(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-07
(45)【発行日】2022-09-15
(54)【発明の名称】足場設計装置および足場設計方法
(51)【国際特許分類】
E02F 9/26 20060101AFI20220908BHJP
E02F 9/20 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
E02F9/26 A
E02F9/20 N
(21)【出願番号】P 2018211282
(22)【出願日】2018-11-09
【審査請求日】2021-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大西 喜之
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-21425(JP,A)
【文献】特開2018-3514(JP,A)
【文献】国際公開第2017/221692(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/061790(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/179962(WO,A1)
【文献】特開平10-245865(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業車両の足場を形成するための足場設計面を生成する足場設計装置であって、
設計地形の三次元形状を示す設計地形データから施工対象の法面である対象法面を選択する法面選択部と、
前記対象法面の稜線に対して平行となる前記足場設計面を生成する足場設計部と、
を備える足場設計装置。
【請求項2】
前記作業車両の作業機の位置を特定する作業機位置特定部を備え、
前記足場設計部は、一のタイミングで特定された前記作業機の位置に基づいて前記足場設計面を生成する
請求項1に記載の足場設計装置。
【請求項3】
特定された前記作業機の位置に対する前記足場設計面の高さのオフセットの値の入力を受け付けるオフセット入力部を備え、
前記足場設計面は、特定された前記作業機の位置より前記オフセットの値だけ移動した点を通り、かつ前記稜線に対して平行となる面である
請求項2に記載の足場設計装置。
【請求項4】
前記対象法面の上下の2つの稜線のうち、1つの稜線の選択を受け付ける稜線選択部を備え、
前記足場設計面は、選択された前記稜線に対して平行となる面である
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の足場設計装置。
【請求項5】
前記足場設計面または前記設計地形データの1つの面と前記作業車両の作業機との距離に基づいて、前記作業機の制御指令を出力する制御部
を備える請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の足場設計装置。
【請求項6】
前記足場設計面および前記設計地形データの面のうち1つの設計面の選択を受け付ける設計面選択部を備え、
前記制御部は、選択された前記設計面に基づいて前記制御指令を出力する
請求項5に記載の足場設計装置。
【請求項7】
作業車両の足場を形成するための足場設計面を生成する足場設計方法であって、
現場座標系における設計地形の三次元形状を示す設計地形データから施工対象の法面である対象法面を選択するステップと、
前記対象法面の稜線に対して平行となる前記足場設計面を生成するステップと、
を備える足場設計方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両の足場を形成するための足場設計面を生成する足場設計装置および足場設計方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、目標地形データに基づいて施工を行う作業車両を用いて、予め目標地形データが用意されない水底の浚渫施工を行うための技術が開示されている。特許文献1によれば、作業車両は、水底の現況地形に基づいて水底の目標地形データを生成し、当該目標地形データに基づいて作業機を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
作業車両を用いて施工を行うにあたり、まず作業車両の足場を形成する必要がある。足場は、作業車両が揺動しない程度に平らな面である。足場は、作業車両の作業機で地表を掘削し、または盛土することにより形成される。
【0005】
