(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-07
(45)【発行日】2022-09-15
(54)【発明の名称】マイクロホン装置
(51)【国際特許分類】
H04R 1/02 20060101AFI20220908BHJP
【FI】
H04R1/02 106
(21)【出願番号】P 2018136140
(22)【出願日】2018-07-19
【審査請求日】2021-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000145806
【氏名又は名称】株式会社小野測器
(74)【代理人】
【識別番号】100108006
【氏名又は名称】松下 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】楠美 貴大
(72)【発明者】
【氏名】小林 基秀
【審査官】米倉 秀明
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-114878(JP,A)
【文献】国際公開第2006/062120(WO,A1)
【文献】特開2011-120170(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0254850(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/00-1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の基板と、
前記基板の一方の面に固定されたマイクロホンユニットと、
前記基板の他方の面に固定された振動センサと
、
前記基板を収容するケースとを有し、
前記マイクロホンユニットと前記振動センサとが、前記基板の平面視において互いに重なる位置に配置され
、
前記マイクロホンユニットは、検出対象の音を入力する音孔を含み、
前記ケースは、外部の音を前記音孔に導く導入孔を含む、
マイクロホン装置。
【請求項2】
前記基板の前記一方の面及び前記他方の面と平行であり、かつ、当該一方の面及び当該他方の面からの距離が等しい仮想平面を規定した場合に、
前記ケースは、少なくとも前記導入孔を形成する部分以外の形状が、前記仮想平面に関して面対称であり、
前記マイクロホンユニットは、
前記基板に固定される底面と、
前記底面に対向する上面とを含み、
前記音孔は、前記マイクロホンユニットの前記上面に形成され、
前記導入孔は、前記マイクロホンユニットの前記音孔に向かって前記仮想平面に垂直な方向に伸びている、
請求項
1に記載のマイクロホン装置。
【請求項3】
前記ケースに固定されたケーブルを有し、
前記ケーブルと前記ケースとの固定部分において、前記ケーブルの中心線が前記仮想平面に沿っている、
請求項
2に記載のマイクロホン装置。
【請求項4】
前記ケースの内部には、前記基板を収容する内部空間が形成されており、
前記基板は、前記内部空間を形成する前記ケースの内壁に外縁が固定されており、
前記導入孔は、前記ケースの前記内壁から前記マイクロホンユニットの前記音孔に向かって突出した凸部に形成されており、
前記凸部の端面と前記マイクロホンユニットの前記上面とが密着している、
請求項
2又は
3に記載のマイクロホン装置。
【請求項5】
前記ケースの内部には、前記基板を収容する内部空間が形成されており、
前記基板は、前記内部空間を形成する前記ケースの内壁に外縁が固定されており、
前記導入孔は、前記ケースの前記内壁から前記マイクロホンユニットの前記音孔に向かって突出した凸部に形成されており、
前記凸部の端面と前記マイクロホンユニットの前記上面との間に挿入され、前記導入孔の一部を形成する緩衝部材を有する、
請求項
2又は
3に記載のマイクロホン装置。
【請求項6】
前記基板は、円形の平面形状を持ち、
前記マイクロホンユニット及び前記振動センサは、前記円形の平面形状の中心に配置される、
請求項
1~
5のいずれか一項に記載のマイクロホン装置。
【請求項7】
前記ケースの内部には、前記基板を収容する内部空間が形成されており、
前記基板は、前記内部空間を形成する前記ケースの内壁に外縁が固定されているとともに、前記マイクロホンユニット及び前記振動センサを囲む複数の位置に切り欠き孔が形成されている、
請求項
1~
6のいずれか一項に記載のマイクロホン装置。
【請求項8】
前記ケースの内部には、前記基板を収容する内部空間が形成されており、
前記基板は、長方形の平面形状を持つとともに、前記長方形の平面形状における2つの短辺に対応する外縁部分において、前記内部空間を形成する前記ケースの内壁に固定されており、
前記マイクロホンユニット及び前記振動センサは、前記長方形の平面形状の中心に配置されている、
請求項
1~
5のいずれか一項に記載のマイクロホン装置。
【請求項9】
前記基板の前記長方形の平面形状は、四隅が切り欠かれた長方形である、
請求項
8に記載のマイクロホン装置。
【請求項10】
前記ケースは、前記導入孔を避けて中実に形成されている、
請求項
1~
