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特許7138103眼科用活性医薬成分送達のためのシクロデキストリン固体複合体の製造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-07
(45)【発行日】2022-09-15
(54)【発明の名称】眼科用活性医薬成分送達のためのシクロデキストリン固体複合体の製造
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/573 20060101AFI20220908BHJP
   A61K 47/69 20170101ALI20220908BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20220908BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20220908BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20220908BHJP
【FI】
A61K31/573
A61K47/69
A61P9/10
A61P27/02
A61K47/34
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019528740
(86)(22)【出願日】2017-11-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-12-12
(86)【国際出願番号】 IB2017001659
(87)【国際公開番号】W WO2018100434
(87)【国際公開日】2018-06-07
【審査請求日】2020-11-18
(31)【優先権主張番号】62/427,737
(32)【優先日】2016-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519186244
【氏名又は名称】オキュリス エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ロフトソン,トールシュタイン
(72)【発明者】
【氏名】フロプ,ゾルタン
【審査官】伊藤 基章
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0020336(US,A1)
【文献】TANITO, M. et al.,IOVS,2011年,Vol. 52,pp. 7944-7948
【文献】JANSOOK, P. et al.,J Pharm Pharm Sci,2010年,Vol. 13,pp. 336-350
【文献】LOFTSSON, T. et al.,J Pharm Pharmacol,2007年,Vol. 59,pp. 629-635
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00
A61K 47/00
A61K 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デキサメタゾンおよびγ-シクロデキストリンを含む固体複合体を、眼科的に許容可能な溶媒中に含む眼科用組成物であって、
前記組成物が、前記デキサメタゾンの重量に対して、0.5重量%未満の脱水デキサメタゾンを含む、眼科用組成物。
【請求項2】
前記組成物が、ポリマーをさらに含む、請求項1に記載の眼科用組成物。
【請求項3】
前記ポリマーが、ポロキサマーである、請求項2に記載の眼科用組成物。
【請求項4】
前記ポリマーの量が、前記組成物の体積に対して、0.5~5重量%である、請求項2または3に記載の眼科用組成物。
【請求項5】
前記組成物の粘度が、4~14cPである、請求項4に記載の眼科用組成物。
【請求項6】
前記デキサメタゾンが、前記組成物中に、10mg/mL~20mg/mLの濃度で存在する、請求項1~5のいずれか1項に記載の眼科用組成物。
【請求項7】
前記組成物中の前記デキサメタゾンの60~95重量%が、デキサメタゾンおよびγ-シクロデキストリンの固体複合体の形態である、請求項1~6のいずれか1項に記載の眼科用組成物。
【請求項8】
前記γ-シクロデキストリンの量が、前記組成物の体積に対して、1~25重量%である、請求項1~7のいずれか1項に記載の眼科用組成物。
【請求項9】
前記組成物が、
1~2%のデキサメタゾン;
12~16%のγ-シクロデキストリン;
2.2~2.8%のポリマー;
0~0.2%の安定化剤;
0~1%の電解質;および
水;
を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の眼科用組成物
(ここで、%は、前記組成物の体積に基づく重量%である)。
【請求項10】
a)眼科的に許容可能な溶媒に、デキサメタゾンを懸濁して懸濁液を形成し、前記デキサメタゾンが前記眼科的に許容可能な溶媒に実質的に溶解するまで、前記懸濁液を加熱する工程;
b)眼科的に許容可能な溶媒に、γ-シクロデキストリンを懸濁して懸濁液を形成し、前記γ-シクロデキストリンが前記眼科的に許容可能な溶媒に実質的に溶解するまで、前記懸濁液を加熱する工程;
c)温度T1で、前記工程a)の組成物および前記工程b)の組成物を混合し、温度T1で、時間tの間、混合物を加熱する工程;および
d)得られた溶液を温度T2まで冷却して、デキサメタゾンおよびγ-シクロデキストリンの固体複合体を含む眼科用組成物を得る工程
を含み、
前記眼科用組成物が、前記デキサメタゾンの重量に対して、0.5重量%未満のデキサメタゾンエノールアルデヒドを含み、
温度T1が、80~110℃である、眼科用組成物を製造する方法。
【請求項11】
温度T2が、10~40℃である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
1~25℃/分の速度で、温度T1が温度T2まで冷却される、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
眼の状態の治療に使用するための、請求項1~9のいずれか1項に記載の眼科用組成物。
【請求項14】
前眼部の状態または後眼部の状態の治療に使用するための、請求項13に記載の眼科用組成物。
【請求項15】
ブドウ膜炎および黄斑浮腫の治療に使用するための、請求項13または14に記載の眼科用組成物。
【請求項16】
点眼液として使用するための、請求項1~9のいずれか1項に記載の眼科用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、活性医薬成分およびシクロデキストリンの固体複合体を含有する眼科用組成物、それらを製造する方法およびそれらの使用に関する。本開示はまた、薬物/シクロデキストリンナノ粒子を含有する新規な水性点眼剤組成物のボトムアップ製造に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書中、引用または議論される文書、行為または知識の項目において、これらの引用または議論は、優先日において、前記文書、行為または知識の項目、またはこれらの任意の組み合わせが公に入手可能であったこと、公に知られていたこと、技術常識の一部であったことを、認めるものではなく、また逆に、前記文書、行為または知識の項目、またはこれらの任意の組み合わせが、適用される法的規定の下で先行技術の構成要素であること、または本明細書に関連する問題を解決する試みと関連していることが公知であることを認めるものでもない。
【0003】
米国立衛生研究所の一部門である国立眼科研究所によれば、眼の状態は、米国だけで1,390億ドルの経済的負担を引き起こすと推定されている。210万人の米国人が加齢黄斑変性症(AMD)と診断され、270万人の米国人が緑内障と診断され、770万人の米国人が糖尿病性網膜症と診断され、2400万人が白内障と診断されていることを考えると、この数字は驚くに値しない。眼の状態は、単に米国における問題ではない。実際、世界中で約2億8500万人が視覚障害を有すると推定されている。
【0004】
全盲を含むほとんどの眼の状態は、治療および/または管理により、負の効果を低減することができる。この重大な問題に対処するため、世界保健機関(WHO)は、2019年までに世界の回避可能な視覚障害の25%を削減することを目標とする行動計画を承認した。その努力において、WHOは、世界中で不可逆性失明のほとんどの症例を占める、糖尿病性網膜症、緑内障、および色素性網膜炎などの眼の状態の影響を低減することを計画している。しかし、眼の標的組織に有効量の薬物を送達することは困難であることから、眼の状態のための現在の治療は限られている。
【0005】
現在の治療において、硝子体内注射および注入などの他の眼科用薬物投与経路(Le Bourlais, C., Acar, L., Zia, H., Sado, P.A., Needham, T., Leverge, R., 1998. Ophthalmic drug delivery systems-Recent advances. Progress in Retinal and Eye Research 17, 33-58)と比較して、点眼剤の利便性および安全性の点から、点眼剤の局所投与が、眼への薬物投与の好ましい手段である。薬物は主に、眼の表面から眼および周囲の組織への受動的拡散によって輸送され、ここで、フィックの法則に従って、薬物は、溶解した薬物分子の勾配によって眼に送達される。眼への受動的薬物拡散は、3つの主要な障害によって阻害される(Gan, L., Wang, J., Jiang, M., Bartlett, H., Ouyang, D., Eperjesi, F., Liu, J., Gan, Y., 2013. Recent advances in topical ophthalmic drug delivery with lipid-based nanocarriers. Drug Discov. Today 18, 290-297; Loftsson, T., Sigurdsson, H.H., Konradsdottir, F., Gisladottir, S., Jansook, P., Stefansson, E., 2008. Topical drug delivery to the posterior segment of the eye: anatomical and physiological considerations. Pharmazie 63, 171-179; Urtti, A., 2006. Challenges and obstacles of ocular pharmacokinetics and drug delivery. Adv. Drug Del. Rev. 58, 1131-1135)。
【0006】
第1の主要な障害は、水性薬物の溶解性である。以前から知られている眼科用組成物では、溶解した薬物分子のみが、生体膜を通って眼に浸透することができる。したがって、眼科用薬物は、眼に浸透するために涙液中における十分な溶解度を有していなければならない。
【0007】
第2の主要な障害は、涙液の急速な代謝回転速度、および結果として生じる溶解薬物分子の濃度の減少である。点眼液(25~50μl)を前角膜の領域に滴下した後、薬物溶液の大部分は眼表面から急速に排出され、涙液量は、通常存在する約7μlに戻る。その後、涙液量は一定のままであるが、涙液代謝回転および角膜および非角膜への薬物吸収による希釈のため、薬物濃度は減少する。最初の点眼剤の急速な排出後、表面領域からの点眼剤の排出の一次速度定数の数値は、ヒトでは、一般的には約1.5/分である。通常の涙液代謝回転は、ヒトでは、約1.2μl/分であり、局所塗布された薬物の前角膜の半減期は1~3分間である(Sugrue, M.F., 1989. The pharmacology of antiglaucoma drugs. Pharmacology & Therapeutics 43, 91-138)。
【0008】
第3の主要な障害は、膜バリア(すなわち、角膜および/または結膜/強膜)を通るゆっくりとした薬物浸透である。薬物分子が、受動的に膜バリアに浸透し得る前に、該薬物分子は、水性溶液外部から該膜内に分配されなければならない。一般的に、塗布された薬物用量のわずかな割合しか眼組織に送達されないという結果となる。投与された用量の大部分(50~100%)は、鼻腔から全身薬物循環に吸収され、これは種々の副作用を引き起こし得る。
【0009】
本開示は、眼内での受動的薬物拡散の障害を克服する眼科用組成物および眼科用組成物を製造する方法を提供することによって、回避可能な視覚障害を低減するためのWHOの計画を支援することを目的とする。これらの努力において、出願人は、眼科用組成物を製造するための方法を提供する。前記眼科用組成物は、(1)難溶性薬物の溶解性を向上させること、(2)局所塗布された薬物の前角膜の半減期を増加させること、および(3)薬物分子を水性溶液外部から膜に分配して膜バリアの受動的浸透を可能にすることによって、受動薬物拡散の主要な障害を克服する。例示的な実施形態では、そのような特徴の組み合わせを含む眼科用組成物を提供する。
【発明の概要】
【0010】
シクロデキストリンは、疎水性化合物の溶解性および生物学的利用能を高めることがよく知られている。水性溶液中では、シクロデキストリンは、多くの活性医薬成分と、包接体を形成する。活性医薬成分/シクロデキストリン複合体のボトムアップ製造は、水性溶媒に、活性医薬成分およびシクロデキストリンを懸濁し、得られた懸濁液を加熱することを含む。前記活性医薬成分および前記シクロデキストリンの溶解時に、活性医薬成分およびシクロデキストリンの複合体が形成される。次いで、高温の水性溶液を冷却して、活性医薬成分およびシクロデキストリンの固体複合体を沈殿させる。
【0011】
出願人は驚くべきことに、前記組成物の粒子の直径および粘度を、加熱する工程および冷却する工程、ならびに水性溶媒中の安定化ポリマーの存在によって調整することができることを見出した。活性医薬成分および/または賦形剤に由来する分解生成物などの不純物の形成を、防止または実質的に抑制または低減するために、本出願人は、溶媒の過度な加熱を回避すべきであり、高温の水性溶液を室温まで急速に冷却すべきであることを発見した。
【0012】
さらに、本開示の組成物は高い粘度を示す。これは、保管中に微粒子が沈降することを防ぎ、また、前記組成物は、眼の表面上における粒子の接触時間を有利に増加させる。従って、本開示の組成物は、活性医薬成分の生物学的利用能を改善する。
【0013】
出願人は、受動的薬物拡散の既知の主要な障害を克服する、例示的な眼科用組成物および前記組成物を製造する方法を発見した。
【0014】
本開示の第1の目的物は、活性医薬成分およびシクロデキストリンを含む固体複合体を、眼科的に許容可能な溶媒中に含む眼科用組成物であって、前記組成物が、活性医薬成分の重量に対して、2重量%未満、特に1重量%未満、より具体的には0.8重量%未満の不純物を含む、眼科用組成物である。
【0015】
本開示の第2の目的物は、活性医薬成分およびシクロデキストリンを含む固体複合体ならびにポリマーを、眼科的に許容可能な溶媒中に含む眼科用組成物であって、前記組成物の粘度が、4~14cP、好ましくは5~13cP、より好ましくは6~12cPである、眼科用組成物。
【0016】
本開示の第3の目的物は、デキサメタゾンおよびγ-シクロデキストリンを含む固体複合体を、眼科的に許容可能な溶媒中に含む眼科用組成物であって、前記組成物が、デキサメタゾンの重量に対して、0.5重量%未満、特に0.3重量%未満、より具体的には0.2重量%未満の16、17-不飽和デキサメタゾンまたはエノールアルデヒドの混合物を含む、眼科用組成物である。
【0017】
本開示の第4の目的物は、デキサメタゾンおよびγ-シクロデキストリンを含む固体複合体ならびにポリマーを、眼科的に許容可能な溶媒中に含む眼科用組成物であって、前記組成物の粘度が、4~14cP、好ましくは5~13cP、より好ましくは6~12cPである、眼科用組成物である。
【0018】
本開示の眼科用組成物は、一般的に、約100μm未満の直径を示し得る固体複合体を含む微粒子懸濁液の形態である。天然のα-シクロデキストリン、β-シクロデキストリンまたはγ-シクロデキストリンを含有する前記組成物および本開示によって提供される方法は、以前より公知の方法を用いて製造された従来の眼科用組成物と比較して、溶解された利用可能な活性医薬成分の濃度を約10倍~約100倍に増加させる。さらに、例示的な方法は、低減された不純物濃度、および/または高い粘度を有する眼科用組成物を提供する。
【0019】
本開示はまた、高濃度の微粒子活性医薬成分/シクロデキストリン複合体を有する眼科用組成物を製造するための方法を提供する。さらに、本開示の方法は、低減された不純物濃度、および/または高い粘度を有する眼科用組成物を提供する。
【0020】
