(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-07
(45)【発行日】2022-09-15
(54)【発明の名称】高透明シート成形用ポリプロピレン組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 23/10 20060101AFI20220908BHJP
C08L 23/16 20060101ALI20220908BHJP
C08F 4/658 20060101ALI20220908BHJP
C08K 5/098 20060101ALI20220908BHJP
C08K 5/1575 20060101ALI20220908BHJP
C08K 5/521 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
C08L23/10
C08L23/16
C08F4/658
C08K5/098
C08K5/1575
C08K5/521
(21)【出願番号】P 2018212754
(22)【出願日】2018-11-13
【審査請求日】2021-09-24
(73)【特許権者】
【識別番号】597021842
【氏名又は名称】サンアロマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100112634
【氏名又は名称】松山 美奈子
(74)【代理人】
【識別番号】100129311
【氏名又は名称】新井 規之
(72)【発明者】
【氏名】木村 秀治
(72)【発明者】
【氏名】栗山 稔
(72)【発明者】
【氏名】池田 正幸
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-169296(JP,A)
【文献】国際公開第2013/125504(WO,A1)
【文献】特開2002-226645(JP,A)
【文献】特開2008-231143(JP,A)
【文献】特開2011-219519(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L23/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分(A)として、0~2重量%のエチレンを含有するプロピレン(共)重合体、
成分(B)として、結晶核剤および
成分(C)として、式(1)で表される滑剤を含み、
【化1】
(式中、Rは炭素数10~30の脂肪族有機酸残基であり、
Mは金属原子であり、
nは1または2である。)
成分(A)のMFR(230℃、2.16kg)が0.3~10g/10分であり、
成分(A)の多分散指数(PI)が5~10であり、
成分(A)100重量部に対して、0.015~0.5重量部の成分(B)を含み、
成分(A)100重量部に対して、0.08~0.5重量部の成分(C)を含む、
加熱を伴う二次加工成形体のためのシート成形用ポリプロピレン組成物。
【請求項2】
前記成分(A)が、マグネシウム、チタン、ハロゲン、およびスクシネート系化合物から選択される電子供与体化合物を必須成分として含有する固体触媒、ならびに有機アルミニウム化合物を含む触媒を用いて、対応するモノマーを重合して得たプロピレン(共)重合体である、請求項1に記載のポリプロピレン組成物。
【請求項3】
前記結晶核剤が、ノニトール系核剤、ソルビトール系核剤、リン酸エステル系核剤、トリアミノベンゼン誘導体系核剤、カルボン酸金属塩系核剤、およびキシリトール系核剤からなる群より選択される、請求項1または2に記載のポリプロピレン組成物。
【請求項4】
前記Rがヒドロキシ基を含む、請求項1~3のいずれかに記載のポリプロピレン組成物。
【請求項5】
前記成分(A)中のエチレン由来単位の含有量が0.2~1.5重量%である、請求項1~4のいずれかに記載のポリプロピレン組成物。
【請求項6】
前記成分(A)のMFR(230℃、2.16kg)が2~7g/10分である、請求項1~5のいずれかに記載のポリプロピレン組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載のポリプロピレン組成物から製造したシート。
【請求項8】
請求項7記載のシートを加工して得た二次加工成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高透明シートの成形に好適なポリプロピレン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレンは、優れた物理的特性を有しかつ衛生面にも優れているため包装用シートとして使用されている。当該シートには優れた機械的特性や外観が求められる。例えば特許文献1には、透明で高い剛性と十分な衝撃強度を有するシートの成形が可能なポリプロピレン組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明者らは予備検討を行った結果、特許文献1に開示されたポリプロピレン組成物から製造したシートを加熱して二次加工すると外部ヘーズが増加し透明性が悪化する傾向があることを見出した。かかる事情を鑑み、本発明は、高い剛性に加え、加熱を伴う二次加工後に優れた透明性を有する二次加工成形体を与えるシート成形用ポリプロピレン組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明者らは特定の滑剤を用いることで、前記課題が解決できることを見出した。すなわち、前記課題は以下の本発明によって解決される。
[1]成分(A)として、0~2重量%のエチレンを含有するプロピレン(共)重合体、
成分(B)として、結晶核剤および
成分(C)として、後述する式(1)で表される滑剤を含み、
成分(A)のMFR(230℃、2.16kg)が0.3~10g/10分であり、
成分(A)の多分散指数(PI)が5~10であり、
成分(A)100重量部に対して、0.015~0.5重量部の成分(B)を含み、
成分(A)100重量部に対して、0.08~0.5重量部の成分(C)を含む、
ポリプロピレン組成物。
[2]前記成分(A)が、マグネシウム、チタン、ハロゲン、およびスクシネート系化合物から選択される電子供与体化合物を必須成分として含有する固体触媒、ならびに有機アルミニウム化合物を含む触媒を用いて、対応するモノマーを重合して得たプロピレン(共)重合体である、[1]に記載のポリプロピレン組成物。
[3]前記結晶核剤が、ノニトール系核剤、ソルビトール系核剤、リン酸エステル系核剤、トリアミノベンゼン誘導体系核剤、カルボン酸金属塩系核剤、およびキシリトール系核剤からなる群より選択される、[1]または[2]に記載のポリプロピレン組成物。
[4]前記式(1)におけるRがヒドロキシ基を含む、[1]~[3]のいずれかに記載のポリプロピレン組成物。
[5]前記成分(A)中のエチレン由来単位の含有量が0.2~1.5重量%である、[1]~[4]のいずれかに記載のポリプロピレン組成物。
[6]前記成分(A)のMFR(230℃、2.16kg)が2~7g/10分である、[1]~[5]のいずれかに記載のポリプロピレン組成物。
[7]前記[1]~[6]のいずれかに記載のポリプロピレン組成物から製造したシート。
[8]前記[7]記載のシートを加工して得た二次加工成形体。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、高い剛性に加え、加熱を伴う二次加工後に優れた透明性を有する二次加工成形体を与えるシート成形用ポリプロピレン組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明において「X~Y」は、両端の値すなわちXとYとを含む。
【0008】
1.ポリプロピレン組成物
