(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-07
(45)【発行日】2022-09-15
(54)【発明の名称】糸巻取装置
(51)【国際特許分類】
B65H 54/52 20060101AFI20220908BHJP
【FI】
B65H54/52 Z
B65H54/52 D
(21)【出願番号】P 2018206453
(22)【出願日】2018-11-01
【審査請求日】2021-07-01
(31)【優先権主張番号】P 2017244819
(32)【優先日】2017-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502455511
【氏名又は名称】TMTマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】小島 匠吾
(72)【発明者】
【氏名】橋本 欣三
(72)【発明者】
【氏名】米倉 踏青
【審査官】前原 義明
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-074357(JP,U)
【文献】実開昭58-079898(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 54/00 - 54/553
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボビンに糸を巻き取ってパッケージを形成する糸巻取装置であって、
前記パッケージの外周面に接触しながら回転する円筒状の回転体を備え、
前記回転体から静電気を除去するための静電気除去部が、前記回転体に非接触の状態で前記回転体の内側に設けられ
、
前記回転体の内側に一部が挿入され、軸受を介して前記回転体を回転可能に支持する支持部材をさらに備え、
前記支持部材のうち前記回転体の内側に挿入された部分に、前記静電気除去部が設けられ、
前記静電気除去部は、前記支持部材のうち前記回転体の内側に挿入された部分の外周面よりも径方向外側に突出する突出部を有することを特徴とする糸巻取装置。
【請求項2】
前記静電気除去部は、前記回転体の軸方向から見て円環形状を有しており、
前記静電気除去部の外周に、前記突出部として、前記軸方向から見て径方向外側に三角形状に突出する三角部が少なくとも1つ形成されていることを特徴とする請求項
1に記載の糸巻取装置。
【請求項3】
前記三角部が、前記静電気除去部の外周の全周にわたって複数形成されていることを特徴とする請求項
2に記載の糸巻取装置。
【請求項4】
前記静電気除去部は、前記回転体の軸方向から見て円弧形状を有しており、
前記静電気除去部の外周に、前記突出部として、前記軸方向から見て径方向外側に三角形状に突出する三角部が少なくとも1つ形成されていることを特徴とする請求項
1に記載の糸巻取装置。
【請求項5】
前記静電気除去部は、前記支持部材の挿入方向側の端面に設けられていることを特徴とする請求項
2~4の何れか1項に記載の糸巻取装置。
【請求項6】
前記静電気除去部は、前記回転体の軸方向から見て円環形状を有しており、
前記静電気除去部の外周の少なくとも一部に、前記突出部として、周方向に直交する断面において径方向外側に三角形状に突出するテーパー部が形成されていることを特徴とする請求項
1に記載の糸巻取装置。
【請求項7】
前記テーパー部が、前記静電気除去部の外周の全周にわたって形成されていることを特徴とする請求項
6に記載の糸巻取装置。
【請求項8】
前記静電気除去部は、前記支持部材の挿入方向側の端面に設けられていることを特徴とする請求項
6又は7に記載の糸巻取装置。
【請求項9】
前記静電気除去部は、前記軸方向において前記テーパー部と前記支持部材の前記端面との間に、前記端面よりも外径が小さな小径部を有することを特徴とする請求項
8に記載の糸巻取装置。
【請求項10】
ボビンに糸を巻き取ってパッケージを形成する糸巻取装置であって、
前記パッケージの外周面に接触しながら回転する円筒状の回転体を備え、
前記回転体から静電気を除去するための静電気除去部が、前記回転体に非接触の状態で前記回転体の内側に設けられ、
前記回転体の内側に一部が挿入され、軸受を介して前記回転体を回転可能に支持する支持部材をさらに備え、
前記支持部材のうち前記回転体の内側に挿入された部分に、前記静電気除去部が設けられ、
前記静電気除去部は、前記支持部材とは別の部材として構成され、
前記静電気除去部は、複数の導電性繊維が表面に露出している除電紐であることを特徴とする糸巻取装置。
【請求項11】
前記除電紐は、前記支持部材の周方向の少なくとも一部に設けられていることを特徴とする請求項
10に記載の糸巻取装置。
【請求項12】
前記除電紐は、前記支持部材の周方向の全周にわたって設けられていることを特徴とする請求項
11に記載の糸巻取装置。
【請求項13】
前記除電紐を取り付けるための取付部材をさらに備え、
前記取付部材は、前記回転体の軸方向から見て円環状の部材で、前記支持部材の挿入方向側の端面に取り付けられており、
前記取付部材は、
大径部と、
前記軸方向において前記大径部と前記支持部材の前記端面との間に位置し、前記大径部及び前記端面よりも外径が小さな小径部と、
を有し、
前記除電紐は、前記小径部の外周面に取り付けられることを特徴とする請求項
10~12の何れか1項に記載の糸巻取装置。
【請求項14】
ボビンに糸を巻き取ってパッケージを形成する糸巻取装置であって、
前記パッケージの外周面に接触しながら回転する円筒状の回転体を備え、
前記回転体から静電気を除去するための静電気除去部が、前記回転体に非接触の状態で前記回転体の内側に設けられ、
前記回転体の内側に一部が挿入され、軸受を介して前記回転体を回転可能に支持する支持部材をさらに備え、
前記支持部材のうち前記回転体の内側に挿入された部分に、前記静電気除去部が設けられ、
前記支持部材と前記軸受との間に、ゴム製のリング部材が設けられることを特徴とする糸巻取装置。
【請求項15】
ボビンに糸を巻き取ってパッケージを形成する糸巻取装置であって、
前記パッケージの外周面に接触しながら回転する円筒状の回転体を備え、
前記回転体から静電気を除去するための静電気除去部が、前記回転体に非接触の状態で前記回転体の内側に設けられ、
前記回転体の内側に一部が挿入され、軸受を介して前記回転体を回転可能に支持する支持部材をさらに備え、
前記支持部材のうち前記回転体の内側に挿入された部分に、前記静電気除去部が設けられ、
前記軸受は、セラミック製のボールを有するボールベアリングであることを特徴とする糸巻取装置。
【請求項16】
ボビンに糸を巻き取ってパッケージを形成する糸巻取装置であって、
前記パッケージの外周面に接触しながら回転する円筒状の回転体を備え、
前記回転体から静電気を除去するための静電気除去部が、前記回転体に非接触の状態で前記回転体の内側に設けられ、
前記回転体の外周面の近傍に配置される導電性部材をさらに備え、
前記静電気除去部と前記回転体の内周面との間の距離が、前記導電性部材と前記回転体の外周面との間の距離よりも短いことを特徴とする糸巻取装置。
【請求項17】
ボビンに糸を巻き取ってパッケージを形成する糸巻取装置であって、
前記パッケージの外周面に接触しながら回転する円筒状の回転体を備え、
前記回転体から静電気を除去するための静電気除去部が、前記回転体に非接触の状態で前記回転体の内側に設けられ、
前記ボビンを支持するボビンホルダの軸方向に複数の前記ボビンが設けられており、
前記回転体は、前記複数のボビンに前記糸が巻き取られて形成される複数の前記パッケージに接触することを特徴とする糸巻取装置。
【請求項18】
前記回転体の内側に一部が挿入され、軸受を介して前記回転体を回転可能に支持する支持部材をさらに備え、
前記支持部材のうち前記回転体の内側に挿入された部分に、前記静電気除去部が設けられ、