したがって、本開示の第5の目的物は、眼科的に許容可能な溶媒に、活性医薬成分およびシクロデキストリンを懸濁して懸濁液を形成する、眼科用組成物を製造する方法である。次いで、前記活性医薬成分および前記シクロデキストリンが前記眼科的に許容可能な溶媒に実質的に溶解するまでの時間tの間、120℃未満の温度T1で、前記懸濁液を加熱する。次いで、得られた溶液を温度T2まで冷却して、活性医薬成分およびシクロデキストリンの固体複合体を含む眼科用組成物を得る。
【0021】
本開示の第6の目的物は、眼科的に許容可能な溶媒に、シクロデキストリンを懸濁して懸濁液を形成する、眼科用組成物を製造する方法である。次いで、前記シクロデキストリンが前記眼科的に許容可能な溶媒に実質的に溶解するまで、前記懸濁液を加熱する。次に、120℃未満の温度T1で、上述の溶液に固形の活性医薬成分を添加し、前記活性医薬成分が前記眼科的に許容可能な溶媒中に実質的に溶解するまでの時間tの間、120℃未満の温度T1で、混合物を加熱する。次いで、得られた溶液を温度T2まで冷却して、活性医薬成分およびシクロデキストリンの固体複合体を含む眼科用組成物を得る。
【0022】
本開示の第7の目的物は、眼科的に許容可能な溶媒に、活性医薬成分を懸濁して懸濁液を形成し、前記活性医薬成分が前記眼科的に許容可能な溶媒中に実質的に溶解するまで、前記懸濁液を加熱する、眼科用組成物を製造する方法である。別で、眼科的に許容可能な溶媒に、シクロデキストリンを懸濁して懸濁液を形成し、前記シクロデキストリンが前記眼科的に許容可能な溶媒に実質的に溶解するまで、前記懸濁液を加熱する。次に、120℃未満の温度T1で、両方の組成物を混合し、120℃未満の温度T1で、時間tの間、混合物を加熱する。次いで、得られた溶液を温度T2まで冷却して、活性医薬成分およびシクロデキストリンの固体複合体を含む眼科用組成物を得る。
【0023】
本開示の第8の目的物は、眼科的に許容可能な溶媒に、デキサメタゾンおよびγ-シクロデキストリンを懸濁して懸濁液を形成する、眼科用組成物を製造する方法である。次いで、前記デキサメタゾンおよび前記γ-シクロデキストリンが前記眼科的に許容可能な溶媒中に実質的に溶解するまでの時間tの間、120℃未満の温度T1で、前記懸濁液を加熱する。次いで、得られた溶液を温度T2まで冷却して、デキサメタゾンおよびγ-シクロデキストリンの固体複合体を含む眼科用組成物を得る。
【0024】
本開示の第9の目的物は、眼科的に許容可能な溶媒に、γ-シクロデキストリンを懸濁して懸濁液を形成する、眼科用組成物を製造する方法である。次いで、前記γ-シクロデキストリンが前記眼科的に許容可能な溶媒に実質的に溶解するまで、前記懸濁液を加熱する。次に、120℃未満の温度T1で、上述の溶液中に固形のデキサメタゾンを添加し、前記デキサメタゾンが前記眼科的に許容可能な溶媒中に実質的に溶解するまでの時間tの間、120℃未満の温度T1で、混合物を加熱する。次いで、得られた溶液を温度T2まで冷却して、デキサメタゾンおよびγ-シクロデキストリンの固体複合体を含む眼科用組成物を得る。
【0025】
本開示の第10の目的物は、眼科的に許容可能な溶媒に、デキサメタゾンを懸濁して懸濁液を形成し、前記デキサメタゾンが前記眼科的に許容可能な溶媒に実質的に溶解するまで、前記懸濁液を加熱する、眼科用組成物を製造する方法である。別で、眼科的に許容可能な溶媒に、γ-シクロデキストリンを懸濁して懸濁液を形成し、前記γ-シクロデキストリンが前記眼科的に許容可能な溶媒に実質的に溶解するまで、前記懸濁液を加熱する。次に、120℃未満の温度T1で、両方の組成物を混合し、120℃未満の温度T1で、時間tの間、混合物を加熱する。次いで、得られた溶液を温度T2まで冷却して、デキサメタゾンおよびγ-シクロデキストリンの固体複合体を含む眼科用組成物を得る。
【0026】
本開示の第11の目的物は、本開示による方法によって得られる眼科用組成物である。
【0027】
本開示の第12の目的物は、眼の状態、特に前眼部の状態または後眼部の状態、より具体的にはブドウ膜炎、黄斑浮腫、黄斑変性、網膜剥離、眼腫瘍、真菌性またはウイルス感染、多病巣性脈絡膜炎、糖尿病性網膜症、増殖性硝子体網膜症(PVR)、交感性眼炎、ホヒト・小柳・原田病(VKH)、ヒストプラスマ症、ブドウ膜拡散、および血管閉塞の治療に使用するための、本開示に係る、または本開示の方法に従って製造される眼科用組成物である。
【0028】
本開示の第13の目的物は、前記組成物を、1日に3回、1滴の量で、眼に局所投与する、黄斑浮腫の治療における使用のための、本開示に係る、または本開示の方法に従って製造される眼科用組成物である。
【0029】
本開示の第14の目的物は、点眼液としての、本開示に係る、または本開示の方法に従って製造された眼科用組成物の使用である。
【0030】
例示的な実施形態では、眼科用組成物は、水性点眼剤媒体中に溶解された活性剤薬物-シクロデキストリン複合体を含む。前記眼科用組成物は、一般的に、約100μm未満の直径を有する活性剤複合体を含む微粒子懸濁液の形態である。例示的な実施形態によって提供される組成物および方法は、以前より知られている方法を用いて製造された従来の眼科用組成物と比較して、溶解された利用可能な活性剤(すなわち、薬物)の濃度を約10~100倍に増加させる。さらに、例示的な方法は、低減された分解生成物の濃度を有する眼科用組成物を提供する。
【0031】
本明細書で使用される用語「活性剤」は、例えば、医薬成分、活性医薬成分、眼科用活性医薬成分または薬物(またはこれらの変形)としても表され得る。また、本明細書で使用されるこれらの用語(およびこれらの変形)は同意義であり、相互置換可能であるとみなすことができる。例示的な実施形態は、高濃度の微粒子活性剤/シクロデキストリン複合体を有する眼科用組成物を製造するための方法を提供する。前記方法は、室温で保存される場合、少なくとも約90日間、副生成物および/または分解生成物を発生または生成しない。
【0032】
一方法によれば、水性点眼剤媒体に、活性剤(または薬物または他の同意義の用語)および少なくとも1つのシクロデキストリンを懸濁して、乳状の外観を有する懸濁液を提供する。分解生成物および/または副生成物が形成されず、前記薬物および前記シクロデキストリンが水性点眼液に溶解するまで、十分な温度かつ十分な時間、前記懸濁液を加熱する。前記薬物および前記シクロデキストリンが溶解すると、乳状懸濁液は、実質的に透明な溶液になる。薬物/シクロデキストリン複合体微粒子を含む微粒子懸濁液を生成するのに十分な速度で、得られた溶液を冷却する。
【0033】
別の方法では、水性点眼剤媒体に、活性剤、少なくとも1つのシクロデキストリン、および少なくとも1つのポリマーを懸濁して、乳状の外観を有する懸濁液を提供する。分解生成物および/または副生成物が形成されず、前記薬物、前記シクロデキストリン、および前記ポリマーが水性点眼液に溶解または実質的に溶解するまで、十分な温度で、十分な時間、前記懸濁液を加熱する。前記薬物、前記シクロデキストリン、および前記ポリマーが溶解すると、乳状懸濁液は実質的に透明な溶液になる。薬物/シクロデキストリン/ポリマー複合体微粒子を含む微粒子懸濁液を生成するのに十分な速度で、得られた溶液を冷却する。
【0034】
さらなる方法では、水性点眼剤媒体に、少なくとも1つのシクロデキストリンを懸濁して、乳状の外観を有する懸濁液を提供する。分解および/または副生成物が形成されず、前記シクロデキストリンが水性点眼液に溶解(または実質的に溶解する)まで、十分な温度で、十分な時間、前記懸濁液を加熱する。前記シクロデキストリンが溶解すると、乳状懸濁液は実質的に透明な溶液になる。薬物が溶液中に溶解または実質的に溶解するまで、溶液を撹拌しながら、活性剤を加熱された水性懸濁液に添加する。薬物/シクロデキストリン複合体微粒子を含む微粒子懸濁液を生成するのに十分な速度で、得られた溶液を冷却する。
【0035】
さらに別の方法では、水性点眼剤媒体に、シクロデキストリンおよび少なくとも1つのポリマーを懸濁して、乳状の外観を有する懸濁液を提供する。分解生成物または実質分解生成物および/または副生成物が形成されず、前記シクロデキストリンおよび前記ポリマーが水性点眼液に溶解または実質的に溶解するまで、十分な温度で、十分な時間、前記懸濁液を加熱する。前記シクロデキストリンおよび前記ポリマーが溶解すると、乳状懸濁液は実質的に透明な溶液になる。薬物が溶液に溶解するまで、溶液を撹拌しながら、活性剤を加熱された水性懸濁液に添加する。薬物/シクロデキストリン/ポリマー複合体微粒子を含む微粒子懸濁液を生成するのに十分な速度で、得られた溶液を冷却する。
【0036】
さらに別の方法では、水または水性点眼剤媒体に、少なくとも1つのシクロデキストリンを懸濁して、乳状の外観を有する懸濁液を提供する。別で、水またはシクロデキストリンを含まない水性点眼剤媒体に、薬物を懸濁して、乳状を有する懸濁液を提供する。2つの懸濁液を、例えば、オートクレーブ中、121℃で20分間加熱することによって滅菌する。次いで、2つの懸濁液または高温の溶液を約95℃に冷却した後、混合して、分解生成物または実質的な分解生成物および/または副生成物は形成されない、実質的に透明な溶液を形成する。薬物/シクロデキストリン複合体微粒子を含む微粒子懸濁液を生成するのに十分な速度で、得られた溶液を冷却する。
【0037】
非限定的な実施形態では、水または水性点眼剤媒体に、少なくとも1つのシクロデキストリンを懸濁して、乳状の外観を有する懸濁液を提供する。別に、水またはシクロデキストリンを含まない点眼剤ビヒクルに、活性医薬成分を懸濁して、乳状の外観を有する懸濁液を提供する。2つの懸濁液を、例えば、オートクレーブ中、121℃で20分間加熱することによって加熱または滅菌する。次いで、2つの懸濁液または高温の溶液を一緒に混合し、温度を約90℃~約95℃に調節して、分解生成物または実質的な分解生成物および/または副生成物を形成しない、実質的に透明な溶液を形成する。薬物/シクロデキストリン複合体微粒子を含む微粒子懸濁液を生成するのに十分な速度で、得られた溶液を冷却する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
本開示のこれらおよび他の特徴はここで、特定の実施形態の図面を参照して説明される。これは、本開示を例示することを意図し、本開示を限定することを意図しない。
図1図1は、天然のα-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、およびγ-シクロデキストリンの構造を示す。
図2図2は、活性医薬成分(デキサメタゾン)溶解性に対する、γ-シクロデキストリンの自己凝集の影響を示す。水性点眼剤中のデキサメタゾンと天然γ‐シクロデキストリン(γ-シクロデキストリン)の相溶解度プロファイル。実線は活性医薬成分の溶解度(●)であり、破線はγ-シクロデキストリンの溶解度(○)であり、直線は、水性点眼剤中に溶解したγ-シクロデキストリンの理論量である。塩化ベンザルコニウム(0.02%w/v)、エデト酸ナトリウム(0.1%w/v)および生理食塩水を得るのに十分な塩化ナトリウムを含む眼科的に許容可能な溶媒中に、0~20%(w/v)のγ-シクロデキストリンを含む溶液に、過剰量のデキサメタゾンを添加した。
【0039】
従って、溶液中に溶解した薬物の量は、3%(w/v)を超えるγ-シクロデキストリン濃度で一定である。溶液中に溶解したγ-シクロデキストリンの量は、溶媒に添加されるγ-シクロデキストリンの量よりもゆっくりと増加し、変化は10%(w/v)以降にのみ直線的になる。これは、約3~10%(w/v)の間のγ-シクロデキストリン濃度で、溶媒に添加された全てのγ-シクロデキストリンが薬物と固体複合体を形成し、沈殿することを示す。10%(w/v)を超えるγ-シクロデキストリン濃度では、溶解したγ-シクロデキストリンの量は再び直線的な増加を示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
例示的な実施形態のさらなる態様、特徴、および利点は、以下の具体的な説明から明らかになるであろう。
【0041】
本明細書で言及される特許、公開された出願、および科学文献は当業者の知識を確立するものであり、それぞれが、参照により援用されることが具体的かつ個別に示されているかのような範囲で、その全体が、本明細書において参照により援用される。本明細書において引用される参照と本明細書の特定の教示との間のいかなる矛盾も、後者に有利に解決されるものとする。同様に、単語または語句の技術的に理解された定義と本明細書で特に教示される単語または語句の定義との間のいかなる矛盾も、後者に有利に解決されるものとする。
【0042】
本明細書で使用されるように、移行句または請求項中において、「~を含む」および「~を含んでいる」との用語は、オープンエンドの意味を有すると解釈されるべきである。すなわち、前記用語は、「少なくとも~を有している」または「少なくとも~を含んでいる」との用語と同義に解釈されるべきである。方法の文脈で使用される場合、「~を含んでいる」との用語は、方法が少なくとも列挙された工程を含むことを意味するが、追加の工程を含んでもよい。組成物の文脈で使用される場合、「~を含んでいる」との用語は、組成物が少なくとも列挙された特徴または構成要素を含むことを意味するが、追加の特徴または構成要素もまた含んでもよい。
【0043】
「実質的に~からなる」または「実質的に~からなる」は部分的にクローズドな意味を有する。すなわち、これらは、方法または組成物の本質的な特性を実質的に変化させる工程または特徴または構成要素(例えば、本明細書に記載される化合物または組成物の所望の特性を著しく妨害する工程または特徴または構成要素)の包含を認めない、すなわち、方法または組成物は、特定の工程または材料、および方法または組成物の基本的かつ新規な特性に実質的に影響を及ぼさないものに限定される。
【0044】
「~から成る」および「~から成る」との用語は、クローズドな用語であり、列挙された工程または特徴または構成要素の包含のみを認める。
【0045】
本明細書で使用されるように、単数形「a」、「an」および「the」はまた、文脈中で別段明示されない限り、具体的にはそれらが言及する用語の複数形を包含する。
【0046】
「約」との用語は、おおよそ、~の領域、概ね、または~あたりを意味するために本明細書において使用される。「約」との用語が数値範囲と共に使用される場合、それは、記載された数値の上下の境界を拡張することでその数値範囲を緩和する。一般に、「約」または「およそ」との用語は、記載された値の上下の数値を、分散の20%だけ緩和するために、本明細書において使用される。
【0047】
「溶解した」または「実質的に溶解した」との用語は、溶液中での固体の可溶化を意味するために、本明細書において使用される。得られた溶液が透明または実質的に透明である場合、固体は溶液中に「溶解した」または「実質的に溶解した」とみなすことができる。
【0048】
「透明な」との用語は、半透明またはやや半透明(subtranslucent)の溶液を意味するために、本明細書において使用される。したがって、「透明な」溶液は、ISO規格に従って測定された濁度が100比濁法濁度単位(NTU)以下、好ましくは50NTU以下である。
【0049】
「実質的に透明な」との用語は、半透明またはやや半透明の溶液を意味するために、本明細書において使用される。したがって、「実質的に透明な」溶液は、ISO規格に従って測定された濁度が100比濁法濁度単位(NTU)以下である。
【0050】
本明細書で使用されるように、「濁った」または「実質的に濁った」との用語は、ISO規格に従って測定された濁度が100NTUを超える溶液を表す。
【0051】
本明細書で使用されるように、「乳状」または「実質的に乳状」との用語は、ISO規格に従って測定された濁度が100NTUを超える、好ましくは200NTUを超える溶液を表す。
【0052】
本明細書で使用されるように、変数の数値範囲の列挙は、変数がその範囲内の任意の値に等しくなり得ることを伝えることを意図している。したがって、本質的に離散的である変数については、変数は、範囲の終点を含む数値範囲の任意の整数値に等しくすることができる。同様に、本質的に連続的な変数については、変数は、範囲の終点を含む数値範囲の任意の実数値に等しくすることができる。一例として、0と2の間の値を有するものとして説明される変数は、本質的に離散的である変数として0、1、または2であり得、本質的に連続的である変数として0.0、0.1、0.01、0.001、または他の任意の実数値であり得る。
【0053】
明細書および請求項において、文脈において別段明示されない限り、単数形は、複数の対象を含む。本明細書で使用されるように、特に示されない限り、「または」との用語は、「および/または」を「含む」という意味で使用され、「いずれか/または」を「除いた」という意味では使用されない。
【0054】
本明細書で使用される技術用語および科学用語は、他に定義されない限り、本明細書が関係する技術分野の当業者によって一般に理解される意味を有する。本明細書では、当業者に知られている様々な方法論および材料を参照する。薬理学および薬学の一般原則を記載する標準的な参考文献としては、Goodman and Gilman's The Pharmacological Basis of Therapeutics, 10thEd., McGraw Hill Companies Inc., New York (2001) and Remington, The Science and Practice of Pharmacy, 22nd Ed., Philadelphia (2013)を含む。
