(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-07
(45)【発行日】2022-09-15
(54)【発明の名称】二特異性抗体基幹
(51)【国際特許分類】
C07K 16/00 20060101AFI20220908BHJP
C12N 15/11 20060101ALN20220908BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20220908BHJP
【FI】
C07K16/00 ZNA
C12N15/11 Z
C12N15/13
(21)【出願番号】P 2018531487
(86)(22)【出願日】2016-12-15
(86)【国際出願番号】 US2016066865
(87)【国際公開番号】W WO2017106462
(87)【国際公開日】2017-06-22
【審査請求日】2019-12-02
(32)【優先日】2015-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】398050098
【氏名又は名称】バイオジェン・エムエイ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Biogen MA Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】プレイアー, マーティン
【審査官】長谷川 強
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-514405(JP,A)
【文献】Molecular Cancer Therapeutics, 2014, Vol.13, No.1, p.101-111
【文献】Protein Engineering, Design & Selection, 2012, Vol.25, No.10, p.603-612
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 16/00
C12N 15/11
C12N 15/13
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1重鎖可変ドメイン(第1VH)と第1軽鎖可変ドメイン(第1VL)とを含んでいる、抗体またはその抗原結合性断片であって、前記第1VHと前記第1VLとが対合して、第1抗原の第1エピトープに特異的に結合する第1可変領域を形成しており、
(a)前記第1VHが、ヒト免疫グロブリンE(IgE)のCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号1)のアミノ酸9~107と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第1ポリペプチドに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり、前記第1VLが、ヒトIgEのCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号1)のアミノ酸9~107と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第2ポリペプチドに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであるか;あるいは
(b)前記第1VHが、ヒト免疫グロブリンM(IgM)のCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸7~112と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第1ポリペプチドに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり、前記第1VLが、ヒトIgMのCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸7~112と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第2ポリペプチドに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり、
前記第1ポリペプチドと前記第2ポリペプチドとが対合して二量体を形成し、
(I)前記第1ポリペプチドがFcドメインに直接繋げられている;または
(II)前記第2ポリペプチドがFcドメインに直接繋げられている;ならびに/あるいは
前記抗体またはその抗原結合性断片が、第2重鎖可変ドメイン(第2VH)と第2軽鎖可変ドメイン(第2VL)とを含み、前記第2VHと前記第2VLとが対合して、前記第1抗原の第2エピトープまたは第2抗原に特異的に結合する第2可変領域を形成している、抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項2】
前記第2VHがCH1ドメインに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり、前記第2VLがCLドメインに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかである、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項3】
二特異性抗体であって、
(i)(a)第1重鎖可変ドメイン(第1VH)と第1軽鎖可変ドメイン(第1VL)とを含んでいる第1抗原結合性断片(第1Fab)であって、前記第1VHと前記第1VLとが対合して第1可変領域を形成しており、前記第1VHが、ヒト免疫グロブリンE(IgE)のCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号1)のアミノ酸9~107と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第1ポリペプチドに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり、前記第1VLが、ヒトIgEのCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号1)のアミノ酸9~107と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第2ポリペプチドに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかである、第1Fab;または
(b)第1重鎖可変ドメイン(第1VH)と第1軽鎖可変ドメイン(第1VL)とを含んでいる第1抗原結合性断片(第1Fab)であって、前記第1VHと前記第1VLとが対合して第1可変領域を形成しており、前記第1VHが、ヒト免疫グロブリンM(IgM)のCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸7~112と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第1ポリペプチドに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり、前記第1VLが、ヒトIgMのCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸7~112と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第2ポリペプチドに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかである、第1Fabと、
(ii)第2VHと第2VLとを含んでいる第2Fabであって、前記第2VHと前記第2VLとが対合して第2可変領域を形成しており、前記第2VHがCH1ドメインに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり、前記第2VLがCLドメインに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかである、第2Fabと
を含み、
前記第1Fab及び前記第2Fabが、異なる抗原、または同じ抗原の異なるエピトープに特異的に結合するものであり、
前記第1Fabが前記第2Fabに連結されている、二特異性抗体。
【請求項4】
(I)前記第1Fabがリンカーによって前記第2Fabに連結されているか;または
(II)前記第1Fabが異種ポリペプチドによって前記第2Fabに連結されているか;または
(III)前記第1Fabがポリエチレングリコール(PEG)によって前記第2Fabに連結されている、請求項3に記載の二特異性抗体。
【請求項5】
前記リンカーがペプチドリンカーである、請求項4に記載の二特異性抗体。
【請求項6】
前記異種ポリペプチドが、ヒト血清アルブミンであるか;またはXTENである、請求項4に記載の二特異性抗体。
【請求項7】
四価二特異性抗体であって、
(i)第1抗原の第1エピトープに特異的に結合する全IgG抗体であって、前記全IgG抗体が第1CH3ドメイン及び第2CH3ドメインを含むものである、全IgG抗体;及び
(ii)第1Fab及び第2Fab
を含み、
前記第1Fabが第1重鎖可変ドメイン(第1VH)及び第1軽鎖可変ドメイン(第1VL)を含むものであり、前記第1VHと前記第1VLとが対合して、前記第1抗原の第2エピトープまたは第2抗原に特異的に結合する第1可変領域を形成しており、
前記第2Fabが第2重鎖可変ドメイン(第2VH)及び第2軽鎖可変ドメイン(第2VL)を含むものであり、前記第2VHと前記第2VLとが対合して、前記第1Fabと同じエピトープに特異的に結合する第2可変領域を形成しており;
(a)前記第1VHが、ヒト免疫グロブリンE(IgE)のCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号1)のアミノ酸9~107と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第1ポリペプチドに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり、前記第1VLが、ヒトIgEのCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号1)のアミノ酸9~107と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第2ポリペプチドに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり、前記第2VHが、ヒトIgEのCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号1)のアミノ酸9~107と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第3ポリペプチドに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり、前記第2VLが、ヒトIgEのCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号1)のアミノ酸9~107と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第4ポリペプチドに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであるか;あるいは
(b)前記第1VHが、ヒト免疫グロブリンM(IgM)のCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸7~112と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第1ポリペプチドに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり、前記第1VLが、ヒトIgMのCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸7~112と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第2ポリペプチドに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり、前記第2VHが、ヒトIgMのCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸7~112と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第3ポリペプチドに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり、前記第2VLが、ヒトIgMのCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸7~112と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第4ポリペプチドに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり;
前記第1Fabが前記全IgG抗体の前記第1CH3ドメインのC末端に連結されており、前記第2Fabが前記全IgG抗体の前記第2CH3ドメインのC末端に連結されている、四価二特異性抗体。
【請求項8】
四価二特異性抗体であって、
(i)第1Fab及び第2Fabであって、
前記第1Fabが第1重鎖可変ドメイン(第1VH)及び第1軽鎖可変ドメイン(第1VL)を含むものであり、前記第1VHと前記第1VLとが対合して、第1抗原の第1エピトープに特異的に結合する第1可変領域を形成しており、
前記第2Fabが第2重鎖可変ドメイン(第2VH)及び第2軽鎖可変ドメイン(第2VL)を含むものであり、前記第2VHと前記第2VLとが対合して、前記第1抗原の前記第1エピトープに特異的に結合する第2可変領域を形成している、第1Fab及び第2Fabと;
(ii)第1IgG CH2ドメイン及び第1IgG CH3ドメインを含んでいる第1重鎖と、第2IgG CH2ドメイン及び第2IgG CH3ドメインを含んでいる第2重鎖と、第1軽鎖と、第2軽鎖とを含む、全抗体であって、前記抗体が第3VH及び第3VLならびに第4VH及び第4VLを含むものであり、前記第3VHと前記第3VLとが対合して、第2抗原のエピトープに特異的に結合する第3可変領域を形成しており、前記第4VHと前記第4VLとが対合して、前記第2抗原の同じエピトープに特異的に結合する第4可変領域を形成している全抗体と
を含み、
(a)前記第3VHが、ヒト免疫グロブリンE(IgE)のCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号1)のアミノ酸9~107と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第1ポリペプチドに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり、前記第3VLが、ヒトIgEのCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号1)のアミノ酸9~107と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第2ポリペプチドに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり、前記第4VHが、ヒトIgEのCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号1)のアミノ酸9~107と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第3ポリペプチドに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり、前記第4VLが、ヒトIgEのCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号1)のアミノ酸9~107と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第4ポリペプチドに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり、前記第1ポリペプチドが前記第1IgG CH2ドメインのN末端に連結されており、前記第3ポリペプチドが前記第2IgG CH2ドメインのN末端に連結されているか;または
(b)前記第3VHが、ヒト免疫グロブリンM(IgM)のCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸7~112と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第1ポリペプチドに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり、前記第3VLが、ヒトIgMのCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸7~112と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第2ポリペプチドに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり、前記第4VHが、ヒトIgMのCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸7~112と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第3ポリペプチドに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり、前記第4VLが、ヒトIgMのCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸7~112と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第4ポリペプチドに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり、前記第1ポリペプチドが前記第1IgG CH2ドメインのN末端に連結されており、前記第3ポリペプチドが前記第2IgG CH2ドメインのN末端に連結されており、
前記第1Fabが前記第1IgG CH3ドメインのC末端に連結されており、前記第2Fabが前記第2IgG CH3ドメインのC末端に連結されている、四価二特異性抗体。
【請求項9】
前記第1Fabが第1リンカーによって前記全抗体の前記第1CH3ドメインのC末端に連結されており、前記第2Fabが第2リンカーによって前記全抗体の前記第2CH3ドメインのC末端に連結されている、請求項7または8に記載の四価抗体。
【請求項10】
前記第1及び第2リンカーがペプチドリンカーである、請求項
9に記載の四価抗体。
【請求項11】
ヘテロ二量体化モジュールであって、
(a)(i)配列番号11に示す配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する第1IgG1 CH3ドメインであって、位置364及び370のアミノ酸がリジンであり、位置409のアミノ酸がセリンである、第1IgG1 CH3ドメインと;
(ii)配列番号11に示す配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する第2IgG1 CH3ドメインであって、位置370のアミノ酸がセリンであり、位置405及び409のアミノ酸がリジンである、第2IgG1 CH3ドメインとを含むか;または
(b)(i)配列番号11に示す配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する第1IgG1 CH3ドメインであって、位置364及び370のアミノ酸がリジンであり、位置409のアミノ酸がロイシンである、第1IgG1 CH3ドメインと;
(ii)配列番号11に示す配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する第2IgG1 CH3ドメインであって、位置370のアミノ酸がセリンであり、位置397のアミノ酸がイソロイシンであり、位置405及び409のアミノ酸がリジンである、第2IgG1 CH3ドメインとを含み、
(i)及び(ii)においてアミノ酸位置がEU付番方式に基づくものであり、
前記第1IgG1 CH3ドメインと前記第2IgG1 CH3とが対合してヘテロ二量体を形成している、ヘテロ二量体化モジュール。
【請求項12】
(I)第1IgG1 CH2ドメイン及び第2IgG1 CH2ドメインをさらに含み、前記第1IgG1 CH2ドメインが前記第1IgG1 CH3ドメインのN末端に(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり、前記第2IgG1 CH2ドメインが前記第2IgG1 CH3ドメインのN末端に(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり、
(a)2本のポリペプチド鎖を含んでいる第1Fabをさらに含み、前記Fabの前記2本のポリペプチド鎖のうちの1本のC末端が、第1ヒンジ領域のN末端に繋げられており、前記第1ヒンジ領域が前記第1IgG1 CH2ドメインのN末端に繋げられているか;
(b)VHドメイン、CH1ドメイン、VLドメイン及びCLドメインをさらに含み、
(i)前記VHドメインのC末端がCH1ドメインのN末端に繋げられており、前記CH1ドメインのC末端が第1ヒンジ領域のN末端に繋げられており、前記第1ヒンジ領域のC末端が、前記第1IgG1 CH3ドメインに直接繋げられた前記第1IgG1
CH2ドメインのN末端に繋げられており、
(ii)前記VLドメインのC末端が前記CLドメインのN末端に繋げられており、前記CLドメインのC末端が第2ヒンジ領域のN末端に繋げられており、前記第2ヒンジ領域のC末端が、前記第2IgG1 CH3ドメインに直接繋げられた前記第2IgG1 CH2ドメインのN末端に繋げられており、
(iii)前記VHドメインと前記VLドメインとが対合して、抗原に特異的に結合する可変領域を形成しているか;または
(c)第1VH及び第1VLならびに第2VH及び第2VLをさらに含み、前記第1VHと前記第1VLとが対合して、第1抗原に特異的に結合する第1可変領域を形成しており、前記第2VHと前記第2VLとが対合して、前記第1抗原の別のエピトープまたは第2抗原に特異的に結合する第2可変領域を形成しているか;あるいは
(II)第1IgG4 CH2ドメイン及び第2IgG4 CH2ドメインをさらに含み、前記第1IgG4 CH2ドメインが前記第1IgG1 CH3ドメインのN末端に(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり、前記第2IgG4 CH2ドメインが、前記第2IgG1 CH3ドメインのN末端に(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり、
(a)2本のポリペプチド鎖を含んでいる第1Fabをさらに含み、前記Fabの前記2本のポリペプチド鎖のうちの1本のC末端が、第1IgG4ヒンジ領域のN末端に繋げられており、前記第1IgG4ヒンジ領域が第1IgG4 CH2ドメインのN末端に繋げられているか;
(b)VHドメイン、CH1ドメイン、VLドメイン及びCLドメインをさらに含み、
(i)前記VHドメインのC末端が前記CH1ドメインのN末端に繋げられており、前記CH1ドメインのC末端が第1IgG4ヒンジ領域のN末端に繋げられており、前記第1IgG4ヒンジ領域のC末端が、前記第1IgG1 CH3ドメインに直接繋げられた前記第1IgG4 CH2ドメインのN末端に繋げられており、
(ii)前記VLドメインのC末端がCLドメインのN末端に繋げられており、前記CLドメインのC末端が第2IgG4ヒンジ領域のN末端に繋げられており、前記第2IgG4ヒンジ領域のC末端が、前記第2IgG1 CH3ドメインに直接繋げられた前記第2IgG4 CH2ドメインのN末端に繋げられており、
(iii)前記VHドメインと前記VLドメインとが対合して、抗原に特異的に結合する可変領域を形成しているか;または
(c)第1VH及び第1VLならびに第2VH及び第2VLをさらに含み、前記第1VHと前記第1VLとが対合して、第1抗原に特異的に結合する第1可変領域を形成しており、前記第2VHと前記第2VLとが対合して、前記第1抗原の別のエピトープまたは第2抗原に特異的に結合する第2可変領域を形成している、請求項11に記載のヘテロ二量体化モジュール。
【請求項13】
要素(I)(a)が、第2ヒンジ領域を介して前記第2IgG1 CH2ドメインのN末端に繋げられた第2Fabをさらに含む、請求項12に記載のヘテロ二量体化モジュール。
【請求項14】
要素(I)(c)において、前記第1VLのアミノ酸配列が、前記第2VLのアミノ酸配列と同一である、請求項12に記載のヘテロ二量体化モジュール。
【請求項15】
要素(II)において、前記第1及び/または第2IgG4ヒンジ領域がS228P突然変異(EU付番)を含む、請求項12に記載のヘテロ二量体化モジュール。
【請求項16】
要素(II)(a)が、第2IgG4ヒンジ領域を介して前記第2IgG4 CH2ドメインのN末端に繋げられた第2Fabをさらに含む、請求項12に記載のヘテロ二量体化モジュール。
【請求項17】
要素(II)(c)において、前記第1VLのアミノ酸配列が、前記第2VLのアミノ酸配列と同一である、請求項12に記載のヘテロ二量体化モジュール。
【請求項18】
二特異性抗体であって、
(i)第1VH及び第1VLであって、前記第1VHと前記第1VLとが対合して、第1抗原の第1エピトープに特異的に結合する第1可変領域を形成しており、前記第1VHが、ヒト免疫グロブリンE(IgE)のCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号1)のアミノ酸9~107と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第1ポリペプチドに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり、前記第1VLが、ヒトIgEのCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号1)のアミノ酸9~107と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第2ポリペプチドに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり、前記第1ポリペプチドと前記第2ポリペプチドとが対合して二量体を形成している、第1VH及び第1VLと;
(ii)第2VH及び第2VLであって、前記第2VHと前記第2VLとが対合して、前記第1抗原の第2エピトープまたは第2抗原に特異的に結合する第2可変領域を形成しており、前記第2VHがCH1ドメインに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり、前記第2VLがCLドメインに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり、前記CH1ドメインと前記CLドメインとが対合して二量体を形成している、第2VH及び第2VLと;
(iii)ヘテロ二量体化モジュールであって、
(A)(a)配列番号11に示す配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する第1IgG1 CH3ドメインであって、位置364及び370のアミノ酸がリジンであり、位置409のアミノ酸がセリンである、第1IgG1 CH3ドメインと;
(b)配列番号11に示す配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する第2IgG1 CH3ドメインであって、位置370のアミノ酸がセリンであり、位置405及び409のアミノ酸がリジンである、第2IgG1 CH3ドメインとを含むか;または
(B)(a)配列番号11に示す配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する第1IgG1 CH3ドメインであって、位置364及び370のアミノ酸がリジンであり、位置409のアミノ酸がロイシンである、第1IgG1 CH3ドメインと;
(b)配列番号11に示す配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する第2IgG1 CH3ドメインであって、位置370のアミノ酸がセリンであり、位置397のアミノ酸がイソロイシンであり、位置405及び409のアミノ酸がリジンである第2IgG1 CH3とを含み、
(a)及び(b)において前記アミノ酸位置がEU付番方式に基づくものである、ヘテロ二量体化モジュールと
を含む、二特異性抗体。
【請求項19】
二特異性抗体であって、
(i)第1VH及び第1VLであって、前記第1VHと前記第1VLとが対合して、第1抗原の第1エピトープに特異的に結合する第1可変領域を形成しており、前記第1VHが、ヒト免疫グロブリンM(IgM)のCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸7~112と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第1ポリペプチドに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり、前記第1VLが、ヒトIgMのCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸7~112と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第2ポリペプチドに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり、前記第1ポリペプチドと前記第2ポリペプチドとが対合して二量体を形成している、第1VH及び第1VLと;
(ii)第2VH及び第2VLであって、前記第2VHと前記第2VLとが対合して、前記第1抗原の第2エピトープまたは第2抗原に特異的に結合する第2可変領域を形成しており、前記第2VHがCH1ドメインに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり、前記第2VLがCLドメインに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり、前記CH1ドメインと前記CLドメインとが対合して二量体を形成している、第2VH及び第2VLと;
(iii)ヘテロ二量体化モジュールであって、
(A)(a)配列番号11に示す配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する第1IgG1 CH3ドメインであって、位置364及び370のアミノ酸がリジンであり、位置409のアミノ酸がセリンである、第1IgG1 CH3ドメインと;
(b)配列番号11に示す配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する第2IgG1 CH3ドメインであって、位置370のアミノ酸がセリンであり、位置405及び409のアミノ酸がリジンである、第2IgG1 CH3ドメインを含むか;または
(B)(a)配列番号11に示す配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する第1IgG1 CH3ドメインであって、位置364及び370のアミノ酸がリジンであり、位置409のアミノ酸がロイシンである、第1IgG1 CH3ドメインと;
(b)配列番号11に示す配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する第2IgG1 CH3ドメインであって、位置370のアミノ酸がセリンであり、位置397のアミノ酸がイソロイシンであり、位置405及び409のアミノ酸がリジンである、第2IgG1 CH3ドメインとを含み、
(a)及び(b)において前記アミノ酸位置がEU付番方式に基づくものである、ヘテロ二量体化モジュールと
を含む、二特異性抗体。
【請求項20】
請求項18または19に記載の二特異性抗体であって、
(I)2つのIgG1 CH2ドメイン;または
(II)2つのIgG4 CH2ドメイン
をさらに含む、ならびに/あるいは
(a)単一のポリペプチド鎖が前記第1VHと前記第1ポリペプチドと前記第1IgG1 CH3ドメインとを含むか;
(b)単一のポリペプチド鎖が前記第1VHと前記第1ポリペプチドと前記第2IgG1 CH3ドメインとを含むか;
(c)単一のポリペプチド鎖が前記第1VLと前記第2ポリペプチドと前記第1IgG1 CH3ドメインとを含むか;または
(d)単一のポリペプチド鎖が前記第1VLと前記第2ポリペプチドと前記第2IgG1 CH3ドメインとを含む、
二特異性抗体。
【請求項21】
要素(II)(a)において、第2の単一のポリペプチド鎖が前記第2VHと前記CH1ドメインと前記第2IgG1 CH3ドメインとを含む、請求項20に記載の二特異性抗体。
【請求項22】
要素(II)(b)において、第2の単一のポリペプチド鎖が前記第2VHと前記CH1ドメインと前記第1IgG1 CH3ドメインとを含む、請求項20に記載の二特異性抗体。
【請求項23】
要素(II)(c)において、第2の単一のポリペプチド鎖が前記第2VLと前記CLドメインと前記第2IgG1 CH3ドメインとを含む、請求項20に記載の二特異性抗体。
【請求項24】
要素(II)(d)において、第2の単一のポリペプチド鎖が前記第2VLと前記CLドメインと前記第1IgG1 CH3ドメインとを含む、請求項20に記載の二特異性抗体。
【請求項25】
前記第1ポリペプチド及び/または前記第2ポリペプチドが、
(a)配列番号1に示すアミノ酸配列;
(b)配列番号1に示すアミノ酸配列のアミノ酸9~107と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列;
(c)配列番号1に示すアミノ酸配列のアミノ酸9~107;
(d)鎖内ジスルフィド結合を形成しない配列番号1の2つのシステイン残基のうちの少なくとも1つに存在するシステイン以外のアミノ酸;
(e)配列番号2に示すアミノ酸配列;
(f)配列番号2に示すアミノ酸配列のアミノ酸7~112と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列;
(g)配列番号2に示すアミノ酸配列のアミノ酸7~112;または
(h)鎖間ジスルフィド結合を形成することができる配列番号2のシステイン残基におけるシステイン以外のアミノ酸
を含む、請求項1~4及び18~24のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項26】
前記第1ポリペプチドが、
(a)配列番号5に示すアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列;または
(b)配列番号5に示すアミノ酸配列
を含む、請求項1~3または18~24のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項27】
前記第2ポリペプチドが、
(a)配列番号6に示すアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列;または
