(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-07
(45)【発行日】2022-09-15
(54)【発明の名称】把持装置
(51)【国際特許分類】
B25J 15/08 20060101AFI20220908BHJP
B25J 15/10 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
B25J15/08 D
B25J15/10
(21)【出願番号】P 2018046058
(22)【出願日】2018-03-13
【審査請求日】2021-01-04
(31)【優先権主張番号】P 2017156178
(32)【優先日】2017-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000141886
【氏名又は名称】株式会社京都製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002217
【氏名又は名称】弁理士法人矢野内外国特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】忍 友彰
【審査官】神山 貴行
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104802178(CN,A)
【文献】国際公開第2017/127643(WO,A1)
【文献】特表2009-509777(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部の圧力変化によって伸縮する可撓性素材からなる伸縮部材によって把持部材を駆動させる把持装置であって、
少なくとも二つの把持部材と、
複数の伸縮部材と、を備え、
前記伸縮部材と前記把持部材とを連動させる摺動部材と、
前記摺動部材の案内部材と、
前記伸縮部材に気体を供給または排出する複数の開閉弁と、を備え、
前記摺動部材は、前記伸縮部材毎に設けられ、
前記案内部材は、前記摺動部材を前記伸縮部材の伸縮方向に案内可能に構成され、
前記伸縮部材は、前記摺動部材を介して前記把持部材毎に連結され、
前記伸縮部材毎に前記開閉弁がそれぞれ接続され、
前記把持部材の一方の把持部材における把持対象物に接触するまでの把持ストロークが、前記把持部材の他方の前記把持部材における前記把持対象物に接触するまでの把持ストロークよりも長くなる位置に前記把持装置が配置されている場合において、前記一方の把持部材に対応する前記開閉弁の開状態への切り替えを、前記他方の把持部材に対応する前記開閉弁の開状態への切り替えよりも先に行って、前記把持部材を前記把持対象物に近接させる把持装置。
【請求項2】
前記少なくとも二つの把持部材のうち対となる把持部材の間に可撓性素材からなる押え部材を備え、前記押え部材が把持対象物を前記把持部材に向かって押圧する請求項1に記載の把持装置。
【請求項3】
前記押え部材が内部の圧力変化によって伸縮する可撓性素材から構成され、
前記押え部材に気体を供給または排出する開閉弁を備えている請求項2に記載の把持装置。
【請求項4】
前記把持部材は、途中部に回転軸を有する揺動レバーとして構成され、前記把持部材の一側端部が前記摺動部材に対して伸縮方向の相対移動不能な状態で摺動部材に連結され、前記把持部材の他側端部が把持対象物を把持する請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の把持装置。
【請求項5】
前記案内部材は、前記伸縮部材の伸縮方向からその内部に挿入され、前記伸縮部材の中心位置に配置されている請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の把持装置。
【請求項6】
前記伸縮部材の内部には、弾性部材が配置され、前記伸縮部材の延伸方向に摺動部材を押圧する請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の把持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、把持装置に関する。詳しくは、不定形物を搬送する把持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、搬送対象物であるワークを容器に詰めたり、次の工程の装置等に移送したりする作業をロボットによって実施するロボット搬送システムが用いられる場合がある。ロボット搬送システムは、所定の数量を所定の態様で所定の位置に整列、集積されたワークを把持装置によって一度に全て把持して所定の位置に搬送するように構成されている。しかし、整列、集積時のワークの姿勢が安定しない場合や、ワークの性質上、吸引による把持が困難である場合、複数のワークを一度に把持して搬送する従来のロボット搬送システムでは、対応できない。そこで、高速搬送が可能なパラレルリンクロボットを用いて、ワーク毎に把持して搬送するロボット搬送システムが知られている。
【0003】
パラレルリンクロボットを用いたロボット搬送システムは、画像処理によりワークの位置、形状、姿勢等を取得し、ワークの状態に合わせてワークを一つずつ把持するように構成されている。これにより、パラレルリンクロボットを用いたロボット搬送システムは、ワークの状態に合わせて把持装置を配置することで確実にワークを把持することができる。このようなパラレルリンクロボットに用いられる把持装置は、不定形で吸引による把持が困難なワークを確実に把持するために複数(少なくとも二つ)の把持部材によってワークを挟むように構成されているものがある。例えば特許文献1の如くである。
【0004】
特許文献1に記載の把持機構(把持装置)は、三つの開閉可能な指を備えている。把持機構には、指を開閉させるためのピストンシリンダが指毎に設けられている。把持機構は、流体動力がピストンシリンダに供給されることで三つの指がそれぞれ開閉するように構成されている。このような把持機構は、ピストンシリンダによる三つの指の把持力によってワークを挟み込み、確実にワークを把持することができる。また、把持機構は、ワークの性質に応じて流体動力の圧力を調整し、適切な把持力でワークを破損することなく把持することができる。しかし、把持機構は、流体動力の圧力を下げることで指の把持力を小さくすることができるが、同時に指の開閉速度も遅くなる。つまり、把持機構は、破損しやすいワークの場合、把持力を小さくするために流体動力の圧力を下げることで把持速度が遅くなり、ロボット搬送システムの搬送能力を抑制してしまう点で不利であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、把持部材の開閉速度を低下させることなく、把持部材による把持力を抑制した状態で不定形物を把持することができる把持装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、第1の発明は、内部の圧力変化によって伸縮する可撓性素材からなる伸縮部材によって把持部材を駆動させる把持装置であって、少なくとも二つの把持部材と、複数の伸縮部材と、を備え、前記伸縮部材と前記把持部材とを連動させる摺動部材と、前記摺動部材の案内部材と、前記伸縮部材に気体を供給または排出する複数の開閉弁と、を備え、前記摺動部材は、前記伸縮部材毎に設けられ、前記案内部材は、前記摺動部材を前記伸縮部材の伸縮方向に案内可能に構成され、前記伸縮部材は、前記摺動部材を介して前記把持部材毎に連結され、前記伸縮部材毎に前記開閉弁がそれぞれ接続され、前記把持部材の一方の把持部材における把持対象物に接触するまでの把持ストロークが、前記把持部材の他方の前記把持部材における前記把持対象物に接触するまでの把持ストロークよりも長くなる位置に前記把持装置が配置されている場合において、前記一方の把持部材に対応する前記開閉弁の開状態への切り替えを、前記他方の把持部材に対応する前記開閉弁の開状態への切り替えよりも先に行って、前記把持部材を前記把持対象物に近接させるものである。
【0009】
第2の発明は、把持装置は、前記少なくとも二つの把持部材のうち対となる把持部材の間に可撓性素材からなる押え部材を備え、前記押え部材が把持対象物を前記把持部材に向かって押圧するものである。
