(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-07
(45)【発行日】2022-09-15
(54)【発明の名称】高シリカSSZ-32Xゼオライト
(51)【国際特許分類】
C01B 39/48 20060101AFI20220908BHJP
B01J 29/74 20060101ALI20220908BHJP
C07C 5/13 20060101ALI20220908BHJP
C07C 9/16 20060101ALI20220908BHJP
C07F 19/00 20060101ALI20220908BHJP
C07F 5/06 20060101ALI20220908BHJP
C07F 7/04 20060101ALI20220908BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20220908BHJP
【FI】
C01B39/48
B01J29/74 Z
C07C5/13
C07C9/16
C07F19/00
C07F5/06 D
C07F7/04 Z
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2019521694
(86)(22)【出願日】2017-10-17
(86)【国際出願番号】 US2017056936
(87)【国際公開番号】W WO2018093511
(87)【国際公開日】2018-05-24
【審査請求日】2020-10-07
(32)【優先日】2016-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503148834
【氏名又は名称】シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゾーンズ、ステイシー イアン
(72)【発明者】
【氏名】チェン、コン - ヤン
(72)【発明者】
【氏名】オヨ、アデオラ フローレンス
【審査官】廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-034512(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105645428(CN,A)
【文献】特開2011-206649(JP,A)
【文献】特開2001-287911(JP,A)
【文献】特表平11-511720(JP,A)
【文献】特開昭59-207834(JP,A)
【文献】特表2011-507697(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/20-39/54
B01J 21/00-38/74
B01J 20/00-20/28、
B01J 20/30-20/34
C07C 5/13
C07C 9/16
C07F 9/00-19/00
C07F 1/00-5/06
C07F 7/00-7/30
C07B 31/00-61/00
C07B 63/00-63/04
H01M 4/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
100nm未満の結晶子サイズを有するゼオライトSSZ-32xを合成する方法であって:
(a)以下を含む反応混合物を調製すること;
(1)酸化ケイ素源;
(2)酸化アルミニウム源;
(3)ジプロピルアミン(Q);
(4)フッ化物イオン源;および
(5)水;ならびに
(b)該反応混合物を前記ゼオライト
SSZ-32xの結晶を形成するのに十分な結晶化条件に供すること
を含む、方法であって、
該酸化ケイ素源および該酸化アルミニウム源が、ゼオライトYであ
り、
前記反応混合物が、モル比で以下の組成を有し、
【表1】
前記結晶化条件が125℃~200℃の温度を含む、上記方法。
【請求項2】
前記反応混合物が、モル比で以下の組成を有する、請求項1に記載の方法:
【表2】
【請求項3】
前記ゼオライトSSZ-32xが、少なくとも50のSiO
2/Al
2O
3モル比を
有する
