(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-07
(45)【発行日】2022-09-15
(54)【発明の名称】ゲル電解質用組成物
(51)【国際特許分類】
H01G 11/56 20130101AFI20220908BHJP
H01G 11/84 20130101ALI20220908BHJP
【FI】
H01G11/56
H01G11/84
(21)【出願番号】P 2017543576
(86)(22)【出願日】2016-09-29
(86)【国際出願番号】 JP2016078872
(87)【国際公開番号】W WO2017057602
(87)【国際公開日】2017-04-06
【審査請求日】2019-08-08
【審判番号】
【審判請求日】2021-09-07
(31)【優先権主張番号】P 2015193053
(32)【優先日】2015-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000108993
【氏名又は名称】株式会社大阪ソーダ
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【氏名又は名称】田中 順也
(72)【発明者】
【氏名】田渕 雅人
(72)【発明者】
【氏名】城 幸弘
(72)【発明者】
【氏名】加藤 諒
(72)【発明者】
【氏名】松尾 孝
【合議体】
【審判長】清水 稔
【審判官】山田 正文
【審判官】須原 宏光
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-175701(JP,A)
【文献】国際公開第2012/133786(WO,A1)
【文献】特開2004-182778(JP,A)
【文献】特開2014-179314(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G11/00-11/86
H01M10/052
H01M10/0565
H01M10/0568
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質塩と、エチレンオキシドユニットを有するポリエーテル共重合体とを含み、
前記ポリエーテル共重合体の重量平均分子量が30万~80万であり、
25℃での粘度が1~12Pa・s
(但し、8Pa・s以上を除く。)であるゲル電解質用組成物。
【請求項2】
前記ポリエーテル共重合体の固形分濃度が、前記ゲル電解質用組成物の全固形分の5~20質量%である、請求項1に記載のゲル電解質用組成物。
【請求項3】
前記ポリエーテル共重合体が、下記式(A)で示される繰り返し単位を0~89.9モル%と、
【化1】
[式中、Rは炭素数1~12のアルキル基または基-CH
2O(CR
1R
2R
3)である。R
1、R
2、及びR
3は、それぞれ独立に、水素原子または基-CH
2O(CH
2CH
2O)
nR
4である。R
4は、炭素数1~12のアルキル基または置換基を有してもよいアリール基である。nは、0~12の整数である。]
下記式(B)で示される繰り返し単位を99~10モル%と、
【化2】
下記式(C)で示される繰り返し単位を0.1~15モル%と、
【化3】
[式中、R
5はエチレン性不飽和基を有する基である。]
を含む、請求項1または2に記載のゲル電解質用組成物。
【請求項4】
前記ポリエーテル共重合体の分子量分布が、3.0~10.0である、請求項1~3のいずれか1項に記載のゲル電解質用組成物。
【請求項5】
前記電解質塩は、常温溶融塩を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のゲル電解質用組成物。
【請求項6】
前記電解質塩は、リチウム塩化合物を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のゲル電解質用組成物。
【請求項7】
電解質塩と、重量平均分子量が30万~80万であるエチレンオキシドユニットを有するポリエーテル共重合体とを混合して組成物を得る工程、及び
前記組成物に機械的せん断を加える工程
を備える、25℃での粘度が1~12Pa・s
(但し、8Pa・s以上を除く。)であるゲル電解質用組成物の製造方法。
【請求項8】
前記ポリエーテル共重合体が、下記式(A)で示される繰り返し単位を0~89.9モル%と、
【化1】
[式中、Rは炭素数1~12のアルキル基または基-CH
2O(CR
1R
2R
3)である。R
1、R
2、及びR
3は、それぞれ独立に、水素原子または基-CH
2O(CH
2CH
2O)
nR
4である。R
4は、炭素数1~12のアルキル基または置換基を有してもよいアリール基である。nは、0~12の整数である。]
下記式(B)で示される繰り返し単位を99~10モル%と、
【化2】
下記式(C)で示される繰り返し単位を0.1~15モル%と、
【化3】
[式中、R
5はエチレン性不飽和基を有する基である。]
を含む、請求項7に記載のゲル電解質用組成物の製造方法。
【請求項9】
正極と、負極との間に、請求項1~6のいずれか1項に記載のゲル電解質用組成物の硬化物を含むゲル電解質層を備える、電気化学キャパシタ。
【請求項10】
請求項1~6のいずれか1項に記載のゲル電解質用組成物を、正極及び負極の少なくとも一方の表面に塗布する工程と、
前記ゲル電解質用組成物に活性エネルギー線を照射し、前記ゲル電解質用組成物を硬化させてゲル電解質層を形成する工程と、
前記ゲル電解質層を介して、前記正極と前記負極を積層する工程と、
を備える、電気化学キャパシタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲル電解質用組成物に関する。さらに詳しくは、本発明は、塗工性、ゲル化特性、及び保液性に優れており、ゲル化後の膜強度が高く、さらに、電気化学キャパシタに対して優れた出力特性と、高い容量維持率を付与することができる、ゲル電解質用組成物に関する。さらに、本発明は、当該ゲル電解質用組成物の製造方法、当該ゲル電解質用組成物を用いた電気化学キャパシタ、及び当該電気化学キャパシタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池や電気化学キャパシタは、電気自動車(EV)やハイブリット自動車(HEV)等の主電源や補助電源として、または太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーの電力蓄積デバイスとして、開発が盛んに進められている。電気化学キャパシタとしては、電気二重層キャパシタ、ハイブリッドキャパシタ等が知られている。例えば電気二重層キャパシタ(シンメトリックキャパシタと呼ばれることがある)においては、正および負の両電極層に、活性炭のような比表面積の大きい材料が用いられる。該電極層と電解液との界面に電気二重層が形成され、酸化還元を伴わない非ファラデー反応による蓄電がなされる。電気二重層キャパシタは、一般に二次電池に比べて、出力密度が高く、急速充放電特性に優れている。
【0003】
電気二重層キャパシタの静電エネルギーJは、式:J=(1/2)×CV2で定義される。ここで、Cは静電容量、Vは電圧である。電気二重層キャパシタの電圧は2.7~3.3V程度と低い。そのために、電気二重層キャパシタの静電エネルギーは、二次電池の1/10以下である。
【0004】
また、例えばハイブリッドキャパシタ(アシンメトリックキャパシタと呼ばれることがある。)は、相互に異なる材料からなる正極層と負極層とをリチウムイオンを含む電解液中にセパレータを介して対向させたものである。このような構成にすると、正極層では酸化還元を伴わない非ファラデー反応による蓄電が、負極層では酸化還元を伴うファラデー反応による蓄電がそれぞれ成され、大きな静電容量Cを生み出すことができる。このため、ハイブリッドキャパシタは、電気二重層キャパシタに比べて大きなエネルギー密度が得られるであろうと期待されている。
【0005】
ところが、従来、電気化学キャパシタには、イオン導電性の点から、電解質として溶液状のものが用いられているため、液漏れによる機器の損傷の恐れがある。このため、種々の安全対策が必要であり、大型キャパシタ開発の障壁になっている。
【0006】
これに対して、例えば特許文献1には、有機高分子系物質などの固体電解質が提案されている。特許文献1においては、電解質として、液体ではなく固体の電解質を用いるため、液漏れ等の問題がなく安全性の点で有利である。ところが、イオン電導度が低くなるという問題があり、またセパレータを用いるため、静電容量も小さいという問題がある。
【0007】
また、例えば特許文献2には、イオン交換樹脂の塩を除去することで空隙を形成し、その空隙に電解液を充填した構成の電気化学キャパシタが提案されている。しかしながら、空隙を作製するために余計な工程が必要であり、製造も難しく、空隙に電解液を注入するためにもノウハウが必要となり、製造が非常に困難である。
【0008】
また、例えば特許文献3には、特定の有機高分子電解質を含むゲル電解質を用いた電気化学キャパシタが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2000-150308号公報
【文献】特開2006-73980号公報
【文献】特開2013-175701号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、本発明者等が検討を行ったところ、例えば特許文献3のようなゲル電解質を用いた電気化学キャパシタにおいても、ゲル電解質を形成する組成物の塗工性、ゲル化特性、保液性、さらに、ゲル化後の膜強度が不十分な場合があることを見出した。さらに、ゲル電解質には、電気化学キャパシタに対して優れた出力特性と、高い容量維持率を付与することも求められる。
【0011】