3のいずれか一項に記載のマイクロホン装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音圧の計測などに用いられるマイクロホン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば工業製品の試験や検査などにおいて機器が発生する音の大きさをマイクロホンで計測し、その作動状態などを評価する場合がある。マイクロホンによる音の計測では、マイクロホンに不要な外来振動が伝わると、外来振動に起因したノイズが計測結果に含まれてしまう。そのため、音の計測精度を高めるためには、外来振動に起因するノイズを抑制する必要がある。
【0003】
下記の先行技術文献には、マイクロホンに伝わる振動を振動センサにより検出し、検出した振動に応じてマイクロホンが検出した信号を補正する防振マイクロホン装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、振動センサとマイクロホンは同一の位置に配置できず、ある程度の距離を置いて配置せざるを得ないため、振動センサにおいて検出される振動はマイクロホンに伝わる実際の振動に対して誤差を含んでいる。そこで、上述した先行技術文献には、振動センサとマイクロホンとの距離に応じた振動の減衰や遅延を考慮に入れて、マイクロホンの位置における振動の影響を計算し、その影響を取り除くようにマイクロホンの信号を処理することが記載されている。
【0006】
しかしながら、複数の異なる振動源から同時にマイクロホンへ振動が伝わる場合、1つの地点に設置された振動センサの検出結果のみでマイクロホンに伝わる実際の振動を精度よく計算するのは困難である。一方、複数の振動センサを用いてマイクロホンの位置での振動を計算する場合には、構成部品が増えるとともに信号処理が複雑になるという不利益がある。また、振動センサとマイクロホンとの距離に起因する上述した振動検出の誤差は、周波数に応じて変化する傾向があるため、広い帯域で誤差を抑えることが難しいという不利益もある。
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、外来振動に起因する音の検出ノイズを簡易な構成で効果的に低減できるマイクロホン装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係るマイクロホン装置は、板状の基板と、基板の一方の面に固定されたマイクロホンユニットと、基板の他方の面に固定された振動センサと、基板を収容するケースとを有する。マイクロホンユニットと振動センサとが、基板の平面視において互いに重なる位置に配置され、マイクロホンユニットは、検出対象の音を入力する音孔を含み、ケースは、外部の音を音孔に導く導入孔を含む。
【0009】
上記マイクロホン装置によれば、板状の基板を挟んで近接した位置にマイクロホンユニットと振動センサとが配置されるため、マイクロホンユニットに伝わる外来振動が振動センサにおいて精度よく検出される。これにより、振動センサにおける振動の検出結果を用いて、マイクロホンユニットにより検出された音に含まれる外来振動に起因したノイズを効果的に低減させることが可能になる。
【0010】
また、この構成によれば、ケースによって基板上の部品が保護されるとともに、マイクロホンユニットの音孔に外部の音が導かれる。
【0011】
基板の一方の面及び他方の面と平行であり、かつ、当該一方の面及び当該他方の面からの距離が等しい仮想平面を規定した場合に、ケースは、少なくとも導入孔を形成する部分以外の形状が、仮想平面に関して面対称であってよい。また、この場合、マイクロホンユニットは、基板に固定される底面と、底面に対向する上面とを含んでよく、音孔は、マイクロホンユニットの上面に形成されてよく、導入孔は、マイクロホンユニットの音孔に向かって仮想平面に垂直な方向に伸びていてよい。
この構成によれば、少なくとも導入孔を形成する部分以外のケースの形状が仮想平面に関して面対称であるため、仮想平面に沿ってケースの外面に振動が加わった場合に、ケースや基板を伝わる振動の分布も仮想平面に関して対称性を持ち易くなる。従って、仮想平面に沿ってケースの外面に振動が伝わり易くなるようにケースを他の物体に設置することで、マイクロホンユニットと振動センサとには対称な振動が伝わり易くなる。
【0012】
上記マイクロホン装置は、ケースに固定されたケーブルを有してよい。ケーブルとケースとの固定部分において、ケーブルの中心線が仮想平面に沿っていてよい。
この構成によれば、ケーブルからの振動が仮想平面に沿ってケースに伝わり易くなる。
【0013】
ケースの内部には、基板を収容する内部空間が形成されていてよい。基板は、内部空間を形成するケースの内壁に外縁が固定されてよい。導入孔は、ケースの内壁からマイクロホンユニットの音孔に向かって突出した凸部に形成されていてよい。凸部の端面とマイクロホンユニットの上面とが密着していてよい。
このように、ケースの内壁に基板の外縁が固定されることによって、ケースからの振動が基板に沿って伝わり易くなるため、マイクロホンユニットと振動センサとには対称な振動が伝わり易くなる。
【0014】
ケースの内部には、基板を収容する内部空間が形成されていてよい。基板は、内部空間を形成するケースの内壁に外縁が固定されてよい。導入孔は、ケースの内壁からマイクロホンユニットの音孔に向かって突出した凸部に形成されていてよい。上記マイクロホン装置は、凸部の端面とマイクロホンユニットの上面との間に挿入され、導入孔の一部を形成する緩衝部材を有してよい。
このような緩衝材を設けることにより、凸部とマイクロホンユニットとの隙間から音波が漏れ難くなるとともに、凸部からマイクロホンユニットへ伝わる振動が抑制され易くなる。
【0015】
