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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-07
(45)【発行日】2022-09-15
(54)【発明の名称】スピニングリール
(51)【国際特許分類】
   A01K 89/01 20060101AFI20220908BHJP
【FI】
A01K89/01 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018101284
(22)【出願日】2018-05-28
(65)【公開番号】P2019205360
(43)【公開日】2019-12-05
【審査請求日】2021-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100131152
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100174573
【弁理士】
【氏名又は名称】大坂 知美
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼松 卓司
(72)【発明者】
【氏名】池袋 哲史
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-306988(JP,A)
【文献】特開平07-023679(JP,A)
【文献】米国特許第04932616(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 89/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方に釣り糸を繰り出す魚釣用のスピニングリールであって、
ハンドルが取り付けられたリール本体と、
前記ハンドルの回転に応じて前記リール本体に対して回転可能なロータと、
前記ロータに取り付けられ、前記釣り糸をスプールに巻き取る第1姿勢と、前記釣り糸を前記スプールから前記前方に繰り出す第2姿勢とに揺動するベールアームと、
前記ベールアームが前記第1姿勢のときに第1位置に位置し、前記ベールアームが前記第2姿勢のときに前記第1位置よりも後方の第2位置に位置し、前記第2位置から前記第1位置に移動することで前記ベールアームを前記第2姿勢から前記第1姿勢に変化させる移動部材と、を備え、
前記移動部材は、前記ロータの回転軸の方向に直交する直交方向に延びた第1部分と、前記第1部分の前記回転軸に近い一方の端部から前方に向かって前記回転軸の方向に延びた第2部分と、一端が前記第1部分に繋がり、他端が前記第2部分に繋がった屈曲形状の第3部分と、前記第1部分の前記回転軸から遠い他方の端部から前方に向かって前記回転軸の方向に延びる第4部分と、一端が前記第1部分に繋がり、他端が前記第4部分に繋がった屈曲形状の第5部分と、を備える棒状部材であり、
前記移動部材のうちの少なくとも前記第3部分は、当該移動部材の他の部分よりも平たくかつ幅広に形成された扁平部を備える、
スピニングリール。
【請求項2】
前記扁平部は、少なくとも、前記第3部分と前記第1部分とにわたる部分に形成されている、
請求項1に記載のスピニングリール。
【請求項3】
前記扁平部は、少なくとも、前記第3部分と前記第2部分とにわたる部分に形成されている、
請求項1又は2に記載のスピニングリール。
【請求項4】
前記扁平部は、前記回転軸の方向及び前記直交方向を含む面方向に幅広である、
請求項1から3のいずれか1項に記載のスピニングリール。
【請求項5】
前記リール本体に設けられ、前記第2位置にある前記移動部材が前記ロータとともに回転したときに、前記第1部分が当接して前記移動部材を前記第1位置に向けて移動させる被当接部と、
前記移動部材が前記第1位置に向けて移動したときに、前記ベールアームを前記第2姿勢から前記第1姿勢に戻すリターン装置と、をさらに備える、
請求項1から4のいずれか1項に記載のスピニングリール。
【請求項6】
前記移動部材は、第1端部及び第2端部と、一端が前記第2部分に繋がり、他端が前記第2端部と繋がった屈曲形状の第6部分と、を備え、
前記リール本体は、前記第2位置にあるときの前記移動部材の前記第2端部と係合して当該移動部材を制動する制動部を備える、