(1)プロピレン(共)重合体(成分(A))
本発明のプロピレン(共)重合体は0~2重量%のエチレン由来単位を含む。2重量%のエチレン由来単位を含むプロピレン共重合体とは、エチレン由来の単位とプロピレン由来の単位との重量比が2:98である共重合体である。他の共重合体についても同様である。エチレン由来単位が多いとポリプロピレン組成物の剛性が低下し、少ないと透明性が低下する。この観点から、エチレン由来単位の上限は好ましくは1.5重量%以下、さらに好ましくは1.0重量%以下であり、下限は好ましくは0.2重量%以上、より好ましくは0.3重量%以上である。エチレン由来単位の含有量が0重量%である場合は、成分(A)はプロピレン単独重合体である。
【0009】
成分(A)のMFR(230℃、2.16kg)は0.3~10g/10分である。MFRが下限値未満であるとシートの成形時に成形機への負荷が高くなって成形性が低下し、上限値を超えるとドローダウンが生じやすく二次加工性が低下する。この観点から、MFRの上限は好ましくは7g/10分以下であり、下限は好ましくは2g/10分以上である。
【0010】
成分(A)の多分散指数(PI)は5~10である。PIは分子量分布の指標であり、粘弾性測定を行い、複素弾性率より求められる。PIが下限未満であるとドローダウンが生じやすく二次加工性が低下し、上限を超えると成分(A)を製造すること自体が困難となり、かつシートの外観が悪化する。この観点から、PIの上限は7以下が好ましく、下限は5.5以上が好ましい。
【0011】
成分(A)は任意の方法で製造されうるが、マグネシウム、チタン、ハロゲン、およびスクシネート系化合物から選択される内部電子供与体化合物を必須成分として含有する固体触媒、ならびに有機アルミニウム化合物を含む触媒を用いて、対応するモノマーを重合する方法で製造されることが好ましい。
【0012】
(1-1)固体触媒(成分(i))
内部電子供与体化合物としてスクシネート系化合物を含有する触媒(以下「Suc触媒」ともいう)を用いて重合されたポリマーは、広分子量分布(高PI)でありかつ高分子量成分と低分子量成分が均一に分散している。分子量分布は物理量であり測定により決定できる。しかしながらこの測定値では、高分子量成分と低分子量成分の分散度合いを表すことはできない。例えば、パウダーやペレット性状で与えられる高分子量成分と低分子量成分とを押出機等を用いて溶融混練する、あるいはSuc触媒以外の触媒を用いて分子量の異なる成分の多段重合を行うことにより、一見、Suc触媒を用いて重合して得たポリマーと同等の分子量分布(測定値)を有するポリマーを得ることも可能である。しかしこのようにして得たポリマーと、Suc触媒を用いて重合して得たポリマーでは高分子量成分と低分子量成分の分散度合いが異なり、後者は均一な分散度合いが達成されている。その差は、例えば剛性、耐衝撃性、加工性、外観等の性能において顕著である。
【0013】
成分(i)は、公知の方法、例えばマグネシウム化合物とチタン化合物と電子供与体化合物を相互接触させることにより調製できる。
【0014】
成分(i)の調製に用いられるチタン化合物として、一般式:Ti(OR)gX4-gで表される4価のチタン化合物が好適である。式中、Rは炭化水素基、Xはハロゲン、0≦g≦4である。チタン化合物として、より具体的にはTiCl4、TiBr4、TiI4などのテトラハロゲン化チタン;Ti(OCH3)Cl3、Ti(OC2H5)Cl3、Ti(On-C4H9)Cl3、Ti(OC2H5)Br3、Ti(OisoC4H9)Br3などのトリハロゲン化アルコキシチタン;Ti(OCH3)2Cl2、Ti(OC2H5)2Cl2、Ti(On-C4H9)2Cl2、Ti(OC2H5)2Br2などのジハロゲン化アルコキシチタン;Ti(OCH3)3Cl、Ti(OC2H5)3Cl、Ti(On-C4H9)3Cl、Ti(OC2H5)3Brなどのモノハロゲン化トリアルコキシチタン;Ti(OCH3)4、Ti(OC2H5)4、Ti(On-C4H9)4などのテトラアルコキシチタンなどが挙げられる。これらの中で好ましいものはハロゲン含有チタン化合物、特にテトラハロゲン化チタンであり、特に好ましいものは、四塩化チタンである。
【0015】
成分(i)の調製に用いられるマグネシウム化合物としては、マグネシウム-炭素結合やマグネシウム-水素結合を有するマグネシウム化合物、例えばジメチルマグネシウム、ジエチルマグネシウム、ジプロピルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、ジアミルマグネシウム、ジヘキシルマグネシウム、ジデシルマグネシウム、エチル塩化マグネシウム、プロピル塩化マグネシウム、ブチル塩化マグネシウム、ヘキシル塩化マグネシウム、アミル塩化マグネシウム、ブチルエトキシマグネシウム、エチルブチルマグネシウム、ブチルマグネシウムハイドライドなどが挙げられる。これらのマグネシウム化合物は、例えば有機アルミニウム等との錯化合物の形で用いることもでき、また、液状であっても固体状であってもよい。さらに好適なマグネシウム化合物として、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、フッ化マグネシウムのようなハロゲン化マグネシウム;メトキシ塩化マグネシウム、エトキシ塩化マグネシウム、イソプロポキシ塩化マグネシウム、ブトキシ塩化マグネシウム、オクトキシ塩化マグネシウムのようなアルコキシマグネシウムハライド;フェノキシ塩化マグネシウム、メチルフェノキシ塩化マグネシウムのようなアリロキシマグネシウムハライド;エトキシマグネシウム、イソプロポキシマグネシウム、ブトキシマグネシウム、n-オクトキシマグネシウム、2-エチルヘキソキシマグネシウムのようなアルコキシマグネシウム;フェノキシマグネシウム、ジメチルフェノキシマグネシウムのようなアリロキシマグネシウムなどを挙げることができる。
【0016】
成分(i)の調製に用いられる電子供与体化合物は、一般には「内部電子供与体化合物」と称される。本発明においては、広い分子量分布を与える内部電子供与体化合物を用いることが好ましい。一般に、ポリマーブレンドや多段階で重合を行うことにより分子量分布を大きくできることが知られているが、当該触媒を用いて重合されたポリマーは、別の触媒を用いて重合されたポリマーをパウダーやペレット性状でブレンドして得た同じ分子量分布を有するポリマー、さらに多段重合して同じ分子量分布を有するポリマーに比べて優れた剛性、耐衝撃性、加工性、外観等を示す。これは、当該触媒を用いて製造したポリマーは高分子量成分と低分子量成分が分子レベルに近い状態で一体となっているが、後者のポリマーは分子レベルに近い状態では混ざり合ってはおらず、見かけ上同一の分子量分布を示しているにすぎないためと考えられる。以下、好ましい内部電子供与体化合物について説明する。
【0017】
本発明において好ましい内部電子供与体化合物はスクシネート系化合物である。本発明でスクシネート系化合物とはコハク酸のジエステルまたは置換コハク酸のジエステルをいう。以下、スクシネート系化合物について詳しく説明する。本発明で好ましく使用されるスクシネート系化合物は、以下の式(I)で表される。
【0018】
【0019】
式中、基R1およびR2は、互いに同一かまたは異なり、場合によってはヘテロ原子を含む、C1~C20の線状または分岐のアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、またはアルキルアリール基であり;基R3~R6は、互いに同一かまたは異なり、水素、或いは場合によってはヘテロ原子を含む、C1~C20の線状または分岐のアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、またはアルキルアリール基であり、同じ炭素原子または異なる炭素原子に結合している基R3~R6は一緒に結合して環を形成してもよい。