【0055】
本明細書で使用されるように、「組成物の体積に対する化合物Xの重量%」は、「%w/v」とも略され、組成物100mLに導入される化合物Xの量(グラム)に対応する。
【0056】
本明細書で使用されるように、「微粒子」との用語は、1μm以上約200μmまでの直径D50を有する粒子を表す。「ナノ粒子」との用語は、1μm未満の直径D50を有する粒子を表す。
【0057】
例示的な実施形態において、D50であり得る直径は、1μm以上約200μmまでであり、「ナノ粒子」との用語は、約1μm未満のD50を有する粒子を表す。
【0058】
本明細書で使用されるように、「眼の状態」は、眼、眼の一部または領域のうちの1つ、または涙腺などの周囲組織に影響を及ぼすか、または関与する、疾患、病気、または他の状態である。大まかに言えば、眼は、眼球および眼球を構成する組織および流体、眼周囲筋(斜筋および直筋など)、眼球内または眼球に隣接する視神経の部分、ならびに涙腺および眼瞼などの周囲組織を含む。
【0059】
本明細書で使用されるように、「前眼部状態」は、眼周囲筋、眼瞼、涙腺、または水晶体のうもしくは毛様体筋の後壁の正面に位置する眼球組織もしくは流体などの、前眼部(すなわち、眼の正面)の領域もしくは部位に影響を及ぼすか、またはそれに関与する、疾患、病気、または状態である。
【0060】
したがって、前眼部状態は主に、結膜、角膜、前眼房、虹彩、水晶体、または水晶体のう、ならびに前眼部の領域または部位に新生するまたは分布する血管および神経、のうちの1つ以上に影響を及ぼすか、または関与する。本明細書では、前眼部状態はまた、涙器までおよぶものとしてみなされる。特に、涙を分泌する涙腺、および涙液を眼の表面に運ぶ涙腺の排出管である。
【0061】
さらに、前眼部状態は、網膜の後方であるが水晶体のうの後壁の前方にある後眼房に影響を及ぼすか、またはそれに関与する。
【0062】
「後眼部状態」は、脈絡膜または強膜、硝子体、硝子体房、網膜、視神経(すなわち、視神経乳頭)、ならびに後眼部の領域または部位に新生するまたは分布する血管および神経などの、後眼部の領域または部位(水晶体のうの後壁を通る面の後方位置)に主に影響を及ぼすかまたは関与する、疾患、病気または状態である。
【0063】
したがって、後眼部状態は、例えば、黄斑変性(非滲出性加齢黄斑変性および滲出性加齢黄斑変性など);脈絡膜血管新生;急性黄斑神経網膜症;黄斑浮腫(のう胞様黄斑浮腫および糖尿病性黄斑浮腫など);ベーチェット病;網膜障害、糖尿病性網膜症(増殖性糖尿病性網膜症を含む);網膜動脈閉塞症;網膜中心静脈閉塞症;ブドウ膜炎の網膜疾患(uveitic retinal disease);網膜剥離;後眼部に影響を及ぼす眼外傷;眼のレーザー治療によって引き起こされたまたは影響を受けた後眼部状態;光線力学療法によって引き起こされたまたは影響を受けた後眼部状態;光凝固;放射線網膜症;網膜上膜障害;網膜静脈分岐閉塞症;前眼部虚血性視神経障害、非網膜症糖尿病性網膜機能障害、網膜色素変性症および緑内障などの疾患、病気または状態を含む。緑内障は、治療目的が網膜細胞もしくは視神経細胞への損傷または網膜細胞もしくは視神経細胞の喪失に起因する視力の喪失の発生を予防するか、または低減させること(すなわち、神経保護)であるため、後眼部状態とみなすことができる。
【0064】
前眼部状態は、例えば、無水晶体;偽水晶体;乱視;眼けん痙攣;白内障;結膜疾患;結膜炎;角膜疾患;角膜潰瘍;ドライアイ症候群;眼瞼疾患;涙器疾患;涙管閉塞;近視;老視;瞳孔障害;屈折障害および斜視などの疾患、病気または状態を含む。緑内障治療の臨床的目的は、眼の前房内の水性流体の圧力亢進を低減すること(すなわち、眼圧を低減すること)であり得るため、緑内障は、前眼部状態であるとみなすこともできる。
【0065】
本明細書は、眼への局所的薬物送達のための眼科用組成物、ならびに前眼部状態もしくは後眼部状態、または前眼部状態および後眼部状態の両方として特徴付けられ得る眼の状態の治療のための方法に関する。
【0066】
[シクロデキストリンおよび活性医薬成分の固体複合体]
本開示の組成物は、活性医薬成分およびシクロデキストリンを含む固体複合体を含む。活性医薬成分およびシクロデキストリンを含む複合体は、「活性医薬成分/シクロデキストリン複合体」または「薬物/シクロデキストリン複合体」を表し得る。前記活性医薬成分がデキサメタゾンであり、前記シクロデキストリンがγ-シクロデキストリンである場合、デキサメタゾンおよびγ-シクロデキストリンを含む複合体は、「デキサメタゾン/γ-シクロデキストリン複合体」として表してもよい。
【0067】
本開示の組成物の固体複合体は、複合凝集体であってもよい。複合凝集体は複数の複合体、特に、活性医薬成分およびシクロデキストリンを含む複数の包接体に対応し得る。
【0068】
一実施形態によれば、本開示の眼科用組成物は、微粒子懸濁液である。「微粒子懸濁液」との用語は、液相中に懸濁された固体複合微粒子を含む組成物を意味することを意図する。
【0069】
特に、本開示の眼科用組成物は、約100μm未満、特に約1μm~約100μmの直径D50を有する固体複合体を含む。一実施形態において、直径D50が約1μm~約25μm、特に約1μm~約20μm、より具体的には約1μm~約10μm、さらに具体的には約2μm~約10μm、さらにより具体的には約2μm~約5μm、または約3μm~約8μmの範囲であってもよい。直径D50は、本明細書に記載の試験方法に従って測定することができる。
【0070】
欧州薬局方(01/2008:1163)は懸濁液の形態の点眼剤が以下に従うべきであることを教示している:各10μgの固体活性物質に対して、約20個以下の粒子が約25μmを超える最大寸法を有し、これらの粒子のうち約2個以下が約50μmを超える最大寸法を有する。粒子のいずれも、約90μmを超える最大寸法を有することはできない。本開示の組成物は、欧州薬局方(01/2008:1163)の要件に準拠する。
【0071】
一般に、水性点眼剤懸濁液中の粒径は、眼の刺激を防止するために、最小限、好ましくは約10μm未満に維持されることが推奨される。さらに、水性懸濁液中の沈降速度は、粒子直径に比例し、他の全ての因子が一定のままであると仮定すると、大きな粒子の沈降速度は、小粒子の沈降速度よりも速い。
【0072】
[シクロデキストリン]
本開示の組成物は、シクロデキストリンを含む。本開示の組成物は、シクロデキストリンの混合物を含んでいてもよい。
【0073】
シクロアミロースとしても知られているシクロデキストリンは、デンプンの酵素変換から生成される。これらは、内側が疎水性であり、外側が親水性である環状構造を有する。環の両親媒性の性質のために、シクロデキストリンは、疎水性化合物の溶解度および生物学的利用能を高めることが知られている。
【0074】
図1に示すように、シクロデキストリンは、α-1,4-グリコシド結合を介して結合された6(α-シクロデキストリン)、7(β-シクロデキストリン)、および8(γ-シクロデキストリン)グルコピラノースモノマーを含む環状オリゴ糖である。α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリンおよびγ-シクロデキストリンは、デンプンの微生物分解によって形成される天然産物である。ドーナツ形状のシクロデキストリン分子の外面は親水性であり、多数のヒドロキシル基を有するが、ドーナツ形状のシクロデキストリン分子の中心の孔はいくらか親油性である(Kurkov, S.V., Loftsson, T., 2013. Cyclodextrins. Int J Pharm 453, 167-180; Loftsson, T., Brewster, M.E., 1996. Pharmaceutical applications of cyclodextrins. 1. Drug solubilization and stabilization. Journal of Pharmaceutical Sciences 85, 1017-1025)。3つの天然シクロデキストリンに加えて、多数の水溶性のシクロデキストリン誘導体が合成され、シクロデキストリンポリマーを含む薬物担体として試験されている(Stella, V.J., He, Q., 2008. Cyclodextrins. Tox. Pathol. 36, 30-42)。
【0075】
シクロデキストリンは、疎水性化合物の溶解度および生物学的利用能を高める。水性溶液中において、シクロデキストリンは、中心の孔に薬物分子、またはより頻繁には分子のいくつかの親油性部分を取り込むことによって、多くの薬物と包接体を形成する。この特性は、薬物製剤および薬物送達目的のために使用されてきた。薬物-シクロデキストリン包接体の形成、薬物の物理化学的特性に対するそれらの効果、生体膜を透過する薬物の能力に対するそれらの効果、および医薬製品におけるシクロデキストリンの使用について再考されている(Loftsson, T., Brewster, M.E., 2010. Pharmaceutical applications of cyclodextrins: basic science and product development. Journal of Pharmacy and Pharmacology 62, 1607-1621; Loftsson, T., Brewster, M.E., 2011. Pharmaceutical applications of cyclodextrins: effects on drug permeation through biological membranes." J. Pharm. Pharmacol. 63, 1119-1135; Loftsson, T., Jarvinen, T., 1999. Cyclodextrins in ophthalmic drug delivery. Advanced Drug Delivery Reviews 36, 59-79)。
【0076】
シクロデキストリンおよび薬物/シクロデキストリン複合体は水性溶液中で自己集合して、ナノおよびマイクロ大きさの凝集体およびミセル様構造を形成することができ、それらはまた、非包接体形成およびミセル様可溶化によって、難溶性の活性医薬品成分を可溶化することができる(Messner, M., Kurkov, S.V., Jansook, P., Loftsson, T., 2010. Self-assembled cyclodextrin aggregates and nanoparticles. Int J Pharm 387, 199-208)。一般に、薬物-シクロデキストリン複合体の形成時に、シクロデキストリンが自己集合し、凝集体を形成する傾向が高まり、活性医薬成分/シクロデキストリン複合体の濃度が増加することにつれて凝集体が増加する。一般に、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンおよび2-ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリンなどの親水性シクロデキストリン誘導体およびそれらの複合体は、水に自由に溶解する。一方、天然のα-シクロデキストリン、β-シクロデキストリンおよびγ-シクロデキストリンならびにそれらの複合体は、25°Cで、純水またはそれぞれ129.5±0.7、18.4±0.2および249.2±0.2mg/mlという限られた溶解度を有するSabadini E., Cosgrovea T. and do Carmo Egidio F., 2006. Solubility of cyclomaltooligosaccharides (cyclodextrins) in H2O and D2O: a comparative study. Carbohydr Res 341, 270-274)。それらの溶解度は、温度の上昇と共にいくらか増加することが知られている(Jozwiakowski, M. J., Connors, K. A., 1985. Aqueous solubility behavior of three cyclodextrins. Carbohydr. Res., 143, 51-59)。天然のシクロデキストリンの複合体は、その限られた溶解度のために、B型またはB型の相溶解度図を示すことが最も多い(Brewster M. E., Loftsson T., 2007, Cyclodextrins as pharmaceutical solubilizers. Adv. Drug Deliv. Rev., 59, 645-666)。天然シクロデキストリンの溶解度は、活性医薬成分/シクロデキストリン複合体の形成時に、純水におけるそれらの溶解度未満に低下し得ることが観察されている(図2)(Jansook, P., Moya-Ortega, M.D., Loftsson, T., 2010. Effect of self-aggregation of γ-cyclodextrin on drug solubilization. Journal of Inclusion Phenomena and Macrocyclic Chemistry 68, 229-236)。低濃度の、溶解した活性医薬成分/シクロデキストリン複合体は、活性医薬成分/シクロデキストリン複合体を含むナノ粒子および微粒子の形成を妨げる。さらに、ナノ懸濁液および他懸濁液を安定化するために使用される水溶性ポリマーなどの他の賦形剤は、シクロデキストリンと複合体を形成し得、したがって、活性医薬成分/シクロデキストリン複合体の形成をさらに妨げ得る。
【0077】
以前に、出願人は、シクロデキストリンナノ粒子中に、デキサメタゾンを含むシクロデキストリン系の点眼剤の製造および試験(Johannesson, G., Moya-Ortega, M.D., Asgrimsdottir, G.M., Lund, S.H., Thorsteinsdottir, M., Loftsson, T., Stefansson, E., 2014. Kinetics of γ-cyclodextrin nanoparticle suspension eye drops in tear fluid. Acta Ophthalmologica 92, 550-556; Thorsteinn Loftsson and Einar Stefansson, Cyclodextrin nanotechnology for ophthalmic drug delivery, US Pat. No. 7,893,040 (Feb. 22, 2011); Thorsteinn Loftsson and Einar Stefansson, Cyclodextrin nanotechnology for ophthalmic drug delivery, US Pat. No. 8,633,172 (Jan. 21, 2014); Thorsteinn Loftsson and Einar Stefansson, Cyclodextrin nanotechnology for ophthalmic drug delivery US Pat. No. 8,999,953 (Apr. 7, 2015))、ドルゾラミドを含むシクロデキストリン系の点眼剤の製造および試験(Johannesson, G., Moya-Ortega, M.D., Asgrimsdottir, G.M., Lund, S.H., Thorsteinsdottir, M., Loftsson, T., Stefansson, E., 2014. Kinetics of γ-cyclodextrin nanoparticle suspension eye drops in tear fluid. Acta Ophthalmologica 92, 550-556; Gudmundsdottir, B.S., Petursdottir, D., Asgrimsdottir, G.M., Gottfredsdottir, M.S., Hardarson, S.H., Johannesson, G., Kurkov, S.V., Jansook, P., Loftsson, T., Stefansson, E., 2014. γ-Cyclodextrin nanoparticle eye drops with dorzolamide: effect on intraocular pressure in man. J. Ocul. Pharmacol. Ther. 30, 35-41)、イルベサルタンを含むシクロデキストリン系の点眼剤の製造および試験(Muankaew, C., Jansook, P., Stefansson, E., Loftsson, T., 2014. Effect of γ-cyclodextrin on solubilization and complexation of irbesartan: influence of pH and excipients. Int J Pharm 474, 80-90)、テルミサルタンを含むシクロデキストリン系の点眼剤の製造および試験(C. Muankaew, P. Jansook, H. H. Sigurthsson, T. Loftsson, 2016, Cyclodextrin-based telmisartan ophthalmic suspension: Formulation development for water-insoluble drugs. Int. J. Pharm. 507, 21-31)、シクロスポリンAを含むシクロデキストリン系の点眼剤の製造および試験(S. Johannsdottir, P. Jansook, E. Stefansson, T. Loftsson, 2015, Development of a cyclodextrin-based aqueous cyclosporin A eye drop formulation. Int. J. Pharm. 493(1-2), 86-95)を記載している。これらの研究は、ナノ粒子が、眼表面との薬物接触時間および薬物の眼への生物学的利用能を増加させることを示している。活性医薬成分-シクロデキストリンナノ粒子および微粒子は、眼の表面上に保持されるだけでなく、水性涙液中の薬物溶解度も高める。活性医薬成分/γ-シクロデキストリン複合体から構成されるナノ粒子および微粒子は、眼への活性医薬成分の局所的送達のための特に有効な薬物担体であることが示されている。