微多孔性ゼオライトSSZ-32xである、請求項1に記載の方
法。
【請求項4】
前記
ゼオライトSSZ-32xのSiO
2/Al
2O
3モル比が50~500である、請求項
3に記載の
方法。
【請求項5】
前記ゼオライトSSZ-32xが、その孔にジプロピルアミンをさらに含む、請求項
3に記載の
方法。
【請求項6】
前記
ゼオライトSSZ-32
xが15~60nmの結晶子サイズを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ゼオライトSSZ-32xが、15~60nmの結晶子サイズを有する、請求項
3に記載の
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年11月17日に出願された米国仮特許出願第62/423,259号の優先権を主張し、その開示は参照により本明細書に完全に組み込まれる。
【0002】
本開示は、一般に、高シリカ形態のゼオライトSSZ-32x、その合成、および触媒プロセスにおけるその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
モレキュラーシーブは商業的に重要な部類の結晶性材料である。それらは、個別のX線回折パターンによって示される秩序立った細孔構造を有する個別の結晶構造を有する。結晶構造は、様々な種に特徴的な空洞および細孔を規定する。ゼオライトなどのモレキュラーシーブは、触媒作用、吸着、分離、およびクロマトグラフィにおいて広く使用されてきた。
【0004】
モレキュラーシーブは、ゼオライト命名に関するIUPAC委員会の規則に従って、国際ゼオライト協会の構造委員会によって分類されている。この分類によれば、構造が確立されているフレームワーク型ゼオライトおよび他の結晶性の微多孔性モレキュラーシーブには3文字のコードが割り当てられ、「Atlas of Zeolite Framework Types」Sixth Revised Edition,Elsevier(2007)に記載されている。
【0005】
MTT型フレームワークコードを有するモレキュラーシーブは、一次元の10員環細孔系を有する。MTT型モレキュラーシーブは、非常に類似しているが同一ではないX線回折パターンを有する。SSZ-32およびその小さな結晶変種SSZ-32xは、既知のMTT型モレキュラーシーブである。
【0006】
SSZ-32およびN-低級アルキル-N’-イソプロピルイミダゾリウムカチオンの存在下でそれを製造する方法は、米国特許第5,053,373号明細書および米国特許第5,252,527号明細書に開示されている。SSZ-32は、20~40未満の範囲のSiO2/Al2O3モル比を有すると報告されている。
【0007】
SSZ-32xおよびN-低級アルキル-N’-イソプロピルイミダゾリウムカチオンの存在下でそれを製造する方法は、米国特許第7,390,763号明細書および米国特許第8,545,805号明細書に開示されている。SSZ-32xは、20~40未満の範囲のSiO2/Al2O3モル比を有し、結晶子は20~40nmの範囲の小さな広い旋盤様成分を有すると報告されている。
【0008】
SSZ-32xは、標準のSSZ-32と比較して、様々な触媒作用プロセスのために使用される他の中間細孔径モレキュラーシーブよりも、その固有の小さな結晶の結果であり得る広がったX線回折ピーク、変化したアルゴン吸着比、増大した外部表面積、および低下したクラッキング活性を有する。
【0009】
本開示によれば、今般、ジプロピルアミンが、フッ化物媒体中での高シリカ形態のSSZ-32xの合成における構造規定剤(structure directing agent)として有効であることを見出した。
【発明の概要】
【0010】
一態様では、ゼオライトSSZ-32xを合成する方法が提供され、この方法は:(a)以下を含む反応混合物を調製する工程;(1)酸化ケイ素源;(2)酸化アルミニウム源;(3)ジプロピルアミン;(4)フッ化物イオン源;および(5)水;ならびに(b)反応混合物をゼオライトの結晶を形成するのに十分な結晶化条件に供する工程を含む。
【0011】
