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  • 特許-加飾シート 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-07
(45)【発行日】2022-09-15
(54)【発明の名称】加飾シート
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20220908BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
B32B27/00 E
B32B27/32 E
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018243593
(22)【出願日】2018-12-26
(65)【公開番号】P2020104341
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】土渕 晃司
【審査官】加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-094057(JP,A)
【文献】国際公開第2006/057198(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 27/00
B32B 27/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色基材、粘着剤層、および粘着剤層に隣接して配置される剥離ライナーをこの順に有する加飾シートであって、
前記着色基材側表面の鏡面光沢度Gs(60°)が80%以上であり、
前記剥離ライナーが、粘着剤層側から第1のポリオレフィン系樹脂層、プラスチックフィルムからなる支持基材、および第2のポリオレフィン系樹脂層の順に積層されてなる積層体であり、
前記第1のポリオレフィン系樹脂層の粘着剤層側表面が凸部を有し、
前記第1のポリオレフィン系樹脂層および前記第2のポリオレフィン系樹脂層が、極性基を含有するポリオレフィン系樹脂層および極性基を含有しないポリオレフィン系樹脂層の積層体である、加飾シート。
【請求項2】
前記極性基が、メタクリル酸、アクリル酸、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、マレイン酸、無水マレイン酸、および酢酸ビニルからなる群より選ばれる1種以上に由来する、請求項1に記載の加飾シート。
【請求項3】
前記支持基材がポリエチレンテレフタレートフィルムである、請求項1または2に記載の加飾シート。
【請求項4】
前記第1のポリオレフィン系樹脂層が前記極性基を含有するポリオレフィン樹脂を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の加飾シート。
【請求項5】
前記第1のポリオレフィン系樹脂層と、前記第2のポリオレフィン系樹脂層とが、支持基材を中心として、積層形態が対称である、請求項1~4のいずれか1項に記載の加飾シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加飾シートに関する。
【背景技術】
【0002】
加飾シートは、装飾を付与することを目的として、粘着剤によって被着体に貼付されるシート体である。加飾シートは、自動車、家電、家具等の表面の塗装に代るもので、塗装工数削減と外観向上等を目的としている。
【0003】
加飾シートは、通常、着色基材と、その表面に形成された粘着剤層と、粘着剤層上に設けられる剥離ライナーから構成されており、使用に際しては、剥離ライナーを剥がし、粘着剤層を被着体に当接させて貼付する。
【0004】
粘着剤層を被着体に当接させる際に、粘着剤層と被着体との間に空気の留まりが残留しやすく、この空気の留まりの部分が、いわゆる「ふくれ」となって、貼付された加飾シートの表面側に膨出物が生じ、加飾シートをきれいに貼付することができにくいという問題があった。
【0005】
そこで、このような問題を解決するために、例えば、特許文献1および2には、粘着剤層表面に空気を排出する凹部を形成するために、凸部が形成された剥離ライナーが開示されている。これらの剥離ライナーは、支持基材としての紙にポリオレフィン系樹脂層がラミネートされ、このポリオレフィン系樹脂層にエンボス加工等の手段によって凸部が形成されている。
【0006】
さらに、加飾シートの中でも、着色基材の表面が高光沢である場合には、剥離ライナーの支持基材である紙の地合が表面に浮き出てしまうことがあるため、特許文献3では、剥離ライナーの支持基材として、表面が平滑なプラスチックフィルム等が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】再表2003/025078号公報
【文献】特開2010-180271号公報
【文献】再表2005/100499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、粘着剤層面にエンボスを有し、プラスチックフィルムからなる支持基材をポリオレフィン系樹脂層で挟持した構造を有する剥離ライナーを使用時に粘着剤層から剥離すると、剥離した剥離ライナーが静電気によって手や被着体に付着し、作業性が低下するという現象が確認された。
【0009】