(b)配列番号6に示すアミノ酸配列
を含む、請求項1~3または18~24のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項28】
前記第1ポリペプチド、前記第2ポリペプチド、前記第3ポリペプチド及び/または前記第4ポリペプチドが、
(a)配列番号1に示すアミノ酸配列;
(b)配列番号1に示すアミノ酸配列のアミノ酸9~107と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列;
(c)配列番号1に示すアミノ酸配列のアミノ酸9~107;
(d)配列番号2に示すアミノ酸配列;
(e)配列番号2に示すアミノ酸配列のアミノ酸7~112と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列;または
(f)配列番号2に示すアミノ酸配列のアミノ酸7~112
を含む、請求項7~9のいずれか1項に記載の四価抗体。
【請求項29】
前記第1ポリペプチド及び前記第3ポリペプチドが各々、
(a)配列番号5に示すアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列;または
(b)配列番号5に示すアミノ酸配列
を含む、請求項9または10に記載の四価抗体。
【請求項30】
前記第2ポリペプチド及び前記第4ポリペプチドが各々、
(a)配列番号6に示すアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列;または
(b)配列番号6に示すアミノ酸配列
を含む、請求項9または10に記載の四価抗体。
【請求項31】
(i)前記第1ポリペプチド及び前記第2ポリペプチドがNグリコシル化されないように、前記第1ポリペプチド及び前記第2ポリペプチドが各々、アスパラギン及び/もしくはスレオニンもしくはセリンを除く他のアミノ酸を配列番号1または配列番号2のNグリコシル化モチーフ内に含有するか;または、
(ii)前記第1ポリペプチドもしくは前記第2ポリペプチドがNグリコシル化されないように、前記第1ポリペプチドもしくは前記第2ポリペプチドが、アスパラギン及び/もしくはスレオニンもしくはセリンを除く他のアミノ酸を配列番号1または配列番号2のNグリコシル化モチーフ内に含有し、
配列番号1の前記Nグリコシル化モチーフがNIT配列であり、配列番号2の前記Nグリコシル化モチーフがNAS配列である、
請求項1~4、18~24または25のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2015年12月18日に出願された米国仮特許出願第62/269,664号に対する優先権の利益を主張するものであり、その内容を参照により全体的に本明細書に援用する。
【背景技術】
【0002】
二特異性抗体の生物学的薬剤としての使用は、主に、従来型の2つの単一特異性抗体の併用によって獲得することができない新規作用機序をもたらす潜在性ゆえに、益々関心を集めている。そのため、二特異性抗体を生成する効率的な方法が模索されている。生物学的薬剤としての二特異性抗体を作製する初期の試みは、単一特異性抗体の化学的結合とmAb発現細胞の融合とを伴うものであったが、効率の低さ及び大量の副生成物による精製の必要性がこれらの方策の欠点である。タンパク質工学及び分子生物学において進歩した方法は、多様な新規二特異性抗体構成の作製を可能にした。しかしながら、これらの操作された二特異性抗体構成の、変化した生化学的/生物物理学的特性、血中半減期または安定性は、好ましくない場合がある。よって、これらの問題のいくつかを克服し得る二特異性抗体を作製するための効率的な基幹は有用であろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本願は、異なるエピトープに結合する任意の2つの抗体を二特異性抗体に変換することができる抗体基幹技術に関する。この基幹技術は、一部において、Fc領域をそのCH3ドメインにおけるリジン再配置によって操作して二特異性抗体の2本の重鎖のヘテロ二量体化を引き起こすことを含む。さらに、この技術は、二特異性抗体の軽鎖の誤対合を防止すべく二特異性抗体の2つのFabアームのうちの一方を改変することを含む。具体的には、二特異性抗体の片方のFabアームのCH1ドメイン及びCLドメインをIgE CH2ドメインまたはIgM CH2ドメインで置き換える。ある場合には、二特異性抗体の片方のFabアームのCH1ドメイン及びCLドメインがIgE CH2ドメイン(またはIgM CH2ドメイン)の断片で置き換わっており、当該断片は、なおもIgE CH2ドメイン(またはIgM CH2ドメイン)と二量体化することができるものである。
【0004】
一態様において、本開示は、第1重鎖可変ドメイン(第1VH)と第1軽鎖可変ドメイン(第1VL)とを含んでいる、抗体またはその抗原結合性断片であって、第1VHと第1VLとが対合して、第1抗原の第1エピトープに特異的に結合する第1可変領域を形成している、当該抗体またはその抗原結合性断片を提供する。第1VHは、ヒト免疫グロブリンE(IgE)のCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号1)のアミノ酸9~107と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第1ポリペプチドに直接繋げられているかまたはリンカーを介して繋げられているかのどちらかである。第1VLは、ヒトIgEのCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号1)のアミノ酸9~107と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第2ポリペプチドに直接繋げられているかまたはリンカーを介して繋げられているかのどちらかである。第1ポリペプチドと第2ポリペプチドとが対合して二量体を形成している。
【0005】
この態様の特定の実施形態では、第1ポリペプチド及び/または第2ポリペプチドはFcドメインに直接繋げられている。ある場合には、FcドメインはIgG1抗体のCH2及びCH3ドメインを含む。ある場合には、FcドメインはIgG4抗体のCH2及びCH3ドメインを含む。ある場合には、FcドメインはIgG4抗体のCH2とIgG1抗体のCH3ドメインとを含む。これら全ての実施形態のうちのいくつかでは、FcドメインはIgG4抗体のヒンジ領域(例えばIgG4P-すなわち、S228P突然変異を有するIgG4ヒンジ領域)を含む。いくつかの実施形態では、第1ポリペプチド及び/または第2ポリペプチドは、配列番号1に示すアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第1ポリペプチド及び/または第2ポリペプチドは、配列番号1に示すアミノ酸配列のアミノ酸9~107と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、第1ポリペプチド及び/または第2ポリペプチドは、配列番号1に示すアミノ酸配列のアミノ酸9~107を含む。いくつかの実施形態では、第1ポリペプチドは、配列番号5に示すアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む。具体的な実施形態において、第1ポリペプチドは、配列番号5に示すアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第2ポリペプチドは、配列番号6に示すアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む。具体的な実施形態において、第2ポリペプチドは、配列番号6に示すアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第1ポリペプチド及び/または第2ポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸9~107に示すアミノ酸配列とは12個以下のアミノ酸残基が異なっている。いくつかの実施形態では、第1ポリペプチド及び/または第2ポリペプチドは、鎖内ジスルフィド結合を形成しない配列番号1の2つのシステイン残基のうちの少なくとも1つにおいてシステイン以外のアミノ酸を含有している。特定の実施形態では、第1ポリペプチド及び第2ポリペプチドは各々、N結合型グリコシル化部位がグリコシル化されないように、IgE CH2ドメインまたはその断片においてN結合型グリコシル化部位の突然変異を含有している(例えば、アスパラギン及び/またはスレオニン残基が別のアミノ酸で置換されている)。特定の実施形態では、第1ポリペプチドまたは第2ポリペプチドは、N結合型グリコシル化部位がグリコシル化されないように、IgE CH2ドメインまたはその断片においてN結合型グリコシル化部位の突然変異を含有している。特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、第2重鎖可変ドメイン(第2VH)と第2軽鎖可変ドメイン(第2VL)とを含み、第2VHと第2VLとが対合して、第1抗原の第2エピトープまたは第2抗原に特異的に結合する第2可変領域を形成している。特定の実施形態では、第2VHはCH1ドメインに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり、第2VLはCLドメインに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかである。特定の実施形態では、本開示は、上記の抗体または抗原結合性断片をコードする1つ以上のポリヌクレオチドを提供する。いくつかの実施形態では、上記の1つ以上のポリヌクレオチドを含んでいる発現ベクターが提供される。他の実施形態では、1つ以上のポリヌクレオチドまたは発現ベクターを含んでいる宿主細胞が提供される。さらに他の実施形態では、上記の抗体または抗原結合性断片を作る方法であって、上記の抗体または抗原結合性断片の発現をもたらす条件下で上記宿主細胞を培養することと、細胞培養物から抗体または抗原結合性断片を単離することとを含む、当該方法が提供される。特定の実施形態では、単離された抗体または抗原結合性断片は、無菌組成物として、それを必要とするヒト対象への投与のために製剤化される。
【0006】
第2の態様において、本開示は、第1VHと第1VLとを含んでいる、抗体またはその抗原結合性断片を提供し、第1VHと第1VLとが対合して、第1抗原の第1エピトープに特異的に結合する第1可変領域を形成している。第1VHは、ヒト免疫グロブリンM(IgM)のCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸7~112と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第1ポリペプチドに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかである。第1VLは、ヒトIgMのCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸7~112と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第2ポリペプチドに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかである。第1ポリペプチドと第2ポリペプチドとが対合して二量体を形成している。
【0007】
この態様の特定の実施形態では、第1ポリペプチド及び/または第2ポリペプチドはFcドメインに直接繋げられている。ある場合には、FcドメインはIgG1抗体のCH2及びCH3ドメインを含む。ある場合には、FcドメインはIgG4抗体のCH2及びCH3ドメインを含む。ある場合には、FcドメインはIgG4抗体のCH2とIgG1抗体のCH3ドメインとを含む。これら全ての実施形態のうちのいくつかでは、FcドメインはIgG4抗体のヒンジ領域(例えばIgG4P-すなわち、S228P突然変異を有するIgG4ヒンジ領域)を含む。いくつかの実施形態では、第1ポリペプチド及び/または第2ポリペプチドは、配列番号2に示すアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第1ポリペプチド及び/または第2ポリペプチドは、配列番号2に示すアミノ酸配列のアミノ酸7~112と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、第1ポリペプチド及び/または第2ポリペプチドは、配列番号2に示すアミノ酸配列のアミノ酸7~112を含む。いくつかの実施形態では、第1ポリペプチド及び/または第2ポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸7~112に示すアミノ酸配列とは12個以下のアミノ酸残基が異なっている。いくつかの実施形態では、第1ポリペプチド及び/または第2ポリペプチドは、鎖内ジスルフィド結合を形成しない配列番号2のシステイン残基においてシステイン以外のアミノ酸を含有している。特定の実施形態では、第1ポリペプチド及び第2ポリペプチドは各々、N結合型グリコシル化部位がグリコシル化されないように、IgM CH2ドメインまたはその断片においてN結合型グリコシル化部位の突然変異を含有している(例えば、アスパラギン及び/またはセリン残基が別のアミノ酸で置換されている)。いくつかの実施形態では、第1ポリペプチドまたは第2ポリペプチドは、N結合型グリコシル化部位がグリコシル化されないように、IgM CH2ドメインまたはその断片においてN結合型グリコシル化部位の突然変異を含有している。特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、第2重鎖可変ドメイン(第2VH)と第2軽鎖可変ドメイン(第2VL)とを含み、第2VHと第2VLとが対合して、第1抗原の第2エピトープまたは第2抗原に特異的に結合する第2可変領域を形成している。特定の実施形態では、第2VHはCH1ドメインに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり、第2VLはCLドメインに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかである。特定の実施形態では、本開示は、上記の抗体または抗原結合性断片をコードする1つ以上のポリヌクレオチドを提供する。いくつかの実施形態では、上記の1つ以上のポリヌクレオチドを含んでいる発現ベクターが提供される。他の実施形態では、1つ以上のポリヌクレオチドまたは発現ベクターを含んでいる宿主細胞が提供される。さらに他の実施形態では、上記の抗体または抗原結合性断片を作る方法であって、上記の抗体または抗原結合性断片の発現をもたらす条件下で上記宿主細胞を培養することと、細胞培養物から抗体または抗原結合性断片を単離することとを含む、当該方法が提供される。特定の実施形態では、単離された抗体または抗原結合性断片は、無菌組成物として、それを必要とするヒト対象への投与のために製剤化される。
【0008】
別の態様において、本開示は、二特異性抗体であって、第1VHと第1VLとを含んでいる第1抗原結合性断片(第1Fab)を含み、第1VHと第1VLとが対合して第1可変領域を形成している、当該二特異性抗体を提供する。第1VHは、ヒト免疫グロブリンE(IgE)のCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号1)のアミノ酸9~107と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第1ポリペプチドに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかである。第1VLは、ヒトIgEのCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号1)のアミノ酸9~107と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第2ポリペプチドに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかである。二特異性抗体はさらに、第2VHと第2VLとを含んでいる第2Fabを含み、第2VHと第2VLとが対合して第2可変領域を形成しており、第2VHはCH1ドメインに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり、第2VLはCLドメインに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかである。第1Fab及び第2Fabは、異なる抗原、または同じ抗原の異なるエピトープに特異的に結合するものであり、第1Fabは第2Fabに連結されている。
【0009】
この態様のいくつかの実施形態では、第1Fabはリンカーによって第2Fabに連結される。特定の実施形態では、第1Fabは異種ポリペプチドによって第2Fabに連結される。いくつかの実施形態では、異種ポリペプチドはヒト血清アルブミンである。いくつかの実施形態では、異種ポリペプチドはXTEN(例えば、AE144、AE288)である。いくつかの実施形態では、第1Fabはポリエチレングリコール(PEG)によって第2Fabに連結される。特定の実施形態では、第1ポリペプチド及び/または第2ポリペプチドは各々、配列番号1に示すアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第1ポリペプチド及び/または第2ポリペプチドは、配列番号1に示すアミノ酸配列のアミノ酸9~107と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、第1ポリペプチド及び/または第2ポリペプチドは、配列番号1に示すアミノ酸配列のアミノ酸9~107を含む。いくつかの実施形態では、第1ポリペプチドは、配列番号5に示すアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第1ポリペプチドは、配列番号5に示すアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、第2ポリペプチドは、配列番号6に示すアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第2ポリペプチドは、配列番号6に示すアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、第1ポリペプチド及び/または第2ポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸9~107に示すアミノ酸配列とは12個以下のアミノ酸残基が異なっている。他の実施形態では、第1ポリペプチド及び/または第2ポリペプチドは、鎖間ジスルフィド結合を形成することができる配列番号1の2つのシステイン残基のうちの少なくとも1つにおいてシステイン以外のアミノ酸を含有している。特定の実施形態では、第1ポリペプチド及び/または第2ポリペプチドは、N結合型グリコシル化部位がグリコシル化されないように、IgE CH2ドメインまたはその断片においてN結合型グリコシル化部位の突然変異を含有している。例えば、IgE CH2ドメインのN結合型グリコシル化部位のアスパラギン及び/またはスレオニンが別のアミノ酸で置換されてこのモチーフのグリコシル化を防止していてもよい。特定の実施形態では、本開示は、上記二特異性抗体をコードする1つ以上のポリヌクレオチドを提供する。いくつかの実施形態では、上記二特異性抗体を含んでいる発現ベクターが提供される。他の実施形態では、二特異性抗体または発現ベクターを含んでいる宿主細胞が提供される。さらに他の実施形態では、二特異性抗体を作る方法であって、二特異性抗体の発現をもたらす条件下で上記宿主細胞を培養することと、細胞培養物から二特異性抗体を単離することとを含む、当該方法が提供される。特定の実施形態では、単離された二特異性抗体は、無菌組成物として、それを必要とするヒト対象への投与のために製剤化される。
【0010】
別の態様において、本開示は、二特異性抗体であって、第1VHと第1VLとを含んでいる第1抗原結合性断片(第1Fab)を含み、第1VHと第1VLとが対合して第1可変領域を形成している、当該二特異性抗体を提供する。第1VHは、ヒト免疫グロブリンM(IgM)のCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸7~112と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第1ポリペプチドに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかである。第1VLは、ヒトIgMのCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸7~112と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第2ポリペプチドに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかである。二特異性抗体はさらに、第2VHと第2VLとを含んでいる第2Fabを含む。第2VHと第2VLとが対合して第2可変領域を形成しており、第2VHはCH1ドメインに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり、第2VLはCLドメインに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかである。第1Fab及び第2Fabは、異なる抗原、または同じ抗原の異なるエピトープに特異的に結合する。第1Fabは第2Fabに連結されている。
【0011】
この態様のいくつかの実施形態では、第1Fabはリンカーによって第2Fabに連結される。特定の実施形態では、第1Fabは異種ポリペプチドによって第2Fabに連結される。いくつかの実施形態では、異種ポリペプチドはヒト血清アルブミンである。いくつかの実施形態では、異種ポリペプチドはXTEN(例えば、AE144、AE288)である。いくつかの実施形態では、第1Fabはポリエチレングリコール(PEG)によって第2Fabに連結される。特定の実施形態では、第1ポリペプチド及び/または第2ポリペプチドは各々、配列番号2に示すアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第1ポリペプチド及び/または第2ポリペプチドは、配列番号2に示すアミノ酸配列のアミノ酸7~112と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、第1ポリペプチド及び/または第2ポリペプチドは、配列番号2に示すアミノ酸配列のアミノ酸7~112を含む。特定の実施形態では、第1ポリペプチド及び/または第2ポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸7~112に示すアミノ酸配列とは12個以下のアミノ酸残基が異なっている。他の実施形態では、第1ポリペプチド及び/または第2ポリペプチドは、鎖間ジスルフィド結合を形成することができる配列番号2のシステイン残基においてシステイン以外のアミノ酸を含有している。特定の実施形態では、第1ポリペプチド及び/または第2ポリペプチドは、N結合型グリコシル化部位がグリコシル化されないように、IgM CH2ドメインまたはその断片においてN結合型グリコシル化部位の突然変異を含有している。例えば、IgM CH2ドメインのN結合型グリコシル化部位のアスパラギン及び/またはセリンが別のアミノ酸で置換されてこのモチーフのグリコシル化を防止していてもよい。特定の実施形態では、本開示は、上記二特異性抗体をコードする1つ以上のポリヌクレオチドを提供する。いくつかの実施形態では、上記二特異性抗体を含んでいる発現ベクターが提供される。他の実施形態では、二特異性抗体または発現ベクターを含んでいる宿主細胞が提供される。さらに他の実施形態では、二特異性抗体を作る方法であって、二特異性抗体の発現をもたらす条件下で上記宿主細胞を培養することと、細胞培養物から二特異性抗体を単離することとを含む、当該方法が提供される。特定の実施形態では、単離された二特異性抗体は、無菌組成物として、それを必要とするヒト対象への投与のために製剤化される。
【0012】
別の態様において、本開示は、四価二特異性抗体であって、第1抗原の第1エピトープに特異的に結合する全IgG抗体を含み、全IgG抗体が第1CH3ドメイン及び第2CH3ドメインを含むものであり;さらに、第1Fab及び第2Fabを含む、当該四価二特異性抗体を提供する。第1Fabは、第1重鎖可変ドメイン(第1VH)及び第1軽鎖可変ドメイン(第1VL)を含み、第1VHと第1VLとが対合して、第1抗原の第2エピトープまたは第2抗原に特異的に結合する第1可変領域を形成している。第2Fabは、第2重鎖可変ドメイン(第2VH)及び第2軽鎖可変ドメイン(第2VL)を含み、第2VHと第2VLとが対合して、第1Fabと同じエピトープに特異的に結合する第2可変領域を形成している。第1VHは、ヒト免疫グロブリンE(IgE)のCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号1)のアミノ酸9~107と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第1ポリペプチドに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかである。第1VLは、ヒトIgEのCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号1)のアミノ酸9~107と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第2ポリペプチドに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかである。第2VHは、ヒトIgEのCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号1)のアミノ酸9~107と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第3ポリペプチドに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかである。第2VLは、ヒトIgEのCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号1)のアミノ酸9~107と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第4ポリペプチドに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかである。第1Fabは、全IgG抗体の第1CH3ドメインのC末端に連結されており、第2Fabは、全IgG抗体の第2CH3ドメインのC末端に連結されている。
【0013】
この態様のいくつかの実施形態では、第1Fabは第1リンカーによって全抗体の第1CH3ドメインのC末端に連結されており、第2Fabは第2リンカーによって全抗体の第2CH3ドメインのC末端に連結されている。特定の実施形態では、第1リンカーは、全抗体の第1CH3ドメインのC末端と第1VHのN末端とを繋げている。特定の実施形態では、第1リンカーは、全抗体の第1CH3ドメインのC末端と第1VLのN末端とを繋げている。特定の実施形態では、第1リンカーは、全抗体の第1CH3ドメインのC末端と第1ポリペプチドのN末端とを繋げている。特定の実施形態では、第1リンカーは、全抗体の第1CH3ドメインのC末端と第2ポリペプチドのN末端とを繋げている。特定の実施形態では、第2リンカーは、全抗体の第1CH3ドメインのC末端と第2VHのN末端とを繋げている。特定の実施形態では、第2リンカーは、全抗体の第1CH3ドメインのC末端と第2VLのN末端とを繋げている。特定の実施形態では、第2リンカーは、全抗体の第1CH3ドメインのC末端と第3ポリペプチドのN末端とを繋げている。特定の実施形態では、第2リンカーは、全抗体の第1CH3ドメインのC末端と第4ポリペプチドのN末端とを繋げている。特定の実施形態では、第1及び第2リンカーはペプチドリンカーである。いくつかの実施形態では、第1ポリペプチド、第2ポリペプチド、第3ポリペプチド及び/または第4ポリペプチドは、配列番号1に示すアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、第1ポリペプチド、第2ポリペプチド、第3ポリペプチド及び/または第4ポリペプチドは、配列番号1に示すアミノ酸配列のアミノ酸9~107と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第1ポリペプチド、第2ポリペプチド、第3ポリペプチド及び/または第4ポリペプチドは、配列番号1に示すアミノ酸配列のアミノ酸9~107を含む。いくつかの実施形態では、第1ポリペプチド及び第3ポリペプチドは各々、配列番号5に示すアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、第1ポリペプチド及び第3ポリペプチドは各々、配列番号5に示すアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、第2ポリペプチド及び第4ポリペプチドは各々、配列番号6に示すアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第2ポリペプチド及び第4ポリペプチドは各々、配列番号6に示すアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、第1ポリペプチド、第2ポリペプチド、第3ポリペプチド及び/または第4ポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸9~107に示すアミノ酸配列とは少なくとも12個のアミノ酸残基が異なっている。特定の実施形態では、本開示は、上記二特異性抗体をコードする1つ以上のポリヌクレオチドを提供する。いくつかの実施形態では、上記二特異性抗体を含んでいる発現ベクターが提供される。他の実施形態では、二特異性抗体または発現ベクターを含んでいる宿主細胞が提供される。さらに他の実施形態では、二特異性抗体を作る方法であって、二特異性抗体の発現をもたらす条件下で上記宿主細胞を培養することと、細胞培養物から二特異性抗体を単離することとを含む、当該方法が提供される。特定の実施形態では、単離された二特異性抗体は、無菌組成物として、それを必要とするヒト対象への投与のために製剤化される。
【0014】
別の態様において、本開示は、四価二特異性抗体であって、第1抗原の第1エピトープに特異的に結合する全IgG抗体を含み、全IgG抗体が第1CH3ドメイン及び第2CH3ドメインを含むものであり;さらに、第1Fab及び第2Fabを含む、当該四価二特異性抗体を提供する。第1Fabは、第1重鎖可変ドメイン(第1VH)及び第1軽鎖可変ドメイン(第1VL)を含み、第1VHと第1VLとが対合して、第1抗原の第2エピトープまたは第2抗原に特異的に結合する第1可変領域を形成している。第2Fabは、第2重鎖可変ドメイン(第2VH)及び第2軽鎖可変ドメイン(第2VL)を含み、第2VHと第2VLとが対合して、第1Fabと同じエピトープに特異的に結合する第2可変領域を形成している。第1VHは、ヒト免疫グロブリンM(IgM)のCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸7~112と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第1ポリペプチドに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかである。第1VLは、ヒトIgMのCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸7~112と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第2ポリペプチドに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかである。第2VHは、ヒトIgMのCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸7~112と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第3ポリペプチドに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかである。第2VLは、ヒトIgMのCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸7~112と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第4ポリペプチドに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかである。第1Fabは、全IgG抗体の第1CH3ドメインのC末端に連結されており、第2Fabは、全IgG抗体の第2CH3ドメインのC末端に連結されている。
【0015】
この態様のいくつかの実施形態では、第1Fabは第1リンカーによって全抗体の第1CH3ドメインのC末端に連結されており、第2Fabは第2リンカーによって全抗体の第2CH3ドメインのC末端に連結されている。特定の実施形態では、第1リンカーは、全抗体の第1CH3ドメインのC末端と第1VHのN末端とを繋げている。特定の実施形態では、第1リンカーは、全抗体の第1CH3ドメインのC末端と第1VLのN末端とを繋げている。特定の実施形態では、第1リンカーは、全抗体の第1CH3ドメインのC末端と第1ポリペプチドのN末端とを繋げている。特定の実施形態では、第1リンカーは、全抗体の第1CH3ドメインのC末端と第2ポリペプチドのN末端とを繋げている。特定の実施形態では、第2リンカーは、全抗体の第1CH3ドメインのC末端と第2VHのN末端とを繋げている。特定の実施形態では、第2リンカーは、全抗体の第1CH3ドメインのC末端と第2VLのN末端とを繋げている。特定の実施形態では、第2リンカーは、全抗体の第1CH3ドメインのC末端と第3ポリペプチドのN末端とを繋げている。特定の実施形態では、第2リンカーは、全抗体の第1CH3ドメインのC末端と第4ポリペプチドのN末端とを繋げている。特定の実施形態では、第1及び第2リンカーはペプチドリンカーである。いくつかの実施形態では、第1ポリペプチド、第2ポリペプチド、第3ポリペプチド及び/または第4ポリペプチドは、配列番号2に示すアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、第1ポリペプチド、第2ポリペプチド、第3ポリペプチド及び/または第4ポリペプチドは、配列番号2に示すアミノ酸配列のアミノ酸7~112と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第1ポリペプチド、第2ポリペプチド、第3ポリペプチド及び/または第4ポリペプチドは、配列番号2に示すアミノ酸配列のアミノ酸7~112を含む。特定の実施形態では、第1ポリペプチド、第2ポリペプチド、第3ポリペプチド及び/または第4ポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸7~112に示すアミノ酸配列とは少なくとも12個のアミノ酸残基が異なっている。特定の実施形態では、本開示は、上記二特異性抗体をコードする1つ以上のポリヌクレオチドを提供する。いくつかの実施形態では、上記二特異性抗体を含んでいる発現ベクターが提供される。他の実施形態では、二特異性抗体または発現ベクターを含んでいる宿主細胞が提供される。さらに他の実施形態では、二特異性抗体を作る方法であって、二特異性抗体の発現をもたらす条件下で上記宿主細胞を培養することと、細胞培養物から二特異性抗体を単離することとを含む、当該方法が提供される。特定の実施形態では、単離された二特異性抗体は、無菌組成物として、それを必要とするヒト対象への投与のために製剤化される。
