(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-07
(45)【発行日】2022-09-15
(54)【発明の名称】振れ補正機能付き光学ユニット及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
G03B 5/00 20210101AFI20220908BHJP
G02B 7/02 20210101ALI20220908BHJP
G02B 7/04 20210101ALI20220908BHJP
G03B 17/02 20210101ALI20220908BHJP
G03B 30/00 20210101ALI20220908BHJP
H04N 5/232 20060101ALI20220908BHJP
H04N 5/225 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
G03B5/00 J
G02B7/02 E
G02B7/04 E
G03B17/02
G03B30/00
H04N5/232 480
H04N5/225 400
(21)【出願番号】P 2018095579
(22)【出願日】2018-05-17
【審査請求日】2021-04-07
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101465
【氏名又は名称】青山 正和
(72)【発明者】
【氏名】新井 努
(72)【発明者】
【氏名】高橋 淳
【審査官】藏田 敦之
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-181863(JP,A)
【文献】国際公開第2015/045791(WO,A1)
【文献】特開2013-025117(JP,A)
【文献】特開平05-134161(JP,A)
【文献】特開2016-128856(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 5/00
G03B 17/00
G02B 7/02
G02B 7/04
G03B 17/02
H04N 5/232
H04N 5/225
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学素子及び撮像素子を有する可動体と、該可動体を囲む固定体と、前記可動体を前記固定体に対して揺動自在に支持する揺動支持機構と、前記固定体内で前記可動体を揺動させる揺動補正用駆動機構と、前記可動体内の前記撮像素子に接続され、前記固定体の外部に引き出されるフレキシブル配線基板とを備え、前記固定体に、前記フレキシブル配線基板の長さ方向の途中位置を載置する基板載置面と、該基板載置面との間で前記フレキシブル配線基板を長さ方向への摺動を許容した状態に保持可能な基板保持部とが設けられており、
前記フレキシブル配線基板の前記長さ方向の途中位置に、該フレキシブル配線基板の面に沿う板状の補強部が設けられ、該補強部が前記基板載置面上で前記基板保持部によって保持され、
前記基板保持部は、前記固定体に一端部が固定され、他端部が前記フレキシブル配線基板の引き出し方向に延びて形成された弾性変形可能な部材であり、前記基板保持部の前記他端部と前記基板載置面との間に前記フレキシブル配線基板が保持され
、
前記補強部に、該補強部を摺動させるための冶具を係止可能な冶具係止部が形成されていることを特徴とする振れ補正機能付き光学ユニット。
【請求項2】
前記補強部は、前記フレキシブル配線基板の一部が補強されて一体に形成されていることを特徴とする請求項1記載の振れ補正機能付き光学ユニット。
【請求項3】
前記補強部は、前記フレキシブル配線基板とは別部材であり、前記フレキシブル配線基板に取り付けられていることを特徴とする請求項1記載の振れ補正機能付き光学ユニット。
【請求項4】
前記補強部は、前記フレキシブル配線基板において前記基板載置面と対向する面を覆うように設けられることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項記載の振れ補正機能付き光学ユニット。
【請求項5】
前記基板載置面において前記フレキシブル配線基板の長さ方向に沿う寸法は、前記補強部の前記フレキシブル配線基板の長さ方向に沿う寸法より大きいことを特徴とする請求項2から4のいずれか一項記載の振れ補正機能付き光学ユニット。
【請求項6】
前記基板保持部の前記一端部と前記他端部との間に、前記補強部の摺動の終端位置を規制するストッパ部が形成されていることを特徴とする請求項1記載の振れ補正機能付き光学ユニット。
【請求項7】
前記ストッパ部を前記補強部の摺動方向に直交する平面に形成することを特徴とする請求項6記載の振れ補正機能付き光学ユニット。
【請求項8】
前記補強部に、前記基板保持部の前記他端部を配置する溝部が摺動方向に沿って形成されていることを特徴とする請求項6又は7に記載の振れ補正機能付き光学ユニット。
【請求項9】
前記基板保持部の前記他端部に、その先端方向に向かうにしたがって前記基板載置面から徐々に離間する方向に延びる屈曲部が形成されていることを特徴とする請求項6から8のいずれか一項記載の振れ補正機能付き光学ユニット。
【請求項10】
前記固定体に、前記基板載置面上の前記フレキシブル配線基板を覆うカバーが設けられており、該カバーに前記基板載置面上の前記フレキシブル配線基板を押さえるクッション部材を備える押さえ部が形成されていることを特徴とする請求項1から
9のいずれか一項記載の振れ補正機能付き光学ユニット。
【請求項11】
請求項1から
10のいずれか一項記載の振れ補正機能付き光学ユニットの製造方法であって、前記固定体内に前記可動体を前記揺動支持機構によって支持する仮組立工程と、前記仮組立工程後に前記フレキシブル配線基板を前記固定体の前記基板載置面に載置して前記基板保持部により保持し、前記基板載置面上で前記フレキシブル配線基板を長さ方向に移動しながら、前記可動体の姿勢を調整する姿勢調整工程と、前記姿勢調整工程後に、前記フレキシブル配線基板を前記基板載置面に固定する固定工程とを有することを特徴とする振れ補正機能付き光学ユニットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラ付き携帯端末等に搭載される振れ補正機能付き光学ユニット及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯端末、ドライブレコーダ、無人ヘリコプター等に搭載される撮像装置等の光学機器に用いられる撮影用の光学ユニットにおいては、振れによる撮影画像の乱れを抑制するために、振れを打ち消すように光学素子等を移動させて振れを補正する機能が開発されている。