IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東洋ゴム工業株式会社の特許一覧

特許7138079ビードコア被覆方法及びビードコア被覆装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-07
(45)【発行日】2022-09-15
(54)【発明の名称】ビードコア被覆方法及びビードコア被覆装置
(51)【国際特許分類】
   B29D 30/48 20060101AFI20220908BHJP
【FI】
B29D30/48
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019093502
(22)【出願日】2019-05-17
(65)【公開番号】P2020185761
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2022-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 賀貴
(72)【発明者】
【氏名】宮本 亮史
【審査官】岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-51671(JP,A)
【文献】特開2019-51670(JP,A)
【文献】特開2018-39119(JP,A)
【文献】特開2018-24171(JP,A)
【文献】特開2017-193088(JP,A)
【文献】特開2012-240334(JP,A)
【文献】特開2009-29049(JP,A)
【文献】特開昭62-121039(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D 30/00-30/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定幅を有する長尺な帯状のゴムシートで環状のビードコアを被覆するビードコア被覆方法であって、
前記ゴムシートの幅方向の一部を前記ゴムシートの先端部から、回転する前記ビードコアの外表面に貼り付ける工程と、
前記ビードコアの外表面に貼り付けられた前記ゴムシートの幅方向の残部を、前記幅方向の一部から幅方向の端部へ向かって順に前記ビードコアの断面形状に沿って巻き付ける工程と、を備え、
前記ゴムシートを前記ビードコアの断面形状に沿って巻き付ける工程において、前記ゴムシートの幅方向の残部は、回転する駆動ローラの外周面によって、前記ビードコアの外表面に圧着され、
前記駆動ローラの外周面の周速度は、前記ビードコアの外表面の周速度よりも大きい、ビードコア被覆方法。
【請求項2】
前記駆動ローラの周速度は、前記ビードコアの周速度の1.3倍以下である、請求項1に記載のビードコア被覆方法。
【請求項3】
前記駆動ローラは、
断面形状が多角形である前記ビードコアの角部で前記ゴムシートを折り曲げて圧着するものであって、
前記ゴムシートの折り曲げ角度が45°以上である位置に配置される、請求項1又は2に記載のビードコア被覆方法。
【請求項4】
所定幅を有する長尺な帯状のゴムシートで環状のビードコアを被覆するビードコア被覆装置であって、
前記ビードコアを支持して、支持した前記ビードコアを回転させるカバーリング装置と、
前記カバーリング装置に設けられ、前記ゴムシートを前記ビードコアの外表面に巻き付けて圧着する駆動ローラと、
前記カバーリング装置及び駆動ローラを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記ゴムシートの幅方向の一部を前記ゴムシートの先端部から、回転する前記ビードコアの外表面に貼り付け、前記ビードコアの外表面に貼り付けられた前記ゴムシートの幅方向の残部を、回転する前記駆動ローラの外周面によって、前記幅方向の一部から幅方向の端部へ向かって順に前記ビードコアの断面形状に沿って圧着するように構成されており、
前記駆動ローラの外周面の周速度は、前記ビードコアの外表面の周速度よりも大きい、ビードコア被覆装置。
【請求項5】
前記駆動ローラの周速度は、前記ビードコアの周速度の1.3倍以下である、請求項4に記載のビードコア被覆装置。
【請求項6】
前記駆動ローラは、
断面形状が多角形である前記ビードコアの角部で前記ゴムシートを折り曲げて圧着するものであって、
