IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三井化学株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-07
(45)【発行日】2022-09-15
(54)【発明の名称】(ポリ)チオール化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 319/20 20060101AFI20220908BHJP
   C07C 321/14 20060101ALI20220908BHJP
   B29C 39/02 20060101ALI20220908BHJP
   C08G 18/38 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
C07C319/20
C07C321/14
B29C39/02
C08G18/38 076
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018107779
(22)【出願日】2018-06-05
(65)【公開番号】P2019210249
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-04-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】大清水 薫
【審査官】水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-252207(JP,A)
【文献】特開平06-025223(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波の照射下において、ハロゲン原子のβ位に位置する炭素原子に硫黄原子を有する有機ハロゲン化合物をチア化剤と反応させ、前記有機ハロゲン化合物をチオール化する工程を含む、(ポリ)チオール化合物の製造方法であって、
前記有機ハロゲン化合物は下記一般式(1)で表される化合物であり、
前記(ポリ)チオール化合物は下記一般式(2)で表される化合物である、(ポリ)チオール化合物の製造方法。
-(X)n (1)
(前記一般式(1)中、Xは塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子を示し、Q は、置換されてもよいC3以上C25以下のn価の脂肪族基、または置換されてもよいC3以上C25以下のn価の脂環族基を示す。前記脂肪族基および脂環族基は、少なくとも1つのスルフィド結合を含み、または少なくとも1つのメルカプト基で置換される。前記脂肪族基および脂環族基は、酸素原子または窒素原子を含んでもよい。前記脂肪族基および脂環族基が少なくとも1つのスルフィド結合を含む場合、前記一般式(1)において示されるXに対してβ位の炭素原子に硫黄原子が結合し、前記脂肪族基および脂環族基が少なくとも1つのメルカプト基を含む場合、前記一般式(1)において示されるXに対してβ位の炭素原子にメルカプト基が結合する。β位の炭素原子以外の炭素原子に硫黄原子が結合していてもよく、メルカプト基が結合していてもよい。nは1~7の整数を示す。)
-(SH) (2)
前記一般式(2)中、nは1~7の整数を示す。Q は、置換されてもよいC3以上C25以下のn価の脂肪族基、または置換されてもよいC3以上C25以下のn価の脂環族基を示す。前記脂肪族基および脂環族基は、少なくとも1つのスルフィド結合を含むか、少なくとも1つのメルカプト基で置換されており、酸素原子または窒素原子を含んでもよい。当該スルフィド結合を構成する硫黄原子のβ位に位置する少なくとも1つの炭素原子に、前記一般式(2)において示されるメルカプト基が結合しているか、またはメルカプト基が結合している炭素原子のβ位に位置する少なくとも1つの炭素原子に、前記一般式(2)において示されるメルカプト基が結合している。Q を構成する基は、前記一般式(1)のQ において示される基と同義であるが、-SH基が結合する炭素原子は、前記一般式(1)のXが結合する炭素原子と同一でも異なっていてもよい。
【請求項2】
前記チア化剤は、チオ尿素、硫化水素アルカリ金属化合物、硫化アルカリ金属化合物、O-アルキルジチオ炭酸アルカリ金属化合物、チオカルボン酸アルカリ金属化合物、硫化水素、チオ硫酸金属化合物およびチオアミドから選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の(ポリ)チオール化合物の製造方法。
【請求項3】
前記工程は、極性溶媒中で行われる、請求項1または2に記載の(ポリ)チオール化合物の製造方法。
【請求項4】
前記工程は、密閉容器内で行われる、請求項1~3のいずれかに記載の(ポリ)チオール化合物の製造方法。
【請求項5】
マイクロ波の周波数は0.2GHz以上、20GHz以下である、請求項1~4のいずれかに記載の(ポリ)チオール化合物の製造方法。
【請求項6】
前記工程において、前記容器内の温度は50℃以上、200℃以下であり、前記容器内の圧力は0atmを超え、30atm以下である、請求項4に記載の(ポリ)チオール化合物の製造方法。
【請求項7】
前記有機ハロゲン化合物が、2-クロロエチルエチルスルフィド、2-クロロイソブチルエチルスルフィド、4-クロロメチル-1,8-ジクロロ-3,6-ジチアオクタン、1,5,9-トリクロロ-3,7-ジチアノナン、4,8または4,7または5,7-ジクロロメチル-1,11-ジクロロ-3,6,9-トリチアウンデカン、1,5,9,13-テトラクロロ-3,7,11-トリチアトリデカン、4または5-クロロメチル-1,8,12-トリクロロ-3,6,10-トリチアドデカン、2,5-ビス(クロロメチル)-1,4-ジチアンよりなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1~6のいずれかに記載の(ポリ)チオール化合物の製造方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の製造方法により(ポリ)チオール化合物を製造する工程と、
前記工程で得られた(ポリ)チオール化合物と、イソ(チオ)シアネート化合物とを混合し、重合性組成物を調製する工程と、
当該重合性組成物をモールド内で注入硬化させる工程と、
を含む成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(ポリ)チオール化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(ポリ)チオール化合物の製造方法は、従来数多くの方法が知られている。例えば、ジスルフィド化合物を還元する方法、有機ハロゲン化合物に水硫化ナトリウム、水硫化カリウム等の水硫化または硫化アルカリ金属塩を反応させる方法、有機ハロゲン化合物またはアルコール類にチオ尿素を反応させてイソチウロニウム塩を生成し、それを塩基で加水分解する方法、ブンテ塩を経由する方法、ジチオカルバミン酸エステルを経由する方法、Grignard試薬と硫黄を用いる方法、スルフィドのC-S結合を開裂させる方法、エピスルフィドを開環させる方法、カルボニル基を有する化合物を出発化合物として硫化水素を反応させる方法、アルケンに硫化水素またはチオ酢酸を付加させる方法等が挙げられる。
【0003】
特許文献1には、2,5-ビス(クロロメチル)-1,4-ジチアンを、硫化水素を飽和させたエチルアルコールに加え、水硫化ナトリウムを加え、さらに硫化水素を飽和させた後、硫化水素をゆっくり流しながら還流下で反応させることで、2,5-ビス(メルカプトメチル)-1,4-ジチアンを製造する方法が開示されている。
【0004】
特許文献2には、脂肪族炭化水素または芳香族化合物等のマイクロ波を吸収しない液状原料と、金属粉等のマイクロ波を吸収する固体とからなる反応原料に、マイクロ波を照射することにより、当該液状原料を反応させる方法が開示されている。
【0005】
特許文献3には、マイクロ波照射により促進される有機化合物の合成反応において、特定の化合物を添加して、有機化合物の生産効率を向上させる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平06-25223号公報
【文献】特開2008-93593号公報
【文献】特開2012-184183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、これらの特許文献に記載の技術は以下の点で改善の余地があった。
