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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-07
(45)【発行日】2022-09-15
(54)【発明の名称】二次電池、及び製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 49/00 20060101AFI20220908BHJP
【FI】
H01L49/00 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018212875
(22)【出願日】2018-11-13
(65)【公開番号】P2020080368
(43)【公開日】2020-05-28
【審査請求日】2021-08-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000153018
【氏名又は名称】株式会社日本マイクロニクス
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 友和
(72)【発明者】
【氏名】工藤 拓夫
【審査官】小山 満
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-059516(JP,A)
【文献】特開2017-212430(JP,A)
【文献】特開2018-022719(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0240845(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0273278(US,A1)
【文献】国際公開第2017/199618(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03460862(EP,A1)
【文献】国際公開第2018/025654(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03496169(EP,A1)
【文献】特開2018-152532(JP,A)
【文献】特開2016-127166(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 49/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、
第2電極と、
前記第1電極と第2電極との間に配置され、第1のn型酸化物半導体材料を含んだ第1の層と、
前記第1の層上に配置され、第2のn型酸化物半導体材料と第1の絶縁材料とを含んだ第2の層と、
前記第2の層の上に配置され、タンタル酸化物を含んだ第3の層と、
前記第3の層の上に配置され、第2の絶縁材料を含んだ第4の層と、を備え
前記第3の層は、タンタル酸化物を含んだ非晶質層、又は、複数のタンタル酸化物ナノ粒子を含んだナノ粒子層であることを特徴とする二次電池。
【請求項2】
前記第3の層の厚さが50nm以上、800nm以下である請求項に記載の二次電池。
【請求項3】
前記第4の層と前記第2電極との間に、酸化ニッケル又は水酸化ニッケルを含んだ層が形成されている請求項1、又は2に記載の二次電池。
【請求項4】
前記第4の層が前記第2の絶縁材料であるSiOxを主成分とする層であり、
前記第4の層には、金属酸化物が添加されている請求項1~3のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項5】
前記金属酸化物がSnOxである請求項4に記載の二次電池。
【請求項6】
前記第1の絶縁材料がSiOxであり、
前記第2のn型酸化物半導体材料がTiOである請求項1~5のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項7】
前記第1のn型酸化物半導体材料がTiOである請求項1~6のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項8】
第1電極の上に、第1のn型酸化物半導体材料を含む第1の層を形成する工程と、
前記第1の層の上に、第2のn型酸化物半導体材料と第1の絶縁材料とを含む第2の層を形成する工程と、
前記第2の層の上に、タンタル酸化物を含む第3の層を形成する工程と、
前記第3の層の上に、第2の絶縁材料を含む第4の層を形成する工程と、
前記第4の層の上に、第2電極を形成する工程と、を備え