前記ゴムシートの折り曲げ角度が45°以上である位置に配置される、請求項4又は5に記載のビードコア被覆装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定幅を有する長尺な帯状のゴムシートで環状のビードコアを被覆するビードコア被覆方法及びビードコア被覆装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、空気入りタイヤのビード部には、鋼線等の収束体をゴム被覆してなる環状のビードコアが配されている。このビードコアの表面は、鋼線等を一体化するために薄いゴムシートで被覆される場合がある。このゴムシートは、カバーゴム或いはビードカバーゴムと呼ばれることもある。
【0003】
下記特許文献1には、押出機から押し出したゴムシートの幅方向の一部を先端部から、回転するビードコアの外表面に貼り付け、ビードコアの外表面に貼り付けられたゴムシートの幅方向の残部をビードコアの断面形状に沿って巻き付けるビードコア被覆方法が開示されている。ゴムシートは、巻き付けローラを用いてビードコアの断面形状に沿って巻き付けられる。
【0004】
また、下記特許文献2には、ボビンから供給されたシート部材でビードコアの表面を被覆するビードコア被覆装置であって、シート部材の端部をビードコアの表面に巻き付ける巻き付けローラを備えるビードコア被覆装置が開示されている。巻き付けローラの回転速度は、ビードコアの回転速度に対して適宜設定されるが、ビードコアの直径に応じて変化させるようにしている。
【0005】
特許文献1及び2では、巻き付けローラを用いてゴムシート(シート部材)をビードコアの断面形状に沿って巻き付けているが、ゴムシートにシワが入ったり、折れ曲がったりして巻き付け不良が発生することがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-193088号公報
【文献】特開2012-240334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の目的は、巻き付け不良を低減しながら帯状のゴムシートをビードコアの外表面に巻き付けて被覆することができるビードコア被覆方法及びビードコア被覆装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は、下記の如き本発明により達成できる。
即ち、本発明のビードコア被覆方法は、所定幅を有する長尺な帯状のゴムシートで環状のビードコアを被覆するビードコア被覆方法であって、
前記ゴムシートの幅方向の一部を前記ゴムシートの先端部から、回転する前記ビードコアの外表面に貼り付ける工程と、
前記ビードコアの外表面に貼り付けられた前記ゴムシートの幅方向の残部を、前記幅方向の一部から幅方向の端部へ向かって順に前記ビードコアの断面形状に沿って巻き付ける工程と、を備え、
前記ゴムシートを前記ビードコアの断面形状に沿って巻き付ける工程において、前記ゴムシートの幅方向の残部は、回転する駆動ローラの外周面によって、前記ビードコアの外表面に圧着され、
前記駆動ローラの外周面の周速度は、前記ビードコアの外表面の周速度よりも大きいものである。
【0009】
本発明のビードコア被覆方法において、前記駆動ローラの周速度は、前記ビードコアの周速度の1.3倍以下であるようにしてもよい。
【0010】
また、本発明のビードコア被覆方法において、前記駆動ローラは、断面形状が多角形である前記ビードコアの角部で前記ゴムシートを折り曲げて圧着するものであって、前記ゴムシートの折り曲げ角度が45°以上である位置に配置されるようにしてもよい。
【0011】
本発明のビードコア被覆方法では、ゴムシートをビードコアの断面形状に沿って巻き付ける工程において、ゴムシートは、回転する駆動ローラの外周面によって、ビードコアの外表面に圧着されるが、駆動ローラの外周面の周速度をビードコアの外表面の周速度よりも大きくしている。この構成によれば、駆動ローラが常にゴムシートを巻き付ける方向に対して送る働きがあるので、巻き付け不良が低減される。さらに、ゴムシートにテンションがかかるので巻き付け状態も良好となる。
【0012】
また、本発明のビードコア被覆装置は、所定幅を有する長尺な帯状のゴムシートで環状のビードコアを被覆するビードコア被覆装置であって、
前記ビードコアを支持して、支持した前記ビードコアを回転させるカバーリング装置と、
前記カバーリング装置に設けられ、前記ゴムシートを前記ビードコアの外表面に巻き付けて圧着する駆動ローラと、
前記カバーリング装置及び駆動ローラを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記ゴムシートの幅方向の一部を前記ゴムシートの先端部から、回転する前記ビードコアの外表面に貼り付け、前記ビードコアの外表面に貼り付けられた前記ゴムシートの幅方向の残部を、回転する前記駆動ローラの外周面によって、前記幅方向の一部から幅方向の端部へ向かって順に前記ビードコアの断面形状に沿って圧着するように構成されており、