ところで、作業車両を用いて法面を施工する場合、法面の稜線とバケットの刃先とが片当たりしてしまうと、高い施工効率を得ることができない。そのため、法面の施工において施工効率を向上するためには、バケットの刃先が片当たりしないように適切な足場を形成する必要がある。
本発明の目的は、法面の施工効率を向上するための適切な足場を設計することができる足場設計装置および足場設計方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、足場設計装置は、作業車両の足場を形成するための足場設計面を生成する足場設計装置であって、現場座標系における設計地形の三次元形状を示す設計地形データから施工対象の法面である対象法面を選択する法面選択部213と、前記対象法面の稜線に対して平行となる前記足場設計面を生成する足場設計部217と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
上記態様によれば、足場設計装置は、法面の施工効率を向上するための適切な足場を設計することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】作業車両および作業機の姿勢の例を示す図である。
【
図2】第1の実施形態に係る作業車両の構成を示す概略図である。
【
図3】第1の実施形態に係る運転室の内部の構成を示す図である。
【
図4】第1の実施形態に係る制御装置の構成を示す概略ブロック図である。
【
図5】第1の実施形態に係る足場の設計方法を示すフローチャートである。
【
図6】第1の実施形態に係る対象法面の選択画面の画面例である。
【
図7】第1の実施形態に係る稜線の選択画面の画面例である。
【
図8】第1の実施形態に係る設計条件の入力画面の画面例である。
【
図9】第1の実施形態における介入制御処理を示すフローチャートである。
【
図10】第1の実施形態に係る地形データの選択画面の画面例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〈座標系〉
図1は、作業車両100および作業機130の姿勢の例を示す図である。
以下の説明においては、三次元の現場座標系(Xg、Yg、Zg)および三次元の車体座標系(Xm、Ym、Zm)を規定して、これらに基づいて位置関係を説明する。
【0010】
現場座標系は、施工現場に設けられたGNSS(Global Navigation Satellite System)基準局の位置を基準点として南北に伸びるXg軸、東西に伸びるYg軸、鉛直方向に伸びるZg軸から構成される座標系である。GNSSの例としては、GPS(Global Positioning System)が挙げられる。なお、他の実施形態においては、現場座標系に代えて緯度および経度などで表されるグローバル座標系を用いてもよい。
車体座標系は、作業車両100の旋回体120に規定された代表点Oを基準として前後に伸びるXm軸、左右に伸びるYm軸、上下に伸びるZm軸から構成される座標系である。旋回体120の代表点Oを基準として前方を+Xm方向、後方を-Xm方向、左方を+Ym方向、右方を-Ym方向、上方向を+Zm方向、下方向を-Zm方向とよぶ。
現場座標系と車体座標系とは、現場座標系における作業車両100の位置および傾きを特定することで、互いに変換することができる。
【0011】
〈第1の実施形態〉
《作業車両100の構成》
図2は、第1の実施形態に係る作業車両100の構成を示す概略図である。
作業車両100は、施工現場にて稼働し、土砂などの施工対象を施工する。第1の実施形態に係る作業車両100は、油圧ショベルである。
作業車両100は、走行体110、旋回体120、作業機130および運転室140を備える。
走行体110は、作業車両100を走行可能に支持する。走行体110は、例えば左右2対の無限軌道である。旋回体120は、走行体110に旋回中心回りに旋回可能に支持される。作業機130は、油圧により駆動する。作業機130は、旋回体120の前部に上下方向に駆動可能に支持される。運転室140は、オペレータが搭乗し、作業車両100の操作を行うためのスペースである。運転室140は、旋回体120の前部に設けられる。
【0012】
《旋回体120の構成》
旋回体120は、位置方位検出器121および傾斜検出器122を備える。
【0013】
位置方位検出器121は、旋回体120の現場座標系における位置および旋回体120が向く方位を演算する。位置方位検出器121は、GNSSを構成する人工衛星から測位信号を受信する2つのアンテナを備える。2つのアンテナは、それぞれ旋回体120の異なる位置に設置される。例えば2つのアンテナは、旋回体120のカウンターウェイト部に設けられる。位置方位検出器121は、2つのアンテナの少なくとも一方が受信した測位信号に基づいて、現場座標系における旋回体120の代表点Oの位置を検出する。位置方位検出器121は、2つのアンテナのそれぞれが受信した測位信号を用いて、現場座標系において旋回体120が向く方位を検出する。
