(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-07
(45)【発行日】2022-09-15
(54)【発明の名称】両軸受リール
(51)【国際特許分類】
A01K 89/015 20060101AFI20220908BHJP
【FI】
A01K89/015 F
(21)【出願番号】P 2018065758
(22)【出願日】2018-03-29
【審査請求日】2021-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】503230070
【氏名又は名称】シマノコンポネンツ マレーシア エスディーエヌ.ビーエッチディー.
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】モホド シャムソル ジョハリ ビン イスマイル
(72)【発明者】
【氏名】アブ スピアン ビン アーマッド
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-178316(JP,A)
【文献】特開2014-042471(JP,A)
【文献】特開2015-228799(JP,A)
【文献】特開2010-166882(JP,A)
【文献】特開2009-095245(JP,A)
【文献】米国特許第04746079(US,A)
【文献】特開2012-065574(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 89/00-89/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドル及びスプールを連結し且つ前記ハンドル及び前記スプールの連結を解除するクラッチ機構を有する両軸受リールであって、
前記ハンドルのハンドル軸を支持する金属製のフレームと、
前記クラッチ機構を連結状態及び連結解除状態に切り換えるためのクラッチヨークと、
前記フレームに装着される本体部と、前記本体部と一体に形成され前記クラッチヨークを軸方向に案内する支持部とを、有する樹脂製のガイド部材と、
前記クラッチヨークを前記軸方向に移動させるクラッチカムと、
を備え、
前記本体部は、前記フレーム及び前記クラッチカムの間に配置され前記フレームに固定される固定部と、前記固定部から突出し前記フレームの開口に装着される筒状部と、を有
し、
前記支持部は、前記本体部から突出し少なくとも一部が実質的に筒状に形成されたガイド軸を、有し、
前記ガイド軸の内周部には、金属製の補強部材が配置される、
両軸受リール。
【請求項2】
前記固定部は、前記クラッチカムの径方向外側で前記フレームに固定される、
請求項
1に記載の両軸受リール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両軸受リール、特に、ハンドル及びスプールを連結し且つハンドル及びスプールの連結を解除するクラッチ機構を有する両軸受リールに、関する。
【背景技術】
【0002】
両軸受リールには、ハンドルとスプールとの間にクラッチ機構が設けられている(例えば、特許文献1参照)。クラッチ機構は、ハンドルとスプールとを連結及び連結解除する。クラッチ機構は、クラッチヨークと、クラッチヨークを支持する支柱部材とを、備える。
【0003】
例えば、特許文献1の支柱部材では、2本の支柱部と、フレームに取り付けるための本体部が、一体的に形成される。特許文献2では、2本の支柱部材が、フレームに直接的に取り付けられる。これら支柱部材は、荷重を受けたピニオンギアをスプール軸方向に移動させるクラッチヨークを支持する必要があるため、金属製であることが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-172203号公報
【文献】特開2015-163055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の両軸受リールでは、金属製の支柱部材に水や塩水等が付着した場合に、支柱部材が腐食するおそれがある。ここで、金属製の支柱部材が腐食した場合、支柱部材の強度及び形状が損なわれる。また、支柱部材とクラッチヨークとが析出した塩で固着したり、支柱部材の表面粗度が大きくなったりする。すなわち、従来の支柱部材では、クラッチヨークを軸方向に好適に案内できなくなるおそれがある。
【0006】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、クラッチヨークを好適に案内可能な両軸受リールを、提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係る両軸受リールは、ハンドル及びスプールを連結し且つハンドル及びスプールの連結を解除するクラッチ機構を、有する。本両軸受リールは、金属製のフレームと、クラッチヨークと、樹脂製のガイド部材とを、備える。