この振れ補正機能においては、光学機器等の筐体からなる固定体に対して、光学素子及び撮像素子を備える可動体を移動可能に支持し、その可動体を振れ補正用駆動機構により振れに応じて移動させる構成が採用されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、光学素子及び撮像素子を有する可動体と固定体との間にジンバル機構を設けるとともに、可動体と固定体とを板状バネによって支持した構成が開示されている。また、この振れ補正機能付き光学ユニットにおいては、可動体と固定体とを板状バネを介して接続するにあたって、板状バネの一端と固定体とを接着剤で固定した状態で、可動体の姿勢を調整し、この状態での板状バネの位置に合わせて、板状バネの他端を可動体に接着剤で固定することにより、板状バネに余計な付勢力を発生させないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このような光学ユニットにおいて、可動体内の撮像素子や揺動のための駆動機構には、信号伝送や給電のためのフレキシブル配線基板が接続され、固定体の外部に引き出される。この場合、フレキシブル配線基板の途中位置を固定体に固定することで、固定体の外部でフレキシブル配線基板に外力が作用しても、可動体にまで伝達しないように組み立てられる。
このフレキシブル配線基板を固定体に固定する手段として一般に粘着テープが用いられる。この粘着テープによってフレキシブル配線基板を固定した後に、その固定位置を再調整する必要が生じた場合には、粘着テープを剥がしてフレキシブル配線基板の固定位置を調整した後に再度接着する作業が必要になる。この調整作業を繰り返すと、粘着テープを剥がすたびに、軟らかいフレキシブル配線基板に曲げや局部的な張力の増大などの外力が作用し、フレキシブル配線基板を破損するおそれがある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、フレキシブル配線基板を固定体に固定する際に、その固定位置の微調整を容易かつ連続的に行うことができ、かつ、フレキシブル配線基板の損傷を防止することができる振れ補正機能付き光学ユニット及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の振れ補正機能付き光学ユニットは、光学素子及び撮像素子を有する可動体と、該可動体を囲む固定体と、前記可動体を前記固定体に対して揺動自在に支持する揺動支持機構と、前記固定体内で前記可動体を揺動させる揺動補正用駆動機構と、前記可動体内の前記撮像素子に接続され、前記固定体の外部に引き出されるフレキシブル配線基板とを備え、前記固定体に、前記フレキシブル配線基板の長さ方向の途中位置を載置する基板載置面と、該基板載置面との間で前記フレキシブル配線基板を長さ方向への摺動を許容した状態に保持可能な基板保持部とが設けられており、前記フレキシブル配線基板の前記長さ方向の途中位置に、該フレキシブル配線基板の面に沿う板状の補強部が設けられ、該補強部が前記基板載置面上で前記基板保持部によって保持され、前記基板保持部は、前記固定体に一端部が固定され、他端部が前記フレキシブル配線基板の引き出し方向に延びて形成された弾性変形可能な部材であり、前記基板保持部の前記他端部と前記基板載置面との間に前記フレキシブル配線基板が保持され、前記補強部に、該補強部を摺動させるための冶具を係止可能な冶具係止部が形成されている。
【0008】
この光学ユニットにおいて、固定体の基板載置面に載置したフレキシブル配線基板を基板保持部によって長さ方向に摺動可能に保持するので、フレキシブル配線基板の保持位置を連続的に微調整することができる。微調整後は、接着剤等によってフレキシブル配線基板を基板載置面に固定すればよい。したがって、粘着テープを用いてフレキシブル配線基板を載置面に保持する場合で、貼り直しする場合に比べて、フレキシブル配線基板の損傷を抑制することができるとともに、その微調整作業も容易になる。
【0010】
フレキシブル配線基板に板状の補強部を設けたことにより、フレキシブル配線基板の固定位置を微調整する場合に、この補強部を移動させるようにすれば、軟らかいフレキシブル配線基板に曲げ等の外力を作用させて損傷させることを低減できる。
また、基板保持部の長さ、幅、厚さ等を調整することにより、フレキシブル配線基板に対する保持力を容易に調整することができ、適切な力でフレキシブル配線基板を保持することができる。
この場合、補強部は、フレキシブル配線基板の一部を補強して一体に形成してもよいし、フレキシブル配線基板とは別部材のものとしてフレキシブル配線基板に取り付けてもよい。
補強部をフレキシブル配線基板と一体に形成することにより、別部材の取り付けが必要なく保持可能となる。
補強部を別部材とする場合には、フレキシブル配線基板の構成材料以外の材料も使用可能であり、任意の補強を行うことができる。
また、治具係止部が形成されていることにより、フレキシブル配線基板の固定位置を冶具によって微調整することができ、作業性が向上する。冶具係止部は、穴、凸部等、冶具の形状に対応して形成すればよい。
この場合、貫通穴を冶具係止部として形成すれば、接着や溶接によって本固定する際に、貫通穴の内側を接着剤溜め部や溶接スペースとして利用でき、本固定のための部位やスペースを省略又は削減できて、便利である。
【0011】
振れ補正機能付き光学ユニットの他の一つの実施態様は、前記補強部は、前記フレキシブル配線基板において前記基板載置面と対向する面を覆うように設けられるとよい。
フレキシブル配線基板の固定位置を微調整する際に、基板載置面上で摺動させたとしても補強部が摺動するので、フレキシブル配線基板の損傷をより確実に抑制することができる。
【0012】
振れ補正機能付き光学ユニットのさらに他の一つの実施態様は、前記基板載置面において前記フレキシブル配線基板の長さ方向に沿う寸法は、前記補強部の前記フレキシブル配線基板の長さ方向に沿う寸法より大きいとよい。
フレキシブル配線基板の補強部を基板載置面に載置した状態で、補強部から基板載置面の一部がフレキシブル配線基板の長さ方向に張り出すので、基板載置面上での微調整作業を安定して行わせることができる。また、接着剤を用いてフレキシブル配線基板を本固定する場合に、補強部の全面の広い範囲で基板載置面に接着でき、強固に固定することができる。
【0014】
振れ補正機能付き光学ユニットのさらに他の一つの実施態様は、前記基板保持部の前記一端部と前記他端部との間に、前記補強部の摺動の終端位置を規制するストッパ部が形成されている。
