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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-07
(45)【発行日】2022-09-15
(54)【発明の名称】熱併給発電プラントとその運転方法
(51)【国際特許分類】
   F01K 17/04 20060101AFI20220908BHJP
   F01K 23/10 20060101ALI20220908BHJP
   F01K 3/02 20060101ALI20220908BHJP
   F01K 3/12 20060101ALI20220908BHJP
   F01K 3/16 20060101ALI20220908BHJP
   F02G 5/02 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
F01K17/04 B
F01K23/10 X
F01K3/02 C
F01K3/12
F01K3/16
F02G5/02 B
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018107587
(22)【出願日】2018-06-05
(65)【公開番号】P2019210866
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-05-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】高橋 文夫
(72)【発明者】
【氏名】片桐 幸徳
(72)【発明者】
【氏名】小林 啓信
(72)【発明者】
【氏名】藤居 達郎
【審査官】落合 弘之
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-025313(JP,A)
【文献】特開2005-214089(JP,A)
【文献】特開2004-108731(JP,A)
【文献】特開2012-068019(JP,A)
【文献】特開平01-310272(JP,A)
【文献】特開平10-259737(JP,A)
【文献】特開平03-282167(JP,A)
【文献】実開平05-019873(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01K 1/00-21/06
F01K 23/00-27/02
F02G 1/00- 5/04
F25B 15/00-17/12
F25B 31/00-31/02
F25B 39/00-41/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電プラントの熱を熱源として吸収液を加熱して、前記吸収液を再生する再生器と、
前記再生器で再生された前記吸収液を貯蔵し、自由液面を有する高濃度吸収液タンクと、
前記再生器で生成された蒸気を冷却して水を生成する凝縮器と、
前記高濃度吸収液タンクから前記吸収液が供給される熱交換器と、
円筒状の吸収・蒸発装置と、
前記吸収・蒸発装置で蒸気を吸収した前記吸収液を貯蔵し、自由液面を有する低濃度吸収液タンクと、
を備え、
前記吸収・蒸発装置は、
外周部に位置する第1の伝熱管と、
径方向中央部に位置する第2の伝熱管と、
前記第1の伝熱管と前記第2の伝熱管との径方向の間に位置する円筒状の第1の気体透過膜と、
前記第1の気体透過膜と前記第2の伝熱管との径方向の間に位置する円筒状の第2の気体透過膜と、
を備え、
前記第2の伝熱管の内部の空間である熱媒体流路には、熱媒体が流入し、
前記第2の伝熱管と前記第2の気体透過膜との間の空間が純水流路であり、前記純水流路には、前記凝縮器で生成された前記水が流入し、
前記第1の気体透過膜と前記第1の伝熱管との間の空間が吸収液流路であり、前記吸収液流路には、前記熱交換器から前記吸収液が流入し、
前記純水流路は、流入した前記水を前記熱媒体で加熱して蒸気を生成し、前記熱媒体を減温させ、
前記吸収液流路は、前記純水流路で生成されて前記第2の気体透過膜と前記第1の気体透過膜を透過した蒸気を、前記吸収液に吸収させ、
前記熱交換器は、前記高濃度吸収液タンクから供給され前記吸収・蒸発装置に供給される前の前記吸収液と、前記吸収・蒸発装置から供給され前記低濃度吸収液タンクに貯蔵される前の前記吸収液とで熱交換を行い、
前記低濃度吸収液タンクには、前記吸収・蒸発装置で蒸気を吸収した前記吸収液が前記熱交換器から供給され、
前記再生器は、前記低濃度吸収液タンクから供給された前記吸収液を再生する、
ことを特徴とする熱併給発電プラント。
【請求項2】
発電プラントの熱を熱源として吸収液を加熱して、前記吸収液を再生する再生器と、
前記再生器で再生された前記吸収液を貯蔵し、自由液面を有する高濃度吸収液タンクと、
