(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-07
(45)【発行日】2022-09-15
(54)【発明の名称】生物学的溶液中の単量体タンパク質から凝集タンパク質を分離するための方法
(51)【国際特許分類】
C07K 1/18 20060101AFI20220908BHJP
B01D 15/00 20060101ALI20220908BHJP
B01J 20/26 20060101ALI20220908BHJP
C07K 16/00 20060101ALN20220908BHJP
C07K 14/575 20060101ALN20220908BHJP
C12N 9/00 20060101ALN20220908BHJP
【FI】
C07K1/18
B01D15/00 K
B01J20/26 H
C07K16/00
C07K14/575
C12N9/00 101
(21)【出願番号】P 2019513416
(86)(22)【出願日】2017-08-30
(86)【国際出願番号】 US2017049376
(87)【国際公開番号】W WO2018048698
(87)【国際公開日】2018-03-15
【審査請求日】2020-08-28
(32)【優先日】2016-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100110803
【氏名又は名称】赤澤 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【氏名又は名称】佃 誠玄
(72)【発明者】
【氏名】コラク アタン,セムラ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェイル,アンドリュー ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】ラスムセン,ジェラルド ケー.
(72)【発明者】
【氏名】グリースグラバー,ジョージ ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】ボソフ,キャサリン エー.
【審査官】山内 達人
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-189427(JP,A)
【文献】国際公開第2015/050767(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K
B01D
B01J
C12N
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的溶液中の単量体タンパク質から凝集タンパク質を分離するための方法であって、
接触面を有する少なくとも1つのフィルタ要素
[ここで、前記フィルタ要素は濾材を含み、前記濾材は、
多孔質基材と、
前記多孔質基材上に配置された、炭化水素主鎖、及び前記炭化水素主鎖に結合された複数のペンダント基を含むポリマーと、
を含み、複数のペンダント基のそれぞれは、
(1)少なくとも1つの酸性基又はその塩と、
(2)前記少なくとも1つの酸性基又はその塩を、少なくとも6個の原子が連結した鎖によって、前記炭化水素主鎖に直接連結させているスペーサー基と、
を含み、
前記炭化水素主鎖に結合した複数のペンダント基は、下記式Iのモノマーに由来し、CH
2=CR
1-C(=O)-X-R
2-[Z-R
2]
n-L (I)
[式中、
R
1は、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、及びこれらの組み合わせから選択され、
各R
2は、ヒドロカルビレン、ヘテロヒドロカルビレン、及びこれらの組み合わせから独立して選択され、
Xは、-O-又は-NR
3-(式中、R
3は、水素、ヒドロカルビル、ヘテロヒドロカルビル、及びこれらの組み合わせから選択される)であり、
Zは、少なくとも1つの水素結合供与体、少なくとも1つの水素結合受容体、又はこれらの組み合わせを含むヘテロヒドロカルビレンであり、
nは、1であり、
Lは、少なくとも1つの酸性基又はその塩を含む官能基である]]を準備することと、
前記単量体タンパク質から前記凝集タンパク質を分離するのに有効な条件下で、初期の生物学的溶液を前記フィルタ要素の前記接触面に接触させて、最終的な生物学的溶液が精製された単量体タンパク質を含むようにすることと、
を含む、方法であって、
前記単量体タンパク質から前記凝集タンパク質を分離するのに有効な条件は、試料容器のアレイを用いて決定され、
ここで、各試料容器は、一つのフィルタ要素を含み、
緩衝塩、緩衝液のpH値、緩衝
液の導電率、及び/又はタンパク質濃度において異なる、複数のタンパク質溶液が調整され、
異なるタンパク質溶液が、アレイの各試料容器に添加され、
異なるタンパク質溶液は、加えられた緩衝塩、緩衝液のpH値及び/又はタンパク質濃度において異なり、
前記フィルタ要素と前記タンパク質溶液とを所定の時間
接触させた後、アレイの各試料容器からタンパク質溶液が捕集され、単量体タンパク質及び凝集タンパク質の濃度が分析され、単量体タンパク質から前記凝集タンパク質を分離するのに有効な条件を決定する、方法。
【請求項2】
前記ポリマーが、
(1)少なくとも1つのエチレン性不飽和基と、
(2)少なくとも1つの酸性基又はその塩と、
(3)前記少なくとも1つのエチレン性不飽和基と、前記少なくとも1つの酸性基又はその塩とを、少なくとも6個の原子が連結した鎖によって、直接連結させているスペーサー基と、
を含む、少なくとも1つのモノマーの共重合された単位を含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2016年9月9日出願の米国特許仮出願第62/385385号の利益を主張するものであり、この開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
標的生体材料、特に単量体抗体(特に単量体モノクローナル抗体)などの単量体タンパク質の単離及び精製は、関節リウマチ、クローン病、高コレステロール血症、及び様々な癌などの、様々な疾患の治療用途に重要である。モノクローナル抗体は、例えば、健常組織に重大な有害作用を及ぼすことなく、特定の標的を対象とすることができるため、従来の治療よりも好ましい。単量体タンパク質からの凝集タンパク質の除去は、このような治療用途に特に重要である。
【0003】
様々な標的生体材料の分離及び精製には、ポリマー材料が広く用いられてきた。このような分離及び精製方法は、イオン性基の存在、標的生体材料のサイズ、疎水性相互作用、親和性相互作用、水素結合相互作用、共有結合の形成などを含むいくつかの結合因子又は機構のいずれかに基づき得る。
【0004】
特に使い捨て方式の膜に基づく技術が、バイオ医薬品及びワクチンの製造方法においてますます重要となりつつある。膜は、受動的な、サイズに基づく分離において、また、より最近では、能動濾過(例えば、精製方法の後期段階における微量汚染物質の除去用)において用いられている。
【0005】
しかしながら、官能化膜(官能性ポリマーを担持する膜など)は、典型的には、比較的低い生体材料結合能が難点であり、これによって、概して、大規模な精製における用途が限定されてきた。したがって、官能化膜よりも、多孔質のビーズ状のクロマトグラフィー樹脂(イオン交換基又は他の相互作用性官能基を担持する)が、「捕捉及び溶出」型又は「結合及び溶出」型のタンパク質精製方法において標準的に用いられてきた。
【0006】
したがって、単量体タンパク質の単離及び精製、特に単量体タンパク質、とりわけ単量体モノクローナル抗体からの凝集タンパク質の分離のための、比較的簡便で、費用対効果が高く、かつ/又は効率的な(例えば、比較的容易に入手可能な出発材料及び/又は比較的少ない処理工程を含む)方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
本開示は、生物学的溶液中の単量体タンパク質から凝集タンパク質を分離するための方法を提供する。本方法は、接触面(例えば、上流面又は上面)を有する少なくとも1つのフィルタ要素を準備することと、単量体タンパク質から凝集タンパク質を分離するのに有効な条件下で、初期の生物学的溶液をフィルタ要素の接触面(例えば、上流面又は上面)に接触させて、最終的な生物学的溶液が精製された単量体タンパク質を含むようにすることと、を含む。
【0008】
このような方法の一実施形態において、フィルタ要素は濾材を含み、濾材は、
多孔質基材と、
多孔質基材上に配置された、炭化水素主鎖、及び炭化水素主鎖に結合された複数のペンダント基を含むポリマーと、
を含み、第1の複数のペンダント基のそれぞれは、
(1)少なくとも1つの酸性基又はその塩と、
(2)少なくとも1つの酸性基又はその塩を、少なくとも6個の原子が連結した鎖によって、炭化水素主鎖に直接連結させているスペーサー基と、
を含む。
【0009】
このような方法の別の実施形態において、フィルタ要素は濾材を含み、濾材は、
多孔質基材と、
多孔質基材上に配置された、少なくとも1つのモノマーの共重合された単位を含むポリマーと、
を含み、ポリマーは、
(1)少なくとも1つのエチレン性不飽和基と、
(2)少なくとも1つの酸性基又はその塩と、
(3)少なくとも1つのエチレン性不飽和基と、少なくとも1つの酸性基又はその塩とを、少なくとも6個の原子が連結した鎖によって、直接連結させているスペーサー基と、
を含む。
【0010】
定義
本特許出願で用いる場合、
「凝集タンパク質」又は「タンパク質凝集体」は、目的の生成物、例えば、治療用タンパク質(例えば、抗体)の少なくとも2つの分子(すなわち、モノマー)の会合を指す。目的の生成物の少なくとも2つの分子の会合は、これらに限定されるものではないが、共有結合架橋、非共有結合架橋、ジスルフィド架橋、又は非還元性架橋などのいずれによっても生じ得る。
「ボロナト」は、式-B(OH)2の基を意味する。
「カルボニルイミノ」は、式-(CO)NR-[式中、Rは、水素、アルキル(例えば、1~4個の炭素原子を有するアルキル基から選択される)、又はアリールである(好ましくは、Rは水素である)]の二価の基又は部分を意味する。
「カルボキシ」は、式-COOHの基を意味する。
「連結した原子」は、(鎖置換基の原子ではなく)鎖中の原子を意味する。
「連結されたヘテロ原子」は、(例えば、炭素-ヘテロ原子-炭素鎖又は炭素-ヘテロ原子-ヘテロ原子-炭素鎖を形成するように)炭素鎖中で1つ以上の炭素原子を置換する炭素以外の原子(例えば、酸素、窒素、又は硫黄)を意味する。
「エチレン性不飽和」は、式-CY=CH2[式中、Yは、水素、アルキル、シクロアルキル、又はアリールである]の基を意味する。
「グラフト密度」は、基材を完成したフィルタ要素に変換した後の質量増加を測定し、用いられたモノマー混合物の理論的分子量で除すことによって求め、mmol/g、すなわち、元の基材1グラム当たりにグラフト化されたリガンド基のミリモル(又はミリ当量)として表した。
「ヘテロ原子」は、炭素又は水素以外の原子を意味する。
「水素結合受容体」は、孤立電子対を有する酸素、窒素、及び硫黄から選択されるヘテロ原子を意味する。
「水素結合供与体」は、酸素、窒素、及び硫黄から選択されるヘテロ原子と共有結合した水素原子からなる部分を意味する。
「水素結合部分」は、少なくとも1つの水素結合供与体及び少なくとも1つの水素結合受容体を含む部分を意味する。
「ヒドロキシ」は、式-OHの一価の基を意味する。
「イミノカルボニルイミノ」は、式-N(R)-C(O)-N(R)-[式中、各Rは、独立して、水素、アルキル(例えば、1~4個の炭素原子を有するアルキル基から選択される)、又はアリールである(好ましくは、少なくとも1つのRは水素であり、より好ましくは、両方とも水素である)]の二価の基又は部分を意味する。
「イミノチオカルボニルイミノ」は、式-N(R)-C(S)-N(R)-[式中、各Rは、独立して、水素、アルキル(例えば、1~4個の炭素原子を有するアルキル基から選択される)、又はアリールである(好ましくは、少なくとも1つのRは水素であり、より好ましくは、両方とも水素である)]の二価の基又は部分を意味する。
「イソシアネート」は、式-N=C=Oの基を意味する。
「オキシカルボニルイミノ」は、式-O-C(O)-N(R)-[式中、Rは、水素、アルキル(例えば、1~4個の炭素原子を有するアルキル基から選択される)、又はアリールである(好ましくは、Rは水素である)]の二価の基又は部分を意味する。
「オキシチオカルボニルイミノ」は、式-O-C(S)-N(R)-[式中、Rは、水素、アルキル(例えば、1~4個の炭素原子を有するアルキル基から選択される)、又はアリールである(好ましくは、Rは水素である)]の二価の基又は部分を意味する。
「ホスファト」は、式-OPO3H2の基を意味する。
「ホスホノ」は、式-PO3H2の基を意味し、この基は酸素原子には結合していない。
生物学的溶液中の単量体タンパク質(例えば、抗体)のコンテクストにおける「精製された」は、初期の生物学的溶液に比べ、最終的な生物学的溶液中の、凝集タンパク質(例えば、抗体)の量に対する単量体タンパク質(例えば、抗体)の量が増加していることを意味する。
「スルファト」は、式-OSO3Hの基を意味する。
「スルホノ」は、式-SO3Hの基を意味し、この基は酸素原子には結合していない。
「チオカルボニルイミノ」は、式-(CS)NR-[式中、Rは、水素、アルキル(例えば、1~4個の炭素原子を有するアルキル基から選択される)、又はアリールである(好ましくは、Rは水素である)]の二価の基又は部分を意味する。
【0011】
また、本明細書において、用語「含む(comprises)」及びその変化形は、これらの用語が明細書及び特許請求の範囲に記載されている場合、限定的な意味は持たない。このような用語は、記載されたある1つの工程若しくは要素、又は複数の工程若しくは要素の群が含まれることを意味し、いかなる他の工程若しくは要素、又は複数の工程若しくは要素の群も排除されないことを意味するものと理解される。「からなる(consisting of)」により、この語句「からなる」に続くいかなるものも包み、これらに限定されることを意味する。したがって、語句「からなる」は、列挙された要素が必要又は必須であり、他の要素が存在し得ないことを示す。「から本質的になる(consisting essentially of)」により、この語句の後に列挙されるいかなる要素も含み、これらの列挙された要素に関して本開示で特定した作用若しくは機能に干渉又は寄与しない他の要素に限定されることを意味する。したがって、語句「から本質的になる」は、列挙された要素が必要又は必須であるが、他の要素は任意に含まれ、列挙された要素の作用若しくは機能に実質的に影響を及ぼすか否かに応じて存在してもよい、又は、しなくてもよいことを意味する。
【0012】
「好ましい」及び「好ましくは」という語は、特定の状況下で特定の利益を提供し得る、本開示の実施形態を指す。しかしながら、同一の状況下又は他の状況下において、他の実施形態も好ましい場合がある。更には、1つ以上の好ましい実施形態の記載は、他の実施形態が有用ではないことを示唆するものではなく、本開示の範囲から他の実施形態を排除することを意図するものではない。
【0013】
本出願では、「a」、「an」、及び「the」などの用語は、単数の実体のみを指すことを意図するものではなく、例示のために具体例の使用が可能な、一般的な種類を含むことを意図するものである。用語「a」、「an」、及び「the」は、用語「少なくとも1つ」と互換的に用いられる。列挙が後続する「~のうちの少なくとも1つ(at least one of)」及び「~のうちの少なくとも1つを含む(comprises at least one of)」という語句は、列挙内の項目のうちのいずれか1つ、及び、列挙内の2つ以上の項目のいずれかの組み合わせを指す。
【0014】
列挙が後続する「~のうちの少なくとも1つ(at least one of)」及び「~のうちの少なくとも1つを含む(comprises at least one of)」という語句は、列挙内の項目のうちのいずれか1つ、及び、列挙内の2つ以上の項目のいずれかの組み合わせを指す。
【0015】
本明細書で用いる場合、用語「又は」は、内容が別途明示していない限り、概して「及び/又は」を含む通常の意味で用いられる。
【0016】
用語「及び/又は」は、列挙された要素の1つ又は全て、若しくは列挙された要素の任意の2つ以上の組み合わせを意味する(例えば、苦痛を予防すること及び/又は治療することは、更なる苦痛を予防すること、治療すること、又は治療すること及び予防することの両方を意味する)。
【0017】
本明細書において、数値範囲(例えば、特定の部分の炭素原子の数の範囲、特定の成分の量の範囲など)の様々な集合が記載されており、各集合内で、範囲のいずれかの下限を、範囲のいずれかの上限と組み合わせることができる。このような数値範囲はまた、その範囲内に包括される全ての数を含むことを意図する(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5などを含む)。
【0018】
また、本明細書において、全ての数は用語「約」で修飾され、好ましくは用語「正確に」で修飾されるものとみなす。測定された量に関して本明細書で用いる場合、用語「約」は、当業者によって、測定を行い、測定の目的及び用いた測定機器の精度に見合う程度の注意を払って予想され得る、測定された量のばらつきを指す。本明細書において、「最大」数字(例えば、最大50)は、その数(例えば、50)を含む。
【0019】
本明細書を通しての「一実施形態(one embodiment)」、「実施形態(an embodiment)」、「特定の実施形態(certain embodiments)」、又は「いくつかの実施形態(some embodiments)」などの言及は、実施形態に関して記載された特定の特徴、構成、組成、又は特性が、本開示の少なくとも1つの実施形態に含まれていることを意味する。したがって、本明細書を通して様々な箇所にこのような語句が記載されている場合、必ずしも、本開示の同一の実施形態を指しているわけではない。更に、特定の特徴、構成、組成、又は特性は、1つ以上の実施形態において任意の好適な方法で組み合わせてもよい。