以上のような事情に鑑み、本発明は、塗工性、ゲル化特性、及び保液性に優れており、ゲル化後の膜強度が高く、さらに、電気化学キャパシタに対して優れた出力特性と、高い容量維持率を付与することができる、ゲル電解質用組成物を提供することを主な目的とする。さらに、本発明は、当該ゲル電解質用組成物の製造方法、当該ゲル電解質用組成物を用いた電気化学キャパシタ、及び当該電気化学キャパシタの製造方法を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、電解質塩と、エチレンオキシドユニットを有するポリエーテル共重合体とを含み、ポリエーテル共重合体の重量平均分子量が10万~100万であり、さらに25℃での粘度が1~12Pa・sであるゲル電解質用組成物は、塗工性、ゲル化特性、及び保液性に優れており、ゲル化後の膜強度が高く、さらに、電気化学キャパシタに対して優れた出力特性と、高い容量維持率を付与できることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0013】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 電解質塩と、エチレンオキシドユニットを有するポリエーテル共重合体とを含み、
前記ポリエーテル共重合体の重量平均分子量が10万~100万であり、
25℃での粘度が1~12Pa・sであるゲル電解質用組成物。
項2. 前記ポリエーテル共重合体の固形分濃度が、前記ゲル電解質用組成物の全固形分の5~20質量%である、項1に記載のゲル電解質用組成物。
項3. 前記ポリエーテル共重合体が、下記式(A)で示される繰り返し単位を0~89.9モル%と、
【化1】
[式中、Rは炭素数1~12のアルキル基または基-CH
2O(CR
1R
2R
3)である。R
1、R
2、及びR
3は、それぞれ独立に、水素原子または基-CH
2O(CH
2CH
2O)
nR
4である。R
4は、炭素数1~12のアルキル基または置換基を有してもよいアリール基である。nは、0~12の整数である。]
下記式(B)で示される繰り返し単位を99~10モル%と、
【化2】
下記式(C)で示される繰り返し単位を0.1~15モル%と、
【化3】
[式中、R
5はエチレン性不飽和基を有する基である。]
を含む、項1または2に記載のゲル電解質用組成物。
項4. 前記ポリエーテル共重合体の分子量分布が、3.0~10.0である、項1~3のいずれか1項に記載のゲル電解質用組成物。
項5. 前記電解質塩は、常温溶融塩を含む、項1~4のいずれか1項に記載のゲル電解質用組成物。
項6. 前記電解質塩は、リチウム塩化合物を含む、項1~5のいずれか1項に記載のゲル電解質用組成物。
項7. 電解質塩と、重量平均分子量が10万~100万であるエチレンオキシドユニットを有するポリエーテル共重合体とを混合して組成物を得る工程、及び
前記組成物に機械的せん断を加える工程
を備える、25℃での粘度が1~12Pa・sであるゲル電解質用組成物の製造方法。
項8. 前記ポリエーテル共重合体が、下記式(A)で示される繰り返し単位を0~89.9モル%と、
【化4】
[式中、Rは炭素数1~12のアルキル基または基-CH
2O(CR
1R
2R
3)である。R
1、R
2、及びR
3は、それぞれ独立に、水素原子または基-CH
2O(CH
2CH
2O)
nR
4である。R
4は、炭素数1~12のアルキル基または置換基を有してもよいアリール基である。nは、0~12の整数である。]
下記式(B)で示される繰り返し単位を99~10モル%と、
【化5】
下記式(C)で示される繰り返し単位を0.1~15モル%と、
【化6】
[式中、R
5はエチレン性不飽和基を有する基である。]
を含む、項7に記載のゲル電解質用組成物の製造方法。
項9. 正極と、負極との間に、項1~6のいずれか1項に記載のゲル電解質用組成物の硬化物を含むゲル電解質層を備える、電気化学キャパシタ。
項10. 項1~6のいずれか1項に記載のゲル電解質用組成物を、正極及び負極の少なくとも一方の表面に塗布する工程と、
前記ゲル電解質用組成物に活性エネルギー線を照射し、前記ゲル電解質用組成物を硬化させてゲル電解質層を形成する工程と、
前記ゲル電解質層を介して、前記正極と前記負極を積層する工程と、
を備える、電気化学キャパシタの製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ゲル電解質用組成物が、電解質塩と、エチレンオキシドユニットを有するポリエーテル共重合体とを含み、ポリエーテル共重合体の重量平均分子量が10万~100万であり、さらに25℃での粘度が1~12Pa・sであることから、塗工性、ゲル化特性、及び保液性に優れており、ゲル化後の膜強度が高く、さらに、電気化学キャパシタに対して優れた出力特性と、高い容量維持率を付与することができる。すなわち、本発明のゲル電解質用組成物を用いた電気化学キャパシタは、優れた出力特性と高い容量維持率を備えている。
【発明を実施するための形態】
【0015】
1.ゲル電解質用組成物
本発明のゲル電解質用組成物は、電解質塩と、エチレンオキシドユニットを有するポリエーテル共重合体とを含み、ポリエーテル共重合体の重量平均分子量が10万~100万であり、さらに、ゲル電解質用組成物の25℃での粘度が1~12Pa・sであることを特徴とする。なお、本発明のゲル電解質用組成物は25℃での粘度が1~12Pa・sであり、液状であるため、ゲル電解質用溶液ともいえる。後述の通り、ゲル電解質用組成物を硬化させることにより、電気化学キャパシタのゲル電解質として好適に使用することができる。以下、本発明のゲル電解質用組成物について、詳述する。
【0016】
エチレンオキシドユニットを有するポリエーテル共重合体としては、主鎖または側鎖に下記式(B)で示されるエチレンオキシドの繰り返し単位(エチレンオキシドユニット)を有する共重合体である。
【0017】
【0018】
当該ポリエーテル共重合体は、下記式(C)で示される繰り返し単位を有することが好ましい。
【0019】
【0020】
[式(C)中、R5はエチレン性不飽和基を有する基である。エチレン性不飽和基の炭素数は、通常、2~13程度である。]
【0021】
また、当該ポリエーテル共重合体は、下記式(A)で示される繰り返し単位を含んでいてもよい。
【0022】
【0023】
[式(A)中、Rは炭素数1~12のアルキル基または基-CH2O(CR1R2R3)である。R1、R2、及びR3は、それぞれ独立に、水素原子または基-CH2O(CH2CH2O)nR4である。R4は、炭素数1~12のアルキル基または置換基を有してもよいアリール基である。アリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。nは、0~12の整数である。]
【0024】
ポリエーテル共重合体としては、上記繰り返し単位(A)、上記繰り返し単位(B)、及び上記繰り返し単位(C)のモル比が、(A)0~89.9モル%、(B)99~10モル%、及び(C)0.1~15モル%であることが好ましく、(A)0~69.9モル%、(B)98~30モル%、及び(C)0.1~13モル%であることがより好ましく、(A)0~49.9モル%、(B)98~50モル%、及び(C)0.1~11モル%であることがさらに好ましい。
【0025】
なお、ポリエーテル共重合体において、上記繰り返し単位(B)のモル比が、99モル%を越えると、ガラス転移温度の上昇とオキシエチレン鎖の結晶化を招き、硬化後のゲル電解質のイオン伝導性を著しく悪化させる虞がある。一般にポリエチレンオキシドの結晶性を低下させることにより、イオン伝導性が向上することは知られているが、本発明のポリエーテル共重合体はこの点において格段に優れている。
【0026】
ポリエーテル共重合体は、ブロック共重合体、ランダム共重合体等、何れの共重合タイプでも良い。これらの中でも、ランダム共重合体が、よりポリエチレンオキシドの結晶性を低下させる効果が大きいため、好ましい。
【0027】
前述の式(A)、式(B)、式(C)の繰り返し単位(エチレンオキシドユニット)を有するポリエーテル共重合体は、例えば、下記式(1)、(2)及び(3)で示される単量体(モノマー)を重合させることにより、好適に得られる。また、これらの単量体を重合させ、さらに架橋させてもよい。
【0028】
【0029】
[式(1)中、Rは炭素数1~12のアルキル基または基-CH2O(CR1R2R3)である。R1、R2、及びR3は、それぞれ独立に、水素原子または基-CH2O(CH2CH2O)nR4である。R4は、炭素数1~12のアルキル基または置換基を有してもよいアリール基である。アリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。nは、0~12の整数である。]
【0030】
【0031】
【0032】
[式(3)中、R5はエチレン性不飽和基を有する基である。エチレン性不飽和基の炭素数は、通常、2~13程度である。]
【0033】
上記式(1)で表される化合物は、市販品からの入手、またはエピハロヒドリンとアルコールからの一般的なエーテル合成法等により容易に合成が可能である。市販品から入手可能な化合物としては、例えば、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、t-ブチルグリシジルエーテル、ベンジルグリシジルエーテル、1,2-エポキシドデカン、1,2-エポキシオクタン、1,2-エポキシヘプタン、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、1,2-エポキシデカン、1,2-エポキシへキサン、グリシジルフェニルエーテル、1,2-エポキシペンタン、グリシジルイソプロピルエーテルなどが使用できる。これら市販品のなかでは、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、グリシジルイソプロピルエーテルが好ましく、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテルが特に好ましい。
【0034】
合成によって得られる式(1)で表される単量体では、Rは-CH2O(CR1R2R3)が好ましく、R1、R2、R3の少なくとも一つが-CH2O(CH2CH2O)nR4であることが好ましい。R4は炭素数1~6のアルキル基が好ましく、炭素数1~4がより好ましい。nは2~6が好ましく、2~4がより好ましい。