【0014】
傾斜検出器122は、旋回体120の加速度および角速度を計測し、計測結果に基づいて旋回体120の傾き(例えば、Xm軸に対する回転を表すロール、およびYm軸に対する回転を表すピッチ)を検出する。傾斜検出器122は、例えば運転室140の下方に設置される。傾斜検出器122の例としては、IMU(Inertial Measurement Unit:慣性計測装置)が挙げられる。
【0015】
《作業機130の構成》
作業機130は、ブーム131、アーム132、バケット133、ブームシリンダ134、アームシリンダ135、およびバケットシリンダ136を備える。
【0016】
ブーム131の基端部は、旋回体120にブームピンP1を介して取り付けられる。
アーム132は、ブーム131とバケット133とを連結する。アーム132の基端部は、ブーム131の先端部にアームピンP2を介して取り付けられる。
バケット133は、土砂などを掘削するための刃と掘削した土砂を収容するための収容部とを備える。バケット133の基端部は、アーム132の先端部にバケットピンP3を介して取り付けられる。
【0017】
ブームシリンダ134は、ブーム131を作動させるための油圧シリンダである。ブームシリンダ134の基端部は、旋回体120に取り付けられる。ブームシリンダ134の先端部は、ブーム131に取り付けられる。ブームシリンダ134には、ブームシリンダ134のストローク量を検出するブームストロークセンサ137が設けられる。
アームシリンダ135は、アーム132を駆動するための油圧シリンダである。アームシリンダ135の基端部は、ブーム131に取り付けられる。アームシリンダ135の先端部は、アーム132に取り付けられる。アームシリンダ135には、アームシリンダ135のストローク量を検出するアームストロークセンサ138が設けられる。
バケットシリンダ136は、バケット133を駆動するための油圧シリンダである。バケットシリンダ136の基端部は、アーム132に取り付けられる。バケットシリンダ136の先端部は、バケット133に接続されるリンク部材に取り付けられる。バケットシリンダ136には、バケットシリンダ136のストローク量を検出するバケットストロークセンサ139が設けられる。
【0018】
《運転室140の構成》
図3は、第1の実施形態に係る運転室140の内部の構成を示す図である。
運転室140内には、運転席141、第1操作装置142および第2操作装置143が設けられる。
【0019】
第1操作装置142は、オペレータの手動操作によって走行体110、旋回体120および作業機130を駆動させるためのインタフェースである。第1操作装置142は、左操作レバー1421、右操作レバー1422、フットペダル1423、走行レバー1424を備える。
【0020】
左操作レバー1421は、運転席141の左側に設けられる。右操作レバー1422は、運転席141の右側に設けられる。左操作レバー1421および右操作レバー1422は、旋回体120の旋回動作とブーム131、アーム132、バケット133の動作制御に用いられる。
フットペダル1423は、運転席141の前方の床面に配置される。走行レバー1424は、フットペダル1423に軸支され、走行レバー1424の傾斜とフットペダル1423の押し下げが連動するように構成される。フットペダル1423および走行レバー1424は、走行体110の走行制御に用いられる。
【0021】
第2操作装置143は、後述する制御装置150による作業機130の介入制御に関するオペレータの操作を受け付ける。第2操作装置143は、例えばタッチパネルを備えるタブレット端末である。
【0022】
《制御装置150の構成》
作業車両100は、作業車両100を制御するための制御装置150を備える。
制御装置150は、施工現場において設定された設計面にバケット133が侵入しないようにバケット133が施工対象に接近する方向の動作を制限する。制御装置150が設計面に基づいてバケット133の動作を制限することを介入制御ともいう。
【0023】
例えば、オペレータがアーム131を引き寄せる操作のみを行って水平面の整地作業を行う場合の介入制御において、制御装置150は、アーム131の移動に伴うバケット133の刃先と設計面との距離に応じて、設計面にバケット133が侵入しないように、ブームシリンダ134の操作信号を生成する。これにより、オペレータがアーム131の動作を操作するだけで、制御装置150がブームシリンダ134の操作信号を生成してブーム131を上昇させることでバケット133の動作を制限し、設計面へのバケット133の刃先の侵入を自動的に防止する。。
