(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-07
(45)【発行日】2022-09-15
(54)【発明の名称】レーザー堆積溶接装置によって溶融した材料を用いて工作物の内側輪郭の開口部を縮小するか又は完全に閉鎖する方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/34 20140101AFI20220908BHJP
B23K 26/21 20140101ALI20220908BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20220908BHJP
【FI】
B23K26/34
B23K26/21 Z
B33Y10/00
(21)【出願番号】P 2019537311
(86)(22)【出願日】2018-01-10
(86)【国際出願番号】 EP2018050563
(87)【国際公開番号】W WO2018130571
(87)【国際公開日】2018-07-19
【審査請求日】2020-12-18
(31)【優先権主張番号】102017200233.6
(32)【優先日】2017-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】505385985
【氏名又は名称】ザウアー ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】SAUER GmbH
【住所又は居所原語表記】Gildemeisterstr.1 Stipshausen Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】デイビット アルバート
【審査官】岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2004/022266(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0074937(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02842677(EP,A1)
【文献】特開平06-008343(JP,A)
【文献】特開2016-002565(JP,A)
【文献】特開平04-169222(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/34
B23K 26/21
B33Y 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー堆積溶接装置によって溶融した材料を用いて工作物の内側輪郭の開口部を縮小するか又は完全に閉鎖する方法であって、
縁部分によって画定された開口部を有する内側輪郭を備えた工作物を準備するステップと、
レーザー堆積溶接によって、前記工作物の前記内側輪郭の前記縁部分において開始して、溶融材料から複数の基礎ウェブを形成するステップであって、その結果、該形成された基礎ウェブが所定角度で前記縁部分から突出する、ステップと、
レーザー堆積溶接を用いて溶融材料から接続ウェブを、基礎ウェブ及び接続ウェブを備える支持構造体が形成されるように形成することによって、隣接する基礎ウェブを接合するステップと、
溶融材料から作製されかつ前記支持構造体に接続されるカバー層を、前記内側輪郭の前記開口部が縮小するか又は完全に閉鎖されるように形成するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
レーザー堆積溶接装置によって溶融した材料を用いて工作物の外側輪郭を突出させる方法であって、
縁部分によって画定された外側輪郭を備えた工作物を準備するステップと、
レーザー堆積溶接によって、前記工作物の前記外側輪郭の前記縁部分において開始して、溶融材料から複数の基礎ウェブを形成するステップであって、その結果、該形成された基礎ウェブが所定角度で前記縁部分から突出する、ステップと、
レーザー堆積溶接を用いて、溶融材料から接続ウェブを、基礎ウェブ及び接続ウェブを備える支持構造体が形成されるように形成することによって、隣接する基礎ウェブを接続するステップと、
溶融材料から作製されかつ前記支持構造体に接続される突出層を、前記工作物の前記外側輪郭が突出するように形成するステップと、
を含む、方法。
【請求項3】
前記カバー層又は前記突出層は、前記支持構造体の自由空間を溶融材料で充填することによって形成されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記カバー層又は前記突出層は、前記支持構造体に溶融材料の追加の層を塗布することによって形成されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記支持構造体の前記基礎ウェブ及び/又は前記接続ウェブは、
材料供給装置を用いて、前記工作物の所定場所に又は既に塗布された材料の所定場所に、溶融させるべき前記材料を供給するステップと、