【0016】
別の態様において、本開示は、四価二特異性抗体であって、第1Fab及び第2Fabを含み、第1Fabが第1重鎖可変ドメイン(第1VH)及び第1軽鎖可変ドメイン(第1VL)を含むものであり、第1VHと第1VLとが対合して、第1抗原の第1エピトープに特異的に結合する第1可変領域を形成しており、第2Fabが第2重鎖可変ドメイン(第2VH)及び第2軽鎖可変ドメイン(第2VL)を含むものであり、第2VHと第2VLとが対合して、第1抗原の第1エピトープに特異的に結合する第2可変領域を形成している、当該四価二特異性抗体に関する。四価二特異性抗体はさらに、第1IgG CH2ドメイン及び第1IgG CH3ドメインを含んでいる第1重鎖と、第2IgG CH2ドメイン及び第2IgG CH3ドメインを含んでいる第2重鎖と、第1軽鎖と、第2軽鎖とを含む、全抗体を含み、当該抗体が、第3VH及び第3VLならびに第4VH及び第4VLを含むものであり、第3VHと第3VLとが対合して、第2抗原のエピトープに特異的に結合する第3可変領域を形成しており、第4VHと第4VLとが対合して、第2抗原の同じエピトープに特異的に結合する第4可変領域を形成している。第3VHは、ヒト免疫グロブリンE(IgE)のCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号1)のアミノ酸9~107と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第1ポリペプチドに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかである。第3VLは、ヒトIgEのCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号1)のアミノ酸9~107と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第2ポリペプチドに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかである。第4VHは、ヒトIgEのCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号1)のアミノ酸9~107と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第3ポリペプチドに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかである。第4VLは、ヒトIgEのCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号1)のアミノ酸9~107と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第4ポリペプチドに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかである。第1ポリペプチドは第1IgG CH2ドメインのN末端に連結されており、第3ポリペプチドは第2IgG CH2ドメインのN末端に連結されている。第1Fabは第1IgG CH3ドメインのC末端に連結されており、第2Fabは第2IgG CH3ドメインのC末端に連結されている。
【0017】
この態様のいくつかの実施形態では、第1Fabは第1リンカーによって全抗体の第1CH3ドメインのC末端に連結されており、第2Fabは第2リンカーによって全抗体の第2CH3ドメインのC末端に連結されている。特定の実施形態では、第1及び第2リンカーはペプチドリンカーである。いくつかの実施形態では、第1ポリペプチド、第2ポリペプチド、第3ポリペプチド及び/または第4ポリペプチドは、配列番号1に示すアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、第1ポリペプチド、第2ポリペプチド、第3ポリペプチド及び/または第4ポリペプチドは、配列番号1に示すアミノ酸配列のアミノ酸9~107と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第1ポリペプチド、第2ポリペプチド、第3ポリペプチド及び/または第4ポリペプチドは、配列番号1に示すアミノ酸配列のアミノ酸9~107を含む。いくつかの実施形態では、第1ポリペプチド及び第3ポリペプチドは各々、配列番号5に示すアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、第1ポリペプチド及び第3ポリペプチドは各々、配列番号5に示すアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、第2ポリペプチド及び第4ポリペプチドは各々、配列番号6に示すアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第2ポリペプチド及び第4ポリペプチドは各々、配列番号6に示すアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、第1ポリペプチド、第2ポリペプチド、第3ポリペプチド及び/または第4ポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸9~107に示すアミノ酸配列とは少なくとも12個のアミノ酸残基が異なっている。特定の実施形態では、本開示は、上記二特異性抗体をコードする1つ以上のポリヌクレオチドを提供する。いくつかの実施形態では、上記二特異性抗体を含んでいる発現ベクターが提供される。他の実施形態では、二特異性抗体または発現ベクターを含んでいる宿主細胞が提供される。さらに他の実施形態では、二特異性抗体を作る方法であって、二特異性抗体の発現をもたらす条件下で上記宿主細胞を培養することと、細胞培養物から二特異性抗体を単離することとを含む、当該方法が提供される。特定の実施形態では、単離された二特異性抗体は、無菌組成物として、それを必要とするヒト対象への投与のために製剤化される。
【0018】
別の態様において、本開示は、四価二特異性抗体であって、第1Fab及び第2Fabを含み、第1Fabが第1重鎖可変ドメイン(第1VH)及び第1軽鎖可変ドメイン(第1VL)を含むものであり、第1VHと第1VLとが対合して、第1抗原の第1エピトープに特異的に結合する第1可変領域を形成しており、第2Fabが第2重鎖可変ドメイン(第2VH)及び第2軽鎖可変ドメイン(第2VL)を含むものであり、第2VHと第2VLとが対合して、第1抗原の第1エピトープに特異的に結合する第2可変領域を形成している、当該四価二特異性抗体に関する。四価二特異性抗体はさらに、第1IgG CH2ドメイン及び第1IgG CH3ドメインを含んでいる第1重鎖と、第2IgG CH2ドメイン及び第2IgG CH3ドメインを含んでいる第2重鎖と、第1軽鎖と、第2軽鎖とを含む、全抗体を含み、当該抗体が、第3VH及び第3VLならびに第4VH及び第4VLを含むものであり、第3VHと第3VLとが対合して、第2抗原のエピトープに特異的に結合する第3可変領域を形成しており、第4VHと第4VLとが対合して、第2抗原の同じエピトープに特異的に結合する第4可変領域を形成している。第3VHは、ヒト免疫グロブリンM(IgM)のCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸7~112と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第1ポリペプチドに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかである。第3VLは、ヒトIgMのCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸7~112と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第2ポリペプチドに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかである。第4VHは、ヒトIgMのCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸7~112と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第3ポリペプチドに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかである。第4VLは、ヒトIgMのCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸7~112と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第4ポリペプチドに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかである。第1ポリペプチドは第1IgG CH2ドメインのN末端に連結されており、第3ポリペプチドは第2IgG CH2ドメインのN末端に連結されている。第1Fabは第1IgG CH3ドメインのC末端に連結されており、第2Fabは第2IgG CH3ドメインのC末端に連結されている。
【0019】
この態様のいくつかの実施形態では、第1Fabは第1リンカーによって全抗体の第1CH3ドメインのC末端に連結されており、第2Fabは第2リンカーによって全抗体の第2CH3ドメインのC末端に連結されている。特定の実施形態では、第1及び第2リンカーはペプチドリンカーである。いくつかの実施形態では、第1ポリペプチド、第2ポリペプチド、第3ポリペプチド及び/または第4ポリペプチドは、配列番号2に示すアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、第1ポリペプチド、第2ポリペプチド、第3ポリペプチド及び/または第4ポリペプチドは、配列番号2に示すアミノ酸配列のアミノ酸7~112と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第1ポリペプチド、第2ポリペプチド、第3ポリペプチド及び/または第4ポリペプチドは、配列番号2に示すアミノ酸配列のアミノ酸7~112を含む。特定の実施形態では、第1ポリペプチド、第2ポリペプチド、第3ポリペプチド及び/または第4ポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸7~112に示すアミノ酸配列とは少なくとも12個のアミノ酸残基が異なっている。特定の実施形態では、本開示は、上記二特異性抗体をコードする1つ以上のポリヌクレオチドを提供する。いくつかの実施形態では、上記二特異性抗体を含んでいる発現ベクターが提供される。他の実施形態では、二特異性抗体または発現ベクターを含んでいる宿主細胞が提供される。さらに他の実施形態では、二特異性抗体を作る方法であって、二特異性抗体の発現をもたらす条件下で上記宿主細胞を培養することと、細胞培養物から二特異性抗体を単離することとを含む、当該方法が提供される。特定の実施形態では、単離された二特異性抗体は、無菌組成物として、それを必要とするヒト対象への投与のために製剤化される。
【0020】
さらに別の態様において、本開示は、ヘテロ二量体化モジュールであって、配列番号11に示す配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する第1IgG1 CH3ドメインを含み、位置364及び370のアミノ酸がリジンであり、位置409のアミノ酸がセリンであり;さらに、配列番号11に示す配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する第2IgG1 CH3ドメインを含み、位置370のアミノ酸がセリンであり、位置405及び409のアミノ酸がリジンである、当該ヘテロ二量体化モジュールを提供する。アミノ酸位置はEU付番方式に基づくものである。第1IgG1 CH3ドメインと第2IgG1 CH3とが対合してヘテロ二量体を形成している。
【0021】
この態様の特定の実施形態では、ヘテロ二量体化モジュールは、第1IgG1 CH2ドメイン及び第2IgG1 CH2ドメインを含み、第1IgG1 CH2ドメインは第1IgG1 CH3ドメインのN末端に(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり、第2IgG1 CH2ドメインは第2IgG1 CH3ドメインのN末端に(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかである。
【0022】
いくつかの実施形態では、ヘテロ二量体化モジュールは、2本のポリペプチド鎖を含んでいる第1Fabを含み、Fabの2本のポリペプチド鎖のうちの1本のC末端が、第1ヒンジ領域のN末端に繋げられており、第1ヒンジ領域が第1IgG1 CH2ドメインのN末端に繋げられている。
【0023】
他の実施形態では、ヘテロ二量体化モジュールは、第1IgG1 CH3ドメインのC末端と、第2IgG1 CH2ドメインのN末端に繋げられた第2ヒンジ領域のN末端とを繋げるリンカーを含む。特定の実施形態では、ヘテロ二量体化モジュールは、第2ヒンジ領域を介して第2IgG1 CH2ドメインのN末端に繋げられた第2Fabを含む。
【0024】
特定の実施形態では、ヘテロ二量体化モジュールは、VHドメイン、CH1ドメイン、VLドメイン及びCLドメインを含む。VHドメインのC末端はCH1ドメインのN末端に繋げられており、CH1ドメインのC末端は第1ヒンジ領域のN末端に繋げられており、第1ヒンジ領域のC末端は、第1IgG1 CH3ドメインに直接繋げられた第1IgG1 CH2ドメインのN末端に繋げられている。VLドメインのC末端はCLドメインのN末端に繋げられており、CLドメインのC末端は第2ヒンジ領域のN末端に繋げられており、第2ヒンジ領域のC末端は、第2IgG1 CH3ドメインに直接繋げられた第2IgG1 CH2ドメインのN末端に繋げられている。VHドメインとVLドメインとが対合して、抗原に特異的に結合する可変領域を形成している。
【0025】
特定の実施形態では、ヘテロ二量体化モジュールは、第1VH及び第1VLならびに第2VH及び第2VLを含む。第1VHと第1VLとが対合して、第1抗原に特異的に結合する第1可変領域を形成している。第2VHと第2VLとが対合して、第1抗原の別のエピトープまたは第2抗原に特異的に結合する第2可変領域を形成している。いくつかの実施形態では、第1VLのアミノ酸配列は第2VLのアミノ酸配列と同一である。
【0026】
いくつかの実施形態では、ヘテロ二量体化モジュールは、第1IgG4 CH2ドメイン及び第2IgG4 CH2ドメインを含み、第1IgG4 CH2ドメインは第1IgG1 CH3ドメインのN末端に(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり、第2IgG4 CH2ドメインは第2IgG1 CH3ドメインのN末端に(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかである。ある場合には、ヘテロ二量体化モジュールは、2本のポリペプチド鎖を含んでいる第1Fabを含み、Fabの2本のポリペプチド鎖のうちの1本のC末端が、第1IgG4ヒンジ領域のN末端に繋げられており、第1IgG4ヒンジ領域が第1IgG4 CH2ドメインのN末端に繋げられている。ある場合には、第1IgG4ヒンジ領域はS228P突然変異(EU付番)を含む。ある場合には、ヘテロ二量体化モジュールは、第1IgG1 CH3ドメインのC末端と、第2IgG4 CH2ドメインのN末端に繋げられた第2IgG4ヒンジ領域のN末端とを繋げるリンカーを含む。特定の場合には、第2IgG4ヒンジ領域はS228P突然変異(EU付番)を含む。ある場合には、ヘテロ二量体化モジュールは、第2IgG4ヒンジ領域を介して第2IgG4 CH2ドメインのN末端に繋げられた第2Fabを含む。特定の場合には、第2IgG4ヒンジ領域はS228P突然変異(EU付番)を含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、ヘテロ二量体化モジュールは、VHドメイン、CH1ドメイン、VLドメイン及びCLドメインを含む。VHドメインのC末端はCH1ドメインのN末端に繋げられており、CH1ドメインのC末端は第1IgG4ヒンジ領域のN末端に繋げられており、第1IgG4ヒンジ領域のC末端は、第1IgG1 CH3ドメインに直接繋げられた第1IgG4 CH2ドメインのN末端に繋げられている。VLドメインのC末端はCLドメインのN末端に繋げられており、CLドメインのC末端は第2IgG4ヒンジ領域のN末端に繋げられており、第2IgG4ヒンジ領域のC末端は、第2IgG1 CH3ドメインに直接繋げられた第2IgG4 CH2ドメインのN末端に繋げられている。VHドメインとVLドメインとが対合して、抗原に特異的に結合する可変領域を形成している。ある場合には、第1IgG4ヒンジ領域及び第2IgG4ヒンジ領域は各々、S228P突然変異(EU付番)を含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、ヘテロ二量体化モジュールは、第1VH及び第1VLならびに第2VH及び第2VLを含む。第1VHと第1VLとが対合して、第1抗原に特異的に結合する第1可変領域を形成している。第2VHと第2VLとが対合して、第1抗原の別のエピトープまたは第2抗原に特異的に結合する第2可変領域を形成している。ある場合には、第1VLのアミノ酸配列は第2VLのアミノ酸配列と同一である。
【0029】
特定の実施形態では、本開示は、上記ヘテロ二量体化モジュールをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを特徴とする。ある場合には、1つ以上のポリヌクレオチドを含んでいる1つ以上の発現ベクターを特徴とする。他の場合には、1つ以上のポリヌクレオチドまたは1つ以上の発現ベクターを含んでいる宿主細胞が提供される。ある場合には、ヘテロ二量体化モジュールを製造する方法が包含される。方法は、ヘテロ二量体化モジュールの発現をもたらす条件下で宿主細胞を培養すること及びその単離を含む。
【0030】
別の態様において、本開示は、ヘテロ二量体化モジュールであって、配列番号11に示す配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する第1IgG1 CH3ドメインを含み、位置364及び370のアミノ酸がリジンであり、位置409のアミノ酸がロイシンであり;さらに、配列番号11に示す配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する第2IgG1 CH3ドメインを含み、位置370のアミノ酸がセリンであり、位置397のアミノ酸がイソロイシンであり、位置405及び409のアミノ酸がリジンである、当該ヘテロ二量体化モジュールに関する。アミノ酸位置はEU付番方式に基づくものである。第1IgG1 CH3ドメインと第2IgG1 CH3とが対合してヘテロ二量体を形成している。
【0031】
この態様の特定の実施形態では、ヘテロ二量体化モジュールは第1IgG1 CH2ドメイン及び第2IgG1 CH2ドメインを含み、第1IgG1 CH2ドメインは第1IgG1 CH3ドメインのN末端に(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり、第2IgG1 CH2ドメインは第2IgG1 CH3ドメインのN末端に(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかである。
【0032】
いくつかの実施形態では、ヘテロ二量体化モジュールは、2本のポリペプチド鎖を含んでいる第1Fabを含み、Fabの2本のポリペプチド鎖のうちの1本のC末端が、第1ヒンジ領域のN末端に繋げられており、第1ヒンジ領域が第1IgG1 CH2ドメインのN末端に繋げられている。
【0033】
他の実施形態では、ヘテロ二量体化モジュールは、第1IgG1 CH3ドメインのC末端と、第2IgG1 CH2ドメインのN末端に繋げられた第2ヒンジ領域のN末端とを繋げるリンカーを含む。特定の実施形態では、ヘテロ二量体化モジュールは、第2ヒンジ領域を介して第2IgG1 CH2ドメインのN末端に繋げられた第2Fabを含む。
【0034】
特定の実施形態では、ヘテロ二量体化モジュールは、VHドメイン、CH1ドメイン、VLドメイン及びCLドメインを含む。VHドメインのC末端はCH1ドメインのN末端に繋げられており、CH1ドメインのC末端は第1ヒンジ領域のN末端に繋げられており、第1ヒンジ領域のC末端は、第1IgG1 CH3ドメインに直接繋げられた第1IgG1 CH2ドメインのN末端に繋げられている。VLドメインのC末端はCLドメインのN末端に繋げられており、CLドメインのC末端は第2ヒンジ領域のN末端に繋げられており、第2ヒンジ領域のC末端は、第2IgG1 CH3ドメインに直接繋げられた第2IgG1 CH2ドメインのN末端に繋げられている。VHドメインとVLドメインとが対合して、抗原に特異的に結合する可変領域を形成している。
【0035】
特定の実施形態では、ヘテロ二量体化モジュールは、第1VH及び第1VLならびに第2VH及び第2VLを含む。第1VHと第1VLとが対合して、第1抗原に特異的に結合する第1可変領域を形成している。第2VHと第2VLとが対合して、第1抗原の別のエピトープまたは第2抗原に特異的に結合する第2可変領域を形成している。ある場合には、第1VLのアミノ酸配列は第2VLのアミノ酸配列と同一である。
【0036】
特定の実施形態では、ヘテロ二量体化モジュールは、第1IgG4 CH2ドメイン及び第2IgG4 CH2ドメインを含み、第1IgG4 CH2ドメインは第1IgG1 CH3ドメインのN末端に(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり、第2IgG4 CH2ドメインは第2IgG1 CH3ドメインのN末端に(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかである。ある場合には、ヘテロ二量体化モジュールは、2本のポリペプチド鎖を含んでいる第1Fabを含み、Fabの2本のポリペプチド鎖のうちの1本のC末端が、第1IgG4ヒンジ領域のN末端に繋げられており、第1IgG4ヒンジ領域が第1IgG4 CH2ドメインのN末端に繋げられている。ある場合には、第1IgG4ヒンジ領域はS228P突然変異(EU付番)を含む。ある場合には、ヘテロ二量体化モジュールは、第1IgG1 CH3ドメインのC末端と、第2IgG4 CH2ドメインのN末端に繋げられた第2IgG4ヒンジ領域のN末端とを繋げるリンカーを含む。特定の場合には、第2IgG4ヒンジ領域はS228P突然変異(EU付番)を含む。ある場合には、ヘテロ二量体化モジュールは、第2IgG4ヒンジ領域を介して第2IgG4 CH2ドメインのN末端に繋げられた第2Fabを含む。特定の場合には、第2IgG4ヒンジ領域はS228P突然変異(EU付番)を含む。
【0037】
いくつかの実施形態では、ヘテロ二量体化モジュールは、VHドメイン、CH1ドメイン、VLドメイン及びCLドメインを含む。VHドメインのC末端はCH1ドメインのN末端に繋げられており、CH1ドメインのC末端は第1IgG4ヒンジ領域のN末端に繋げられており、第1IgG4ヒンジ領域のC末端は、第1IgG1 CH3ドメインに直接繋げられた第1IgG4 CH2ドメインのN末端に繋げられている。VLドメインのC末端はCLドメインのN末端に繋げられており、CLドメインのC末端は第2IgG4ヒンジ領域のN末端に繋げられており、第2IgG4ヒンジ領域のC末端は、第2IgG1 CH3ドメインに直接繋げられた第2IgG4 CH2ドメインのN末端に繋げられている。VHドメインとVLドメインとが対合して、抗原に特異的に結合する可変領域を形成している。ある場合には、第1IgG4ヒンジ領域及び第2IgG4ヒンジ領域は各々、S228P突然変異(EU付番)を含む。
【0038】
いくつかの実施形態では、ヘテロ二量体化モジュールは、第1VH及び第1VLならびに第2VH及び第2VLを含む。第1VHと第1VLとが対合して、第1抗原に特異的に結合する第1可変領域を形成している。第2VHと第2VLとが対合して、第1抗原の別のエピトープまたは第2抗原に特異的に結合する第2可変領域を形成している。ある場合には、第1VLのアミノ酸配列は第2VLのアミノ酸配列と同一である。
【0039】
特定の実施形態では、本開示は、上記ヘテロ二量体化モジュールをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを特徴とする。ある場合には、1つ以上のポリヌクレオチドを含んでいる1つ以上の発現ベクターを特徴とする。他の場合には、1つ以上のポリヌクレオチドまたは1つ以上の発現ベクターを含んでいる宿主細胞が提供される。ある場合には、ヘテロ二量体化モジュールを製造する方法が包含される。方法は、ヘテロ二量体化モジュールの発現をもたらす条件下で宿主細胞を培養すること及びその単離を含む。
【0040】
別の態様において、本開示は、二特異性抗体であって、第1VH及び第1VLを含み、第1VHと第1VLとが対合して、第1抗原の第1エピトープに特異的に結合する第1可変領域を形成している、当該二特異性抗体を提供する。第1VHは、ヒト免疫グロブリンE(IgE)のCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号1)のアミノ酸9~107と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第1ポリペプチドに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかである。第1VLは、ヒトIgEのCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号1)のアミノ酸9~107と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第2ポリペプチドに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかである。第1ポリペプチドと第2ポリペプチドとが対合して二量体を形成している。二特異性抗体はさらに、第2VH及び第2VLを含み、第2VHと第2VLとが対合して、第1抗原の第2エピトープまたは第2抗原に特異的に結合する第2可変領域を形成している。第2VHはCH1ドメインに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかである。第2VLはCLドメインに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかである。CH1ドメインとCLドメインとが対合して二量体を形成している。二特異性抗体はさらに、ヘテロ二量体化モジュールであって、配列番号11に示す配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する第1IgG1 CH3ドメインを含み、位置364及び370のアミノ酸がリジンであり、位置409のアミノ酸がロイシンである、当該ヘテロ二量体化モジュールを含む。ヘテロ二量体化モジュールはさらに、配列番号11に示す配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する第2IgG1 CH3ドメインを含み、位置370のアミノ酸がセリンであり、位置405及び409のアミノ酸がリジンである。上記のアミノ酸位置は全てEU付番方式に基づくものである(IgE CH2ドメインが、第1IgG1 CH3ドメインまたは第2IgG1 CH3ドメインを含んでいるポリペプチドの一部であってもよいことに留意することが重要である。)
【0041】
別の態様において、本開示は、二特異性抗体であって、第1VH及び第1VLを含み、第1VHと第1VLとが対合して、第1抗原の第1エピトープに特異的に結合する第1可変領域を形成している、当該二特異性抗体を提供する。第1VHは、ヒト免疫グロブリンE(IgE)のCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号1)のアミノ酸9~107と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第1ポリペプチドに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかである。第1VLは、ヒトIgEのCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号1)のアミノ酸9~107と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第2ポリペプチドに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかである。第1ポリペプチドと第2ポリペプチドとが対合して二量体を形成している。二特異性抗体はさらに、第2VH及び第2VLを含み、第2VHと第2VLとが対合して、第1抗原の第2エピトープまたは第2抗原に特異的に結合する第2可変領域を形成している。第2VHはCH1ドメインに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかである。第2VLはCLドメインに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかである。CH1ドメインとCLドメインとが対合して二量体を形成している。二特異性抗体はさらに、ヘテロ二量体化モジュールであって、配列番号11に示す配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する第1IgG1 CH3ドメインを含み、位置364及び370のアミノ酸がリジンであり、位置409のアミノ酸がロイシンである、当該ヘテロ二量体化モジュールを含む。ヘテロ二量体化モジュールはさらに、配列番号11に示す配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する第2IgG1 CH3ドメインを含み、位置370のアミノ酸がセリンであり、位置397のアミノ酸がイソロイシンであり、位置405及び409のアミノ酸がリジンである。上記のアミノ酸位置は全てEU付番方式に基づくものである(IgE CH2ドメインが、第1IgG1 CH3ドメインまたは第2IgG1 CH3ドメインを含んでいるポリペプチドの一部であってもよいことに留意することが重要である。)
【0042】
上記2つの態様のいくつかの実施形態では、二特異性抗体は2つのIgG1 CH2ドメインを含む。上記2つの態様のいくつかの実施形態では、二特異性抗体は2つのIgG4 CH2ドメインを含む。いくつかの実施形態では、単一のポリペプチド鎖が第1VHと第1ポリペプチドと第1IgG1 CH3ドメインとを含む。いくつかの実施形態では、単一のポリペプチド鎖が第1VHと第1ポリペプチドと第2IgG1 CH3ドメインとを含む。他の実施形態では、単一のポリペプチド鎖が第1VLと第2ポリペプチドと第1IgG1 CH3ドメインとを含む。さらに他の実施形態では、単一のポリペプチド鎖が第1VLと第2ポリペプチドと第2IgG1 CH3ドメインとを含む。いくつかの実施形態では、別の単一のポリペプチド鎖が第2VHとCH1ドメインと第2IgG1 CH3ドメインとを含む。いくつかの実施形態では、別の単一のポリペプチド鎖が第2VHとCH1ドメインと第1IgG1 CH3ドメインとを含む。いくつかの実施形態では、別の単一のポリペプチド鎖が第2VLとCLドメインと第2IgG1 CH3ドメインとを含む。いくつかの実施形態では、別の単一のポリペプチド鎖が第2VLとCLドメインと第1IgG1 CH3ドメインとを含む。いくつかの実施形態では、第1ポリペプチド及び/または第2ポリペプチドは、配列番号1に示すアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、第1ポリペプチド及び/または第2ポリペプチドは、配列番号1に示すアミノ酸配列のアミノ酸9~107と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。他の実施形態では、第1ポリペプチド及び/または第2ポリペプチドは、配列番号1に示すアミノ酸配列のアミノ酸9~107を含む。他の実施形態では、第1ポリペプチドは、配列番号5に示すアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む。他の実施形態では、第1ポリペプチドは、配列番号5に示すアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、第2ポリペプチドは、配列番号6に示すアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第2ポリペプチドは、配列番号6に示すアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、第1ポリペプチド及び/または第2ポリペプチドは、配列番号1に示すアミノ酸配列とは少なくとも12個のアミノ酸残基が異なっている。いくつかの実施形態では、第1ポリペプチド及び第2ポリペプチドは各々、鎖内ジスルフィド結合を形成しない配列番号1の2つのシステイン残基のうちの少なくとも1つにおいてシステイン以外のアミノ酸を含有している。特定の実施形態では、第1ポリペプチド及び第2ポリペプチドは、第1ポリペプチド及び第2ポリペプチドがN結合型グリコシル化部位においてグリコシル化されないように、N結合型グリコシル化部位において1つ以上の突然変異を有する。他の実施形態では、第1ポリペプチドまたは第2ポリペプチドは、第1ポリペプチド及び第2ポリペプチドがN結合型グリコシル化部位においてグリコシル化されないように、N結合型グリコシル化部位において1つ以上の突然変異を有する。これらの突然変異は、N結合型グリコシル化部位のアスパラギンまたはスレオニンまたはセリンからその他のアミノ酸(複数可)への突然変異であり得る。
【0043】