別の態様では、少なくとも50のSiO2/Al2O3モル比を有するSSZ-32xゼオライトが提供される。
【0012】
さらに別の態様では、その細孔内にジプロピルアミンを含むSSZ-32xゼオライトが提供される。
【0013】
さらなる態様では、有機化合物を含む供給原料を転化生成物に転化するプロセスが提供され、このプロセスは、有機化合物転化条件で、供給原料を、本明細書に記載の活性形態のSSZ-32xゼオライトを含む触媒と接触させる工程を含む。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】従来の(標準)SSZ-32ゼオライト(上部パターン)と例1に従って調製されたSSZ-32xゼオライト(下部パターン)の粉末X線回折(XRD)パターンを比較する。
【
図2(a)】例4のPt/SSZ-32x触媒上でのn-デカンの選択的水素化転化率の結果を示す。
【
図2(b)】例4のPt/SSZ-32x触媒上でのn-デカンの選択的水素化転化率の結果を示す。
図2(a)は、温度の関数としてのn-デカン転化率のプロットである。
図2(b)は、転化率の関数としての生成物分布のプロットである。
【
図3(a)】例5のPt/SSZ-32x触媒上でのn-デカンの選択的水素化転化率の結果を示す。
【
図3(b)】例5のPt/SSZ-32x触媒上でのn-デカンの選択的水素化転化率の結果を示す。
図3(a)は、温度の関数としてのn-デカン転化率のプロットである。
図3(b)は、転化率の関数としての生成物分布のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
序論
以下の用語は、本明細書を通して使用され、他に示されない限り、以下の意味を有する。
【0016】
「ゼオライト」という用語は、微多孔性であり、頂点共有するAlO2およびSiO2四面体から形成される結晶性アルミノシリカート組成物を指す。
【0017】
「SSZ-32x」という用語は、本明細書ではSSZ-32の構造のゼオライトを指し、100nm未満の結晶子サイズを有するとして特徴付けられる。
【0018】
「結晶子サイズ」という用語は、結晶の最長寸法を指す。結晶子サイズは、当該技術分野で利用可能な手順および装置を使用してXRD分析によって決定することができる。
【0019】
「合成されたままの」という用語は、結晶化後、構造規定剤の除去前のその形態のゼオライトを指す。
【0020】
「無水」という用語は、物理的に吸着された水および化学的に吸着された水の両方を実質的に含まないゼオライトを指すために本明細書で使用される。
【0021】
用語「コロイド」および「コロイド状」、「ゾル」などを含む他の同様の用語は、分散相および連続相を有する二相系を指す。本開示のコロイドは、連続または実質的に連続の液相、典型的には水溶液中に分散または懸濁した固相を有する。コロイドは安定な混合物であり、分散相は一般に混合物から沈殿しない。
【0022】
「標準の1バレル当たりの立方フィート」という用語は「scf/B」と略記される。
【0023】
本明細書で使用される場合、周期表族の番号付け方式は、Chem.Eng.News,63(5),26-27(1985)に開示されている通りである。
【0024】
反応混合物
一般に、SSZ-32xゼオライトは:(a)以下を含む反応混合物を調製すること;(1)酸化ケイ素源;(2)酸化アルミニウム源;(3)ジプロピルアミン(Q);(4)フッ化物イオン源;および(5)水;ならびに(b)反応混合物をゼオライトの結晶を形成するのに十分な結晶化条件に供することによって調製される。
【0025】
ゼオライトが形成される反応混合物の組成は、モル比で、下記の表1に示されている:
【表1】
ここで、組成変数Qはジプロピルアミンを表す。
【0026】
適切な酸化ケイ素源には、コロイド状シリカ、ヒュームドシリカ、沈降シリカ、アルカリ金属シリカート、およびテトラアルキルオルトシリカートが含まれる。
【0027】
酸化アルミニウムの適切な供給源には、水和アルミナおよび水溶性アルミニウム塩(例えば、硝酸アルミニウム)が含まれる。
【0028】