前記レーザー堆積溶接装置のレーザービームをオンにし、該レーザービームを前記所定場所に向けるステップであって、その結果、溶融させるべき前記材料が、前記所定場所で前記レーザービームによって溶融し堆積する、ステップと、
所定のレーザー時間を超えた後、前記レーザービームをオフにするステップと、
所定の冷却時間の間、溶融させるべき材料を前記所定場所に更に供給するステップと、により、溶融材料のドット状の塗布によって形成されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
複数の前記基礎ウェブ及び複数の前記接続ウェブは、該接続ウェブが各々、隣接する前記基礎ウェブを互いに接続し、該基礎ウェブ及び該接続ウェブが合わせて格子状構造体を形成するように配置されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記基礎ウェブ及び前記接続ウェブは、合わせて、くもの巣状構造体、市松模様構造体又はハニカム状構造体を形成することを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記レーザービームは、1mm~5mm、好ましくは2mm~4mm、より好ましくは2.5mm~3.5mmの直径を有することを特徴とする、請求項5~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記レーザー時間は、0.2秒~2秒間、好ましくは0.5秒~1.5秒間、より好ましくは1秒間であることを特徴とする、請求項5~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記支持構造体の基礎ウェブ及び/又は接続ウェブの形成において、前記材料供給装置及び前記レーザービームは、各々、前記支持構造体のそれぞれの前記基礎ウェブ及び/又は前記接続ウェブに対して更なる材料を塗布するために、前記所定場所における溶融材料のドット状塗布の後に、前記塗布された材料の他の所定場所に、0.5mm~1.8mm、好ましくは0.8mm~1.5mm、より好ましくは1mm~1.2mmずらされることを特徴とする、請求項5~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記冷却時間は、1秒~10秒間、好ましくは3秒~8秒間、より好ましくは4秒~6秒間であることを特徴とする、請求項5~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記材料供給装置は、前記溶融させるべき材料を、ノズルを介して前記所定場所に的を絞って向けるように適合されることを特徴とする、請求項5~11のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文に記載の、レーザー堆積溶接装置によって溶融した材料を用いて工作物の内側輪郭の開口部を縮小するか又は完全に閉鎖する方法と、請求項2の前文に記載の、レーザー堆積溶接装置によって溶融した材料を用いて工作物の外側輪郭を突出させる方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
3D構造体の製造のための個々の層の付加製造の分野では、特に、堆積溶接(又は、クラッディングとも呼ぶ)の製造プロセスに属するレーザー粉末堆積溶接が使用される。局所熱を用いて工作物の表面を溶融させ、同時に、略任意の金属材料を粉末形態で塗布する。最近では、熱源として、高性能ダイオードレーザー又はファイバーレーザーが主に使用される。
【0003】
堆積溶接において、特に、上に金属材料を溶接することができかつ後日除去することができる補助構造体を使用することができない場合、張出し又は自己支持構造体の形成が特に問題である。
【0004】
大部分の場合、目的は、材料が塗布されるときに余分な張出しを回避することができるように、堆積溶接プロセス中にいくつかの空間的方向に移動することができるように構成要素の輪郭を設計することである。しかしながら、この手順は、例えば、プロセス中に構成要素が移動することによる、構成要素とレーザー堆積溶接装置との間の衝突のリスクがある。
【0005】
しかしながら、より広範な張出しを形成するように試みられる場合、今日まで既知のレーザー堆積溶接プロセスは、材料が塗布されるべき場所から溶融材料が流出するか又は滴り落ちるため、限られた範囲までしか適しない。これにより、このようにして製造された部品の低品質な製造結果又は高い廃棄率に至り、その結果、これらのプロセスは、技術的及び経済的観点からこれらの作業には適していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の1つの目的は、レーザー堆積溶接装置によって溶融した材料を用いて工作物の内側輪郭の開口部を縮小するか又は完全に閉鎖する方法を提供することにより、上記問題を回避することである。
【0007】
さらに、本発明の目的は、レーザー堆積溶接装置によって溶融した材料を用いて工作物の外側輪郭を突出させる方法を提供することによっても、上記問題を回避することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