基板載置面上で補強部を摺動させてフレキシブル配線基板の固定位置を微調整する際に摺動の終端位置がストッパ部により規制されるので、基板載置面から補強部が脱落するなどの不具合が生じにくい。
この場合、前記ストッパ部を前記補強部の摺動方向に直交する平面に形成するとよい。平面のストッパ部により補強部を確実に規制することができる。
【0015】
振れ補正機能付き光学ユニットのさらに他の一つの実施態様は、前記補強部に、前記基板保持部の前記他端部を配置する溝部が摺動方向に沿って形成されている。
補強部の溝部に基板保持部が配置されるので、補強部が摺動方向と直交する方向に移動することを規制でき、フレキシブル配線基板にねじれが生じることを抑制することができる。
【0016】
振れ補正機能付き光学ユニットのさらに他の一つの実施態様は、前記基板保持部の前記他端部に、その先端方向に向かうにしたがって前記基板載置面から徐々に離間する方向に延びる屈曲部が形成されている。
基板保持部と基板載置面との間隔が屈曲部の部分で広がるので、この屈曲部から補強部を基板保持部と基板載置面との間に容易に配置することができ、作業性が良い。
【0018】
振れ補正機能付き光学ユニットのさらに他の一つの実施態様は、前記固定体に、前記基板載置面上の前記フレキシブル配線基板を覆うカバーが設けられており、該カバーに前記基板載置面上の前記フレキシブル配線基板を押さえるクッション部材を備える押さえ部が形成されている。
フレキシブル配線基板がカバーにより保護され、そのカバーの押さえ部がクッション部材によりフレキシブル配線基板に接触するので、フレキシブル配線基板への損傷を防止しつつ固定力を高めることができる。
【0019】
本発明の振れ補正機能付き光学ユニットの製造方法は、前記固定体内に前記可動体を前記揺動支持機構によって支持する仮組立工程と、前記仮組立工程後に前記フレキシブル配線基板を前記固定体の前記基板載置面に載置して前記基板保持部により保持し、前記基板載置面上で前記フレキシブル配線基板を長さ方向に移動しながら、前記可動体の姿勢を調整する姿勢調整工程と、前記姿勢調整工程後に、前記フレキシブル配線基板を前記基板載置面に固定する固定工程とを有する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、フレキシブル配線基板を固定体に固定する際に、その固定位置の微調整を容易かつ連続的に行うことができ、作業性が良いとともに、フレキシブル配線基板の損傷を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態の振れ補正機能付き光学ユニットの外観を示す斜視図である。
【
図2】一実施形態の振れ補正機能付き光学ユニットの正面図である。
【
図3】一実施形態の振れ補正機能付き光学ユニットの側面図である。
【
図4】一実施形態の振れ補正機能付き光学ユニットを被写体とは反対側から視た斜視図である。
【
図5】一実施形態の振れ補正機能付き光学ユニットを被写体側から視た分解斜視図である。
【
図6】主要部品を被写体とは反対側から視た分解斜視図である。
【
図7】カバー枠とジンバル機構とを被写体とは反対側から視た斜視図である。
【
図8】
図2のA-A線に沿う矢視断面図であり、光軸方向を垂直に配置している。
【
図10】底部カバーの被写体側から視た斜視図である。
【
図11】突出片の長さ方向に沿う拡大断面図である。
【
図12】フレキシブル配線基板の位置調整用冶具を説明するための被写体とは反対側から視た斜視図である。
【
図13】突出片の変形例を示す
図12同様の拡大断面図である。
【
図14】突出片を配置する溝部を形成した補強部の例を示す要部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る振れ補正機能付き光学ユニットの実施形態について図面を参照しながら説明する。
以下の説明では、互いに直交する3方向を各々X軸方向、Y軸方向、Z軸方向とし、Z軸方向に光軸L(レンズ光軸/光学素子の光軸)が配置されるものとする。また、各方向の振れのうち、X軸周りの回転は、いわゆるピッチング(縦揺れ)に相当し、Y軸周りの回転は、いわゆるヨーイング(横揺れ)に相当する。また、X軸方向の一方側には+Xを付し、他方側には-Xを付し、Y軸方向の一方側には+Yを付し、他方側には-Yを付し、Z軸方向の一方側(被写体側/光軸方向前側)には+Zを付し、他方側(被写体側とは反対側/光軸方向後側)には-Zを付して説明する。
【0023】
(振れ補正機能付き光学ユニット101の概略構成)
図1~
図4は振れ補正機能付き光学ユニット(以下、光学ユニットと省略する。)101の組立状態の外観を示している。
図5は光学ユニット101を光軸L方向に沿って分解した分解斜視図である。
図6及び
図7は光学ユニット101の要部をそれぞれ
図5とは逆方向に視た分解斜視図である。
図8は光学ユニット101の光軸Lを通るY‐Z平面での縦断面図である。
図9は光学ユニット101の後述するジンバル機構30と振れ補正用駆動機構40付近のX‐Y平面での横断面図である。
【0024】
図1~
図4に示す光学ユニット101は、携帯端末、ドライブレコーダー、無人ヘリコプター等に搭載される撮像装置等の光学機器(図示略)に組み込まれる薄型カメラであって、光学機器のシャーシ(機器本体)に支持された状態で搭載される。この種の光学ユニット101では、撮影時に光学機器に手振れ等の振れが発生すると、撮像画像に乱れが発生する。そこで、本実施形態の光学ユニット101においては、Z軸方向に沿って光軸Lが延在する光学モジュール(光学素子及び撮像素子)210を備えた可動体20を、ジャイロスコープ等の振れ検出センサ(図示略)によって振れを検出した結果に基づいて揺動させ、ピッチング及びヨーイングを補正できるようにしている。
【0025】
本実施形態の光学ユニット101は、固定体10と、光学モジュール210を備える可動体20と、固定体10に対して可動体20を揺動可能に支持された状態とする揺動支持機構としてのジンバル機構30と、可動体20を揺動させる振れ補正用駆動機構40とを備える。また、
図9に示すように、可動体20は、固定体10に対してジンバル機構30を介して光軸L方向と交差する第1軸線R1周りに揺動可能に支持されているとともに、光軸L方向および第1軸線R1方向に交差する第2軸線R2周りに揺動可能に支持されている。そして、光学ユニット101においては、これらの光軸Lに対して直交する2つの軸線(第1軸線R1および第2軸線R2)周りに可動体20を揺動させることで、ピッチングとヨーイングを補正する。
【0026】
なお、本実施形態の光学ユニット101では、固定体10は、光軸L方向(+Z方向)から見たときに、正方形をなしている。また、