【0010】
第3の発明は、前記押え部材が内部の圧力変化によって伸縮する可撓性素材から構成され、前記押え部材に気体を供給または排出する開閉弁を備えているものである。
【0011】
第4の発明は、前記把持部材は、途中部に回転軸を有する揺動レバーとして構成され、前記把持部材の一側端部が前記摺動部材に対して伸縮方向の相対移動不能な状態で摺動部材に連結され、前記把持部材の他側端部が把持対象物を把持するものである。
【0012】
第5の発明は、前記案内部材は、前記伸縮部材の伸縮方向からその内部に挿入され、前記伸縮部材の中心位置に配置されているものである。
【0013】
第6の発明は、前記伸縮部材の内部には、圧縮ばねが配置され、前記伸縮部材の延伸方向に摺動部材を押圧するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、以下に示すような効果を奏する。
【0018】
第1の発明において把持装置は、伸縮部材が可撓性素材から構成されているので、把持対象物を把持するまでの把持部材毎のストロークの差異と把持力の上昇を伸縮部材毎の変形によって吸収する。これにより、把持部材の開閉速度を低下させることなく、把持部材による把持力を抑制した状態で不定形物を把持することができる。
【0019】
第2の発明において把持装置は、押え部材によって把持対象物に把持部材に向かう力を加えて、把持対象物を把持部材に押さえつけて安定的に把持する。これにより、把持部材の開閉速度を低下させることなく、把持部材による把持力を抑制した状態で不定形物を把持することができる。
【0020】
第3の発明において把持装置は、押え部材の内部に気体を供給することで、押え部材が不定形物に接触する直前に気体の吹き付けによって不定形物を載置面に押し付けるとともに、不定形物から押え部材を離間させる際に押え部材の内部圧力を上昇させて離間し易くする。これにより、把持部材の開閉速度を低下させることなく、把持部材による把持力を抑制した状態で不定形物を安定して把持することができる。
【0021】
第4の発明において把持装置は、把持対象物の形状や強度に基づいて把持部材のレバー比が設定される。これにより、把持部材の開閉速度を低下させることなく、把持部材による把持力を抑制した状態で不定形物を把持することができる。
【0022】
第5の発明において把持装置は、伸縮部材がその中心位置において摺動部材を介して案内部材によって拘束されているので、摺動部材の移動が円滑に行われ、伸縮部材の変形が均一に生じる。これにより、把持部材の開閉速度を低下させることなく、把持部材による把持力を抑制した状態で不定形物を把持することができる。
【0023】
第6の発明において把持装置は、弾性部材による伸縮部材の延伸方向への押圧力が摺動部材に加わるので、伸縮部材を延伸させる力が増強される。これにより、把持部材の開閉速度を低下させることなく、把持部材による把持力を抑制した状態で不定形物を安定して把持することができる。
【0024】
第7の発明および第8の発明において把持装置は、全ての伸縮部材が互いに独立した状態を保ちつつ、同一の圧力変化によって伸縮される。これにより、把持部材の開閉速度を低下させることなく、把持部材による把持力を抑制した状態で不定形物を安定して把持することができる。
【0025】
第9の発明において把持装置は、把持対象物の形状に応じて、伸縮部材毎に異なるタイミングによって伸縮される。これにより、把持部材の開閉速度を低下させることなく、把持部材による把持力を抑制した状態で不定形物を把持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】(a)パラレルリンクロボットを用いたロボット搬送システムの概略平面図、(b)ワークの位置を算出するための基準を示す概念図。
【
図2】パラレルリンクロボットを用いたロボット搬送システムの概略正面図。
【
図3】(a)本発明の第一実施形態における把持装置の部分断面正面図、(b)同じく側面図。
【
図4】本発明の第一実施形態における把持装置の動作状態を示す側面図。
【
図5】パラレルリンクロボットを用いたロボット搬送システムの制御ブロック図。
【
図6】(a)本発明の第一実施形態における把持装置の把持部材が解放している状態を示す部分断面正面図、(b)同じく把持部材が把持する方向に動いている状態を示す部分断面正面図。
【
図7】(a)本発明の第一実施形態における把持装置の両方の把持部材がワークに接触して動きを制限されている状態を示す部分断面正面図、(b)同じく把持部材の一方だけが動きを制限されている状態を示す部分断面正面図。
【
図8】(a)本発明の第二実施形態における把持装置の部分断面正面図、(b)
図8(a)におけるA矢視断面図。
【
図9】(a)本発明の第二実施形態における把持装置の把持部材が解放している状態を示す部分断面正面図、(b)同じく一方の把持部材だけが把持する方向に動いている状態を示す部分断面正面図。
【
図10】本発明の第三実施形態における把持装置の動作状態を示す側面図。
【
図11】本発明の第四実施形態における把持装置の部分断面正面図。
【
図12】(a)本発明の第四実施形態における把持装置の把持部材が把持する方向に動いている状態を示す部分断面正面図、(b)同じく把持部材がワークを離間する方向に動いている状態を示す部分断面正面図。
【
図13】本発明の第五実施形態における把持装置の部分断面正面図。
【
図14】(a)本発明の第五実施形態における把持装置がワークに近接する状態を示す部分断面正面図、(b)同じく把持部材がワークを離間する方向に動いている状態を示す部分断面正面図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、
図1から
図5を用いて、本発明に係る把持装置14を備えたロボット搬送システムの一実施形態である、パラレルリンクロボット5を用いたロボット搬送システム1(以下、単に「ロボット搬送システム1」と記す)について説明する。なお、本実施形態において、ロボット搬送システムは、パラレルリンクロボット5を用いているが、他の種類のロボットを用いてもよい。
【0028】
図1(a)に示すように、ロボット搬送システム1は、上流側コンベア101によって搬送されてくる搬送対象物であるワークW(例えば、米菓等の不定形物)を把持し、下流側コンベア102に載置された容器の内部にワークWを搬送するロボット搬送システム1である。ロボット搬送システム1は、画像処理システム2、パラレルリンクロボット5、把持装置14、制御装置24(
図5参照)を具備する。
【0029】
画像処理システム2は、ワークWの画像からワークWの長手方向の基準線の流れ方向に対する傾きθ、ワークWの重心位置G(図心位置)の座標を算出するものである。画像処理装置4は、画像撮影手段であるカメラ3、画像処理装置4(
図5参照)等を具備する。
【0030】
画像撮影手段であるカメラ3は、ワークWを撮影するものである。カメラ3は、上流側コンベア101によって搬送されてくるワークWをパラレルリンクロボット5よりも上流側で撮影可能な位置に設けられている(黒塗矢印参照)。また、カメラ3は、上流コンベア上のコンベア基準位置を撮影視野(薄墨部分)における視野基準位置と一致するように配置されている。カメラ3は、図示しない照明装置で撮影タイミングに合わせて照らされるワークWを撮影し、撮影したワークWの画像を画像処理装置4に送信可能に構成されている。
【0031】
画像処理装置4は、撮影されたワークWの画像からワークWの長手方向の基準線の流れ方向に対する傾きθおよびワークWの重心位置Gを算出するものである。画像処理装置4は、実体的には、CPU、ROM、RAM、HDD等がバスで接続される構成であってもよく、あるいはワンチップのLSI等からなる構成であってもよい。画像処理装置4は、カメラ3動作を制御したり、ワークWの重心位置Gや傾きを算出したりするために種々のプログラムやデータが格納されている。
【0032】