特許文献1には、有機ハロゲン化合物を還流下でチオール化する方法が記載されているが、収率が低く、さらに反応時間が長く、副生成物の抑制が十分ではないことから生産効率の点で改善の余地があった。
なお、特許文献2、3には、マイクロ波を用いて有機ハロゲン化合物をチオール化する反応については開示されていない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下に示すことができる。
[1] マイクロ波の照射下において、ハロゲン原子のβ位に位置する炭素原子に硫黄原子を有する有機ハロゲン化合物をチア化剤と反応させ、前記有機ハロゲン化合物をチオール化する工程を含む、(ポリ)チオール化合物の製造方法。
[2] 前記チア化剤は、チオ尿素、硫化水素アルカリ金属化合物、硫化アルカリ金属化合物、O-アルキルジチオ炭酸アルカリ金属化合物、チオカルボン酸アルカリ金属化合物、硫化水素、チオ硫酸金属化合物およびチオアミドから選択される少なくとも1種である、[1]に記載の(ポリ)チオール化合物の製造方法。
[3] 前記工程は、極性溶媒中で行われる、[1]または[2]に記載の(ポリ)チオール化合物の製造方法。
[4] 前記工程は、密閉容器内で行われる、[1]~[3]のいずれかに記載の(ポリ)チオール化合物の製造方法。
[5] マイクロ波の周波数は0.2GHz以上、20GHz以下である、[1]~[4]のいずれかに記載の(ポリ)チオール化合物の製造方法。
[6] 前記工程において、前記容器内の温度は50℃以上、200℃以下であり、前記容器内の圧力は0atmを超え、30atm以下である、[4]に記載の(ポリ)チオール化合物の製造方法。
[7] 前記有機ハロゲン化合物が、2-クロロエチルエチルスルフィド、2-クロロイソブチルエチルスルフィド、4-クロロメチル-1,8-ジクロロ-3,6-ジチアオクタン、1,5,9-トリクロロ-3,7-ジチアノナン、4,8または4,7または5,7-ジクロロメチル-1,11-ジクロロ-3,6,9-トリチアウンデカン、1,5,9,13-テトラクロロ-3,7,11-トリチアトリデカン、4または5-クロロメチル-1,8,12-トリクロロ-3,6,10-トリチアドデカン、2,5-ビス(クロロメチル)-1,4-ジチアンよりなる群から選ばれる少なくとも1種である、[1]~[6]のいずれかに記載の(ポリ)チオール化合物の製造方法。
[8] [1]~[7]のいずれかに記載の製造方法により(ポリ)チオール化合物を製造する工程と、
前記工程で得られた(ポリ)チオール化合物と、イソ(チオ)シアネート化合物とを混合し、重合性組成物を調製する工程と、
当該重合性組成物をモールド内で注入硬化させる工程と、
を含む成形体の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、目的とする(ポリ)チオール化合物を高収率で得ることができ、さらに反応時間が短縮化され、かつ副生成物が低減されることから生産効率にも優れる、(ポリ)チオール化合物の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施の形態に基づき説明する。
本実施形態の(ポリ)チオール化合物の製造方法は、マイクロ波の照射下において、ハロゲン原子のβ位に位置する炭素原子に硫黄原子を有する有機ハロゲン化合物をチア化剤と反応させ、前記有機ハロゲン化合物をチオール化する工程を含む。
まず、各成分について説明する。
【0011】
[有機ハロゲン化合物]
本実施形態において、有機ハロゲン化合物はハロゲン原子のβ位に位置する炭素原子に硫黄原子を有し、具体的には下記一般式(1)で表される。
【0012】
-(X)n (1)
一般式(1)中、Xは塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子を示し、Qは、置換されてもよいC3以上C25以下のn価の脂肪族基、または置換されてもよいC3以上C25以下のn価の脂環族基を示す。前記脂肪族基および脂環族基は、少なくとも1つのスルフィド結合を含み、または少なくとも1つのメルカプト基で置換される。前記脂肪族基および脂環族基は、酸素原子または窒素原子を含んでもよい。
【0013】
前記脂肪族基および脂環族基が少なくとも1つのスルフィド結合を含む場合、式(1)において示されるXに対してβ位の炭素原子に硫黄原子が結合し、前記脂肪族基および脂環族基が少なくとも1つのメルカプト基を含む場合、式(1)において示されるXに対してβ位の炭素原子にメルカプト基が結合する。なお、β位の炭素原子以外の炭素原子に硫黄原子が結合していてもよく、メルカプト基が結合していてもよい。
【0014】
C3以上C25以下のn価の脂肪族基は、例えば、n-プロパン、n-ブタン、sec-ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、ノナデカン、イコサン等の脂肪族化合物から誘導されるn価の基である。
【0015】
C3以上C25以下のn価の脂環族基は、例えば、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロペンタン、シクロデカン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン等の脂環族化合物から誘導されるn価の基である。
【0016】
置換されたC3以上C25以下のn価の脂肪族基、または置換されたC3以上C25以下のn価の脂環族基の置換基としては、メルカプト基以外に、ハロゲン原子、水酸基、C1以上C10以下のアルキル基、C1以上C10以下のアルコキシル基、C1以上C10以下のアルキルチオ基、C3以上C10以下の芳香族基、アミノ基、カルボニル基等が挙げられる。
【0017】
nは1~7の整数を示し、好ましくは1~5の整数である。
nが2以上の整数の場合、式(1)のXは、Qの同一または異なる炭素原子と結合する。
【0018】
本実施形態においては、一般式(1)で表される有機ハロゲン化合物として、下記一般式(1a)で表される有機ハロゲン化合物を用いることが好ましい。
【0019】
【化1】
【0020】
一般式(1a)中、R、R、Rは、同一でも異なっていてもよく、水素原子、置換されてもよいC1以上C18以下の脂肪族基、置換されてもよいC3以上C20以下の脂環族基、または置換されてもよいC6以上C20以下の芳香族有機基を示す。前記脂肪族基、前記脂環族基、および前記芳香族有機基は、硫黄原子、酸素原子または窒素原子を含んでもよい。前記脂肪族基、脂環族基、および芳香族有機基が硫黄原子を含む場合、これらの基の置換基であるハロゲン原子に対してβ位に位置する炭素原子に、硫黄原子が結合していてもよい。なお、β位の炭素原子以外の炭素原子に硫黄原子が結合していてもよい。
【0021】
、R、Rとして好ましくは、水素原子、C1以上C10以下の脂肪族アルキル基、
-(CRR)-X、
-(CRX)-CRR-S-(CRR)-X、
-CR(-(CRR)-X)(-S-(CRR)-X)、
-(CRX)-CRR-S-CRR-(CRX)-CRR-S-(CRR)-X
(nは1以上3以下の整数、Rは、水素原子、C1以上C10以下の脂肪族アルキル基、C3以上C20以下の脂環族基、C6以上C20以下の芳香族有機基を示す。Rはハロゲン原子、水酸基、メルカプト基で置換されていてもよい。)
が挙げられる。
【0022】
およびRは、同一でも異なっていてもよく、水素原子、-CH-S-(CH-X(nは1以上3以下の整数)、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、アセチル基、ホルミル基、メルカプト基、置換されてもよいC1以上C20以下の脂肪族基、置換されてもよいC3以上C20以下の脂環族基、または置換されてもよいC6以上C20以下の芳香族有機基を示す。前記脂肪族基、前記脂環族基または前記芳香族有機基は、酸素原子、窒素原子または硫黄原子を含んでもよい。R4またはR5は、R、R、Rを構成するRと結合して環を形成することができる。
【0023】
C1以上C20以下の脂肪族基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。
【0024】
C3以上C20以下の脂環族基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロペンタニル基、シクロデカニル基、2-ヒドロキシシクロヘキシル基、2,3-ジヒドロキシシクロヘキシル基、2-アミノシクロヘキシル基、2,3-ジアミノシクロヘキシル基、2-メルカプトシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0025】