図9に示すように、第1軸線R1および第2軸線R2は、光軸L方向に直交している。そして、第1軸線R1と第2軸線R2とは直交し、X軸及びY軸に対して45°の角度に配置されている。
【0027】
(固定体10の構成)
図1~
図4等に示すように、固定体10は、可動体20の周りを囲む角筒状の第1ケース110と、第1ケース110の上(Z軸方向の一方側+Z)に固定されたカバー枠120と、第1ケース110の下(Z軸方向の他端側-Z)に配置された第2ケース130と、第2ケース130に取付けられる底部カバー(本発明のカバー)140とを有している。
本実施形態では、第1ケース110は、四方に配置された側板部111により矩形筒状に形成されている。カバー枠120は、第1ケース110のZ軸方向の一方側+Zの端部から径方向内側に張り出した矩形枠形状に形成されている。そして、
図1等に示すように、カバー枠120の中央部には円形の開口窓121が形成されており、開口窓121を通して被写体からの光を光学モジュール210に導くようになっている。
【0028】
また、第2ケース130は、
図5、
図6等に示すように、上方及び下方を開放した矩形の箱状に形成されており、底板部131が矩形枠状に形成されて、光学モジュール210に接続されたフレキシブル配線基板71,72を外部に引き出すための開口部132が形成されている。そして、底板部131に、開口部132に対して第2ケース130のZ軸方向の他方側-Zから重なるように底部カバー140が取り付けられており、開口部132から引き出されたフレキシブル配線基板71,72は、第2ケース130と底部カバー140との間から外部に引き出されるようになっている。底部カバー140は、第2ケース130の底板部131に重ねたときに、底板部131に当接する複数の脚部141,142と、フレキシブル配線基板71,72に接触する押さえ部143とが設けられており、押さえ部143には、フレキシブル配線基板71,72に接触する側の面にシート状のクッション部材144が貼付されている。
【0029】
また、固定体10には、
図8等に示すように、第1ケース110と第2ケース130との間に、可動体20のZ軸方向の他方側-Zへの可動範囲を規定する矩形枠板状のストッパ部材150が設けられている。ストッパ部材150は、第1ケース110と第2ケース130とをZ方向で重ねた際に、第1ケース110と第2ケース130との間に挟まった状態に保持される。
【0030】
(可動体20の構成)
図5等に示すように、可動体20は、レンズ等の光学素子211を備えた光学モジュール210と、光学モジュール210を保持するホルダフレーム220と、ホルダフレーム220の上(Z軸方向の一方側+Z)に固定される重心位置調整部材としての円筒状のウエイト230とを有している。
光学モジュール210は、
図8に示すように、光学素子211を保持するレンズホルダ213や撮像素子212等を保持するセンサホルダ214を有しており、これらレンズホルダ213及びセンサホルダ214が組み合わせられた状態でホルダフレーム220に保持されている。
【0031】
ホルダフレーム220は、
図5、
図8等に示すように可動体20の外周部分を構成しており、概ね、光学モジュール210を内側に保持する筒状のホルダ保持部221と、このホルダ保持部221の下端部(Z軸方向の他方側-Zの端部)でフランジ状に拡径する肉厚のベース部222とを有している。ホルダ保持部221の先端部(Z軸方向の一方側+Zの端部)にウエイト230が取り付けられる。
また、ベース部222の外周部上には、ホルダ保持部221よりも径方向外側に、後述する振れ補正用駆動機構40を構成する4つのコイル42をそれぞれ保持するコイル保持部223が設けられており、これらコイル保持部223とホルダ保持部221との間には、
図8に示すように、後述するジンバル機構30の可動枠310が配置される可動枠配置空間240が形成されている。また、コイル保持部223には、コイル保持部223にコイル42が保持された状態で、コイル42の外面(磁石41と対向する面)から更に外方に向けて突出する突出部224が設けられており、
図8及び
図9に示すように、その突出部224が磁石41と対向している。したがって、外力によって、可動体20がX軸方向またはY軸方向に変位した際、コイル保持部223の突出部224が磁石41に当接し、コイル42と磁石41とが接触することを防止している。
なお、本実施形態では、ホルダフレーム220が合成樹脂により形成されており、ホルダ保持部221、ベース部222、コイル保持部223が一体に形成されている。
【0032】
また、可動体20に設けられた撮像素子212等は、信号出力(通信)用のフレキシブル配線基板71に接続されている。撮像素子212は、ジャイロスコープやキャパシタ等の電子部品が実装された実装基板215に実装されており、実装基板215に前述したフレキシブル配線基板71が接続されている。なお、実装基板215に接続されたフレキシブル配線基板71は、外部に引き回される部分が2本に分割されている。一方、振れ補正用駆動機構40を構成するコイル42は、給電用のフレキシブル配線基板72に接続されている。このフレキシブル配線基板72には、その基端部にホルダフレーム220のZ軸方向の他方側-Zに配置される矩形枠状の枠状基板部721が設けられており、この枠状基板部721に振れ補正用駆動機構40の各コイル42が接続されている。
そして、これらフレキシブル配線基板71,72は、光学機器の本体側に設けられた上位の制御部等に電気的に接続される。
【0033】
なお、光学モジュール210に接続されたフレキシブル配線基板71は、
図8に示すように、ホルダフレーム220の下方(Z軸方向の他方側-Z)で比較的小さい曲率半径の第1湾曲部711及び第2湾曲部712により2回湾曲された状態とされている。そして、第2湾曲部712の終端付近が、コイル42に接続されたフレキシブル配線基板72とともに、ホルダフレーム220の下面に固定されたスペーサ261と、このスペーサ261に固定されるクランプ部材262との間に一旦保持され、その後、大きい曲率半径の第3湾曲部713で湾曲された後に外部に引き出されている。コイル42に接続されたフレキシブル配線基板72も、曲率半径の大きい湾曲部722により湾曲された後に外部に引き出されている。
【0034】
この場合、
図1等に示すように、コイル42に接続されたフレキシブル配線基板72は、光学モジュール210に接続されたフレキシブル配線基板71の2本に分割された部分の間に配置されており、2つのフレキシブル配線基板71,72は外部への引き出し方向が揃えられている。また、両フレキシブル配線基板71,72は、このように湾曲された状態に保持されるが、振れ補正用駆動機構40に駆動電流が流れていない状態においては、幅方向がいずれの部分においても同じ方向、具体的にはX軸方向と平行に配置され、捻れが生じないように保持されている。