前記再生器で生成された蒸気を冷却して水を生成する凝縮器と、
前記高濃度吸収液タンクから前記吸収液が供給される熱交換器と
円筒状の吸収・蒸発装置と、
前記吸収・蒸発装置で蒸気を吸収した前記吸収液を貯蔵し、自由液面を有する低濃度吸収液タンクと、
を備え、
前記吸収・蒸発装置は、
外周部に位置する第1の伝熱管と、
径方向中央部に位置する第2の伝熱管と、
前記第1の伝熱管と前記第2の伝熱管との径方向の間に位置する円筒状の第1の気体透過膜と、
前記第1の気体透過膜と前記第2の伝熱管との径方向の間に位置する円筒状の第2の気体透過膜と、
を備え
前記第2の伝熱管の内部の空間である熱媒体流路には、熱媒体が流入し、
前記第1の気体透過膜と前記第1の伝熱管との間の空間が純水流路であり、前記純水流路には、前記凝縮器で生成された前記水が流入し、
前記第2の伝熱管と前記第2の気体透過膜との間の空間が吸収液流路であり、前記吸収液流路には、前記熱交換器から前記吸収液が流入し、
前記純水流路は、流入した前記水を前記吸収・蒸発装置の外表面の熱で加熱して蒸気を生成し、
前記吸収液流路は、前記純水流路で生成されて前記第1の気体透過膜と前記第2の気体透過膜を透過した蒸気を、前記吸収液に吸収させ、生じた吸収熱で、前記熱媒体流路に流入した前記熱媒体を加熱
前記熱交換器は、前記高濃度吸収液タンクから供給され前記吸収・蒸発装置に供給される前の前記吸収液と、前記吸収・蒸発装置から供給され前記低濃度吸収液タンクに貯蔵される前の前記吸収液とで熱交換を行い、
前記低濃度吸収液タンクには、前記吸収・蒸発装置で蒸気を吸収した前記吸収液が前記熱交換器から供給され、
前記再生器は、前記低濃度吸収液タンクから供給された前記吸収液を再生する、
ことを特徴とする熱併給発電プラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱併給発電プラントとその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱併給発電プラントは、発電プラントの排熱などを熱源とした吸収式冷凍機を利用して、冷却または加熱を実行するプラントである。
【0003】
特許文献1には、熱を利用して冷却を実行する吸収式冷凍機の例が記載されている。吸収式冷凍機は、再生器と吸収器と蒸発器を備え、冷媒(例えば、水)と冷媒を吸収する吸収液を用いて低温を得る。吸収式冷凍機において、吸収器で水蒸気を吸収し濃度が下がった吸収液は、再生器で加熱され、水蒸気が蒸発することにより濃度が再び高くなって再生される。再生器で加熱された吸収液は、温度が高い。吸収器では、再生器で再生された吸収液が、蒸発器から供給された水蒸気を吸収し、吸収器と蒸発器の内部の蒸気の圧力を低下させる。このため、蒸発器では、水の蒸発が促進され、冷却が実行される。この吸収過程では、吸収液は、温度が低く保たれることが好ましいので、吸収器内の冷却管の外表面を流下する。水蒸気を吸収した吸収液は、濃度が低く、タンクに貯められる。このタンクから排出された低濃度の吸収液は、再生された直後の高濃度で高温の吸収液から熱を回収し、再生器に送られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-95976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年増加している風力などの自然エネルギーを利用した発電は、出力の変動が大きいので、ガスタービン発電などの発電プラントの出力を用いて、出力の変動を抑制することが求められる。このため、ガスタービン発電は、自然エネルギー発電の出力の変動に追従して出力を変動させることが求められる。
【0006】
ガスタービンの排熱は、概ね発電出力に比例する。しかし、冷却に対する需要、例えば冷水の需要は、変動するガスタービン発電の出力に通常は依存しない。すなわち、ガスタービンの排熱の発生と冷水の需要との間には、時間的な不適合が生じる。従って、例えば、ガスタービンの排熱を吸収式冷凍機の熱源に利用して冷却を行う(例えば、冷水を生成する)場合には、発生する排熱量と冷水の需要量との時間的な不適合を解消することが課題である。
【0007】
冷水を蓄えることは、この課題の解決策の1つであるが、蓄エネルギー密度が小さいことが難点である。エネルギーを吸収液の濃度差に置き換えて吸収液を蓄えれば、等価的な蓄エネルギー密度を大幅に増やすことが可能である。
【0008】
特許文献1には、吸収液を貯めるタンクが記載されている。しかし、特許文献1に記載の技術では、低濃度の吸収液が低温のままタンクに貯められ、ガスタービンでの発電(すなわち、発電で発生した排熱を利用した吸収液の再生)と冷却の実行(例えば、冷水の生成)とを独立に行うことが困難である。例えば、ガスタービンが停止しているときに冷水を供給したい場合には、再生された高濃度の吸収液は、タンクに蓄えられた低濃度の吸収液と熱交換した後で吸収器に導かれる一方、熱交換により高温となった低濃度の吸収液は、ガスタービンが停止しているため再生されず、増え続けることになるという課題がある。また、冷却の実行を停止してガスタービンを稼動するときにも、同様の課題がある。このような課題があるため、特許文献1の技術では、発電と冷却の実行とを独立に行うことが困難である。