【0020】
ある基が本明細書に記載の式中に1回よりも多く存在する場合、具体的に記載されているか否かに関わらず、各基は「独立して」選択される。例えば、式中に1つよりも多いR2基が存在する場合、各R2基は独立して選択される。更に、これらの基内に含有される下位の基も独立して選択される。
【0021】
上記の発明の概要の項は、本開示のあらゆる実施形態又はあらゆる実施の記載を意図するものではない。以下の発明を実施するための形態により、例示的な実施形態をより詳細に記載する。発明を実施するための形態を通し、例の列挙を通して指針を提供し、これらの例を様々な組み合わせで用いることができる。いずれの場合も、記載した列挙は、代表的な群としての役割を果たすのみであり、排他的な列挙として解釈すべきものではない。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本開示は、生物学的溶液中の単量体タンパク質から凝集タンパク質を分離するための方法を提供する。本方法は、接触面(例えば、上流面又は上面)を有する少なくとも1つのフィルタ要素を準備することと、単量体タンパク質から凝集タンパク質を分離するのに有効な条件下で、生物学的溶液をフィルタ要素の接触面(例えば、上流面又は上面)に接触させることと、を含む。
【0023】
このような方法の特定の実施形態において、フィルタ要素は濾材を含み、濾材は、
多孔質基材と、
多孔質基材上に配置された、炭化水素主鎖、及び炭化水素主鎖に結合された複数のペンダント基を含むポリマーと、
を含み、第1の複数のペンダント基のそれぞれは、
(1)少なくとも1つの酸性基又はその塩と、
(2)少なくとも1つの酸性基又はその塩を、少なくとも6個の原子が連結した鎖によって、炭化水素主鎖に直接連結させているスペーサー基と、
を含む。
【0024】
多孔質基材上に配置されたポリマーは、多孔質基材上に配置される前に形成することができる。例えば、ポリマーを形成した後に、基材表面上にコーティングすることができる。代替の実施形態において、ポリマーは、基材の存在下でモノマーから形成し、基材にグラフト化することができる。例えば、酸性基又はその塩を含むモノマーに、基材の存在下で電子ビーム線を施し、このようなモノマーをグラフト化し、かつ重合させることができる。別の実施形態において、酸性基又はその塩を含む化合物は、あらかじめ基材表面にグラフト化されたモノマー単位と反応させることができる。
【0025】
このような方法の特定の実施形態において、多孔質基材上に配置されたポリマーは、少なくとも1つのモノマーの共重合された単位を含み、モノマーは、
(1)少なくとも1つのエチレン性不飽和基(いくつかの実施形態では、末端のエチレン性不飽和基)と、
(2)少なくとも1つの酸性基又はその塩と、
(3)少なくとも1つのエチレン性不飽和基と、少なくとも1つの酸性基又はその塩とを、少なくとも6個の原子が連結した鎖によって、直接連結させているスペーサー基と、
を含む。
【0026】
特定の実施形態において、多孔質基材は多孔質膜であり、特定の実施形態において、多孔質基材は多孔質ポリマー膜である。
【0027】
特定の実施形態において、ポリマーの複数のペンダント基中、又は、モノマー中の酸性基若しくはその塩は、カルボキシ、ホスホノ、ホスファト、スルホノ、スルファト、ボロナト、及びこれらの組み合わせから選択される。
【0028】
特定の実施形態において、ポリマーの複数のペンダント基中、又は、モノマー中のスペーサー基は、少なくとも1つの水素結合部分を含む。
【0029】
驚くべきことに、このようなポリマーの酸性基又はその塩は、単量体タンパク質に比べ、凝集タンパク質との相互作用において特に有効であり得る。ポリマーを担持する(特定の実施形態では、グラフト化ポリマーを担持する)多孔質基材は、より短い連結鎖のポリマーを担持する同様の多孔質基材よりも、予想外に、より高い凝集タンパク質結合能を呈することができる。凝集タンパク質結合能は、連結鎖中に少なくとも1つの水素結合部分を含むことにより、驚くほどに、更に向上させることができる。
【0030】
特定の実施形態において、単量体タンパク質に比べ、凝集タンパク質への結合について相対的に高い結合能で官能化された基材は、モノマーのエチレン性不飽和基と酸性基又はその塩との間に多原子スペーサー基を有する特定のモノマーを用いることによって、調製することができる。モノマーは、少なくとも1つの酸性基又はその塩が、少なくとも1つのエチレン性不飽和基から、少なくとも6個の原子が連結した連結鎖によって隔離又は離されている化合物を含む。フリーラジカル重合すると、このようなモノマーは、得られたポリマー鎖又はポリマー主鎖から、少なくとも6個の原子が連結した連結鎖によって隔離又は離されている酸性基若しくはその塩を担持するポリマーをもたらす。
【0031】
タンパク質を含有する多種多様な生物学的溶液を、本開示の方法において利用することができる。タンパク質を含有する溶液は、例えば、発酵ブロス又は細胞培養物又はマウス腹水を含んでいてもよい。タンパク質は、当該分野において既知の、任意のタンパク質、又はその断片であり得る。タンパク質は、天然の供給源由来又は組み換え供給源由来であってもよい。タンパク質は、天然配列又は非天然配列を有していてもよい。いくつかの実施形態において、タンパク質は酵素である。いくつかの実施形態において、タンパク質はホルモンである。いくつかの実施形態において、タンパク質は抗体である。特定の実施形態において、タンパク質はモノクローナル抗体又はその断片である。抗体の断片としては、F(ab)、F(ab’)、F(ab’)2、Fv、及び一本鎖抗体が挙げられる。ある場合には、タンパク質はヒトモノクローナル抗体であってもよい。他の場合には、タンパク質は免疫グロブリンG(IgG)抗体である。更に他の場合には、タンパク質はFc融合タンパク質などの融合タンパク質である。
【0032】
生物学的溶液中の単量体タンパク質から凝集タンパク質を分離する方法は、単量体タンパク質を通過させながら、凝集タンパク質を濾材に結合させることによるものである。チャレンジロード(challenge load)が低い分離の初期段階では、単量体タンパク質が濾材に結合することもあるが、チャレンジロードが増大するにつれて凝集タンパク質が優先的に結合され、単量体タンパク質を置換する。したがって、本方法では、低いチャレンジロードにおいて単量体タンパク質が濾材に結合している場合があるが、本方法では、最終的には、単量体タンパク質から凝集タンパク質を分離し、最終的な生物学的溶液(すなわち、初期の生物学的溶液をフィルタ要素に接触させることによって得られた生成物)が精製された単量体タンパク質を含むようにする。
【0033】
本方法の特定の実施形態において、生物学的溶液をフィルタ要素の接触面(例えば、上流面又は上面)に接触させることは、生物学的溶液を濾材を通して通過させることによって、又は、生物学的溶液を濾材を通して流通させることによって、又は、両方によって行われる。特定の実施形態において、生物学的溶液を接触面(例えば、上流面又は上面)に接触させることは、生物学的溶液を濾材を通して流通させることを伴う。
【0034】
特定の実施形態において、本方法は、溶出工程を必要とせずに、単量体タンパク質を精製することを伴う。すなわち、本方法は、単量体タンパク質を結合させるのではなく、また、凝集タンパク質を洗い流すのではなく、凝集タンパク質を結合させ、単量体タンパク質を通過させる。これは、少なくとも単量体タンパク質の希釈を回避することにより、溶出した単量体タンパク質を後で濃縮する必要がなくなり、これによって処理効率がもたらされ、処理時間が短縮されるため有利である。これはまた、濾材に結合した凝集タンパク質の捕捉及び廃棄が可能となり、これは、濾材が使い捨てフィルタ物品内に封入されている場合に望ましいため、有利である。更に、緩衝液の交換及びpH調整が不要となり得る。
【0035】
特定の実施形態において、本方法は、最終的な溶液において、初期の生物学的溶液(すなわち、本明細書に記載の方法が施される前の生物学的溶液)中に存在する単量体タンパク質の少なくとも40%、又は少なくとも45%、又は少なくとも50%、又は少なくとも55%、又は少なくとも60%、又は少なくとも65%、又は少なくとも70%、又は少なくとも75%、又は少なくとも80%、又は少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%を回収することを伴う。
【0036】
特定の実施形態において、本方法は、初期の生物学的溶液から、凝集タンパク質の少なくとも5%、又は少なくとも10%、又は少なくとも15%、又は少なくとも20%、又は少なくとも25%、又は少なくとも30%、又は少なくとも35%、又は少なくとも40%、又は少なくとも45%、又は少なくとも50%、又は少なくとも55%、又は少なくとも60%、又は少なくとも65%、又は少なくとも70%、又は少なくとも75%、又は少なくとも80%、又は少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%を除去することを伴う。
【0037】
本方法は、単量体タンパク質から凝集タンパク質を分離し、所望の結果をもたらすのに有効な条件下で、生物学的溶液を、フィルタ要素の接触面(例えば、上流面又は上面)に接触させることを伴う。
【0038】
特定の実施形態において、このような条件は、9未満、又は8.5未満、又は8未満、又は7.5未満、又は7未満、又は6.5未満の生物学的溶液のpHを含む。特定の実施形態において、このような条件は、少なくとも4、又は少なくとも4.5、又は少なくとも5の生物学的溶液のpHを含む。
【0039】
特定の実施形態において、このような条件は、1センチメートル当たり少なくとも1ミリジーメンス(mS/cm)、又は少なくとも2mS/cm、又は少なくとも3mS/cm、又は少なくとも4mS/cm、又は少なくとも5mS/cm、又は少なくとも6mS/cm、又は少なくとも7mS/cm、又は少なくとも8mS/cm、又は少なくとも9mS/cm、又は少なくとも10mS/cmの生物学的溶液の導電率を含む。特定の実施形態において、このような条件は、110mS/cm以下、又は100mS/cm以下、又は50mS/cm以下、又は40mS/cm以下、又は30mS/cm以下の生物学的溶液の導電率を含む。
【0040】
特定の実施形態において、生物学的溶液のこのような導電率は、無機塩、有機塩、又はこれらの組み合わせを含む緩衝液によってもたらされる。特定の実施形態において、このような緩衝塩は、塩化物(例えば、NaCl)、リン酸塩、クエン酸塩、硫酸塩、酢酸塩、又はこれらの組み合わせを含む。
【0041】
特定の実施形態において、このような条件は、濾材1L当たり少なくとも1グラム(g)、又は濾材1L当たり少なくとも10g、又は濾材1L当たり少なくとも25g、又は濾材1L当たり少なくとも50g、又は濾材1L当たり少なくとも75g、又は濾材1L当たり、少なくとも100g、若しくは少なくとも500g、若しくは少なくとも1000g、若しくは少なくとも2000gのチャレンジロードを含む。このコンテクストにおいて、「チャレンジロード」は、濾材の体積に対するタンパク質(凝集タンパク質及び単量体タンパク質)の量、1リットル当たりのグラム数を意味する。チャレンジロードの上限は、単量体タンパク質に対する凝集タンパク質の選択性、初期の生物学的溶液中の凝集タンパク質の実際の量、初期の生物学的溶液中の総タンパク質濃度などを含む、いくつかの事項によって決まる。望ましくは、チャレンジロードは、キログラムから数キログラムの範囲であり、できる限り高いチャレンジロードである。
【0042】
特定の実施形態において、本方法のための最適条件の評価は、試料容器のアレイを用いて好都合に実施され、各容器は、本開示のフィルタ要素を含む。特に有用な容器のアレイは、例えば、各ウェルが本開示のフィルタ要素を含む、96ウェルフィルタプレートである。個々のプレートの各ウェルは、同一のフィルタ要素を含んでもよく、すなわち、同一のポリマー組成物でフィルタ要素を官能化してもよい。あるいは、2つ以上の異なるフィルタ要素、すなわち、異なるポリマー組成物で官能化されたフィルタ要素を、単一のプレートのウェル内に配置してもよい。各ウェルは単層のフィルタ要素を含んでもよい、あるいは、1層よりも多いフィルタ要素を含んでもよい。後者の場合、多層のフィルタ要素は、同一のポリマーで、又は、異なるポリマーで官能化されていてもよい。次いで、様々な緩衝塩、緩衝液のpH値、緩衝液の導電率、及び/又はタンパク質濃度を利用し、タンパク質溶液を調製することができる。次いで、これらの初期の溶液を、フィルタ要素の接触面(例えば、上面)に接触するように、プレートのウェル中に適用することができる。所定の接触時間の後、遠心分離によって又は真空濾過によって、タンパク質溶液をフィルタ要素を通して通過させることができ、捕集プレートのウェルに捕集することができる。このように捕集された濾過液(最終的な溶液)は、HPLC分析などにより、単量体タンパク質及び凝集タンパク質の濃度について分析することができ、初期の溶液の濃度と比較することができる。このようにして、単量体タンパク質の減少を最小限に抑え、凝集タンパク質を除去するための最適条件(緩衝液、pH、導電率などに関して)を、単一の、ハイスループット実験のコンテクスト内で評価することができる。このような技法は、当業者に周知である。
【0043】
モノマー
本開示の方法における濾材に用いられるポリマーの調製に用いるのに好適なモノマーとしては、(a)少なくとも1つのエチレン性不飽和基と;(b)少なくとも1つの酸性基又はその塩と;(c)少なくとも1つのエチレン性不飽和基と、少なくとも1つの酸性基又はその塩とを、少なくとも6個の原子が連結した鎖によって、直接連結させているスペーサー基と;を含む(又はこれらからなる)ものが挙げられる。
【0044】
モノマーは中性状態であり得るが、一部のpH条件下では、負に帯電している場合もある。
【0045】
モノマーのエチレン性不飽和基(上記で定義した通り)は、式:-CY=CH2[Yは、水素、アルキル、シクロアルキル、又はアリールである]によって表すことができる。特定の実施形態において、エチレン性不飽和基としては、エテニル、1-アルキルエテニル、及びこれらの組み合わせが挙げられる(すなわち、Yは、好ましくは水素又はアルキル、より好ましくは、Yは水素又はC1~C4アルキル、更により好ましくは、Yは水素又はメチルである)。
【0046】
モノマーは、単一のエチレン性不飽和基又は複数のエチレン性不飽和基(例えば、2個又は3個、又は最大6個程度)を含む場合があり、複数のエチレン性不飽和基は、本質的に同一であり得る、又は、異なり得る(好ましくは同一である)。モノマーは、好ましくは、1つのみのエチレン性不飽和基を有する。
【0047】
モノマーの好適な酸性基としては、少なくともある程度の酸性度(比較的弱酸から比較的強酸の範囲であり得る)を呈するもの、及びその塩が挙げられる。このような酸性基又はその塩としては、イオン交換型又は金属キレート型のリガンドとして通常利用されるものが挙げられる。
【0048】
特定の実施形態において、少なくとも1つの酸性基又はその塩は、ヘテロ原子含有基である。有用な酸性基としては、ヘテロヒドロカルビル基及び他のヘテロ原子含有基が挙げられる。例えば、有用な酸性基は、酸素、硫黄、リン、ホウ素など、及びこれらの組み合わせから選択される、1つ以上のヘテロ原子を含み得る。酸性基の有用な塩としては、アルカリ金属イオン(例えば、ナトリウムイオン又はカリウムイオン)、アルカリ土類金属イオン(例えば、マグネシウムイオン又はカルシウムイオン)、アンモニウムイオン、及びテトラアルキルアンモニウムイオンなど、並びにこれらの組み合わせから選択される対イオンを有するものが挙げられる。
【0049】
モノマーは、単一の酸性基又は複数の酸性基(例えば、2個又は3個、又は最大6個程度)、又は、その塩を含む場合があり、複数の酸性基は、本質的に同一であり得る、又は、異なり得る(好ましくは同一である)。特定の実施形態において、酸性基は、カルボキシ、ホスホノ、ホスファト、スルホノ、スルファト、ボロナト、及びこれらの組み合わせから選択される。特定の実施形態において、酸性基としては、カルボキシ、ホスホノ、スルホノ、及びこれらの組み合わせが挙げられる。特定の実施形態において、酸性基はカルボキシ基である。
【0050】
モノマーのスペーサー基は、少なくとも1つのエチレン性不飽和基及び少なくとも1つの酸性基又はその塩に、少なくとも6個の原子が連結した鎖によって、直接連結され得る。したがって、鎖は、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35個以上の連結した原子を含み得る(例えば、最大40又は50個程度を含む)。特定の実施形態において、鎖は、少なくとも7個の連結した原子(より好ましくは、少なくとも8個の連結した原子、更により好ましくは、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、又は少なくとも12個)を含み、かつ/又は、30個以下の連結した原子(より好ましくは25個以下の連結した原子、更により好ましくは20個以下、更により好ましくは16個以下)を含む。
【0051】
理論による束縛を望むものではないが、鎖の長さは、(モノマーの重合により形成される)ポリマー主鎖が、らせん構造又は部分的ならせん構造をとることに寄与し得る。鎖が比較的短い場合(例えば、6個未満の連結した原子)、酸性基間のイオン反発によって、ポリマー主鎖はランダムコイル型構造とされ得る。鎖長の増加に伴い、らせん構造をとることが可能となり得、8~14個の原子が連結した鎖長で、らせん構造をとる可能性は最大となり得る。基材にグラフト化されたポリマーのらせん構造によって、凝集タンパク質、特に凝集モノクローナル抗体との相互作用への酸性基又はその塩の提供を促進することができる。
【0052】