追加的または代替的に、酸化ケイ素および酸化アルミニウムの組み合わせた供給源を使用することができ、アルミノシリカートゼオライト(例えばゼオライトY)、コロイド状アルミノシリカート、および粘土または処理粘土(例えばメタカオリン)を含むことができる。
【0029】
適切なフッ化物イオン源としては、フッ化水素、フッ化アンモニウム、および二フッ化水素アンモニウムが挙げられる。
【0030】
反応混合物はまた、先の合成からのSSZ-32xのようなモレキュラーシーブ材料の種晶を、望ましくは反応混合物の重量で0.01~10,000ppm(例えば100ppm~5,000ppm)の量で含有してもよい。
【0031】
本明細書に記載の各実施形態について、反応混合物は複数の供給源によって供給されてもよい。また、2つ以上の反応成分が1つの供給源によって提供されてもよい。
【0032】
反応混合物はバッチ式または連続式のいずれかで調製されてもよい。本明細書に記載の結晶性ゼオライトの結晶サイズ、モルホロジーおよび結晶化時間は、反応混合物の性質および結晶化条件によって変わり得る。
【0033】
結晶化および合成後処理
上記反応混合物からのゼオライトの結晶化は、例えばポリプロピレンジャーまたはTeflonラインドまたはステンレス鋼オートクレーブのような適切な反応容器中で、125℃~200℃の温度で、静的、回転または撹拌条件下、使用される温度で結晶化が起こるのに十分な時間、例えば3~15日間行うことができる。結晶化は通常、自己圧下、閉鎖系で行われる。
【0034】
ゼオライト結晶が形成されたら、遠心分離または濾過などの標準的な機械的分離技術によって固体生成物を反応混合物から回収する。結晶を水洗した後、乾燥して合成したままのゼオライト結晶を得る。乾燥工程は典型的には200℃未満の温度で行われる。
【0035】
結晶化プロセスの結果として、回収された結晶性ゼオライト生成物はその細孔構造内に合成に使用された構造規定剤の少なくとも一部を含有する。
【0036】
合成されたままのゼオライト生成物はまた、その合成に使用された有機構造規定剤の一部または全部を除去するための処理に供され得る。これは、合成されたままの材料を少なくとも370℃の温度に少なくとも1分間、一般的には20時間以下で加熱することができる熱処理によって都合よく達成することができる。熱処理は925℃までの温度で行うことができる。大気圧より低い圧力を熱処理に使用することができるが、便宜上の理由で大気圧が望ましいことがある。追加的または代替的に、有機構造規定剤は、オゾンでの処理によって除去することができる(例えば、A.N.Parikh et al.,Micropor.Mesopor.Mater.2004,76,17-22参照)。有機物を含まない生成物、特にその金属、水素およびアンモニウムの形態は、特定の有機(例えば炭化水素)転化反応の触媒作用において特に有用である。本開示では、その水素形態の有機物を含まないモレキュラーシーブは、存在する金属機能の有無にかかわらず、モレキュラーシーブの「活性形態」と呼ばれる。
【0037】
本ゼオライト合成は、第1族および/または第2族金属カチオンの不存在下で行われることができ、それによって、閉塞された構造規定剤を除去するための熱処理後の生成物のイオン交換の必要性を排除する。合成されたままのゼオライト中の任意のカチオンは、当該技術分野において周知の技術に従って、例えば他のカチオンとのイオン交換によって置き換えることができる。好ましい置換カチオンは、金属イオン、水素イオン、水素前駆体(例えば、アンモニウム)イオン、およびそれらの組み合わせを含み得る。特に好ましい置換カチオンは、特定の有機化合物転化反応のために触媒活性を調整することができるものを含み得る。そのようなカチオンは、水素、希土類金属、および/または元素周期表の第2~15族の1つ以上の金属を含む。
【0038】
本ゼオライトは、水素化成分、例えばクロム、モリブデン、マンガン、レニウム、コバルト、ニッケル、および/または貴金属、例えばパラジウムもしくは白金と密接に組み合わせられ得、ここで水素化-脱水素化機能を果たし得る。そのような成分は、共結晶化により組成物中に存在させることができ、組成物中で交換でき、その中に含浸でき、それと密接に物理的に混合でき、または当業者に既知の任意の適切な方法によって混合できる。