C6以上C20以下の芳香族有機基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基等が挙げられる。
【0026】
「置換されたC1以上C20以下の脂肪族基、置換されたC3以上C20以下の脂環族基、または置換されたC6以上C20以下の芳香族有機基」の置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、C1以上C10以下のアルキル基、C1以上C10以下のアルコキシル基、C1以上C10以下のアルキルチオ基、アミノ基等が挙げられる。
【0027】
およびRは、同一でも異なっていてもよく、水素原子、-CH-S-(CH-X(nは1以上3以下の整数)、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、アセチル基、ホルミル基、メルカプト基、置換されてもよいC1以上C20以下の脂肪族基、置換されてもよいC3以上C20以下の脂環族基、または置換されてもよいC6以上C20以下の芳香族有機基を示す。前記脂肪族基、前記脂環族基または前記芳香族有機基は、酸素原子、窒素原子または硫黄原子を含んでもよい。
【0028】
「C1以上C20以下の脂肪族基、C3以上C20以下の脂環族基、C6以上C20以下の芳香族有機基」は上記の基と同義である。
【0029】
置換されたC1以上C18以下の脂肪族基、置換されたC3以上C20以下の脂環族基、または置換されたC6以上C20以下の芳香族有機基の置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、C1以上C10以下のアルキル基、C1以上C10以下のアルコキシル基、C1以上C10以下のアルキルチオ基、アミノ基等が挙げられる。
なお、RまたはRは、R、R、Rを構成するRと結合して環を形成することができ、R4、R5と結合して環を形成することができる。
一般式(1a)において、Xは一般式(1)と同義である。
【0030】
一般式(1)の有機ハロゲン化合物としては、2-クロロエチルエチルスルフィド、2-クロロイソブチルエチルスルフィド、4-クロロメチル-1,8-ジクロロ-3,6-ジチアオクタン、1-クロロ-4-クロロメチル-8-ヒドロキシ-3,6-ジチアオクタン、1-クロロ-5-クロロメチル-8-ヒドロキシ-3,6-ジチアオクタン、1,8-ジクロロ-4-ヒドロキシメチル-3,6-ジチアオクタン、4-クロロメチル-1,8-ジヒドロキシ-3,6-ジチアオクタン、1-クロロ-8-ヒドロキシ-4-ヒドロキシメチル-3,6-ジチアオクタン、1-クロロ-8-ヒドロキシ-5-ヒドロキシメチル-3,6-ジチアオクタン、1,5,9-トリクロロ-3,7-ジチアノナン、1,5-ジクロロ-9-ヒドロキシ-3,7-ジチアノナン、1,9-ジクロロ-5-ヒドロキシ-3,7-ジチアノナン、1-クロロ-5,9-ジヒドロキシ-3,7-ジチアノナン、5-クロロ-1,9-ジヒドロキシ-3,7-ジチアノナン、1,11-ジクロロ-4,8-ジクロロメチル-3,6,9-トリチアウンデカン、1,11-ジクロロ-4-クロロメチル-8-ヒドロキシメチル-3,6,9-トリチアウンデカン、1-クロロ-4,8-ジクロロメチル-11-ヒドロキシ-3,6,9-トリチアウンデカン、1,11-ジクロロ-4,8-ジヒドロキシメチル-3,6,9-トリチアウンデカン、1-クロロ-4-クロロメチル-11-ヒドロキシ-8-ヒドロキシメチル-3,6,9-トリチアウンデカン、1-クロロ-8-クロロメチル-11-ヒドロキシ-4-ヒドロキシメチル-3,6,9-トリチアウンデカン、4,8-ジクロロメチル-1,11-ジヒドロキシ-3,6,9-トリチアウンデカン、1-クロロ-11-ヒドロキシ-4,8-ジヒドロキシメチル-3,6,9-トリチアウンデカン、4-クロロメチル-1,11-ジヒドロキシ-8-ヒドロキシメチル-3,6,9-トリチアウンデカン、1,5,12-トリクロロ-9-クロロメチル-3,7,10-トリチアドデカン、1,5,12-トリクロロ-9-ヒドロキシメチル-3,7,10-トリチアドデカン、1,8-ジクロロ-4-クロロメチル-12-ヒドロキシ-3,6,10-トリチアドデカン、1,5-ジクロロ-9-クロロメチル-12-ヒドロキシ-3,7,10-トリチアドデカン、1,12-ジクロロ-4-クロロメチル-8-ヒドロキシ-3,6,10-トリチアドデカン、1,8-ジクロロ-12-ヒドロキシ-4-ヒドロキシメチル-3,6,10-トリチアドデカン、1,5-ジクロロ-12-ヒドロキシ-9-ヒドロキシメチル-3,7,10-トリチアドデカン、1,12-ジクロロ-4-ヒドロキシ-9-ヒドロキシメチル-3,7,10-トリチアドデカン、1-クロロ-4-クロロメチル-8,12-ジヒドロキシ-3,6,10-トリチアドデカン、5-クロロ-9-クロロメチル-1,12-ジヒドロキシ-3,7,10-トリチアドデカン、1-クロロ-9-クロロメチル-5,12-ジヒドロキシ-3,7,10-トリチアドデカン、4-クロロメチル-1,8,12-トリヒドロキシ-3,6,10-トリチアドデカン、1-クロロ-5,12-ジヒドロキシ-9-ヒドロキシメチル-3,7,10-トリチアドデカン、5-クロロ-1,12-ジヒドロキシ-9-ヒドロキシメチル-3,7,10-トリチアドデカン、1-クロロ-8,12-ジヒドロキシ-4-ヒドロキシメチル-3,6,10-トリチアドデカン、1,5,9,13-テトラクロロ-3,7,11-トリチアトリデカン、1,5,9-トリクロロ-13-ヒドロキシ-3,7,11-トリチアトリデカン、1,5,13-トリクロロ-9-ヒドロキシ-3,7,11-トリチアトリデカン、5,9-ジクロロ-1,13-ジヒドロキシ-3,7,11-トリチアトリデカン、1,9-ジクロロ-5,13-ジヒドロキシ-3,7,11-トリチアトリデカン、1,5-ジクロロ-9,13-ジヒドロキシ-3,7,11-トリチアトリデカン、1,13-ジクロロ-5,9-ジヒドロキシ-3,7,11-トリチアトリデカン、5-クロロ-1,9,13-トリヒドロキシ-3,7,11-トリチアトリデカン、1-クロロ-5,9,13-トリヒドロキシ-3,7,11-トリチアトリデカン、1,11-ジクロロ-4,7-ジクロロメチル-3,6,9-トリチアウンデカン、1,11-ジクロロ-5-クロロメチル-8-ヒドロキシメチル-3,6,9-トリチアウンデカン、1-クロロ-4,7-ジクロロメチル-11-ヒドロキシ-3,6,9-トリチアウンデカン、1,11-ジクロロ-4-クロロメチル-7-ヒドロキシメチル-3,6,9-トリチアウンデカン、1-クロロ-5,8-ジクロロメチル-11-ヒドロキシ-3,6,9-トリチアウンデカン、1-クロロ-7-クロロメチル-11-ヒドロキシ-4-ヒドロキシメチル-3,6,9-トリチアウンデカン、1,11-ジクロロ-4,7-ジヒドロキシメチル-3,6,9-トリチアウンデカン、1-クロロ-5-クロロメチル-11-ヒドロキシ-8-ヒドロキシメチル-3,6,9-トリチアウンデカン、1-クロロ-4-クロロメチル-11-ヒドロキシ-7-ヒドロキシメチル-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジクロロメチル-1,11-ジヒドロキシメチル-3,6,9-トリチアウンデカン、1-クロロ-8-クロロメチル-11-ヒドロキシ-5-ヒドロキシメチル-3,6,9-トリチアウンデカン、4-クロロメチル-1,11-ジヒドロキシメチル-7-ヒドロキシメチル-3,6,9-トリチアウンデカン、1-クロロ-11-ヒドロキシ-5,8-ジヒドロキシメチル-3,6,9-トリチアウンデカン、5-クロロメチル-1,11-ジヒドロキシメチル-8-ヒドロキシメチル-3,6,9-トリチアウンデカン、1-クロロ-11-ヒドロキシ-4,7-ジヒドロキシメチル-3,6,9-トリチアウンデカン、1,5,12-トリクロロ-8-クロロメチル-3,7,10-トリチアドデカン、1,8-ジクロロ-5-クロロメチル-12-ヒドロキシ-3,6,10-トリチアドデカン、1,5-ジクロロ-8-クロロメチル-12-ヒドロキシ-3,7,10-トリチアドデカン、1,5,12-トリクロロ-8-ヒドロキシメチル-3,7,10-トリチアドデカン、1,12-ジクロロ-5-クロロメチル-8-ヒドロキシ-3,6,10-トリチアドデカン、5-クロロ-8-クロロメチル-1,12-ジヒドロキシ-3,7,10-トリチアドデカン、1,8-ジクロロ-12-ヒドロキシ-5-ヒドロキシメチル-3,6,10-トリチアドデカン、1-クロロ-5-クロロメチル-8,12-ジヒドロキシ-3,6,10-トリチアドデカン、1,5-ジクロロ-12-ヒドロキシ-8-ヒドロキシメチル-3,7,10-トリチアドデカン、1-クロロ-8-クロロメチル-5