前記駆動ローラの外周面の周速度は、前記ビードコアの外表面の周速度よりも大きいものである。
【0013】
本発明のビードコア被覆装置において、前記駆動ローラの周速度は、前記ビードコアの周速度の1.3倍以下であるようにしてもよい。
【0014】
本発明のビードコア被覆装置において、前記駆動ローラは、断面形状が多角形である前記ビードコアの角部で前記ゴムシートを折り曲げて圧着するものであって、前記ゴムシートの折り曲げ角度が45°以上である位置に配置されるようにしてもよい。
【0015】
かかる構成によるビードコア被覆装置の作用効果は、上記のビードコア被覆方法で述べた通りであり、巻き付け不良を低減しながら帯状のゴムシートをビードコアの外表面に巻き付けて被覆することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】ビードコア被覆装置の構成の一例を示す模式図
図2】押出機及び回転ドラムの構成の一例を示す模式図
図3】ビードコアの断面図
図4A図1のA-A線断面図
図4B図1のB-B線断面図
図4C図1のC-C線断面図
図4D図1のD-D線断面図
図4E図1のE-E線断面図
図4F図1のF-F線断面図
図4G図1のG-G線断面図
図4H図1のH-H線断面図
図4I図1のI-I線断面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。本発明のビードコア被覆方法及びビードコア被覆装置は、所定幅を有する長尺な帯状のゴムシートで環状のビードコアを被覆するためのものである。なお、本実施形態のビードコアは、断面六角形状のものとして説明するが、本発明のビードコア被覆方法及びビードコア被覆装置により被覆可能なビードコアの断面形状は、六角形に限らず四角形や丸形等でもよい。
【0018】
図1はビードコア被覆装置1の構成の一例を示す模式図である。ビードコア被覆装置1は、押出機2と、回転ドラム3と、カバーリング装置4と、押出機2、回転ドラム3、及びカバーリング装置4を制御する制御部5と、を備えている。
【0019】
図2は押出機2及び回転ドラム3の構成の一例を示す模式図である。押出機2は、円筒形のバレル2aと、バレル2aの供給口に接続されたホッパー2bと、ゴムを混練して先端側に送り出すスクリュー2cと、スクリュー2cを回転駆動させるスクリュー用モータ2dとを有する。スクリュー用モータ2dは、後述するように制御部5により回転数が制御される。
【0020】
押出機2の押出方向先端側にはギアポンプ20が接続され、ギアポンプ20の先端側は1に接続されている。押出機2により混練されたゴム材料は、ギアポンプ20に供給され、ギアポンプ20は、口金21に対して定量のゴムを供給する。口金21からは所定の押出量でゴムシートSが押し出される。
【0021】
ギアポンプ20は、一対のギア20aを有しており、口金21に向けて出口側にゴムを送り出す機能を有する。一対のギア20aは、それぞれギア用モータ20bによって回転駆動され、その回転数は、制御部5により制御される。ギア用モータ20bの回転数、及びスクリュー用モータ2dの回転数を制御部5により連動させて制御することで、口金21から押し出されるゴムシートSの押出量を制御することができる。なお、図示の都合上、1対のギア20aは、図2の上下方向に並べられているが、実際は平面方向(ギア20aの回転軸が図2の上下となる方向)に並べてもよい。
【0022】
ギアポンプ20の入口側、すなわち押出機2に近い側には、第1圧力センサー22が設けられ、押出機2から供給されてくるゴムの圧力を検出する。また、ギアポンプ20の出口側には、第2圧力センサー23が設けられ、口金21から押し出されるゴムシートSの圧力を検出する。
【0023】
ギアポンプ20の入口側の圧力は、ギアポンプ20のギア20aと押出機2のスクリュー2cによるゴム送り量によって決定される。この入口側の圧力を一定に保つことで、ギアポンプ20は定量のゴムを口金21へ供給でき、口金21からの押出量も安定する。しかし、入口側の圧力が不安定であると、口金21からの押出量にばらつきが生じ、所望の寸法のゴムシートSを成形することが困難となる。
【0024】
ギアポンプ20の入口側の圧力を制御する方法としては、ギアポンプ20のギア20aの回転数と押出機2のスクリュー2cの回転数とをPID制御することが知られている。このPID制御は、一般的にゴムを定量で連続的に押し出す際に使用される。
【0025】
制御部5は、第1圧力センサー22で検出されたギアポンプ20の入口側の圧力に基づいて、押出機2のスクリュー用モータ2dの回転数を制御する。制御部5は、予め定められた(時間の係数による)制御プログラムに基づいて、ギア用モータ20bの回転数を制御する。