基板は、円形の平面形状を持ってよい。マイクロホンユニット及び振動センサは、円形の平面形状の中心に配置されてよい。
この構成によれば、基板の外縁から伝わる振動がマイクロホンユニットと振動センサとに対称に伝わりやすくなる。
【0016】
ケースの内部には、基板を収容する内部空間が形成されてよい。基板は、内部空間を形成するケースの内壁に外縁が固定されているとともに、マイクロホンユニット及び振動センサを囲む複数の位置に切り欠き孔が形成されていてよい。
この構成によれば、基板の外縁から伝わる振動によって、基板にたわみが生じ易くなり、マイクロホンユニット及び振動センサが配置された位置における基板の面に垂直な方向への振動が強調される。そのため、基板を挟んで配置されたマイクロホンユニット及び振動センサには、基板に垂直な方向において近似した振動が伝わり易くなる。
【0017】
ケースの内部には、基板を収容する内部空間が形成されてよい。基板は、長方形の平面形状を持つとともに、長方形の平面形状における2つの短辺に対応する外縁部分において、内部空間を形成するケースの内壁に固定されていてよい。マイクロホンユニット及び振動センサは、長方形の平面形状の中心に配置されてよい。
この構成によれば、基板の外縁から伝わる振動によって、基板にたわみが生じ易くなり、マイクロホンユニット及び振動センサが配置された位置における基板の面に垂直な方向への振動が強調される。そのため、基板を挟んで配置されたマイクロホンユニット及び振動センサには、基板に垂直な方向において近似した振動が伝わり易くなる。
この場合、基板の長方形の平面形状を、四隅が切り欠かれた長方形とすることによって、基板のたわみが更に生じ易くなるため、マイクロホンユニット及び振動センサに近似した振動が伝わり易くなる。
【0018】
ケースは、導入孔を避けて中実に形成されていてもよい。これにより、ケースを樹脂成形などによって作成することが可能になるため、ケースの内部に基板を収容する製造工程が簡易になる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、外来振動に起因する音の検出ノイズを簡易な構成で効果的に低減できるマイクロホン装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1A~
図1Eは、第1の実施形態に係るマイクロホン装置の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係るマイクロホン装置における要部の構造を図解した拡大断面図である。
【
図3】
図3は、マイクロホン装置の機能的な構成の一例を示す図である。
【
図4】
図4A~
図4Eは、第1の実施形態に係るマイクロホン装置の一変形例を示す図である。
【
図5】
図5A~
図5Eは、第2の実施形態に係るマイクロホン装置の一例を示す図である。
【
図6】
図6A~
図6Bは、第2の実施形態に係るマイクロホン装置における要部の構造を図解した拡大断面図である。
【
図7】
図7A~
図7Eは、第2の実施形態に係るマイクロホン装置の第1変形例を示す図である。
【
図8】
図8A~
図8Bは、第2の実施形態に係るマイクロホン装置の第2変形例を示す図である。
【
図9】
図9A~
図9Bは、第2の実施形態に係るマイクロホン装置の第3変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<第1の実施形態>
以下、図面を参照しながら、第1の実施形態に係るマイクロホン装置1Aについて説明する。以下の各実施形態の説明では、マイクロホン装置1Aを構成する各要素の相対的な位置関係を示すため、互いに直交する3つの方向(X、Y、Z)が規定される。X方向は互いに逆向きの方向「X1」及び「X2」を含み、Y方向は互いに逆向きの方向「Y1」及び「Y2」を含み、Z方向は互いに逆向きの方向「Z1」及び「Z2」を含む。X方向、Y方向は横方向、Z方向は縦方向とも呼ばれる。これらの方向は、説明の便宜上規定されたものに過ぎず、マイクロホン装置1Aが使用される態様を限定するものではない。
【0022】
図1A~
図1Eは、第1の実施形態に係るマイクロホン装置1Aの一例を示す図である。
図1Aは、マイクロホン装置1AをX2側から見た側面図である。
図1Bは、マイクロホン装置1AをZ1側から見た平面図である。
図1Cは、マイクロホン装置1AをY方向の中央で切断した断面図である。
図1Dは、マイクロホン装置1Aに含まれる基板2Aの平面図である。
図1Eは、基板2AをY方向の中央で切断した断面図である。
【0023】
図1A~
図1Eに示すマイクロホン装置1Aは、板状の基板2Aと、基板2Aの一方の面21に固定されたマイクロホンユニット3Aと、基板2Aの他方の面22に固定された振動センサ4と、基板2Aを収容するケース5Aと、ケース5Aに固定されたケーブル6とを有する。
【0024】
本実施形態に係るマイクロホン装置1Aでは、
図1C~
図1Eに示すように、基板2Aの平面視において(Z方向から基板2Aを見て)、マイクロホンユニット3Aと振動センサ4とが互いに重なる位置に配置されている。そのため、マイクロホンユニット3Aに伝わる外来振動が、基板2Aを挟んで近接した位置にある振動センサ4において精度よく検出される。
【0025】
また、本実施形態に係るマイクロホン装置1Aでは、