【0009】
さらに、一般には、吸収液を貯めるタンクでは、吸収液の体積の変動に対応した自由液面を持つが、自由液面の上方の空間に不凝縮ガス(例えば、空気)が漏れ入ると、自由液面を通して吸収液に不凝縮ガスが溶解する。吸収液から不凝縮ガスが再放出されると、吸収や凝縮の伝熱特性が極端に低下する。
【0010】
本発明は、発電プラントの排熱を利用して冷却または加熱を実行する熱併給発電プラントであって、発電と冷却または加熱の実行とを独立に行うことができる熱併給発電プラントと、その運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による熱併給発電プラントは、発電プラントの熱を熱源として吸収液を加熱して、前記吸収液を再生する再生器と、前記再生器で再生された前記吸収液を貯蔵し、自由液面を有する高濃度吸収液タンクと、前記再生器で生成された蒸気を冷却して水を生成する凝縮器と、前記凝縮器から供給された前記水を蒸発させる蒸発器と、前記高濃度吸収液タンクから前記吸収液が供給される熱交換器と、前記熱交換器から供給された前記吸収液に、前記蒸発器から供給された蒸気を吸収させる吸収器と、前記吸収器で蒸気を吸収した前記吸収液を貯蔵し、自由液面を有する低濃度吸収液タンクとを備える。前記熱交換器は、前記高濃度吸収液タンクから供給され前記吸収器に供給される前の前記吸収液と、前記吸収器から供給され前記低濃度吸収液タンクに貯蔵される前の前記吸収液とで熱交換を行う。前記低濃度吸収液タンクには、前記吸収器で蒸気を吸収した前記吸収液が前記熱交換器から供給される。前記再生器は、前記低濃度吸収液タンクから供給された前記吸収液を再生する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、発電プラントの排熱を利用して冷却または加熱を実行する熱併給発電プラントであって、発電と冷却または加熱の実行とを独立に行うことができる熱併給発電プラントと、その運転方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施例1による熱併給発電プラントの構成図。
図2】本発明の実施例2による熱併給発電プラントの構成図。
図3】本発明の実施例3による熱併給発電プラントの構成図。
図4A】本発明の実施例4による熱併給発電プラントの吸収・蒸発装置の横断面図。
図4B】本発明の実施例4による熱併給発電プラントの吸収・蒸発装置の縦断面図。
図5】本発明の実施例4による熱併給発電プラントの吸収・蒸発装置の使用方法例の概略を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明による熱併給発電プラントは、発電プラントの排熱を熱源とした吸収式冷凍機を利用して冷却を実行する、または加熱を実行することができる。発電プラントでの発電と冷却または加熱の実行は、独立に行うことができる。冷却の実行とは、例えば冷水や冷風を生成することであり、加熱の実行とは、例えば温水や温風を生成することである。発電プラントの排熱には、例えば、ガスタービンの排熱、蒸気タービンの排熱、及びガスタービンによる発電と蒸気タービンによる発電とを組み合わせたコンバインドサイクル発電の排熱を利用することができる。以下では、発電プラントとして、主に、ガスタービン発電プラントを例示する。また、以下では、冷却の実行と加熱の実行うち、主に、冷却の実行である冷水の生成を例示する。
【0015】
本発明による熱併給発電プラントは、高濃度吸収液タンクと低濃度吸収液タンクという自由液面を有する2つのタンクを備える。高濃度吸収液タンクは、再生器で再生された直後の高濃度の吸収液(高濃度吸収液)を高温で蓄える。低濃度吸収液タンクは、吸収器で生じた低濃度の吸収液(低濃度吸収液)を、低濃度吸収液が高温の高濃度吸収液から熱を回収した後で蓄える。
【0016】
本発明による熱併給発電プラントは、冷却の実行期間(例えば、冷水の供給期間)をガスタービンの稼動期間と分離することが可能である。また、エネルギー利用効率を向上する効果と、吸収液を貯蔵するタンク内に空気が漏れ入って吸収液に空気が溶解するのを抑制する効果が得られる。
【0017】
本発明による熱併給発電プラントでは、冷却の実行が必要なとき(例えば、冷水の需要が生じたとき)に、高温の高濃度吸収液が、高濃度吸収液タンクから取り出され、低濃度吸収液と熱交換して減温し吸収器に導かれる。吸収器では、高濃度吸収液が、蒸発器で冷水が生成されるときに発生した水蒸気を吸収して、低濃度吸収液になる。高濃度吸収液は、減温したので効率良く水蒸気を吸収できる。また、吸収器で生じた低濃度吸収液は、高温の高濃度吸収液と熱交換して昇温された後で低濃度吸収液タンクに蓄えられるため、再生に必要な熱エネルギーが低減される。本発明による熱併給発電プラントでは、このようにして、エネルギー利用効率を向上できる。