前記第3の層を形成する工程では、スパッタ成膜、蒸着、又はイオンプレーティングにより、タンタル酸化物を含んだ非晶質層、又は、複数のタンタル酸化物ナノ粒子を含んだナノ粒子層を形成する二次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池の性能を向上するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、第1電極と第2電極との間に、絶縁材料とn型半導体粒子との混合物を含む蓄電層と備えた蓄電素子が開示されている。また、蓄電層と第2電極との間にp型半導体層が配置されている。更に、p型半導体層と蓄電層との間には、リーク抑制層が配置されている。リーク抑制層は、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムより選ばれる少なくとも一つで構成されている。
【0003】
特許文献2には、第1電極と第2電極との間に、絶縁材料とn型半導体粒子との混合物を含む蓄電層と備えた蓄電素子が開示されている。また、蓄電層と第2電極との間にp型半導体層が配置されている。更に、第1電極と蓄電層との間には、抵抗率が1000μΩ・cm以下の拡散抑制層が配置されている。拡散抑制層は、窒化物、炭化物、硼化物により形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-82125号公報
【文献】特開2016-91931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような二次電池では、さらなる性能の向上が望まれている。
【0006】
本発明は、二次電池の性能を向上するための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態の一態様に係る二次電池は、第1電極と、第2電極と、前記第1電極と第2電極との間に配置され、第1のn型酸化物半導体材料を含んだ第1の層と、前記第1の層上に配置され、第2のn型酸化物半導体材料と第1の絶縁材料とを含んだ第2の層と、前記第2の層の上に配置され、タンタル酸化物を含んだ第3の層と、前記第3の層の上に配置され、第2の絶縁材料を含んだ第4の層と、を備えている。
【0008】
上記の二次電池において、前記第3の層が、タンタル酸化物を含んだ非晶質層、又は複数のタンタル酸化物ナノ粒子を含んだナノ粒子層であってもよい。
【0009】
上記の二次電池において、前記第3の層の厚さが50nm以上、800nm以下であってもよい。
【0010】
上記の二次電池は、前記第4の層と前記第2電極との間に、酸化ニッケル又は水酸化ニッケルを含んだ層が形成されていてもよい。
【0011】
上記の二次電池において、前記第4の層が前記第2の絶縁材料であるSiOxを主成分とする層であり、前記第4の層には、金属酸化物が添加されていてもよい。
【0012】
上記の二次電池において、前記金属酸化物がSnOxであってもよい。
【0013】
上記の二次電池において、前記第1の絶縁材料がSiOxであり、前記第2のn型酸化物半導体材料がTiOであってもよい。
【0014】
上記の二次電池において、前記第1のn型酸化物半導体材料がTiOであってもよい。
本実施の携帯にかかる二次電池の製造方法は、第1電極の上に、第1のn型酸化物半導体材料を含む第1の層を形成する工程と、前記第1の層の上に、第2のn型酸化物半導体材料と第1の絶縁材料とを含む第2の層を形成する工程と、前記第2の層の上に、タンタル酸化物を含む第3の層を形成する工程と、前記第3の層の上に、第2の絶縁材料を含む第4の層を形成する工程と、前記第4の層の上に、第2電極を形成する工程と、を備えている。
【0015】
上記の二次電池の製造方法において、前記第3の層を形成する工程では、スパッタ成膜、蒸着、又はイオンプレーティングにより、タンタル酸化物を含んだ非晶質層、又は複数のタンタル酸化物ナノ粒子を含んだナノ粒子層を形成するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、二次電池の性能を向上するための技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施の形態1にかかる二次電池の積層構成を模式的に示す図である。
図2】実施の形態1にかかる二次電池において、1週間経過後のエネルギー密度の残存率を示すグラフである。
図3】タンタル酸化物膜の表面SEM写真を示す図である。
図4】タンタル酸化物膜が表面に形成されたサンプルにおけるX線回折パターンを示す。
図5】実施の形態1にかかる二次電池の製造方法を示すフローチャートである。
図6】実施の形態2にかかる二次電池の積層構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態の一例について図面を参照して説明する。以下の説明は、本発明の好適な実施形態を示しており、本発明の技術的範囲が以下の実施形態に限定されない。
【0019】
実施の形態1.