図1Eに示すように、基板2Aの一方の面21及び他方の面22とそれぞれ平行であり、かつ、面21及び面22からの距離が等しい仮想平面Pが規定される。ケース5Aは、後述する導入孔52Aを形成する部分以外の形状が、この仮想平面Pに対して面対称である。
図1A及び
図1Bの例において、ケース5Aの全体的な形状は略円柱である。Z1側の外面502とZ2側の外面503の形状は円であり、仮想平面Pに対してそれぞれ平行である。外面502と外面503との間には、曲面状の外面501が設けられている。外面501は、仮想平面Pに対して垂直である。
【0026】
外面501のX1側には、
図1B及び
図1Cに示すように、X1方向へ円錐台状に盛り上がったケーブル固定部53が設けられている。ケーブル固定部53の頂部には、X2方向に向かってケーブル6の端部が埋め込まれている。ケーブル6の端部から引き出された電線63は、基板2Aに設けられたコネクタや端子等に接続される。ケーブル6とケース5Aとの固定部分(ケーブル固定部53)では、ケーブル6の中心線L(長手方向に垂直な円形の断面の中心を通る線)が仮想平面Pに沿っている。
図1B及び
図1Cの例において、中心線Lは、仮想平面P上においてX方向に伸びている。
【0027】
ケース5Aは、
図1B及び
図1Cに示すように、外部の音をマイクロホンユニット3Aの後述する音孔31Aへ導く導入孔52Aを有する。導入孔52Aは、
図1Cに示すように、マイクロホンユニット3Aの音孔31Aに向かって仮想平面Pに垂直な方向(Z方向)に伸びている。導入孔52Aの一端は、円形の外面502の略中心に開口している。
【0028】
ケース5Aは、
図1Cに示すように、導入孔52Aを避けて中実に形成されている。例えばケース5Aは、金型を用いた樹脂成型などの方法により作成される。ケース5Aの材料として、制振効果を持った樹脂などの制振材が用いられる。ケース5Aが制振材によって形成されることにより、マイクロホンユニット3A及び振動センサ4に伝わる振動が抑制され易くなる。
【0029】
基板2Aは、例えばプリント基板であり、
図1D及び
図1Eに示すように、略円形の平面形状を持つ。マイクロホンユニット3A及び振動センサ4は、基板2Aの円形形状の中心にそれぞれ配置される
【0030】
図2は、第1の実施形態に係るマイクロホン装置1Aにおける要部の構造を図解した拡大断面図であり、マイクロホンユニット3Aの近傍における仮想平面Pに垂直な断面を示す。マイクロホンユニット3Aは、例えば
図2に示すようにチップ部品であり、基板2Aの一方の面21に実装される。マイクロホンユニット3Aは、基板2Aに固定される底面32Aと、底面32Aに対向する上面33Aとを含んでおり、検出対象の音を入力する音孔31Aが上面33Aに形成されている。
【0031】
マイクロホンユニット3Aは、
図2の例において、プリント基板35Aと、プリント基板35Aの一方の面352に設けられたMEMS部36Aと、当該一方の面352を覆うメタルケース34Aとを含む。プリント基板35Aの他方の面は、マイクロホンユニット3Aの上述した底面32Aに相当する。底面32Aは、プリント基板35Aに設けられた電子部品(半導体IC等)に接続される端子351を有する。端子351は、基板2Aの一方の面21に形成されたランド23に半田付けされる。メタルケース34Aは、直方体状の箱であり、プリント基板35Aの一方の面352に被せられている。底面32Aに対向するメタルケース34Aの外面は、上述した上面33Aに相当する。音孔31Aは、メタルケース34Aの上面33Aに開けられた貫通孔である。
【0032】
MEMS部36Aは、音波を電気信号に変換する音響-電気変換素子として構成されたMEMS(micro electro mechanical systems)の部品である。
図2の例において、MEMS部36Aは、音波に応じて微小な変位を生じる導電体のダイヤフラム302と、絶縁体のスペーサー304を介してダイヤフラム302と対向配置された電極303とを有する。音波に応じてダイヤフラム302に微小変位が生じると、その微小変位に応じて、ダイヤフラム302と電極303とにより形成されたキャパシタの静電容量が変化する。この静電容量の変化を示す電気信号が、音の検出結果を示す信号として図示しない電子回路により生成される。ダイヤフラム302及び電極303は、シリコン等の基板301上に形成される。ダイヤフラム302に対して電極303の反対側には、バックチャンバー305としての空洞が設けられている。基板301は、粘着層306を介してプリント基板35Aの一方の面352に固定される。基板301上の電極は、例えばボンディングワイヤ等によってプリント基板35A上の電極や他の電子部品等の電極に接続される。
【0033】
振動センサ4は、マイクロホンユニット3Aに近接した位置に伝搬する振動を検出する。振動センサ4は、例えば加速度センサや変位センサでもよいし、音孔を塞いで振動のみを検出するように構成されたマイクロホンユニットでもよい。音孔を塞いだマイクロホンユニットとして、例えば
図2に示すマイクロホンユニット3Aと等価な構成を持つものを使用すれば、マイクロホンユニット3Aの検出信号に含まれるノイズ(外来振動に起因したノイズ)と振動センサ4の検出信号とが近似し易くなる。
【0034】
なお、振動センサ4とマイクロホンユニット3Aとは、振動に対して検出感度を持つ方向を互いに一致させるように配置することが好ましい。