【0020】
R1およびR2は、好ましくは、C1~C8のアルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、およびアルキルアリール基である。R1およびR2が第1級アルキル、特に分岐第1級アルキルから選択される化合物が特に好ましい。好適なR1およびR2基の例は、C1~C8のアルキル基であり、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、イソブチル、ネオペンチル、2-エチルヘキシルである。エチル、イソブチル、およびネオペンチルが特に好ましい。
【0021】
式(I)によって示される化合物の好ましい群の1つは、R3~R5が水素であり、R6が、3~10個の炭素原子を有する、分岐アルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、およびアルキルアリール基であるものである。このような単置換スクシネート化合物の好ましい具体例は、ジエチル-sec-ブチルスクシネート、ジエチルテキシルスクシネート、ジエチルシクロプロピルスクシネート、ジエチルノルボニルスクシネート、ジエチルペリヒドロスクシネート、ジエチルトリメチルシリルスクシネート、ジエチルメトキシスクシネート、ジエチル-p-メトキシフェニルスクシネート、ジエチル-p-クロロフェニルスクシネート、ジエチルフェニルスクシネート、ジエチルシクロヘキシルスクシネート、ジエチルベンジルスクシネート、ジエチルシクロヘキシルメチルスクシネート、ジエチル-t-ブチルスクシネート、ジエチルイソブチルスクシネート、ジエチルイソプロピルスクシネート、ジエチルネオペンチルスクシネート、ジエチルイソペンチルスクシネート、ジエチル(1-トリフルオロメチルエチル)スクシネート、ジエチルフルオレニルスクシネート、1-エトキシカルボジイソブチルフェニルスクシネート、ジイソブチル-sec-ブチルスクシネート、ジイソブチルテキシルスクシネート、ジイソブチルシクロプロピルスクシネート、ジイソブチルノルボニルスクシネート、ジイソブチルペリヒドロスクシネート、ジイソブチルトリメチルシリルスクシネート、ジイソブチルメトキシスクシネート、ジイソブチル-p-メトキシフェニルスクシネート、ジイソブチル-p-クロロフェニルスクシネート、ジイソブチルシクロヘキシルスクシネート、ジイソブチルベンジルスクシネート、ジイソブチルシクロヘキシルメチルスクシネート、ジイソブチル-t-ブチルスクシネート、ジイソブチルイソブチルスクシネート、ジイソブチルイソプロピルスクシネート、ジイソブチルネオペンチルスクシネート、ジイソブチルイソペンチルスクシネート、ジイソブチル(1-トリフルオロメチルエチル)スクシネート、ジイソブチルフルオレニルスクシネート、ジネオペンチル-sec-ブチルスクシネート、ジネオペンチルテキシルスクシネート、ジネオペンチルシクロプロピルスクシネート、ジネオペンチルノルボニルスクシネート、ジネオペンチルペリヒドロスクシネート、ジネオペンチルトリメチルシリルスクシネート、ジネオペンチルメトキシスクシネート、ジネオペンチル-p-メトキシフェニルスクシネート、ジネオペンチル-p-クロロフェニルスクシネート、ジネオペンチルフェニルスクシネート、ジネオペンチルシクロヘキシルスクシネート、ジネオペンチルベンジルスクシネート、ジネオペンチルシクロヘキシルメチルスクシネート、ジネオペンチル-t-ブチルスクシネート、ジネオペンチルイソブチルスクシネート、ジネオペンチルイソプロピルスクシネート、ジネオペンチルネオペンチルスクシネート、ジネオペンチルイソペンチルスクシネート、ジネオペンチル(1-トリフルオロメチルエチル)スクシネート、ジネオペンチルフルオレニルスクシネートである。
【0022】
式(I)の範囲内の化合物の他の好ましい群は、R3~R6からの少なくとも2つの基が、水素とは異なり、場合によってはヘテロ原子を含む、C1~C20の線状または分岐のアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、またはアルキルアリール基から選択されるものである。水素とは異なる2つの基が同じ炭素原子に結合している化合物が特に好ましい。具体的には、R3およびR4が水素とは異なる基であり、R5およびR6が水素原子である化合物である。このような二置換スクシネートの好ましい具体例は、ジエチル-2,2-ジメチルスクシネート、ジエチル-2-エチル-2-メチルスクシネート、ジエチル-2-ベンジル-2-イソプロピルスクシネート、ジエチル-2-シクロヘキシルメチル-2-イソブチルスクシネート、ジエチル-2-シクロペンチル-2-n-ブチルスクシネート、ジエチル-2、2-ジイソブチルスクシネート、ジエチル-2-シクロヘキシル-2-エチルスクシネート、ジエチル-2-イソプロピル-2-メチルスクシネート、ジエチル-2-テトラデシル-2-エチルスクシネート、ジエチル-2-イソブチル-2-エチルスクシネート、ジエチル-2-(1-トリフルオロメチルエチル)-2-メチルスクシネート、ジエチル-2-イソペンチル-2-イソブチルスクシネート、ジエチル-2-フェニル-2-n-ブチルスクシネート、ジイソブチル-2,2-ジメチルスクシネート、ジイソブチル-2-エチル-2-メチルスクシネート、ジイソブチル-2-ベンジル-2-イソプロピルスクシネート、ジイソブチル-2-シクロヘキシルメチル-2-イソブチルスクシネート、ジイソブチル-2-シクロペンチル-2-n-ブチルスクシネート、ジイソブチル-2,2-ジイソブチルスクシネート、ジイソブチル-2-シクロヘキシル-2-エチルスクシネート、ジイソブチル-2-イソプロピル-2-メチルスクシネート、ジイソブチル-2-テトラデシル-2-エチルスクシネート、ジイソブチル-2-イソブチル-2-エチルスクシネート、ジイソブチル-2-(1-トリフルオロメチルエチル)-2-メチルスクシネート、ジイソブチル-2-イソペンチル-2-イソブチルスクシネート、ジイソブチル-2-フェニル-2-n-ブチルスクシネート、ジネオペンチル-2,2-ジメチルスクシネート、ジネオペンチル-2-エチル-2-メチルスクシネート、ジネオペンチル-2-ベンジル-2-イソプロピルスクシネート、ジネオペンチル-2-シクロヘキシルメチル-2-イソブチルスクシネート、ジネオペンチル-2-シクロペンチル-2-n-ブチルスクシネート、ジネオペンチル-2,2-ジイソブチルスクシネート、ジネオペンチル-2-シクロヘキシル-2-エチルスクシネート、ジネオペンチル-2-イソプロピル-2-メチルスクシネート、ジネオペンチル-2-テトラデシル-2-エチルスクシネート、ジネオペンチル-2-イソブチル-2-エチルスクシネート、ジネオペンチル-2-(1-トリフルオロメチルエチル)-2-メチルスクシネート、ジネオペンチル-2-イソペンチル-2-イソブチルスクシネート、ジネオペンチル-2-フェニル-2-n-ブチルスクシネートである。
【0023】
