IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エフ・ホフマン−ラ・ロシュ・アクチェンゲゼルシャフトの特許一覧

特許7138094マクロファージ活性化剤と組み合わせた抗CSF-1R抗体の間欠投与
<>
  • 特許-マクロファージ活性化剤と組み合わせた抗CSF-1R抗体の間欠投与 図1
  • 特許-マクロファージ活性化剤と組み合わせた抗CSF-1R抗体の間欠投与 図2
  • 特許-マクロファージ活性化剤と組み合わせた抗CSF-1R抗体の間欠投与 図3
  • 特許-マクロファージ活性化剤と組み合わせた抗CSF-1R抗体の間欠投与 図4A
  • 特許-マクロファージ活性化剤と組み合わせた抗CSF-1R抗体の間欠投与 図4B
  • 特許-マクロファージ活性化剤と組み合わせた抗CSF-1R抗体の間欠投与 図5
  • 特許-マクロファージ活性化剤と組み合わせた抗CSF-1R抗体の間欠投与 図6
  • 特許-マクロファージ活性化剤と組み合わせた抗CSF-1R抗体の間欠投与 図7
  • 特許-マクロファージ活性化剤と組み合わせた抗CSF-1R抗体の間欠投与 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-07
(45)【発行日】2022-09-15
(54)【発明の名称】マクロファージ活性化剤と組み合わせた抗CSF-1R抗体の間欠投与
(51)【国際特許分類】
   A61P 35/00 20060101AFI20220908BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220908BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20220908BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20220908BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20220908BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220908BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20220908BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20220908BHJP
【FI】
A61P35/00
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61P35/02
A61P37/02
A61P37/04
A61P43/00 121
C07K16/28 ZNA
C12N15/13
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019510832
(86)(22)【出願日】2017-08-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-24
(86)【国際出願番号】 EP2017070570
(87)【国際公開番号】W WO2018036852
(87)【国際公開日】2018-03-01
【審査請求日】2020-07-31
(31)【優先権主張番号】16185704.0
(32)【優先日】2016-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】306021192
【氏名又は名称】エフ・ホフマン-ラ・ロシュ・アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ホーヴス, ザビーネ
(72)【発明者】
【氏名】オーイ, チア-ユーイ
(72)【発明者】
【氏名】リース, カロラ
(72)【発明者】
【氏名】ロマニョーリ, ソランジュ
(72)【発明者】
【氏名】リュッティンガー, ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】シャーデー, ハダッサー スムーム
【審査官】長谷川 強
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-516369(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0073129(US,A1)
【文献】特表2016-516798(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61P 35/00
A61K 39/395
A61P 35/02
A61P 37/02
A61P 37/04
A61P 43/00
C07K 16/28
C12N 15/13
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) がんを治療するための;又は
b) CSF-1R発現マクロファージ浸潤を伴う腫瘍を有する患者を治療するための、ヒトCSF-1Rに結合する抗体を含む医薬であって、
抗CSF-1R抗体が、アゴニストCD40抗体と組み合わせて第1の治療サイクルで投与され、
かつ、後続の治療サイクルで、抗CSF-1R抗体がアゴニストCD40抗体と組み合わせて2サイクル毎にのみ投与され、一方、アゴニストCD40抗体は各治療サイクルで投与され
抗CSF-1R抗体が600-1200mgの用量で投与され、かつ、
抗CSF-1R抗体が配列番号5の重鎖可変ドメインVH及び配列番号6の軽鎖可変ドメインVLを含む、医薬。
【請求項2】
a) がんを治療するための;又は
b) CSF-1R発現マクロファージ浸潤を伴う腫瘍を有する患者を治療するための、ヒトCSF-1Rに結合する抗体を含む医薬であって、
抗CSF-1R抗体が、アゴニストCD40抗体と組み合わせて第1の治療サイクルで投与され、
それに続いて、血清中のCD14+CD16+陽性単球の顕著なリカバリー後に、抗CSF-1R抗体がアゴニストCD40抗体との組み合わせでのみ投与され
抗CSF-1R抗体が600-1200mgの用量で投与され、かつ、
抗CSF-1R抗体が配列番号5の重鎖可変ドメインVH及び配列番号6の軽鎖可変ドメインVLを含む、医薬。
【請求項3】
a) がんを治療するための;又は
b) CSF-1R発現マクロファージ浸潤を伴う腫瘍を有する患者を治療するための、ヒトCSF-1Rに結合する抗体を含む医薬であって、
抗CSF-1R抗体が、アゴニストCD40抗体と組み合わせて第1の治療サイクルで投与され、
それに続いて、CD163+/CD68+陽性腫瘍随伴マクロファージの顕著なリカバリー後に、抗CSF-1R抗体がアゴニストCD40抗体との組み合わせでのみ投与され
抗CSF-1R抗体が600-1200mgの用量で投与され、かつ、
抗CSF-1R抗体が配列番号5の重鎖可変ドメインVH及び配列番号6の軽鎖可変ドメインVLを含む、医薬。
【請求項4】
請求項1又は2又は3のいずれか一項に記載の医薬であって、後続の治療サイクルで、抗CSF-1R抗体がアゴニストCD40抗体と組み合わせて2サイクル毎にのみ投与され、一方、アゴニストCD40抗体は各治療サイクルで投与される、医薬。
【請求項5】
治療サイクルの長さが2~4週間である、請求項1から4のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項6】
アゴニストCD40抗体サイクルに4-16mgの用量で投与される、請求項1からのいずれか一項に記載の医薬。
【請求項7】
併用療法が免疫関連疾患の治療又は進行遅延における使用のためのものである、請求項1からのいずれか一項に記載の医薬。
【請求項8】
併用療法が免疫応答又は機能の刺激における使用のためのものである、請求項1からのいずれか一項に記載の医薬。
【請求項9】
抗CSF-1R抗体が
a) 配列番号1の重鎖可変ドメインVH及び配列番号2の軽鎖可変ドメインVL、又は
b) 配列番号3の重鎖可変ドメインVH及び配列番号4の軽鎖可変ドメインVL、又は
c) 配列番号5の重鎖可変ドメインVH及び配列番号6の軽鎖可変ドメインVL、又は
d) 配列番号7の重鎖可変ドメインVH及び配列番号8の軽鎖可変ドメインVL、又は
e) 配列番号9の重鎖可変ドメインVH及び配列番号10の軽鎖可変ドメインVLを含む、
請求項1からのいずれか一項に記載の医薬。
【請求項10】
ゴニストCD40抗体が配列番号11の重鎖可変ドメインVH及び配列番号12の軽鎖可変ドメインVLを含む、
請求項1~9のいずれか一項に記載の医薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マクロファージ活性化剤と組み合わせた抗CSF-1R抗体の間欠投与、そのような組み合わせ療法を用いる、対応する薬学的組成物又は医薬に関する。
【背景技術】
【0002】
CSF-1R抗体とCSF-1R抗体
ヒトCSF-1受容体(CSF-1R;コロニー刺激因子1受容体;同義語:M-CSF受容体;マクロファージコロニー刺激因子1受容体、Fmsがん原遺伝子、c-fms)が、1986年以来知られている(Coussens, L., et al., Nature 320 (1986) 277-280)。CSF-1Rは、増殖因子であり、c-fmsがん原遺伝子によりコードされる(例えば、Roth, P. and Stanley, E.R., Curr. Top. Microbiol. Immunol. 181 (1992) 141-167に総説あり)。
【0003】
CSF-1Rは、CSF-1(コロニー刺激因子1、M-CSF、マクロファージコロニー刺激因子とも呼ばれる)の受容体であり、このサイトカインの生物学的効果を媒介する(Sherr, C.J., et al., Cell 41 (1985) 665-676)。コロニー刺激因子1受容体(CSF-1R)(c-fmsとも呼ばれる)のクローニングは、Roussel, M.F., et al., Nature 325 (1987) 549-552に初めて記載された。この文献において、CSF-1Rは、Cblに結合しそれにより受容体の下方制御を調節する抑制性チロシン969リン酸化の欠損を含む、タンパク質のC末端テールの変化に依存する形質転換能を有することが示された(Lee, P.S., et al., Embo J. 18 (1999) 3616-3628)。最近、インターロイキン-34(IL-34)と命名されたCSF-1Rの第2のリガンドが同定された(Lin, H., et al, Science 320 (2008) 807-811)。
【0004】
現在、CSF-1Rの細胞外ドメインに結合する二つのCSF-1Rリガンドが既知である。そのうち第1のリガンドは、CSF-1(コロニー刺激因子1、M-CSFとも呼ばれる、マクロファージ; 配列番号28) であり、ジスルフィドに結合したホモダイマーとして細胞外に見られる(Stanley, E.R. et al., Journal of Cellular Biochemistry 21 (1983) 151-159; Stanley, E.R. et al., Stem Cells 12 Suppl. 1 (1995) 15-24)。第2のリガンドは、IL-34(ヒトIL-34;配列番号29)(Hume, D. A. , et al, Blood 119 (2012) 1810-1820)である。CSF-1Rシグナル伝達の主な生物学的効果は、マクロファージ系統(破骨細胞を含む)への、造血性前駆体細胞の分化、増殖、遊走、及び生存である。CSF-1Rの活性化は、そのCSF-1RリガンドであるCSF-1(M-CSF)及びIL-34により媒介される。CSF-1(M-CSF)のCSF-1Rに対する結合は、チロシンリン酸化によるキナーゼの活性化及びホモダイマーの形成を誘導する(Li, W. et al, EMBO Journal.10 (1991) 277-288; Stanley, E.R., et al., Mol. Reprod. Dev. 46 (1997) 4-10)。
【0005】
生物学的に活性のホモダイマーCSF-1は、CSF-1受容体の細胞外ドメイン (CSF-1R-ECD)のサブドメインD1からD3内でCSF-1Rに結合する。CSF-1R-ECDは、五つの免疫グロブリン様サブドメイン(D1~D5)を含む。細胞外ドメイン(CSF-1R-ECD)のサブドメインD4~D5は、CSF-1の結合に関与していない(Wang, Z., et al Molecular and Cellular Biology 13 (1993) 5348-5359)。サブドメインD4は、二量体化に関与している(Yeung, Y-G., et al Molecular & Cellular Proteomics 2 (2003) 1143-1155; Pixley, F. J., et al., Trends Cell Biol. 14 (2004) 628-638)。
【0006】
更なるシグナル伝達は、Ras/MAPK経路及びPI3K/AKT経路にそれぞれ接続するGrb2及びPI3Kのp85サブユニットにより媒介される。これら二つの重要なシグナル伝達経路は、増殖、生存及びアポトーシスを調節することができる。CSF-1Rのリン酸化細胞内ドメインに結合する他のシグナル伝達分子は、STAT1、STAT3、PLCy、及びCblを含む(Bourette, R.P. and Rohrschneider, L.R., Growth Factors 17 (2000) 155-166)。
【0007】
CSF-1Rシグナル伝達は、骨リモデリング及び生殖器系において、免疫応答に生理的役割を有する。CSF-1(Pollard, J.W., Mol. Reprod. Dev. 46 (1997) 54-61) 又はCSF-1R (Dai, X.M., et al., Blood 99 (2002) 111-120)のノックアウト動物は、それぞれの細胞型において、CSF-1Rのための役割と一致する、大理石骨病表現型、造血性表現型、組織マクロファージ表現型、及び生殖表現型を有することが示されている。
【0008】
Sherr, C.J., et al., Blood 73 (1989) 1786-1793は、CSF-1活性を阻害するCSF-1Rに対するいくつかの抗体に関する。Ashmun, R.A., et al., Blood 73 (1989) 827-837は、CSF-1R抗体に関する。Lenda, D., et al., Journal of Immunology 170 (2003) 3254-3262は、CSF-1-欠乏マウスにおけるマクロファージ動員、増殖、及び活性化の低減が腎臓の炎症の間の管状アポトーシスの減少を招くことに言及している。Kitaura, H., et al., Journal of Dental Research 87 (2008) 396-400は、歯の矯正移動を阻害する抗CSF-1抗体に言及している。国際公開第2001/030381号は、アンチセンスヌクレオチド及び抗体を含むCSF-1活性阻害剤に言及しているが、CSF-1アンチセンスヌクレオチドを開示しているのみである。WO公開第2004/045532号は、CSF-1アンタゴニストによる腫瘍転移及び骨損失の予防と転移性がんの治療とに言及しているが、アンタゴニストとして抗CSF-1-抗体を開示しているのみである。国際公開第2005/046657号は、抗CSF-1抗体による炎症性腸疾患の治療に関する。米国特許出願公開第2002/0141994号は、コロニー刺激因子の阻害剤に関する。国際公開第2006/096489号は、抗CSF-1抗体による関節リウマチの治療に関する。国際公開第2009/026303号及び国際公開第2009/112245号は、細胞外ドメイン(CSF-1R-ECD)の最初の三つのサブドメイン(D1~D3)内でCSF-1Rに結合する特定の抗CSF-1R抗体に関する。国際公開第2011/123381号、同第2011/140249号、同第2012/110360号は、CSF-1Rに対する抗体に関する。国際公開第2011/070024号は、二量体化ドメイン(D4~D5)内でCSF-1Rに結合する特定の抗CSF-1R抗体に関する。
【0009】
国際公開第2013/132044号、同第2014/173814号、及び同第2015/036511号は特に、抗CSF-1R抗体と、アゴニストCD40抗体、TLRアゴニスト、アンタゴニストPD-L1抗体等の様々なマクロファージ活性化剤との併用療法に関する。抗CSF-1R抗体の途中(intermediate)遅延又は停止を含む治療スキームとの併用療法が抗CSF-1R抗体とマクロファージ活性化剤双方の連続共投与を含む治療スキームよりも有利であることが見出された。
【発明の概要】
【0010】
がんと戦うために増幅細胞傷害性T細胞を利用する、がん免疫療法の組み合わせは、患者の治療における主要な焦点となっている。腫瘍中のT細胞抑制性腫瘍随伴マクロファージ(TAM)を排除するCSF-1R遮断剤は、コンビナトリアル免疫療法の新規の担い手である。驚くべきことに、本発明者らは、その治療効果のためにエフェクター細胞としてTAMを必要とするアゴニストCD40抗体がTAM枯渇CSF-1R抗体と組み合わされたときに様々ながんマウスモデルにおいて完全寛解を誘導することを見出した。選別された単球及びTAM集団のex vivo分析は、それらがCSF-1R mAbによって排除される前に、併用治療のみが炎症促進性TAMの即時の一過性かつ特有の活性化をもたらすことを明らかにした。
【0011】
TAM及びCD8T細胞枯渇実験は、この組み合わせの治療的利益が双方の集団の存在に依存することを示した。結腸直腸がん患者は、TAM上でのCSF1R及びCD40の共発現を示し、最近開始された臨床試験においてこの組み合わせで治療されるであろう。
【0012】
免疫抑制性腫瘍随伴マクロファージの枯渇と活性化CD40抗体との組み合わせは、マクロファージ浸潤に応じて様々な腫瘍モデルにおいて完全な腫瘍拒絶をもたらす。様々なヒトがん患者からの有病率データは、双方ともCSF1R及びCD40の共発現を示すことを示した。
【0013】
抗CSF1Rと抗CD40の併用治療が抗CSF1Rによる全TAMの完全枯渇の前に施される場合、表現型の変化があり、併用治療の強い相乗的な抗腫瘍効果が見られる。対照的に、抗CSF1Rと抗CD40の併用治療の前にすべてのTAMが完全に事前枯渇した場合、相乗的な抗腫瘍効果は観察され得ない。つまり結果として、抗CSF1Rと抗CD40の併用治療の強力な抗腫瘍効果のためには、マクロファージが必要とされる。
【0014】
よって、次の相乗的な併用治療のために、マクロファージのリカバリーが必要とされる。
【0015】
したがって本発明の一態様は、
a) がん(好ましくは固形腫瘍、メラノーマ、結腸直腸がん、中皮腫)の治療、又は
b) CSF-1R発現マクロファージ浸潤を伴う腫瘍を有する患者の治療
における使用のための、ヒトCSF-1Rに結合する抗体であり、
ここで、この抗CSF-1R抗体は、アゴニストCD40抗体、Toll様受容体(TLR)リガンド、TLRアゴニスト、アンタゴニストPD-L1抗体の群から選択されるマクロファージ活性化剤と組み合わせて第1の治療サイクルで投与され、
かつ、後続の治療サイクルで、抗CSF-1R抗体はマクロファージ活性化剤と組み合わせて2サイクル毎にしか投与されないが、マクロファージ活性化剤は各治療サイクルで投与される。
【0016】
本発明の別の態様は、
a) がん(好ましくは固形腫瘍、メラノーマ、結腸直腸がん、中皮腫)の治療、又は
b) CSF-1R発現マクロファージ浸潤を伴う腫瘍を有する患者の治療
における使用のための、ヒトCSF-1Rに結合する抗体であり、
ここで、この抗CSF-1R抗体は、アゴニストCD40抗体、Toll様受容体(TLR)リガンド、TLRアゴニスト、アンタゴニストPD-L1抗体の群から選択されるマクロファージ活性化剤と組み合わせて第1の治療サイクルで投与され、
それに続いて、血清中のCD14+CD16+陽性単球の顕著なリカバリー後に、抗CSF-1R抗体がマクロファージ活性化剤との組み合わせでのみ投与される(一実施態様ではリカバリーは60%超、一実施態様では80%超)。
【0017】
本発明の別の態様は、
a) がん(好ましくは固形腫瘍、メラノーマ、結腸直腸がん、中皮腫)の治療、又は
b) CSF-1R発現マクロファージ浸潤を伴う腫瘍を有する患者の治療
における使用のための、ヒトCSF-1Rに結合する抗体であり、
ここで、この抗CSF-1R抗体は、アゴニストCD40抗体、Toll様受容体(TLR)リガンド、TLRアゴニスト、アンタゴニストPD-L1抗体の群から選択されるマクロファージ活性化剤と組み合わせて第1の治療サイクルで投与され、
それに続いて、CD163+/CD68+陽性腫瘍随伴マクロファージの顕著なリカバリー後に、抗CSF-1R抗体がマクロファージ活性化剤との組み合わせでのみ投与される(一実施態様ではリカバリーは60%超、一実施態様では80%超)。
【0018】
本発明の一実施態様は、上記の治療のうちの1つにおける使用のための、記載された抗CSF-1R抗体であり、後続の治療サイクルで、抗CSF-1R抗体はマクロファージ活性化剤と組み合わせて2サイクル毎にしか投与されないが、マクロファージ活性化剤は各治療サイクルで投与される。
【0019】
本発明の一実施態様は、上記の治療のうちの1つにおける使用のための、記載された抗CSF-1R抗体であり、治療サイクルの長さは2‐4週間;好ましい一実施態様では、治療サイクルの長さは18‐24日間;好ましい一実施態様では、治療サイクルの長さは(約)3週間である。
【0020】
本発明の一実施態様は、上記の治療のうちの1つにおける使用のための、記載された抗CSF-1R抗体であり、抗CSF-1R抗体は600-1200mgの用量(好ましい一実施態様では750-1100mgの用量;一実施態様では750-1000mgの用量;別の実施態様では900-1000mgの用量;別の実施態様では750mgの用量;別の実施態様では900mgの用量;別の実施態様では1000mgの用量)で投与される。
【0021】
本発明の一実施態様は、上記の治療のうちの1つにおける使用のための、記載された抗CSF-1R抗体であり、マクロファージ活性化剤はアゴニストCD40抗体であり、アゴニストCD40抗体は各サイクルで4-16mgの用量(好ましい一実施態様では8-16mgの用量)で投与される。
【0022】
本発明の一実施態様は、上記の治療のうちの1つにおける使用のための、記載された抗CSF-1R抗体であり、マクロファージ活性化剤はアンタゴニストPD-L1抗体であり、アンタゴニストPD-L1抗体は各サイクルで1100-1300mgの用量(好ましい一実施態様では1200の用量)で投与される。
【0023】
本発明の一実施態様は、併用療法が腫瘍免疫などの免疫関連疾患の治療又は進行の遅延における使用のためのものである、上記の治療のうちの1つにおける使用のための、記載された抗CSF-1R抗体である。
【0024】
本発明の一実施態様は、併用療法がT細胞活性などの免疫応答又は機能を刺激ことにおける使用のためのものである、上記の治療のうちの1つにおける使用のための、記載された抗CSF-1R抗体である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】抗CD40と抗CSF-1Rを用いる併用治療は、MC38腫瘍の完全な寛解をもたらす。(A)全体的な研究デザイン。(B)生存の読み出し。腫瘍体積が700mm以上になったマウスは、グラフから削除した。数字は、71日目の試験終了時の併用群(1群当たりn=10)における無腫瘍マウスの総計を示す。(C)5x10個の腫瘍細胞を用いる、無腫瘍マウスの再チャレンジ。キャリパー測定により、腫瘍体積を毎日モニターした。
図2】抗CD40と抗CSF-1Rの併用治療前のCD8α陽性T細胞の枯渇は、MC38腫瘍担持マウスにおける高い生存率を無効にする。(A)全体的な研究デザイン。(B)生存の読み出し。11日目は、抗CD40陽性/陰性抗CSF-1R抗体の開始を示す。抗CD40は1回しか投与されなかったが、抗CSF-1Rはその日から毎週投与された。腫瘍体積が700mm以上になったマウスは、グラフから削除した。数字は、71日目の試験終了時の併用群(1群当たりn=10)における無腫瘍マウスの総計を示す。
図3】抗CD40と抗CSF-1Rの併用治療の前のTAMの枯渇は、MC38腫瘍担持マウスにおける高い生存率を無効にする。(A)全体的な研究デザイン。(B)TAMのフローサイトメトリー分析(DAPICD45CD11bF4/80highLy6GnegativeLy6Clow)、1群当たりn=4;一元配置分散分析による統計分析、***p≦0.0001。(C)生存の読み出し。腫瘍体積が700mm以上になったマウスは、グラフから削除した。数字は、49日目の試験終了時(1群当たりn=10)の無腫瘍マウスの総計を示す。 図4は、骨髄細胞に対するRNA配列決定実験を示す。
図4A】骨髄細胞分析のためのゲーティング戦略。
図4B】RNAseqデータを利用可能な88のシグネチャーと比較するシグネチャー解析の概要。
図5】定量化IHC分析の相関。CRC:結腸直腸がん;TNBC:トリプルネガティブ乳がん
図6】抗CD40と抗CSF-1Rの組み合わせは、MC38腫瘍担持マウスにおいて耐容性が良い。
図7】750mg Q6W投与後のCD14+CD16+単球及び抗CSF-1R抗体エマクツズマブ(エマクツズマブ)薬物動態のシミュレートされた中央値プロファイル。
図8】エマクツズマブの静脈内投与後のTMDDモデルを用いて計算された平均目標飽和度。
【発明を実施するための形態】
【0026】
用語「マクロファージ活性化」は、例えばいくつかの炎症誘発性サイトカインなどの種々の生物活性化合物を分泌することができるマクロファージの刺激及び、共刺激表面分子、増強された抗原提示マーカー又は活性化に関連するその他の表面マーカーの発現をいう。
【0027】
本発明による「マクロファージ活性化剤」は、CD40アゴニスト、Toll様受容体(TLR)リガンド、TLRアゴニスト、アンタゴニストPD-L1抗体の群から選択される。
【0028】
「CSF-1R発現マクロファージ浸潤を有する腫瘍」とは、腫瘍細胞と浸潤性CSF-1R発現腫瘍随伴マクロファージ(TAM)又は組織常在性マクロファージとを含む異質腫瘍をいう。
【0029】
腫瘍随伴マクロファージ(TAM)の代わりに、血清中の前駆体ヒトCD14+CD16+(陽性)単球が測定されるが、それは、この血中単球のリカバリーがその後の腫瘍随伴マクロファージ(TAM)のリカバリーと相関するためである。本明細書で使用される「血清中のCD14+CD16+陽性単球の顕著なリカバリー後(一実施態様ではリカバリーは60%超、一実施態様では80%超)という用語は、
【0030】
例えば実施例1Bでは、薬力学的モデルをヒトCD14+CD16+単球データにフィットさせた。予備集団分析に基づくと、6週間ごと(Q6W)に投与される750mgの用量は、CD14+CD16+単球がリカバリーに向かうことを示す。
【0031】