【0035】
また、式(2)の化合物は基礎化学品であり、市販品を容易に入手可能である。
【0036】
式(3)の化合物において、R5はエチレン性不飽和基を含む置換基である。上記式(3)で表される化合物の具体例としては、アリルグリシジルエーテル、4-ビニルシクロヘキシルグリシジルエーテル、α-テルピニルグリシジルエーテル、シクロヘキセニルメチルグリシジルエーテル、p-ビニルベンジルグリシジルエーテル、アリルフェニルグリシジルエーテル、ビニルグリシジルエーテル、3,4-エポキシ-1-ブテン、4,5-エポキシ-1-ペンテン、4,5-エポキシ-2-ペンテン、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、ソルビン酸グリシジル、ケイ皮酸グリシジル、クロトン酸グリシジル、グリシジル-4-ヘキセノエートが用いられる。好ましくは、アリルグリシジルエーテル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルである。
【0037】
ここで、繰り返し単位(A)及び(C)は、それぞれ2種以上の異なるモノマーから誘導されるものであってもよい。
【0038】
ポリエーテル共重合体の合成は、例えば、次のようにして行える。開環重合触媒として有機アルミニウムを主体とする触媒系、有機亜鉛を主体とする触媒系、有機錫-リン酸エステル縮合物触媒系などの配位アニオン開始剤、または対イオンにK+を含むカリウムアルコキシド、ジフェニルメチルカリウム、水酸化カリウムなどのアニオン開始剤を用いて、各モノマーを溶媒の存在下又は不存在下、反応温度10~120℃、撹拌下で反応させることによってポリエーテル共重合体が得られる。重合度、あるいは得られる共重合体の性質などの点から、配位アニオン開始剤が好ましく、なかでも有機錫-リン酸エステル縮合物触媒系が取り扱い易く特に好ましい。
【0039】
ポリエーテル共重合体の重量平均分子量は、10万~100万の範囲にあれば特に制限されないが、ゲル電解質用組成物の塗工性、ゲル化特性、及び保液性を高めつつ、ゲル化後の膜強度を高め、さらに、電気化学キャパシタに対して優れた出力特性と、高い容量維持率を付与する観点から、好ましくは20万~90万程度、より好ましくは30万~80万程度が挙げられる。なお、ポリエーテル共重合体の重量平均分子量が100万を超えると粘度が高くなり、ゲル電解質を均一に形成することが難しくなり、塗布する場合の塗工性も悪くなる傾向にある。一方、ポリエーテル共重合体の重量平均分子が10万未満であると、硬化後のゲル電解質の機械的強度が低くなり、ゲル電解質を用いることによって達成されるセパレータレスの電気化学キャパシタとすることが難しくなり、また、ゲル電解質自体が液漏れする虞もある。
【0040】
なお、本発明において、重量平均分子量の測定は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて、測定を行い、標準ポリスチレン換算により重量平均分子量を算出する。
【0041】
また、ゲル電解質用組成物の塗工性、ゲル化特性、及び保液性を高めつつ、ゲル化後の膜強度を高め、さらに、電気化学キャパシタに対して優れた出力特性と、高い容量維持率を付与する観点から、ポリエーテル共重合体の分子量分布は、3.0~10.0であることが好ましく、4.0~8.0であることがより好ましい。なお、当該分子量分布は、GPC測定を行い、標準ポリスチレン換算により重量平均分子量および数平均分子量を算出し、その比である重量平均分子量/数平均分子量の値とした。
【0042】
ゲル電解質用組成物の塗工性、ゲル化特性、及び保液性を高めつつ、ゲル化後の膜強度を高め、さらに、電気化学キャパシタに対して優れた出力特性と、高い容量維持率を付与する観点から、本発明のゲル電解質用組成物において、ポリエーテル共重合体の固形分濃度は、ゲル電解質用組成物の全固形分の5~20質量%程度であることが好ましい。
【0043】
本発明のゲル電解質用組成物に含まれる電解質塩は、常温溶融塩(イオン液体)を含むことが好ましい。本発明において、電解質塩として、常温溶融塩を用いることにより、硬化後のゲル電解質に対して、一般的な有機溶媒としての効果を併せて発揮させることが可能となる。
【0044】
常温溶融塩とは、常温において少なくとも一部が液状を呈する塩をいい、常温とは電源が通常作動すると想定される温度範囲をいう。電源が通常作動すると想定される温度範囲とは、上限が120℃程度、場合によっては60℃程度であり、下限は-40℃程度、場合によっては-20℃程度である。常温溶融塩は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0045】
常温溶融塩はイオン液体とも呼ばれており、カチオンとして、ピリジン系、脂肪族アミン系、脂環族アミン系の4級アンモニウム有機物カチオンが知られている。4級アンモニウム有機物カチオンとしては、ジアルキルイミダゾリウム、トリアルキルイミダゾリウム、などのイミダゾリウムイオン、テトラアルキルアンモニウムイオン、アルキルピリジニウムイオン、ピラゾリウムイオン、ピロリジニウムイオン、ピペリジニウムイオンなどが挙げられる。特に、イミダゾリウムカチオンが好ましい。
【0046】
イミダゾリウムカチオンとしては、ジアルキルイミダゾリウムイオン、トリアルキルイミダゾリウムイオンが例示される。ジアルキルイミダゾリウムイオンとしては、1,3-ジメチルイミダゾリウムイオン、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムイオン、1-メチル-3-エチルイミダゾリウムイオン、1-メチル-3-ブチルイミダゾリウムイオン、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムイオンなどが挙げられ、トリアルキルイミダゾリウムイオンとしては、1,2,3-トリメチルイミダゾリウムイオン、1,2-ジメチル-3-エチルイミダゾリウムイオン、1,2-ジメチル-3-プロピルイミダゾリウムイオン、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムイオンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、1-アリル-3-エチルイミダゾリウムイオン、1-アリル-3-ブチルイミダゾリウムイオン、1,3-ジアリルイミダゾリウムイオンなどの1-アリルイミダゾリウムイオンも使用することができる。
【0047】
テトラアルキルアンモニウムイオンとしては、トリメチルエチルアンモニウムイオン、ジメチルジエチルアンモニウムイオン、トリメチルプロピルアンモニウムイオン、トリメチルヘキシルアンモニウムイオン、テトラペンチルアンモニウムイオン、N,N-ジエチル-N-メチル-N-(2メトキシエチル)アンモニウムイオンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0048】
アルキルピリジウムイオンとしては、N-メチルピリジウムイオン、N-エチルピリジニウムイオン、N-プロピルピリジニウムイオン、N-ブチルピリジニウムイオン、1-エチル-2メチルピリジニウムイオン、1-ブチル-4-メチルピリジニウムイオン、1-ブチル-2,4ジメチルピリジニウムイオン、N-メチル-N-プロピルピぺリジニウムイオンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0049】
ピロリジニウムイオンとしては、N-(2-メトキシエチル)-N-メチルピロリジニウムイオン、N-エチル-N-メチルピロリジニウムイオン、N-エチル-N-プロピルピロリジニウムイオン、N-メチル-N-プロピルピロリジニウムイオン、N-メチル-N-ブチルピロリジニウムイオンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0050】
対アニオンとしては、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオンなどのハロゲン化物イオン、過塩素酸イオン、チオシアン酸イオン、テトラフルオロホウ素酸イオン、硝酸イオン、AsF6
-、PF6
-などの無機酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、ステアリルスルホン酸イオン、オクチルスルホン酸イオン、ドデシルベンゼンスルホン酸イオン、ナフタレンスルホン酸イオン、ドデシルナフタレンスルホン酸イオン、7,7,8,8-テトラシアノ-p-キノジメタンイオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン、ビス(フルオロスルホニル)イミドイオン、トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチドイオン、ビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミドイオン、4,4,5,5-テトラフルオロ-1,3,2-ジチアゾリジン-1,1,3,3-テトラオキシドイオン、トリフルオロ(ペンタフルオロエチル)ホウ素酸イオン、トリフルオロ-トリ(ペンタフルオロエチル)リン素酸イオンなどの有機酸イオンなどが例示される。
【0051】
本発明のゲル電解質用組成物は、以下に挙げる電解質塩を含有してもよい。即ち、金属陽イオン、アンモニウムイオン、アミジニウムイオン、及びグアニジウムイオンから選ばれた陽イオンと、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、過塩素酸イオン、チオシアン酸イオン、テトラフルオロホウ素酸イオン、硝酸イオン、AsF6
-、PF6
-、ステアリルスルホン酸イオン、オクチルスルホン酸イオン、ドデシルベンゼンスルホン酸イオン、ナフタレンスルホン酸イオン、ドデシルナフタレンスルホン酸イオン、7,7,8,8-テトラシアノ-p-キノジメタンイオン、X1SO3