本発明の課題は、着色基材の光沢度が高く、剥離ライナーを剥がす際に剥離帯電が生じにくく、かつ、粘着剤層と被着体を当接させる際に空気を排出できる、加飾シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、着色基材、粘着剤層、および粘着剤層に隣接して配置される剥離ライナーをこの順に有する加飾シートであって、着色基材側表面の鏡面光沢度Gs(60°)が80%以上であり、剥離ライナーが、粘着剤層側から第1のポリオレフィン系樹脂層、プラスチックフィルムからなる支持基材、および第2のポリオレフィン系樹脂層の順に積層されてなる積層体であり、第1のポリオレフィン系樹脂層の粘着剤層側表面が凸部を有し、第1のポリオレフィン系樹脂層および第2のポリオレフィン系樹脂層の少なくとも一方が極性基を含有するポリオレフィン樹脂を含む、加飾シートである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、支持基材をポリオレフィン系樹脂層で挟持した構造を有する剥離ライナーにおいても、剥離した際の帯電が低減する。ゆえに、粘着シートを被着体に貼付する際の作業効率性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】加飾シートの一実施形態を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の第一実施形態は、着色基材、粘着剤層、および粘着剤層に隣接して配置される剥離ライナーをこの順に有する加飾シートであって、着色基材側表面の鏡面光沢度Gs(60°)が80%以上であり、剥離ライナーが、粘着剤層側から第1のポリオレフィン系樹脂層、プラスチックフィルムからなる支持基材、および第2のポリオレフィン系樹脂層の順に積層されてなる積層体であり、第1のポリオレフィン系樹脂層の粘着剤層側表面が凸部を有し、第1のポリオレフィン系樹脂層および第2のポリオレフィン系樹脂層の少なくとも一方が極性基を含有するポリオレフィン樹脂を含む、加飾シートである。
【0014】
上述の通り、本発明者は、粘着剤層面にエンボスを有し、プラスチックフィルムからなる支持基材をポリオレフィン系樹脂層で挟持した構造を有する剥離ライナーを使用時に粘着剤層から剥離すると、剥離した剥離ライナーの帯電性が高く、使用時の作業効率性が著しく低下することを見出した。本実施形態の剥離ライナーは、異なる樹脂の3層の積層体であり、電気を貯めやすい構造になっている。さらに、剥離ライナーの粘着剤層側表面が凹凸形状を有するため、剥離ライナーを剥離する際の剥離帯電は一層生じやすいものとなっている。
【0015】
したがって、このような剥離ライナーの構造に起因して、剥離帯電が通常の剥離ライナーの剥離帯電よりも大きく、剥離帯電の低減は一層大きな課題となる。
【0016】
ところで、剥離帯電を軽減する方法として、帯電防止コートを行うなどの帯電防止処理が一般的に行われる。しかしながら、粘着剤層側のポリオレフィン系樹脂層に帯電防止処理を行うと、粘着剤層側に帯電防止剤がブリードアウトして、粘着剤性能が著しく低下するという問題が生ずる。このような問題点を考慮し、種々検討した結果、ポリオレフィン系樹脂層のうちの少なくとも一方が極性基を含有するポリオレフィン樹脂を含むことで、剥離帯電が著しく低下することを見出し、本発明を完成させた。
【0017】
なお、本明細書において、ポリオレフィン系樹脂層が極性基を含有するポリオレフィン樹脂を含むとは、ポリオレフィン系樹脂層が、極性基を含有するポリオレフィン系樹脂層と極性基を含有しないポリオレフィン系樹脂層の積層体である場合も含まれる。
【0018】
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0019】
図1は、加飾シートの第一実施形態を示す断面模式図である。図1の加飾シート10は、着色基材層11、粘着剤層12、剥離ライナー16から構成される。着色基材層11は高光沢度を有する。粘着剤層12は粘着剤組成物から形成され、被着体に直接貼付される部材である。剥離ライナー16は、被着体に加飾シート10を貼付する前に使用され、粘着剤層12を保護し、使用前の粘着性の低下を防止する機能を有する部材である。また、剥離ライナー16は、第1のポリオレフィン系樹脂層13、プラスチックフィルムからなる支持基材14、第2のポリオレフィン系樹脂層15から構成される。第1のポリオレフィン系樹脂層13は、粘着剤層に近い側のポリオレフィン系樹脂層である。
【0020】
加飾シートの着色基材側表面の鏡面光沢度Gs(60°)は80%以上である。本明細書において、鏡面光沢度Gs(60°)は、JIS Z8741-1997に準拠して、日本電色工業(株)製グロスメーター「VG2000」を使用し、測定角60°の条件で測定される。着色基材側表面の光沢度が80%以上であることで、視認者が光沢度の高い加飾シートであると認識し、高級感などの意匠性を付与することができる。着色基材側表面の鏡面光沢度Gs(60°)は、85%以上(上限100%)であることが好ましい。
【0021】
以下、本実施形態を構成する各部材について詳細に説明する。
【0022】
なお、本明細書において、範囲を示す「X~Y」は「X以上Y以下」を意味する。また、特記しない限り、操作および物性等は、室温(20~25℃)/相対湿度45~55%の条件で測定する。
【0023】
[着色基材]
着色基材は、着色剤と、バインダー樹脂とを含むことが好ましい。
【0024】
着色基材を形成する樹脂としては、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂などが挙げられる。なかでも、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂が好ましく、被着体の3次元形状への追従性の点から、着色基材を形成する樹脂としては、塩化ビニル樹脂であることがより好ましい。
【0025】
ポリウレタン樹脂としては、ポリエステル系ポリウレタン樹脂、ポリカプロラクトン系ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂等が挙げられる。
【0026】
ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン(低密度、中密度、高密度)、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体などが挙げられる。
