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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-07
(45)【発行日】2022-09-15
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/786 20060101AFI20220908BHJP
   H01L 21/28 20060101ALI20220908BHJP
   H01L 29/417 20060101ALI20220908BHJP
   H01L 29/423 20060101ALI20220908BHJP
   H01L 29/49 20060101ALI20220908BHJP
   H01L 21/8239 20060101ALI20220908BHJP
   H01L 27/105 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
H01L29/78 616V
H01L29/78 618B
H01L29/78 616U
H01L29/78 618E
H01L21/28 301B
H01L29/50 M
H01L29/58 G
H01L27/105 449
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2018129946
(22)【出願日】2018-07-09
(65)【公開番号】P2020009911
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100157901
【弁理士】
【氏名又は名称】白井 達哲
(72)【発明者】
【氏名】片岡 淳司
(72)【発明者】
【氏名】上田 知正
(72)【発明者】
【氏名】澤部 智明
(72)【発明者】
【氏名】池田 圭司
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 信美
【審査官】岩本 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-197686(JP,A)
【文献】特開2008-219008(JP,A)
【文献】特開2013-041968(JP,A)
【文献】特開2009-283486(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0312345(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102956683(CN,A)
【文献】韓国公開特許第2017-0081723(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/786
H01L 21/28
H01L 29/417
H01L 29/423
H01L 21/8239
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
In、Ga、Zn、Al、Sn、Ti、Si、Ge、Cu、As及びWの少なくも1つを含む第1元素と、酸素と、を含み第1部分を含む半導体層と、
W、Ti、Ta、Mo、Cu、Al、Ag、Hf、Au、Pt、Pd、Ru、Y、V、Cr、Ni、Nb、In、Ga、Zn及びSnよりなる群から選択された少なくとも1つを含む第2元素を含む第1層と、
第1電極と、
を備え、
前記第1部分は、第1領域及び第2領域を含み、
前記第2領域は、前記第1領域と前記第1層との間に設けられ、
前記第1領域は、前記第1元素と酸素との結合を含み、
前記第2領域は、前記第1元素と金属元素との結合を含み、
前記第1部分から前記第1層への第1方向に沿う前記第1層の厚さは、0.5nm以上3nm未満であ
前記第1層は、前記第1方向において前記第1部分と前記第1電極との間に設けられ、
前記第1電極は、第1酸化物を含み、
前記第1酸化物は、In、Sn、Zn及びTiよりなる群から選択された少なくともいずれかの元素を含む酸化物を含む、半導体装置。
【請求項2】
前記第1元素と前記金属元素との前記結合は、前記第1元素と前記第1元素との結合を含む、請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第2領域は、前記第1元素と酸素との前記結合を含む、請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1元素は、Inを含み、
前記第2領域のX線光電分光分析で得られる第1信号は、第1結合エネルギーにおいて第1ピークを含み、前記第1信号は、第2結合エネルギーにおいて前記第1ピークの強度の20%以上であり、前記第1結合エネルギーは444eV以上446eV以下であり、前記第2結合エネルギーは前記第1結合エネルギーよりも低く、前記第1結合エネルギーと前記第2結合エネルギーとの差の絶対値は、1.5eVである、請求項1~3のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1領域の前記X線光電分光分析で得られる第2信号は、第3結合エネルギーにおいて第2ピークを含み、前記第2信号は、第4結合エネルギーにおいて前記第2ピークの強度の20%未満であり、前記第3結合エネルギーは444eV以上446eV以下であり、前記第4結合エネルギーは前記第3結合エネルギーよりも低く、前記第3結合エネルギーと前記第4結合エネルギーとの差の絶対値は、1.5eVである、請求項4記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1元素は、Gaを含み、
前記第2領域のX線光電分光分析で得られる第3信号は、第5結合エネルギーにおいて第3ピークを含み、前記第3信号は、第6結合エネルギーにおいて前記第3ピークの強度の20%以上であり、前記第5結合エネルギーは1118eV以上1119eV以下であり、前記第6結合エネルギーは前記第5結合エネルギーよりも低く、前記第5結合エネルギーと前記第6結合エネルギーとの差の絶対値は、2.0eVである、請求項1~3のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第1領域の前記X線光電分光分析で得られる第4信号は、第7結合エネルギーにおいて第4ピークを含み、前記第4信号は、第8結合エネルギーにおいて前記第4ピークの強度の20%未満であり、前記第7結合エネルギーは1118eV以上1119eV以下であり、前記第8結合エネルギーは前記第7結合エネルギーよりも低く、前記第7結合エネルギーと前記第8結合エネルギーとの差の絶対値は、2.0eVである、請求項6記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第2領域における酸素濃度は、前記第1領域における酸素濃度よりも低い、請求項1~7のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第2元素の酸素との結合エネルギーは、前記第1元素の酸素との結合エネルギーよりも高い、請求項1~8のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項10】