-、[(X1SO2)(X2SO2)N]-、[(X1SO2)(X2SO2)(X3SO2)C]-、及び[(X1SO2)(X2SO2)YC]-から選ばれた陰イオンとからなる化合物が挙げられる。但し、X1、X2、X3、およびYは電子吸引基である。好ましくはX1、X2、及びX3は各々独立して炭素数が1~6のパーフルオロアルキル基又は炭素数が6~18のパーフルオロアリール基であり、Yはニトロ基、ニトロソ基、カルボニル基、カルボキシル基又はシアノ基である。X1、X2及びX3は各々同一であっても、異なっていてもよい。
【0052】
金属陽イオンとしては遷移金属の陽イオンを用いることができる。好ましくはMn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn及びAg金属から選ばれた金属の陽イオンが用いられる。又、Li、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca及びBa金属から選ばれた金属の陽イオンを用いても好ましい結果が得られる。電解質塩として前述の化合物を2種類以上併用することが可能である。特に、リチウムイオンキャパシタにおいて電解質塩としては、リチウム塩化合物が好適に用いられる。本発明において、電解質塩は、リチウム塩化合物を含むことが好ましい。
【0053】
リチウム塩化合物としては、リチウムイオンキャパシタに一般的に利用されているような、広い電位窓を有するリチウム塩化合物が用いられる。たとえば、LiBF4、LiPF6、LiClO4、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2、LiN[CF3SC(C2F5SO2)3] 2などを挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは、単独で用いても、2種類以上を混合して用いても良い。
【0054】
本発明のゲル電解質組成物において、電解質塩は、前述のポリエーテル共重合体、該共重合体の架橋体、さらには、ポリエーテル共重合体及び/又は該共重合体の架橋体と電解質塩を含有する混合物中において、相溶することが好ましい。ここで、相溶とは、電解質塩が結晶化などによる析出を生じないことを意味する。
【0055】
本発明において、例えばリチウムイオンキャパシタの場合は、電解質塩として、好ましくはリチウム塩化合物及び常温溶融塩が用いられる。また、電気二重層キャパシタの場合は、電解質塩として、好ましくは常温溶融塩のみが用いられる。
【0056】
本発明において、リチウムイオンキャパシタの場合には、ポリエーテル共重合体に対する電解質塩の使用量(リチウム塩化合物と常温溶融塩の合計使用量)は、ポリエーテル共重合体10質量部に対して、電解質塩が1~120質量部であることが好ましく、電解質塩が3~90質量部であることがより好ましい。また、電気二重層キャパシタの場合は、常温溶融塩の使用量は、ポリエーテル共重合体10質量部に対して、常温溶融塩が1~300質量部であることが好ましく、常温溶融塩が5~200質量部であることがより好ましい。
【0057】
本発明のゲル電解質用組成物においては、硬化させることによって膜強度の高いゲル電解質とする観点から、光反応開始剤、さらに必要であれば架橋助剤を含有することが好ましい。
【0058】
光反応開始剤としては、アルキルフェノン系光反応開始剤が好適に用いられる。アルキルフェノン系光反応開始剤は、反応速度が速くゲル電解質用組成物への汚染が少ない点で非常に好ましい。
【0059】
アルキルフェノン系光反応開始剤の具体例としては、ヒドロキシアルキルフェノン系化合物である1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-[4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル]-2-メチル-プロパン-1-オンや2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、などが挙げられる。またアミノアルキルフェノン系化合物である2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルフォニル)フェニル]-1-ブタノン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1等が挙げられる。その他として、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル等が挙げられる。中でも2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルフォニル)フェニル]-1-ブタノンが好ましい。
【0060】
その他の光反応開始剤としては、ベンゾフェノン系、アシルフォスフィンオキシド系、チタノセン類、トリアジン類、ビスイミダゾール類、オキシムエステル類などが挙げられる。これらの光反応開始剤を単独で用いてもよいし、アルキルフェノン系の光反応開始剤の補助的な開始剤として添加することも可能である。
【0061】
架橋反応に用いられる光反応開始剤の量としては、特に制限されないが、ポリエーテル共重合体100質量部に対して、好ましくは0.1~10質量部程度、より好ましくは0.1~4.0質量部程度が挙げられる。
【0062】
本発明においては、架橋助剤を光反応開始剤と併用してもよい。架橋助剤は、通常、多官能性化合物(例えば、CH2=CH-、CH2=CH-CH2-、CF2=CF-を少なくとも2個含む化合物)である。架橋助剤の具体例は、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアクリルホルマール、トリアリルトリメリテート、N,N'-m-フェニレンビスマレイミド、ジプロパルギルテレフタレート、ジアリルフタレート、テトラアリルテレフタールアミド、トリアリルホスフェート、ヘキサフルオロトリアリルイソシアヌレート、N-メチルテトラフルオロジアリルイソシアヌレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレートなどである。
【0063】
本発明ではゲル電解質用組成物に非プロトン性有機溶媒を添加することもできる。本発明のゲル電解質用組成物は、非プロトン性有機溶媒等と組み合わせることで、キャパシタ作製時の粘度調整やキャパシタとしての性能を調整することが可能となる。
【0064】
非プロトン性有機溶媒としては、非プロトン性のニトリル類、エーテル類及びエステル類が好ましい。具体的には、アセトニトリル、プロピレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、ブチレンカーボネート、ビニルカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルモノグライム、メチルジグライム、メチルトリグライム、メチルテトラグライム、エチルモノグライム、エチルジグライム、エチルトリグライム、エチルメチルモノグライム、ブチルジグライム、3-メチル-2-オキサゾリドン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,3-ジオキソラン、4,4-メチル-1,3-ジオキソラン、ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル等が挙げられ、中でも、プロピレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、ブチレンカーボネート、ビニルカーボネート、エチレンカーボネート、メチルトリグライム、メチルテトラグライム、エチルトリグライム、エチルメチルモノグライムが好ましい。これらの2種以上の混合物を用いても良い。
【0065】
本発明のゲル電解質用組成物には、架橋させた後のゲル電解質に強度を持たせるためや、イオン透過性をより高めるなどの目的で、無機微粒子、樹脂微粒子および樹脂製の極細繊維よりなる群から選択される少なくとも1種の材料を含有させてもよい。使用可能な材料としては、Al2O3、SiO2、ベーマイト、PMMA(架橋PMMA)の各微粒子が好ましく用いられる。これらの材料は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0066】
本発明のゲル電解質組成物は、電解質塩と、重量平均分子量が10万~100万であるエチレンオキシドユニットを有するポリエーテル共重合体と、さらに必要に応じて配合される成分を混合することにより製造することができる。電解質塩とポリエーテル共重合体を混合する方法に特に制限はないが、電解質塩を含む溶液にポリエーテル共重合体を長時間浸漬して含浸させる方法、電解質塩をポリエーテル共重合体へ機械的に混合させる方法、ポリエーテル共重合体を常温溶融塩に溶かして混合させる方法、あるいはポリエーテル共重合体を一度他の溶剤に溶かした後、電解質塩を混合させる方法などがある。他の溶媒を使用して製造する場合の他の溶媒としては、各種の極性溶媒、例えばテトラヒドロフラン、アセトン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が単独、或いは混合して用いられる。他の溶媒は、ポリエーテル共重合体を架橋する場合には、架橋前、架橋する間または架橋した後に除去できる。
【0067】
本発明のゲル電解質用組成物は、25℃での粘度が1~12Pa・sである。これにより、本発明のゲル電解質用組成物は、塗工性、ゲル化特性、及び保液性を高めつつ、ゲル化後の膜強度を高め、さらに、電気化学キャパシタに対して優れた出力特性と、高い容量維持率を付与することができる。これらの特性をさらに効果的に奏する観点からは、本発明のゲル電解質用組成物の当該粘度は、2~10Pa・sであることが好ましく、3~9Pa・sであることがより好ましい。
【0068】
なお、本発明において、ゲル電解質組成物の粘度は、E型粘度計(英弘精機社製)を用いて、CPA-40Zコーンスピンドル、25℃、1rpmで測定した値である。