図1(b)に示すように、画像処理装置4は、カメラ3が撮影した画像におけるワークWの形状からワークWの重心位置Gを算出するように構成されている。また、画像処理装置4は、上流コンベアの流れ方向に対して、ワークWの重心を通るワークWの長手方向の基準線の流れ方向に対する傾きθを算出するように構成されている。また、画像処理装置4は、撮影された画像の単位画素における実際の長さと、視野基準位置からワークWの重心位置Gまでの画素数とから、ワークWを撮影した瞬間におけるコンベア基準位置(視野基準位置)を原点とするワークWの重心位置Gの座標を算出するように構成されている。画像処理装置4は、算出したワークWの長手方向の基準線の流れ方向に対する傾きθとワークWの重心位置Gの座標とを制御装置24に送信可能に構成されている。
【0033】
図5に示すように、画像処理装置4は、カメラ3と図示しない照明装置とに接続され、カメラ3と照明装置とを制御することができる。また、画像処理装置4は、カメラ3が撮影したワークWの画像を取得することができる。画像装置は、図示しない入力手段から単位画素における実際の長さを取得することができる。このように構成される画像処理システム2は、上流コンベアによって搬送されてくるワークW毎の上流コンベア上の位置とワークWの長手方向の基準線の流れ方向に対する傾きθで示されるワークWの姿勢とを算出することができるように構成されている。
【0034】
図1と
図2に示すように、パラレルリンクロボット5は、可動範囲内における任意の場所に把持装置14を移動させるロボットである。パラレルリンクロボット5は、上流側コンベア101と下流側コンベア102とが可動範囲に含まれるようにしてコンベアの上方に配置されている。パラレルリンクロボット5は、三つのリンク機構7を並列に配置した3自由度のパラレルメカニズムに回転軸機構11(
図2参照)を加えた4自由度を有するロボットである。つまり、パラレルリンクロボット5は、X軸方向(上流コンベアの流れ方向)、Y軸方向(上流コンベアの幅方向)、Z軸方向(高さ方向)の3方向において任意の位置に把持装置14を移動可能に構成されている。さらに、パラレルリンクロボット5は、回転軸機構11によりZ軸回りに把持装置14(
図2参照)を回転可能に構成されている。パラレルリンクロボット5は、固定部材6、三つのリンク機構7、回転軸機構11(
図2参照)、移動部材13(
図2参照)を具備する。
【0035】
固定部材6は、パラレルリンクロボット5の基部であり、三つのリンク機構7、回転軸機構11が固定されるものである。固定部材6は、略板状に形成され、一側面に三つのリンク機構7が設けられ、他側面に回転軸機構11が設けられている。固定部材6は、図示しないパラレルリンクロボット5用のフレームに固定され、上流側コンベア101と下流側コンベア102との上方に配置されている。
【0036】
三つのリンク機構7は、移動部材13を所定の姿勢に維持した状態で任意の位置に移動させるものである。三つのリンク機構7は、それぞれ並進用駆動モータ8と第一アーム9と第二アーム10とを具備する。三つのリンク機構7は、固定部材6に120°毎に等角配置されている。
【0037】
並進用駆動モータ8は、エンコーダを備えるサーボモータから構成されている。つまり、並進用駆動モータ8は、制御装置24からの指令に基づく加速時間、回転速度、回転量で駆動可能に構成されている。並進用駆動モータ8の出力軸には、所定の減速比の減速機が設けられている。並進用駆動モータ8は、ブラケットを介して固定部材6に設けられている。並進用駆動モータ8は、減速機の出力軸が固定部の一側面と平行になるように配置されている。
【0038】
第一アーム9は、十分な剛性を有するパイプ状部材から構成されている。第一アーム9の一側端には、減速機の出力軸が相対回転不能に連結されている。これにより、第一アーム9は、並進用駆動モータ8によって制御装置24からの指令に基づく加速時間、回転速度、回転角の範囲で揺動可能に構成されている。
【0039】
第二アーム10は、一対の短辺側リンク10aと一対の長辺側リンク10bとから構成されている。一対の短辺側リンク10aは、両端部に球面ジョイントのインナー側部材(凸側部材)が設けられている。一対の長辺側リンク10bは、両端部に球面ジョイントのアウター側部材(凹側部材)が設けられている。一方の短辺側リンク10aは、第一アーム9の他側端部に相対回転不能に設けられている。一方の短辺側リンク10aは、その軸方向が第一アーム9を揺動する減速機の出力軸と平行になるように配置されている。一方の短辺側リンク10aに設けられている球面ジョイントのインナー側部材には、一対の長辺側リンク10bの一方の端部に設けられている球面ジョイントのアウター側部材が嵌合されている。また、他方の短辺側リンク10aに設けられている球面ジョイントのインナー側部材には、一対の長辺側リンク10bの他方の端部に設けられている球面ジョイントのアウター側部材が嵌合されている。つまり、第二アーム10は、隣り合う長辺側リンク10bと短辺側リンク10aとが球面ジョイントにより揺動自在に連結されることで平行リンク機構が構成されている。これにより、第二アーム10は、その姿勢に関わらず短辺側部材同士が平行な状態を維持している。
【0040】
回転軸機構11は、移動部材13に設けられる把持装置14をZ軸回りに回転させるものである。回転軸機構11は、回転用駆動モータ12aと連結軸12bとを具備する。回転軸機構11は、固定部材6の中心部に配置されている。
【0041】
回転用駆動モータ12aは、エンコーダを備えるサーボモータから構成されている。つまり、回転用駆動モータ12aは、制御装置24からの指令に基づく加速時間、回転速度、回転量で駆動可能に構成されている。回転用駆動モータ12aの出力軸には、所定の減速比の減速機が設けられている。回転用駆動モータ12aは、固定部材6に設けられている。回転用駆動モータ12aは、減速機の出力軸が固定部の一側面に対して垂直になるように配置されている。
【0042】
連結軸12bは、回転用駆動モータ12aの動力を移動部材13に伝達するものである。連結軸12bの一側端には、途中部にユニバーサルジョイントを介して減速機の出力軸が相対回転不能に接続されている。また、連結軸12bの他側端には、途中部にユニバーサルジョイントを介して移動部材13が連結されている。連結軸12bは、移動部材13に対して相対回転自在に構成されている。連結軸12bは、軸方向に伸縮自在に構成されている。
【0043】
移動部材13は、パラレルリンクロボット5の出力部であり、三つのリンク機構7を互いに連結するとともに、回転軸機構11が連結されるものである。移動部材13は、略板状に形成されている。移動部材13は、同一平面上に三つのリンク機構7を構成する第二アーム10の短辺側リンク10aが相対回転不能に連結されている。また、移動部材13は、その中心位置を貫通するようにして回転軸機構11の連結軸12bが相対回転自在に連結されている。つまり、移動部材13は、平行リンク機構である三つの第二アーム10を互いに連結することで固定部材6に対して平行な姿勢で支持されている。これにより、移動部材13は、三つのリンク機構7の姿勢に関わらず固定部材6に対して平行な状態を維持している。さらに、移動部材13は、回転軸機構11の連結軸12bの端部が垂直な状態を維持している。
【0044】
このように構成されるパラレルリンクロボット5は、三つのリンク機構7における第一アーム9と第二アーム10の長さによって移動部材13の可動範囲が定まる。パラレルリンクロボット5は、三つのリンク機構7における並進用駆動モータ8をそれぞれ駆動することで、移動部材13を平行に保った状態で可動範囲内を任意の軌跡で任意の位置に移動させることができる。また、パラレルリンクロボット5は、回転軸機構11における回転用駆動モータ12aを駆動することで、移動部材13に設けられる把持装置14を任意の姿勢に回転させることができる。
【0045】
図3に示すように把持装置14は、ワークWを把持するものである。把持装置14は、パラレルリンクロボット5の移動部材13に設けられている。把持装置14は、ベース部材15、チャンバー16、開閉弁17、四つの伸縮部材18、四つの摺動部材19、四つの案内部材20、支持部材21、押え部材22および四つの把持部材23を具備する。
【0046】