なお、これらフレキシブル配線基板71,72は、いずれも可撓性を有しており、振れ補正用駆動機構40によるホルダフレーム220及びこのホルダフレーム220に保持されている光学モジュール210の動きを阻害しないようになっている。
【0035】
(振れ補正用駆動機構40の構成)
振れ補正用駆動機構40は、
図8及び
図9等に示すように、板状の磁石41と、磁石41の磁界内で電磁力を作用させるコイル42とを利用した磁気駆動機構である。本実施形態では、磁石41とコイル42との組み合わせが、可動体20(ホルダフレーム220)の周方向に90°ずつ間隔をおいて4組設けられる。また、各磁石41は第1ケース110に保持され、各コイル42はホルダフレーム220に保持されており、本実施形態では、第1ケース110とホルダフレーム220との間に振れ補正用駆動機構40が構成されている。
【0036】
磁石41は、第1ケース110の周方向に90°ずつ間隔をおいて配置された4つの各側板部111の内面にそれぞれ保持されている。各側板部111はX軸方向の一方側+X、他方側-X、Y軸方向の一方側+X、他方側-Yにそれぞれ配置されている。このため、第1ケース110とホルダフレーム220との間では、X軸方向の一方側+X、X軸方向の他方側-X、Y軸方向の一方側+Y、およびY軸方向の他方側-Yのいずれにおいても、磁石41とコイル42とが対向している。
【0037】
本実施形態において、4つの磁石41は、外面側及び内面側が異なる極に着磁されている。また、磁石41は、光軸L方向(Z軸方向)に2つに分離して着磁されており、コイル42側(内面側)に位置する磁極411、412が光軸L方向で異なるように着磁されている(
図5及び
図8参照)。したがって、両磁極411、412を分離する着磁分極線413は、光軸Lと直交する方向と平行に配置されている。X軸方向の一方側+X及びX軸方向の他方側-Xにそれぞれ配置されている2つの磁石41は、着磁分極線413がY軸方向に沿って配置され、Y軸方向の一方側+Y及びY軸方向の他方側-Yに配置されている2つの磁石41は、着磁分極線413がX軸方向に沿って配置される。
【0038】
なお、4つの磁石41は、外面側および内面側に対する着磁パターンが同一である。このため、周方向で隣り合う磁石41同士が吸着し合うことがないので、組み立て等が容易である。また、第1ケース110は磁性材料から構成されており、磁石41に対するヨークとして機能する。
【0039】
コイル42は、磁心(コア)を有しない空芯コイルであり、前述したように、ホルダフレーム220に保持されている。また、コイル42は、それぞれホルダフレーム220のX軸方向の一方側+X、X軸方向の他方側-X、Y軸方向の一方側+Y、およびY軸方向の他方側-Yに保持されている。このうち、ホルダフレーム220のX軸方向の一方側+X、X軸方向の他方側-Xに配置される両コイル42は、巻き線によってX軸方向をコイルの軸心方向とする環状に形成されている。また、Y軸方向の一方側+Y、およびY軸方向の他方側-Yに配置される両コイル42は、巻き線によってY軸方向をコイルの軸心方向とする環状に形成されている。したがって、いずれのコイル42も光軸L方向に直交する方向をコイルの軸心方向とする環状に形成されている。また、これら4つのコイル42は、同じ平面形状、同じ厚さ(高さ)寸法に形成される。
【0040】
なお、4つのコイル42のうち、X軸方向をコイルの軸心方向とする2つのコイル42は、Y軸方向に延びる矩形状に形成される。また、Y軸方向をコイルの軸心方向とする2つのコイル42は、X軸方向に延びる矩形状に形成される。そして、いずれのコイル42も、上下に配置される長辺部が、各磁石41の磁極411,412に対峙する有効辺421,422として利用され、このコイル42が励磁されていない状態では、両有効辺421,422は、対向する磁石41の着磁分極線413と平行で、着磁分極線413から上下に等しい距離に配置される。
【0041】
(ジンバル機構30の構成)
本実施形態の光学ユニット101では、ピッチング方向およびヨーイング方向の振れを補正するため、可動体20を光軸L方向に交差する第1軸線R1周りに揺動可能に支持するとともに、光軸L方向および第1軸線R1に交差する第2軸線R2周りに揺動可能に支持する。このため、固定体10と可動体20との間には、ジンバル機構(揺動支持機構)30が構成されている。
【0042】
本実施形態では、ジンバル機構30が矩形の可動枠310を有しており、可動枠310は、
図8及び
図9等に示すように、ホルダフレーム220の可動枠配置空間240内に配置され、固定体10のカバー枠120の下面(Z軸方向の他方側-Zの面)と可動体20のホルダフレーム220との間に配置されている。
本実施形態において、可動枠310はバネ性を有する金属材料等で構成されており、
図7等に示すように、周方向に90°間隔をおいて配置された4つの角部311と、各角部311を連結する連結部312とを有する矩形形状に形成されている。可動枠310の4つの角部311の内側にはそれぞれ球体320が固定されている。また、各連結部312は、各々の延在方向およびZ軸方向に対して直交する方向に湾曲した蛇行形状を有している。したがって、可動枠310は、外部から衝撃が加わった際に、衝撃を吸収可能なバネ性を有している。
【0043】
一方、カバー枠120の下面(-Z側の面)には、
図7に示すように、光軸L周りの4つの角部のうち、第1軸線R1が延在する方向の対角に位置する2箇所の角部に、Z軸方向の他方側-Z及び径方向外方に向けて開口する溝部122がそれぞれ形成されている。そして、各溝部122には、接点用ばね330がそれぞれ取り付けられており、これら接点用ばね330に可動枠310の4つの球体320のうち、第1軸線R1が延在する方向の対角に位置する2つの球体320がそれぞれ支持されている。
また、ホルダフレーム220のベース部222の上面には、
図9に示したように、第2軸線R2が延在する方向の対角に位置する2箇所の角部に、Z軸方向の一方側+Z及び径方向外方に向けて開口する溝部225がそれぞれ形成されている。各溝部225には、接点用ばね330がそれぞれ取り付けられ、これら接点用ばね330に可動枠310の4つの球体320のうち、第2軸線R2が延在する方向の対角に位置する2つの球体320がそれぞれ支持されている。
【0044】