前記第1層は、酸素を含む、請求項1~9のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項11】
前記第1層は、前記第2元素と酸素との結合を含む、請求項1~10のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項12】
第2層と、
第2電極と、
第3電極と、
第1絶縁領域を含む絶縁部と、
をさらに備え、
前記半導体層は、第2部分及び第3部分をさらに含み、
前記第1電極から前記第2電極への第2方向は、前記第1方向と交差し、
前記第3電極の少なくとも一部の前記第2方向における位置は、前記第1電極の少なくとも一部の前記第2方向における位置と、前記第2電極の少なくとも一部の前記第2方向における位置と、の間にあり、
前記第1部分から前記第2部分への方向は、前記第2方向に沿い、
前記第2層は、前記第1方向において前記第2部分と前記第2電極との間に設けられ、
前記第1絶縁領域は、前記第1方向において前記第3電極と前記第3部分との間にある、請求項1~11のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項13】
前記第2部分は、第3領域及び第4領域を含み、
前記第4領域は、前記第3領域と前記第2層との間に設けられ、
前記第3領域は、前記第1元素と酸素との結合を含み、
前記第4領域は、前記第1元素と金属元素との結合を含み、
前記第2部分から前記第2層への方向に沿う前記第2層の厚さは、0.5nm以上3nm未満である、請求項1記載の半導体装置。
【請求項14】
前記第2層は、W、Ti、Ta、Mo、Cu、Al、Ag、Hf、Au、Pt、Pd、Ru、V、Cr、Ni、Nb、In、Ga、Zn及びSnよりなる群から選択された少なくとも1つを含む、請求項1記載の半導体装置。
【請求項15】
前記第2電極は、第2酸化物、Au、Pt及びPdよりなる群から選択された少なくとも1つを含み、
前記第2酸化物は、In、Sn、Zn及びTiよりなる群から選択された少なくともいずれかの元素を含む酸化物を含む、請求項1~1のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項16】
前記第1部分の前記第1方向における位置は、前記第3電極の前記第1方向における位置と、前記第1層の前記第1方向における位置と、の間にある、請求項1~1のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項17】
第2電極と、
中間層と、
をさらに備え、
前記第1部分は、前記第1方向において前記第2電極と前記第1電極との間に設けられ、
前記中間層は、前記第1方向において前記第2電極と前記半導体層との間に設けられた、請求項1~11のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項18】
In、Ga、Zn、Al、Sn、Ti、Si、Ge、Cu、As及びWの少なくも1つを含む第1元素と、酸素と、を含み第1部分を含む半導体層と、
W、Ti、Ta、Mo、Cu、Al、Ag、Hf、Au、Pt、Pd、Ru、Y、V、Cr、Ni、Nb、In、Ga、Zn及びSnよりなる群から選択された少なくとも1つを含む第2元素を含む第1層と、
第1電極と、
第2電極と、
中間層と、
を備え、
前記第1部分は、第1領域及び第2領域を含み、
前記第2領域は、前記第1領域と前記第1層との間に設けられ、
前記第1領域は、前記第1元素と酸素との結合を含み、
前記第2領域は、前記第1元素と金属元素との結合を含み、
前記第1部分から前記第1層への第1方向に沿う前記第1層の厚さは、0.5nm以上3nm未満であ
前記第1層は、前記第1方向において前記第1部分と前記第1電極との間に設けられ、
前記第1電極は、第1酸化物、Au、Pt及びPdよりなる群から選択された少なくとも1つを含み、
前記第1酸化物は、In、Sn、Zn及びTiよりなる群から選択された少なくともいずれかの元素を含む酸化物を含み、
前記第1部分は、前記第1方向において前記第2電極と前記第1電極との間に設けられ、
前記中間層は、前記第1方向において前記第2電極と前記半導体層との間に設けられた、半導体装置。
【請求項19】
前記第1電極と前記第2電極との間の電気抵抗は、前記第1電極と前記第2電極との間に印加される電圧に応じて変化する、請求項18記載の半導体装置。
【請求項20】
前記中間層の電気抵抗は、前記第1電極と前記第2電極との間に印加される電圧に応じて変化する、請求項18記載の半導体装置。
【請求項21】
第1電極と、
第2電極と、
第3電極と、
In、Ga、Zn、Al、Sn、Ti、Si、Ge、Cu、As及びWの少なくも1つを含む第1元素と、酸素と、を含み第1~第3部分を含む半導体層と、
W、Ti、Ta、Mo、Cu、Al、Ag、Hf、Au、Pt、Pd、Ru、Y、V、Cr、Ni、Nb、In、Ga、Zn及びSnよりなる群から選択された少なくとも1つを含む第2元素を含む第1層と、
第2層と、
第1絶縁領域を含む絶縁部と、
を備え、
前記第1電極から前記第2電極への第2方向は、前記第1部分から前記第1層への第1方向と交差し、
前記第3電極の少なくとも一部の前記第2方向における位置は、前記第1電極の少なくとも一部の前記第2方向における位置と、前記第2電極の少なくとも一部の前記第2方向における位置と、の間にあり、
前記第1層は、前記第1方向において前記第1部分と前記第1電極との間に設けられ、
前記第1部分から前記第2部分への方向は、前記第2方向に沿い、
前記第2層は、前記第1方向において前記第2部分と前記第2電極との間に設けられ、
前記第1絶縁領域は、前記第1方向において前記第3電極と前記第3部分との間にあり、
前記第1部分の少なくとも一部は、前記第1元素と酸素との結合を含み、
前記第3部分は、前記第1元素と素との結合を含み、
前記第1部分から前記第1層への第1方向に沿う前記第1層の厚さは、0.5nm以上3nm未満であ
前記第1電極は、第1酸化物を含み、