ベース部材15は、把持装置14の基部となるものである。ベース部材15は、長方形の頂点を切り落とした略ひし形状の板状部材から構成されている。ベース部材15は、アルミ合金等の軽金属から構成されている。ベース部材15の一側面には、チャンバー16が構成されている。ベース部材15の他側面には、パラレルリンクロボット5の移動部材13が相対回転自在に連結可能に構成されている。
【0047】
チャンバー16は、四つの伸縮部材18の内部の圧力を同時に負圧にするものである。チャンバー16は、アルミ合金等の軽金属から構成されている。チャンバー16は、一側面が開口されている筐体に形成されている。チャンバー16は、開口している一側面をベース部材15の一側面にパッキン等を介して気密性を有した状態で固定されている。つまり、チャンバー16は、ベース部材15によって一側面が塞がれている。チャンバー16には、単一の開閉弁17(
図5参照)を介して吸引ブロワ103が接続され、チャンバー16内の気体が外部に排出されるように構成されている。吸引ブロワ103は、パラレルリンクロボット5用のフレームの上部に設けられている。
【0048】
四つの蛇腹状の伸縮部材18は、把持部材23を駆動させるものである。四つの伸縮部材18は、略中空円筒状に形成され、側面が蛇腹状に形成されている。伸縮部材18は、蛇腹状の側面が互いに近接することで軸方向に収縮する蛇腹から構成されている。伸縮部材18は、可撓性素材から構成され、例えば樹脂NBR(アクリロニトリル-ブタジエンゴム)、HNBR(水素化アクリロニトリル・ブタジエンゴム)、EPDM(エチレンプロピレンゴム)、ACM(ポリアクリルゴム)、PU(ポリウレタン)、FKM(フッ素ゴム)、あるいはシリコンゴム等の合成ゴムから構成されている。
【0049】
四つの伸縮部材18の一側端は、チャンバー16の他側面に気密性を有した状態で固定されている。つまり、伸縮部材18は、チャンバー16の他側面によって一側開口部を塞がれている。四つの伸縮部材18のうち二つの伸縮部材18は、チャンバー16の他側面における平面視で長辺方向の両側端部にそれぞれ配置されている。他の二つの伸縮部材18は、チャンバー16の他側面における平面視で短辺方向の両側端部にそれぞれ配置されている。つまり、四つの伸縮部材18は、長辺方向に配置されている二つの伸縮部材18の間に二つの伸縮部材18が短辺方向に並ぶように配置されている。チャンバー16の他側面において伸縮部材18の内部空間と重複している部分には、チャンバー16の内部と伸縮部材18の内部とを連通している吸引孔16aがそれぞれ形成されている。四つの伸縮部材18は、チャンバー16の内部の圧力低下に伴って、伸縮部材18の内部の圧力が同時に低下するように構成されている。これにより、四つの伸縮部材18は、チャンバー16の内部が減圧されると内部の圧力と外部の大気圧との圧力差によって他側端が一側端に近接するように収縮される。また、四つの伸縮部材18は、それぞれ独立して伸縮可能に構成されている。
【0050】
四つの摺動部材19は、伸縮部材18の伸縮を把持部材23に伝達して伸縮部材18と把持部材23とを連動させるものである。摺動部材19は、ブロック状に形成されている。摺動部材19は、真鍮等の部材から構成されている。摺動部材19は、四つの伸縮部材18の他側端に気密性を有した状態でそれぞれ固定されている。つまり、摺動部材19は、伸縮部材18の他側開口部を塞いでいる。摺動部材19における伸縮部材18の伸縮方向に平行な一対の側面には、伸縮部材18の伸縮方向に対して直交する方向に溝19aがそれぞれ形成されている。さらに、摺動部材19には、伸縮部材18の軸心と重複する位置に案内孔19bが形成されている。
【0051】
四つの案内部材20は、摺動部材19を介して、四つの伸縮部材18を案内するものである。案内部材20は、ステンレス合金等からなる円柱状部材から構成されている。案内部材20は、伸縮部材18の軸心に沿って重複するように、伸縮部材18の内部にそれぞれ設けられている。案内部材20の一側端部は、チャンバー16の他側面に固定されている。案内部材20の他側端部は、摺動部材19の案内孔19bに挿入されている。つまり、案内部材20は、伸縮部材18の内部から摺動部材19を通じて伸縮部材18の外部に向かって延びるように配置されている。案内部材20は、気体の通過を抑制しつつ摺動部材19が摺動可能な微細な隙間が構成される外径に形成されている。これにより、案内部材20は、伸縮部材18の気密性を保ちつつ、摺動部材19を伸縮部材18の伸縮方向にのみ案内するように構成されている。同時に、案内部材20は、摺動部材19を介して伸縮部材18を伸縮方向にのみ案内するように構成されている。
【0052】
支持部材21は、一対の把持部材23を二組支持するものである。支持部材21は、略矩形の板状部材から構成されている。支持部材21は、その一側面が四本の案内部材20の他側端に固定されている。つまり、支持部材21は、案内部材20を介してベース部材15に支持されている。また、支持部材21は、案内部材20が挿入されている摺動部材19の抜け止めとして機能している。これにより、支持部材21は、伸縮部材18の伸縮量である摺動部材19のストローク範囲を定めている。つまり、把持装置14は、案内部材20の他側端に支持部材21を設けることで、伸縮部材18の伸縮量を案内部材20の長さで設定することができる。本実施形態において、把持装置14は、伸縮部材18が軸方向に所定量だけ収縮させた状態でチャンバー16の他側面と支持部材21との間に配置されている。把持装置14は、伸縮部材18が軸方向に膨張する弾性力によって摺動部材19を支持部材21に押圧している。
【0053】
支持部材21には、把持部材23を支持するための一対の軸受部21aが短辺方向に対向するようにして長辺部分に二組設けられている。一対の軸受部21aは、軸方向を長辺方向に沿うようにして互いに平行に配置されている。一対の軸受部21aは、支持部材21の一側面からベース部材15側に突出するようにして一体に形成されている。
【0054】
押え部材22は、ワークWに力を加えてその把持を補助するものである。押え部材22は、一方の端部が開口された略中空円筒状に形成され、側面が蛇腹状に形成されている。押え部材22は、蛇腹状の側面が互いに近接することで、その軸方向に伸縮可能な蛇腹から構成されている。押え部材22は、可撓性素材から構成され、例えば、樹脂NBR(アクリロニトリル-ブタジエンゴム)、HNBR(水素化アクリロニトリル・ブタジエンゴム)、EPDM(エチレンプロピレンゴム)、ACM(ポリアクリルゴム)、PU(ポリウレタン)、FKM(フッ素ゴム)、あるいはシリコンゴム等の合成ゴムから構成されている。押え部材22は、支持部材21の他側面の略中央であって把持装置14の中心位置に設けられている。つまり、押え部材22は、少なくとも二つの把持部材23のうち対となる把持部材23から略等しい距離になる位置に配置されている。また、押え部材22は、開口されている一方の端部をワークW側に向けて、伸縮方向が支持部材21の他側面に対して垂直になるように配置されている。押え部材22は、ワークWを把持する際にワークWを押えるとともに、把持部材23によって把持されたワークWに対して把持部材23に向かう力を加える。これにより、押え部材22は、ワークWを把持部材23とともに異なる方向から挟み込むので、安定的にワークWを把持することができる。
【0055】
四つの把持部材23は、ワークWを把持するものである。四つの把持部材23は、一対の把持部材23を二組構成している。把持部材23は、短辺部分と長辺部分が連続的に形成されている平面視略L字状の板状部材から構成されている。把持部材23の短辺部分は、動力が伝達される駆動側アーム23aとしてとして構成されている。把持部材23の長辺部分は、ワークWを把持する従動側アーム23bとして構成されている。把持部材23は、ワークWの把持に適した所定のレバー比になるように駆動側アーム23aの長さと従動側アーム23bの長さとが設定されている。駆動側アーム23aの端部には、駆動ピン23cが設けられている。駆動ピン23cは、摺動部材19の溝19aをガタなく移動可能な外径に形成されている。駆動側アーム23aと従動側アーム23bとの接続部分には、支持軸23dが設けられている。従動側アーム23bの端部は、ワークWを把持するための爪が形成されている。
【0056】