【0018】
本発明による熱併給発電プラントでは、冷却の実行(蒸発器での水蒸気の発生と、吸収器での高濃度吸収液による水蒸気の吸収というプロセスの実行)は、ガスタービンが稼動していなくても、低濃度吸収液タンクの容量に余裕がある限り行うことができる。ガスタービンが稼動しているときに、高温の低濃度吸収液は、低濃度吸収液タンクから取り出されて再生器に導かれ、ガスタービンによる発電の排熱を利用して再生器で再生された後、高濃度吸収液タンクに蓄えられる。本発明による熱併給発電プラントは、このように動作することで、冷水の生成と発電とを独立に行うことができ、冷水の供給期間とガスタービンの稼動期間とを分離することができる。
【0019】
さらに、低濃度吸収液と高濃度吸収液が昇温されてタンクに蓄えられるので、これらのタンクは、自由液面の上方の空間が蒸気で満たされ、タンク内に不凝縮ガス(例えば、空気)が漏れ入るリスクを低減でき、吸収液に空気が溶解するのを抑制することができる。
【0020】
以下では、本発明の実施例による熱併給発電プラントとその運転方法を説明する。本発明の実施例による熱併給発電プラントは、人が運転することもでき、コンピュータが制御して運転することもできる。なお、以下の実施例では、冷媒を水とし吸収液を臭化リチウムとするが、冷媒と吸収液は、他の物質(例えば、冷媒がアンモニアで吸収液が水)でもよい。また、以下の実施例では、主に、熱併給発電プラントが冷却を実行して冷水を生成する例を説明する。
【実施例1】
【0021】
図1は、本発明の実施例1による熱併給発電プラントの構成図である。本実施例による熱併給発電プラントは、圧縮機11、燃焼器12、ガスタービン13、排熱回収ボイラ14、再生器21、高濃度吸収液タンク31、吸収器20、蒸発器23、熱交換器33、低濃度吸収液タンク32、凝縮器22、加圧ポンプ35、純水タンク40、放熱器41、冷却用の蒸発器90、及び復水器91を備える。
【0022】
圧縮機11、燃焼器12、ガスタービン13、及び排熱回収ボイラ14は、ガスタービン発電プラントを構成する。圧縮機11は、空気を圧縮する。燃焼器12は、燃料を圧縮機11で圧縮した空気と混合して燃焼させる。ガスタービン13は、燃焼器12で発生した高温で高圧のガスにより回転する。排熱回収ボイラ14は、ガスタービン13の排ガスから熱エネルギーを回収する。
【0023】
再生器21、高濃度吸収液タンク31、吸収器20、蒸発器23、熱交換器33、低濃度吸収液タンク32、凝縮器22、加圧ポンプ35、純水タンク40、及び放熱器41は、吸収式冷凍機を構成する。吸収式冷凍機は、冷媒と吸収液を用いて冷却を実行し、冷水を生成する。
【0024】
再生器21は、排熱回収ボイラ14が回収した熱を熱源として、吸収器20で水蒸気を吸収して濃度が下がった吸収液(低濃度吸収液52)を加熱することで、吸収液を再生する。吸収液は、水蒸気が蒸発して濃度が再び高くなることで再生される。再生された吸収液(高濃度吸収液51)は、加熱されたため温度が高い。
【0025】
高濃度吸収液タンク31は、再生器21で再生された高温で高濃度の吸収液(高濃度吸収液51)を貯蔵する。高濃度吸収液タンク31は、保温性を高くするため、その体積に対し表面積が小さい形状であるのが好ましい。高濃度吸収液タンク31の外壁を保温材で覆うと、高濃度吸収液タンク31の保温性が一層高まる。
【0026】
吸収器20は、熱交換器33から供給された高濃度吸収液51(再生器21で再生されて高濃度吸収液タンク31に貯蔵された吸収液)に、蒸発器23から供給された蒸気(水蒸気)を吸収させ、水蒸気を回収する。この吸収過程では、吸収液は、効率良く水蒸気を吸収するために、温度が低く保たれることが好ましい。このため、高濃度吸収液タンク31から供給された高濃度吸収液51は、熱交換器33で放熱して減温した後、吸収器20に導かれ、吸収器20の内部の冷却管の外表面を流下して水蒸気を吸収する。吸収器20で水蒸気を吸収した高濃度吸収液51は、濃度が低くなり、低濃度吸収液52となる。
【0027】
吸収器20で吸収液が水蒸気を吸収することで、吸収器20と蒸発器23の内部の蒸気の圧力が低下する。
【0028】
蒸発器23では、内部の蒸気の圧力が低下すると、凝縮器22から供給された水50の蒸発が促進され、冷却が実行される。蒸発器23は、熱併給発電プラントの外部から水60が供給され、水50を蒸発させて外部から供給された水60を冷却することで、冷水を生成することができる。
【0029】
吸収器20で水蒸気を吸収した吸収液は、濃度が低く、温度が低い。この低濃度吸収液52は、加圧ポンプ35で加圧されて、熱交換器33に供給される。