請求項1から5のいずれか1項に記載のスピニングリール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は魚釣りに使用されるスピニングリールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来からスピニングリールには、ベールアームを反転させるベール反転機構が設けられている。ベール反転機構は、特許文献1に開示されているように、ベールアームの姿勢に応じて第1位置と当該第1位置よりも後方の第2位置とに位置することが可能な移動部材(特許文献1では、移動部材51)と、第2位置でロータとともに回転する移動部材が当接して当該移動部材を第1位置に向けて移動させる被当接部(特許文献1では、切換部材52)と、移動部材が第1位置に向けて移動したときに、ベールアームを第2姿勢から第1姿勢に戻すリターン装置(特許文献1では、トグルばね機構50)と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-306032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されているように、従来の移動部材は、円柱状の棒状部材を屈曲させた形状を有する。当該移動部材に何らかの力が作用すると、当該移動部材のうちの直線部分よりも屈曲部分が変形しやすい。具体的に、当該屈曲部分がさらに屈曲してしまいやすい。このような不都合は、特に、移動部材を軽量化及び/又は小型化するために細くしたときに、顕著に表れる。
【0005】
本発明は、移動部材が変形し難いスピニングリールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るスピニングリールは、
前方に釣り糸を繰り出す魚釣用のスピニングリール(例えば、スピニングリール100)であって、
ハンドルが取り付けられたリール本体(例えば、リール本体110)と、
前記ハンドルの回転に応じて前記リール本体に対して回転可能なロータ(例えば、ロータ140)と、
前記ロータに取り付けられ、前記釣り糸をスプールに巻き取る第1姿勢(例えば、糸巻取姿勢)と、前記釣り糸を前記スプールから前記前方に繰り出す第2姿勢(例えば、糸開放姿勢)とに揺動するベールアーム(例えば、ベールアーム150)と、
前記ベールアームが前記第1姿勢のときに第1位置に位置し、前記ベールアームが前記第2姿勢のときに前記第1位置よりも後方の第2位置に位置し、前記第2位置から前記第1位置に移動することで前記ベールアームを前記第2姿勢から前記第1姿勢に変化させる移動部材(例えば、移動部材161)と、を備え、
前記移動部材は、前記ロータの回転軸の方向に直交する直交方向に延びた第1部分(例えば、第2中間部161E)と、前記第1部分の前記回転軸に近い一方の端部から前方に向かって前記回転軸の方向に延びた第2部分(例えば、第3中間部161G)と、一端が前記第1部分に繋がり、他端が前記第2部分に繋がった屈曲形状の第3部分(例えば、第3屈曲部161F)と、前記第1部分の前記回転軸から遠い他方の端部から前方に向かって前記回転軸の方向に延びる第4部分(例えば、第1中間部161C)と、一端が前記第1部分に繋がり、他端が前記第4部分につながった屈曲形状の第5部分(例えば、第2屈曲部161D)と、を備える棒状部材であり、
前記移動部材のうちの少なくとも前記第3部分は、当該移動部材の他の部分よりも平たくかつ幅広に形成された扁平部(例えば、扁平部Q1、Q2又は3)を備える。
【0007】
前記扁平部は、少なくとも、前記第3部分と前記第1部分とにわたる部分に形成されている(例えば、図3図6参照)、
ようにしてもよい。
【0008】
前記扁平部は、少なくとも、前記第3部分と前記第2部分とにわたる部分に形成されている(例えば、図3図6参照)、
ようにしてもよい。
【0009】
前記扁平部は、前記回転軸の方向及び前記直交方向を含む面方向に幅広である、
ようにしてもよい。
【0010】
前記リール本体に設けられ、前記第2位置にある前記移動部材が前記ロータとともに回転したときに、前記第1部分が当接して前記移動部材を前記第1位置に向けて移動させる被当接部(例えば、固定部材163)と、
前記移動部材が前記第1位置に向けて移動したときに、前記ベールアームを前記第2姿勢から前記第1姿勢に戻すリターン装置(例えば、トグルバネ装置162)と、をさらに備える、
ようにしてもよい。
【0011】
前記移動部材は、第1端部(例えば、第1端部161A)及び第2端部(例えば、第2
端部161I)と、一端が前記第2部分(例えば、第3中間部161G)に繋がり、他端
が前記第2端部と繋がった屈曲形状の第6部分(例えば、第4屈曲部161H)と、を備
え、
前記リール本体は、前記第2位置にあるときの前記移動部材の前記第2端部と係合して
当該移動部材を制動する制動部(例えば、制動部材115)を備える、
ようにしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、移動部材が変形し難いスピニングリールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態に係るスピニングリールの斜視図。
図2】本発明の実施の形態に係るスピニングリールのベール反転機構を説明するための、スピニングリールの一部の部材を省略した斜視図。
図3図2に示す移動部材の平面図。
図4】(A)図3のA-A断面図、(B)図3のB-B断面図、(C)図3のC-C断面図。
図5】本発明の実施の形態に係るスピニングリールのベール反転機構を説明するための、スピニングリールの一部の部材を省略した図。
図6】変形例に示す移動部材の平面図。
図7】変形例に示す移動部材の平面図。
図8】変形例に示す移動部材の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施の形態に係る魚釣り用のスピニングリール100を、図面を参照しながら説明する。以下の説明では、スピニングリール100を釣竿に取り付けた際の、釣り竿の先端方向(スピニングリール100から釣り糸を繰り出す方向)を「前」、釣竿の後端方向を「後」、スピニングリール100から見て釣竿の方向を「上」、その逆方向を「下」、釣竿を持つユーザの「右」及び「左」をそのまま「右」及び「左」という。
【0015】
(スピニングリール100の概略構成)
スピニングリール100は、図1及び図2のように、リール本体110と、ハンドル120と、スプール130と、ロータ140と、ベールアーム150と、ベール反転機構160(図2)と、を備える。
【0016】
リール本体110は、ハンドル120の回転を受けて、ロータ140をリール本体110に対して回転させながらスプール130をリール本体110に対して前後に移動させる駆動機構を備える。スプール130には、釣り糸が巻かれる。ベールアーム150は、釣り糸をスプール130に巻き取る糸巻取姿勢図1の姿勢)と、釣り糸をスプール130から開放する(繰り出す)糸開放姿勢と、に揺動可能に、ロータ140に取り付けられている。ベールアーム150は、ロータ140とともにリール本体110に対して回転する。ベール反転機構160は、ベールアーム150を糸開放姿勢から糸巻取姿勢に復帰(反転)させるとともに、ベールアーム150の姿勢を保持する。
【0017】
(リール本体110)
リール本体110は、スピニングリール100の本体である。リール本体110には、ハンドル120が取り付けられている。ここでは、ハンドル120は、リール本体110の左側側部の取付部TK(ハンドル120に隠れているため、図には現れていない)に取り付けられているが、リール本体110の右側側部の取付部TKに取り付けられてもよい。なお、左右の取付部TKのうち、図2に示す、ハンドル120が取り付けられていない方の取付部TK(リール本体110の右側側部の取付部TK)は、通常カバーにより覆われるが、図2では、そのカバーが省略されている。
【0018】
リール本体110は、前記の駆動機構の他、第1筐体部材111と、第2筐体部材112と、を備える。第1筐体部材111と、第2筐体部材112とは、組み合わさることにより、前記の駆動機構を収容する筐体CSを構成する。第1筐体部材111は、釣竿に取り付けられるリールフット111Aを備える。
【0019】
図2のスプール軸113は、リール本体110の構成部材であり、前記の駆動機構のうち、ハンドル120の回転を受けてスプール130を前後方向に移動させるオシレーティング機構を構成する部材である。スプール軸113には、スプール130が取り付けられている。スプール軸113は、前後方向に移動可能である。
【0020】
リール本体110は、さらに、筒状部材114(図2)と、制動部材115(図2)と、を備える。筒状部材114は、筐体CSの前端に固定されている。筒状部材114には、制動部材115が取り付けられている。これらの詳細については後述する。
【0021】
(ロータ140)
ロータ140は、スプール130の中心軸(スプール軸113の中心軸)と一致する軸を回転軸として回転可能である。ロータ140は、ロータ本体141と、第1カバー142と、第2カバー143と、を備える。ロータ本体141は、その両端に前後方向に延びている第1アーム141A及び第2アーム141Bを備える。第1カバー142は、第1アーム141Aを覆っており、第2カバー143は、第2アーム141Bを覆っている。
【0022】
(ベールアーム150)