別の態様において、本開示は、二特異性抗体であって、第1VH及び第1VLを含み、第1VHと第1VLとが対合して、第1抗原の第1エピトープに特異的に結合する第1可変領域を形成している、当該二特異性抗体を提供する。第1VHは、ヒト免疫グロブリンM(IgM)のCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸7~112と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第1ポリペプチドに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかである。第1VLは、ヒトIgMのCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸7~112と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第2ポリペプチドに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかである。第1ポリペプチドと第2ポリペプチドとが対合して二量体を形成している。二特異性抗体はさらに、第2VH及び第2VLを含み、第2VHと第2VLとが対合して、第1抗原の第2エピトープまたは第2抗原に特異的に結合する第2可変領域を形成している。第2VHはCH1ドメインに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかである。第2VLはCLドメインに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり、CH1ドメインとCLドメインとが対合して二量体を形成している。二特異性抗体はさらに、ヘテロ二量体化モジュールであって、配列番号11に示す配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する第1IgG1 CH3ドメインを含み、位置364及び370のアミノ酸がリジンであり、位置409のアミノ酸がセリンであり;さらに、配列番号11に示す配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する第2IgG1 CH3ドメインを含み、位置370のアミノ酸がセリンであり、位置405及び409のアミノ酸がリジンである、当該ヘテロ二量体化モジュールを含む。上記のアミノ酸位置はEU付番方式に基づくものである。
【0044】
別の態様において、本開示は、二特異性抗体であって、第1VH及び第1VLを含み、第1VHと第1VLとが対合して、第1抗原の第1エピトープに特異的に結合する第1可変領域を形成している、当該二特異性抗体に関する。第1VHは、ヒト免疫グロブリンM(IgM)のCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸7~112と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第1ポリペプチドに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかである。第1VLは、ヒトIgMのCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸7~112と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第2ポリペプチドに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかである。第1ポリペプチドと第2ポリペプチドとが対合して二量体を形成している。二特異性抗体はさらに、第2VH及び第2VLを含み、第2VHと第2VLとが対合して、第1抗原の第2エピトープまたは第2抗原に特異的に結合する第2可変領域を形成している。第2VHはCH1ドメインに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかである。第2VLはCLドメインに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり、CH1ドメインとCLドメインとが対合して二量体を形成している。二特異性抗体はさらに、ヘテロ二量体化モジュールであって、配列番号11に示す配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する第1IgG1 CH3ドメインを含み、位置364及び370のアミノ酸がリジンであり、位置409のアミノ酸がロイシンであり;さらに、配列番号11に示す配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する第2IgG1 CH3ドメインを含み、位置370のアミノ酸がセリンであり、位置397のアミノ酸がイソロイシンであり、位置405及び409のアミノ酸がリジンである、当該ヘテロ二量体化モジュールを含む。上記のアミノ酸位置はEU付番方式に基づくものである。
【0045】
上記2つの態様のいくつかの実施形態では、二特異性抗体は2つのIgG1 CH2ドメインを含む。上記2つの態様のいくつかの実施形態では、二特異性抗体は2つのIgG4 CH2ドメインを含む。いくつかの実施形態では、単一のポリペプチド鎖が第1VHと第1IgG1 CH3ドメインとを含む。いくつかの実施形態では、単一のポリペプチド鎖が第1VHと第2IgG1 CH3ドメインとを含む。他の実施形態では、単一のポリペプチド鎖が第1VLと第1IgG1 CH3ドメインとを含む。さらに他の実施形態では、単一のポリペプチド鎖が第1VLと第2IgG1 CH3ドメインとを含む。いくつかの実施形態では、単一のポリペプチド鎖が第2VHと第2IgG1 CH3ドメインとを含む。いくつかの実施形態では、単一のポリペプチド鎖が第2VHと第1IgG1 CH3ドメインとを含む。いくつかの実施形態では、単一のポリペプチド鎖が第2VHと第2IgG1 CH3ドメインとを含む。いくつかの実施形態では、第1ポリペプチド及び/または第2ポリペプチドは配列番号2に示すアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、第1ポリペプチド及び/または第2ポリペプチドは、配列番号2に示すアミノ酸配列のアミノ酸7~112と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。他の実施形態では、第1ポリペプチド及び/または第2ポリペプチドは、配列番号2に示すアミノ酸配列のアミノ酸7~112を含む。特定の実施形態では、第1ポリペプチド及び/または第2ポリペプチドは、配列番号2に示すアミノ酸配列とは少なくとも12個のアミノ酸残基が異なっている。いくつかの実施形態では、第1ポリペプチド及び第2ポリペプチドは各々、鎖内ジスルフィド結合を形成しない配列番号2のシステイン残基においてシステイン以外のアミノ酸を含有している。特定の実施形態では、第1ポリペプチド及び第2ポリペプチドは、第1ポリペプチド及び第2ポリペプチドがN結合型グリコシル化部位においてグリコシル化されないように、N結合型グリコシル化部位において1つ以上の突然変異を有する。他の実施形態では、第1ポリペプチドまたは第2ポリペプチドは、第1ポリペプチド及び第2ポリペプチドがN結合型グリコシル化部位においてグリコシル化されないように、N結合型グリコシル化部位において1つ以上の突然変異を有する。これらの突然変異は、N結合型グリコシル化部位のアスパラギンまたはスレオニンまたはセリンからその他のアミノ酸(複数可)への突然変異であり得る。特定の実施形態では、本開示は、上記二特異性抗体をコードする1つ以上のポリヌクレオチドを提供する。いくつかの実施形態では、上記二特異性抗体を含んでいる発現ベクターが提供される。他の実施形態では、二特異性抗体または発現ベクターを含んでいる宿主細胞が提供される。さらに他の実施形態では、二特異性抗体を作る方法であって、二特異性抗体の発現をもたらす条件下で上記宿主細胞を培養することと、細胞培養物から二特異性抗体を単離することとを含む、当該方法が提供される。特定の実施形態では、単離された二特異性抗体は、無菌組成物として、それを必要とするヒト対象への投与のために製剤化される。
【0046】
特に定義していない限り、本明細書中で使用する全ての科学技術用語は、本発明が属する技術分野において通常の技量を有する者によって普通に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載の方法または材料と同様または等価である方法または材料を本発明の実施または試験において使用することはできるが、典型的な方法及び材料を以下に記載する。本明細書中で言及する全ての刊行物、特許出願、特許及びその他の参考文献は、参照によりそれらの全体が本明細書に援用される。係争の場合には、定義を含めた本願によって立証されよう。材料、方法及び実施例は、例示的なものに過ぎず、限定することは意図されない。
【0047】
本発明のその他の特徴及び利点は以下の詳細な説明及び特許請求の範囲から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】非対称抗体における誤対合による望ましくない副生成物の模式図である。この図は、2つの抗体が共発現する場合に軽鎖及び/または重鎖の誤対合によっていくつかの望ましくない副生成物が形成され得ることを示す。所望の非対称抗体は少ない部分を構成し得、その所望の抗体の精製は困難を呈し得る。
【
図2】リジン再配置によるCH3ヘテロ二量体化の模式図である。ヒトIgG1の野生型CH3ドメインの通常の頭-尾ホモ二量体においてリジン370及びリジン409は積み重なっている。単量体Aにおける突然変異S364K/K409S及び単量体Bにおける突然変異K370S/F405Kは、積み重なったリジンの配向を逆転させて、A/Bヘテロ二量体の形成を可能としながらホモ二量体における衝突をもたらす(下側)。こうしてリジン再配置は重鎖ヘテロ二量体化に効果的である方策を提供する。上に言及したアミノ酸位置はEU付番に基づくものである。
【
図3A】IgG/Fcヘテロ二量体のSDS-PAGE分析の描写である。プロテインA精製した分量分のヘテロ二量体をSDSpageで分析した。IgG1とFcとのヘテロ二量体が主な種である。ノブ・イントゥ・ホール型である2つの画分を装填した。不完全設計MP1は、多量のヘテロ二量体を示すが、Fc二量体の形成を抑制する突然変異が欠けておりそれゆえにFc単量体を含有していない。
【
図3B】LC-MSによって推定された成分のモル比及び相対量を示す棒グラフである。
【
図3C】DSCによって決定された精製テロ二量体の融解温度の描写である。
【
図4A】ヘテロ二量体化突然変異体の発現及び半抗体形成を示す。CHO細胞を、同じFab(M60-A02抗EGFR)を含有する様々な比率のmp4a及びmp4b重鎖でトランスフェクトした。発現したタンパク質における半抗体形成をSDS PAGEによって分析した。
【
図4B】半抗体形成を定量するために使用した一連の質量スペクトルを示す。試料のMSスペクトルは、トランスフェクション比1:1で最大量のヘテロ二量体と最少のホモ二量体とが存在することを示した。
【
図5A】軽鎖対合問題に対する本願の解決策の1つであるE-fabの作出の模式図である。E-fabにおいてCH1及びCLは、天然の二量体を形成するものであるIgE CH2(Cε2)ドメインで置き換わっている。
【
図5B】Igフォールドの全体的類似性を示す、ヒトCε2ドメイン(白)とヒトIgG1 CH1/カッパ定常ドメイン(黒)との構造の重ね合わせである。Cε2ドメインは、界面の上側部分では様々な角度及びより長い距離で対合しているが、下側の界面ではより密にパッキングされている。βストランドAの始まるところにあるPro(球として表されている)は、CH1/CL及びCε2ドメインにおいて非常に似通った位置及び配向にある。
【
図5C】ヒトIgG1 CH1及びカッパ定常ドメインならびにCε2ドメインならびにE-Fab重軽鎖の配列アラインメントである。配列は上に示されているIMGT付番に整列しており、Igフォールドの7つのβストランドは矢印で示されており、βストランドAの始まるところにある保存されたProは下線の付いた太字で示されている。E-Fabにおけるagly突然変異(N38Q)及び鎖間ジスルフィドシステインも下線の付いた太字で示されている。
【
図5D】ヒト、チンパンジー、マウス、ラット及びウサギに由来するIgE CH2ドメインの配列アラインメントである。同一の残基は点で示されている。
【
図6A】軽鎖対合について試験する方策の模式図である。Fab Aの重鎖(HCA)はHSAと融合しており、他方、Fab Bの軽鎖(LCB)はN末端においてGFPでタグ付けした。鎖の正しい対合はFabの分子量によって確認することができる。
【
図6B】SDS-pageによるFab対合の分析である。示されているHSAタグ付抗EGFR M60-A02 FabまたはE-Fabは、GFPタグ付Fab抗IGF-1R C06と共発現させた(表3も参照のこと)。重軽鎖の正しい対合によって非還元条件下で114kDa及び74kDaにバンドが生じ、他方、47kDaまたは140kDaのバンドは誤対合を指し示している。
【
図6C】SDS-pageによるFab対合の分析である。抗IGF-1R Fab C06をE-fabとして組み立て、別の抗IGF-1R Fab(G11)との軽鎖対合を、
図6Bに示すように試験した。
【
図6D】Octetによって試験したときの抗IGF-1R E-Fabの結合性を描写するグラフである。Fabを個々に発現させ、プロテインAスピンカラムで精製し、Hisチップ上に装填した可溶性IGF1-Rに対するOctet結合性(300nM、100nM及び30nM)において使用した。
【
図7】E-Fab及びリジン再配置を有する非対称IgGの模式図である。軽鎖対合の問題を解決するために、片方のFabアームの定常ドメインがE-Fabで置き換わっている一方で、もう片方のFabアームは野生型IgG CH1/CLドメインを含有する。ヘテロ二量体化を強化すべくリジン再配置突然変異が2本の重鎖のCH3ドメインに含まれている。
【
図8A】CHO-S細胞で発現したEGFR/IGF-IR二特異性抗体及び上清のSDS-PAGEによる分析である。E体であるE0及びE2がE-Fabとして抗EGFRを含有する一方、IgG1ヘテロ二量体対照は軽鎖解決策を含有していない。
【
図8B】
図8Aの非対称IgGについての質量分析を表したもの、それは、E体では軽鎖誤対合を示していないが、対照では誤対合LCを有する抗体を著しい量で示している。重鎖ホモ二量体はどちらの試料においても検出できなかった。
【
図8C】Hisタグ付EGFRに対する二特異性抗体の結合性を描写するグラフである。CHO-S細胞からの未希釈の上清を、hisタグ付リガンド(5μg/mL)装填後にOctet結合性において使用した。
【
図8D】Hisタグ付IGF-1Rに対する二特異性抗体の結合性を描写するグラフである。CHO-S細胞からの未希釈の上清を、hisタグ付リガンド(5μg/mL)の装填後のOctet結合性において使用した。
【
図9】
図9Aは、トラスツズマブ/セツキシマブ二特異性抗体と2つの抗原との同時結合性を描写するグラフである。Hisタグ付可溶性HER2(5μg/ml)をOctetチップ上に装填して、次のステップでの二特異性抗体(200nM)の捕捉に備えた。その後のEGFR(15μg/ml)の結合性は、二特異体による両方のリガンドとの同時結合性を実証している。
図9Bは、
図9Aに示す実験とは逆の結果を描写するグラフである。最初にEGFRを装填し、その後に二特異性抗体及びHER2を結合させた。
【
図10】
図10Aは、様々なエルボーリンカー配列を有するEfab構築物を示す。抗HER2抗体であるトラスツズマブをEfabとして操作した。軽鎖中に含ませた様々なエルボーリンカー配列を表中に列挙する。配列は、エルボー配列(太字)の他に可変ドメインの最後の5つのアミノ酸とIgE CH2ドメインの最初の5つのアミノ酸とを含む。
図10Bは、Octet結合性試験のグラフである。CHO細胞において(
図9の場合と同様に)Efabをセツキシマブとの非対称IgGとして発現させ、精製し、抗Hisチップ上に装填したHisタグ付HER2(5μg/ml)と共にOctet結合性試験において使用した(100nM)。
図10Cは、SDS-pageによるFab対合の分析である。IgM CH2ドメインがIgE CH2ドメインと同じく良好に軽鎖対合を解決することができるか否かを評価するために、2つのFab(抗EGFR M60及び抗IGF-1R C06)を共発現させた(片方のFabはHSAと融合させ、もう片方のFabはGFPと融合させた)。Fabのカッパ及びCH1定常ドメインをIgM CH2ドメインで置き換えた(結果として生じた分子はM-Fabと命名した)。鎖対合についてのSDS-PAGEによる分析によって、M-Fabは、対照において顕著に認められたM60とC06との間での軽鎖誤対合を解決したことが示された。
図10Dは、Octet結合性試験のグラフである。CHO-SにおいてEfab及びM-FabをFab(Fcを欠く)として発現させ、HER2との結合性をOctetによって試験するために上清を使用した。
【
図11】
図11Aは、mp3ヘテロ二量体突然変異を含有するIgG1 agly(T299A)定常領域と共に通常のFabとしての抗EGFR M60-A02 Efab及び抗IGF1R M13.C06を含んでいる、CHO細胞において発現させプロテインAによって精製した二特異性抗体のゲルの写真を示す。
図11Bは、同時結合性に関して二特異体を試験したOctet試験の結果を示す。上側のパネルでは、Hisタグ付可溶性IGF1R(5μg/ml)をOctetチップに結合させ、次いで二特異性抗体またはそれぞれのmAbと結合させた。第3ステップでは、第2抗原(EGFR)を、示されているような抗体-抗原複合体と結合させた。第3ステップにおいてEGFRのない対照と比較したときの陽性信号は、同時結合性を実証している。下側のパネルでは、Hisタグ付可溶性EGFR(5μg/ml)をOctetチップに結合させ、次いで二特異性抗体またはそれぞれのmAbと結合させた。第3ステップでは、第2抗原(IGF1R)を、示されているような抗体-抗原複合体と結合させた。第3ステップにおいてIGF1Rのない対照と比較したときの陽性信号は、同時結合性を実証している。
【
図12】
図12Aは、Efabとmp4ヘテロ二量体を含有するIgG4P/IgG1定常領域とを有する二特異性抗体の模式図である。抗体はさらに、定常ドメイン(IgG4P/IgG1 agly)にN297Q置換を含む。
図12Bは、抗HER2抗体ペルツズマブと抗IGF1R抗体C06とを両配向で使用して作製した、(A)に示すような二特異性抗体のゲルの写真であり、最初に付ける抗体の名前を常にEfabとした。プロテインA精製した分量分のCHO細胞由来のヘテロ二量体をSDS-PAGEで分析した。
図12Cは、可溶性IGF1RとHER2タンパク質とを使用するOctetによって試験したときの結合性の結果を示す。上側のパネルでは、Hisタグ付可溶性IGF1R(5μg/ml)をOctetチップに結合させ、次いで二特異性抗体またはそれぞれのmAbと結合させた。第3ステップでは、第2抗原(HER2)を、示されているような抗体-抗原複合体と結合させた。第3ステップにおいてHER2のない対照と比較したときの陽性信号は、同時結合性を実証している。下側のパネルでは、Hisタグ付可溶性HER2(5μg/ml)をOctetチップに結合させ、次いで二特異性抗体またはそれぞれのmAbと結合させた。第3ステップでは、第2抗原(IGF1R)を、示されているような抗体-抗原複合体と結合させた。第3ステップにおいてIGF1Rのない対照と比較したときの陽性信号は、同時結合性を実証している。
【
図13】
図13Aは、重鎖のC末端と融合しているEfabを有するIgG(「Mab-Fab」)の模式図である。
図13Bは、トラスツズマブと抗IGF-1R抗体C06とのMab-Fabのゲルの写真である。トラスツズマブと抗IGF-1R抗体C06とのMab-Fabを、CHO細胞で一過的に発現させ、プロテインAで精製した。SDS-PAGEは、タンパク質が正しく会合して約240kDaのMab-Fabを形成したことを示している。
図13Cは、Octetによって試験した場合の結果を示す。Hisタグ付可溶性IGF1RまたはHER2(5μg/ml)をOctetチップ上に装填して次のステップでの二特異性抗体(200nM)の捕捉を可能にした。その後の第2リガンド(15μg/ml)の結合性は、二特異性抗体による両リガンドの同時結合性を実証している。
【
図14】
図14Aは、LC-Fc融合及びFcヘテロ二量体突然変異を含んでいる一価抗体の模式図である。
図14Bは、CHO細胞から産生されたLC-Fc一価抗体及び対応する二価IgG1(抗EGFR M60-A02)についてのゲルの写真である。プロテインA精製した材料のSDS-PAGEは、一価LC-Fc抗体の巧みな会合を示している。
図14Cは、様々な濃度でのOctet結合性試験において一価LC-Fc及び二価IgGを描写するグラフである。一価LC-Fcは強い結合性を欠き、抗原-抗体複合体の解離がみられる。
【
図15】
図15Aは、HAS(左)、ペプチドリンカー(右)によって通常のFabに繋げられたEfabを有する二特異性抗体の模式図を提供する。
図15Bは、CHO細胞で発現させ、プロテインA精製し、SDS-PAGEで分析した、
図15Aに示すような2例の二特異体のゲルの写真である。抗EGFR抗体及び抗IGF1R抗体であるM60-A02及びM13.C06を、両配向でそれぞれEfabまたは通常のFabとして使用した。
図15Cは、Octet結合性試験において使用した精製二特異体のグラフである。これらの二特異体による両抗原の同時結合性は、二特異体が最初にEGFRと結合してその後にIGF-1Rと結合した場合にのみ認められた。
図15Dは、Octet結合性試験において使用した精製二特異体のグラフである。これらの二特異体による両抗原の同時結合性は、二特異体が最初にIGF-1Rと結合してその後にEGFRと結合した場合には認められなかった。
【発明を実施するための形態】
【0049】
詳細な説明
二特異性抗体は、新しい治療作用機序を獲得する潜在性を有する、新興の部類の生物学的薬剤である。しかしながら、二特異性抗体を発現させかつ適切に形成させることに関連するいくつかの課題が存在する。具体的には、4つの異なる鎖からなる非対称IgGの形態で二特異性抗体を効率的に発現させるには2つの問題:いわゆる重鎖誤対合問題、及び軽鎖誤対合問題を解決しなくてはならない。2つの異なる重鎖及び2つの異なる軽鎖が存在する場合、それらは異なるいくつかの並び替えで誤対合する可能性がある(
図1を参照のこと)。したがって、適切に対合した二特異性抗体を形成させるには、2つの重鎖がヘテロ二量体を形成せねばならず、各重鎖はその同族軽鎖と対合せねばならない。本開示は、異なるエピトープと結合するいかなる2つの抗体も非対称IgGの形態の二特異性抗体に変換することができる二特異性抗体基幹を提供する。基幹は、リジン再配置と呼ばれる重鎖ヘテロ二量体化方策及び、抗体の可変ドメインの操作を必要としない軽鎖誤対合問題の解決策に基づく。一実施形態において、基幹は、二特異性抗体の2本の重鎖のヘテロ二量体化を引き起こすべくCH3ドメインにおいてリジン再配置によって操作された、Fc領域を含有している。別の実施形態では、片方のFabアームのCH1及びCLドメインが、IgE CH2ドメイン(またはIgM CH2ドメイン)またはIgE CH2ドメイン(またはIgM CH2ドメイン)となおも対合することができるその断片で置き換わっている。このFabの操作は、二特異性抗体の軽鎖の誤対合を軽減または防止することができる。本開示は、二特異性抗体基幹の設計、操作及び試験について記載し、それは共発現によって2つの抗体から非対称IgGを効率的に生み出すことができる。
【0050】
軽鎖誤対合問題に対する解決策
図1に示されているような二特異性抗体における軽鎖(LC):重鎖(HC)対の正しい会合をもたらすために、本明細書において開示する解決策は、軽鎖及び重鎖のアミノ酸配列を、これらの鎖の定常ドメイン(すなわち、CL及びCH1ドメイン)がIgフォールドドメイン(または重軽鎖のIgフォールドドメイン間で安定なジスルフィド結合型二量体をなおも形成することができるその断片)で置き換えられるように軽鎖及び重鎖のアミノ酸配列を改変することである。
【0051】
ある場合には、CH1及びCLドメインを置き換えるIgフォールドドメインは、IgEのCH2ドメイン(「CH2E」)、またはもう1つのCH2Eとの安定なジスルフィド結合型二量体を形成することができるその断片である。典型的なCH2Eドメインのアミノ酸配列を以下に示す。
【化1】
上に示す配列において、鎖間ジスルフィド結合の形成に関与することができる2つのシステインは太字で示され;ドメイン内ジスルフィド結合を形成することができる2つのシステインは太字のイタリック体で示され;N結合型グリコシル化部位には下線を引いている。
【0052】
別の場合には、重軽鎖のCH1及びCLドメインを置き換えるIgフォールドドメインは、IgMのCH2ドメイン(「CH2M」)、または安定なジスルフィド結合型二量体を形成することができるその断片である。典型的なCH2Mドメインのアミノ酸配列を以下に示す。
【化2】
上に示す配列中、鎖間ジスルフィド結合の形成に関与することができるシステインは太字で表され;ドメイン内ジスルフィド結合を形成することができる2つのシステインはイタリック体で示され;N結合型グリコシル化部位には下線を引いている。
【0053】
本開示は、軽鎖対合問題に対する解決策を利用する数例の抗体を提供する。一実施形態において、抗体は、次式:
VH1構築物:VH1-L-X-CH2E(またはCH2M);及び
VL1構築物:VL1-L-X-CH2E(またはCH2M)
を有するアミノ酸配列を特徴とし、式中、「VH1」及び「VL1」は、対合して第1エピトープに対する第1抗原結合部位を形成する重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインであり;「L」は任意でのリンカー(以下でさらに説明する)であり;「X」は任意でのエルボー領域(以下でさらに説明する)であり;「CH2E」は、配列番号1、または配列番号1(例えば配列番号1のアミノ酸9~107)と安定なジスルフィド結合型二量体を形成することができるその断片を指し、「CH2M」は、配列番号2、または配列番号2(例えば配列番号2のアミノ酸7~112)と安定なジスルフィド結合型二量体を形成することができるその断片を指す。特定の実施形態では、VH1及びVL1構築物には「L」及び「X」の片方または両方が存在していない。
【0054】
別の実施形態では、抗体は、次式:
VH1構築物:VH1-X-L-CH2E(またはCH2M)、及び
VL1構築物:VL1-X-L-CH2E(またはCH2M)
を有するアミノ酸配列を特徴とする。
【0055】
さらなる実施形態において、抗体は、次式:
VH1構築物:VH1-L-X-L-CH2E(またはCH2M)、及び
VL1構築物:VL1-L-X-L-CH2E(またはCH2M)
を有するアミノ酸配列を特徴とする。
【0056】
上記VH1構築物においてCH2Eを使用する場合には、対応するVL1構築物においてもCH2Eを使用する、ということは理解されるべきである。同様に、上記VH1構築物においてCH2Mを使用する場合には、対応するVL1構築物においてもCH2Mを使用する。上記の対合したVH1及びVL1の構築物においてCH2E及びCH2Mドメインは、アミノ酸配列が同一であってもよいものの、それらが同一である必要はない。それらは例えば、12個以下、11個以下、10個以下、9個以下、8個以下、7個以下、6個以下、5個以下、4個以下、3個以下、2個以下、または1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個もしくは12個のアミノ酸が異なっていてもよい。特定の実施形態では、上記のVH1及びVL1構築物のCH2Eドメインは、配列番号1とは12個以下、11個以下、10個以下、9個以下、8個以下、7個以下、6個以下、5個以下、4個以下、3個以下、2個以下、または1個のアミノ酸位置(複数可)で異なっている。特定の実施形態では、上記のVH1及びVL1構築物のCH2Mドメインは、配列番号2とは12個以下、11個以下、10個以下、9個以下、8個以下、7個以下、6個以下、5個以下、4個以下、3個以下、2個以下、または1個のアミノ酸位置(複数可)で異なっている。これらの違いは、アミノ酸の置換、欠失及び/または挿入の結果であり得る。例えば、配列番号1または2のNグリコシル化部位を改変することができる(例えば、配列番号1のNIT配列において、N残基をQに変更することができ、またはT残基をAまたはCに変更することができ;配列番号2のNAS配列において、N残基をQに変更することができ、またはS残基をAまたはCに変更することができる)。あるいは、またはさらに、ドメイン内ジスルフィド結合を形成する1つ以上のシステインをVH1及びVL1構築物のうちの片方のCH2E(またはCH2M)ドメインにおいてのみ突然変異させてもよい。特定の場合には、VH1及びVL1構築物の両方のCH2Eドメイン(またはCH2Mドメイン)において鎖間ジスルフィド結合形成に関与する1つ以上のシステインを(例えば保存性のアミノ酸で)置換する。また、CH2Eドメイン(またはCH2Mドメイン)のホモ二量体化を防止する突然変異(例えば、配列番号1の位置17においてセリンを例えばイソロイシンまたはスレオニンで置換すること;及び配列番号1の位置103においてスレオニンを例えばグリシンまたはセリンで置換すること)を生じさせてもよい。ヒト、チンパンジー、マウス、ラット及びウサギに由来するIgE CH2ドメインのアラインメント(
図5D)により、全ての種の間で保存されておらず生物活性を排除せずに置換することができる可能性のあるアミノ酸残基が、識別される。
【0057】
ある場合には、CH2Eドメインに対するアミノ酸置換は保存的であることができる。保存的な置換とは、あるアミノ酸で同様の特性を有する別のアミノ酸を置換することである。保存的な置換としては、例えば、以下の群のうちに含まれる置換が挙げられる:バリン、アラニン及びグリシン;ロイシン、バリン及びイソロイシン;アスパラギン酸及びグルタミン酸;アスパラギン及びグルタミン;セリン、システイン及びスレオニン;リジン及びアルギニン;ならびにフェニルアラニン及びチロシン。非極性疎水性アミノ酸としては、例えば、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン及びメチオニンが挙げられる。極性中性アミノ酸としては、例えば、グリシン、セリン、スレオニン、チロシン、アスパラギン及びグルタミンが挙げられる。正に帯電した(塩基性)アミノ酸としては、例えば、アルギニン、リジン及びヒスチジンが挙げられる。負に帯電した(酸性)アミノ酸としては、例えば、アスパラギン酸及びグルタミン酸が挙げられる。上記の極性、塩基性または酸性の群のうちの1つのメンバーに対する、同じ群の別のメンバーによるいかなる置換も、保存的な置換として見なすことができる。
【0058】
ある場合には、CH2Eドメインに対するアミノ酸置換は非保存性であり得る。非保存性の置換としては、例えば、(i)電気的に陽性の側鎖を有する残基(例えば、Arg、HisまたはLys)を(またはそれによって)電気的に陰性の残基(例えば、GluまたはAsp)で(またはそれを)置換するもの、(ii)親水性残基(例えば、SerまたはThr)を(またはそれによって)疎水性残基(例えば、Ala、Leu、Ile、PheまたはVal)で(またはそれを)置換するもの、(iii)システインまたはプロリンを(またはそれによって)その他の任意の残基で(またはそれを)置換するもの、または(iv)嵩高い疎水性または芳香族の側鎖を有する残基(例えば、Val、Ile、PheまたはTrp)を(またはそれによって)より小さい側鎖を有する(例えば、Ala、Ser)かもしくは側鎖を有しない(例えば、Gly)残基で(またはそれを)置換するものが挙げられる。
【0059】
特定の実施形態では、上記のVH1及びVL1構築物のCH2Eドメインは、配列番号1に示すアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一であり、VH1及びVL1構築物のCH2Eドメインはなおも対合し合うことができる。特定の実施形態では、上記のVH1及びVL1構築物のCH2Eドメインは、配列番号3に示すアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一であり、VH1及びVL1構築物のCH2Eドメインはなおも対合し合うことができる。
【0060】
特定の実施形態では、上記のVH1及びVL1構築物においてCH2Mドメインを採用する場合、CH2Mドメインは、配列番号2に示すアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一であり、VH1及びVL1構築物のCH2Mドメインはなおも対合し合うことができる。
【0061】
アミノ酸配列同士のパーセント同一性は、BLAST2.0プログラムを使用して決定することができる。配列比較は、ギャップなしのアラインメントを用いかつデフォルトパラメータ(Blossom62行列、ギャップ存在コストは11、1残基あたりのギャップコストは1、ラムダ比率は0.85)を使用して行うことができる。BLASTプログラムで使用する数学的アルゴリズムについては、Altschul et al.,Nucleic Acids Research,25:3389-3402(1997)に記載されている。
【0062】
特定の実施形態では、上記のVH1及びVL1構築物の両方において使用されるCH2Eドメインは配列番号1と100%同一である。いくつかの実施形態では、上記のVH1及びVL1構築物において使用されるCH2Eドメインは、配列番号1の断片、例えば、配列番号1のN及び/またはC末端のアミノ酸が欠けたものであり、なおかつそれは配列番号1によってコードされるポリペプチドと安定なジスルフィド結合型二量体を形成することができる。例えば、配列番号1の断片は、配列番号1のN及び/またはC末端において20個、19個、18個、17個、16個、15個、14個、13個、12個、10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、2個または1個のアミノ酸(複数可)が欠けたものであってもよい。特定の実施形態では、上記のVH1及びVL1構築物において使用されるCH2Eドメインは、配列番号1のアミノ酸2~107、3~107、4~107、5~107、6~107、7~107、8~107、9~107、10~107、11~107、12~107、13~107、14~107、15~107、16~107、17~107、18~107、19~107、または20~107を含むかまたはそれからなる。他の実施形態では、上記のVH1及びVL1構築物において使用されるCH2Eドメインは、配列番号1のアミノ酸2~106、3~106、4~106、5~106、6~106、7~106、8~106、9~106、10~106、11~106、12~106、13~106、14~106、15~106、16~106、17~106、18~106、19~106、または20~106を含むかまたはそれからなる。さらに他の実施形態では、上記のVH1及びVL1構築物において使用されるCH2Eドメインは、配列番号1のアミノ酸2~105、3~105、4~105、5~105、6~105、7~105、8~105、9~105、10~105、11~105、12~105、13~105、14~105、15~105、16~105、17~105、18~105、19~105、または20~105を含むかまたはそれからなる。特定の実施形態では、上記のVH1及びVL1構築物において使用されるCH2Eドメインは、配列番号1のアミノ酸9~107、9~106、9~105、9~104、9~103、9~102、9~101、9~100、9~99、9~98、または9~97を含むかまたはそれからなる。これら全ての実施形態では、配列番号1に示すアミノ配列と比べて1~12個(1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個または12個)の置換が、上記のVH1及びVL1構築物において使用される片方または両方のCH2Eドメインに存在していてもよい。例えば、N結合型グリコシル化部位が突然変異していてもよく(例えば、NIT部位のアスパラギンがグルタミンで置換されていてもよく、またはNIT部位のスレオニンがアラニンまたはシステインで置換されていてもよく);鎖間ジスルフィド結合形成に関与するシステインのうちの片方もしくは両方が別のアミノ酸(例えば、保存性アミノ酸)で置換されていてもよく;または、(CH2Eドメインが重鎖及び軽鎖の一部である場合に)重鎖:重鎖二量体もしくは軽鎖:軽鎖二量体の形成を防止する突然変異がCH2Eの中に導入されていてもよい。
【0063】