【0039】
触媒として使用される場合、本ゼオライトを、有機転化プロセスにおいて使用される温度および他の条件に耐性のある別の材料と共に組み込むことが望ましい場合がある。そのような材料には、活性および不活性材料、ならびに合成または天然に存在するゼオライト、ならびに無機材料、例えば粘土、シリカおよび/または金属酸化物、例えばアルミナが含まれる。後者は、天然に存在するものであってもよく、またはシリカおよび金属酸化物の混合物を含むゲル状沈殿物またはゲルの形態であってもよい。本発明のゼオライトと共に、すなわちそれと組み合わせてまたはゼオライトの合成中に存在する材料(これは活性である)の使用は、特定の有機転化プロセスにおいて触媒の転化および/または選択性を変化させる傾向がある。
【0040】
さらに、不活性材料は、所与のプロセスにおける転化量を制御するための希釈剤として適切に働き、その結果、反応速度を制御するための他の手段を用いることなく経済的および秩序ある様式で生成物を得ることができる。そのような不活性材料は、商業的な操作条件下で触媒の圧壊強度(crush strength)を改善するために、天然粘土、例えばベントナイトおよびカオリンに組み込まれてもよい。これらの材料(すなわち、粘土、酸化物など)は触媒のためのバインダとして機能する。商業用途では触媒が粉末様材料に分解するのを防ぐことが望ましいので、良好な圧壊強度を有する触媒を提供することが望ましい。これらの粘土および/または酸化物バインダは、通常、触媒の圧壊強度を改善する目的でのみ使用されてきた。
【0041】
本ゼオライトと複合化することができる天然粘土には、モンモリロナイトおよびカオリンファミリーが含まれ、これらのファミリーには、サブベントナイト、一般的にDixie、McNamee、GeorgiaおよびFlorida粘土などとして知られるカオリン、または主要な鉱物構成要素が、ハロサイト、ディッカイト、ナクライト、またはアノウキサイトであるものが含まれる。そのような粘土は、最初に採掘されたままの加工していない状態または初期に焼成、酸処理または化学修飾を受けた状態で使用することができる。
【0042】
本ゼオライトと複合化するのに有用なバインダとしては、無機酸化物、例えばシリカ、ジルコニア、チタニア、マグネシア、ベリリア、アルミナ、およびそれらの混合物も挙げられる。
【0043】
前述の材料に加えて、本発明のゼオライトは、多孔質マトリックス材料、例えばシリカ-アルミナ、シリカ-マグネシア、シリカ-ジルコニア、シリカ-トリア、シリカ-ベリリア、シリカ-チタニア、ならびに三元組成物、例えばシリカ-アルミナ-トリア、シリカ-アルミナ-ジルコニア シリカ-アルミナ-マグネシアおよびシリカ-マグネシア-ジルコニアと複合化できる。
【0044】
SSZ-32xゼオライトとマトリックスとの相対的な割合は、複合体の1~90重量%(例えば、2~80重量%)の範囲のSSZ-32x含有量で、広く変動し得る。
【0045】
ゼオライトの特性評価
その合成されたままの無水形態において、本SSZ-32xゼオライトは、以下の表2に記載されるように、モル比に関して化学組成を有する。
【表2】
ここで、Qはジプロピルアミンを表す。対照的に、標準のSSZ-32および以前に報告された形態のSSZ-32xは、20~40未満の範囲のSiO
2/Al
2O
3モル比を有する。
【0046】
本発明のゼオライトの合成されたままの形態は、その合成されたままの形態を調製するために使用される反応混合物の反応物のモル比とは異なるモル比を有してもよいことに留意すべきである。この結果は、(反応混合物から)形成された結晶への反応混合物の100%の反応物の不完全な組み込みのために起こり得る。
【0047】
一般に、本SSZ-32xゼオライトは、100nm未満(例えば、15~60nm、または20~40nm)の結晶子サイズを有する小さな結晶の凝集体の形態である。対照的に、標準的なSSZ-32結晶は、100nmより大きい(例えば、約150~200nm)結晶子サイズを有して細長い。