【0008】
金属製のフレームは、ハンドルのハンドル軸を支持する。クラッチヨークは、クラッチ機構を連結状態及び連結解除状態に切り換えるためのものである。樹脂製のガイド部材は、フレームに装着される本体部と、本体部と一体に形成されクラッチヨークを軸方向に案内する支持部とを、有する。
【0009】
本両軸受リールでは、支持部が樹脂製であるので、支持部の腐食を防止することができる。すなわち、本両軸受リールでは、腐食による支持部の変形及び支持部の強度低下が生じないので、クラッチヨークを支持部によって好適に案内することができる。また、析出物による支持部及びクラッチヨークの固着と、支持部の表面粗度の増加を防止することができ、クラッチヨークを支持部によって好適に案内することができる。
【0010】
また、本両軸受リールでは、本体部が樹脂製であるので、本体部の腐食を防止することができる。これにより、本体部の腐食による支持部の姿勢変化が生じないので、クラッチヨークを支持部によってより好適に案内することができる。
【0011】
本発明の別の側面に係る両軸受リールでは、支持部は、ガイド軸を有する。ガイド軸は、本体部から突出している。ガイド軸の少なくとも一部は、実質的に筒状に形成される。この場合、ガイド軸の内周部には、補強部材が配置される。
【0012】
この構成では、補強部材がガイド軸の内周部に配置されるので、ガイド軸の強度を向上することができる。これにより、クラッチヨークを支持部(ガイド軸)によって好適に案内することができる。
【0013】
本発明の別の側面に係る両軸受リールでは、補強部材は、金属製であることが好ましい。この構成によって、突出部の強度をさらに向上することができ、クラッチヨークを支持部(突出部)によって好適に案内することができる。
【0014】
本発明の別の側面に係る両軸受リールは、クラッチヨークを軸方向に移動させるクラッチカムを、さらに備える。本体部は、フレームとクラッチカムとの間に、配置される。
【0015】
このように構成しても、クラッチヨークを支持部(突出部)によって好適に案内することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、両軸受リールにおいて、クラッチヨークを好適に案内することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態が採用された両軸受リールの側面図。
【
図2】
図1の切断線II-IIにおける両軸受リールの断面図。
【
図3】両軸受リールのフレームに配置されたクラッチ制御装置の斜視図。
【
図5】
図4の切断線V-Vにおけるガイド部材の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態を採用した両軸受リール1は、
図1に示すように、釣り竿に装着可能なリール本体3と、リール本体3の側方に配置されたスプール回転用のハンドル4と、リール本体3に回転自在に装着されたスプール7(
図2を参照)とを、備える。
図2に示すように、両軸受リール1は、ハンドル4及びスプール7を連結可能、且つハンドル4及びスプール7の連結を解除可能なクラッチ機構25を、さらに備える。
【0019】
なお、以下では、スプール7の回転中心軸を、スプール軸心Xと記す。また、スプール軸心Xが延びる方向、及びスプール軸心Xに沿う方向を、スプール軸方向と記し、スプール軸心Xを中心としてスプール軸心Xまわりの方向を、周方向(回転方向)と記す。さらに、スプール軸心Xを中心としてスプール軸心Xから離れる方向を、径方向と記す。
【0020】
<リール本体>
図2に示すように、リール本体3は、金属製のフレーム5と、フレーム5の両側方を覆うように装着された第1側カバー6a及び第2側カバー6bと、フレーム5の前方に装着された前カバー8(
図1を参照)とを、有する。
【0021】
フレーム5は、互いに間隔を隔てて対向配置された第1側板9a及び第2側板9bを、有する。第1側板9a及び第2側板9bは、連結部9cによって連結される。
【0022】
第1側板9aは、第1開口9dを有する。第1開口9dには、軸受収納部16が固定される。第2側板9bには、後述するクラッチ制御装置30が装着される。第2側板9bは、スプール軸15が通過する第2開口9eを、有する。第1側カバー6aは、フレーム5の第1側板9aに装着される。第2側カバー6bは、フレーム5の第2側板9bに装着される。
【0023】
図3に示すように、フレーム5、例えば第1側板9a及び第2側板9bの間には、スプール7と、クラッチ操作部材11とが、配置される。また、フレーム5と第2側カバー6bとの間には、例えば、後述する回転伝達機構13と、クラッチ制御装置30とが、配置される。すなわち、両軸受リール1は、クラッチ操作部材11と、回転伝達機構13と、クラッチ制御装置30とを、さらに有する。