【0027】
塩化ビニル樹脂としては、ポリ塩化ビニル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。
【0028】
着色剤としては、カーボンブラック(ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック、松煙等)、グラファイト(黒鉛)、酸化銅、二酸化マンガン、アニリンブラック、ペリレンブラック、チタンブラック、シアニンブラック、活性炭、フェライト(非磁性フェライト、磁性フェライト等)、マグネタイト、酸化クロム、酸化鉄、二硫化モリブデン、クロム錯体、複合酸化物系黒色色素、アントラキノン系有機黒色色素等などが用いられる。
【0029】
着色剤の着色基材における含有量は、例えば、バインダー樹脂100質量部に対して、1~10質量部である。
【0030】
また、着色基材は、基材にクリア層を有するものであってもよい。このようなクリア層を形成することで、光沢性を制御することができる。クリア層を構成する樹脂としては、例えば、フッ素樹脂;ポリウレタン;アクリル系ポリマー;ポリ塩化ビニル;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;オレフィン系、ポリエステル系等の熱可塑性エラストマー;アイオノマーなどの樹脂を使用することできる。クリア層は、無機フィラー、有機フィラー、紫外線吸収剤、安定剤(例えば、Ba-Zn系等)、可塑剤等の各種添加剤を含んだものであってもよい。
【0031】
着色基材は、カレンダー法、押出法、溶液キャスト法等で形成することができる。着色基材がクリア層を有する場合には、溶液キャスト法で形成することが好ましい。
【0032】
着色基材の厚みは、特に限定されるものではないが、例えば、50~200μmである。
【0033】
着色基材は、必要に応じて、安定剤(例えば、Ba-Zn系等)、滑剤、充填剤、加工助剤、可塑剤、軟化剤、金属粉、防曇剤、紫外線散乱剤または紫外線吸収剤等の紫外線遮蔽剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難撚剤等を適宜に含有していてもよい。
【0034】
[粘着剤層]
粘着剤層に用いられる粘着剤としては、特に限定されず、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、スチレン-ジエンブロック共重合体粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、フッ素系粘着剤などを用いることができる。上記粘着剤は1種単独で用いても2種以上併用してもよい。
【0035】
粘着剤としては、接着の信頼性の観点から、特にアクリル系粘着剤を好適に用いることができる。アクリル系粘着剤を構成するアクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを単量体主成分とし、必要に応じて(メタ)アクリル酸アルキルエステルに共重合可能な単量体(共重合性単量体)を用いることにより形成される。ここで、主成分とは、単量体中50質量%以上(上限100質量%)であることを指し、好ましくは65質量%以上、より好ましくは85質量%以上である。
【0036】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
また、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに共重合可能な共重合性単量体の例としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸などのカルボキシル基含有単量体またはその無水物;(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、グリセリンジメタクリレートなどの水酸基含有単量体;アクリルアミド、メタアクリルアミド、N-ビニルピロリドン、N,N-ジメチルアクリルアミドなどのアミド基含有単量体;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリロイルモルホリンなどのアミノ基含有単量体;スチレン、置換スチレンなどの芳香族ビニル化合物;アクリロニトリルなどのシアノ基含有単量体;酢酸ビニルなどのビニルエステル類などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
共重合性単量体を用いる場合、アクリル系ポリマーを構成する単量体成分のうち、0.1~35質量%であることが好ましく、1~15質量%であることがより好ましい。
【0039】
アクリル系ポリマーの重量平均分子量は特に限定されるものではないが、10万~100万であることが好ましい。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定したポリスチレン換算の値である。
【0040】
粘着剤は、アクリル系ポリマーの他、架橋剤を含んでいてもよい。架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、金属キレート系架橋剤などが挙げられる。架橋剤の添加量は、アクリル系ポリマー100質量部に対して、0.001~10質量部であることが好ましく、0.005~0.5質量部であることがより好ましい。
【0041】
粘着剤層には、必要に応じ、着色剤、充填剤、帯電防止剤、タッキファイヤー、濡れ剤、レベリング剤、増粘剤、消泡剤、防腐剤等を適宜添加することができる。
【0042】
粘着剤層の厚みは、特に限定されないが、粘着性および薄膜化の観点から、10~100μmの範囲が好ましい。
【0043】
[剥離ライナー]