特定の実施形態では、上記のVH1及びVL1構築物において使用されるCH2Mドメインは配列番号2と100%同一である。いくつかの実施形態では、上記のVH1及びVL1構築物において使用されるCH2Mドメインは、配列番号2の断片、例えば、配列番号2のN及び/またはC末端のアミノ酸が欠けたものであり、なおかつそれは配列番号2によってコードされるポリペプチドと安定なジスルフィド結合型二量体を形成することができる。例えば、配列番号2の断片は、配列番号2のN及び/またはC末端において20個、19個、18個、17個、16個、15個、14個、13個、12個、10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、2個または1個のアミノ酸(複数可)が欠けたものであってもよい。特定の実施形態では、上記のVH1及びVL1構築物において使用されるCH2Mドメインは、配列番号2のアミノ酸2~112、3~112、4~112、5~112、6~112、7~112、8~112、9~112、10~112、11~112、12~112、13~112、14~112、15~112、16~112、17~112、18~112、19~112、または20~112を含むかまたはそれからなる。他の実施形態では、上記のVH1及びVL1構築物において使用されるCH2Mドメインは、配列番号2のアミノ酸2~111、3~106、4~111、5~111、6~111、7~111、8~111、9~111、10~111、11~111、12~111、13~111、14~111、15~111、16~111、17~111、18~111、19~111、または20~111を含むかまたはそれからなる。さらに他の実施形態では、上記のVH1及びVL1構築物において使用されるCH2Mドメインは、配列番号2のアミノ酸2~110、3~110、4~110、5~110、6~110、7~110、8~110、9~110、10~110、11~110、12~110、13~110、14~110、15~110、16~110、17~110、18~110、19~110、または20~110を含むかまたはそれからなる。特定の実施形態では、上記のVH1及びVL1構築物において使用されるCH2Mドメインは、配列番号1のアミノ酸7~112、7~111、7~110、7~109、7~108、7~107、7~105、7~104、7~103、7~102、7~101、7~100または7~99を含むかまたはそれからなる。これら全ての実施形態では、配列番号2に示すアミノ配列と比べて1~12個(1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個または12個)の置換が、上記のVH1及びVL1の構築物において使用される片方または両方のCH2Mドメインに存在していてもよい。例えば、N結合型グリコシル化部位が突然変異していてもよく(例えば、NAS部位のアスパラギンがグルタミンで置換されていてもよく、またはNAS部位のセリンがアラニンまたはシステインで置換されていてもよく);鎖間ジスルフィド結合形成に関与するシステインのうちの片方もしくは両方が別のアミノ酸(例えば、保存性アミノ酸)で置換されていてもよく;または、(CH2Mドメインが重鎖及び軽鎖の一部である場合に)重鎖:重鎖二量体もしくは軽鎖:軽鎖二量体の形成を防止する突然変異がCH2Mの中に導入されていてもよい。
【0064】
一実施形態において、上記VH1構築物において使用されるCH2ドメインは、ヒト免疫グロブリンEのCH2ドメインであり、そのNグリコシル化部位はグルタミンへと突然変異しており、最初の8つのアミノ酸はヒトIgG1 CH1ドメインの最初の5つのアミノ酸で置き換わっている。このCH2Eドメインのアミノ酸配列を以下に示す。
【化3】
【0065】
一実施形態において、上記VL1構築物において使用されるCH2ドメインはヒト免疫グロブリンEのCH2ドメインであり、この場合、そのNグリコシル化部位がグルタミンへと突然変異しており、最初の8つのアミノ酸がヒトカッパドメインの最初の5つのアミノ酸で置き換わっている。このCH2Eドメインのアミノ酸配列を以下に示す。
【化4】
【0066】
別の実施形態では、上記VH1構築物において使用されることになる、上記VL1構築物とのヘテロ二量体を形成すべく操作されたヒト免疫グロブリンEの典型的なCH2ドメインのアミノ酸配列は、配列番号1の位置17にあるセリンをイソロイシンで置き換えることによって作られる。このCH2Eドメインのアミノ酸配列を以下に示す(この配列ではN結合型グリコシル化部位も突然変異しており、配列番号1の最初の8つのアミノ酸がIgG1 CH1の最初の5つのアミノ酸で置き換わっていることに留意されたい)。
【化5】
【0067】
上記VL1構築物のVLドメインに連結されることになる、上記VH1構築物とのヘテロ二量体を形成すべく操作されたヒト免疫グロブリンEの典型的なCH2ドメインのアミノ酸配列は、配列番号1の位置103にあるスレオニンをグリシンで置き換えることによって作られる。このCH2Eドメインのアミノ酸配列を以下に示す(この配列ではN結合型グリコシル化部位も突然変異しており、配列番号1の最初の8つのアミノ酸がカッパ鎖の最初の5つのアミノ酸で置き換わっていることに留意されたい)。
【化6】
【0068】
特定の実施形態では、上記のVH1及びVL1構築物において使用されるCH2Eドメインは、配列番号5及び/または6のC末端切断を含む。特定の場合には、配列番号5及び/または配列番号6のC末端から9つ、8つ、7つ、6つ、5つ、4つ、3つ、2つまたは1つのアミノ酸が欠失している。具体的な実施形態において、上記VH1構築物において使用されるCH2Eドメインは、配列番号5のアミノ酸1~103、1~102、1~101、1~100、1~99、1~98、1~97、1~96、または1~95を含むかまたはそれからなる。別の具体的な実施形態において、上記VL1構築物において使用されるCH2Eドメインは、配列番号6のアミノ酸1~103、1~102、1~101、1~100、1~99、1~98、1~97、1~96、または1~95を含むかまたはそれからなる。さらに他の実施形態では、上記VH1構築物において使用されるCH2Eドメインは、配列番号5のアミノ酸6~103、7~103、8~103、9~103、または10~103を含むかまたはそれからなる。さらに他の実施形態では、上記VL1構築物において使用されるCH2Eドメインは、配列番号6のアミノ酸6~103、7~103、8~103、9~103、または10~103を含むかまたはそれからなる。特定の実施形態では、配列番号5及び/もしくは配列番号6またはそれらの上記の断片は、配列番号1に関してさらに5つ以下、4つ以下、3つ以下、2つ以下または1つの突然変異を追加で含有し得る。
【0069】
特定の実施形態では、上記抗体はさらに、重鎖可変ドメイン「VH2」及び軽鎖可変ドメイン「VL2」を含み、VH2はCH1ドメインに連結されており、VL2ドメインはCLドメインに連結されており、VH2とVL2とが対合して第2エピトープに対する第2抗原結合部位を形成している。いくつかの実施形態では、上記抗体はさらに、2つのFcドメインを含む。Fcドメインは、抗体のヒンジ領域、CH2ドメイン及びCH3ドメインを含む。特定の場合には、ヒンジ、CH2及びCH3ドメインはIgG1に由来するものである。特定の場合には、ヒンジ及びCH3ドメインはIgG4に由来するものであり、CH2ドメインはIgG1に由来するものである。具体的な実施形態において、ヒンジ領域がIgG4に由来するものである場合、それはS228P(EU付番)突然変異を含む。抗体の2つのFcドメインのうちの片方は、抗体の2つのFabのうちの片方の、CH2Eドメイン(またはCH2Mドメイン)のうちの片方に直接繋げられていてもよいし、リンカーを介して繋げられていてもよい。Fc領域は、VH1構築物またはVL1構築物に繋げられ得る。Fc領域は、突然変異(複数可)を有さない同じFc領域と比べて二特異性抗体の重鎖同士のヘテロ二量体化を増すいかなる突然変異(複数可)を含んでいてもよい。例えば、Fc領域は、ノブ・イントゥ・ホール型突然変異、電気指向型突然変異、または本願の実施例1の表2に記載されているその他の突然変異を含み得る。具体的な実施形態において、二特異性抗体のFc領域は、本明細書に記載のリジン再配置突然変異を含む。
【0070】
特定の実施形態では、上記抗体はさらに、重鎖可変ドメイン「VH2」及び軽鎖可変ドメイン「VL2」を含み、VH2はCH1ドメインに連結されており、VL2ドメインはCLドメインに連結されており、VH2とVL2とが対合して第2エピトープに対する第2抗原結合部位を形成しているが、抗体にはFcドメイン(複数可)が欠けている。上記構築物のVH1またはVL1ドメインに繋げられたCH2Eドメイン(またはCH2Mドメイン)は、VH2及びVL2ドメインを含む抗体に繋げられることができる。例えば、VH1構築物のCH2Eドメイン(またはCH2Mドメイン)のC末端が、VH2に連結されているCH1ドメインのC末端に繋げられていてもよいし、VH1構築物のCH2Eドメイン(またはCH2Mドメイン)のC末端がVH2ドメインのN末端に繋げられていてもよい。その他の典型的な配置として、VL1構築物のCH2Eドメイン(またはCH2Mドメイン)のC末端が、VH2に連結されているCH1ドメインのC末端に繋げられていてもよいし、VL1構築物のCH2Eドメイン(またはCH2Mドメイン)のC末端がVH2ドメインのN末端に繋げられていてもよい。その他の典型的な配置としては、例えば、VL2に連結されているCLドメインのC末端に繋げられた、VH1構築物のCH2Eドメイン(またはCH2Mドメイン)のC末端、または、VL2ドメインのN末端に繋げられた、VH1構築物のCH2Eドメイン(またはCH2Mドメイン)のC末端が挙げられる。さらなる典型的な配置としては、VL1構築物のCH2Eドメイン(またはCH2Mドメイン)のC末端を、VL2に連結されているCLドメインのC末端に繋げた配置、または、VL1構築物のCH2Eドメイン(またはCH2Mドメイン)のC末端をVL2ドメインのN末端に繋げた配置がある。ある場合には、VH1構築物またはVL1構築物のCH2Eドメイン(またはCH2Mドメイン)と、第2Fabとの間のリンカーは、ペプチドリンカーである。他の場合には、VH1構築物またはVL1構築物のCH2Eドメイン(またはCH2Mドメイン)と、第2Fabとの間のリンカーは、ヒト血清アルブミン(HSA)である。ある場合には、VH1構築物またはVL1構築物のCH2Eドメイン(またはCH2Mドメイン)と、第2Fabとの間のリンカーは、ポリエチレングリコールである。さらに他の場合には、VH1構築物またはVL1構築物のCH2Eドメインと、第2Fabとの間のリンカーは、XTEN分子(例えば、AE-144、AE-288)である。
【0071】
特定の場合には、VH1及びVL1構築物は四価二特異性抗体の一部である。これらの四価抗体は、(i)全抗体であって、その可変ドメインが抗原の1つのエピトープに結合する、当該全抗体と、(ii)同じ抗原または異なる抗原の別のエピトープに各々結合する2つのFabとを含む。いくつかの実施形態では、全抗体はIgG1である。他の実施形態では、全抗体はIgG4(G1)、すなわち、IgG4のヒンジ及びCH2領域を含む一方でIgG1のCH3ドメインを含む抗体である。特定の実施形態では、全抗体はIgG4(G1)P、すなわち、ヒンジ領域にS228P(EU付番)突然変異を有することを別とすればIgG4(G1)である、抗体である。2つのFabは、全抗体のCH3ドメインのC末端に繋げられている。2つのFabは、各Fabの2つの可変ドメイン(すなわちVHまたはVL)のうちの1つのN末端を介するかまたは2つのFabのそれぞれの定常ドメインのうちの1つのC末端を介するかのどちらかで全抗体のCH3ドメインに繋げられ得る。Fab定常ドメインがCH2E(またはCH2Mドメイン)で置き換わっていない場合には、CH1ドメインのC末端またはCLドメインのC末端のどちらかと繋げられ得る。Fab定常ドメインがCH2Eドメイン(またはCH2Mドメイン)で置き換わっている場合には、CH2Eドメイン(またはCH2Mドメイン)のC末端と繋げられることができる。四価二特異性抗体は、上に詳述したCH2Eドメイン(またはCH2Mドメイン)を全抗体の2つのアーム内かまたは2つのFab内かのどちらかに含むことができる。この場合には、「全抗体」という用語を通常の意味(すなわち、4本の鎖:VL1-CL、VH1-CH1-ヒンジ-CH2-CH3、VL2-CL、及びVH2-CH1-ヒンジ-CH2-CH3を含む抗体)とは違う意味で使用して4本の鎖:VL1-CH2E(またはCH2M)、VH1-CH2E(またはCH2M)-ヒンジ-CH2-CH3、VL2-CH2E(またはCH2M)、及びVH2-CH2E(またはCH2M)-ヒンジ-CH2-CH3を含む抗体も包含していることに留意されたい。
【0072】
上記の構築物において使用することができるリンカーは特に限定されない。いくつかの実施形態では、リンカーはペプチドリンカーである。1~25個の残基(例えば、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個のアミノ酸)を含むいかなる任意の一本鎖ペプチドも、リンカーとして使用することができる。特定の場合には、リンカーはグリシン及び/またはセリン残基のみを含有する。そのようなペプチドリンカーの例としては、Gly、Ser;Gly Ser;Gly Gly Ser;Ser Gly Gly;Gly Gly Gly Ser(配列番号10);Ser Gly Gly Gly(配列番号55);Gly Gly Gly Gly Ser(配列番号56);Ser Gly Gly Gly Gly(配列番号57);Gly Gly Gly Gly Gly Ser(配列番号58);Ser Gly Gly Gly Gly Gly(配列番号59);Gly Gly Gly Gly Gly Gly Ser(配列番号60);Ser Gly Gly Gly Gly Gly Gly(配列番号61);(Gly Gly Gly Gly Ser)n (配列番号56)n(ここで、nは1以上の整数である);及び(Ser Gly Gly Gly Gly)n (配列番号57)n(ここで、nは1以上の整数である)が挙げられる。他の実施形態では、リンカーペプチドは、(従来のGly/Serリンカーペプチドリピートの接合部に生じる)アミノ酸配列GSGが存在しないように改変される。例えば、ペプチドリンカーは(GGGXX)nGGGGS(配列番号62)及びGGGGS(XGGGS)n(配列番号63)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、式中、Xは、配列中に挿入されることができる、配列GSGを含むポリペプチドをもたらさない任意のアミノ酸であり、nは0~4である。一実施形態において、リンカーペプチドの配列は(GGGX1X2)nGGGGSであり、X1はPであり、X2はSであり、nは0~4(配列番号64)である。別の実施形態では、リンカーペプチドの配列は(GGGX1X2)nGGGGSであり、X1はGであり、X2はQであり、nは0~4(配列番号65)である。別の実施形態では、リンカーペプチドの配列は(GGGX1X2)nGGGGSであり、X1はGであり、X2はAであり、nは0~4(配列番号66)である。さらに別の実施形態では、リンカーペプチドの配列はGGGGS(XGGGS)nであり、XはPであり、nは0~4である(配列番号67)。一実施形態において、本発明のリンカーペプチドはアミノ酸配列(GGGGA)2GGGGS(配列番号68)を含むかまたはそれからなる。別の実施形態では、リンカーペプチドはアミノ酸配列(GGGGQ)2GGGGS(配列番号69)を含むかまたはそれからなる。さらに別の実施形態では、リンカーペプチドはアミノ酸配列(GGGPS)2GGGGS(配列番号70)を含むかまたはそれからなる。さらなる実施形態では、リンカーペプチドはアミノ酸配列GGGGS(PGGGS)2(配列番号71)を含むかまたはそれからなる。
【0073】
特定の実施形態では、リンカーは合成化合物リンカー(化学的架橋剤)である。市場で入手することができる架橋剤の例としては、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、ジスクシンイミジルスベレート(DSS)、ビス(スルホスクシンイミジル)スベレート(BS3)、ジチオビス(スクシンイミジルプロピオネート)(DSP)、ジチオビス(スルホスクシンイミジルプロピオネート)(DTSSP)、エチレングリコールビス(スクシンイミジルスクシネート)(EGS)、エチレングリコールビス(スルホスクシンイミジルスクシネート)(スルホ-EGS)、ジスクシンイミジル酒石酸塩(DST)、ジスルホスクシンイミジル酒石酸塩(スルホ-DST)、ビス[2-(スクシンイミドオキシカルボニルオキシ)エチル]スルホン(BSOCOES)、及びビス[2-(スルホスクシンイミドオキシカルボニルオキシ)エチル]スルホン(スルホ-BSOCOES)が挙げられる。
【0074】
VH1構築物のエルボー領域は、例えば、IgG CH1ドメインの断片(例えば、IgG CH1ドメインからの1~10個、1~9個、1~8個、1~7個、1~6個、1~5個、1~4個、1~3個、または1~2個の連続アミノ酸)であることができる。一実施形態において、エルボードメインはIgG1に由来するものであり、IgG1 CH1ドメインのNまたはC末端からの1~10個、1~9個、1~8個、1~7個、1~6個、1~5個、1~4個、1~3個、または1~2個の連続アミノ酸である。IgG1 CH1ドメインのアミノ酸配列を以下に示す。
【化7】
上記VH1構築物のエルボー領域の非限定的な例は、ASTKG(配列番号7)である。一実施形態において、VH1構築物は以下のアミノ酸配列:
【化8】
を含み、この場合、CH2E(VCSRDFTP(配列番号8))の最初の8つのアミノ酸がヒトIgG1 CH2ドメインの最初の5つのアミノ酸(エルボー領域ASTKG(配列番号7))で置き換わっている。別の実施形態では、上記VH1構築物のエルボー領域はSRDFT(配列番号77)である。特定の実施形態では、VH1構築物は、エルボー領域を有さないリンカーを有する。そのような場合、リンカーは例えば配列番号56または配列番号58であり得る。
【0075】
VL1構築物のエルボー領域は、例えば、カッパまたはラムダCLドメインの断片(例えば、カッパまたはラムダドメインからの1~10個、1~9個、1~8個、1~7個、1~6個、1~5個、1~4個、1~3個、または1~2個の連続アミノ酸)であることができる。一実施形態において、エルボードメインはカッパドメインに由来するものであり、カッパドメインのNまたはC末端からの1~10個、1~9個、1~8個、1~7個、1~6個、1~5個、1~4個、1~3個、または1~2個の連続アミノ酸を含むかまたはそれからなる。ヒトカッパCLドメインのアミノ酸配列を以下に示す。
【化9】
【0076】
ヒトラムダCLドメインのアミノ酸配列を以下に示す(エルボー領域は、太字/下線付きで示されている最初の6つのアミノ酸である)。
【化10】
上記VL1構築物のエルボー領域の非限定的な例はRTVAA(配列番号9)である。一実施形態において、VL1構築物は以下のアミノ酸配列:
【化11】
を含み、この場合、CH2E(VCSRDFTP(配列番号8))の最初の8つのアミノ酸がヒトカッパドメインの最初の5つのアミノ酸(エルボー領域RTVAA(配列番号9))で置き換わっている。別の実施形態では、上記VL1構築物のエルボー領域はGQPKAA(配列番号78)である。特定の実施形態では、VL1構築物は、エルボー領域を有さないリンカーを有する。そのような場合、リンカーは例えば配列番号56または配列番号58であり得る。
【0077】
重鎖誤対合問題に対する解決策
本願はさらに、重鎖ヘテロ二量体化に有効な方策としてリジン再配置を開示する。CH3ドメインの構造解析、モデリング、及び潜在的な界面突然変異の解析に基づいてリジン再配置の方策を考案して非対称な相補的CH3界面の操作をした(
図2を参照のこと)。具体的には、CH3単量体AにおけるLys409(EU付番)のSerによる置換及びSer364(EU付番)のLysによる置換は、リジンをβストランドEから隣接する逆平行βストランドBへと再配置する。反対に、CH3単量体BにおけるLys370(EU付番)のSerによる置換及びPhe405(EU付番)のLysによる置換は、リジンをβストランドBからβストランドEへと再配置する。他の実施形態では、リジン再配置には表2のMP4の突然変異を伴う。再配置されたリジンは、ヘテロ二量体では積み重なるが、ホモ二量体では立体的衝突及び電荷の衝突を引き起こし、それは、ホモ二量体の形成を防止し、それにゆえCH3ドメインのヘテロ二量体化をもたらす。このように、抗体のCH3ドメイン(例えば、IgG1抗体のCH3)の中にこれらの変更を組み込むことによって、これらの突然変異を有さない抗体に関して抗体の重鎖のヘテロ二量体化を増すことができる。この方策は、公開されているFcヘテロ二量体化突然変異よりも勝るかまたはそれと同程度の効率で重鎖ヘテロ二量体化に非常に効果的な方策であるということが判明した。
【0078】
野生型ヒトIgG1 CH3ドメインのアミノ酸配列を以下に示す。
【化12】
【0079】
野生型ヒトIgG4 CH3ドメインのアミノ酸配列を以下に示す。
【化13】
【0080】
一実施形態において、抗体のFc領域の2つのCH3ドメインのうちの片方は、以下に示すアミノ酸配列:
【化14】
を含む。
【0081】
この実施形態では、抗体のFc領域の2つのCH3ドメインのうちのもう片方は、以下に示すアミノ酸配列:
【化15】
を含む。
【0082】
いくつかの実施形態では、上記の2つのCH3ドメインは5つ以下、4つ以下、3つ以下、2つ以下、または1つのアミノ酸置換をCH3ドメインの片方または両方の中に含み得る。例えば、CH3ドメインを突然変異させて抗体の1つ以上のエフェクター機能を変化させることができる。1つ以上のエフェクター機能を変化させるためにCH3ドメインにおいて改変されることができる位置(EU付番による)の非限定的な例としては、位置342、344、356、358、359、360、361、362、373、375、376、378、380、382、383、384、386、388、389、398、414、416、419、428、430、433、434、435、437、438及び439が挙げられる。米国特許第8,586,713B2号の第10列、第32~64行目に記載されている置換可能部位の例及び突然変異の例も参照されたい。1つ以上のエフェクター機能を変化させるためにCH3ドメインに対して行うことができる置換のその他の非限定的な例(EU付番によって列挙する)としては、E345R、H433A、N434A、H435A、Y436D、Q438D、K439E、S440K及び/またはK439E/S440Kが挙げられる(Diebolder CA et al.,Science,343(6176):1260-1263(2014)を参照のこと)。CH3ドメインに対して行うことができるその他の置換としては、例えば、プロテインAとの結合性に影響を与えるものが挙げられる。そのような置換の非限定的な例としては、H435R、H435R及び/またはY436F(米国特許第8,586,713B2号)(全てEU付番)が挙げられる。人工的なジスルフィド結合を導入する置換を行ってもよい。そのような置換の非限定的な例としては、P445G、G446E及びK447C;P343C及びA431C;ならびにS375C及びP396C(WO2011/003811A1)(全てEU付番)が挙げられる。表面残基が変化するようにCH3ドメインを突然変異させてもよい。これは、例えば、抗体の等電点(pI)を変化させるためのものであり得る。そのような置換の非限定的な例としては、E345K、Q347E/K/R、R355E、R355Q、K392E、K392N、Q419E (US2014/0294835A1)(全てEU付番)が挙げられる。ある場合には、CH3ドメインのC末端は、切断及び/または改変されることができる。例えば、K447(EU付番)を欠失させかつ/またはペプチドDEDEまたはその他のアミノ酸をCH3ドメインのC末端に追加することができる。特定の場合にはCH3ドメインのグリコシル化に影響を与えるように当該ドメインを突然変異させることができる。そのような突然変異の非限定的な例はY407E(EU付番)(Rose et al.,MAbs,5(2):219-28(2013))である。
【0083】
上記CH3ドメインはFcドメインの一部であり得る。抗体の重鎖のFcドメインは、ヒンジ領域、CH2ドメイン及びCH3ドメインを含む。CH3ドメインは、上に述べたリジン再配置突然変異以外の突然変異も含んでいてよい。
【0084】
Fcドメインのヒンジ領域は、いかなる抗体クラスのヒンジ領域であることもできる。IgG1、IgG2及びIgG4抗体のヒンジ領域は、一般に、位置216のアミノ酸から位置230のアミノ酸まで延びている(EU付番による位置付番)。特定の実施形態では、ヒンジ領域はIgG1抗体由来のヒンジである。その他の実施形態では、ヒンジ領域はIgG4抗体由来のヒンジである。ヒンジ領域がIgG4クラスに由来するものである場合、それはS228P(EU付番)突然変異を含有し得る。以下は、全体または一部のどちらかが採用され得る典型的なヒンジ領域である(例えば、N及び/またはC末端切断があってもよい)。
ヒトIgG1ヒンジ:EPKSCDKTHTCPPCP (配列番号15)
ヒトIgG4ヒンジ:ESKYGPPCPSCP (配列番号16)
突然変異体ヒトIgG4(S228P)ヒンジ:ESKYGPPCPPCP (配列番号17)
特定の場合には、上記のヒンジ配列のN及び/またはC末端において1つ、2つ、3つ、4つまたは5つのアミノ酸を欠失させてもよい。特定の場合には、ヒンジ配列またはそのN及び/もしくはC末端において4つ以下、3つ以下、2つ以下、1つ、2つ、3つまたは4つのアミノ酸の置換、欠失及び/または挿入があってもよい。
【0085】
CH2ドメインは、いかなるクラスの抗体に由来するものであってもよい。特定の実施形態では、CH2ドメインはIgG1抗体に由来するものである。他の実施形態では、CH2ドメインはIgG4抗体に由来するものである。CH2ドメインは、1つ以上の突然変異を含有していてもよい。例えば、CH2ドメインは、N結合型グリコシル化部位がグリコシル化されないように当該部位の突然変異を有していてもよい。特定の実施形態では、CH2ドメインのN結合型グリコシル化部位のアスパラギンがグルタミンへと突然変異している(例えば、Asn297Gln)。他の実施形態では、CH2ドメインのN結合型グリコシル化部位にあるスレオニンがアラニンまたはシステインへと突然変異している(例えば、Thr299AlaまたはThr299Cys)。他の例では、エフェクター機能を変化させるべくCH2ドメインを突然変異させてもよい(例えば、Leu234Ala/Leu235Ala、Pro329Gly、及び/またはPro331Ser)。FcRnに対する結合性を変化させるべくCH2ドメインを突然変異させることもできる。
【0086】
特定の実施形態では、定常ドメインはIgG4P/IgG1ハイブリッドである。特定の場合には、定常ドメインはIgG4P/IgG1(agly)ハイブリッドである。これらのハイブリッドは、IgG4のヒンジ領域及びCH2ドメインならびにIgG1のCH3ドメインを含む。IgG4のヒンジ領域はS228P突然変異を有する。agly構築物においてそれはさらに突然変異N297Q、T299AまたはT299Cのうちの1つを含む。
【0087】
一実施形態において、2つのFc領域のうちの片方は、以下に示すアミノ酸配列(ヒンジ領域をイタリック体で示し;N結合型グリコシル化部位には下線を付け;CH2領域を通常のフォントで示し;CH3ドメインを太字で示す):
【化16】
を含む。
【0088】
この実施形態では、2つのFc領域のうちのもう片方は、以下に示すアミノ酸配列(ヒンジ領域をイタリック体で示し;N結合型グリコシル化部位には下線を付け;CH2領域を通常のフォントで示し;CH3ドメインを太字で示す):
【化17】
を含む。
【0089】
別の実施形態では、2つのFc領域のうちの片方は、以下に示すアミノ酸配列(ヒンジ領域をイタリック体で示し;突然変異N結合型グリコシル化部位には下線を付け;CH2領域を通常のフォントで示し;CH3ドメインを太字で示す):
【化18-1】
【化18-2】
を含む。
【0090】
この実施形態では、2つのFc領域のうちのもう片方は、以下に示すアミノ酸配列(ヒンジ領域をイタリック体で示し;CH2領域を通常のフォントで示すとともに、CH2ドメインの突然変異N結合型グリコシル化部位には下線を付け;CH3ドメインを太字で示す):
【化19】
を含む。
【0091】
これらのFc領域は、Fcドメインがヘテロ二量体化できる限り、9つ以下、8つ以下、7つ以下、6つ以下、5つ以下、4つ以下、3つ以下、2つ以下、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つまたは9つのアミノ酸の置換、挿入及び/または欠失を含むことができる。アミノ酸置換は、保存的または非保存的なアミノ酸置換であり得る。
【0092】
上記のCH3ドメイン及びFcドメインのいずれかは、CH2Eドメイン(またはCH2Mドメイン)で置き換えられたCLドメインを有する上記軽鎖と対合する重鎖の一部であることができる。具体的には、重鎖は、VHドメインに直接繋げられているかまたは間に介在する配列を介して繋げられている第2CH2ドメインを含むことができ、ここで、第2CH2ドメインは、CH2Eドメインまたは、CH2Eドメインと二量体化することができるその断片である。特定の場合には、重鎖は、VHドメインに直接繋げられているかまたは間に介在する配列を介して繋げられている第2CH2ドメインを含むことができ、ここで、第2CH2ドメインは、CH2Mドメインまたは、CH2Mドメインと二量体化することができるその断片である。上記のCH3ドメイン及びFcドメインのいずれかは、CH1及びCLドメインを有する上記軽鎖と対合する重鎖の一部であることもできる。特定の場合には、上記のCH3ドメイン及びFcドメインのいずれかは、CH2Eドメイン(またはCH2Mドメイン)で置き換えられたCLドメインを有する上記軽鎖と対合する第1重鎖の一部であり、上記のCH3ドメイン及びFcドメインのいずれかは、CH1及びCLドメインを有する上記軽鎖と対合する第2重鎖の一部である。
【0093】
一実施形態において重鎖は以下のアミノ酸配列:
【化20】
を含む。
【0094】
一実施形態において、この重鎖は、以下のアミノ酸配列:
【化21】
を含んでいる軽鎖と二量体化する。
【0095】
これらの重軽鎖配列は各々、重軽鎖がヘテロ二量体化できる限り、9つ以下、8つ以下、7つ以下、6つ以下、5つ以下、4つ以下、3つ以下、2つ以下、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つまたは9つのアミノ酸の置換、挿入及び/または欠失を含むことができる。アミノ酸置換は、保存的または非保存的なアミノ酸置換であり得る。
【0096】
いくつかの実施形態では、ヘテロ二量体化する上記のCH3ドメイン及びFcドメインは、一価抗体の一部であることができる。一価抗体は、抗体の2つのFc領域のうちの一方に直接繋げられているかまたは間に介在するリンカー配列を介して繋げられているFabを含み;他方のFc領域は、それに取り付けられたFab領域を有さない。
【0097】
他の実施形態では、ヘテロ二量体化する上記のCH3ドメイン及びFcドメインは、一本鎖Fc(scFc)の一部であることができる。特定の場合には、FabのCH1またはCLドメインは第1Fc領域に直接繋げられているかまたは間に介在するリンカーを介して繋げられており、当該Fc領域は第2Fc領域に繋げられている(例えば、第1Fc領域のCH3ドメインのC末端は、第2Fc領域のヒンジ領域のN末端に繋げられている)。
【0098】
特定の実施形態では、ヘテロ二量体化する上記Fcドメインは、Fabに直接繋げられているかまたはリンカーを介して繋げられている。つまり、FabのVH/CH1含有部分は、そのC末端を介して第1Fcのヒンジ領域のN末端に繋げられており、FabのVL/CL含有部分はそのC末端を介して第2Fc領域のヒンジ領域のN末端に繋げられている。
【0099】
さらに他の実施形態では、ヘテロ二量体化する上記のCH3ドメイン及びFcドメインは、第1重鎖及び第2重鎖を含む抗体の一部であり、ここで、第1及び第2重鎖は通常の軽鎖と対合している。
【0100】
核酸
本開示は、本明細書に記載のヘテロ二量体型の二特異性抗体及び一価抗体の重軽鎖をコードする核酸も包含する。VH、VL、ヒンジ、CH1、CH2、CH3及びCH4領域を含む免疫グロブリン領域をコードする多くの核酸配列が当該技術分野において既知である。例えば、Kabat et al. in SEQUENCES OF IMMUNOLOGICAL INTEREST, Public Health Service N.I.H., Bethesda,Md.,1991を参照されたい。本明細書において提供される指針を用いれば、当業者はそのような核酸配列及び/または当該技術分野において知られているその他の核酸配列を組み合わせて本明細書に記載のヘテロ二量体型二特異性抗体をコードする核酸配列を作出することができよう。
【0101】
さらに、本明細書に記載のヘテロ二量体型二特異性抗体をコードする核酸配列は、本明細書において提供されるアミノ酸配列及び当該技術分野の知識に基づいて当業者によって決定されることができる。特定のアミノ酸配列をコードするクローニングされたDNAセグメントを生じさせる、より慣例的な方法の他、諸会社は現在、任意の所望の配列からなる化学合成された遺伝子サイズのDNAを日々受注生産しており、よってそのようなDNAを生産する工程は効率化されている。
【0102】
二特異性抗体を作る方法
本明細書に記載の二特異性抗体及び一価抗体は、当該技術分野においてよく知られている方法を用いて作ることができる。例えば、二特異性抗体の4本のポリペプチド鎖をコードする核酸を様々な既知の方法、例えば、形質転換、トランスフェクション、電気穿孔法、核酸で被覆された微粒子の撃ち込みなどによって宿主細胞内に導入することができる。ある場合には、二特異性抗体をコードする核酸は、宿主細胞内に導入される前に宿主細胞での発現に適したベクターの中に挿入される。典型的には、そのようなベクターは、挿入された核酸をRNAレベル及びタンパク質レベルで発現するのを可能にする配列エレメントを含有することができる。そのようなベクターは当該技術分野においてよく知られており、多くは市販されている。核酸を含有する宿主細胞は、核酸を細胞が発現することを可能にするような条件下で培養することができる。結果として生じるヘテロ二量体型二特異性抗体は、細胞塊または培地から回収することができる。あるいは、ヘテロ二量体型二特異性抗体を生体内で、例えば、植物の葉(例えば、Scheller et al.,Nature Biotechnol.,19:573-577 (2001)及びその中で引用される参考文献を参照のこと)、鳥の卵(例えば、Zhu et al.(2005),Nature Biotechnol.,23:1159-1169(2005)及びその中で引用される参考文献を参照のこと)、または哺乳動物の乳(例えば、Laible et al.,Reprod.Fertil.Dev.25(1):315(2012))において産生させることができる。単離した抗体は、ヒト対象への投与のために無菌組成物として製剤化することができる。
【0103】
数多くある中でも例えば、Escherichia coliもしくはBacillus stearothermophilusなどの細菌細胞、Saccharomyces cerevisiaeもしくはPichia pastorisなどの真菌細胞、Spodoptera frugiperda細胞を含めた鱗翅目昆虫細胞などの昆虫細胞または、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ベビーハムスター腎由来(BHK)細胞、サル腎細胞、Hela細胞、ヒト肝癌由来細胞もしくは293細胞を含めた、数種類の宿主細胞を使用することができる。
【0104】
以下は本発明の実施例である。それは決して、本発明の範囲を限定するものと見なされるべきでない。