同様に、制御装置150は、バケット133の刃先と設計面との距離に応じて、設計面にバケット133が侵入しないように、アームシリンダ135やバケットシリンダ136の動作も制限し、設計面へのバケット133の刃先の侵入を自動的に防止する。
【0024】
また制御装置150は、第2操作装置143を介したオペレータの操作によって、作業車両100の足場を形成するための足場設計面を生成する。これにより、制御装置150は、足場設計面に基づく介入制御を行うことで、足場の形成を補助することができる。つまり、制御装置150は、足場設計装置の一例である。
【0025】
図4は、第1の実施形態に係る制御装置150の構成を示す概略ブロック図である。
制御装置150は、プロセッサ210、メインメモリ230、ストレージ250、インタフェース270を備えるコンピュータである。
【0026】
ストレージ250は、一時的でない有形の記憶媒体である。ストレージ250の例としては、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、半導体メモリ等が挙げられる。ストレージ250は、制御装置150のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インタフェース270または通信回線を介して制御装置150に接続される外部メディアであってもよい。ストレージ250は、作業車両100を制御するためのプログラムを記憶する。
【0027】
プログラムは、制御装置150に発揮させる機能の一部を実現するためのものであってもよい。例えば、プログラムは、ストレージ250に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせ、または他の装置に実装された他のプログラムとの組み合わせによって機能を発揮させるものであってもよい。なお、他の実施形態においては、制御装置150は、上記構成に加えて、または上記構成に代えてPLD(Programmable Logic Device)などのカスタムLSI(Large Scale Integrated Circuit)を備えてもよい。PLDの例としては、PAL(Programmable Array Logic)、GAL(Generic Array Logic)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)が挙げられる。この場合、プロセッサによって実現される機能の一部または全部が当該集積回路によって実現されてよい。
【0028】
ストレージ250には、予め設計地形の三次元形状を示す設計地形データD1が記憶される。設計地形データD1は、現場座標系で表される三次元データであって、設計面を表す複数の三角形ポリゴンからなる立体地形データ等である。設計地形データD1を構成する三角形ポリゴンは、それぞれ隣接する他の三角形ポリゴンと共通の辺を有する。つまり、設計地形データD1は、複数の平面から構成される連続した平面を表す。
【0029】
プロセッサ210は、プログラムを実行することで、検出情報取得部211、バケット位置特定部212、法面選択部213、稜線選択部214、傾き決定部215、条件入力部216、足場設計部217、設計面選択部218、操作量取得部219、制御線決定部220、介入制御部221、表示制御部222として機能する。
【0030】
検出情報取得部211は、ブームストロークセンサ137、アームストロークセンサ138、バケットストロークセンサ139、位置方位検出器121、および傾斜検出器122のそれぞれが検出した情報を取得する。つまり、検出情報取得部211は、旋回体120の現場座標系における位置情報、旋回体120が向く方位、旋回体120の傾き、ブームシリンダ134のストローク長、アームシリンダ135のストローク長、およびバケットシリンダ136のストローク長を取得する。
【0031】
バケット位置特定部212は、検出情報取得部211が取得した情報に基づいて、バケット133の刃先の位置を特定する。バケット133の刃先の位置の特定方法は後述する。
【0032】
法面選択部213は、足場の設計にあたり、設計地形データD1を構成する複数の平面から、当該足場を用いた施工対象の法面である対象法面の選択を受け付ける。