前記静電気除去部は、前記支持部材のうち前記回転体の内側に挿入された部分の外周面よりも径方向外側に突出する突出部を有することを特徴とする請求項17に記載の糸巻取装置。
【請求項19】
前記回転体の内側に一部が挿入され、軸受を介して前記回転体を回転可能に支持する支持部材をさらに備え、
前記支持部材のうち前記回転体の内側に挿入された部分に、前記静電気除去部が設けられ、
前記静電気除去部は、前記支持部材とは別の部材として構成され、
前記静電気除去部は、複数の導電性繊維が表面に露出している除電紐であることを特徴とする請求項17に記載の糸巻取装置。
【請求項20】
前記回転体の内側に一部が挿入され、軸受を介して前記回転体を回転可能に支持する支持部材をさらに備え、
前記支持部材のうち前記回転体の内側に挿入された部分に、前記静電気除去部が設けられ、
前記支持部材と前記軸受との間に、ゴム製のリング部材が設けられることを特徴とする請求項17に記載の糸巻取装置。
【請求項21】
前記回転体の内側に一部が挿入され、軸受を介して前記回転体を回転可能に支持する支持部材をさらに備え、
前記支持部材のうち前記回転体の内側に挿入された部分に、前記静電気除去部が設けられ、
前記軸受は、セラミック製のボールを有するボールベアリングであることを特徴とする請求項17に記載の糸巻取装置。
【請求項22】
前記回転体の外周面の近傍に配置される導電性部材をさらに備え、
前記静電気除去部と前記回転体の内周面との間の距離が、前記導電性部材と前記回転体の外周面との間の距離よりも短いことを特徴とする請求項
17に記載の糸巻取装置。
【請求項23】
ボビンに糸を巻き取ってパッケージを形成する糸巻取装置であって、
前記パッケージの外周面に接触しながら回転する円筒状の回転体を備え、
前記回転体から静電気を除去するための静電気除去部が、前記回転体に非接触の状態で前記回転体の内側に設けられ、
前記回転体は、前記パッケージの回転とともに回転し、前記パッケージに接圧を付与するコンタクトローラであることを特徴とする糸巻取装置。
【請求項24】
前記回転体の内側に一部が挿入され、軸受を介して前記回転体を回転可能に支持する支持部材をさらに備え、
前記支持部材のうち前記回転体の内側に挿入された部分に、前記静電気除去部が設けられていることを特徴とする請求項
23に記載の糸巻取装置。
【請求項25】
前記静電気除去部は、前記支持部材とは別の部材として構成されていることを特徴とする請求項
24に記載の糸巻取装置。
【請求項26】
前記静電気除去部は、前記支持部材に一体的に構成されていることを特徴とする請求項
24に記載の糸巻取装置。
【請求項27】
前記静電気除去部は、前記支持部材のうち前記回転体の内側に挿入された部分の外周面よりも径方向外側に突出する突出部を有することを特徴とする請求項
24~26の何れか1項に記載の糸巻取装置。
【請求項28】
前記静電気除去部は、前記回転体の軸方向から見て円環形状を有しており、
前記静電気除去部の外周に、前記突出部として、前記軸方向から見て径方向外側に三角形状に突出する三角部が少なくとも1つ形成されていることを特徴とする請求項
27に記載の糸巻取装置。
【請求項29】
前記三角部が、前記静電気除去部の外周の全周にわたって複数形成されていることを特徴とする請求項
28に記載の糸巻取装置。
【請求項30】
前記静電気除去部は、前記回転体の軸方向から見て円弧形状を有しており、
前記静電気除去部の外周に、前記突出部として、前記軸方向から見て径方向外側に三角形状に突出する三角部が少なくとも1つ形成されていることを特徴とする請求項
27に記載の糸巻取装置。
【請求項31】
前記静電気除去部は、前記支持部材の挿入方向側の端面に設けられていることを特徴とする請求項
28~30の何れか1項に記載の糸巻取装置。
【請求項32】
前記静電気除去部は、前記回転体の軸方向から見て円環形状を有しており、
前記静電気除去部の外周の少なくとも一部に、前記突出部として、周方向に直交する断面において径方向外側に三角形状に突出するテーパー部が形成されていることを特徴とする請求項
27に記載の糸巻取装置。
【請求項33】
前記テーパー部が、前記静電気除去部の外周の全周にわたって形成されていることを特徴とする請求項
32に記載の糸巻取装置。
【請求項34】
前記静電気除去部は、前記支持部材の挿入方向側の端面に設けられていることを特徴とする請求項
32又は33に記載の糸巻取装置。
【請求項35】
前記静電気除去部は、前記軸方向において前記テーパー部と前記支持部材の前記端面との間に、前記端面よりも外径が小さな小径部を有することを特徴とする請求項
34に記載の糸巻取装置。
【請求項36】
前記静電気除去部は、前記支持部材の挿入方向側の端面よりも軸方向内側に突出する突出部を有することを特徴とする請求項
24~26の何れか1項に記載の糸巻取装置。
【請求項37】
前記静電気除去部は、複数の導電性繊維が表面に露出している除電紐であることを特徴とする請求項
25に記載の糸巻取装置。
【請求項38】
前記除電紐は、前記支持部材の周方向の少なくとも一部に設けられていることを特徴とする請求項
37に記載の糸巻取装置。
【請求項39】
前記除電紐は、前記支持部材の周方向の全周にわたって設けられていることを特徴とする請求項
38に記載の糸巻取装置。
【請求項40】
前記除電紐を取り付けるための取付部材をさらに備え、
前記取付部材は、前記回転体の軸方向から見て円環状の部材で、前記支持部材の挿入方向側の端面に取り付けられており、
前記取付部材は、
大径部と、
前記軸方向において前記大径部と前記支持部材の前記端面との間に位置し、前記大径部及び前記端面よりも外径が小さな小径部と、
を有し、
前記除電紐は、前記小径部の外周面に取り付けられることを特徴とする請求項
37~39の何れか1項に記載の糸巻取装置。
【請求項41】
前記支持部材が挿入される挿入孔が形成された取付部をさらに備え、
前記支持部材は、前記挿入孔よりも径の大きなフランジ部を有しており、前記フランジ部が前記取付部を挟んで前記回転体の反対側に位置するように前記挿入孔に挿入された状態で、前記フランジ部が前記取付部に固定されることを特徴とする請求項
24~40の何れか1項に記載の糸巻取装置。
【請求項42】
前記支持部材と前記軸受との間に、ゴム製のリング部材が設けられることを特徴とする請求項
24~41の何れか1項に記載の糸巻取装置。
【請求項43】
前記軸受は、セラミック製のボールを有するボールベアリングであることを特徴とする請求項
24~42の何れか1項に記載の糸巻取装置。
【請求項44】
前記回転体の外周面の近傍に配置される導電性部材をさらに備え、
前記静電気除去部と前記回転体の内周面との間の距離が、前記導電性部材と前記回転体の外周面との間の距離よりも短いことを特徴とする請求項
23~43の何れか1項に記載の糸巻取装置。
【請求項45】
前記ボビンを支持するボビンホルダの軸方向に複数の前記ボビンが設けられており、
前記回転体は、前記複数のボビンに前記糸が巻き取られて形成される複数の前記パッケージに接触することを特徴とする請求項
23~44の何れか1項に記載の糸巻取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボビンに糸を巻き取ってパッケージを形成する糸巻取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に開示されている紡糸引取装置に設けられた糸巻取装置では、ボビンホルダに装着されたボビンに糸が巻き取られてパッケージが形成される。この糸巻取装置には、パッケージの形状を整えるために、パッケージの外周面に接触しながら回転し、パッケージに所定の接圧を付与する金属製のコンタクトローラが設けられている。
【0003】