【実施例】
【0105】
以下の実施例は、特許請求の範囲に記載の本発明をよりよく例示するために提供されており、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。具体的な材料に言及している限りにおいて、それは単に例示を目的としており、本発明を限定することは意図されない。当業者であれば、発明の才を行使することなく、本発明の範囲から逸脱せずに、等価な手段及び反応物質を開発することができる。
【0106】
実施例1:重鎖ヘテロ二量体化の操作
CH3ドメインは、IgGの2本の重鎖同士が接触する主要な場所の1つである。2つのCH3ドメインは、界面にある接触残基が密にパッキングされた状態で頭-尾配向で結合し合う。重鎖ヘテロ二量体化は、2つのCH3ドメイン同士の接触のコアにある疎水性表面を操作すること、または接触面の周辺にある荷電残基を変化させることによって達成することができる。疎水性接触残基の密なパッキングを維持すべく、非対称性の操作をするためにCH3界面の周辺を選択した。CH3ドメインの突然変異のためのさらなる設計基準には、(i)ヘテロ二量体化の効率的誘因、(ii)少ない突然変異、及び(iii)全体的に電荷中立的な変化が含まれた。CH3ドメインの構造解析及び突然変異の設計は、ヒトIgG1 Fc(PDBコード3AVE)の結晶構造を使用して行った。比較解析により、公開されている多数のヒトFcドメイン同士で構造の同一性が高いことが示され、構造の選択がCH3の操作にとって必須でない可能性があることが示唆された。潜在的な界面突然変異のモデリング及び解析に基づき、リジン再配置の方策を考案して非対称な相補的CH3界面の操作をした(
図2)。単量体AにおけるLys409(EU付番)のSerによる置換及びSer364(EU付番)のLysによる置換は、リジンをβストランドEから隣接する逆平行βストランドBへと再配置する。反対に、単量体BにおけるLys370(EU付番)のSerによる置換及びPhe405(EU付番)のLysによる置換は、リジンをβストランドBからβストランドEへと再配置する。再配置されたリジンは、ヘテロ二量体では積み重なるが、ホモ二量体では立体的衝突及び電荷の衝突を引き起こし、それは、ホモ二量体の形成を防止すべきものであり、それゆえヘテロ二量体化をもたらすべきものである。
【0107】
リジン再配置によるヘテロ二量体化の有効性を実験的に試験するために、一方が完全なヒトIgG1重鎖でありかつ他方がFabなしの遊離Fcである一価mAbとして試験抗体を構築した。結果として生じるヘテロ二量体は、ホモ二量体とは分子量の顕著な差で簡単に区別することができ、ヘテロ二量体化はSDS-PAGEでの分離によって評価することができる。抗EGFR抗体M60-A02をこれらの試験構築物において使用した。表1に列挙するプライマーを使用してPCRに基づく突然変異誘発によってCH3ドメインにおける突然変異を生じさせた。
【表1-1】
【表1-2】
【0108】
増幅は、Q5 Hot Start High-Fidelity DNAポリメラーゼ(NEB#M0493L)を用いて行い、PCR産物をHiFi Gibson assemblyキット(SGI#GA1100-50)と共に使用して構築物を組み立てた。
【0109】
再配置されたリジンの個別の効果についての洞察をいくらか得るために、個別の突然変異を有する構築物を同様に組み立てた。これらの不完全設計をそれぞれMP1及びMP2と命名した(表2)。
【表2-1】
【表2-2】
完全設計は、再配置されたリジンを両方とも有し(pMP237は突然変異S364K/K409Sを有し、pMp238は突然変異K370S/F405Kを有する)、ヘテロ二量体化を引き起こす上で最も効果的であるはずである。この設計をMP3と命名した。MP3のCH3ドメインのペプチド配列を以下に示す。
MP3単量体AのCH3ドメインのアミノ酸配列(突然変異は下線付きの太字)
【化22】
MP3単量体BのCH3ドメインのアミノ酸配列(突然変異は下線付きの太字)
【化23】
さらに、比較のために、公開されているいくつかのCH3ヘテロ二量体化突然変異を生じさせた(Atwell et al.,J.Mol.Biol.,270:26-35,1997;Gunasekaran et al.,J.Biol.Chem.,285:19637-19646,2010;Von Kreudenstein et al.,mAbs 5:646-654,2013)。さらに、野生型IgG1対照に相当する構築物pMP221及びpMP222を組み立てた。ヘテロ二量体化のこの最初の試験のために作製した全ての構築物を表2にまとめて示すが、プラスミドは全てDNA配列決定によって確認した。
【0110】
抗体を一過的なトランスフェクションによってCHO細胞で発現させた。全ての抗体は良好に発現し、Fectopro及びDNAを2:1の比で使用して6×10
6細胞/mlでトランスフェクトされたCHO細胞を使用する9日間の発現及び翌日の28℃への温度遷移の後に100~200mg/Lの力価が得られた。上清をプロテインAカラムで精製し、分量分をSDS-PAGEで分析した(
図3A)。全ての試料において、IgG1重鎖と遊離Fcとのヘテロ二量体が主として見つかった。さらに、野生型のIgG1とFcとの共トランスフェクションは、両者のホモ二量体に対応する強いバンドも生じさせた。これらのバンドは、公開されている突然変異体、及び全てのリジン再配置突然変異体では、著しくより弱かった。したがって、リジン再配置突然変異体及び公開されている突然変異体は重鎖ヘテロ二量体の形成を推し進め、ホモ二量体化を減少させる。プロテインA精製された材料を質量分析によってさらに分析し、主成分の相対量を推定した。試料中のヘテロ二量体の量は、35~80%の範囲であり、公開されている設計と比べてリジン再配置突然変異体MP1、MP2及びMP3ではわずかにより高かった(
図3B)。但し、個々の鎖の発現レベルを変化させることによってこれらの結果が影響を受けて直接的な比較が難しくなる可能性がある。重要なことには、設計MP2及びMP3ならびにZW1及びノブ・イントゥ・ホール型突然変異体は全て単量体Fcを含有していた。単量体Fcの存在は、Fc二量体が、CH3における突然変異によって不安定化され、したがって形成される可能性がより低い、ということを実証している。総じてこれらの結果は、リジン再配置が、公開されているいくつかの突然変異と同じくらい効率的にホモ二量体化を防止する効率的な重鎖ヘテロ二量体化方策である、ということを示している。
【0111】
この最初の試験の後、界面残基のパッキングを改良することができる突然変異を同定するためにさらなる構造モデリングを行った。そのような突然変異は、潜在的にヘテロ二量体化の効率または二量体の安定性を向上させることができるであろうし、それゆえに有益であろう。元のリジン再配置設計MP3を改良できるであろう2つの変化が同定された。この新しい設計をMP4と命名し、アミノ酸変化を表2に示す。MP4突然変異を有するIgG1/Fcヘテロ二量体を上記のようにCHO細胞で発現させ、上清からプロテインAで精製した。質量分析から、MP4がMP3と同じくらい効率的にIgG1重鎖と遊離Fcとのヘテロ二量体を生じさせたことが実証された(
図3B)。
【0112】
全てのヘテロ二量体タンパク質をKappaSelectカラムでさらに精製してFcの二量体及び単量体を除去し、続いてTandem Superdex S200での精製ステップを行った。この3ステップの精製により、融点を決定する示差走査熱量測定(DSC)のために使用される比較的純粋なヘテロ二量体が得られた。野生型IgG1対照は、CH3ドメインの予測Tmである約83℃を示した(
図3C)。ZW1設計は同程度のCH3融点を有する(
図3C)、というのも、それは野生型IgG1の熱安定性を再獲得すべく反復的なプロセスにおいて大幅に操作されたものであるからである(Von Kreudenstein et al., mAbs 5:646-654,2013)。ノブ・イントゥ・ホール型及び静電指向型の比較分子は、DSCプロファイルにおいてたった1本のピークを示し、CH3ドメインのTmが約70℃に低下したこと及び、当該ドメインがCH2及びFabドメインと共に融解してDSCにおいて単一ピークをもたらしたことを示唆した(
図3C)。MP3分子も同様に、DSCプロファイルにおいてたった1本のピークを約70℃に示し、CH3のTmが同様に低下したことを指し示していた(
図3C)。タンパク質MP4及びMP4a3b(MP4の単量体AとMP3の単量体B)は、CH2/Fabピークの右側に肩を現し(
図3C)、突然変異K409Lが元の突然変異K409Sよりもわずかに向上した安定性を付与すること、及びさらなる操作によってTmを向上させるのが可能であり得ることを示唆した。それでもなお、設計MP4は野生型IgG1 CH3ドメインと比べてTmがより低い。
MP4のCH3ドメインのペプチド配列を以下に示す。
MP4の単量体AのCH3ドメインの配列(突然変異は下線付きの太字)
【化24】
MP4の単量体BのCH3ドメインの配列(突然変異は下線付きの太字)
【化25】
【0113】
MP4をコードするプラスミド(pMP254及びpMP259)のDNA分子配列を以下に示す。
MP4A突然変異(S634K、K409L)を有する抗EGFR M60-A02 IgG1重鎖、pMP254のDNA配列:
【化26-1】
【化26-2】
【化26-3】
【化26-4】
【化26-5】
【化26-6】
【化26-7】
【化26-8】
【化26-9】
【化26-10】
MP4B突然変異(K370S、V397I、F405K)を有するIgG1 Fc、pMP259のDNA配列:
【化27-1】
【化27-2】
【化27-3】
【化27-4】
【化27-5】
【化27-6】
【化27-7】
【化27-8】
【化27-9】
【0114】
実施例2:重鎖ヘテロ二量体化突然変異の試験
リジン再配置設計のさらなる特性評価を行うために、突然変異を完全なIgG1重鎖の中に組み込んだ。これらの構築物は、潜在的影響を制限しかつ軽鎖対合問題を回避するために両方の重鎖上に同じFab(抗EGFR M60-A02)を含有していた。等量の2つの重鎖、及びM60-A02の軽鎖をCHO一過性発現体において発現させ、上清をSDS-PAGEで分析した。どの上清も、1本の重鎖と1本の軽鎖とからなる半抗体をかなりの量で含有していたが、LC-MCピーク(データ示さず)の定量によって示されるとおり設計MP4はMP3と比べてより少ない量の半抗体を生成した。さらに、質量分析からは、これらの試料において半抗体が重鎖Bによってのみ形成されていることが明らかになった(データ示さず)。これは、半抗体形成が重鎖Bの過剰発現の結果であり得ることを示唆しており、それは、2つの重鎖同士の比を最適化することによって半抗体のレベルを低減する可能性を切り開くものである。それゆえ、同一のFabを有する設計MP4の重鎖(プラスミドpMP254及びpMP399)を1:5~5:1の様々な比でCHO-S細胞内にトランスフェクトした。重鎖の総量(14μg)及び軽鎖の量は、これらのトランスフェクションにおいて一定に保った。鎖Aの過剰発現は、半抗体の形成を減少させて上清中の完全IgGの量を増加させ、半抗体形成が鎖同士の示差的発現によって影響を受けることを裏付けた(
図4A)。これらの実験ではどちらの重鎖も同じFab(抗EGFR M60)を含有していたことから、2つの重鎖の示差的発現はCH3突然変異に起因している可能性がある。しかしながら、質量分析は、どちらの鎖の過剰発現もそれぞれのホモ二量体の形成の増加を招くということも実証した(
図4B)。したがって、2本の重鎖間で等しい比率は、望ましくない副生成物を最小限にする好適な妥協点である。
【0115】
実施例3:軽鎖対合問題に対する解決策の開発
図1に示されているような二特異性抗体における軽鎖:重鎖(LC:HC)対の正しい会合を引き起こすためには、誤った会合が立体的衝突または電荷の反発によって防止されるように鎖間の界面が操作され得る。抗体の軽鎖は可変ドメイン及び定常ドメインにおいて重鎖と接触し、どちらの接触(VL:VH及びCL:CH1)も認識及び係合に寄与する。それゆえ、定常ドメインにおける点突然変異は、各軽鎖を正しい対合へと導くのに十分でない可能性があり、可変ドメインの操作が必要となる可能性がある。したがって、軽鎖対合を解決するための代替方策を探究した。
【0116】
抗体の可変ドメインは、定常領域の不在下で、または異種タンパク質と融合している場合に、それらの結合性を維持することができる。本発明者らは、軽鎖の誤対合を防止する方策としてCH1/CLの代わりにIgフォールドドメインが使用され得るという仮説を立て、CH1:CLドメインを置き換える候補IgフォールドドメインとしてIgE(Cε2)のCH2ドメインを選択した(
図5A)。IgE(Cε2)のCH2ドメインは、2つの鎖間ジスルフィドによって繋げられたホモ二量体を形成する。このドメインは、(IgEには存在していない)ヒンジ領域の代わりとして、IgE重鎖間の二量体化界面の役割を果たす。さらに、IgGのCH2ドメインとは違い、Cε2ドメインはエフェクター機能に関与せず、FcεRIαと接触しない(Holdom et al.,Nature Struct.&Mol.Biol.,18:571-576,2011)。
【0117】
Cε2ドメインの構造は他のIgフォールドドメイン、例えばCL及びCH1ドメインと類似しているが、二量体のユニット間の界面及び角度は異なっている(
図5B)。二量体の2つのCε2ドメインは他のIgフォールドドメインと比べて広範囲の相互作用がより少なく、相互作用には通常の無極性残基ではなく極性残基が優勢である。このように、Cε2とCH1:CLとは全体的に非常に異なっているため、Igフォールドドメインの交差対合の可能性は低い。しかしながら、Igフォールドの第1βストランドの始まりを示す2つのプロリン(
図5C中で下線付きの太字で強調されている)は、Cε2定常ドメイン及びCH1/カッパ定常ドメインの構造において類似した位置にある。したがって、抗体の可変ドメインをCε2ドメインと融合させること及び、VH:VL対の形状、したがってその結合性を維持することは、可能であると見受けられる。Cε2ドメインと融合した抗体の可変ドメインからなるこのハイブリッドFab構築物を「E-Fab」と命名した(
図5C)。ヒト免疫グロブリンE(IgE)のCH2ドメインのアミノ酸配列を以下に示す(N結合型グリコシル化部位に下線を引いてある)。
【化28】
【0118】
VHドメインをCε2ドメインと融合させるために、IgG1 CH1定常領域のコネクタ配列(ASTKG(配列番号7))と、Pro2(CドメインのIMGT特有の付番、
図5C)から始まるCε2ドメインの第1βストランドとを結び合わせた。最初の8つのアミノ酸(VCSRDFTP(配列番号8))がヒトIgG1 CH1ドメインの最初の5つのアミノ酸(エルボー領域ASTKG(配列番号7)に下線を引いてある)で置き換わったヒト免疫グロブリンE(IgE)のCH2ドメインのアミノ酸配列を以下に示す。
【化29】
【0119】
カッパ定常領域由来のコネクタ(RTVAA(配列番号9))を使用して、同じ方策を用いてVLをCε2ドメインと融合させた。最初の8つのアミノ酸(VCSRDFTP(配列番号8))がヒトカッパドメインの最初の5つのアミノ酸(エルボー領域RTVAA(配列番号9)に下線を引いてある)で置き換わったヒト免疫グロブリンEのCH2ドメインのアミノ酸配列を以下に示す。
【化30】
【0120】
ヒトCε2ドメインは1つのN結合型グリコシル化部位をAsn38(IMGT付番)に有し、E-FabではそれをGlnに突然変異させてこの部位のグリコシル化を防止した。この最初の設計では、可変ドメインがCε2ドメインと結び付けられており、当該Cε2ドメインは、agly突然変異以外には変更されておらず、重軽鎖間で同一である。この最初の設計をE-Fab E0と命名した。E-Fabの重鎖のE0設計のアミノ酸配列を以下に示す(Nグリコシル化部位がグルタミンへと突然変異している)。
【化31】
E-Fabの軽鎖のE0設計のアミノ酸配列を以下に示す(Nグリコシル化部位がグルタミンへと突然変異している)。
【化32】
【0121】
しかしながら、Cε2ドメインは通常はホモ二量体化するため、HC:HCまたはLC:LC二量体の形成を防止すべく追加の突然変異を当該ドメインに導入し、これらの設計をE-Fab E1~E3と命名した(表3;位置はIMGT付番方式による)。
【表3】
【0122】
E-Fabの重鎖のE1設計のアミノ酸配列を以下に示す。
【化33】
【0123】
E-Fabの軽鎖のE1設計のアミノ酸配列を以下に示す。
【化34】
【0124】
E-Fabの重軽鎖のE2設計のアミノ酸配列はこの実施例の最後に示されている。
【0125】
E-Fabの重鎖のE3設計のアミノ酸配列を以下に示す。
【化35-1】
【化35-2】
E-Fabの軽鎖のE3設計のアミノ酸配列を以下に示す。
【化36】
【0126】
軽鎖対合の制御においてE-Fabを評価するために、M60-A02抗EGFRとM13.C06抗IGF1Rとの2つのFabを使用して試験構築物を組み立てた。どちらの重鎖もサブグループHV3に属し、それゆえプロテインAを使用して精製することができる。正しい対合と誤った対合とをSDSpageでの移動によって簡単に区別するのを可能にするために、試験分子をGFP(30kDa、Fab B 抗IGF-1RのLC)またはHSA(66kDa、Fab AまたはE-FabのHC、抗EGFR)でタグ付けした(
図6A)。E-Fab構築物をgBlockによって組み立てた。PCRに基づく突然変異によってCε2ドメインに追加の突然変異を導入し、生成物を制限酵素に基づく方法によってpV90/pV100に由来するCHO発現ベクターにクローニングした(表3)。40ml規模のCHO-Sでの一過的なトランスフェクションによってFabを共発現させた。トランスフェクションから24時間後に発現のために細胞を28℃に遷移させ、8日後に上清を採取し、遠心分離及び濾過(0.22μm)によって浄化した。
【0127】
発現したタンパク質のSDS-PAGEによる分析は、Cε2ドメインと融合した通常の抗体の可変ドメインからなるE-Fabが軽鎖対合の制御において非常に効率的であったことを示した。M60-A02とM13-C036との2つのFabを野生型IgG1/カッパFabとして共発現させた場合には、M60-A02軽鎖とM13-C06重鎖との誤対合が容易に検出された(
図6B)。しかしながら、M60-A02をE-Fabとして作った場合には誤対合はみられなかった。対照的に、CH1/CLドメインでの点突然変異は、この実験において軽鎖誤対合をなくすことができなかった(データ示さず)。同様に、抗IGF-1R M13-C06をE-Fabとして構築すると、それを別のFab(抗IGF-1R G11)と共発現させた場合に誤対合は検出されなかった(
図6C)。重要なことに、Fabを個別に発現させて抗原との結合性をOctetによって試験した場合、E-fab及び野生型Fabは、抗Hisチップ上に装填されたHisタグ付IGF-1Rに対して同程度に結合した(
図6D)。
【0128】
したがって、上記データに基づくと、E-Fabは、二特異性抗体の軽鎖対合問題を解決する優れた方策である、というのも、それが厳密に正しい鎖対合を強化し、Fabの結合性が維持されるからである。興味深いことに、Cε2ドメインはE-Fabの鎖同士のホモ二量体の形成を強く誘導しなかった。それにもかかわらず、重軽鎖間でヘテロ二量体を形成するように操作されている設計E2及びE3を先に進めて完全二特異体との関連において試験した。重鎖同士の二量体化をいくらか誘導すると見受けられた設計E1(
図6B)のみ、さらなる試験を行わなかった。E-Fab設計E2の定常ドメインのペプチド配列を以下に示す。
E-Fab軽鎖定常領域agly N38Q(設計E2、T121G、pMP463)のアミノ酸配列
【化37】
E-Fab重鎖定常領域agly N38Q(設計E2、S101、pMP392)のアミノ酸配列
【化38】
【0129】
実施例4:二特異性非対称IgGの組立て及び試験
E-Fabとリジン再配置構築物とを組み合わせて完全IgG様二特異性抗体を作製した。そのような二特異性抗体は4本の異なる鎖からなり、軽鎖対合解決策と重鎖ヘテロ二量体化解決策とを両方含有している(
図7)。抗EGFR抗体M60-A02と抗IGF1R M13.C06またはG11とを再び使用して、ヘテロ二量体化突然変異MP3を有する2本の異なるIgG1重鎖を組み立てた。
成熟M60-A02 E体 重鎖(EFab E2、mp3aヘテロ二量体化、pMP401)のアミノ酸配列(CH2ドメインに下線を引き、CH3ドメインを太字で示している)
【化39-1】
【化39-2】
成熟M60-A02 E体 軽鎖(EFab E2、pMP463)のアミノ酸配列(CH2ドメインに下線を引いている)
【化40】
成熟M13.C06 IgG1重鎖(mp3bヘテロ二量体化、pMP404)のアミノ酸配列(CH3ドメインを太字で示している)
【化41】
成熟M13.C06 カッパ軽鎖(pMP407)のアミノ酸配列
【化42-1】
【化42-2】
【0130】
異なる軽鎖の対合を制御するために、抗EGFR FabをEfabとして構築した(
図7)。リジン再配置突然変異を有する対照抗体を組み立てて、軽鎖対合解決策を欠くIgG1重鎖ヘテロ二量体を作製した。
【0131】
抗体を再びCHO-S細胞で一過的なトランスフェクションによって発現させ、上清を採取し、8日間培養した後に浄化した。SDS-PAGEによる分離は、完全なIgGの大きさで移動するバンドと、半抗体に対応するさらなるバンドを示した(
図8A)。質量分析は、これらの実験において重鎖Bによる半抗体が再び形成されたことを実証した。重要なことに、E-Fabでは軽鎖誤対合はLC-MSによって検出されなかった。IgG1ヘテロ二量体は、重鎖とそれらの軽鎖との正しい対合をいくらか示したが、2本の抗EGFR軽鎖を有する重鎖ヘテロ二量体の強いピークも検出できた(
図8B)。これらの結果は、E-Fabが軽鎖対合問題を解決するということを再び裏付けている。
【0132】
重要なことに、質量分析プロファイルにおいて重鎖同士のホモ二量体は検出できず、リジン再配置による重鎖ヘテロ二量体化はE-Fabと組み合わされた場合に非常に効率的であることが実証された(
図8B)。但し、質量分析からは、IgG1対照には存在しないがEfab二特異体には存在している低レベルのO-グリカンも明らかになった。
【0133】
次に、可溶性Hisタグ付EGFR(
図8C)及びIGF-1R(
図8D)によるOctet結合性実験において粗上清を使用した。二特異性E体及びIgG1対照は、EGFRともIGF-1Rとも結合したが、結合性はE体と対照とでいくぶん異なっているようであった。但し、これらの結果の解釈は、これらの粗試料において異なっている発現、半抗体の量及び軽鎖誤対合ゆえに、複雑である。
【0134】
総じて、結合性データと合わせて質量分析による分析は、E体が非対称IgGへと正しく会合したことを実証している。これは、CHO細胞における4つの異なる鎖(2つのHC及び2つのLC)の発現によって単純に成し遂げられる。E-Fabは軽鎖対合を完全に解決し、リジン再配置はこれらの実験において重鎖ヘテロ二量体化を厳密に強化した。
【0135】
実施例5:二特異性基幹のさらなる試験
Efab及びFcヘテロ二量体化を用いて二特異性基をさらに試験するために、別のIgG様二特異性抗体を、種々のがんの治療のために認可されているトラスツズマブとセツキシマブとの2つの治療抗体から作製した。二特異体を作製するために、軽鎖対合解決策Efabを用いて抗HER抗体であるトラスツズマブをクローニングし、次にmp4重鎖ヘテロ二量体化突然変異(S364K/K409S及びK370S/V397I/F405K)を用いて抗EGFR抗体であるセツキシマブと組み合わせた。その後、抗体の2本の重鎖及び2本の軽鎖をコードする4つのプラスミド(pMP521、pMP526、pMP528及びpMP530)をCHO-S細胞において一過的なトランスフェクションによって共発現させ、結果として生じた二特異性抗体をプロテインAで精製した。この抗体は次に、可溶タイプのHER2とEGFRとの2つの抗原を使用するOctet結合性試験において使用した(
図9A及び
図9Bを参照されたい)。
図9A及び
図9Bに示されているように、二特異性抗体はその両方の抗原に同時に結合することができる。
pMP530 トラスツズマブ Efab IgG1 mp4a
【化43】
pMP528 トラスツズマブ Efab 軽鎖
【化44】
pMP521 セツキシマブ IgG1 mp4b
【化45】
pMP526 セツキシマブ カッパ
【化46】
【0136】
実施例6:軽鎖対合解決策のさらなる試験
Efabの構築をさらに最適化するために、IgEの可変ドメインとCH2ドメインとの間のリンカーをさらに調査した。先の実施例ではヒトカッパ及びCH1ドメインに由来するエルボー領域を可変ドメインとIgE CH2との間のリンカーとして使用した。しかしながら、その他のリンカー配列は潜在的に形状を変化させるかまたは異なる度合いの柔軟性を提供する可能性があり、よって鎖の正しい会合またはEfabと抗原との結合性に影響を与える可能性がある。これを試験するために、抗HER2抗体であるトラスツズマブをEfabとして操作し、軽鎖内に様々なエルボー配列を含めた。使用したリンカーは、ラムダ軽鎖もしくはヒトIgE CH2ドメインに由来するもの、または様々な長さのGly-Serリンカーであった(
図10)。EfabはCHO細胞において一過的なトランスフェクションにより(
図9に示すように)セツキシマブとの非対称IgGとして発現した。興味深いことに、様々なエルボーリンカー配列は、トラスツズマブがHER2と結合する能力にほとんど影響を与えず、どの構築物も野生型トラスツズマブFabと比べて同程度の結合性を示した。
【0137】
IgMクラスの抗体はIgEと類似したCH2ドメインを有し、それはヒンジ領域の代わりにジスルフィド架橋によって2本の重鎖を対合させる役割を果たす。それゆえ、IgM CH2ドメインを使用することでIgE CH2ドメインと同じく良好に軽鎖対合が解決されるか否かを試験した。これを試験するために、片方のFabをHSAと融合させかつもう片方のFabをGFPと融合させた状態で2つのFab(M60及びC06)を
図6Aに示されているように再び共発現させた。但し、この場合は、片方のFabのカッパ及びCH1定常ドメインをIgM CH2ドメインで置き換え、結果として生じる分子をM-Fabと命名した(
図10C)。SDS-PAGEによる鎖対合の分析は、対照において顕著に認められたM60とC06との間での軽鎖誤対合をM-Fabが解決したことを示した(
図10C)。このように、M-Fabは、軽鎖対合問題を解決する上でEfabと同様に効率的に機能すると見受けられた。
【0138】
次に、M-Fabが抗原と結合する能力を、様々なエルボー領域を軽鎖に有しているEfabと比較した。これらのEfab及びM-Fabは、抗HER2抗体トラスツズマブの可変ドメインを使用して再び構築した。M-Fab構築物の重軽鎖の成熟ペプチド配列を以下に示す。
6xHisタグを有するトラスツズマブM-fab重鎖(pMP623)のアミノ酸配列(エルボー領域を太字で示し、IgM CH2ドメインには下線を引き、6xHisをイタリック体で示す)
【化47】
トラスツズマブM-fab軽鎖(pMP596)のアミノ酸配列(エルボー領域を太字で示し、IgM CH2ドメインには下線を引いてある)
【化48-1】
【化48-2】
【0139】
Efab及びM-FabをCHO-Sにおいて(Fcのない)Fabとして発現させ、上清をOctetによるHER2との結合性の試験に使用した。この結合アッセイにおいてMfab及び様々なEfab構築物は非常に似通った結合性を示した(
図10D)。
【0140】
総じてこれらの結果は、IgM CH2ドメインをFab(M-fab)の定常ドメインとして使用することによって軽鎖対合問題が解決されかつFabの結合特性が維持されるということを示している。したがって、M-Fabはもう1つの有用な軽鎖対合解決策である。
【0141】
実施例7:重軽鎖対合技術のさらなる用途
次に、重軽鎖対合解決策を、他の様々な二特異性構成及び一価特異性構成との関連においてさらに試験して、これらの技術がどのくらい多目的かつ機能的であるかを探究した。
【0142】
第1に、Fcヘテロ二量体化突然変異を他のFc領域のCH3ドメインに導入し、結合性試験においてそのような二特異性抗体の機能性を試験した。この目的のために、Asn297においてN結合型グリコシル化を欠いておりそのためにエフェクター機能がグリコシル化IgG1と比べて低下しているIgG1 agly T299A足場の中に、mp3ヘテロ二量体突然変異(S364K/K409S及びK370S/F405K)をクローニングした。抗EGFR抗体M60-A02のEfabと、抗IGF-1R抗体M13.C06の通常のFabとを有する非対称IgGの形態でこのFc領域を有する二特異性抗体を、CHO細胞における一過的なトランスフェクションによって作った(
図11A)。結果として生じた二特異性抗体は、サンドイッチ構成型Octet結合性アッセイにおいて両リガンドに対する堅牢な同時結合性を示し(
図11B)、共発現させた4本の鎖(プラスミドpMP463、pMP402、pMP405、pMP407)から二特異性抗体が効率的に形成されたことを実証した。したがって、リジン再配置によるFcヘテロ二量体化方策はFcグリコシル化とは無関係に機能すると見受けられる。
pMP402 M60 Efab IgG1 agly T299A mp3a S364K/K409S
【化49-1】
【化49-2】
pMP405 C06 IgG1 agly T299A mp3b K370S/F405K
【化50】
【0143】
第2に、別のFc構成における重鎖ヘテロ二量体化を試験するために、非グリコシル化IgG4 CH2ドメインの最小のエフェクター機能とIgG1 CH3ドメインの安定性とを組み合わせたものであるIgG4P/IgG1 agly(N297Q)ハイブリッド定常ドメインの中に、mp4ヘテロ二量体突然変異(S364K/K409L及びK370S/V397I/F405K)をクローニングした(
図12)。このFcもヒンジ安定化突然変異S228Pを含有する。こうして、このハイブリッドIgG4P/IgG1定常ドメインと、抗HER2抗体ペルツズマブの可変ドメインと、抗IGF-1R抗体C06とを有する二特異性抗体が作製された。可変ドメインは両方の配向で、それぞれEfabとしての鎖A上または通常のFabとしての鎖B上で使用した。抗体をCHO細胞において再び生成し、プロテインA精製材料をOctet結合性試験において使用した(
図12)。興味深いことに、精製された二特異性抗体は、IGF1Rを最初に装填してその後に抗体及びHER2を装填した場合にのみ両抗原との同時結合性を示したが(
図12C)、逆の順序で試験した場合にはそれが示されず、それは可溶性抗原上のタグの位置が異なることに起因している可能性がある。
【0144】
第3に、二特異性技術をMab-Fabとの関連において検討した。二特異性抗体を構築する別の方法がMab-Fabであり、それは、重鎖のC末端に融合したFabを有しているIgGを含有する(
図13A)。この構成は、2本の同一の重鎖を有する対象分子と類似しており、Fcヘテロ二量体技術を不要にする。しかしながら、各々特有の軽鎖を含有している2つの異なるFabには軽鎖対合解決策が必要である。これとの関連においてEfabが正しい軽鎖会合を促進するように機能するか否かを試験するために、C末端に融合した抗IGF-1R抗体C06のEfabを有している、IgG1としてのトラスツズマブを使用して、Mab-Fabを構築した(
図13)。さらに、C末端に融合したトラスツズマブのEfabを有している、IgG1としてのC06の逆構築物も作製した。どちらの場合においても、単一のG4S(配列番号56)リンカーを使用してEfabの重鎖のN末端においてEfabをIgG重鎖のC末端に繋げた。Mab-Fabを、またしてもCHO一過性発現体において3つのプラスミド(1本の重鎖と2本の軽鎖、pMP759/pMP519/pMP511またはpMP760/pMP528/pMP407)の共発現によって生じさせ、プロテインAで精製した。精製した材料のSDS-PAGEによる分析は、Mab-Fabの3本の鎖が250kDaのタンパク質へと正しく会合したことを示した(
図13B)。二特異性抗体はさらに、サンドイッチOctet結合性アッセイにおいてある程度の同時結合性を示した(
図13C)。しかしながら、この同時結合性は、EfabがC06であるかトラスツズマブであるかにかかわらず、Efabを最初に結合させた場合にのみ認められ、この構成において何らかの形態の立体障害が両抗原との同時結合性に影響を与えている可能性があることを示唆していた。
pMP759 トラスツズマブ IgG1-C06 EFab
【化51-1】
【化51-2】
pMP511 C06 Efab 軽鎖
【化52】
pMP519 トラスツズマブ カッパ軽鎖
【化53-1】
【化53-2】
pMP760 C06-IgG1-トラスツズマブ Efab
【化54】
【0145】
第4に、Fcヘテロ二量体化技術は、二特異体の作製における様々な用途に加えて、単一特異性一価抗体を作製するために利用することもできる。
図3に示すような半抗体と遊離Fcとのヘテロ二量体はそのような単一特異性一価抗体の一例である。別の例は、FcにLCを直接融合して後にそれを適合する重鎖と共発現させるものである(
図14A)。この構成では軽鎖または重鎖のホモ二量体の形成を防止するためにFcヘテロ二量体化方策が必要とされる。mp4 Fcヘテロ二量体がこの種の一価単一特異性抗体の構築にも適しているか否かを試験するために、抗EGFR抗体M60-A02の可変ドメインを使用してLC-Fc融合構築物を作製した。このプラスミド(pMP533)を、対応するFcヘテロ二量体突然変異を含有するM60-A02の重鎖(プラスミドpMP254)と共にCHO細胞において発現させることによって、単一のタンパク質種が生成した(
図14B)。このタンパク質をOctet結合性試験において分析したところ、一価結合性の特徴が示された。(
図14C)。全体として、このデータは、リジン再配置によるFcヘテロ二量体化が、一価単一特異性抗体を作製する多目的かつ有効な方法であるらしいということを示している。
【0146】
最後に、IgGのFc部分を欠く二特異性抗体におけるEfab軽鎖対合解決策の使用についても試験した。そのような二特異体は例えば、2つのFabとペプチドリンカーとの直接的融合によって作製することができる(
図15A、右図)。あるいは、2つのFabを繋げるペプチドは異種タンパク質、例えばヒト血清アルブミン(HSA)であってもよい(
図15A、左図)。どちらの場合であっても、二特異体が機能するには2つのFabの重軽鎖の対合が正しいことが必要である。それゆえ、Efab軽鎖対合解決策は、二特異性分子への2つのFabのそのような融合を可能にし得る。これを試験するために、M60-A02抗体及びM13.C06抗体を再び使用し、2つのFabを両方の配向で使用して二特異体を作製した。これらの二特異体をCHO細胞において発現させた場合、それは単一のタンパク質を生成し、抗体鎖が正しく会合したことを再び示唆した(
図15B)。Octet結合性試験において抗体を試験した場合、同時結合性がまたしても1つの特定の配向でのみ認められた(
図15C)。それでもなお、本データは、通常のIgGのFcを欠く様々な構成で2つのFabから二特異体を効率的に作製するためにEfab軽鎖対合解決策を採用できることを示している。
【0147】
他の実施形態
本発明をその詳細な説明と併せて記載してきたが、上記記載は例示を意図するものであり、添付の特許請求の範囲によって定義付けられる本発明の範囲の限定を意図するものではない。他の態様、利点及び改変は、別記の請求項の範囲内である。
本発明の実施形態の例として、以下の項目が挙げられる。
(項目1)