抗CSF-1R抗体による第1の治療は血清中の腫瘍随伴マクロファージ(TAM)及びその前駆体ヒトCD14+CD16+(陽性)単球の激しい減少/枯渇をもたらすため、治療サイクルの長さは、このヒトCD14+CD16+(陽性)単球血中単球(monocytes blood monocytes)の顕著なリカバリーがその後の腫瘍随伴マクロファージ(TAM)のリカバリーと相関するのに十分な時間を与えるように選択され、その結果TAMは継続的に枯渇しない。また、CD40アゴニストとの併用治療は、その強力な相乗的な抗腫瘍効力を発揮することができる。
【0032】
CSF-1Rは、CSF-1R遺伝子によってコードされるタンパク質である。CSF-1RはM2マクロファージの産生、分化及び機能を制御し、その結果マクロファージが腫瘍増殖及び転移形成を助け、患者における予後不良をもたらす免疫抑制性サイトカインを分泌する。更に、いくつかのヒトのがん(卵巣がん及び乳がんなど)におけるCSF-1R陽性マクロファージの存在は、血管密度の増加だけでなく臨床的転帰の悪化とも相関することが示されている。選択的にM2様TAMを阻害するCSF-1R阻害剤は、前臨床モデルにおいて活性を示した(DeNardo, D. et al., Cancer Discovery 1 (2011) 54-67; Lin, E. et al., J. Exp. Med. 193 (2001) 727-740)。CSF-1R活性の遮断はTAMの動員の減少をもたらし、化学療法と組み合わせて、相乗作用が腫瘍増殖及び転移負荷の減少をもたらす。最近のデータは、PVNS及びTGCTを有する患者においてCSF-1の過剰発現が検出され、それは部分的にはCSF-1R遺伝子の転座によって媒介されることを示している(West, R.B. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 3 (2006) 690-695)。乳がんにおいて、CSF-1応答遺伝子シグネチャーの存在は、再発及び転移のリスクを予測する(Beck, A. et al., Clin. Cancer Res. 3 (2009) 778-787)。
【0033】
多くの腫瘍は、マクロファージを含む免疫細胞の顕著な浸潤によって特徴付けられる。当初、免疫細胞は腫瘍に対する防御機構の一部と考えられていたが、最近のデータは、マクロファージを含む複数の免疫細胞集団が、実は腫瘍の進行を促進しているかもしれないという見解をサポートするものである。マクロファージはその可塑性によって特徴付けられる。サイトカインの微小環境に応じて、マクロファージはいわゆるM1又はM2サブタイプを呈することができる。M2マクロファージは、腫瘍免疫の抑制に関与している。M2マクロファージは、例えば血管新生及び組織リモデリングなど、増殖を助けるために腫瘍に利用される組織修復機能にも重要な役割を果たしている。腫瘍を促進するM2マクロファージとは対照的に、M1マクロファージは、炎症性サイトカインの分泌、並びに抗原提示及び貪食への関与を介して抗腫瘍活性を呈する(Mantovani, A. et al., Curr. Opin. Immunol. 2 (2010) 231-237)。
【0034】
コロニー刺激因子1(CSF-1)及びIL-10などのサイトカインを分泌することにより、腫瘍細胞はマクロファージを動員してM2サブタイプを成形することができ、一方、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、IFN-ガンマなどのサイトカインはマクロファージをM1サブタイプに向けてプログラミングする。免疫組織化学を用いて、CD68とCD163を共発現するマクロファージ亜集団(M2マクロファージが豊富である可能性が高い)と、CD68+/MHC II+又はCD68+/CD80+免疫表現型を示すサブセット(M1マクロファージを含む可能性が高い)とを区別することが可能である。CD68及びCD163陽性マクロファージの細胞の形状、大きさ及び空間分布は、例えば腫瘍を横切る基質と重要な腫瘍領域におけるM2マクロファージの優先的位置に基づいて、M2マクロファージの腫瘍促進の役割に関する公開されている仮説と一致している。対照的に、CD68+/MHCクラスII+マクロファージは、遍在的に見られる。貪食におけるこれらの仮説的役割は、アポトーシス細胞及び壊死腫瘍領域近傍の、CD163-を除くCD68+/MHCクラスII+の免疫表現型のクラスターに反映される。
【0035】
種々のマクロファージ亜集団のサブタイプ及びマーカー発現は、それらの機能状態にリンクしている。M2マクロファージは、
a) VEGF又はbFGFなどの血管新生因子の分泌により血管新生を増強すること、
b) マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)、増殖因子、及び血流に腫瘍細胞を導いて転移性ニッチを構築する遊走因子の分泌により転移形成を補助すること(Wyckoff, J. et al., Cancer Res. 67 (2007) 2649-2656)
c) IL-4、Il-13、IL-1ra及びIL-10などの免疫抑制性サイトカインを分泌することにより免疫抑制的環境の構築に関与し、その結果制御性T細胞機能を調節すること
によって、腫瘍形成を補助することができる。反対に、CD4陽性T細胞は、前臨床モデルにおいて腫瘍促進マクロファージの活性を増強することが示されている(Mantovani, A. et al., Eur. J. Cancer 40 (2004) 1660-1667; DeNardo, D. et al., Cancer Cell 16 (2009) 91-102)。
【0036】
したがって、いくつかの種類のがん(例: 乳がん、卵巣がん、ホジキンリンパ腫)では、M2サブタイプ腫瘍随伴マクロファージ(TAM)の有病率が予後不良と関連している(Bingle, L. et al., J. Pathol. 3 (2002) 254-265; Orre, M., and Rogers, P.A., Gynecol. Oncol. 1 (1999) 47-50; Steidl, C. et al., N. Engl. J. Med. 10 (2010) 875-885)。最近のデータは、腫瘍におけるCD163陽性マクロファージ浸潤と腫瘍悪性度の相関を示している(Kawamura, K. et al., Pathol. Int. 59 (2009) 300-305)。患者の腫瘍から単離されたTAMは、耐性表現型を有し、腫瘍細胞に対して細胞傷害性ではなかった(Mantovani, A. et al., Eur. J. Cancer 40 (2004) 1660-1667)。しかしながら、細胞傷害性T細胞の存在下におけるTAMの浸潤は、非小細胞肺がんにおける生存率の改善と相関し、したがってこの腫瘍型において更に顕著なM1マクロファージ浸潤を示している (Kawai, O. et al., Cancer 6 (2008) 1387-1395)。
【0037】
CSF-1Rは、受容体チロシンキナーゼのクラスIIIサブファミリーに属し、c-fmsがん原遺伝子によりコードされる。CSF-1又はIL-34の結合は、受容体の二量体化とそれに続く自己リン酸化、及び下流のシグナル伝達カスケードの活性化を誘導する。CSF-1Rの活性化は、単球及びマクロファージの生存、増殖及び分化を調節する(Xiong, Y. et al., J. Biol. Chem. 286 (2011) 952-960)。
【0038】
マクロファージと同じ造血性前駆体に由来する単球系統の細胞及び破骨細胞に加えて、CSF-1R/c-fmsは、いくつかのヒト上皮がん、例えば卵巣がん及び乳がんによって、平滑筋肉腫及びTGCT/PVNS内に、マクロファージと比較して低い発現レベルであるものの、発現することも分かっている。TGCT/PVNSの場合、卵巣がん患者の血清及び腹水における、CSF-1RのリガンドであるCSF-1のレベルの上昇が予後不良と相関している(Scholl, S. et al., Br. J. Cancer 62 (1994) 342-346; Price, F. et al., Am. J. Obstet. Gynecol. 168 (1993) 520-527)。更に、CSF 1Rの恒常的に活性な突然変異体は、NIH3T3細胞を形質転換することができ、これはがん遺伝子の特性の一つである(Chambers, S., Future Oncol 5 (2009) 1429-1440)。
【0039】
ヒトCSF-1R(CSF-1受容体;同義語:M-CSF受容体;マクロファージコロニー刺激因子1受容体、msがん原遺伝子、c-fms、配列番号24)は、1986年以来既知である(Coussens, L., et al., Nature 320 (1986) 277-280)。CSF-1Rは、増殖因子であり、c-fmsがん原遺伝子によりコードされる(例えば、Roth, P. and Stanley, E.R., Curr. Top. Microbiol. Immunol. 181 (1992) 141-167に総説あり)。
【0040】
CSF-1Rは、CSF-1RリガンドCSF-1(マクロファージコロニー刺激因子、M-CSFとも呼ばれる)(配列番号28)及びIL-34(配列番号29)の受容体であり、これらサイトカインの生物学的効果を媒介する(Sherr, C.J., et al., Cell 41 (1985) 665-676; Lin, H., et al., Science 320 (2008) 807-811)。コロニー刺激因子1受容体(c-fmsとも呼ばれる) のクローニングは、Roussel, M.F., et al., Nature 325 (1987) 549-552に初めて記載された。その文献において、CSF-1Rが、Cblに結合することにより受容体の下方制御を調節する抑制性のチロシン969リン酸化の欠損を含むタンパク質のC末端鎖における変化に依存する変換能を有することが示された(Lee, P.S., et al., Embo J. 18 (1999) 3616-3628)。
【0041】
CSF-1Rは、一本鎖の膜貫通型受容体チロシンキナーゼ(RTK)であり、RTKを含有する免疫グロブリン(Ig)モチーフのファミリーのメンバーであり、受容体の細胞外ドメイン(ECD)における5つの反復Ig様サブドメインD1~D5によって特徴付けられる(Wang, Z., et al Molecular and Cellular Biology 13 (1993) 5348-5359)。ヒトCSF-1R細胞外ドメイン(CSF-1R-ECD)(配列番号25)は、5つの細胞外Ig様サブドメインD1-D5のすべてを含む。ヒトCSF-1R断片D1-D3(配列番号26)はそれぞれ、サブドメインD1-D3を含む。配列は、シグナルペプチドなしで列挙される。ヒトCSF-1R断片D4-D5(配列番号27)はそれぞれ、サブドメインD4-D5を含む。
【0042】
現在、CSF-1Rの細胞外ドメインに結合する二つのCSF-1Rリガンドが既知である。そのうち第1のリガンドは、CSF-1(コロニー刺激因子1、M-CSFとも呼ばれる、マクロファージ;ヒトCSF-1、配列番号28)であり、ジスルフィドに結合したホモダイマーとして細胞外に見られる(Stanley, E.R. et al., Journal of Cellular Biochemistry 21 (1983) 151-159; Stanley, E.R. et al., Stem Cells 12 Suppl. 1 (1995) 15-24)。第2のリガンドは、IL-34(ヒトIL-34;配列番号29)(Hume, D. A. , et al, Blood 119 (2012) 1810-1820)である。したがって、一実施態様では、用語「CSF-1Rリガンド」はヒトCSF-1(配列番号28)及び/又はヒトIL-34(配列番号29)を指す。
【0043】
実験のために、ヒトCSF-1の活性149アミノ酸(aa)断片(配列番号28のaa33~181)が使用される。ヒトCSF-1のこの活性149aa断片(配列番号28のaa 33-181)は、CSF-1の3つの主要形態すべてに含まれており、CSF-1Rへの結合を媒介するのに十分である(Hume, D. A. , et al, Blood 119 (2012) 1810-1820)。
【0044】
CSF-1Rシグナル伝達の主な生物学的効果は、マクロファージ系統(破骨細胞を含む)への、造血性前駆体細胞の分化、増殖、遊走、及び生存である。CSF-1Rの活性化は、そのCSF-1RリガンドであるCSF-1(M-CSF)及びIL-34により媒介される。CSF-1(M-CSF)のCSF-1Rに対する結合は、チロシンリン酸化によるキナーゼの活性化及びホモダイマーの形成を誘導する(Li, W. et al, EMBO Journal.10 (1991) 277-288; Stanley, E.R., et al., Mol. Reprod. Dev. 46 1997 - 4 -10)。
【0045】
本明細書で使用される「ヒトCSF-1Rに結合」又は「ヒトCSF-1Rに特異的に結合」又は「ヒトCSF-1Rに結合する」又は「抗CSF-1R抗体」は、KD値1.0x10-8モル/l以下、一実施態様ではKD値1.0x10-9モル/l以下の結合アフィニティーでヒトCSF-1R抗原に特異的結合する抗体を指す。結合アフィニティーは、例えば表面プラズモン共鳴法(スウェーデン、ウプサラのGE-HealthcareのBIAcore(登録商標))などの標準的な結合アッセイで決定される。したがって、本明細書で使用される「ヒトCSF-1Rに結合する抗体」は、KD値1.0x10-8モル/l以下(一実施態様では、1.0x10-8モル/l~1.0x10-13モル/l)、一実施態様ではKD値1.0x10-9モル/l以下(一実施態様では、1.0x10-9モル/l~1.0x10-13モル/l)の結合アフィニティーでヒトCSF-1R抗原に特異的に結合する抗体を指す。
【0046】
一実施態様では、本明細書に記載の併用療法において使用されるヒトCSF-1Rに結合する抗体は、以下からなる群より選択される。
hMab 2F11-c11、hMab 2F11-d8、hMab 2F11-e7、hMab 2F11-f12、及びhMab 2F11-g1
【0047】
これら抗体は、国際公開第2011/070024号に記載されており、本明細書に記載のように以下のVH及びVL配列を含むことを特徴とする。
表1
本発明に記載されるこれらの抗CSF-1R抗体は、ヒトCSF-1Rの細胞外ドメインに結合し、一実施態様では、受容体二量体形成面を構成する膜近位ドメインD4及びD5に結合する。
【0048】
一実施態様では、それらはドメインD1~D3に結合する。一実施態様では、本明細書に記載の併用療法において使用される、ヒトCSF-1Rに結合する抗体は、国際公開第2009/026303号、国際公開第2009/112245号、国際公開第2011/123381号、国際公開第2011/140249号、国際公開第2012/110360号(これらはすべて、参照により援用される)に開示されている。
【0049】
本発明に記載の抗CSF-1R抗体は、受容体のCSF-1、IL-34媒介性及びリガンド非依存性活性化をブロックし、結果としてM1様GM-CSF分化マクロファージを使わずにCSF-1の存在下でin vitroで分化したM2様マクロファージのアポトーシスを誘導する。ヒトの乳がん組織では、M2(CD68+/CD163+)マクロファージ及びCSF 1R発現マクロファージが共局在化している。
【0050】
CD40抗原は、腫瘍壊死因子受容体(TNF-R)ファミリーに属する50kDaの細胞表面糖タンパク質である。(Stamenkovic et al., EMBO J. 8:1403-10 (1989))CD40は、Bリンパ球、樹状細胞、単球、マクロファージ、胸腺上皮、内皮細胞、線維芽細胞、及び平滑筋細胞を含む、多くの正常及び腫瘍細胞型で発現される。(Paulie S. et al., Cancer Immunol. Immunother. 20:23-8 (1985); Banchereau J. et al., Adv. Exp. Med. & Biol. 378:79-83 (1995); Alderson M. R. et al., J. of Exp. Med. 178:669-74 (1993); Ruggiero G. et al., J. of Immunol. 156:3737-46 (1996); Hollenbaugh D. et al., J. of Exp. Med. 182:33-40 (1995); Yellin M. J. et al., J. of Leukocyte Biol. 58:209-16 (1995); and Lazaar A. L. et al., J. of Immunol. 161:3120-7 (1998).)CD40は、すべてのBリンパ腫で、また、すべての固形腫瘍の70%で発現される。恒常的に発現されているが、CD40は、LPS、IL-1ベータ、IFN-ガンマ及びGM-CSFなどの成熟シグナルによって、抗原提示細胞において上方制御される。
【0051】
CD40活性化は、液性及び細胞性免疫応答の調節に重要な役割を果たす。CD40活性化を伴わない抗原提示は、耐性をもたらし得るが、CD40シグナル伝達はそのような耐性を逆転させ、すべての抗原提示細胞(APC)による抗原提示を増強させ、ヘルパーサイトカイン及びケモカインの分泌をもたらし、共刺激分子発現及びシグナル伝達を高め、免疫細胞の細胞溶解反応を刺激する。CD40は、B細胞の増殖、成熟、及びクラスの切り替えに重要な役割を果たす。(Foy T. M. et al., Ann. Rev. of Immunol. 14:591-617 (1996).)CD40シグナル伝達経路の破壊は、異常な血清免疫グロブリンアイソタイプ分布、CD4+T細胞プライミングの欠如、及び二次液性応答の欠陥をもたらす。例えば、X連鎖高IgM症候群は、ヒトCD40L遺伝子の突然変異に関連し、罹患個体がIgMアイソタイプ以外の抗体を産生できないことを特徴とする疾患であり、それは、効果的な免疫応答のためにCD40とCD40Lの間に生産的相互作用が必要であることを示唆している。
【0052】
CD40LによるCD40の結合(engagement)は、CD40細胞質ドメインとTRAF(TNF-R関連因子)との会合をもたらす(Lee H. H. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96:1421-6 (1999); Pullen S. S. et al., Biochemistry 37:11836-45 (1998); Grammar A. C. et al., J. of Immunol. 161:1183-93 (1998); Ishida T. K. et al., Proc. Acad Acad. Sci. USA 93:9437-42 (1996); Pullen S. S. et al., J. of Biol. Chem. 274:14246-54 (1999))。TRAFとの相互作用は、NFカッパB経路とJun/AP1経路の双方の活性化をもたらし得る。(Tsukamoto N. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96:1234-9 (1999); Sutherland C. L. et al., J. of Immunol. 162:4720-30 (1999).)細胞型に応じて、このシグナル伝達は、IL-6(Jeppson J. D. et al., J. of Immunol. 161:1738-42 (1998); Uejima Y. et al., Int. Arch. of Allergy & Immunol. 110:225-32, (1996)、IL-8 (Gruss H. J. et al., Blood 84:2305-14 (1994); von Leoprechting A. et al., Cancer Res. 59:1287-94 (1999); Denfeld R. W. et al., Europ. J. of Immunol. 26:2329-34 (1996))、IL-12 (Cella M. et al., J. of Exp. Med. 184:747-52 (1996); Ferlin W. G. et al., Europ. J. of Immunol. 28:525-31 (1998); Armant M. et al., Europ. J. of Immunol. 26:1430-4 (1996); Koch F. et al., J. of Exp. Med. 184:741-6 (1996); Seguin R. and L. H. Kasper, J. of Infect. Diseases 179:467-74 (1999); Chaussabel D. et al., Infection & Immunity 67:1929-34 (1999))、IL-15 (Kuniyoshi J. S. et al., Cellular Immunol. 193:48-58 (1999))及びケモカイン(MIP1アルファ、MIP1ベータ、RANTES他) (McDyer J. F. et al., J. of Immunol. 162:3711-7 (1999); Schaniel C. et al., J. of Exp. Med. 188:451-63 (1998); Altenburg A. et al., J. of Immunol. 162:4140-7 (1999); Deckers J. G. et al., J. of the Am. Society of Nephrology 9:1187-93 (1998))等のサイトカインの分泌向上;MHCクラスI及びIIの発現増加(Santos-Argumedo L. et al., Cellular Immunol. 156:272-85 (1994));並びに接着分子(例:ICAM)及び共刺激分子(例:B7)の発現増加(Lee H. H. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 96:1421-6 (1999); Grousson J. et al., Archives of Dermatol. SD (Res) 290:325-30 (1998); Katada Y. et al., Europ. J. of Immunol. 26:192-200 (1996); Mayumi M. et al., J. of Allergy & Clin. Immunol. 96:1136-44 (1995); Flores-Romo L. et al., Immunol. 79:445-51 (1993)) (Roy M. et al., Europ. J. of Immunol. 25:596-603 (1995); Jones K. W. and C. J. Hackett, Cellular Immunol. 174:42-53 (1996); Caux C. et al., Journal of Exp. Med. 180:1263-72 (1994); Kiener P. A. et al., J. of Immunol. 155:4917-25 (1995))をもたらす。CD40の関与によって誘導されるサイトカインは、T細胞の生存と活性化を高める。
【0053】
細胞及び免疫機能の増強に加えて、CD40活性化の効果には、ケモカイン及びサイトカインによる細胞の動員及び分化;単球の活性化;細胞溶解性Tリンパ球(CTL)及びナチュラルキラー(NK)細胞の細胞溶解反応の増加;CD40陽性腫瘍におけるアポトーシスの誘導;CD40陽性腫瘍の免疫原性の増強;並びに腫瘍特異的抗体産生が含まれる。また、細胞媒介性免疫応答におけるCD40活性化の役割も十分に確立されており、Grewal et al., Ann. Rev. of Immunol. 16:111-35 (1998); Mackey et al., J. of Leukocyte Biol. 63:418-28 (1998); and Noelle R. J., Agents & Actions -- Suppl. 49:17-22 (1998)で概説されている。
【0054】
クロスプライミングモデル系を用いた研究から、APCのCD40活性化が、細胞溶解性Tリンパ球(CTL)を産生させるためのヘルパーT細胞の必要性に取って代わり得ることが示された。(Bennett et al., Nature 393:478-480 (1998).)CD40L欠損マウスからのエビデンスは、ヘルパーT細胞プライミングにおけるCD40シグナル伝達の明確な必要性を示している。(Grewal I. S. et al., Science 273:1864-7 (1996); Grewal I. S. et al., Nature 378:617-20 (1995).)CD40活性化は、さもなければ寛容原性の抗原担持B細胞をコンピテントAPCに変換する。(Buhlmann J. E. et al., Immunity 2:645-53 (1995).)CD40活性化は、臍帯血前駆細胞の樹状細胞への成熟と分化を誘導する。(Flores-Romo L. et al., J. of Exp. Med. 185:341-9 (1997); Mackey M. F. et al., J. of Immunol. 161:2094-8 (1998).)CD40活性化はまた、単球の機能的樹状細胞への分化を誘導する。(Brossart P. et al., Blood 92:4238-47 (1998).)更にCD40活性化は、APC-CD40誘導サイトカインを介してNK細胞の細胞溶解反応を増強する(Carbone E. et al., J. of Exp. Med. 185:2053-60 (1997); Martin-Fontecha A. et al., J. of Immunol. 162:5910-6 (1999).)。これらの観察は、CD40が、APCの成熟、ヘルパーサイトカインの分泌、共刺激分子の上方制御及びエフェクター機能の増強を誘導することによって、免疫応答の開始及び増強における重要な役割を果たすことを示している。
【0055】
液性及び細胞傷害性免疫応答の開始及び成熟におけるCD40シグナル伝達の重要な役割によって、この系は免疫増強の理想的な標的となる。そのような増強は、一般に活性化APCのクロスプライミングを介して免疫系に提示される腫瘍抗原に対する有効な免疫応答を開始するために特に重要であり得る。(Huang A. Y. et al., Ciba Foundation Symp. 187:229-44 (1994); Toes R. E. M. et al., Seminars in Immunol. 10:443-8 (1998); Albert M. L. et al., Nature 392:86-9 (1998); Bennett S. R. et al., J. of Exp. Med. 186:65-70 (1997).)