特定の実施形態において、スペーサー基は少なくとも1つの水素結合部分を含み、これは、少なくとも1つの水素結合供与体及び少なくとも1つの水素結合受容体(両方ともヘテロ原子を含有する)を含む部分として上記で定義したものである。したがって、好ましいスペーサー基としては、ヘテロ原子含有炭化水素基(より好ましくは、連結されたヘテロ原子を含有する炭化水素基)が挙げられる。より好ましいスペーサー基は、少なくとも2つの水素結合部分を含む、又は、少なくとも1つの水素結合部分と、この水素結合部分とは別個の(この水素結合部分の一部ではない)少なくとも1つの水素結合受容体と、を含む。
【0053】
特定の実施形態において、水素結合部分としては、少なくとも2つの水素結合供与体(例えば、イミノ、チオ、又はヒドロキシなどの供与体)、少なくとも2つの水素結合受容体(例えば、カルボニル、カルボニルオキシ、又はエーテル酸素の形態の受容体)、又は両方を含むものが挙げられる。例えば、イミノカルボニルイミノ部分(2つのN-H供与体と、カルボニル上の2つの孤立電子対の形態の少なくとも2つの受容体と、を有する)が、単一のイミノカルボニル部分よりも好ましい場合があり得る。特定の実施形態において、スペーサー基としては、少なくとも1つのイミノカルボニルイミノ部分(より好ましくは、カルボニルオキシなどの少なくとも1つの受容体との組み合わせである)、少なくとも2つのイミノカルボニル部分、又はこれらの組み合わせを含むものが挙げられる。
【0054】
水素結合部分の水素結合供与体及び水素結合受容体は、互いに隣接している(直接結合している)場合がある、又は、隣接していない場合がある(好ましくは、隣接している、又は、4個以下の原子が連結した鎖によって、隔離されている、より好ましくは隣接している)。水素結合供与体及び/又は水素結合受容体のヘテロ原子は、スペーサー基の連結された原子の鎖中に配置することができる、あるいは、鎖置換基中に配置することができる。
【0055】
水素結合供与体は、(供与体のヘテロ原子の孤立電子対によって)水素結合受容体としても機能する場合があるが、水素結合部分は、好ましくは、別個の供与体部分及び受容体部分を含む。これによって、分子内(モノマー間の)水素結合の形成を促進することができる。理論による束縛を望むものではないが、ポリマー分子内の隣接するモノマー繰り返し単位間又は近接する繰り返し単位間のこのような分子内水素結合は、スペーサー基の少なくともある程度の強化に寄与することができ、これによって、凝集タンパク質、特に凝集モノクローナル抗体との相互作用への酸性基又はその塩の提供を促進することができる。
【0056】
驚くべきことに、このようなポリマーの酸性基又はその塩は、単量体タンパク質に比べ、凝集タンパク質との相互作用において特に有効であり得る。凝集タンパク質結合能は、モノマーの連結鎖中に少なくとも1つの水素結合部分を含むことにより、驚くほどに、更に向上させることができる。
【0057】
特定の実施形態において、水素結合部分としては、カルボニルイミノ、チオカルボニルイミノ、イミノカルボニルイミノ、イミノチオカルボニルイミノ、オキシカルボニルイミノ、オキシチオカルボニルイミノなど、及びこれらの組み合わせが挙げられる。特定の実施形態において、水素結合部分としては、カルボニルイミノ、イミノカルボニルイミノ、オキシカルボニルイミノ、及びこれらの組み合わせ(より好ましくは、カルボニルイミノ、イミノカルボニルイミノ、及びこれらの組み合わせ)が挙げられる。特定の実施形態において、スペーサー基としては、二価、三価、又は四価(より好ましくは、二価又は三価、更に好ましくは、二価)のものが挙げられる。
【0058】
有用なモノマーの種類としては、以下の一般式I:
CH2=CR1-C(=O)-X-R2-[Z-R2]n-L (I)
[式中、
R1は、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、及びこれらの組み合わせから選択され、
各R2は、ヒドロカルビレン、ヘテロヒドロカルビレン、及びこれらの組み合わせから独立して選択され、
Xは、-O-又は-NR3-(式中、R3は、水素、ヒドロカルビル、ヘテロヒドロカルビル、及びこれらの組み合わせから選択される)であり、
Zは、少なくとも1つの水素結合供与体、少なくとも1つの水素結合受容体、又はこれらの組み合わせを含むヘテロヒドロカルビレンであり、
nは、0又は1の整数であり、
Lは、少なくとも1つの酸性基又はその塩を含む官能基である]によって表されるものが挙げられる。
【0059】
式Iの特定の実施形態において、R1は、水素又はアルキル(より好ましくは、水素又はC1~C4アルキルであり、更により好ましくは、水素又はメチル)である。
【0060】
特定の実施形態において、各R2は、独立して、ヒドロカルビレン又はヘテロヒドロカルビレンである。特定の実施形態において、各R2は、独立して、アラルキレン(すなわち、アリールで置換されたアルキレン)、ヘテロアラルキレン、ヒドロキシ置換アルキレン、又はヒドロキシ置換アラルキレンである。特定の実施形態において、各R2は、独立して、ヒドロカルビレンである。特定の実施形態において、各R2は、独立して、アルキレンである。
【0061】
特定の実施形態において、Xは、-O-又は-NR3-[式中、R3は水素である]である。
【0062】
特定の実施形態において、Zは、カルボニル、カルボニルイミノ、カルボニルオキシ、エーテル酸素、チオカルボニルイミノ、イミノカルボニルイミノ、イミノチオカルボニルイミノ、オキシカルボニルイミノ、オキシチオカルボニルイミノ、及びこれらの組み合わせから選択される(より好ましくは、カルボニル、カルボニルイミノ、カルボニルオキシ、エーテル酸素、イミノカルボニルイミノ、オキシカルボニルイミノ、及びこれらの組み合わせから選択され、更により好ましくは、カルボニルイミノ、カルボニルオキシ、エーテル酸素、イミノカルボニルイミノ、及びこれらの組み合わせから選択され、更により好ましくは、カルボニルイミノ、イミノカルボニルイミノ、及びこれらの組み合わせから選択される)少なくとも1つの部分を含むヘテロヒドロカルビレンである。
【0063】
特定の実施形態において、nは、整数1である。
【0064】
特定の実施形態において、Lは、カルボキシ、ホスホノ、ホスファト、スルホノ、スルファト、ボロナト、及びこれらの組み合わせから選択される(より好ましくは、カルボキシ、ホスホノ、スルホノ、及びこれらの組み合わせから選択される)少なくとも1つの酸性基又はその塩を含む、官能基である。
【0065】
このようなモノマーは、既知の合成方法によって、又は、既知の合成方法の類似法によって調製することができる。例えば、アミノ基含有カルボン酸、アミノ基含有スルホン酸、又はアミノ基含有ホスホン酸は、アミノ基と反応する少なくとも1つの基を含むエチレン性不飽和化合物と反応させることができる。同様に、ヒドロキシ基も含有する酸性基含有化合物は、任意に触媒の存在下で、ヒドロキシ基と反応する少なくとも1つの基を含むエチレン性不飽和化合物と反応させることができる。
【0066】
好ましいモノマーは、(メタ)アクリロイル官能性である。本明細書で用いる場合、用語「(メタ)アクリロイル官能性」は、アクリロイル官能性及び/又はメタクリロイル官能性を指し、同様に、用語「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及び/又はメタクリレートを指す。このようなモノマーにおいて、カルボニル基は、スペーサー基の一部である。
【0067】
有用なモノマーの代表例としては、一般式II:
【化1】
のアルケニルアズラクトン
又は、一般式III:
CH
2=C(R
1)-C(=O)-X-R
2-N=C=O (III)
のエチレン性不飽和イソシアネートと、
一般式IV:
H-X-R
2-L (IV)
の酸性基含有化合物(又はその塩)と、
の反応から誘導され、一般式Iのモノマーを生成するもの(式中、式II、III、及び/又はIV中のR
1、X、R
2、及びLは、式Iについて上記で定義した通りである)が挙げられる。
【0068】
特定の実施形態において、本開示の方法で用いられる濾材は、一般式Iのモノマーの混合物に、例えば、好適な基材の存在下で放射線(例えば、電子ビーム線)を施すことによって作製することができる。モノマーの混合物からの第1のモノマーを基材の表面に結合させ、第2のモノマーと反応するラジカルを生成させ、第3のモノマーと反応する更なるラジカルを形成するといった方法で、ポリマーを基材表面にグラフト化することができる。
【0069】
必ずしも好ましいものではないが、本明細書に記載の濾材の調製方法の別法において、第1工程で、多孔質基材を、一般式II又は一般式IIIのモノマーでグラフト化することができる。次いで、第2工程で、グラフト化された基材を、一般式IVの酸性基含有化合物と反応させることができる。第1工程は、モノマーを基材にグラフト化するための既知の通常の方法のいずれかを用い(例えば、UV照射、ガンマ照射、及び/又は電子ビーム照射を用いることにより)、式II及びIIIのモノマーとは反応しない溶媒を用いることに注意して、実施することができる。第2工程では、グラフト化されたポリマーのアズラクトン基又はイソシアネート基とは反応しないが、式IVの酸性基含有化合物を溶解させる溶媒を選択する。このような予防措置は、非常に反応性のアズラクトン基及びイソシアネート基の、競合する加水分解又は加溶媒分解を最小限に抑えるためにとられる。任意に、反応の前又は後に、酸性基含有化合物を中和(塩の形態に変換)してもよい。
【0070】
式IIの有用なアルケニルアズラクトンの代表例としては、4,4-ジメチル-2-ビニル-4H-オキサゾール-5-オン(ビニルジメチルアズラクトン、VDM)、2-イソプロペニル-4H-オキサゾール-5-オン、4,4-ジメチル-2-イソプロペニル-4H-オキサゾール-5-オン、2-ビニル-4,5-ジヒドロ-[1,3]オキサジン-6-オン、4,4-ジメチル-2-ビニル-4,5-ジヒドロ-[1,3]オキサジン-6-オン、4,5-ジメチル-2-ビニル-4,5-ジヒドロ-[1,3]オキサジン-6-オンなど、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0071】
一般式IIIのエチレン性不飽和イソシアネートの代表例としては、2-イソシアネートエチル(メタ)アクリレート(IEM又はIEA)、3-イソシアネートプロピル(メタ)アクリレート、4-イソシアネートシクロヘキシル(メタ)アクリレートなど、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0072】
一般式IVの有用な化合物の代表例としては、アミノ基含有カルボン酸、アミノ基含有スルホン酸、アミノ基含有ボロン酸、アミノ基含有ホスホン酸及びこれらの組み合わせ、又はこれらの塩が挙げられる。有用なアミノカルボン酸としては、グリシン、アラニン、バリン、プロリン、セリン、フェニルアラニン、ヒスチジン、トリプトファン、アスパラギン、グルタミン、N-ベンジルグリシン、N-フェニルグリシン、サルコシンなどのα-アミノ酸(L-、D-、又はDL-α-アミノ酸);β-アラニン、β-ホモロイシン、β-ホモグルタミン、β-ホモフェニルアラニンなどのβ-アミノ酸;γ-アミノ酪酸、6-アミノヘキサン酸、11-アミノウンデカン酸、ペプチド(ジグリシン、トリグリシン、テトラグリシン、及び、異なるアミノ酸の混合物を含有する他のペプチドなど)などの他のα,ω-アミノ酸;及びこれらの組み合わせが挙げられる。有用なアミノスルホン酸としては、アミノメタンスルホン酸、2-アミノエタンスルホン酸(タウリン)、3-アミノ-1-プロパンスルホン酸、6-アミノ-1-ヘキサンスルホン酸など、及びこれらの組み合わせが挙げられる。有用なアミノボロン酸としては、m-アミノフェニルボロン酸、p-アミノフェニルボロン酸など、及びこれらの組み合わせが挙げられる。有用なアミノホスホン酸としては、1-アミノメチルホスホン酸、2-アミノエチルホスホン酸、3-アミノプロピルホスホン酸など、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0073】
1つよりも多い酸性基を含有する有用な化合物としては、アスパラギン酸、グルタミン酸、α-アミノアジピン酸、イミノ二酢酸、Nα,Nα-ビス(カルボキシメチル)リジン、システイン酸、N-ホスホノメチルグリシンなど、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0074】
他の有用な酸性基含有化合物の代表例としては、ヒドロキシ基及び酸性基を含む化合物が挙げられる。具体例としては、グリコール酸、乳酸、6-ヒドロキシヘキサン酸、クエン酸、2-ヒドロキシエチルスルホン酸、2-ヒドロキシエチルホスホン酸など、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0075】
上記の酸性基含有化合物の多くは、市販されている。更に他の有用な酸性基含有化合物は、通常の合成手順によって調製することができる。例えば、様々なジアミン又はアミノアルコールを、1当量の環状無水物と反応させ、カルボキシル基及びアミノ基又はヒドロキシ基を含む、中間体の酸性基含有化合物を生成させることができる。
【0076】
有用なモノマーは、酸性基含有化合物と、エチレン性不飽和ハロゲン化アシル(例えば、(メタ)アクリロイルクロリド)との反応によっても調製することができる。更に、有用なモノマーは、ヒドロキシ含有若しくはアミン含有(メタ)アクリレートモノマー又はヒドロキシ含有若しくはアミン含有(メタ)アクリルアミドモノマーと、環状無水物との反応によって、カルボキシル基含有モノマーを生成させることによって、調製することができる。
【0077】
特定の実施形態において、有用なモノマーは、アルケニルアズラクトンと、アミノカルボン酸と、アルケニルアズラクトン及びアミノスルホン酸の反応によって調製されたモノマーと、エチレン性不飽和イソシアネート及びアミノカルボン酸の反応によって調製されたモノマーと、エチレン性不飽和イソシアネート及びアミノスルホン酸との反応によって調製されたモノマー、又はこれらの組み合わせと、の反応によって調製することができる。
【0078】
特定の実施形態において、有用なモノマーは以下のものである(酸として示しているが、このような酸の塩を用いてもよい)。
VDM-4-アミノメチル-シクロヘキサンカルボン酸:
【化2】
VDM-2-ヒドロキシ-4-アミノブタン酸:
【化3】
VDM-2-アミノ-3-ヒドロキシプロパン酸(VDM-セリン):
【化4】
VDM-2-アミノ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン酸(VDM-チロシン):
【化5】
VDM-(2S)-2-アミノ-3-(1H-インドール-3-イル)プロパン酸(VDM-トリプトファン):
【化6】
VDM-7-アミノヘプタン酸:
【化7】
VDM-2-アミノ-3-(1H-イミダゾール-4-イル)プロパン酸(VDM-ヒスチジン):
【化8】
IEM-3-アミノプロパン酸:
【化9】
IEM-タウリン:
【化10】
VDM-タウリン:
【化11】
VDM-2-(ヒドロキシエチル)ホスホン酸:
【化12】
VDM-3-アミノプロパン酸:
【化13】
VDM-4-アミノ酪酸:
【化14】
VDM-5-アミノ吉草酸:
【化15】
VDM-6-アミノカプロン酸:
【化16】
VDM-フェニルアラニン:
【化17】
IEM-フェニルアラニン:
【化18】
【0079】
上記のモノマーは、概して(かつ好ましくは)、単独重合され得る。
【0080】
しかしながら、当業者であれば、特定の用途に所望される結合能の種類及び程度が得られることを条件とし、結合能を調整し、かつ/又は特別な特性を得るために、これらのモノマーを他のモノマー(以下、「改質コモノマー」と呼ぶ;例えば、より短いスペーサー基を有する改質コモノマー、又は他の種類のリガンドを含む改質コモノマー、又はリガンドを含まない改質コモノマー)と共重合させることが可能であることを認識するであろう。
【0081】
例えば、多孔質基材にある程度の親水性を付与するために、モノマーを、少なくとも1つのアルケニル基(好ましくは、(メタ)アクリロイル基)及び親水性基(例えば、ポリ(オキシアルキレン)基、水酸基、アミノ基、又はアミド基など)を含む1つ以上の親水性改質コモノマーと、任意に、共重合させることができる。好適な親水性改質コモノマーとしては、アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリルアミド、N-ビニルピロリドンなど、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0082】
任意に、モノマーを、少なくとも2つのフリーラジカル重合性基を含有する1つ以上の改質(メタ)アクリロイルコモノマーと共重合させることができる。このような改質多官能性(メタ)アクリロイルコモノマー(多官能性(メタ)アクリレート及び多官能性(メタ)アクリルアミドを含む)は、概して比較的少量(例えば、モノマー及びコモノマーの総重量に基づいて約0.1~5重量パーセント)でのみ重合性モノマーのブレンドに組み込まれ、得られたコポリマーにある程度の分枝及び/又は比較的軽度の架橋を付与することができる。より多くの量を特定の用途に用いることができるが、より多くの量を用いることにより、凝集タンパク質に対する結合能が低下してしまうことを理解されたい。
【0083】
有用な改質多官能性(メタ)アクリロイルコモノマーとしては、ジ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリレート、テトラ(メタ)アクリレート、多官能性(メタ)アクリルアミドなど、及びこれらの組み合わせが挙げられる。このような多官能性(メタ)アクリロイルコモノマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリブタジエンジ(メタ)アクリレート、ポリウレタンジ(メタ)アクリレート、プロポキシル化グリセリントリ(メタ)アクリレート、メチレンビスアクリルアミド、エチレンビスアクリルアミド、ヘキサメチレンビスアクリルアミド、ジアクリロイルピペラジンなど、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0084】