【0026】
なお、本実施形態では、押出機2の押出方向先端側にギアポンプ20が接続された、いわゆる外付けギアポンプを用いる例を示している。ただし、これに替えて、押出機内にギアポンプを内蔵したギアポンプ内蔵型押出機を用いるようにしてもよい。本発明において、ギアポンプ内蔵型押出機は、外付けギアポンプを接続した押出機に比べ、押出量を容易に制御することができ、なおかつギア用モータが不要なので押出機先端部がコンパクトになりより好ましい。
【0027】
押出機2、ギアポンプ20及び口金21は、一体として前後駆動装置24により押出方向の前後に移動可能に構成されており、回転ドラム3に対して近付いたり遠ざかったりすることができる。かかる前後の移動も、制御部5によって制御される。
【0028】
回転ドラム3は、サーボモータ30によりX方向に回転可能に構成されている。サーボモータ30の回転数は、制御部5により制御される。回転ドラム3の外周面には、口金21を介して押し出されたゴムシートSが供給され、ゴムシートSが貼り付いた状態で回転ドラム3をX方向に回転駆動することにより、ゴムシートSを周方向に沿って巻き付けることができる。回転ドラム3の外周面は金属製となっている。本実施形態の回転ドラム3の外径は、例えば200~400mmである。
【0029】
回転ドラム3は、外周面を冷却する冷却機構又は加熱する加熱機構を備えることが好ましい。冷却機構又は加熱機構としては、例えば、回転ドラム3の内部に冷却水又は温水を循環させる機構が用いられる。また、回転ドラム3の外周面は、貼り付けたゴムシートSを剥がしやすいような表面処理が行われたり、材質が用いられたりする。
【0030】
カバーリング装置4は、押出機2よりも回転ドラム3の回転方向X前方側の位置で回転ドラム3の外周面とビードコア8の外表面が近接するようにビードコア8を支持し、支持したビードコア8を回転させる。本実施形態では、押出機2の口金21の先端と回転ドラム3の外周面とが最も近接する位置と、ビードコア8の内周面と回転ドラム3の外周面とが最も近接する位置とは、回転ドラム3の回転方向Xに180°ずれている。また、本実施形態では、回転ドラム3の外径がビードコア8の内径よりも小さくなっており、回転ドラム3は、カバーリング装置4に支持されるビードコア8の内周側に配置されている。
【0031】
カバーリング装置4は、ビードコア8の外表面に貼り付けられたゴムシートSをビードコア8の断面形状に沿って巻き付けるためのものである。カバーリング装置4は、支持したビードコア8をY方向に回転させることができる。ビードコア8は、回転ドラム3の回転により従動的に回転する。
【0032】
図3は、ビードコア8の断面図を示す。本実施形態のビードコア8は、断面六角形状をしており、ビードコア8の内周面を下面8a、外周面を上面8dとし、内周側の側面を下側面8b,8fとし、外周側の側面を上側面8c,8eとする。ビードコア8の表面には、ゴムシートSが巻き付けられている。また、ビードコア8の外周側には、断面が略三角形状のビードフィラー9が配設される。本実施形態のビードコア8の内径は、例えば400~650mmである。
【0033】
カバーリング装置4は、ビードコア8の回転方向Yの後方側から前方側へ向かって順に、押さえローラ41、第1型付けローラ42、下側面圧着ローラ43、第2型付けローラ44、第1上側面圧着ローラ45、第1折り曲げローラ46、第2上側面圧着ローラ47、第2折り曲げローラ48、仕上げローラ49を備えている。また、カバーリング装置4は、回転するビードコア8の蛇行を防止する複数のガイドローラ40が設けられている。
【0034】
図4Aは、図1のA-A線断面図である。回転ドラム3の外周面には、ゴムシートSが巻き付けられている。本実施形態のゴムシートSの断面は、幅方向の両端部が薄くなっており、ゴムシートSをビードコア8の表面に巻き付けて幅方向両端部を接合する際に、薄くなった部分同士を重ねることで、接合部が厚くなることを防止している。
【0035】
押さえローラ41は、ビードコア8の一部を挟んで回転ドラム3と対向する位置に配置される。押さえローラ41の回転軸は、回転ドラム3及びビードコア8の回転軸と平行となっており、押さえローラ41の外周面がビードコア8の上面8dに接触しながら押さえローラ41は回転する。また、押さえローラ41は、ビードコア8の径方向の内外に移動可能に構成されている。これにより、回転ドラム3の外周面上にあるゴムシートSの幅方向の一部を回転するビードコア8の下面8aに貼り付ける際、押さえローラ41はビードコア8の上面8dを押圧することができる。なお、押さえローラ41は、ビードコア8の回転により従動的に回転する従動ローラである。