稜線選択部214は、対象法面のうち足場の設計の基準となる稜線の選択を受け付ける。なお、本実施形態において「稜線」とは、法面の法肩および法尻をいう。すなわち、稜線選択部214は、対象法面の法肩および法尻のいずれを足場の設計の基準に用いるかを示す情報の入力を受け付ける。
傾き決定部215は、選択された稜線に基づいて、足場のロール角を決定する。足場のロール角とは、作業車両100が対象法面と正対するように足場の上に位置するときの作業車両100のロール角に等しい。具体的には、傾き決定部215は、選択された稜線の傾きを、足場のロール角に決定する。
【0033】
条件入力部216は、オペレータから足場の設計条件の入力を受け付ける。設計条件の例としては、高さのオフセット、足場の広さ、足場のピッチ角、足場の形状が挙げられる。足場のピッチ角とは、作業車両100が対象法面と正対するように足場の上に位置するときの作業車両100のピッチ角に等しい。つまり、足場のピッチ角は、稜線の軸回りの回転角である。条件入力部216は、オフセット入力部の一例である。
【0034】
足場設計部217は、傾き決定部215が決定したロール角および条件入力部216に入力された設計条件に基づいて、足場設計面を表す三次元データである足場データD2を生成する。足場設計部217は、生成した足場データD2をストレージ250に記憶させる。
【0035】
設計面選択部218は、設計地形データD1を構成する設計面と、足場データD2が表す足場設計面とのうち、介入制御に用いる設計面の選択を受け付ける。
【0036】
操作量取得部219は、第1操作装置142から操作量を示す操作信号を取得する。操作量取得部219は、少なくともブーム131の上げ操作および下げ操作に係る操作量、アーム132の押し操作および引き操作に係る操作量、並びにバケット133の掘削操作およびダンプ操作に係る操作量を取得する。
【0037】
制御線決定部220は、バケット133の介入制御に用いられる制御線を決定する。制御線決定部220は、例えば、バケット133の縦断面と選択された設計面との交線を制御線に決定する。
【0038】
介入制御部221は、操作量取得部219が取得した第1操作装置142の操作量と、制御線決定部220が決定した制御線とバケット133の距離とに基づいて、作業機130の介入制御を行う。
【0039】
表示制御部222は、第2操作装置143に表示させる画像を生成し、第2操作装置143に出力する。
【0040】
《バケット133の刃先位置の特定方法》
ここで、
図1を参照しながらバケット133の刃先の位置の特定方法について説明する。車体座標系におけるバケット133の刃先の位置は、ブーム長さL1、アーム長さL2、バケット長さL3、ブーム角α、アーム角β、バケット角γ、および車体座標系におけるブームピンP1の位置、および現場座標系における代表点Oの位置に基づいて特定することができる。
【0041】
ブーム長さL1は、ブームピンP1からアームピンP2までの既知の距離である。
アーム長L2は、アームピンP2からバケットピンP3までの既知の距離である。
バケット長L3は、バケットピンP3からバケット133の刃先までの既知の距離である。
【0042】
ブーム角αは、ブームピンP1から旋回体120の上方向(+Zm方向)に伸びる半直線と、ブームピンP1からアームピンP2へ伸びる半直線とがなす角によって表される。なお、旋回体120の傾きθによって、旋回体120の上方向(+Zm方向)と鉛直上方向(+Zg方向)は必ずしも一致しない。
アーム角βは、ブームピンP1からアームピンP2へ伸びる半直線と、アームピンP2からバケットピンP3へ伸びる半直線とがなす角によって表される。
バケット角γは、アームピンP2からバケットピンP3へ伸びる半直線と、バケットピンP3からバケット133の刃先へ伸びる半直線とがなす角によって表される。
【0043】
作業機130の刃先の現場座標系における位置は、例えば以下の手順で特定される。バケット位置特定部212は、車体座標系におけるブームピンP1の位置とブーム相対角αとブーム長さL1とに基づいて、車体座標系におけるアームピンP2の位置を特定する。バケット位置特定部212は、車体座標系におけるアームピンP2の位置とアーム相対角βとアーム長L2とに基づいて、車体座標系におけるバケットピンP3の位置を特定する。バケット位置特定部212は、車体座標系におけるバケットピンP3の位置と、バケット相対角γと、バケット長L3とに基づいて、車体座標系におけるバケット133の刃先の位置を特定する。ブーム相対角α、アーム相対角β、バケット相対角γは、それぞれ、ブームストロークセンサ137の検出値、アームストロークセンサ138の検出値、バケットストロークセンサ139の検出値によって特定される。バケット位置特定部212は、旋回体120の現場座標系における位置情報、旋回体120が向く方位、および旋回体120の姿勢に基づいて、車体座標系におけるバケット133の刃先の位置を、現場座標系における位置に変換する。