さらに、水素とは異なる少なくとも2つの基が異なる炭素原子に結合している化合物も特に好ましい。具体的にはR3およびR5が水素と異なる基である化合物である。この場合、R4およびR6は水素原子であってもよいし水素とは異なる基であってもよいが、いずれか一方が水素原子であること(三置換スクシネート)が好ましい。このような化合物の好ましい具体例は、ジエチル-2,3-ビス(トリメチルシリル)スクシネート、ジエチル-2,2-sec-ブチル-3-メチルスクシネート、ジエチル-2-(3,3,3-トリフルオロプロピル)-3-メチルスクシネート、ジエチル-2,3-ビス(2-エチルブチル)スクシネート、ジエチル-2,3-ジエチル-2-イソプロピルスクシネート、ジエチル-2,3-ジイソプロピル-2-メチルスクシネート、ジエチル-2,3-ジシクロヘキシル-2-メチルジエチル-2,3-ジベンジルスクシネート、ジエチル-2,3-ジイソプロピルスクシネート、ジエチル-2,3-ビス(シクロヘキシルメチル)スクシネート、ジエチル-2,3-ジ-t-ブチルスクシネート、ジエチル-2,3-ジイソブチルスクシネート、ジエチル-2,3-ジネオペンチルスクシネート、ジエチル-2,3-ジイソペンチルスクシネート、ジエチル-2,3-(1-トリフルオロメチルエチル)スクシネート、ジエチル-2,3-テトラデシルスクシネート、ジエチル-2,3-フルオレニルスクシネート、ジエチル-2-イソプロピル-3-イソブチルスクシネート、ジエチル-2-tert-ブチル-3-イソプロピルスクシネート、ジエチル-2-イソプロピル-3-シクロヘキシルスクシネート、ジエチル-2-イソペンチル-3-シクロヘキシルスクシネート、ジエチル-2-テトラデシル-3-シクロヘキシルメチルスクシネート、ジエチル-2-シクロヘキシル-3-シクロペンチルスクシネート、ジイソブチル-2,3-ジエチル-2-イソプロピルスクシネート、ジイソブチル-2,3-ジイソプロピル-2-メチルスクシネート、ジイソブチル-2,3-ジシクロヘキシル-2-メチルスクシネート、ジイソブチル-2,3-ジベンジルスクシネート、ジイソブチル-2,3-ジイソプロピルスクシネート、ジイソブチル-2,3-ビス(シクロヘキシルメチル)スクシネート、ジイソブチル-2,3-ジ-t-ブチルスクシネート、ジイソブチル-2,3-ジイソブチルスクシネート、ジイソブチル-2,3-ジネオペンチルスクシネート、ジイソブチル-2,3-ジイソペンチルスクシネート、ジイソブチル-2,3-(1-トリフルオロメチルエチル)スクシネート、ジイソブチル-2,3-テトラデシルスクシネート、ジイソブチル-2,3-フルオレニルスクシネート、ジイソブチル-2-イソプロピル-3-イソブチルスクシネート、ジイソブチル-2-tert-ブチル-3-イソプロピルスクシネート、ジイソブチル-2-イソプロピル-3-シクロヘキシルスクシネート、ジイソブチル-2-イソペンチル-3-シクロヘキシルスクシネート、ジイソブチル-2-テトラデシル-3-シクロヘキシルメチルスクシネート、ジイソブチル-2-シクロヘキシル-3-シクロペンチルスクシネート、ジネオペンチル-2,3-ビス(トリメチルシリル)スクシネート、ジネオペンチル-2,2-sec-ブチル-3-メチルスクシネート、ジネオペンチル-2-(3,3,3-トリフルオロプロピル)-3-メチルスクシネート、ジネオペンチル-2,3-ビス(2-エチルブチル)スクシネート、ジネオペンチル-2,3-ジエチル-2-イソプロピルスクシネート、ジネオペンチル-2,3-ジイソプロピル-2-メチルスクシネート、ジネオペンチル-2,3-ジシクロヘキシル-2-メチルスクシネート、ジネオペンチル-2,3-ジベンジルスクシネート、ジネオペンチル-2,3-ジイソプロピルスクシネート、ジネオペンチル-2,3-ビス(シクロヘキシルメチル)スクシネート、ジネオペンチル-2,3-ジ-t-ブチルスクシネート、ジネオペンチル-2,3-ジイソブチルスクシネート、ジネオペンチル-2,3-ジネオペンチルスクシネート、ジネオペンチル-2,3-ジイソペンチルスクシネート、ジネオペンチル-2,3-(1-トリフルオロメチルエチル)スクシネート、ジネオペンチル-2,3-テトラデシルスクシネート、ジネオペンチル-2,3-フルオレニルスクシネート、ジネオペンチル-2-イソプロピル-3-イソブチルスクシネート、ジネオペンチル-2-tert-ブチル-3-イソプロピルスクシネート、ジネオペンチル-2-イソプロピル-3-シクロヘキシルスクシネート、ジネオペンチル-2-イソペンチル-3-シクロヘキシルスクシネート、ジネオペンチル-2-テトラデシル-3-シクロヘキシルメチルスクシネート、ジネオペンチル-2-シクロヘキシル-3―シクロペンチルスクシネートである。
【0024】
式(I)の化合物のうち、基R3~R6のうちのいくつかが一緒に結合して環を形成している化合物も好ましく用いることができる。このような化合物として特表2002-542347に挙げられている化合物、例えば、1-(エトキシカルボニル)-1-(エトキシアセチル)-2,6-ジメチルシクロヘキサン、1-(エトキシカルボニル)-1-(エトキシアセチル)-2,5一ジメチルシクロペンタン、1-(エトキシカルボニル)-1-(エトキシアセチルメチル)-2一メチルシクロへキサン、1-(エトキシカルボニル)-1-(エトキシ(シクロヘキシル)アセチル)シクロヘキサンを挙げることができる。他には、例えば国際公開第2009/069483に開示されているような3,6-ジメチルシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸ジイソブチル、シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸ジイソブチル等の環状スクシネート化合物も好適に用いることができる。他の環状スクシネート化合物の例としては、国際公開2009/057747号に開示されている化合物も好ましい。
【0025】
式(I)の化合物のうち、基R3~R6がヘテロ原子を含む場合、ヘテロ原子は窒素およびリン原子を含む第15族原子あるいは酸素およびイオウ原子を含む第16族原子であることが好ましい。基R3~R6が第15族原子を含む化合物としては、特開2005-306910号に開示される化合物が挙げられる。一方、基R3~R6が第16族原子を含む化合物としては、特開2004-131537号に開示される化合物が挙げられる。
【0026】
この他に、スクシネート系化合物と同等の分子量分布を与える内部電子供与体化合物を用いてもよい。そのような化合物としては、例えば特開2013-28704号公報に記載のジフェニルジカルボン酸エステル、特開2014-201602号公報に記載のシクロヘキセンジカルボン酸エステル、特開2013-28705号公報に記載のジシクロアルキルジカルボン酸エステル、特許第4959920号に記載のジオールジベンゾエート、国際公開第2010/078494に記載の1,2-フェニレンジベンゾエートが挙げられる。
【0027】
(1-2)有機アルミニウム化合物(成分(ii))
成分(ii)の有機アルミニウム化合物としては以下が挙げられる。
トリエチルアルミニウム、トリブチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム;
トリイソプレニルアルミニウムのようなトリアルケニルアルミニウム:
ジエチルアルミニウムエトキシド、ジブチルアルミニウムブトキシドなどのジアルキルアルミニウムアルコキシド;
エチルアルミニウムセスキエトキシド、ブチルアルミニウムセスキブトキシドなどのアルキルアルミニウムセスキアルコキシド;
【0028】
エチルアルミニウムジクロリド、プロピルアルミニウムジクロリド、ブチルアルミニウムジブロミドなどのようなアルキルアルミニウムジハロゲニドなどの部分的にハロゲン化されたアルキルアルミニウム;
ジエチルアルミニウムヒドリド、ジブチルアルミニウムヒドリドなどのジアルキルアルミニウムヒドリド;
エチルアルミニウムジヒドリド、プロピルアルミニウムジヒドリドなどのアルキルアルミニウムジヒドリドなどの部分的に水素化されたアルキルアルミニウム;
エチルアルミニウムエトキシクロリド、ブチルアルミニウムブトキシクロリド、エチルアルミニウムエトキシブロミドなどの部分的にアルコキシ化およびハロゲン化されたアルキルアルミニウム。
【0029】
(1-3)電子供与体化合物(成分(iii))
成分(A)を製造するための触媒は、成分(iii)として外部電子供与体化合物を含むことが好ましい。このような化合物としては有機ケイ素化合物が好ましく、具体的には以下の化合物が挙げられる。
トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、t-ブチルメチルジメトキシシラン、t-ブチルメチルジエトキシシラン、t-アミルメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ビスo-トリルジメトキシシラン、ビスm-トリルジメトキシシラン、ビスp-トリルジメトキシシラン、ビスp-トリルジエトキシシラン、ビスエチルフェニルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、γ-クロルプロピルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、t-ブチルトリエトキシシラン、テキシルトリメトキシシラン、n-ブチルトリエトキシシラン、iso-ブチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、クロルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、2-ノルボルナントリメトキシシラン、2-ノルボルナントリエトキシシラン、2-ノルボルナンメチルジメトキシシラン、ケイ酸エチル、ケイ酸ブチル、トリメチルフエノキシシラン、メチルトリアリルオキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシシラン)、ビニルトリアセトキシシラン、ジメチルテトラエトキシジシロキサン、メチル(3,3,3-トリフルオロ-n-プロピル)ジメトキシシラン、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン、シクロペンチル-t-ブトキシジメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、イソブチルイソプロピルジメトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、ジ-n-プロピルジメトキシシラン、テキシルトリメトキシシラン、t-ブチルエチルジメトキシシラン、t-ブチルプロピルジメトキシシラン、t-ブチル-t-ブトキシジメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、シクロヘキシルイソブチルジメトキシシラン、ジ-sec-ブチルジメトキシシラン、イソブチルメチルジメトキシシラン、ビス(デカヒドロイソキノリン-2-イル)ジメトキシシラン、ジエチルアミノトリエトキシシラン、ジシクロペンチル-ビス(エチルアミノ)シラン、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン。
【0030】
中でも、エチルトリエトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、t-ブチルトリエトキシシラン、t-ブチルメチルジメトキシシラン、t-ブチルメチルジエトキシシラン、t-ブチルエチルジメトキシシラン、t-ブチルプロピルジメトキシシラン、t-ブチルt-ブトキシジメトキシシラン、t-ブチルトリメトキシシラン、i-ブチルトリメトキシシラン、イソブチルメチルジメトキシシラン、i-ブチルセク-ブチルジメトキシシラン、エチル(パーヒドロイソキノリン2-イル)ジメトキシシラン、ビス(デカヒドロイソキノリン-2-イル)ジメトキシシラン、トリ(イソプロペニロキシ)フェニルシラン、テキシルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、i-ブチルi-プロピルジメトキシシラン、シクロペンチルt-ブトキシジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルi-ブチルジメトキシシラン、シクロペンチルi-ブチルジメトキシシラン、シクロペンチルイソプロピルジメトキシシラン、ジ-sec-ブチルジメトキシシラン、ジエチルアミノトリエトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルトリエトキシラン、ビスp-トリルジメトキシシラン、p-トリルメチルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン、2-ノルボルナントリエトキシシラン、2-ノルボルナンメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチル(3、3、3-トリフルオロプロピル)ジメトキシシラン、ケイ酸エチルなどが好ましい。
【0031】
(1-4)重合
上記のとおりに調製した触媒に原料モノマーを接触させて重合する。この際、まず前記触媒を用いて予重合を行うことが好ましい。予重合とは、その後の原料モノマーの本重合の足がかりとなるポリマー鎖を固体触媒成分に形成させる工程である。予重合は公知の方法で行うことができる。予重合は、通常は40℃以下、好ましくは30℃以下、より好ましくは20℃以下で行われる。次いで、予重合した触媒(予重合触媒)を重合反応系内に導入して、原料モノマーの本重合を行う。重合は、液相中、気相中または液-気相中で実施してよい。重合温度は常温~150℃が好ましく、40℃~100℃がより好ましい。重合圧力は、液相中で行われる場合には好ましくは3.3~6.0MPaの範囲であり、気相中で行われる場合には好ましくは0.5~3.0MPaの範囲である。連鎖移動剤(たとえば、水素またはZnEt2)などの当該分野で公知の慣用の分子量調整剤を用いてもよい。
【0032】
また、モノマー濃度や重合条件の勾配を有する重合器を用いてもよい。このような重合器では、例えば、少なくとも2つの重合領域が接続されたものを使用し、気相重合でモノマーを重合することができる。具体的には、触媒の存在下、上昇管からなる重合領域にてモノマーを供給して重合し、上昇管に接続された下降管にてモノマーを供給して重合し、上昇管と下降管とを循環しながら、ポリマー生成物を回収する。この方法は、上昇管中に存在する気体混合物が下降管に入るのを全面的または部分的に防止する手段を備える。また、上昇管中に存在する気体混合物とは異なる組成を有する気体または液体混合物を下降管中に導入する。上記の重合方法として、例えば、特表2002-520426号公報に記載された方法を適用することができる。
【0033】
(2)結晶核剤(成分(B))
結晶核剤とは、樹脂中の結晶成分のサイズを小さく制御して透明性を高めるために用いられる添加剤である。結晶核剤は特に限定されず、当該分野で通常使用されるものを使用してよいが、有機系核剤であることが好ましく、ノニトール系核剤、ソルビトール系核剤、リン酸エステル系核剤、トリアミノベンゼン誘導体系核剤、カルボン酸金属塩系核剤、およびキシリトール系核剤からなる群から選択されることがより好ましい。
【0034】
ノニトール系核剤として、例えば、1,2,3―トリデオキシ-4,6:5,7-ビス-[(4-プロピルフェニル)メチレン]-ノニトールが挙げられる。
【0035】
ソルビトール系核剤として、例えば、ビス-1,3:2,4-(4’-エチルベンジリデン)1-アリルソルビトール、ビス-1,3:2,4-(3’-メチル-4’-フルオロ-ベンジリデン)1-プロピルソルビトール、ビス-1,3:2,4-(3’,4’-ジメチルベンジリデン)1’-メチル-2’-プロペニルソルビトール、ビス-1,3,2,4-ジベンジリデン2’,3’-ジブロモプロピルソルビトール、ビス-1,3,2,4-ジベンジリデン2’-ブロモ-3’-ヒドロキシプロピルソルビトール、ビス-1,3:2,4-(3’-ブロモ-4’-エチルベンジリデン)-1-アリルソルビトール、モノ2,4-(3’-ブロモ-4’-エチルベンジリデン)-1-アリルソルビトール、ビス-1,3:2,4-(4’-エチルベンジリデン)1-アリルソルビトール、ビス-1,3:2,4-(3’,4’-ジメチルベンジリデン)1-メチルソルビトール、ビス(p-メチルベンジリデン)ソルビトール、1,3:2,4-ビス-o-(4-メチルベンジリデン)-D-ソルビトール、1,3:2,4-ビス-o-(ベンジリデン)-D-ソルビトール、1,3:2,4-ビス-o-(3,4-ジメチルベンジリデン)-D-ソルビトールが挙げられる。