ベールアーム150は、ベール151と、ベール151を支持する第1ベール支持部材152及び第2ベール支持部材153と、を有する。第1ベール支持部材152及び第2ベール支持部材153は、それぞれ、ベールアーム150が糸巻取姿勢と糸開放姿勢とに揺動可能となるように、ロータ140の第1アーム141A及び第2アーム141Bに揺動可能に取り付けられている。第1ベール支持部材152は、釣り糸を案内するラインローラ152Aを有する。
【0023】
(ベール反転機構160)
ベール反転機構160は、ベールアーム150を、糸開放姿勢から糸巻取姿勢に復帰(反転)させる機能、及び、ベールアーム150の姿勢を保持する機能を有する。ベール反転機構160は、移動部材161と、トグルバネ装置(リターン装置)162と、固定部材(被当接部)163と、を有する。
【0024】
移動部材161は、屈曲した形状を有する金属製の棒状部材である。移動部材161は、前後方向に移動可能、かつ、ロータ140及びベールアーム150とともに回転可能に設けられている。移動部材161は、必要な剛性が確保されていれば合成樹脂により形成されてもよい。
【0025】
移動部材161は、図3図5に示すように、第1端部161Aと、第1屈曲部161Bと、第1中間部161Cと、第2屈曲部161Dと、第2中間部(当接部)161Eと、第3屈曲部161Fと、第3中間部161Gと、第4屈曲部161Hと、第2端部161Iと、を備える。
【0026】
第1端部161Aは、直線形状であり、前後方向に直交する第1直交方向に沿って延びている。第1端部161Aの一端は、第2ベール支持部材153が有する円弧状の溝153A内に入り、当該溝153Aと係合している。第1端部161Aの他端は、第1屈曲部161Bの一端と繋がっている。
【0027】
第1屈曲部161Bは、90度に屈曲した形状(ここでは、円弧形状)である。第1屈曲部161Bの他端は、第1中間部161Cの一端に繋がっている。
【0028】
第1中間部161Cは、直線形状であり、前後方向に沿って延びている。第1中間部161Cの他端は、第2屈曲部161Dの一端と繋がっている。第1中間部161Cは、第2アーム141Bに設けられた前後方向に延びた案内溝(不図示)内を通っている。これにより、移動部材161は、前後方向以外に移動することが制限されている。
【0029】
第2屈曲部161Dは、90度に屈曲した形状(ここでは、円弧形状)である。第2屈曲部161Dの他端は、第2中間部161Eの一端に繋がっている。
【0030】
第2中間部161Eは、直線形状であり、前後方向に直交するが前記の第1直交方向と異なる第2直交方向(移動部材161の回転軌跡を円と見た場合の径方向)に沿って延びている。第2中間部161Eの他端は、第3屈曲部161Fの一端と繋がっている。第2中間部161Eは、固定部材(被当接部)163と当接する当接部でもある(詳細は後述)。
【0031】
第3屈曲部161Fは、90度に屈曲した形状(ここでは、円弧形状)である。第3屈曲部161Fの他端は、第3中間部161Gの一端に繋がっている。
【0032】
第3中間部161Gは、直線形状であり、前後方向に沿って延びている。第3中間部161Gの他端は、第4屈曲部161Hの一端と繋がっている。
【0033】
第4屈曲部161Hは、90度に屈曲した形状(ここでは、円弧形状)である。第4屈曲部161Hの他端は、第2端部161Iの一端に繋がっている。
【0034】
第2端部161Iは、直線形状であり、前記の第2直交方向に沿って延びている。第2第2端部161Iの他端は、後述の制動部材115に係合可能である(詳細は後述)。
【0035】
移動部材161は、第1屈曲部161B~第2端部161Iの中心線が同一平面内となるように屈曲している。中心線とは、移動部材161を輪切りにしたときの断面(幅方向かつ厚さ方向に沿って切って得られる断面)の中心を通る線をいう。第1端部161Aは、円弧状の溝153A内に入り込みやすいよう、前記平面に対して若干傾いている。
【0036】
移動部材161は、断面が円形の円柱部P1(一部屈曲している)と、断面が丸角長方形の扁平部Q1(一部屈曲している)と、を備える。扁平部Q1は、円柱部P1よりも平ら(薄い。厚さD1>D2)で、幅広(幅W1<W2)である。扁平部Q1の中心線は、円柱部P1の中心線に繋がっている。つまり、扁平部Q1は、円柱部P1に対して、幅方向に沿って均等に幅広となっている(扁平部Q1と円柱部P1との幅方向における段差A1=段差A2)。扁平部Q1は、円柱部P1に対して、厚み方向に沿って均等に薄くなっている(扁平部Q1と円柱部P1との厚さ方向における段差B1=段差B2)。
【0037】