【0030】
熱交換器33は、高濃度吸収液タンク31から供給されて吸収器20に供給される前の高温の高濃度吸収液51と、吸収器20から供給されて低濃度吸収液タンク32に貯蔵される前の低温の低濃度吸収液52とで熱交換を行う。吸収器20で水蒸気を吸収した低濃度吸収液52は、熱交換器33で、再生器21で再生された高濃度吸収液51から熱を回収し、昇温する。
【0031】
低濃度吸収液タンク32には、熱交換器33から低濃度吸収液52が供給される。低濃度吸収液タンク32は、熱交換器33で昇温した低濃度吸収液52(すなわち、吸収器20で水蒸気を吸収した吸収液)を貯蔵する。低濃度吸収液タンク32に貯蔵された低濃度吸収液52は、再生器21に供給される。低濃度吸収液タンク32は、上部に弁321を備える。低濃度吸収液タンク32の外壁を保温材で覆うと、低濃度吸収液タンク32の保温性が一層高まる。
【0032】
再生器21は、低濃度吸収液タンク32から供給された低濃度吸収液52を加熱することで吸収液を再生し、高濃度吸収液51を生成する。
【0033】
凝縮器22は、再生器21での吸収液の再生(低濃度吸収液52の加熱)で生成された水蒸気を冷却して凝縮させる。凝縮器22は、この水蒸気から熱Qを奪って水蒸気を凝縮させ、水50を生成する。
【0034】
凝縮器22で生成された水50(純水)は、純水タンク40に貯蔵され、放熱器41で放熱して、蒸発器23に供給される。
【0035】
吸収器20での吸収過程で生じた吸収熱は、冷却用の蒸発器90を経由して復水器91に排出され、復水器91から海水に放熱される。
【0036】
冷水の需要が生じたときなどで冷水を生成する場合には、高濃度吸収液タンク31は、貯蔵している高温の高濃度吸収液51を熱交換器33に供給する。高濃度吸収液51は、熱交換器33を経由して吸収器20に供給される。吸収器20は、熱交換器33から供給された高濃度吸収液51に蒸発器23から供給された蒸気を吸収させ、低濃度吸収液52を生成する。低濃度吸収液52は、熱交換器33で昇温されて低濃度吸収液タンク32に貯蔵される。このプロセスは、排熱回収ボイラ14から熱が供給されていても供給されていなくても、高濃度吸収液タンク31が高濃度吸収液51を貯蔵しており、低濃度吸収液タンク32が低濃度吸収液52を貯蔵できる余裕がある限り作動することができる。
【0037】
ガスタービン13が稼動しているときには、低濃度吸収液タンク32に貯蔵された高温の低濃度吸収液52は、再生器21に供給される。再生器21は、供給された低濃度吸収液52を排熱回収ボイラ14からの熱により再生し、再生された高濃度吸収液51を高濃度吸収液タンク31に貯蔵する。
【0038】
本実施例による熱併給発電プラントは、このように動作することで、冷水の生成と発電(ガスタービン13の稼動)とを切り離して独立に行うことができる。このため、本実施例による熱併給発電プラントは、冷水の供給期間とガスタービン13の稼動期間とを分離し、ガスタービン13が稼動しているか否かに関わらず、需要に応じて冷水を供給することができる。
【0039】
さらに、吸収器20で生成された低濃度吸収液52が熱交換器33で昇温されて低濃度吸収液タンク32に貯蔵されるため、低濃度吸収液タンク32は、自由液面の上方の空間が蒸気で満たされる。高濃度吸収液タンク31は、再生器21で再生された直後の高温の高濃度吸収液51を貯蔵するので、自由液面の上方の空間が蒸気で満たされる。すなわち、高濃度吸収液タンク31と低濃度吸収液タンク32は、それぞれ高温度の高濃度吸収液51と低濃度吸収液52を貯蔵するので、吸収液51、52の飽和蒸気圧力が高くなり、タンク31、32の内部での空気の滞留を防止できる。このため、高濃度吸収液タンク31と低濃度吸収液タンク32は、それぞれの内部に空気が漏れ入るリスクを低減でき、吸収液51、52に空気が溶解するのを抑制することができる。
【0040】
なお、タンク31、32の内部では、吸収液51、52の飽和蒸気圧力を大気圧力より高くするのが好ましい。吸収液51、52の飽和蒸気圧力は、設計条件によって決定される。
【0041】
高濃度吸収液タンク31は、高濃度吸収液51を積極的に脱気するための脱気機構34を備えることができる。図1に示す高濃度吸収液タンク31は、脱気機構34を備え、高濃度吸収液タンク31の内部での空気の滞留を防止でき、高濃度吸収液51に空気が溶解するのを防止できる。低濃度吸収液タンク32に脱気機構34を設けても、高濃度吸収液タンク31に脱気機構34を設けた場合と同様の効果が低濃度吸収液タンク32で得られる。脱気機構34には、例えば、沸騰水型原子力発電所で用いられているスプレー脱気方式の脱気器を用いることができる。このような脱気機構の例は、特開昭63-217109号公報に開示されている。
【0042】