【0069】
本発明のゲル電解質用組成物の粘度の調整方法としては、特に限定されないが、重量平均分子量が10万~100万であるポリエーテル共重合体とを混合して組成物を得た後、当該組成物に機械的せん断を加える方法が好ましい。
【0070】
機械的せん断力を加えることによって、高分子鎖をほぐし、粘度を上記範囲の粘度に調整することが可能である。具体的には、機械的せん断力を加えることによって粘度が低下し、ゲル電解質用組成物の流動性が改善され、塗工性が大幅に改善される。それにより、一般的なブレードコーティングが可能となり、大面積のゲル電解質を効率よく形成することが可能となる。さらに、機械的剪断力を加えることによって、ポリエーテル共重合体の分子量分布を前述の範囲に設定することもできる。
【0071】
ゲル電解質用組成物に加える機械的せん断力の大きさは、一時間当たり1立方メートル当たりの動力数で表わすことができ、通常0.05~100kw/m3・hr-1の範囲で任意に選択すればよいが、後述する混合器の種類によって異なるので、実際の混合器を用いて適宜条件を決定するのが好ましい。より具体的に好ましい範囲としては1~100kw/m3・hr-1dである。せん断を与えるものが回転体である場合は回転数が1000回転/分以上の条件が好ましい。
【0072】
また、機械的せん断力を加える場合には、冷却してせん断を加えることが好ましい。高速でせん断を加えると温度上昇のため電解質溶液に対するせん断力が弱くなってしまう。そのため、混合器の容器自体やせん断を加える電解質溶液自体を冷却して温度が20℃以上に上昇しないようにすることが好ましい。粘度低下の効率を上げるためにはさらに冷却を行い、電解質溶液が変質しない範囲で温度が低くするほど好ましい。
【0073】
機械的せん断力を加える混合器としては、例えばラインミル、ローターステイター式ミキサー、ハレルホモジナイザー、マイクロフルイダイザーやそのほか「化学工学便覧、第779-782頁(1989)」に記載の高速回転パイプインミキサー、内部循環式連続攪拌機インラインミキサー、加圧ノズル式乳化機、超音波乳化機等のせん断力を発生する混合器が好ましい。また強力な攪拌混合器を有するバッチでの混合でも構わない。
【0074】
具体的な混合器としては、例えば国産精工(株)製ハレルホモジナイザー、特殊機化工業(株)製パイプラインホモミキサー、(株)荏原製作所製マイルダー、月島機械(株)製スープラトン、マイクロフルイダイザー、同栄商事(株)製マントンゴーリン、KINEMATICA製ポリトロンホモジナイザー、吉田機械興業(株)製ナノヴェイダ、新東工業(株)製ディスパライザー、プライミックス(株)製フィルミックス、(株)スギノマシン製スターバースト等が挙げられる。
【0075】
混合器での機械的せん断力を加えるために、電解質組成物溶液は冷却することが好ましい。特に10℃以下に冷却して混合される。これは、温度が高いとポリエーテル共重合体が架橋反応を起こしたり、高分子鎖をほぐす効率が悪くなったりするためである。
【0076】
また、機械的せん断力を加える時間は、好ましい粘度範囲まで低下させることによって決定されるが、時間が短いほど好ましい。より好ましい時間範囲としては5分~24時間である。時間が短すぎると粘度のロットごとのばらつきが大きくなり、長すぎると再凝集を起こし却って増粘してしまうためである。
【0077】
本発明のゲル電解質用組成物を硬化(すなわちゲル化)させることにより、ゲル電解質が得られる。例えば、光反応開始剤を含むゲル電解質用組成物に、紫外線などの活性エネルギー線を照射することによって、ポリエーテル共重合体を架橋させて、ゲル化させることができる。本発明においては、このようなゲル電解質を電気化学キャパシタの電解質として用いることにより、特別なセパレータを必要とせず、ゲル電解質が電解質とセパレータの役割を兼ねることが可能となる。尚、セパレータを要しない程度の不流動状態を維持するためには、ゲル電解質の粘度がその電池の使用環境において8Pa・s以上あればよい。
【0078】
光による架橋に用いる活性エネルギー線は、紫外線、可視光線、赤外線、X線、ガンマー線、レーザー光線等の電磁波、アルファー線、ベータ線、電子線等の粒子線を用いることができる。特に装置の価格、制御のしやすさから紫外線が好ましい。
【0079】
架橋反応は、紫外線による場合では、キセノンランプ、水銀ランプ、高圧水銀ランプおよびメタルハライドランプを用いることができ、例えば、電解質を波長365nm、光量1~50mW/cm2で0.1~30分間照射することによって行うことができる。
【0080】
電気化学キャパシタにおいて、ゲル電解質用組成物を硬化させたゲル電解質層の厚みは、薄いほど電気化学キャパシタの容量が大きくなるため有利である。このため、可能な範囲で、ゲル電解質層の厚みは薄い方が好ましいが、薄すぎると電極同士がショートしてしまう可能性があるため、適当な厚みが必要となる。ゲル電解質層の厚みとしては、好ましくは1~50μm程度、より好ましくは3~30μm程度、さらに好ましくは5~20μm程度が挙げられる。
【0081】
2.電気化学キャパシタ
本発明の電気化学キャパシタは、正極と、負極との間に、前述の「1.ゲル電解質用組成物」の欄で詳述した、本発明のゲル電解質用組成物の硬化物を含むゲル電解質層を備えることを特徴としている。本発明のゲル電解質用組成物の詳細については、前述の通りである。以下、本発明の電気化学キャパシタについて説明する。
【0082】
本発明の電気化学キャパシタにおいて、電極(すなわち、正極及び負極)は、それぞれ、活物質、導電助剤、バインダーを含む電極組成物を電極基板となる集電体上に形成させることにより得られる。集電体は、電極基板となる。導電助剤は、正極または負極の活物質、さらに、ゲル電解質層と良好なイオンの授受を行うものである。バインダーは、正極または負極活物質を、集電体に固定するためのものである。
【0083】
電極の製造方法としては、具体的には、シート状に成形した電極組成物を、集電体上に積層する方法(混練シート成形法);ペースト状の電気化学キャパシタ用電極組成物を集電体上に塗布し、乾燥する方法(湿式成形法);電気化学キャパシタ用電極組成物の複合粒子を調製し、集電体上にシート成形、ロールプレスし得る方法(乾式成形法)などが挙げられる。これらの中でも、電極の製造方法としては、湿式成形法または乾式成形法が好ましく、湿式成形法がより好ましい。
【0084】
集電体の材料としては、例えば、金属、炭素、導電性高分子などを用いることができ、好適には金属が用いられる。集電体用金属としては、通常、アルミニウム、白金、ニッケル、タンタル、チタン、ステンレス鋼、銅、その他の合金等が使用される。リチウムイオンキャパシタ用電極に用いる集電体としては導電性、耐電圧性の面から銅、アルミニウムまたはアルミニウム合金を使用するのが好ましい。
【0085】
また、集電体の形状は、金属箔、金属エッヂド箔などの集電体;エキスパンドメタル、パンチングメタル、網状などの貫通する孔を有する集電体が挙げられるが、電解質イオンの拡散抵抗を低減しかつ電気化学キャパシタの出力密度を向上できる点で、貫通する孔を有する集電体が好ましく、その中でもさらに電極強度に優れる点で、エキスパンドメタルやパンチングメタルが特に好ましい。
【0086】
集電体の孔の割合としては、特に制限されないが、好ましくは10~80面積%程度、より好ましくは20~60面積%程度、さらに好ましくは30~50面積%程度が挙げられる。なお、貫通する孔の割合がこの範囲にあると、電解液の拡散抵抗が低減し、リチウムイオンキャパシタの内部抵抗が低減する。
【0087】
集電体の厚みとしては、特に制限されないが、好ましくは5~100μm程度、より好ましくは10~70μm程度、特に好ましくは20~50μm程度が挙げられる。
【0088】
本発明の電気化学キャパシタにおいて、正極に用いる電極活物質としては、具体的には、通常、炭素の同素体が用いられ、電気二重層キャパシタで用いられる電極活物質が広く使用できる。炭素の同素体の具体例としては、活性炭、ポリアセン(PAS)、カーボンウィスカ及びグラファイト等が挙げられ、これらの粉末または繊維を使用することができる。この中でも、活性炭が好ましい。活性炭としては、具体的にはフェノール樹脂、レーヨン、アクリロニトリル樹脂、ピッチ、およびヤシ殻等を原料とする活性炭を挙げることができる。また、炭素の同素体を組み合わせて使用する場合は、平均粒径又は粒径分布の異なる二種類以上の炭素の同素体を組み合わせて使用してもよい。また、正極に用いる電極活物質として、上記物質の他に、芳香族系縮合ポリマーの熱処理物であって、水素原子/炭素原子の原子比が0.50~0.05であるポリアセン系骨格構造を有するポリアセン系有機半導体(PAS)も好適に使用できる。
【0089】
また、負極に用いる電極活物質としては、カチオンを可逆的に担持できる物質であればよい。具体的には、リチウムイオン二次電池の負極で用いられる電極活物質が広く使用できる。中でも、黒鉛、難黒鉛化炭素等の結晶性炭素材料、ハードカーボン、コークス、活性炭、グラファイト等の炭素材料、上記正極の電極活物質としても記載したポリアセン系物質(PAS)が好ましい。これらの炭素材料及びPASは、フェノール樹脂等を炭化させ、必要に応じて賦活され、次いで粉砕したものが用いられる。
【0090】
電極活物質の形状は、粒状に整粒されたものが好ましい。粒子の形状が球形であると、電極成形時により高密度な電極が形成できる。
【0091】
電極活物質の体積平均粒子径は、正極、負極ともに通常0.1~100μm、好ましくは0.5~50μm、より好ましくは1~20μmである。これらの電極活物質は、それぞれ単独でまたは二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0092】
導電助剤としては、黒鉛、ファーネスブラック、アセチレンブラック、及びケッチェンブラック(アクゾノーベル ケミカルズ ベスローテン フェンノートシャップ社の登録商標)などの導電性カーボンブラック、カーボン繊維等の粒子または繊維状の導電助剤が挙げられる。これらの中でも、アセチレンブラックおよびファーネスブラックが好ましい。