【0056】
いくつかのグループがin vitro及びin vivoでの抗腫瘍反応に対するCD40活性化の有効性を実証した。(Toes R. E. M. et al., Seminars in Immunol. 10:443-8 (1998).)2つのグループは、腎細胞がんの肺転移モデル及びウイルス形質転換細胞による皮下腫瘍を用いたが、CD40活性化が腫瘍特異的抗原に対する耐性を逆転させ、結果としてT細胞の効率的な抗腫瘍プライミングをもたらすことを別々に実証した。(Sotomayor E. M. et al., Nature Medicine 5:780-787 (1999); Diehl L. et al., Nature Medicine 5:774-9 (1999).)免疫細胞の非存在下での抗腫瘍活性は、SCIDマウスのヒト乳がん株モデルにおけるCD40L及び抗CD40抗体治療でも報告された。(Hirano A. et al., Blood 93:2999-3007 (1999).)抗CD40抗体によるCD40活性化は、マウスモデルにおいてCD40+及びCD40-リンパ腫を根絶することが最近示された。(French R. R. et al., Nature Medicine 5:548-53 (1999).)更に、Glennie及びその共同研究者による以前の研究は、抗CD40抗体によるシグナル伝達活性は、in vivoでの腫瘍クリアランスを誘導するのに、エフェクターを動員することができる他の抗表面マーカー抗体よりも効果的であると結論づけている。(Tutt A. L. et al., J. of Immunol. 161:3176-85 (1998).)これらの所見と一致して、抗CD40抗体をin vivoでCD40+腫瘍細胞に対する活性について試験した場合、殺腫瘍活性のすべてではないが大半がADCCよりもむしろCD40シグナル伝達と関連していた。(Funakoshi S. et al., J. of Immunotherapy with Emphasis on Tumor Immunol. 19:93-101 (1996).)別の研究では、骨髄樹状細胞をex vivoで様々な薬剤で処理し、in vivo抗腫瘍活性について試験した。これらの研究は、CD40L刺激DCが抗腫瘍応答を開始する、最も成熟し、かつ、最も効果的な細胞であることを証明した。
【0057】
また、抗腫瘍免疫におけるCD40の本質的な役割も、腫瘍ワクチンに対する野生型及びCD40-/-マウスの応答を比較することによって実証されている。これらの研究は、CD40-/-マウスが正常マウスで観察される腫瘍免疫を達成することができないことを示している。(Mackey M. F. et al., Cancer Research 57:2569-74 (1997).)別の研究では、担腫瘍マウスからの脾細胞を腫瘍細胞で刺激し、ex vivoで活性化抗CD40抗体で処理し、その後腫瘍特異的CTL活性が増強されることが示された。(Donepudi M. et al., Cancer Immunol. Immunother. 48:153-164 (1999).)これらの研究は、CD40陽性及び陰性腫瘍の双方に関して、CD40が抗腫瘍免疫において重要な位置を占めることを証明している。CD40はリンパ腫、白血病、多発性骨髄腫、鼻咽頭、膀胱、卵巣及び肝臓のがんの大半、並びにいくつかの乳がん及び結腸直腸がんにおいて発現するため、CD40の活性化は、広範囲の臨床適用を有し得る。
【0058】
本明細書で使用する「CD40アゴニスト」は、CD40/CD40L相互作用をアゴナイズする任意の部分を含む。この文脈で使用されるCD40は、好ましくはヒトCD40を指し、したがってCD40アゴニストは好ましくは、ヒトCD40のアゴニストである。典型的には、このような部分は、「アゴニストCD40抗体」又は「アゴニストCD40Lポリペプチド」であろう。このような抗体は、CD40/CD40L結合相互作用を特異的にアゴナイズする、例えばヒト抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、二重特異性抗体、scFv、及び抗体断片を含む。好ましい一実施態様において、アゴニストCD40抗体は、キメラ、完全ヒト又はヒト化CD40抗体を含む。別の好ましい実施態様において、アゴニストCD40抗体は、キメラ、完全ヒト又はヒト化CD40抗体を含む。
【0059】
「アゴニスト」は細胞上の受容体と結合し、受容体の天然リガンドによって開始される反応又は活性と類似又は同一の反応又は活性を開始する。「CD40アゴニスト」は、次の応答のいずれか又はすべてを誘導する:B細胞の増殖及び/又は分化;ICAM-1、E-セレクチン、VC AM等の分子を介する細胞間接着の上方制御;IL-1、IL-6、IL-8、IL-12、TNF等の炎症誘発性サイトカインの分泌;TRAF(例えばTRAF2及び/又はTRAF3)、NIK(NF-kB誘発キナーゼ)などのMAPキナーゼ、I-カッパBキナーゼ(IKK/ベータ.)、転写因子NF-kB、Ras、及びMEK/ERK経路、PI3K AKT経路、P38 MAPK経路等の経路によるCD40受容体を介するシグナル伝達;XIAP、mcl-1、bcl-x等の分子による抗アポトーシスシグナルの伝達;B及び/又はT細胞のメモリー生成;B細胞抗体産生;B細胞アイソタイプスイッチ、MHCクラスII及びCD80/86等の細胞表面発現の上方制御(但しこれらに限定されない)。
【0060】
アゴニスト活性とは、B細胞応答のアッセイにおいて測定される、ネガティブコントロールにより誘導されるアゴニスト活性よりも少なくとも30%、10 35%、40%、45%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は100%高いアゴニスト活性が意図される。
【0061】
好ましい一実施態様では、CD40アゴニストは、B細胞応答のアッセイで測定される、ネガティブコントロールにより誘導されるアゴニスト活性より少なくとも2倍又は少なくとも3倍大きいアゴニスト活性を有する。
【0062】
したがって、例えば目的のB細胞応答がB細胞増殖である場合、アゴニスト活性は、ネガティブコントロールにより誘導されるB細胞増殖のレベルよりも少なくとも2倍又は少なくとも3倍高いB細胞増殖のレベルの誘導であろう。
【0063】
一実施態様において、CD40に結合しない抗体は、ネガティブコントロールとして機能する。「顕著なアゴニスト活性を含まない」物質は、B細胞応答のアッセイにおいて測定して、ネガティブコントロールによって誘導されるアゴニスト活性よりも多くて約25%高い、好ましくは多くて約20%高い、15%高い、10%高い、5%高い、1%高い、0.5%高い、又は多くても約0.1%高いアゴニスト活性を示すであろう。
【0064】
本明細書で使用される「アゴニストCD40抗体」又は「活性化CD40抗体」又は「アゴニスト又は活性化抗CD40抗体」は、ヒトCD40に結合し、CD40を発現する細胞、組織又は生物に添加すると、1種以上のCD40活性を少なくとも約20%増大させる抗体を意味する。いくつかの実施態様では、該抗体は、CD40活性を少なくとも40%、50%、60%、70%、80%、85%活性化する。
【0065】
いくつかの実施態様では、該活性化抗体は、CD40Lの存在下で添加される。
【0066】
別の好ましい実施態様では、アゴニストCD40抗体のアゴニスト活性は以下のように測定される。
【0067】
[抗CD40抗体による細胞株Jyの免疫原性の増加]
CD40陽性JIYOYE細胞(ATCC CCL 87)(「Jy細胞」)を培養し、RPMI培地中で維持した。JIYOYE細胞を、完全RPMI培地中で、本発明の抗CD40抗体(21.4.1)又はアイソタイプ適合抗体(抗KLH)と共にインキュベートした。その後、細胞を洗浄し、25mgのマイトマイシンC(Sigma)/7mlの培地で60分間処理した。その後、この細胞を単離ヒトT細胞と1:100の比で37℃で6日間インキュベートした(5% CO2)。その後、T細胞を収集し、洗浄し、CTL活性のレベルを、新鮮クロム51(マサチューセッツ州ボストンのNew England Nuclear)標識JIYOYE細胞に対して決定した。特異的CTL活性を、特異的細胞溶解%=(細胞溶Jy(cpm)-自然細胞溶解(cpm))/(全細胞溶解(cpm)-自然細胞溶解(cpm))として計算した。
【0068】
好ましい一実施態様において、本明細書で使用されるアゴニストCD40抗体は、(上述の)in vitro JIYOYE細胞(ATCC CCL 87)アッセイで測定して、CD40陽性JIYOYE細胞(ATCC CCL 87)における免疫原性を少なくとも50%増加させる。
【0069】
本明細書において抗CD40活性化抗体とも呼ばれるアゴニストCD40抗体は、いくつかの重要な機構を介して腫瘍根絶に寄与し得る。その中でも最も重要なのが、腫瘍抗原プロセシング及び提示の増強、並びにCD40陽性腫瘍細胞自体の抗原提示又は免疫原性の増強のための宿主樹状細胞の活性化であり、これは結果として腫瘍特異的CD4+及びCD8+リンパ球の活性化をもたらす。更なる抗腫瘍活性がCD40シグナル伝達の他の免疫増強効果(ケモカイン及びサイトカインの産生、単球の動員及び活性化(recruitment and activation monocytes)、並びにCTL及びNK細胞溶解反応の増強)によって媒介され得、また、アポトーシスの誘導による又はADCCをもたらす液性応答を刺激することによるCD40+腫瘍の直接殺傷によって媒介され得る。アポトーシス細胞及び瀕死細胞もまた、CD40活性化APCによってプロセシング及び提示される腫瘍特異的抗原の重要な供給源になり得る。
【0070】
本発明は、ヒトCD40に結合し、CD40アゴニストとして作用する単離された抗体又はその抗原結合部分について記載する。
【0071】
アゴニストCD40抗体は、例えばBeatty et al., Science 331 (2011) 1612-1616, R. H. Vonderheide et al., J Clin Oncol 25, 876 (2007); Khalil, M, et al., Update Cancer Ther. 2007 June 1; 2(2): 61-65, an agonist CD40 rat anti-mouse IgG2a mAb FGK45に記載されており、また、モデル抗体はS. P. Schoenberger, et al, Nature 393, 480 (1998));マウス交差反応性アゴニストCD40抗体クローン1C10はSantos-Argumedo L. et al., Cell Immunol. 156 (1994) 272-285及びHeath AW et al. Eur J Immunol 24 (1994) 1828-34に記載されている。臨床試験の例は、例えばCP-870、893及びダセツズマブ(アゴニストCD40抗体、CAS番号880486-59-9、SGN-40; ヒト化S2C6抗体)である(Khalil, M, et al, Update Cancer Ther. 2007 June 1; 2(2): 61-65)。別のアゴニスト抗体は、国際公開第 2016/023960号の54頁のADC-1013である。
【0072】
好ましい一態様において、アゴニストCD40抗体はCP-870,893であり、これはファイザーによって開発された完全ヒトIgG2アゴニストCD40抗体である。それは3.48×10-10MのKDでヒトCD40に結合するが、CD40Lの結合はブロックしない(例えばCP-870,893が抗体21.4.1として記載されている米国特許第7338660号又はEP第1476185号を参照のこと)。CP-870,893(米国特許第7338660号の抗体21.4.1)は、(a)QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKAS GYTFTGYYMHWVRQAPGQGLEWMGWINPDSGGTNYAQKFQGRVTMTRDTSISTAYMELNRLRSDDTAVYYCARDQPLGYCTNGVCSYFDYWGQGTLVTVSS(配列番号11)(米国特許第7338660号の配列番号42に相当)の重鎖可変ドメインアミノ酸配列(b)DIQMTQSPSSVSASVGDRVTITCRASQGIYSWLAWYQQKPGKAPNLLIYTASTLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQANIFPLTFGGGTKVEIK(配列番号12)(米国特許第7338660号の配列番号44に相当)の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列を含むこと;及び/又はアメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)寄託番号PTA-3605を有するハイブリドーマ21.4.1により産生された抗体の重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインアミノ酸配列を有することによって特徴付けられる。
ダセツズマブ及びその他のヒト化S2C6抗体は、米国特許第6946129号及び米国特許第8303955号に記載されている。
【0073】
したがって、好ましい一実施態様において、抗CSF-1R抗体との併用療法において使用されるアゴニストCD40抗体は、(a)QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKAS GYTFTGYYMHWVRQAPGQGLEWMGWINPDSGGTNYAQKFQGRVTMTRDTSISTAYMELNRLRSDDTAVYYCARDQPLGYCTNGVCSYFDYWGQGTLVTVSS(配列番号11)(米国特許第7338660号の配列番号42に相当)の重鎖可変ドメインアミノ酸配列(b)DIQMTQSPSSVSASVGDRVTITCRASQGIYSWLAWYQQKPGKAPNLLIYTASTLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQANIFPLTFGGGTKVEIK(配列番号12)(米国特許第7338660号の配列番号44に相当)の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列を含むこと;及び/又はアメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)寄託番号PTA-3605を有するハイブリドーマ21.4.1により産生された抗体の重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインアミノ酸配列を有することによって特徴付けられる。
ダセツズマブ及びその他のヒト化S2C6抗体は、米国特許第6946129号及び米国特許第8303955号に記載されている。
【0074】
好ましい一実施態様では、抗CSF-1R抗体との併用療法において使用されるアゴニストCD40抗体は、ヒト化S2C6抗体である。ヒト化S2C6抗体は、例えばマウスmAB S2C6(PTA-110としてATCCに寄託されている)の重鎖及び軽鎖可変ドメインのCDR1、2及び3をベースとする。マウスmAB S2C6の重鎖及び軽鎖可変ドメインのCDR1、2及び3は、米国特許第6946129号に記載及び開示されている。一実施態様では、アゴニストCD40抗体は、ダセツズマブである。一実施態様では、アゴニストCD40抗体は、(a)EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYSFTGYYIHWVRQAPGKGLEWVARVIPNAGGTSYNQKFKGRFTLSVDNSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCAREGIYWWGQGTLVTVS(配列番号13)の重鎖可変ドメインアミノ酸配列(b)DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRSSQSLVHSNGNTFLHW YQQKPGKAPKLLIYTVSNRFSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFAT YFCSQTTHVPWTFGQGTKVEIKR(配列番号14)の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列を含むことによって特徴付けられる。
【0075】
一実施様態では、アゴニストCD40抗体は、ヒト抗体である。本明細書で使用される場合、「ヒト抗体」とは、可変及び定常ドメイン配列がヒト配列に由来する抗体である。ヒトアゴニストCD40抗体は、全開示が参照により本明細書に組み込まれる国際公開第03/040170号に詳細に記載されている。ヒト抗体は、ヒト患者における非ヒト抗体の使用に関連する免疫原性及びアレルギー反応を最小限に抑えると期待されるため、本発明の治療方法において実質的な利点を提供する。
【0076】
本発明に有益なその他の例示的なヒト抗CD40抗体には、国際公開第03/040170号に記載の、3.1.1、3.1.1 H-A78T、3.1.1 H-A78T-V88A-V97A、7.1.2、10.8.3、15.1.1、21.4.1、21.2.1、22.1.1、22.1.1 H-C109A、23.5.1、23.25.1、23.28.1、23.28.1H-D16E、23.29.1、24.2.1、3.1.1H-A78T-V88A-V97A/3.1.1L-L4M-L83V、及び23.28.1L-C92Aと呼ばれる抗体のアミノ酸配列を有する抗体、並びにこれらの例示的抗体のいずれかのCDR又は可変領域を含む抗体が含まれる。
【0077】
本発明の一実施態様では、本明細書に記載の併用療法において使用されるヒトCSF-1Rに結合する抗体は、
a) 配列番号1の重鎖可変ドメインVH及び配列番号2の軽鎖可変ドメインVL、又は
b) 配列番号3の重鎖可変ドメインVH及び配列番号4の軽鎖可変ドメインVL、又は
c) 配列番号5の重鎖可変ドメインVH及び配列番号6の軽鎖可変ドメインVL、又は
d) 配列番号7の重鎖可変ドメインVH及び配列番号8の軽鎖可変ドメインVL、又は
e) 配列番号9の重鎖可変ドメインVH及び配列番号10の軽鎖可変ドメインVL
を含むことを特徴とし;また、
本併用療法において使用されるアゴニストCD40抗体は、
a) 配列番号11の重鎖可変ドメインVH及び配列番号12の軽鎖可変ドメインVL
を含むことを特徴とし;又は
【0078】
本発明の好ましい一実施態様では、本明細書に記載の併用療法において使用されるヒトCSF-1Rに結合する抗体は、
配列番号5の重鎖可変ドメインVH及び配列番号6の軽鎖可変ドメインVLを含むことを特徴とし、また、
本併用療法において使用されるアゴニストCD40抗体は、
配列番号11の重鎖可変ドメインVH及び配列番号12の軽鎖可変ドメインVL
を含むことを特徴とする。
【0079】
特定の実施態様では、がん又は腫瘍治療は、がん細胞の増殖を阻害し、腫瘍の重量又は体積の増加を阻害又は防止し、かつ/又は腫瘍の重量又は体積のの減少を引き起こす。いくつかの実施態様では、がん治療は、患者の生存期間を延ばす。特定の実施態様では、腫瘍増殖は、治療されていないものと比較して、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%又は75%,阻害される。いくつかの実施態様では、がんは、CD40陽性である。
【0080】
本発明において、当該技術分野で代替的に知られている用語「CD40L」又は「CD154」は、すべての哺乳動物(例えばヒト、ラット、非ヒト霊長類、マウス)CD40Lの断片、変異体、オリゴマー及びコンジュゲートを含み、これらは、少なくとも対応する哺乳動物CD40ポリペプチド、例えばヒトCD40に結合する。本発明において、投与されるCD40Lは、CD40Lポリペプチド又は前記CD40LポリペプチドをコードするDNAを含み得る。このようなCD40Lポリペプチド及びDNAは特に、Immunex社の米国特許第6410711号;米国特許第6391637号;米国特許第5981724号;米国特許第5961974及び米国特許出願公開第20040006006号に開示されている天然CD40L配列、並びにそれらの断片、変異体及びオリゴマーを含み、これらすべての特許及び出願、並びにこれらに開示されているCD40L配列は、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0081】
CD40Lポリペプチドは本発明によるCD40アゴニストとして使用することができ、特に、Immunex社の米国特許第6410711号;米国特許第6391637号;米国特許第5981724号;米国特許第5961974及び米国特許出願公開第20040006006号に開示されている天然CD40L配列、並びにそれらの断片、変異体及びオリゴマーを含み、これらすべての特許及び出願、並びにこれらに開示されているCD40L配列は、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0082】
[PD-1/PD-L1/PD-L2経路]
T細胞活性化を調節する重要なネガティブ共刺激シグナルは、プログラム死-1受容体(PD-1)(CD279)、そのリガンド結合パートナーPD-L1(B7-H1、CD274;配列番号31)及びPD-L2(B7-DC、CD273)によって提供される。PD-1のネガティブな調節の役割は、自己免疫を生じさせる傾向のあるPD-1のノックアウト(Pdcd1-/-)によって明らかになった。Nishimura et al., Immunity 11: 141-51 (1999); Nishimura et al., Science 291: 319-22 (2001)。PD-1は、CD28及びCTLA-4に関連しているが、ホモ二量体化を可能にする、膜に近いシステインを欠いている。PD-1の細胞質ドメインは、免疫受容体チロシンベース阻害モチーフ(ITIM、V/IxYxxL/V)を含む。PD-1はPD-L1とPD-L2にのみ結合する。Freeman et al., J. Exp. Med. 192: 1-9 (2000); Dong et al., Nature Med. 5: 1365-1369 (1999); Latchman et al., Nature Immunol. 2: 261-268 (2001); Tseng et al., J. Exp. Med. 193: 839-846 (2001)。
【0083】
PD-1は、T細胞、B細胞、ナチュラルキラーT細胞、活性化された単球及び樹状細胞(DC)上に発現し得る。PD-1は、活性化されているが刺激されてはいないヒトCD4+及びCD8+T細胞、B細胞、及び骨髄によって発現される。これは、CD28とCTLA-4のもっと制限された発現とは対照的である。Nishimura et al., Int. Immunol. 8: 773-80 (1996); Boettler et al., J. Virol. 80: 3532-40 (2006)。活性化されたヒトT細胞からクローニングされた、少なくとも4つのPD-1変異体が存在し、それには(i)エクソン2、(ii)エクソン3、(iii)エクソン2及び3又は(iv)エクソン2~4を欠く転写が含まれる。Nielsen et al., Cell. Immunol. 235: 109-16 (2005)。PD-1Δex3を例外として、すべての変異体は、休止末梢血単核細胞(PBMC)において完全長PD-1と同様のレベルで発現する。すべての変異体の発現は、ヒトT細胞の活性化に際し、抗CD3及び抗CD28によって顕著に誘発される。PD-1Δex3変異体は、膜貫通ドメインを欠き、自己免疫において重要な役割を果たす可溶型CTLA-4に類似している。Ueda et al., Nature 423: 506-11 (2003)。この変異体は、関節リウマチ患者の骨液及び漿液中に濃縮される。Wan et al., J. Immunol. 177: 8844-50 (2006).
【0084】
2つのPD-1リガンドは、発現パターンを異にしている。PD-L1は、マウスT及びB細胞、CD、マクロファージ、間葉系幹細胞及び骨髄由来のマスト細胞上に恒常的に発現する。Yamazaki et al., J. Immunol. 169: 5538-45 (2002)。PD-L1は、広い範囲の非造血細胞 (例えば角膜細胞、肺細胞、血管上皮細胞、肝臓非実質細胞、間葉系幹細胞、膵島、胎盤のシンシチウム栄養芽層、ケラチノサイト等)上に発現し[Keir et al., Annu. Rev. Immunol. 26: 677-704 (2008)]、活性化後複数の細胞型で上方制御される。I型及びII型双方のインターフェロンIFNがPD-L1を上方制御する。Eppihimer et al., Microcirculation 9: 133-45 (2002); Schreiner et al., J. Neuroimmunol. 155: 172-82 (2004)。細胞株におけるPD-L1の発現は、MyD88、TRAF6及びMEKが抑制されると低下する。Liu et al., Blood 110: 296-304 (2007)。JAK2は、PD-L1誘発にも関与している。Lee et al., FEBS Lett. 580: 755-62 (2006); Liu et al., Blood 110: 296-304 (2007)。ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)及びAktシグナル伝達を修飾する細胞ホスファターゼであるホスファターゼ・テンシン・ホモログ(PTEN)の欠失又は抑制は、がんにおける転写後のPD-L1発現を増加させた。Parsa et al., Nat. Med. 13: 84-88 (2007)。
【0085】
PD-L2の発現は、PD-L1より制限されている。PD-L2は、DC、マクロファージ、及び骨髄由来のマスト細胞上に誘導的に発現する。PD-L2は、静止腹膜B1細胞の約半分から三分の二にも発現するが、従来のB2 B細胞上には発現しない。Zhong et al., Eur. J. Immunol. 37: 2405-10 (2007)。PD-L2+B1細胞は、ホスファチジルコリンに結合し、細菌抗原に対する自然免疫応答にとって重要であり得る。IFN-ガンマによるPD-L2の誘発は、部分的にNF-κBに依存する。Liang et al., Eur. J. Immunol. 33: 2706-16 (2003)。PD-L2は、GM-CF、 IL-4及びIFN-ガンマにより単球及びマクロファージにも誘発され得る。Yamazaki et al., J. Immunol. 169: 5538-45 (2002); Loke et al., PNAS 100:5336-41 (2003)。
【0086】
PD-1シグナル伝達は典型的には、細胞増殖よりサイトカイン生成に大きな影響を有し、IFN-ガンマ、TNF-アルファ及びIL-2生成に大きな影響を有する。PD-1が媒介する抑制性シグナル伝達も、TCRシグナル伝達の強度に依存しており、低レベルのTCR刺激でより大きな阻害が送達される。このような低減は、CD28による共刺激により[Freeman et al., J. Exp. Med. 192: 1027-34 (2000)]又はIL-2の存在により[Carter et al., Eur. J. Immunol. 32: 634-43 (2002)]克服され得る。
【0087】
PD-L1及びPD-L2によるシグナル伝達が二方向性であるというエビデンスが増えている。すなわち、TCR又はBCRシグナル伝達の調節に加えて、シグナル伝達は、PD-L1を発現する細胞とPD-L2を発現する細胞へと連続的になされる。ワルデンシュトレームガンマグロブリン血症患者から単離された、天然ヒト抗PD-L2抗体による樹状細胞の処理は、MHC II又はB7共刺激分子を上方制御しなかったが、このような細胞は、より多量の炎症誘発性サイトカイン、特にTNF-アルファ及びIL-6を生成し、T細胞の増殖を刺激した。nGUYEN ET AL., j. eXP. mED. 196: 1393-98 (2002)。また、この抗体でのマウスの治療は、(1)移植されたb16メラノーマに対する耐性を高め、かつ、腫瘍特異的CTLを急速に誘導し;Radhakrishnan et al., J. Immunol. 170: 1830-38 (2003); Radhakrishnan et al., Cancer Res. 64: 4965-72 (2004); Heckman et al., Eur. J. Immunol. 37: 1827-35 (2007);(2)アレルギー性喘息のマウスモデルにおいて気道炎症性疾患の発症を阻止した;Radhakrishnan et al., J. Immunol. 173: 1360-65 (2004); Radhakrishnan et al., J. Allergy Clin. Immunol. 116: 668-74 (2005)。