以下、脱気機構34の例について説明する。本実施例での脱気機構34は、放熱器と噴霧器と真空ポンプとを備える。
【0043】
再生器21から高濃度吸収液タンク31に供給される高濃度吸収液51は、2つに分岐する。一方の高濃度吸収液51は、高温を保ったまま、高濃度吸収液タンク31の液溜まりに流れ込む。他方の高濃度吸収液51は、脱気機構34に流れ込み、放熱器で放熱して減温され、高濃度吸収液タンク31の液面の上方の空間に噴霧器によって噴霧される。噴霧された高濃度吸収液51の液滴は、温度が低いため、凝縮(または吸収)が生じ加熱される。高濃度吸収液タンク31は、液面の上方の空間が減圧され、液溜まりに存在する高濃度吸収液51が減圧沸騰する。
【0044】
高濃度吸収液51の脱気は、次の2つのプロセスで進む。第1は、噴霧された高濃度吸収液51の液滴が加熱されて空気が放出されるプロセスである。第2は、高濃度吸収液タンク31の液溜まりの液の減圧沸騰のプロセスである。高濃度吸収液タンク31の内部では、下部で液溜まりの液が沸騰し、上部で液滴への凝縮が生じるので、液面の上方の空間で下部から上部に向かう蒸気の流れが生じる。高濃度吸収液51から脱気された空気は、この蒸気の流れに乗って上部に集まる。上部に集まった空気は、最終的には、高濃度吸収液タンク31の上部に設置された真空ポンプで高濃度吸収液タンク31から排気される。
【0045】
なお、図1において、蒸発器23に供給される純水は、再生器21で生成した水蒸気を凝縮させた水50を用いているが、これは、吸収液51、52の溶媒と溶質が全て閉ループ内を循環することを想定した例である。蒸発器23に供給される純水には、別の方法で供給された純水を用いることもできる。また、吸収器20からの熱は、最終的に復水器91から海水に放熱されるが、復水器91の代わりにクーリングタワーなどを用いて放熱することもできる。
【実施例2】
【0046】
図2は、本発明の実施例2による熱併給発電プラントの構成図である。図2において、図1と同一の符号は、実施例1と同一または共通する要素を示し、これらの要素については説明を省略する。
【0047】
本実施例による熱併給発電プラントは、高濃度吸収液51を複数の地点に供給し、これら複数の地点で冷却または加熱を実行する(例えば、冷水を生成する)。図2は、2つの互いに異なる地点A、Bに高濃度吸収液51を供給する例を示している。
【0048】
本実施例による熱併給発電プラントは、吸収器20、蒸発器23、加圧ポンプ35、冷却用の蒸発器90、及び復水器91を備える装置群を複数備える。これらの装置群は、地点A、Bのそれぞれに1つまたは複数が配置される。
【0049】
本実施例による熱併給発電プラントでは、熱交換器33は、地点A、Bのそれぞれの装置群の吸収器20に、熱交換器33で放熱して減温した高濃度吸収液51を供給する。それぞれの装置群では、吸収器20は、熱交換器33から供給された高濃度吸収液51に蒸発器23から供給された蒸気を吸収させる。熱交換器33には、それぞれの装置群の吸収器20から低濃度吸収液52が供給される。
【0050】
また、凝縮器22は、それぞれの装置群の蒸発器23に水50を供給する。それぞれの装置群では、蒸発器23は、凝縮器22から供給された水50を蒸発させて、外部から供給された水60を冷却することで、冷水を生成する。
【0051】
本実施例による熱併給発電プラントは、冷水の需要が複数の地点で生じても、それぞれの地点で冷水を生成することができる。また、冷水の需要が生じた複数の地点が熱交換器33から遠方にあっても、高濃度吸収液51と水50は、常温(環境によって決まる温度、例えば10~20℃)に近い温度で熱ロスがなくそれぞれの地点に供給することができる。低濃度吸収液52が常温に近い温度で遠方から回収されても、熱バランスに大きな影響を与えない。このように、本実施例による熱併給発電プラントは、広域に点在する複数の地点で冷却または加熱を実行することが可能である。
【実施例3】
【0052】
図3は、本発明の実施例3による熱併給発電プラントの構成図である。図3において、図1と同一の符号は、実施例1と同一または共通する要素を示し、これらの要素については説明を省略する。
【0053】
本実施例による熱併給発電プラントは、再生器21が吸収液を再生するときの熱源として、コンバインドサイクル発電プラントの排熱を利用する。コンバインドサイクル発電プラントは、ガスタービンと蒸気タービンとを備え、ガスタービンによる発電と蒸気タービンによる発電とを組み合わせて発電する発電プラントである。本実施例による熱併給発電プラントは、コンバインドサイクル発電プラントの構成要素として、圧縮機11、燃焼器12、ガスタービン13、及び排熱回収ボイラ14の他に、蒸気タービン15、蒸気ドラム141、蒸発管142、及びエコノマイザ143を備える。
【0054】