【0024】
<スプール>
図2及び
図3に示すように、スプール7は、第1側板9aと第2側板9b間に回転自在に配置される。スプール7は、スプール軸15と一体回転可能なように、スプール軸15に固定される。
【0025】
スプール軸15は、リール本体3に対して回転可能に構成される。例えば、
図2に示すように、スプール軸15の一端部は、軸受収納部16に配置された軸受16aを介して、第1側板9aに対して回転自在に支持される。スプール軸15の他端部は、軸受16bを介して、第2側板9bに回転自在に支持される。スプール軸15には、クラッチ機構25を構成する係合ピン15aが、装着される。
【0026】
<クラッチ操作部材>
図1及び
図3に示すように、クラッチ操作部材11は、リール本体3の後部に配置される。クラッチ操作部材11は、クラッチ制御装置30に連結される。クラッチ操作部材11は、クラッチオン位置(
図1の実線を参照)及びクラッチオフ位置(
図1の破線を参照)の間で移動可能に構成される。クラッチ操作部材11は、サミングの際のサムレストとしても使用される。
【0027】
<回転伝達機構>
回転伝達機構13は、ハンドル4からの回転力をスプール7に伝達するためのものである。
図3に示すように、例えば、回転伝達機構13は、ハンドル軸17と、ドラグ機構19と、駆動ギア21と、ピニオンギア23(
図2を参照)とを、有する。
【0028】
ハンドル軸17には、ハンドル4が装着される。ハンドル軸17は、金属製のフレーム5によって回転可能に支持される。詳細には、ハンドル軸17は、第2側カバー6b及びフレーム5に回転可能に支持される。例えば、ハンドル軸17は、糸繰り出し方向の回転を禁止するワンウェイクラッチ(図示しない)を介して、第2側カバー6bに回転可能に支持される。また、ハンドル軸17は、軸受(図示しない)を介して、第2側板9bに回転自在に支持される。
【0029】
ドラグ機構19は、ハンドル軸17の回転を駆動ギア21に伝達し、且つ糸繰り出し時のスプール7の回転を制動する。
図3に示すように、ドラグ機構19は、ハンドル軸17及び駆動ギア21の間に配置される。
【0030】
駆動ギア21は、ハンドル軸17に回転自在に装着される。
図3に示すように、駆動ギア21には、ドラグ機構19を介して、ハンドル軸17の回転が伝達される。ここでは、駆動ギア21には、斜歯ギアが用いられている。また、糸繰り出し時にスプール7に対して所定以上のトルクが作用した場合、ドラグ機構19が作動し、駆動ギア21がハンドル軸17に対して相対回転する。
【0031】
ピニオンギア23は、駆動ギア21の回転をスプール軸15に伝達する。
図2及び
図3に示すように、ピニオンギア23は、実質的に筒状に形成され、スプール軸15の外周側に配置される。
【0032】
図2に示すように、ピニオンギア23は、斜歯の歯部23aと、係合溝23bと、小径部23cとを、有する。歯部23aは、駆動ギア21に噛み合う。
【0033】
係合溝23bは、ピニオンギア23の端部に形成され、径方向に延びている。係合溝23bが形成された筒部の外周面は、軸受24(
図2を参照)を介して、ガイド部材45(後述する)に回転自在に支持される。小径部23cは、歯部
23a及び係合溝23bの間に形成される。小径部23cには、クラッチヨーク41(後述する)が係合する。
【0034】
<クラッチ機構>
クラッチ機構25は、ハンドル4及びスプール7を連結可能、且つハンドル4及びスプール7の連結を解除可能に、構成される。
図2に示すように、クラッチ機構25は、ピニオンギア23の係合溝23b、及びスプール軸15の係合ピン15aによって、構成される。
【0035】
例えば、ピニオンギア23が、スプール軸15に沿ってスプール7から離れる方向に、移動し、係合溝23b及びスプール軸15の係合ピン15aの係合が解除されると、クラッチオフ状態(連結解除状態)になる。この場合、スプール7が自由に回転可能になる。
【0036】
一方で、ピニオンギア23が、スプール軸15に沿ってスプール7に近づく方向に、移動し、係合ピン15aに係合溝23bが係合すると、クラッチオン状態(連結状態)になる。この場合、スプール7は、ハンドル軸17の回転に連動して回転する。
【0037】
<クラッチ制御装置>
クラッチ制御装置30は、クラッチ操作部材11の操作に応じて、クラッチ機構25を制御可能に構成される。
図3に示すように、クラッチ制御装置30は、クラッチヨーク41と、クラッチカム43と、樹脂製のガイド部材45とを、有する。
【0038】
(クラッチヨーク)
クラッチヨーク41は、クラッチ機構25をクラッチオン状態及びクラッチオフ状態に切り換えるためのものである。
図3に示すように、クラッチヨーク41は、クラッチカム43及びガイド部材45によって、スプール軸方向に案内される。
【0039】