剥離ライナーは、粘着剤層側から第1のポリオレフィン系樹脂層、プラスチックフィルムからなる支持基材、および第2のポリオレフィン系樹脂層の順に積層されてなる。各層間には中間層が配置されていてもよい。
【0044】
第1のポリオレフィン系樹脂層は、粘着剤層側表面が凸部を有する。かような凸部が粘着剤層に転写され、粘着剤層に形成された凹部を通じて粘着剤層との間に留まった空気を外部に流すことが可能となる。
【0045】
剥離ライナーを平面視した場合における凸部は、剥離ライナーの1辺から他辺にまで連続していることが好ましい。
【0046】
剥離ライナーを平面視した場合における凸部として取り得る各形状は、規則的に存在していてもよく、不規則に存在していてもよいが、平行線または格子などのパターン状に規則的に存在していることが好ましい。
【0047】
厚さ方向に切断した際の凸部の断面形状としては、切断面により変化する場合もあるため一概に特定することはできないが、例えば、三角形、四角形(長方形、正方形、台形を含む。)等の多角形;当該多角形の角の一部又は全部に微小の丸みをつけた(「角丸(R)をつけた」ともいう。)形状;半円、半楕円、U字形等の半円形;等が挙げられる。
【0048】
凸部間の距離や、凸部の面積、凸部の高さは、空気の排出性を考慮して適宜設定される。
【0049】
凸部形状は、例えば、第1のポリオレフィン系樹脂層にエンボスロールを押し当て、エンボスロール周面に刻印されている形状を層の表面に転写させることによって形成することができる。
【0050】
また、例えば、スクリーン印刷法等の印刷技術を利用して、層となる前の層上に、当該層と同一の材料を用いて凸部を形成することもできる。
【0051】
第1のポリオレフィン系樹脂層の最大厚みは、5~50μmであることが好ましく、10~30μmであることがより好ましい。
【0052】
第1のポリオレフィン系樹脂層の粘着剤層側表面は、剥離剤処理が施されていてもよい。当該剥離剤としては、例えば、シリコーン系樹脂、オレフィン系樹脂、イソプレン系樹脂、ブタジエン系樹脂等のゴム系エラストマー、長鎖アルキル系樹脂、長鎖アルキルアクリレート系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。これらの中では、シリコーン系樹脂が好ましい。剥離剤処理の厚みは、通常0.01~5μm程度である。
【0053】
また、第1のポリオレフィン系樹脂層は単層であっても複数層であってもよい。例えば、第1のポリオレフィン系樹脂層は、異なる密度のポリオレフィン系樹脂層の積層体であってもよい。
【0054】
(第2のポリオレフィン系樹脂層)
第2のポリオレフィン系樹脂層は、第1のポリオレフィン系樹脂層に対して、支持基材を挟持する形で対称的に配置される。第2のポリオレフィン系樹脂層によって、剥離ライナーがカールすることを抑制することができる。
【0055】
第2のポリオレフィン系樹脂層の厚みは、例えば、5~50μmである。
【0056】
第2のポリオレフィン系樹脂層は、第1のポリオレフィン系樹脂層と凸部を有しないこと以外、同じ組成であっても異なる組成であってもよい。剥離ライナーのカールの抑制という観点からは、第2のポリオレフィン系樹脂層は、第1のポリオレフィン系樹脂層と同じ組成であることが好ましい。
【0057】
また、第2のポリオレフィン系樹脂層は単層であっても複数層であってもよい。例えば、第2のポリオレフィン系樹脂層は、異なる密度のポリオレフィン系樹脂層の積層体であってもよい。なお、カール抑制の観点からは、第1のポリオレフィン系樹脂層が複数層である場合、第2のポリオレフィン系樹脂層は支持基材を中心として、積層形態が対称であることが好ましい。例えば、第1のポリオレフィン系樹脂層がABの積層構造である場合、AB(第1のポリオレフィン系樹脂層)-支持基材-BA(第2のポリオレフィン系樹脂層)という構成を採ることが好ましい。
【0058】
(ポリオレフィン系樹脂層)
ポリオレフィン系樹脂層とは、ポリオレフィン樹脂が層中に含まれる樹脂の主成分であることを指す。ここで主成分とは、樹脂に対して60質量%以上(上限100質量%)含まれる樹脂を指し、75質量%以上(上限100質量%)含まれることが好ましく、85質量%以上(上限100質量%)含まれることがより好ましく、95質量%以上(上限100質量%)含まれることが最も好ましい。
【0059】
ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂が挙げられるが、エンボス加工性の観点から、ポリエチレン樹脂であることが好ましい。
【0060】
ポリエチレン樹脂は、(分岐状)低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)、中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、極低密度ポリエチレン樹脂(VLDPE)、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)のいずれであってもよい。また、上記ポリエチレン樹脂の混合物であってもよい。
【0061】
ポリエチレン樹脂の分子量としては、特に制限はないが、メルトマスフローレート(MFR)(JIS K7210-1:2014、試験温度190℃、公称荷重2.16kg)が、0.03~40g/10分の間のものであって、押出し適性を有するものが好ましい。
【0062】
また、ポリオレフィン樹脂は、極性基を含有するポリオレフィン樹脂であってもよい。本実施形態においては、ポリオレフィン系樹脂層の少なくとも一方が極性基を含有するポリオレフィン樹脂を含む。これにより、剥離ライナーを剥離した際の帯電が顕著に低減する。また、剥離帯電の低減が一層得られることから、少なくとも第1のポリオレフィン系樹脂層が極性基を含有するポリオレフィン樹脂を含むことが好ましく、第1のポリオレフィン系樹脂層および第2のポリオレフィン系樹脂層の双方が極性基を含有するポリオレフィン樹脂を含むことがより好ましい。