前記第1酸化物は、In、Sn、Zn及びTiよりなる群から選択された少なくともいずれかの元素を含む酸化物を含む、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、インジウム、ガリウム及び亜鉛を含む酸化物半導体を含む半導体装置がある。半導体装置において、特性の向上が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-134578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態は、特性を向上できる半導体装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態によれば、半導体装置は、半導体層及び第1層を含む。前記半導体層は、In、Ga、Zn、Al、Sn、Ti、Si、Ge、Cu、As及びWの少なくも1つを含む第1元素と、酸素と、を含み第1部分を含む。前記第1層は、W、Ti、Ta、Mo、Cu、Al、Ag、Hf、Au、Pt、Pd、Ru、Y、V、Cr、Ni、Nb、In、Ga、Zn及びSnよりなる群から選択された少なくとも1つを含む第2元素を含む。記第1部分は、第1領域及び第2領域を含む。前記第2領域は、前記第1領域と前記第1層との間に設けられる。前記第1領域は、前記第1元素と酸素との結合を含む。前記第2領域は、前記第1元素と金属元素との結合を含む。前記第1部分から前記第1層への第1方向に沿う前記第1層の厚さは、0.5nm以上3nm未満である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、第1実施形態に係る半導体装置を例示する模式的断面図である。
図2図2(a)~図2(d)は、半導体装置の分析結果を例示するグラフ図である。
図3図3は、第2実施形態に係る半導体装置を例示する模式的断面図である。
図4図4(a)~図4(d)は、半導体装置の特性を例示するグラフ図である。
図5図5(a)及び図5(b)は、半導体装置の特性を例示するグラフ図である。
図6図6(a)及び図6(b)は、半導体装置の特性を例示するグラフ図である。
図7図7は、半導体装置の特性を例示するグラフ図である。
図8図8は、半導体装置の特性を例示するグラフ図である。
図9図9は、第3実施形態に係る半導体装置を例示する模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明の各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚さと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る半導体装置を例示する模式的断面図である。
図1に示すように、実施形態に係る半導体装置110は、半導体層10、及び、第1層31を含む。この例では、第1電極51がさらに設けられている。
【0009】
半導体層10は、第1元素及び酸素を含む。第1元素は、In、Ga、Zn、Al、Sn、Ti、Si、Ge、Cu、As及びWの少なくも1つを含む。第1元素は、複数の種類の元素を含んでも良い。1つの例において、第1元素は、In、Ga及びZnを含む。この場合、半導体層10は、例えば、InGaZnOを含む。半導体層10は、例えば、酸化物半導体を含む。半導体層10は、少なくとも第1部分11を含む。後述するように、半導体層10は、他の部分をさらに含んでも良い。
【0010】
第1層31は、第2元素を含む。第2元素は、例えば、W、Ti、Ta、Mo、Cu、Al、Ag、Hf、Au、Pt、Pd、Ru、Y、V、Cr、Ni、Nb、In、Ga、Zn及びSnよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。第2元素は、例えば、Wである。この場合、第1層31は、Wを含む。この場合、第1層31は、例えばW膜である。後述するように、第1層31は、第2元素に加えて酸素を含んでも良い。
【0011】
半導体層10の第1部分11から第1層31への方向を第1方向とする。第1方向をZ軸方向とする。Z軸方向に対して垂直な1つの方向をX軸方向とする。Z軸方向及びX軸方向に対して垂直な方向をY軸方向とする。
【0012】
第1層31は、例えば、X-Y平面に沿って広がる。半導体層10は、例えば、X-Y平面に沿って広がる。
【0013】
例えば、第1電極51が設けられる場合、第1層31は、第1方向(Z軸方向)において、第1部分11と第1電極51との間に設けられる。
【0014】
例えば、第1電極51は、第1酸化物、Au、Pt及びPdよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。上記の第1酸化物は、In、Sn、Zn及びTiよりなる群から選択された少なくともいずれかの元素を含む酸化物を含む。1つの例において、第1電極51は、ITO(Indium Tin Oxide)を含む。別の例において、第1電極51は、Auなどを含んでも良い。
【0015】
実施形態においては、半導体層10の第1部分11において、第1元素の結合の状態に分布が設けられる。
【0016】
例えば、第1部分11は、第1領域r1及び第2領域r2を含む。第2領域r2は、第1領域r1と第1層31との間に設けられる。1つの例において、第2領域r2は、第1層31と接する。
【0017】
第1領域r1は、第1元素と酸素との結合を含む。第2領域r2は、第1元素と金属元素との結合を含む。第1元素と金属元素との結合は、例えば、第1元素と第1元素との結合を含む。第2領域r2は、第1元素と酸素との結合を含んでも良い。
【0018】
1つの例において、半導体層10がInGaZnOを含む場合、第1元素は、Inを含む。この場合、第1領域r1は、Inと酸素との結合を含む。このとき、第2領域r2は、Inと金属元素との結合を含む。例えば、第2領域r2は、InとInとの結合を含む。第2領域r2は、Inと酸素との結合をさらに含んでも良い。
【0019】
半導体層10がInGaZnOを含む場合、第1元素は、Gaを含む。この場合、第1領域r1は、Gaと酸素との結合を含む。このとき、第2領域r2は、Gaと金属元素との結合を含む。例えば、第2領域r2は、GaとGaとの結合を含む。第2領域r2は、Gaと酸素との結合をさらに含んでも良い。
【0020】
例えば、第2領域r2は、In-Gaの結合を含んでも良い。第2領域r2は、In-Znの結合を含んでも良い。第2領域r2は、Ga-Znの結合を含んでも良い。
【0021】
例えば、第2領域r2における酸素の濃度は、第1領域r1における酸素の濃度よりも低い。
【0022】
例えば、第2領域r2における導電率は、第1領域r1における導電率よりも低い。
【0023】
実施形態によれば、例えば、半導体層10(この例では、第1部分11)と第1層31との間において、良好なコンタクト性が得られる。例えば、半導体層10(この例では、第1部分11)と第1電極51との間において、良好なオーミックコンタクト特性が得られる。例えば、低い電気抵抗が得られる。実施形態によれば、コンタクト抵抗を低減できる半導体装置を提供できる。実施形態によれば、特性を向上できる半導体装置を提供できる。
【0024】