これらの目的は、請求項1に記載の方法により、又は請求項2に記載の方法により達成される。従属請求項は、各々、本発明による方法の有利な実施形態に言及する。
【0009】
レーザー堆積溶接装置によって溶融した材料を用いて工作物の内側輪郭の開口部を縮小するか又は完全に閉鎖する本発明による方法は、
縁部分によって画定された開口部を有する内側輪郭を備えた工作物を準備するステップ
と、
レーザー堆積溶接によって、工作物の内側輪郭の縁部分において開始して、溶融材料から複数の基礎ウェブを形成するステップであって、その結果、形成された基礎ウェブが所定角度で縁部分から突出する、ステップと、
レーザー堆積溶接を用いて溶融材料から接続ウェブを、基礎ウェブ及び接続ウェブを備える支持構造体が形成されるように形成することによって、隣接する基礎ウェブを接合するステップと、
溶融材料から作製されかつ支持構造体に接続されるカバー層を、内側輪郭の開口部が縮小するか又は完全に閉鎖されるように形成するステップと、
を含む。
【0010】
支持構造体を組み立てることにより、レーザー堆積溶接プロセスを用いて広い開口部領域でさえも閉鎖することができる。支持構造体を、段階を追って組み立てることにより、自己支持型/張出し構造体を段階的に構築することが可能となり、そうした構造体は更に、開口部を閉鎖するか、又は、支持構造体に溶融材料の追加の層を塗布するために使用され、それにより開口部を閉鎖することができる。
【0011】
支持構造体は、個々の溶融材料ドットを塗布することにより段階的に組み立てられ、溶融材料ドットは、全て、既存の構造体(工作物又は既に塗布された材料)の上に塗布された後に冷却される。依然として液体の金属のこの急速な冷却により、塗布されたばかりの材料が比較的迅速に凝固することになる。したがって、塗布されたばかりの材料の形状を大まかに維持することができ、その結果、比較的精密な設計が可能となる。
【0012】
溶融材料ドットを冷却するために、溶融した材料の上に更なる金属粉末が供給されることが好ましく、そこで、金属粉末は、溶融物に結合し、最上層を形成する。この最上層は、後に、更なる溶融材料を塗布するために有利に使用することができ、液化材料は、最上層に特に迅速にかつ有効に結合する。さらに、溶融した材料は、金属粉末の輸送ガスによって冷却され、輸送ガスは、材料の輸送媒体として、溶融させるべき材料とともに、処理されるべき場所まで強制的に搬送される。
【0013】
この方法の第1の試験において、本発明者らは、場合によっては、相当な長さの、基礎ウェブ等、自己支持型要素を製造することができることを、思いがけなく発見した。ウェブが過度に(例えば、重力等に起因して)変形することなく、かつ補助構造体を使用する必要なしに、最大数センチメートルの長さを達成することができた。
【0014】
これに基づき、場合によっては、広い開口部を閉鎖することができ、使用する材料は、管理可能な量で維持することができる。さらに、塗布された層の必要な再処理は大幅に減少し、これは、この方法が後日連続して使用されるとき、機械加工時間を短縮することができることを意味する。
【0015】
レーザー堆積溶接装置によって溶融した材料を用いて工作物の外側輪郭を突出させる本発明による方法は、
縁部分によって画定された外側輪郭を備えた工作物を準備するステップと、
レーザー堆積溶接によって、工作物の外側輪郭の縁部分において開始して、溶融材料から複数の基礎ウェブを形成するステップであって、その結果、形成された基礎ウェブが所定角度で縁部分から突出する、ステップと、
レーザー堆積溶接を用いて、溶融材料から接続ウェブを、基礎ウェブ及び接続ウェブを備える支持構造体が形成されるように形成することによって、隣接する基礎ウェブを接続するステップと、
溶融材料から作製されかつ支持構造体に接続される突出層を、工作物の外側輪郭が突出
するように形成するステップと、
を含む。
【0016】
工作物の内側輪郭の開口部を縮小するか又は完全に閉鎖する方法と同様に、既に述べた利点は、突出層が形成される場合にも達成される。さらに、当然ながら、この方法を使用して外側又は内側輪郭の一部のみを更に形成することもできることが有利である。
【0017】
これは、製造すべき構成要素が突出部分を有するように著しく大きい本体を機械加工するために、フライス加工等のサブトラクティブ製造プロセスを使用する代わりに、時間及びコストに関して最適化されるように既存の工作物により小さい(部分的な)突出部を適用することができる場合に、特に有利である。
【0018】
さらに、これらの方法を使用して、溶接により既存の構成要素に十分に計算された方法で自由に成形可能な部分を追加することができ、これにより、比較的複雑な設計が可能になると同時に、材料の適切な使用及び製造時間が確保される。
【0019】
本発明による方法の有利な展開は、カバー層又は突出層が、支持構造体の自由空間を溶融材料で充填することによって形成されるということにある。
【0020】
これにより、支持構造体自体を、カバー層又は突出層として更に展開させることができることが可能になる。その結果、主に格子形状である支持構造体の自由空間を、更なる溶融材料で充填することができる。
【0021】
本発明による方法の有利な展開は、カバー層又は突出層が、支持構造体に溶融材料の追加の層を塗布することによって形成されるということにある。