【0036】
リン酸エステル系核剤として、例えば、リン酸-2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)アルミニウム塩系化合物、リン酸-2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)リチウム塩系化合物が挙げられる。
【0037】
トリアミノベンゼン誘導体系核剤として、例えば、1,3,5-トリス(2,2-ジメチルプロパンアミド)ベンゼンが挙げられる。
【0038】
カルボン酸金属塩系核剤として、例えば、アジピン酸ナトリウム、アジピン酸カリウム、アジピン酸アルミニウム、セバシン酸ナトリウム、セバシン酸カリウム、セバシン酸アルミニウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸アルミニウム、ジ-パラ-t-ブチル安息香酸アルミニウム、ジ-パラ-t-ブチル安息香酸チタン、ジ-パラ-t-ブチル安息香酸クロム、ヒドロキシ-ジ-t-ブチル安息香酸アルミニウム、1,2-シクロヘキサンジカルボキシル酸カルシウム塩が挙げられる。
【0039】
キシリトール系核剤として、例えば、ビス-1,3:2,4-(5’,6’,7’,8’-テトラヒドロ-2-ナフトアルデヒドベンジリデン)1-アリルキシリトール、ビス-1,3:2,4-(3’,4’-ジメチルベンジリデン)1-プロピルキシリトールが挙げられる。
【0040】
特に、加熱することを含む二次加工後の透明性を維持するために、ノニトール系核剤またはソルビトール系核剤を使用することが好ましい。ここで二次加工とは、一次加工成形体であるシートに加工を施すことをいい、コンプレッション成形、真空成形、圧空成形、真空圧空成形等を施して別の形状を持った成形体に加工したり、シート同士を融着させて接合したりすることであり、得られた成形体を二次加工成形体ともいう。
【0041】
結晶核剤の量は、成分(A)の100重量部に対して、0.015~0.5重量部である。結晶核剤の量がこの上限を超えるとコストが嵩み、この下限未満であると得られるシートの透明性が低下する。この観点から、結晶核剤の配合比は、成分(A)の100重量部に対して、好ましくは0.015~0.4である。本発明においては、高濃度の結晶核剤をポリプロピレン等のオレフィン重合体と溶融混練した、いわゆるマスターバッチを用いてもよい。
【0042】
(3)滑剤(成分(C))
滑剤は、減摩性、離型性を付与するために用いられる添加剤である。本発明で用いる滑剤は、式(1)で表される脂肪族有機酸金属塩である。
【0043】
【0044】
Rは炭素数10~30の脂肪族有機酸残基である。脂肪族有機酸残基とは脂肪族有機酸に由来する基であり、具体的には当該酸からカルボキシル基またはカルボキレート基を除いた基である。脂肪族有機酸としては、ステアリン酸、ラウリン酸、カプリン酸、ネオデカン酸、ウンデカン酸、トリデカン酸、ペンタデカン酸、ノナデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、トウハク酸、リンデル酸、ツズ酸、パルミトレイン酸、ペトロセリン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、リノール酸、リノエライジン酸、γ-リノレン酸、リノレン酸、リシノール酸、ナフテン酸、アビエチン酸等が挙げられる。中でも、産業上の入手容易性やコスト等、経済性の観点からパルミチン酸、ステアリン酸が好ましい。脂肪族有機酸はヒドロキシ基を有していてもよく、このような脂肪族有機酸として、12-ヒドロキシステアリン酸、2-ヒドロキシパルミチン酸、10-ヒドロキシデカン酸、3-ヒドロキシヘキサデカン酸、16-ヒドロキシヘキサデカン酸、3-ヒドロキシラウリン酸、10-ヒドロキシラウリン酸、11-ヒドロキシラウリン酸、2-ヒドロキシミリスチン酸等が挙げられる。脂肪族有機酸がヒドロキシ基を有する場合、ポリプロピレンとの親和性が高くないので、ブリードアウトしやすく滑剤としての効果をより奏しやすい。脂肪族有機酸がヒドロキシ基を有する場合、Rに含まれるヒドロキシ基の数は1または2が好ましく、産業上の入手容易性やコスト等、経済性の観点から1であることがより好ましい。このような観点から、ヒドロキシ基を有する脂肪族有機酸として、12-ヒドロキシステアリン酸が好適である。脂肪族有機酸は1種類でもよいし、2種以上を組合せてもよい。2種以上を組合せることで、ポリプロピレンとの親和性と滑剤としての効果をコントロールすることができる。
【0045】
Mは金属原子である。金属原子として、好ましくはアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、または亜鉛原子である。アルカリ金属原子としては、Li、K、Naが挙げられ、アルカリ土類金属原子としては、Mg、Ca、Sr、Ba等が挙げられる。これらの中でも、産業上の入手容易性やコスト等、経済性の観点からMg、Ca、Liが好ましい。金属原子は1種類でもよいし、2種以上を組合せてもよい。
【0046】
nは1または2であるが、産業上の入手容易性やコスト等、経済性の観点から1であることが好ましい。
【0047】
滑剤の量は、成分(A)100重量部に対して0.08~0.5重量部である。滑剤の量が下限値未満であると滑剤としての効果が不十分となる。滑剤の量が上限を超えると加工時にロール汚れが生じてシートの透明性が低下したり、組成物の粘度や摩擦が低下して押出が困難となったり、滑剤の析出により印刷不良が生じたり、シートの摩擦低下によりハンドリングが困難になる。この観点から、上限は好ましくは0.4重量部以下であり、下限は好ましくは0.1重量部以上である。本発明においては、高濃度の滑剤をポリプロピレン等のオレフィン重合体と溶融混練した、いわゆるマスターバッチを用いてもよい。
【0048】
(4)他の成分
本発明では、さらに酸化防止剤、塩素吸収剤、耐熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、防曇剤、難燃剤、分散剤、銅害防止剤、中和剤、可塑剤、気泡防止剤、架橋剤、過酸化物、油展および他の有機および無機顔料などのオレフィン重合体に通常用いられる慣用の添加剤を添加してもよい。各添加剤の添加量は公知の量としてよい。また、前述のとおり、本発明においては結晶核剤または滑剤のマスターバッチと成分(A)を混合することができる。マスターバッチのマトリックスポリマーが成分(A)と異なる場合、本発明のポリプロピレン組成物は当該マトリックスポリマーを他の成分として含む。
【0049】
ポリプロピレン組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、主成分以外の樹脂またはエラストマーを含有してもよい。ポリプロピレン組成物が含有してもよい樹脂またはエラストマーは1種のみでもよいし、2種以上でもよい。含有量は公知の量としてよい。本発明のポリプロピレン組成物の耐衝撃性を改良する目的でエラストマーを配合する場合、ポリプロピレンとの親和性を考慮してエチレンと炭素数が3以上のα-オレフィンとの共重合体を用いることが好ましい。
【0050】
2.本発明のシート