,12-ジヒドロキシ-3,7,10-トリチアドデカン、1,12-ジクロロ-5-ヒドロキシ-8-ヒドロキシメチル-3,7,10-トリチアドデカン、1-クロロ-5,12-ジヒドロキシ-8-ヒドロキシメチル-3,7,10-トリチアドデカン、1-クロロ-8,12-ジヒドロキシ-5-ヒドロキシメチル-3,6,10-トリチアドデカン、5-クロロメチル-1,8,12-トリヒドロキシ-3,6,10-トリチアドデカン、5-クロロ-1,12-ジヒドロキシ-8-ヒドロキシメチル-3,7,10-トリチアドデカン、1,11-ジクロロ-5,7-ジクロロメチル-3,6,9-トリチアウンデカン、1-クロロ-5,7-ジクロロメチル-11-ヒドロキシ-3,6,9-トリチアウンデカン、1,11-ジクロロ-5-クロロメチル-7-ヒドロキシメチル-3,6,9-トリチアウンデカン、5,7-ジクロロメチル-1,11-ジヒドロキシ-3,6,9-トリチアウンデカン、1-クロロ-7-クロロメチル-11-ヒドロキシ-5-ヒドロキシメチル-3,6,9-トリチアウンデカン、1-クロロ-5-クロロメチル-11-ヒドロキシ-7-ヒドロキシメチル-3,6,9-トリチアウンデカン、1,11-ジクロロ-5,7-ジヒドロキシメチル-3,6,9-トリチアウンデカン、1-クロロ-12-ヒドロキシ-5,7-ジヒドロキシメチル-3,6,9-トリチアウンデカン、5-クロロメチル-1,11-ジヒドロキシ-7-ヒドロキシメチル-3,6,9-トリチアウンデカン、2,5-ビス(クロロメチル)-1,4-ジチアン等が挙げられ、少なくとも1種を用いることができる。
【0031】
本実施形態において、本発明の効果の観点から、有機ハロゲン化合物は、2-クロロエチルエチルスルフィド、2-クロロイソブチルエチルスルフィド、4-クロロメチル-1,8-ジクロロ-3,6-ジチアオクタン、1,5,9-トリクロロ-3,7-ジチアノナン、4,8または4,7または5,7-ジクロロメチル-1,11-ジクロロ-3,6,9-トリチアウンデカン、1,5,9,13-テトラクロロ-3,7,11-トリチアトリデカン、4または5-クロロメチル-1,8,12-トリクロロ-3,6,10-トリチアドデカン、2,5-ビス(クロロメチル)-1,4-ジチアンよりなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
有機ハロゲン化物を原料とした場合、チア化剤の選択肢を増やすことができ、特別な反応条件を必要とせず、(ポリ)チオール化合物を効率よく製造することができる。
【0032】
[チア化剤]
チア化剤としては、チオ尿素、硫化水素アルカリ金属化合物、硫化アルカリ金属化合物、O-アルキルジチオ炭酸アルカリ金属化合物、チオカルボン酸アルカリ金属化合物、硫化水素、チオ硫酸金属化合物またはチオアミド等を挙げることができ、チオ尿素、硫化水素アルカリ金属化合物、硫化アルカリ金属化合物、硫化水素、チオ硫酸金属化合物またはチオアミドから選択される少なくとも一種であることが好ましい。
【0033】
前記硫化水素アルカリ金属化合物としては、例えば、硫化水素リチウム、硫化水素ナトリウム、硫化水素カリウムなどの硫化水素アルカリ金属化合物、硫化水素カルシウム、硫化水素マグネシウムなどの硫化水素アルカリ土類金属化合物などが挙げられる。前記硫化アルカリ金属化合物としては、例えば、硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウムなどの硫化アルカリ金属化合物、硫化カルシウム、硫化マグネシウムなどの硫化アルカリ土類金属化合物などが挙げられる。
【0034】
前記O-アルキルジチオ炭酸アルカリ金属化合物としては、例えば、O-メチルジチオ炭酸リチウム、O-エチルジチオ炭酸リチウム、O-メチルジチオ炭酸ナトリウム、O-エチルジチオ炭酸ナトリウム、O-メチルジチオ炭酸カリウム、O-エチルジチオ炭酸カリウムなどが挙げられる。
前記チオカルボン酸アルカリ金属化合物としては、例えば、チオ酢酸リチウム、チオ酢酸ナトリウム、チオ酢酸カリウム、チオプロピオン酸リチウム、チオプロピオン酸ナトリウム、チオプロピオン酸カリウムなどが挙げられる。
【0035】
前記チオ硫酸金属化合物としては、例えば、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸カリウム、チオ硫酸リチウムなどが挙げられる。
【0036】
前記チオアミドとしては、例えば、2-メトキシチオベンズアミド、4-メトキシチオベンズアミド、2-ヒドロキシチオベンズアミド、4-ヒドロキシチオベンズアミド、チオフェン-3-カルボチオアミド、チオベンズアミド、3-ヒドロキシチオベンズアミド、チオイソニコチンアミド、チオアセトアミドなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0037】
硫化水素を用いる場合、さらに塩基化合物を用いることが好ましい。塩基化合物としては、金属炭酸塩、金属炭酸水素塩、一般式(3)で表される化合物などの無機塩基、または下記一般式(4)で表されるアミン化合物、ピリジン類などの有機塩基等を用いることができる。
【0038】
金属炭酸塩および金属炭酸水素塩の金属としてはアルカリ金属またはアルカリ土類金属であり、好ましくはリチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、より好ましくはナトリウムである。
金属炭酸塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム等があげられる。
金属炭酸水素塩としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カルシウム等があげられる。
【0039】
M(QH)n (3)
一般式(3)中、Mは、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を表し、好ましくはリチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属であり、より好ましくはナトリウムである。Qは、酸素原子または硫黄原子を表す。nは、Mで表されるアルカリ金属またはアルカリ土類金属の価数を表す。
【0040】
一般式(3)で表される化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、硫化水素ナトリウム、硫化水素カリウム、硫化水素マグネシウム、硫化水素カルシウム等が挙げられる。本実施形態においては、水酸化ナトリウム、硫化水素ナトリウムを用いることが好ましい。
【0041】
【化2】
【0042】
一般式(4)中、Q、QおよびQは、互いに同一または異なっていてもよく、水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基またはアルコキシ基を表す。
【0043】
一般式(4)で表される化合物としては、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、n-プロピルアミン、イソプロピルアミン、n-ブチルアミン、s- ブチルアミン、t-ブチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、エチルメチルアミン、アニリン、N-メチルアニリン、N-エチルアニリン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジn-プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジn-ブチルアミン、トリn-プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリn-ブチルアミン、トリn-ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、ジヘプチルアミン、トリヘプチルアミン、オクチルアミン、ジオクチルアミン、トリオクチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、N,N-ジメチル-n-オクタデシルアミン、トリエチレンジアミン、ジフェニルアミン、トリフェニルアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、N,N-ジエチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N-ジエチルシクロヘキシルアミン、N,N-ジメチルブチルアミン、N-メチルジシクロヘキシルアミン、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン等が挙げられる。