【0036】
図4Bは、図1のB-B線断面図である。第1型付けローラ42は、ビードコア8の内周側に配置されている。第1型付けローラ42の回転軸は、ビードコア8の回転軸と平行となっている。第1型付けローラ42は、図4Bに示すように、左右に対して中央が凹んだ糸巻状をしている。第1型付けローラ42の凹部421は、ゴムシートSを介してビードコア8の下面8a及び左右の下側面8b,8fと接触するように配置される。また、ビードコア8を挟んで第1型付けローラ42に対向する位置には、ビードコア8の径方向の内外に移動可能に構成された補助ローラ42aが配置されている。補助ローラ42aの回転軸は、第1型付けローラ42及びビードコア8の回転軸と平行となっている。これにより、第1型付けローラ42の凹部421によってゴムシートSをビードコア8の左右の下側面8b,8fに沿って上方に折り返すことができる。なお、第1型付けローラ42及び補助ローラ42aは、ビードコア8の回転により従動的に回転する従動ローラである。
【0037】
図4Cは、図1のC-C線断面図である。下側面圧着ローラ43は、ビードコア8の内周側に配置されている。下側面圧着ローラ43の回転軸は、ビードコア8の回転軸と平行となっている。下側面圧着ローラ43は、ビードコア8の左右に対向して一つずつ設けられている。一対の下側面圧着ローラ43は、ビードコア8の幅方向の左右に移動可能に構成されている。下側面圧着ローラ43は、円錐台状をしており、テーパ面をなす外周面が、ゴムシートSを介してビードコア8の下側面8b,8fとそれぞれ接触するように配置される。また、ビードコア8を挟んで下側面圧着ローラ43に対向する位置には、ビードコア8の径方向の内外に移動可能に構成された補助ローラ43aが配置されている。補助ローラ43aの回転軸は、下側面圧着ローラ43及びビードコア8の回転軸と平行となっている。これにより、下側面圧着ローラ43によってビードコア8の下側面8b,8fに対してゴムシートSを圧着することができる。なお、下側面圧着ローラ43は、不図示のモータによって駆動する駆動ローラであり、補助ローラ43aは、ビードコア8の回転により従動的に回転する従動ローラである。
【0038】
図4Dは、図1のD-D線断面図である。第2型付けローラ44は、ビードコア8の内周側に配置されている。第2型付けローラ44の回転軸は、ビードコア8の回転軸と平行となっている。第2型付けローラ44は、ビードコア8の下面8aに沿って回転する胴体部441と、胴体部441の両端にそれぞれ設けられる円板状のフランジ部442とを備える。左右のフランジ部442の間隔は、ビードコア8の幅に両側のゴムシートSの厚さを加えた幅と略同じとなっている。また、第2型付けローラ44は、ビードコア8の径方向の内外に移動可能に構成されている。これにより、第2型付けローラ44のフランジ部442によってゴムシートSの幅方向両端部を上方に立たせることができる。なお、第2型付けローラ44は、ビードコア8の回転により従動的に回転する従動ローラである。
【0039】
図4Eは、図1のE-E線断面図である。第1上側面圧着ローラ45は、ビードコア8の側方に配置されている。第1上側面圧着ローラ45の回転軸は、ビードコア8の径方向と平行となっている。第1上側面圧着ローラ45は、2つの円錐台部451,452を結合させた糸巻状をしている。一方の円錐台部451の外周面は、ゴムシートSを介してビードコア8の上側面8cと接触するように配置される。第1上側面圧着ローラ45は、ビードコア8の幅方向の左右に移動可能に構成されている。また、ビードコア8を挟んで第1上側面圧着ローラ45に対向する位置には、ビードコア8の幅方向の左右に移動可能に構成された補助ローラ45aが配置されている。補助ローラ45aの回転軸は、第1上側面圧着ローラ45の回転軸と平行となっている。これにより、第1上側面圧着ローラ45の一方の円錐台部451によってビードコア8の上側面8cに対してゴムシートSを折り曲げて圧着することができる。なお、第1上側面圧着ローラ45は、不図示のモータによって駆動する駆動ローラであり、補助ローラ45aは、ビードコア8の回転により従動的に回転する従動ローラである。
【0040】
