えることができる。即ち、流体静圧軸受27は、スラスト軸受としても機能する。これにより、ワークWの回転軸方向の振れを抑制することができ、高精度な研削加工が可能となる。
【0059】
ワーク支持装置20は、略環状に形成された一対の保持具22、23を有する。保持具22、23に形成された内径穴には、ワークWが挿入される。具体的には、保持具22、23は、ワークWの左端側から挿着され、保持具22は、ワークWの左端近傍の外径に嵌合し、保持具23は、ワークWの右端近傍の外径に嵌合する。ワークWの右端近傍に嵌合する保持具23の右端は、ワークW右側に形成されているフランジ部Wfの左側面に当接する。
【0060】
ここで、左側に設けられる保持具22の外周には、ワークWの中央側、即ち右側、に向かって外径が縮小された略円錐面状のテーパ外周面22aが形成されている。他方、右側に設けられる保持具23の外周には、ワークWの中央側、即ち左側、に向かって外径が縮小された略円錐面状のテーパ外周面23aが形成されている。
【0061】
これに対して、回転体21の左右両端近傍の穴の内周には、略円錐面状のテーパ内周面21aが形成されている。具体的には、回転体21の左端近傍のテーパ内周面21aは、回転体21の中央側、即ち右側、に向かって内径が縮小されており、回転体21の右端近傍のテーパ内周面21aは、回転体21の中央側、即ち左側、に向かって内径が縮小されている。
【0062】
保持具22、23は、ワークWがワーク支持装置20の回転体21に取り付けられた状態において、テーパ外周面22a、23aが回転体21のテーパ内周面21aに接するようにして回転体21の穴に嵌合する。
【0063】
そして、左側の保持具22は、例えば、ねじ60によって、ワークWの左側の端部に締め付けられる。これにより、ねじ60と、ワークWのフランジ部Wfと、によって挟まれるように、一対の保持具22、23がワークWのZ方向中央側に向かって締め付けられる。これにより、保持具22、23のテーパ外周面22a、23aは、回転体21のテーパ内周面21aに沿って移動し、テーパ内周面21aによって内径方向に押圧される。よって、ワークWは、保持具22、23によって内径方向に締め付けられて、回転体21に固定される。
【0064】
このように、テーパ内周面21aが形成された回転体21にテーパ外周面22a、23aを有する保持具22、23を嵌合させることによってワークWを回転体21に固定する構成により、ワークW及び回転体21の回転軸を高精度且つ容易に合せることができる。これにより、ワークWの回転軸と、ワーク支持装置20の回転体21と、を合わせるための芯出し作業が容易になり、作業効率を高めることができると共に、加工精度を向上させることができる。
【0065】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更実施が可能である。
【符号の説明】
【0066】
1 内面研削装置
10 基台
11、12 レール
20 ワーク支持装置
21 回転体
21a テーパ内周面
22、23 保持具
22a、23a テーパ外周面
27 流体静圧軸受
28 基体部
30 第1の研削ユニット
31 第1の研削といし
32 といし軸頭
40 第2の研削ユニット
41 第2の研削といし
42 といし軸頭
図1
図2
図3
図4