例えば、第1層31は、半導体層10の第1部分11に含まれる第1元素を還元する。これにより、第1元素と第1元素との結合が生じ易くなる。例えば、In-Inの結合が生じる。これにより、In-Inの結合を含む部分(第2領域r2)の抵抗を局所的に低くできる。これにより、良好なコンタクト性が得られると考えられる。
【0025】
実施形態に係る1つの例において、第1層31の厚さt1(図1参照)は、例えば、0.5nm以上5nm以下である。厚さt1は、例えば、0.5nm以上3nm未満でも良い。厚さt1が薄いことで、第1元素が還元される領域(第2領域r2)が過度に広がることが抑制できる。
【0026】
例えば、第1厚さt1が過度に厚いと、第2領域r2が過度に広がる。例えば、第2領域r2がZ軸方向で第1層31と重ならない部分を含む場合が生じる。例えば、第2領域r2がZ軸方向で第1電極51と重ならない部分を含むようになる。この場合、横方向(X-Y平面に沿う方向)において、抵抗が低い領域が過度に広がる。この場合、実施形態がトランジスタなどに応用された場合に、実効的なチャネル長に悪影響が生じる可能がある。例えば、実施形態が選択スイッチ(例えば非線形素子)などに応用された場合に、所望の領域以外の領域が低い抵抗となり、所望の動作が得られ易くなる可能性がある。
【0027】
実施形態においては、厚さt1を適正に設定することで、低抵抗領域が過度に広がることが抑制できる。
【0028】
上記のように、第2領域r2は第1層31と接して良い。第2領域r2の第1方向(Z軸方向に沿う厚さ)は、第1層31の厚さt1以下でも良い。第2領域r2の第1方向(Z軸方向に沿う厚さ)は、第1層31の厚さt1の2倍以下でも良い。
【0029】
一方、第1領域r1は、第1層31から離れる。1つの例において、第1領域r1と第1層31との間のZ軸方向に沿う距離は、例えば、厚さt1の10倍以上でも良い。例えば、厚さt1が2nmである場合、第1領域r1と第1層31との間のZ軸方向に沿う距離は、20nm以上でも良い。第1領域r1と第1層31との間のZ軸方向に沿う距離は、例えば、厚さt1の100倍以下でも良い。上記のような元素の結合を調べる場合は、上記のような位置の特性を調べても良い。
【0030】
以下、半導体層10における元素の状態の分析結果の例について説明する。以下に説明する第1試料において、半導体層10は、InGaZnOである。第1層31は、2nmの厚さのW膜である。第1電極51は、ITOである。一方、第2試料において、第1層31は設けられない。第2試料においては、半導体層10(InGaZnO膜)と第1電極51(ITO膜)とが互いに接する。
【0031】
図2(a)~図2(d)は、半導体装置の分析結果を例示するグラフ図である。
図2(a)及び図2(b)は、上記の第1試料SP1に対応する。図2(c)及び図2(d)は、上記の第2試料SP2に対応する。これらの図は、これらの試料のX線光電分光分析(XPS:X-ray Photoelectron Spectroscopy)の結果を例示している。上記の2種類の試料において、第1電極51のうちの厚さ2nmの部分を残し、他の部分を除去した状態で、XPS分析が行われる。図2(a)~図2(d)は、半導体層10の表面部分の特性に対応する。表面部分は、上記の第2領域r2に対応する。
【0032】
これらの図の横軸は、結合エネルギーBE(eV)に対応する。これらの図の縦軸は、得られる信号の強度Int(任意単位)に対応する。図2(a)及び図2(c)は、In3d5/2の状態に対応する。図2(b)及び図2(d)は、Ga2p3/2の状態に対応する。
【0033】
図2(a)に示すように、第1試料SP1においては、結合エネルギーBEが440eV以上450eV以下(この例では、444eV以上446eV以下。444.5eV以上445.5eV以下でも良い)の領域において、第1ピークpk1が観測される。第1ピークpk1は、In-Oの結合に対応する。さらに、結合エネルギーが443.3eV付近において、信号の強度Intにショルダーsd1が観測される。このショルダーsd1は、Inと金属元素との結合(例えばIn-Inの結合)に対応する。
【0034】
図2(c)に示すように、第2試料SP2においても、結合エネルギーBEが440eV以上450eV以下(この例では、444eV以上446eV以下。444.5eV以上445.5eV以下でも良い)の領域において、第2ピークpk2が観測される。第2ピークpk2は、In-Oの結合に対応する。第2試料SP2においては、結合エネルギーが443.3eV付近におけるショルダーsd1は、観測されない。
【0035】
このように、第1試料SP1は、In-Oの結合、及び、In-金属元素の結合を含む。これに対して、第2試料SP2は、In-Oの結合を含み、In-金属元素の結合を実質的に含まない。
【0036】
第1試料SP1においては、半導体層10に第1層(W膜)が設けられている。このため、第1層31に含まれるWにより、半導体層10の表面部分が還元され、In-Oの結合からからIn-金属元素の結合が生じたと考えられる。一方、第2試料SP2においては、W膜が設けられていないため、半導体層10が還元されることがなく、In-金属元素の結合が実質的に生じないと考えられる。
【0037】
一方、図2(b)に示すように、第1試料SP1において、結合エネルギーBEが1114eV以上1123eV以下(この例では、1118eV以上1119eV以下。1117.5eV以上1119.5eV以下でも良い)の領域において、第3ピークpk3が観測される。第3ピークpk3は、Ga-Oの結合に対応する。さらに、結合エネルギーBEが1116eV付近において、信号の強度Intにショルダーsd2が観測される。このショルダーsd2は、Gaと金属元素との結合(例えば、Ga-Gaの結合)に対応する。
【0038】
図2(d)に示すように、第2試料SP2において、結合エネルギーBEが結合エネルギーBEが1114eV以上1123eV以下(この例では、1118eV以上1119eV以下。1117.5eV以上1119.5eV以下でも良い)の領域において、第4ピークpk4が観測される。第4ピークpk4は、Ga-Oの結合に対応する。第4試料SP4においては、結合エネルギーBEが1116eV付近のショルダーsd2は、観測されない。
【0039】
このように、第1試料SP1は、Ga-Oの結合、及び、Ga-金属元素の結合を含む。これに対して、第2試料SP2は、Ga-Oの結合を含み、Ga-金属元素の結合を実質的に含まない。第1試料SP1においては、第1層31に含まれるWにより、半導体層10の表面部分が還元され、Ga-Oの結合からGa-金属元素の結合が生じたと考えられる。一方、第2試料SP2においては、W膜が設けられていないため、半導体層10が還元されることがなく、Ga-金属元素の結合が実質的に生じないと考えられる。
【0040】
第1層31から離れた第1領域r1は、第1層31の影響を実質的に受けず、第2試料SP2の特性に対応する特性を有する。
【0041】