【0063】
ここで、ポリオレフィン系樹脂層が極性基を含有するポリオレフィン樹脂を含むとは、ポリオレフィン系樹脂層が、極性基を含有するポリオレフィン系樹脂層と極性基を含有しないポリオレフィン系樹脂層の積層体である場合も含まれる。
【0064】
極性基を含有するポリオレフィン樹脂が含有する極性基としては、例えば、カルボキシ基、カルボン酸無水物に由来の基、カルボン酸エステル基、水酸基、エポキシ基、アミド基、アンモニウム基、ニトリル基、アミノ基、イミド基、イソシアネート基、アセチル基、チオール基、エーテル結合、エステル結合、チオエーテル結合、スルホニル基、ホスホリル基、ニトロ基、ウレタン結合、ハロゲン原子等が挙げられる。これらの極性基の中でも、カルボキシ基、カルボン酸無水物に由来の基、カルボン酸エステル基、水酸基、アンモニウム基、アミノ基、イミド基、又はイソシアネート基が好ましく、カルボキシ基、カルボン酸無水物に由来の基、又はカルボン酸エステル基がより好ましい。
【0065】
極性基を含有するポリオレフィン樹脂が有する極性基としては、それぞれ、前述した好適な化合物に由来する極性部位を挙げることができるが、好ましくは不飽和カルボン酸、無水カルボン酸を有する不飽和化合物(例えば、不飽和ジカルボン酸の無水物)、不飽和カルボン酸エステル(例えば、不飽和カルボン酸と脂肪族アルコールとのエステル)、および脂肪酸ビニルからなる群より選ばれる1種以上に由来する極性基、より好ましくはメタクリル酸、アクリル酸、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、マレイン酸、ナジック酸、無水マレイン酸、無水ナジック酸、および酢酸ビニルからなる群より選ばれる1種以上に由来する極性基、更に好ましくはメタクリル酸、アクリル酸、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、マレイン酸、無水マレイン酸、および酢酸ビニルからなる群より選ばれる1種以上に由来する極性基である。
【0066】
極性基を含有するポリオレフィン樹脂としては、好ましくはオレフィンと極性基含有モノマーとの共重合体及び変性ポリオレフィンが挙げられる。
【0067】
オレフィンと極性基含有モノマーとの共重合体としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体のいずれであってもよい。
【0068】
オレフィンとしては、例えば、エチレン、および炭素数3~20のα-オレフィンからなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。これらの中では、好ましくはエチレン及び炭素数3~8のα-オレフィンから選ばれる1種以上、より好ましくはエチレン及びプロピレンから選ばれる1種以上、更に好ましくはエチレンである。
【0069】
極性基含有モノマーは、好ましくは前述した各種極性基を有する化合物であり、分子内に2種以上の極性部位を有していてもよい。
【0070】
極性基含有モノマーとしては、好ましくは不飽和カルボン酸、無水カルボン酸基を有する不飽和化合物(例えば、不飽和ジカルボン酸の無水物)、不飽和カルボン酸エステル(例えば、不飽和カルボン酸と脂肪族アルコールとのエステル)、および脂肪酸ビニルからなる群より選ばれる1種以上であり、より好ましくはメタクリル酸、アクリル酸、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、マレイン酸、無水マレイン酸、及び酢酸ビニルからなる群より選ばれる1種以上である。
【0071】
オレフィンと極性基含有モノマーとの共重合体中、極性基含有モノマーに由来する単位の含有量は、オレフィン由来の構成単位及び極性基含有モノマーに由来する構成単位の合計100質量%に対し、好ましくは0.1~30質量%、より好ましくは0.2~10質量%である。
【0072】
好ましいオレフィンと極性基含有モノマーとの共重合体としては、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、およびエチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0073】
変性ポリオレフィンとしては、好ましくは酸変性ポリオレフィンである。
【0074】
酸変性ポリオレフィンとは、例えば、有機過酸化物等のラジカル開始剤の存在下で、ポリオレフィンに対し、不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体である変性剤をグラフト反応させることにより、ポリオレフィンに不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体に由来の基を導入して変性(グラフト変性)したものが挙げられる。
【0075】
グラフト反応は、例えば、ポリオレフィンに変性剤を配合し、押出成型機等を用いてポリオレフィンを溶融状態で押出して高温、高せん断下で変性する方法(溶融混練法)又はポリオレフィンを溶剤に溶解し、この溶液に変性剤を配合してポリオレフィンの変性を行う方法(溶液法)等により行われる。
【0076】
変性剤により変性されるポリオレフィンとしては、例えば、エチレン、前述した炭素数3~20のα-オレフィン、並びに前述した環状オレフィンからなる群より選ばれる1種以上をモノマーとして重合される重合体が挙げられる。
【0077】