【0044】
上記ピリジン類とは、下記一般式(5)で表される化合物等を表す。
【0045】
【化3】
【0046】
一般式(5)中、RはC1以上C20以下の直鎖アルキル基、C3以上C20以下の分岐アルキル基、C3以上C20以下のシクロアルキル基、またはハロゲン原子を示し、複数存在するRは同一でも異なっていてもよい。Qは炭素原子または窒素原子を示す。mは0以上5以下の整数を示す。
【0047】
ピリジン類としては、例えば、ピリジン、α-ピコリン、β-ピコリン、γ-ピコリン、2,6-ルチジン、3,5-ルチジン、2,4,6-トリメチルピリジン等を挙げることができ、これらから選択される少なくとも1種を用いることができる。
塩基は水溶液、アルコール溶液等として用いることができ、溶液として用いる場合、塩基の濃度は適宜選択することができる。
【0048】
本発明は、目的とする(ポリ)チオール化合物を高収率で得ることができ、さらに反応時間が短縮化され、かつ副生成物が低減された生産効率にも優れる製造方法を提供することを目的としてなされたものである。
【0049】
当該目的から、チア化剤としては、硫化水素アルカリ金属化合物、硫化アルカリ金属化合物、O-アルキルジチオ炭酸アルカリ金属化合物、チオカルボン酸アルカリ金属化合物、硫化水素、チオ硫酸金属化合物から選択される少なくとも一種であることが好ましく、硫化水素アルカリ金属化合物、硫化アルカリ金属化合物、O-アルキルジチオ炭酸アルカリ金属化合物、チオカルボン酸アルカリ金属化合物がより好ましい。さらに、チア化剤としては硫化水素アルカリ金属化合物が好ましく、硫化水素リチウム、硫化水素ナトリウム、硫化水素カリウムがより好ましく、硫化水素ナトリウムが特に好ましい。
【0050】
本実施形態において、有機ハロゲン化合物をチオール化する本工程は、マイクロ波の照射下で行われる。
具体的には、密閉容器内に、有機ハロゲン化合物とチア化剤とを混合し、マイクロ波の照射下において反応させ、有機ハロゲン化合物をチオール化する。
密閉容器としては、マイクロ波照射装置を用いることができる。
【0051】
マイクロ波照射装置は、接触式または非接触式の温度センサーを備えた各種の市販装置等を使用できる。市販装置としては、バイオタージ社製のInitiator+、Anton Paar社製のマイクロ波合成装置、CEM社製のDiscover、四国計測工業社製のミューリアクター、東京理科機器社製のウェーブプロ、マイルストーンゼネラル社製のflexiWAVE等を挙げることができる。
また、キャビティの種類(マルチモード、シングルモード)、照射の形態(連続的、断続的)、強制冷却の有無(空気、不活性ガス、冷媒等による冷却)等は、反応のスケールや種類等に応じて任意に決めることができる。マイクロ波照射の出力は10W以上、3000W以下である。
【0052】
マイクロ波の周波数は、本発明の効果の観点から、0.2GHz以上、20GHz以下、好ましくは0.5GHz以上、10GHz以下とすることができる。
反応時間(照射時間)は、1分以上24時間以下程度とすることができる。マイクロ波の照射下においてチオール化反応を行っているため、非照射下のチオール化反応に比べて反応時間が短縮化されており、生産効率に優れる。
【0053】
密閉容器内の温度は50℃以上、200℃以下、70℃以上、180℃以下であることが好ましく、密閉容器内の圧力は0atmを超え、30atm以下、1atm以上、25atm以下であることが好ましい。これらの数値範囲は適宜組み合わせることができる。
マイクロ波の照射下におけるチオール化反応を上記条件で行うことにより、(ポリ)チオール化合物を高収率で得ることができ、さらに反応時間が短縮化され、かつ副生成物が低減されることから生産効率にも優れる。
【0054】
本実施形態においては、密閉容器内で、有機ハロゲン化合物とチア化剤とを極性溶媒中で混合し、マイクロ波の照射下において有機ハロゲン化合物をチオール化することが好ましい。
極性溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、メトキシエタノール、エチレングリコール、グリセリンなどのアルコール類、水等のプロトン性極性溶媒、アセトン、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホニルアミドなどの非プロトン性極性溶媒等を用いることができる。これらは単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0055】
本実施形態においては、極性溶媒として、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシドから選択される少なくとも一種であることが好ましい。
【0056】
本実施形態においては、極性溶媒として、プロトン性極性溶媒を用いることが好ましく、水を含む溶媒を用いることがより好ましい。マイクロ波の照射下において、ハロゲン原子のβ位の炭素原子に硫黄原子が結合した構造を備える有機ハロゲン化合物を極性溶媒中で反応させることで、目的とする(ポリ)チオール化合物を効率的かつ高収率で得ることができる。
【0057】
チア化剤/有機クロロ化物のハロゲン基1つに対するモル比は、0.5以上500以下、好ましくは0.7以上300以下、さらに好ましくは0.9以上100以下である。上記範囲であることにより、(ポリ)チオール化合物を効率的に製造することができる。
【0058】
本工程により、(ポリ)チオール化合物を得ることができ、さらに、必要に応じて、公知の精製工程を行うこともできる。本工程により得られる(ポリ)チオール化合物は、具体的に下記一般式(2)で表される。
-(SH) (2)
一般式(2)中、nは一般式(1)と同義である。
は、置換されてもよいC3以上C25以下のn価の脂肪族基、または置換されてもよいC3以上C25以下のn価の脂環族基を示す。前記脂肪族基および脂環族基は、少なくとも1つのスルフィド結合を含むか、少なくとも1つのメルカプト基で置換されており、酸素原子または窒素原子を含んでもよい。
当該スルフィド結合を構成する硫黄原子のβ位に位置する少なくとも1つの炭素原子に、式(2)において示されるメルカプト基が結合しているか、またはメルカプト基が結合している炭素原子のβ位に位置する少なくとも1つの炭素原子に、式(2)において示されるメルカプト基が結合している。
【0059】
を構成する基は、一般式(1)のQにおいて示される基と同義であるが、-SH基が結合する炭素原子は、一般式(1)のXが結合する炭素原子と同一でも異なっていてもよい。
【0060】
本実施形態においては、一般式(2)で表される(ポリ)チオール化合物として、下記一般式(2a)で表される化合物が好ましい。
【0061】
【化4】
【0062】
一般式(2a)中、R、R5、、Rは一般式(1)と同義である。
、R、R10は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、C1以上C10以下の脂肪族アルキル基、
-(CRR)-SH、
-(CRSH)-CRR-S-(CRR)-SH、
-CR(-(CRR)-SH)(-S-(CRR)-SH)、
-(CRSH)-CRR-S-CRR-(CRSH)-CRR-S-(CRR)-SH
(nは1以上3以下の整数、Rは、ハロゲン原子、水素原子、C1以上C10以下の脂肪族アルキル基、C3以上C20以下の脂環族基、C6以上C20以下の芳香族有機基を示す)
を示す。
【0063】
「C1以上C20以下の脂肪族基、C3以上C20以下の脂環族基、C6以上C20以下の芳香族有機基」、さらにこれらの基の置換基は、一般式(1a)と同義である。
なお、RまたはRは、R、R、R10を構成するRと結合して環を形成することもできる。RまたはRは、R、R、R10を構成するRと結合して環を形成することができ、R4、R5と結合して環を形成することもできる。
【0064】