【0088】
樹状細胞(「DC」)への逆シグナル伝達の更なるエビデンスは、可溶性PD-1と共に培養された骨髄由来のDCの研究により得られたものである(Ig定常領域に融合させたPD-1 ECドメイン-「s-PD-1」)。Kuipers et al., Eur. J. Immunol. 36: 2472-82 (2006)。このsPD-1は、抗PD-1の投与により可逆的にDC活性化を阻害し、IL-10の生成を増大させた。
【0089】
加えて、複数の研究は、PD-1とは無関係な、PD-L1又はPD-L2の受容体を示している。B7.1は、既にPD-L1の結合パートナーとして同定されている。Butte et al., Immunity 27: 111-22 (2007)。化学的架橋の研究は、PD-L1及びB7.1がそれらのIgV様ドメインを介して相互作用しうることを示唆している。B7.1:PD-L1相互作用は、阻害シグナルをT細胞中に誘導することができる。B7.1によるCD4+T細胞上でのPD-L1のライゲーション又はPD-L1によるCD4+T細胞上でのB7.1のライゲーションは、阻害シグナルを送達する。CD28及びCTLA-4を欠くT細胞は、抗CD3陽性B7.1コーティングビーズで刺激されたとき、増殖及びサイトカイン生成の低減を示す。B7.1の受容体のすべて (すなわち、CD28、CTLA-4及びPD-L1)を欠くT細胞では、T細胞増殖とサイトカイン生成は、もはや抗CD3陽性B7.1コーティングビーズによって阻害されない。これは、B7.1がCD28及びCTLA-4の非存在下でT細胞上のPD-L1により特異的に作用することを示している。同様に、PD-1を欠くT細胞は、抗CD3陽性PD-L1コーティングビーズの存在下で刺激されたとき、増殖とサイトカイン生成の低減を示したが、これは、T細胞上でのB7.1に対するPD-L1ライゲーションの抑制効果を実証するものである。T細胞がPD-L1のすべての既知の受容体を欠くとき (すなわちPD-1とB7.1もない)、T細胞増殖は、抗CD3陽性PD-L1コーディングビーズによっても、もはや減少しなかった。したがって、PD-L1は、B7.1又はPD-1により、T細胞に対し抑制効果を発揮することができる。
【0090】
B7.1とPD-L1の直接的相互作用は、共刺激に対する現行の理解は不十分であり、T細胞上におけるこれら分子の発現に対する重要性を過小評価していることを示唆する。PD-L1-/-T細胞の研究は、T細胞上のPD-L1がT細胞サイトカイン生成を下方制御できることを示す。Latchman et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101: 10691-96 (2004)。PD-L1とB7.1の双方がT細胞、B細胞、DC及びマクロファージ上に発現することから、これらの細胞型上でB7.1とPD-L1との間の指向性相互作用が存在する可能性がある。加えて、非造血細胞上のPD-L1は、T細胞上のB7.1及びPD-1と相互作用することができ、それらの調節にPD-L1が関与しているのかどうかという疑問を投げかけている。B7.1:PD-L1相互作用の阻害効果の一つの可能な説明は、T細胞PD-L1が、CD28との相互作用からAPC B7.1を捕捉又は分離させ得るということである。
【0091】
結果として、PD-1、B7.1又はこれらの双方とPD-L1との相互作用をブロックすることにより、PD-L1がネガティブな共刺激シグナルをT細胞及び他の抗原提示細胞に送ることを防ぐことを含む、PD-L1によるシグナル伝達の拮抗作用は、感染症(例えば急性及び慢性)に反応する免疫及び腫瘍免疫を増強させる可能性が高い。加えて、本発明の抗PD-L1抗体は、PD-1:PD-L1シグナル伝達の他の成分のアンタゴニスト、例えばアンタゴニスト抗PD-1抗体及び抗PD-L2抗体と組み合わせることができる。
【0092】
用語「ヒトPD-L1」は、ヒトタンパク質PD-L1(配列番号31、典型的にはPD-1シグナル伝達)を指す。本明細書で使用される「ヒトPD-L1への結合」又は「ヒトPD-L1に特異的に結合」又は「ヒトPD-L1に結合する」又は「抗PD-L1抗体」又は「アンタゴニスト抗PD-L1抗体」は、KD値1.0x10-8モル/l以下、一実施態様ではKD値1.0x10-9モル/l以下の結合アフィニティーでヒトPD-L1抗原に特異的に結合する抗体を指す。結合アフィニティーは、例えば表面プラズモン共鳴法(スウェーデン、ウプサラのGE-HealthcareのBIAcore(登録商標))などの標準的な結合アッセイで決定される。したがって、本明細書で使用される「ヒトPD-L1に結合する抗体」は、KD値1.0x10-8モル/l以下(一実施態様では、1.0x10-8モル/l~1.0x10-13モル/l)、一実施態様ではKD値1.0x10-9モル/l以下(一実施態様では、1.0x10-9モル/l~1.0x10-13モル/l)の結合アフィニティーでヒトPD-L1抗原に特異的に結合する抗体を指す。
【0093】
一実施態様では、本明細書に記載の併用療法において使用されるヒトPD-L1に結合する抗体は、本明細書に記載の以下のVH及びVL配列を含むことを特徴とするアテゾリズマブである。
表2:
【0094】
本発明の一実施態様では、本明細書に記載の併用療法において使用されるヒトCSF-1Rに結合する抗体は、
a) 配列番号1の重鎖可変ドメインVH及び配列番号2の軽鎖可変ドメインVL、又は
b) 配列番号3の重鎖可変ドメインVH及び配列番号4の軽鎖可変ドメインVL、又は
c) 配列番号5の重鎖可変ドメインVH及び配列番号6の軽鎖可変ドメインVL、又は
d) 配列番号7の重鎖可変ドメインVH及び配列番号8の軽鎖可変ドメインVL、又は
e) 配列番号9の重鎖可変ドメインVH及び配列番号10の軽鎖可変ドメインVL
を含むことを特徴とし;また、
本併用療法において使用されるヒトPD-L1に結合する抗体は、
a) 配列番号15の重鎖可変ドメインVH及び配列番号16の軽鎖可変ドメインVL
を含むことを特徴とし;又は
【0095】
本発明の好ましい一実施態様では、本明細書に記載の併用療法において使用されるヒトCSF-1Rに結合する抗体は、
配列番号5の重鎖可変ドメインVH及び配列番号6の軽鎖可変ドメインVLを含むことを特徴とし、また、
本併用療法において使用されるヒトPD-L1に結合する抗体は、
配列番号15の重鎖可変ドメインVH及び配列番号16の軽鎖可変ドメインVL
を含むことを特徴とする。
【0096】
[TLR及びToll様受容体(TLR)リガンド、特にTLR9及びTLR9アゴニスト]
がん治療のための様々な実験的Toll様受容体アゴニストが記載されている(Galluzzi et al., OncoImmunology, 1:5, (2012) 699-716)。Toll様受容体(TLR)は一般に、リポ多糖及び二本鎖RNAなどの保存された微生物成分に応答して自然免疫系を活性化する能力で最もよく知られている、プロトタイプのパターン認識受容体(PRR)である。蓄積しているエビデンスは、TLRの機能が侵入病原体に対する自然免疫応答の誘発に限定されないことを示している。TLRは実際、組織修復及び傷害誘導性再生、並びにがんに対する適応免疫応答に関与することが示されている。特に、TLR4シグナル伝達は、樹状細胞による細胞関連腫瘍抗原の効率的なプロセシング及び交差提示に必要とされるようであり、事実上、いくつかの抗がん薬物に対する最適な治療応答の基礎となっている。したがって、TLRは、抗がん免疫応答の活性化/増強のための優れた治療標的を構成する。この考えに沿って、例えばColey毒素(死滅した化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)と霊菌(Streptococcus pyogenes)との混合物)及びカルメット・ゲラン菌(bacillus Calmette-Guerin)(BCG、元々は結核に対するワクチンとして開発されたマイコバクテリウム・ボビス(Mycobacterium bovis)の弱毒株)(これらは双方とも一貫した抗がん反応と関連している)などの古くから使われている調製物は、TLR2及びTLR4シグナル伝達を活性化する。
【0097】
現在受け入れられているモデルによれば、TLRは、二量体又はヘテロ二量体として作用し、原形質膜MAMP(proteo-lipidic MAMP)に主に結合するTLR、すなわちTLR1、TLR2、TLR4、TLR5、TLR6及びTLR10)ででもエンドゾーム(微生物核酸を検出するTLR、すなわちTLR3、TLR7、TLR8、TLR9)においても発現する。ヒトTLRの中で唯一オーファン受容体であるTLR10もまた、ファゴソームにおいてTLR2と共局在することが示されており、これは、TLR10がアシル化リポペプチドを結合する能力をTLR2と共有し得ることを示唆している。しかしながら、この問題に関する決定的なデータはまだ報告されていない。TLR11-13は、ヒトゲノムにおいてはコードされていない。マウスでは、TLR11-13は中枢神経系において恒常的に発現され、嚢虫症21に応答して数倍の誘導を受ける。TLR11は、トキソプラズマ・ゴンディによって発現されるプロフィリン様タンパク質を認識し、小胞体に局在していると報告されている。TLR13は細胞内に局在するようにも見え、そこでそれは水疱性口内炎ウイルスを特異的に検出するであろう。これまでのところ、TLR12のリガンド特異性及び細胞内局在は未発見のままである。
【0098】
したがって要約すると、異なるToll様受容体は、異なる機能、構造及び発現パターンを有する。その結果、これらのリガンド及びアゴニストもまた、異なる機能及び作用様式を有する。例えばLPS、すなわちエンドトキシンとしても知られる、TLR2及びTLR4の天然リガンドは、TLRの存在が疑われてもいなかった1960年代に早くも発見されていた抗がん特性を有する。
【0099】
Toll様受容体(TLR)は、自然免疫系において重要な役割を果たすタンパク質の一種である。Toll様受容体は、微生物由来の構造的に保存された分子を認識する、マクロファージ及び樹状細胞などのセンチネル細胞において通常発現される単一の、膜貫通型非触媒受容体である。これらの微生物が皮膚又は腸管粘膜などの物理的障壁を突破すると、それらは免疫細胞応答を活性化するTLRによって認識される。TLRには、TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10、TLR11、TLR12及びTLR13が含まれるが、最後の2つはヒトにおいては発見されていない。(Mahla, RS, et al, Front Immunol 4 (2013) 248)。
【0100】
[TLRリガンド]
Toll様受容体(及び他の自然免疫受容体)は、その特異性のために進化の過程で容易に変化することはできず、絶えず脅威(すなわち病原体又は細胞ストレス)に関連する分子を認識し、これらの脅威に対して非常に特異的である(すなわち、生理学的条件下で通常発現される自己分子と間違われることがない)。この要件を満たす病原体関連分子は、病原体の機能にとって重要であって、突然変異によって変化することは難しいと考えられており、進化的に保存されていると言われる。病原体における幾分保存された特徴には、細菌細胞表面リポ多糖(LPS)、リポタンパク質、リポペプチド及びリポアラビノマンナン;細菌鞭毛由来のフラジェリンなどのタンパク質;ウイルスの二本鎖RNA;又は細菌性及びウイルス性DNAの非メチル化CpGアイランド;並びに真核生物DNAのプロモーターに見られるCpGアイランドのもの;並びにある種の他のRNA及びDNA分子が含まれる。ほとんどのTLRについて、リガンド認識特異性は現在、遺伝子ターゲティング(「遺伝子ノックアウト」としても知られる)によって確立されているが、これは、マウスにおいて個々の遺伝子を選択的に欠失させることができる技術である。
【0101】
既知のTLRリガンドの概要については、以下の表を参照のこと(Waltenbaugh C, et al Immunology. Lippincott’s Illustrated reviews. Philadelphia: Wolters Kluwer Health/Lippincott Williams & Wilkins. (2008) p. 17)。
表3:
【0102】
Toll様受容体活性化によって引き起こされる常同的な炎症反応は、Toll様受容体の内因性活性化因子が自己免疫疾患に関与するかもしれないという推測を導いた。TLRは、線維素原(血液凝固に関与)、熱ショックタンパク質(HSP)、HMGB1、細胞外マトリックス成分及び自己DNA(通常はヌクレアーゼによって分解されるが、炎症及び自己免疫条件下では、内因性タンパク質と不育剛体を形成することができ、これらのヌクレアーゼに対して耐性となり、エンドソームTLR又はTLR9へのアクセスを得る)を含む宿主分子への結合が疑われている。これらの内因性リガンドは通常、非生理学的細胞死の結果として産生される(Kawai, T. et al; Nature Immunology. 11 (2010) 373-384)。
【0103】
様々なTLRのリガンドの概要
TLR-1:- 細菌リポタンパク質及びペプチドグリカン
TLR-2:- 細菌ペプチドグリカン
TLR-3:- 二本鎖RNA
TLR-4:- リポ多糖
TLR-5:- 細菌鞭毛
TLR-6:- 細菌リポタンパク質
TLR-7:- 一本鎖RNA、細菌及びウイルス
TLR-8:- 一本鎖RNA、細菌及びウイルス、貪食細菌RNA.[30]
TLR-9:- CpG DNA
TLR-10:- 不明
TLR-11:- トキソプラズマ・ゴンディ由来のプロフィリン、おそらく尿路病原菌
TLR-12:- トキソプラズマ・ゴンディ由来のプロフィリン
TLR-13:- 細菌リボソームRNA
【0104】
TLR9は主に、B細胞、単球、マクロファージ及び形質細胞様樹状細胞のエンドソームコンパートメントにおいて見出される(Galluzzi et al., OncoImmunology, 1:5, (2012) 699-716)。TLR9主リガンドは細菌性/ウイルス性DNAであり、非メチル化CpGオリゴデオキシヌクレオチドの頻度が高いという点でその哺乳動物の対応物とは異なる。確かに、哺乳動物DNAは免疫刺激活性を有しないが、細菌性/ウイルス性DNAの投与はin vivoで強力なTh1免疫応答を誘導し、TLR9-/-マウスではこれは完全に抑制される。CpGオリゴデオキシヌクレオチド(又はCpG ODN)は、シチジン三リン酸デオキシヌクレオチド(「C」)、続いてグアニジン三リン酸デオキシヌクレオチド(「G」)を含む短い一本鎖合成DNA分子である。「p」は、連続したヌクレオチド間のホスホジエステル結合を指すが、いくつかのODNは、代わりに修飾ホスホロチオエート(PS)骨格を有する。これらのCpGモチーフがメチル化されていないとき、それらは免疫刺激剤として作用する(Weiner, GJ; et al, PNAS 94 (1997) 10833-7)。
【0105】
CpGモチーフは、微生物ゲノムに豊富に存在するが脊椎動物ゲノムには稀であるため、病原体関連分子パターン(PAMP)と見なされる(Bauer, S; Current Topics in Microbiology and Immunology 270 (2002) 145-54)。CpG PAMPは、パターン認識受容体(PRR)Toll様受容体9(TLR9)によって認識され、ヒト及び他の高等霊長類のB細胞及び形質細胞様樹状細胞(pDC)でのみ恒常的に発現される(Rothenfusser, S; et al, Human immunology 63 (2002) 1111-9)。
【0106】
合成CpG ODNは、典型的なホスホジエステル骨格の代わりに部分的又は完全にホスホロチオエート化された(PS)骨格と、3’末端、5’末端又はその双方にポリGテールとを有するという点で、微生物DNAと異なる。PS修飾は体内のDNaseなどのヌクレアーゼによる分解からODNを保護し、ポリGテールは細胞取り込みを高める(Dalpke, AH et al, Immunology 106 (2002) 102-12)。ポリGテールは、高分子量の凝集体を生じる分子間四分子(intermolecular tetrads)を形成する。この凝集体は、ポリG配列自体ではなく、該配列が与える活性の増大に関与している。
【0107】
ODN 1826などの非メチル化CpGモチーフ(CpG ODN)を含むこのような合成オリゴデオキシヌクレオチドは、アジュバントとして広く研究されてきた(Steinhagen F. et al., 2011; Vaccine 29(17):3341-55)。このようなCpGモチーフは、哺乳動物DNAと比較して、細菌性DNA中に20倍高い頻度で存在する(Hemmi H. et al., 2000. Nature 408: (740-5)。CpG ODNは、ヒトB細胞及び形質細胞様樹状細胞(pDC)上に発現するTLR9をアゴナイズし、それによりTh1優勢の免疫応答を誘導する(Coffman et al., 2010. Immunity 33(4):492-503)。げっ歯類及び非ヒト霊長類で行われた前臨床試験、並びにヒトの臨床試験は、CpG ODNがワクチン特異的抗体反応を顕著に改善できることを実証した(Steinhagen F. et al., 2011; Vaccine 29(17):3341-55)。
【0108】
多数の配列が、CpG二量体の数及び位置、並びにCpG二量体に隣接する正確な塩基配列を変化させてTLR9を刺激することが示されている。これにより、それらの配列、二次構造、及びヒト末梢血単核球(PBMC)に対する効果に基づいて、すべてがTLR9アゴニストであるCpG ODNのクラス又はカテゴリーの創設に至った。CpG ODNsの3つの主なクラスは、A、B及びCクラスであり、これらは免疫活性が異なっている(Krug A. et al., 2001, Eur J Immunol, 31(7): (2154-63)。更に、CpG ODNは、種特異的にTLR9を活性化する(Bauer, S. et al., 2001, PNAS, 98(16):9237-42)。第1のAのクラスODNの1つであるODN 2216は、2001年にKrugらによって記述された (上記参照)。このクラスのODNは、それが大量のI型インターフェロン(最も重要なものはIFNα)の産生を刺激し、pDCの成熟を誘導するという点で、前述のBクラスのODN(すなわちODN 2006)とは明らかに異なっていた。
【0109】
AクラスのODNはまた、間接的サイトカインシグナル伝達を介したNK細胞の強力な活性化剤でもある。AクラスのODNは典型的には、ヌクレアーゼによる分解に抵抗し、ODNの寿命を延ばす7-10のPS修飾塩基を片方の末端又は両末端に含む。上記の規則は厳密にクラスを定義するが、これらの「規則」内の配列のばらつきは考えられる。配列に対する変更は応答の大きさに影響を与えることにも留意されたい。例えば、内部パリンドローム配列は長さが4~8塩基対で、塩基の順序が変わり得るが、他のいくつかの配列と比較した場合、5’-Pu Pu CG Pu Py CG Py Py-3’というパターンが最も活性であることが見出された。DNA鎖のいずれかの末端に見出されるポリGテールは、長さ及び数さえ異なり得るが、その存在は分子の活性にとって重要である。
【0110】
BクラスのODN(すなわちODN 2007)は、ヒトB細胞及び単球の成熟の強力な刺激因子である。刺激因子はまた、pDCの成熟を刺激するが、それはAクラスのODN及び非常に少量のIFNαよりも少ない程度である。このクラスで最も強力なODNは、3つの6mer配列を有する。BクラスのODNは、それをワクチンアジュバントとして理想的にならしめる、強力な液性免疫応答を誘導する能力ゆえに、治療薬として広く研究されてきた。
【0111】
ODN 1826は、マウスTLR9に特異的なBタイプのCpG ODNである。BタイプのCpG ODNは、1つ以上のCpGジヌクレオチドを含む完全なホスホロチオエート骨格を含み、B細胞を強く活性化することができる(Krug A. et al., 2001, Eur J Immunol, 31(7): (2154-63)。マウス反応性代替アゴニストであるODN 1826は、多数の動物モデルにおいてアジュバントとして試験されている(Bauer, S. et al., 2001, PNAS, 98(16):9237-42)。マウスでの研究は、ODN 1826投与が抗原提示細胞の活性化及びTh1免疫応答を示すI型IFN抗ウイルス活性8-9を誘導できることを示した(Longhi Mp. et al., 2009, J Exp Med 206: (1589-602)。
【0112】
更に、担腫瘍げっ歯類へのBタイプのCpGオリゴヌクレオチドの投与(単独で、又は化学療法剤若しくはペプチドワクチンと組み合わせて)は、強力な抗がん効果を発揮すると報告されている。2000年4月に、腫瘍学的適応症に対するCpG-7909の安全性と効力をテストするための初期第I/II相臨床試験が開始された。ほぼ同時期に、CpG-7909は、がんとは無関係の適応症のためのアジュバント(主に抗ウイルスワクチン)として広く研究され始めたが、重篤な副作用も示さず、効果を促している。
【0113】
過去10年間で、CpG-7909(単剤として、又は化学療法及び/又はワクチン接種のアプローチとの併用)の安全性及び抗がんポテンシャルが、白血病、リンパ腫、基底細胞がん、メラノーマ1(1melanoma)、食道扁平上皮がん、NSCLC、腎細胞がん及び前立腺がんの患者での研究を含め、多数の第I/II相臨床試験で研究されてきた。アガトリモド(3CpGモチーフを含む合成24量体オリゴヌクレオチドのトリコサナトリウム(tricosasodium)塩;ファイザー)GNKG168(CpG ODN;SBIバイオテック)、IMO-2055(非メチル化CpGジヌクレオチドを含む合成オリゴヌクレオチド;アイデラ・ファーマシューティカルズ)、MGN-1703(Mologen)など、いくつかのTLR9アゴニストが知られており、臨床試験で現在開発されている。通常、これらのTLR9アゴニストは、様々ながんの治療に使用される。
【0114】
Schroder KらのJ Leukoc Biol.81(6)(2007) 1577-90は、TLRアゴニスト(非メチル化CpG含有DNA(CpG DNA))、マウスTlR9発現の調節に関し、IFN-ガンマがマウスマクロファージのCpG DNAに対する応答を増幅する分子機構を明らかにしている。
【0115】
用語「Toll様受容体9」(TLR9、CD289;配列番号32)は、Toll様受容体(TLR)ファミリーのタンパク質を指し、これは病原体認識と自然免疫の活性化において基本的役割を果たしている。TLRは、ショウジョウバエからヒトまで高度に保存されており、構造的及び機能的類似性を共有している。TLRは、感染病原体上に発現する病原体関連分子パターン(PAMP)を認識し、有効な免疫の発生に必要なサイトカインの産生を媒介する。種々のTLRが異なる発現パターンを示す。この遺伝子は、脾臓、リンパ節、骨髄及び末梢血白血球等の免疫細胞が豊富な組織で優先的に発現する。マウス及びヒトにおける研究は、この受容体が細菌性DNA中の非メチル化CpGジヌクレオチドに対する細胞応答を媒介して、自然免疫応答を開始することを示している。
【0116】
TLR9は主に、B細胞、単球、マクロファージ及び形質細胞様樹状細胞のエンドソームコンパートメントにおいて見出される(Galluzzi et al., OncoImmunology, 1:5, (2012) 699-716)。TLR9主リガンドは細菌性/ウイルス性DNAであり、非メチル化CpGオリゴデオキシヌクレオチドの頻度が高いという点でその哺乳動物の対応物とは異なる。確かに、哺乳動物DNAは免疫刺激活性を有しないが、細菌性/ウイルス性DNAの投与はin vivoで強力なTh1免疫応答を誘導し、TLR9-/-マウスではこれは完全に抑制される。CpGオリゴデオキシヌクレオチド(又はCpG ODN)は、シチジン三リン酸デオキシヌクレオチド(「C」)、続いてグアニジン三リン酸デオキシヌクレオチド(「G」)を含む短い一本鎖合成DNA分子である。「p」は、連続したヌクレオチド間のホスホジエステル結合を指すが、いくつかのODNは、代わりに修飾ホスホロチオエート(PS)骨格を有する。これらのCpGモチーフがメチル化されていないとき、それらは免疫刺激剤として作用する(Weiner, GJ; et al, PNAS 94 (1997) 10833-7)。したがって、「Toll様受容体9アゴニスト」(TLR9アゴニスト)は、Toll様受容体9への結合及びTLR9免疫応答の刺激を特徴とする。例えば、一実施態様では、Toll様受容体9アゴニスト(TLR9アゴニスト)は、ヒト形質細胞様樹状細胞(pDC)上のToll様受容体9への結合によって、及びこのような形質細胞様樹状細胞(pDC)におけるIFN-アルファ、IL-6及び/又はIL-12の誘導(IFN-アルファ、IL-6及び/又はIL-12のレベルの上昇)によって特徴付けられる。
【0117】
CpGモチーフは、微生物ゲノムに豊富に存在するが脊椎動物ゲノムには稀であるため、病原体関連分子パターン(PAMP)と見なされる(Bauer, S; Current Topics in Microbiology and Immunology 270 (2002) 145-54)。CpG PAMPは、パターン認識受容体(PRR) Toll様受容体9(TLR9)によって認識され、ヒト及び他の高等霊長類のB細胞及び形質細胞様樹状細胞(pDC)でのみ恒常的に発現される(Rothenfusser, S; et al, Human immunology 63 (2002) 1111-9)。
【0118】
合成CpG ODNは、典型的なホスホジエステル骨格の代わりに部分的又は完全にホスホロチオエート化された(PS)骨格と、3’末端、5’末端又はその双方にポリGテールとを有するという点で、微生物DNAと異なる。PS修飾は体内のDNaseなどのヌクレアーゼによる分解からODNを保護し、ポリGテールは細胞取り込みを高める(Dalpke, AH et al, Immunology 106 (2002) 102-12)。ポリGテールは、高分子量の凝集体を生じる分子間四分子を形成する。この凝集体は、ポリG配列自体ではなく、該配列が与える活性の増大に関与している。
【0119】
ODN 1826などの非メチル化CpGモチーフ(CpG ODN)を含むこのような合成オリゴデオキシヌクレオチドは、アジュバントとして広く研究されてきた(Steinhagen F. et al., 2011; Vaccine 29(17):3341-55)。このようなCpGモチーフは、哺乳動物DNAと比較して、細菌性DNA中に20倍高い頻度で存在する(Hemmi H. et al., 2000. Nature 408: (740-5)。CpG ODNは、ヒトB細胞及び形質細胞様樹状細胞(pDC)上に発現するTLR9をアゴナイズし、それによりTh1優勢の免疫応答を誘導する(Coffman et al., 2010. Immunity 33(4):492-503)。げっ歯類及び非ヒト霊長類で行われた前臨床試験、並びにヒトの臨床試験は、CpG ODNがワクチン特異的抗体反応を顕著に改善できることを実証した(Steinhagen F. et al., 2011; Vaccine 29(17):3341-55)。
【0120】
多数の配列が、CpG二量体の数及び位置、並びにCpG二量体に隣接する正確な塩基配列を変化させてTLR9を刺激することが示されている。これにより、それらの配列、二次構造、及びヒト末梢血単核球(PBMC)に対する効果に基づいて、すべてがTLR9アゴニストであるCpG ODNのクラス又はカテゴリーの創設に至った。CpG ODNsの3つの主なクラスは、A、B及びCクラスであり、これらは免疫活性が異なっている(Krug A. et al., 2001, Eur J Immunol, 31(7): (2154-63)。更に、CpG ODNは、種特異的にTLR9を活性化する(Bauer, S. et al., 2001, PNAS, 98(16):9237-42)。第1のAクラスのODNの1つであるODN 2216は、2001年にKrugらによって記述された(上記参照)。このクラスのODNは、それが大量のI型インターフェロン(最も重要なものはIFNα)の産生を刺激し、pDCの成熟を誘導するという点で、前述のBクラスのODN (すなわちODN 2006)とは明らかに異なっていた。
【0121】