扁平部Q1は、第2中間部161Eから第3中間部161Gにわたって形成されている。具体的に、第2中間部161Eの全部、第2屈曲部161Dの全部、及び、第3中間部161Gの一部が、扁平部Q1となっている。また、扁平部Q1の幅方向、つまり、扁平部Q1が幅広となっている方向は、第2中間部161Eが延びる方向及び第3中間部161Gが延びる方向を含む面内(前記同一平面内)方向である。
【0038】
移動部材161は、例えば、金型により、円柱部P1及び扁平部Q1を備えるように形成される。移動部材161は、円柱状の棒状部材を屈曲させたあと、扁平部Q1に相当する部分を平押しして形成されてもよい。
【0039】
トグルバネ装置162の一端は、第2ベール支持部材153と係合し、他端は、第2カバー143に揺動可能に固定されている。トグルバネ装置162の一端は、ベールアーム150(特に、第2ベール支持部材153)の揺動(糸巻取姿勢又は糸開放姿勢への移動)により移動し、それに伴って、トグルバネ装置162は前記他端の軸162Aを中心に揺動する(矢印R2参照)。トグルバネ装置162は、バネの付勢力を利用し、ベールアーム150を、死点を挟んで糸巻取姿勢と糸開放姿勢とに振り分けて付勢し、かつ、ベールアーム150を糸巻取姿勢又は糸開放姿勢に保持する。
【0040】
固定部材163は、リール本体110の筐体CSにネジ等により固定されている。固定部材163は、その一部が第1筐体部材111と第2筐体部材112とに挟み込まれて固定されてもよい。固定部材163は、第2位置で回転する移動部材161の軌道上に設けられている。固定部材163は、釣糸巻取方向R1に沿って徐々に前方向に登っていく傾斜面163Aを備える。釣糸巻取方向R1は、釣糸がスプール130に巻き取られる方向にロータ140(移動部材161)を回転させる方向である。
【0041】
(ベール反転機構160の動作)
移動部材161は、ベールアーム150の揺動に応じて第1端部161Aが溝153Aに案内される(内壁に押される)ことにより、図5の矢印R3の方向(前後方向)に沿って、第1位置(前方)と、第2位置(後方)との間を移動可能である。図5では、第1位置に位置する移動部材161を実線で描いており、第2位置に位置する移動部材161を一点鎖線で描いている。なお、図5では、移動部材の移動方向等を把握しやすいよう、紙面上下方向を図1等の前後方向とし、紙面左右方向を図1等の上下方向としている。ベールアーム150が糸巻取姿勢にあるとき(図1及び図2の状態のとき)、移動部材161は、第1位置に位置する。一方、ベールアーム150が糸開放姿勢にあるとき、移動部材161は、第2位置に位置する。例えば、ベールアーム150を糸巻取姿勢から糸開放姿勢に変化させると、移動部材161は、第1位置から第2位置に移動する。移動部材161は、ハンドル120に対する回転操作に連動して、ロータ140とともに第1位置又は第2位置で回転する。
【0042】
図5に示すように、移動部材161が第2位置にあるとき、移動部材161の第2端部161Iが、リール本体110の制動部材115と係合する。
【0043】
ここで、制動部材115について図5を参照して説明すると、制動部材115は、リング状の部材であり、円筒部115Aと、円筒部115Aの後端から張り出したフランジ115Bと、円筒部115Aの外周面から外側に、かつ、フランジ115Bから前方に突出した複数の突出部115Cと、を備える。複数の突出部115Cは、周方向に沿って間隔を空けて並んでいる。隣り合う突出部115Aの間は凹部115Dとなっている。このような制動部材115は、リール本体110の筒状部材114の外周面に設けられた環状溝114Aに嵌め込まれている。筒状部材114は、筒形状の筒状部と、筒状部後端から張り出したフランジとを備え、環状溝114Aは、前記の筒状部の外周面に設けられている。筒状部材114は、筐体CSに固定されている。なお、環状溝114Aを備えるように筐体CSを構成してもよい。
【0044】
移動部材161が第1位置から第2位置に移動すると、移動部材161の第2端部161Iが、制動部材115の凹部115Dに入り込む。これにより、移動部材161の第2端部161Iが、リール本体110の制動部材115と係合する。なお、突出部115Cの前端は、三角形状になっており、移動部材161が、第1位置から第2位置に移動する際、第2端部161Iが突出部115Cに当たっても、突出部115Cの三角形状の前端により、第2端部161Iは、スムーズに凹部115Dに入り込むことができる。
【0045】