本発明において、シートとは厚さが150μm以上の部材をいう。本発明のシートは本発明のポリプロピレン組成物を押出成形することで製造できる。あるいは、本発明のシートは、成分(A)~(C)、必要に応じて他の成分をドライブレンドした後に、そのまま押出成形して製造することもできる。このときの成形温度は公知のとおりとしてよいが、シリンダ設定温度を180~250℃とすることが好ましい。また、このようにして得たシートを真空成形や二軸延伸などの二次加工に供することもできる。二次加工における温度も限定されないが、140~170℃であることが好ましい。
【0051】
本発明のシートは、二次加工前はもちろんのこと加熱を伴う二次加工後にも優れた透明性を有する。このメカニズムは限定されないが次のように推察される。二次加工前のシートが優れた透明性を有していても、加熱を伴う二次加工後に透明性が低下することがある。この現象は、押出成形時にシート表面に歪が残留し、この歪が加熱を伴う二次加工によって増幅されることに起因し、特に高PIの組成物ではその傾向が高い。しかし、本発明のポリプロピレン組成物は特定の滑剤を含むので、押出成形時にダイ表面と溶融樹脂の摩擦が軽減されて、溶融樹脂に与えられる応力が小さくなるのでシート表面の歪を小さくでき、加熱を伴う二次加工後においても透明性を維持できる。また滑剤によって、加熱を伴う二次加工における賦形性も向上する。
【0052】
本発明で得られるシートは種々の用途に使用できる。例えば、打抜加工によりシートを所望の形状にでき、あるいは真空成形等によりシートを容器へ二次加工できる。特に本発明のシートは透明性および剛性に優れるので、弁当、麺類、サラダ、惣菜、冷凍食品、氷、氷菓、冷却飲料等の食品容器および蓋などの包装材料として有用である。
【実施例】
【0053】
(1)ポリプロピレン組成物の製造
[プロピレン単独重合体1]
特開2011-500907号の実施例に記載の方法に従い、固体触媒成分(1)を調製した。具体的には以下の通りである:
窒素でパージした500mLの4つ口丸底フラスコ中に、250mLのTiCl4を0℃において導入した。撹拌しながら、10.0gの微細球状MgCl2・1.8C2H5OHおよび9.1ミリモルのジエチル-2,3-(ジイソプロピル)スクシネートを加えた。微細球状MgCl2・1.8C2H5OHは米国特許第4,399,054号明細書の実施例2に記載の方法にしたがって、しかしながら10000rpmに代えて3000rpmで運転することによって製造した。
【0054】
フラスコ内の温度を100℃に上昇し、120分間保持した。次に、撹拌を停止し、固体生成物を沈降させ、上澄み液を吸い出した。次に、以下の操作を2回繰り返した。
250mLの新しいTiCl4を加え、混合物を120℃において60分間反応させ、上澄み液を吸い出した。固体を、60℃において無水ヘキサン(6×100mL)で6回洗浄した。
【0055】
上記固体触媒(1)と、トリエチルアルミニウム(TEAL)およびジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPMS)を、固体触媒に対するTEALの重量比が18であり、TEAL/DCPMSの重量比が10となるような量で、室温において5分間接触した。得られた触媒系を、液体プロピレン中において懸濁状態で20℃において5分間保持することによって予重合を行った。
【0056】
得られた予重合触媒(1-1)を、重合反応器に導入してプロピレン単独重合体を得た。重合中、温度と圧力を調整し、水素を分子量調整剤として用いた。重合温度は70℃、水素濃度は0.25モル%であった。重合体のMFR(温度230℃、荷重2.16kg)は8.0g/10分、多分散指数(PI)は6.1であった。
【0057】
[プロピレン共重合体2]
プロピレン単独重合体1の製造に用いた固体触媒(1)と、TEALとジイソプロピルジメトキシシラン(DIPMS)とを、固体触媒(1)に対するTEALの重量比が11であり、TEAL/DIPMSの重量比が3となるような量で、12℃において24分間接触した。得られた触媒系を、液体プロピレン中において懸濁状態で20℃において5分間保持することによって予重合を行ったものを予重合触媒(1-2)とした。
【0058】
予重合触媒(1-2)を重合反応器に導入し、モノマーとしてプロピレンを供給するとともに、重合反応器内のエチレン濃度が0.118mol%、水素濃度が925molppmとなるように少量のエチレンおよび分子量調整剤としての水素を供給した。重合温度を70℃とし、重合圧力を調整することによってプロピレン-エチレン共重合体を合成した。重合体のエチレン由来単位の含有量は0.5重量%、MFR(温度230℃、荷重2.16kg)は5.0g/10分、多分散指数(PI)は5.9であった。
【0059】
[プロピレン単独重合体3]
欧州特許第674991号公報の実施例1に記載された方法により固体触媒成分(2)を調製した。当該固体触媒は、MgCl2上にTiと内部ドナーとしてのジイソブチルフタレートを上記の特許公報に記載された方法で担持させたものである。以下、内部電子供与体化合物としてジイソブチルフタレート等のフタレート系化合物を含有する触媒を「Ph触媒」ともいう。
【0060】
上記で得られた固体触媒(2)と、有機アルミニウム化合物としてトリエチルアルミニウム(TEAL)と、外部電子供与体化合物としてジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPMS)を用い、固体触媒に対するTEALの重量比が20、TEAL/DCPMSの重量比が10となるような量で、12℃において24分間接触させた。得られた触媒系を、液体プロピレン中において懸濁状態で20℃にて5分間保持することによって予重合を行ったものを予重合触媒(2-1)とした。
【0061】
予重合触媒(2-1)を用い、連結された二つの反応器により二段重合法を行った。一段目の反応器に触媒、プロピレンおよび水素を、二段目の反応器にプロピレンおよび水素を供給して、プロピレン単独重合体を得た。一段目の水素濃度を180molppm、二段目の水素濃度を7890molppmとするとともに、一段目と二段目の比率が50:50になるように滞留時間を調整した。重合温度は80℃とし、重合圧力を調整した。得られたプロピレン単独重合体を製造例A1と同様に溶融混練して重合体組成物を得た。重合体のMFR(温度230℃、荷重2.16kg)は3.0g/10分、多分散指数(PI)は5.8であった。
【0062】
[プロピレン単独重合体4]
上記で得られた固体触媒(2)と、TEALおよびシクロヘキシルメチルジメトキシシラン(CHMMS)を、固体触媒に対するTEALの重量比が8であり、TEAL/CHMMSの重量比が32となるような量で、-5℃において5分間接触させた。得られた触媒系を、液体プロピレン中において懸濁状態で20℃において5分間保持することによって予重合を行ったものを予重合触媒(2-2)とした。
【0063】
得られた予重合触媒(2-2)を重合反応器に導入し、モノマーとしてプロピレンを供給するとともに、重合反応器内の水素濃度が410molppmとなるように分子量調整剤としての水素を供給した。重合温度を75℃とし、重合圧力を調整することによってプロピレン単独重合体を合成した。重合体のMFR(温度230℃、荷重2.16kg)は3.0g/10分、多分散指数(PI)は4.0であった。
【0064】
(2)結晶核剤マスターバッチ
[結晶核剤マスターバッチB1]
後述するマスターバッチ用マトリックスポリマー80重量部、および結晶核剤として20重量部のノニトール系核剤(ミリケン社製Millad NX8000J)をヘンシェルミキサーで1分間撹拌して混合した。ナカタニ機械株式会社製NVCφ50mm単軸押出機を用いてシリンダ設定温度230℃で当該混合物を溶融混練し、押出し、ストランドを水中で冷却した後、ペレタイザーでカットし、ペレット状の結晶核剤マスターバッチB1を製造した。
【0065】
[結晶核剤マスターバッチB2]