AクラスのODNはまた、間接的サイトカインシグナル伝達を介したNK細胞の強力な活性化剤でもある。AクラスのODNは典型的には、ヌクレアーゼによる分解に抵抗し、ODNの寿命を延ばす7-10のPS修飾塩基を片方の末端又は両末端に含む。上記の規則は厳密にクラスを定義するが、これらの「規則」内の配列のばらつきは考えられる。配列に対する変更は応答の大きさに影響を与えることにも留意されたい。例えば、内部パリンドローム配列は長さが4~8塩基対で、塩基の順序が変わり得るが、他のいくつかの配列と比較した場合、5’-Pu Pu CG Pu Py CG Py Py-3’というパターンが最も活性であることが見出された。DNA鎖のいずれかの末端に見出されるポリGテールは、長さ及び数さえ異なり得るが、その存在は分子の活性にとって重要である。
【0122】
BクラスのODN(すなわちODN 2007)は、ヒトB細胞及び単球の成熟の強力な刺激因子である。刺激因子はまた、pDCの成熟を刺激するが、それはAクラスのODN及び非常に少量のIFNαよりも少ない程度である。このクラスで最も強力なODNは、3つの6mer配列を有する。BクラスのODNは、それをワクチンアジュバントとして理想的にならしめる、強力な液性免疫応答を誘導する能力ゆえに、治療剤として広く研究されてきた。
【0123】
ODN 1826は、マウスTLR9に特異的なBタイプのCpG ODNである。BタイプのCpG ODNは、1つ以上のCpGジヌクレオチドを含む完全なホスホロチオエート骨格を含み、B細胞を強く活性化することができる(Krug A. et al., 2001, Eur J Immunol, 31(7): (2154-63)。マウス反応性代替アゴニストであるODN 1826は、多数の動物モデルにおいてアジュバントとして試験されている(Bauer, S. et al., 2001, PNAS, 98(16):9237-42)。マウスでの研究は、ODN 1826投与が抗原提示細胞の活性化及びTh1免疫応答を示すI型IFN抗ウイルス活性8-9を誘導できることを示した(Longhi Mp. et al., 2009, J Exp Med 206: (1589-602)。
【0124】
更に、担腫瘍げっ歯類へのBタイプのCpGオリゴヌクレオチドの投与(単独で、又は化学療法剤若しくはペプチドワクチンと組み合わせて)は、強力な抗がん効果を発揮すると報告されている。2000年4月に、腫瘍学的適応症に対するCpG-7909の安全性と効力をテストするための初期第I/II相臨床試験が開始された。ほぼ同時期に、CpG-7909は、がんとは無関係の適応症のためのアジュバント(主に抗ウイルスワクチン)として広く研究され始めているが、重篤な副作用も示さず、効果を促している。
【0125】
過去10年間で、CpG-7909(単剤として、又は化学療法及び/又はワクチン接種のアプローチとの併用)の安全性及び抗がんポテンシャルが、白血病、リンパ腫、基底細胞がん、メラノーマ1(1melanoma)、食道扁平上皮がん、NSCLC、腎細胞がん及び前立腺がんの患者での研究を含め、多数の第I/II相臨床試験で研究されてきた。アガトリモド(3CpGモチーフを含む合成24量体オリゴヌクレオチドのトリコサナトリウム(tricosasodium)塩;ファイザー)GNKG168(CpG ODN;SBIバイオテック)、IMO-2055(非メチル化CpGジヌクレオチドを含む合成オリゴヌクレオチド;アイデラ・ファーマシューティカルズ)、MGN-1703(Mologen).など、いくつかのTLR9アゴニストが知られており、臨床試験で現在開発されている。通常、これらのTLR9アゴニストは、様々ながんの治療に使用される。
【0126】
非メチル化CpGモチーフを含む細菌性及び合成DNAは、TLR9のアゴニストとして作用し、Th1型免疫応答プロファイルを誘導する。TLR9アゴニストの免疫刺激作用は多因子性であり、ヌクレオチド配列、骨格の性質及び特定の構造モチーフの存在に依存する。誘導されたサイトカインプロファイルに基づいて、3つの異なるタイプのTLR9アゴニスト、A、B及びCクラスが記述されている。TLR9アゴニストの各クラスは、異なる免疫プロファイルを生成する構造(又は構造なし)の形成を可能にする異なるヌクレオチド配列から構成される。
【0127】
TLR9のアゴニストとして作用するオリゴヌクレオチドの構造活性相関は体系的に研究された(Kandimalla, E.R. and Agrawal, S. (2005) in Toll and Toll Receptors: An Immunologic Perspective (Rich, T., ed.), pp. 181-212, Kluwer Academic/Plenum Publishers, New York )。オリゴヌクレオチド中のCpGモチーフの存在は、TLR9刺激に必要とされる。ホスホジエステル及びホスホロチオエート骨格を有するオリゴヌクレオチドは、TLR9媒介性免疫応答を刺激する。ホスホロチオエート骨格オリゴヌクレオチドは、ホスホジエステルオリゴヌクレオチドよりも、遍在するヌクレアーゼによる分解を受けにくいため、一般的に使用あれている。ヌクレオチド間ホスホジエステル結合への硫黄原子の導入は、Rp及びSpジアステレオ異性体の形成をもたらし、ホスホロチオエート結合のRpジアステレオマーは、Spジアステレオマーよりも強いTLR9媒介性免疫応答を刺激する。シトシン(C)とグアニン(G)の間及びそれらと隣接するリン酸塩の負電荷もまた、TLR9媒介性活性に必要である。これらの位置にメチルホスホネート結合を組み入れることによる電荷の中和は、免疫刺激活性の喪失をもたらす。更にTLR9活性化は、CpGジヌクレオチドに隣接する配列、ヌクレオチド骨格の性質及び二次構造にも依存する。
【0128】
[隣接配列はTLR9刺激において重要な役割を果たす]
CpGモチーフのC又はGヌクレオチドの糖環の2’位に化学修飾が導入されると、TLR9アゴニストの免疫刺激活性が失われる。更に、隣接配列中にメチルホスホネート結合、2’-アルキル若しくは3’-デオキシ若しくは-アルキルリボヌクレオシド、非ヌクレオチドリンカー又は無塩基ヌクレオチド等の化学修飾を含むTLR9アゴニストの研究は、CpGジヌクレオチドの5´の4番目から6番目のヌクレオチド位置に組み込まれた置換は免疫刺激活性を著しく高めることを示している。一般に、CpGジヌクレオチドの遠位の3´隣接配列に組み込まれた修飾は、その修飾の性質に応じて効果がある。
【0129】
[TLR9は刺激のためにアゴニストの遊離5´末端を必要とする]
両5’末端を介して結合した2つのCpGオリゴヌクレオチドは、2つのCpGモチーフがあるにもかかわらず、免疫細胞を活性化しない。同じオリゴヌクレオチドがそれらの両3´末端を介して連結されている場合、それらは1つの5´末端を有する親CpGオリゴヌクレオチドよりも高くかつ異なるサイトカインプロファイルを生じる。これらは、TLR9活性化のためのアクセス可能又は遊離5’末端の必要性と、受容体が5’末端から配列を読み取ることを実証した最初の研究である。転写因子NF-κBは2つの5´末端を含むTLR9アゴニストによって急速に活性化されるが、これらの化合物は、J774細胞におけるMAPK(マイトジェン活性化プロテインキナーゼ)経路に対して従来のTLR9アゴニストと同じ活性を示有する。
【0130】
これらの研究は、2つの5’末端を含むアゴニストが受容体の二量体化を促進し、免疫反応を急速に活性化することを示唆している。更にTLR9活性化は、遊離5´末端と合成免疫刺激モチーフの適切な提示を通して調節され、下流のサイトカイン誘導プロファイルの変化をもたらし得る。これらの結果と一致して、最近の研究は、TLR9が二量体形態で存在し、一本鎖オリゴヌクレオチドに結合することを示した。但し、CpGモチーフを含有するオリゴヌクレオチドのみが受容体におけるコンフォメーション変化を引き起こし、免疫シグナル伝達経路の活性化をもたらす。
【0131】
両3’末端を介したオリゴヌクレオチドの結合は、TLR9の最適な活性化のために2つの5´末端を提供するだけでなく、3´エキソヌクレアーゼに対する安定性も向上させる。ホスホジエステル骨格を持ち、両3’末端を介して結合した5及び6ntほどに短いオリゴヌクレオチドは、強力なTLR9アゴニストとして作用し、免疫応答を生成する。更に、TLR9アゴニストを含有する新しい構造体の経口投与は、強力な粘膜免疫応答を誘導し、抗原とのアジュバントとして作用し、胃腸管におけるTLR9アゴニストのより高い安定性によってマウスモデルにおけるピーナッツアレルギーを予防及び逆転させる。
【0132】
[TLR9刺激に必要なシトシン及びグアニンの官能基]
上記のように、構造及びコンフォメーションを変化させる、ジヌクレオチド内に導入された特定の化学修飾は、アゴニストの免疫刺激活性の喪失をもたらす。そのような修飾の1つは、TLR9アゴニストのCpGモチーフ中のシトシンの5位にあるメチル基の置換である。脊椎動物はこの特徴を利用して、自己DNAと、非メチル化CpGモチーフをより多く含有する細菌性DNAのそれを区別する。
【0133】
シトシンに代わる、5-OH-dC、dU、dP、1-(2’-デオキシ-β-D-リボフラノシル)-2-オキソ-7-デアザ-8-メチル-プリン、N3-Me-dC及びN4-Et-dC等の種々のピリミジンアナログ(Y)の作用(Kandimalla, E.R., et al (2001) Bioorg. Med. Chem. 9, 807-813; Kandimalla, E.R., et al, S. (2003) PNAS. 100, 14303-14308; or Putta, M.R., et al, S. (2006) Nucleic Acids Res. 34 (3231-3238)TLR9の認識におけるグアニンの異なる官能基の役割を理解するために、CpGにおいてグアニンの代わりに、7-デアザ-dG、N1-Me-dG、2-アミノ-D-プリン、ネブラリン、2-アミノ-dA、7-デアザ-D-キサンチン、K塩基及びdI等のいくつかのプリン核酸塩基(R)が試験された(Kandimalla, E.R., et al (2001) Bioorg. Med. Chem. 9, 807-813; Kandimalla, E.R., et al. <2003> PRT 100, 14303-14308; Putta, M.R., et al, (2006) Nucleic Acids Res. 34, 3231-3238; Kandimalla, E.R., et al (2003) Nucleic Acids Res. 31, 2393-2400; 又は Kandimalla, E.R., et al. <2005> PRT 102 (6925-6930)。これらの研究は、免疫調節のための新しい合成ヌクレオチドモチーフ(YpG、CpR)の開発をもたらし、特定の複素環塩基変異体のTLR9による受容を実証した。
【0134】
TLR9の新規の合成アゴニスト(S. Agrawal and E.R. Kandimalla, Biochemical Society Transactions (2007) 35, (1461-1467)):上記の新しい構造体と合成免疫刺激モチーフとの組み合わせは、本発明者らにTLR9の新規合成アゴニストのコンビナトリアルライブラリーを作製するためのツールを提供した。マウス、ヒト及びサルの系での、2つの5’末端を持ち、合成CpRジヌクレオチドを異なるヌクレオチド組成で含むいくつかのTLR9アゴニストの体系的な研究は、ヌクレオチド配列及び二次構造が免疫応答の調節において役割を果たすことを示唆する。これらの研究に基づいて、本発明者らはTLR9の合成アゴニストの2つの異なる群を大まかに同定した。
【0135】
一実施態様では、Toll様受容体9アゴニスト(TLR9アゴニスト)は、形質細胞様樹状細胞(pDC)におけるIFN-アルファ、IL-6及び/又はIL-12の誘導(IFN-アルファ、IL-6及び/又はIL-12のレベルの上昇)によって特徴付けられる。一実施態様では、TLR9アゴニストは、ヒト形質細胞様樹状細胞(pDC)におけるIFN-アルファの上昇(後述の又は例えば国際公開第2010/088395号に記載のサンドイッチELISAによって測定して)によって特徴付けられる。
【0136】
[ヒトpDCにおける本発明の併用療法において使用されるTLR9アゴニストによるIFN-アルファ誘導(IFN-アルファ、IL-6及び/又はIL-12のレベルの上昇)を測定するためのアッセイ]:
ヒトPBMC単離:新たに採取した健康なボランティアの血液(マサチューセッツ州ボストンのCBR Laboratories)からの末梢血単核球(PBMC)をフィコール密度勾配遠心法(Histopaque-1077, Sigma)によって単離する。
【0137】
ヒトpDC分離:ヒト形質細胞様樹状細胞(pDC)は、BDC A4細胞単離キット(Miltenyi Biotec)を用いたポジティブセレクションにより、製造者の指示に従って、新たに得られた健康なヒトのボランティアの血液PBMCから単離された。
【0138】
ヒトpDCを、1ml当たり1x10個の細胞を用いてウェルディッシュにプレーティングする。表Iの個々の免疫調節化合物をDPBS(pH7.4;Mediatech)に溶解し、0、0.1、0.3、1.0、3.0又は10.0マイクロg/mlの用量で細胞培養物に添加する。その後、細胞を37℃で24時間インキュベートし、上清をluminexマルチプレックスアッセイ又はELISAアッセイのために収集した。
【0139】
IFN-アルファのレベルでは、IL-6及び/又はIL-12がサンドイッチELISAによって測定される。サイトカイン抗体及び標準物質を含む必要な試薬は、PharMingenから購入することができる。
【0140】
IFN-アルファは、長年抗ウイルスサイトカインとして知られている。それは、細胞発生を刺激し、それ故CG含有DNA分子の作用を促進する。IFN-アルファはまた、マウス及びヒトの悪性腫瘍において抗腫瘍活性を示し、かつ部分的には、細胞傷害性T細胞を活性化し、それにより腫瘍細胞の細胞溶解の可能性を増大させることによって移植腫瘍細胞の腫瘍形成性を減少させることができる。抗腫瘍細胞傷害性にも重要なNK胞及びマクロファージの活性は、IFN-アルファによっても増加する(Brassard et al., J. Leukoc. Biol. 2002 71 (565-81)。したがって、本開示のDNAコンストラクトでの刺激でIFNアルファの量を増加させることは、がんの治療に有益であると期待される。
【0141】
本発明の一実施態様では、本発明の併用治療において使用されるTLR9アゴニストは、a)シトシン-リン酸-グアノシン(CpG)モチーフ(CpG ODN)b)ピリミジン-リン酸-グアノシン(YpG)モチーフ(YpG ODN)又はc)シトシン-リン酸-プリン(CpR)モチーフ(CpR ODN)を含有するオリゴデオキシヌクレオチドである。
【0142】
本発明の一実施態様では、本発明の併用治療において使用されるTLR9アゴニストは、a)シトシン-リン酸-グアノシン(CpG)モチーフ(CpG ODN)b)ピリミジン-リン酸-グアノシン(YpG)モチーフ(YpG ODN)又はc)プリン-リン酸-グアノシン(RpG)モチーフ(RpG ODNs)を含有するオリゴデオキシヌクレオチドであり、TLR9アゴニストはTLR9を刺激する(一実施態様では、TLR9アゴニストは形質細胞様樹状細胞(pDC)の成熟を誘導し;一実施態様では、TLR9アゴニストはヒトB細胞成熟によって特徴付けられる)。
【0143】
本発明の一実施態様では、本発明の併用治療において使用されるTLR9アゴニストは、シトシン-リン酸-グアノシン(CpG)モチーフ(CpG ODN)を含有するオリゴデオキシヌクレオチドである。
【0144】
本発明の一実施態様では、本発明の併用治療において使用されるTLR9アゴニストは、AクラスのCpG ODNである。
【0145】
一実施態様では、本発明の併用治療において使用されるTLR9アゴニストは、
a) 5’末端又は3’末端又は両末端のポリG配列
b) 内部パリンドローム配列
c) 内部パリンドローム配列内に含まれるGCジヌクレオチド、及び
d) 部分的にPS修飾された骨格
を含むオリゴデオキシヌクレオチドである。
【0146】
AクラスのCpG ODNは典型的には、ヌクレアーゼによる分解に抵抗し、ODNの寿命を延ばす7-10のPS修飾塩基を片方の末端又は両末端に含む。上記の規則は厳密にクラスを定義するが、これらの規則内の配列のばらつきは考えられる。内部パリンドローム配列は長さが4~8塩基対で、塩基の順序が変わり得るが、他のいくつかの配列と比較した場合、5’-Pu Pu CG Pu Py CG Py Py-3’というパターンが最も活性であることが見出された。DNA鎖のいずれかの末端に見出されるポリGテールは、長さ及び数が変化し得る。
【0147】
一実施態様では、AクラスのCpG ODN(Xueqing Liang,et al, Blood. 2010 June 17; 115(24): 5041-5052 )は、CpG ODN 2216(5’-ggGGGACGATCGTCgggggG-3’)(配列番号17) CpG ODN PB4(5’-tcgGACGATCGTCgggggG-3’)(配列番号18);又はCpG ODN 1002(5’-ggGGTCGTTCGTCGTTgggggG-3’)(配列番号19)からなる群より選択される。
【0148】
本発明の一実施態様では、本発明の併用治療において使用されるTLR9アゴニストは、BクラスのCpG ODNである。
【0149】
一実施態様では、本発明の併用治療において使用されるTLR9アゴニストは、
a) 1つ以上の6mer非メチル化シトシン-リン酸-グアノシン(CpG)モチーフ5’-Pu Py C G Py Pu-3’(1つ以上の6mer 5’-RYCGYR-3’ 6mer(R=A又はG;Y=T又はC))
b) 完全にホスホロチオエート化された(PS修飾)骨格;及び
c) 長さ18-28ヌクレオチド
を含むオリゴデオキシヌクレオチドである。
【0150】
一実施態様では、BクラスのCPG ODNは、CpG-28、CpG-685(GNKG168;CpG ODN;SBIバイオテック)、CpG-684及びCpG-7909(CPG-ODN 2006、PF-3512676、Agatolimod)からなる群より選択される。
【0151】
CpG-7909(CpG 2006、PF-3512676、Agatolimod)は、複数のシトシン-リン酸-グアノシン(CpG)モチーフ又はその誘導体の1つ(トリコサナトリウム塩など)を含有する、合成の24量体ホスホチオエートオリゴデオキシヌクレオチド (d(P-チオ)(T-C-G-T-C-G-T-T-T-T-G-T-C-G-T-T-T-T-G-T-C-G-T-T)DNA)(5’-tcgtcgttttgtcgttttgtcgtt-3’) (配列番号20)である。その調製は、例えば国際公開第9818810号又は米国特許第7223741号に記載されている。
【0152】
CpG-685(GNKG168; CpG ODN; SBIバイオテック)は、免疫刺激活性を有する、合成、21量体、非メチル化CpGモチーフベースのオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)(685、5’-tcgtcgacgtcgttcgttctc-3’)(配列番号21)である。B細胞における細胞応答を媒介するToll様受容体9を直接標的とするように設計された、21量体の完全ホスホロチオエート化オリゴヌクレオチドであるCpG685(GNKG168)は、SCIDマウスにおいて抗腫瘍効果を示し、ヒト慢性リンパ性白血病(B-CLL)の治療用にSBIバイオテック株式会社により臨床開発中である。今回、その前臨床薬理研究を支援するために、高感度かつ特異的なアッセイが血漿及び細胞可溶化物において開発された。CpGオリゴデオキシヌクレオチドGNKG168は、Toll様受容体9(TLR9)に結合してそれを活性化し、エンドサイトーシスによって細胞内に取り込まれる。一旦内在化すると、それは免疫グロブリン(Ig)、インターフェロン(IFN)、インターロイキン (IL)及び腫瘍壊死因子(TNF)等の複数のサイトカイン放出をもたらす多数のシグナル伝達経路を活性化し得る。
【0153】
CpG-684は、合成、23量体、非メチル化CpGモチーフベースのオリゴデオキシヌクレオチド (ODN) 684、5’-tcgacgttcgtcgttcgtcgttc-3’(配列番号22);完全にホスホロチオエート化された骨格による、免疫活性を有する非メチル化CpGモチーフ(CpG ODN)の複数の反復を含有するCpG-28合成非メチル化CpGモチーフベースのオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)(5’-TAAACGTTATAACGTTATGACGTCAT-3’)(配列番号23)(Carpentier AF, et al Front Biosci. 2003;8:e115-e127; Meng Y, et al, Int J Cancer. 2005;116:992-997;又はCarpentier A, et al. Neuro-Oncology 2006;8:60-66)である。エンドサイトーシスを介して細胞に入ると、CpG-28は多数のシグナル伝達経路を活性化し、その結果複数のサイトカインの放出をもたらす。CpG-28は、Bリンパ球、樹状及びNK細胞の直接的活性化を伴う免疫調節特性を有し、その結果、自然免疫及び抗体依存性細胞傷害性(ADCC)の刺激がもたらされる。更に、この作用物質は、サイトカイン(IL-12及びIFNガンマ)の放出を介してT細胞応答を間接的に調節し、Th1(ヘルパー)表現型への優先的シフトを誘導してCD8+細胞傷害性を高める。
【0154】
本発明の一実施態様では、本発明の併用治療において使用されるTLR9アゴニストは、ピリミジン-リン酸-グアノシン(YpG)モチーフ(YpG ODN)を含有するオリゴデオキシヌクレオチドである。
【0155】
本発明の一実施態様では、本発明の併用治療において使用されるTLR9アゴニストは、シトシン-リン酸-プリン(CpR)モチーフ(CpR ODN)を含有するオリゴデオキシヌクレオチドである。
【0156】
本発明の一実施態様では、本発明の併用治療において使用されるTLR9アゴニストは、IMO-2055(アイデラ)(3’-3’-結合構造及び合成CpR(R=2’-デオキシ-7-デアザグアノシンからなるODN)モチーフ)である。
【0157】
本発明の一実施態様では、本発明の併用治療において使用されるTLR9アゴニストは、a)シトシン-リン酸-グアノシン(CpG)モチーフ(CpG ODN)b)ピリミジン-リン酸-グアノシン(YpG)モチーフ(YpG ODN)又はc)シトシン-リン酸-プリン(CpR)モチーフ(CpR ODN)を含有するオリゴデオキシヌクレオチドである。
【0158】
本発明の一実施態様では、本発明の併用治療において使用されるTLR9アゴニストは、dSLIM(登録商標)技術に基づくオリゴデオキシヌクレオチドベースのCpGモチーフ含有環状ODN(例えば、国際公開第2012/085291号に記載のMologen社のMGN-1703)である(この技術は国際公開第2001/07055号に記載されている)。
【0159】
本発明の一実施態様では、TLR9アゴニストは、CpG ODN 2216 CpG ODN 1002 CpG-28、CpG-685、CpG-684、CpG-7909、IMO-2055又はMGN-1703からなる群より選択される。本発明の一実施態様では、TLR9アゴニストは、CpG-685、CpG-684、CpG-7909、IMO-2055又はMGN-1703からなる群より選択される。一実施様態では、TLR9アゴニストは、CpG-7909、IMO-2055又はMGN-1703からなる群より選択される。
【0160】
本発明の一実施態様では、本明細書に記載の併用療法において使用されるヒトCSF-1Rに結合する抗体は、
a) 配列番号1の重鎖可変ドメインVH及び配列番号2の軽鎖可変ドメインVL、又は
b) 配列番号3の重鎖可変ドメインVH及び配列番号4の軽鎖可変ドメインVL、又は
c) 配列番号5の重鎖可変ドメインVH及び配列番号6の軽鎖可変ドメインVL、又は
d) 配列番号7の重鎖可変ドメインVH及び配列番号8の軽鎖可変ドメインVL、又は
e) 配列番号9の重鎖可変ドメインVH及び配列番号10の軽鎖可変ドメインVL
を含むことを特徴とし;
かつ
本併用療法において使用されるTLR9アゴニストは、a)シトシン-リン酸-グアノシン(CpG)モチーフ(CpG ODN)b)ピリミジン-リン酸-グアノシン(YpG)モチーフ(YpG ODN)又はc)シトシン-リン酸-プリン(CpR)モチーフ(CpR ODN)を含有するオリゴデオキシヌクレオチド(好ましくはシトシン-リン酸-グアノシン(CpG)モチーフ(CpG ODN)を含有するオリゴデオキシヌクレオチド)である。
【0161】
本発明の好ましい一実施態様では、本明細書に記載の併用療法において使用されるヒトCSF-1Rに結合する抗体は、
配列番号5の重鎖可変ドメインVH及び配列番号6の軽鎖可変ドメインVL
を有することを特徴とし、
かつ
本併用療法において使用されるTLR9アゴニストは、a)シトシン-リン酸-グアノシン(CpG)モチーフ(CpG ODN)b)ピリミジン-リン酸-グアノシン(YpG)モチーフ(YpG ODN)又はc)シトシン-リン酸-プリン(CpR)モチーフ(CpR ODN)を含有するオリゴデオキシヌクレオチド(好ましくはシトシン-リン酸-グアノシン(CpG)モチーフ(CpG ODN)を含有するオリゴデオキシヌクレオチド)である。
【0162】
用語「エピトープ」は、抗体に特異的に結合することができるタンパク質決定基を意味する。エピトープは通常、アミノ酸又は糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面基からなり、特定の三次元構造特性及び特定の電荷特性を通常有する。コンフォメーションエピトープと非コンフォメーションエピトープは、変性溶媒の存在下で後者でなく前者への結合が失われるという点で区別される。
【0163】
本明細書で使用される場合、「可変ドメイン」(軽鎖可変ドメイン(VL)、重鎖可変ドメイン(VH))は、抗原への抗体の結合に直接関与する軽鎖ドメイン及び重鎖ドメインの対の各々を意味する。可変軽鎖ドメイン及び可変重鎖ドメインは、同じ一般構造を有し、各ドメインは、三つの「超可変領域」(又は相補性決定領域、CDR)によって接続された、配列が広く保存されている四つのフレームワーク(FR)領域を含む。フレームワーク領域は、ベータ-シートコンフォメーションを採り、CDRは、ベータ-シート構造を接続するループを形成し得る。各鎖におけるCDRは、フレームワーク領域によりその三次元構造に保持され、もう一方の鎖のCDRと共に抗原結合部位を形成する。抗体の重鎖及び軽鎖のCDR3領域は、本発明による抗体の結合特異性/アフィニティーにおいて特に重要な役割を果たし、それ故、本発明のさらなる目的を提供する。
【0164】
本明細書において使用される場合、「抗体の抗原結合部分」という用語は、抗原結合に関与する、抗体のアミノ酸残基を指す。抗体の抗原結合部分は、「相補性決定領域」すなわち「CDR」のアミノ酸残基を含む。「フレームワーク」すなわち「FR」領域は、本明細書に記載の超可変可変領域残基以外の可変ドメイン領域である。したがって、抗体の軽鎖及び重鎖の可変ドメインは、N末端からC末端に向かって、ドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、及びFR4を含む。特に、重鎖のCDR3は、抗原結合に最も寄与する領域であり、抗体の特性を規定する。CDR及びFR領域は、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed., Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991)の標準的な定義及び/又は「超可変可変ループ」からの残基に従って決定される。
【0165】
本明細書で使用する場合、用語「核酸」又は「核酸分子」は、DNA分子及びRNA分子を含むことが意図される。核酸分子は、一本鎖又は二本鎖であり得るが、好ましくは二本鎖DNAである。
【0166】
本願内で使用される場合、用語「アミノ酸」は、アラニン(3文字コード:ala、1文字コード:A)、アルギニン(arg、R)、アスパラギン(asn、N)、アスパラギン酸(asp、D)、システイン(cys、C)、グルタミン(gln、Q)、グルタミン酸(glu、E)、グリシン(gly、G)、ヒスチジン(his、H)、イソロイシン(ile、I)、ロイシン(leu、L)、リジン(lys、K)、メチオニン(met、M)、フェニルアラニン(phe、F)、プロリン(pro、P)、セリン(ser、S)、スレオニン(thr、T)、トリプトファン(trp、W)、チロシン(tyr、Y)、及びバリン(val、V)を含む天然に存在するカルボキシアルファ-アミノ酸の群を意味する。
【0167】