(二次電池の積層構造)
以下、本実施の形態にかかる二次電池の基本的な構成について、図1を用いて説明する。図1は、二次電池100の積層構成を模式的に示す断面図である。
【0020】
図1において、二次電池100は、第1電極21、第1の層11、第2の層12、第3の層13、第4の層14、第5の層15、及び第2電極22がこの順序で積層された積層構造を有している。
【0021】
[第1電極21]
第1電極21は、二次電池100の負極となる。第1電極21は、基材として機能する導電性シートや導電性基板である。第1電極21としては、例えば、SUSシートやアルミニウムシート等の金属箔シートを用いることができる。なお、絶縁体からなる基材を用意して、基材の上に第1電極21を形成することもできる。絶縁性基材上に第1電極21を成膜する場合、第1電極21の材料として、タングステン(W)、クロム(Cr)又はチタン(Ti)等の金属材料を用いることができる。第1電極21の材料として、アルミニウム(Al)、銀(Ag)等を含む合金膜を用いてもよい。第1電極21を基材上に形成する場合、後述する第2電極22と同様に形成することができる。
【0022】
[第1の層11]
第1電極21の上には、第1の層11が配置されている。第1の層11は、第1電極21の第2電極22側に配置されている。第1の層11は、第1電極21と接するように形成されている。第1の層11の膜厚は、例えば、約50nm-200nm程度である。
【0023】
第1の層11はn型酸化物半導体材料(第1のn型酸化物半導体材料)を含んでいる。第1の層11は、所定の厚さで形成されたn型酸化物半導体層である。第1の層11としては、例えば、二酸化チタン(TiO)、酸化スズ(SnO)又は酸化亜鉛(ZnO)等を使用することが可能である。例えば、第1の層11は、スパッタリング又は蒸着等により、第1電極21上に成膜されたn型酸化物半導体層である。第1の層11の材料として、二酸化チタン(TiO)を用いることが特に好ましい。
【0024】
[第2の層12]
第1の層11の上には、負極活物質層として機能する第2の層12が配置されている。第2の層12は、第1の層11の第2電極22側に配置されている。第2の層12は、第1の層11と接するように形成されている。第2の層12の厚さは、例えば200nm~1000nmとなっている。
【0025】
第2の層12は、絶縁材料(第1の絶縁材料)を含んでいる。第1の絶縁材料としては、シリコーン樹脂を用いることができる。例えば、第1の絶縁材料としては、シリコン酸化物等のシロキサン結合による主骨格を持つシリコン化合物(シリコーン)を使用することが好ましい。よって、第2の層12は、第1の絶縁材料として酸化ケイ素(SiO)を含んでいる。
【0026】
また、第2の層12は、絶縁材料(第1の絶縁材料)に加えて、n型酸化物半導体材料(第2のn型酸化物半導体材料)を含んでいる。すなわち、第2の層12は、第1の絶縁材料と第2のn型酸化物半導体材料とを混合した混合物により形成されている。例えば、第2のn型酸化物半導体材料として、微粒子のn型酸化物半導体を使用することが可能である。
【0027】
例えば、第2の層12は、第2のn型酸化物半導体材料を二酸化チタンとして、酸化シリコンと二酸化チタンとによって形成される。この他に、第2の層12で使用可能なn型酸化物半導体材料としては、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化マグネシウム(MgO)が好適である。二酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化マグネシウムの2つ、3つ、又は全てを組み合わせた材料を使用することも可能である。
【0028】
第2の層12に含まれる第2のn型酸化物半導体材料と、第1の層11に含まれる第1のn型酸化物半導体材料とは、同じであってもよく、異なっていてもよい。例えば、第1の層11に含まれる第1のn型酸化物半導体材料が酸化チタンである場合、第2の層12の第2のn型酸化物半導体材料は酸化チタンであってもよいし、酸化チタン以外のn型酸化物半導体材料であってもよい。
【0029】
[第3の層13]
第2の層12の上には、固体電解質として機能する第3の層13が配置されている。第3の層13は、第2の層12の第2電極22側に配置されている。第3の層13は、第2の層12と接するように形成されている。第3の層13の厚さは、50nm以上、800nm以下であることが好ましい。