第1重鎖可変ドメイン(第1VH)と第1軽鎖可変ドメイン(第1VL)とを含んでいる、抗体またはその抗原結合性断片であって、前記第1VHと前記第1VLとが対合して、第1抗原の第1エピトープに特異的に結合する第1可変領域を形成しており、前記第1VHが、ヒト免疫グロブリンE(IgE)のCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号1)のアミノ酸9~107と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第1ポリペプチドに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり、前記第1VLが、ヒトIgEのCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号1)のアミノ酸9~107と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第2ポリペプチドに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり、前記第1ポリペプチドと前記第2ポリペプチドとが対合して二量体を形成している、前記抗体またはその抗原結合性断片。
(項目2)
前記第1ポリペプチドがFcドメインに直接繋げられている、項目1に記載の抗体。
(項目3)
前記第2ポリペプチドがFcドメインに直接繋げられている、項目1に記載の抗体。
(項目4)
前記第1ポリペプチド及び/または前記第2ポリペプチドが、配列番号1に示すアミノ酸配列を含む、項目1~3のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
(項目5)
前記第1ポリペプチド及び/または前記第2ポリペプチドが、配列番号1に示すアミノ酸配列のアミノ酸9~107と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、項目1~3のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
(項目6)
前記第1ポリペプチド及び/または前記第2ポリペプチドが、配列番号1に示すアミノ酸配列のアミノ酸9~107を含む、項目1~3のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
(項目7)
前記第1ポリペプチドが、配列番号5に示すアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む、項目1~6のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
(項目8)
前記第1ポリペプチドが、配列番号5に示すアミノ酸配列を含む、項目1~6のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
(項目9)
前記第2ポリペプチドが、配列番号6に示すアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む、項目1~8のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
(項目10)
前記第2ポリペプチドが、配列番号6に示すアミノ酸配列を含む、項目1~8のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
(項目11)
前記第1ポリペプチド及び/または前記第2ポリペプチドが、配列番号1のアミノ酸9~107に示すアミノ酸配列とは12個以下のアミノ酸残基が異なっている、項目1~3のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
(項目12)
前記第1ポリペプチド及び/または前記第2ポリペプチドが、鎖内ジスルフィド結合を形成しない配列番号1の2つのシステイン残基のうちの少なくとも1つにおいてシステイン以外のアミノ酸を含有している、項目1~3のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
(項目13)
(i)前記第1ポリペプチド及び前記第2ポリペプチドがNグリコシル化されないように、前記第1ポリペプチド及び前記第2ポリペプチドが各々、アスパラギン及び/もしくはスレオニンもしくはセリンを除く他のアミノ酸を配列番号1のNグリコシル化モチーフ内に含有するか;または
(ii)前記第1ポリペプチドもしくは前記第2ポリペプチドがNグリコシル化されないように、前記第1ポリペプチドもしくは前記第2ポリペプチドが、アスパラギン及び/もしくはスレオニンもしくはセリンを除く他のアミノ酸を配列番号1のNグリコシル化モチーフ内に含有する、
項目1~3、項目5、項目11または項目12のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
(項目14)
前記抗体またはその抗原結合性断片が、第2重鎖可変ドメイン(第2VH)と第2軽鎖可変ドメイン(第2VL)とを含み、前記第2VHと前記第2VLとが対合して、前記第1抗原の第2エピトープまたは第2抗原に特異的に結合する第2可変領域を形成している、項目1~13のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
(項目15)
前記第2VHがCH1ドメインに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり、前記第2VLがCLドメインに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかである、項目14に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
(項目16)
第1重鎖可変ドメイン(第1VH)と第1軽鎖可変ドメイン(第1VL)とを含んでいる、抗体またはその抗原結合性断片であって、前記第1VHと前記第1VLとが対合して、第1抗原の第1エピトープに特異的に結合する第1可変領域を形成しており、前記第1VHが、ヒト免疫グロブリンM(IgM)のCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸7~112と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第1ポリペプチドに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり、前記第1VLが、ヒトIgMのCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸7~112と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第2ポリペプチドに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり、前記第1ポリペプチドと前記第2ポリペプチドとが対合して二量体を形成している、前記抗体またはその抗原結合性断片。
(項目17)
前記第1ポリペプチドがFcドメインに直接繋げられている、項目16に記載の抗体。
(項目18)
前記第2ポリペプチドがFcドメインに直接繋げられている、項目16に記載の抗体。
(項目19)
前記第1ポリペプチド及び/または前記第2ポリペプチドが、配列番号2に示すアミノ酸配列を含む、項目16~18のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
(項目20)
前記第1ポリペプチド及び/または前記第2ポリペプチドが、配列番号2に示すアミノ酸配列のアミノ酸7~112と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、項目16~18のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
(項目21)
前記第1ポリペプチド及び/または前記第2ポリペプチドが、配列番号2に示すアミノ酸配列のアミノ酸7~112を含む、項目16~18のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
(項目22)
前記第1ポリペプチド及び/または前記第2ポリペプチドが、配列番号2のアミノ酸7~112に示すアミノ酸配列とは少なくとも12個のアミノ酸残基が異なっている、項目16~18のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
(項目23)
(i)前記第1ポリペプチド及び前記第2ポリペプチドがNグリコシル化されないように、前記第1ポリペプチド及び前記第2ポリペプチドが各々、アスパラギン及び/もしくはスレオニンもしくはセリンを除く他のアミノ酸を配列番号2のNグリコシル化モチーフ内に含有するか;または
(ii)前記第1ポリペプチドもしくは前記第2ポリペプチドがNグリコシル化されないように、前記第1ポリペプチドもしくは前記第2ポリペプチドが、アスパラギン及び/もしくはスレオニンもしくはセリンを除く他のアミノ酸を配列番号2のNグリコシル化モチーフ内に含有する、
項目16~18、項目20または項目22のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
(項目24)
前記抗体またはその抗原結合性断片が、第2重鎖可変ドメイン(第2VH)と第2軽鎖可変ドメイン(第2VL)とを含み、前記第2VHと前記第2VLとが対合して、前記第1抗原の第2エピトープまたは第2抗原に特異的に結合する第2可変領域を形成している、項目16~23のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
(項目25)
前記第2VHがCH1ドメインに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり、前記第2VLがCLドメインに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかである、項目24に記載の抗体またはその抗原結合性断片
(項目26)
二特異性抗体であって、
(i)第1重鎖可変ドメイン(第1VH)と第1軽鎖可変ドメイン(第1VL)とを含んでいる第1抗原結合性断片(第1Fab)を含み、前記第1VHと前記第1VLとが対合して第1可変領域を形成しており、前記第1VHが、ヒト免疫グロブリンE(IgE)のCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号1)のアミノ酸9~107と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第1ポリペプチドに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり、前記第1VLが、ヒトIgEのCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号1)のアミノ酸9~107と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第2ポリペプチドに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり;さらに、
(ii)第2VHと第2VLとを含んでいる第2Fabを含み、前記第2VHと前記第2VLとが対合して第2可変領域を形成しており、前記第2VHがCH1ドメインに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり、前記第2VLがCLドメインに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり、
前記第1Fab及び前記第2Fabが、異なる抗原、または同じ抗原の異なるエピトープに特異的に結合するものであり、
前記第1Fabが前記第2Fabに連結されている、前記二特異性抗体。
(項目27)
前記第1Fabがリンカーによって前記第2Fabに連結されている、項目26に記載の二特異性抗体。
(項目28)
前記第1Fabが異種ポリペプチドによって前記第2Fabに連結されている、項目26に記載の二特異性抗体。
(項目29)
前記異種ポリペプチドがヒト血清アルブミンである、項目28に記載の二特異性抗体。
(項目30)
前記異種ポリペプチドがXTENである、項目28に記載の二特異性抗体。
(項目31)
前記第1Fabがポリエチレングリコール(PEG)によって前記第2Fabに連結されている、項目26に記載の二特異性抗体。
(項目32)
前記第1ポリペプチド及び/または前記第2ポリペプチドが各々、配列番号1に示すアミノ酸配列を含む、項目26~31のいずれか1項に記載の二特異性抗体。
(項目33)
前記第1ポリペプチド及び/または前記第2ポリペプチドが、配列番号1に示すアミノ酸配列のアミノ酸9~107と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、項目26~31のいずれか1項に記載の二特異性抗体。
(項目34)
前記第1ポリペプチド及び/または前記第2ポリペプチドが、配列番号1に示すアミノ酸配列のアミノ酸9~107を含む、項目26~31のいずれか1項に記載の二特異性抗体。
(項目35)
前記第1ポリペプチドが、配列番号5に示すアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む、項目26~34のいずれか1項に記載の二特異性抗体。
(項目36)
前記第1ポリペプチドが、配列番号5に示すアミノ酸配列を含む、項目26~34のいずれか1項に記載の二特異性抗体。
(項目37)
前記第2ポリペプチドが、配列番号6に示すアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む、項目26~36のいずれか1項に記載の二特異性抗体。
(項目38)
前記第2ポリペプチドが、配列番号6に示すアミノ酸配列を含む、項目26~36のいずれか1項に記載の二特異性抗体。
(項目39)
前記第1ポリペプチド及び/または前記第2ポリペプチドが、配列番号1のアミノ酸9~107に示すアミノ酸配列とは12個以下のアミノ酸残基が異なっている、項目26~31のいずれか1項に記載の二特異性抗体。
(項目40)
前記第1ポリペプチド及び/または前記第2ポリペプチドが、鎖間ジスルフィド結合を形成することができる配列番号1の2つのシステイン残基のうちの少なくとも1つにおいてシステイン以外のアミノ酸を含有している、項目26~31のいずれか1項に記載の二特異性抗体。
(項目41)
(i)前記第1ポリペプチド及び前記第2ポリペプチドがNグリコシル化されないように、前記第1ポリペプチド及び前記第2ポリペプチドが各々、アスパラギン及び/もしくはスレオニンもしくはセリンを除く他のアミノ酸を配列番号1のNグリコシル化モチーフ内に含有するか;または
(ii)前記第1ポリペプチドもしくは前記第2ポリペプチドがNグリコシル化されないように、前記第1ポリペプチドもしくは前記第2ポリペプチドが、アスパラギン及び/もしくはスレオニンもしくはセリンを除く他のアミノ酸を配列番号1のNグリコシル化モチーフ内に含有する、
項目26~31、項目33、項目39または項目40のいずれか1項に記載の二特異性抗体。
(項目42)
二特異性抗体であって、
(i)第1重鎖可変ドメイン(第1VH)と第1軽鎖可変ドメイン(第1VL)とを含んでいる第1抗原結合性断片(第1Fab)を含み、前記第1VHと前記第1VLとが対合して第1可変領域を形成しており、前記第1VHが、ヒト免疫グロブリンM(IgM)のCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸7~112と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第1ポリペプチドに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり、前記第1VLが、ヒトIgMのCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸7~112と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第2ポリペプチドに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり;さらに、
(ii)第2VHと第2VLとを含んでいる第2Fabを含み、前記第2VHと前記第2VLとが対合して第2可変領域を形成しており、前記第2VHがCH1ドメインに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり、前記第2VLがCLドメインに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり、
前記第1Fab及び前記第2Fabが、異なる抗原、または同じ抗原の異なるエピトープに特異的に結合するものであり、
前記第1Fabが前記第2Fabに連結されている、前記二特異性抗体。
(項目43)
前記第1Fabがリンカーによって前記第2Fabに連結されている、項目42に記載の二特異性抗体。
(項目44)
前記リンカーがペプチドリンカーである、項目43に記載の二特異性抗体。
(項目45)
前記第1Fabが異種ポリペプチドによって前記第2Fabに連結されている、項目42に記載の二特異性抗体。
(項目46)
前記異種ポリペプチドがヒト血清アルブミンである、項目45に記載の二特異性抗体。
(項目47)
前記異種ポリペプチドがXTENである、項目45に記載の二特異性抗体。
(項目48)
前記第1Fabがポリエチレングリコール(PEG)によって前記第2Fabに連結されている、項目42に記載の二特異性抗体。
(項目49)
前記第1ポリペプチド及び/または前記第2ポリペプチドが各々、配列番号2に示すアミノ酸配列を含む、項目42~48のいずれか1項に記載の二特異性抗体。
(項目50)
前記第1ポリペプチド及び/または前記第2ポリペプチドが、配列番号2に示すアミノ酸配列のアミノ酸7~112と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、項目42~48のいずれか1項に記載の二特異性抗体。
(項目51)
前記第1ポリペプチド及び/または前記第2ポリペプチドが、配列番号2に示すアミノ酸配列のアミノ酸7~112を含む、項目42~48のいずれか1項に記載の二特異性抗体。
(項目52)
前記第1ポリペプチド及び/または前記第2ポリペプチドが、配列番号2に示すアミノ酸配列とは少なくとも12個のアミノ酸残基が異なっている、項目42~48のいずれか1項に記載の二特異性抗体。
(項目53)
前記第1ポリペプチド及び/または前記第2ポリペプチドが、鎖間ジスルフィド結合を形成することができる配列番号2のシステイン残基においてシステイン以外のアミノ酸を含有している、項目42~48のいずれか1項に記載の二特異性抗体。
(項目54)
(i)前記第1ポリペプチド及び前記第2ポリペプチドがNグリコシル化されないように、前記第1ポリペプチド及び前記第2ポリペプチドが各々、アスパラギン及び/もしくはスレオニンもしくはセリンを除く他のアミノ酸を配列番号2のNグリコシル化モチーフ内に含有するか;または
(ii)前記第1ポリペプチドもしくは前記第2ポリペプチドがNグリコシル化されないように、前記第1ポリペプチドもしくは前記第2ポリペプチドが、アスパラギン及び/もしくはスレオニンもしくはセリンを除く他のアミノ酸を配列番号2のNグリコシル化モチーフ内に含有する、
項目42~48、項目50、項目52または項目53のいずれか1項に記載の二特異性抗体。
(項目55)
四価二特異性抗体であって、
(i)第1抗原の第1エピトープに特異的に結合する全IgG抗体を含み、前記全IgG抗体が第1CH3ドメイン及び第2CH3ドメインを含むものであり;さらに、
(ii)第1Fab及び第2Fabを含み、
前記第1Fabが第1重鎖可変ドメイン(第1VH)及び第1軽鎖可変ドメイン(第1VL)を含むものであり、前記第1VHと前記第1VLとが対合して、前記第1抗原の第2エピトープまたは第2抗原に特異的に結合する第1可変領域を形成しており、
前記第2Fabが第2重鎖可変ドメイン(第2VH)及び第2軽鎖可変ドメイン(第2VL)を含むものであり、前記第2VHと前記第2VLとが対合して、前記第1Fabと同じエピトープに特異的に結合する第2可変領域を形成しており;
前記第1VHが、ヒト免疫グロブリンE(IgE)のCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号1)のアミノ酸9~107と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第1ポリペプチドに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり、前記第1VLが、ヒトIgEのCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号1)のアミノ酸9~107と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第2ポリペプチドに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり、前記第2VHが、ヒトIgEのCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号1)のアミノ酸9~107と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第3ポリペプチドに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり、前記第2VLが、ヒトIgEのCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号1)のアミノ酸9~107と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第4ポリペプチドに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり;
前記第1Fabが前記全IgG抗体の前記第1CH3ドメインのC末端に連結されており、前記第2Fabが前記全IgG抗体の前記第2CH3ドメインのC末端に連結されている、前記四価二特異性抗体。
(項目56)
前記第1Fabが第1リンカーによって前記全抗体の前記第1CH3ドメインのC末端に連結されており、前記第2Fabが第2リンカーによって前記全抗体の前記第2CH3ドメインのC末端に連結されている、項目55に記載の四価抗体。
(項目57)
前記第1及び第2リンカーがペプチドリンカーである、項目56に記載の四価抗体。
(項目58)
前記第1ポリペプチド、前記第2ポリペプチド、前記第3ポリペプチド及び/または前記第4ポリペプチドが、配列番号1に示すアミノ酸配列を含む、項目55~57のいずれか1項に記載の四価抗体。
(項目59)
前記第1ポリペプチド、前記第2ポリペプチド、前記第3ポリペプチド及び/または前記第4ポリペプチドが、配列番号1に示すアミノ酸配列のアミノ酸9~107と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、項目55~57のいずれか1項に記載の四価抗体。
(項目60)
前記第1ポリペプチド、前記第2ポリペプチド、前記第3ポリペプチド及び/または前記第4ポリペプチドが、配列番号1に示すアミノ酸配列のアミノ酸9~107を含む、項目55~57のいずれか1項に記載の四価抗体。
(項目61)
前記第1ポリペプチド及び前記第3ポリペプチドが各々、配列番号5に示すアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む、項目55~60のいずれか1項に記載の四価抗体。
(項目62)
前記第1ポリペプチド及び前記第3ポリペプチドが各々、配列番号5に示すアミノ酸配列を含む、項目55~60のいずれか1項に記載の四価抗体。
(項目63)
前記第2ポリペプチド及び前記第4ポリペプチドが各々、配列番号6に示すアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む、項目55~62のいずれか1項に記載の四価抗体。
(項目64)
前記第2ポリペプチド及び前記第4ポリペプチドが各々、配列番号6に示すアミノ酸配列を含む、項目55~62のいずれか1項に記載の四価抗体。
(項目65)
前記第1ポリペプチド、前記第2ポリペプチド、前記第3ポリペプチド及び/または前記第4ポリペプチドが、配列番号1のアミノ酸9~107に示すアミノ酸配列とは少なくとも12個のアミノ酸残基が異なっている、項目55~57のいずれか1項に記載の四価抗体。
(項目66)
四価二特異性抗体であって、
(i)第1抗原の第1エピトープに特異的に結合する全IgG抗体を含み、前記全IgG抗体が第1CH3ドメイン及び第2CH3ドメインを含むものであり;さらに、
(ii)第1Fab及び第2Fabを含み、
前記第1Fabが第1重鎖可変ドメイン(第1VH)及び第1軽鎖可変ドメイン(第1VL)を含むものであり、前記第1VHと前記第1VLとが対合して、前記第1抗原の第2エピトープまたは第2抗原に特異的に結合する第1可変領域を形成しており、
前記第2Fabが第2重鎖可変ドメイン(第2VH)及び第2軽鎖可変ドメイン(第2VL)を含むものであり、前記第2VHと前記第2VLとが対合して、前記第1Fabと同じエピトープに特異的に結合する第2可変領域を形成しており;
前記第1VHが、ヒト免疫グロブリンM(IgM)のCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸7~112と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第1ポリペプチドに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり、前記第1VLが、ヒトIgMのCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸7~112と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第2ポリペプチドに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり、前記第2VHが、ヒトIgMのCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸7~112と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第3ポリペプチドに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり、前記第2VLが、ヒトIgMのCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸7~112と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第4ポリペプチドに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり;
前記第1Fabが前記全IgG抗体の前記第1CH3ドメインのC末端に連結されており、前記第2Fabが前記全IgG抗体の前記第2CH3ドメインのC末端に連結されている、前記四価二特異性抗体。
(項目67)
前記第1Fabが第1リンカーによって前記全抗体の前記第1CH3ドメインのC末端に連結されており、前記第2Fabが第2リンカーによって前記全抗体の前記第2CH3ドメインのC末端に連結されている、項目66に記載の四価抗体。
(項目68)
前記第1ポリペプチド、前記第2ポリペプチド、前記第3ポリペプチド及び/または前記第4ポリペプチドが各々、配列番号2に示すアミノ酸配列を含む、項目65~67のいずれか1項に記載の四価抗体。
(項目69)
前記第1ポリペプチド、前記第2ポリペプチド、前記第3ポリペプチド及び/または前記第4ポリペプチドが、配列番号2に示すアミノ酸配列のアミノ酸7~112と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、項目66または項目67に記載の四価抗体。
(項目70)
前記第1ポリペプチド、前記第2ポリペプチド、前記第3ポリペプチド及び/または前記第4ポリペプチドが、配列番号2に示すアミノ酸配列のアミノ酸7~112を含む、項目66または項目67に記載の四価抗体。
(項目71)
前記第1ポリペプチド、前記第2ポリペプチド、前記第3ポリペプチド及び/または前記第4ポリペプチドが、配列番号2のアミノ酸7~112に示すアミノ酸配列とは少なくとも12個のアミノ酸残基が異なっている、項目66または項目67に記載の四価抗体。
(項目72)
四価二特異性抗体であって、
(i)第1Fab及び第2Fabを含み、
前記第1Fabが第1重鎖可変ドメイン(第1VH)及び第1軽鎖可変ドメイン(第1VL)を含むものであり、前記第1VHと前記第1VLとが対合して、第1抗原の第1エピトープに特異的に結合する第1可変領域を形成しており、
前記第2Fabが第2重鎖可変ドメイン(第2VH)及び第2軽鎖可変ドメイン(第2VL)を含むものであり、前記第2VHと前記第2VLとが対合して、前記第1抗原の前記第1エピトープに特異的に結合する第2可変領域を形成しており;さらに、
(ii)第1IgG CH2ドメイン及び第1IgG CH3ドメインを含んでいる第1重鎖と、第2IgG CH2ドメイン及び第2IgG CH3ドメインを含んでいる第2重鎖と、第1軽鎖と、第2軽鎖とを含む、全抗体を含み、前記抗体が第3VH及び第3VLならびに第4VH及び第4VLを含むものであり、前記第3VHと前記第3VLとが対合して、第2抗原のエピトープに特異的に結合する第3可変領域を形成しており、前記第4VHと前記第4VLとが対合して、前記第2抗原の同じエピトープに特異的に結合する第4可変領域を形成しており、
前記第3VHが、ヒト免疫グロブリンE(IgE)のCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号1)のアミノ酸9~107と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第1ポリペプチドに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり、前記第3VLが、ヒトIgEのCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号1)のアミノ酸9~107と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第2ポリペプチドに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり、前記第4VHが、ヒトIgEのCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号1)のアミノ酸9~107と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第3ポリペプチドに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり、前記第4VLが、ヒトIgEのCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号1)のアミノ酸9~107と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第4ポリペプチドに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり、前記第1ポリペプチドが前記第1IgG CH2ドメインのN末端に連結されており、前記第3ポリペプチドが前記第2IgG CH2ドメインのN末端に連結されており;
前記第1Fabが前記第1IgG CH3ドメインのC末端に連結されており、前記第2Fabが前記第2IgG CH3ドメインのC末端に連結されている、前記四価二特異性抗体。
(項目73)
前記第1Fabが第1リンカーによって前記第1IgG CH3ドメインのC末端に連結されており、前記第2Fabが第2リンカーによって前記第2IgG CH3ドメインのC末端に連結されている、項目72に記載の四価抗体。
(項目74)
前記第1及び第2リンカーがペプチドリンカーである、項目73に記載の四価抗体。
(項目75)
前記第1ポリペプチド、前記第2ポリペプチド、前記第3ポリペプチド及び/または前記第4ポリペプチドが、配列番号1に示すアミノ酸配列を含む、項目72~74のいずれか1項に記載の四価抗体。
(項目76)
前記第1ポリペプチド、前記第2ポリペプチド、前記第3ポリペプチド及び/または前記第4ポリペプチドが、配列番号1に示すアミノ酸配列のアミノ酸9~107と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、項目72~74のいずれか1項に記載の四価抗体。
(項目77)
前記第1ポリペプチド、前記第2ポリペプチド、前記第3ポリペプチド及び/または前記第4ポリペプチドが、配列番号1に示すアミノ酸配列のアミノ酸9~107を含む、項目72~74のいずれか1項に記載の四価抗体。
(項目78)
前記第1ポリペプチド及び/または前記第3ポリペプチドが、配列番号5に示すアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む、項目72~77のいずれか1項に記載の四価抗体。
(項目79)
前記第1ポリペプチド及び/または前記第3ポリペプチドが、配列番号5に示すアミノ酸配列を含む、項目72~77のいずれか1項に記載の四価抗体。
(項目80)
前記第2ポリペプチド及び/または前記第4ポリペプチドが、配列番号6に示すアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む、項目72~79のいずれか1項に記載の四価抗体。
(項目81)
前記第2ポリペプチド及び/または前記第4ポリペプチドが、配列番号6に示すアミノ酸配列を含む、項目72~79のいずれか1項に記載の四価抗体。
(項目82)
前記第1ポリペプチド、前記第2ポリペプチド、前記第3ポリペプチド及び/または前記第4ポリペプチドが、配列番号1に示すアミノ酸配列とは少なくとも12個のアミノ酸残基が異なっている、項目72~74のいずれか1項に記載の四価抗体。
(項目83)
四価二特異性抗体であって、
(i)第1Fab及び第2Fabを含み、
前記第1Fabが第1重鎖可変ドメイン(第1VH)及び第1軽鎖可変ドメイン(第1VL)を含むものであり、前記第1VHと前記第1VLとが対合して、第1抗原の第1エピトープに特異的に結合する第1可変領域を形成しており、
前記第2Fabが第2重鎖可変ドメイン(第2VH)及び第2軽鎖可変ドメイン(第2VL)を含むものであり、前記第2VHと前記第2VLとが対合して、前記第1抗原の前記第1エピトープに特異的に結合する第2可変領域を形成しており;さらに、
(ii)第1IgG CH2ドメイン及び第1IgG CH3ドメインを含んでいる第1重鎖と、第2IgG CH2ドメイン及び第2IgG CH3ドメインを含んでいる第2重鎖と、第1軽鎖と、第2軽鎖とを含む、全抗体を含み、前記抗体が第3VH及び第3VLならびに第4VH及び第4VLを含むものであり、前記第3VHと前記第3VLとが対合して、第2抗原のエピトープに特異的に結合する第3可変領域を形成しており、前記第4VHと前記第4VLとが対合して、前記第2抗原の同じエピトープに特異的に結合する第4可変領域を形成しており、