抗体の「Fc部分」は、抗体の抗原への結合には直接関与しないが、様々なエフェクター機能を発揮する。「抗体のFc部分」は、当業者によく知られている用語であり、抗体のパパイン切断に基づいて規定される。抗体又は免疫グロブリンは、その重鎖定常領域のアミノ酸配列に応じてIgA、IgD、IgE、IgG及びIgMのクラスに分類され、これらのうちのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4、IgA1及びIgA2にさらに分類され得る。重鎖定常領域に応じて、免疫グロブリンの異なるクラスは、それぞれa、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。抗体のFc部分は、補体活性化、C1q結合、及びFc受容体結合に基づいて、ADCC(抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性)及びCDC(補体依存性細胞傷害性)に直接関与する。補体活性化(CDC)は、ほとんどのIgG抗体サブクラスのFc部分への補体因子C1qの結合により開始される。補体系に対する抗体の影響は特定の条件に依存するが、C1qへの結合は、Fc部分に規定された結合部位により引き起こされる。そのような結合部位は当該技術分野で既知であり、例えばBoackle, R.J., et al., Nature 282 (1979) 742-743, Lukas, T.J., et al., J. Immunol. 127 (1981) 2555-2560, Brunhouse, R.及び Cebra, J.J., Mol. Immunol. 16 (1979) 907-917, Burton, D.R., et al., Nature 288 (1980) 338-344, Thommesen, J.E., et al., Mol. Immunol. 37 (2000) 995-1004, Idusogie, E.E., et al., J. Immunol.164 (2000) 4178-4184, Hezareh, M., et al., J. Virology 75 (2001) 12161-12168, Morgan, A., et al., Immunology 86 (1995) 319-324;EP第0307434号により記載されている。そのような結合部位は、例えばL234、L235、D270、 N297、E318、 K320、K322、P331、及びP329である(番号付けはKabat, E.A.のEUインデックスに従う。下記参照)。サブクラスIgG1、IgG2及びIgG3の抗体は通常、補体活性化、並びにC1q及びC3結合を示すが、一方、IgG4は補体系を活性化せず、C1q及びC3に結合しない。
【0168】
一実施態様において、本発明による抗体はヒト起源由来のFc部分、好ましくはヒト定常領域の他のすべての部分を含む。本明細書で使用される場合、用語「ヒト起源由来のFc部分」は、サブクラスIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4のヒト抗体のFc部分、好ましくは、ヒトIgG1サブクラスのFc部分、ヒトIgG1サブクラスの変異Fc部分(一実施態様ではL234A+L235Aに変異を有する)、ヒトIgG4サブクラスのFc部分又はヒトIgG4サブクラスの変異Fc部分(一実施態様ではS228Pに変異を有する)のいずれかであるFc部分を指す。好ましい一実施態様ではヒト重鎖定常領域はヒトIgG1サブクラスのもの、別の好ましい実施態様ではヒト重鎖定常領域は、変異L234A、L235A及びP329を有するヒトIgG1サブクラスのものであり、別の好ましい実施態様ではヒト重鎖定常領域はヒトIgG4サブクラスのものであり、別の好ましい実施態様ではヒト重鎖定常領域は変異S228Pを有するヒトIgG4サブクラスのものである。一実施態様では、前記抗体は、低下した又は最少のエフェクター機能を有する。一実施態様では、最少のエフェクター機能は、エフェクターを有しない(effectorless)Fc変異に起因する。一実施態様では、エフェクターを有しないFc変異は、L234A/L235A又はL234A/L235A/P329G又はN297A又はD265A/N297Aである。一実施態様では、エフェクターを有しないFc変異は、各抗体のために、L234A/L235A、L234A/L235A/P329G、N297A及びD265A/N297Aを含む(からなる)群から互いに独立して選択される。
【0169】
一実施態様では、本明細書に記載の抗体は、ヒトIgGクラス(すなわちIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4サブクラス)の抗体である。
【0170】
好ましい一実施態様では、本明細書に記載の抗体は、ヒトIgG1サブクラス又はヒトIgG4サブクラスの抗体である。一実施態様では、本明細書に記載されるのは、ヒトIgG1サブクラスのものである。一実施態様では、本明細書に記載される抗体は、ヒトIgG4サブクラスの抗体である。
【0171】
一実施態様において、本明細書に記載される抗体は、定常鎖がヒト起源であることを特徴とする。そのような定常鎖は、当該技術分野でよく知られており、例えばKabat,E.A.により記載されている(例えばJohnson, G.及びWu, T.T., Nucleic Acids Res. 28 (2000) 214-218参照)。例えば、有用なヒト重鎖定常領域は、配列番号34のアミノ酸配列を含む。例えば、有用なヒト軽鎖定常領域は、配列番号33のカッパ軽鎖定常領域のアミノ酸配列を含む。
【0172】
本発明は、患者に対して治療的有効量の本発明による抗体を投与することを特徴とする、治療法を必要とする患者の治療のための方法を含む。
【0173】
本発明は、記載の治療法のための、本発明による抗体の使用を含む。
【0174】
本発明の一実施態様は、本明細書記載のアゴニストCD40抗体、Toll様受容体(TLR)リガンド、TLRアゴニスト、アンタゴニストPD-L1抗体の群から選択されるマクロファージ活性化物質と組み合わせてがんの治療に使用するための、本明細書に記載のCSF-1R抗体である。
【0175】
本発明の一実施態様は、本明細書に記載される抗CD40抗体と組み合わせてがんの治療に使用するための、本明細書に記載されるCSF-1Rである。
【0176】
本発明の一実施態様は、本明細書に記載のアンタゴニストPD-L1抗体と組み合わせてがんの治療に使用するための、本明細書に記載のCSF-1Rである。
【0177】
本発明の一実施態様において、がんは固形腫瘍である。
【0178】
本発明の別の好ましい実施態様において、がんは、メラノーマ、結腸直腸がん又は中皮腫である。
【0179】
本明細書で使用される用語「がん」は、例えば、肺がん、非小細胞肺(NSCL)がん、細気管支肺胞上皮細胞肺がん(bronchioloalviolar cell lung cancer)、骨がん、膵臓がん、皮膚がん、頭頸部がん、皮膚メラノーマ又は眼球内メラノーマ、子宮がん、卵巣がん、直腸がん、肛門領域のがん、胃がん(stomach cancer)、胃がん(gastric cancer)、結腸がん、乳がん、子宮がん、卵管がん、子宮内膜がん、子宮頸がん、膣がん、外陰がん、ホジキン病、食道がん、小腸がん、内分泌系のがん、甲状腺がん、副甲状腺がん、副腎がん、軟組織の肉腫、尿道がん、陰茎がん、前立腺がん、膀胱がん、腎臓又は尿管のがん、腎細胞がん、腎盂がん、中皮腫、肝細胞がん、胆道がん、中枢神経系(CNS)の腫瘍、脊椎腫瘍、脳幹神経膠腫、多形神経膠芽腫、星状細胞腫、シュワン腫、上衣腫、髄芽腫、髄膜腫、扁平上皮がん、下垂体腺腫、リンパ腫、リンパ性白血病(上記がんの難治性型、又は上記がんの一若しくは複数の組合せを含む)であり得る。好ましい一実施態様では、そのようながんは、乳がん、結腸直腸がん、メラノーマ、頭頚部がん、肺がん又は前立腺がんである。好ましい一実施態様では、そのようながんは、乳がん、卵巣がん,子宮頚がん、肺がん又は前立腺がんである。別の好ましい実施態様では、そのようながんは、乳がん、肺がん、結腸がん、卵巣がん、メラノーマがん、膀胱がん、腎がん、腎臓がん、肝臓がん、頭頚部がん、結腸直腸がん、膵臓がん、胃がん(gastric carcinoma cancer)、食道がん、中皮腫、前立腺がん、白血病、リンパ腫、骨髄腫である。好ましい一実施態様では、そのようながんは、CSF-1又はCSF-1Rの発現又は過剰発現によって更に特徴付けられる。本発明の更なる実施態様は、原発腫瘍及び新規転移の同時治療における使用のための、本発明のCSF-1R抗体である。したがって本発明の別の実施態様は、歯周炎、ヒスチオサイトーシスX、骨粗鬆症、骨ページェット病(PDB)、がん治療に起因する骨損失、人工関節周囲骨溶解、グルココルチコイド誘発性骨粗鬆症、関節リウマチ、乾癬性関節炎、変形性関節症、炎症性関節炎、及び炎症の治療における使用のための、本発明のCSF-1R抗体である。
【0180】
本明細書に記載の抗体は、好ましくは組換え手段により製造される。そのような方法は、当該技術分野において広く知られており、原核細胞及び真核細胞におけるタンパク質の発現、それに続く抗体ポリペプチドの単離、及び通常は薬学的に許容される純度への精製を含む。タンパク質発現について、軽鎖及び重鎖又はその断片をコードする核酸は、標準的な方法により発現ベクターに挿入される。発現は、適切な原核又は真核宿主細胞、例えばCHO細胞、NS0細胞、SP2/0細胞、HEK293細胞、COS細胞、酵母又は大腸菌細胞において実施され、抗体は、これらの細胞から(上清から又は細胞溶解後に)リカバリーされる。
【0181】
抗体の組換え製造は、当該技術分野でよく知られており、例えばMakrides, S.C., Protein Expr. Purif. 17 (1999) 183-202; Geisse, S., et al., Protein Expr. Purif. 8 (1996) 271-282; Kaufman, R.J., Mol. Biotechnol. 16 (2000) 151-161; Werner, R.G., Drug Res. 48 (1998) 870-880の総説記事に記載されている。
【0182】
抗体は、全細胞中に、細胞溶解物中に、又は部分的に精製されたか若しくは実質的に純粋な形態中に存在し得る。精製は、他の細胞成分又は他の夾雑物、例えば他の細胞核酸又はタンパク質を、アルカリ/SDS処理、CsClバンディング、カラムクロマトグラフィー、アガロースゲル電気泳動、及び当該技術分野で周知のその他の技術を含む標準的な技術により除去するために実施される。Ausubel, F., et al., ed. Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing and Wiley Interscience, New York (1987)参照。
【0183】
NS0細胞における発現は、例えばBarnes, L.M., et al., Cytotechnology 32 (2000) 109-123; Barnes, L.M., et al., Biotech. Bioeng. 73 (2001) 261-270に記載されている。一過性発現は、例えばDurocher, Y., et al., Nucl. Acids. Res. 30 (2002) E9に記載されている。可変ドメインのクローニングは、Orlandi, R., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86 (1989) 3833-3837; Carter, P., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89 (1992) 4285-4289; Norderhaug, L., et al., J. Immunol. Methods 204 (1997) 77-87に記載されている。好ましい一過性発現系(HEK 293)は、Schlaeger, E.-J.及びChristensen, K.によるCytotechnology 30 (1999) 71-83、並びにSchlaeger, E.-J.によるJ. Immunol. Methods 194 (1996) 191-199に記載されている。
【0184】
本発明の重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインは、発現ベクターコンストラクトが形成されるように、プロモーター配列、翻訳開始配列、定常領域配列、3’非翻訳領域配列、ポリアデニル化配列及び転写終結配列と組み合わせたものである。重鎖発現コンストラクト及び軽鎖発現コンストラクトは、単一のベクターに組み込まれ、宿主細胞にコトランスフェクト、連続トランスフェクト又は別々にトランスフェクトされ、その後融合されて、双方の鎖を発現する単一の宿主細胞を形成することができる。
【0185】
原核生物に適切な制御配列は、例えばプロモーター、任意選択的にオペレーター配列、及びリボソーム結合部位を含む。真核細胞は、プロモーター、エンハンサー、及びポリアデニル化シグナルを利用することが知られている。
【0186】
核酸は、別の核酸配列と機能的関係に置かれる場合、その核酸は「作動可能に連結」されている。例えば、プレ配列又は分泌リーダーのDNAは、それがポリペプチドの分泌に関与するプレタンパク質として発現される場合は、ポリペプチドのDNAに作動可能に連結されており、プロモーター又はエンハンサーは、それが配列の転写に影響を及ぼす場合は、コード配列に作動可能に連結されており、又は、リボソーム結合部位は、それが翻訳を容易にするように配置されている場合は、コード配列に作動可能に連結されている。通常、「作動可能に連結」とは、連結されるDNA配列が連続しており、分泌リーダーの場合には、連続していて、かつリーディングフレームにあることを意味する。しかしながら、エンハンサーは必ずしも連続している必要はない。連結は、簡便な制限部位におけるライゲーションによって達成される。そのような部位が存在しない場合は、慣行に従って、合成オリゴヌクレオチドアダプター又はリンカーが使用される。
【0187】
モノクローナル抗体は、例えばプロテインA-セファロース、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析又はアフィニティークロマトグラフィーといった一般的な免疫グロブリン精製手順により、培地から適切に分離される。モノクローナル抗体をコードするDNA及びRNAは、一般的な手順を使用し、容易に単離及び配列決定される。ハイブリドーマ細胞は、そのようなDNA及びRNAの供給源として機能し得る。単離されると、DNAは発現ベクター内に挿入され、その後、さもなければ免疫グロブリンタンパク質を産生しない宿主細胞、例えばHEK293細胞、CHO細胞又は骨髄腫細胞中にトランスフェトされ、宿主細胞において組換えモノクローナル抗体の合成が得られる。
【0188】
本明細書で使用される場合、「細胞」、「細胞株」及び「細胞培養物」という表現は互換的に用いられ、すべてのそのような名称は子孫を含む。したがって、「形質転換体」及び「形質転換細胞」という語は、初代の対象細胞と、導入回数に関係なく、これに由来する培養物とを含む。また、計画的な又は偶然の突然変異に起因してすべての子孫がDNA量において厳密に同一でなくてもよいことが理解される。元々の形質転換細胞においてスクリーニングしたものと同じ機能又は生物活性を有する変異体子孫が含まれる。
【0189】
別の態様において、本発明は、組成物、例えば薬学的に許容される担体と共に製剤化された、本発明のモノクローナル抗体若しくはそれらの抗原結合部分のうちの一つ又は組み合わせを含有する薬学的組成物を提供する。
【0190】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」は、生理学的に適合する、あらゆるすべての溶媒、分散媒、コーティング剤、抗細菌剤及び抗真菌剤、等張剤、並びに吸収/再吸収遅延剤等を含む。好ましくは、担体は、注射又は注入に適している。
【0191】
本発明の組成物は、当該技術分野において知られている多様な方法により投与され得る。当業者により認識されているように、投与経路及び/又は投与様式は、所望の結果に応じて変化するものである。
【0192】
薬学的に許容される担体には、滅菌水溶液又は分散液、及び滅菌注射溶液若しくは分散液の調製用の滅菌粉末が含まれる。薬学的に活性な物質のためのこのような媒体及び薬剤の使用は、当該技術分野で知られている。水の他に、担体は、例えば等張緩衝生理食塩水とすることができる。
【0193】
選択された投与経路に関わらず、適切な水和形態で使用され得る本発明の化合物及び/又は本発明の薬学的組成物は、当業者に知られている一般的な方法により薬学的に許容される剤形に製剤化される。
【0194】
本発明の薬学的組成物中の有効成分の実際の用量レベルは、患者に対して毒性でなく(有効量)、特定の患者、組成物、及び投与様式に関して所望の治療的応答を達成するために効果的な有効成分の量を得るために、多様であってよい。選択された用量レベルは、使用される本発明の特定の組成物又はそのエステル、塩若しくはアミドの活性、投与経路、投与時間、使用される特定の化合物の排泄速度、使用される特定の組成物と併用で用いられる他の薬物、化合物、及び/又は物質、治療される患者の年齢、性別、体重、状態、全身健康状態及び既往歴を含む種々の薬物動態因子、並びに医学の技術分野において良く知られている同様の因子に依存するであろう。
【0195】
用語「治療方法」又はこれと同義の用語は、例えばがんに適用される場合、患者におけるがん細胞の数を減少若しくは消滅させるように、又はがんの症状を緩和するように設計された手順又は一連の行為を指す。がん又は他の増殖性疾患の「治療方法」は、がん細胞若しくは他の疾患が実際に取り除かれること、細胞の数若しくは疾患が実際に低減されること、又はがん若しくは他の疾患の症状が実際に緩和されることを必ずしも意味しない。がんの治療方法はしばしば、成功の可能性が低くても実施されるであろうが、それは、患者の病歴及び推定余命を考慮して、それでも全体的に有益な作用過程を誘導するとみなされている。
【0196】
用語「と組み合わせて投与される」又は「共投与」、「共投与すること」、「併用療法」又は「併用治療」は、本明細書に記載の抗CSF-1R及び、例えば別個の製剤/用法として(又は1つの製剤/用法として)、本明細書に記載のアゴニストCD40抗体、Toll様受容体(TLR)リガンド、TLRアゴニスト、アンタゴニストPD-L1抗体からなる群より選択されるマクロファージ活性化物質の投与を指す。共投与は、同時でも、任意の順序で逐次的であってもよく、双方(又はすべて)の活性物質がその生物活性を各治療サイクル内で同時に発揮する時間があり、その治療サイクルでは、本明細書に記載の抗CSF-1Rと、本明細書に記載のアゴニストCD40抗体、Toll様受容体(TLR)リガンド、TLRアゴニスト、アンタゴニストPD-L1抗体からなる群より選択されるマクロファージ活性化物質の双方が共投与され、かつ、抗CSF1R治療なしの更なる各治療サイクルにおいて、CSF1R抗体の生物活性が全く発揮されない時間があり、血清中の腫瘍随伴マクロファージ(TAM)及び/又はその前駆体ヒトCD14+CD16+単球のレベルがリカバリーしている(例えば抗CSF-1R治療前の元のレベルの約80%まで)。共投与は、同時又は、連続的注入によって逐次的(例えば静脈内注射(i.v.))である。一実施態様では、共投与は、同時である。一実施態様では、共投与は、逐次的である。共投与は、同時又は逐次的(例えば連続的注入による静脈内注射(i.v.))である。
【0197】
それぞれの化合物の量又は併用量が研究者、獣医、医師又はその他の臨床家が求める組織、系、動物若しくはヒトの生物学的又は医学的奏功を引き出す量である「治療的有効量」(又は単に「有効量」)で抗体が患者に投与されることは、自明である。
【0198】
共投与の量及び共投与のタイミングは、治療される患者のタイプ(人種、性別、年齢、体重など)及び状態、並びに治療される疾患又は状態の重症度に依存する。前記抗CSF-1R抗体と更なる作用物質は、単回で、又は一連の治療にわたって、例えば同日又は翌日、患者に適切に共投与される。
【0199】
アゴニストCD40抗体、Toll様受容体(TLR)リガンド、TLRアゴニスト、アンタゴニストPD-L1抗体の群から選択されるマクロファージ活性化物質と組み合わされる抗CSF-1R抗体に加えて、化学療法剤も投与され得る。
【0200】
一実施態様では、本明細書に記載の抗CSF-1R抗体及び、本明細書に記載のアゴニストCD40抗体、Toll様受容体(TLR)リガンド、TLRアゴニスト、アンタゴニストPD-L1抗体の群から選択されるマクロファージ活性化物質と共に投与され得るこのような追加の化学療法剤には、限定されないが、アルキル化剤を含む抗悪性腫瘍剤(ナイトロジェンマスタード、例えばメクロレタミン、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン及びクロラムブシルを含む);ニトロソウレア、例えばカルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)及びセムスチン(メチル-CCNU);テモダール(商標)(テモゾロマイド)、エチレンイミン/メチルメラミン、例えばトリエチレンメラミン(TEM)、トリエチレン、チオホスホルアミド(チオテパ)、ヘキサメチルメラミン(HMM、アルトレタミン);スルホン酸アルキル、例えばブスルファン;トリアジン、例えばダカルバジン(DTIC);葉酸アナログ(例えばメトトレキサート及びトリメトレキサート)、ピリミジンアナログ(例えば5-フルオロウラシル(5FU)、フルオロデオキシウリジン、ゲムシタビン、シトシンアラビノシド(AraC、シタラビン)、5-アザシチジン、2,2’-ジフルオロデオキシシチジン)、プリンアナログ(例えば6-メルカプトプリン、6-チオグアニン(thioguamne)、アザチオプリン、T-デオキシコホルマイシン(ペントスタチン)、エリスロヒドロキシノニルアデニン(EHNA)、リン酸フルダラビン、及び2-クロロデオキシアデノシン(クラドリビン、2-CdA)を含む代謝拮抗剤;パクリタキセル、ビンカアルカロイド(ビンブラスチン(VLB)、ビンクリスチン及びビノレルビンを含む)、タキソテール、エストラムスチン及びエストラムスチンホスフェート等の有糸分裂阻害剤を含む天然物;ピポドフィロトキシン、例えばエトポシド及びテニポシド;抗生物質、例えばアクチノマイシンD、ダウノマイシン(ルビドマイシン)、ドキソルビシン、ミトキサントロン、イダルビシン、ブレオマイシン、プリカマイシン(ミトラマイシン)、マイトマイシンC及びアクチノマイシン;酵素、例えばL-アスパラギナーゼ;生物学的応答調節剤、例えばインターフェロン-アルファ、IL-2、G-CSF及びGM-CSF;白金配位錯体(例えばオキサリプラチン、シスプラチン及びカルボプラチン)、アントラセンジオン(例えばミトキサントロン)、置換尿素(例えばヒドロキシウレア)、メチルヒドラジン誘導体(N-メチルヒドラジン(MIH)及びプロカルバジンを含む)、副腎皮質抑制剤(例えばミトタン(o,p-DDD)及びアミノグルテチミド)を含む様々な薬剤;副腎皮質ステロイドアンタゴニスト(例えばプレドニゾンとその同等物、デキサメタゾン及びアミノグルテチミド)を含むホルモン及びアンタゴニスト;ジェムザール(商標)(ゲムシタビン)、プロゲスチン(例えばカプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、酢酸メドロキシプロゲステロン及び酢酸メゲストロール);エストロゲン、例えばジエチルスチルベストロール及びエチニルエストラジオール同等物;抗エストロゲン、例えばタモキシフェン;アンドロゲン、例えばプロピオン酸テストステロン及びフルオキシメステロン/同等物;抗アンドロゲン、例えばフルタミド、ゴナドトロピン放出ホルモンアナログ及びロイプロリド;並びに非ステロイド性抗アンドロゲン(例えばフルタミド)が含まれる。ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、脱メチル化剤(例えばビダーザ)及び転写抑制解除(ATRA)療法を含むがこれらに限定されないエピジェネティック機構を標的とする療法も、抗原結合タンパク質と組み合わせることができる。一実施態様では、化学療法剤は、タキサン(例えばパクリタキセル(タキソール))、ドセタキセル(タキソテール)、修飾されたパクリタキセル(例えばアブラキサン及びオパキシオ)等)、ドキソルビシン、スニチニブ(スーテント)、ソラフェニブ(ネクサバール)及び他の多種キナーゼ阻害剤、オキサリプラチン、シスプラチン及びカルボプラチン、エトポシド、ゲムシタビン、及びビンブラスチンからなる群より選択される。一実施態様では、化学療法剤は、タキサン(例えばタキソール(パクリタキセル)、ドセタキセル(タキソテール)、修飾されたパクリタキセル(例えばアブラキサン及びオパキシオ)等)からなる群より選択される。一実施態様では、追加的化学療法剤は、5-フルオロウラシル(5-FU)、ロイコボリン、イリノテカン又はオキサリプラチンから選択される。一実施態様では、化学療法剤は、5-フルオロウラシル、ロイコボリン、及びイリノテカン(FOLFIRI)である。一実施態様では、化学療法剤は、5-フルオロウラシル及びオキサリプラチン(FOLFOX)である。好ましい一実施態様では、抗CD40抗体と組み合わせて抗CSF-1R抗体と共に追加的化学療法剤を投与することはない。
【0201】
追加的化学療法剤との併用療法の特定の例は、例えば、乳がんの治療のためにタキサン(例えばドセタキセル又はパクリタキセル)又は修飾されたパクリタキセル(例えばアブラキサン又はオパキシオ)、ドキソルビシン、カペシタビン及び/又はベバシズマブ(アバスチン)を用いる療法;卵巣がんのためにカルボプラチン、オキサリプラチン、シスプラチン、パクリタキセル、ドキソルビシン(又は修飾されたドキソルビシン(カエリクス又はドキシル)),又はトポテカン(ハイカムチン)を用いる療法;腎臓がんの治療のために多種キナーゼ阻害剤(MKI)(スーテント、ネクサバール又は706)及び/又はドキソルビシンを用いる療法;扁平上皮がんの治療のためにオキサリプラチン、シスプラチン及び/又は放射線を用いる療法;肺がんの治療のためにタキソール及び/又はカルボプラチンを用いる療法を含む。
【0202】
したがって、一実施態様では、追加的化学療法剤は、乳がんの治療のためのタキサン(ドセタキセル又はパクリタキセル又は修飾されたパクリタキセル(アブラキサン又はオパキシオ)、ドキソルビシン、カペシタビン及び/又はベバシズマブの群から選択される。
【0203】
好ましい一実施態様では、抗CD40抗体と組み合わせて抗CSF-1R抗体と共に追加的化学療法剤を投与することはない。
【0204】
【0205】
以下では、本発明の特定の実施態様について説明する。
【0206】
1A.
a) がんの治療;又は
b) CSF-1R発現マクロファージ浸潤を伴う腫瘍を有する患者の治療
における使用のための、ヒトCSF-1Rに結合する抗体であって、
この抗CSF-1R抗体が、アゴニストCD40抗体、Toll様受容体(TLR)リガンド、TLRアゴニスト、アンタゴニストPD-L1抗体の群から選択されるマクロファージ活性化物質と組み合わせて第1の治療サイクルで投与され、
かつ、後続の治療サイクルで、抗CSF-1R抗体はマクロファージ活性化物質と組み合わせて2サイクル毎(一実施態様では3サイクル毎)にしか投与されないが、マクロファージ活性化物質は各治療サイクルで投与される、抗体。
【0207】
1B.
a) がんの治療;又は
b) CSF-1R発現マクロファージ浸潤を伴う腫瘍を有する患者の治療
における使用のための、ヒトCSF-1Rに結合する抗体であって、
この抗CSF-1R抗体が、アゴニストCD40抗体、Toll様受容体(TLR)リガンド、TLRアゴニスト、アンタゴニストPD-L1抗体の群から選択されるマクロファージ活性化物質と組み合わせて第1の治療サイクルで投与され、
それに続いて、血清中のCD14+CD16+陽性単球の顕著なリカバリー後に、抗CSF-1R抗体がマクロファージ活性化物質との組み合わせでのみ投与される(一実施態様ではリカバリーは60%超、一実施態様では80%超)、抗体。
【0208】
1C.
a) がんの治療;又は
b) CSF-1R発現マクロファージ浸潤を伴う腫瘍を有する患者の治療
における使用のための、ヒトCSF-1Rに結合する抗体であって、
この抗CSF-1R抗体が、アゴニストCD40抗体、Toll様受容体(TLR)リガンド、TLRアゴニスト、アンタゴニストPD-L1抗体の群から選択されるマクロファージ活性化物質と組み合わせて第1の治療サイクルで投与され、
それに続いて、CD163+/CD68+陽性腫瘍随伴マクロファージの顕著なリカバリー後に、抗CSF-1R抗体がマクロファージ活性化物質との組み合わせでのみ投与される(一実施態様ではリカバリーは60%超、一実施態様では80%超)、抗体。
【0209】
2.