具体的には、各接点用ばね330は、弾性変形可能なステンレス鋼等の金属からなる板材をプレス成型することにより縦断面U字状となるように屈曲形成されており、可動枠310に設けられた球体320との接触点に径方向内側から外側に向けて弾性的な荷重(弾性力)を作用させる。つまり、可動枠310の4箇所の角部311に設けられた各球体320は、固定体10のカバー枠120又は可動体20のホルダフレーム220に取り付けられた各接点用ばね330に、径方向外側から弾性的に接触させられ、その接触部で摺動できるようになっている。
【0045】
この場合、
図9に示すように、カバー枠120に固定された接点用ばね330は、第1軸線R1方向で対をなすように対向し、可動枠310の球体320との間で第1揺動支点を構成する。一方、ホルダフレーム220に固定された接点用ばね330は、第2軸線R2方向で対をなすように対向し、可動枠310の球体320との間で第2揺動支点を構成する。したがって、可動体20の揺動中心位置(揺動支点)35は、これらの第1揺動支点と第2揺動支点とが組み合わされた第1軸線R1と第2軸線R2との交点に配置される
。
【0046】
このように、接点用ばね330に可動枠310の各球体320が摺動可能に接触していることにより、固定体10のカバー枠120に対して、可動体20のホルダフレーム220が揺動可能に支持されている。また、このように構成したジンバル機構30において、各接点用ばね330の付勢力は等しく設定される。なお、本実施形態では、振れ補正用駆動機構40に磁気駆動機構が用いられていることから、ジンバル機構30に用いた可動枠310、接点用ばね330はいずれも、非磁性材料からなる。
【0047】
また、本実施形態において、可動枠310は、コイル保持部223と同じ高さ位置(Z軸方向における同一の位置)に配置されている。このため、光軸L方向に対して直交する方向から見たとき、ジンバル機構30が振れ補正用駆動機構40と重なる位置に配置されている。特に本実施形態では、
図8に示すように、光軸L方向に対して直交する方向から見たときに、ジンバル機構30が、振れ補正用駆動機構40のZ軸方向の中心位置と重なる位置に配置されている。より詳細には、振れ補正用駆動機構40の無励磁状態においては、ジンバル機構30が、Z軸方向において磁石41の着磁分極線413と同じ高さ位置に設けられている。したがって、ジンバル機構30の第1揺動支点及び第2揺動支点は、Z軸方向において振れ補正用駆動機構40の中心位置と重なる位置に配置され、可動体20の揺動中心位置35も振れ補正用駆動機構40の中心位置と重なる位置に配置されている。
【0048】
なお、固定体10のカバー枠120と可動体20のホルダフレーム220との間には、これらのカバー枠120とホルダフレーム220との双方に接続され、振れ補正用駆動機構40が停止状態にあるときの可動体20の姿勢を規定する板状バネ510が設けられている。板状バネ510は、金属板を所定形状に加工したバネ部材であり、
図5に示すように、その外周部を構成する固定体側連結部511と、内周部を構成する円環状の可動体側連結部512と、これら固定体側連結部511と可動体側連結部512の間を連結する板バネ状のアーム部513とを有している。
【0049】
固定体側連結部511は、固定体10のカバー枠120の下面(Z軸方向の他方側-Zの面)に重ねた状態でカバー枠120に形成された4箇所の凸部125によって位置決めされ、接着等により固定される。また、図示は省略するが、可動体側連結部512は、可動体20のホルダフレーム220のホルダ保持部221に形成された4箇所の突起部226により位置決めされ、接着等により固定される。
【0050】
(フレキシブル配線基板の支持構造)
振れ補正用駆動機構40の各コイル42に接続され、ホルダフレーム220の下面から引き出されたフレキシブル配線基板71と、撮像素子212等が接続された実装基板215から引き出されたフレキシブル配線基板72とは、前述したように、第2ケース130の開口部132から外部に引き出されている。この場合、フレキシブル配線基板71,72は、第2ケース130内で複数回湾曲した後に、その長さ方向の途中位置が第2ケース130に固定されている。
【0051】
フレキシブル配線基板71,72は、第2ケース130から引き出された後の先端部715,725は重ねられており、これら先端部715,725が他の配線(図示略)等と接続される。また、フレキシブル配線基板71,72の長さ方向の途中位置には、2本に分割されているフレキシブル配線基板71間を連結する連結部716が設けられ、その連結部716にフレキシブル配線基板72が重ねられるように配置される。そして、この連結部716付近で連結部716よりも基端側(ホルダフレーム220側)に、両フレキシブル配線基板71,72を一体に連結するように、幅方向に沿う帯板状に補強部730が設けられている。この補強部730は、本実施形態ではフレキシブル配線基板71とは別の板材をフレキシブル配線基板71の裏面(Z軸方向の他方側-Zの面)に接着剤で固着したものであり、フレキシブル配線基板71の両側方に突出して設けられている。
【0052】
一方、第2ケース130は、底面視がほぼ正方形状の外形に形成されており、その底部に内向きフランジ状に張り出す底板部131が形成されている。この底板部131は、正方形の各辺に沿って所定の幅で形成されており、その正方形の四辺のうち、Y軸方向の一方側+Yに配置される一辺は、他の辺よりも大きく内方(Y軸方向の他方側-Y)に突出して形成され、その表面(Z軸方向の他方側-Zの面)にフレキシブル配線基板71,72を載置するための基板載置面133を形成している。この基板載置面133は、この基板載置面133が形成されている辺の両側部(X軸方向の一方側+Xの端部及び他方側-Xの端部)を除く中間位置に設けられており、そのX軸方向に沿う幅寸法D1(
図6参照)は、フレキシブル配線基板71,72の補強部730のX軸方向に沿う幅寸法D2(
図10 参照)より小さく形成されている。
【0053】
この基板載置面133の左右両側方には、基板載置面133が設けられている辺の両隣の辺の一部までの部分を切り込んで、一対の突出片80が形成されている。これら突出片80は、基板載置面133が設けられている辺の両隣の辺に配置されている底板部131の一部を切り欠いて形成されており、基板載置面133の両側方に、基板載置面133の両側縁から若干離間し、基板載置面133の幅方向(X軸方向)と直交する方向(Y軸方向の一方+Y)に突出して設けられている。