移動部材161が第2位置にあるとき、つまり、第2端部161Iが制動部材115と係合しているときに、ロータ140とともに移動部材161が回転すると、制動部材115は、凹部115Dの内壁(突出部115C)が第2端部161Iに押されて、移動部材161とともに回転する。このとき、制動部材115は、筒状部材114に対して摺動する。この摺動により発生する摩擦力により、制動部材115は制動され、従って、回転するロータ140が移動部材161を介して制動される。制動部材115は、適当な摩擦力が生じるよう、適宜の合成樹脂等から形成される。また、制動部材115は、摩擦力の向上のため、バネ又はゴム等の弾性体により、環状溝114Aの内壁に押し付けられてもよい。
【0046】
動部材161が第2位置でロータ140の回転軸を中心に釣糸巻取方向R1に回転すると、扁平部Q1の一部である第2中間部161Eが固定部材163の傾斜面163Aに当接し、その後、傾斜面163Aを登っていく。これにより、移動部材161が第1位置に向けて(前方)に移動する。このように、固定部材163は、第2位置で回転する移動部材161の第2中間部161E(当接部)が当接し、当接した移動部材を第1位置に向けて移動させる。なお、第2中間部161Eの傾斜面163Aに当接する部分(幅方向端部)は曲面になっており、これにより、第2中間部161Eは傾斜面163A上をスムーズに移動する(登る)。第2中間部161Eが、当該傾斜面163Aをある程度登り、死点位置を超えると、それまで糸開放姿勢に付勢していたトグルバネ装置162は、揺動して、その付勢方向を糸巻取姿勢側に切り換え、これにより、ベールアーム150を揺動させ、ベールアーム150を糸開放姿勢から糸巻取姿勢に戻す。このように、トグルバネ装置162は、移動部材161が第1位置に向けて移動し、ある位置を超えて第1位置に近づいたときに、ベールアーム150を糸開放姿勢から糸巻取姿勢に戻す(リターンさせる)。
【0047】
(実施の形態上の効果)
以下、実施の形態上の効果を説明する。なお、後述の従来の移動部材は、扁平部Q1が設けられておらず、そのすべてが円柱部P1を移動部材161のように屈曲させた形状を有する。つまり、従来の移動部材は、円柱部P1のみから形成された、第1端部・・・第2中間部・・・第2端部の各部を有する。
【0048】
ベールアーム150を糸巻取姿勢から糸開放姿勢に変化させ、移動部材161を第1位置から第2位置に移動させる際、上述のように、第2端部161Iが制動部材115の突出部115Cに当たることがある。これにより、移動部材161には力が作用する。ここでは、第2端部161Iよりも第3中間部161Gの方が長いため、前記の力の作用により、第2端部161Iから第3中間部161Gが、第3屈曲部161Fを支点として、一体で、矢印R4のように第1中間部161C側に傾倒しようとする。換言すると、移動部材161には、第3屈曲部161Fをさらに屈曲させようとする力が働く。本実施の形態では、第3屈曲部161Fが、第2中間部161E及び第3中間部161Gが延びる面方向に幅広な(つまり、前記屈曲させようとする力に抗する方向に幅広な)扁平部Q1により形成されている。従って、前記の力が働いても、第3屈曲部161Fは屈曲(変形)し難く、移動部材161は変形し難い。従来の移動部材は、第3屈曲部が円柱を屈曲させた形状であるので、前記の力により変形しやすかった。仮にこのような変形が生じると、移動部材が第2位置にあっても、第2端部が制動部材115に係合できない不都合が生じる。この実施の形態では、扁平部Q1により、このような不都合が生じにくくなっている。
【0049】
移動部材161の第2中間部161Eは、固定部材163の傾斜面163Aを登るので、摩耗することがある。従来の第2中間部は、円柱形状なので、当該摩耗により細くなりすぎ、細くなったあとの固定部材163との接触、又は、細くなったあとに作用する前記の力等により、変形しやすい。この実施の形態では、移動部材161の第2中間部(当接部)161Eが、前後方向に幅広な扁平部Q1で形成されている。従って、第2中間部161Eが多少摩耗しても細くなりすぎない(特に、従来のものより細くなることがない)。従って、移動部材161は、固定部材163との接触によって摩耗しても、変形し難い。特に、移動部材161は、固定部材163との接触によって従来と同じだけ摩耗しても、従来よりも変形し難い。
【0050】