【0048】
いくつかの態様では、本SSZ-32xゼオライトは、以下の追加の特性のうちの1つ以上を有し得る:0.5より大きい(例えば、0.55~0.70)のアルゴン吸着比(ArAR)および少なくとも80m2/g(例えば、80~300m2/gまたは100~250m2/g)の外部表面積。
【0049】
アルゴン吸着比(ArAR)は以下のように計算される:
【数1】
標準SSZ-32は、0.5未満(例えば、0.35~0.45)のアルゴン吸着比を有する。
【0050】
外部表面積はアルゴン物理吸着によって決定される。標準SSZ-32は、約50m2/gの外部表面積を有する。アルゴン物理吸着実験は、当該技術分野において既知の方法によって行うことができる(例えば、C-Y.Chen et al.,Chem.Eur.J.1998,4,1312-1323を参照)。
【0051】
焼成形態では、本ゼオライトは、以下のモル関係を含む化学組成を有する:
Al2O3:(n)SiO2
式中、n≧50(例えば、50~500、50~300、50~200、50~100、50~75、60~500、60~300、60~200、60~100、または60~75)。
【0052】
米国特許第5,053,373号明細書に教示されているように、ゼオライトSSZ-32(「標準SSZ-32」)は、以下の表3に列挙された特性線を含むX線回折を有する。
【表3】
【0053】
ゼオライト結晶の関連寸法が減少するにつれてゼオライトのXRDパターンの特定の線が広がる傾向があり、結果として隣接する線が重なり始め、それによって部分的にのみ分解されたピークまたは未分解の広いピークとして現れ得ることが知られている。
図1は、SSZ-32の従来の(標準)試料(上部パターン)と本開示に従って調製されたSSZ-32x(下部パターン)との粉末XRDパターンを比較する。
【0054】
本明細書に提示される粉末X線回折パターンは標準的な技術によって集められた。放射線はCuKα放射線であった。ピーク高さおよび位置は、θがブラッグ角である2θの関数として、ピークの相対強度から読み取られ、記録された線に対応する面間隔dを計算することができる。
【0055】
吸着および触媒作用
本ゼオライトは、吸着剤または高い活性が重要である有機化合物(例えば、炭化水素)転化反応における触媒として有用であり得る。本ゼオライトによって触媒され得る有機化合物転化プロセスの例には、異性化および有機含酸素化合物の炭化水素、例えばガソリン沸騰成分、オレフィンおよび芳香族化合物への転化が含まれる。
【0056】
水素化成分(例えば、Pt、PdまたはRe)と組み合わせる場合、本発明の方法によって製造されたSSZ-32xを含有する触媒は、パラフィン系炭化水素供給原料の異性化脱蝋において有用であり得る。適切なパラフィン系炭化水素供給原料は、灯油およびジェット燃料のような比較的軽い蒸留留分から高沸点原料、例えば全原油、還元原油、真空塔残油、循環油、合成原油(例えばシェール油、タールサンド油(tars and oil)など)、軽油、減圧軽油、蝋下油、フィッシャー-トロプシュ誘導ワックス、および他の重油までの範囲であることができる。単独で、または16個以上の炭素原子を有するわずかに分枝した鎖パラフィンのみを有する直鎖n-パラフィンは、時にはワックスと呼ばれる。より軽い軽油は通常有意量のワックス状成分を含まないので、供給原料は一般に約350°F(177℃)を超えて沸騰するC10+供給原料であることが多い。しかしながら、触媒は、ワックス状蒸留原料、例えば軽油、灯油、およびジェット燃料を含む中間留分原料、潤滑油原料、暖房油、および粘度が特定の規格限界内に維持される必要がある他の蒸留留分に特に有用である。潤滑油原料は、一般に450°F(230℃)を超えて、より一般的には600°F(315℃)を超えて沸騰する。水素化処理された原料は、通常かなりの量のワックス状n-パラフィンを含有するので、この種の原料および他の蒸留留分の便利な供給源である。供給原料は通常、パラフィン、オレフィン、ナフテン、芳香族および複素環式化合物を含有し、供給原料のワックス状の性質に寄与するかなりの割合の高分子量のn-パラフィンおよびわずかに分枝したパラフィンを有するC10+供給原料である。加工処理中に、n-パラフィンは分枝パラフィンに異性化されるが、一部のクラッキングまたは水素化クラッキングも受けて低粘度生成物に寄与する液体範囲の材料を形成する。しかしながら、生じるクラッキングの程度は制限されているので、供給原料の沸点より低い沸点を有する生成物の収率が減少し、それによって供給原料の経済的価値が維持される。