【0078】
ナノ粒子およびミクロ粒子の製造ならびにナノ構造およびミクロ構造の作製には、トップダウンアプローチおよびボトムアップアプローチという2つのアプローチがある。活性医薬成分-シクロデキストリンナノ粒子および微粒子の製造のためのトップダウンアプローチは、典型的には活性医薬成分/シクロデキストリン固形複合体の粉砕を含み、所望の直径のナノ粒子および微粒子を生成する。トップダウンアプローチは、表面欠陥および汚染を引き起こし得る。活性医薬成分-シクロデキストリンナノ粒子の製造のためのボトムアップアプローチは、単一分子または単一活性医薬成分/シクロデキストリン複合体を所望の直径の微粒子に集合させることを意味する。ボトムアップアプローチは、欠陥が少なく、化学組成がより均一な微粒子構造をもたらすことが多い。
【0079】
出願人は驚くべきことに、安定化ポリマーの存在の有無にかかわらず達成することができる薬物-シクロデキストリンナノ粒子のボトムアップ製造を発見した。請求項の方法によれば、薬物およびシクロデキストリンを、水性点眼剤などの水性溶媒中に懸濁し、加熱する。高温において、活性化合物ならびにシクロデキストリンおよび他の医薬賦形剤を、水性溶媒中に完全にまたはほぼ完全に溶解させる。薬物/シクロデキストリン複合体および賦形剤/シクロデキストリン複合体の濃度は、室温におけるものよりもはるかに低い。次いで、この高温の溶液を所定の速度で冷却して、薬物/シクロデキストリン複合体から構成される約100μm未満の直径を有する粒子の形成を、促進する。粒子の直径は、加熱および冷却サイクル、および水性溶媒中の安定化ポリマーの存在によっても制御することができる。薬物および/または賦形剤の分解を防ぐか、または実質的に阻害するか、または低減するために、溶媒を過度に加熱することを回避し、その後、比較的急速に室温まで冷却する。
【0080】
制御された加熱/冷却条件下において、分解生成物の形成、または沈降を制限するために、シクロデキストリンを含む水性溶液を、ある温度および持続時間で加熱する。最初の水性溶液は、場合により、活性薬物および/または安定化ポリマーをさらに含む。加熱サイクルの間、最初の乳白色シクロデキストリン溶液を、透明な溶液に変換する。加熱は、当業者に知られている任意の方式または手段によって達成される。好ましい実施形態において、加熱は、オートクレーブを用いて達成される。例えば、オートクレーブは、約90℃~約120℃の温度で、約20~約30分間のサイクルで行われる。
【0081】
例示的な実施形態では、制御された加熱/冷却条件下において、分解生成物の形成または沈降を制限するために、シクロデキストリンを含む水性溶液を、ある温度および持続時間で加熱する。最初の水性溶液は、場合により、活性医薬成分および/または安定化ポリマーをさらに含む。加熱サイクルの間、最初の乳白色シクロデキストリン溶液を、透明な溶液に変換する。加熱は、当業者に知られている任意の方法または手段によって達成される。好ましい実施形態において、加熱は、オートクレーブまたは蒸気を用いたジャケット付き反応器で達成される。例えば、オートクレーブは、約121℃の温度で、約10~約30分間のサイクルで行われる。
【0082】
次いで、加熱された水性溶液を、約100μm未満の直径を有する薬物/シクロデキストリン複合体を生成するのに十分な速度で冷却する。冷却時には、薬物/シクロデキストリン複合体が沈殿して、所望の微粒子懸濁液を形成する。微粒子懸濁液は、微粒子中に約70%~約99%の薬物を含み、ナノ粒子点眼剤ビヒクル中に約1%~約30%の薬物を含む。微粒子は、約1μm~約100μmの平均直径を有する。微粒子の平均直径は、約1μm~約20μm、約1μm~約25μm、約1μm~約10μm、または約2μm~約5μmの範囲であってもよい。例示的な実施形態において、微粒子懸濁液は、約80%の薬物が約1μm~約10μmの平均直径を有する微粒子中に存在し、約20%の薬物がナノ粒子中に存在する。
【0083】
一実施形態において、次いで、加熱された溶液を、約100μm未満の直径を有する薬物/シクロデキストリン複合凝集体を生成するのに十分な速度で冷却する。冷却時には、薬物/シクロデキストリン複合体が沈殿して、所望の微粒子懸濁液を形成する。微粒子懸濁液は、微粒子中に約40%~約99%の薬物を含み、ナノ粒子または水溶性薬物-シクロデキストリン複合体中に約1%~約60%の薬物を含む。微粒子は、約1μm~約100μmの平均直径を有する。微粒子の平均直径は、約1μm~約20μm、約1μm~約25μm、約1μm~約10μm、または約2μm~約5μmの範囲であってもよい。例示的な実施形態では、微粒子懸濁液は、約80%の薬物が約1μm~約10μmの平均直径を有する微粒子中に存在し、約20%の薬物がナノ粒子中に存在する。
【0084】
公知の方法に従って製造される、水溶性ナノ粒子、個々の薬物/シクロデキストリン複合体、および溶解した薬物分子の形態の微粒子懸濁液と比較した場合、請求項の手順に従って製造される微粒子懸濁液は、溶解した活性薬物濃度が約10倍~100倍増加する。例えば、既知のデキサメタゾン組成物は、約1mg/mLのデキサメタゾン濃度を含む場合、0.1mg/mLのみが溶液中に存在する。しかしながら、請求項の方法に従って製造されるデキサメタゾン-シクロデキストリン組成物は、約15mg/mLのデキサメタゾン濃度を含む場合、約4mg/mLが水性溶液中に存在し得る。
【0085】
好ましい実施形態において、シクロデキストリンがα-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、またはそれらの組合せである。
【0086】
特に好ましい実施形態において、シクロデキストリンは、γ-シクロデキストリンである。実際、γ-シクロデキストリンは、α-シクロデキストリンおよびβ-シクロデキストリンの溶解度と比較して、水中でより高い溶解度を有する。さらに、γ-シクロデキストリンは、涙液および胃腸管においてα-アミラーゼによりグルコースおよびマルトースサブユニットに加水分解されやすい。
【0087】
本開示の眼科用組成物中のシクロデキストリンの量は、組成物の体積に対して、1~25重量%、特に5~20重量%、より具体的には10~18重量%、さらに具体的には12~16重量%であり得る。
【0088】
シクロデキストリンに加えて、本開示の眼科用組成物は、2-ヒドロキシプロピル-α-シクロデキストリン、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、2-ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン、スルホブチルエーテルα-シクロデキストリン、スルホブチルエーテルβ-シクロデキストリン、スルホブチルエーテルγ-シクロデキストリン、メチル化α-シクロデキストリン、メチル化β-シクロデキストリン、メチル化γ-シクロデキストリン、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、水溶性シクロデキストリン誘導体をさらに含む。具体的には、活性医薬成分の溶解度、すなわち、組成物中に溶解される活性医薬成分の量をさらに高めるために、水溶性のシクロデキストリン誘導体が使用されてもよい。
【0089】
[医薬品有効成分]
本開示の組成物は、活性医薬成分を含む。
【0090】
活性医薬成分は、「薬物」と表されてもよい。本開示の文脈において、活性医薬成分は、眼科用薬物、すなわち、眼の状態に罹患している患者に十分な量で投与された場合に治療効果を示す化合物である。
【0091】
特に、眼科用組成物は、デキサメタゾン、ジフルプレドナート、エストラジオール、フルオシノロン、フルオロメトロン、ヒドロコルチゾン、ロテプレドノールエタボネート、プレドニゾロン、トリアムシノロンおよびリメキソロンなどのステロイド;アキシチニブ、BMS-794833(N-(4-((2-アミノ-3-クロロピリジン-4-イル)オキシ)-3-フルオロフェニル)-5-(4-フルオロフェニル)-4-オキソ-1,4-ジヒドロピリジン-3-カルボキサミド)、カルボザンチニブ、セジラニブ、クリゾチニブ、ダサチニブ、ドビチニブ、エベロリムス、ラパチニブ、レンバチニブ、モテサニブ、ニロチニブ、ニンテダニブ、オランチニブ、PD173074(N-[2-[[4-(ジエチルアミノ)ブチル]アミノ]-6-(3,5-ジメトキシフェニル)ピリド[2,3-d]ピリミジン-7-イル]-N’-(1,1-ジメチルエチル)ウレア)、パゾパニブ、レゴラフェニブ、ルキソリチニブ、ソラフェニブ、スニチニブ、テムシロリムス、トファシチニブ、バンデタニブ、ベムラフェニブ、およびZM323881(5-((7-ベンジルオキシキナゾリン-4-イル)アミノ)-4-フルオロ-2-メチルフェノール)などのキナーゼ阻害剤;カンデサルタン、イルベサルタン、ロサルタン、オルメサルタン、テルミサルタンおよびバルサルタンなどのアンジオテンシンII受容体拮抗剤;2-メチルソルビノールなどのアルドースレダクターゼ阻害剤;シロリムスなどの免疫抑制剤;アセタゾラミド、ブリンゾラミド、ドルゾラミド、エトキスゾラミド、およびメタゾラミドなどの炭酸脱水酵素阻害剤;アシクロビル、クロラムフェニコール、クロルテトラサイクリン、シプロフロキサシン、フシジン酸、ガンシクロビル、ノルフロキサシン、オフロキサシン、テトラサイクリンおよびジドブジンなどの抗菌剤または抗ウイルス剤;レボカバスチンなどの抗ヒスタミン剤;およびブロムフェナク、ジクロフェナク、インドメタシンおよびネパフェナクなどの非ステロイド抗炎症活性医薬成分;ならびにこれらの組み合わせからなる群から選択される、活性医薬成分を含んでいてもよい。
【0092】
例示的な実施形態において、ナノ粒子および微粒子中で使用するための活性薬物は、限定されないが、デキサメタゾン、ジフルプレドナート、エストラジオール、フルオシノロン、フルオロメトロン、ヒドロコルチゾン、ロテプレドノールエタボネート、プレドニゾロン、トリアムシノロンおよびリメキソロンなどのステロイド;アキシチニブ、BMS-794833(N-(4-((2-アミノ-3-クロロピリジン-4-イル)オキシ)-3-フルオロフェニル)-5-(4-フルオロフェニル)-4-オキソ-1,4-ジヒドロピリジン-3-カルボキサミド)、カルボザンチニブ、セジラニブ、ドビチニブ、ラパチニブ、レンバチニブ、モテサニブ、ニロチニブ、ニンテダニブ、オランチニブ、PD173074(N-[2-[[4-(ジエチルアミノ)ブチル]アミノ]-6-(3,5-ジメトキシフェニル)ピリド[2,3-d]ピリミジン-7-イル]-N’-(1,1-ジメチルエチル)ウレア)、パゾパニブ、レゴラフェニブ、ルキソリチニブ、ソラフェニブ、スニチニブ、テムシロリムス、トファシチニブ、バンデタニブ、ベムラフェニブ、およびZM323881(5-((7-ベンジルオキシキナゾリン-4-イル)アミノ)-4-フルオロ-2-メチルフェノール)などのキナーゼ阻害剤;カンデサルタン、イルベサルタン、ロサルタン、オルメサルタン、テルミサルタンおよびバルサルタンなどのアンジオテンシンII受容体拮抗剤;2-メチルソルビノールなどのアルドースレダクターゼ阻害剤;シロリムスなどの免疫抑制剤;アセタゾラミド、ブリンゾラミド、ドルゾラミド、エトキスゾラミド、およびメタゾラミドなどの炭酸脱水酵素阻害剤;アシクロビル、クロラムフェニコール、クロルテトラサイクリン、シプロフロキサシン、フシジン酸、ガンシクロビル、ノルフロキサシン、オフロキサシン、テトラサイクリンおよびジドブジンなどの抗菌剤および抗ウイルス剤;レボカバスチンなどの抗ヒスタミン剤;およびブロムフェナク、ジクロフェナク、インドメタシンおよびネパフェナクなどの非ステロイド抗炎症剤;またはこれらの組み合わせからなる群から選択され得る。
【0093】
好ましい実施形態によれば、眼科用組成物は、デキサメタゾン、アキシチニブ、セジラニブ、ドビチニブ、モテサニブ、パゾパニブ、レゴラフェニブ、ロサルタン、オルメサルタン、ドルゾラミド、ジクロフェナク、ネパフェナク、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される活性医薬成分を含む。より好ましくは、活性医薬成分は、デキサメタゾンである。
【0094】
本開示の眼科用組成物中の活性医薬成分の濃度は、約0.1mg/mL~約100mg/mL、特に約1mg/mL~約100mg/mL、特に約1mg/mL~約50mg/mL、より具体的には約1mg/mL~約20mg/mL、さらに具体的には約5mg/mL~約25mg/mL、さらにより具体的には約10mg/mL~約20mg/mLであってもよい。
【0095】
例示的な実施形態において、活性医薬成分(すなわち、薬物)は、約1mg/mL~約100mg/mLの濃度で最初の水性溶液中に存在する。さらに、最初の活性医薬成分濃度が約1mg/mL~約50mg/mLおよび約1mg/mL~約20mg/mLであるとき、所望の最終活性医薬成分/シクロデキストリン複合体濃度を得ることが可能である。
【0096】
他の例示的な実施形態において、活性医薬成分は、約0.01mg/mL~約10mg/mLの濃度で最初の水性溶液中に存在する。
【0097】
公知の方法に従って製造された組成物と比較した場合、本開示の組成物は、溶解された活性医薬成分濃度が約10倍~約100倍増加し得る。
【0098】
特に、組成物中の活性医薬成分の60~95重量%、より具体的には70~90重量%は、活性医薬成分およびシクロデキストリンの固体複合体の形態であってもよい。
【0099】
さらに具体的には、組成物中の活性医薬成分の5~40重量%、特に10~30重量%は、溶解した形態であってもよい。溶解した形態は、液相に溶解した非複合活性医薬成分、および液相に溶解した活性医薬成分およびシクロデキストリンの複合体、ならびに薬物/シクロデキストリン複合凝集体からなる水溶性ナノ粒子を含む。
【0100】
好ましくは、組成物中の活性医薬成分の0重量%~0.5重量%は、非複合固体の形態であってもよい。したがって、本開示の組成物は、活性医薬成分の非複合固体粒子を実質的に含まなくてもよい。
【0101】
一実施形態において、微粒子懸濁液は、微粒子中に活性医薬成分の約70%~約99%、およびナノ粒子中に活性医薬成分の約1%~約30%を含み得る。より具体的には、微粒子懸濁液は、約1μm~約10μmの直径を有する微粒子中に活性医薬成分の約80%、およびナノ粒子中に活性医薬成分の約20%を含み得る。
【0102】
別の実施形態において、微粒子懸濁液は、微粒子中に活性医薬成分の約40%~約99%、およびナノ粒子または水溶性活性医薬成分/シクロデキストリン複合体中に活性医薬成分の約1%~約60%を含み得る。特に、微粒子懸濁液は、約1μm~約10μmの直径を有する微粒子中に活性医薬成分の約80%~約90%、およびナノ粒子または水溶性活性医薬成分/シクロデキストリン複合体中に活性医薬成分の約10%~約20%を含み得る。
【0103】
[ポリマー]
本開示の組成物は、ポリマーをさらに含んでいてもよい。
【0104】
特に、前記ポリマーは、水溶性ポリマーであってもよい。さらに、前記ポリマーは、粘度増強ポリマーであってもよい。「粘度増強ポリマー」との用語は、液体の粘度を増加させるポリマーを意味することを意図する。ポリマーは、本開示の組成物の粘度を増加させる。粘度が増加することで、組成物の物理的安定性が高まる。したがって、組成物がポリマーを含む場合、固体複合体が沈降しにくい。ゆえに、ポリマーは、重合安定化剤とみなされてもよい。
【0105】
特に、ポリマーは、界面活性ポリマーであってもよい。「界面活性ポリマー」との用語は、界面活性剤特性を示すポリマーを意味することを意図する。界面活性ポリマーは例えば、親水性骨格ポリマーにグラフトされた疎水性鎖;疎水性骨格にグラフトされた親水性鎖;または交互の親水性および疎水性部分を含み得る。最初の2種類はグラフト共重合体と呼ばれ、3つ目の種類はブロック共重合体と呼ばれる。