濾材
モノマーの重合は、既知の技法を用いて実施することができる。例えば、重合は、熱開始剤又は光開始剤のいずれか(好ましくは、光開始剤)を用いて開始することができる。多種多様な従来のフリーラジカル開始剤を用い、開始ラジカルを生成させることができる。好適な熱開始剤の例としては、過酸化ベンゾイル、過酸化ジベンゾイル、過酸化ジラウリル、過酸化シクロヘキサン、過酸化メチルエチルケトン、ヒドロペルオキシド(例えば、tert-ブチルヒドロペルオキシド及びクメンヒドロペルオキシド)などの過酸化物、ジシクロヘキシルペルオキシジカーボネート、t-ブチルペルベンゾエートなど、及びこれらの組み合わせが挙げられる。市販の熱開始剤の例としては、DuPont Specialty Chemical(Wilmington,DE)より、VAZO 67(2,2’-アゾ-ビス(2-メチルブチロニトリル))、VAZO 64(2,2’-アゾ-ビス(イソブチロニトリル))、及びVAZO 52(2,2’-アゾ-ビス(2,2-ジメチルバレロニトリル))などのVAZOの商標名で入手可能な開始剤、並びに商標名LUCIDOL 70(ベンゾイルペルオキシド)でElf Atochem North America(Philadelphia,PA)より入手可能なものが挙げられる。
【0085】
有用な光開始剤としては、ベンゾインメチルエーテル及びベンゾインイソプロピルエーテルなどのベンゾインエーテル;IRGACURE 651光開始剤(Ciba Specialty Chemicals)として入手可能な2,2-ジメトキシアセトフェノン、ESACURE KB-1光開始剤(Sartomer Co.(West Chester,PA))として入手可能な2,2 ジメトキシ-2-フェニル-1-フェニルエタノン、IRGACURE 2959(Ciba Specialty Chemicals)として入手可能な1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、及びジメトキシヒドロキシアセトフェノンなどの置換アセトフェノン;2-メチル-2-ヒドロキシプロピオフェノンなどの置換α-ケトール;2-ナフタレン-スルホニルクロリドなどの芳香族スルホニルクロリド;1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(O-エトキシ-カルボニル)オキシムなどの光活性オキシムなど;並びにこれらの組み合わせが挙げられる。これらの中で特に好ましいのは、置換アセトフェノン(特に、その水溶性により、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、IRGACURE 2959)である。有用な重合性光開始剤は、本質的に米国特許第5,506,279号(Babuら)の実施例1に記載のように調製することができる、2-ビニル-4,4-ジメチルアズラクトンとIRGACURE 2959との1:1付加物である。
【0086】
他の有用な光開始剤としては、ベンゾフェノン、4-(3-スルホプロピルオキシ)ベンゾフェノンナトリウム塩、ミヒラーケトン、ベンジル、アントラキノン、5,12-ナフタセンキノン、アセアントラセンキノン、ベンズ(A)アントラセン-7,12-ジオン、1,4-クリセンキノン、6,13-ペンタセンキノン、5,7,12,14-ペンタセンテトロン、9-フルオレノン、アントロン、キサントン、チオキサントン、2-(3-スルホプロピルオキシ)チオキサンテン-9-オン、アクリドン、ジベンゾスベロン、アセトフェノン、クロモンなど、及びこれらの組み合わせなどの水素引き抜き型(II型)光開始剤が挙げられる。
【0087】
開始剤は、モノマーのフリーラジカル重合を開始させるのに有効な量で用いることができる。このような量は、例えば、開始剤の種類及び利用される重合条件に応じて異なる。開始剤は、概して、100部の総モノマーに基づいて、約0.01重量部~約5重量部の範囲の量で用いることができる。
【0088】
重合溶媒は、モノマー(及び、用いられる場合はコモノマー)を実質的に溶解(又は、エマルション若しくは懸濁液の重合の場合には、分散若しくは懸濁)することができる、本質的に任意の溶媒とすることができる。多くの実施形態において、溶媒は、水又は水/水混和性有機溶媒混合物とすることができる。有機溶媒に対する水の比は、モノマーの溶解度に応じて大きく異なり得る。いくつかのモノマーを用いる場合、水の有機溶媒に対する比は、典型的には1:1超(体積/体積)(好ましくは、5:1超、より好ましくは7:1超)であり得る。他のモノマーを用いる場合、より高い比率の有機溶媒(最大100パーセント)が好ましい場合がある(特に、いくつかのアルコールを用いる場合)。
【0089】
任意のこのような水混和性有機溶媒は、好ましくは、重合を阻害し得る基を有しない。いくつかの実施形態において、水混和性溶媒は、1~4個の炭素原子を有する低級アルコール、2~6個の炭素原子を有する低級グリコール、及び3~6個の炭素原子と1~2個のエーテル結合とを有する低級グリコールエーテルなどの、プロトン基含有有機液体とすることができる。いくつかの実施形態において、ポリ(エチレングリコール)などの高級グリコールを用いることができる。具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、t-ブチルアルコール、エチレングリコール、メトキシエタノール、エトキシエタノール、プロポキシエタノール、ブトキシエタノール、メチルカルビトール、エチルカルビトールなど、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0090】
他の実施形態において、非プロトン性水混和性有機溶媒を用いることができる。このような溶媒としては、脂肪族エステル(例えば、メトキシエチルアセテート、エトキシエチルアセテート、プロポキシエチルアセテート、ブトキシエチルアセテート、及びトリエチルホスフェート)、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、及びメチルプロピルケトン)、及びスルホキシド(例えば、ジメチルスルホキシド)が挙げられる。
【0091】
重合溶媒中のモノマー濃度は、これらに限定されるものではないが、単数のモノマー又は複数のモノマーの性質、所望の重合度、モノマーの反応性、及び用いられる溶媒などの、いくつかの要因に応じて異なる場合がある。典型的には、モノマー濃度は、モノマー及び溶媒の総重量に基づいて、0.1重量パーセント(重量%)~約60重量%(好ましくは1重量%~40重量%、より好ましくは5重量%~30重量%)の範囲であり得る。
【0092】
水性モノマー混合物は、任意に、比較的より高レベルの多官能性(架橋)モノマー又は改質コモノマー(例えば、モノマー及びコモノマーの総重量に基づいて5重量%~90重量%)と配合され、任意に、添加されたポロゲンの存在下で、非極性、非混和性の有機溶媒中の懸濁液又は分散体として重合され、本モノマーを含む架橋された多孔質粒子を生成することができる。このような方法は周知であり、例えば、米国特許第7,098,253号(Rasmussenら)、同第7,674,835号(Rasmussenら)、同第7,647,836号(Rasmussenら)、及び同第7,683,100号(Rasmussenら)に記載されている。
【0093】
所望により、重合は、得られたポリマーを担持する多孔質基材を含む物品を形成するように、多孔質基材の存在下で実施することができる。例えば、モノマー、任意のコモノマー、開始剤、及び溶媒を含む吸収溶液又はコーティング溶液を、多孔質基材に吸収させる、又は、多孔質基材上にコーティングする(又は堆積させる)ことができる。
【0094】
多孔質基材は、粒子、繊維、フィルム、ウェブ、膜、スポンジ、又はシートなどの本質的に任意の形態とすることができる。好適な多孔質基材は、有機、無機、又はこれらの組み合わせ(好ましくは有機、より好ましくはポリマー)とすることができる。好適な多孔質基材としては、多孔質粒子、多孔質膜、多孔質不織布ウェブ、多孔質織布ウェブ、多孔質スポンジ、多孔質繊維など、及びこれらの組み合わせが挙げられる。好ましくい多孔質基材としては、多孔質膜(より好ましくは多孔質ポリマー膜、更により好ましくは多孔質ポリアミド膜)及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0095】
例えば、多孔質基材は、任意の好適な熱可塑性ポリマー材料から形成することができる。好適なポリマー材料としては、ポリオレフィン、ポリ(イソプレン)、ポリ(ブタジエン)、フッ素化ポリマー、塩素化ポリマー、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテル、ポリ(エーテルスルホン)、ポリ(スルホン)、ポリ(ビニルアセテート)、ポリ(乳酸)などのポリエステル、ポリ(エチレン)-コ-ポリ(ビニルアルコール)などのビニルアセテートのコポリマー、ポリ(ホスファゼン)、ポリ(ビニルエステル)、ポリ(ビニルエーテル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(カーボネート)など、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0096】
いくつかの実施形態において、熱可塑性ポリマーは、プラズマ放電又はプライマーの使用などによって表面処理され、多孔質基材の表面に好適な官能性をもたらすことができる。表面処理により、モノマー溶液によって湿潤性を改善することができるヒドロキシ基などの官能基をもたらすことができる。このような有用なプラズマ処理の1つは、米国特許第7,125,603号(Davidら)に記載されている。
【0097】
好適なポリオレフィンとしては、ポリ(エチレン)、ポリ(プロピレン)、ポリ(1-ブテン)、エチレンとプロピレンとのコポリマー、αオレフィンコポリマー(エチレン又はプロピレンと1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、及び1-デセンとのコポリマーなど)、ポリ(エチレン-コ-1-ブテン)、ポリ(エチレン-コ-1-ブテン-コ-1-ヘキセン)など、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0098】
好適なフッ素化ポリマーとしては、ポリ(フッ化ビニル)、ポリ(フッ化ビニリデン)、フッ化ビニリデンのコポリマー(ポリ(フッ化ビニリデン-コ-ヘキサフルオロプロピレン)など)、クロロトリフルオロエチレンのコポリマー(ポリ(エチレン-コ-クロロトリフルオロエチレン)など)など、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0099】
好適なポリアミドとしては、ポリ(イミノアジポリルイミノヘキサメチレン)、ポリ(イミノアジポリルイミノデカメチレン)、ポリカプロラクタムなど、及びこれらの組み合わせが挙げられる。好適なポリイミドとしては、ポリ(ピロメリットイミド)など、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0100】
好適なポリ(エーテルスルホン)としては、ポリ(ジフェニルエーテルスルホン)、ポリ(ジフェニルスルホン-コ-ジフェニレンオキシドスルホン)など、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0101】
好適なビニルアセテートのコポリマーとしては、ポリ(エチレン-コ-ビニルアセテート)、アセテート基のうちの少なくともいくつかが加水分解され、様々なポリ(ビニルアルコール)を生成しているコポリマーなど、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0102】
好ましい多孔質基材は、熱誘起相分離(TIPS)膜などの微多孔質膜である。TIPS膜は、熱可塑性材料とその熱可塑性材料の融点を超える第2の材料との溶液を形成することによって調製されることが多い。冷却すると、熱可塑性材料が晶出し、第2の材料から相分離する。晶出した材料は、延伸されることが多い。第2の材料は、延伸の前又は後のいずれかに、任意に除去される。微多孔質膜は、米国特許第4,539,256号(Shipman)、同第4,726,989号(Mrozinski)、同第4,867,881号(Kinzer)、同第5,120,594号(Mrozinski)、同第5,260,360号(Mrozinski)、及び同第5,962,544号(Waller,Jr.)に更に開示されている。いくつかの例示的なTIPS膜は、ポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)、ポリ(エチレン)又はポリ(プロピレン)などのポリオレフィン、エチレン-ビニルアルコールコポリマーなどのビニル含有ポリマー又はコポリマー、及びブタジエン含有ポリマー又はコポリマー、及びアクリレート含有ポリマー又はコポリマーを含む。いくつかの用途には、PVDFを含むTIPS膜が特に望ましい場合がある。PVDFを含むTIPS膜は、米国特許第7,338,692号(Smithら)に更に記載されている。
【0103】
多くの実施形態において、サイズ排除分離を最小限に抑え、拡散の制約を最小限に抑え、かつ、表面積と、凝集タンパク質、特に凝集抗体、より詳細には凝集モノクローナル抗体の結合に基づく分離と、を最大化するため、多孔質基材は、典型的には0.2マイクロメートル超の平均孔径を有し得る。概して、孔径は、0.1~10マイクロメートル(凝集タンパク質の結合に用いる場合、好ましくは0.5~3マイクロメートル、より好ましくは0.8~2マイクロメートル)の範囲であり得る。
【0104】
例示的な実施形態において、多孔質基材は、米国特許第6,056,529号(Meyeringら)、同第6,267,916号(Meyeringら)、同第6,413,070号(Meyeringら)、同第6,776,940号(Meyeringら)、同第3,876,738号(Marinaccioら)、同第3,928,517号(Knightら)、同第4,707,265号(Barnes,Jr.ら)、及び同第5,458,782号(Houら)に記載のものなどの、ナイロン微多孔質フィルム又はシート(例えば、微多孔質膜)を含み得る。
【0105】
他の実施形態において、多孔質基材は不織布ウェブであり得、不織布ウェブの周知の製造方法のいずれかによって製造される不織布ウェブを含み得る。本明細書で用いる場合、用語「不織布ウェブ」は、不規則にかつ/又は一方向に、マット状に組み込まれた個々の繊維又はフィラメントの構造を有する布地を指す。
【0106】
例えば、繊維不織布ウェブは、ウェットレイド法、カーディング法、エアレイド法、スパンレース法、スパンボンド法、若しくはメルトブロー法、又はこれらの組み合わせによって製造することができる。スパンボンド繊維は、典型的には、溶融した熱可塑性ポリマーを、微細で通常は円形の複数の紡糸口金のキャピラリーからフィラメントとして押し出し、押し出された繊維の直径を急激に縮小させることによって形成される小径繊維である。メルトブローン繊維は、典型的には、溶融した熱可塑性材料を、微細で通常は円形の複数のダイキャピラリーを通し、溶融糸又はフィラメントとして、高速の、通常は加熱されたガス(例えば空気)流中に押し出し、溶融した熱可塑性材料のフィラメントを細くし、その直径を縮小させることによって形成される。その後、メルトブローン繊維を高速ガス流によって移動させ、収集面上に堆積させ、不規則に分散されたメルトブローン繊維のウェブを形成する。不織布ウェブのいずれかは、1種類の繊維から、又は、熱可塑性ポリマーの種類及び/又は厚さが異なる2種類以上の繊維から製造することができる。
【0107】
有用な不織布ウェブの製造方法の更なる詳細は、Wenteによる「Superfine Thermoplastic Fibers」,48 Indus.Eng.Chem.1342(1956)及びWenteらによる「Manufacture Of Superfine Organic Fibers」,Naval Research Laboratories Report No.4364(1954)に記載されている。
【0108】
重合、洗浄、及び乾燥後、多孔質基材による典型的な総重量増加は、概して、0.5パーセント(%)~30%の範囲(好ましくは2%~10%の範囲)であり得る。多孔質基材の存在下におけるモノマーの重合により、ポリマーを担持する多孔質基材を製造することができる。ポリマーはコーティングの形態であり得、好ましい実施形態において、ポリマーは多孔質基材の表面にグラフト化(共有結合)することができる。所望により、重合を別途実施し、次いで、得られたポリマーを多孔質基材にコーティングする(任意に、好適な架橋剤の存在下で)、又はグラフト化する、又は適用することができるが、これは、概して好ましいものではない。
【0109】
例示的な方法において、米国特許出願公開第2015/0136698号(3M Innovative Properties Co.)に記載のように、II型光開始剤の存在下でモノマーをフリーラジカル重合し、多孔質基材の表面にグラフト化することができる。あるいは、国際公開第2014/052215号(Rasmussenら)に記載のように、モノマーをフリーラジカル重合し、光開始剤含有モノマー単位を含むコポリマーの架橋コポリマー層を含む多孔質基材にグラフト化することができる。更に、米国特許出願公開第2012/0252091(A1)号(Rasmussenら)に記載のように、モノマーをフリーラジカル重合し、架橋ポリマープライマー層を含む多孔質基材にグラフト化することができる。更に別の例示的な方法において、米国特許出願公開第2011/0100916(A1)号(Shannonら)に記載のように、モノマーをフリーラジカル重合し、多孔質粒子にグラフト化することができる。
【0110】