また、各突出片80は、その基端部から複数回折り曲げられて形成されている。具体的には、突出片80の基端部で第1屈曲部81により底板部131からZ軸方向の他方側-Zに向けて折り曲げられることにより、Y軸方向の一方側+Yに向かうにしたがってZ軸方向の一方側+Zに向けて傾斜し、その後、第2屈曲部82により逆に折り曲げられることにより、Z軸方向の他方側-Zに向けて傾斜し、再度、第3屈曲部83により基端部の第1屈曲部81と同じ方向に折り曲げられている。このため、突出片80の先端部は、先端方向に向かうにしたがって基板載置面133から徐々に離間する方向(Z軸方向の一方側+Z)に向けて傾斜した形状となっている。このように形成されることにより、突出片80は、その基端部を中心として弾性変形可能になっている。
【0054】
この場合、第2屈曲部82が、突出片80において最もZ軸方向の一方側+Zに配置され、この第2屈曲部82の最もZ軸方向の一方側+Zの位置と、基板載置面133との間のZ軸方向の距離t1は、フレキシブル配線基板71,72と補強部730との合計の厚さt2よりも小さくなるように設定されている。
フレキシブル配線基板71,72の補強部730のX軸方向の幅寸法D2は、第2ケース130の幅寸法D3よりは小さいが、基板載置面133の幅寸法(X軸方向の長さ)D1より大きく、さらに両突出片80間の外側縁間の距離D4より大きく形成されており、この補強部730を基板載置面133の上に載置すると、補強部730の両端部が突出片80を越える位置まで達する長さに形成されている。
また、補強部730のY軸方向の寸法L1は、第2ケース130の基板載置面133のY軸方向長さL2より小さく設定されている。
【0055】
そして、補強部730の両端部を両突出片80の先端部からY軸方向の他方側-Yに向けて押し込むようにしながら、補強部730の中央部を第2ケース130の基板載置面133上に載置すると、両突出片80の先端部が傾斜していることから、補強部730のY軸方向の他方側-Yへの移動に伴い突出片80の基端部で弾性変形しながら、先端部をZ軸方向の他方側-Zに移動させて、第2屈曲部82の最もZ軸方向の一方側+Zの位置と、基板載置面133との間のZ軸方向の距離を広げ、その間に補強部730を受け入れる。補強部730が突出片80の第2屈曲部82と基板載置面133との間に配置されると、両突出片80の弾性復元力によって補強部730が基板載置面133との間で挟持状態に押さえられ保持されるが、その保持力よりも大きい力を作用させれば、補強部730を基板載置面133の上で摺動させるように移動することができる。
このようにして、補強部730を基板載置面133と突出片80との間に保持した状態とすることで、フレキシブル配線基板71,72が第2ケース130に保持され、外部に引き出された状態となる。すなわち、本実施形態では、両突出片80が基板載置面133上でフレキシブル配線基板71,72を摺動可能に保持する基板保持部を構成している。
【0056】
<振れ補正機能付き光学ユニットの製造方法>
以上のように構成した振れ補正機能付き光学ユニット101の製造方法は、固定体10内に可動体20を揺動支持機構30によって支持する仮組立工程と、仮組立工程後にフレキシブル配線基板71,72を固定体10の基板載置面133に載置して突出片(基板保持部)80により保持し、基板載置面133上でフレキシブル配線基板71,72を長さ方向に移動しながら、可動体20の姿勢を調整する姿勢調整工程と、姿勢調整工程後に、フレキシブル配線基板71,72を基板載置面133に固定する固定工程とを有する。
【0057】
(仮組立工程)
仮組立工程では、ホルダフレーム220に光学モジュール210を組み込むとともに、固定体10のカバー枠120と可動体20のホルダフレーム220との間をジンバル機構30により支持し、カバー枠120の凸部125とホルダフレーム220のホルダ保持部221との間を板状バネ510により接続した状態とする。また、光学モジュール210及びホルダフレーム220に接続されているフレキシブル配線基板71,72を第2ケース130内で複数回湾曲させた状態で開口部132から引き出し、補強部730を第2ケース130の突出片80と基板載置面133との間に挿入し、突出片80の弾性復元力で保持した状態とする。
補強部730を第2ケース130の突出片80と基板載置面133との間に挿入する場合、突出片80の先端部が、第3屈曲部83により、徐々に基板載置面133から離間する方向に傾斜し、突出片80の先端と基板載置面133との距離が大きくなっているので、その間に補強部730を容易に挿入することができ、作業性が良い。
【0058】
(姿勢調整工程)
仮組立工程では、可動体20は固定体10内にZ軸方向を光軸L方向に一致させた状態で、かつ固定体10の磁石41の着磁分極線413に可動体20のコイル42の中間位置が配置されるように組み立てる必要があるが、可動体20の姿勢を微調整する必要がある場合は、フレキシブル配線基板71,72の補強部730を基板載置面133の上でX軸方向又はY軸方向に移動する。この微調整作業は、一般に、レンズを垂直上向きに配置して、真上からオートコリメータを用いながら光軸Lを調整する作業となり、補強部730が裏側に配置される。このため、
図12に示すように冶具90を用いて作業するとよい。この場合、補強部730の両端部に穴部731を形成しておく。
この冶具90は、補強部730の穴部731に挿入可能な凸部91を有する棒状の部材であり、補強部730の穴部731に冶具90の凸部91を挿入し、この冶具90を移動しながら補強部730をスライドさせることができる。
なお、本実施形態では穴部731を設けたが、冶具90の形状に応じて形成すればよく、穴部以外の形状も含まれる。本発明では、この穴部を冶具係止部と称している。
【0059】
このような姿勢調整工程において、補強部730は、突出片80の弾性力によって基板載置面133との間に挟持された状態であるので、補強部730を移動させた場合でも、その移動させた位置で補強部730が突出片80と基板載置面133との間に保持された状態が維持され、補強部730が不用意に動くことはない。
したがって、フレキシブル配線基板71,72の支持位置の微調整を繰り返す場合でも、補強部730を突出片80と基板載置面133との間に挟持した状態で少しずつ移動すればよく、粘着テープで貼り直しする場合に比べて、フレキシブル配線基板71,72の損傷を抑制することができるとともに、その微調整作業も容易になる。また、本実施形態では、フレキシブル配線基板71,72に、別途形成した補強部730を貼り付けており、支持位置の調整の際には、その補強部730が基板載置面133を摺動し、フレキシブル配線基板71,72自体は基板載置面133に接触しないので、フレキシブル配線基板71,72の損傷を確実に防止することができる。
【0060】
(固定工程)