このような紡糸引取装置では、高速で走行する糸がガイド等と接触することによって、糸が静電気を帯び、パッケージに静電気が溜まる。パッケージの芯すなわちボビンは通常紙管であるため、パッケージ中の静電気はボビンホルダには移動せず、もっぱらコンタクトローラに移動する。その結果、コンタクトローラには多量の静電気が蓄積され、コンタクトローラの近傍に配置されている部材に向かって放電が発生することがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のような放電を防止するため、静電気除去部をコンタクトローラの表面近傍に配置し、コンタクトローラに溜まった静電気を静電気除去部に放電させることが考えられる。しかしながら、糸巻取装置が設置される空間には風綿やオイルミスト等が飛散しており、これらが静電気除去部に付着することで、除電性能が低下するという問題があった。さらに、コンタクトローラから静電気除去部に放電が生じると、コンタクトローラの表面に傷が生じることがあり、そうすると糸の品質低下や断糸が発生するおそれがあった。また、放電が外部から見えやすく、オペレータに不必要に不安感を与えるおそれがあった。
【0006】
本発明は、以上の課題に鑑みてなされたものであり、パッケージの外周面に接触しながら回転する回転体を有する糸巻取装置において、静電気除去部を回転体の表面近傍に配置した場合に生じる問題を解消することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ボビンに糸を巻き取ってパッケージを形成する糸巻取装置であって、前記パッケージの外周面に接触しながら回転する円筒状の回転体を備え、前記回転体から静電気を除去するための静電気除去部が、前記回転体に非接触の状態で前記回転体の内側に設けられていることを特徴とする。
【0008】
本発明では、円筒状の回転体の内側に静電気除去部が設けられているため、静電気除去部が回転体によって覆われており、風綿やオイルミスト等が静電気除去部に付着することを抑制でき、除電性能を長期間にわたって良好に維持できる。また、回転体から静電気除去部への放電により回転体に傷が生じるとしても、傷がつくのは回転体の内周面となるため、回転体の外周面に接触する糸には何ら悪影響を及ぼすことがない。さらに、静電気除去部が回転体によって覆われていることで、外部から放電が見えにくくなり、オペレータに不必要な不安感を与えることがない。このように、本発明によれば、静電気除去部を回転体の表面近傍に配置した場合に生じる問題を解消することができる。
【0009】
本発明において、前記回転体の内側に一部が挿入され、軸受を介して前記回転体を回転可能に支持する支持部材をさらに備え、前記支持部材のうち前記回転体の内側に挿入された部分に、前記静電気除去部が設けられているとよい。
【0010】
回転体を回転可能に支持する支持部材は従来より存在するので、支持部材に静電気除去部を設けるようにすれば、静電気除去部を設けるための大掛かりな変更が不要となる。
【0011】
本発明において、前記静電気除去部は、前記支持部材とは別の部材として構成されているとよい。
【0012】
静電気除去部は、使用しているうちに電食で変形等することで、除電性能が低下することがある。このような場合でも、静電気除去部を独立した部材としておけば、この部材を交換するだけで、除電性能を容易に回復させることができる。
【0013】
本発明において、前記静電気除去部は、前記支持部材に一体的に構成されているとよい。
【0014】
こうすれば、静電気除去部を支持部材に組み付ける必要がないため、静電気除去部の組み付け精度によって回転体と静電気除去部との間の距離が変わるということがない。したがって、所望の除電性能を実現しやすくなる。
【0015】
本発明において、前記静電気除去部は、前記支持部材のうち前記回転体の内側に挿入された部分の外周面よりも径方向外側に突出する突出部を有するとよい。
【0016】
この場合、回転体の内周面から突出部への放電を促進するため、回転体の内周面と突出部の先端との間の距離が重要となり、静電気除去部を径方向において精度よく位置決めする必要がある。この点、回転体の軸心を出すために、回転体と支持部材との径方向における位置決めは精度よく行われるのが普通である。したがって、支持部材に設けられる静電気除去部の径方向の位置決めも自ずと精度よく行われ、所望の除電性能を実現しやすくなる。
【0017】
本発明において、前記静電気除去部は、前記回転体の軸方向から見て円環形状を有しており、前記静電気除去部の外周に、前記突出部として、前記軸方向から見て径方向外側に三角形状に突出する三角部が少なくとも1つ形成されているとよい。
【0018】
このように、突出部が三角形状の三角部であれば、先端が尖った形状となる。したがって、回転体から三角部への放電を促進させることができ、除電性能を向上させることができる。
【0019】
本発明において、前記三角部が、前記静電気除去部の外周の全周にわたって複数形成されているとよい。
【0020】
こうすれば、回転体から静電気除去部への放電を、多数の三角部に分散させることができる。したがって、放電が特定の箇所に集中せず、静電気除去部の寿命を延ばすことができる。
【0021】
本発明において、前記静電気除去部は、前記回転体の軸方向から見て円弧形状を有しており、前記静電気除去部の外周に、前記突出部として、前記軸方向から見て径方向外側に三角形状に突出する三角部が少なくとも1つ形成されているとよい。
【0022】
このように、突出部が三角形状の三角部であれば、先端が尖った形状となる。したがって、回転体から三角部への放電を促進させることができ、除電性能を向上させることができる。また、静電気除去部が円弧形状であれば、周方向における静電気除去部の位置を調整することで、外部から放電をより見えにくくすることができる。
【0023】
本発明において、前記静電気除去部は、前記支持部材の挿入方向側の端面に設けられているとよい。
【0024】
静電気除去部を支持部材の外周面ではなく端面に設けるようにすれば、回転体の内周面と支持部材の外周面との間の隙間が狭い場合でも、静電気除去部を簡単に支持部材に設けることができる。
【0025】
本発明において、前記静電気除去部は、前記回転体の軸方向から見て円環形状を有しており、前記静電気除去部の外周の少なくとも一部に、前記突出部として、周方向に直交する断面において径方向外側に三角形状に突出するテーパー部が形成されているとよい。
【0026】
このように、周方向に連続するテーパー部を突出部とすることで、回転体から前記静電気除去部への放電を周方向において分散させることができる。したがって、放電が特定の箇所に集中せず、前記静電気除去部の寿命を延ばすことができる。
【0027】
本発明において、前記テーパー部が、前記静電気除去部の外周の全周にわたって形成されているとよい。
【0028】
こうすれば、回転体から静電気除去部への放電をより効果的に分散させることができる。したがって、静電気除去部の寿命をさらに延ばすことができる。
【0029】
本発明において、前記静電気除去部は、前記支持部材の挿入方向側の端面に設けられているとよい。
【0030】
静電気除去部を支持部材の外周面ではなく端面に設けるようにすれば、回転体の内周面と支持部材の外周面との間の隙間が狭い場合でも、静電気除去部材を簡単に支持部材に設けることができる。
【0031】
本発明において、前記静電気除去部は、前記軸方向において前記テーパー部と前記支持部材の前記端面との間に、前記端面よりも外径が小さな小径部を有するとよい。
【0032】
このように、テーパー部と支持部材の端面との間に小径部を設けることで、小径部が谷のようになり、テーパー部を突出部として際立たせることができる。したがって、回転体からテーパー部への放電を促進させることができ、除電性能を向上させることができる。
【0033】
本発明において、前記静電気除去部は、前記支持部材の挿入方向側の端面よりも軸方向内側に突出する突出部を有するとよい。
【0034】
回転体は軸心から変位するように振動する。したがって、突出部を軸方向に突出させることで、突出部を径方向に突出させる場合よりも、回転体の振動による回転体と突出部との接触を回避しやすくなる。また、突出部を支持部材の端面から軸方向内側に突出させることで、突出部が支持部材によって隠れ、外部から放電をより見えにくくすることができる。