これらの中でも、エチレンを主成分モノマーとする重合体(エチレン単独重合体を含む。)、プロピレンを主成分モノマーとする重合体(プロピレン単独重合体を含む。)、1-ブテンを主成分モノマーとする重合体(1-ブテン単独重合体を含む。)、および4-メチル-1-ペンテンを主成分モノマーとする重合体(4-メチル-1-ペンテン単独重合体を含む。)から選ばれる1種以上が好ましく、エチレンを主成分モノマーとする重合体およびプロピレンを主成分モノマーとする重合体から選ばれる1種以上がより好ましく、プロピレンを主成分モノマーとする重合体から選ばれる1種以上が更に好ましい。
【0078】
また、前述の主成分モノマーとともにその他モノマーを共重合する場合、当該その他モノマーとしては、好ましくはエチレンおよび炭素数3~10のα-オレフィンから選ばれる1種以上である。
【0079】
変性剤として用いられる不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体としては、例えば、カルボン酸基を有する不飽和化合物(不飽和カルボン酸)、並びに無水カルボン酸基を有する不飽和化合物(例えば、不飽和ジカルボン酸の無水物)、及び不飽和カルボン酸エステル(例えば、不飽和カルボン酸と脂肪族アルコールとのエステル)等の不飽和カルボン酸の誘導体が挙げられる。これらの不飽和化合物が有する不飽和基としては、ビニル基、ビニレン基、不飽和環状炭化水素等が挙げられる。
【0080】
不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等の不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、グルタコン酸、ノルボルネンジカルボン酸、ナジック酸、エンドシス-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボン酸等の不飽和ジカルボン酸;アコニット酸等の不飽和トリカルボン酸が挙げられる。
【0081】
不飽和カルボン酸無水物としては、例えば、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水ナジック酸等の前述した各不飽和多価カルボン酸の無水物が挙げられる。
【0082】
また、前述のとおり、不飽和カルボン酸の誘導体としては、不飽和カルボン酸エステル等のエステルの他、酸ハライド、イミド、エステル等の形態でもよく、例えば、塩化マレニル、マレニルイミド、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチルが挙げられる。
【0083】
これら不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、マレイン酸、ナジック酸、無水マレイン酸、無水ナジック酸から選ばれる1種以上が好ましく、マレイン酸及び無水マレイン酸から選ばれる1種以上がより好ましく、無水マレイン酸が更に好ましい。
【0084】
酸変性ポリオレフィン中にグラフトされた不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体のグラフト量は、好ましくは0.1質量%、より好ましくは0.2質量%以上であり、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。
【0085】
極性基を含有するポリオレフィン樹脂は市販品を用いてもよい。
【0086】
(支持基材)
支持基材は、平滑性の観点から、プラスチックフィルムからなる。このようなプラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィンフィルム等のプラスチックフィルムが挙げられる。これらの中でも、曲げ剛性が高いことから、支持基材は、ポリエチレンテレフタレートフィルムであることが好ましい。ポリエチレンテレフタレートフィルムは、収縮しにくく、曲げ剛性が高いことから、二軸延伸されていることが好ましい。また、ポリエチレンテレフタレートフィルムは、Tダイ押出成形等、公知の方法で未延伸の樹脂フィルムを製造した後、逐次二軸延伸、同時二軸延伸等の公知の方法を用いて製造したものを使用することができる。
【0087】
好適な実施形態としては、支持基材の表面に帯電防止層が配置されてなる。
【0088】
帯電防止層は帯電防止剤を含む。帯電防止剤としては、例えば、第4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、第1、第2、第3アミノ基などのカチオン性官能基を有するカチオン型帯電防止剤;スルホン酸塩や硫酸エステル塩、ホスホン酸塩、リン酸エステル塩などのアニオン性官能基を有するアニオン型帯電防止剤;アルキルベタインおよびその誘導体、イミダゾリンおよびその誘導体、アラニンおよびその誘導体などの両性イオン型帯電防止剤;アミノアルコールおよびその誘導体、グリセリンおよびその誘導体、ポリエチレングリコールおよびその誘導体などのノニオン型帯電防止剤;上記カチオン型、アニオン型、両性イオン型のイオン導電性基を有する単量体を重合もしくは共重合して得られたイオン導電性重合体;導電性ポリマー等が挙げられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0089】
カチオン型帯電防止剤としては、例えば、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アシロイルアミドプロピルトリメチルアンモニウムメトサルフェート、アルキルベンジルメチルアンモニウム塩、アシル塩化コリン、ポリジメチルアミノエチルメタクリレートなどの4級アンモニウム基を有する(メタ)アクリレート共重合体、ポリビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライドなどの4級アンモニウム基を有するスチレン共重合体、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドなどの4級アンモニウム基を有するジアリルアミン共重合体等が挙げられる。
【0090】