微調整後は、接着剤等によって補強部730を基板載置面133に固定する。このとき、補強部730の両端に形成されている穴部731に接着剤等を注入することにより、基板載置面133への固着を確実に行うことができる。
そして、フレキシブル配線基板71,72を固定した後、底部カバー140を取り付ければ、組み立ては完了する。底部カバー140は、フレキシブル配線基板71,72に接触する押さえ部143にクッション部材144が貼付されているので、フレキシブル配線基板71,72に損傷等を与えることはない。
【0061】
このようにして組み立てられた振れ補正機能付き光学ユニット101において、ピッチング及びヨーイングに対して、揺動補正用駆動機構40により、第1軸線R1又は第2軸線R2周りに光学モジュール210を揺動することにより振れを補正することができる。
この場合、振れ補正用駆動機構40の各コイル42に接続されたフレキシブル配線基板72、及び光学モジュール210に接続されたフレキシブル配線基板71は、前述したように、振れ補正用駆動機構40に駆動電流が流れていない状態においては、幅方向がいずれの部分においても同じX軸方向と平行に配置され、捻れが生じないように保持されている。振れ補正用駆動機構40に駆動電流が流されて振れ補正がなされると、可動体20の揺動に応じてわずかに捻れが生じた状態となることがあるが、フレキシブル配線基板71,72は、スペーサ261とクランプ部材262とによって挟持されている部分と、基板載置面133と突出片80とによって挟持されている部分との間に湾曲部713、722が配置され、それぞれ大きく湾曲した状態に保持されている。したがって、この湾曲部713、722で緩やかな捻れ等を生じさせながら可動体20の揺動に追従し、可動体20の動きを阻害することが抑制される。
【0062】
[変形例]
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能であり、以下のような変形例としてもよい。この変形例においては、前述の一実施形態と共通する要素には同一符号を付して説明を簡略化する。
【0063】
前述した実施形態では、突出片80で押さえた状態の補強部730を基板載置面133上でスライドさせる際に、Y軸方向の他方側-Yの終端位置は、
図11の矢印で示すように摺動方向の前方において突出片80の第1屈曲部81と第2屈曲部82との間の傾斜部に補強部730が当接することにより規制される。
そこで、この傾斜部において補強部730が当接する位置に、
図13に示すようにX軸方向に沿う溝85を形成し、その溝85の内面にX-Z平面に沿う平面85aを形成するとよい。また、突出片80に当接する補強部730の先端面735は、溝85の平面85aと同様にX-Z平面に沿う平面に形成しておく。
溝85のない突出片80に補強部730が当接される場合は、スライド時の力の程度によっては突出片80の傾斜に沿って滑り、その終端位置を正確に規制することが難しい場合があるが、溝85の平面85aを設けることにより、補強部730の先端面735が溝85の平面85aに当接し、それ以上の移動が拘束されるので、基板載置面133からの脱落等の発生を防止し、補強部730を基板載置面133の上に確実に保持することができる。
なお、本発明においては、必ずしも溝85を形成することを必須とするものではなく、
図11に示すように第1屈曲部81と第2屈曲部82との間の傾斜部に補強部730を当接させて摺動方向の終端位置を規制するもの、及び
図13に示すように溝85の平面85aに補強部730を当接させるもののいずれも含むものとする。
図11に示す第1屈曲部81と第2屈曲部82との間の傾斜部、及び
図12に示す溝85の平面85aを本発明ではストッパ部と称している。
【0064】
また、
図14に示すように、補強部730の両端部において突出片80が当接する位置に、突出片80の幅よりわずかに大きい溝732をY軸方向に沿って形成するとよい。両突出片80が補強部730の溝732に嵌り込んだ状態となるので、X軸方向に沿う補強部730の移動が規制される。また、この溝732をY軸方向に平行に形成することにより、補強部730のスライド方向をY軸と平行に規制することができ、X-Y平面上での補強部730の傾きの発生を防止して、フレキシブル配線基板71,72に捻れが生じないように設置することができる。
【0065】
また、前述の一実施形態では、フレキシブル配線基板71,72の途中位置に、合成樹脂等によって別途形成した板材を固着して補強部730を形成したが、フレキシブル配線基板71,72の途中位置の樹脂部分を左右に張り出すように形成しておき、その張り出した部分及び中央のフレキシブル配線基板72を一体に連結するように、例えば銅箔を貼り付けて補強することにより、補強部730としてもよい。
【0066】
なお、ジンバル機構30では、可動枠310に固定した球体320を接点用ばね330に接触させる構造としたが、必ずしも球体320でなくてもよく、棒状部材等の先端面を球状に形成してなる球状先端面を接点用ばね330に接触させる構造としてもよい。
【符号の説明】
【0067】
R1…第1軸線、R2…第2軸線、10…固定体、20…可動体、30…ジンバル機構(揺動支持機構)、35…揺動中心位置、40…揺動補正用駆動機構、41…磁石、42…コイル、71,72…フレキシブル配線基板、80…突出片(基板保持部)、81…第1屈曲部、82…第2屈曲部、83…第3屈曲部、85…溝、85a…平面(ストッパ部)、90…冶具、91…凸部、101…補正機能付き光学ユニット、110…第1ケース、111…側板部、120…カバー枠、121…開口窓、122…溝部、125…凸部、130…第2ケース、131…底板部、132…開口部、133…基板載置面、140…底部カバー(カバー)、141,142…脚部、143…押さえ部、144…クッション部材、150…ストッパ部材、210…光学モジュール、211…光学素子、212…撮像素子、213…レンズホルダ、214…センサホルダ、215…実装基板、220…ホルダフレーム、221…ホルダ保持部、222…ベース部、223…コイル保持部、224…突出部、226…突起部、230…ウエイト、225…溝部、240…可動枠配置空間、261…スペーサ、262…クランプ部材、310…可動枠、311…角部、312…連結部、320…球体、330…接点用ばね、411,412…磁極、413…着磁分極線、421,422…有効辺、510…板状バネ、511…固定体側連結部、512…可動体側連結部、513…アーム部、711…第1湾曲部、712…第2湾曲部、713…第3湾曲部、721…枠状基板部、722…湾曲部、715,725…先端部、716…連結部、730…補強部、731…穴部(冶具係止部)、732…溝、735…先端面。