【0022】
さらに、支持構造体は、溶融材料の追加の層が塗布される補助構造体として使用することができる。これは、広い領域に及ぶか又は広い領域を突出させなければならず、かつ支持層が或る種の基礎構造として追加の安定性を提供する場合に、特に有利である。支持構造体の格子状構造体は、高い安定性と比較的低い重量との組合せを可能にするため、この目的で特に好適である。
【0023】
本発明による方法の特に有利な展開は、支持構造体の基礎ウェブ及び/又は接続ウェブが、
材料供給装置を用いて、工作物の所定場所に又は既に塗布された材料の所定場所に、溶融させるべき材料を供給するステップと、
レーザー堆積溶接装置のレーザービームをオンにし、レーザービームを所定場所に向けるステップであって、その結果、溶融させるべき材料が、所定場所でレーザービームによって溶融し堆積する、ステップと、
所定レーザー時間を超えた後、レーザービームをオフにするステップと、
所定冷却時間の間、溶融させるべき材料を所定場所に更に供給するステップと、
により、溶融材料のドット状の塗布によって形成されるということにある。
【0024】
支持構造体を形成する特に有利な方法は、基礎ウェブ及び接続ウェブのドット状構成である。ここでは、後に更なる金属粉末及び/又は金属粉末の輸送ガスを用いて、溶融した材料を冷却し、したがって、溶融材料をその形態でかつ局所的に凝固させるために、個々の材料ドットは、溶融し、既存の構造体に塗布される。
【0025】
これにより、支持構造体をその組立中に比較的正確に適所に固定し、使用の必要に応じて成形することが可能になる。材料ドットが、塗布される間に液体状態であり、自然に、
作用する重力の方向に移動する傾向があるため、製造された構造体の変形を大きく予防することができる。
【0026】
本発明による方法の有利な展開は、複数の基礎ウェブ及び複数の接続ウェブが、接続ウェブが各々、隣接する基礎ウェブを互いに接続し、基礎ウェブ及び接続ウェブが互いに格子状構造体を形成するように配置されるということにある。
【0027】
本方法は、円筒状工作物に、又は概して密封構造体に限定されない。反対に、本発明による方法は、工作物の内側輪郭のトレンチ形状又は長手方向開口部を縮小するか又は完全に閉鎖するための基礎ウェブを、トレンチ形状又は長手方向開口部に関して実質的に幅方向に縁部分から延在するように配置することにより、有利に展開することができ、接続ウェブは、トレンチ形状又は長手方向開口部の縁部分に対して実質的に平行に配置されるように、列にして配置される。
【0028】
これにより、後に、カバー層として展開することができる支持構造体により長手方向開口部(例えば、冷却ダクトの一方の長手方向側部)に完全に若しくは部分的にわたることが可能になり、又は、長手方向開口部を縮小するか若しくは完全に閉鎖するために、支持構造体に別個のカバー層を適用することができる。
【0029】
さらに、本発明による方法は、基礎ウェブ及び接続ウェブが合わせて、くもの巣状構造体、市松模様構造体又はハニカム状構造体を形成する場合、有利な方法で更に展開することができる。
【0030】
大部分の場合、支持構造体は、展開が続くことができる開始位置を形成する。使用の場合に応じて、用途に応じて支持構造体を設計するために異なる格子形状を使用することに意味がある。くもの巣状、市松模様又はハニカム状構造体の形成は、あり得る構造体の単なる一例である。本方法は、記載した又は指定した形態に決して限定されず、完全に自由に設計された形態及び相互結合とともに、既知の構造的パターンの組合せからも構成することができる。
【0031】
さらに、本発明による方法は、レーザービームが、1mm~5mm、好ましくは2mm~4mm、より好ましくは2.5mm~3.5mmの直径を有する場合に、有利に展開することができる。
【0032】
さらに、本発明による方法は、レーザー時間が、0.2秒~2秒間、好ましくは0.5秒~1.5秒間、より好ましくは1秒間である場合に、有利に展開することができる。
【0033】
これにより、溶融材料の適用された構造体は、比較的薄くかつ場合によってはフィリグリー状に構築することができるが、他の場合では、より大きい材料厚さで構築することもできる、ということが可能になる。大部分の場合、こうした構築は、製造時間及びエネルギーをこの場合もまた節約することができるように、単一パスで行うことができる。
【0034】
本発明による方法の有利な展開は、所定場所における溶融材料のドット状塗布の後、材料供給装置及びレーザービームは、支持構造体のそれぞれの基礎ウェブ及び/又は接続ウェブに対して別の材料をドット状に塗布するために、支持構造体の基礎ウェブ及び/又は接続ウェブの形成中に、塗布された材料の他の所定場所に、各々、0.5mm~1.8mm、好ましくは0.8mm~1.5mm、より好ましくは1mm~1.2mm、ずらされることにある。
【0035】
したがって、塗布された材料の量とレーザーポイント径とに応じて、基礎ウェブ及び接
続ウェブをより小さいステップでもより大きいステップでも形成することができる。これは、支持構造体を、他の任意の構造体と同様により正確に及び/又ははるかにより短時間で達成することができることを意味する。