【0106】
一実施形態において、本開示の眼科用組成物は、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル;ポリオキシエチレンアルキルエーテル;アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロースおよびヒドロキシアルキルアルキルセルロースなどのセルロース誘導体;カルボマー(例えば、カルボポル971およびカルボポル974など)などのカルボキシビニルポリマー;ポリビニルポリマー;ポリビニルアルコール;ポリビニルピロリドン;ポリオキシプロピレンおよびポリオキシエチレンの共重合体;チロキサポール;ならびにこれらの組み合わせからなる群から選択されるポリマーを含む。
【0107】
適切なポリマーの例としては、限定されないが、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレンヘキサデシルエーテル(例えば、セトマクロゴール1000)、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(例えば、Tween20およびTween80(ICI Specialty Chemicals));ポリエチレングリコール(例えば、Carbowax3550および934(Union Carbide))、ポリオキシエチレンステアレート、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、セルロース、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリオキサマー(例えば、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのブロック共重合体である、PluronicF68およびPluronicFI08);ポロキサミン(例えば、プロピレンオキシドおよびエチレンオキシドをエチレンジアミンへ逐次添加することで誘導される四官能性ブロック共重合体であるPoloxamine908としても知られる、Tetronic908(BASF Wyandotte Corporation, Parsippany, N.J.)、 Tetronic1508(T-1508)(BASF Wyandotte Corporation)、アルキルアリールポリエーテルスルホネートであるTritonsX-200(Rohm and Haas);PEG誘導リン脂質、PEG誘導コレステロール、PEG誘導コレステロール誘導体、PEG誘導ビタミンA、PEG誘導ビタミンE、ビニルピロリドンおよび酢酸ビニルのランダム共重合体、これらの組み合わせなどが挙げられる。
【0108】
本開示によるポリマーの具体的に好ましい例は、チロキサポールならびにポリオキシプロピレンおよびポリオキシエチレンの共重合体である。
【0109】
より具体的には、ポリオキシプロピレンおよびポリオキシエチレンの共重合体は、親水性ブロック-疎水性ブロック-親水性ブロック構成を含むトリブロック共重合体であってもよい。
【0110】
一実施形態において、本開示の組成物は、ポロキサマーであるポリマーを含む。ポロキサマーは、当技術分野で知られている任意の種類のポロキサマーを含むことができる。ポロキサマーとしては、ポロキサマー101、ポロキサマー105、ポロキサマー108、ポロキサマー122、ポロキサマー123、ポロキサマー124、ポロキサマー181、ポロキサマー182、ポロキサマー183、ポロキサマー184、ポロキサマー185、ポロキサマー188、ポロキサマー212、ポロキサマー215、ポロキサマー217、ポロキサマー231、ポロキサマー234、ポロキサマー235、ポロキサマー237、ポロキサマー238、ポロキサマー282、ポロキサマー284、ポロキサマー288、ポロキサマー331、ポロキサマー333、ポロキサマー334、ポロキサマー335、ポロキサマー338、ポロキサマー401、ポロキサマー402、ポロキサマー403、ポロキサマー407、ポロキサマー105ベンゾエート、ポロキサマー182ベンゾエートが挙げられる。ポロキサマーは、その商品名であるPluronic(例えば、Pluronic10R5、Pluronic17R2、Pluronic17R4、Pluronic25R2、Pluronic25R4、Pluronic31R1、PluronicF108、PluronicF108、PluronicF108、PlurF108NF、PluronicF127、PluronicF127NF、PluronicF127、PluronicF127、PluronicF38、PluronicF38、PluronicF68、PluronicF77、PluronicF87、PluronicF88、PluronicF98、PluronicL10、PluronicL101、PluronicL121、PluronicL31、PluronicL35、PluronicL43、PluronicL44、PluronicL61、PluronicL62LF、PluronicL62D、PluronicL64、PluronicL81、PluronicL92、PluronicL44、PluronicN3、PluronicP103、PluronicP104、PluronicP105、PluronicP123、PluronicP65、PluronicP84、PluronicP85、これらの組み合わせなど)とも称される。
【0111】
安定化剤として特に有用なポリマーは、ポロキサマーである。ポロキサマーは、当技術分野で知られている任意の種類のポロキサマーを含むことができる。ポロキサマーとしては、ポロキサマー101、ポロキサマー105、ポロキサマー108、ポロキサマー122、ポロキサマー123、ポロキサマー124、ポロキサマー181、ポロキサマー182、ポロキサマー183、ポロキサマー184、ポロキサマー185、ポロキサマー188、ポロキサマー212、ポロキサマー215、ポロキサマー217、ポロキサマー231、ポロキサマー234、ポロキサマー235、ポロキサマー237、ポロキサマー238、ポロキサマー282、ポロキサマー284、ポロキサマー288、ポロキサマー331、ポロキサマー333、ポロキサマー334、ポロキサマー335、ポロキサマー338、ポロキサマー401、ポロキサマー402、ポロキサマー403、ポロキサマー407、ポロキサマー105ベンゾエート、ポロキサマー182ベンゾエートが挙げられる。ポロキサマーは、その商品名であるPluronic(例えば、Pluronic10R5、Pluronic17R2、Pluronic17R4、Pluronic25R2、Pluronic25R4、Pluronic31R1、PluronicF108 Cast Solid Surfacta、PluronicF108NF、PluronicF108 Pastille、PlurF108NF Prill Poloxamer338、PluronicF127、PluronicF127NF、PluronicF127NF500 BHT Prill、PluronicF127NF Prill Poloxamer 407、PluronicF38、PluronicF38 Pastille、PluronicF68、PluronicF68 Pastille、PluronicF68LF Pastille、PluronicF68NF、PluronicF68NF Prill Polosamer188、PluronicF77、PluronicF77 Micropastille、PluronicF87、PluronicF87NF、PluronicF87NF Prill Poloxamer237、PluronicF88、PluronicF88 Pastille、PluronicF98、PluronicL10、PluronicL101、PluronicL121、PluronicL31、PluronicL35、PluronicL43、PluronicL44NF Poloxamer124、PluronicL61、PluronicL62LF、PluronicL62D、PluronicL64、PluronicL81、PluronicL92、PluronicL44NF INH surfactant Poloxamer124 View、PluronicN3、PluronicP103、PluronicP104、PluronicP105、PluronicP123 Surfactant、PluronicP65、PluronicP84、PluronicP85、これらの組み合わせなど)とも称される。
【0112】
本明細書に記載の組成物および方法に適合するさらなる重合安定化剤は、チロキサポールである。好ましい実施形態において、安定化剤および共可溶化剤は、ホルムアルデヒドおよびオキシランを有する4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノールポリマーであるチロキサポールである。
【0113】
出願人の方法に従って製造される溶液および微粒子懸濁液は、任意に、さらなる添加剤を含む。例えば、溶液および/または微粒子懸濁液は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)をさらに含むことが想定される。EDTAは、例えば、分解を低減するため、または安定化剤として使用され得る。また、溶液および/または微粒子懸濁液は、例えば、塩化ナトリウムを添加することで、等張性を有することも想定される。
【0114】
例示的な実施形態において、EDTAは、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩であり得る。
【0115】
1つの方法によれば、水性点眼剤媒体に、活性薬物および少なくとも1つのシクロデキストリンを懸濁して、乳状の外観を有する懸濁液を提供する。次いで、分解生成物が形成されず、薬物およびシクロデキストリンの両方が点眼水性溶液に溶解するまで、十分な温度で、十分な時間、懸濁液を加熱する。薬物およびシクロデキストリンが溶解すると、乳状懸濁液は実質的に透明な溶液になる。得られた溶液を、薬物/シクロデキストリン複合体微粒子を含む微粒子懸濁液を生成するのに十分な速度で冷却する。
【0116】
別の実施形態において、水性点眼剤媒体に、活性薬物、少なくとも1つのシクロデキストリン、および少なくとも1つのポリマーを懸濁して、乳状の外観を有する懸濁液を提供する。次いで、分解生成物が形成されず、薬物、シクロデキストリン、およびポリマーが点眼水性溶液に溶解するまで、十分な温度で、十分な時間、懸濁液を加熱する。薬物、シクロデキストリン、およびポリマーが溶解すると、乳状懸濁液は実質的に透明な溶液になる。得られた溶液を、薬物/シクロデキストリン/ポリマー複合体微粒子を含む微粒子懸濁液を生成するのに十分な速度で冷却する。この別の実施形態において、薬物/シクロデキストリン/ポリマー複合体は、ポリマー被覆を含む。
【0117】
別の方法において、水性点眼剤媒体に、少なくとも1つのシクロデキストリンを懸濁して、乳状の外観を有する懸濁液を提供する。シクロデキストリンが水性点眼剤溶液に溶解するまで、十分な温度で、十分な時間、シクロデキストリン懸濁液を加熱する。活性薬物が溶液中に溶解するまで、溶液を撹拌しながら、加熱した水性懸濁液に、活性薬物を添加する。得られた溶液を、薬物/シクロデキストリン複合体微粒子を含む微粒子懸濁液を生成するのに十分な速度で冷却する。
【0118】
さらに別の方法において、水性点眼剤媒体に、シクロデキストリンおよび少なくとも1つのポリマーを懸濁して、乳状の外観を有する懸濁液を提供する。シクロデキストリンおよびポリマーが溶解すると、乳状懸濁液は実質的に透明な溶液になる。活性薬物が水性溶液中に溶解するまで、水性溶液を撹拌しながら、加熱した水性懸濁液に、活性薬物を添加する。得られた溶液を、薬物/シクロデキストリン/ポリマー複合体微粒子を含む微粒子懸濁液を生成するのに十分な速度で冷却する。得られた薬物/シクロデキストリン/ポリマー複合体は、ポリマー被覆を含む。
【0119】
別の方法において、水性点眼剤媒体に、少なくとも1つのポリマーおよび薬物を懸濁して、乳状の外観を有する懸濁液を提供する。別の容器で、水に、少なくとも1つのシクロデキストリンを懸濁して、乳状の外観を有する懸濁液を提供する。ポリマー-薬物懸濁液が依然として乳状の懸濁液であり、分解生成物が形成されず(または実質的に形成されず)、シクロデキストリン溶液が透明になるまで、十分な温度で、十分な時間、両方の懸濁液を加熱する。シクロデキストリン溶液を、ポリマー-薬物相に添加すると、薬物が溶解するにつれて、混合液が透明になる。そして、同じ温度で、十分な時間、溶液を混合する。得られた溶液を、薬物/シクロデキストリン複合体微粒子を含む微粒子懸濁液を生成するのに十分な速度で冷却する。
【0120】
本開示の組成物に導入することができるポリマーは、2,000g/mol以上の重量平均分子量、特に2,000~50,000g/mol、より具体的には5,000~25,000g/mol、さらに具体的には9,000~15,000g/molの重量平均分子量を示し得る。
【0121】
本開示の組成物中のポリマーの量は、組成物の体積に対して、0.5~5重量%、特に1~4重量%、より具体的には2~3重量%、より具体的には2.2~2.8重量%であってもよい。
【0122】
組成物がポリマーを含む場合、組成物の粘度は、4~14cP、好ましくは5~13cP、より好ましくは6~12cPであってもよい。
【0123】
本開示の組成物に導入されるポリマーの一部は、活性医薬成分およびシクロデキストリンの固体複合体に含まれていてもよい。したがって、ポリマーの一部は、固体複合体内に取り込まれていてもよく、および/またはポリマーの一部は、固体複合体の表面上に被覆されていてもよい。ゆえに、微粒子懸濁液は、薬物/シクロデキストリン/ポリマー複合体微粒子を含んでいてもよい。前記薬物/シクロデキストリン/ポリマー複合体は、ポリマー被覆を含んでいてもよい。
【0124】
[眼科的に許容可能な溶媒]
本開示の組成物は、眼科的に許容可能な溶媒を含む。
【0125】
「眼科的に許容可能な溶媒」との用語は、組成物の眼科的投与に適した溶媒を意味することを意図する。眼科的に許容可能な溶媒は、好ましくは液体である。眼科的に許容可能な溶媒は、特に、水を含んでいてもよい。特に、眼科的に許容可能な溶媒は、水以外の溶液を含まない。したがって、眼科的に許容される溶媒は、水性点眼剤媒体に対応し得る。
【0126】
好ましい実施形態によれば、眼科的に許容可能な溶媒は、水、および任意で、防腐剤、安定化剤、電解質、緩衝剤、およびそれらの組合せからなる群から選択される添加剤を含む。
【0127】
特に、眼科的に許容可能な溶媒は、防腐剤を含んでいてもよい。防腐剤は、組成物中の細菌増殖を制限するために使用され得る。
【0128】
適した防腐剤の例としては、重亜硫酸ナトリウム、重硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、チメロサール、酢酸フェニル水銀、硝酸フェニル水銀、メチルパラベン、フェニルエチルアルコール、およびそれらの組み合わせが挙げられる。好ましくは、防腐剤は、塩化ベンザルコニウムである。
【0129】
本開示の組成物中の防腐剤の量は、組成物の体積に対して、0~1重量%、特に0.001~0.5重量%、より具体的には0.005~0.1重量%、さらに具体的には0.01~0.04重量%であってもよい。
【0130】
特に、眼科的に許容可能な溶媒は、安定化剤を含んでいてもよい。安定化剤は、分解を低減するまたは組成物を安定化させるために使用され得る。
【0131】
適した安定化剤の例としては、エデト酸二ナトリウムが挙げられる。
【0132】
本開示の組成物中の安定化剤の量は、組成物の体積に対して、0~1重量%、特に0.01~0.5重量%、より具体的には0.08~0.2重量%であり得る。
【0133】
特に、眼科的に許容可能な溶媒は、電解質を含んでいてもよい。電解質は、特に、組成物を等張にするために使用され得る。
【0134】
適した電解質の例としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、およびこれらの組み合わせが挙げられる。好ましくは、電解質は、塩化ナトリウムである。
【0135】
本開示の組成物中の電解質の量は、組成物の体積に対して、電解質の0~2重量%、特に0.1~1.5重量%、より具体的には0.5~1重量%であってもよい。
【0136】
[不純物]
本開示に係る組成物は、特に、低い不純物の濃度を示し得る。本開示の組成物中の低量の不純物は、後述する特定の製造プロセス、特に製造プロセスにおいて実施される特定の加熱および冷却工程に起因する。
【0137】
したがって、本開示による組成物は、活性医薬成分の重量に対して、2重量%未満、特に1重量%未満、より具体的には0.8重量%未満の不純物を含み得る。
【0138】