【0093】
導電助剤は、電極活物質の体積平均粒子径よりも小さいものが好ましく、体積平均粒子径としては、通常0.001~10μm程度、好ましくは0.005~5μm程度、より好ましくは0.01~1μm程度が挙げられる。導電助剤の体積平均粒子径がこの範囲にあると、より少ない使用量で高い導電性が得られる。これらの導電助剤は、単独でまたは二種類以上を組み合わせて用いることができる。電極中の導電助剤の含有量としては、電極活物質100質量部に対して、好ましくは0.1~50質量部程度、より好ましくは0.5~15質量部程度、さらに好ましくは1~10質量部程度が挙げられる。導電助剤の量がこのような範囲にあると、電気化学キャパシタの容量を高く且つ内部抵抗を低くすることができる。
【0094】
バインダーとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素系ゴム、又はスチレンブタジエンゴム(SBR)等の非水系バインダーまたはアクリル系ゴム等の水系バインダー等を用いることができるが、これらに限定されない。
【0095】
バインダーのガラス転移温度(Tg)は、好ましくは50℃以下、さらに好ましくは-40~0℃である。バインダーのガラス転移温度(Tg)がこの範囲にあると、少量の使用量で結着性に優れ、電極強度が強く、柔軟性に富み、電極形成時のプレス工程により電極密度を容易に高めることができる。
【0096】
バインダーの数平均粒子径としては、特に制限されないが、通常は0.0001~100μm程度、好ましくは0.001~10μm程度、より好ましくは0.01~1μm程度が挙げられる。バインダーの数平均粒子径がこの範囲であるときは、少量の使用でも優れた結着力を分極性電極に与えることができる。ここで、数平均粒子径は、透過型電子顕微鏡写真で無作為に選んだバインダー粒子100個の径を測定し、その算術平均値として算出される個数平均粒子径である。粒子の形状は球形、異形、どちらでもかまわない。これらのバインダーは単独でまたは二種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0097】
バインダーの含有量は、電極活物質100質量部に対して、通常は0.1~50質量部程度、好ましくは0.5~20質量部程度、より好ましくは1~10質量部程度が挙げられる。バインダーの量がこの範囲にあると、得られる電極組成物層と集電体との密着性が充分に確保でき、電気化学キャパシタの容量を高く且つ内部抵抗を低くすることができる。
【0098】
なお、本発明において、正極・負極の作製に対しては、集電体シートに、上記正極・負極活物質、導電助剤、バインダーを溶媒に添加してスラリーとしたものを塗布し、これを乾燥した後、圧力0~5ton/cm2、特に0~2ton/cm2で圧着し、200℃以上、好ましくは250~500℃、更に好ましくは250~450℃で、0.5~20時間、特に1~10時間焼成したものを用いることが好ましい。
【0099】
本発明の電気化学キャパシタにおいて、予め正極および/または負極にリチウムイオンを吸蔵させる、所謂ドーピングをさせてもよい。正極および/または負極へのドーピングの手段は特に限定されない。例えば、リチウムイオン供給源と正極又は負極との物理的な接触によるものでもよく、電気化学的にドーピングさせてもよい。
【0100】
本発明の電気化学キャパシタの製造方法の一例としては、本発明のゲル電解質組成物を正極及び負極の間に配置し、この状態でゲル電解質組成物を硬化させてゲル電解質を形成する工程を備える製造方法が挙げられる。
【0101】
また、本発明の電気化学キャパシタの製造方法の一例としては、本発明のゲル電解質用組成物を、正極及び負極の少なくとも一方の表面に塗布する工程と、当該ゲル電解質用組成物に活性エネルギー線を照射し、前記ゲル電解質用組成物を硬化させてゲル電解質層を形成する工程と、ゲル電解質層を介して、前記正極と前記負極を積層する工程とを備える方法も挙げられる。
【0102】
ゲル電解質用組成物の硬化(架橋)は、非プロトン性有機溶媒の存在下または不存在下に、活性エネルギー線を照射することによって行える。活性エネルギー線の具体例としては、前述の通りである。
【0103】
前述の通り、本発明の電気化学キャパシタにおいては、ゲル電解質層が、電解質とセパレータと兼ねることができる。すなわち、ゲル電解質層をセパレータとすることができる。
【0104】
さらに、本発明においては、本発明のゲル電解質用組成物を硬化させて電解質フィルムとし、これを電極に積層することによって、電気化学キャパシタを製造しても良い。電解質フィルムは、ゲル電解質用組成物を、例えば剥離シートに塗布し、剥離シート上で硬化させた後、剥離シートから剥離することによって得られる。
【0105】
本発明の電気化学キャパシタは、優れた出力特性と、高い容量維持率を有するため、携帯電話やノート型パーソナルコンピュータの小型用途から定置型、車載用の大型キャパシタとしても使用できる。
【実施例】
【0106】
以下に実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。但し本発明は実施例に限定されるものではない。
【0107】
[合成例(ポリエーテル共重合用触媒の製造)]
撹拌機、温度計及び蒸留装置を備えた3つ口フラスコにトリブチル錫クロライド10g及びトリブチルホスフェート35gを入れ、窒素気流下に撹拌しながら250℃で20分間加熱して留出物を留去させ、残留物として固体状の縮合物質を得た。これを、以下の重合例で重合触媒として用いた。
【0108】
以下、ポリエーテル共重合体のモノマー換算組成は、1H NMRスペクトルにより求めた。ポリエーテル共重合体の分子量測定にはゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定を行い、標準ポリスチレン換算により重量平均分子量、数平均分子量、および分子量分布を算出した。GPC測定は(株)島津製作所製RID-6A、昭和電工(株)製ショウデックスKD-807、KD-806、KD-806MおよびKD-803カラム、および溶媒にDMFを用いて60℃で行った。
【0109】
[重合例1]
内容量3Lのガラス製4つ口フラスコの内部を窒素置換し、これに重合触媒として触媒の合成例で示した縮合物質1gと水分10ppm以下に調整したグリシジルエーテル化合物(a):
【化13】
158g、アリルグリシジルエーテル22g、及び溶媒としてn-ヘキサン1000gを仕込み、化合物(a)の重合率をガスクロマトグラフィーで追跡しながら、エチレンオキシド125gを逐次添加した。このときの重合温度は20℃とし、9時間反応を行った。重合反応はメタノールを1mL加え反応を停止した。デカンテーションによりポリマーを取り出した後、常圧下40℃で24時間、更に減圧下45℃で10時間乾燥してポリマー280gを得た。得られたポリエーテル共重合体の重量平均分子量、分子量分布、およびモノマー換算組成分析結果を表1に示す。
【0110】
[重合例2]
内容量3Lのガラス製4つ口フラスコの内部を窒素置換し、これに触媒として触媒の製造例で示した縮合物質2gと水分10ppm以下に調整したメタクリル酸グリシジル40g及び溶媒としてn-ヘキサン1000g及び連鎖移動剤としてエチレングリコールモノメチルエーテル0.07gを仕込み、エチレンオキシド230gはメタクリル酸グリシジルの重合率をガスクロマトグラフィーで追跡しながら、逐次添加した。重合反応はメタノールで停止した。デカンテーションによりポリマーを取り出した後、常圧下40℃で24時間、更に減圧下45℃で10時間乾燥してポリマー238gを得た。得られたポリエーテル共重合体の重量平均分子量、分子量分布、およびモノマー換算組成分析結果を表1に示す。
【0111】
[重合例3]
重合例2の仕込みにおいてメタクリル酸グリシジル50g、エチレンオキシド195g、及びエチレングリコールモノメチルエーテル0.06gを仕込んで重合した以外は同様の操作を行い、ポリマー223gを得た。得られたポリエーテル共重合体の重量平均分子量、分子量分布、およびモノマー換算組成分析結果を表1に示す。
【0112】
[重合例4]
重合例2の仕込みにおいてアリルグリシジルエーテル30g、エチレンオキシド100g、及びn-ブタノール0.01gを仕込んで重合した以外は同様の操作を行い、ポリマー126gを得た。得られたポリエーテル共重合体の重量平均分子量、分子量分布、およびモノマー換算組成分析結果を表1に示す。
【0113】
[重合例5]
重合例2の仕込みにおいてメタクリル酸グリシジル30g、エチレンオキシド260g、及びエチレングリコールモノメチルエーテル0.09gを仕込んで重合した以外は同様の操作を行い、ポリマー250gを得た。得られたポリエーテル共重合体の重量平均分子量、分子量分布、およびモノマー換算組成分析結果を表1に示す。
【0114】
[比較重合例1]
内容量3Lのガラス製4つ口フラスコの内部を窒素置換し、これに重合触媒として触媒の合成例で示した縮合物質1.5gと水分10ppm以下に調整したグリシジルエーテル化合物(a)158g、アリルグリシジルエーテル22g、及び溶媒としてn-ヘキサン1000gを仕込み、化合物(a)の重合率をガスクロマトグラフィーで追跡しながら、エチレンオキシド125gを逐次添加した。このときの重合温度は20℃とし、12時間反応を行った。重合反応はメタノールを1mL加え反応を停止した。デカンテーションによりポリマーを取り出した後、常温下40℃で24時間、さらに減圧下45℃で10時間乾燥してポリマー285gを得た。得られたポリエーテル共重合体の重量平均分子量、分子量分布、およびモノマー換算組成分析結果を表1に示す。
【0115】
[比較重合例2]
重合例2の仕込みにおいて、メタクリル酸グリシジル30g、エチレンオキシド260g、及びエチレングリコールモノメチルエーテル0.5gを仕込んで重合した以外は同様の操作を行い、ポリマー257gを得た。得られたポリエーテル共重合体の重量平均分子量、分子量分布、およびモノマー換算組成分析結果を表1に示す。
【0116】
【0117】