【0030】
第3の層13は、H及び電子(e)の移動を調整するためのバッファ層として機能する。第3の層13は、タンタル酸化物を含む層である。例えば、第3の層13は、所定の厚さのタンタル酸化物膜(TaO膜)により形成することができる。具体的には、第3の層13は、スパッタリング等により第2の層12の上に成膜されたTaO層である。また、第3の層13は、タンタル酸化物を含んだ非晶質層(アモルファス層)であることが好ましい。あるいは、第3の層13は、複数のタンタル酸化物ナノ粒子を含んだナノ粒子層であることが好ましい。
【0031】
[第4の層14]
第3の層13の上には、正極活物質層、或いは固体電解質層として機能する第4の層14が配置されている。第4の層14は、第3の層13の第2電極22側に配置されている。第4の層14は、第3の層13と接するように形成されている。第4の層14の厚さは、100nm~150nmとなっている。また、第4の層14は、50nm~250nmの範囲の厚さで形成することができる。より望ましくは、第4の層14は、150nm~200nmの範囲の厚さで形成されていてもよい。
【0032】
第4の層14は、H及び電子(e)の移動を調整するためのバッファ層として機能する。第4の層14は、絶縁材料(第2の絶縁材料)を含む層である。第4の層14は、第2の絶縁材料として、酸化ケイ素(SiO)を含んでいる。具体的には、第4の層14は、第2の絶縁材料である酸化ケイ素(SiO)を主成分とする層である。
【0033】
第4の層14は、第2の絶縁材料のみから構成されていてもよい。あるいは、第4の層14では、第2の絶縁材料に導電率調整材が添加されていてもよい。第2の絶縁材料に、導電率調整材を添加することで、さらにH及びeの移動度を調整可能である。すなわち、第4の層14は、導電率調整材と絶縁材料とを混合した混合物層であってもよい。
【0034】
導電率調整材は、n型酸化物半導体材料(第3のn型酸化物半導体材料)、又は金属の酸化物を備えていてもよい。例えば、第4の層14は、導電率調整材として、Ti、Sn、Zn、Nb、又はMgの酸化物からなる群から選択された少なくとも1つを備えていてもよい。導電率調整材をSn、Zn、Ti、Nb、又はMgの酸化物とすることで、第4の層14を厚く、かつ電気的に高耐圧に形成可能である。
【0035】
具体的には、第4の層14に含まれる第3のn型酸化物半導体材料としては、酸化スズ(SnO)を使用することが可能である。この場合、第4の層14は、酸化ケイ素と酸化スズとを混合した混合物を含んでいる。第4の層14では、シリコン酸化物、シリコン窒化物又はシリコーンオイルに、第3のn型酸化物半導体材料が添加されている。n型酸化物半導体は、第2の絶縁材料である二酸化ケイ素中に分散される。
【0036】
第4の層14中の第3のn型酸化物半導体材料は、酸化スズ(SnOx)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化チタン(TiOx)、及び酸化ニオブ(NbOx)から選択される酸化物を1つ以上含んでいてもよい。
【0037】
第2の層12に含まれる第2のn型酸化物半導体材料と、第4の層14に含まれる第3のn型酸化物半導体材料とは、同じ材料であってもよく、異なる材料であってもよい。例えば、第4の層14中の第3のn型酸化物半導体材料が酸化スズである場合、第2の層12の第2のn型酸化物半導体材料は酸化スズであってもよいし、酸化スズ以外のn型酸化物半導体材料であってもよい。
【0038】
[第5の層15]
第4の層14の上には、第5の層15が配置されている。第5の層15は、第4の層14の第2電極22側に配置されている。第5の層15は、第4の層14と接するように形成されている。第5の層15の厚さは、100nm以上となっている。また、第5の層15は、100nm~400nmの範囲の厚さで形成することができる。
【0039】
第5の層15は、第4の層14の上に形成されている。第5の層15は、p型酸化物半導体材料を含んでいる。第5の層15は、例えば、酸化ニッケル(NiO)層である。Ni、又はNiOをターゲットとしたスパッタ法により、第4の層14の上に、第5の層15が形成される。
【0040】
[第2電極22]