アニオン型帯電防止剤としては、例えば、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエトキシ硫酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩、スルホン酸基含有スチレン共重合体等が挙げられる。
【0091】
両性イオン型帯電防止剤としては、例えば、アルキルベタイン、アルキルイミダゾリウムベタイン、カルボベタイングラフト共重合等が挙げられる。
【0092】
ノニオン型帯電防止剤としては、例えば、脂肪酸アルキロールアミド、ジ(2-ヒドロキシエチル)アルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、脂肪酸グリセリンエステル、ポリオキシエチレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンジアミン、ポリエーテルとポリエステルとポリアミドからなる共重合体、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0093】
導電性ポリマーとしては、例えば、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール等が挙げられる。
【0094】
帯電防止層はバインダー樹脂を含んでいてもよい。該バインダー樹脂としては、例えば、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリビニル系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂等が挙げられる。また、架橋剤を併用してもよい。架橋剤としては、例えば、メチロール化あるいはアルキロール化したメラミン系化合物、尿素系化合物、グリオキザール系化合物、アクリルアミド系化合物、エポキシ系化合物、イソシアネート系化合物等が挙げられる。
【0095】
樹脂(バインダー樹脂、導電性ポリマー)を含む帯電防止層の形成方法としては、例えば、上記帯電防止剤と樹脂とを任意の適切な溶媒で希釈して調製した帯電防止層形成用組成物、または、上記導電性ポリマーを任意の適切な溶媒で希釈して調製した帯電防止層形成用組成物を、支持層に塗布し、乾燥する方法が挙げられる。
【0096】
上記塗工液の塗布方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。例えば、ロールコート法、グラビアコート法、リバースコート法、ロ一ルブラッシュ法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、含浸法、カーテンコート法等が挙げられる。
【0097】
帯電防止層の厚みは、帯電防止効果の発現および薄膜化を考慮すると、好ましくは0.01μm~5μmであり、より好ましくは0.03μm~1μmである。
【0098】
帯電防止層は、必要に応じて、消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、有機系潤滑剤、有機粒子、無機粒子、等の添加剤の少なくとも1種を含有していてもよい。
【0099】
他の好適な実施形態としては、支持基材が帯電防止剤を含む。帯電防止剤としては、上記に挙げたものが挙げられる。
【0100】
帯電防止剤の含有割合は、基材の総重量に対して、好ましくは20重量%以下、より好ましくは0.05~10重量%である。
【0101】
基材に帯電防止剤を含有させる方法としては、上記帯電防止剤が基材に用いられる樹脂に均一に混合できる方法であれば特に限定されず、例えば、加熱ロール、バンバリーミキサー、加圧ニーダー、二軸混練機等を用いて基材に含有させる方法が挙げられる。
【0102】
支持体の一方の表面又は両方の表面に対し、酸化法や凹凸化法等の表面処理を施してもよい。
【0103】
酸化法としては、特に限定されず、例えば、コロナ放電処理法、プラズマ処理法、紫外線-オゾン処理法等が挙げられる。
【0104】
また、凹凸化法としては、特に限定されず、例えば、サンドブラスト法、溶剤処理法等が挙げられる。
【0105】
これらの表面処理は、基材の種類に応じて適宜選定されるが、支持体と隣接する層との密着性向上の観点、及び操作性の観点から、コロナ放電処理法及び紫外線-オゾン処理法から選ばれる1種以上が好ましく、コロナ放電処理法と紫外線-オゾン処理法との両方を行うことがより好ましい。
【0106】
また、支持体の一方又は両方の表面上には、必要に応じて、プライマー層等を設けてもよい。
【0107】
プライマー層を構成する成分としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられ、これらの樹脂は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0108】
これらその他の層を有する場合、その厚さは、それぞれ独立に、好ましくは、0.05~30μm、より好ましくは0.1~5μm、更に好ましくは0.1~1μm、より更に好ましくは0.1~0.5μmである。
【0109】
なお、本発明で用いる支持体には、所望により、更に、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、着色剤等が含有されていてもよい。
【0110】
支持体の厚さは、適宜設定されるが、剛性および経済性の観点から、好ましくは10~250μm、より好ましくは20~200μm、更に好ましくは50~180μmである。
【0111】
[任意に設けられる層]
着色基材層の、粘着剤層とは反対側の面には、光沢を維持するための保護層を、着色層から剥離可能に積層しておくことが好ましい。保護層としては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム等が挙げられる。