[実施例1] 負極/ゲル電解質1/正極で構成されたキャパシタの作製
<負極の作製1>
負極活物質として、体積平均粒子径が4μmであるグラファイト100質量部、分子量3万のカルボキシメチルセルロースナトリウムの1.5%水溶液((株)ダイセル化学工業製)を固形分相当で2質量部、導電助剤としてアセチレンブラック5質量部、数平均粒子径が0.15μmのSBRバインダーの40%水分散体を固形分相当で3質量部、およびイオン交換水を全固形分濃度が35%となるように混合、分散させて負極用の電極塗布液を調製した。
【0118】
この負極用の電極塗布液を厚さ18μmの銅箔の上にドクターブレード法で塗布し、仮乾燥した後、圧延し、電極サイズが10mm×20mmとなるように切り取った。電極の厚みは、約50μmであった。セルの組み立て前に、真空中で120℃、5時間乾燥した。
【0119】
<負極へのリチウムのドーピング>
上記のようにして得られた負極に、以下のようにしてリチウムをドーピングさせた。乾燥雰囲気中、負極とリチウム金属箔を挟み、電解液としてリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド1mol/Lの1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド溶液をその間に微量注入することで、所定量のリチウムイオンを約10時間かけて負極に吸蔵させた。リチウムのドープ量は、上記負極容量の約75%とした。
【0120】
<正極の作製1>
正極活物質には、フェノール樹脂を原料とするアルカリ賦活活性炭である体積平均粒子径が8μmの活性炭粉末を用いた。この正極活物質100質量部に対して、分散剤として分子量3万のカルボキシメチルセルロースナトリウムの1.5%水溶液((株)ダイセル化学工業製)を固形分相当で2質量部、導電助剤としてアセチレンブラックを5質量部、バインダーとして数平均粒子径が0.15μmのSBRバインダーの40%水分散体を固形分相当で3質量部、およびイオン交換水を全固形分濃度が30%となるように分散機を用いて混合、分散させて正極用の電極塗布液を調製した。
【0121】
この正極用の電極塗布液を厚さ15μmのアルミ箔集電体上にドクターブレード法で塗布し、仮乾燥した後、圧延し、電極サイズが10mm×20mmとなるように切り取った。電極の厚みは50μmであった。
【0122】
<ゲル電解質用組成物1の作製>
重合例1で得られた共重合体10質量部、トリメチロールプロパントリメタクリレート1質量部、光反応開始剤としての2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン0.2質量部を、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミドにリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを1mol/Lの濃度に溶解させた溶液90質量部に、溶解させた。この溶液を20℃以下に冷却しながら、KINEMATICA製ポリトロンホモジナイザーで8000RPM、20分間機械的せん断力を与えた。このようにしてゲル電解質用組成物1を作製した。
【0123】
<ゲル電解質層の形成>
正極の作製1で得られた正極シートの上に、上記ゲル電解質用組成物1をドクターブレードで塗布し、厚さ10μmのゲル電解質用組成物層を形成した。その後、乾燥させたのち、ゲル電解質用組成物層表面をラミネートフィルムでカバーした状態で、(株)GSユアサ製の高圧水銀灯(30mW/cm2)を30秒間照射することにより架橋し、正極シート上にゲル電解質層が一体化された正極/電解質シートを作製した。
リチウムをドーピングした負極シートも正極と同様に処理を行い、負極シート上に厚さ10μmのゲル電解質層が一体化された負極/電解質シートを作製した。
【0124】
<キャパシタセルの組み立て>
前記正極/電解質シートと負極/電解質シートをアルゴンガスで置換されたグローブボックス内においてラミネートカバーを外して貼り合わせて、全体をラミネートフィルムでカバーしてラミネートセル形状のリチウムイオンキャパシタを作製した。完成したセルは、測定まで約1日そのまま放置した。
【0125】
[実施例2] 負極/ゲル電解質2/正極で構成されたキャパシタの作製
負極、正極の作製は実施例1と同様に行なった。
【0126】
<ゲル電解質用組成物2の作製>
重合例2で得られた共重合体10質量部、光反応開始剤としての2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン0.2質量部、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1 0.05質量部を、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミドにリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを1mol/Lの濃度に溶解させた溶液90質量部に、溶解させた。この溶液を20℃以下に冷却しながら、KINEMATICA製ポリトロンホモジナイザーで8000RPM、30分間機械的せん断力を与えた。このようにしてゲル電解質用組成物2を作製した。
【0127】
<ゲル電解質層の形成>
正極の作製1で得られた正極シートの上に、上記ゲル電解質用組成物2をドクターブレードで塗布し、厚さ10μmのゲル電解質用組成物層を形成した。その後、乾燥させたのち、ゲル電解質用組成物層表面をラミネートフィルムでカバーした状態で、(株)GSユアサ製の高圧水銀灯(30mW/cm2)を30秒間照射することにより架橋し、正極シート上にゲル電解質層が一体化された正極/電解質シートを作製した。負極シートも正極と同様に処理を行い、負極シート上に厚さ10μmのゲル電解質層が一体化された負極/電解質シートを作製した。
リチウムをドーピングした負極シートも正極と同様に処理を行い、負極シート上に厚さ10μmの電解質組成物層が一体化された負極/電解質シートを作製した。
【0128】
<キャパシタセルの組み立て>
前記正極/電解質シートと負極/電解質シートをアルゴンガスで置換されたグローブボックス内においてラミネートカバーを外して貼り合わせて、全体をラミネートフィルムでカバーしてラミネートセル形状のリチウムイオンキャパシタを作製した。完成したセルは、測定まで約1日そのまま放置した。
【0129】
[実施例3] 負極/ゲル電解質3/正極で構成されたキャパシタの作製
負極、正極の作製は実施例1と同様に行なった。
【0130】
<ゲル電解質用組成物3の作製>
重合例3で得られた共重合体10質量部、光反応開始剤としての1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン0.2質量部、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1 0.1質量部と樹脂微粒子(MZ-10HN:綜研化学(株)社製)3質量部を、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミドにリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを1mol/Lの濃度に溶解させた溶液90質量部に、溶解させた。この溶液を20℃以下に冷却しながら、KINEMATICA製ポリトロンホモジナイザーで8000RPM、15分間機械的せん断力を与えた。このようにしてゲル電解質用組成物3を作製した。
【0131】
<ゲル電解質層の形成>
正極の作製1で得られた正極シートの上に、上記ゲル電解質用組成物3をドクターブレードで塗布し、厚さ15μmのゲル電解質用組成物層を形成した。その後、乾燥させたのち、ゲル電解質用組成物層表面をラミネートフィルムでカバーした状態で、(株)GSユアサ製の高圧水銀灯(30mW/cm2)を30秒間照射することにより架橋し、正極シート上にゲル電解質層が一体化された正極/電解質シートを作製した。
リチウムをドーピングした負極シートも正極と同様に処理を行い、負極シート上に厚さ10μmのゲル電解質層が一体化された負極/電解質シートを作製した。
【0132】
<キャパシタセルの組み立て>
前記正極/電解質シートと負極/電解質シートをアルゴンガスで置換されたグローブボックス内においてラミネートカバーを外して貼り合わせて、全体をラミネートフィルムでカバーしてラミネートセル形状のリチウムイオンキャパシタを作製した。完成したセルは、測定まで約1日そのまま放置した。
【0133】
[実施例4] 負極/ゲル電解質4/正極で構成されたキャパシタの作製
負極、正極の作製は実施例1と同様に行なった。
【0134】
<ゲル電解質用組成物4の作製>
重合例4で得られた共重合体10質量部、光反応開始剤としての1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン0.3質量部と樹脂微粒子(エポスターMA1010:日本触媒(株)社製)2部を、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミドにリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを1mol/Lの濃度に溶解させた溶液90質量部に、溶解させた。この溶液を20℃以下に冷却しながら、KINEMATICA製ポリトロンホモジナイザーで7000RPM、20分間機械的せん断力を与えた。このようにしてゲル電解質用組成物4を作製した。
【0135】
<電解質組成物層の形成>
正極の作製1で得られた正極シートの上に、上記ゲル電解質用組成物4をドクターブレードで塗布し、厚さ15μmのゲル電解質用組成物層を形成した。その後、乾燥させたのち、ゲル電解質用組成物層表面をラミネートフィルムでカバーした状態で、(株)GSユアサ製の高圧水銀灯(30mW/cm2)を30秒間照射することにより架橋し、正極シート上にゲル電解質層が一体化された正極/電解質シートを作製した。