一般式(2)の化合物としては、2-メルカプトエチルエチルスルフィド、2-メルカプトイソブチルエチルスルフィド、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、1-メルカプト-4-メルカプトメチル-8-ヒドロキシ-3,6-ジチアオクタン、1-メルカプト-5-メルカプトメチル-8-ヒドロキシ-3,6-ジチアオクタン、1,8-ジメルカプト-4-ヒドロキシメチル-3,6-ジチアオクタン、4-メルカプトメチル-1,8-ジヒドロキシ-3,6-ジチアオクタン、1-メルカプト-8-ヒドロキシ-4-ヒドロキシメチル-3,6-ジチアオクタン、1-メルカプト-8-ヒドロキシ-5-ヒドロキシメチル-3,6-ジチアオクタン、1,5,9-トリメルカプト-3,7-ジチアノナン、1,5-ジメルカプト-9-ヒドロキシ-3,7-ジチアノナン、1,9-ジメルカプト-5-ヒドロキシ-3,7-ジチアノナン、1-メルカプト-5,9-ジヒドロキシ-3,7-ジチアノナン、5-メルカプト-1,9-ジヒドロキシ-3,7-ジチアノナン、1,11-ジメルカプト-4,8-ジメルカプトメチル-3,6,9-トリチアウンデカン、1,11-ジメルカプト-4-メルカプトメチル-8-ヒドロキシメチル-3,6,9-トリチアウンデカン、1-メルカプト-4,8-ジメルカプトメチル-11-ヒドロキシ-3,6,9-トリチアウンデカン、1,11-ジメルカプト-4,8-ジヒドロキシメチル-3,6,9-トリチアウンデカン、1-メルカプト-4-メルカプトメチル-11-ヒドロキシ-8-ヒドロキシメチル-3,6,9-トリチアウンデカン、1-メルカプト-8-メルカプトメチル-11-ヒドロキシ-4-ヒドロキシメチル-3,6,9-トリチアウンデカン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジヒドロキシ-3,6,9-トリチアウンデカン、1-メルカプト-11-ヒドロキシ-4,8-ジヒドロキシメチル-3,6,9-トリチアウンデカン、4-メルカプトメチル-1,11-ジヒドロキシ-8-ヒドロキシメチル-3,6,9-トリチアウンデカン、1,5,12-トリメルカプト-9-メルカプトメチル-3,7,10-トリチアドデカン、1,5,12-トリメルカプト-9-ヒドロキシメチル-3,7,10-トリチアドデカン、1,8-ジメルカプト-4-メルカプトメチル-12-ヒドロキシ-3,6,10-トリチアドデカン、1,5-ジメルカプト-9-メルカプトメチル-12-ヒドロキシ-3,7,10-トリチアドデカン、1,12-ジメルカプト-4-メルカプトメチル-8-ヒドロキシ-3,6,10-トリチアドデカン、1,8-ジメルカプト-12-ヒドロキシ-4-ヒドロキシメチル-3,6,10-トリチアドデカン、1,5-ジメルカプト-12-ヒドロキシ-9-ヒドロキシメチル-3,7,10-トリチアドデカン、1,12-ジメルカプト-4-ヒドロキシ-9-ヒドロキシメチル-3,7,10-トリチアドデカン、1-メルカプト-4-メルカプトメチル-8,12-ジヒドロキシ-3,6,10-トリチアドデカン、5-メルカプト-9-メルカプトメチル-1,12-ジヒドロキシ-3,7,10-トリチアドデカン、1-メルカプト-9-メルカプトメチル-5,12-ジヒドロキシ-3,7,10-トリチアドデカン、4-メルカプトメチル-1,8,12-トリヒドロキシ-3,6,10-トリチアドデカン、1-メルカプト-5,12-ジヒドロキシ-9-ヒドロキシメチル-3,7,10-トリチアドデカン、5-メルカプト-1,12-ジヒドロキシ-9-ヒドロキシメチル-3,7,10-トリチアドデカン、1-メルカプト-8,12-ジヒドロキシ-4-ヒドロキシメチル-3,6,10-トリチアドデカン、1,5,9,13-テトラメルカプト-3,7,11-トリチアトリデカン、1,5,9-トリメルカプト-13-ヒドロキシ-3,7,11-トリチアトリデカン、1,5,13-トリメルカプト-9-ヒドロキシ-3,7,11-トリチアトリデカン、5,9-ジメルカプト-1,13-ジヒドロキシ-3,7,11-トリチアトリデカン、1,9-ジメルカプト-5,13-ジヒドロキシ-3,7,11-トリチアトリデカン、1,5-ジメルカプト-9,13-ジヒドロキシ-3,7,11-トリチアトリデカン、1,13-ジメルカプト-5,9-ジヒドロキシ-3,7,11-トリチアトリデカン、5-メルカプト-1,9,13-トリヒドロキシ-3,7,11-トリチアトリデカン、1-メルカプト-5,9,13-トリヒドロキシ-3,7,11-トリチアトリデカン、1,11-ジメルカプト-4,7-ジメルカプトメチル-3,6,9-トリチアウンデカン、1,11-ジメルカプト-5-メルカプトメチル-8-ヒドロキシメチル-3,6,9-トリチアウンデカン、1-メルカプト-4,7-ジメルカプトメチル-11-ヒドロキシ-3,6,9-トリチアウンデカン、1,11-ジメルカプト-4-メルカプトメチル-7-ヒドロキシメチル-3,6,9-トリチアウンデカン、1-メルカプト-5,8-ジメルカプトメチル-11-ヒドロキシ-3,6,9-トリチアウンデカン、1-メルカプト-7-メルカプトメチル-11-ヒドロキシ-4-ヒドロキシメチル-3,6,9-トリチアウンデカン、1,11-ジメルカプト-4,7-ジヒドロキシメチル-3,6,9-トリチアウンデカン、1-メルカプト-5-メルカプトメチル-11-ヒドロキシ-8-ヒドロキシメチル-3,6,9-トリチアウンデカン、1-メルカプト-4-メルカプトメチル-11-ヒドロキシ-7-ヒドロキシメチル-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジヒドロキシメチル-3,6,9-トリチアウンデカン、1-メルカプト-8-メルカプトメチル-11-ヒドロキシ-5-ヒドロキシメチル-3,6,9-トリチアウンデカン、4-メルカプトメチル-1,11-ジヒドロキシメチル-7-ヒドロキシメチル-3,6,9-トリチアウンデカン、1-メルカプト-11-ヒドロキシ-5,8-ジヒドロキシメチル-3,6,9-トリチアウンデカン、5-メルカプトメチル-1,11-ジヒドロキシメチル-8-ヒドロキシメチル-3,6,9-トリチアウンデカン、1-メルカプト-11-ヒドロキシ-4,7-ジヒドロキシメチル-3,6,9-トリチアウンデカン、1,5,12-トリメルカプト-8-メルカプトメチル-3,7,10-トリチアドデカン、1,8-ジメルカプト-5-メルカプトメチル-12-ヒドロキシ-3,6,10-トリチアドデカン、1,5-ジメルカプト-8-メルカプトメチル-12-ヒドロキシ-3,7,10-トリチアドデカン、1,5,12-トリメルカプト-8-ヒドロキシメチル-3,7,10-トリチアドデカン、1,12-ジメルカプト-5-メルカプトメチル-8-ヒドロキシ-3,6,10-トリチアドデカン、5-メルカプト-8-メルカプトメチル-1,12-ジヒドロキシ-3,7,10-トリチアドデカン、1,8-ジメルカプト-12-ヒドロキシ-5-ヒドロキシメチル-3,6,10-トリチアドデカン、1-メルカプト-5-メルカプトメチル-8,12-ジヒドロキシ-3,6,10-トリチアドデカン、1,5-ジメルカプト-12-ヒドロキシ-8-ヒドロキシメチル-3,7,10-トリチアドデカン、1-メルカプト-8-メルカプトメチル-5,12-ジヒドロキシ-3,7,10-トリチアドデカン、1,12-ジメルカプト-5-ヒドロキシ-8-ヒドロキシメチル-3,7,10-トリチアドデカン、1-メルカプト-5,12-ジヒドロキシ-8-ヒドロキシメチル-3,7,10-トリチアドデカン、1-メルカプト-8,12-ジヒドロキシ-5-ヒドロキシメチル-3,6,10-トリチアドデカン、5-メルカプトメチル-1,8,12-トリヒドロキシ-3,6,10-トリチアドデカン、5-メルカプト-1,12-ジヒドロキシ-8-ヒドロキシメチル-3,7,10-トリチアドデカン、1,11-ジメルカプト-5,7-ジメルカプトメチル-3,6,9-トリチアウンデカン、1-メルカプト-5,7-ジメルカプトメチル-11-ヒドロキシ-3,6,9-トリチアウンデカン、1,11-ジメルカプト-5-メルカプトメチル-7-ヒドロキシメチル-3,6,9-トリチアウンデカン、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジヒドロキシ-3,6,9-トリチアウンデカン、1-メルカプト-7-メルカプトメチル-11-ヒドロキシ-5-ヒドロキシメチル-3,6,9-トリチアウンデカン、1-メルカプト-5-メルカプトメチル-11-ヒドロキシ-7-ヒドロキシメチル-3,6,9-トリチアウンデカン、1,11-ジメルカプト-5,7-ジヒドロキシメチル-3,6,9-トリチアウンデカン、1-メルカプト-12-ヒドロキシ-5,7-ジヒドロキシメチル-3,6,9-トリチアウンデカン、5-メルカプトメチル-1,11-ジヒドロキシ-7-ヒドロキシメチル-3,6,9-トリチアウンデカン、2,5-ビス(メルカプトメチル)-1,4-ジチアン等が挙げられる。
【0065】
一般式(2a)の化合物としては、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、1,5,9-トリメルカプト-3,7-ジチアノナン、4,8または4,7または5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、1,5,9,13-テトラメルカプト-3,7,11-トリチアトリデカン、4または5-メルカプトメチル-1,8,12-トリメルカプト-3,6,10-トリチアドデカン等が好ましい。