実施態様1A又は1B又は1Cに記載の治療における使用のための抗CSF-1R抗体であって、後続の治療サイクルで、抗CSF-1R抗体はマクロファージ活性化物質と組み合わせて2サイクル毎(一実施態様では3サイクル毎)にしか投与されないが、マクロファージ活性化物質は各治療サイクルで投与される、抗CSF-1R抗体。
【0210】
3.
実施態様1又は2の治療における使用のための抗CSF-1R抗体であって、治療サイクルの長さが2‐4週間(好ましい一実施態様では、治療サイクルの長さが18‐24日間、及び別の好ましい一実施態様では、治療サイクルの長さが(約)3週間)である、抗CSF-1R抗体。
【0211】
4.
実施態様1-3のいずれか一つにおける使用のための抗CSF-1R抗体であって、600-1200mgの用量(一実施態様では750-1100mgの用量;一実施態様では750-1000の用量;実施態様では900-1000mg;一実施態様では750;一実施態様では900;一実施態様では1000)で投与される、抗CSF-1R抗体。
【0212】
5.
実施態様1-4のいずれか一つにおける使用のための抗CSF-1R抗体であって、マクロファージ活性化物質がアゴニストCD40抗体であり、かつ、各サイクルに4-16mgの用量(一実施態様では8-16mgの用量)で投与される、抗CSF-1R抗体。
【0213】
6.
実施態様1-4のいずれか一つにおける使用のための抗CSF-1R抗体であって、マクロファージ活性化物質がアンタゴニストPD-L1抗体であり、かつ、各サイクルに1100-1300mgの用量(一実施態様では1200の用量)で投与される、抗CSF-1R抗体。
【0214】
7.
実施態様1から6のいずれか一つに記載の治療における使用のための抗CSF-1R抗体であって、併用療法が腫瘍免疫などの免疫関連疾患の治療又は進行遅延における使用のためのものである、抗CSF-1R抗体。
【0215】
8.
実施態様1から6のいずれか一つに記載の治療における使用のための抗CSF-1R抗体であって、併用療法がT細胞活性などの免疫応答又は機能の刺激における使用のためのものである、抗CSF-1R抗体。
【0216】
9.
実施態様1から8のいずれか一つに記載の治療における使用のための抗CSF-1R抗体であって、
a) 配列番号1の重鎖可変ドメインVH及び配列番号2の軽鎖可変ドメインVL、又は
b) 配列番号3の重鎖可変ドメインVH及び配列番号4の軽鎖可変ドメインVL、又は
c) 配列番号5の重鎖可変ドメインVH及び配列番号6の軽鎖可変ドメインVL、又は
d) 配列番号7の重鎖可変ドメインVH及び配列番号8の軽鎖可変ドメインVL、又は
e) 配列番号9の重鎖可変ドメインVH及び配列番号10の軽鎖可変ドメインVL
を含む、抗CSF-1R抗体。
【0217】
10.
実施態様1-5、7-9のいずれか一つに記載の治療における使用のための抗CSF-1R抗体であって、マクロファージ活性化物質がアゴニストCD40抗体である、抗CSF-1R抗体。
【0218】
11.
実施態様11に記載の治療における使用のための抗CSF-1R抗体であって、
抗CSF-1R抗体が
配列番号5の重鎖可変ドメインVH及び配列番号6の軽鎖可変ドメインVLを含み、かつ、
アゴニストCD40抗体が
配列番号11の重鎖可変ドメインVH及び配列番号12の軽鎖可変ドメインVLを含む、抗CSF-1R抗体。
【0219】
12.
実施態様1-4、6-9のいずれか一つに記載の治療における使用のための抗CSF-1R抗体であって、マクロファージ活性化物質がアンタゴニストPD-L1抗体である、抗CSF-1R抗体。
【0220】
13.
実施態様12に記載の治療における使用のための抗CSF-1R抗体であって、
抗CSF-1R抗体が
配列番号5の重鎖可変ドメインVH及び配列番号6の軽鎖可変ドメインVLを含み、かつ、
アンタゴニストPD-L1抗体が
配列番号15の重鎖可変ドメインVH及び配列番号16の軽鎖可変ドメインVLを含む、抗CSF-1R抗体。
【0221】
14.
実施態様1-4、7-9のいずれか一つに記載の治療における使用のための抗CSF-1R抗体であって、マクロファージ活性化物質がTLR9アゴニストである、抗CSF-1R抗体。
【0222】
15.
実施態様14に記載の治療における使用のための抗CSF-1R抗体であって、
抗CSF-1R抗体が
配列番号5の重鎖可変ドメインVH及び配列番号6の軽鎖可変ドメインVLを含み、かつ、
TLR9アゴニストが、a)シトシン-リン酸-グアノシン(CpG)モチーフ(CpG ODN)b)ピリミジン-リン酸-グアノシン(YpG)モチーフ(YpG ODN)又はc)シトシン-リン酸-プリン(CpR)モチーフ(CpR ODN)を含有するオリゴデオキシヌクレオチド(好ましくはシトシン-リン酸-グアノシン(CpG)モチーフ(CpG ODN)を含有するオリゴデオキシヌクレオチド)である、抗CSF-1R抗体。
【0223】
以下では、本発明の特定の実施態様について説明する。
【0224】
1A.
a) がんの治療;又は
b) CSF-1R発現マクロファージ浸潤を伴う腫瘍を有する患者の治療
における使用のための、ヒトCSF-1Rに結合する抗体を含む薬学的組成物又は医薬であって、
抗CSF-1R抗体が、アゴニストCD40抗体、Toll様受容体(TLR)リガンド、TLRアゴニスト、アンタゴニストPD-L1抗体の群から選択されるマクロファージ活性化物質と組み合わせて第1の治療サイクルで投与され、
かつ、後続の治療サイクルで、抗CSF-1R抗体はマクロファージ活性化物質と組み合わせて2サイクル毎(一実施態様では3サイクル毎)にしか投与されないが、マクロファージ活性化物質は各治療サイクルで投与される、薬学的組成物又は医薬。
【0225】
1B.
a) がんの治療;又は
b) CSF-1R発現マクロファージ浸潤を伴う腫瘍を有する患者の治療
における使用のための、ヒトCSF-1Rに結合する抗体を含む薬学的組成物又は医薬であって、
抗CSF-1R抗体が、アゴニストCD40抗体、Toll様受容体(TLR)リガンド、TLRアゴニスト、アンタゴニストPD-L1抗体の群から選択されるマクロファージ活性化物質と組み合わせて第1の治療サイクルで投与され、
それに続いて、血清中のCD14+CD16+陽性単球の顕著なリカバリー後に、抗CSF-1R抗体がマクロファージ活性化物質との組み合わせでのみ投与される(一実施態様ではリカバリーは60%超、一実施態様では80%超)、薬学的組成物又は医薬。
【0226】
1C.
a) がんの治療;又は
b) CSF-1R発現マクロファージ浸潤を伴う腫瘍を有する患者の治療
における使用のための、ヒトCSF-1Rに結合する抗体を含む薬学的組成物又は医薬であって、
抗CSF-1R抗体が、アゴニストCD40抗体、Toll様受容体(TLR)リガンド、TLRアゴニスト、アンタゴニストPD-L1抗体の群から選択されるマクロファージ活性化物質と組み合わせて第1の治療サイクルで投与され、
それに続いて、CD163+/CD68+陽性腫瘍随伴マクロファージの顕著なリカバリー後に、抗CSF-1R抗体がマクロファージ活性化物質との組み合わせでのみ投与される(一実施態様ではリカバリーは60%超、一実施態様では80%超)、薬学的組成物又は医薬。
【0227】
2.
実施態様1A又は1B又は1Cに記載の薬学的組成物又は医薬であって、後続の治療サイクルで、抗CSF-1R抗体はマクロファージ活性化物質と組み合わせて2サイクル毎(一実施態様では3サイクル毎)にしか投与されないが、マクロファージ活性化物質は各治療サイクルで投与される、薬学的組成物又は医薬。
【0228】
3.
実施態様1又は2に記載の薬学的組成物又は医薬であって、治療サイクルの長さが2‐4週間(好ましい一実施態様では、治療サイクルの長さが18‐24日間、及び別の好ましい一実施態様では、治療サイクルの長さが(約)3週間)である、薬学的組成物又は医薬。
【0229】
4.
実施態様1-3のいずれか一つに記載の薬学的組成物又は医薬であって、抗CSF-1R抗体が600-1200mgの用量(一実施態様では750-1100mgの用量;一実施態様では750-1000の用量;実施態様では900-1000mg;一実施態様では750;一実施態様では900;一実施態様では1000)で投与される、薬学的組成物又は医薬。
【0230】
5.
実施態様1-4のいずれか一つに記載の薬学的組成物又は医薬であって、マクロファージ活性化物質がアゴニストCD40抗体であり、かつ、各サイクルに4-16mgの用量(一実施態様では8-16mgの用量)で投与される、薬学的組成物又は医薬。
【0231】
6.
実施態様1-4のいずれか一つに記載の薬学的組成物又は医薬であって、マクロファージ活性化物質がアンタゴニストPD-L1抗体であり、かつ、各サイクルに1100-1300mgの用量(一実施態様では1200の用量)で投与される、薬学的組成物又は医薬。
【0232】
7.
実施態様1から6のいずれか一つに記載の薬学的組成物又は医薬であって、併用療法が腫瘍免疫などの免疫関連疾患の治療又は進行遅延における使用のためのものである、薬学的組成物又は医薬。
【0233】
8.
実施態様1から6のいずれか一つに記載の薬学的組成物又は医薬であって、併用療法がT細胞活性などの免疫応答又は機能の刺激における使用のためのものである、薬学的組成物又は医薬。
【0234】
9.
実施態様1から8のいずれか一つに記載の薬学的組成物又は医薬であって、抗CSF-1R抗体が
a) 配列番号1の重鎖可変ドメインVH及び配列番号2の軽鎖可変ドメインVL、又は
b) 配列番号3の重鎖可変ドメインVH及び配列番号4の軽鎖可変ドメインVL、又は
c) 配列番号5の重鎖可変ドメインVH及び配列番号6の軽鎖可変ドメインVL、又は
d) 配列番号7の重鎖可変ドメインVH及び配列番号8の軽鎖可変ドメインVL、又は
e) 配列番号9の重鎖可変ドメインVH及び配列番号10の軽鎖可変ドメインVL
を含む、薬学的組成物又は医薬。
【0235】
10.
実施態様1-5、7-9のいずれか一つに記載の薬学的組成物又は医薬であって、マクロファージ活性化物質がアゴニストCD40抗体である、薬学的組成物又は医薬。
【0236】
11.
実施態様10に記載の薬学的組成物又は医薬であって、
抗CSF-1R抗体が
配列番号5の重鎖可変ドメインVH及び配列番号6の軽鎖可変ドメインVLを含み、かつ、
アゴニストCD40抗体が
配列番号11の重鎖可変ドメインVH及び配列番号12の軽鎖可変ドメインVLを含む、薬学的組成物又は医薬。
【0237】
12.
実施態様1-4、6-9のいずれか一つに記載の薬学的組成物又は医薬であって、マクロファージ活性化物質がアンタゴニストPD-L1抗体である、薬学的組成物又は医薬。
【0238】
13.
実施態様13に記載の薬学的組成物又は医薬であって、
抗CSF-1R抗体が
配列番号5の重鎖可変ドメインVH及び配列番号6の軽鎖可変ドメインVLを含み、かつ、
アンタゴニストPD-L1抗体が
配列番号15の重鎖可変ドメインVH及び配列番号16の軽鎖可変ドメインVLを含む、薬学的組成物又は医薬。
【0239】
14.
実施態様1-4、7-9のいずれか一つに記載の薬学的組成物又は医薬であって、マクロファージ活性化物質がTLR9アゴニストである、薬学的組成物又は医薬。
【0240】
15.
実施態様14に記載の薬学的組成物又は医薬であって、
抗CSF-1R抗体が
配列番号5の重鎖可変ドメインVH及び配列番号6の軽鎖可変ドメインVLを含み、かつ、
TLR9アゴニストが、a)シトシン-リン酸-グアノシン(CpG)モチーフ(CpG ODN)b)ピリミジン-リン酸-グアノシン(YpG)モチーフ(YpG ODN)又はc)シトシン-リン酸-プリン(CpR)モチーフ(CpR ODN)を含有するオリゴデオキシヌクレオチド(好ましくはシトシン-リン酸-グアノシン(CpG)モチーフ(CpG ODN)を含有するオリゴデオキシヌクレオチド)である、薬学的組成物又は医薬。
【0241】
以下では、本発明の特定の実施態様について説明する。
【0242】
1A.
a) がんの治療;又は
b) CSF-1R発現マクロファージ浸潤を伴う腫瘍を有する患者の治療
のための医薬の製造における、ヒトCSF-1Rに結合する抗体の使用であって、
抗CSF-1R抗体が、アゴニストCD40抗体、Toll様受容体(TLR)リガンド、TLRアゴニスト、アンタゴニストPD-L1抗体の群から選択されるマクロファージ活性化物質と組み合わせて第1の治療サイクルで投与され、
かつ、後続の治療サイクルは、抗CSF-1R抗体はマクロファージ活性化物質と組み合わせて2サイクル毎(一実施態様では3サイクル毎)にしか投与されないが、マクロファージ活性化物質は各治療サイクルで投与される、使用。
【0243】
1B.
a) がんの治療;又は
b) CSF-1R発現マクロファージ浸潤を伴う腫瘍を有する患者の治療
のための医薬の製造における、ヒトCSF-1Rに結合する抗体の使用であって、
抗CSF-1R抗体が、アゴニストCD40抗体、Toll様受容体(TLR)リガンド、TLRアゴニスト、アンタゴニストPD-L1抗体の群から選択されるマクロファージ活性化物質と組み合わせて第1の治療サイクルで投与され、
それに続いて、血清中のCD14+CD16+陽性単球の顕著なリカバリー後に、抗CSF-1R抗体がマクロファージ活性化物質との組み合わせでのみ投与される(一実施態様ではリカバリーは60%超、一実施態様では80%超)、使用。
【0244】
1C.
a) がんの治療;又は
b) CSF-1R発現マクロファージ浸潤を伴う腫瘍を有する患者の治療
のための医薬の製造における、ヒトCSF-1Rに結合する抗体の使用であって、
抗CSF-1R抗体が、アゴニストCD40抗体、Toll様受容体(TLR)リガンド、TLRアゴニスト、アンタゴニストPD-L1抗体の群から選択されるマクロファージ活性化物質と組み合わせて第1の治療サイクルで投与され、
それに続いて、CD163+/CD68+陽性腫瘍随伴マクロファージの顕著なリカバリー後に、抗CSF-1R抗体がマクロファージ活性化物質との組み合わせでのみ投与される(一実施態様ではリカバリーは60%超、一実施態様では80%超)、使用。
【0245】
2.
実施態様1A又は1B又は1Cに記載の使用であって、後続の治療サイクルで、抗CSF-1R抗体はマクロファージ活性化物質と組み合わせて2サイクル毎(一実施態様では3サイクル毎)にしか投与されないが、マクロファージ活性化物質は各治療サイクルで投与される、使用。
【0246】
3.
実施態様1又は2に記載の使用であって、治療サイクルの長さが2‐4週間(好ましい一実施態様では、治療サイクルの長さが18‐24日間、及び別の好ましい一実施態様では、治療サイクルの長さが(約)3週間)である、使用。
【0247】
4.
実施態様1-3のいずれか一つに記載の使用であって、抗CSF-1R抗体が600-1200mgの用量(一実施態様では750-1100mgの用量;一実施態様では750-1000の用量;実施態様では900-1000mg;一実施態様では750;一実施態様では900;一実施態様では1000)で投与される、使用。
【0248】
5.
実施態様1-4のいずれか一つに記載の使用であって、マクロファージ活性化物質がアゴニストCD40抗体であり、かつ、各サイクルに4-16mgの用量 (一実施態様では8-16mgの用量)で投与される、使用。
【0249】
6.
実施態様1-4のいずれか一つに記載の使用であって、マクロファージ活性化物質がアンタゴニストPD-L1抗体であり、かつ、各サイクルに1100-1300mgの用量(一実施態様では1200の用量)で投与される、使用。
【0250】
7.
実施態様1から6のいずれか一つに記載の使用であって、併用療法が腫瘍免疫などの免疫関連疾患の治療又は進行遅延における使用のためのものである、使用。
【0251】
8.
実施態様1から6のいずれか一つに記載の使用であって、併用療法がT細胞活性などの免疫応答又は機能の刺激における使用のためのものある、使用。
【0252】
9.
実施態様1から8のいずれか一つに記載の使用であって、抗CSF-1R抗体が
a) 配列番号1の重鎖可変ドメインVH及び配列番号2の軽鎖可変ドメインVL、又は
b) 配列番号3の重鎖可変ドメインVH及び配列番号4の軽鎖可変ドメインVL、又は
c) 配列番号5の重鎖可変ドメインVH及び配列番号6の軽鎖可変ドメインVL、又は
d) 配列番号7の重鎖可変ドメインVH及び配列番号8の軽鎖可変ドメインVL、又は
e) 配列番号9の重鎖可変ドメインVH及び配列番号10の軽鎖可変ドメインVL
を含む、使用。
【0253】
10.
実施態様1-5、7-9のいずれか一つに記載の使用であって、マクロファージ活性化物質がアゴニストCD40抗体である、使用。
【0254】
11.
実施態様10に記載の使用であって、
抗CSF-1R抗体が
配列番号5の重鎖可変ドメインVH及び配列番号6の軽鎖可変ドメインVLを含み、かつ、
アゴニストCD40抗体が
配列番号11の重鎖可変ドメインVH及び配列番号12の軽鎖可変ドメインVLを含む、使用。
【0255】
12.
実施態様1-4、6-9のいずれか一つに記載の使用であって、マクロファージ活性化物質がアンタゴニストPD-L1抗体である、使用。
【0256】
13.
実施態様12に記載の使用であって、
抗CSF-1R抗体が
配列番号5の重鎖可変ドメインVH及び配列番号6の軽鎖可変ドメインVLを含み、かつ、
アンタゴニストPD-L1抗体が
配列番号15の重鎖可変ドメインVH及び配列番号16の軽鎖可変ドメインVLを含む、使用。
【0257】
14.
実施態様1-4、7-9のいずれか一つに記載の使用であって、マクロファージ活性化物質がTLR9アゴニストである、使用。
【0258】
15.
実施態様14に記載の使用であって、
抗CSF-1R抗体が
配列番号5の重鎖可変ドメインVH及び配列番号6の軽鎖可変ドメインVLを含み、かつ、
TLR9アゴニストが、a)シトシン-リン酸-グアノシン(CpG)モチーフ(CpG ODN)b)ピリミジン-リン酸-グアノシン(YpG)モチーフ(YpG ODN)又はc)シトシン-リン酸-プリン(CpR)モチーフ(CpR ODN)を含有するオリゴデオキシヌクレオチド(好ましくはシトシン-リン酸-グアノシン(CpG)モチーフ(CpG ODN)を含有するオリゴデオキシヌクレオチド)である、使用。
【0259】
以下では、本発明の特定の実施態様について説明する。
【0260】
1A.
a) がんの治療;又は
b) CSF-1R発現マクロファージ浸潤を伴う腫瘍を有する患者の治療
における使用のための、ヒトCSF-1Rに結合する抗体(の有効量)を投与することを含む治療方法であって、
抗CSF-1R抗体が、アゴニストCD40抗体、Toll様受容体(TLR)リガンド、TLRアゴニスト、アンタゴニストPD-L1抗体の群から選択される(有効量の)マクロファージ活性化物質と組み合わせて第1の治療サイクルで投与され、
かつ、後続の治療サイクルで、抗CSF-1R抗体はマクロファージ活性化物質と組み合わせて2サイクル毎(一実施態様では3サイクル毎)にしか投与されないが、マクロファージ活性化物質は各治療サイクルで投与される、治療方法。
【0261】
1B.
a) がんの治療;又は
b) CSF-1R発現マクロファージ浸潤を伴う腫瘍を有する患者の治療
における使用のための、ヒトCSF-1Rに結合する抗体(の有効量)を投与することを含む治療方法であって、
抗CSF-1R抗体が、アゴニストCD40抗体、Toll様受容体(TLR)リガンド、TLRアゴニスト、アンタゴニストPD-L1抗体の群から選択される(有効量の)マクロファージ活性化物質と組み合わせて第1の治療サイクルで投与され、
それに続いて、血清中のCD14+CD16+陽性単球の顕著なリカバリー後に、抗CSF-1R抗体がマクロファージ活性化物質との組み合わせでのみ投与される(一実施態様ではリカバリーは60%超、一実施態様では80%超)、治療方法。
【0262】
1C.
a) がんの治療;又は
b) CSF-1R発現マクロファージ浸潤を伴う腫瘍を有する患者の治療
における使用のための、ヒトCSF-1Rに結合する抗体(の有効量)を投与することを含む治療方法であって、
抗CSF-1R抗体が、アゴニストCD40抗体、Toll様受容体(TLR)リガンド、TLRアゴニスト、アンタゴニストPD-L1抗体の群から選択される(有効量の)マクロファージ活性化物質と組み合わせて第1の治療サイクルで投与され、
それに続いて、CD163+/CD68+陽性腫瘍随伴マクロファージの顕著なリカバリー後に、抗CSF-1R抗体がマクロファージ活性化物質との組み合わせでのみ投与される(一実施態様ではリカバリーは60%超、一実施態様では80%超)、治療方法。
【0263】
2.
実施態様1A又は1B又は1Cに記載の方法であって、後続の治療サイクルで、抗CSF-1R抗体はマクロファージ活性化物質と組み合わせて2サイクル毎(一実施態様では3サイクル毎)にしか投与されないが、マクロファージ活性化物質は各治療サイクルで投与される、方法。
【0264】
3.
実施態様1又は2に記載の方法であって、治療サイクルの長さが2‐4週間(好ましい一実施態様では、治療サイクルの長さが18‐24日間、及び別の好ましい一実施態様では、治療サイクルの長さが(約)3週間)である、方法。
【0265】
4.
実施態様1-3のいずれか一つに記載の方法であって、抗CSF-1R抗体が600-1200mgの用量(一実施態様では750-1100mgの用量;一実施態様では750-1000の用量;実施態様では900-1000mg;一実施態様では750;一実施態様では900;一実施態様では1000)で投与される、方法。
【0266】
5.
実施態様1-4のいずれか一つに記載の方法であって、マクロファージ活性化物質がアゴニストCD40抗体であり、かつ、各サイクルに4-16mgの用量(一実施態様では8-16mgの用量)で投与される、方法。
【0267】
6.
実施態様1-4のいずれか一つに記載の方法であって、マクロファージ活性化物質がアンタゴニストPD-L1抗体であり、かつ、各サイクルに1100-1300mgの用量(一実施態様では1200の用量)で投与される、方法。
【0268】
7.
実施態様1から6のいずれか一つに記載の方法であって、併用療法が腫瘍免疫などの免疫関連疾患の治療又は進行遅延における使用のためである、方法。
【0269】
8.
実施態様1から6のいずれか一つに記載の方法であって、併用療法がT細胞活性などの免疫応答又は機能の刺激における使用のためのものである、方法。
【0270】
9.
実施態様1から8のいずれか一つに記載の方法であって、抗CSF-1R抗体が
a) 配列番号1の重鎖可変ドメインVH及び配列番号2の軽鎖可変ドメインVL、又は
b) 配列番号3の重鎖可変ドメインVH及び配列番号4の軽鎖可変ドメインVL、又は
c) 配列番号5の重鎖可変ドメインVH及び配列番号6の軽鎖可変ドメインVL、又は
d) 配列番号7の重鎖可変ドメインVH及び配列番号8の軽鎖可変ドメインVL、又は
e) 配列番号9の重鎖可変ドメインVH及び配列番号10の軽鎖可変ドメインVL
を含む、方法。
【0271】
10.
実施態様1-5、7-9のいずれか一つに記載の方法であって、マクロファージ活性化物質がアゴニストCD40抗体である、方法。
【0272】
11.
実施態様10に記載の方法であって、
抗CSF-1R抗体が
配列番号5の重鎖可変ドメインVH及び配列番号6の軽鎖可変ドメインVLを含み、かつ、
アゴニストCD40抗体が
配列番号11の重鎖可変ドメインVH及び配列番号12の軽鎖可変ドメインVLを含む、方法。
【0273】
12.
実施態様1-4、6-9のいずれか一つに記載の方法であって、マクロファージ活性化物質がアンタゴニストPD-L1抗体である、方法。
【0274】
13.
実施態様12に記載の方法であって、
抗CSF-1R抗体が
配列番号5の重鎖可変ドメインVH及び配列番号6の軽鎖可変ドメインVLを含み、かつ、
アンタゴニストPD-L1抗体が
配列番号15の重鎖可変ドメインVH及び配列番号16の軽鎖可変ドメインVLを含む、方法。
【0275】
14.
実施態様1-4、7-9のいずれか一つに記載の方法であって、マクロファージ活性化物質がTLR9アゴニストである、方法。
【0276】
15.