図4Fは、図1のF-F線断面図である。第1折り曲げローラ46は、ビードコア8の外周側に配置されている。第1折り曲げローラ46の回転軸は、ビードコア8の回転軸と平行となっている。第1折り曲げローラ46は、ビードコア8の上面8dに沿って回転する円柱部461と、円柱部461の一端に設けられる円錐台部462とを備える。円錐台部462の外周面は、ゴムシートSを介してビードコア8の上側面8cと接触するように配置される。ビードコア8を挟んで第1折り曲げローラ46の円柱部461に対向する位置には、ビードコア8の径方向の内外に移動可能に構成された補助ローラ46aが配置されている。補助ローラ46aの回転軸は、第1折り曲げローラ46及びビードコア8の回転軸と平行となっている。これにより、第1折り曲げローラ46の円柱部461によってゴムシートSの一方の端部をビードコア8の上面8dに沿って折り曲げて圧着することができる。なお、第1折り曲げローラ46は、不図示のモータによって駆動する駆動ローラであり、補助ローラ46aは、ビードコア8の回転により従動的に回転する従動ローラである。
【0041】
図4Gは、図1のG-G線断面図である。第2上側面圧着ローラ47は、ビードコア8の側方に配置されている。第2上側面圧着ローラ47の回転軸は、ビードコア8の径方向と平行となっている。第2上側面圧着ローラ47は、2つの円錐台部471,472を結合させた糸巻状をしている。一方の円錐台部471の外周面は、ゴムシートSを介してビードコア8の上側面8eと接触するように配置される。第2上側面圧着ローラ47は、ビードコア8の幅方向の左右に移動可能に構成されている。また、ビードコア8を挟んで第2上側面圧着ローラ47に対向する位置には、ビードコア8の幅方向の左右に移動可能に構成された補助ローラ47aが配置されている。補助ローラ47aの回転軸は、第2上側面圧着ローラ47の回転軸と平行となっている。これにより、第2上側面圧着ローラ47の一方の円錐台部471によってビードコア8の上側面8eに対してゴムシートSを折り曲げて圧着することができる。なお、第2上側面圧着ローラ47は、不図示のモータによって駆動する駆動ローラであり、補助ローラ47aは、ビードコア8の回転により従動的に回転する従動ローラである。
【0042】
図4Hは、図1のH-H線断面図である。第2折り曲げローラ48は、ビードコア8の外周側に配置されている。第2折り曲げローラ48の回転軸は、ビードコア8の回転軸と平行となっている。第2折り曲げローラ48は、ビードコア8の上面8dに沿って回転する。また、ビードコア8を挟んで第2折り曲げローラ48に対向する位置には、ビードコア8の径方向の内外に移動可能に構成された補助ローラ48aが配置されている。補助ローラ48aの回転軸は、第2折り曲げローラ48及びビードコア8の回転軸と平行となっている。これにより、第2折り曲げローラ48によってゴムシートSの他方の端部をビードコア8の上面8dに沿って折り曲げて圧着することができる。なお、第2折り曲げローラ48は、不図示のモータによって駆動する駆動ローラであり、補助ローラ48aは、ビードコア8の回転により従動的に回転する従動ローラである。
【0043】
図4Iは、図1のI-I線断面図である。仕上げローラ49は、ビードコア8の外周側に配置されている。仕上げローラ49の回転軸は、ビードコア8の回転軸と平行となっている。仕上げローラ49は、ビードコア8の上面8dに沿って回転する。仕上げローラ49は、ビードコア8の径方向の内外に移動可能に構成されている。また、ビードコア8を挟んで仕上げローラ49に対向する位置には、ビードコア8の径方向の内外に移動可能に構成された補助ローラ49aが配置されている。補助ローラ49aの回転軸は、仕上げローラ49及びビードコア8の回転軸と平行となっている。これにより、仕上げローラ49によってゴムシートSの両端部をビードコア8の上面8dに圧着することができる。なお、仕上げローラ49は、不図示のモータによって駆動する駆動ローラであり、補助ローラ49aは、ビードコア8の回転により従動的に回転する従動ローラである。また、仕上げローラ49と補助ローラ49aは、圧着力を高めるために、ローラ自体を温める温度調節機構を備えるようにしてもよい。温度調節機構としては、温水、ヒータ、ガス等による温度調節機構が例示される。
【0044】
上記の駆動ローラ(下側面圧着ローラ43、第1上側面圧着ローラ45、第1折り曲げローラ46、第2上側面圧着ローラ47、第2折り曲げローラ48、仕上げローラ49)の外周面の周速度は、ビードコア8の外表面の周速度よりも大きくするのが好ましい。ここでの駆動ローラの外周面とは、ビードコア8に対してゴムシートSを圧着する面であり、ビードコア8の外表面とは、ゴムシートSを挟んで駆動ローラの外周面と対向する面である。駆動ローラの外周面の周速度をビードコア8の外表面の周速度よりも大きくすることで、駆動ローラが常にゴムシートSを巻き付ける方向に対して送る働きがあるので、巻き付け不良が低減される。また、ゴムシートSにテンションがかかるので巻き付け状態も良好となる。
【0045】