「不純物」との用語は、本開示の組成物中に自発的に導入されなかったが、組成物の製造中にその場で生成された生成物を意味することを意図する。したがって、「不純物」との用語は、本明細書中で上記に定義されるような活性医薬成分、シクロデキストリン、活性医薬成分およびシクロデキストリンの複合体、ポリマー、水、防腐剤、安定化剤、および電解質以外の、任意の生成物を含む。不純物は、典型的には、活性医薬成分の副生成物または分解生成物に対応する。組成物中の不純物の量は、例えば、液体クロマトグラフィー、質量分析および/またはNMRを含む従来の分析技術によって決定され得る。不純物の量は、組成物の製造直後(例えば、組成物の製造後24時間未満)または組成物の貯蔵後(例えば、25℃での組成物の貯蔵において2年間まで)に測定することができる。
【0139】
驚くべきことに、出願人は、特定の活性医薬成分を含有する本開示の組成物は、シクロデキストリン、例えばγ-シクロデキストリンの存在下で、120℃を超える温度で、組成物の溶液または懸濁液を加熱した場合、特に不純物が生成されやすいことを観察した。しかし、後述する本開示の方法に従って組成物を製造した場合、得られた不純物は無視できる量であった。
【0140】
したがって、一実施形態によれば、本開示は、眼科的に許容可能な溶媒中に、活性医薬成分およびシクロデキストリンを含む固体複合体を含む眼科用組成物を提供する。ここで、前記組成物は、活性医薬成分の重量に対して、2重量%未満、特に1重量%未満、より具体的には0.8重量%未満の不純物を含み、前記活性医薬成分は、デキサメタゾン、アキシチニブ、セジラニブ、ドビチニブ、モテサニブ、パゾパニブ、レゴラフェニブ、ロサルタン、オルメサルタン、ドルゾラミド、ジクロフェナク、ネパフェナク、およびこれらの組み合わせからなる群から選択され、前記シクロデキストリンは、γ-シクロデキストリンである。
【0141】
特に、活性成分がデキサメタゾンである場合、本開示の組成物は、デキサメタゾンの重量に対して、0.5%未満、特に0.3%未満、より具体的には0.2%未満のデキサメタゾンエノールアルデヒド(すなわち、Z異性体およびE異性体の混合物)を含み得る。
【0142】
デキサメタゾンエノールアルデヒドは、以下の構造を有する脱水デキサメタゾンである:
【0143】
【化1】
【0144】
さらに、活性成分がデキサメタゾンである場合、本開示の組成物は、デキサメタゾンの重量に対して、0.5重量%未満、特に0.3重量%未満、より具体的には0.2重量%未満の16,17-不飽和デキサメタゾンを含み得る。
【0145】
16,17-不飽和デキサメタゾンは、以下の構造を有する脱水デキサメタゾンである:
【0146】
【化2】
【0147】
特に、活性成分がデキサメタゾンである場合、本開示の組成物は、デキサメタゾンの重量に対して、0.5重量%未満、特に0.3重量%未満、より具体的には0.2重量%未満の脱水デキサメタゾン、すなわちデキサメタゾンエノールアルデヒド(すなわち、ZおよびE異性体の混合物)および16,17-不飽和デキサメタゾンを含み得る。
【0148】
デキサメタゾンは、水性溶液中で塩基触媒および光化学分解を受け得ること(E. M. Cohen, 1973, Dexamethasone. Analytical Profiles of Drug Substances, 2, 163-197)、活性医薬成分は、酸化分解を受けること(R. E. Conrow, G. W. Dillow, L. Bian, L. Xue, O. Papadopoulou, J. K. Baker, B. S. Scott, 2002, Corticosteroid decomposition via a mixed anhydride. J. Org. Chem. 67, 6835-6836)が知られている。欧州薬局方(01/2014:0388)のデキサメタゾンモノグラフには、11種の不純物および分解生成物を列挙しており、それらの検出方法が記載されている。英国薬局方(2015、version 19.0)は、デキサメタゾン点眼剤懸濁液に関するモノグラフを有し、5つの分解不純物および分解生成物、ならびにそれらの検出方法を列挙している。水性溶液中での最大の化学的安定性のために、デキサメタゾン点眼剤懸濁液のpHは、約5.0~約6.0の間に維持されるべきである。シクロデキストリンを含有する水性デキサメタゾン点眼剤懸濁液の製造およびオートクレーブ中での点眼剤の滅菌中に形成される主要な分解生成物は、16,17-不飽和デキサメタゾンならびにデキサメタゾンの脱水によるMattox転位によって形成されるデキサメタゾンエノールアルデヒドのE異性体およびZ異性体の混合物を含むと考えられる(B. Chen, M. Li, M. Lin, G. Tumambac, A. Rustum, 2009, A comparative study of enol aldehyde formation from betamethasone, dexamethasone, beclomethasone and related compound under acidic and alkaline conditions. Steroids, 74, 30-41)。デキサメタゾンにおける立体障害のために、主生成物は、デキサメタゾンエノールアルデヒドZ異性体であると考えられる。この分解生成物は、薬局方に記載されていない。従来、約75℃で約10日間加熱した非経口デキサメタゾン溶液中に16,17-不飽和デキサメタゾンが検出されている(M. Spangler, E. Mularz, 2001, A validated, stability-indicating method for the assay of dexamethasone in drug substance and drug product analyses, and the assay of preservatives in drug product. Chromatographia, 54, 329-334)。16,17-不飽和デキサメタゾンは、デキサメタゾンの脱水分解生成物でもあり、著者らは生成物を分析しなかったため、著者らはエノールアルデヒドを検出した可能性が高い。以前、日本人の研究グループは、酸性触媒による、2種のエノールアルデヒドおよびベタメタゾンの16-17不飽和分解生成物を記載している(T. Hidaka, S. Huruumi, S. Tamaki, M. Shiraishi, H. Minato, 1980, Studies on betamethasone: behavior of betamethasone in acid or alkaline medium, photolysis and oxidation. Yakugaku Zasshi, 100, 72-80)。水性溶液γ-シクロデキストリン溶液中で16,17-不飽和デキサメタゾンおよびデキサメタゾンエノールアルデヒドを形成するデキサメタゾン分解速度における見かけの活性化エネルギーは異常に高く、そのため、室温で、これらの分解生成物は本質的に形成されない。水性点眼剤中にシクロデキストリンが存在することで、オートクレーブ中のデキサメタゾンの脱水を促進し、16,17-不飽和デキサメタゾンおよびデキサメタゾンエノールアルデヒドのE異性体およびZ異性体の混合物を形成するように思われる。
【0149】
水性溶液中において、ジクロフェナクは、光および酸素から保護された場合、室温で比較的安定である(R. Chadaha, N. Kashid, D. V. S. Jain, 2003, Kinetics of degradation of diclofenac sodium in aqueous solution determined by a calorimetric method. Pharmazie, 58, 631-635)。β-シクロデキストリンは、約pH 7の水性溶液中で、ジクロフェナクを安定化することが示されているが、γ-シクロデキストリンは、オートクレーブ中の分解を促進し、水性ジクロフェナク溶液の強い着色を引き起こし得ることが観察された。
【0150】
ここで、出願人は驚くべきことに、請求項の方法が、水性溶液中で安定な活性医薬成分/シクロデキストリン複合体を含む、溶液および微粒子懸濁液を提供することを発見した。例えば、請求項の方法は、形成される16,17-不飽和デキサメタゾンおよびデキサメタゾンエノールアルデヒドの量が非常に少量である、デキサメタゾン-γ-シクロデキストリン点眼溶液を提供する。さらに、本開示は、少なくとも約12ヶ月間、分解生成物または沈降が観察されないジクロフェナク-γ-シクロデキストリン溶液を提供する。これらの水性γ-シクロデキストリン含有点眼剤は、また、溶解した活性医薬成分の濃度が10~100倍に増加する、デキサメタゾンの場合には約30倍に増加するという利点を有し、かつ薬物拡散が最大となる所望の粒径を有する。
【0151】
[デキサメタゾン組成物]
特に好ましい具体例によれば、本開示は、眼科的に許容可能な溶媒中に、デキサメタゾンおよびγ-シクロデキストリンを含む固体複合体を含む、眼科用デキサメタゾン組成物を提供する。
【0152】
一実施形態において、本開示の眼科用デキサメタゾン組成物は、デキサメタゾンの重量に対して、0.5重量%未満、特に0.3重量%未満、より具体的には0.2重量%未満の16,17-不飽和デキサメタゾンおよびデキサメタゾンエノールアルデヒドを含む。
【0153】
別の実施形態において、本開示の眼科用デキサメタゾン組成物は、本明細書において上記で定義したポリマーを含む。前記眼用デキサメタゾン組成物の粘度は、4~14cP、好ましくは5~13cP、より好ましくは6~12cPであってもよい。
【0154】
さらに別の実施形態において、本開示の眼用デキサメタゾン組成物は、デキサメタゾンの重量に対して、0.5重量%未満、特に0.3重量%未満、より具体的には0.2重量%未満の16,17-不飽和デキサメタゾンおよびデキサメタゾンエノールアルデヒドを含み、本開示の眼用デキサメタゾン組成物は、ポリマーを含み、眼用デキサメタゾン組成物の粘度は、4~14cP、好ましくは5~13cP、より好ましくは6~12cPである。
【0155】
本開示の眼科用組成物中のデキサメタゾンの濃度は、10mg/mL~20mg/mLであってもよい。したがって、デキサメタゾン濃度が約1mg/mLのである場合に約0.1mg/mLが水性溶液中に存在する既知のデキサメタゾン組成物よりも、本開示の組成物中のデキサメタゾンの量は、はるかに多い。特に、本開示の眼科用組成物中のデキサメタゾンの濃度が約15mg/mLである場合、約4mg/mLが水性溶液中に存在する。
【0156】
特に、組成物中のデキサメタゾンの60~95重量%、より具体的には70~90重量%は、デキサメタゾンおよびγ-シクロデキストリンの固体複合体の形態であってもよい。
【0157】
より具体的には、組成物中のデキサメタゾンの5~40重量%、特に10~30重量%は、溶解した形態であってもよい。溶解した形態は、液相に溶解した非複合デキサメタゾン、液相に溶解したデキサメタゾンおよびシクロデキストリン複合体、ならびにデキサメタゾン/シクロデキストリン複合凝集体からなる水溶性ナノ粒子を含む。
【0158】
好ましくは、組成物中のデキサメタゾンの0重量%~0.5重量%は、非複合固体の形態であってもよい。したがって、本開示の組成物は、デキサメタゾンの固体の非複合粒子を実質的に含まなくてもよい。
【0159】
一実施形態において、微粒子懸濁液は、微粒子中に約70%~約99%のデキサメタゾンを含み、ナノ粒子中に約1%~約30%のデキサメタゾンを含んでいてもよい。より具体的には、微粒子懸濁液は、約1μm~約10μmの直径を有する微粒子中に約80%のデキサメタゾン、およびナノ粒子中に約20%のデキサメタゾンを含んでいてもよい。
【0160】
別の実施形態において、微粒子懸濁液が微粒子中の40%~99%のデキサメタゾン、およびナノ粒子または水溶性デキサメタゾン/γ-シクロデキストリン複合体中に約1%~約60%のデキサメタゾンを含んでいてもよい。特に、微粒子懸濁液は、約1μm~約10μmの直径を有する微粒子中に約80~90%のデキサメタゾン、およびナノ粒子または水溶性デキサメタゾン/γ-シクロデキストリン複合体中に約10~20%のデキサメタゾンを含んでいてもよい。
【0161】
眼科用デキサメタゾン組成物中のγ-シクロデキストリンの量は、組成物の体積に対して、1~25重量%、特に5~20重量%、より具体的には10~18重量%、さらに具体的には12~16重量%であり得る。
【0162】
γ-シクロデキストリンに加えて、本開示の眼科用組成物は、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリンおよび/または上記で定義した水溶性シクロデキストリン誘導体をさらに含んでいてもよい。
【0163】
本開示のデキサメタゾン眼科用組成物は、上記で定義した眼科的に許容可能な溶媒を含む。
【0164】
好ましい実施形態によれば、眼科的に許容可能な溶媒は、水、ならびに任意で、防腐剤、安定化剤、電解質、緩衝剤、およびそれらの組合せからなる群から選択される、上記で定義した添加剤を含む。
【0165】
特に好ましい一実施形態において、眼用デキサメタゾン組成物は以下を含む:
1~2%のデキサメタゾン、例えば1.5%のデキサメタゾン;
12~16%のγ-シクロデキストリン、例えば14%のγ-シクロデキストリン;
2.2~2.8%のポリマー、例えば2.5%のポロキサマー;
0~0.2%の安定化剤、例えば0.1%のエデト酸二ナトリウム;
0~1%の電解質、例えば0.57%の塩化ナトリウム;および
水;
(ここで、%は、組成物の体積に基づく重量%である)。
【0166】
[本開示に係る眼科用組成物を製造する方法]
本開示の組成物は、以下の方法によって得ることができるか、または得られた組成物であり得る。上記で引用された実施形態、好ましい列挙、および特定の例示のすべては、本開示の方法および本開示の方法で得られる組成物に等しく適用される。
【0167】
第1の実施形態において、眼科用組成物を製造する方法は、
a)眼科的に許容可能な溶媒に、活性医薬成分およびシクロデキストリンを懸濁させて懸濁液を形成する工程;
b)前記活性医薬成分および前記シクロデキストリンが前記眼科的に許容可能な溶媒に実質的に溶解するまでの時間tの間、120℃未満の温度T1で、前記懸濁液を加熱する工程;および
c)得られた溶液を温度T2まで冷却して、活性医薬成分およびシクロデキストリンの固体複合体を含む眼科用組成物を得る工程
を含む。
【0168】
第1の実施形態の方法において、眼科的に許容可能な溶媒に、活性医薬成分およびシクロデキストリンを懸濁して、乳状の外観を有する懸濁液を提供してもよい。次いで、分解生成物が形成されず、活性医薬成分およびシクロデキストリンの両方が眼科的に許容可能な溶媒に溶解するまで、十分な温度で、十分な時間、懸濁液を加熱してもよい。活性医薬成分およびシクロデキストリンが溶解すると、乳状懸濁液は、実質的に透明な溶液になり得る。次いで、得られた溶液を、固形活性医薬成分/シクロデキストリン複合体を含む微粒子懸濁液を生成するのに十分な速度で冷却してもよい。
【0169】
第2の実施形態では、眼科用組成物を製造する方法は、
a)眼科的に許容可能な溶媒に、シクロデキストリンを懸濁させて懸濁液を形成する工程;
b)前記シクロデキストリンが眼科的に許容可能な溶媒に実質的に溶解するまで、前記懸濁液を加熱する工程;
c)120℃未満の温度T1で、前記工程b)の溶液中に固形の活性医薬成分を添加し、活性前記医薬成分が前記眼科的に許容可能な溶媒に実質的に溶解するまでの時間tの間、120℃未満の温度T1で、混合物を加熱する工程;および
d)得られた溶液を温度T2まで冷却して、活性医薬成分およびシクロデキストリンの固体複合体を含む眼科用組成物を得る工程
を含む。
【0170】
第2の実施形態の方法において、眼科的に許容可能な溶媒に、シクロデキストリンを懸濁して、乳状の外観を有する懸濁液を提供してもよい。シクロデキストリンが眼科的に許容可能な溶媒に溶解するまで、十分な温度で、十分な時間、シクロデキストリン懸濁液を加熱してもよい。加熱された水性溶液に、溶液を撹拌しながら、固体の形態である活性医薬成分を添加してもよい。加熱は、分解生成物が形成されず、活性医薬成分が眼科的に許容可能な溶媒に溶解されるまで、十分な温度で、十分な時間、実施されてもよい。得られた溶液を、活性医薬成分/シクロデキストリン固体複合体を含む微粒子懸濁液を生成するのに十分な速度で冷却してもよい。
【0171】
第3の実施形態では、眼科用組成物を製造する方法は、
a)眼科的に許容可能な溶媒に、活性医薬成分を懸濁して懸濁液を形成し、前記活性医薬成分が前記眼科的に許容可能な溶媒に実質的に溶解するまで、前記懸濁液を加熱する工程;
b)眼科的に許容可能な溶媒に、シクロデキストリンを懸濁して懸濁液を形成し、前記シクロデキストリンが前記眼科的に許容可能な溶媒に実質的に溶解するまで、前記懸濁液を加熱する工程;
c)120℃未満の温度T1で前記工程a)の組成物および前記工程b)の組成物を混合し、120℃未満の温度T1で、時間tの間、混合物を加熱する工程;および
d)得られた溶液を温度T2まで冷却して、活性医薬成分およびシクロデキストリンの固体複合体を含む眼科用組成物を得る工程
を含む。
【0172】