第5の層15の上には、第2電極22が配置されている。第2電極22は、第5の層15と接するように形成されている。第2電極22は、導電膜によって形成されていればよい。また、第2電極22の材料としては、クロム(Cr)又は銅(Cu)等の金属材料を用いることができる。第2電極22の材料として、アルミニウム(Al)、銀(Ag)等を含む合金膜を用いてもよい。その形成方法としては、スパッタリング、イオンプレーティング、電子ビーム蒸着、真空蒸着、化学蒸着等の気相成膜法を挙げることができる。また、金属電極は電解メッキ法、無電解メッキ法等により形成することができる。メッキに使用される金属としては、一般に銅、銅合金、ニッケル、銀、金、亜鉛又はスズ等を使用することが可能である。例えば、第2電極22は、厚さ300nmのAl膜となっている。
【0041】
このように、第2の層12と第4の層14との間に、タンタル酸化物を含む第3の層13が配置されている。この構成によれば、二次電池100の性能を向上することができる。この点について、実際のサンプルで測定された測定データを用いて、以下に説明する。
【0042】
図2は、2つのサンプルA、Bの自己放電特性を示すグラフである。サンプルBは、第3の層13を有する実施例である。サンプルAは第3の層13を有していない比較例である。つまり、サンプルAでは、第2の層12の上に、直接第4の層14が形成されている。図2は、満充電から1週間経過後の自己放電特性を測定した測定結果を示している。つまり、図2には、充電直後を100%として、1週間放置した後に残存する容量が残存率(%)として示されている。
【0043】
サンプルBの残存率は、サンプルAよりも高い。よって、第3の層13を有する本実施の形態により、高い残存率を維持することができる。この様な結果となる理由は、第3の層13(固体電解質)と第2の層12(負極活物質)との界面、及び第3の層13(固体電解質)と第4の層12(正極極活物質)との界面の電気抵抗が上がり、電子リークを抑制できるためと考えられる。従って、本実施の形態によれば、充電後の放置によるエネルギー密度の急激な低下を抑制することができる。本実施の形態の構成により、例えば、6時間放置後の残存率約80%以上を実現することができる。さらには、24時間経過後の残存率約80%以上、168時間経過後の残存率約68%を実現することができる。
【0044】
図3は、第3の層13の表面SEM(Scanning Electron Microscope)写真を示す。図4は、第3の層13が露出した状態でのX線回折パターン(スペクトル)を示す。図4では、横軸は回折角度2θ(入射X線方向と回折X線方向とのなす角度)であり、縦軸は回折強度(a.u.)である。本実施形態では、波長1.5418オングストロームのCuKα線を用いた微小角入射X線回折法でX線回折測定を行っている。なお、図4では、スパッタ成膜時に酸素ガス(O)流量を0sccm、4sccm、10sccmと変えて成膜した3サンプルのデータを示している。図3図4は、厚さ400nmのTaO膜を第3の層13として形成した時の測定結果である。
【0045】
図3のSEM写真から分かるように、第3の層13には0.1μm以上のサイズの粒子は形成されていない。また、図4では回折ピークが表れていない。よって、TaO膜は、アモルファス状態、あるいは複数のタンタル酸化物ナノ粒子が堆積した状態となっていることが分かる。結晶構造となっていないTaO膜を第3の層13として形成することで、自己放電を抑制することができる。高性能の二次電池を実現することができる。
【0046】
(製造方法)
次に、本実施の形態にかかる二次電池100の製造方法について、図5を用いて説明する。図5は、二次電池100の製造方法を示すフローチャートである。
【0047】
まず、第1電極21上に、第1の層11を形成する(S11)。第1の層11は、上記のように第1のn型酸化物半導体材料を含んでいる。例えば、第1の層11は、Ti又はTiOをターゲットとするスパッタ法によって、TiO膜を第1の層11として成膜することができる。第1の層11は、厚さ50nm~200nmのTiO膜とすることができる。また、第1電極21は、例えば、タングステン電極等である。
【0048】
次に、第1の層11の上に、第2の層12を形成する(S12)。第2の層12は、塗布熱分解法を用いて形成することができる。まず、酸化チタン、又は酸化スズ、又は、酸化亜鉛の前駆体と、シリコーンオイルとの混合物に溶媒を混合した塗布液を用意する。ここでは、第2の層12は、第1の絶縁材料として酸化シリコンを、第2のn型酸化物絶縁材料として酸化チタンとする例について説明する。この場合、酸化チタンの前駆体としての脂肪酸チタンを用いることができる。脂肪酸チタンとシリコーンオイルとを溶媒とともに攪拌して、塗布液を用意する。