図2に示すように、クラッチヨーク41は、ピニオンギア23に係合可能な係合凹部41aと、1対のガイド孔41bとを、有する。係合凹部41aは、ピニオンギア23の小径部23cに係合する。
【0040】
1対のガイド孔41bは、スプール軸方向にクラッチヨーク41を貫通する。各ガイド孔41bには、ガイド軸48(後述する)が挿通される。クラッチヨーク41の両端部は、クラッチカム43に係合する。
【0041】
(クラッチカム)
クラッチカム43は、クラッチヨーク41をスプール軸方向に移動させるためのものである。クラッチカム43は、スプール軸心Xまわりに回動可能なように、ガイド部材45に配置される。
【0042】
クラッチカム43には、連結部材42が装着される。連結部材42は、クラッチ操作部材11及びクラッチカム43を連結する。クラッチ操作部材11が操作されると、連結部材42を介して、クラッチカム43が回動する。
【0043】
クラッチカム43は、ガイド部材45の第2筒状部46c(後述する)の外周側に配置され、第2筒状部46cまわりに回動可能である。クラッチカム43は、位置決め部材50によって、軸方向に位置決めされる。位置決め部材50は、固定部材例えばネジ部材50aによって第2側板9bに固定される。
【0044】
クラッチカム43は、クラッチヨーク41を軸方向に案内するためのカム部43aを、有する。クラッチ操作部材11の操作によってクラッチカム43が回動すると、カム部43aは、クラッチヨーク41の両端部を押圧する。すると、クラッチヨーク41の両端部は、スプール7から離れるスプール軸方向に、移動する。これにより、クラッチ機構25が、クラッチオン状態からクラッチオフ状態へと切り換えられる。
【0045】
一方で、ハンドル4操作によってクラッチ復帰機構(図示しない)が作動すると、クラッチカム43が、上記の回動方向とは反対の方向に、回動する。すると、クラッチヨーク41の両端部は、スプール7に近づくスプール軸方向に、移動する。これにより、クラッチ機構25が、クラッチオフ状態からクラッチオン状態へと切り換えられる。
【0046】
(ガイド部材)
ガイド部材45は、クラッチヨーク41をスプール軸方向に案内する。
図3に示すように、ガイド部材45は、フレーム
5に装着される。
図4及び
図5に示すように、ガイド部材45は、本体部46と、ガイド部47(支持部の一例)とを、有する。ガイド部材45は、補強部材49(
図5を参照)をさらに有する。
【0047】
図3に示すように、本体部46は、フレーム
5に装着される。
図4及び
図5に示すように、本体部46は、固定部46aと、第1筒状部46bと、第2筒状部46cとを、有する。
【0048】
固定部46aは、実質的に板状に形成される。固定部46aは、フレーム5とクラッチカム43との間に、配置される。固定部46aは、固定手段例えばネジ部材51(
図3を参照)によって、フレーム5例えば第2側板9bに、固定される。
【0049】
第1筒状部46bは、固定部46aと一体に形成される。第1筒状部46bは、固定部46aをスプール軸方向に貫通し、且つ固定部46aから突出する。第1筒状部46bは、第2側板9bに設けられた第2開口9e(
図2を参照)に、配置される。第1筒状部46bの内周側には、スプール軸15が配置される。
【0050】
第2筒状部46cは、固定部46aと一体に形成される。第2筒状部46cは、1対のガイド軸48(後述する)を周方向に連結する。第2筒状部46cの外周部には、クラッチカム43が配置される(
図3を参照)。
【0051】
図5に示すように、第2筒状部46cの内径は、第1筒状部46bの内径より大きい。第1筒状部46b及び第2筒状部46cによって形成される環状の段差部46dには、ピニオンギア23を支持する軸受24(
図2を参照)が、配置される。
【0052】
図4及び
図5に示すように、ガイド部47は、本体部46と一体に形成される。ガイド部47は、クラッチヨーク41をスプール軸方向に案内する。ガイド部47は、本体部46から突出する1対のガイド軸48(少なくとも2つの突出部の一例)を、有する。
【0053】
1対のガイド軸48は、本体部46例えば固定部46aと一体に形成される。1対のガイド軸48それぞれは、固定部46aからスプール軸方向に突出する。1対のガイド軸48それぞれは、周方向において互いに間隔を隔てて配置される。
【0054】
1対のガイド軸48は、クラッチヨーク41の1対のガイド孔41bに挿通される。この状態において、各ガイド軸48の外周には、コイルバネ44が配置される(
図2を参照)。例えば、コイルバネ44は、クラッチヨーク41及び第2側カバー6bの間で圧縮された状態で、各ガイド軸48の外周に配置される。
【0055】
例えば、クラッチ機構25がクラッチオン状態である場合に、クラッチ操作部材11の操作によってクラッチカム43が回動すると、クラッチヨーク41は、1対のガイド軸48に案内され、スプール7から離れるスプール軸方向に移動する。これにより、クラッチ機構25が、クラッチオン状態からクラッチオフ状態へと切り換えられる。