第3の実施形態の方法において、シクロデキストリンを含まない眼科的に許容可能な溶媒に、活性医薬成分を懸濁してもよい。得られる懸濁液は、乳状の外観を有し得る。別で、活性医薬成分を含まない眼科的に許容可能な溶媒に、シクロデキストリンを懸濁してもよい。得られた懸濁液は、乳状の外観を有し得る。例えば、オートクレーブ中で、121℃で、20分間加熱することによって、前記2つの懸濁液を加熱または滅菌してもよい。次いで、2つの懸濁液または高温の溶液を一緒に混合して、分解生成物が形成されず、活性医薬成分およびシクロデキストリンの複合体が形成されるまで、混合物を加熱してもよい。得られた溶液を、活性医薬成分/シクロデキストリン固体複合体を含む微粒子懸濁液を生成するのに十分な速度で冷却してもよい。
【0173】
第1、第2および第3の実施形態の方法で得られる眼科用組成物は、活性医薬成分の重量に対して、2重量%未満、特に1重量%未満、より具体的には0.8重量%未満の不純物を含み得る。
【0174】
本開示はまた、本開示に係るデキサメタゾン眼科用組成物を製造するための方法を提供する。
【0175】
したがって、第4の実施形態において、眼科用組成物を製造する方法は、
a)眼科的に許容可能な溶媒に、デキサメタゾンおよびγ-シクロデキストリンを懸濁して懸濁液を形成する工程;
b)前記デキサメタゾンおよび前記γ-シクロデキストリンが前記眼科的に許容可能な溶媒に実質的に溶解するまでの時間tの間、120℃未満の温度T1で、前記懸濁液を加熱する工程;
c)得られた溶液を温度T2まで冷却して、デキサメタゾンおよびγ-シクロデキストリンの固体複合体を含む眼科用組成物を得る工程
を含む。
【0176】
第5の実施形態において、眼科用組成物を製造する方法は、
a)眼科的に許容可能な溶媒に、γ-シクロデキストリンを懸濁させて懸濁液を形成する工程;
b)前記γ-シクロデキストリンが前記眼科的に許容可能な溶媒に溶解するまで、前記懸濁液を加熱する工程;
c)120℃未満の温度T1で、前記工程b)の溶液に、固形のデキサメタゾンを添加し、前記デキサメタゾンが前記眼科的に許容可能な溶媒に実質的に溶解するまでの時間tの間、120℃未満の温度T1で、混合物を加熱する工程;
d)得られた溶液を温度T2まで冷却して、デキサメタゾンおよびγ-シクロデキストリンの固体複合体を含む眼科用組成物を得る工程
を含む。
【0177】
第6の実施形態において、眼科用組成物を製造する方法は、
a)眼科的に許容可能な溶媒に、デキサメタゾンを懸濁して懸濁液を形成し、前記デキサメタゾンが前記眼科的に許容可能な溶媒に実質的に溶解するまで、前記懸濁液を加熱する工程;
b)眼科的に許容可能な溶媒に、γ-シクロデキストリンを懸濁して懸濁液を形成し、前記γ-シクロデキストリンが前記眼科的に許容可能な溶媒に実質的に溶解するまで、前記懸濁液を加熱する工程;
c)120℃未満の温度T1で、前記工程a)の組成物および前記工程b)の組成物を混合し、120℃未満の温度T1で、時間tの間、混合物を加熱する工程;および
d)得られた溶液を温度T2まで冷却して、デキサメタゾンおよびγ-シクロデキストリンの固体複合体を含む眼科用組成物を得る工程
を含む。
【0178】
第3、第4および第5の実施形態の方法で得られる眼科用組成物は、デキサメタゾンの重量に対して、0.5重量%未満、特に0.3重量%未満、より具体的には0.2重量%未満の16,17-不飽和デキサメタゾンおよびデキサメタゾンエノールアルデヒドを含み得る。
【0179】
本開示の方法の加熱する工程は、不純物の発生を回避するために、120℃未満の温度T1で行われる。特に、温度T1は、80~110℃、より具体的には85~105℃、さらに具体的には90~100℃であってもよい。
【0180】
本開示の方法の加熱する工程は、時間tの間行われる。特に、加熱時間tは、5分間~2時間、より具体的には10分間~1時間、さらに具体的には15~30分間である。
【0181】
加熱サイクル中に、活性医薬成分および/またはシクロデキストリンが溶解され、活性医薬成分およびシクロデキストリンの複合体が形成される。加熱は、当業者に知られている任意の方法または手段によって達成される。好ましい実施形態において、加熱は、オートクレーブまたは蒸気を用いたジャケット付き反応器で達成される。
【0182】
本開示の方法の冷却する工程では、活性医薬成分およびシクロデキストリン固体複合体を沈殿させるために、組成物の温度を、温度T1から温度T2まで下げる。特に、温度T2は、10~40℃、より具体的には15~35℃、さらに具体的には20~30℃であってもよい。
【0183】
本開示の方法の冷却速度は、1~25℃/分、特に2~20℃/分、より具体的には5~18℃/分の速度で、温度T1から温度T2まで下げることで行われてもよい。
【0184】
冷却は、当業者に知られている任意の方法または手段によって達成することができる。好ましい実施形態において、冷却は、氷浴または冷却剤を有するジャケット付き反応器で達成される。
【0185】
いくつかの例示的な実施形態、例えば、第1、第2、第3、第4、第5および第6の実施形態の方法において、前記工程a)の懸濁液は、上記で定義したポリマーをさらに含んでいてもよい。第3および第6の実施形態の方法において、前記工程b)の懸濁液は、上記で定義したポリマーをさらに含んでいてもよい。最初の懸濁液がポリマーを含む場合、ポリマーの一部は、固体複合体内に取り込まれていてもよく、および/またはポリマーの一部は、固体複合体の表面上に被覆されていてもよい。したがって、本開示の方法で得られる微粒子懸濁液は、薬物/シクロデキストリン/ポリマー複合体微粒子を含んでいてもよい。前記薬物/シクロデキストリン/ポリマー複合体は、ポリマー被覆を含んでいてもよい。
【0186】
本開示の方法の最初の懸濁液にポリマーを導入する場合、前記方法で得られる眼科用組成物は、4~14cP、好ましくは5~13cP、より好ましくは6~12cPの粘度を示し得る。
【0187】
本開示の方法で得られる組成物の粘度は、公知の製造方法で得られる組成物の粘度よりも高い。理論に束縛されることを望むものではないが、本方法の制御された冷却する工程を、加熱工程の後に、特に1~25℃/分の冷却速度で実施することにより、固体複合体中に含まれるポリマーを少なくすることができるため、溶液中により多くのポリマーが見うけられ、これにより、配合物の粘度が増大すると、本発明者らは考える。したがって、本出願に開示される最初の製造プロセスは、従来技術の配合物と同様の量のポリマー、シクロデキストリンおよび活性医薬成分を用いて、高い粘度を有する新しい配合物を得ることを可能にする。
【0188】
例示的な実施形態の方法、例えば、第1、第2、第3、第4、第5、および第6の実施形態において、眼科的に許容可能な溶媒は、水および任意で、防腐剤、安定化剤、電解質、緩衝剤、およびこれらの組合せからなる群から選択される添加剤を含んでいてもよい。
【0189】
例示的な方法、例えば、第1、第2、第4、および第5の実施形態において、前記工程a)の眼科的に許容可能な溶媒は、水、および任意選択で、防腐剤、安定化剤、電解質、緩衝剤、およびこれらの組合せからなる群から選択される添加剤を含んでいてもよい。
【0190】
さらなる例示的な方法、例えば、第3および第6の実施形態において、前記工程a)の眼科的に許容可能な溶媒が水のみを含んでいてもよく、前記工程b)の眼科的に許容可能な溶媒は、水、および任意で、防腐剤、安定化剤、電解質、緩衝剤、およびこれらの組合せからなる群から選択される添加剤を含んでいてもよい。
【0191】
他の実施形態、例えば、第3および第6の実施形態の方法において、前記工程b)の眼科的に許容可能な溶媒は、水のみを含んでもよく、前記工程a)の眼科的に許容可能な溶媒は、水、および任意で、防腐剤、安定化剤、電解質、緩衝剤、およびこれらの組合せからなる群から選択される添加剤を含んでいてもよい。
【0192】
[本開示の組成物の使用]
本開示の眼科用組成物は、眼の状態、特に前眼部の状態または後眼部の状態、より具体的にはブドウ膜炎、黄斑浮腫、黄斑変性、網膜剥離、眼腫瘍、真菌性またはウイルス感染、多病巣性脈絡膜炎、糖尿病性網膜症、増殖性硝子体網膜症(PVR)、交感性眼炎、ホヒト・小柳・原田病(VKH)、ヒストプラスマ症、ブドウ膜拡散、および血管閉塞の治療に使用することができる。本開示の組成物は、ブドウ膜炎、黄斑浮腫、糖尿病性網膜症、増殖性硝子体網膜症(PVR)、および血管閉塞の治療に、特に有用であり得る。
【0193】
本開示に係るデキサメタゾン眼科用組成物は、特に、黄斑浮腫の治療に使用することができる。この場合、本開示に係るデキサメタゾン眼科用組成物を、1日3回、1滴の量で、眼に局所投与してもよい。前記組成物中のデキサメタゾンの量は、組成物の体積に対して、1~2重量%、特に1.5重量%のデキサメタゾンであってもよい。
【0194】
本開示の組成物は、公知の局所的デキサメタゾン組成物ほど頻繁に投与する必要はなく、すなわち、1日に6回1滴の組成物を投与する必要はない。実際、組成物の粘度が高められているため、本開示の組成物の固体複合体は、既知の組成物と比較して、眼の表面上でより長い接触時間を示し、これは活性医薬成分の生物学的利用能を増加させる。
【0195】
本開示はまた、点眼液としての本開示の眼科用組成物の使用を包含する。
【0196】
[測定方法]
[直径]
活性医薬成分およびシクロデキストリンの固体複合体などの粒子の直径は、粒子のD50直径に対応し得る。直径D50は、メジアン径または粒径分布の中央値としても知られている。直径D50は、累積分布における50%での粒径の値に対応する。例えば、D50が5μmである場合、試料中の粒子の50%が5μmより大きく、50%は5μmより小さい。直径D50は、通常、一群の粒子の粒径を表すために使用される。
【0197】
粒子または複合体の直径および/または大きさは、当業者に知られている任意の方法に従って測定され得る。例えば、直径D50は、レーザー回折粒径分析によって測定される。一般的に、シクロデキストリン/薬物粒子または複合体の直径および/または大きさを測定/評価するための技術は限られた数しかない。特に、当業者は、物理的特性(例えば、粒径、直径、平均直径、平均粒径など)は、典型的には、そのような限定された典型的な既知の技術を用いて評価/測定されることを知っている。例えば、このような既知の技術は、上述の段落において引用されるInt. J. Pharm. 493(2015), 86-95に記載されており、その全体は、参照により本明細書に援用される。さらに、そのような限定された既知の測定/評価技術は、他の技術的参考文献、例えば、欧州薬局方(2.9.31 Particle size analysis by laser diffraction, Jan 2010)、およびSaurabh Bhatia, Nanoparticles types, classification, characterization, fabrication methods and drug delivery applications, Chapter 2, Natural Polymer Drug Delivery Systems, PP. 33-94, Springer, 2016などに明示されるように、当該技術分野において公知である。前記文献は、その全体は、参照により本明細書に援用される。
【0198】
デキサメタゾン以外の活性医薬成分を含む複合体の粒径について、粒径は、欧州薬局方2.9.31.に係るレーザー回折粒径分析によって測定される。
【0199】
デキサメタゾンを含む複合体の粒径について、粒径は、欧州薬局方に係るレーザー回折粒径分析によって測定され、以下のパラメータを使用する:
システム:Malvern Mastersizer 3000 with hydro MV disperser.
フラウンホーファ近似
分散剤:水
分散剤の屈折率:1.33
測定時間:1秒
バックグラウンド測定時間:10秒
撹拌速度:1200rpm
減衰率:1~20%
型式:標準
試料作製:振盪により点眼剤を均質化する
試料サイズ:0.5mlの点眼剤を分散機に添加する
洗浄:分散剤(水)で2回すすぎ、測定を開始し、ビーム強度が第1のチャネルで120ユニット未満であることを確認し、バックグラウンドを取り込む。
【0200】
[粘度]
組成物の粘度は、前記組成物の動的粘度に対応する。粘度は、Brookfieldデジタル粘度計を用いて、25℃で測定される。組成物の粘度は、組成物の製造直後、すなわち、組成物の製造後24時間未満に測定される。
【0201】
[固体複合体中の薬物の割合と溶解した薬物の割合]
固体複合体の形態の薬物の量および溶解した薬物の量は、22~23℃の温度で、20~30分間、6000rpmで、組成物を遠心分離することによって得られる。
【0202】
溶解した薬物の量は、高速液体クロマトグラフィーによって測定した上清中の薬物の量に対応する。
【0203】
固体複合体の形態の薬物の割合は、以下の式で得られる:
【0204】
【数1】
【0205】
式中、
「総薬物」は、組成物に導入される薬物の総量(mg/mL)であり;
「溶解した薬物」は、上清中の薬物の量(mg/mL)である。
【0206】
溶解した薬物の割合は、以下の式で得られる:
【0207】
【数2】
【0208】
[実施例]
以下の実施例は、単なる例証として詳述されるものであり、精神または範囲を限定するものとして解釈されるべきではなく、材料および方法の両方における多数の改変は、当業者にとって明らかである。
【0209】
[実施例1]
水性デキサメタゾン点眼剤の組成は、以下の通りである:純水中、デキサメタゾン(1.50%)、γ-シクロデキストリン(14.00%)、ポロキサマー407(2.50%)、塩化ベンザルコニウム(0.02%)、エデト酸二ナトリウム(0.10%)、塩化ナトリウム(0.57%)。すべてw/v%。5つの異なる方法に適用する。
【0210】
F1:純水に、デキサメタゾンを含む成分を溶解または懸濁し、混合物を密封したガラス瓶中で、121℃で20分間オートクレーブする。実質的に透明な水性溶液を含むガラス瓶をオートクレーブから取り出し、室温まで冷却することで濁らせる。フーリエ変換赤外分光法(FTIR)、示差走査熱量測定(DSC)およびx線回折(XRD)によって固体粒子を分析し、固体粒子がデキサメタゾン/γ-シクロデキストリン複合体を含むことを示す。
【0211】
F2:純水に、デキサメタゾンを含む成分を溶解または懸濁し、混合物を30分かけて90℃に加熱して、透明な溶液を形成する。90℃で15分間さらに加熱した水性溶液を冷却すると、室温で濁り、約3時間以内に室温に達する。
【0212】
F3:純粋に、医薬賦形剤を溶解または懸濁し、混合物を90℃に加熱して透明溶液を形成し、次いで、高温の溶液に、固体デキサメタゾン粉末を添加する。デキサメタゾンを(15分間撹拌しながら)溶解するとき、溶液は冷却され、室温で濁り、約3時間以内に室温に達する。
【0213】
F4:純水に、医薬賦形剤を溶解または懸濁し、混合物を密封したガラス瓶中で、121℃で20分間オートクレーブして、透明な溶液を形成する。95℃まで冷却した後、水性溶液に、固体デキサメタゾン粉末を添加する。デキサメタゾンを(15分間撹拌しながら)溶解するとき、水性溶液は冷却され、室温で濁り、約3時間かけて室温に達する。
【0214】
F5:純水に、医薬賦形剤を溶解または懸濁し、混合物を密封ガラス瓶中で、121℃で20分間オートクレーブして、透明な溶液を形成する。95℃まで冷却した後、水性溶液に、固体デキサメタゾン粉末を添加する。デキサメタゾンを(15分間撹拌しながら)溶解するとき、水性溶液を(20分間かけて)室温まで急速に冷却し、冷却することで濁らせた。
【0215】
F6:賦形剤をAおよびBの2部に分離した。別々に、A部では、80℃の純水に、γ‐シクロデキストリンを除くすべての賦形剤を溶解し、B部では、80℃の純水に、γ‐シクロデキストリンを懸濁(または溶解)した。滅菌直前に、賦形剤混合物に、デキサメタゾンを添加した。デキサメタゾン(A部)および水に懸濁(または溶解)されたγ-シクロデキストリン(B部)を含む水中の賦形剤混合物の2つの部分を、121℃で15分間滅菌した。滅菌後、残りの滅菌賦形剤に、滅菌γ-シクロデキストリンを95℃で添加した。すなわち、A部およびB部を混合した。15分間撹拌した後、溶液を室温まで(20分かけて)急速に冷却し、濁った懸濁液を形成した。F6は塩化ベンザルコニウムを含まなかった。
【0216】
【表1】
【0217】
結果が示すことには、急速冷却すること(F5)が、約80%を超える活性医薬成分およびγ-シクロデキストリンが活性医薬成分/γ-シクロデキストリン複合体として固相中に存在し、ポリマーの大部分が水性溶液中に存在する(すなわち、最高粘度を有する)、微粒子懸濁液を提供する。F1は経時的に沈降するが、いくらかの撹拌で再分散することができる。しかし、F5は、経時的に沈降する傾向が低く、撹拌で容易に再分散される。したがって、F5は、F1よりも著しく優れた物理的安定性を示す。
【0218】
[実施例2]
水性イルベサルタン点眼剤の組成は、以下の通りである:純水中、イルベサルタン(2.0%)、γ-シクロデキストリン(10.0%)、HPMC(0.20%)、チロキサポール(0.10%)、塩化ベンザルコニウム(0.02%)、エデト酸二ナトリウム(0.10%)、塩化ナトリウム(0.50%)、すべてw/v%。3つの異なる方法に適用する。