結晶核剤としてリン酸エステル系核剤(株式会社ADEKA製 アデカスタブNA71)を用いた以外は、B1と同様にして結晶核剤マスターバッチB2を製造した。
【0066】
[マスターバッチ用マトリックスポリマー]
MFR(230℃、2.16kg)が8g/10分、多分散指数(PI)が4.0のホモポリプロピレンを用いた。
【0067】
(3)滑剤マスターバッチ
[滑剤マスターバッチC1]
上記のマスターバッチ用マトリックスポリマー90重量部、および滑剤として10重量部の12-ヒドロキシステアリン酸マグネシウム(勝田化工株式会社製)を用いた以外は、B1と同様にしてペレット状の滑剤マスターバッチC1を得た。
【0068】
[滑剤マスターバッチC2]
滑剤としてステアリン酸マグネシウム(大日化学工業株式会社製)を用いた以外は、C1と同様にしてペレット状の滑剤マスターバッチC2を得た。
【0069】
[滑剤マスターバッチC3]
滑剤として12-ヒドロキシステアリン酸カルシウム(大日化学工業株式会社製)を用いた以外は、C1と同様にしてペレット状の滑剤マスターバッチC3を得た。
【0070】
[滑剤マスターバッチC4]
滑剤として12-ヒドロキシステアリン酸リチウム(大日化学工業株式会社製)を用いた以外は、C1と同様にしてペレット状の滑剤マスターバッチC4を得た。
【0071】
[比較用滑剤マスターバッチC5]
フッ素系エラストマーマスターバッチとして、東京インキ株式会社製PPM 1530[キャリア樹脂としてMFR(230℃、2.16kg)が7g/10分のポリプロピレンを70重量部含む。]を用いた。
【0072】
[実施例1]
100重量部のプロピレン単独重合体1に対して、酸化防止剤としてBASF社製B225を0.2重量%、中和剤として淡南化学工業株式会社製カルシウムステアレートを0.05重量%、マスターバッチB1およびC1を結晶核剤と滑剤が表1に示す量となるように配合し、ヘンシェルミキサーで1分間撹拌混合した。次いで、混合物をスクリュー直径50mmの単軸押出機(ナカタニ機械株式会社製NVC)を用いてシリンダ設定温度230℃で押出し、ストランドを水中で冷却した後、ペレタイザーでカットし、ペレット状の結晶核剤と滑剤を含むポリプロピレン組成物を得た。
【0073】
40mmφ単軸押出機(田辺プラスチックス機械株式会社製)に375mm幅Tダイを備えたキャストフィルム成形機を用い、シリンダ設定温度230℃、ダイ設定温度230℃、スクリュー回転数30rpm、吐出量7kg/hの条件下でポリプロピレン組成物1を押出し、80℃のロール(ニップ圧力0.1MPa)で処理を行い、厚さ0.30mmのシートを製造した。
【0074】
得られたシートを250mm角に切り取り、株式会社脇坂エンジニアリング製小型真空圧空成形機(形式FVS-500型)を用いて、ヒーター設定温度360℃(上下ともに)、加熱時間36秒、圧空圧力0.6MPaの条件下でトレイ状の容器に二次加工成形した。二次加工成形体としての容器の形状は長さ130mm、幅100mm、深さ25.4mmであった。シートおよび容器について後述のとおり評価した。
【0075】
[実施例2~8]
【0076】
プロピレン共重合体2を用い、実施例1と同様にしてシートおよび容器を製造し、評価した。ただし滑剤および結晶核剤の種類と配合量を表1に示すように変更した。
【0077】
[実施例9]
プロピレン単独重合体3を用いた以外は実施例1と同様にしてシートおよび容器を製造し、評価した。
【0078】
[比較例1]
プロピレン単独重合体4を用い、滑剤を用いなかった以外は実施例1と同様にしてシートおよび容器を製造し、評価した。
【0079】
[比較例2]
プロピレン単独重合体4を用いた以外は実施例1と同様にしてシートおよび容器を製造し、評価した。
【0080】
[比較例3、4、6]
滑剤の量(使用しない場合を含む)と種類を表1に示すように変更した以外は実施例2と同様にしてシートおよび容器を製造し、評価した。
【0081】
[比較例5]
滑剤と結晶核剤の量を表1に示すように変更した以外は実施例2と同様にしてシートおよび容器を製造し、評価した。
【0082】
【0083】
【0084】
本発明のシートは加熱を伴う二次加工後に優れた透明性を有する。さらに本発明のシートは高い剛性も有する。
【0085】
評価は以下のとおりに行った。
[MFR]
JIS K7210-1に従い、温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定した。
[透明性]
JIS K7136に従い、ヘーズ測定装置(株式会社村上色彩技術研究所製HM-150型)により、シート、または容器のヘーズ測定を行い、透明性を評価した。容器に関しては、側面の中央部分を測定に用いた。シートまたは容器をそのまま測定して得た値を全ヘーズとし、これに対してシートまたは容器の両面に流動パラフィン(関東化学株式会社製、Cat.No.32033-00)を塗布して一対のガラス板で挟持した積層体を測定して得た値を内部ヘーズ、全ヘーズから内部ヘーズを差し引くことで算出した値を外部ヘーズとした。
【0086】
[スティフネス]
シートまたは容器を試験片として、JIS P8125に従い、室温23℃でテーバー社製スティフネステスター(TB-150)を用いてテーバーこわさ(スティフネス)を測定し、平均値を求めた。なお、シートについては引き取り方向(MD)またはその垂直方向(TD)を長手方向とする7cm×3.8cmの形状で切り出した試験片をN=4で測定した。容器については側面中央部で容器高さ方向を長手方向とする7cm×3.8cmの形状で切り出した試験片を円筒方向等間隔に4本採取し、N=4として測定した。
【0087】
[多分散指数(PI)]
190℃の温度において、PaarPhysica社製UDS200を用い、0.1rad/秒から100rad/秒に増加する振動数で運転することによって測定した。多分散指数(PI)の値は、等式を用いてクロスオーバー弾性率から誘導した。
PI=105/Gc
式中、Gcは、G’=G”(ここで、G’は貯蔵弾性率であり、G”は損失弾性率である)における値(Paとして表す)として定義されるクロスオーバー弾性率である。
【0088】
[エチレン由来単位の含有量]
1,2,4-トリクロロベンゼン/重水素化ベンゼンの混合溶媒に溶解した試料について、Bruker社製AVANCEIII HD400(13C共鳴周波数100MHz)を用い、測定温度120℃、フリップ角45度、パルス間隔7秒、試料回転数20Hz、積算回数5000回の条件で13C-NMRのスペクトルを得た。
上記で得られたスペクトルを用いて、Kakugo,Y.Naito,K.Mizunuma and T.Miyatake,Macromolecules,15,1150-1152(1982)の文献に記載された方法により、プロピレン共重合体のエチレン由来単位の含有量(重量%)を求めた。
【0089】
[二次加工性(ドローダウン時間)]
金枠に固定した150mm×270mmのシートを、210℃(ポリプロピレンの平衡融点である約186℃を超え、真空圧空成形における予熱温度付近である温度)に設定した試験用オーブンに入れ、融解後、シートが張り戻った時刻t1から自重によりシート中央部が1.5cm垂れ下がるまでの時刻t2までの時間(t2-t1)により二次加工性を評価した。ドローダウンは製品肉厚の不均一を招く原因になる。ドローダウン時間(t2-t1)が長いほどドローダウンし難いので、二次加工性に優れる。
【0090】
[成形体外観(フィッシュアイ)]
シートの表面に含まれるフィッシュアイ(未溶融物やゲル化物を核とする直径0.1mm以上の球形欠陥)の数を目視により観察して、以下の5段階の基準で評価した。
1:フィッシュアイが極めて多い
2:フィッシュアイが多い
3:フィッシュアイを確認できる
4:フィッシュアイが少ない
5:フィッシュアイが全く見られない