【0112】
[加飾シートの製造方法]
加飾シートの製造方法は、特に限定されないが、例えば以下の方法が挙げられる。
【0113】
1.剥離ライナーの製造
プラスチックフィルムからなる支持体上に第1のポリオレフィン系樹脂層および第2のポリオレフィン系樹脂層を形成する。具体的には、支持体上に溶融押出法によりポリオレフィン系樹脂層を形成し、一方のポリオレフィン系樹脂層の表面をエンボスロール表面に押し付けて、層の表面に凸部を形成する。ポリオレフィン系樹脂層を溶融押し出しした後、ポリオレフィン系樹脂層が固化する前に、エンボスロール表面にポリオレフィン系樹脂層の表面を押し付け、凸部を形成することが好ましい。そのため、エンボスロールは、凸部の形成と冷却ロールとの役割を兼ねていることがより好ましい。エンボスロールの温度は、好ましくは50℃以下、より好ましくは40℃以下、更に好ましくは30℃以下であり、そして、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上、更に好ましくは15℃以上である。
【0114】
エンボスロールとしては、凸部が形成されるように予め設計されたエンボスロールを用いる。すなわち、当該エンボスロールがポリオレフィン系樹脂層の表面に圧着されることで、エンボスロール表面のエンボスパターンがポリオレフィン系樹脂層の表面に転写され、凸部が形成される。
【0115】
また、第1のポリオレフィン系樹脂層に剥離処理を行う場合、例えば、剥離剤を第1のポリオレフィン系樹脂層の凸部が存在する側に塗布し、乾燥すればよい。
【0116】
2.粘着剤層および着色基材の積層体の製造
粘着剤層の形成方法は特に限定されないが、例えば、粘着剤組成物を第1のポリオレフィン系樹脂層側上に塗布した後、乾燥することで得られる。粘着剤組成物の塗布方法は特に限定されず、例えばロールコーター、ナイフコーター、エアーナイフコーター、バーコーター、ブレードコーター、スロットダイコーター、リップコーター、グラビアコーターなどの公知の塗布装置を用いて塗布することができる。粘着剤を剥離ライナー上に塗布後、乾燥処理を行うことによって、粘着剤層が形成される。この際の乾燥条件としては特に限定されず、例えば、60~150℃にて10~60秒の条件で行われる。
【0117】
また、このようにして得られた剥離ライナーおよび粘着剤層の積層体の粘着剤層面に着色基材を貼付して加飾シートを得ることができる。
【実施例
【0118】
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いる場合があるが、特に断りがない限り、「重量部」あるいは「重量%」を表す。また、特記しない限り、各操作は、室温(25℃)で行われる。
【0119】
実施例1
支持基材としてのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製、商品名:ルミラー T60、厚さ100μm)の一方の面に、第2のポリオレフィン系樹脂層として、極性基を有するポリオレフィン樹脂(三井化学社製、商品名:アドマー、支持基材側)を10μm、極性基を有しないポリエチレン(密度924kg/m)を20μm、溶融共押出法により積層した。更に、他方の面に、第1のポリオレフィン系樹脂層として、極性基を有するポリオレフィン樹脂(三井化学社製、商品名:アドマー(登録商標)NF538E(無水マレイン酸変性LLDPE)、支持基材側)を10μm、極性基を有しないポリエチレン(密度924kg/m)を20μm、溶融共押出法により積層し、溶融状態の面にエンボス形状を有する冷却ロールを当接させて、凸部を有する剥離ライナーを得た。凸部の形状は、高さ17μm、幅20μmの三角形、ピッチ250μmとした。
【0120】
塩化ビニル100質量部、ポリエステル系可塑剤30質量部、Ba-Zn系安定剤2質量部、酢酸ブチル50質量部からなるクリア層溶液を工程フィルムに塗布し、乾燥し、180℃で1分間加熱することにより厚さ20μmのクリア層を形成した。
【0121】
さらに、塩化ビニル100質量部、ポリエステル系可塑剤30質量部、Ba-Zn系安定剤2質量部、カーボンブラック3質量部、酢酸ブチル50質量部からなる着色溶液をクリア層の上に塗布し、乾燥し、180℃で1分間加熱することにより、厚さ120μmの着色基材を得た。
【0122】
アクリル酸ブチル単量体90質量部、アクリル酸単量体10質量部から重合された重量平均分子量80万のアクリル系ポリマーと、イソシアネート系架橋剤2重量部からなる粘着剤組成物溶液を、剥離ライナーの第1のポリオレフィン系樹脂層の上に塗布し、乾燥することにより、粘着剤層を形成した(乾燥膜厚30μm)。さらに、その粘着剤層を、着色基材のクリア層とは反対側の面に貼り合せることにより、加飾シートを得た。
【0123】
デジタル静電電位測定器(春日電機社製、商品名:KSD-1000)から50mm離れた位置で、加飾フィルムから剥離ライナーを剥離して、電位を測定した。
【0124】
ステンレス板に加飾シートを貼付し、鏡面光沢度Gs(60°)を測定したところ、89%であった。
【0125】
比較例1
第1のポリオレフィン系樹脂層および第2のポリオレフィン系樹脂層として、極性基を含有しないポリエチレンを用いたこと以外は、実施例1と同様にして加飾シートを得た。
【0126】
下記に実施例1および比較例1の層構成、および結果を記載する。
【0127】
【表1】
【0128】
以上の結果より、支持基材をポリオレフィン系樹脂層で挟持した構造を有する剥離ライナーにおいても、極性基を含有するポリオレフィン層を含むことで、剥離した際の帯電が低減することがわかる。
【符号の説明】
【0129】
10 加飾シート、
11 着色基材層、
12 粘着剤層、
13 第1のポリオレフィン系樹脂層、
14 支持基材、
15 第2のポリオレフィン系樹脂層、
16 剥離ライナー。
図1