また、従来の移動部材を軽量化又は小型化のために細くしたりすると、従来の移動部材は、円柱形状を屈曲させた形状であるため、前記のような変形が起こりやすくなってしまう。この実施の形態のように、必要な部分を扁平部Q1とすることで、移動部材161全体を前記軽量化又は小型化したとしても(例えば、円柱部P1を細くしたとしても)、前記のような変形を起こりにくくすることができる。このように、扁平部Q1を採用することで、移動部材161の軽量化又は小型化と、前記の変形に対する剛性の確保と、を同時に達成できる。なお、扁平部Q1は、幅広な分、円柱部P1よりも平らであるので、扁平部Q1自体が重くなってしまうことも防止される。つまり、扁平部Q1を円柱部P1よりも平らにしない場合(厚みが同じで幅広とする場合)よりも、移動部材161を軽量にできる。また、扁平部Q1が、幅広な分、円柱部P1よりも平らであることにより、移動部材161の重心が扁平部Q1側に偏ることを防止できる。
【0051】
(変形例)
本発明は、上述した実施の形態に限定されるわけではなく、上記実施の形態を変更したものも本発明の範囲に含まれる。特に、各部材の形状、配置等は、適宜変更可能である。さらに、上述した実施の形態について以下のような変形を適用してもよい。なお、以下の変形例において、同等のもの、対応するものについては、同じ符号を付して説明する。
【0052】
(変形例1)
移動部材161の円柱部P1及び扁平部Q1の範囲は、適宜変更可能である。例えば、図6の移動部材261のように、第1中間部161Cの途中から、第3中間部161Gの途中までの部分を扁平部Q2(説明は、上記扁平部Q1を参照)とし、残りの部分を円柱部P2(説明は、上記円柱部P1を参照)としてもよい。
【0053】
第3屈曲部161Fが扁平部Q1になっていると、当該第3屈曲部161Fは、上述のように第2端部161Iが制動部材115の突出部115Cに当たったとしても変形し難い。この場合、第2端部161Iが突出部115Cに当たったときに作用する力により、第2端部161Iから第2中間部161Eが一体で矢印R5のように第1中間部161C側に傾倒しようとすることがある。換言すると、移動部材261には、第2屈曲部161Dをさらに屈曲させようとする力が働くことがある。本変形例1では、第2屈曲部161Dが、第2中間部161E及び第3中間部161Gが延びる面方向に幅広な(つまり、前記屈曲させようとする力に抗する方向に幅広な)扁平部Q2により形成されている。従って、前記の力が働いても、第2屈曲部161Dは屈曲(変形)し難く、移動部材261は変形し難い。仮に第2屈曲部161Dが屈曲すると、移動部材261が第2位置にあっても、第2中間部161Eが固定部材163に当接できない、又は、第2中間部161Eが固定部材163の傾斜面163Aを登る距離が短く死点位置を超えられない(ベールアーム150の姿勢を切り換えられない)といった不都合が生じる。この実施の形態では、扁平部Q2により、このような不都合が生じ難くなっている。
【0054】
また、ユーザが糸巻取姿勢のベールアーム150を操作して糸開放姿勢に変更しようと操作したときに、ベールアーム150の回転位置によっては、移動部材261の第2中間部161Eが固定部材163に突き当たってしまうことがある。この場合、前記の突き当たりにより、上記と同様に、第2端部161Iから第2中間部161Eが一体で矢印R5のように傾倒しようとする。換言すると、移動部材261には、第2屈曲部161Dをさらに屈曲させようとする力が働く。上述のように、本変形例1では、第2屈曲部161Dが、扁平部Q2により形成されているので、前記の力が働いても、前記と同様、第2屈曲部161Dは屈曲(変形)し難く、移動部材261は変形し難い。さらに、上記不都合も生じにくくなっている。
【0055】
(変形例2)
図7に示すような移動部材361を採用してもよい。移動部材361では、第2屈曲部161D及び第3屈曲部161Fが扁平部Q3(説明は、上記扁平部Q1を参照)となっており、第2中間部161Eを含む残りの全部分が円柱部P3(説明は、上記円柱部P1を参照)となっている。このような移動部材361でも、上記実施の形態及び変形例1と同様に、変形が生じ難い。なお、移動部材361を採用する場合、第2中間部161Eが幅広でない分、例えば、固定部材163の高さを前方向に高くする(傾斜面163Aを前方に移動させる)とよい。
【0056】
(変形例3)
扁平部(説明は、上記扁平部Q1を参照)は、前後方向に直交する直交方向に延びた第1部分(例えば、第2中間部161E)と、前後方向に延びた第2部分(例えば、第1中間部161C又は第3中間部161G)と、に挟まれた、屈曲形状の第3部分(例えば、第2屈曲部161D及び第3屈曲部161F)の少なくとも一部に形成されていればよい。上記で説明したように、移動部材には、前記第3部分をさらに屈曲させる力が働くためである。これにより、第3部分全体を、円柱を屈曲させた形状に形成した場合(例えば、円柱部P(説明は、上記扁平部Q1を参照)により形成した場合)よりも変形し難い移動部材を得ることができる。移動部材の形状は、適宜変更してもよい(後述の変形例4参照)。また、上記変形例2において、扁平部を、第2屈曲部161Dと第3屈曲部161Fとのいずれかのみに設けてもよい。扁平部を、第1屈曲部161Bと第4屈曲部161Hとのいずれかに設けてもよい。