各把持部材23は、支持軸23dが支持部材21の対応する軸受部21aに相対回転自在に支持されている。各把持部材23は、駆動側アーム23aが支持部材21の一側である伸縮部材18側に配置され、従動側アーム23bが支持部材21を跨いで支持部材21の他側である押え部材22側に配置されている。各把持部材23は、駆動側アーム23aの駆動ピン23cが対応する摺動部材19の溝19aにそれぞれ挿入され、摺動部材19と連動可能に構成されている。つまり、各把持部材23は、独立して伸縮可能な対応する伸縮部材18にそれぞれ連動するように構成されている。
【0057】
図4に示すように、駆動ピン23cは、溝19aに沿って移動自在に構成されている。各把持部材23は、摺動部材19の案内部材20に沿った直進運動と、駆動ピン23cの支持軸23dを回転中心とする円弧運動とによって生じる摺動部材19と支持軸23dとの距離の変動を駆動ピン23cの溝19a内の移動により吸収するように構成されている。これにより、各把持部材23は、摺動部材19の直進運動を、支持軸23dを回転中心とする揺動運動に変換可能に構成されている。各把持部材23は、摺動部材19の直進により駆動側アーム23aが摺動部材19の移動方向に揺動し、従動側アーム23bが支持部材21の短辺方向に揺動するように構成されている。つまり、一対の把持部材23は、支持部材21の短辺方向に対向配置されている従動側アーム23bが互いに近接する方向と離間する方向に移動可能に構成されている(黒塗矢印参照)。
【0058】
このように構成される把持装置14は、把持部材23が上流側コンベア101または下流側コンベア102と対向するように下方に向けてパラレルリンクロボット5の移動部材13に取り付けられている(
図2参照)。把持装置14は、チャンバー16内を排気することで各伸縮部材18の内部の圧力が減圧され、各伸縮部材18を軸方向に収縮させることができる。また、把持装置14は、各伸縮部材18の収縮によって摺動部材19を介して把持部材23が揺動するように構成されている。把持装置14は、各伸縮部材18の収縮により、一対の把持部材23の従動側アーム23bが互いに近接する方向に揺動される。これにより、把持装置14は、把持部材23の爪によってワークWを挟み込むことができる。
【0059】
図5に示すように、制御装置24は、ロボット搬送システム1を制御するものである。具体的には、制御装置24は、画像処理システム2、パラレルリンクロボット5、把持装置14、開閉弁17を制御するものである。さらに、制御装置24は、ロボット搬送システム1にワークWを搬送する上流側コンベア101、ワークWを排出する下流側コンベア102、吸引ブロワ103を制御するものである。制御装置24は、実体的には、CPU、ROM、RAM、HDD等がバスで接続される構成であってもよく、あるいはワンチップのLSI等からなる構成であってもよい。制御装置24は、画像処理システム2、パラレルリンクロボット5、把持装置14、吸引ブロワ103、開閉弁17、上流側コンベア101、下流側コンベア102、吸引ブロワ103の動作を制御するために種々のプログラムやデータが格納されている。
【0060】
制御装置24は、画像処理システム2の画像処理装置4が算出したワークWの長手方向の基準線の流れ方向に対する傾きθとワークWの重心位置Gの座標、上流側コンベア101の搬送速度等とに基づいて、パラレルリンクロボット5の移動部材13の軌跡および把持装置14の姿勢を算出する(
図1(b)参照)。そして、制御装置24は、算出した軌跡上のスキャンタイム毎の各座標における三つの並進用駆動モータ8および回転用駆動モータ12aの制御信号を生成する。制御装置24は、制御信号によってパラレルリンクロボット5を制御し、移動部材13に取り付けられている把持装置14を算出した軌跡に沿って移動させるとともに所定の姿勢になるように回転させる。制御装置24は、所定のタイミングで開閉弁17を切り替えて把持装置14の伸縮部材18を収縮させてワークWを把持するように制御する。
【0061】
制御装置24は、上流側コンベア101の駆動装置に接続され、上流側コンベア101の稼働状態を制御し、上流側コンベア101の搬送速度の情報を取得することができる。また、制御装置24は、下流側コンベア102の駆動装置に接続され、下流側コンベア102の稼働状態を制御し、下流側コンベア102の搬送速度の情報を取得することができる。
【0062】
制御装置24は、画像処理システム2の画像処理装置4に接続され、画像処理システム2の稼働状態を制御し、画像処理装置4からワークWの長手方向の基準線の流れ方向に対する傾きθとワークWの重心位置Gの座標を取得することができる。
【0063】
制御装置24は、取得した上流側コンベア101の搬送速度とワークWの長手方向の基準線の流れ方向に対する傾きθとワークWの重心位置Gの座標とからパラレルリンクロボット5によって搬送する把持装置14の軌跡および姿勢を算出することができる。
【0064】
制御装置24は、三つの並進用駆動モータ8に接続され、算出した把持装置14の軌跡に基づいて、スキャンタイム毎に三つの並進用駆動モータ8を制御することができる。また、制御装置24は、回転用駆動モータ12aに接続され、算出した把持装置14の軌跡および姿勢に基づいて、スキャンタイム毎に回転用駆動モータ12aを制御することができる。
【0065】
制御装置24は、開閉弁17に接続され、算出した把持装置14の軌跡に基づいて、開閉弁17を制御することができる。また、吸引ブロワ103に接続され、吸引ブロワ103の稼働状態を制御することができる。
【0066】
次に、把持装置14によるワークWの把持の態様について説明する。本実施形態において、把持装置14は、一対の把持部材23と連動している伸縮部材18が把持部材の揺動面上に配置されていない。従って、便宜上、一対の把持部材23と連動している伸縮部材18が一対の把持部材23の揺動面上に配置されているものとして説明する。ロボット搬送システム1は、画像処理システム2からワークWの長手方向の基準線の流れ方向に対する傾きθとワークWの重心位置Gの座標を取得し、パラレルリンクロボット5の軌跡と把持装置14の姿勢を算出しているものとする。ワークWは、煎餅等の不定形物であるものとする。
【0067】
ロボット搬送システム1は、パラレルリンクロボット5によって、把持装置14をワークWの上方に移動させる。ロボット搬送システム1は、ワークWの重心位置Gと把持装置14の中心位置とが重複し、ワークWの長手方向に一対の把持部材23が並ぶように把持装置14を配置する。また、ロボット搬送システム1は、パラレルリンクロボット5によって、上流側コンベア101で搬送されているワークWと把持装置14との位置関係を維持するように把持装置14の位置を制御している。
【0068】
図6(a)に示すように、把持装置14は、開閉弁17が閉状態であり、吸引ブロワ103によってチャンバー16から排気されていない(
図5参照)。つまり、把持装置14は、チャンバー16および四つの伸縮部材18内部の圧力が大気圧に維持され、各伸縮部材18内部の圧力と外部の圧力とが大気圧でつり合っている。各伸縮部材18は、外部からの力によって収縮されることなく、蛇腹の軸方向に膨張する弾性力によって摺動部材19を支持部材21に押圧している。一対の把持部材23は、摺動部材19と連動する駆動側アーム23aの先端が支持部材21側に保持されることで、従動側アーム23bが互いに最も離間している位置で保持される。
【0069】
ロボット搬送システム1は、パラレルリンクロボット5によって、把持装置14をワークWに近接させる。把持装置14は、押え部材22の蛇腹の軸方向に膨張する弾性力によってワークWを上流側コンベア101に押圧する(白塗矢印参照)。これにより、把持装置14は、把持部材23によってワークWを把持する際、把持部材23とワークWとの接触によってワークWの位置がずれることがない。
【0070】
図6(b)に示すように、把持装置14は、開閉弁17が開状態に切り替わると、吸引ブロワ103によってチャンバー16から排気される(