【0035】
本発明において、前記静電気除去部は、複数の導電性繊維が表面に露出している除電紐であるとよい。
【0036】
静電気除去部として除電紐を用いることで、回転体から静電気除去部への放電を、導電性繊維が露出している多数の箇所で発生させることができる。したがって、放電が特定の箇所に集中せず、静電気除去部の寿命を延ばすことができる。また、静電気除去部が除電紐であれば、仮に静電気除去部が回転体と接触することがあったとしても、回転体の損傷を抑えることができる。
【0037】
本発明において、前記除電紐は、前記支持部材の周方向の少なくとも一部に設けられているとよい。
【0038】
上述のように、静電気除去部として除電紐を用いることで、回転体から静電気除去部への放電を、導電性繊維が露出している多数の箇所で発生させることができる。したがって、周方向の少なくとも一部に設けるだけでも十分な除電性能が得られる。また、除電紐を周方向の一部のみに設ければ、必要な除電紐の長さを短くすることができ、コストを削減できる。
【0039】
本発明において、前記除電紐は、前記支持部材の周方向の全周にわたって設けられているとよい。
【0040】
こうすれば、回転体から除電紐への放電を全周で発生させることができる。したがって、除電性能を向上させることができる。
【0041】
本発明において、前記除電紐を取り付けるための取付部材をさらに備え、前記取付部材は、前記回転体の軸方向から見て円環状の部材で、前記支持部材の挿入方向側の端面に取り付けられており、前記取付部材は、大径部と、前記軸方向において前記大径部と前記支持部材の前記端面との間に位置し、前記大径部及び前記端面よりも外径が小さな小径部と、を有し、前記除電紐は、前記小径部の外周面に取り付けられるとよい。
【0042】
このような構成によれば、支持部材の外周面に除電紐を取り付けるようなスペースがない場合でも、除電紐を支持部材に取り付けることができる。また、除電紐が大径部と支持部材の端面とによって挟まれるので、除電紐が脱落することがない。
【0043】
本発明において、前記支持部材が挿入される挿入孔が形成された取付部をさらに備え、前記支持部材は、前記挿入孔よりも径の大きなフランジ部を有しており、前記フランジ部が前記取付部を挟んで前記回転体の反対側に位置するように前記挿入孔に挿入された状態で、前記フランジ部が前記取付部に固定されるとよい。
【0044】
このような構成によれば、支持部材を取付部から取り外す際には、フランジ部と取付部との固定を解除して、支持部材を挿入孔から抜き出すだけでよいので、支持部材を回転体と干渉させずに取付部から簡単に取り外すことができる。したがって、支持部材に設けられている静電気除去部のメンテナンス等を容易に行うことができる。
【0045】
本発明において、前記支持部材と前記軸受との間に、ゴム製のリング部材が設けられるとよい。
【0046】
このようなゴム製のリング部材を設けることで、軸受を支持部材に強固に取り付けることができるが、回転体に存在する静電気が軸受を介して支持部材へと逃げることができず、回転体に静電気が一層蓄積されやすくなる。このため、静電気除去部を設けることが特に有効となる。
【0047】
本発明において、前記軸受は、セラミック製のボールを有するボールベアリングであるとよい。
【0048】
ボールベアリングのボールをセラミック製とすることで、ボール自体が電食を受けることは防止できるようになるが、回転体に存在する静電気が軸受を介して支持部材へと逃げにくくなり、回転体に静電気が一層蓄積されやすくなる。このため、静電気除去部を設けることが特に有効となる。
【0049】
本発明において、前記回転体の外周面の近傍に配置される導電性部材をさらに備え、前記静電気除去部と前記回転体の内周面との間の距離が、前記導電性部材と前記回転体の外周面との間の距離よりも短いとよい。
【0050】
こうすれば、回転体から静電気除去部への放電を促進することができ、回転体から導電性部材への放電を確実に抑えることができる。したがって、導電性部材の電食等を防止することができる。
【0051】
本発明において、前記ボビンを支持するボビンホルダの軸方向に複数の前記ボビンが設けられており、前記回転体は、前記複数のボビンに前記糸が巻き取られて形成される複数の前記パッケージに接触するとよい。
【0052】
回転体が複数のパッケージに接触する場合、回転体に蓄積される静電気が増加するため、静電気除去部を設けることの効果が特に顕著となる。
【0053】
本発明において、前記回転体は、前記パッケージの回転とともに回転し、前記パッケージに接圧を付与するコンタクトローラであるとよい。
【0054】
コンタクトローラに静電気が蓄積されると、静電気の影響でコンタクトローラに糸が張り付くことで、適切な巻き取り及び接圧の付与が行えなくなるおそれがある。しかしながら、静電気除去部を設けることで、適切な巻き取り及び接圧の付与が可能となり、パッケージの品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図1】本実施形態に係る紡糸引取装置の正面図である。
【
図2】本実施形態に係る紡糸引取装置の側面図である。
【
図3】コンタクトローラの支持構造を拡大した断面図である。
【
図6】静電気除去部材の変形例を示す正面図である。
【
図7】第2実施形態の静電気除去部材の取付態様を示す断面図である。
【
図8】第2実施形態の静電気除去部材を示す斜視図である。
【
図9】第3実施形態の静電気除去部材の取付態様を示す断面図である。
【
図10】静電気除去部を支持部材に一体的に構成した場合の断面図である。
【
図11】
図10のXI方向から見た静電気除去部を示す図である。
【
図12】静電気除去部を支持部材に一体的に構成した場合の変形例を示す断面図である。
【
図13】突出部を軸方向に突出させた場合の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。本実施形態は、本発明に係る糸巻取機を紡糸引取装置に適用したものである。
【0057】
(紡糸引取装置)
図1は、本実施形態に係る紡糸引取装置の正面図であり、
図2は、本実施形態に係る紡糸引取装置の側面図である。なお、以下では、
図1、
図2に示す前後左右上下の各方向を、紡糸引取装置の前後左右上下と定義する。
【0058】
紡糸引取装置1は、紡糸機2から紡出される複数の糸Yを引き取る装置であり、ゴデットローラ3、4、糸巻取機5等を備えている。紡糸機2は、紡糸引取装置1の上方に配置されており、複数の口金(図示省略)から合成繊維(例えばポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂製の繊維)の糸Yを紡出する。ゴデットローラ3、4は、紡糸機2の下方において、軸方向が左右方向と略平行となる姿勢で配置されている。ゴデットローラ4は、ゴデットローラ3の斜め上後方に配置されている。紡糸機2から紡出された糸Yは、ゴデットローラ3、4の順に巻き掛けられる。ゴデットローラ3、4は、不図示の駆動モータによりそれぞれ回転駆動され、紡糸機2から紡出された複数の糸Yは、ゴデットローラ3、4によって、糸巻取機5へ送られる。
【0059】
糸巻取機5は、ゴデットローラ3、4の下方に配置された2つの糸巻取装置10を有する。2つの糸巻取装置10は、ゴデットローラ3、4から送られる複数の糸Yの糸道を挟んで略左右対称に配置されている。紡糸機2から紡出された複数の糸Yは、2つの糸巻取装置10に分けて送られる。例えば、紡糸機2から32本の糸Yが送られてくる場合に、その半分の16本が左側の糸巻取装置10で巻き取られ、残りの16本が右側の糸巻取装置10で巻き取られる。なお、糸巻取装置10で巻き取られる糸Yの本数はこれに限定されるものではない。
【0060】