仮に駆動ローラの外周面の周速度がビードコア8の外表面の周速度よりも小さい場合、ゴムシートSにシワや折れ曲がりの巻き付け不良が生じる。また、駆動ローラの外周面の周速度とビードコア8の外表面の周速度が同じ場合、通常であればゴムシートSの巻き付け状態に問題は生じないが、ビードコア8の偏芯や滑り等でビードコア8の回転速度が速まった場合、その時点をきっかけにシワや蛇行が発生し、巻き付け不良に繋がる。
【0046】
前述のように、ビードコア8は、回転ドラム3の回転により従動的に回転するため、ビードコア8の回転速度は、回転ドラム3の回転速度で決定される。すなわち、制御部5は、駆動ローラの外周面の周速度が、ビードコア8の外表面の周速度よりも大きくなるように、駆動ローラの回転速度及び回転ドラム3の回転速度、具体的には駆動ローラを駆動するモータの回転数、及び回転ドラム3を駆動するサーボモータ30の回転数を制御する。
【0047】
駆動ローラの外周面の周速度は、ビードコア8の外表面の周速度の1.01倍以上であることが好ましい。駆動ローラの外周面の周速度がビードコア8の外表面の周速度の1.01倍より小さいと、巻き付け不良の低減効果が得られない。また、駆動ローラの外周面の周速度は、ビードコア8の外表面の周速度の1.3倍以下であることが好ましい。駆動ローラの外周面の周速度がビードコア8の外表面の周速度の1.3倍より大きいと、駆動ローラによってゴムシートSとともにビードコア8も引っ張られ、ビードコア8の周速度に影響を与えるおそれがある。例えば、下側面圧着ローラ43の周速度は、ビードコア8の周速度の1.01~1.10倍とし、第1上側面圧着ローラ45の周速度は、ビードコア8の周速度の1.01~1.10倍とし、第1折り曲げローラ46の周速度は、ビードコア8の周速度の1.1~1.2倍とし、第2上側面圧着ローラ47の周速度は、ビードコア8の周速度の1.01~1.10倍とし、第2折り曲げローラ48の周速度は、ビードコア8の周速度の1.1~1.2倍とし、仕上げローラ49の周速度は、ビードコア8の周速度の1.1~1.2倍とする。
【0048】
また、ビードコア8の周速度よりも大きい周速度とする駆動ローラは、断面形状が多角形であるビードコア8の角部でゴムシート8を折り曲げて圧着するものであって、ゴムシート8の折り曲げ角度が45°以上である位置に配置されるものが好ましい。折り曲げ角度が大きい位置で特に巻き付け不良が発生しやすいため、この位置に配置される駆動ローラの周速度をビードコア8の周速度よりも大きくすることが巻き付け不良の低減に有効である。
【0049】
本実施形態では、ビードコア8の断面形状が六角形であり、ビードコア8の折り曲げ角度が60°である位置に配置される第1折り曲げローラ46及び第2折り曲げローラ48の外周面の周速度を、ビードコア8の外表面の周速度より大きくするのが特に好ましい。本実施形態では、第1折り曲げローラ46及び第2折り曲げローラ48の外周面の周速度を、ビードコア8の外表面の周速度の1.15倍としている。
【0050】
次に、上記のビードコア被覆装置1を用いたビードコア被覆方法を説明する。本実施形態のビードコア被覆方法は、ゴムシートSの幅方向の一部をゴムシートSの先端部から、回転するビードコア8の外表面に貼り付ける工程と、ビードコア8の外表面に貼り付けられたゴムシートSの幅方向の残部を、幅方向の一部から幅方向の端部へ向かって順にビードコア8の断面形状に沿って巻き付ける工程と、を備え、ゴムシートSをビードコア8の断面形状に沿って巻き付ける工程において、ゴムシートSの幅方向の残部は、回転する駆動ローラの外周面によって、ビードコア8の外表面に圧着され、駆動ローラの外周面の周速度は、ビードコア8の外表面の周速度よりも大きいものである。
【0051】
初めに、カバーリング装置4にビードコア8をセットする。このとき、押出機2は、カバーリング装置4の外部に配置されている。
【0052】
次いで、押出機2を回転ドラム3の方向に前進させ、口金21を回転ドラム3の外周面に接近させる。
【0053】
次いで、押出機2の口金21からゴムシートSの押し出しを開始し、同時に回転ドラム3の回転を開始する。これにより、押し出したゴムシートSを先端部から回転ドラム3の外周面に巻き付けていくことができる。
【0054】
次いで、回転ドラム3の外周面上に巻き付けられたゴムシートSの幅方向の中央部を先端部から回転するビードコア8の下面8aに貼り付けていく(図4Aを参照)。
【0055】
次いで、ビードコア8の下面8aに貼り付けられたゴムシートSは、カバーリング装置4によって、ゴムシートSの幅方向の両端部がビードコア8の断面形状に沿って巻き付けられる(図4B図4Iを参照)。最後に、押出機2を後退させて、ゴムシートSで被覆したビードコア8をカバーリング装置4から取り外す。
【0056】