図5参照)。把持装置14は、チャンバー16および四つの伸縮部材18内部の圧力が同時に減圧され、各伸縮部材18の内部の圧力が外部の圧力である大気圧よりも小さくなる。各伸縮部材18は、内部の圧力と外部の圧力である大気圧との差によって生じる軸方向の収縮力が蛇腹の軸方向に膨張する弾性力よりも大きくなると、軸方向に収縮し始める。摺動部材19は、伸縮部材18の収縮に伴い、支持部材21から離間してチャンバー16に向かって移動される。これにより、一対の把持部材23は、摺動部材19と連動する駆動側アーム23aの先端がチャンバー16に向かって揺動されることで、従動側アーム23bが互いに近接する方向に揺動される(黒塗矢印参照)。
【0071】
図7(a)に示すように、把持装置14は、一対の把持部材23がワークWに接触することで把持部材23の揺動が停止する。同時に、把持装置14は、把持部材23と連動している摺動部材19が停止する。この際、把持装置14は、他の把持部材23の把持動作を継続し、ワークWと接触している把持部材23の把持力を維持するために吸引ブロワ103による吸引が継続されている。把持装置14は、ワークWを少なくとも二つの把持部材23によって把持するとともに、押え部材22がワークWに加える把持部材23に向かう力によってワークWを把持部材23に押さえつけている。このように、把持装置14は、ワークWを水平方向(横方向)と垂直方向(縦方向)との二方向から挟み込むことで、ワークWを安定的に把持している。伸縮部材18は、摺動部材19の停止に伴って軸方向の収縮量が定まるが、可撓性素材から構成されている蛇腹が径方向に変形する(薄墨矢印参照)。伸縮部材18は、軸心と重複する位置に案内部材20が配置されているので変形の偏りが抑制される。伸縮部材18は、吸引ブロワ103の吸引によって生じている収縮力を蛇腹の径方向の変形により吸収し、把持部材23を介してワークWに加わる力を低減させる。一対の把持部材23は、それぞれ同一の形状、材質であって内部の圧力が同一である伸縮部材18から力が伝達されている。すなわち、一対の把持部材23は、対応する伸縮部材18によって独立して揺動されつつ、同一の把持力によってワークWを把持している。
【0072】
また、
図7(b)に示すように、把持装置14は、一対の把持部材23のうち一方の把持部材23が先にワークWに接触すると、ワークWに接触した把持部材23の揺動が停止する。同時に、把持装置14は、ワークWに接触した把持部材23と連動している摺動部材19が停止する。一対の把持部材23のうちワークWに接触していない他方の把持部材23は、対応する伸縮部材18が独立して軸方向への収縮を継続するため、ワークWに接触するまで継続して揺動される。ワークWに接触して停止した把持部材23に対応する伸縮部材18は、軸方向の収縮を径方向の変形に変換することで収縮力を吸収し、把持部材23を介してワークWに加わる力を低減させる。一対の把持部材23は、対応する伸縮部材18によって独立して揺動されることでワークWに接触するまでのストローク差を吸収しつつ、同一の把持力によってワークWを把持している。
【0073】
ロボット搬送システム1は、パラレルリンクロボット5によって、ワークWを把持している把持装置14を下流側コンベア102上の解放位置に搬送する。ロボット搬送システム1は、解放位置において、開閉弁17を閉状態に切り替え、チャンバー16内の圧力を大気圧まで上昇させる。これにより、把持装置14は、各伸縮部材18内部の圧力と外部の圧力とが大気圧でつり合う。伸縮部材18は、蛇腹の軸方向に膨張する弾性力によって摺動部材19を支持部側材に移動させる。これにより、一対の把持部材23は、摺動部材19と連動する駆動側アーム23aの先端が支持部材21側に揺動されることで、従動側アーム23bが互いに離間する方向に揺動される。把持装置14は、把持部材23の従動側アーム23bの爪がワークWから離間してワークWを解放する。
【0074】
このように構成することで、把持装置14は、ワークWを押え部材22によって押圧した状態で把持部材23によって把持することで安定的にワークWを搬送することができる。また、把持装置14は、可撓性素材から構成されている伸縮部材18よってワークWを把持するまでの把持部材23毎のストローク差と把持力の上昇を伸縮部材18毎の径方向の変形によって吸収する。従って、把持装置14は、吸引ブロワ103による吸引力を低下させる必要がない。また、全ての伸縮部材18が互いに独立した状態を保ちつつ、同一の圧力変化によって伸縮されるため、一対の把持部材23がワークWを安定して把持することができる。また、伸縮部材18は、その中心位置において摺動部材19を介して案内部材20によって拘束されているので、摺動部材19の移動が円滑に行われ、伸縮部材18の変形が均一に生じる。さらに、把持部材23を駆動させる伸縮部材18は、アルミ合金等の金属筐体から構成されるエアシリンダ等に比べて軽量であり、把持力を抑制するために流体圧力(本実施形態では負圧)を小さくする必要がない。これにより、把持装置14は、把持部材23の開閉速度を低下させることなく把持部材23による把持力を抑制した状態で不定形物であるワークWを把持することができる。
【0075】
次に、
図8と
図9とを用いて、本発明に係る把持装置の第二実施形態である把持装置25について説明する。なお、以下の各実施形態に係る把持装置25は、
図1から
図7に示す把持装置14において、把持装置14に替えて適用されるものとして、その説明で用いた名称、図番、符号を用いることで、同じものを指すこととし、以下の実施形態において、既に説明した実施形態と同様の点に関してはその具体的説明を省略し、相違する部分を中心に説明する。
【0076】
図8(a)に示すように、把持装置25は、ワークWを把持するものである。把持装置25は、パラレルリンクロボット5の移動部材13に設けられている。把持装置25は、ベース部材15、チャンバー26、開閉弁17、四つの伸縮部材18、四つの摺動部材19、四つの案内部材20、支持部材21、押え部材22および四つの把持部材23を具備する。
【0077】
図8(b)に示すように、チャンバー26は、四つの伸縮部材18の内部の圧力をそれぞれ独立して負圧にするものである。各チャンバー26は、密閉された筐体として構成されている。各チャンバー26は、アルミ合金等の軽金属から構成されている。各チャンバー26は、ベース部材15と、一側面が開口されている筐体26aと、仕切り部材26bとから構成されている。筐体26aは、内部を仕切り部材26bによって四つの空間C1・C2・C3・C4に仕切られている。筐体26aは、開口している一側面をベース部材15の一側面にパッキン等を介して気密性を有した状態で固定されている。このように構成することで、四つの空間C1・C2・C3・C4は、ベース部材15の一側面に設けられている筐体26aの内部に隣接して配置されている。チャンバー26には、四つの空間C1・C2・C3・C4に対応する開閉弁17を介して吸引ブロワ103が接続されている。これにより、チャンバー26内の気体は、対応する開閉弁17を制御することで四つの空間C1・C2・C3・C4毎に独立して外部に排出されるように構成されている。
【0078】
四つの蛇腹状の伸縮部材18は、把持部材23を駆動させるものである。四つの伸縮部材18の一側端は、チャンバー26を構成する筐体26aに気密性を有した状態でそれぞれ固定されている。つまり、伸縮部材18は、チャンバー26の筐体26aによって一側開口部を塞がれている。筐体26aにおいて伸縮部材18の内部空間と重複している部分には、四つの空間C1・C2・C3・C4と対応する伸縮部材18の内部とを連通している吸引孔26cがそれぞれ形成されている。各伸縮部材18は、チャンバー26の対応する空間の内部の圧力低下に伴って、対応する伸縮部材18の内部の圧力がそれぞれ独立して低下するように構成されている。これにより、各伸縮部材18は、チャンバー26の対応する空間が減圧されると外部の大気圧によって他側端が一側端に近接するように収縮される。また、四つの伸縮部材18は、それぞれ独立して伸縮可能に構成されている。
【0079】
このように構成される把持装置25は、チャンバー26の四つの空間C1・C2・C3・C4に対応する開閉弁17を独立して制御することにより任意のタイミングで対応する各伸縮部材18を軸方向に収縮させることができる。つまり、把持装置25は、任意のタイミングで各伸縮部材18を収縮させることにより、任意の把持部材23を任意のタイミングで揺動させることができる。