【0066】
<成形体の製造方法>
本実施形態の成形体の製造方法は以下の工程を含む。
工程1:上述の製造方法により(ポリ)チオール化合物を製造する。
工程2:前記(ポリ)チオール化合物と、イソ(チオ)シアネート化合物とを混合し、重合性組成物を調製する。
工程3:前記重合性組成物をモールド内で注入硬化させる。
【0067】
本実施形態の成形体の製造方法は、本実施形態の(ポリ)チオール化合物の製造方法を含むことから、効率的かつ安価に、チオウレタン樹脂からなる成形体を高収率で得ることができる。
なお、工程1は本実施形態の(ポリ)チオール化合物の製造方法であることから説明を省略する。
【0068】
(工程2)
本工程おいては、上述の製造方法により得られた(ポリ)チオール化合物と、イソ(チオ)シアネート化合物とを混合して重合性組成物を調製する。
【0069】
イソ(チオ)シアネート化合物としては、例えば、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアナトメチルエステル、リジントリイソシアネート、m-キシリレンジイソシアネート、p-キシレンジイソシアネート、α,α,α′,α′-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)ナフタリン、メシチリレントリイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)スルフィド、ビス(イソシアナトエチル)スルフィド、ビス(イソシアナトメチル)ジスルフィド、ビス(イソシアナトエチル)ジスルフィド、ビス(イソシアナトメチルチオ)メタン、ビス(イソシアナトエチルチオ)メタン、ビス(イソシアナトエチルチオ)エタン、ビス(イソシアナトメチルチオ)エタン等の脂肪族ポリイソシアネート化合物;
イソホロンジイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタン-4,4'-ジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ジシクロヘキシルジメチルメタンイソシアネート、2,5-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタン、2,6-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタン、3,8-ビス(イソシアナトメチル)トリシクロデカン、3,9-ビス(イソシアナトメチル)トリシクロデカン、4,8-ビス(イソシアナトメチル)トリシクロデカン、4,9-ビス(イソシアナトメチル)トリシクロデカン等の脂環族ポリイソシアネート化合物;
1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4'- ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルスルフィド-4,4-ジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート化合物;
2,5-ジイソシアナトチオフェン、2,5-ビス(イソシアナトメチル)チオフェン、2,5-ジイソシアナトテトラヒドロチオフェン、2,5-ビス(イソシアナトメチル)テトラヒドロチオフェン、3,4-ビス(イソシアナトメチル)テトラヒドロチオフェン、2,5-ジイソシアナト-1,4-ジチアン、2,5-ビス(イソシアナトメチル)-1,4-ジチアン、4,5-ジイソシアナト-1,3-ジチオラン、4,5-ビス(イソシアナトメチル)-1,3-ジチオラン等の複素環ポリイソシアネート化合物;等を挙げることができる。
【0070】
また、これらの塩素置換体、臭素置換体等のハロゲン置換体、アルキル置換体、アルコキシ置換体、ニトロ置換体や多価アルコールとのプレポリマー型変性体、カルボジイミド変性体、ウレア変性体、ビュレット変性体、ダイマー化またはトリマー化反応生成物等も使用できる。
【0071】
イソチオシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソチオシアネート、リジンジイソチオシアネートメチルエステル、リジントリイソチオシアネート、m-キシリレンジイソチオシアネート、ビス(イソチオシアナトメチル)スルフィド、ビス(イソチオシアナトエチル)スルフィド、ビス(イソチオシアナトエチル)ジスルフィド等の脂肪族ポリイソチオシアネート化合物;
イソホロンジイソチオシアネート、ビス(イソチオシアナトメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジイソチオシアネート、シクロヘキサンジイソチオシアネート、メチルシクロヘキサンジイソチオシアネート、2,5-ビス(イソチオシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタン、2,6-ビス(イソチオシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタン、3,8-ビス(イソチオシアナトメチル)トリシクロデカン、3,9-ビス(イソチオシアナトメチル)トリシクロデカン、4,8-ビス(イソチオシアナトメチル)トリシクロデカン、4,9-ビス(イソチオシアナトメチル)トリシクロデカン等の脂環族ポリイソチオシアネート化合物;
トリレンジイソチオシアネート、4,4-ジフェニルメタンジイソチオシアネート、ジフェニルジスルフィド-4,4-ジイソチオシアネート等の芳香族ポリイソチオシアネート化合物;
2,5-ジイソチオシアナトチオフェン、2,5-ビス(イソチオシアナトメチル)チオフェン、2,5-イソチオシアナトテトラヒドロチオフェン、2,5-ビス(イソチオシアナトメチル)テトラヒドロチオフェン、3,4-ビス(イソチオシアナトメチル)テトラヒドロチオフェン、2,5-ジイソチオシアナト-1,4-ジチアン、2,5-ビス(イソチオシアナトメチル)-1,4-ジチアン、4,5-ジイソチオシアナト-1,3-ジチオラン、4,5-ビス(イソチオシアナトメチル)-1,3-ジチオラン等の含硫複素環ポリイソチオシアネート化合物;等を挙げることができる。
【0072】
また、これらの塩素置換体、臭素置換体等のハロゲン置換体、アルキル置換体、アルコキシ置換体、ニトロ置換体や多価アルコールとのプレポリマー型変性体、カルボジイミド変性体、ウレア変性体、ビュレット変性体、ダイマー化またはトリマー化反応生成物等も使用できる。
【0073】
本実施形態の重合性組成物は、ポリオール化合物、一般式(2)で表される(ポリ)チオール化合物以外の(ポリ)チオール化合物等の二官能以上の活性水素化合物を含むことができる。重合性組成物において、ポリオール化合物および(ポリ)チオール化合物中のOH基とSH基の総和モルに対する、ポリ(チオ)イソシアネート化合物中のNCO基およびNCS基の合計モルの比((NCO基+NCS基)/(OH基+SH基))は、通常0.8~1.2の範囲内であり、好ましくは0.85~1.15の範囲内であり、さらに好ましくは0.9~1.1の範囲内である。
【0074】
本実施形態の重合性組成物は、その他の添加剤を含むことができる。
その他の添加剤としては、例えば、内部離型剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、油溶染料、調光色素、特定波長カット色素、ブルーイング剤、鎖延長剤、架橋剤、充填剤などが挙げられる。
【0075】
重合性組成物は、上記の化合物を混合し、通常は0.1~100Torr程度の減圧下で0.1~5時間程度脱気し、通常は0.1~10μm程度のフィルターにより濾過することで得ることができる。
【0076】
(工程3)
本工程においては、工程2で得られた重合性組成物をモールド内で注入硬化させる。
具体的には、まず、ガスケットまたはテープ等で保持されたモールド内に重合性組成物を注入する。この時、得られる成形体に要求される物性によっては、必要に応じて、減圧下での脱泡処理や加圧、減圧等の濾過処理等を行うことが好ましい場合が多い。
【0077】
重合条件については、重合性組成物、触媒の種類と使用量、モールドの形状等によって大きく条件が異なるため限定されるものではないが、およそ、-50~150℃の温度で1~50時間かけて行われる。5~150℃の温度範囲で保持または徐々に昇温して、硬化させることが好ましいが、適宜設定が可能である。
【0078】