【0057】
異性化/脱蝋のためのプロセス条件は、392°F~800°F(200℃~427℃)、例えば482°F~752°F(250℃~400℃)の温度;100~3000psig(0.79~20.77MPa)、例えば200~2500psig(1.48~17.34MPa)の圧力;および0.1~10h-1、例えば0.1~5h-1である液体時空間速度;および250~10,000scf/B(45~1780m3/m3)、例えば500~5000scf/B(89~890m3/m3)の水素処理ガス速度を含むことができる。
【0058】
本発明の方法によって製造されたSSZ-32xを含有する触媒は、有機含酸素化合物を、炭化水素、例えばガソリン沸騰成分、オレフィンおよび芳香族化合物に転化するために使用されてもよい。適切な有機含酸素化合物は、少なくとも1つのC1-C4アルキル基を含有する含酸素化合物(例えば、少なくとも1つのC1-C3アルキル基を含有する含酸素化合物)を含み得る。いくつかの態様では、含酸素化合物は、メタノールおよび/またはジメチルエーテルを含むことができるまたはそれらであることができる。含酸素化合物供給物は、任意の都合の良い供給源から誘導することができる。例えば、含酸素化合物供給物は、天然ガス供給物中の炭化水素を改質して合成ガス(H2、CO、CO2など)を形成し、次いで合成ガスを用いてアルコールを形成することによって形成することができる。
【0059】
有機含酸素化合物を炭化水素に転化するためのプロセス条件は、150℃~600℃の温度;0.1~500psia(0.7kPaa~3.5MPaa)の全圧;および触媒の重量に対する含酸素化合物の重量に基づいて、0.1h-1~20h-1の含酸素化合物空間速度を含むことができる。
【0060】
例
以下の例示的な例は非限定的であることを意図している。
【0061】
例1
Teflonライナーにおいて、1.08gのCBV780Y-ゼオライト粉末(Zeolyst International、SiO2/Al2O3モル比=80)、0.90gのジプロピルアミン(CH3CH2CH2NHCH2CH2CH3)、4.86gの脱イオン水、および最後に0.36gの濃HFを共に混合した。次いで、ライナーに蓋をしてParr Steelオートクレーブ反応器内に置いた。オートクレーブをオーブン内の回転スピット(spit)(43rpm)に置き、160℃で6日間加熱した。固体生成物を冷却した反応器から濾過により回収し、脱イオン水で洗浄し、95℃で乾燥した。
【0062】
得られた合成されたままの生成物を、粉末XRD、走査型電子顕微鏡(SEM)、およびエネルギー分散型X線(EDX)分析によって分析した。
【0063】
図1に示される粉末XRDパターンは、SSZ-32の純粋な小さい結晶形態(すなわち、SSZ-32x)である生成物と一致する。
【0064】
走査型電子顕微鏡(図示せず)は、生成物が、15~60nmの範囲の結晶子サイズを有する小さな細長い結晶の凝集体を含んでいたことを示した。
【0065】
合成されたままの生成物の、EDX分析によって決定されるSiO2/Al2O3モル比は66であった。
【0066】
例2
CBV780Y-ゼオライトをHSZ(いずれかの国における登録商標)-390HUA USY-ゼオライト(Tosoh、SiO2/Al2O3モル比=500)で置き換えたことを除くほか例1を繰り返した。
【0067】
粉末XRDは生成物が純粋な小さい結晶形態のSSZ-32(すなわちSSZ-32x)であることを示した。
【0068】
例3