【0049】
スピン塗布法、スリットコート法などにより、塗布液が第1の層11上に塗布される。具体的には、スピン塗布装置により、回転数500~3000rpmで、塗布液を塗布する。
【0050】
次に、塗布膜に対して、乾燥、焼成、及びUV照射を行うことで、第1の層11上に第2の層12を形成することができる。例えば、塗布後、ホットプレート上で乾燥させる。ホットプレート上での乾燥温度は、30℃~200℃程度であり、乾燥時間は、5分~30分程度である。乾燥後、焼成炉を用いて大気中で焼成する。焼成温度は、例えば、300℃~600℃程度であり、焼成時間は、10分~60分程度である。
【0051】
これにより、脂肪族酸塩が分解してシリコーンの絶縁膜に覆われた二酸化チタンの微粒子層が形成される。この微粒子層は、具体的にはシリコーンが被膜された二酸化チタンの金属塩がシリコーン層中に埋められている構造である。焼成後の塗布膜に対して、低圧水銀ランプにより、UV光を照射する。UV照射時間は10分~60分である。
【0052】
なお、第2のn型酸化物半導体が酸化チタンである場合、前駆体の他の一例として、例えばチタニウムステアレートが使用できる。酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛は、金属酸化物の前駆体である脂肪族酸塩から分解して形成される。酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛などについては、前駆体を用いずに、酸化物半導体の微細な粒子を用いることも可能である。酸化チタン、又は酸化亜鉛のナノ粒子をシリコーンオイルと混合することで、混合液が生成される。さらに、混合液に溶媒を混合することで、塗布液が生成される。
【0053】
第2の層12の上に、第3の層13を形成する(S13)。第3の層13は、上記のようにタンタル酸化物を含んでいる。例えば、第3の層13は、Ta、又はTaをターゲットとするスパッタ法によって形成することができる。あるいは、スパッタ成膜の代わりに、蒸着、又はイオンプレーティングなどの成膜方法を用いることができる。これらの成膜方法により、TaO膜を第3の層13として成膜することができる。スパッタ成膜では、アルゴン(Ar)ガスのみを用いてもよく、アルゴンガスに酸素(O)ガスを加えて供給してもよい。第3の層13は、厚さ50nm以上、800nm以下のTaO膜とすることができる。ここでは、第3の層13として、非晶質のTaO膜又は複数のタンタル酸化物ナノ粒子が堆積したTaO膜を形成することが好ましい。
【0054】
第3の層13の上に、第4の層14を形成する(S14)。第4の層14は、第2の層12と同様の手法により形成することができる。具体的には、脂肪酸スズとシリコーンオイルを溶媒と共に攪拌して、薬液を用意する。この薬液を、スピン塗布装置を用いて、第3の層13上に塗布する。回転数は例えば、約500-3000rpmである。塗布後、ホットプレート上で乾燥させる。ホットプレート上の乾燥温度は例えば、約30℃-200℃程度、乾燥時間は例えば、約5分-30分程度である。
【0055】
さらに、乾燥後焼成する。乾燥後焼成には、焼成炉を用い、大気中で焼成する。焼成温度は例えば、約300℃-600℃程度、焼成時間は例えば、約10分-60分程度である。焼成後、低圧水銀ランプによるUV照射を実施する。UV照射時間は例えば、約10分-100分程度である。UV照射後の第4の層14の膜厚は、例えば、約100nm-300nm程度である。
【0056】
酸化スズについては、前駆体を用いずに、酸化物半導体の微細な粒子を用いることも可能である。酸化スズのナノ粒子をシリコーンオイルと混合することで、混合液が生成される。さらに、混合液に溶媒を混合することで、塗布液が生成される。
【0057】
第4の層14の形成工程の別の例について、説明する。ここでは、第4の層14として、第2の絶縁材料のみからなる層を用いている。すなわち、第3のn型酸化物半導体材料を含んでいない第4の層14を形成する方法を以下に説明する。
【0058】