なお、ブーム相対角α、アーム相対角β、バケット相対角γの検出は、ストロークセンサによって行うものに限られず、角度センサによって行ってもよいことは言うまでもない。
【0044】
《足場の設計方法》
図5は、第1の実施形態に係る足場の設計方法を示すフローチャートである。
オペレータは、施工現場における足場の形成にあたり、まず足場設計面を表す足場データを生成する。オペレータは、第1操作装置142を操作し、バケット133の刃先を足場を形成したい位置に移動させる。例えば、オペレータは、対象法面から一定距離だけ離れた位置にバケット133の刃先を移動させる。なお、足場を成形したい位置が地表より下方にある場合は、足場を成形したい位置の直上の位置にバケット133の刃先を移動させる。
【0045】
バケット133の刃先を足場を形成したい位置の上に移動させると、オペレータは、第2操作装置143を操作し、制御装置150に足場設計処理の実行を指示する。例えば、オペレータは、第2操作装置143の画面に表示された足場設計ボタンを押下する。
【0046】
制御装置150が足場設計処理を開始すると、検出情報取得部211は、ブームストロークセンサ137、アームストロークセンサ138、バケットストロークセンサ139、位置方位検出器121、および傾斜検出器122のそれぞれが検出した情報を取得する(ステップS1)。バケット位置特定部212は、検出情報取得部211が取得した情報に基づいて、現場座標系におけるバケット133の刃先の位置を特定する(ステップS2)。
【0047】
表示制御部222は、ストレージ250から設計地形データD1を読み出して対象法面の選択画面を生成し、第2操作装置143に出力する(ステップS3)。これにより第2操作装置143は、
図6に示すような対象法面の選択画面を表示する。
図6は、第1の実施形態に係る対象法面の選択画面の画面例である。
対象法面の選択画面には、設計地形データD1から描画された設計地形画像G1と、当該設計地形上に配置された作業車両100の三次元モデルから描画された作業車両画像G2とが含まれる。作業車両画像G2のバケットは、バケット位置特定部212が特定した刃先の位置に基づいて描画される。
【0048】
法面選択部213は、オペレータから対象法面の選択を受け付ける(ステップS4)。例えばオペレータが設計地形画像G1における対象法面の位置を押下することで、法面選択部213は、選択された対象法面を特定することができる。対象法面が選択されると、表示制御部222は、稜線の選択画面を生成し、第2操作装置143に出力する(ステップS5)。これにより第2操作装置143は、
図7に示すような稜線の選択画面を表示する。
図7は、第1の実施形態に係る稜線の選択画面の画面例である。
稜線の選択画面には、設計地形画像G1と、作業車両画像G2と、選択された対象法面を示す対象法面画像G3と、選択された稜線を示す稜線画像G4と、対象法面の上側の稜線すなわち法肩の選択のための上ボタンG5と、対象法面の下側の稜線すなわち法尻の選択のための下ボタンG6と、選択を確定するための決定ボタンG7とが含まれる。
【0049】
稜線選択部214は、対象法面のうち足場の設計の基準となる稜線の選択を受け付ける(ステップS6)。例えばオペレータは、第2操作装置143を操作し、上ボタンG5または下ボタンG6を押下することで、稜線を選択する。上ボタンG5または下ボタンG6の押下により、稜線画像G4は法肩または法尻のいずれかを表す。稜線画像G4が所望の稜線を表しているときにオペレータが決定ボタンG7を押下することで、稜線選択部214は、選択された稜線を特定することができる。
【0050】
傾き決定部215は、選択された稜線と水平面とがなす角を足場のロール角に決定する(ステップS7)。次に、表示制御部222は、足場の設計条件の入力画面を生成し、第2操作装置143に出力する(ステップS8)。これにより第2操作装置143は、
図8に示すような設計条件の入力画面を表示する。
図8は、第1の実施形態に係る設計条件の入力画面の画面例である。
設計条件の入力画面には、設計地形画像G1と、作業車両画像G2と、選択された対象法面を示す対象法面画像G3と、設計条件の入力ウィンドウG8と、足場設計面のプレビュー画像G9とが含まれる。入力ウィンドウG8は、高さのオフセット、足場の広さ、足場のピッチ角、足場の形状の入力フォームおよび決定ボタンを含む。足場の広さは、例えば足場の形状の内接円の直径として入力されてよい。足場設計面の形状は、例えば円、正方形、正六角形、および正八角形などが挙げられる。