糸巻取装置10は、支持フレーム11や2つのボビンホルダ12等を有して構成される。支持フレーム11及びボビンホルダ12はともに金属製である。支持フレーム11は、略水平な姿勢で機台13に片持ち支持されている。2つのボビンホルダ12は、前後方向に延びる軸部材であり、その後端部がターレット14によって片持ち支持されている。ボビンホルダ12には、軸方向に複数(本実施形態では16個)のボビンBを装着することが可能であり、不図示のモータによって軸周りに回転する。ターレット14は円板状の部材であり、機台13に回転可能に取り付けられている。ターレット14が回転すると、ターレット14に支持された2つのボビンホルダ12の位置が上下に切り換えられる。
【0061】
支持フレーム11の上部には、前後方向に延びるガイド支持体15が設けられている。ガイド支持体15には、ボビンホルダ12に装着される複数のボビンBに対応して、複数の支点ガイド16が前後方向に設けられている。また、支持フレーム11には、ボビンホルダ12に装着される複数のボビンBに対応して、複数のトラバースガイド17が前後方向に設けられている。複数のトラバースガイド17は、複数の支点ガイド16の下方に配置されている。
【0062】
さらに、糸巻取装置10は、支持フレーム11によって回転可能に支持された金属製のコンタクトローラ18を有する。コンタクトローラ18は、支持フレーム11の下方に設けられており、上側のボビンホルダ12に形成される複数のパッケージPの外周面に接触可能となっている。コンタクトローラ18は、ボビンBへの糸Yの巻取り時に、パッケージPに所定の接圧を付与しながらパッケージPとともに回転することで、パッケージPの形状を整える。なお、パッケージPが巻き太りしていく過程では、ボビンホルダ12の位置が徐々に下方へ移動することで、一定の接圧が維持されるようになっている。あるいは、コンタクトローラ18の位置が徐々に上方に移動するように構成されてもよい。
【0063】
以上のように構成された糸巻取装置10では、各支点ガイド16に掛けられた糸Yは、支点ガイド16を支点として、トラバースガイド17によって前後にトラバースされる。そして、トラバースされた糸Yが、上側にあるボビンホルダ12に装着されたボビンBに巻き取られることで、パッケージPが形成される。上側にあるボビンホルダ12に満巻のパッケージPが形成されると、ターレット14が回転し、2本のボビンホルダ12が切り換えられる。つまり、下側にあったボビンホルダ12が上側に移動し、このボビンホルダ12に装着されたボビンBに新たに糸Yが巻き取られる。また、満巻のパッケージPが形成されたボビンホルダ12は下側に移動し、満巻のパッケージPがボビンホルダ12の前側から取り外される。なお、本実施形態で糸Yを巻き取る巻取速度は、例えば4000~5000m/minとかなり高速となっている。
【0064】
(コンタクトローラの支持構造)
コンタクトローラ18の支持構造の詳細について説明する。
図3は、コンタクトローラ18の支持構造を拡大した断面図である。
図3では、コンタクトローラ18の後端部における支持構造を示しているが、前端部も同様の支持構造となっている。
【0065】
コンタクトローラ18は、軸受21を介して、支持部材22によって回転可能に支持されており、さらに支持部材22が支持フレーム11の取付部11aに取り付けられる構成となっている。支持フレーム11は、機台13(
図2参照)を介して接地されている。コンタクトローラ18は、円筒部18aと軸端部18bとを有する。円筒部18aは円筒状とされており、円筒部18aの外周面がパッケージPの外周面と接触する。軸端部18bは、円筒部18aよりも小径であり、軸方向において円筒部18aの端より外側まで延びており、軸受21によって支持される。
【0066】
支持部材22は、有底円筒状に構成された金属部材であり、円筒部22aとフランジ部22bとを有する。円筒部22aは円筒状とされており、前方に開口する凹部22cが形成されている。凹部22cには軸受21が配置されており、軸受21にコンタクトローラ18の軸端部18bが取り付けられている。軸受21は、セラミック製のボール21aを複数有するボールベアリングである。軸受21と凹部22cの周壁との間には、ゴム製のOリング23が設けられている。本実施形態では、Oリング23を2つ設けているが、Oリング23の数は適宜変更が可能である。
【0067】
金属製の支持フレーム11の取付部11aには、コンタクトローラ18の軸方向に貫通する挿入孔11bが形成されている。挿入孔11bの径は、支持部材22の円筒部22aの外径と略同じであり、フランジ部22bの外径よりも小さい。支持部材22は、軸受21が取り付けられた状態で、取付部11aの後方から挿入孔11bに挿入され、軸受21にコンタクトローラ18の軸端部18bが挿通される。そして、フランジ部22bを取付部11aにボルト24で固定することにより、支持部材22が支持フレーム11に取り付けられる。一方、ボルト24を外して、支持部材22を後方に引き出せば、支持部材22をコンタクトローラ18及び取付部11aから取り外すことができる。コンタクトローラ18を軸受21に組み付けた状態では、支持部材22の円筒部22aの前端部が、コンタクトローラ18の円筒部18aの径方向内側に挿入された状態となる。
【0068】
(コンタクトローラにおける静電気の影響)
図4は、静電気の移動を模式的に示す側面図である。紡糸引取装置1では、高速で走行する糸Yが、例えば支点ガイド16やトラバースガイド17(
図2参照)に接触することによって静電気が発生する。ボビンBは紙管であり絶縁体となっているため、パッケージPからボビンBを経由してボビンホルダ12に静電気が移動することはない。すなわち、
図4の破線矢印で示すような静電気の移動は生じない。このため、パッケージPの静電気は、もっぱらパッケージPに接触しているコンタクトローラ18へと移動する(
図4の実線矢印参照)。
【0069】
図3に示すように、コンタクトローラ18は、絶縁体であるセラミック製のボール21aを有する軸受21によって支持されており、さらに、軸受21と支持部材22との間には絶縁体であるゴム製のOリング23が存在する。したがって、コンタクトローラ18から静電気の逃げ場はなく、コンタクトローラ18に一定以上の静電気が蓄積されると、近傍の導電性部材への放電が発生していた。
【0070】
具体的には、本実施形態では、
図4に示すように、コンタクトローラ18の近傍に金属製の糸検出部材19が配置されている。この糸検出部材19は、コンタクトローラ18に糸Yが巻き付いた際に、巻き付いた糸Yが接触する位置に配置されている。糸検出部材19は不図示の検出器と接続されており、検出器が糸検出部材19への糸Yの接触を検出することによって、コンタクトローラ18に糸Yが巻き付いたことを検出できるように構成されている。
【0071】
このような目的のため、糸検出部材19は、コンタクトローラ18にできるだけ近いところに配置されており、例えば糸検出部材19とコンタクトローラ18との間の距離は0.7~1.0mm程度とされている。その結果、コンタクトローラ18に一定以上の静電気が蓄積されると、糸検出部材19への放電が生じ、糸検出部材19に電食が生じたり、上記検出器を誤作動させたりするおそれがあった。
【0072】
近年、パッケージPの生産効率を高めるため、ボビンホルダ12に装着されるボビンBの数、すなわち、コンタクトローラ18に接触するパッケージPの数(本実施形態では16個)は増加傾向にある。また、パッケージPの生産効率を高めるため、糸Yの走行速度、すなわち、ボビンホルダ12の回転速度は速くなる傾向にある。これらの傾向を受けて、コンタクトローラ18に蓄積される静電気も増加の一途をたどっており、静電気対策が必要となってきている。
【0073】
(静電気除去部材)
そこで、本実施形態では、
図3に示すように、コンタクトローラ18から静電気を除去するための本発明の「静電気除去部」として、支持部材22とは別の部材である静電気除去部材31を設けている。