特定の実施形態において、ポリマーの酸性基又はその塩は、多孔質基材上に、濾材1グラム当たり少なくとも0.02ミリモル(mmole)、又は濾材1グラム当たり少なくとも0.03mmole、又は濾材1グラム当たり少なくとも0.04mmole、又は濾材1グラム当たり少なくとも0.05mmoleの密度で配置されている。特定の実施形態において、ポリマーの酸性基又はその塩は、多孔質基材上に、濾材1グラム当たり最大0.6mmole、又は濾材1グラム当たり最大0.5mmole、又は濾材1グラム当たり最大0.4mmole、濾材1グラム当たり、最大0.35mmole、又は最大0.3mmoleの密度で配置されている。
【0111】
コーティング又はグラフト化されたポリマー(モノマーの酸性基又はその塩が存在するため、官能性ポリマーである)は、多孔質基材の元の性質を変化させることができる。得られたポリマーを担持する多孔質基材(官能化多孔質基材)は、元の多孔質基材の利点の多く(例えば、機械的及び熱的安定性、多孔率(porosity)など)を保持することができるが、凝集タンパク質に対する結合能の向上を呈することもできる。本官能性ポリマーを担持する多孔質基材は、生体試料から、単量体タンパク質に比べ、凝集タンパク質を選択的に結合及び/又は除去するための濾材として特に有用であり得る。本ポリマーを担持する多孔質基材を含む物品は、ハウジング、ホルダ、アダプタなど、及びこれらの組み合わせなどの従来の構成要素を更に含み得る。
【0112】
所望により、凝集タンパク質の結合及び捕捉の効率は、複数の積層化又は層状化した官能化多孔質基材(例えば、官能化多孔質膜)をフィルタ要素として用いることによって改善することができる。したがって、フィルタ要素は、官能化多孔質基材の1つ以上の層を含み得る。フィルタ要素の個々の層は、同一であり得る、又は、異なり得る。層は、多孔率、グラフト化の程度などが異なる場合がある。フィルタ要素は、上流のプレフィルタ層及び/又は下流の支持層を更に含む場合がある。個々の層は、所望に応じ、平面状又はプリーツ状とすることができる。
【0113】
好適なプレフィルタ及び支持層材料の例としては、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、樹脂結合繊維又はバインダーを含まない繊維(例えば、ガラス繊維)、他の合成品(織布及び不織布フリース構造体);ポリオレフィン、金属、及びセラミックスなどの焼結材料;紡績糸;特別な濾紙(例えば、繊維と、セルロースと、ポリオレフィンと、バインダーとの混合物);ポリマー膜など、及びこれらの組み合わせの、任意の好適な多孔質膜が挙げられる。
【0114】
凝集タンパク質の捕捉又は濾過用途に有用な物品としては、上記のフィルタ要素のうちの1つ以上を含むフィルタカートリッジ、上記のフィルタ要素のうちの1つ以上を含むフィルタアセンブリ、及びフィルタハウジングなどが挙げられる。他の有用な物品は、各容器が、接触面(例えば、上流面又は上面)を有するフィルタ要素を含む、試料容器のアレイ(例えば、96ウェルプレート)の形態であり得る。
【0115】
実施形態
実施形態1は、生物学的溶液中の単量体タンパク質から凝集タンパク質を分離するための方法であって、
接触面(例えば、上流面又は上面)を有する少なくとも1つのフィルタ要素
[ここで、フィルタ要素は濾材を含み、濾材は、
多孔質基材と、
多孔質基材上に配置された、炭化水素主鎖、及び炭化水素主鎖に結合された複数のペンダント基を含むポリマーと、
を含み、第1の複数のペンダント基のそれぞれは、
(1)少なくとも1つの酸性基又はその塩と、
(2)少なくとも1つの酸性基又はその塩を、少なくとも6個の原子が連結した鎖によって、炭化水素主鎖に直接連結させているスペーサー基と、
を含む]を準備することと、
単量体タンパク質から凝集タンパク質を分離するのに有効な条件下で、初期の生物学的溶液をフィルタ要素の接触面に接触させて、最終的な生物学的溶液が精製された単量体タンパク質を含むようにすることと、
を含む、方法である。
【0116】
実施形態2は、生物学的溶液中の単量体タンパク質から凝集タンパク質を分離するための方法であって、
接触面(例えば、上流面又は上面)を有する少なくとも1つのフィルタ要素
[ここで、フィルタ要素は濾材を含み、濾材は、
多孔質基材と、
多孔質基材上に配置された、少なくとも1つのモノマーの共重合された単位を含むポリマーと、を含み、モノマーは、
(1)少なくとも1つのエチレン性不飽和基(いくつかの実施形態では、末端のエチレン性不飽和基)と、
(2)少なくとも1つの酸性基又はその塩と、
(3)少なくとも1つのエチレン性不飽和基と、少なくとも酸性基又はその塩とを、少なくとも6個の原子が連結した鎖によって、直接連結させているスペーサー基と、
を含む(いくつかの実施形態では、これらからなる)]を準備することと、
単量体タンパク質から凝集タンパク質を分離するのに有効な条件下で、初期の生物学的溶液をフィルタ要素の接触面に接触させて、最終的な生物学的溶液が精製された単量体タンパク質を含むようにすることと、
を含む、方法である。
【0117】
実施形態3は、単量体タンパク質を溶出せずに回収することを更に含む、実施形態1又は2に記載の方法である。
【0118】
実施形態4は、条件が、最終的な溶液において、初期の生物学的溶液中に存在する単量体タンパク質の少なくとも40%、又は少なくとも45%、又は少なくとも50%、又は少なくとも55%、又は少なくとも60%、又は少なくとも65%、又は少なくとも70%、又は少なくとも75%、又は少なくとも80%、又は少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%を回収するのに有効である、実施形態1~3のいずれか1つに記載の方法である。
【0119】
実施形態5は、条件が、初期の生物学的溶液から、凝集タンパク質の少なくとも5%、又は少なくとも10%、又は少なくとも15%、又は少なくとも20%、又は少なくとも25%、又は少なくとも30%、又は少なくとも35%、又は少なくとも40%、又は少なくとも45%、又は少なくとも50%、又は少なくとも55%、又は少なくとも60%、又は少なくとも65%、又は少なくとも70%、又は少なくとも75%、又は少なくとも80%、又は少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%を除去するのに有効である、実施形態1~4のいずれか1つに記載の方法である。
【0120】
実施形態6は、タンパク質が、抗体、酵素、又はホルモンを含む、実施形態1~5のいずれか1つに記載の方法である。
【0121】
実施形態7は、タンパク質が抗体を含む、実施形態6に記載の方法である。
【0122】
実施形態8は、抗体がモノクローナル抗体又はその断片を含む、実施形態7に記載の方法である。
【0123】
実施形態9は、条件が、9未満、又は8.5未満、又は8未満、又は7.5未満、又は7未満、又は6.5未満の生物学的溶液のpHを含む、実施形態1~8のいずれか1つに記載の方法である。
【0124】
実施形態10は、条件が、少なくとも4、又は少なくとも4.5、又は少なくとも5の生物学的溶液のpHを含む、実施形態1~9のいずれか1つに記載の方法である。
【0125】
実施形態11は、条件が、少なくとも1mS/cm、又は少なくとも2mS/cm、又は少なくとも3mS/cm、又は少なくとも4mS/cm、又は少なくとも5mS/cm、又は少なくとも6mS/cm、又は少なくとも7mS/cm、又は少なくとも8mS/cm、又は少なくとも9mS/cm、又は少なくとも10mS/cmの生物学的溶液の導電率を含む、実施形態1~10のいずれか1つに記載の方法である。
【0126】
実施形態12は、生物学的溶液の導電率が、無機塩、有機塩、又はこれらの組み合わせを含む緩衝液によってもたらされる、実施形態11に記載の方法である。
【0127】
実施形態13は、緩衝塩が、塩化物(例えば、NaCl)、リン酸塩、クエン酸塩、硫酸塩、酢酸塩、又はこれらの組み合わせを含む、実施形態12に記載の方法である。
【0128】
実施形態14は、条件が、110mS/cm以下、又は100mS/cm以下、又は50mS/cm以下、又は40mS/cm以下、又は30mS/cm以下の生物学的溶液の導電率を含む、実施形態1~13のいずれか1つに記載の方法である。
【0129】
実施形態15は、条件が、濾材1L当たり少なくとも1g、又は濾材1L当たり少なくとも10g、又は濾材1L当たり少なくとも25g、又は濾材1L当たり少なくとも50g、又は濾材1L当たり少なくとも75g、又は濾材1L当たり、少なくとも100g、若しくは少なくとも500g、若しくは少なくとも1000g、若しくは少なくとも2000gのチャレンジロードを含む、実施形態1~14のいずれか1つに記載の方法である。
【0130】
実施形態16は、多孔質基材がポリマーである、実施形態1~15のいずれか1つに記載の方法である。
【0131】
実施形態17は、多孔質基材が多孔質膜である、実施形態1~16のいずれか1つに記載の方法である。
【0132】
実施形態18は、多孔質基材上に配置されたポリマーの少なくとも1つの酸性基又はその塩が、濾材1グラム当たり少なくとも0.02mmole、又は濾材1グラム当たり少なくとも0.03mmole、又は濾材1グラム当たり少なくとも0.04mmole、又は濾材1グラム当たり少なくとも0.05mmoleの密度で存在する、実施形態1~17のいずれか1つに記載の方法である。
【0133】
実施形態19は、多孔質基材上に配置されたポリマーの少なくとも1つの酸性基又はその塩が、濾材1グラム当たり最大0.6mmole、又は濾材1グラム当たり最大0.5mmole、又は濾材1グラム当たり最大0.4mmole、濾材1グラム当たり、最大0.35mmole、又は最大0.3mmoleの密度で存在する、実施形態1~18のいずれか1つに記載の方法である。
【0134】
実施形態20は、実施形態2に応じ、少なくとも1つの一価のエチレン性不飽和基が、エテニル基、1-アルキルエテニル基、及びこれらの組み合わせから選択される、実施形態2~19のいずれか1つに記載の方法である。
【0135】
実施形態21は、少なくとも1つのモノマーが(メタ)アクリロイルモノマーを含む、実施形態20に記載の方法である。
【0136】
実施形態22は、少なくとも1つの酸性基又はその塩が、カルボキシ基、ホスホノ基、ホスファト基、スルホノ基、スルファト基、ボロナト基、及びこれらの組み合わせから選択される、実施形態1~21のいずれか1つに記載の方法である。
【0137】
実施形態23は、少なくとも1つの酸性基又はその塩が、カルボキシ基、ホスホノ基、スルホノ基、及びこれらの組み合わせから選択される、実施形態22に記載の方法である。
【0138】
実施形態24は、少なくとも1つの酸性基又はその塩が、カルボキシ基である、実施形態23に記載の方法である。
【0139】
実施形態25は、スペーサー基が、連結されたヘテロ原子を含有する炭化水素基である、実施形態1~24のいずれか1つに記載の方法である。
【0140】
実施形態26は、スペーサー基が、少なくとも1つの水素結合部分を含む、実施形態1~25のいずれか1つに記載の方法である。
【0141】
実施形態27は、水素結合部分が、カルボニルイミノ部分、チオカルボニルイミノ部分、イミノカルボニルイミノ基、イミノチオカルボニルイミノ部分、オキシカルボニルイミノ部分、オキシチオカルボニルイミノ部分、及びこれらの組み合わせから選択される、実施形態26に記載の方法である。
【0142】
実施形態28は、水素結合部分が、カルボニルイミノ部分、イミノカルボニルイミノ基、オキシカルボニルイミノ部分、及びこれらの組み合わせから選択される、実施形態27に記載の方法である。
【0143】
実施形態29は、スペーサー基の鎖が、少なくとも7個の連結した原子を有する、実施形態1~28のいずれか1つに記載の方法である。
【0144】
実施形態30は、スペーサー基の鎖が、少なくとも8個の連結した原子を有する、実施形態29に記載の方法である。
【0145】
実施形態31は、スペーサー基の鎖が、50個以下の連結した原子を有する、実施形態1~30のいずれか1つに記載の方法である。
【0146】
実施形態32は、スペーサー基の鎖が、9~16個の連結した原子を有する、実施形態30又は31に記載の方法である。
【0147】
実施形態33は、実施形態2に応じ、少なくとも1つのモノマーが、以下の一般式:
CH2=CR1-C(=O)-X-R2-[Z-R2]n-L (I)
[式中、
R1は、水素、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及びこれらの組み合わせから選択され、
各R2は、ヒドロカルビレン基、ヘテロヒドロカルビレン基、及びこれらの組み合わせから独立して選択され、
Xは、-O-又は-NR3-(式中、R3は、水素、ヒドロカルビル基、ヘテロヒドロカルビル基、及びこれらの組み合わせから選択される)であり、
Zは、少なくとも1つの水素結合供与体、少なくとも1つの水素結合受容体、又はこれらの組み合わせを含むヘテロヒドロカルビレン基であり、
nは、0又は1の整数であり、
Lは、少なくとも1つの酸性基又はその塩を含む官能基である]によって表される種類のうちの1つである、実施形態2~32のいずれか1つに記載の方法である。
【0148】
実施形態34は、R1が、水素、メチル、又はこれらの組み合わせから選択される、実施形態33に記載の方法である。
【0149】
実施形態35は、少なくとも1つのモノマーが、
VDM-4-アミノメチル-シクロヘキサンカルボン酸:
【化19】
VDM-2-ヒドロキシ-4-アミノブタン酸:
【化20】
VDM-2-アミノ-3-ヒドロキシプロパン酸(VDM-セリン):
【化21】
VDM-2-アミノ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン酸(VDM-チロシン):
【化22】
VDM-(2S)-2-アミノ-3-(1H-インドール-3-イル)プロパン酸(VDM-トリプトファン):
【化23】
VDM-7-アミノヘプタン酸:
【化24】
VDM-2-アミノ-3-(1H-イミダゾール-4-イル)プロパン酸(VDM-ヒスチジン):
【化25】
IEM-3-アミノプロパン酸:
【化26】
IEM-タウリン:
【化27】
VDM-タウリン:
【化28】
VDM-2-(ヒドロキシエチル)ホスホン酸:
【化29】
VDM-3-アミノプロパン酸:
【化30】
VDM-4-アミノ酪酸:
【化31】
VDM-5-アミノ吉草酸:
【化32】
VDM-6-アミノカプロン酸:
【化33】
VDM-フェニルアラニン:
【化34】
IEM-フェニルアラニン:
【化35】
から選択される、実施形態34に記載の方法である。
【0150】
実施形態36は、ポリマーが多孔質基材にグラフト化されている、実施形態1~35のいずれか1つに記載の方法である。
【0151】
実施形態37は、ポリマーが多孔質基材上にコーティングされている、実施形態1~35のいずれか1つに記載の方法である。
【0152】
実施形態38は、実施形態2に応じ、少なくとも1つのアルケニル基及び少なくとも1つの親水性基を含む親水性コモノマーから選択される改質コモノマーの共重合された単位を含むポリマーが、多孔質基材上に配置されている、実施形態2~37のいずれか1つに記載の方法である。
【0153】
実施形態39は、親水性改質コモノマーが、アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリルアミド、N-ビニルピロリドン、及びこれらの組み合わせから選択される、実施形態38に記載の方法である。
【0154】
実施形態40は、実施形態2に応じ、少なくとも2つのフリーラジカル重合性基を含む改質多官能性(メタ)アクリロイルコモノマーの共重合された単位を含むポリマーが、多孔質基材上に配置されている、実施形態2~39のいずれか1つに記載の方法である。
【0155】
実施形態41は、改質多官能性(メタ)アクリロイルコモノマーが、ジ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリレート、テトラ(メタ)アクリレート、多官能性(メタ)アクリルアミド、及びこれらの組み合わせから選択される、実施形態40に記載の方法である。
【0156】
実施形態42は、改質多官能性(メタ)アクリロイルコモノマーが、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリブタジエンジ(メタ)アクリレート、ポリウレタンジ(メタ)アクリレート、プロポキシル化グリセリントリ(メタ)アクリレート、メチレンビスアクリルアミド、エチレンビスアクリルアミド、ヘキサメチレンビスアクリルアミド、ジアクリロイルピペラジン、及びこれらの組み合わせから選択される、実施形態41に記載の方法である。
【実施例】
【0157】
本開示の目的及び利点を以下の実施例によって更に例示するが、これらの実施例に記載の特定の材料及びこれらの量、並びに他の条件及び詳細は、本開示を不当に限定するものと解釈してはならない。これらの実施例は、単に例示目的のものであり、添付の特許請求の範囲の限定を意図するものではない。
【0158】
【0159】
IgG抗体溶液の調製:
モノクローナル抗体IgG(33.2mg/mL、3~4%の凝集物含有量、pI>8、pH5.3、3.0mS/cm)を、クエン酸塩(pH5及び6)、MES(pH6)、Bis-Tris(pH6)、リン酸ナトリウム(pH7)、又はTris(pH8)の20mM緩衝溶液で、10倍又は40倍のいずれかに希釈した。得られた緩衝溶液を、1.5~105mS/cmの範囲の導電率を有するように、塩化ナトリウムで調整した。IgG含有緩衝溶液の導電率及びpH測定値は、Accumet Excel XL50導電率計(Fisher Scientific(Hampton,NH))及びVWR sympHony(商標)卓上pH計(VWR(Radnor,PA))をそれぞれ用いて求めた。表2に、各IgG含有緩衝溶液(IgG溶液番号1~27)の緩衝液、pH及び導電率を記録する。
【表2】
【0160】
モノマーの調製:
モノマー実施例A.