【0080】
制御装置24は、吸引ブロワ103に接続され、吸引ブロワ103の稼働状態を制御することができる。また、制御装置24は、四つの開閉弁17にそれぞれ接続され、算出した把持装置25の軌跡に基づいて、四つの開閉弁17を独立して制御することができる。
【0081】
次に、ロボット搬送システム1において、把持装置25によるワークWの把持の態様について説明する。
【0082】
図9(a)に示すように、把持装置25をワークWの重心位置Gと重複するように配置した状態において、ワークWは、一方の把持部材23までの隙間よりも他方の把持部材23の隙間が大きくなる形状に形成されているものとする。すなわち、把持装置25は、一方の把持部材23におけるワークWに接触するまでの把持ストロークS1が他方の把持部材23におけるワークWに接触するまでの把持ストロークS2よりも長くなる位置に配置されている。
【0083】
図9(b)に示すように、ロボット搬送システム1は、ワークWを各把持部材23によって略同時に把持させたい場合、制御装置24が、一方の把持部材23の伸縮部材18と連通している空間C1に対応する開閉弁17を他方の把持部材23の伸縮部材18と連通している空間C2に対応する開閉弁17よりも先に開状態に切り替える(薄墨部分参照)。把持装置25は、伸縮部材18内部の圧力が各開閉弁17の開弁タイミングに合わせて減圧される。これにより、把持装置25は、一方の把持部材23が他方の把持部材23よりも先にワークWに近接するように揺動される。
【0084】
このように構成することで、把持装置25は、ワークWの形状に応じて適切に把持できるように、伸縮部材18が異なるタイミングによって伸縮される。これにより、把持部材23の開閉速度を低下させることなく、把持部材23による把持力を抑制した状態で不定形物を把持することができる。
【0085】
次に、
図10を用いて、本発明に係る把持装置の第三実施形態である把持装置27について説明する。
【0086】
把持装置27は、ワークWを把持するものである。把持装置27は、パラレルリンクロボット5の移動部材13に設けられている。把持装置27は、ベース部材15、チャンバー16、開閉弁17、四つの伸縮部材18、四つの摺動部材19、四つの案内部材28、支持部材21、押え部材22および四つの把持部材23を具備する。
【0087】
四つの案内部材28は、摺動部材19を介して、四つの伸縮部材18を案内するものである。案内部材28は、ステンレス合金等のパイプ状部材から構成されている。案内部材28の一側端部は、チャンバー16の他側面に固定されている。チャンバー16の他側面において案内部材28の中空部分と重複している部分には、チャンバー16の内部と案内部材28の中空部分とを連通している吸引孔16cがそれぞれ形成されている。
【0088】
押え部材22は、ワークWに力を加えてその把持を補助するものである。押え部材22は、略中空円筒状に形成され、側面が蛇腹状に形成されている。押え部材22は、支持部材21の他側面の略中央であって、四つの案内部材28のうちチャンバー16の他側面における平面視で長辺方向の両側端部に配置されている案内部材28と重複する位置にそれぞれ設けられている。また、押え部材22は、案内部材28の中空部28aに連通するように構成されている。つまり、押え部材22は、案内部材28の中空部28aを介してチャンバー16と連通されている。二つの押え部材22は、チャンバー16の内部の圧力低下に伴って、押え部材22の内部の圧力が同時に低下するように構成されている。これにより、二つの押え部材22は、ワークWを押圧することで開口部が塞がれると、チャンバー16の内部に減圧に伴い、ワークWを吸着するように構成されている。
【0089】
把持装置27は、吸引ブロワ103によってチャンバー16から排気されると、各伸縮部材18が軸方向に収縮し始める。摺動部材19は、伸縮部材18の収縮に伴い、支持部材21から離間してチャンバー16に向かって移動される。同時に、押え部材22は、その内部が減圧され、各押え部材22の内部の圧力が外部の圧力である大気圧よりも小さくなる。各押え部材22は、内部の圧力と外部の大気圧との差に基づく力によってワークWを吸着する。
【0090】
このように構成することで、把持装置27は、押え部材22によってワークWを固定して把持するだけでなく、ワークWを吸着することでより安定してワークWを搬送することができる。
【0091】
次に、
図11と
図12とを用いて、本発明に係る把持装置の第四実施形態である把持装置29について説明する。
【0092】
図11に示すように、把持装置29は、ワークWを把持するものである。把持装置29は、パラレルリンクロボット5の移動部材13に設けられている。把持装置29は、ベース部材15、チャンバー16、四つの伸縮部材18、四つの摺動部材19、四つの案内部材20、支持部材21、押え部材22、四つの把持部材23、四つの弾性部材であるバネ30および開閉弁の一種である切換弁31を具備する。
【0093】
四つのバネ30は、各摺動部材19を伸縮部材18の延伸方向に押圧するものである。バネ30は、圧縮コイルばねから構成されている。バネ30は、伸縮部材18の内部であってチャンバー16と摺動部材19との間に配置されている。また、バネ30は、その内部に案内部材20が挿入されている。これにより、バネ30は、案内部材20によって伸縮部材18の伸縮方向にのみ弾性変形するように構成されている。バネ30は、摺動部材19が支持部材21に接触している状態で伸縮部材18の延伸方向に所定のバネ荷重(初期荷重)で押圧するように構成されている。つまり、バネ30は、伸縮部材18の伸縮状態に関わらず、常に摺動部材19を伸縮部材18の延伸方向に押圧している。なお、バネ30は、摺動部材19が支持部材21に接触している状態で初期荷重が発生しないように構成してもよい。
【0094】
切換弁31は、気体の供給または排出経路を切り換えるものである。切換弁31は、電磁切換弁から構成されている。切換弁31は、チャンバー16に接続されている。また、切換弁31には、吸引ブロワ103と圧縮空気源Pとが接続されている。切換弁31は、電磁石によって内部のスプールの位置を変更することで、吸引ブロア103によってチャンバー16の内部の空気が外部に排出される状態(排気状態)と、チャンバー16が大気解放される状態(解放状態)と、圧縮空気源から圧縮空気がチャンバー16の内部に供給される状態(給気状態)とに切り替え可能に構成されている。
【0095】
制御装置24は、切換弁31に接続され、算出した把持装置29の軌跡に基づいて、切換弁31を排気状態と解放状態と給気状態とのうちいずれかの状態に切り替えることができる。
【0096】
次に、把持装置29によるワークWの把持の態様について説明する。
【0097】
図12(a)に示すように、把持装置29は、切換弁31が排気状態に切り替わると、吸引ブロワ103によってチャンバー16内から排気される。把持装置29は、チャンバー16および四つの伸縮部材18の内部の圧力が同時に減圧され、各伸縮部材18の内部の圧力が外部の圧力である大気圧よりも小さくなる。各伸縮部材18は、内部の圧力と外部の圧力である大気圧との差によって生じる軸方向の収縮力が、蛇腹の軸方向に膨張する弾性力とバネ30のバネ荷重との合力よりも大きくなると軸方向に収縮し始める。摺動部材19は、伸縮部材18の収縮に伴い、支持部材21から離間してチャンバー16に向かって移動される。これにより、一対の把持部材23は、摺動部材19と連動する駆動側アーム23aの先端がチャンバー16に向かって揺動されることで、従動側アーム23bが互いに近接する方向に揺動される(黒塗矢印参照)。
【0098】