シリコーンオイルを溶媒と共に攪拌して、薬液を用意する。薬液を、スピン塗布装置を用いて、第3の層13上に塗布する。ここでは、スピン塗布装置を用いている。スピン塗布装置の回転数は例えば、500-3000rpm程度である。塗布後、ホットプレート上で乾燥させる。ホットプレート上の乾燥温度は例えば、50℃-200℃程度、乾燥時間は例えば、5分-30分程度である。
【0059】
さらに、乾燥後焼成する。乾燥後焼成には、焼成炉を用い、大気中で焼成する。焼成温度は例えば、約300℃-600℃程度、焼成時間は例えば、約10分-60分程度である。焼成後、低圧水銀ランプによるUV照射を実施する。UV照射時間は例えば、約10分-60分程度である。UV照射後の第4の層14の膜厚は、例えば、約10nm-100nm程度である。
【0060】
次に、第4の層14の上に、第5の層15を形成する(S15)。第5の層15は、Ni、又はNiOをターゲットとしたスパッタ法により、形成することができる。
【0061】
第5の層15の上に、第2電極22を形成する(S16)。第2電極22の形成方法としては、スパッタリング、イオンプレーティング、電子ビーム蒸着、真空蒸着、化学蒸着等の気相成膜法を挙げることができる。なお、マスクを用いて、第2電極22を部分的に成膜してもよい。また、第2電極22は電解メッキ法、無電解メッキ法等により形成することができる。メッキに使用される金属としては、一般に銅、銅合金、ニッケル、銀、金、亜鉛又はスズ等を使用することが可能である。例えば、第2電極22は、厚さ300nmのAl膜となっている。
【0062】
上記の製造方法により、高性能の二次電池100を高い生産性で製造することができる。
【0063】
実施の形態2.
実施の形態2にかかる二次電池100Aの構成について、図6を用いて説明する。図6は、二次電池100Aの構成を示す断面図である。本実施の形態では、第5の層15に代えて、第6の層16が設けられている。二次電池100Aは、第1電極21、第1の層11、第2の層12、第3の層13、第4の層14、第6の層16、及び第2電極22がこの順序で積層された積層構造を有している。第6の層16以外の構成については、実施の形態1と同様であるため、適宜説明を省略する。
【0064】
第6の層16は、水酸化ニッケル(Ni(OH))を含んでいる。具体的には、所定の厚さで成膜された水酸化ニッケル層が第6の層16となる。第6の層16の厚さは、100nm以上、400nm以下であることが好ましい。
【0065】
第6の層16は、ケミカルバスデポジション(CBD)法、ディップコート法、又はミストCVD法を用いることができる。ケミカルバスデポジション法、又はディップコート法の成膜では、ニッケルイオンを含む溶液を用いる。具体的には、アルカリ性水溶液とニッケルイオンを含む水溶液とを反応させることで、第4の層14の表面に水酸化ニッケル層を堆積していく。
【0066】
このように、ケミカルバスデポジション法、又はディップコート法などにより、水酸化ニッケル膜を第4の層14の上に直接形成している。したがって、第6の層16を十分な厚さで形成することができるため、蓄電容量の大きい二次電池を実現することができる。すなわち、酸化ニッケルから水酸化ニッケルに電気的に変換した構成では、膜厚が薄いため、十分な蓄電容量を得ることが困難である。
【0067】
なお、二次電池は、第5の層15と第6の層(水酸化ニッケル層)16の両方を備えていてもよい。この場合、第5の層15の上に第6の層16を形成してもよく、第6の層16の上に第5の層15を形成してもよい。さらには、第2電極22と第4の層(SiOx+SnOx)14との間に2つのNiO層を設け、2つのNiO層の間に、水酸化ニッケル層を設けてもよい。又、上記した第1の層11~第6の層16以外の層が追加されていてもよい。
【0068】
以上、本発明の実施形態の一例を説明したが、本発明はその目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に、上記の実施形態による限定は受けない。
【符号の説明】
【0069】
100 二次電池
11 第1の層(n型酸化物半導体層)
12 第2の層(SiOx+TiOx)
13 第3の層(TaO
14 第4の層(SiOx+SnOx)
15 第5の層(酸化ニッケル層)
16 第6の層(水酸化ニッケル層)
21 第1電極
22 第2電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6