実施形態においては、例えば、第1元素は、Inを含む。このとき、第2領域r2(第1試料SP1に対応)のX線光電分光分析で得られる第1信号は、第1結合エネルギーBE1において第1ピークpk1を含む。この第1信号は、第2結合エネルギーBE2において、第1ピークpk1の強度の20%以上である。第1結合エネルギーBE1は、440eV以上450eV以下である。第1結合エネルギーBE1は、444eV以上446eV以下でも良い。第1結合エネルギーBE1は、444.5eV以上445.5eV以下でも良い。第2結合エネルギーBE2は、第1結合エネルギーBE1よりも低い。第1結合エネルギーBE1と第2結合エネルギーBE2との差の絶対値は、1.5eVである。第2結合エネルギーBE2における第1信号は、上記のショルダーsd1に対応する。第2結合エネルギーBE2は、例えば、443.3eVである。
【0042】
一方、第1領域r1(第2試料SP2に対応)のX線光電分光分析で得られる第2信号は、第3結合エネルギーBE3において第2ピークpk2を含む(図2(c)参照)。この第2信号は、第4結合エネルギーBE4において第2ピークpk2の強度の20%未満である(図2(c)参照)。第3結合エネルギーBE3は、440eV以上450eV以下である。第1結合エネルギーBE1は、444eV以上446eV以下でも良い。第1結合エネルギーBE1は、444.5eV以上445.5eV以下でも良い。第4結合エネルギーBE4は、第3結合エネルギーBE3よりも低い。第3結合エネルギーBE3と第4結合エネルギーBE4との差の絶対値は、1.5eVである(図2(c)参照)。第1領域r1においては、第4結合エネルギーBE4(実質的に第2結合エネルギーBE2に対応する)におけるショルダーsd1は、実質的に生じない。第4結合エネルギーBE4は、例えば、443.3eVである。
【0043】
実施形態においては、例えば、第1元素は、Gaを含む。このとき、第2領域r2(第1試料SP1に対応)のX線光電分光分析で得られる第3信号は、第5結合エネルギーにBE5おいて第3ピークpk3を含む(図2(b)参照)。この第3信号は、第6結合エネルギーBE6において、第3ピークpk3の強度の20%以上である。第5結合エネルギーBE5は1114eV以上1123eV以下である。第5結合エネルギーBE5は、1118eV以上1119eV以下でも良い。第5結合エネルギーBE5は、1117.5eV以上1119.5eV以下でも良い。第6結合エネルギーBE6は、第5結合エネルギーBE5よりも低い。第5結合エネルギーBE5と第6結合エネルギーBE6との差の絶対値は、2.0eVである。第6結合エネルギーBE6おける第3信号は、上記のショルダーsd2に対応する。第6結合エネルギーBE6は、例えば、1116eVである。
【0044】
一方、第1領域r1(第2試料SP2に対応)のX線光電分光分析で得られる第4信号は、第7結合エネルギーBE7において第4ピークpk4を含む(図2(d)参照)。第4信号は、第8結合エネルギーBE8において、第4ピークpk4の強度の20%未満である(図2(d)参照)。第7結合エネルギーは1114eV以上1123eV以下である。第7結合エネルギーBE7は、1118eV以上1119eV以下でも良い。第7結合エネルギーBE7は、1117.5eV以上1119.5eV以下でも良い。第8結合エネルギーBE8は、第7結合エネルギーBE7よりも低い。第7結合エネルギーBE7と第8結合エネルギーBE8との差の絶対値は、2.0eVである(図2(d)参照)。第1領域r1においては、第8結合エネルギーBE8(実質的に第6結合エネルギーBE6に対応する)におけるショルダーsd2は、実質的に生じない。第8結合エネルギーBE8は、例えば、1116eVである。
【0045】
例えば、第1元素がInを含む場合、第2領域r2のX線光電分光分析において、443.3eVの結合エネルギーにおける信号強度は、445eVの結合エネルギーにおける信号強度の20%以上である。第1領域r1のX線光電分光分析において、443.3eVの結合エネルギーにおける信号強度は、445eVの結合エネルギーにおける信号強度の20%未満である。
【0046】
例えば、第1元素がGaを含む場合、第2領域r2のX線光電分光分析において、1116.2eVの結合エネルギーにおける信号強度は、1118.5eVの結合エネルギーにおける信号強度の20%以上である。第1領域r1のX線光電分光分析において、1116.2eVの結合エネルギーにおける信号強度は、1118.5eVの結合エネルギーにおける信号強度の20%未満である。
【0047】
このような特性により、例えば、良好なコンタクト特性が得られる。良好なオーミックコンタクト特性が得られる。例えば、コンタクト抵抗をより低減できる半導体装置を提供できる。例えば、特性を向上できる半導体装置を提供できる。
【0048】
実施形態において、第1層31に含まれる第2元素の酸素との結合エネルギーは、半導体層10に含まれる第1元素の酸素との結合エネルギーよりも高いことが好ましい。これにより、第2元素により、半導体層10の表面部分が還元され易くなる。
【0049】
(第2実施形態)
第2実施形態は、トランジスタに係る。
図3は、第2実施形態に係る半導体装置を例示する模式的断面図である。
図3に示すように、半導体装置120は、半導体層10、第1層31及び第1電極51に加えて、第2層32、第2電極52、第5電極53、及び、絶縁部60をさらに含む。絶縁部60は、第1絶縁領域61を含む。
【0050】
第1電極51から第2電極52への第2方向は、第1方向(Z軸方向)と交差する。この例では、第2方向は、X軸方向に対応する。
【0051】
第3電極53の少なくとも一部の第2方向(例えばX軸方向)における位置は、第1電極51の少なくとも一部の第2方向における位置と、第2電極52の少なくとも一部の第2方向における位置と、の間にある。
【0052】
半導体層10は、第1部分11に加えて、第2部分12及び第3部分13をさらに含む。第1部分11から第2部分12への方向は、第2方向(例えばX軸方向)に沿う。
【0053】
第2層32は、第1方向(Z軸方向)において、第2部分12と第2電極52との間に設けられる。
【0054】
第3部分13は、第1部分11及び第2部分12との間に設けられる。半導体層10の第1部分11は、例えば、第1層31(及び第1電極51)に対応する部分である。半導体層10の第2部分12は、例えば、第2層32(及び第1電極52)に対応する部分である。第3部分13は、例えば、第3電極53に対応する部分である。
【0055】
第1絶縁領域61は、第1方向(Z軸方向)において、第3電極53と第3部分13との間にある。
【0056】
第1電極51は、例えば、ソース電極である。第1部分11はソース領域である。第1層31は、例えば、ソースコンタクト領域である。第2電極52は、例えば、ドレイン電極である。第2部分12はドレイン領域である。第2層32は、例えば、ドレインコンタクト領域である。第3電極53は、例えば、ゲート電極である。第1絶縁領域61は、例えば、ゲート絶縁膜である。半導体装置120は、例えば、トランジスタである。