【0056】
一方で、ハンドル4の操作によってクラッチ復帰機構(図示しない)が作動すると、クラッチヨーク41は、コイルバネ44によって付勢され、1対のガイド軸48に沿って、スプール7に近づくスプール軸方向に移動する。これにより、クラッチ機構25が、クラッチオフ状態からクラッチオン状態に復帰する。
【0057】
以下では、ガイド軸48の構成について詳細に説明する。
図5に示すように、ガイド軸48の少なくとも一部は、実質的に筒状に形成される。ガイド軸48の内周部には、補強部材49が配置される。
【0058】
ここでは、ガイド軸48の一部が、実質的に筒状に形成される。ガイド軸48は、中空の第1軸部48aと、中実の第2軸部48bとを、有する。第1軸部48aは、固定部46aと一体に形成され、固定部46aからスプール軸方向に突出する。第1軸部48aの基端部は、ガイド軸48の基端部に対応する。
【0059】
第1軸部48aは、実質的に筒状に形成される。第1軸部48aの内周部すなわち穴部48cには、補強部材49が配置される。第1軸部48aの穴部48cは、フレーム5の第2側板9b側に開口する。
【0060】
第2軸部48bは、第1軸部48aと一体に形成される。第2軸部48bは、第1軸部48aの先端部からスプール軸方向に延びている。第2軸部48bの先端部は、ガイド軸48の先端部に対応する。第2軸部48bは、中実の棒状に形成される。
【0061】
補強部材49は、ガイド軸48を強度及び剛性を補強するためのものである。補強部材49は、金属製である。例えば、補強部材49は、金属製のピン部材である。
【0062】
補強部材49は、ガイド軸48の基端側において、ガイド軸48の内周部に配置される。補強部材49は、第1軸部48aの穴部48cに嵌合される。詳細には、補強部材49は、フレーム5の第2側板9b側から、第1軸部48aの穴部48cに向けて、嵌合される。これにより、ガイド部材45がフレーム5の第2側板9bに装着された場合に、第1軸部48aの穴部48c及び補強部材49は、第2側板9bによって覆われる。このため、補強部材49が金属製であっても、水や塩水等の付着を防止することができる。
【0063】
ここで、補強部材49の軸方向長さL1は、第2側板9bに対向する固定部46aの対向面S1と、クラッチオン状態においてクラッチカム43がクラッチヨーク41に当接する当接面S2との軸方向距離L2より、長い。これにより、ガイド軸48の固定端側を補強部材49によって確実に補強することができる。
【0064】
上述した本両軸受リール1では、ガイド部材45(本体部46及びガイド部47)が樹脂製であるので、ガイド部47の腐食を防止することができる。すなわち、本両軸受リール1では、腐食によるガイド部47の変形、及び腐食によるガイド部47の強度低下が生じないので、クラッチヨーク41をガイド部47によって好適に案内することができる。また、ガイド部47及びクラッチヨーク41の固着と、ガイド部47の表面粗度の増加を防止することができ、クラッチヨーク41をガイド部47によって好適に案内することができる。
【0065】
また、本両軸受リール1では、ガイド部47が本体部46と一体に形成されるので、従来技術のようにガイド部47を本体部46に固定するための金属製の固定部材を用いる必要がない。すなわち、本両軸受リール1では、金属製の固定部材の腐食によるガイド部47の姿勢変化が生じないので、クラッチヨーク41をガイド部47によってより好適に案内することができる。
【0066】
さらに、本両軸受リール1では、補強部材49がガイド軸48の内周部に配置されるので、ガイド軸48の強度を向上することができる。これにより、クラッチヨーク41をガイド軸48によって好適に案内することができる。
【0067】
<他の実施形態>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0068】
(a)前記実施形態では、ガイド軸48の一部が、実質的に筒状に形成される場合の例を示したが、ガイド軸48の全てが実質的に筒状に形成されてもよい。
【0069】
(b)前記実施形態では、補強部材49が1対のガイド軸48に配置される場合の例を示したが、補強部材49が1対のガイド軸48のいずれか一方にだけ配置されてもよい。また、補強部材49は金属製のフレーム5と一体的に形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0070】
1 両軸受リール
3 リール本体
4 ハンドル
5 フレーム
7 スプール
17 ハンドル軸
25 クラッチ機構
41 クラッチヨーク
43 クラッチカム
45 ガイド部材
47 ガイド部
48 ガイド軸
48a 第1軸部
48b 第2軸部
48c 穴部
49 補強部材