【0219】
F7:純水に、イルベサルタンを含む成分を溶解または懸濁し、混合物を密封したガラス瓶中で、121℃で20分間オートクレーブして、透明な溶液を形成する。透明な溶液を、室温まで冷却することで濁らせる。
【0220】
F8:純水に、医薬賦形剤を溶解または懸濁し、混合物を密封したガラス瓶中で、121℃で20分間オートクレーブして、透明な溶液を形成する。95℃まで冷却した後、水性溶液に、固体イルベサルタン粉末を添加する。イルベサルタンを(15分間)溶解したとき、水性溶液は冷却され、室温で濁り、約3時間以内に室温に達する。
【0221】
F9:純水に、医薬賦形剤を溶解または懸濁し、混合物を密封ガラス瓶中で、121℃で20分間オートクレーブして、透明な溶液を形成する。95℃まで冷却した後、水性溶液に、固体イルベサルタン粉末を添加する。イルベサルタンを(15分間)溶解するとき、水性溶液を(20分間以内で)室温まで急速に冷却し、濁らせた。
【0222】
配合物F7について、配合物は、54%の固体薬物画分を有し、25℃(cP)における粘度が4.36、および平均粒径(μm)が2.44であり得る。
【0223】
[実施例3]
実施例1に記載の水性デキサメタゾン点眼剤(配合物F1、F2、F3、F4、F5およびF6)の製造中のデキサメタゾンの脱水を、製造後の点眼剤中の16,17-不飽和デキサメタゾンおよびデキサメタゾンエノールアルデヒドの定量的測定によって測定する。配合物F12、F13およびF14は、F1に記載されるように、すなわち、純水に、デキサメタゾンを含む成分を溶解または懸濁し、混合物を、密封したガラス瓶中で、121℃で20分間オートクレーブすることによって製造される。実質的に透明な水性溶液ガラス瓶をオートクレーブから取り出し、周囲条件で冷却することで濁らせる。F12の組成はF1と同一であるが、γ-シクロデキストリンを含まない。F13は、純水に懸濁されたデキサメタゾンおよびγ-シクロデキストリンを含む。F14は、純水に懸濁されたデキサメタゾンを含む。16,17-不飽和デキサメタゾンおよびデキサメタゾンエノールアルデヒドの形成に対する賦形剤および製造方法の効果を、分解されて16,17-不飽和デキサメタゾンおよびデキサメタゾンエノールアルデヒドを形成するデキサメタゾンの画分(%)として表す。
【0224】
【表2】
【0225】
表2に表される結果が示すことには、16,17-不飽和デキサメタゾンおよびデキサメタゾンエノールアルデヒドの形成は、オートクレーブ中での加熱中に、γ-シクロデキストリンの存在によって触媒されることを示す(配合物F1(すべての賦形剤を含む)およびF13(γ-シクロデキストリンを含むが、他の賦形剤を含まない)参照)。γ-シクロデキストリンを配合物から取り除く場合(F12)、または90℃で、15分間、点眼剤を加熱することによって製造する場合(F2、F3およびF4)、水性点眼剤中に形成される16,17-不飽和デキサメタゾンおよびデキサメタゾンエノールアルデヒドはるかに少ない。12か月間以上、室温(22~23℃)で保存する間、点眼剤中に16,17-不飽和デキサメタゾンおよびデキサメタゾンエノールアルデヒドは、ほとんどまたは全く形成されない。F6において、γ-シクロデキストリンの水性懸濁液、ならびにデキサメタゾンを含み、かつγ-シクロデキストリンを除く他のすべての成分を含む別の水性懸濁液を、121℃で、15分間オートクレーブした。オートクレーブ後、2つの懸濁液/溶液を95℃まで冷却した後、混合し、次いでさらに室温まで冷却した(実施例1参照)。デキサメタゾンをγ-シクロデキストリンの非存在下で滅菌した場合、水性溶液である点眼剤配合物中に形成される16,17-不飽和デキサメタゾンおよびデキサメタゾンエノールアルデヒドはわずかである。
【0226】
[実施例4]
オートクレーブ(すなわち、121℃で20分間加熱)を行わない、オートクレーブ1回目、2回目および3回目の後における、分解されて16,17-不飽和デキサメタゾンおよびデキサメタゾンエノールアルデヒドを形成するデキサメタゾンの分画(%)で表される、水性点眼剤中の16,17-不飽和デキサメタゾンおよびデキサメタゾンエノールアルデヒドの量を、表3に示す。
【0227】
【表3】
【0228】
オートクレーブ(すなわち、121℃で20分間加熱)を行わない、オートクレーブ1回目、2回目および3回目の後における、分解されて16,17-不飽和デキサメタゾンおよびデキサメタゾンエノールアルデヒドを形成するデキサメタゾンの分画(%)で表される、水性点眼剤中の16,17-不飽和デキサメタゾンおよびデキサメタゾンエノールアルデヒドの量を、以下に示す。
【0229】
16,17-不飽和デキサメタゾンおよびデキサメタゾンエノールアルデヒドの形成は、試験した4つのpH全てで観察される。pH7.0における形成される16,17‐不飽和デキサメタゾンおよびデキサメタゾンエノールアルデヒドは、pH5.5よりも少ないが、他の分解生成物が出現した。英国薬局方2015(version 19.0)によれば、デキサメタゾン水性点眼剤懸濁液のpHは5.0~6.0であるべきである。
【0230】
[実施例5]
F1中のデキサメタゾンの分解を、25°C、40°C、60°C、70°Cおよび95°Cで調べた。デキサメタゾン消失の見かけの一次速度定数を決定し、見かけの活性化エネルギーを、アレニウス方程式を用いて計算した。この式を用いて、25℃でのデキサメタゾン消失の一次速度定数を推定した。10%(t90;貯蔵寿命)および0.5%(t99.5)分解のための時間も、速度定数から計算した。
【0231】
【表4】
【0232】
概して、Eの値は約50~85kJ/molであり、100kJ/molを超える値は非常に稀である。水性γ‐シクロデキストリン溶液中のデキサメタゾンを脱水して16,17‐不飽和デキサメタゾンおよびデキサメタゾンエノールアルデヒドを生成するEの見かけの値は、134.5kJ/molであり、例外的に高温の水性γ‐シクロデキストリン溶液中でのみ、16,17‐不飽和デキサメタゾンおよびデキサメタゾンエノールアルデヒドは形成された。
【0233】
[実施例6]
微粒子の大きさに及ぼす冷却速度の影響を調べた。デキサメタゾン点眼剤ビヒクルは、純水水中に、γ-シクロデキストリン(14.00%)、ポロキサマー407(2.50%)、塩化ベンザルコニウム(0.02%)、エデト酸二ナトリウム(0.10%)、塩化ナトリウム(0.57%)を含む(すべてw/v%)。密封されたガラス瓶中で、ビヒクルをオートクレーブで加熱(121℃で20分間)して、実質的に透明な溶液を形成する。95℃まで冷却した後、溶液に、固体デキサメタゾン粉末(1.50%w/v)を加える。デキサメタゾンを(15分間撹拌しながら)溶解した後、溶液を少量(約5ml)に分け、異なる温度に設定したサーモスタットに入れる。時間に対して、温度変化を記録する。得られた懸濁液の粒径および粘度を測定する。
【0234】
[実施例7]
配合物F6における、滅菌時間および温度の効果、ならびに混合時間の効果を調べた。配合物は、実施例1に記載されるように製造される。F6の形成において、γ-シクロデキストリンの水性懸濁液(B部)ならびにデキサメタゾンを含む水性懸濁液およびγ-シクロデキストリンを除く全ての他の成分を含む別の水性懸濁液(A部)を、121℃で、15分間オートクレーブする。オートクレーブ後、2つの懸濁液/溶液を95℃まで冷却した後、混合し、次いでさらに室温まで冷却する(実施例1および実施例3、参照)。
【0235】
滅菌およびγ-シクロデキストリンを他の賦形剤への混合および混合の間の改変された技術的パラメータ、ならびに16,17-不飽和デキサメタゾンおよびデキサメタゾンエノールアルデヒドに分解された分画の量を表5に示す。
【0236】
【表5】
【0237】
配合物F6aおよびF6bは、γ-シクロデキストリンを全く含まず、滅菌工程の効果のみを示す。F6aは、121℃で、15分間、オートクレーブ中で1回滅菌され、一方、F6bは、同じ条件で、2回の滅菌サイクルを行った。1回の滅菌サイクルでは、16,17-不飽和デキサメタゾンおよびデキサメタゾンエノールアルデヒドが0.05%(点眼液中のデキサメタゾンの総量の%)加わり、2回の滅菌サイクルでは16,17-不飽和デキサメタゾンおよびデキサメタゾンエノールアルデヒドが0.10%加わった。
【0238】
配合物F6cは、γ-シクロデキストリンの添加後の95℃での二重混合時間の効果を示す。さらに15分間混合すると、16,17-不飽和デキサメタゾンおよびデキサメタゾンエノールアルデヒドが、F6の0.20%からさらに0.08%加わる。
【0239】
配合物F6dは、γ-シクロデキストリンの添加後95℃での15分間の混合と組み合わせて、二重オートクレーブ(2回の滅菌サイクル)の効果を示す。二重滅菌は、16,17-不飽和デキサメタゾンおよびデキサメタゾンエノールアルデヒドを、F6の0.20%からさらに0.05%加わり、これは、γ-シクロデキストリンを含まないF6aおよびF6b配合物の結果に対応する。
【0240】
配合物F6eは、121℃の代わりに135℃で15分間滅菌し、次いでγ-シクロデキストリンの添加後、95℃で15分間混合する効果を示す。16,17‐不飽和デキサメタゾンおよびデキサメタゾンエノールアルデヒドの量は、0.20%から0.34%に増加した。
【0241】
これらの結果は、製造方法が確固としたものであり、技術的パラメータの小さな変化が、最終生成物中の16,17-不飽和デキサメタゾンおよびデキサメタゾンエノールアルデヒドの量に本質的に影響を及ぼさないことを示している。
【0242】
[実施例8]
製造プロセスF6は、工業規模で実施された。水性デキサメタゾン点眼剤の組成は、以下の通りである:純水中、デキサメタゾン(1.50%w/v)、γ-シクロデキストリン(14.00%w/v)、ポロキサマー407(2.50%w/v)、エデト酸二ナトリウム(0.10%w/v)、塩化ナトリウム(0.57%w/v)。バッチサイズは、400リットルであった。
【0243】
F15:80℃の純水に、デキサメタゾンと、γ-シクロデキストリンを除く全ての賦形剤とを溶解または懸濁した(A液)。別で、80℃の純水に、γ-シクロデキストリンを別々に溶解した(B液)。A液及びB液を、121℃で15分間滅菌した。滅菌および冷却後、A液およびB液を混合した。次いで、混合物を95℃に再加熱し、撹拌下で15分間その温度に維持した。溶液を40分間未満のうちに40℃まで冷却し、次いで(さらに40分間以内に)室温まで冷却した。次いで、得られた微粒子懸濁液を単位用量容器に充填した。(表6、参照)。
【0244】
【表6】
【0245】
[実施例9]
水性デキサメタゾン点眼剤(F16)の組成は、以下の通りである:純水中、デキサメタゾン(1.50%)、γ-シクロデキストリン(14.00%)、ポロキサマー407(2.50%)、エデト酸二ナトリウム(0.10%)、塩化ナトリウム(0.57%)、すべてw/v%。賦形剤を、AおよびBの2つの部分に分ける。Aでは、80℃の純粋に、γ‐シクロデキストリンを除くすべての賦形剤を溶解し、Bでは、別で、80℃の純粋に、γ‐シクロデキストリンを純水に80℃で別々に溶解した。デキサメタゾンを、滅菌直前に賦形剤混合物に添加した。デキサメタゾンを含む水中の賦形剤混合物(A)および水中に溶解したγ-シクロデキストリン(B)を、121℃で15分間滅菌した。滅菌後、AおよびBを95℃で混合した。15分間撹拌した後、3つの異なる冷却速度(ΔT/Δt)で、水性溶液を95℃から40℃まで冷却した。F16aの冷却速度は17.7°C/分、F16bの冷却速度は1.3°C/分、F16cの冷却速度は1.2°C/分であった(表7)。
【0246】
【表7】
【0247】
この表は、平均粒径が冷却速度によってどのように制御されるかを示している。冷却速度が速ければ速いほど、粒子は小さくなり、粘度は高くなる。
【0248】
[実施例10]
キナーゼ阻害剤を、1%(w/v)~15%(w/v)のγ-シクロデキストリンを含む水性溶液に懸濁した。オートクレーブ中で形成される懸濁液を加熱(121℃で15分間)することで、50%のキナーゼ阻害剤が分解された。一方、95℃で15分間加熱し、25℃まで急速に冷却することで、分解が著しく減少し、微粒子懸濁液を生成した。純水中のキナーゼ阻害剤の溶解度(S)および活性医薬成分/γ-シクロデキストリン複合体の安定定数(K1:1)を、相溶解度プロファイルの最初の線形から決定した(表8)。
【0249】
【表8】
【0250】
[実施例11]
純水、水性γ-シクロデキストリン溶液、γ-シクロデキストリンおよびチロキサポールを含有する水性溶液(1%w/v)、ならびにγ-シクロデキストリン、塩化ベンザルコニウム(0.02%w/v)、エデト酸二ナトリウム(0.10%w/v)および塩化ナトリウム(0.05%w/v)を含む水性点眼剤溶媒からなる、水性溶媒に、キナーゼ阻害剤を懸濁した。キナーゼ阻害剤に依存して、γ‐シクロデキストリンの濃度は異なる。溶解度は、実施例10に記載したように決定した。表9では、γ-シクロデキストリンの濃度、ならびにキナーゼ阻害剤のγ-シクロデキストリンに対するチロキサポールおよび点眼剤賦形剤混合物の効果を示す。
【0251】
【表9】
【0252】
結果が示すことには、賦形剤は、キナーゼ阻害剤の可溶化に有意な効果を有し得る。
【0253】
[実施例12]
1%(w/v)~15%(w/v)のγ-シクロデキストリンを含有する水性溶液に、ドビチニブを懸濁する。オートクレーブ中で形成される懸濁液を加熱(121℃で15分間)することで、ドビチニブが分解されるはずであり、一方、95℃で15分間加熱し、25℃で20分間にわたって冷却することで、ドビチニブ/γ-シクロデキストリン固体複合体を含む組成物となり、ドビチニブの分解を有意に減少させるはずである。
【0254】
[実施例13]
1%(w/v)~15%(w/v)のγ-シクロデキストリンを含有する水性溶液に、ロサルタンを懸濁する。オートクレーブ中で形成される懸濁液を加熱(121℃で15分間)することで、ロサルタンが分解されるはずであり、一方、95℃で15分間加熱し、25℃で20分間にわたって冷却することで、ロサルタン/γ-シクロデキストリン固体複合体を含む組成物となり、ロサルタンの分解を有意に減少させるはずである。
【0255】
[実施例14]
1%(w/v)~15%(w/v)のγ-シクロデキストリンを含有する水性溶液に、オルメサルタンを懸濁する。オートクレーブ中で形成される懸濁液を加熱(121℃で15分間)することで、オルメサルタンが分解されるはずであり、一方、95℃で15分間加熱し、25℃で20分間にわたって冷却することで、オルメサルタン/γ-シクロデキストリン固体複合体を含む組成物となり、オルメサルタンの分解を有意に減少させるはずである。
【0256】
[実施例15]
1%(w/v)~15%(w/v)のγ-シクロデキストリンを含有する水性溶液に、ドルゾラミドを懸濁する。オートクレーブ中で形成される懸濁液を加熱(121℃で15分間)することで、ドルゾラミドが分解されるはずであり、一方、95℃で15分間加熱し、25℃で20分間にわたって冷却することで、ドルゾラミド/γ-シクロデキストリン固体複合体を含む組成物となり、ドルゾラミドの分解を有意に減少させるはずである。
【0257】
[実施例16]
1%(w/v)~15%(w/v)のγ-シクロデキストリンを含有する水性溶液に、ジクロフェナクを懸濁する。オートクレーブ中で形成される懸濁液を加熱(121℃で15分間)することで、ジクロフェナクが分解されるはずであり、一方、95℃で15分間加熱し、25℃で20分間にわたって冷却することで、ジクロフェナク/γ-シクロデキストリン固体複合体を含む組成物となり、ジクロフェナクの分解を有意に減少させるはずである。
【0258】
[実施例17]
1%(w/v)~15%(w/v)のγ-シクロデキストリンを含有する水性溶液に、ネパフェナクを懸濁する。オートクレーブ中で形成される懸濁液を加熱(121℃で15分間)することで、ネパフェナクが分解されるはずであり、一方、95℃で15分間加熱し、25℃で20分間にわたって冷却することで、ネパフェナク/γ-シクロデキストリン固体複合体を含む組成物となり、ネパフェナクの分解を有意に減少させるはずである。
【0259】
本明細書で使用される成分、構成要素、反応条件などの量を表す任意の数は、すべての場合において「約」という用語によって修飾されるものと理解されるべきである。記載されている数値範囲およびパラメータにもかかわらず、本明細書に提示されている主題の広い範囲は近似値であり、記載されている数値は可能な限り正確に示されている。しかし、任意の数値はそれらのそれぞれの測定技術において見出される標準偏差から明らかなように、特定の誤差または不正確さを本質的に含み得る。「手段」との用語が明示的に使用されない限り、本明細書に列挙される特徴のいずれも、米国特許法第112条(f)、または旧米国特許改正法(Pre-AIA)第6項を呼び起こすものと解釈されるべきではない。
【0260】
本発明はその例示的な実施形態に関連して説明されてきたが、特に説明されていない追加、欠失、修正、および置換が本開示の精神および範囲から逸脱することなく行われ得ることは、当業者によって理解されるであろう。
図1
図2