【0057】
この例では、基体70が設けられる。この例では、基体70は、基板71(例えば、シリコン基板)と、絶縁膜72と、を含む。絶縁膜72は、例えば、シリコン酸化膜(例えば熱酸化膜)である。
【0058】
この例では、基体70と第1電極51との間、基体70と第2電極52との間に半導体層10が設けられている。基板71と半導体層10との間に絶縁膜72が設けられている。
【0059】
この例では、第3電極53は、半導体層10と基体70との間に設けられている。例えば、半導体層10の第1部分11の第1方向(Z軸方向)における位置は、第3電極53の第1方向における位置と、第1層31の第1方向における位置と、の間にある。この例では、例えば、半導体装置120は、ゲート下型のトランジスタである。半導体装置120は、ゲート上型のトランジスタでも良い。
【0060】
第2層32は、例えば、W、Ti、Ta、Mo、Cu、Al、Ag、Hf、Au、Pt、Pd、Ru、V、Cr、Ni、Nb、In、Ga、Zn及びSnよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。第2層32の材料は、第1層31の材料と同じでも良い。
【0061】
第2電極52は、第2酸化物、Au、Pt及びPdよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。第2酸化物は、In、Sn、Zn及びTiよりなる群から選択された少なくともいずれかの元素を含む酸化物を含む。第2電極52の材料は、第1電極51の材料と同じでも良い。
【0062】
半導体装置120においても、例えば、第1領域r1は、第1元素と酸素との結合を含む。第2領域r2は、第1元素と金属元素との結合(例えば、第1元素と第1元素との結合)を含む。これにより、第1部分11と第1電極51との間において、良好なコンタクト特性が得られる。
【0063】
一方、第2部分12は、第3領域r3及び第4領域r4を含む。第4領域r4は、第3領域r3と第2層32との間に設けられる。第3領域r3は、第1元素と酸素との結合を含む。第4領域r4は、第1元素と金属元素との結合(例えば、第1元素と第1元素との結合)を含む。これにより、第2部分12と第2電極52との間において、良好なコンタクト特性が得られる。
【0064】
上記の第1方向(Z軸方向)に沿う第2層32の厚さt2(図3参照)は、例えば、0.5nm以上5nm以下である。厚さt2は、第2部分12から第2層12への方向に沿う第2層32の厚さでも良い。厚さt2は、例えば、0.5nm以上3nm未満でも良い。厚さt2は、例えば、厚さt1と同じでも良い。第2層32が薄いことで、低抵抗領域が過度に広がることが抑制できる。例えば、低抵抗領域が広がると、トランジスタのチャネル長が縮小する場合がある。第2層32が薄いことで、低抵抗領域が過度に広がることが抑制され、チャネル長の縮小を抑制できる。
【0065】
半導体装置120において、第3領域r3及び第4領域r4の特性は、第1領域r1及び第4領域r4の特性と、それぞれ実質的に同じでも良い。
【0066】
半導体装置120において、第3部分13の特性は、第1部分11の第1領域r1の特性と、実質的に同じでも良い。例えば、第1部分11の少なくとも一部は、第1元素と酸素との結合を含む。第3部分13は、第1元素と金属元素との結合を含む。
【0067】
実施形態において、例えば、第1元素は、Inを含む。このとき、第1部分11の少なくとも一部のX線光電分光分析で得られる第1信号は、第1結合エネルギーBE1において第1ピークpk1を含む。この第1信号は、第2結合エネルギーBE2において、第1ピークpk1の強度の20%以上である。第1結合エネルギーBE1は、440eV以上450eV以下である。第1結合エネルギーBE1は、444eV以上446eV以下でも良い。第1結合エネルギーBE1は、444.5eV以上445.5eV以下でも良い。第2結合エネルギーBE2は、第1結合エネルギーBE1よりも低い。第1結合エネルギーBE1と第2結合エネルギーBE2との差の絶対値は、1.5eVである。
【0068】
一方、第3部分13のX線光電分光分析で得られる第2信号は、第3結合エネルギーBE3において第2ピークpk2を含む。この第2信号は、第4結合エネルギーBE4において第2ピークpk2の強度の20%未満である。第3結合エネルギーBE3は、440eV以上450eV以下である。第1結合エネルギーBE1は、444eV以上446eV以下でも良い。第1結合エネルギーBE1は、444.5eV以上445.5eV以下でも良い。第4結合エネルギーBE4は、第3結合エネルギーBE3よりも低い。第3結合エネルギーBE3と第4結合エネルギーBE4との差の絶対値は、1.5eVである。
【0069】
実施形態においては、例えば、第1元素は、Gaを含む。このとき、第1部分11の少なくとも一部のX線光電分光分析で得られる第3信号は、第5結合エネルギーにBE5おいて第3ピークpk3を含む。この第3信号は、第6結合エネルギーBE6において、第3ピークpk3の強度の20%以上である。第5結合エネルギーBE5は1114eV以上1123eV以下である。第5結合エネルギーBE5は、1118eV以上1119eV以下でも良い。第5結合エネルギーBE5は、1117.5eV以上1119.5eV以下でも良い。第6結合エネルギーBE6は、第5結合エネルギーBE5よりも低い。第5結合エネルギーBE5と第6結合エネルギーBE6との差の絶対値は、2.0eVである。
【0070】
一方、第3部分13のX線光電分光分析で得られる第4信号は、第7結合エネルギーBE7において第4ピークpk4を含む。第4信号は、第8結合エネルギーBE8において、第4ピークpk4の強度の20%未満である。第7結合エネルギーは1114eV以上1123eV以下である。第7結合エネルギーBE7は、1118eV以上1119eV以下でも良い。第7結合エネルギーBE7は、1117.5eV以上1119.5eV以下でも良い。第8結合エネルギーBE8は、第7結合エネルギーBE7よりも低い。第7結合エネルギーBE7と第8結合エネルギーBE8との差の絶対値は、2.0eVである。
【0071】
例えば、第1元素がInを含む場合、第1部分11の少なくとも一部のX線光電分光分析において、443.3eVの結合エネルギーにおける信号強度は、445eVの結合エネルギーにおける信号強度の20%以上である。第3部分13のX線光電分光分析において、443.3eVの結合エネルギーにおける信号強度は、445eVの結合エネルギーにおける信号強度の20%未満である。
【0072】