図5は、静電気除去部材31を示す正面図である。静電気除去部材31は、金属部材からなる円環状の薄板部材である。静電気除去部材31の外周には、軸方向から見て径方向外側に三角形状に突出する多数の三角部31a(本発明の「突出部」に相当)が、全周にわたって形成されている。なお、三角部31aは、静電気除去部材31の外周の一部にのみ形成されていてもよい。
【0074】
静電気除去部材31には、周方向に複数のボルト穴31bが形成されている。一方、
図3に示すように、支持部材22の円筒部22aの前端面には、静電気除去部材31のボルト穴31bに対応して、複数の雌ネジ部22dが形成されている。そして、ボルト32を静電気除去部材31のボルト穴31bに通し、雌ネジ部22dに締め付けることで、静電気除去部材31を支持部材22の前端面に当接させた状態で取り付けることができる。これによって、静電気除去部材31が、コンタクトローラ18の円筒部18aの径方向内側に配置されることになる。
【0075】
図5において、一点鎖線で図示しているのは、支持部材22の前端部の外周面である。
図5から明らかなように、複数の三角部31aは、支持部材22の前端部の外周面よりも径方向外側に突出している。三角部31aの先端とコンタクトローラ18の内周面との間の距離は0.3~0.5mm程度とされており、上述の糸検出部材19とコンタクトローラ18の外周面との間の距離よりも短くされている。このため、コンタクトローラ18に蓄積された静電気は、コンタクトローラ18の内周面から三角部31aに向かって放電し、コンタクトローラ18から糸検出部材19への放電を抑えることができる。
【0076】
(静電気除去部材の変形例)
図6は、静電気除去部材の変形例を示す正面図である。本変形例の静電気除去部材35、36は、金属部材からなる円弧状の薄板部材である。静電気除去部材35、36は、
図3の静電気除去部材31と同様に、支持部材22の前端面に取り付けられる。
図6のa図に示す静電気除去部材35には、外周の略中央に3つの三角部35aが形成されており、
図6のb図に示す静電気除去部材36には、外周の略中央に1つの三角部36aが形成されている。ただし、三角部の数や形成位置はこれらに限定されるものではなく、適宜変更が可能である。
【0077】
静電気除去部材35、36のように円弧状の部材の場合、支持部材22の前端面の周方向のどの位置に配置するかを調整することができる。つまり、放電が生じる三角部35a、36aを周方向の一部のみに設けることができ、しかもその位置を調整できるので、外部から放電をより見えにくくすることができる。静電気除去部材35、36は、周方向に1つのみ取り付けてもよいし、周方向に複数取り付けてもよい。
【0078】
(効果)
本実施形態では、コンタクトローラ18(回転体)から静電気を除去するための静電気除去部材31、35、36(静電気除去部)が、コンタクトローラ18に非接触の状態でコンタクトローラ18の内側に設けられている。このため、静電気除去部材31、35、36がコンタクトローラ18によって覆われており、風綿やオイルミスト等が静電気除去部材31、35、36に付着することを抑制でき、除電性能を長期間にわたって良好に維持できる。また、コンタクトローラ18から静電気除去部材31、35、36への放電によりコンタクトローラ18に傷が生じるとしても、傷がつくのはコンタクトローラ18の内周面となるため、コンタクトローラ18の外周面に接触する糸Yには何ら悪影響を及ぼすことがない。さらに、静電気除去部材31、35、36がコンタクトローラ18によって覆われていることで、外部から放電が見えにくくなり、オペレータに不必要な不安感を与えることがない。このように、本実施形態によれば、静電気除去部材31、35、36をコンタクトローラ18の表面近傍に配置した場合に生じる問題を解消することができる。
【0079】
本実施形態では、コンタクトローラ18の内側に一部が挿入され、軸受21を介してコンタクトローラ18を回転可能に支持する支持部材22をさらに備え、支持部材22のうちコンタクトローラ18の内側に挿入された部分に、静電気除去部材31、35、36が設けられている。コンタクトローラ18を回転可能に支持する支持部材22は従来より存在するので、支持部材22に静電気除去部材31、35、36を設けるようにすれば、静電気除去部材31、35、36を設けるための大掛かりな変更が不要となる。
【0080】
本実施形態では、静電気除去部材31、35、36は、支持部材22とは別の部材として構成されている。静電気除去部材31、35、36は、使用しているうちに電食で変形等することで、除電性能が低下することがある。このような場合でも、静電気除去部材31、35、36を独立した部材としておけば、静電気除去部材31、35、36を交換するだけで、除電性能を容易に回復させることができる。
【0081】
本実施形態では、静電気除去部材31、35、36は、支持部材22のうちコンタクトローラ18の内側に挿入された部分(支持部材22の前端部)の外周面よりも径方向外側に突出する三角部31a、35a、36a(突出部)を有する。この場合、コンタクトローラ18の内周面から三角部31a、35a、36aへの放電を促進するため、コンタクトローラ18の内周面と三角部31a、35a、36aの先端との間の距離が重要となり、静電気除去部材31、35、36を径方向において精度よく位置決めする必要がある。この点、コンタクトローラ18の軸心を出すために、コンタクトローラ18と支持部材22との径方向における位置決めは精度よく行われるのが普通である。したがって、支持部材22に設けられる静電気除去部材31、35、36の径方向の位置決めも自ずと精度よく行われ、所望の除電性能を実現しやすくなる。
【0082】
本実施形態では、静電気除去部材31は、コンタクトローラ18の軸方向から見て円環形状を有しており、静電気除去部材31の外周に、突出部として、軸方向から見て径方向外側に三角形状に突出する三角部31aが少なくとも1つ形成されている。このように、突出部が三角形状の三角部31aであれば、先端が尖った形状となる。したがって、コンタクトローラ18から三角部31aへの放電を促進させることができ、除電性能を向上させることができる。
【0083】
本実施形態では、三角部31aが、静電気除去部材31の外周の全周にわたって複数形成されている。こうすれば、コンタクトローラ18から静電気除去部材31への放電を、多数の三角部31aに分散させることができる。したがって、放電が特定の箇所に集中せず、静電気除去部材31の寿命を延ばすことができる。
【0084】
本実施形態の変形例では、静電気除去部材35、36は、コンタクトローラ18の軸方向から見て円弧形状を有しており、静電気除去部材35、36の外周に、突出部として、軸方向から見て径方向外側に三角形状に突出する三角部35a、36aが少なくとも1つ形成されている。このように、突出部が三角形状の三角部35a、36aであれば、先端が尖った形状となる。したがって、コンタクトローラ18から三角部35a、36aへの放電を促進させることができ、除電性能を向上させることができる。また、静電気除去部材35、36が円弧形状であれば、周方向における静電気除去部材35、36の位置を調整することで、外部から放電をより見えにくくすることができる。
【0085】
本実施形態では、静電気除去部材31、35、36は、支持部材22の挿入方向側の端面(支持部材22の前端面)に設けられている。静電気除去部材31、35、36を支持部材22の外周面ではなく前端面に設けるようにすれば、コンタクトローラ18の内周面と支持部材22の外周面との間の隙間が狭い場合でも、静電気除去部材31、35、36を簡単に支持部材22に設けることができる。
【0086】