【0051】
条件入力部216は、オペレータから足場の設計条件の入力を受け付ける(ステップS9)。例えばオペレータは、第2操作装置143を操作し、入力ウィンドウG8の入力フォームに値を入力する。表示制御部222は、入力フォームの値が変化するたびに、プレビュー画像G9の形状を変化させてよい。なお、足場のピッチ角の初期値は0°である。ピッチ角が0°の場合、足場設計面は、稜線を水平方向に延長した面に対して平行となる。オペレータが入力ウィンドウG8の決定ボタンを押下することで、条件入力部216は、設計条件の入力を確定することができる。
【0052】
そして、足場設計部217は、傾き決定部215が決定したロール角および条件入力部216に入力された設計条件に基づいて、足場設計面を表す三次元データである足場データD2を生成する(ステップS10)。足場設計部217は、生成した足場データD2をストレージ250に記憶させる(ステップS11)。
【0053】
《操作時の制御方法》
図9は、第1の実施形態における介入制御処理を示すフローチャートである。
オペレータは、第2操作装置143を操作し、制御装置150に介入制御処理の実行を指示する。例えば、オペレータは、第2操作装置143の画面に表示された整地アシスト開始ボタンを押下する。
【0054】
制御装置150が整地アシスト処理を開始すると、表示制御部222は、地形データの選択画面を生成し、第2操作装置143に出力する(ステップS31)。これにより第2操作装置143は、
図10に示すような地形データの選択画面を表示する。
図10は、第1の実施形態に係る地形データの選択画面の画面例である。地形データの選択画面は、設計地形データD1の選択ボタンG10と、足場データD2の選択ボタンG11とを含む。
設計面選択部218は、設計地形データD1および足場データD2のうち介入制御に用いる地形データの選択を受け付ける(ステップS32)。すなわち設計面選択部218は、設計地形データD1に含まれる設計面および足場設計面のうち介入制御に用いる設計面の選択を受け付ける。例えばオペレータが設計地形データD1の選択ボタンG10または足場データD2の選択ボタンG11を押下することで、設計面選択部218は、選択された地形データを特定することができる。
【0055】
設計面選択部218は、選択された地形データが足場データであるか否かを判定する(ステップS33)。選択された地形データが足場データD2でない場合、すなわち設計地形データD1である場合(ステップS33:NO)、表示制御部222は、
図6に示すような設計面の選択画面を生成し、第2操作装置143に出力する(ステップS34)。設計面選択部218は、設計地形データD1の複数の設計面の中から介入制御に用いる設計面の選択を受け付ける(ステップS35)。介入制御に用いる設計面が選択されると、設計面選択部218は、ストレージ250の設計地形データD1から選択された設計面を読み出す(ステップS36)。
他方、選択された地形データが足場データD2である場合(ステップS33:YES)、表示制御部222は、ストレージ250の足場データD2から足場設計面を読み出す(ステップS37)。
【0056】
次に、検出情報取得部211は、ブームストロークセンサ137、アームストロークセンサ138、バケットストロークセンサ139、位置方位検出器121、および傾斜検出器122のそれぞれが検出した情報を取得する(ステップS38)。バケット位置特定部212は、検出情報取得部211が取得した情報に基づいて、現場座標系におけるバケット133の刃先の位置を特定する(ステップS39)。
【0057】
操作量取得部219は、第1操作装置142からブーム131に係る操作量、アーム132に係る操作量、バケット133に係る操作量を取得する(ステップS40)。
制御線決定部220は、バケット133の刃先と設計面選択部218が読み出した設計面とに基づいて制御線を決定する(ステップS41)。
【0058】
介入制御部221は、刃先と制御線との距離が所定距離未満であるか否かを判定する(ステップS42)。介入制御部221は、刃先と制御線との距離が所定距離未満でない場合(ステップS42:NO)、介入制御を行わず、操作量取得部219が取得した操作量に基づく作業機130の制御指令を生成する(ステップS43)。他方、介入制御部221は、刃先と制御線との距離が所定距離未満である場合(ステップS42:YES)、操作量取得部219が取得した操作量に基づき、刃先と制御線との距離に応じた介入を行って、作業機130の制御指令を生成する(ステップS44)。
【0059】