実施態様14に記載の方法であって、
抗CSF-1R抗体が
配列番号5の重鎖可変ドメインVH及び配列番号6の軽鎖可変ドメインVLを含み、かつ、
TLR9アゴニストが、a)シトシン-リン酸-グアノシン(CpG)モチーフ(CpG ODN)b)ピリミジン-リン酸-グアノシン(YpG)モチーフ(YpG ODN)又はc)シトシン-リン酸-プリン(CpR)モチーフ(CpR ODN)を含有するオリゴデオキシヌクレオチド(好ましくはシトシン-リン酸-グアノシン(CpG)モチーフ(CpG ODN)を含有するオリゴデオキシヌクレオチド)である、方法。
【実施例
【0277】
[抗CSF-1R抗体とマクロファージ活性化アゴニストCD40抗体の併用]
実施例1A:抗CSF-R抗体+マクロファージ活性化アゴニストCD40抗体の相乗的な効力(図1

メスC57BL/6Nマウス(6-8週齢、Charles Riverより入手)に、10個のMC38結腸直腸腺癌腫瘍細胞を皮下接種した。腫瘍成長曲線をキャリパー測定によりモニターし、腫瘍サイズが平均250mmに達したら、以下を用いる治療のために群を分けた。
a) IgGアイソタイプコントロール抗体:30mg/kgマウスIgG1、クローンMOPC-21(BioXCell);又は
b) 抗CD40抗体:4mg/kgラットIgG2a抗体、クローンFGK45(BioXCell);又は
c) 抗CSF-1R抗体:30mg/kgハムスター-マウスキメラ抗体クローン2G2(Ries et al., Cancer Cell 25:846-859, 2014);又は
d) 抗CD40抗体と抗CSF-1R抗体の組み合わせ::併用、同時治療、投与量はb)及びc)のとおり。
【0278】
抗CSF-1R抗体又はそれぞれのIgG1コントロール抗体は、腫瘍が完全に退行するまで又は動物が終了基準に達するまで毎週投与したが、抗CD40抗体は一度だけ、10日目に抗CSF-1R抗体と同時に投与した。全体的な試験デザインを図1Aに示す。
【0279】
図1Bは、腫瘍体積が≧700mmに達するまでの無増悪生存期間を示し、CSF-1RとCD40抗体の併用治療の相乗的な抗腫瘍効果を実証している。抗CSF-1R抗体と抗CD40抗体の組み合わせで治療され、原発腫瘍の拒絶後少なくとも30日間無腫瘍であったマウスの反対側の脇腹への皮下接種によって、5x10個のMC38を再チャレンジした。図1Cは、抗CD40抗体と組み合わせた抗CSF-1R抗体で以前に治療されたマウスの再チャレンジが、ナイーブマウスと比較して、急速な腫瘍拒絶をもたらしたことを示す。実際、2回目の腫瘍注射後21日目までに、以前に併用治療された8頭すべてのマウスが無腫瘍であった。これらの結果は、抗CSF-1Rと抗CD40抗体の併用治療が腫瘍細胞特異的免疫応答を誘発し得ることを示している。
【0280】
実施例1B:抗CD40抗体と抗CSF1R抗体の併用治療前のCD8α陽性T細胞の枯渇は、抗CSF-R抗体と、アゴニストCD40抗体のようなマクロファージ活性化剤との相乗効果を無効にする(図2)。

メスC57BL/6Nマウス(6-8週齢、Charles Riverより入手)に、10個のMC38結腸直腸腺癌腫瘍細胞を皮下接種した。腫瘍成長曲線をキャリパー測定によりモニターし、腫瘍サイズが平均190mmに達したら、以下の枯渇抗体を用いる治療のためにマウスを分けた。
a) 抗CD8α抗体;4mg/kgマウスIgG2a、クローン53-6.7(BioXCell);又は
b) 抗CD4抗体;4mg/kgマウスIgG2b、クローンGK1.5(Biolegend);又は
c) 抗NK1.1抗体;4mg/kgマウスIgG2a、クローンPK136(BioXCell);
【0281】
抗CD8α、抗CD4及び抗NK1.1抗体を用いたリンパ球の枯渇は、腫瘍サイズが平均190mmに達したときに開始した。抗体は2日ごとに4回与えられた。2~3回の枯渇抗体投与の間に、動物をさらに以下で治療した。
d) ビヒクルコントロール:0.9%ナトリウム生理食塩水(枯渇抗体単独コントロール)、又は
e) IgGアイソタイプコントロール抗体:30mg/kgマウスIgG1、クローンMOPC-21(BioXCell);又は
f) 抗CD40抗体:4mg/kgラットIgG2a抗体、クローンFGK45(BioXCell);又は
g) 抗CD40抗体と抗CSF-1R抗体の組み合わせ:30mg/kgハムスター-マウスキメラ抗体クローン2G2(Ries et al., Cancer Cell 25:846-859, 2014);
【0282】
抗CSF-1R抗体又はそれぞれのIgG1コントロール抗体は、腫瘍が完全に退行するまで又は動物が終了基準に達するまで毎週投与したが、抗CD40抗体は一度だけ、11日目に抗CSF-1R抗体と同時に投与した。全体的な試験デザインを図2Aに示す。
【0283】
図2Bは、CD8陽性T細胞の枯渇が抗CD40及びCSF-1R腫瘍担持マウスの生存に対する有益な効果の消滅をもたらすことを示す。CD4陽性T細胞もNK1.1発現NK細胞も枯渇していないため、これらのマウスの生存に影響を与えなかった。これは、細胞傷害性T細胞応答がこの組み合わせで治療されたマウスにおいて開始されることをはっきり示す。注目すべきことに、CD4陽性細胞を枯渇させ、かつ抗CD40単独で治療したマウスの生存は、他のリンパ球サブタイプを枯渇させたマウスと比較して、顕著に改善された(10頭中4頭のマウスが無腫瘍)。このことは、抑制性CD4陽性T細胞(例えば制御性T細胞)もまた、抗CD40治療の際にMC38腫瘍担持マウスの全生存に悪影響を及ぼすことを示し得る。
【0284】
実施例1C:抗CSF-R抗体と、アゴニストCD40抗体などのマクロファージ活性化物質との相乗的な効力は、腫瘍随伴マクロファージ(TAM)の存在に依存する(図3)。

10個のMC38結腸直腸腺癌腫瘍細胞を用いて、メスC57BL/6Nマウス(6-8週齢、Charles Riverより入手)に皮下接種した。腫瘍成長曲線をキャリパー測定によりモニターし、前治療を3日目に開始した。動物を以下の抗体による前治療のために分けた。

a) IgGアイソタイプコントロール抗体:30mg/kgマウスIgG1、クローンMOPC-21(BioXCell、完全Fcコンピテント抗体);又は
b) IgGアイソタイプコントロール抗体のFc dead(FcO)変異体:30mg/kgヒトIgG1、 抗ジゴキシゲニン (米国特許出願公開第2012/0251531号);又は
c) 抗CSF-1R抗体Fc dead(FcO)変異体:30mg/kgハムスター-ヒトキメラ抗体、ヒトIgG1 PG LALA FcOのクローン2G2のCDR(Ries et al., Cancer Cell 25:846-859, 2014)(ロッシュの特許 米国特許出願公開第2012/0251531号)
【0285】
効果の読み出しのため、腫瘍接種後3日目及び9日目に、マウスにいずれかの抗体(a-c)を腹腔内注射し、その後腫瘍サイズ(平均120mm)で更にマウスを分け、11日目に以下の抗体で治療した。
d) IgGアイソタイプコントロール抗体:30mg/kgマウスIgG1、クローンMOPC-21(BioXCell);又は
e) 抗CD40抗体:4mg/kgラットIgG2a抗体、クローンFGK45(BioXCell);又は
f) 抗CD40抗体と抗CSF-1R抗体の組み合わせ(30mg/kgハムスター-マウスキメラ抗体クローン2G2:Ries et al., Cancer Cell 25:846-859, 2014)
【0286】
併用治療のために、動物を抗CD40抗体と抗CSF-1R抗体で一度だけ同時に治療した。全体的な試験デザインを図3Aに示す。
【0287】
フローサイトメトリー:前治療群当たり4頭のマウスの腫瘍について、フローサイトメトリーを用い、コンビナトリアル治療の投与前、11日目にTAM枯渇に対する効果を決定した。完全FcコンピテントCSF-1R抗体(クローン2G2、3日目及び9日目の治療、30mg/kg;Ries et al. Cancer Cell 2014, 25:846-859)による治療は、陽性コントロールとして機能した。フローサイトメトリー分析のために腫瘍を収集し、DPBS(PAN-Biotech、#P04-36500)中37℃で30分間、ディスパーゼII(最終1mg/ml、ロッシュ#04942078001)、コラゲナーゼIV(最終1mg/ml、シグマアルドリッチ#L5138)及びDNAseI(最終0.01%;ロッシュ#11284932001)を用いる.機械的破砕によって消化した。40μm細胞ストレーナー(EASYstrainer、Greiner #542 040)で単細胞懸濁液を流し、細胞を洗浄した後、Pharm Lyse Bufferを用い、製造業者の説明書(BD Pharmingen、#558995)に従って赤血球を除去した。最後に、細胞(2x10)を125μlのFACS緩衝液(DPBS+5%FSC(Gibco、#10500-038)、5mM EDTA(Invitrogen、#15575-038))に再懸濁させ、Fcブロック抗体(クローン 2.4G2、BD Pharmingen、#553142)を用いて5分間インキュベートした後、以下の抗体を添加し、氷上で30分間インキュベートし、再度洗い流した。
【0288】
死細胞を除外するために、DAPI(ロッシュ、#10236276001)をCanto IIフローサイトメーター(BDバイオサイエンス)でのデータ取得の前に加えた。FlowJoソフトウェアバージョン10を用いてデータを分析し、GraphPad Prismソフトウェアバージョン6.07を用いて統計的に評価した。
【0289】
抗CSF-1Rと抗CD40抗体の併用効果(実施例1A参照)が実際にマクロファージに依存していることを示すために、併用療法を適用する前にTAMを枯渇させた。抗CD40抗体の機能は、FcRIIb(Li & Ravetch, Science 2011, 333:1030-1034; White et al. Journal of Immunology 2001, 187:1754-63; Richmann & Vonderheide, Cancer Immunology Research 2013, 2: 19-26)を介した架橋に依存し、前治療中に30mg/kg のマウスIgG1(アイソタイプ又は抗CSF-1R抗体)を使用する場合、ブロックされる可能性がある。したがって、Fc受容体機能を欠く抗CSF-1R抗体(FcO変異体)及びアイソタイプコントロールを前治療に使用した。このFcO抗体変異体を用いてTAMの枯渇を確認するために、フローサイトメトリー分析を11日目に追加の動物の腫瘍に対して行った。TAMは、DAPICD45CD11bF4/80highLy6GnegativeLy6Clowのマーカーの組み合わせによって同定された。図3Bに示すように、抗CSF-1R FcO変異体は、それぞれのFcコンピテント及びFcサイレント抗体変異体で2回処理した後にTAMを枯渇させるのと同程度有効である。
【0290】
抗CD40抗体又は抗CD40抗体と抗CSF-1R抗体の組み合わせのいずれかによる治療前のTAMの枯渇前生存試験の結果を図3Cに示す。抗CD40と抗CSF-1Rの併用治療の前のCSF-1R FcO抗体を用いたTAMの枯渇は、コントロールの前治療と比較して、併用療法の生存利益を完全に無効にした(試験終了時点で、マウス10頭中、無腫瘍はゼロ)。アイソタイプコントロールによる担腫瘍マウスの前治療は、CD40/CSF-1Rの組み合わせで治療した場合、マウス10頭中7頭が腫瘍を完全に拒絶した。これらの結果は、抗CD40及び抗CSF-1R抗体治療の併用の効果促進におけるマクロファージの重要な役割を明確に示している。
【0291】
実施例1D: CSF-1Rシグナル伝達遮断は、強力な炎症誘発性表現型への腫瘍随伴マクロファージ(TAM)のCD40 mAb制御された極性化(CD40 mAb-regulated polarization)を増加させる(図4)。

メスC57BL/6Nマウス(6-8週齢、Charles Riverから入手)に、10個のMC38結腸直腸腺がん腫瘍細胞を皮下接種した。腫瘍成長曲線をキャリパー測定によりモニターし、腫瘍サイズが平均220mmに達したら、以下を用いる治療のために群を分けた。
a) IgGアイソタイプコントロール抗体:30mg/kgマウスIgG1、クローンMOPC-21(BioXCell);又は
b) 抗CD40抗体:4mg/kgラットIgG2a抗体、クローンFGK45(BioXCell);又は
c) 抗CSF-1R抗体:30mg/kgハムスター-マウスキメラ抗体クローン2G2(Ries et al., Cancer Cell 25:846-859, 2014);又は
d) 抗CD40抗体と抗CSF-1R抗体の組み合わせ::併用、同時治療、投与量はb)及びc)のとおり。
【0292】
すべての抗体を1回投与し、16時間後に腫瘍を得た。細胞選別のために、フローサイトメトリーについて実施例1Cに記載のとおりに腫瘍を処置し、染色した。FACS AriaII機器(BDバイオサイエンス)を用いて1群当たり4頭の動物から細胞を選別し、図4Aに示すように選別のためにゲートした。以下の3つの異なる骨髄細胞集団が得られた(1試料当たり最小10,000個の細胞が選別された):
a) 単球性MDSC(骨髄由来サプレッサー細胞):
CD45CD11bF4/80low Ly6Gnegative Ly6Chigh
b) TAM前躯体:
CD45CD11bF4/80low Ly6Gnegative Ly6Clow
c) TAM(腫瘍随伴マクロファージ):CD45CD11bF4/80highLy6GnegativeLy6Clow
【0293】
RNA配列解析が選別された細胞集団に対して実施され、生データはLangmead, B. & Salzberg, S.L., Nat Methods 9 (2012) 357-359; Mortazavi, A. et al., Nat Methods 5 (2008) 621-628の研究に記載された方法に基づいて社内ツールを用いて処理され、各処置群からの各細胞集団中の各遺伝子について正規化した遺伝子発現値を得た。
【0294】
得られた遺伝子発現値について、一般的に利用可能なツールを用いてシグネチャー解析を実施した(Sandmann, T. et al., Bioinformatics 30 (2014) 127-128)。結果は、他の処置群と比較した処置群のシグネチャーによって表される経路又は表現型の活性化レベル又は可能性レベルを表すウィルコクソン/マン・ホイットニーの順位和統計である。各処置群について3回の比較を行った。例えば抗CD40抗体と抗CSF-1R抗体の併用処置群を抗CD40、抗CSF-1R及びIgGアイソタイプコントロール群に対して個別に比較した。
【0295】
シグネチャーとは、目的の生物学的表現型を特徴付けることを意図した化学的又は遺伝的摂動実験のバイオインフォマティクス分析から通常決定される機能的に関連する遺伝子セット、例えば異なるマクロファージサブタイプ(M1対M2)又はLPS刺激マクロファージ対非刺激マクロファージである。LPS、インターフェロン又はtTNF刺激を含む、様々な細胞型(例えば免疫細胞、がん細胞、乳腺上皮細胞)の88個のシグネチャーを使用して、一般的な免疫活性化効果を調べた。88個のシグネチャーはすべて、Molecular Signatures Databaseから得られた(MSigDB, Subramanian A. et al., PNAS 102 (2005) 15545-50)。7つのシグネチャーを使用してM1/M2表現型を調べたが、これら7つのうちの3つは公表されている研究(Schmieder A. et al., Semin Cancer Biol. 22(4) (2012) 289-97; Martinez F.O. et al., Blood121(9): (2013) e57-69)から得られ、4つはAffymetrixマイクロアレイチップ上でプロファイリングされたin vitro分化マクロファージの遺伝子発現データを用いて、ロッシュにおいて生成された。
【0296】
図4Bは、非コントロール治療群(横の列)及び骨髄細胞集団(縦の列)のそれぞれについての分析結果を要約したものである。「X」は、治療群についての3つの比較すべてにわたって顕著な又は一貫した活性化/阻害がないことを示す。全体としては、3つの非コントロール治療のうち、抗CD40抗体と抗CSF-1R抗体の組み合わせが、分析時点で3つの骨髄サブタイプすべてにおける活性化M1様効果(上部パネル)及び3つの骨髄サブタイプすべてにおける一般的な免疫活性化様効果(底部パネル)を明確に誘導する唯一の治療である。
【0297】
実施例1E: CD40及びCSF-1RはヒトTAMによって発現される(IRIS IHC)(図5)。

患者試料を、結腸直腸がん(CRC)、中皮腫及びトリプルネガティブ乳がん(TNBC)からの2.5μmホルマリン固定パラフィン包埋組織切片に切断した。切片を、NEXESバージョン10.6ソフトウェアを使用しVentana Benchmark XTで、FOXP3(1μg/mL、236A/E7、Abcam ab20034)、CD68(RTU、KP-1、ベンタナ・メディカル・システムズ、790-2931)と二重でCD40(1:100、スプリングバイオサイエンス、E3704)、CD163 (RTU、MRQ-26、ベンタナ・メディカル・システムズ、760-4437)及びCSF1R(1μg/mL、29、ロシュ・ダイアゴノスティックス株式会社)についてIHCプロトコールを用いて染色した。
【0298】
切片を、32分間のCC1(トリスベースの細胞コンディショニング1)処理、続いて抗体インキュベーション(FOXP3:37℃で1時間、CD40:37℃で32分間、CD68:37℃で32分間、CD163:37℃で16分間、CSF1R:37℃で32分間)に供し、OptiView DAB(FOXP3、CD40、CSF1R)検出システム又はultraView DAB(CD163)又はRed(CD68)検出システムを用いて陽性染色を検出した。スライドは、Ventana iScan HT明視野スキャナーを使用して20倍でスキャンし、グループスパースモデル(group sparsity model)(Chen and Chukka, doi:10.1016/j.compmedimag.2015.04.001)に基づくアルゴリズムを使用し、ボード認定の病理学者によって分析された。
【0299】
異なるバイオマーカーの得られた密度値は、それぞれの間で対で相関していた。得られた相関係数を図5のヒートマップに視覚化し、異なるマーカー間の関係を簡単に概観できるようにした。赤のフィールドは正の相関を示し、青のフィールドは負の相関を示す。とりわけCSF1R陽性細胞の密度は、CD40/CD68細胞と正の相関があり、中皮腫及びCRCサブセットにおいて顕著に観察されたこれらのマーカーの潜在的な共発現を示している。一方、TNBCサブセットでは顕著な相関は見られなかった。(図5
【0300】
実施例1F CD40とCSF-1Rの組み合わせは、前臨床マウスモデルにおいて耐容性が良い(図6)。

メスC57BL/6Nマウス(6-8週齢、Charles Riverから入手)に、10個のMC38結腸直腸腺がん腫瘍細胞を皮下接種した。腫瘍成長曲線をキャリパー測定によりモニターし、腫瘍サイズが平均260mmに達したら、以下を用いる治療のために群を分けた。
a) IgGアイソタイプコントロール抗体:30mg/kgマウスIgG1、クローンMOPC-21(BioXCell);又は
b) 抗CD40抗体:4mg/kgラットIgG2A抗体、クローンFGK45(BioXCell);又は
c) 抗CSF-1R抗体:30mg/kgハムスター-マウスキメラ抗体クローン2G2(Ries et al., Cancer Cell 25:846-859, 2014);又は
d) 抗CD40抗体と抗CSF-1R抗体の組み合わせ::併用、同時治療、投与量はb)及びc)のとおり。
【0301】
すべての抗体を11日目に1回投与し、動物の体重を表示した時点で測定した。平均±SEMを、1群当たりn=5~10頭のマウスから計算した。
【0302】
抗CD40療法単独では一過性の体重減少が誘導されたが、これは抗CD40と抗CSF1Rの組み合わせと同等であった。17日目(治療開始後6日目)、抗CD40、抗CSF-1R又はIgGコントロール治療動物と比較して、体重の差は検出されなかった(図6)。
【0303】
実施例1G: CD40アゴニストなどのマクロファージ活性化物質と組み合わせた、CSF1R療法の持続性から一過性の腫瘍随伴マクロファージ(TAM)枯渇への移行(図7及び8)
探索的コホートQ6Wにおけるエマクツズマブ(Ig1カッパ定常ドメインとして、配列番号5及び配列番号7のVH及びVLを含む抗CSFR抗体)の用量及びスケジュールの根拠
代替の治療スケジュールは、エマクツズマブ投与によるマクロファージの最初の減少の後にマクロファージの再増殖が有益であるかどうかを調査することを目的としている。前臨床モデルは、in vivoで最大の効力を発揮するマクロファージ依存性を明らかにした。マクロファージの再増殖を可能にするためには、エマクツズマブのQ6W投与スケジュールがテストされるであろう。このプロトコールでは、全体的な曝露に対する体表面積(BSA)又は体重の影響が大きいとは考えられないため、固定(フラット)投与が選択されている。
【0304】
腫瘍随伴マクロファージ(TAM)の代わりに、血清中の前駆体ヒトCD14+CD16+単球が測定されるが、それは、この血中単球のリカバリーがその後の腫瘍随伴マクロファージ(TAM)のリカバリーと相関するためである。
【0305】
薬力学的モデルを、現在利用可能なヒトCD14+CD16+単球データにフィットさせた。予備集団分析に基づくと、Q6Wで投与される750mgの用量は、Q6Wの投与間隔の終わりに向かってCD14+CD16+単球のリカバリーを示す(~7日)(図5)。この推定単球リカバリーは、エマクツズマブの線状PKの喪失及びQ6Wの投与間隔の終わりに向かっての目標飽和度の減少とも一致している(図7)。
【0306】
研究BP27772のPK分析(100-3000mg Q2W;患者N=36)のPK分析に基づくと、エマクツズマブのPKは、100~900mg Q2Wまで非線形であることが示された。CmaxとAUCの双方とも、同じ用量範囲での総クリアランスの減少を伴って、用量比例増加よりも大きな増加を示したが、これは、エマクツズマブの消失がこれらの用量で達成された曝露において主に標的介在性であることを示している。900mgを超えると、曝露はおよそ3000mgまで用量比例的に増加したが、これは、標的介在性消失が飽和したことを示す。
【0307】
線形と非線形双方のクリアランス経路を含む2コンパートメントPKモデルを、現在利用可能なヒトのデータに当てはめた。非線形クリアランス経路が治療開始時の受容体の標的レベルに関連している可能性があり、TMDDを表すと見なすことができる。2コンパートメントモデルにおける非線形消失は、標的介在性消失の飽和を予測するのにも使用可能である(目標飽和度の代わり)。AUClast及びCLは、総CLに対するTMDDの寄与が600mgの用量で減少し始め、900mg以上の用量で最小に達することを示すが、これは、≧900mgの用量が≧90%の目標飽和度に達したことを示す(Q2W)(図8)。
【0308】
マクロファージの用量/全身曝露依存性の減少が200mg以降から皮膚及び腫瘍生検において観察され、これはCave 100μg/mLからプラトーに達し、単剤療法の用量及びパクリタキセルとの併用での用量である≧900mgにほぼ相当した。単球及びCSF-1レベルなど、追加の末梢血バイオマーカーも調べた。これらの末梢血バイオマーカーの用量/曝露傾向は、組織バイオマーカー(マクロファージ)と同様であり、≧900mgでプラトーに達した。現在までに入手可能なデータに基づくと、マクロファージの最大枯渇を達成するためには≧90%の目標飽和度が求められるであろう。
【0309】
結腸直腸がん(CRC)又はメラノーマ(MEL)患者を試験する(n=50まで)。この研究は、より長い投与間隔を有するエマクツズマブの代替投与スケジュールを試験して、抗CSF-1R抗体エマクツズマブによる最初の減少後のマクロファージ前駆体単球及び関連するマクロファージの再増殖を可能にすることによって、前駆単球及び関連するマクロファージリカバリーを調べる2ステップアプローチで行われる。
【0310】
ステップ1a(導入)では、(試験の第I部に記載のMTDの)アゴニストCD40抗体Q3W及びエマクツズマブQ6W(750mg)で治療された最初の10名の患者は、最初のエマクツズマブ注入から6週間後のTAM、皮膚マクロファージ及び循環単球の潜在的リカバリーについて分析される。エマクツズマブの開始用量750mg Q6Wは、臨床モデリングに基づいて決定された。
【0311】
n=10の評価可能な対腫瘍生検においてTAMがリカバリーしなかった場合、追加のn=10名の患者において第2の用量又は投与スケジュールを試験することができる(ステップ1b)。第2の用量及び投与スケジュールは、用量漸増コホート及び進行中の用量拡大コホートの新たなデータから選択される。
【0312】
エマクツズマブ注入後6週間でTAMのリカバリーが観察された場合、最大で30名の患者がこの拡大コホートにさらに勧誘される(ステップ2)。用量及びスケジュールの最初の適応後にTAMのリカバリーが観察されなかった場合、この研究は中止される。
【0313】
実施例1H: 抗腫瘍活性という意味での臨床有効性は以下のように評価される。

・最良総合効果
・部分奏効率と完全奏効率の合計として定義される全奏効率(ORR)。初回文書化の4週間以上後に繰り返し評価して確認される。
・無増悪生存期間(PFS):最初の試験治療から最初の疾患の進行又は死亡のいずれか先に発生した方までの期間として定義される。
・応答持続時間(DOR):文書化された他覚症状が発生してから、何らかの原因による進行又は死亡のいずれか先に発生した方までの時間として定義される。
・臨床的有用率(CBR):部分奏効率+完全奏効率+病勢安定率として定義される。
【0314】
最良総合効果、他覚症状及び疾患の進行は、治験責任医師の評価、並びに従来のRECIST v1.1及び改訂版RECIST判断基準の双方を用いた中央審査によって決定される。利用可能であれば、最新の(サイクル1の1日目の6か月前まで)試験前コンピューター断層撮影(CT)スキャン(過去のCTスキャン)の任意選択の提出が強く勧奨される。このスキャンを試験中に収集したスキャンと比較して、長期的な腫瘍増殖動態を決定する。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
【配列表】
0007138094000001.app