図2に示すマイクロホンユニット3AのMEMS部36Aは、ダイヤフラム302のZ方向への微小振動に応じた静電容量の変化を検出することから、主としてZ方向の振動に対して検出感度を持つ。従って、この場合、振動センサ4も、主としてZ方向の振動に対して検出感度を持つように配置することが好ましい。
【0035】
図3は、マイクロホン装置1Aの機能的な構成の一例を示す図である。本実施形態に係るマイクロホン装置1Aは、例えば
図3に示すように、マイクロホンユニット3Aの検出信号S3を増幅するアンプ11と、振動センサ4の検出信号S4を増幅するアンプ12と、アンプ11及びアンプ11の出力信号に基づいて、マイクロホンユニット3Aの検出信号S3に含まれるノイズの影響が抑制された音検出信号S13を生成する信号処理部13とを有する。信号処理部13は、例えば、検出信号S3に含まれるノイズ信号(振動に起因したノイズ信号)の位相と検出信号S4の位相とが近似するように、検出信号S3と検出信号S4とに所定の位相差を与えた上で、検出信号S3から検出信号S4を減算する処理を行う。信号処理部13は、全体をアナログ回路で構成してもよいし、少なくとも一部をデジタル回路で構成してもよい。
【0036】
以上説明したように、本実施形態に係るマイクロホン装置1Aによれば、板状の基板2Aを挟んで近接した位置にマイクロホンユニット3Aと振動センサ4とが配置されるため、マイクロホンユニット3Aに伝わる外来振動を振動センサ4において精度よく検出できる。これにより、振動センサ4における振動の検出結果を用いて、マイクロホンユニット3Aにより検出された音に含まれるノイズ(外来振動に起因したノイズ)を効果的に低減させることができる。
【0037】
本実施形態に係るマイクロホン装置1Aによれば、導入孔52Aを形成する部分以外のケース5Aの形状が仮想平面Pに対して面対称であるため、仮想平面Pに沿ってケース5Aの外面501に振動が加わった場合に、ケース5Aや基板2Aを伝わる振動の分布も仮想平面Pに関して対称性を持ち易くなる。従って、仮想平面Pに沿ってケース5Aの外面501に振動が伝わり易くなるようにケース5Aを他の物体に設置することで、マイクロホンユニット3Aと振動センサ4とに対称な振動が伝わり易くなる。これにより、マイクロホンユニット3Aに伝わる外来振動を振動センサ4においてより精度よく検出できる。
【0038】
本実施形態に係るマイクロホン装置1Aによれば、ケーブル6とケース5Aとの固定部分(ケーブル固定部53)において、ケーブル6の中心線Lが仮想平面Pに沿っているため、ケーブル6から伝わる外来振動が仮想平面Pに沿ってケース5Aに伝わり易くなり、マイクロホンユニット3Aに伝わる外来振動を振動センサ4において精度よく検出できる。
【0039】
本実施形態に係るマイクロホン装置1Aによれば、円形の平面形状を持つ基板2Aの中心にマイクロホンユニット3Aと振動センサ4が配置されるため、基板2Aの外縁から伝わる振動がマイクロホンユニット3Aと振動センサ4とに対称に伝わり易くなる。
【0040】
(第1の実施形態の変形例)
ここで、第1の実施形態に係るマイクロホン装置の一変形例について、
図4A~
図4Eを参照して説明する。
図4A~
図4Eに示すマイクロホン装置1Bは、
図1A~
図1Eに示すマイクロホン装置1Aにおける基板2A及びケース5Aの形状を変更したものである。
図4A~
図4Eは、それぞれ、
図1A~
図1Eと同等の図面を示す。
図1A~
図1Eと
図4A~
図4Eとにおける同一の符号は、概ね同一の構成要素を示す。以下では、同一の構成要素についての説明を適宜省略し、両者の相違点を中心に説明する。
【0041】
この変形例のマイクロホン装置1Bにおけるケース5Bは、
図4A及び
図4Bに示すように、全体的な形状が略直方体である。ケース5Bは、X-Z平面に対して平行な外面504及び506と、Y-Z平面に対して平行な外面505と、X-Y平面(仮想平面P)に対して平行な外面507及び508を有する。仮想平面Pは、外面504、505及び506のZ方向の中心を通る。ケース5BのX1側には、
図4B及び
図4Cに示すように、X1方向へ円錐台状に盛り上がったケーブル固定部54が設けられている。ケーブル固定部54の頂部には、X2方向に向かってケーブル6の端部が埋め込まれている。ケーブル6とケース5Bとの固定部分(ケーブル固定部54)では、ケーブル6の中心線Lが仮想平面Pに沿っている。ケース5Bは、
図4B及び
図4Cに示すように、外部の音をマイクロホンユニット3Aの音孔31Aへ導く導入孔52Bを有する。導入孔52Bは、
図4Cに示すように、マイクロホンユニット3Aの音孔31Aに向かって仮想平面Pに垂直な方向に伸びている。導入孔52Bの一端は、長方形の外面507の略中心に開口している。ケース5Bは、
図4Cに示すように、導入孔52Bを避けて中実に形成されている。
【0042】
また、変形例のマイクロホン装置1Bにおける基板2Bは、
図4D及び
図4Eに示すように、略長方形の平面形状を持つ。マイクロホンユニット3A及び振動センサ4は、基板2Bの長方形の中心にそれぞれ配置される。仮想平面Pは、
図4Eに示すように、基板2Bの2つの面(21、22)とそれぞれ平行であり、かつ、この2つの面(21、22)に対する距離が等しい。
【0043】
上述した構成を有する変形例のマイクロホン装置1Bにおいても、基板2Aの平面視において、マイクロホンユニット3Aと振動センサ4とが互いに重なる位置に配置されているため、マイクロホンユニット3Aに伝わる外来振動を振動センサ4において精度よく検出できる。