4-[[[2-メチル-2-(プロプ-2-エノイルアミノ)プロパノイル]アミノ]メチル]シクロヘキサンカルボン酸、ナトリウム塩
(VDM-4-アミノメチル-シクロヘキサンカルボン酸、ナトリウム塩)
【化36】
トランス-4-アミノメチル-シクロヘキサンカルボン酸(2.00g、0.013mol)を、100mLの丸底フラスコに加えた。水酸化ナトリウム水溶液(1.0N、13mL)をこのフラスコに加え、固体が溶解するまで、得られた混合物を撹拌した。次いでこのフラスコを氷水浴中に置き、15分間撹拌した。2-ビニル-4,4-ジメチルアズラクトン(VDM)(1.77g、1.7mL、0.013mol)をシリンジによって加え、フラスコを引き続き氷水浴中に維持し、反応を30分間撹拌した。次いでこの冷却浴を取り除き、30分間の時間にわたり、反応を室温まで温めた。濃塩酸溶液を数滴加えることにより、反応のpHを約7に調整した。アリコートの
1H-NMRにより、4-[[[2-メチル-2-(プロプ-2-エノイルアミノ)プロパノイル]アミノ]メチル]シクロヘキサンカルボン酸、ナトリウム塩の形成を確認した。1H-NMR(D
2O,500MHz)δ0.89(q,2H),1.27(q,2H),1.42(s,6H),1.43(m,1H),1.69(d,2H),1.82(d,2H),2.03(m,1H),2.98(d,2H),5.72(m,1H),6.14(m,1H),6.23(m,1H)。
【0161】
モノマー実施例B.
2-ヒドロキシ-4-[[2-メチル-2-(プロプ-2-エノイルアミノ)プロパノイル]アミノ]ブタン酸、ナトリウム塩
(VDM-2-ヒドロキシ-4-アミノブタン酸、ナトリウム塩)
【化37】
2-ヒドロキシ-4-アミノブタン酸(5.00g、0.042mol)を、100mLの丸底フラスコに加えた。水酸化ナトリウム溶液の水溶液(1.0N、42mL)をこのフラスコに加え、固体が溶解するまで、得られた混合物を撹拌した。次いでこのフラスコを氷水浴中に置き、15分間撹拌した。VDM(5.84g、5.6mL、0.042mol)をシリンジによって加え、フラスコを引き続き氷水浴中に維持し、反応を30分間撹拌した。次いでこの冷却浴を取り除き、30分間の時間にわたり、反応を室温まで温めた。アリコートの
1H-NMRにより、2-ヒドロキシ-4-[[2-メチル-2-(プロプ-2-エノイルアミノ)プロパノイル]アミノ]ブタン酸、ナトリウム塩の形成を確認した。濃塩酸溶液を数滴加えることにより、反応のpHを約7に調整した。
1H-NMR(D
2O,500MHz)δ1.43(s,6H),1.71(m,1H),1.89(m,1H),3.22(m,1H),3.29(m,1H),3.99(m,2H),5.73(m,1H),6.15(m,1H),6.23(m,1H)。
【0162】
モノマー実施例C.
3-ヒドロキシ-2-[[2-メチル-2-(プロプ-2-エノイルアミノ)プロパノイル]アミノ]プロパン酸、ナトリウム塩
(VDM-セリン、ナトリウム塩)
【化38】
L-セリン(5.00g、0.048mol)を、100mLの丸底フラスコに加えた。水酸化ナトリウム水溶液(1.0N、48mL)をこのフラスコに加え、固体が溶解するまで、得られた混合物を撹拌した。次いでこのフラスコを氷水浴中に置き、15分間撹拌した。VDM(6.62g、6.4mL、0.048mol)をシリンジによって加え、フラスコを引き続き氷水浴中に維持し、反応を30分間撹拌した。次いでこの冷却浴を取り除き、30分間の時間にわたり、反応を室温まで温めた。濃塩酸溶液を数滴加えることにより、反応のpHを約7に調整した。アリコートの
1H-NMRにより、3-ヒドロキシ-2-[[2-メチル-2-(プロプ-2-エノイルアミノ)プロパノイル]アミノ]プロパン酸、ナトリウム塩の形成を確認した。
1H-NMR(D
2O,500MHz)δ1.48(s,6H),3.79(m,2H),4.22(m,1H),5.74(m,1H),6.16(m,1H),6.25(m,1H)。
【0163】
モノマー実施例D.
3-(4-ヒドロキシフェニル)-2-[[2-メチル-2-(プロプ-2-エノイルアミノ)プロパノイル]アミノ]プロパン酸、ナトリウム塩
(VDM-チロシン、ナトリウム塩)
【化39】
DL-チロシン(5.00g、0.028mol)を、250mLの丸底フラスコに加えた。水酸化ナトリウム水溶液(0.5N、150mL)をこのフラスコに加え、固体が溶解するまで、得られた混合物を撹拌した。次いでこのフラスコを氷水浴中に置き、15分間撹拌した。VDM(3.84g、3.7mL、0.028mol)をシリンジによって加え、フラスコを引き続き氷水浴中に維持し、反応を2時間撹拌した。次いでこの冷却浴を取り除き、30分間の時間にわたり、反応を室温まで温めた。アリコートの
1H-NMRにより、3-(4-ヒドロキシフェニル)-2-[[2-メチル-2-(プロプ-2-エノイルアミノ)プロパノイル]アミノ]プロパン酸、ナトリウム塩の形成を確認した。
1H-NMR(D
2O,500MHz)δ1.39(s,6H),2.70(m,1H),2.84(m,1H),3.42(m,1H),5.67(m,1H),6.11(m,1H),6.22(m,1H),6.58(m,2H),6.95(m,2H)。
【0164】
モノマー実施例E.
3-(1H-インドール-3-イル)-2-[[2-メチル-2-(プロプ-2-エノイルアミノ)プロパノイル]アミノ]プロパン酸、ナトリウム塩
(VDM-トリプトファン、ナトリウム塩)
【化40】
DL-トリプトファン(5.00g、0.025mol)を、250mLの丸底フラスコに加えた。水酸化ナトリウム溶液の水溶液(0.5N、100mL)をこのフラスコに加え、固体が溶解するまで、得られた混合物を撹拌した。次いでこのフラスコを氷水浴中に置き、15分間撹拌した。VDM(3.40g、3.5mL、0.025mol)をシリンジによって加え、フラスコを引き続き氷水浴中に維持し、反応を3時間撹拌した。次いでこの冷却浴を取り除き、30分間の時間にわたり、反応を室温まで温めた。アリコートの
1H-NMRにより、3-(1H-インドール-3-イル)-2-[[2-メチル-2-(プロプ-2-エノイルアミノ)プロパノイル]アミノ]プロパン酸、ナトリウム塩の形成を確認した。
1H-NMR(D
2O,500MHz)δ1.39(s,6H),3.01(m,1H),3.13(m,1H),3.54(m,1H),5.67(m,1H),6.11(m,1H),6.21(m,1H),7.12(m,1H),7.19(m,2H),7.46(m,1H),7.70(m,1H)。
【0165】
モノマー実施例F.
7-[[2-メチル-2-(プロプ-2-エノイルアミノ)プロパノイル]アミノ]ヘプタン酸、ナトリウム塩
(VDM-7-アミノヘプタン酸、ナトリウム塩)
【化41】
7-アミノヘプタン酸(5.00g、0.035mol)を、100mLの丸底フラスコに加えた。水酸化ナトリウム水溶液(1.0N、35mL)をこのフラスコに加え、固体が溶解するまで、得られた混合物を撹拌した。次いでこのフラスコを氷水浴中に置き、15分間撹拌した。VDM(4.79g、4.6mL、0.035mol)をシリンジによって加え、フラスコを引き続き氷水浴中に維持し、反応を30分間撹拌した。次いでこの冷却浴を取り除き、30分間の時間にわたり、反応を室温まで温めた。濃塩酸溶液を数滴加えることにより、反応のpHを約7に調整した。アリコートの
1H-NMRにより、7-[[2-メチル-2-(プロプ-2-エノイルアミノ)プロパノイル]アミノ]ヘプタン酸、ナトリウム塩の形成を確認した。
1H-NMR(D
2O,500MHz)δ1.24(s,6H),1.41(m,8H),1.49(m,2H),2.11(m,2H),3.11(m,2H),5.72(m,1H),6.15(m,1H),6.22(m,1H)。
【0166】
モノマー実施例G.
3-(1H-イミダゾール-5-イル)-2-[[2-メチル-2-(プロプ-2-エノイルアミノ)プロパノイル]アミノ]プロパン酸、ナトリウム塩
(VDM-ヒスチジン、ナトリウム塩)
【化42】
L-ヒスチジン(2.00g、0.013mol)を、100mLの丸底フラスコに加えた。水酸化ナトリウム水溶液(1.0N、13mL)をこのフラスコに加え、固体が溶解するまで、得られた混合物を撹拌した。次いでこのフラスコを氷水浴中に置き、15分間撹拌した。VDM(1.79g、1.72mL、0.013mol)をシリンジによって加え、フラスコを引き続き氷水浴中に維持し、反応を30分間撹拌した。次いでこの冷却浴を取り除き、30分間の時間にわたり、反応を室温まで温めた。アリコートの
1H-NMRにより、3-(1H-イミダゾール-5-イル)-2-[[2-メチル-2-(プロプ-2-エノイルアミノ)プロパノイル]アミノ]プロパン酸、ナトリウム塩の形成を確認した。濃塩酸溶液を数滴加えることにより、反応のpHを約7に調整した。
1H-NMR(D
2O,500MHz)1.30(d,6H),2.87(dd,1H),3.04(dd,1H),4.24(q,1H),5.61(d,1H),6.01(d,1H),6.12(dd,1H),6.90(s,1H),7.92(s,1H)。
【0167】
モノマー実施例H.
3-[2-(2-メチルプロプ-2-エノイルオキシ)エチルカルバモイルアミノ]プロパン酸、ナトリウム塩
(IEM-3-アミノプロパン酸、ナトリウム塩)
【化43】
3-アミノプロパン酸(1.78g、0.02mol)を、100mLの丸底フラスコに加えた。水酸化ナトリウム溶液の水溶液(1.0N、20mL)をこのフラスコに加え、固体が溶解するまで、得られた混合物を撹拌した。次いでこのフラスコを氷水浴中に置き、15分間撹拌した。2-イソシアネートエチルメタクリレート(IEM)(3.1g、0.02mol)をシリンジによって加え、フラスコを引き続き氷水浴中に維持し、反応を30分間撹拌した。次いでこの冷却浴を取り除き、30分間の時間にわたり、反応を室温まで温めた。反応混合物から、無色の沈殿物を濾過した。濃塩酸溶液を数滴加えることにより、濾過液のpHを約7に調整した。濾過液のアリコートの
1H-NMRにより、3-[2-(2-メチルプロプ-2-エノイルオキシ)エチルカルバモイルアミノ]プロパン酸、ナトリウム塩の形成を確認した。
1H-NMR(D
2O,500MHz)δ1.78(s,3H),2.22(t,2H),3.16(t,2H),3.30(t,2H),4.07(t,2H),5.58(s,1H),5.99(s,1H)。
【0168】
モノマー実施例I.
2-[2-(2-メチルプロプ-2-エノイルオキシ)エチルカルバモイルアミノ]エタンスルホン酸、ナトリウム塩
(IEM-タウリン、ナトリウム塩)
【化44】
タウリン(2.50g、0.02mol)を、100mLの丸底フラスコに加えた。水酸化ナトリウム溶液の水溶液(1.0N、20mL)をこのフラスコに加え、固体が溶解するまで、得られた混合物を撹拌した。次いでこのフラスコを氷水浴中に置き、15分間撹拌した。IEM(3.1g、0.02mol)をシリンジによって加え、フラスコを引き続き氷水浴中に維持し、反応を30分間撹拌した。次いでこの冷却浴を取り除き、30分間の時間にわたり、反応を室温まで温めた。反応混合物から、無色の沈殿物を濾過した。濃塩酸溶液を数滴加えることにより、濾過液のpHを約7に調整した。濾過液のアリコートの
1H-NMRにより、2-[2-(2-メチルプロプ-2-エノイルオキシ)エチルカルバモイルアミノ]エタンスルホン酸、ナトリウム塩の形成を確認した。
1H-NMR(D
2O,500MHz)δ1.75(s,3H),2.88(t,2H),3.28(t,2H),3.32(t,2H),4.06(t,2H),5.56(m,1H),5.97(s,1H)。
【0169】
モノマー実施例J.
2-[[2-メチル-2-(プロプ-2-エノイルアミノ)プロパノイル]アミノ]エタンスルホン酸、ナトリウム塩
(VDM-タウリン、ナトリウム塩)
【化45】
タウリン(2.50g、0.02mol)を、100mLの丸底フラスコに加えた。水酸化ナトリウム溶液の水溶液(1.0N、20mL)をこのフラスコに加え、固体が溶解するまで、得られた混合物を撹拌した。次いでこのフラスコを氷水浴中に置き、15分間撹拌した。VDM(2.78g、0.02mol)をシリンジによって加え、フラスコを引き続き氷水浴中に維持し、反応を30分間撹拌した。次いでこの冷却浴を取り除き、30分間の時間にわたり、反応を室温まで温めた。濃塩酸溶液を数滴加えることにより、反応のpHを約7に調整した。アリコートの
1H-NMRにより、2-[[2-メチル-2-(プロプ-2-エノイルアミノ)プロパノイル]アミノ]エタンスルホン酸、ナトリウム塩の形成を確認した。
1H-NMR(D
2O,500MHz)δ1.35(s,6H),2.94(t,2H),3.45(t,2H),5.64(m,1H),6.10(m,2H)。
【0170】
モノマー実施例K.
2-[2-メチル-2-(プロプ-2-エノイルアミノ)プロパノイル]オキシエチルホスホン酸
(VDM-2-(ヒドロキシエチル)ホスホン酸)
【化46】
2-ヒドロキシエチルジメチルホスフェート(90%の純度、15.0g、97.3mmol)及び1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク-7-エン(1mL)を、無水塩化メチレン100mLに溶解したVDM(13.7g、97.3mmol)の溶液を含む250mLのフラスコに加え、反応を終夜撹拌した。反応混合物を追加の塩化メチレンで希釈し、飽和5%NaH
2PO
4、H
2O、及びブラインで順次洗浄した。有機相をNa
2SO
4で乾燥した後、濾過した。少量(約130mg)のBHTを加え、溶液を減圧下で濃縮し、無色の液体11.2gを得た。この液体を塩化メチレンの50mLに溶解し、窒素雰囲気下で氷水浴中に置いた。ブロモトリメチルシラン(12.3g、80.2mmol)を加え、反応を、室温で90分間撹拌した。溶液を減圧下で濃縮した。メタノール(50mL)を得られた残渣に加え、溶液を、室温で1時間撹拌した。次いで、溶液を、室温において減圧下で濃縮し、最終生成物を澄明な液体として得た。アリコートの
1H-NMRにより、2-[2-メチル-2-(プロプ-2-エノイルアミノ)プロパノイル]オキシエチルホスホン酸の形成を確認した。
1H NMR(D
2O,500MHz)δ1.44(s,6H),2.14(dt,2H),4.29(dt,2H),5.69(dd,1H),6.12(dd,1H),6.19(ブロードs,1H)。
【0171】
モノマー実施例L.
3-[[2-メチル-2-(プロプ-2-エノイルアミノ)プロパノイル]アミノ]プロパン酸、ナトリウム塩
(VDM-3-アミノプロパン酸、ナトリウム塩)
【化47】
3-アミノプロパン酸(1.78g、0.02mol)を、100mLの丸底フラスコに加えた。水酸化ナトリウム水溶液(1.0N、20mL)をこのフラスコに加え、固体が溶解するまで、得られた混合物を撹拌した。次いでこのフラスコを氷水浴中に置き、15分間撹拌した。VDM(2.78g、0.02mol)をシリンジによって加え、フラスコを引き続き氷水浴中に維持し、反応を30分間撹拌した。次いでこの冷却浴を取り除き、30分間の時間にわたり、反応を室温まで温めた。濃塩酸溶液を数滴加えることにより、反応のpHを約7に調整した。アリコートの
1H-NMRにより、3-[[2-メチル-2-(プロプ-2-エノイルアミノ)プロパノイル]アミノ]プロパン酸、ナトリウム塩の形成を確認した。
1H-NMR(D
2O,500MHz)δ1.32(s,6H),2.23(t,2H),3.24(t,2H),5.63(m,1H),6.0~6.2(m,2H)。
【0172】
モノマー実施例M.
4-[[2-メチル-2-(プロプ-2-エノイルアミノ)プロパノイル]アミノ]ブタン酸、ナトリウム塩
(VDM-GABA、ナトリウム塩)
【化48】
4-アミノブタン酸(2.06g、0.02mol)を、100mLの丸底フラスコに加えた。水酸化ナトリウム水溶液(1.0N、20mL)をこのフラスコに加え、固体が溶解するまで、得られた混合物を撹拌した。次いでこのフラスコを氷水浴中に置き、15分間撹拌した。VDM(2.78g、0.02mol)をシリンジによって加え、フラスコを引き続き氷水浴中に維持し、反応を30分間撹拌した。次いでこの冷却浴を取り除き、30分間の時間にわたり、反応を室温まで温めた。濃塩酸溶液を数滴加えることにより、反応のpHを約7に調整した。アリコートの
1H-NMRにより、4-[[2-メチル-2-(プロプ-2-エノイルアミノ)プロパノイル]アミノ]ブタン酸、ナトリウム塩の形成を確認した。
1H-NMR(D
2O,500MHz)δ1.34(s,6H),1.59(p,2H),2.04(t,2H),3.05(t,2H),5.62(d,1H),6.0~6.2(m,2H)。
【0173】
モノマー実施例N.