本実施形態では、支持部材22が挿入される挿入孔11bが形成された取付部11aをさらに備え、支持部材22は、挿入孔11bよりも径の大きなフランジ部22bを有しており、フランジ部22bが取付部11aを挟んでコンタクトローラ18の反対側に位置するように挿入孔11bに挿入された状態で、フランジ部22bが取付部11aに固定される。このような構成によれば、支持部材22を取付部11aから取り外す際には、フランジ部22bと取付部11aとの固定を解除して、支持部材22を挿入孔11bから抜き出すだけでよいので、支持部材22をコンタクトローラ18と干渉させずに取付部11aから簡単に取り外すことができる。したがって、支持部材22に設けられている静電気除去部材31、35、36のメンテナンスや交換等を容易に行うことができる。
【0087】
本実施形態では、支持部材22と軸受21との間に、ゴム製のOリング23(リング部材)が設けられる。このようなゴム製のOリング23を設けることで、軸受21を支持部材22に強固に取り付けることができるが、コンタクトローラ18に存在する静電気が軸受21を介して支持部材22へと逃げることができず、コンタクトローラ18に静電気が一層蓄積されやすくなる。このため、静電気除去部材31、35、36を設けることが特に有効となる。
【0088】
本実施形態では、軸受21は、セラミック製のボール21aを有するボールベアリングである。ボールベアリング21のボール21aをセラミック製とすることで、ボール21a自体が電食を受けることは防止できるようになるが、コンタクトローラ18に存在する静電気が軸受21を介して支持部材22へと逃げにくくなり、コンタクトローラ18に静電気が一層蓄積されやすくなる。このため、静電気除去部材31、35、36を設けることが特に有効となる。
【0089】
本実施形態では、コンタクトローラ18の外周面の近傍に配置される糸検出部材19(導電性部材)をさらに備え、静電気除去部材31、35、36とコンタクトローラ18の内周面との間の距離が、糸検出部材19とコンタクトローラ18の外周面との間の距離よりも短い。こうすれば、コンタクトローラ18から静電気除去部材31、35、36、41、51への放電を促進することができ、コンタクトローラ18から糸検出部材19への放電を確実に抑えることができる。したがって、糸検出部材19の電食や検出器の誤作動等を防止することができる。
【0090】
本実施形態では、ボビンBを支持するボビンホルダ12の軸方向に複数のボビンBが設けられており、コンタクトローラ18は、複数のボビンBに糸Yが巻き取られて形成される複数のパッケージPに接触する。コンタクトローラ18が複数のパッケージPに接触する場合、コンタクトローラ18に蓄積される静電気が増加するため、静電気除去部材31、35、36を設けることの効果が特に顕著となる。
【0091】
本実施形態では、本発明の「回転体」が、パッケージPの回転とともに回転し、パッケージPに接圧を付与するコンタクトローラ18である。コンタクトローラ18に静電気が蓄積されると、静電気の影響でコンタクトローラ18に糸Yが張り付くことで、適切な巻き取り及び接圧の付与が行えなくなるおそれがある。しかしながら、静電気除去部材31、35、36を設けることで、適切な巻き取り及び接圧の付与が可能となり、パッケージPの品質を向上させることができる。
【0092】
(静電気除去部材の第2実施形態)
静電気除去部材の第2実施形態について説明する。なお、上記実施形態と共通する構成については同じ符号を用い、共通の構成や効果についての説明は省略する。
【0093】
図7は、第2実施形態の静電気除去部材41の取付態様を示す断面図であり、
図8は、第2実施形態の静電気除去部材41を示す斜視図である。静電気除去部材41は、金属部材からなる円環状の部材であり、軸方向の一方側に形成されたテーパー部41a(本発明の「突出部」に相当)と、他方側に形成された小径部41bとを有する。
【0094】
図7に示すように、テーパー部41aは、周方向に直交する断面において径方向外側に三角形状に突出しており、静電気除去部材41の外周の全周にわたって形成されている。テーパー部41aの最外径は、支持部材22の前端部の外周面の外径よりも大きい。このため、テーパー部41aは支持部材22の前端部の外周面よりも径方向外側に突出する。小径部41bは円筒状であり、小径部41bの外径は、支持部材22の前端面の外径よりも小さい。静電気除去部材41には、周方向に複数のボルト穴41cが形成されている。
【0095】
図7に示すように、静電気除去部材41は、テーパー部41aを前方に向け、小径部41bを支持部材22の前端面に接触させた状態で、複数のボルト42によって支持部材22の前端面に取り付けられる。つまり、軸方向においてテーパー部41aと支持部材22の前端面との間に、小径部41bが位置することになる。このため、小径部41bが谷のようになり、テーパー部41aが突出した状態を際立たせることができる。
【0096】
テーパー部41aの先端とコンタクトローラ18の内周面との間の距離は0.3~0.5mm程度とされており、上述の糸検出部材19とコンタクトローラ18の外周面との間の距離よりも短くされている。このため、コンタクトローラ18に蓄積された静電気は、コンタクトローラ18の内周面からテーパー部41aに向かって放電し、コンタクトローラ18から糸検出部材19への放電を抑えることができる。なお、本実施形態において、テーパー部41aを周方向の一部にのみ設けてもよいし、小径部41bを省略することも可能である。
【0097】
本実施形態では、静電気除去部材41は、コンタクトローラ18の軸方向から見て円環形状を有しており、静電気除去部材41の外周の少なくとも一部に、突出部として、周方向に直交する断面において径方向外側に三角形状に突出するテーパー部41aが形成されている。このように、周方向に連続するテーパー部41aを突出部とすることで、コンタクトローラ18から静電気除去部材41への放電を周方向において分散させることができる。したがって、放電が特定の箇所に集中せず、静電気除去部材41の寿命を延ばすことができる。
【0098】
本実施形態では、テーパー部41aが、静電気除去部材41の外周の全周にわたって形成されている。こうすれば、コンタクトローラ18から静電気除去部材41への放電をより効果的に分散させることができる。したがって、静電気除去部材41の寿命をさらに延ばすことができる。
【0099】
本実施形態では、静電気除去部材41は、支持部材22の挿入方向側の端面(支持部材22の前端面)に設けられている。静電気除去部材41を支持部材22の外周面ではなく前端面に設けるようにすれば、コンタクトローラ18の内周面と支持部材22の外周面との間の隙間が狭い場合でも、静電気除去部材41を簡単に支持部材22に設けることができる。
【0100】
本実施形態では、静電気除去部材41は、軸方向においてテーパー部41aと支持部材22の前端面との間に、支持部材22の前端面よりも外径が小さな小径部41bを有する。このように、テーパー部41aと支持部材22の前端面との間に小径部41bを設けることで、小径部41bが谷のようになり、テーパー部41aを突出部として際立たせることができる。したがって、コンタクトローラ18からテーパー部41aへの放電を促進させることができ、除電性能を向上させることができる。
【0101】
(静電気除去部材の第3実施形態)
静電気除去部材の第3実施形態について説明する。なお、上記実施形態と共通する構成については同じ符号を用い、共通の構成や効果についての説明は省略する。
【0102】
図9は、第3実施形態の静電気除去部材51の取付態様を示す断面図である。静電気除去部材51は、多数の導電性繊維が表面に露出している除電紐である。除電紐51は、支持部材22の周方向の全周にわたって設けられている。除電紐51の一部は、後述の取付部材52(大径部52a)の外周面及び支持部材22の前端部の外周面よりも径方向外側に突出している。
【0103】
本実施形態では、取付部材52を用いることで、除電紐51を支持部材22の前端面に取り付けることができるように構成されている。取付部材52は、金属部材からなる円環状の部材であり、軸方向の一方側に形成された円筒状の大径部52aと、他方側に形成された小径部52bとを有する。小径部52bの外径は、大径部52a及び支持部材22の前端面の外径よりも小さい。取付部材52には、周方向に複数のボルト穴52cが形成されている。