【0044】
また、変形例のマイクロホン装置1Bにおいても、導入孔52Bを形成する部分以外のケース5Bの形状が仮想平面Pに対して面対称であるため、仮想平面Pに沿ってケース5Aの外面501に振動が加わった場合に、ケース5Aや基板2Aを伝わる振動の分布も仮想平面Pに関して対称性を持ち易くなる。従って、既に説明した
図1A~
図1Eに示すマイクロホン装置1Aと同様に、マイクロホンユニット3Aに伝わる外来振動を振動センサ4において精度よく検出できる。
【0045】
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態に係るマイクロホン装置1Cについて、
図5A~
図5Eを参照して説明する。
図5A~
図5Eに示すマイクロホン装置1Cは、
図1A~
図1Eに示すマイクロホン装置1Aにおけるケース5Aをケース5Cに置き換えたものである。
図1A~
図1Eと
図5A~
図5Eとにおける同一の符号は、概ね同一の構成要素を示す。以下では、同一の構成要素についての説明を適宜省略し、両者の相違点を中心に説明する。
【0046】
図5Aは、マイクロホン装置1CをX2側から見た側面図である。
図5Bは、マイクロホン装置1CをZ1側から見た平面図である。
図5Cは、マイクロホン装置1CをY方向の中央で切断した断面図である。
図5Dは、
図5Cに示す断面図において、ケース5Cの一部を取り外した状態を示す図である。
図5Eは、
図5Dに示す状態においてマイクロホン装置1CをZ1側から見た平面図である。
【0047】
図5A及び
図5Bに示すように、マイクロホン装置1Cのケース5Cは、既に説明したマイクロホン装置1Aのケース5Aと同じ外形を有する一方、内部の構造に関してケース5Aと異なる。すなわち、ケース5Aが中実に形成されているのに対して(
図1C)、ケース5Cの内部には基板2Aを収容する内部空間55が形成されている(
図5C)。また、ケース5Cは、内部空間55に基板2Aを収容できるようにするため、仮想平面Pを境界として2つのブロック(第1ケース部50C、第2ケース部51C)に分かれている。仮想平面Pに対してZ1側に位置する第1ケース部50Cは、内部空間55に面した内壁510において、マイクロホンユニット3Aの音孔31Aに向かって突出した凸部58を有する。導入孔52Cは、外面502から凸部58を貫通し、マイクロホンユニット3Aの音孔31Aに向かってZ方向に伸びている。第1ケース部50Cと第2ケース部51Cとは、導入孔52Cを形成する部分(凸部58を含む)以外の形状が、仮想平面Pに関して面対称である。
【0048】
このケース5Cに収容された基板2Aは、内部空間55を形成するケース5Cの内壁510に外縁が固定されている。
図5C及び
図5Dの例では、第1ケース部50C及び第2ケース部51Cの互いに当接する端面に、基板2Aの外縁と嵌合する段差521がそれぞれ形成されている。この段差521に基板2Aの外縁を嵌合させた状態で、第1ケース部50C及び第2ケース部51Cの端面同士を突き合せることにより、これらの端面の間に基板2Aの外縁が全周に渡って挟み込まれた状態となる。第1ケース部50Cと第2ケース部51Cとは、例えば超音波溶着などによって互いに固定される。
【0049】
なお、基板2Aの外縁と段差521との間には、弾性を有した緩衝部材を介挿させてもよい。これにより、ケース5Cから基板2Aに伝わる振動を低減させることができるとともに、2つのケース部(50C、51C)に挟み込まれた基板2Aのガダツキを抑えることができる。
【0050】
図6A~
図6Bは、第2の実施形態に係るマイクロホン装置1Aにおける要部の構造を図解した拡大断面図であり、マイクロホンユニット3Aの近傍における仮想平面Pに垂直な断面を示す。
図6Aの例において、凸部58の端面581とマイクロホンユニット3Aの上面33Aとが密着している。他方、
図6Bの例において、凸部58の端面581とマイクロホンユニット3Aの上面33Aとの間には微小な隙間が形成され、その隙間に緩衝部材7が挿入されている。緩衝部材7は、導入孔52Cの一部を形成している。
【0051】
以上説明したように、第2の実施形態に係るマイクロホン装置1Cによれば、ケース5Cの内壁510に基板2Aの外縁が固定されることによって、ケース5Cからの振動が基板2Aに沿って伝わり易くなり、基板2Aを挟んで近接した位置に配置されるマイクロホンユニット3Aと振動センサ4とには、対称な振動が伝わり易くなる。これにより、マイクロホンユニット3Aに伝わる外来振動を振動センサ4において精度よく検出できる。
【0052】
第2の実施形態に係るマイクロホン装置1Cによれば、
図6Bに示すように、凸部58の端面581とマイクロホンユニット3Aの上面33Aとの間に緩衝部材7が挿入され、この緩衝部材7によって導入孔52Cの一部が形成されることによって、凸部58とマイクロホンユニット3Aとの隙間から音波が漏れ難くなる。そのため、マイクロホンユニット3Aの検出感度の低下を抑制できる。また、凸部58からマイクロホンユニット3Aへ伝わる振動が抑制され易くなるため、マイクロホンユニット3Aに伝わる外来振動と振動センサ4において検出される振動との誤差の増大を抑制できる。
【0053】
その他、第2の実施形態に係るマイクロホン装置1Cによれば、第1の実施形態に係るマイクロホン装置1Aと同様の構成によって同様の効果を奏することができる。
【0054】
(第2の実施形態の第1変形例)