硬化後、モールドから成形体を取り出す。本実施形態の成形体は、必要に応じて、アニール等の処理を行ってもよい。処理温度は通常50~150℃の間で行われるが、好ましくは90~140℃で行うことであり、より好ましくは100~130℃で行うことである。
【0079】
本実施形態の重合性組成物は、注型重合時のモールドを変えることにより種々の形状の成形体として得ることができる。本実施形態の成形体は、所望の形状とし、必要に応じて形成されるコート層や他の部材等を備えることにより、様々な形状の光学材料とすることができる。
【0080】
本実施形態の重合性組成物を硬化させて得られる光学材料は、高い屈折率及び高い透明性を備え、眼鏡レンズ、カメラレンズ、発光ダイオード(LED)、プリズム、光ファイバー、情報記録基板、フィルター、発光ダイオード等の光学用成形体として使用することが可能である。特に、眼鏡レンズ、カメラレンズ等のレンズ、発光ダイオード等の光学材料として好適である。
【0081】
本実施形態の重合性組成物を硬化させて得られる光学材料は、必要に応じて、片面又は両面にコーティング層を施して用いてもよい。コーティング層としては、ハードコート層、反射防止膜層、防曇コート膜層、防汚染層、撥水層、プライマー層、フォトクロミック層等が挙げられる。これらのコーティング層はそれぞれ単独で用いることも複数のコーティング層を多層化して使用することもできる。両面にコーティング層を施す場合、それぞれの面に同様なコーティング層を施しても、異なるコーティング層を施してもよい。
【0082】
本実施形態の光学材料を眼鏡レンズに適用する場合、本実施形態の重合性組成物を硬化させて得られる光学材料(レンズ)の少なくとも一方の面上に形成されたハードコート層および/または反射防止コート層と、を備えることができる。さらに、上記の他の層を備えることもできる。
【0083】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の様々な構成を採用することができる。
【実施例
【0084】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。以下説明中、特に言及が無い限り「部」、「%」は重量基準である。
【0085】
以下の分析方法により生成物を測定した。
[分析方法1:HPLC]
・HPLC機種:島津製作所社製LC-20AD
・測定波長:230nm
・流量:1mL/min
・カラム:Mightysil RP-18 GP 150-6(5μm)
・温度条件:40℃
・移動相:アセトニトリル/水/KH2PO4=400/600/0.54(vol/vol/g)
・注入量:2μL
・試料調製:反応液0.15gをアセトニトリル/水=1/1(g/g)に溶解
反応により得られた4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタンのピーク面積比(area%)は以下の式で算出した。
式:{[4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタンのピーク面積]/[全ピーク面積の和]}×100
なお、1,5,9-トリクロロ-3,7-ジチアノナンおよび4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタンの保持時間は以下のとおりであった。
基質1(1,5,9-トリクロロ-3,7-ジチアノナン):13.8-15.2min
目的物(4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン):12.0-13.4min
【0086】
[実施例1]
バイオタージ社製P/N352521バイアルにスターラーチップ、基質1を0.4重量部、蒸留水5.5重量部および45%NaSH水溶液を0.56重量部装入し、ふたをして密閉状態にした。バイオタージ社製マイクロウェーブ合成装置(Initiator+、周波数2.45GHz)にセットし、プログラムで90℃、1時間に設定し、反応させた。バイアル内壁にかかる圧力は2atmを示していた。得られた反応液を上記分析方法にて測定した結果、(ポリ)チオール化合物である4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン(目的物)を19area%含有していた。測定結果を表-1に示す。
【0087】
[実施例2]
プログラムで100℃、1時間に設定した以外は、実施例1と同様に反応させた。バイアル内壁にかかる圧力は4atmを示していた。得られた反応液を上記分析方法にて測定した結果、目的物である(ポリ)チオール化合物を24area%含有していた。測定結果を表-1に示す。
【0088】
[実施例3]
プログラムで100℃、2時間に設定した以外は、実施例1と同様に反応させた。バイアル内壁にかかる圧力は4atmを示していた。得られた反応液を上記分析方法にて測定した結果、目的物である(ポリ)チオール化合物を28area%含有していた。測定結果を表-1に示す。
【0089】
[実施例4]
蒸留水5.5重量部に代えてメタノール4.2重量部を使用した以外は、実施例1と同様に反応させた。バイアル内壁にかかる圧力は3atmを示していた。得られた反応液を上記分析方法にて測定した結果、目的物である(ポリ)チオール化合物を14area%含有していた。測定結果を表-1に示す。
【0090】
[実施例5]
25mLの2口フラスコに、蒸留水21.8重量部、炭酸水素ナトリウムを1.81重量部装入し、30min撹拌し、炭酸水素ナトリウムを溶解させた。液相部に硫化水素ガスを0.15g/minで1時間吹き込みながら内温20℃で撹拌した。得られた反応液をバイオタージ社製P/N352521バイアルに6.0mL、さらにスターラーチップ、基質1を0.4重量部装入し、ふたをして密閉状態にした。バイオタージ社製マイクロウェーブ合成装置(Initiator+)にセットし、プログラムで100℃、1時間に設定し、反応させた。バイアル内壁にかかる圧力は5atmを示していた。得られた反応液を上記分析方法にて測定した結果、目的物である(ポリ)チオール化合物を16area%含有していた。測定結果を表-1に示す。
【0091】
[比較例1]
25mLの1口フラスコに、スターラーチップ、基質1を0.4重量部、蒸留水5.5重量部および45%NaSH水溶液を0.56重量部装入し、90℃で1時間撹拌した。得られた反応液を上記分析方法にて測定した結果、目的物である(ポリ)チオール化合物は得られなかった。測定結果を表-2に示す。
【0092】
[比較例2]
蒸留水5.5重量部に代えてメタノール4.2重量部を用い、反応時間を3時間にした以外は比較例1と同様に反応させた。得られた反応液を上記分析方法にて測定した結果、目的物である(ポリ)チオール化合物は得られなかった。測定結果を表-2に示す。
【0093】
[比較例3]
ガラスコートされたオートクレーブに、スターラーチップ、基質1を0.4重量部、蒸留水5.5重量部および45%NaSH水溶液を0.56重量部装入し、密閉状態にした。110℃で2時間撹拌し、圧力は2atmを示していた。その後、十分冷却した。得られた反応液を上記分析方法にて測定した結果、目的物である(ポリ)チオール化合物は得られなかった。測定結果を表-2に示す。
【0094】
[比較例4]
反応条件を、130℃で5時間にした以外は比較例3と同様に反応させた。圧力は4atmを示していた。得られた反応液を上記分析方法にて測定した結果、目的物である(ポリ)チオール化合物を10area%含有していた。測定結果を表-2に示す。
【0095】
[比較例5]
25mLの2口フラスコに、トルエン22mL、トリエチルアミンを2.16重量部装入し、1min撹拌した。液相部に硫化水素ガスを0.15g/minで1時間吹き込みながら内温20℃で撹拌した。得られた反応液をバイオタージ社製P/N352521バイアルに5.5mL、さらにスターラーチップ、基質1を0.4重量部装入し、ふたをして密閉状態にした。バイオタージ社製マイクロウェーブ合成装置(Initiator+)にセットし、プログラムで100℃、1時間に設定し、反応させた。バイアル内壁にかかる圧力は2atmを示していた。得られた反応液を上記分析方法にて測定した結果、目的物である(ポリ)チオール化合物は得られなかった。測定結果を表-2に示す。
【0096】
[比較例6]
プログラムで120℃、2時間に設定した以外は比較例5と同様に反応させた。バイアル内壁にかかる圧力は3atmを示していた。得られた反応液を上記分析方法にて測定した結果、目的物である(ポリ)チオール化合物は得られなかった。測定結果を表-2に示す。
【0097】
【表1】
【0098】
【表2】