また、本実施形態のビードコア被覆方法は、押出機2により口金21を介して押し出したゴムシートSを先端部から回転ドラム3の外周面に巻き付ける工程が、口金21を回転ドラム3に接近させる準備工程と、接近させた口金21からゴムの押し出しを開始するのと同時に回転ドラム3の回転を開始し、ゴムの押出量を所定量まで徐々に増加させるとともに、口金21の回転ドラム3からの距離をゴムシートSの所望の厚みに相当する所定距離まで徐々に大きくすることにより、断面楔状の巻き始め部を成形する巻き始め工程と、ゴムの押出量を所定量に維持し、口金21の回転ドラム3からの距離を所定距離に維持することにより、ゴムシートSを巻き付けていく巻き付け工程と、ゴムの押出量を所定量から徐々に減少させるとともに、口金21の回転ドラム3からの距離を所定距離から徐々に小さくすることにより、断面楔状の巻き終わり部を成形する巻き終わり工程とを備えることが好ましい。
【0057】
押出機2により押し出したゴムを回転ドラム3に巻き付ける場合、押し出されたゴムが、口金21と回転ドラム3の外周面との隙間を擦り付けられるように通過すると、通過したゴムはその隙間の厚みとなる。
【0058】
すなわち、巻き始め工程では、ゴムの押出量を所定量まで徐々に増加させるとともに、口金21の回転ドラム3からの距離を所定距離まで徐々に大きくすることにより、幅を一定に保ちながら、厚みがゴムシートSの所望の厚みまで徐々に厚くなった断面楔状の巻き始め部を成形することができる。また、巻き付け工程では、ゴムの押出量を所定量に維持し、口金21の回転ドラム3からの距離を所定距離に維持することにより、幅を一定に保ちながら、巻き付けられたゴムを所望の厚みとすることができる。また、巻き終わり工程でも、ゴムの押出量を所定量から徐々に減少させるとともに、口金21の回転ドラム3からの距離を所定距離から徐々に小さくすることにより、幅を一定に保ちながら、厚みが徐々に薄くなった断面楔状の巻き終わり部を成形することができる。この巻き終わり部を巻き始め部の上に重ねるようにしてゴムシートSをヒードコア8の外表面に貼り付けることで、巻き始めと巻き終わりの接合部での段差を無くすことができる。タイヤの製造において、このゴムシートSの成形方法を用いることで、接合部での段差が無くなるため、加硫時のエアー入りが発生せず、かつユニフォミティの向上にも繋がる。なお、巻き付け工程において、口金21の回転ドラム3からの距離をゴムシートSの所望の厚みより大きくしてもよい。口金21の吐出口の形状がゴムシートSの所望の断面形状と同じであれば、巻き付け工程において、ゴムの押出量を所定量に維持することによって所望の厚みを有するゴシートSを成形することができる。
【0059】
[他の実施形態]
(1)前述の実施形態では、回転ドラム3の外周面上に巻き付けられたゴムシートSの幅方向の中央部をゴムシートSの先端部から、回転するビードコア8の内周面(下面8a)に貼り付けていく例を示したが、これに限定されない。
【0060】
例えば、回転ドラム3をビードコア8の外周側に配置し、回転ドラム3の外周面上に巻き付けられたゴムシートSの幅方向の中央部をゴムシートSの先端部から、回転するビードコア8の外周面(上面8d)に貼り付けていってもよい。この構成によれば、設備レイアウトの構成が単純であり、かつビードコアのサイズ変更にも容易に対応できる。
【0061】
また、回転ドラム3をビードコア8の側方に配置し、回転ドラム3の外周面上に巻き付けられたゴムシートSの幅方向の中央部をゴムシートSの先端部から、回転するビードコア8の側面に貼り付けていってもよい。この構成によれば、設備レイアウトの構成が単純であり、かつビードコアのサイズ変更にも容易に対応できる。
【0062】
(2)前述の実施形態では、押出機2の口金21の先端と回転ドラム3の外周面とが最も近接する位置と、ビードコア8の外表面と回転ドラム3の外周面とが最も近接する位置とが、回転ドラム3の回転方向Xに180°ずれている例を示したが、これに限定されず、90°や270°ずれていてもよい。
【0063】
(3)前述の実施形態では、押出機2から押し出したゴムシートSを回転ドラム3を介して直接ビードコア8の外表面に貼り付けるようにしているが、これに限定されない。ゴムシートSは、予め所定長さに成形されたものを貼り付けるようにしてもよく、ボビンに巻き付けられたものを所定長さに切断しながら貼り付けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0064】
1 ビードコア被覆装置
2 押出機
3 回転ドラム
4 カバーリング装置
46 第1折り曲げローラ
48 第2折り曲げローラ
5 制御部
8 ビードコア
S ゴムシート
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G
図4H
図4I