【0104】
取付部材52は、小径部52bの外周面に除電紐51が掛けられた状態で、支持部材22の前端面に取り付けられる。詳細には、大径部52aを前方に向け、小径部52bを支持部材22の前端面に接触させた状態で、複数のボルト53によって支持部材22の前端面に取り付けられる。つまり、除電紐51が大径部52aと支持部材22の前端面とによって挟まれた状態で取り付けられる。
【0105】
本実施形態では、静電気除去部材51は、複数の導電性繊維が表面に露出している除電紐である。静電気除去部材51として除電紐を用いることで、コンタクトローラ18から静電気除去部材51への放電を、導電性繊維が露出している多数の箇所で発生させることができる。したがって、放電が特定の箇所に集中せず、静電気除去部材51の寿命を延ばすことができる。また、除電紐であれば、仮にコンタクトローラ18と接触することがあったとしても、コンタクトローラ18の損傷を抑えることができる。
【0106】
本実施形態では、除電紐51は、支持部材22の周方向の全周にわたって設けられている。こうすれば、コンタクトローラ18から除電紐51への放電を全周で発生させることができる。したがって、除電性能を向上させることができる。
【0107】
ただし、除電紐51を支持部材22の周方向の全周にわたって設けることは必須ではなく、一部にのみ設けられていてもよい。本発明の「静電気除去部」として除電紐51を用いることで、コンタクトローラ18から静電気除去部への放電を、導電性繊維が露出している多数の箇所で発生させることができる。したがって、周方向の少なくとも一部に設けるだけでも十分な除電性能が得られる。また、除電紐51を周方向の一部のみに設ければ、必要な除電紐51の長さを短くすることができ、コストを削減できる。
【0108】
本実施形態では、除電紐51を取り付けるための円環状の取付部材52をさらに備え、取付部材52は、コンタクトローラ18の軸方向から見て円環状の部材で、支持部材22の挿入方向側の端面(支持部材22の前端面)に取り付けられており、取付部材52は、大径部52aと、軸方向において大径部52aと支持部材22の前端面との間に位置し、大径部52a及び支持部材22の前端面よりも外径が小さな小径部52bと、を有し、除電紐51は、小径部52bの外周面に取り付けられる。このような構成によれば、支持部材22の外周面に除電紐51を取り付けるようなスペースがない場合でも、除電紐51を支持部材22に取り付けることができる。また、除電紐51が大径部52aと支持部材22の前端面とによって挟まれるので、除電紐51が脱落することがない。
【0109】
(その他の変形例)
上記各実施形態に種々の変更を加えた変形例について説明する。
【0110】
(1)上記各実施形態では、本発明の静電気除去部が、支持部材22とは別部材である静電気除去部材31、35、36、41、51であるとした。しかしながら、静電気除去部を支持部材22に一体的に構成してもよい。例えば、
図10に示す静電気除去部61は、支持部材22の前端部に一体的に形成されている。静電気除去部61は、
図11に示すように、支持部材22の周方向の全周にわたって、径方向外側に三角形状に突出する三角部62が突出部として形成されている。なお、三角部62が周方向の全周にわたって形成されていることは必須ではなく、周方向の一部にのみ形成されていてもよい。
【0111】
また、
図12に示す静電気除去部71は、支持部材22の前端部に一体的に形成されている。静電気除去部71は、支持部材22の周方向に全周にわたって、周方向に直交する断面において径方向外側に三角形状に突出するテーパー部72が突出部として形成されている。なお、テーパー部72が周方向の全周にわたって形成されていることは必須ではなく、周方向の一部にのみ形成されていてもよい。
【0112】
このように、静電気除去部61、71を、支持部材22に一体的に構成すれば、静電気除去部61、71を支持部材22に組み付ける必要がないため、静電気除去部61、71の組み付け精度によってコンタクトローラ18と静電気除去部61、71との間の距離が変わるということがない。したがって、所望の除電性能を実現しやすくなる。
【0113】
(2)上記各実施形態では、本発明の突出部として、三角部31a、35a、36a及びテーパー部41aが形成されるものとした。しかしながら、突出部の形状は三角形状やテーパー形状に限定されず、例えば、針形状であってもよい。
【0114】
(3)上記各実施形態では、本発明の突出部としての三角部31a、35a、36a及びテーパー部41aが、径方向外側に突出しているものとした。しかしながら、突出部が突出する方向は径方向外側に限定されない。例えば、
図13に示す静電気除去部材81は、軸方向内側に突出する突出部82を有しており、支持部材22の前端面に取り付けられている。突出部82は、断面形状が軸方向内側に三角形状に突出するテーパー部となっており、周方向の全周にわたって形成されている。ただし、突出部82の形状はこれに限定されず、軸方向の先端に複数の三角部が形成されている王冠のような形状であってもよいし、針形状でもよい。さらに、軸方向内側に突出する突出部を、支持部材22と一体的に構成してもよい。
【0115】
コンタクトローラ18は軸心から変位するように振動する。したがって、突出部82を軸方向に突出させることで、突出部を径方向に突出させる場合よりも、コンタクトローラ18の振動によるコンタクトローラ18と突出部82との接触を回避しやすくなる。また、突出部82を支持部材22の前端面から軸方向内側に突出させることで、突出部82が支持部材22によって隠れ、外部から放電をより見えにくくすることができる。
【0116】
(4)上記各実施形態では、静電気除去部材31、35、36、41、51が支持部材22の前端面に取り付けられるものとした。しかしながら、静電気除去部材31、35、36、41、51を、支持部材22の外周面に取り付けるようにしてもよい。また、支持部材22以外に適当な部材があれば、その部材に静電気除去部材31、35、36、41、51を取り付けてもよい。
【0117】
(5)上記各実施形態では、静電気除去部材31、35、36、41、51を、ボルト32、42、53を用いて支持部材22に取り付けるものとした。しかしながら、静電気除去部材31、35、36、41、51の取付方法はこれに限定されず、例えば、導電性接着剤で支持部材22に取り付けるようにしてもよい。
【0118】
(6)上記各実施形態では、本発明を紡糸引取装置1の糸巻取装置10に対して適用するものとした。しかしながら、本発明は、紡糸引取装置以外の繊維機械に設けられた糸巻取装置に適用することも可能である。
【0119】
(7)上記各実施形態では、本発明の回転体が、パッケージPの回転とともに回転し、パッケージPに接圧を付与するコンタクトローラ18であるものとした。ただし、本発明の回転体は、上記各実施形態のようにパッケージPの回転によって従動回転するものに限定されず、例えば特開2014-15334に開示されているような、直接的にモータで回転駆動される巻取ドラム等であってもよい。
【符号の説明】
【0120】
10:糸巻取装置
11:支持フレーム
11a:取付部
11b:挿入孔
12:ボビンホルダ
18:コンタクトローラ(回転体)
19:糸検出部材(導電性部材)
21:軸受
21a:ボール
22:支持部材
23:Oリング(リング部材)
31、35、36:静電気除去部材(静電気除去部)
31a、35a、36a:三角部(突出部)
41:静電気除去部材(静電気除去部)
41a:テーパー部(突出部)
41b:小径部
51:除電紐(静電気除去部材、静電気除去部)
52:取付部材
52a:大径部
52b:小径部
61:静電気除去部
62:三角部(突出部)
71:静電気除去部
72:テーパー部(突出部)
81:静電気除去部材(静電気除去部)
82:突出部
B:ボビン
P:パッケージ
Y:糸