【0057】
扁平部を、少なくとも、第3部分と第1部分とにわたる部分に形成してもよい(上記実施の形態及び変形例1参照)。第3部分と第1部分とにわたる部分とは、第3部分及び第1部分の全部の他、第3部分と第1部分との少なくとも一方については、その途中までであってもよい。例えば、第3部分と第1部分とにわたる部分は、第1部分の途中までの部分であってもよい。扁平部を、少なくとも、第3部分と第2部分とにわたる部分に形成してもよい(上記実施の形態及び変形例1参照)。第3部分と第2部分とにわたる部分とは、第3部分及び第2部分の全部の他、第3部分と第2部分との少なくとも一方については、その途中までであってもよい。例えば、第3部分と第2部分とにわたる部分は、第2部分の途中までの部分であってもよい。これらにより、第1部分又は第2部分も変形し難い移動部材を得ることができる。
【0058】
(変形例4)
図8の移動部材461のように、第3屈曲部161Fと、第3中間部161Gと、第4屈曲部161Hと、第2端部161Iと、を省略してもよい。この場合、制動部材115を上記実施の形態よりも後方に位置するように配置し、移動部材461の第2中間部161Eを、第3屈曲部161F等を省略した分、長くする。そして、第2中間部161Eの他端(第2屈曲部161Dに繋がった一端の反対側)は、制動部材115の凹部115Dに入り込むようにしてもよい。このような移動部材461では、第2屈曲部161Dを扁平部Q4(説明は、上記扁平部Q1を参照)とし、残りの部分を円柱部P4(説明は、上記円柱部P1を参照)とするとよい。上記同様、移動部材461が第1位置から第2位置に移動する際、第2中間部161Eが制動部材115の突出部115Cに当たる、又は、固定部材163に突き当たると、移動部材461には、第2屈曲部161Dをさらに屈曲させようとする力(矢印R6参照)が働く。第2屈曲部161Dを、第1中間部161C及び第2中間部161Eが延びる面方向に幅広な(つまり、前記屈曲させようとする力に抗する方向に幅広な)扁平部Q4で形成していることにより、移動部材461は、前記力が働いても変形し難い。扁平部Q4は、例えば、第1中間部161Cの中間付近から、第2中間部161Eの途中(凹部115Dに入り込む部分の手前)までの部分に設けられてもよい。
【0059】
(変形例5)
固定部材163は、傾斜面163Aの代わりに、移動部材161が乗り上げる段差を有してもよい。この場合、ベール反転機構160は、移動部材161が固定部材163の前面に当接し、当該段差を乗り上げたときに、ベールアーム150の姿勢を糸巻取姿勢に復帰させる。
【0060】
(変形例6)
扁平部Q1~Q4の幅の方向(幅広となる方向)は、移動部材161の変形を防止できるような向きに設けられればよく、上記実施の形態の方向に限られない。
【0061】
(変形例7)
扁平部Q1は、円柱部P1に対して、幅方向に沿って均等に幅広(例えば、段差A1=段差A2)となっていなくてもよい。例えば、扁平部Q1と円柱部P1との幅方向における段差A1と段差A2とを異なる長さとする、又は、段差A1又は段差A2のいずれかについて段差無しとしてもよい。扁平部Q1は、円柱部P1に対して、厚み方向に沿って均等に薄くなっていなくてもよい。例えば、扁平部Q1と円柱部P1との厚さ方向における段差B1と段差B2とを異なる長さとする、又は、段差B1又は段差B2のいずれかについて段差無しとしてもよい。このようなことは、扁平部Q2~Q4、円柱部P1~P4についても同様である。
【符号の説明】
【0062】
100 スピニングリール
110 リール本体
CS 筐体
111 第1筐体部材
112 第2筐体部材
113 スプール軸
114 筒状部材
115 制動部材
115A 円筒部
115B フランジ
115C 突出部
115D 凹部
120 ハンドル
130 スプール
140 ロータ
150 ベールアーム
160 ベール反転機構
161 移動部材
161A 第1端部1
161B 第1屈曲部
161C 第1中間部
161D 第2屈曲部
161E 第2中間部(当接部)
161F 第3屈曲部
161G 第3中間部
161H 第4屈曲部
161I 第2端部
P1~P4 円柱部
Q1~Q4 扁平部
162 トグルバネ装置
163 固定部材(被当接部)
163A 傾斜面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8