本実施例による熱併給発電プラントでは、排熱回収ボイラ14から蒸気タービン15に供給される蒸気の一部を抽気し、再生器21の熱源とする。再生器21、凝縮器22、蒸発器23、吸収器20、高濃度吸収液タンク31、低濃度吸収液タンク32、及び熱交換器33など、本実施例による熱併給発電プラントのその他の主な構成は、実施例1による熱併給発電プラントと同じである。
【0055】
本実施例による熱併給発電プラントは、既に稼動しているコンバインドサイクル発電プラントを利用して、冷却または加熱を実行することができるという利点がある。既存のコンバインドサイクル発電プラントを利用する際には、コンバインドサイクル発電プラントの改造を小さく留めることができる。
【実施例4】
【0056】
本発明の実施例4による熱併給発電プラントを説明する。本実施例による熱併給発電プラントは、実施例1から実施例3による熱併給発電プラントにおいて、吸収器20と蒸発器23を備えず、吸収器20と蒸発器23の機能を一体化して1つのパッケージとした吸収・蒸発装置を備える。吸収・蒸発装置は、冷却または加熱を実行する装置である。
【0057】
図4Aは、吸収・蒸発装置200の横断面図であり、図4Bは、吸収・蒸発装置200の縦断面図である。吸収・蒸発装置200は、円筒状であり、互いに径が異なる円筒状の伝熱管201、伝熱管202と、互いに径が異なる円筒状の気体透過膜203、気体透過膜204とを備える。気体透過膜203、204は、気体を透過させるが、液体を透過させない膜である。
【0058】
伝熱管201は、吸収・蒸発装置200の外周部に位置し、吸収・蒸発装置200の外周面を構成する。
【0059】
伝熱管202は、伝熱管201より径が小さく、吸収・蒸発装置200の径方向中央部に位置する。伝熱管202の内部の空間は、熱媒体流路205である。
【0060】
気体透過膜203は、伝熱管201と伝熱管202との径方向の間に位置する。気体透過膜203と伝熱管201との間の空間は、吸収液流路208である。
【0061】
気体透過膜204は、気体透過膜203と伝熱管202との径方向の間に位置する。伝熱管202と気体透過膜204との間の空間は、純水流路206である。気体透過膜204と気体透過膜203との間の空間は、隙間207であり、空洞である。
【0062】
すなわち、吸収・蒸発装置200は、径方向の中央部から外側に向かって、熱媒体流路205、伝熱管202、純水流路206、気体透過膜204、隙間207、気体透過膜203、吸収液流路208、及び伝熱管201を備える。熱媒体流路205、純水流路206、及び吸収液流路208は、両端部が開口している。隙間207は、両端部が閉じている。
【0063】
吸収・蒸発装置200は、実施例1による熱併給発電プラント(図1)の吸収器20と蒸発器23の機能を備え、これらの機能を簡易な構成で実現する。吸収・蒸発装置200には、高濃度吸収液51、水50(純水)、及び熱媒体61が供給される。熱媒体61は、例えば、水や空気である。
【0064】
吸収液流路208には、高濃度吸収液タンク31から供給されて熱交換器33で低濃度吸収液52と熱交換をした高濃度吸収液51が、熱交換器33から流入する。高濃度吸収液51は、気体透過膜203によって伝熱管201の内表面に接触し保持される。純水流路206には、凝縮器22で生成された水50が流入する。水50は、気体透過膜204によって伝熱管202の外表面に接触し保持される。熱媒体流路205には、熱媒体61が流入する。
【0065】
熱媒体流路205に流入した熱媒体61は、純水流路206の水50を加熱する。水50は、加熱されると、気体透過膜204の内面で蒸発して蒸気となる。これは、後述するように隙間207の蒸気が高濃度吸収液51に吸収され、隙間207の蒸気分圧が低く保たれるためである。このようにして、純水流路206は、流入した水50を熱媒体61で加熱して蒸気を生成し、生成された蒸気は、気体透過膜204を通過して隙間207を満たす。これにより、熱媒体61は、減温する。熱媒体61が水であれば、冷水が生成される。
【0066】
隙間207の蒸気は、気体透過膜203を透過し、吸収液流路208の高濃度吸収液51に吸収される。すなわち、吸収液流路208は、純水流路206で生成されて気体透過膜204と気体透過膜203を透過した蒸気を、高濃度吸収液51に吸収させる。蒸気が高濃度吸収液51に吸収されると、吸収熱が生じる。生じた吸収熱は、隙間207の蒸気にも伝わるが、主に吸収液流路208の高濃度吸収液51に伝わる。高濃度吸収液51に伝わった吸収熱Qは、伝熱管201に伝わり、伝熱管201の外表面から周囲の環境に放熱される。隙間207の蒸気を吸収した高濃度吸収液51は、濃度が低くなり、低濃度吸収液52となる。低濃度吸収液52は、吸収液流路208を流れて吸収・蒸発装置200から流出し、熱交換器33に供給される。
【0067】