ここで、第2の実施形態に係るマイクロホン装置の第1変形例について、
図7A~
図7Eを参照して説明する。
図7A~
図7Eに示すマイクロホン装置1Dは、
図4A~
図4Eに示すマイクロホン装置1Bにおけるケース5Bをケース5Dに置き換えたものである。
図7A~
図7Eは、それぞれ、
図5A~
図5Eと同等の図面を示す。
図4A~
図4Eと
図7A~
図7Eとにおける同一の符号は、概ね同一の構成要素を示す。以下では、同一の構成要素についての説明を適宜省略し、両者の相違点を中心に説明する。
【0055】
図7A及び
図7Bに示すように、マイクロホン装置1Dのケース5Dは、既に説明したマイクロホン装置1Bのケース5B(
図4A、
図4B)と同じ外形を有する一方、内部の構造に関してケース5Bと異なる。すなわち、ケース5Bが中実に形成されているのに対して(
図4C)、ケース5Dの内部には基板2Aを収容する内部空間56が形成されている(
図7C)。また、ケース5Dは、内部空間56に基板2Aを収容できるようにするため、仮想平面Pを境界として2つのブロック(第1ケース部50D、第2ケース部51D)に分かれている。仮想平面Pに対してZ1側に位置する第1ケース部50Dは、内部空間56に面した内壁511において、マイクロホンユニット3Aの音孔31Aに向かって突出した凸部59を有する。導入孔52Dは、外面507から凸部59を貫通し、マイクロホンユニット3Aの音孔31Aに向かってZ方向に伸びている。第1ケース部50Dと第2ケース部51Dとは、導入孔52Dを形成する部分(凸部59を含む)以外の形状が、仮想平面Pに関して面対称である。
【0056】
このケース5Dに収容された基板2Bは、内部空間55を形成するケース5Dの内壁511に外縁の一部が固定されている。すなわち
図7C~
図7Eに示すように、基板2Bは、長方形の平面形状における2つの短辺に対応した基板2Bの2つの外縁部分201において、ケース5Dの内壁511に固定されている。
図7C及び
図7Dの例では、第1ケース部50D及び第2ケース部51Dの互いに当接する端面に、基板2Bの2つの外縁部201と嵌合する段差521がそれぞれ形成されている。この段差521に基板2Bの2つの外縁部201を嵌合させた状態で、第1ケース部50D及び第2ケース部51Dの端面同士を突き合せることにより、これらの端面の間に基板2Bの2つの外縁部201が挟み込まれて固定された状態となる。
【0057】
上述した構成を有する第1変形例のマイクロホン装置1Dでは、基板2Bの長方形の平面形状における2つの短辺に対応した2つの外縁部201が、ケース5Dの内壁511に固定されることから、基板2Bの2つの外縁部201から伝わる振動によって、基板2Bにたわみが生じ易くなる。その結果、マイクロホンユニット3A及び振動センサ4が配置された基板2Bの中央の位置においてZ方向への振動が強調され易くなり、Z方向に基板2Bを挟んで配置されたマイクロホンユニット3A及び振動センサ4には、Z方向において近似した振動が伝わり易くなる。これにより、マイクロホンユニット3Aに伝わる外来振動を振動センサ4において精度よく検出できる。
【0058】
(第2の実施形態の第2変形例)
次に、第2の実施形態に係るマイクロホン装置の第2変形例について、
図8A~
図8Bを参照して説明する。この第2変形例のマイクロホン装置は、既に説明した
図5A~
図5Eに示すマイクロホン装置1Cにおける基板2Aを、
図8Aに示す基板2Cに置き換えたものである。
図8Aは、基板2CをZ1側から見た平面図である。
図8Bは、ケース5Cの第1ケース部50Cを取り外した状態で、第2変形例のマイクロホン装置をZ1側から見た平面図である。これらの図に示すように、基板2Cは、マイクロホンユニット3A及び振動センサ4を囲む複数の位置に切り欠き孔26が形成されている。
図8Aの例では、概ね合同な4つの円弧状の切り欠き孔26が、マイクロホンユニット3A及び振動センサ4を中心とする円周に沿って等間隔に形成されている。
【0059】
上述した構成を有する第2変形例のマイクロホン装置では、マイクロホンユニット3A及び振動センサ4を囲んだ基板2C上の複数の位置に切り欠き孔26が形成されているため、基板2Cの外縁から伝わる振動によって、基板2Cの切り欠き孔26で囲まれた範囲にたわみが生じ易くなる。その結果、マイクロホンユニット3A及び振動センサ4が配置された基板2Cの中央の位置においてZ方向への振動が強調され易くなり、Z方向に基板2Cを挟んで配置されたマイクロホンユニット3A及び振動センサ4には、Z方向において近似した振動が伝わり易くなる。これにより、マイクロホンユニット3Aに伝わる外来振動を振動センサ4において精度よく検出できる。
【0060】
(第2の実施形態の第3変形例)
次に、第2の実施形態に係るマイクロホン装置の第3変形例について、
図9A~
図9Bを参照して説明する。この第3変形例のマイクロホン装置は、既に説明した
図7A~
図7Eに示すマイクロホン装置1Dにおける基板2Bを、
図9Aに示す基板2Dに置き換えたものである。
図9Aは、基板2DをZ1側から見た平面図である。
図9Bは、ケース5Dの第1ケース部50Dを取り外した状態で、第3変形例のマイクロホン装置をZ1側から見た平面図である。これらの図に示すように、基板2Dの形状は、四隅に切り欠き27が施された長方形である。切り欠き27が施された長方形の短辺に対応する基板2Dの外縁部202は、切り欠き27がない基板2B(