次に、介入制御部221は、オペレータの操作によって介入制御を終了するか否かを判定する(ステップS45)。例えば介入制御部221は、第2操作装置143の画面に表示された整地アシスト終了ボタンが押下されたか否かを判定する。介入制御が終了しない場合(ステップS45:NO)、制御装置150はステップS38に処理を戻し、介入制御を継続する。他方、介入制御が終了する場合(ステップS45:YES)、制御装置150は介入制御処理を終了する。
【0060】
《作用・効果》
このように、第1の実施形態によれば、制御装置150は、対象法面の選択を受け付け、対象法面の稜線に対して平行となる足場設計面を生成する。当該足場設計面に基づいて形成された足場に作業車両100が位置すると、作業車両100のバケット133の刃先と対象法面の稜線とが平行になる。これにより、バケット133の刃先が稜線に片当たりすることを防ぎ、効率よく法面の掘削を行うことができる。
【0061】
また第1の実施形態によれば、制御装置150は、足場設計処理の開始のタイミングにおいて特定された作業機の位置に基づいて足場設計面を生成する。これにより、オペレータは座標の入力をすることなく制御装置150に足場設計面の位置を知らせることができる。なお、他の実施形態においては、制御装置150はオペレータから足場設計面の中心位置の入力を受け付けてよい。また、他の実施形態においては、制御装置150はバケット133の刃先の位置でなく、例えばバケット133の最下点の位置に基づいて足場設計面を生成してもよい。
【0062】
また第1の実施形態によれば、制御装置150はバケット133の刃先の位置に対する足場設計面の高さのオフセットの値の入力を受け付ける。これにより、足場を成形したい位置が地表より下方にある場合において、地表が固くバケット133の刃先を足場を成形したい位置へ移動させることが困難な場合にも、容易に足場設計面の位置を決定することができる。
【0063】
また第1の実施形態によれば、制御装置150は、対象法面の上下の2つの稜線のうち1つの稜線の選択を受け付ける。これにより、オペレータは上下の任意の稜線に対応する足場を設計することができる。なお、他の実施形態においては、足場の設計に用いられる稜線が、予め上の稜線または下の稜線に固定されていてもよい。
【0064】
また第1の実施形態によれば、制御装置150は、足場設計面および設計地形データD1の面のうち1つの設計面の選択を受け付け、選択された前記設計面に基づいて介入制御を行う。これにより、オペレータは、足場の形成と設計地形データD1に基づく施工とを切り替えて作業車両100を運転することができる。
【0065】
以上、図面を参照して一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、様々な設計変更等をすることが可能である。
例えば、上述した実施形態では、制御装置150が足場設計面を生成するが、これに限られない。例えば、他の実施形態においては、第2操作装置143が足場設計面の生成機能を有していてもよい。また他の実施形態においては、設計者が操作する設計端末において足場設計面を生成し、当該足場設計面を示す足場データD2を制御装置150に記憶させてもよい。つまり、他の実施形態においては、足場設計装置が他の装置によって実現されてもよく、また足場設計装置が複数の機器によって構成されてもよい。
【0066】
また上述した実施形態では、条件入力部216によって足場の設計条件の入力を受け付けるが、これに限られない。例えば他の実施形態に係る制御装置150は予め定められた設計条件に従って足場設計面を生成してもよい。このとき、足場設計面は、稜線を水平方向に延長した面に対して平行となる面であってよい。
【符号の説明】
【0067】
100…作業車両 110…走行体 120…旋回体 130…作業機 140…運転室 121…位置方位検出器 122…傾斜検出器 131…ブーム 132…アーム 133…バケット 134…ブームシリンダ 135…アームシリンダ 136…バケットシリンダ 137…ブームストロークセンサ 138…アームストロークセンサ 139…バケットストロークセンサ 141…運転席 第1142…操作装置 第2143…操作装置 150…制御装置 1421…左操作レバー 1422…右操作レバー 1423…フットペダル 1424…走行レバー 210…プロセッサ 230…メインメモリ 250…ストレージ 270…インタフェース 211…検出情報取得部 212…バケット位置特定部 213…法面選択部 214…稜線選択部 215…傾き決定部 216…条件入力部 217…足場設計部 218…設計面選択部 219…操作量取得部 220…制御線決定部 221…介入制御部 222…表示制御部