5-[[2-メチル-2-(プロプ-2-エノイルアミノ)プロパノイル]アミノ]ペンタン酸、ナトリウム塩
(VDM-5-アミノ吉草酸、ナトリウム塩)
【化49】
5-アミノペンタン酸(2.34g、0.02mol)を、100mLの丸底フラスコに加えた。水酸化ナトリウム水溶液(1.0N、20mL)をこのフラスコに加え、固体が溶解するまで、得られた混合物を撹拌した。次いでこのフラスコを氷水浴中に置き、15分間撹拌した。VDM(2.78g、0.02mol)をシリンジによって加え、フラスコを引き続き氷水浴中に維持し、反応を30分間撹拌した。次いでこの冷却浴を取り除き、30分間の時間にわたり、反応を室温まで温めた。濃塩酸溶液を数滴加えることにより、反応のpHを約7に調整した。アリコートの
1H-NMRにより、5-[[2-メチル-2-(プロプ-2-エノイルアミノ)プロパノイル]アミノ]ペンタン酸、ナトリウム塩の形成を確認した。
1H-NMR(D
2O,500MHz)δ1.33(s及びm,10H),2.04(t,2H),3.05(t,2H),5.63(d,1H),6.0~6.2(m,2H)。
【0174】
モノマー実施例O.
6-[[2-メチル-2-(プロプ-2-エノイルアミノ)プロパノイル]アミノ]ヘキサン酸、ナトリウム塩
(VDM-6-アミノカプロン酸、ナトリウム塩)
【化50】
6-アミノヘキサン酸(2.62g、0.02mol)を、100mLの丸底フラスコに加えた。水酸化ナトリウム水溶液(1.0N、20mL)をこのフラスコに加え、固体が溶解するまで、得られた混合物を撹拌した。次いでこのフラスコを氷水浴中に置き、15分間撹拌した。VDM(2.78g、0.02mol)をシリンジによって加え、フラスコを引き続き氷水浴中に維持し、反応を30分間撹拌した。次いでこの冷却浴を取り除き、30分間の時間にわたり、反応を室温まで温めた。濃塩酸溶液を数滴加えることにより、反応のpHを約7に調整した。アリコートの
1H-NMRにより、6-[[2-メチル-2-(プロプ-2-エノイルアミノ)プロパノイル]アミノ]ヘキサン酸、ナトリウム塩の形成を確認した。
1H-NMR(D
2O,500MHz)δ1.14(m,2H),1.34(s及びm,8H),1.41(m,2H),2.02(t,2H),3.03(t,2H),5.62(d,1H),6.0~6.2(m,2H)。
【0175】
モノマー実施例P.
2-[[2-メチル-2-(プロプ-2-エノイルアミノ)プロパノイル]アミノ]-3-フェニルプロパン酸、ナトリウム塩
(VDM-フェニルアラニン、ナトリウム塩)
【化51】
L-フェニルアラニン(3.3g、0.02mol)を、100mLの丸底フラスコに加えた。水酸化ナトリウム水溶液(1.0N、20mL)をこのフラスコに加え、固体が溶解するまで、得られた混合物を撹拌した。次いでこのフラスコを氷水浴中に置き、15分間撹拌した。VDM(2.78g、0.02mol)をシリンジによって加え、フラスコを引き続き氷水浴中に維持し、反応を30分間撹拌した。次いでこの冷却浴を取り除き、30分間の時間にわたり、反応を室温まで温めた。濃塩酸溶液を数滴加えることにより、反応のpHを約7に調整した。アリコートの
1H-NMRにより、2-[[2-メチル-2-(プロプ-2-エノイルアミノ)プロパノイル]アミノ]-3-フェニルプロパン酸、ナトリウム塩の形成を確認した。
1H-NMR(D
2O,500MHz)δ1.26(s,6H),2.89(m,1H),2.95(m,1H),4.30(m,1H),5.62(d,1H),6.00~6.10(m,2H),7.07~7.20(m,5H)。
【0176】
モノマー実施例Q.
2-[2-(2-メチルプロプ-2-エノイルオキシ)エチルカルバモイルアミノ]-3-フェニルプロパン酸、ナトリウム塩
(IEM-フェニルアラニン、ナトリウム塩)
【化52】
L-フェニルアラニン(3.3g、0.02mol)を、100mLの丸底フラスコに加えた。水酸化ナトリウム水溶液(1.0N、20mL)をこのフラスコに加え、固体が溶解するまで、得られた混合物を撹拌した。次いでこのフラスコを氷水浴中に置き、15分間撹拌した。IEM(3.1g、0.02mol)をシリンジによって加え、フラスコを引き続き氷水浴中に維持し、反応を30分間撹拌した。次いでこの冷却浴を取り除き、30分間の時間にわたり、反応を室温まで温めた。反応混合物から、無色の沈殿物を濾過した。濃塩酸溶液を数滴加えることにより、濾過液のpHを約7に調整した。濾過液のアリコートの
1H-NMRにより、2-[2-(2-メチルプロプ-2-エノイルオキシ)エチルカルバモイルアミノ]-3-フェニルプロパン酸、ナトリウム塩の形成を確認した。
1H-NMR(D
2O,500MHz)δ1.74(br.s,3H),2.73(m,1H),2.99(m,1H),3.13(m,1H),3.26(m,1H),3.90(m,2H),4.17(m,1H),5.54(m,1H),5.95(m,1H),7.09及び7.15(m,5H)。
【0177】
モノマー実施例R.
2-[2-(2-メチルプロプ-2-エノイルオキシ)エチルカルバモイルアミノ]エタン酸、ナトリウム塩
(IEM-グリシン、ナトリウム塩)
【化53】
グリシン(1.5g、0.02mol)を、100mLの丸底フラスコに加えた。水酸化ナトリウム水溶液(1.0N、20mL)をこのフラスコに加え、固体が溶解するまで、得られた混合物を撹拌した。次いでこのフラスコを氷水浴中に置き、15分間撹拌した。IEM(3.1g、0.02mol)をシリンジによって加え、フラスコを引き続き氷水浴中に維持し、反応を30分間撹拌した。次いでこの冷却浴を取り除き、30分間の時間にわたり、反応を室温まで温めた。反応混合物から、無色の沈殿物を濾過した。濃塩酸溶液を数滴加えることにより、濾過液のpHを約7に調整した。濾過液のアリコートの
1H-NMRにより、2-[2-(2-メチルプロプ-2-エノイルオキシ)エチルカルバモイルアミノ]エタン酸、ナトリウム塩の形成を確認した。
1H-NMR(D
2O,500MHz)δ1.79(s,3H),3.33(m,2H),3.54(s,2H),4.09(m,2H),5.59(s,1H),5.99(s,1H)。
【0178】
実施例1.
4-[[[2-メチル-2-(プロプ-2-エノイルアミノ)プロパノイル]アミノ]メチル]シクロヘキサンカルボン酸、ナトリウム塩(モノマー実施例A)の溶液(23.85%w/wの脱イオン水溶液3.34グラム、2.5mmol)を、開始剤4-(3-スルホプロピルオキシ)ベンゾフェノン、ナトリウム塩(S-BP)(0.05g/mLの脱イオン水溶液500μL)と混合することにより、コーティング溶液を調製した。この混合物を脱イオン水で全量5グラムに希釈し、最終的なモノマー濃度を0.5M、開始剤濃度を0.5%とした。ナイロン膜基材(9cm×12cm、ナイロン66膜、単一補強層ナイロン3ゾーン膜、名目上の(nominal)孔径1.8μm、#080ZN、3M Purification,Inc.(Meridan,CT)より入手)を、透明なポリエステルフィルム(約0.25mm厚)のシート上に配置し、基材のトップ面上にコーティング溶液をピペットで加えた。コーティング溶液を基材に約1分間浸漬させた後、透明なポリエステルフィルム(約0.25mm厚)の第2のシートを基材のトップ面の上に配置した。2.28kgの円筒形の重りを、得られた3層のサンドイッチ状試料(ポリエステルフィルム-膜基材-ポリエステルフィルム)のトップの上で転がし、余分なコーティング溶液を搾り出した。18個のバルブ(Sylvania RG2 40W F40/350BL/ECO、基材の上に10個、下に8個、長さ1.17メートル(46インチ)、中央の間隔5.1cm(2インチ))を備えたUVスタンド(Classic Manufacturing,Inc.(Oakdale,MN))を用い、15分間の照射時間でサンドイッチ状試料に照射することにより、紫外線(UV)開始グラフト化を実施した。ポリエステルシートを取り外し、残った官能化基材を、250mLのポリエチレン瓶に入れた。瓶に0.9パーセント(重量%)食塩水を充填し、密封し、30分間振とうし、任意の残留モノマー又は未グラフト化ポリマーを洗い落とした。食塩水をデカントし、官能化基材を新鮮な食塩水で更に30分間洗浄した後、脱イオン水で30分間洗浄し、乾燥させた。完成したフィルタ要素は、グラフト密度が0.20mmol/グラムであった。グラフト密度は、基材を完成したフィルタ要素に変換した後の質量増加を測定することによって求めた。
【0179】
実施例2.
2-ヒドロキシ-4-[[2-メチル-2-(プロプ-2-エノイルアミノ)プロパノイル]アミノ]ブタン酸、ナトリウム塩(モノマー実施例B)の溶液(23.55%w/wの脱イオン水溶液2.98グラム、2.5mmol)を、S-BP(0.05g/mLの脱イオン水溶液500μL)と混合することにより、コーティング溶液を調製した。この混合物を脱イオン水で全量5グラムに希釈し、最終的なモノマー濃度を0.5M、開始剤濃度を0.5%とした。実施例1に記載の手順に従い、グラフト密度が0.07mmol/グラムの完成したフィルタ要素を得た。
【0180】
実施例3.
3-ヒドロキシ-2-[[2-メチル-2-(プロプ-2-エノイルアミノ)プロパノイル]アミノ]プロパン酸、ナトリウム塩(モノマー実施例C)の溶液(23.85%w/wの脱イオン水溶液2.79グラム、2.5mmol)を、S-BP(0.05g/mLの脱イオン水溶液500μL)と混合することにより、コーティング溶液を調製した。この混合物を脱イオン水で全量5グラムに希釈し、最終的なモノマー濃度を0.5M、開始剤濃度を0.5%とした。実施例1に記載の手順に従い、グラフト密度が0.23mmol/グラムの完成したフィルタ要素を得た。
【0181】
実施例4.
3-(1H-イミダゾール-5-イル)-2-[[2-メチル-2-(プロプ-2-エノイルアミノ)プロパノイル]アミノ]プロパン酸、ナトリウム塩(モノマー実施例G)の溶液(27.55%w/wの脱イオン水溶液2.87グラム、2.5mmol)を、S-BP(0.05g/mLの脱イオン水溶液500μL)と混合することにより、コーティング溶液を調製した。この混合物を脱イオン水で全量5グラムに希釈し、最終的なモノマー濃度を0.5M、開始剤濃度を0.5%とした。実施例1に記載の手順に従い、グラフト密度が0.19mmol/グラムの完成したフィルタ要素を得た。
【0182】
実施例5.
4-[[[2-メチル-2-(プロプ-2-エノイルアミノ)プロパノイル]アミノ]メチル]シクロヘキサンカルボン酸、ナトリウム塩(モノマー実施例A)の溶液(23.85%w/wの脱イオン水溶液1.67グラム、1.25mmol)を、S-BP(0.05g/mLの脱イオン水溶液500μL)と混合することにより、コーティング溶液を調製した。この混合物を脱イオン水で全量5グラムに希釈し、最終的なモノマー濃度を0.25M、開始剤濃度を0.5%とした。実施例1に記載の手順に従い、グラフト密度が0.12mmol/グラムの完成したフィルタ要素を得た。
【0183】
実施例6.
2-ヒドロキシ-4-[[2-メチル-2-(プロプ-2-エノイルアミノ)プロパノイル]アミノ]ブタン酸、ナトリウム塩(モノマー実施例B)の溶液(23.55%w/wの脱イオン水溶液1.48グラム、1.25mmol)を、S-BP(0.05g/mLの脱イオン水溶液500μL)と混合することにより、コーティング溶液を調製した。この混合物を脱イオン水で全量5グラムに希釈し、最終的なモノマー濃度を0.25M、開始剤濃度を0.5%とした。実施例1に記載の手順に従い、グラフト密度が0.04mmol/グラムの完成したフィルタ要素を得た。
【0184】
実施例7.
3-ヒドロキシ-2-[[2-メチル-2-(プロプ-2-エノイルアミノ)プロパノイル]アミノ]プロパン酸、ナトリウム塩(モノマー実施例C)の溶液(23.85%w/wの脱イオン水溶液1.39グラム、1.25mmol)を、S-BP(0.05g/mLの脱イオン水溶液500μL)と混合することにより、コーティング溶液を調製した。この混合物を脱イオン水で全量5グラムに希釈し、最終的なモノマー濃度を0.25M、開始剤濃度を0.5%とした。実施例1に記載の手順に従い、グラフト密度が0.11mmol/グラムの完成したフィルタ要素を得た。
【0185】
実施例8.
3-(1H-イミダゾール-5-イル)-2-[[2-メチル-2-(プロプ-2-エノイルアミノ)プロパノイル]アミノ]プロパン酸、ナトリウム塩(モノマー実施例G)の溶液(27.55%w/wの脱イオン水溶液1.45グラム、1.25mmol)を、S-BP(0.05g/mLの脱イオン水溶液500μL)と混合することにより、コーティング溶液を調製した。この混合物を脱イオン水で全量5グラムに希釈し、最終的なモノマー濃度を0.25M、開始剤濃度を0.5%とした。実施例1に記載の手順に従い、グラフト密度が0.08mmol/グラムの完成したフィルタ要素を得た。
【0186】
実施例9.
2-ヒドロキシ-4-[[2-メチル-2-(プロプ-2-エノイルアミノ)プロパノイル]アミノ]ブタン酸、ナトリウム塩(モノマー実施例B)の溶液(23.55%w/wの脱イオン水溶液2.98グラム、2.5mmol)を、S-BP(0.05g/mLの脱イオン水溶液100μL)と混合することにより、コーティング溶液を調製した。この混合物を脱イオン水で全量5グラムに希釈し、最終的なモノマー濃度を0.5M、開始剤濃度を0.1%とした。実施例1に記載の手順に従い、グラフト密度が0.10mmol/グラムの完成したフィルタ要素を得た。
【0187】
実施例10.
4-[[[2-メチル-2-(プロプ-2-エノイルアミノ)プロパノイル]アミノ]メチル]シクロヘキサンカルボン酸、ナトリウム塩(モノマー実施例A)の溶液(23.85%w/wの脱イオン水溶液1.67グラム、1.25mmol)を、S-BP(0.05g/mLの脱イオン水溶液100μL)と混合することにより、コーティング溶液を調製した。この混合物を脱イオン水で全量5グラムに希釈し、最終的なモノマー濃度を0.25M、開始剤濃度を0.1%とした。実施例1に記載の手順に従い、グラフト密度が0.07mmol/グラムの完成したフィルタ要素を得た。
【0188】
実施例11.
3-ヒドロキシ-2-[[2-メチル-2-(プロプ-2-エノイルアミノ)プロパノイル]アミノ]プロパン酸、ナトリウム塩(モノマー実施例C)の溶液(23.85%w/wの脱イオン水溶液1.39グラム、1.25mmol)を、S-BP(0.05g/mLの脱イオン水溶液100μL)と混合することにより、コーティング溶液を調製した。この混合物を脱イオン水で全量5グラムに希釈し、最終的なモノマー濃度を0.25M、開始剤濃度を0.1%とした。実施例1に記載の手順に従い、グラフト密度が0.07mmol/グラムの完成したフィルタ要素を得た。
【0189】
実施例12.
3-(4-ヒドロキシフェニル)-2-[[2-メチル-2-(プロプ-2-エノイルアミノ)プロパノイル]アミノ]プロパン酸、ナトリウム塩(モノマー実施例D)の溶液(1Mの脱イオン水溶液1.25mL)を、N,N-ジメチルアクリルアミド(1Mの溶液1.25mL)及びS-BP(0.05g/mLの脱イオン水溶液500μL)と混合することにより、コーティング溶液を調製した。この混合物を脱イオン水で全量5グラムに希釈し、最終的なモノマー濃度を0.25M、開始剤濃度を0.5%とした。実施例1に記載の手順に従い、グラフト密度が0.21mmol/グラムの完成したフィルタ要素を得た。
【0190】
実施例13.
3-(1H-インドール-3-イル)-2-[[2-メチル-2-(プロプ-2-エノイルアミノ)プロパノイル]アミノ]プロパン酸、ナトリウム塩(モノマー実施例E)の溶液(1Mの脱イオン水溶液1.25mL)を、S-BP(0.05g/mLの脱イオン水溶液500μL)と混合することにより、コーティング溶液を調製した。この混合物を脱イオン水で全量5グラムに希釈し、最終的なモノマー濃度を0.25M、開始剤濃度を0.5%とした。実施例1に記載の手順に従い、グラフト密度が0.16mmol/グラムの完成したフィルタ要素を得た。
【0191】
実施例14.