図7C)の外縁部201に比べて、Y方向の幅が更に短くなっている。基板2Dは、長手方向に離れた2つの外縁部202において、ケース5Dの内壁511に固定される。
【0061】
上述した構成を有する第3変形例のマイクロホン装置では、四隅の切り欠き27によってY方向の長さが狭くなった2つの外縁部202がケース5Dの内壁511に固定されるため、このような四隅の切り欠きがない場合(
図7C)に比べて、基板2Dには更にたわみが生じ易くなる。その結果、マイクロホンユニット3A及び振動センサ4が配置された基板2Dの中央の位置においてZ方向への振動が強調され易くなり、Z方向に基板2Bを挟んで配置されたマイクロホンユニット3A及び振動センサ4には、Z方向において近似した振動が伝わり易くなる。これにより、マイクロホンユニット3Aに伝わる外来振動を振動センサ4において精度よく検出できる。
【0062】
<第3の実施形態>
次に、第3の実施形態に係るマイクロホン装置1Eについて、
図10A~
図10Dを参照して説明する。
図10A~
図10Dに示すマイクロホン装置1Eは、
図4A~
図4Eに示すマイクロホン装置1Bにおける導入孔52Bの延伸方向を変更したものである。
図4A~
図4Eと
図10A~
図10Dとにおける同一の符号は、概ね同一の構成要素を示す。以下では、同一の構成要素についての説明を適宜省略し、両者の相違点を中心に説明する。尚、第3の実施形態のマイクロホンユニットは音孔が底面に存在するタイプである。
【0063】
図10Aは、マイクロホン装置1EをX2側から見た側面図である。
図10Bは、マイクロホン装置1EをZ1側から見た平面図である。
図10Cは、マイクロホン装置1EをY方向の中央で切断した断面図である。
図10Dは、マイクロホン装置1Eに含まれる基板2Eの平面図である。
【0064】
図10A及び
図10Bに示すように、マイクロホン装置1Eのケース5Eの外形は、既に説明したマイクロホン装置1Bのケース5B(
図4A、
図4B)の外形と概ね同じである。一方、ケース5Eの内部における導入孔52Eの延伸方向は、マイクロホン装置1Bのケース5Bと異なっている。すなわち、マイクロホン装置1Bのケース5Bでは、仮想平面Pに対して垂直な方向に導入孔52Bが伸びているのに対して、マイクロホン装置1Eのケース5Eでは、仮想平面Pに沿ってX方向に導入孔52Eが伸びている。導入孔52Eは、仮想平面Pに垂直な外面505の開口部530において開口する。
【0065】
図10Dに示すマイクロホン装置1Eの基板2E(
図10D)は、既に説明したマイクロホン装置1Bの基板2B(
図4D)に溝25を設けたものである。この溝25は、基板2Bにおいて、マイクロホンユニット3Bの音孔31Bに面した位置に形成される。マイクロホンユニット3Bは、基板2Eに面した底面に音孔31Bを持つ。溝25は、基板2Eの両面を貫通してもよいし、マイクロホンユニット3Bが固定される一方の面21に設けられた凹条でもよい。
図10Dの例において、溝25は、マイクロホンユニット3Bが配置される基板2Eの中央部からX2方向へ伸びた導入孔52Eを形成する。
【0066】
第3の実施形態に係るマイクロホン装置1Eによれば、導入孔52Eが仮想平面Pに沿って伸びているため、ケース5Eの全体の形状が仮想平面Pに関して概ね面対称になる。これにより、マイクロホンユニット3B及び振動センサ4には、より対称な振動が伝わり易くなり、マイクロホンユニット3Aに伝わる外来振動を振動センサ4において精度よく検出できる。
【0067】
その他、第3の実施形態に係るマイクロホン装置1Eによれば、上述した各実施形態に係るマイクロホン装置と同様の構成によって、これらと同様の効果を奏することができる。
【0068】
以上、本発明の幾つかの実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、種々のバリエーションを含んでいる。
【0069】
例えば、上述した各実施形態におけるケースの形状や基板の形状、マイクロホンユニット及び振動センサの配置などは一例であり、本発明はこれらの例に限定されない。
【0070】
マイクロホンユニットの構成は任意であり、上述したようなダイヤフラム式のMEMSデバイスに限定されず、種々の方式の音響-電気変換器を用いてもよい。
【0071】
また、上述した各実施形態では、チップ部品としてのマイクロホンユニット及び振動センサをプリント基板に実装する例を挙げたが、本発明はこの例に限定されない。本発明の他の実施形態では、マイクロホンユニット及び振動センサをそれぞれMEMSデバイスとして構成し、同じパッケージの内部にこれらを配置させてもよい。この場合、絶縁性の基板を間に挟んでマイクロホンユニット及び振動センサを近接した位置に配置させることにより、マイクロホンユニットに伝わる外来振動を振動センサにおいて精度よく検出できる。
【符号の説明】
【0072】
1A~1F…マイクロホン装置、11~12…アンプ、13…信号処理部、2A~2E…基板、21~22…面、23…ランド、25…溝、26…切り欠き孔、27…切り欠き、201~202…外縁部、3A~3B…マイクロホンユニット、31A~31B…音孔、32A…底面、33A…上面、36A…MEMS部、4…振動センサ、5A~5E…ケース、52A~52E…導入孔、501~508…外面、55~56…内部空間、510~511…内壁、58~59…凸部、521…段差、6…ケーブル、7…緩衝部材、P…仮想平面、L…中心線