例えば、第1元素がGaを含む場合、第1部分11の少なくとも一部のX線光電分光分析において、1116.2eVの結合エネルギーにおける信号強度は、1118.5eVの結合エネルギーにおける信号強度の20%以上である。第3部分13のX線光電分光分析において、1116.2eVの結合エネルギーにおける信号強度は、1118.5eVの結合エネルギーにおける信号強度の20%未満である。
【0073】
以下、半導体装置の特性の例について説明する。
図4(a)~図4(d)は、半導体装置の特性を例示するグラフ図である。
図4(a)及び図4(b)は、第1構成CF1に対応する。図4(c)及び図4(d)は、第2構成CF2に対応する。第1構成CF1においては、第1層31及び第2層32が設けられる。第1層31及び第2層32は、2nmの厚さのW膜である。第2構成CF2においては、第1層31及び第2層32が設けられない。第2構成CF2におけるこれ以外の構成は、第1構成CF1と同様である。これらの構成において、第1電極51及び第2電極52は、ITOである。
【0074】
図4(a)及び図4(c)の横軸は、ゲート電圧Vg(V)である。図4(a)及び図4(c)の縦軸は、ドレイン電流Id(A/μm)である。これらの図において、ゲート幅は、2.4μmである。ゲート長は、0.8μmである。ドレイン電圧Vdは、0.05Vである。
【0075】
図4(a)及び図4(c)を比較すると分かるように、第1構成CF1におけるオン電流は第2構成CF2におけるオン電流よりも大きい。第1構成CF1におけるオン電流は、第2構成CF2におけるオン電流の11倍である。
【0076】
図4(b)及び図4(d)の横軸は、ゲートオーバードライブ電圧V1(V)である。ゲートオーバードライブ電圧V1は、ゲート電圧Vgとしきい値電圧との差である。図2(b)及び図2(d)の縦軸は、寄生抵抗Rp(Ωμm)である。寄生抵抗Rpは、オン抵抗とゲート長との関係から算出される。
【0077】
図4(b)及び図4(d)を比較すると分かるように、第1構成CF1における寄生抵抗Rpは第2構成CF2における寄生抵抗Rpよりも低い。第1構成CF1における寄生抵抗Rpは、第2構成CF2における寄生抵抗Rpの1/17である。
【0078】
このように、第1構成CF1においては、大きなオン電流が得られる。低い寄生抵抗Rpが得られる。
【0079】
図5(a)及び図5(b)は、半導体装置の特性を例示するグラフ図である。
図5(a)は、第1構成CF1に対応する。図5(b)は、第2構成CF2に対応する。これらの図において、横軸は、ドレイン電圧Vd(V)である。縦軸は、ドレイン電流Id(A/μm)である。これらの図には、ゲート電圧Vgが、4V、5Vまたは6Vのときの特性が示されている。これらの図において、ゲート幅は1.4μmである。ゲート長は、0.8μmである。
【0080】
図5(a)及び図5(b)を比較すると、第1構成CF1においては、第2構成CF2よりも、オーミック性が高いことが分かる。第1構成CF1においては、良好なオーミックコンタクトが得られる。これは、第1構成CF1における第1層31及び第2層32によると考えられる。
【0081】
図6(a)及び図6(b)は、半導体装置の特性を例示するグラフ図である。
これらの図には、上記の第1構成CF1及び第2構成CF2について、400℃で30分の熱処理後の特性が示されている。図6(a)の横軸は、ゲート電圧Vg(V)である。図6(a)縦軸は、ドレイン電流Id(A/μm)である。ゲート幅は、2.4μmである。ゲート長は、0.8μmである。ドレイン電圧Vdは、0.05Vである。
【0082】
図6(a)に示す第1構成CF1の特性と、図4(a)に示す第1構成CF1の特性を比べると、熱処理後も大きなドレイン電流Idが得られる。第1構成CF1においては、熱処理前、及び、熱処理後において、良好な特性が維持されることが分かる。
【0083】
一方、図6(a)に示す第2構成CF2の特性と、図4(c)に示す第2構成CF2の特性を比べると、第2構成CF2においては、熱処理を行うことでドレイン電流Idが大きくなることが分かる。
【0084】
図6(b)の横軸は、ゲートオーバードライブ電圧V1(V)である。図6(b)の縦軸は、寄生抵抗Rp(Ωμm)である。図6(b)に示す第1構成CF1の特性と、図4(b)に示す第1構成CF1の特性を比べると、熱処理後も比較的低い寄生抵抗が得られることが分かる。
【0085】
一方、図6(b)に示す第2構成CF2の特性と、図4(d)に示す第2構成CF2の特性を比べると、第2構成CF2においては、熱処理を行うことで寄生抵抗Rpが低減できることが分かる。
【0086】
図6(b)に示すように、熱処理後においても、第1構成CF1における寄生抵抗Rpは、第2構成CF2における寄生抵抗Rpよりも低い。
【0087】
以上のように、第1層31及び第2層32を設ける第1構成CF1においては、熱処理後も、良好な特性が得られる。
【0088】
図7は、半導体装置の特性を例示するグラフ図である。
図7には、第1構成CF1及び第2構成CF2のそれぞれにおいて、ゲート長を変更したときのパラメータ1/βの変化の例が示されている。横軸は、ゲート長Lg(μm)である。縦軸は、パラメータ1/β(V/A)である。パラメータ1/βは、電圧-電流特性の傾きに対応するパラメータである。
【0089】
図7には、第1構成CF1の実測値の実線、及び、第2構成CF2の実測値の実線が示されている。これらの実線は、400℃30分の熱処理後の特性である。図7には、第1構成CF1において、ゲート長Lgが2μm~5μmの領域の特性(直線)を延長した特性が、破線CX1で示されている。さらに、図7には、第2構成CF2において、ゲート長Lgが2μm~5μmの領域の特性(直線)を延長した特性が、破線CX2で示されている。
【0090】
第1構成CF1に関する実線と、第1構成CF1に対応する破線CX1と、の差が、実効的なゲート長の縮小量に対応する。第1構成CF1において、実効的なゲート長の縮小量は、150nmであると見積もられる。実効的なゲート長の縮小量は、コンタクト領域から延びる低抵抗領域の長さの2倍に対応すると考えられる。従って、第1構成CF1において、コンタクト領域から延びる1つの低抵抗領域の長さは、約75nmであると推定される。
【0091】
第2構成CF2に関する実線と、第2構成CF2に対応する破線CX2と、の差が、実効的なゲート長の縮小量に対応する。第2構成CF2においても、実効的なゲート長の縮小量は、150nmであると見積もられる。
【0092】
第1層31及び第2層32が設けられる第1構成CF1において、低抵抗領域の広がりは、第1層31及び第2層32が設けられない第2構成CF2におけるそれと同等であると考えられる。第1構成CF1において、低抵抗領域の広がりは、抑制されている。
【0093】
図8は、半導体装置の特性を例示するグラフ図である。
図8には、第1試料SP1、第3試料SP3及び第4試料SP4のX線光電分光分析(XPS)の結果を例示している。横軸は、結合エネルギーBE(eV)に対応する。縦軸は、得られる信号の強度Int(任意単位)に対応する。図8の結果は、第1層31に対応する領域の分析結果に対応する。