2-[[2-メチル-2-(プロプ-2-エノイルアミノ)プロパノイル]アミノ]エタンスルホン酸、ナトリウム塩(モノマー実施例J)の溶液(1Mの脱イオン水溶液2.5mL)を、S-BP(0.05g/mLの脱イオン水溶液500μL)と混合することにより、コーティング溶液を調製した。この混合物を脱イオン水で全量5グラムに希釈し、最終的なモノマー濃度を0.5M、開始剤濃度を0.5%とした。実施例1に記載の手順に従い、グラフト密度が0.15mmol/グラムの完成したフィルタ要素を得た。
【0192】
実施例15.
2-[2-メチル-2-(プロプ-2-エノイルアミノ)プロパノイル]オキシエチルホスホン酸、ナトリウム塩(モノマー実施例K)の溶液(1Mの脱イオン水溶液2.5mL)を、S-BP(0.05g/mLの脱イオン水溶液500μL)と混合することにより、コーティング溶液を調製した。この混合物を脱イオン水で全量5グラムに希釈し、最終的なモノマー濃度を0.5M、開始剤濃度を0.5%とした。実施例1に記載の手順に従い、グラフト密度が0.20mmol/グラムの完成したフィルタ要素を得た。
【0193】
実施例16.
3-[2-(2-メチルプロプ-2-エノイルオキシ)エチルカルバモイルアミノ]プロパン酸、ナトリウム塩(モノマー実施例H)の溶液(1Mの脱イオン水溶液3.75mL)を、S-BP(0.05g/mLの脱イオン水溶液500μL)と混合することにより、コーティング溶液を調製した。この混合物を脱イオン水で全量5グラムに希釈し、最終的なモノマー濃度を0.75M、開始剤濃度を0.5%とした。実施例1に記載の手順に従い、グラフト密度が0.50mmol/グラムの完成したフィルタ要素を得た。
【0194】
実施例17.
3-[[2-メチル-2-(プロプ-2-エノイルアミノ)プロパノイル]アミノ]プロパン酸、ナトリウム塩(モノマー実施例L)の溶液(1Mの脱イオン水溶液3.75mL)を、S-BP(0.05g/mLの脱イオン水溶液500μL)と混合することにより、コーティング溶液を調製した。この混合物を脱イオン水で全量5グラムに希釈し、最終的なモノマー濃度を0.75M、開始剤濃度を0.5%とした。実施例1に記載の手順に従い、グラフト密度が0.623mmol/グラムの完成したフィルタ要素を得た。
【0195】
実施例18.
4-[[2-メチル-2-(プロプ-2-エノイルアミノ)プロパノイル]アミノ]ブタン酸、ナトリウム塩(モノマー実施例M)の溶液(21.65%w/wの脱イオン水溶液1.53グラム、1.25mmol)を、S-BP(0.05g/mLの脱イオン水溶液125μL)と混合することにより、コーティング溶液を調製した。この混合物を脱イオン水で全量5グラムに希釈し、最終的なモノマー濃度を0.25M、開始剤濃度を0.125%とした。実施例1に記載の手順に従い、グラフト密度が0.23mmol/グラムの完成したフィルタ要素を得た。
【0196】
実施例19.
5-[[2-メチル-2-(プロプ-2-エノイルアミノ)プロパノイル]アミノ]ペンタン酸、ナトリウム塩(モノマー実施例N)の溶液(22.05%w/wの脱イオン水溶液1.58グラム、1.25mmol)を、S-BP(0.05g/mLの脱イオン水溶液62.5μL)と混合することにより、コーティング溶液を調製した。この混合物を脱イオン水で全量5グラムに希釈し、最終的なモノマー濃度を0.25M、開始剤濃度を0.0625%とした。実施例1に記載の手順に従い、グラフト密度が0.19mmol/グラムの完成したフィルタ要素を得た。
【0197】
実施例20.
6-[[2-メチル-2-(プロプ-2-エノイルアミノ)プロパノイル]アミノ]ヘキサン酸、ナトリウム塩(モノマー実施例O)の溶液(23.7%w/wの脱イオン水溶液1.54グラム、1.25mmol)を、S-BP(0.05g/mLの脱イオン水溶液31.2μL)と混合することにより、コーティング溶液を調製した。この混合物を脱イオン水で全量5グラムに希釈し、最終的なモノマー濃度を0.25M、開始剤濃度を0.0312%とした。実施例1に記載の手順に従い、グラフト密度が0.20mmol/グラムの完成したフィルタ要素を得た。
【0198】
実施例21.
7-[[2-メチル-2-(プロプ-2-エノイルアミノ)プロパノイル]アミノ]ヘプタン酸、ナトリウム塩(モノマー実施例F)の溶液(24.5%w/wの脱イオン水溶液1.56グラム、1.25mmol)を、S-BP(0.05g/mLの脱イオン水溶液62.5μL)と混合することにより、コーティング溶液を調製した。この混合物を脱イオン水で全量5グラムに希釈し、最終的なモノマー濃度を0.25M、開始剤濃度を0.0625%とした。実施例1に記載の手順に従い、グラフト密度が0.18mmol/グラムの完成したフィルタ要素を得た。
【0199】
実施例22.
7-[[2-メチル-2-(プロプ-2-エノイルアミノ)プロパノイル]アミノ]ヘプタン酸、ナトリウム塩(モノマー実施例F)の溶液(24.5%w/wの脱イオン水溶液1.56グラム、1.25mmol)を、S-BP(0.05g/mLの脱イオン水溶液125μL)と混合することにより、コーティング溶液を調製した。この混合物を脱イオン水で全量5グラムに希釈し、最終的なモノマー濃度を0.25M、開始剤濃度を0.125%とした。実施例1に記載の手順に従い、グラフト密度が0.24mmol/グラムの完成したフィルタ要素を得た。
【0200】
実施例23.
2-[[2-メチル-2-(プロプ-2-エノイルアミノ)プロパノイル]アミノ]-3-フェニルプロパン酸、ナトリウム塩(モノマー実施例P)の溶液(24.8%w/wの脱イオン水溶液1.65グラム、1.25mmol)を、S-BP(0.05g/mLの脱イオン水溶液31.2μL)と混合することにより、コーティング溶液を調製した。この混合物を脱イオン水で全量5グラムに希釈し、最終的なモノマー濃度を0.25M、開始剤濃度を0.0312%とした。実施例1に記載の手順に従い、グラフト密度が0.18mmol/グラムの完成したフィルタ要素を得た。
【0201】
実施例24.
2-[2-(2-メチルプロプ-2-エノイルオキシ)エチルカルバモイルアミノ]-3-フェニルプロパン酸、ナトリウム塩(モノマー実施例Q)の溶液(25%w/wの脱イオン水溶液1.71グラム、1.25mmol)を、S-BP(0.05g/mLの脱イオン水溶液31.2μL)と混合することにより、コーティング溶液を調製した。この混合物を脱イオン水で全量5グラムに希釈し、最終的なモノマー濃度を0.25M、開始剤濃度を0.0312%とした。実施例1に記載の手順に従い、グラフト密度が0.42mmol/グラムの完成したフィルタ要素を得た。
【0202】
実施例25.
4-[[2-メチル-2-(プロプ-2-エノイルアミノ)プロパノイル]アミノ]ブタン酸、ナトリウム塩(モノマー実施例M)の溶液(0.25Mの脱イオン水溶液3.75mL)を、N,N-ジメチルアクリルアミド(0.25Mの溶液1.25mL)及びS-BP(0.05g/mLの脱イオン水溶液31.25μL)と混合することにより、コーティング溶液を調製した。実施例1に記載の手順に従い、グラフト密度が0.14mmol/グラムの完成したフィルタ要素を得た。
【0203】
実施例26.
4-[[2-メチル-2-(プロプ-2-エノイルアミノ)プロパノイル]アミノ]ブタン酸、ナトリウム塩(モノマー実施例M)の溶液(0.25Mの脱イオン水溶液2.5mL)を、N,N-ジメチルアクリルアミド(0.25Mの溶液2.5mL)及びS-BP(0.05g/mLの脱イオン水溶液31.25μL)と混合することにより、コーティング溶液を調製した。実施例1に記載の手順に従い、グラフト密度が0.23mmol/グラムの完成したフィルタ要素を得た。
【0204】
実施例27.
4-[[2-メチル-2-(プロプ-2-エノイルアミノ)プロパノイル]アミノ]ブタン酸、ナトリウム塩(モノマー実施例M)の溶液(0.25Mの脱イオン水溶液1.25mL)を、N,N-ジメチルアクリルアミド(0.25Mの溶液3.75mL)及びS-BP(0.05g/mLの脱イオン水溶液31.25μL)と混合することにより、コーティング溶液を調製した。実施例1に記載の手順に従い、グラフト密度が0.42mmol/グラムの完成したフィルタ要素を得た。
【0205】
実施例28.
4-[[2-メチル-2-(プロプ-2-エノイルアミノ)プロパノイル]アミノ]ブタン酸、ナトリウム塩(モノマー実施例M)の溶液(0.5Mの脱イオン水溶液1.25mL)を、N,N-ジメチルアクリルアミド(0.5Mの溶液3.75mL)及びS-BP(0.05g/mLの脱イオン水溶液31.25μL)と混合することにより、コーティング溶液を調製した。実施例1に記載の手順に従い、グラフト密度が0.43mmol/グラムの完成したフィルタ要素を得た。
【0206】
実施例29.
2-[2-(2-メチルプロプ-2-エノイルオキシ)エチルカルバモイルアミノ]エタンスルホン酸、ナトリウム塩(モノマー実施例I)の溶液(0.75Mの脱イオン水溶液2.5mL)を、3-フェニル-2-(プロプ-2-エノイルアミノ)プロパン酸(0.75Mの溶液2.5mL)及びS-BP(0.05g/mLの脱イオン水溶液500μL)と混合することにより、コーティング溶液を調製した。実施例1に記載の手順に従い、完成したフィルタ要素を得た。
【0207】
実施例30.
2-[2-(2-メチルプロプ-2-エノイルオキシ)エチルカルバモイルアミノ]エタン酸、ナトリウム塩(モノマー実施例R)の溶液(19.5%w/wの脱イオン水溶液1.62グラム、1.25mmol)を、S-BP(0.05g/mLの脱イオン水溶液62.5μL)と混合することにより、コーティング溶液を調製した。この混合物を脱イオン水で全量5グラムに希釈し、最終的なモノマー濃度を0.25M、開始剤濃度を0.0625%とした。実施例1に記載の手順に従い、グラフト密度が0.25mmol/グラムの完成したフィルタ要素を得た。
【0208】
実施例31.単量体IgGから凝集IgGを分離するための方法
実施例1~30の完成したフィルタ要素を、直径7.5mmのディスクにカットした。本来の固相抽出材をあらかじめ取り除いた、96ウェルEmpore(商標)フィルタプレート(モデル6065、3M Corporation(St.Paul,MN))の各ウェル中に、2枚のディスクを挿入した。フィルタ要素のディスクを、プラスチック製のOリングで、所定の位置に保持した。各ウェルの総有効フィルタ容量(total working filter volume)は、約8.6μLであった。各ウェルを、ウェル中で試験するIgG含有溶液中のものと同一の緩衝液組成を有する非IgG含有緩衝溶液1mLで平衡化した。遠心分離(Allegra 25R遠心分離機,Beckman Coulter(Brea,CA))を用い、平衡溶液をウェルから除去した。次いで、プレートのウェルに、表2から選択される単一のIgG含有緩衝溶液1mLを(ピペットによって)個々に添加した。プレートを、順次100、200、300、600、1200、及び3000rcf(相対遠心力)で、又は、個々の試料がフィルタ要素を完全に流通するまで遠心分離した。各遠心工程は、約5分間実施した。IgG含有緩衝溶液中のIgGの濃度は3.32mg/mL又は0.83mg/mLのいずれかであり、これはチャレンジロード386g/L又は96.5g/Lのいずれかに相当する。チャレンジロードは、所与の体積の濾材当たりのIgGの量(1リットル当たりのグラム数、g/L)で規定される。平衡溶液及びIgG試料溶液には、別々の捕集プレートを用いた。フィルタを通した溶液は、TSKgel(商標)G3000SWxlカラム(Tosoh Bioscience LLC(Griesheim,Germany))を備えたShimadzu Prominence HPLC(Shimadzu Scientific Instruments(Columbia,MD))を用い、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって分析した(分析条件:注入量20μL;流量1mL/分;移動相:100mMリン酸ナトリウム、300mM NaCl、pH6.9;検出280ナノメートル)。
【0209】
実施例1~30のフィルタ要素と、表2に記載したIgG溶液(1~27番)と、を用いた実施例31の方法について、表3~35に結果を示す。開始時の溶液及びフィルタを通した溶液のピーク面積を比較することによってモノマーの収率及び凝集物の除去を求め、結果を、2回の反復試験の平均として報告する。
【0210】
実施例31の分離方法を実施する前のIgG溶液(初期のIgG溶液)中に存在する単量体IgGの百分率を、上記のSECクロマトグラフィー法を用いて求めた。式1によって、試料の単量体成分のピーク面積(ピークA)を、試料のピーク面積の合計(総ピーク面積)と比較した。
【0211】
実施例31の分離方法を実施する前のIgG溶液(初期のIgG溶液)中に存在する凝集IgGの百分率を、上記のSECクロマトグラフィー法を用いて求めた。式2によって、試料の凝集成分のピーク面積(ピークB)を、試料のピーク面積の合計(総ピーク面積)と比較した。
【0212】
初期のIgG溶液中(すなわち、実施例31の分離方法を実施する前)の、凝集IgGの百分率に対する単量体IgGの百分率の比を、式3によって算出し、「初期の組成比」として報告する。
【0213】
凝集IgGの除去率(%)を、上記のSECクロマトグラフィー法を用い、凝集成分のピーク面積を、実施例31の分離方法を実施する前(ピークB)及び分離方法を実施した後(ピークC)に測定して求めた。「凝集IgGの除去率(%)」を、式4によって算出した。
【0214】
単量体IgGの収率(%)を、上記のSECクロマトグラフィー法を用い、単量体成分のピーク面積を、実施例31の分離方法を実施する前(ピークA)及び分離方法を実施した後(ピークD)に測定して求めた。「単量体IgGの収率(%)」を、式5によって算出した。
【0215】
実施例31の分離方法後の単量体IgGの回収率の計算値を式6によって求め、「最終的な単量体IgGの回収率(%)」として報告する。
【0216】
実施例31の分離方法後の凝集IgGの回収率の計算値を式7によって求め、「最終的な凝集IgGの回収率(%)」として報告する。
【0217】
最終的なIgG溶液中(すなわち、実施例31の分離方法を実施した後)の、凝集IgGの百分率に対する単量体IgGの百分率の比を式8によって算出し、「最終的な組成比」として報告する。
【0218】
「初期の組成比に対する最終的な組成比の比」を、式9によって算出した。
【0219】
式1~9について算出した値を、表3~35に報告する。
式1:
初期の単量体IgG(%)=((ピーク面積A)/(総ピーク面積))×100
式2:
初期の凝集IgG(%)=((ピーク面積B)/(総ピーク面積))×100
式3:
初期の組成比=((初期の単量体IgG(%))/(初期の凝集IgG(%)))
式4:
凝集IgGの除去率(%)=100-(((ピーク面積C)/(ピーク面積B))×100)
式5:
単量体IgGの収率(%)=((ピーク面積D)/(ピーク面積A))×100
式6:
最終的な単量体IgGの回収率(%)=((初期の単量体IgG(%)×単量体IgGの収率(%))/100)
式7:
最終的な凝集IgGの回収率(%)=初期の凝集IgG(%)×((100-凝集IgGの除去率(%))/100)
式8:
最終的な組成比=((最終的な単量体IgGの回収率(%))/(最終的な凝集IgGの回収率(%)))
式9:
初期の組成比に対する最終的な組成比の比=((最終的な組成比)/(初期の組成比))
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
【表12】
【表13】
【表14】
【表15】
【表16】
【表17】
【表18】
【表19】
【表20】
【表21】
【表22】
【表23】
【表24】
【表25】
【表26】
【表27】
【表28】
【表29】
【表30】
【表31】
【表32】
【表33】
【表34】
【表35】
【0220】
本明細書で言及した特許、特許文献、及び刊行物に含まれる、参照した記載は、それぞれが個々に組み込まれたかのように、これらの全体が参照により組み込まれる。本開示に対する様々な予測できない改変及び変更が、本開示の範囲及び趣旨を逸脱することなく、当業者には明らかとなるであろう。本開示は、本明細書に記載の例示的な実施形態及び実施例によって不当に限定されることを意図するものではないこと、並びにこのような実施例及び実施形態は、以下のような本明細書に記載の特許請求の範囲によってのみ限定されることを意図した本開示の範囲内の例示としてのみ提示されることを理解されたい。