リチウムをドーピングした負極シートも正極と同様に処理を行い、負極シート上に厚さ10μmのゲル電解質層が一体化された負極/電解質シートを作製した。
【0136】
<キャパシタセルの組み立て>
前記正極/電解質シートと負極/電解質シートをアルゴンガスで置換されたグローブボックス内において貼り合わせて、全体をラミネートフィルムでカバーしてラミネートセル形状のリチウムイオンキャパシタを作製した。完成したセルは、測定まで約1日そのまま放置した。
【0137】
[実施例5] 負極/ゲル電解質5/正極で構成されたキャパシタの作製
負極、正極の作製は実施例1と同様に行なった。
【0138】
<ゲル電解質用組成物5の作製>
重合例5で得られた共重合体10質量部、光反応開始剤としての1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン0.2質量部、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルフォニル)フェニル]-1-ブタノン0.15質量部、シリカ微粒子(ハイプレシカFQ8μ:宇部日東化成(株)社製)4質量部を、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミドにリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを1mol/Lの濃度に溶解させた溶液90質量部に、溶解させた。この溶液を20℃以下に冷却しながら、KINEMATICA製ポリトロンホモジナイザーで8500RPM、20分間機械的せん断力を与えた。このようにしてゲル電解質用組成物5を作製した。
【0139】
<ゲル電解質層の形成>
正極の作製1で得られた正極シートの上に、上記ゲル電解質用組成物5をドクターブレードで塗布し、厚さ15μmのゲル電解質用組成物層を形成した。その後、乾燥させたのち、ゲル電解質用組成物層表面をラミネートフィルムでカバーした状態で、(株)GSユアサ製の高圧水銀灯(30mW/cm2)を30秒間照射することにより架橋し、正極シート上にゲル電解質層が一体化された正極/電解質シートを作製した。
リチウムをドーピングした負極シートも正極と同様に処理を行い、負極シート上に厚さ10μmのゲル電解質層が一体化された負極/電解質シートを作製した。
【0140】
<キャパシタセルの組み立て>
前記正極/電解質シートと負極/電解質シートをアルゴンガスで置換されたグローブボックス内において貼り合わせて、全体をラミネートフィルムでカバーしてラミネートセル形状のリチウムイオンキャパシタを作製した。完成したセルは、測定まで約1日そのまま放置した。
【0141】
[比較例1] 負極/ゲル電解質用組成物6/正極で構成されたキャパシタの作製
負極、正極の作製は実施例1と同様に行なった。
【0142】
<電解質組成物6の作製>
比較重合例1で得られた共重合体10質量部、トリメチロールプロパントリメタクリレート1質量部、光反応開始剤としての1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン0.2質量部を、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミドにリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを1mol/Lの濃度に溶解させた溶液90質量部に溶解させて、ゲル電解質用組成物6を作製した。
【0143】
<ゲル電解質層の形成>
正極の作製1で得られた正極シート上に上記のゲル電解質用組成物6をドクターブレードで塗布し、厚さ10μmのゲル電解質用組成物層を形成した。その後、乾燥させたのち、ゲル電解質用組成物層表面をラミネートフィルムでカバーした状態で、(株)GSユアサ製の高圧水銀灯(30mW/cm2)を30秒間照射することにより架橋し、正極シート上にゲル電解質層が一体化された正極/電解質シートを作製した。
リチウムをドーピングした負極シートも正極と同様に処理を行い、負極シート上に厚さ10μmのゲル電解質層が一体化された負極/電解質シートを作製した。
【0144】
<キャパシタセルの組み立て>
前記正極/電解質シートと負極/電解質シートをアルゴンガスで置換されたグローブボックス内において貼り合わせて、全体をラミネートフィルムでカバーしてラミネートセル形状のリチウムイオンキャパシタを作製した。完成したセルは、測定まで約1日そのまま放置した。
【0145】
[比較例2] 負極/ゲル電解質7/正極で構成されたキャパシタの作製
負極、正極の作製は実施例1と同様に行なった。
【0146】
<ゲル電解質用組成物7の作製>
比較重合例2で得られた共重合体10質量部、トリメチロールプロパントリメタクリレート1質量部、光反応開始剤としての1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン0.2質量部を1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミドにリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを1mol/Lの濃度に溶解させた溶液90質量部に溶解させて、ゲル電解質用組成物7を作製した。
【0147】
<ゲル電解質層の形成>
正極の作製1で得られた正極シート上に上記のゲル電解質用組成物7をドクターブレードで塗布し、厚さ10μmの電解質組成物層を形成した。その後、乾燥させたのち、電解質表面をラミネートフィルムでカバーした状態で、(株)GSユアサ製の高圧水銀灯(30mW/cm2)を30秒間照射することにより架橋し、正極シート上にゲル電解質層が一体化された正極/電解質シートを作製した。
リチウムをドーピングした負極シートも正極と同様に処理を行い、負極シート上に厚さ10μmのゲル電解質層が一体化された負極/電解質シートを作製した。
【0148】
<キャパシタセルの組み立て>
前記正極/電解質シートと負極/電解質シートをアルゴンガスで置換されたグローブボックス内において貼り合わせて、全体をラミネートフィルムでカバーしてラミネートセル形状のリチウムイオンキャパシタを作製した。完成したセルは、測定まで約1日そのまま放置した。
【0149】
<ゲル電解質用組成物の評価>
上記で作成した各ゲル電解質組成物の粘度測定および塗工性評価を以下の方法で行った。結果を表2に示す。
【0150】
(粘度測定)
ゲル電解質組成物の粘度を、E型粘度計(英弘精機社製)を用いて、CPA-40Zコーンスピンドル、25℃、1rpmで測定した。
【0151】
(塗工性評価)
ゲル電解質組成物の塗工性は、正極の作製で得られた正極シートの上に、ゲル電解質用組成物をドクターブレードで20μm厚に塗布し、塗布膜の膜厚均一性、表面状態、糸曳性を評価した。塗工性の各評価基準(膜厚均一性、表面状態、糸曵性)は、以下の通りである。
膜厚均一性
○・・・塗布膜の膜厚ばらつきが20μm厚に対して10%以内である。
×・・・塗布膜の膜厚ばらつきが20μm厚に対して10%以上である。
表面状態
○・・・目視観察で、ぶつや泡、波肌等の欠陥がない。
×・・・目視観察で、ぶつや泡、波肌等の欠陥がある。
糸曳性
ブレードから液だれ筋が発生するかどうかを確認した。
○・・・ブレードから液だれが発生しない。
×・・・ブレードから液だれが発生し、筋になる。
【0152】
【0153】
ゲル電解質用組成物のゲル化性、保液性、ゲル化後の膜強度を以下の方法により評価した。結果を表3に示す。
【0154】
ゲル化性
ゲル電解質用組成物のゲル化性は、ゲル電解質用組成物を正極シートの上に塗布し、光硬化させた後、カバーフィルムを剥がして表面の状態を観察して以下の基準により評価した。
○・・・ゲル電解質が均一に形成できておりムラがない。
×・・・ゲル電解質がやや不均一でムラがある。
【0155】
保液性
ゲル電解質用組成物の保液性は、ゲル電解質用組成物を正極シートの上に塗布し、光硬化させた後、カバーフィルムを剥がして表面の状態を観察して以下の基準により評価した。
○・・・ゲル電解質用組成物の表面に電解液が出ていない。
×・・・初期は出ていないが、経時により、ゲル電解質用組成物の表面に電解液が染み出してくる。
【0156】
膜強度
ゲル電解質用組成物の硬化後の膜強度は、上記の<ゲル電解質層の形成>で作成した各ゲル電解質層を軽く指で押して、電解液が出てくるかどうかを確認し、以下の基準により評価した。
○・・・軽く押しても電解液が出てこない。
×・・・軽く押すと微少部で電解液が出てくる。
【0157】
【0158】
<リチウムイオンキャパシタの電気化学的評価>
上記で得られた各リチウムイオンキャパシタについて、それぞれ、出力特性(1Cに対する100Cの時の放電容量維持率(%))と容量維持率を評価した。なお、測定はいずれも25℃で行った。結果を表4に示す。
【0159】
(出力特性)
放電容量は、所定の電流で4.0Vまで定電流充電し、充電時と同じ電流で2.0Vまで定電流放電したときの5サイクル目の放電容量とした。充放電電流は、セル容量を1時間で放電できる電流を基準(1C)として、1C及び100Cとした。表4には、1Cの充放電電流で測定した5サイクル目の放電容量を、「放電容量」として示した。「1Cに対する100Cの時の放電容量維持率」を、以下の式により算出し、その値を表4に示した。
【0160】
1Cに対する100Cの時の放電容量維持率(%)=(100Cの時の5サイクル目の放電容量)÷(1Cの時の5サイクル目の放電容量)×100。
【0161】
(容量維持率)
また、10Cでサイクル試験を行った。充放電サイクル試験は、10Cで4.0Vまで定電流で充電し、10Cで2.0Vまで定電流で放電し、これを1サイクルとして、1000サイクルの充放電を行った。初期の放電容量に対する1000サイクル後の放電容量を、容量維持率(%)として、表4に示した。
【0162】
【0163】
表4に示されるように、実施例1~5のリチウムイオンキャパシタは、放電容量が高く、1Cに対する100Cの時の放電容量維持率が高くなっており(すなわち、出力特性に優れている)、また、1000サイクル後の容量維持率も高いことが分かる。