Teflonライナーに、シリカ上にコーティングされた3gのアルミニウムゾル(固形分30%、SiO2/Al2O3モル比=130)を装入し、5.25gの脱イオン水で希釈した。次いで注意深く、ジプロピルアミン(0.90g)を添加し、続いて0.36gの50%HFを添加した。次いで、ライナーに蓋をしてParr Steelオートクレーブ反応器内に置いた。オートクレーブをオーブン内の回転スピット(43rpm)に置き、160℃で6~12日間加熱した。固体生成物を冷却した反応器から濾過により回収し、脱イオン水で洗浄し、95℃で乾燥した。
【0069】
粉末XRDは生成物が純粋な小さい結晶形態のSSZ-32(すなわちSSZ-32x)であることを示した。
【0070】
例4
例2からの材料を空気中595℃で5時間焼成した。焼成後、室温で3日間4.5gの0.148NのNH4OH溶液と5.5gの脱イオン水、次いで(NH3)4Pt(NO3)2溶液(pH9.5に緩衝化)とを混合し、こうして1gのゼオライトと混合した1gのこの溶液が0.5重量%のPt担持量を提供するように材料に白金を担持させた。回収したPt/SSZ-32xゼオライトを脱イオン水で洗浄し、95℃で乾燥した後、300℃で3時間焼成した。焼成Pt/SSZ-32x触媒を次いでペレット化し、粉砕し、20~40メッシュに篩分けした。
【0071】
n-デカンの水素化転化
0.5gのこのPt/SSZ-32x触媒を、供給物を予熱するために触媒の上流にアランダムが装填された長さ23インチ、外径0.25インチのステンレス鋼反応器管の中央に装填した(全圧1200psig;1気圧および25℃で測定した場合、160mL/分の下降流水素速度;および1mL/時の下降流液体供給速度)。全ての材料は、最初に約315℃で1時間水素流中で還元された。生成物を60分毎に1回オンラインキャピラリーガスクロマトグラフィ(GC)により分析した。GCからの生データは自動データ収集/処理システムによって収集され、炭化水素転化率は生データから計算された。転化率は、他の生成物(イソ-C
10を含む)を製造するために反応したn-デカンの量として定義される。収率は、n-デカン以外の生成物のモルパーセントとして表され、収量生成物としてイソ-C
10異性体を含む。結果を
図2(a)および
図2(b)に示す。
【0072】
例5
例4の教示に従って例3からの材料に白金担持を実施した。例4に記載した条件下で、白金担持試料をn-デカンの選択的水素化転化について試験した。結果を
図3(a)および3(b)に示す。
【0073】
結果は、最大異性化に達する温度が、例4の触媒よりも例5の触媒の方が低いことを示している。これは例5の触媒中のアルミニウムのより高い組み込みによるものと考えられる。例4および5の触媒両方とも、SSZ-32xが非常に狭い細孔のゼオライトであるので、生成物が望ましくない多分枝C
10異性体を実質的に含まないことを示している。
なお、下記[1]から[8]は、いずれも本発明の一形態又は一態様である。
[1]
ゼオライトSSZ-32xを合成する方法であって:
(a)以下を含む反応混合物を調製すること;
(1)酸化ケイ素源;
(2)酸化アルミニウム源;
(3)ジプロピルアミン(Q);
(4)フッ化物イオン源;および
(5)水;ならびに
(b)該反応混合物を前記ゼオライトの結晶を形成するのに十分な結晶化条件に供すること
を含む、方法。
[2]
前記反応混合物が、モル比で以下の組成を有する、[1]に記載の方法:
【表4】
[3]
前記反応混合物が、モル比で以下の組成を有する、[1]に記載の方法:
【表5】
[4]
前記結晶化条件が125℃~200℃の温度を含む、[1]に記載の方法。
[5]
少なくとも50のSiO
2
/Al
2
O
3
モル比を有するSSZ-32xゼオライト。
[6]
前記SiO
2
/Al
2
O
3
モル比が50~500である、[5]に記載のSSZ-32xゼオライト。
[7]
その孔にジプロピルアミンをさらに含む、[5]に記載のSSZ-32xゼオライト。
[8]
有機化合物を含む供給原料を転化生成物に転化するプロセスであって、有機化合物転化条件で、該供給原料を、[5]に記載の活性形態のSSZ-32xゼオライトを含む触媒と接触させることを含む、プロセス。