前記第3VHが、ヒト免疫グロブリンM(IgM)のCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸7~112と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第1ポリペプチドに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり、前記第3VLが、ヒトIgMのCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸7~112と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第2ポリペプチドに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり、前記第4VHが、ヒトIgMのCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸7~112と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第3ポリペプチドに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり、前記第4VLが、ヒトIgMのCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸7~112と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第4ポリペプチドに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり、前記第1ポリペプチドが前記第1IgG CH2ドメインのN末端に連結されており、前記第3ポリペプチドが前記第2IgG CH2ドメインのN末端に連結されており;
前記第1Fabが前記第1IgG CH3ドメインのC末端に連結されており、前記第2Fabが前記第2IgG CH3ドメインのC末端に連結されている、前記四価二特異性抗体。
(項目84)
前記第1Fabが第1リンカーによって前記第1IgG CH3ドメインのC末端に連結されており、前記第2Fabが第2リンカーによって前記第2IgG CH3ドメインのC末端に連結されている、項目83に記載の四価抗体。
(項目85)
前記第1及び第2リンカーがペプチドリンカーである、項目84に記載の四価抗体。
(項目86)
前記第1ポリペプチド、前記第2ポリペプチド、前記第3ポリペプチド及び/または前記第4ポリペプチドが、配列番号2に示すアミノ酸配列を含む、項目83~85のいずれか1項に記載の四価抗体。
(項目87)
前記第1ポリペプチド、前記第2ポリペプチド、前記第3ポリペプチド及び/または前記第4ポリペプチドが、配列番号2に示すアミノ酸配列のアミノ酸7~112と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、項目83~85のいずれか1項に記載の四価抗体。
(項目88)
前記第1ポリペプチド、前記第2ポリペプチド、前記第3ポリペプチド及び/または前記第4ポリペプチドが、配列番号2に示すアミノ酸配列のアミノ酸7~112を含む、項目83~85のいずれか1項に記載の四価抗体。
(項目89)
前記第1ポリペプチド、前記第2ポリペプチド、前記第3ポリペプチド及び/または前記第4ポリペプチドが、配列番号2に示すアミノ酸配列とは少なくとも12個のアミノ酸残基が異なっている、項目83~85のいずれか1項に記載の四価抗体。
(項目90)
ヘテロ二量体化モジュールであって、
(i)配列番号11に示す配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する第1IgG1 CH3ドメインを含み、位置364及び370のアミノ酸がリジンであり、位置409のアミノ酸がセリンであり;さらに、
(ii)配列番号11に示す配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する第2IgG1 CH3ドメインを含み、位置370のアミノ酸がセリンであり、位置405及び409のアミノ酸がリジンであり、
(i)及び(ii)においてアミノ酸位置がEU付番方式に基づくものであり、
前記第1IgG1 CH3ドメインと前記第2IgG1 CH3とが対合してヘテロ二量体を形成している、前記ヘテロ二量体化モジュール。
(項目91)
第1IgG1 CH2ドメイン及び第2IgG1 CH2ドメインをさらに含み、前記第1IgG1 CH2ドメインが前記第1IgG1 CH3ドメインのN末端に(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり、前記第2IgG1 CH2ドメインが前記第2IgG1 CH3ドメインのN末端に(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかである、項目90に記載のヘテロ二量体化モジュール。
(項目92)
2本のポリペプチド鎖を含んでいる第1Fabをさらに含み、前記Fabの前記2本のポリペプチド鎖のうちの1本のC末端が、第1ヒンジ領域のN末端に繋げられており、前記第1ヒンジ領域が前記第1IgG1 CH2ドメインのN末端に繋げられている、項目91に記載のヘテロ二量体化モジュール。
(項目93)
前記第1IgG1 CH3ドメインのC末端と、前記第2IgG1 CH2ドメインのN末端に繋げられた第2ヒンジ領域のN末端とを繋げるリンカーをさらに含む、項目92に記載のヘテロ二量体化モジュール。
(項目94)
第2ヒンジ領域を介して前記第2IgG1 CH2ドメインのN末端に繋げられた第2Fabをさらに含む、項目92に記載のヘテロ二量体化モジュール。
(項目95)
VHドメイン、CH1ドメイン、VLドメイン及びCLドメインをさらに含み、(i)前記VHドメインのC末端がCH1ドメインのN末端に繋げられており、前記CH1ドメインのC末端が第1ヒンジ領域のN末端に繋げられており、前記第1ヒンジ領域のC末端が、前記第1IgG1 CH3ドメインに直接繋げられた前記第1IgG1 CH2ドメインのN末端に繋げられており、(ii)前記VLドメインのC末端が前記CLドメインのN末端に繋げられており、前記CLドメインのC末端が第2ヒンジ領域のN末端に繋げられており、前記第2ヒンジ領域のC末端が、前記第2IgG1 CH3ドメインに直接繋げられた前記第2IgG1 CH2ドメインのN末端に繋げられており、(iii)前記VHドメインと前記VLドメインとが対合して、抗原に特異的に結合する可変領域を形成している、項目91に記載のヘテロ二量体化モジュール。
(項目96)
第1VH及び第1VLならびに第2VH及び第2VLをさらに含み、前記第1VHと前記第1VLとが対合して、第1抗原に特異的に結合する第1可変領域を形成しており、前記第2VHと前記第2VLとが対合して、前記第1抗原の別のエピトープまたは第2抗原に特異的に結合する第2可変領域を形成している、項目91に記載のヘテロ二量体化モジュール。
(項目97)
前記第1VLのアミノ酸配列が前記第2VLのアミノ酸配列と同一である、項目96に記載のヘテロ二量体化モジュール。
(項目98)
第1IgG4 CH2ドメイン及び第2IgG4 CH2ドメインをさらに含み、前記第1IgG4 CH2ドメインが前記第1IgG1 CH3ドメインのN末端に(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり、前記第2IgG4 CH2ドメインが、前記第2IgG1 CH3ドメインのN末端に(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかである、項目90に記載のヘテロ二量体化モジュール。
(項目99)
2本のポリペプチド鎖を含んでいる第1Fabをさらに含み、前記Fabの前記2本のポリペプチド鎖のうちの1本のC末端が、第1IgG4ヒンジ領域のN末端に繋げられており、前記第1IgG4ヒンジ領域が第1IgG4 CH2ドメインのN末端に繋げられている、項目98に記載のヘテロ二量体化モジュール。
(項目100)
前記第1IgG4ヒンジ領域がS228P突然変異(EU付番)を含む、項目99に記載のヘテロ二量体化モジュール。
(項目101)
前記第1IgG1 CH3ドメインのC末端と、前記第2IgG4 CH2ドメインのN末端に繋げられた第2IgG4ヒンジ領域のN末端とを繋げるリンカーをさらに含む、項目98に記載のヘテロ二量体化モジュール。
(項目102)
前記第2IgG4ヒンジ領域がS228P突然変異(EU付番)を含む、項目101に記載のヘテロ二量体化モジュール。
(項目103)
第2IgG4ヒンジ領域を介して前記第2IgG4 CH2ドメインのN末端に繋げられた第2Fabをさらに含む、項目99に記載のヘテロ二量体化モジュール。
(項目104)
前記第2IgG4ヒンジ領域がS228P突然変異(EU付番)を含む、項目103に記載のヘテロ二量体化モジュール。
(項目105)
VHドメイン、CH1ドメイン、VLドメイン及びCLドメインをさらに含み、(i)前記VHドメインのC末端が前記CH1ドメインのN末端に繋げられており、前記CH1ドメインのC末端が第1IgG4ヒンジ領域のN末端に繋げられており、前記第1IgG4ヒンジ領域のC末端が、前記第1IgG1 CH3ドメインに直接繋げられた前記第1IgG4 CH2ドメインのN末端に繋げられており、(ii)前記VLドメインのC末端がCLドメインのN末端に繋げられており、前記CLドメインのC末端が第2IgG4ヒンジ領域のN末端に繋げられており、前記第2IgG4ヒンジ領域のC末端が、前記第2IgG1 CH3ドメインに直接繋げられた前記第2IgG4 CH2ドメインのN末端に繋げられており、(iii)前記VHドメインと前記VLドメインとが対合して、抗原に特異的に結合する可変領域を形成している、項目98に記載のヘテロ二量体化モジュール。
(項目106)
前記第1IgG4ヒンジ領域及び前記第2IgG4ヒンジ領域が各々、S228P突然変異(EU付番)を含む、項目105に記載のヘテロ二量体化モジュール。
(項目107)
第1VH及び第1VLならびに第2VH及び第2VLをさらに含み、前記第1VHと前記第1VLとが対合して、第1抗原に特異的に結合する第1可変領域を形成しており、前記第2VHと前記第2VLとが対合して、前記第1抗原の別のエピトープまたは第2抗原に特異的に結合する第2可変領域を形成している、項目98に記載のヘテロ二量体化モジュール。
(項目108)
前記第1VLのアミノ酸配列が前記第2VLのアミノ酸配列と同一である、項目107に記載のヘテロ二量体化モジュール。
(項目109)
ヘテロ二量体化モジュールであって、
(i)配列番号11に示す配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する第1IgG1 CH3ドメインを含み、位置364及び370のアミノ酸がリジンであり、位置409のアミノ酸がロイシンであり;さらに、
(ii)配列番号11に示す配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する第2IgG1 CH3ドメインを含み、位置370のアミノ酸がセリンであり、位置397のアミノ酸がイソロイシンであり、位置405及び409のアミノ酸がリジンであり、
(i)及び(ii)においてアミノ酸位置がEU付番方式に基づくものであり、
前記第1IgG1 CH3ドメインと前記第2IgG1 CH3とが対合してヘテロ二量体を形成している、前記ヘテロ二量体化モジュール。
(項目110)
第1IgG1 CH2ドメイン及び第2IgG1 CH2ドメインをさらに含み、前記第1IgG1 CH2ドメインが前記第1IgG1 CH3ドメインのN末端に(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり、前記第2IgG1 CH2ドメインが前記第2IgG1 CH3ドメインのN末端に(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかである、項目109に記載のヘテロ二量体化モジュール。
(項目111)
第1IgG1 CH2ドメイン及び第2IgG1 CH2ドメインをさらに含み、前記第1IgG1 CH2ドメインが前記第1IgG1 CH3ドメインのN末端に直接繋げられており、前記第2IgG1 CH2ドメインが前記第2IgG1 CH3ドメインのN末端に直接繋げられている、項目110に記載のヘテロ二量体化モジュール。
(項目112)
2本のポリペプチド鎖を含んでいる第1Fabをさらに含み、前記Fabの前記2本のポリペプチド鎖のうちの1本のC末端が、第1ヒンジ領域のN末端に繋げられており、前記第1ヒンジ領域が前記第1IgG1 CH2ドメインのN末端に繋げられている、項目110に記載のヘテロ二量体化モジュール。
(項目113)
前記第1IgG1 CH3ドメインのC末端と、第2IgG1 CH2ドメインのN末端に繋げられた第2ヒンジ領域のN末端とを繋げるリンカーをさらに含む、項目112に記載のヘテロ二量体化モジュール。
(項目114)
第2ヒンジ領域を介して前記第2IgG1 CH2ドメインのN末端に繋げられた第2Fabをさらに含む、項目112に記載のヘテロ二量体化モジュール。
(項目115)
VHドメイン、CH1ドメイン、VLドメイン及びCLドメインをさらに含み、(i)前記VHドメインのC末端がCH1ドメインのN末端に繋げられており、前記CH1ドメインのC末端が第1ヒンジ領域のN末端に繋げられており、前記第1ヒンジ領域のC末端が、前記第1IgG1 CH3ドメインに直接繋げられた前記第1IgG1 CH2ドメインのN末端に繋げられており、(ii)前記VLドメインのC末端が前記CLドメインのN末端に繋げられており、前記CLドメインのC末端が前記第2ヒンジ領域のN末端に繋げられており、前記第2ヒンジ領域のC末端が、前記第2IgG1 CH3ドメインに直接繋げられた前記第2IgG1 CH2ドメインのN末端に繋げられており、(iii)前記VHドメインと前記VLドメインとが対合して、抗原に特異的に結合する可変領域を形成している、項目110に記載のヘテロ二量体化モジュール。
(項目116)
第1VH及び第1VLならびに第2VH及び第2VLをさらに含み、前記第1VHと前記第1VLとが対合して、第1抗原に特異的に結合する第1可変領域を形成しており、前記第2VHと前記第2VLとが対合して、前記第1抗原の別のエピトープまたは第2抗原に特異的に結合する第2可変領域を形成している、項目110に記載のヘテロ二量体化モジュール。
(項目117)
前記第1VLのアミノ酸配列が前記第2VLのアミノ酸配列と同一である、項目116に記載のヘテロ二量体化モジュール。
(項目118)
第1IgG4 CH2ドメイン及び第2IgG4 CH2ドメインをさらに含み、前記第1IgG4 CH2ドメインが前記第1IgG1 CH3ドメインのN末端に(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり、前記第2IgG4 CH2ドメインが前記第2IgG1 CH3ドメインのN末端に(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかである、項目109に記載のヘテロ二量体化モジュール。
(項目119)
2本のポリペプチド鎖を含んでいる第1Fabをさらに含み、前記Fabの前記2本のポリペプチド鎖のうちの1本のC末端が、第1IgG4ヒンジ領域のN末端に繋げられており、前記第1IgG4ヒンジ領域が前記第1IgG4 CH2ドメインのN末端に繋げられている、項目118に記載のヘテロ二量体化モジュール。
(項目120)
前記第1IgG4ヒンジ領域がS228P突然変異(EU付番)を含む、項目119に記載のヘテロ二量体化モジュール。
(項目121)
前記第1IgG1 CH3ドメインのC末端と、前記第2IgG4 CH2ドメインのN末端に繋げられた第2IgG4ヒンジ領域のN末端とを繋げるリンカーをさらに含む、項目118に記載のヘテロ二量体化モジュール。
(項目122)
前記第2IgG4ヒンジ領域がS228P突然変異(EU付番)を含む、項目121に記載のヘテロ二量体化モジュール。
(項目123)
第2IgG4ヒンジ領域を介して前記第2IgG4 CH2ドメインのN末端に繋げられた第2Fabをさらに含む、項目119に記載のヘテロ二量体化モジュール。
(項目124)
前記第2IgG4ヒンジ領域がS228P突然変異(EU付番)を含む、項目123に記載のヘテロ二量体化モジュール。
(項目125)
VHドメイン、CH1ドメイン、VLドメイン及びCLドメインをさらに含み、(i)前記VHドメインのC末端が前記CH1ドメインのN末端に繋げられており、前記CH1ドメインのC末端が第1IgG4ヒンジ領域のN末端に繋げられており、前記第1IgG4ヒンジ領域のC末端が、前記第1IgG1 CH3ドメインに直接繋げられた前記第1IgG4 CH2ドメインのN末端に繋げられており、(ii)前記VLドメインのC末端が前記CLドメインのN末端に繋げられており、前記CLドメインのC末端が第2IgG4ヒンジ領域のN末端に繋げられており、前記第2IgG4ヒンジ領域のC末端が、前記第2IgG1 CH3ドメインに直接繋げられた前記第2IgG4 CH2ドメインのN末端に繋げられており、(iii)前記VHドメインと前記VLドメインとが対合して、抗原に特異的に結合する可変領域を形成している、項目118に記載のヘテロ二量体化モジュール。
(項目126)
前記第1IgG4ヒンジ領域及び前記第2IgG4ヒンジ領域が各々、S228P突然変異(EU付番)を含む、項目125に記載のヘテロ二量体化モジュール。
(項目127)
第1VH及び第1VLならびに第2VH及び第2VLをさらに含み、
前記第1VHと前記第1VLとが対合して、第1抗原に特異的に結合する第1可変領域を形成しており、前記第2VHと前記第2VLとが対合して、前記第1抗原の別のエピトープまたは第2抗原に特異的に結合する第2可変領域を形成している、項目118に記載のヘテロ二量体化モジュール。
(項目128)
前記第1VLのアミノ酸配列が前記第2VLのアミノ酸配列と同一である、項目127に記載のヘテロ二量体化モジュール。
(項目129)
二特異性抗体であって、
(i)第1VH及び第1VLを含み、前記第1VHと前記第1VLとが対合して、第1抗原の第1エピトープに特異的に結合する第1可変領域を形成しており、前記第1VHが、ヒト免疫グロブリンE(IgE)のCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号1)のアミノ酸9~107と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第1ポリペプチドに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり、前記第1VLが、ヒトIgEのCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号1)のアミノ酸9~107と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第2ポリペプチドに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり、前記第1ポリペプチドと前記第2ポリペプチドとが対合して二量体を形成しており;
(ii)第2VH及び第2VLを含み、前記第2VHと前記第2VLとが対合して、前記第1抗原の第2エピトープまたは第2抗原に特異的に結合する第2可変領域を形成しており、前記第2VHがCH1ドメインに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり、前記第2VLがCLドメインに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり、前記CH1ドメインと前記CLドメインとが対合して二量体を形成しており;さらに、
(iii)ヘテロ二量体化モジュールであって、
(a)配列番号11に示す配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する第1IgG1 CH3ドメインを含み、位置364及び370のアミノ酸がリジンであり、位置409のアミノ酸がロイシンであり;さらに
(b)配列番号11に示す配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する第2IgG1 CH3ドメインを含み、位置370のアミノ酸がセリンであり、位置405及び409のアミノ酸がリジンであり、
(a)及び(b)において前記アミノ酸位置がEU付番方式に基づくものである、前記ヘテロ二量体化モジュール
を含む、前記二特異性抗体。
(項目130)
二特異性抗体であって、
(i)第1VH及び第1VLを含み、前記第1VHと前記第1VLとが対合して、第1抗原の第1エピトープに特異的に結合する第1可変領域を形成しており、前記第1VHが、ヒト免疫グロブリンE(IgE)のCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号1)のアミノ酸9~107と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第1ポリペプチドに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり、前記第1VLが、ヒトIgEのCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号1)のアミノ酸9~107と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第2ポリペプチドに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり、前記第1ポリペプチドと前記第2ポリペプチドとが対合して二量体を形成しており;そして、
(ii)第2VH及び第2VLを含み、前記第2VHと前記第2VLとが対合して、前記第1抗原の第2エピトープまたは第2抗原に特異的に結合する第2可変領域を形成しており、前記第2VHがCH1ドメインに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり、前記第2VLがCLドメインに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり、前記CH1ドメインと前記CLドメインとが対合して二量体を形成しており;さらに、
(iii)ヘテロ二量体化モジュールであって、
(a)配列番号11に示す配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する第1IgG1 CH3ドメインを含み、位置364及び370のアミノ酸がリジンであり、位置409のアミノ酸がロイシンであり;さらに
(b)配列番号11に示す配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する第2IgG1 CH3ドメインを含み、位置370のアミノ酸がセリンであり、位置397のアミノ酸がイソロイシンであり、位置405及び409のアミノ酸がリジンであり、
(a)及び(b)において前記アミノ酸位置がEU付番方式に基づくものである、前記ヘテロ二量体化モジュール
を含む、前記二特異性抗体。
(項目131)
2つのIgG1 CH2ドメインをさらに含む、項目129または項目130に記載の二特異性抗体。
(項目132)
2つのIgG4 CH2ドメインをさらに含む、項目129または項目130に記載の二特異性抗体。
(項目133)
単一のポリペプチド鎖が前記第1VHと前記第1ポリペプチドと前記第1IgG1 CH3ドメインとを含む、項目129~132のいずれか1項に記載の二特異性抗体。
(項目134)
単一のポリペプチド鎖が前記第1VHと前記第1ポリペプチドと前記第2IgG1 CH3ドメインとを含む、項目129~132のいずれか1項に記載の二特異性抗体。
(項目135)
単一のポリペプチド鎖が前記第1VLと前記第2ポリペプチドと前記第1IgG1 CH3ドメインとを含む、項目129~132のいずれか1項に記載の二特異性抗体。
(項目136)
単一のポリペプチド鎖が前記第1VLと前記第2ポリペプチドと前記第2IgG1 CH3ドメインとを含む、項目129~132のいずれか1項に記載の二特異性抗体。
(項目137)
別の単一のポリペプチド鎖が前記第2VHと前記CH1ドメインと前記第2IgG1 CH3ドメインとを含む、項目133に記載の二特異性抗体。
(項目138)
別の単一のポリペプチド鎖が前記第2VHと前記CH1ドメインと前記第1IgG1 CH3ドメインとを含む、項目134に記載の二特異性抗体。
(項目139)
別の単一のポリペプチド鎖が前記第2VLと前記CLドメインと前記第2IgG1 CH3ドメインとを含む、項目135に記載の二特異性抗体。
(項目140)
別の単一のポリペプチド鎖が前記第2VLと前記CLドメインと前記第1IgG1 CH3ドメインとを含む、項目136に記載の二特異性抗体。
(項目141)
前記第1ポリペプチド及び/または前記第2ポリペプチドが、配列番号1に示すアミノ酸配列を含む、項目129~140のいずれか1項に記載の二特異性抗体。
(項目142)
前記第1ポリペプチド及び/または前記第2ポリペプチドが、配列番号1に示すアミノ酸配列のアミノ酸9~107と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、項目129~140のいずれか1項に記載の二特異性抗体。
(項目143)
前記第1ポリペプチド及び/または前記第2ポリペプチドが、配列番号1に示すアミノ酸配列のアミノ酸9~107を含む、項目129~140のいずれか1項に記載の二特異性抗体。
(項目144)
前記第1ポリペプチドが、配列番号5に示すアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む、項目129~140のいずれか1項に記載の二特異性抗体。
(項目145)
前記第1ポリペプチドが、配列番号5に示すアミノ酸配列を含む、項目129~140のいずれか1項に記載の二特異性抗体。
(項目146)
前記第2ポリペプチドが、配列番号6に示すアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む、項目129~145のいずれか1項に記載の二特異性抗体。
(項目147)
前記第2ポリペプチドが、配列番号6に示すアミノ酸配列を含む、項目129~145のいずれか1項に記載の二特異性抗体。
(項目148)
前記第1ポリペプチド及び/または前記第2ポリペプチドが、配列番号1に示すアミノ酸配列とは少なくとも12個のアミノ酸残基が異なっている、項目129~140のいずれか1項に記載の二特異性抗体。
(項目149)
前記第1ポリペプチド及び前記第2ポリペプチドが各々、鎖内ジスルフィド結合を形成しない配列番号1の2つのシステイン残基のうちの少なくとも1つにおいてシステイン以外のアミノ酸を含有している、項目129~140のいずれか1項に記載の二特異性抗体。
(項目150)
(i)前記第1ポリペプチド及び前記第2ポリペプチドがNグリコシル化されないように、前記第1ポリペプチド及び前記第2ポリペプチドが各々、アスパラギン及び/もしくはスレオニンもしくはセリンを除く他のアミノ酸を配列番号1のNグリコシル化モチーフ内に含有するか;または、
(ii)前記第1ポリペプチドもしくは前記第2ポリペプチドがNグリコシル化されないように、前記第1ポリペプチドもしくは前記第2ポリペプチドが、アスパラギン及び/もしくはスレオニンもしくはセリンを除く他のアミノ酸を配列番号1のNグリコシル化モチーフ内に含有する、
項目129~140または項目142のいずれか1項に記載の二特異性抗体。
(項目151)
二特異性抗体であって、
(i)第1VH及び第1VLを含み、前記第1VHと前記第1VLとが対合して、第1抗原の第1エピトープに特異的に結合する第1可変領域を形成しており、前記第1VHが、ヒト免疫グロブリンM(IgM)のCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸7~112と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第1ポリペプチドに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり、前記第1VLが、ヒトIgMのCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸7~112と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第2ポリペプチドに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり、前記第1ポリペプチドと前記第2ポリペプチドとが対合して二量体を形成しており;そして、
(ii)第2VH及び第2VLを含み、前記第2VHと前記第2VLとが対合して、前記第1抗原の第2エピトープまたは第2抗原に特異的に結合する第2可変領域を形成しており、前記第2VHがCH1ドメインに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり、前記第2VLがCLドメインに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり、前記CH1ドメインと前記CLドメインとが対合して二量体を形成しており;さらに、
(iii)ヘテロ二量体化モジュールであって、
(a)配列番号11に示す配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する第1IgG1 CH3ドメインを含み、位置364及び370のアミノ酸がリジンであり、位置409のアミノ酸がセリンであり;さらに
(b)配列番号11に示す配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する第2IgG1 CH3ドメインを含み、位置370のアミノ酸がセリンであり、位置405及び409のアミノ酸がリジンであり、
(a)及び(b)において前記アミノ酸位置がEU付番方式に基づくものである、前記ヘテロ二量体化モジュール
を含む、前記二特異性抗体。
(項目152)
二特異性抗体であって、
(i)第1VH及び第1VLを含み、前記第1VHと前記第1VLとが対合して、第1抗原の第1エピトープに特異的に結合する第1可変領域を形成しており、前記第1VHが、ヒト免疫グロブリンM(IgM)のCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸7~112と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第1ポリペプチドに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり、前記第1VLが、ヒトIgMのCH2ドメインのアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸7~112と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含んでいる第2ポリペプチドに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり、前記第1ポリペプチドと前記第2ポリペプチドとが対合して二量体を形成しており;
(ii)第2VH及び第2VLを含み、前記第2VHと前記第2VLとが対合して、前記第1抗原の第2エピトープまたは第2抗原に特異的に結合する第2可変領域を形成しており、前記第2VHがCH1ドメインに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり、前記第2VLがCLドメインに(i)直接繋げられているかまたは(ii)リンカーを介して繋げられているかのどちらかであり、前記CH1ドメインと前記CLドメインとが対合して二量体を形成しており;さらに、
(iii)ヘテロ二量体化モジュールであって、
(a)配列番号11に示す配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する第1IgG1 CH3ドメインを含み、位置364及び370のアミノ酸がリジンであり、位置409のアミノ酸がロイシンであり;さらに
(b)配列番号11に示す配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する第2IgG1 CH3ドメインを含み、位置370のアミノ酸がセリンであり、位置397のアミノ酸がイソロイシンであり、位置405及び409のアミノ酸がリジンであり、
(a)及び(b)において前記アミノ酸位置がEU付番方式に基づくものである、前記ヘテロ二量体化モジュール
を含む、前記二特異性抗体。
(項目153)
2つのIgG1 CH2ドメインをさらに含む、項目151または項目152に記載の二特異性抗体。
(項目154)
2つのIgG4 CH2ドメインをさらに含む、項目151または項目152に記載の二特異性抗体。
(項目155)
単一のポリペプチド鎖が前記第1VHと前記第1ポリペプチドと前記第1IgG1 CH3ドメインとを含む、項目151~154のいずれか1項に記載の二特異性抗体。
(項目156)
単一のポリペプチド鎖が前記第1VHと前記第1ポリペプチドと前記第2IgG1 CH3ドメインとを含む、項目151~154のいずれか1項に記載の二特異性抗体。
(項目157)
単一のポリペプチド鎖が前記第1VLと前記第2ポリペプチドと前記第1IgG1 CH3ドメインとを含む、項目151~154のいずれか1項に記載の二特異性抗体。
(項目158)
単一のポリペプチド鎖が前記第1VLと前記第2ポリペプチドと前記第2IgG1 CH3ドメインとを含む、項目151~154のいずれか1項に記載の二特異性抗体。
(項目159)
別の単一のポリペプチド鎖が前記第2VHと前記CH1ドメインと前記第2IgG1 CH3ドメインとを含む、項目155に記載の二特異性抗体。
(項目160)
別の単一のポリペプチド鎖が前記第2VHと前記CH1ドメインと前記第1IgG1 CH3ドメインとを含む、項目156に記載の二特異性抗体。
(項目161)
別の単一のポリペプチド鎖が前記第2VLと前記CLドメインと前記第2IgG1 CH3ドメインとを含む、項目157に記載の二特異性抗体。
(項目162)
別の単一のポリペプチド鎖が前記第2VLと前記CLドメインと前記第1IgG1 CH3ドメインとを含む、項目158に記載の二特異性抗体。
(項目163)
前記第1ポリペプチド及び/または前記第2ポリペプチドが、配列番号2に示すアミノ酸配列を含む、項目151~162のいずれか1項に記載の二特異性抗体。
(項目164)
前記第1ポリペプチド及び/または前記第2ポリペプチドが、配列番号2に示すアミノ酸配列のアミノ酸7~112と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、項目151~162のいずれか1項に記載の二特異性抗体。
(項目165)
前記第1ポリペプチド及び/または前記第2ポリペプチドが、配列番号2に示すアミノ酸配列のアミノ酸7~112を含む、項目151~162のいずれか1項に記載の二特異性抗体。
(項目166)
前記第1ポリペプチド及び/または前記第2ポリペプチドが、配列番号2に示すアミノ酸配列とは少なくとも12個のアミノ酸残基が異なっている、項目151~162のいずれか1項に記載の二特異性抗体。
(項目167)
前記第1ポリペプチド及び前記第2ポリペプチドが各々、鎖内ジスルフィド結合を形成しない配列番号2のシステイン残基においてシステイン以外のアミノ酸を含有している、項目151~162のいずれか1項に記載の二特異性抗体。
(項目168)
(i)前記第1ポリペプチド及び前記第2ポリペプチドがNグリコシル化されないように、前記第1ポリペプチド及び前記第2ポリペプチドが各々、アスパラギン及び/もしくはスレオニンもしくはセリンを除く他のアミノ酸を配列番号2のNグリコシル化モチーフ内に含有するか;または、
(ii)前記第1ポリペプチドもしくは前記第2ポリペプチドがNグリコシル化されないように、前記第1ポリペプチドもしくは前記第2ポリペプチドが、アスパラギン及び/もしくはスレオニンもしくはセリンを除く他のアミノ酸を配列番号2のNグリコシル化モチーフ内に含有する、
項目151~162または項目166のいずれか1項に記載の二特異性抗体。
【配列表】