【0094】
第1試料SP1においては、半導体層10は、InGaZnOである。第1層31は、2nmの厚さのW膜である。第1電極51は、ITOである。第1試料SP1は、400℃30分の熱処理の前の試料である。第3試料SP3において、上記の第1試料SP1を400℃30分の熱処理の後の試料である。第4試料SP4は、リファレンスとしてのW膜であり、W膜は、Siの基板の上に設けられ、その上には、ITO(第1電極51)は設けられていない。
【0095】
図8から分かるように、熱処理を行わない第1試料SP1においては、リファレンスとしてのW膜の第4試料SP4の特性と同様の特性が観測される。第1試料SP1及び第4試料SP4においては、W-Wの結合のピークが観測される。
【0096】
これに対して、熱処理後の第3試料SP3においては、W-Oの結合のピークが観測される。このように、熱処理後の試料において、第1層31に、第2元素(例えばW)と酸素との結合が含まれても良い。
【0097】
熱処理の前後で、金属及び酸化物の比率は変化すると考えられる。既に説明したように、第1構成CF1(実施形態に係る1つの例)においては、熱処理の前及び後において、良好な特性が得られる。
【0098】
実施形態において、第1層31は、第2元素(W、Ti、Ta、Mo、Cu、Al、Ag、Hf、Au、Pt、Pd、Ru、V、Cr、Ni、Nb、In、Ga、Zn及びSnよりなる群から選択された少なくとも1つ)に加えて、酸素を含んでも良い。例えば、第1層31は、第2元素と酸素との結合を含んでも良い。
【0099】
(第3実施形態)
本実施形態に係る半導体装置は、非線形素子に係る。非線形素子の特性は、例えば、印加される電圧に対して、非線形に応答する。非線形素子は、例えば、整流特性を有する。このような非線形素子は、例えば、抵抗変化型の記憶素子のセレクタとして使用できる。
【0100】
図9は、第3実施形態に係る半導体装置を例示する模式的断面図である。
図9に示すように、本実施形態に係る半導体装置130は、半導体層10、第1層31及び第1電極51に加えて、第2電極52及び中間層40をさらに含む。
【0101】
半導体層10の第1部分11は、第1方向(Z軸方向)において、第2電極52と第1電極51との間に設けられる。第1層31は、第1方向において、第1部分11と第1電極51との間に設けられる。中間層40は、第1方向において、第2電極52と半導体層10との間に設けられる。
【0102】
例えば、第1領域r1は、第1方向において、中間層40と第1層31との間に設けられる。第2領域r2は、第1方向において、第1領域r1及び第1層31との間に設けられる。この場合も、第1領域r1は、第1元素と酸素との結合(例えばIn-Oの結合など)を含む。第2領域r2は、第1元素と金属元素との結合(例えばIn-Inの結合など)を含む。これにより、良好なコンタクトが得られる。
【0103】
例えば、第1電極51と第2電極52との間の電気抵抗は、第1電極51と第2電極52との間に印加される電圧に応じて変化する。中間層40の電気抵抗は、第1電極51と第2電極52との間に印加される電圧に応じて変化する。中間層40は、例えば、抵抗変化層である。中間層40は、例えば、相変化型の抵抗変化層を含んでも良い。
【0104】
半導体層10は、第1方向において、第1層31と重ならない部分(例えば、第2部分12及び第3部分13など)を含んでも良い。例えば、X軸方向において、第1部分11と第2部分12との間に第3部分13が設けられる。例えば、第2部分12に対応して、別の第1電極51及び別の第1層31が設けられる。例えば、複数の第1電極51の1つに対応する部分が、1つの記憶素子として動作しても良い。複数の第1電極51の別の1つに対応する部分が、別の1つの記憶素子として動作しても良い。第3部分13は、2つの素子の間の領域に対応する。
【0105】
例えば、第1層31の厚さt1は、過度に厚くない。第1層31の厚さt1は、0.5nm以上5nm未満である。例えば、第1層31の厚さt1は、0.5nm以上3nm未満でも良い。第1層31の厚さt1が過度に厚くないことで、低抵抗領域が第3部分13に過度に広がることが抑制できる。これにより、複数の記憶素子において、独立した動作が容易になる。
【0106】
実施形態によれば、特性を向上できる半導体装置が提供できる。
【0107】
本願明細書において、「電気的に接続される状態」は、複数の導電体が物理的に接してこれら複数の導電体の間に電流が流れる状態を含む。「電気的に接続される状態」は、複数の導電体の間に、別の導電体が挿入されて、これらの複数の導電体の間に電流が流れる状態を含む。
【0108】
本願明細書において、「垂直」及び「平行」は、厳密な垂直及び厳密な平行だけではなく、例えば製造工程におけるばらつきなどを含むものであり、実質的に垂直及び実質的に平行であれば良い。
【0109】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、半導体装置に含まれる半導体層、電極、層、及び中間層などの各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
【0110】
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0111】
その他、本発明の実施の形態として上述した半導体装置を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての半導体装置も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0112】
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【0113】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0114】
10 半導体層、 11~13…第1~第3部分、 31、32…第1、第2層、 40…中間層、 51~53…第1~第3電極、 60…絶縁部、 61…第1絶縁領域、 70…基体、 71…基板、 72…絶縁膜、 110、120、130…半導体装置、 BE…結合エネルギー、 BE1~BE8…第1~第8結合エネルギー、 CF1、CF2…第1、第2構成、 CX1、CX2…破線、 Id…ドレイン電流、 Int…強度、 Lg…ゲート長、 Rp…寄生抵抗、 SP1~SP4…第1~第4試料、 V1…ゲートオーバードライブ電圧、 Vd…ドレイン電圧、 Vg…ゲート電圧、 pk1~pk4…第1~第4ピーク、 r1~r4…第1~第4領域、 sd1、sd2…ショルダー、 t1、t2…厚さ
図1
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図9