図12(b)に示すように、把持装置29は、切換弁31が給気状態に切り替わると、圧縮空気源によってチャンバー16内に給気される。把持装置29は、チャンバー16および四つの伸縮部材18の内部の圧力が同時かつ急激に増圧され、低圧(真空)状態が破壊される。これにより、各伸縮部材18の内部の圧力は、外部の圧力である大気圧以上になる。この際、切換弁31は、給気によって伸縮部材18が破損しないように、給気状態に切り替わってから所定時間経過後に解放状態に切り替わる。また、圧縮空気源からの空気圧は、給気によって伸縮部材18が破損しないように、所定の圧力以下に設定されている。各摺動部材19は、伸縮部材18の内部の圧力と外部の圧力である大気圧との差によって生じる軸方向の延伸力と、伸縮部材18の蛇腹の軸方向に膨張する弾性力と、伸縮部材18の収縮量に応じたバネ30のバネ荷重と、の合力(白塗矢印参照)より支持部材21側に移動される。これにより、一対の把持部材23は、摺動部材19と連動する駆動側アーム23aの先端が支持部材21側に揺動されることで、従動側アーム23bが互いに離間する方向に揺動される(黒塗矢印参照)。なお、本実施形態において、把持装置29は、単一の切換弁31によって給気状態、解放状態、排気状態が切り換えられているが、各伸縮部材18に対応する切換弁31を設け、独立した切換制御を行う構成でもよい。
【0099】
このように構成することで、把持装置29は、給気による伸縮部材18の内部の圧力の増大による軸方向の延伸力と、バネ30のバネ荷重による軸方向の遠心力とで伸縮部材18を延伸させる。つまり、伸縮部材18は、弾性力だけで延伸する場合に比べて早い速度で延伸されるので把持部材23によるワークWの解放時間が短縮される。これにより、把持部材23の開閉速度を低下させることなく、把持部材23による把持力を抑制した状態で不定形物を安定して把持することができる。
【0100】
次に、
図13と
図14とを用いて、本発明に係る把持装置の第五実施形態である把持装置32について説明する。
【0101】
図13に示すように、把持装置32は、ワークWを把持するものである。把持装置32は、パラレルリンクロボット5の移動部材13に設けられている。把持装置32は、ベース部材15、チャンバー16、開閉弁17、四つの伸縮部材18、四つの摺動部材19、四つの案内部材20、押え部材22、四つの把持部材23、支持部材33、および押え部材用開閉弁34を具備する。
【0102】
支持部材33は、一対の把持部材23を二組支持するものである。支持部材33は、略矩形の板状部材から構成されている。支持部材33は、その平面のうち一側面が四本の案内部材20の他側端に固定されている。支持部材33の他側面には、略中央に押え部材22が固定されている。また、支持部材33には、空気の給排気用の空気経路33aが形成されている。空気経路33aは、支持部材33の一端面に一方の開口が形成され、押え部材22が固定されている支持部材33の他側面に他方に開口が形成されている。つまり、空気経路33aは、押え部材22の内部と外部とを連通している。
【0103】
押え部材用開閉弁34は、空気経路33aを開閉するものである。押え部材用開閉弁34は、電磁切換弁から構成されている。押え部材用開閉弁34は、空気経路33aに接続されている。また、押え部材用開閉弁34には、圧縮空気源Pが接続されている。押え部材用開閉弁34は、電磁石によって内部のスプールの位置を変更することで、圧縮空気源から圧縮空気が押え部材22の内部に供給される状態(開状態)と、押え部材22の内部に給気されない状態(閉状態)と、に切り替え可能に構成されている。
【0104】
制御装置24は、押え部材用開閉弁34に接続され、算出した把持装置32の軌跡に基づいて、押え部材用開閉弁34の開閉状態を切り替えることができる。
【0105】
次に、把持装置32によるワークWの把持の態様について説明する。
【0106】
図14(a)に示すように、把持装置32は、押え部材用開閉弁34が開状態に切り替わると、圧縮空気源Pから押え部材22の内部に圧縮空気が給気される。把持装置32は、押え部材22のワークW側の開口から圧縮空気が外部に噴出される。把持装置32は、押え部材22がワークWに接触する前に、押え部材22の開口から噴出される圧縮空気によってワークWを上流側コンベア101に押圧する(白塗矢印参照)。把持装置32は、圧縮空気を噴出しながら、押え部材22をワークWに近接させる。把持装置32は、押え部材22がワークWに接触する直前に押え部材用開閉弁34が閉状態に切り替えられる。つまり、把持装置32は、押え部材22がワークWに接触するまで圧縮空気によってワークWを押圧し、押え部材22がワークWに接触すると押え部材22の弾性力によってワークWを上流側コンベア101に押圧する(
図6(a)参照)。これにより、把持装置32は、把持部材23によってワークWを把持する際、把持部材23とワークWとの接触前にワークWの位置がずれることがない。
【0107】
把持装置32は、開閉弁17が開状態に切り替わると、吸引ブロワ103によってチャンバー16から排気され、各伸縮部材18が軸方向に収縮し始める。これにより、一対の把持部材23は、摺動部材19と連動する駆動側アーム23aの先端がチャンバー16に向かって揺動されることで、従動側アーム23bが互いに近接する方向に揺動される(
図6(b)参照)。把持装置32は、一対の把持部材23毎に対応する伸縮部材18によって独立して揺動されることでワークWに接触するまでのストローク差を吸収しつつ、同一の把持力によってワークWを把持する。
【0108】
図14(b)に示すように、把持装置32は、開閉弁17が閉状態に切り替えられると、チャンバー16内の圧力を大気圧まで上昇させる。これにより、把持装置32は、把持部材23の従動側アーム23bの爪がワークWから離間してワークWを解放する。この際、把持装置32は、押え部材用開閉弁34が開状態に切り替わり、圧縮空気源Pから押え部材22の内部に圧縮空気が給気される。把持装置32は、押え部材22の内部の圧力が外部の圧力である大気圧よりも大きくなる。これにより、ワークWには、押え部材22の内部の圧力に応じた力が生じる。把持装置32は、把持部材23の従動側アーム23bの爪をワークWから離間させるとともに、押え部材22の弾性力と押え部材22の内部の圧力に応じた力によってワークWを下流側コンベア102に押さえつける。さらに、把持装置32は、押え部材22の内部の圧力に応じた力によって押え部材22からワークWを離間させる。
【0109】
このように構成することで、把持装置32は、押え部材22の内部に給気することによって、ワークWに接触する前に圧縮空気によってワークWを上流側コンベア101に押し付けて安定させる。また、把持装置32は、ワークWから離間する際、押え部材22の内部の圧力を上昇させることで押え部材22からワークWが離間し易くする。つまり、把持装置32は、把持部材23の開閉時に押え部材22と圧縮空気とによってワークWを安定させる。これにより、把持部材23の開閉速度を低下させることなく、把持部材23による把持力を抑制した状態で不定形物を安定して把持することができる。
【0110】
なお、本発明にかかる把持装置14・25・27・29・32において、把持部材23は、所定のレバー比からなる駆動側アーム23aと従動側アーム23bとから構成されているが、把持部材23を支持部材21から着脱容易に構成し、任意のレバー比の把持部材23に交換する構成でもよい。このように構成することで、ワークWの形状や強度に基づいて把持部材23のレバー比が適切に設定される。これにより、把持部材23の開閉速度を低下させることなく、把持部材23による把持力を抑制した状態で不定形物を把持することができる。
【0111】
把持装置14・25・27・29・32は、吸引ブロワ103による吸引によって伸縮部材18の伸縮部材18の内部圧力を減圧しているが、真空ポンプやエジェクターによって伸縮部材18の内部圧力を減圧する構成でもよい。なお、エジェクターを用いる場合、把持装置14・25・27・29・32の近傍にエジェクターを取り付けることが望ましい。また、把持装置14・25・27・29・32は、吸引ブロワ103による吸引によって伸縮部材18の内部圧力を減圧して伸縮部材18を伸縮させているが、圧縮空気による加圧によって伸縮部材18の内部圧力を増圧して伸縮部材18を伸縮させる構成でもよい。
【0112】
上述の実施形態は、代表的な形態を示したに過ぎず、一実施形態の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
【符号の説明】
【0113】
1 ロボット搬送システム
14 把持装置
18 伸縮部材
19 摺動部材
20 案内部材
23 把持部材