図5は、吸収・蒸発装置200の使用方法例の概略を示す図である。なお、吸収・蒸発装置200の周囲には、常温の熱源(熱媒体61)が豊富にあるのが好ましい。また、複数の地点に吸収・蒸発装置200を配置し、実施例2に示したように複数の地点に高濃度吸収液51を供給し、これらの複数の地点で冷却または加熱を実行する(例えば、冷水を生成する)こともできる。
【0068】
吸収・蒸発装置200は、長さ方向の両端部にヘッダ部210を備える。一端部のヘッダ部210は、吸収・蒸発装置200に流入する流体(例えば、熱媒体61、水50、及び高濃度吸収液51)を分配して流路205、206、208に供給する。他端部のヘッダ部210は、吸収・蒸発装置200から流体(例えば、熱媒体61、及び低濃度吸収液52)を流出させる。水50は、純水流路206で蒸発し消費されて吸収・蒸発装置200から流出しないが、吸収・蒸発装置200から流出してもよい。
【0069】
一端部のヘッダ部210により、高濃度吸収液51は、吸収液流路208に供給され、水50は、純水流路206に供給され、熱媒体61は、熱媒体流路205に供給される。なお、熱媒体61は、吸収・蒸発装置200の周囲から集めることができる。
【0070】
吸収・蒸発装置200は、上述したような吸収と蒸発を一体化したプロセスを実行すると、外表面が吸収熱Qで発熱し、常温の熱媒体61(例えば、外部から供給された水60)から冷却された熱媒体61(例えば、冷水)を得ることができる。
【0071】
また、吸収・蒸発装置200は、純水流路206と吸収液流路208の位置が入れ替わってもよい。吸収・蒸発装置200は、純水流路206と吸収液流路208の位置が入れ替わると、径方向の中央部から外側に向かって、熱媒体流路205、伝熱管202、吸収液流路208、気体透過膜204、隙間207、気体透過膜203、純水流路206、及び伝熱管201を備え、外表面から吸熱し、常温の熱媒体61から加熱された熱媒体61を得ることができる。
【0072】
吸収・蒸発装置200で、純水流路206と吸収液流路208の位置が入れ替わり、常温の熱媒体61から加熱された熱媒体61を得るプロセスを説明する。気体透過膜203と伝熱管201との間の空間が純水流路206であり、純水流路206には、凝縮器22で生成された水50が流れる。伝熱管202と気体透過膜204との間の空間が吸収液流路208であり、吸収液流路208には、高濃度吸収液51が流れる。
【0073】
純水流路206の水50は、吸収・蒸発装置200の外表面の熱で加熱され、蒸発して蒸気となる。この蒸気は、気体透過膜203を透過して隙間207を満たす。隙間207の蒸気は、気体透過膜204を透過し、吸収液流路208の高濃度吸収液51に吸収され、吸収熱を生じる。生じた吸収熱は、主に吸収液流路208の高濃度吸収液51に伝わる。高濃度吸収液51に伝わった吸収熱Qは、熱媒体流路205に流入した常温の熱媒体61を加熱する。このようにして、加熱された熱媒体61を得ることができる。熱媒体61が水であれば、温水を生成することができる。
【0074】
本実施例による熱併給発電プラントは、吸収器20と蒸発器23が1つのパッケージとなった簡易な構成の吸収・蒸発装置200を備えるので、広域の複数の地点で冷却または加熱を実行するのに便利であり、例えば、農業やメタンハイドレート回収の熱源としても利用することができる。
【0075】
なお、本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、上記の実施例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、本発明は、必ずしも説明した全ての構成を備える態様に限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能である。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、削除したり、他の構成を追加・置換したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0076】
11…圧縮機、12…燃焼器、13…ガスタービン、14…排熱回収ボイラ、15…蒸気タービン、20…吸収器、21…再生器、22…凝縮器、23…蒸発器、31…高濃度吸収液タンク、32…低濃度吸収液タンク、33…熱交換器、34…脱気機構、35…加圧ポンプ、40…純水タンク、41…放熱器、50…水、51…高濃度吸収液、52…低濃度吸収液、60…外部から供給された水、61…熱媒体、90…冷却用の蒸発器、91…復水器、141…蒸気ドラム、142…蒸発管、143…エコノマイザ、200…吸収・蒸発装置、201、202…伝熱管、203、204…気体透過膜、205…熱媒体流路、206…純水流路、207…隙間、208…吸収液流路、210…ヘッダ部、321…弁。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5