【0036】
さらに、本発明による方法は、冷却時間が1秒~10秒間、好ましくは3秒~8秒間、より好ましくは4秒~6秒間であるという事実により、有利に展開することができる。
【0037】
ここで、また、冷却プロセスのパラメーター、すなわち、対応して冷却時間のパラメーターを、それぞれの使用のケースに適合させることができる。したがって、要件に応じて、異なる精度及び製造速度を達成することができ、したがって、塗布された材料の表面構造に影響を与えることができる。
【0038】
本発明による方法の有利な展開は、材料供給装置が、溶融させるべき材料を所定場所にノズルを介して的を絞って誘導するように配置されていることにある。
【0039】
採用される金属粉末を最適に利用するために、金属粉末が溶融し塗布されるべき場所に、ノズルを通してこの粉末を向けることが望ましい。さらに、ノズルを通して金属粉末を集中させることにより、(基礎ウェブ及び接続ウェブ等)個々の部分のより正確な形成を確実にすることができる。さらに、これにより、資源を節約することができる。
【0040】
本発明による方法は、処理すべき工作物表面の表面法線に対して任意の角度で、好ましくは-45度~+45度、より好ましくは-25度~+25度で設定されるように、ノズルを設計することによって、有利に展開することができる。
【0041】
本発明による方法によって表面を形成する場合、時に、所与の空間条件及び利用可能な作業空間に従って、異なる角度にノズルを設定することが必要である場合がある。大部分の場合、ノズルは、塗布すべき表面の形成の方向に対して垂直に位置決めされる。有利には、ノズルと工作物との間の衝突のリスクがある場合、ここでは、角度は、あり得る衝突を回避するために、垂直面から任意の角度、好ましくは、例えば±45度又は±25度で設定することができる。
【0042】
本発明による方法を通して、レーザー粉末堆積溶接等、付加製造技法を使用して、開口部の閉鎖物及び突出部を、これらの面積が比較的広くなければならない場合であっても、閉鎖物又は突出部の形成中に補助構造体に頼る必要なしに形成することができる。付加製造の利点(例えば、資源の節約、経済的効率等)を使用することができ、工作物が自己支持型形態である場合であっても、1つの決定的な点、すなわち、工作物において非常に自由に形状を設計し形成する可能性にまで、そうした利点を拡張することができる。これは、以前から既知のレーザー堆積溶接プロセスの特に有利な展開を表し、特定用途の構成要素の製造においてこの既知の技法の著しく広い使用範囲を、使用者に提供する。
【0043】
更なる態様及びそれらの利点は、上述した態様及び特徴を実施する利点及びより具体的な可能性とともに、以下の説明及び添付図面の解説に記載しており、そうした説明及び解説は、決して、限定するものとして解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】工作物の内側輪郭の開口部を縮小するか又は完全に閉鎖するための本発明による方法のフローチャートである。
【
図2a】支持構造体を備える工作物と、工作物の開口部を閉鎖する、追加として適用されたカバー層との断面を示す図である。
【
図2b】工作物の内側輪郭の開口部を縮小するか又は完全に閉鎖するための本発明の方法による、形成された支持構造体の一実施形態を示す図である。
【
図2c】工作物の内側輪郭のトレンチ形状又は長手方向開口部を縮小するか又は完全に閉鎖する本発明の方法による、形成された支持構造体の一実施形態を示す図である。
【
図3】工作物の外側輪郭を突出させる本発明による方法のフローチャートである。
【
図4a】形成された支持構造体を備える工作物と、工作物の外側輪郭を突出させる、追加として適用された突出層との断面を示す図である。
【
図4b】工作物の外側輪郭を突出させる本発明の方法による、形成された支持構造体の一実施形態を示す図である。
【
図5】支持構造体を形成するための溶融材料をドット状に塗布する本発明による方法のフローチャートである。
【
図6】縁部分に対する支持構造体の傾斜角度と、材料供給装置のノズル及びレーザービームの設定角度とを有する、工作物及び支持構造体の断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、添付図面を参照して、本発明の例及び実施形態について詳細に説明する。図面における等しいか又は同様の要素には、同じ参照符号を付している可能性がある。
【0046】
しかしながら、本発明は、以下に記載する実施形態及びその特徴に決して限定も制限もされず、実施形態の変更、特に、記載する例の特徴の変更により、又は独立請求項の保護の範囲内で記載する例の特徴のうちの1つ以上の組合せにより包含される変更もまた含むことに留意されるべきである。
【0047】
図1は、工作物の内側輪郭2の開口部を縮小するか又は完全に閉鎖する本発明による方法のフローチャートを示し、
図2a及び
図2bを更に参照して本方法について以下に説明する。
【0048】
図2aは、形成された支持構造体4を備える工作物1と、工作物1の開口部を閉鎖する、追加的に適用されたカバー層5との断面を図によって示す。
【0049】
図2bは、工作物の内側輪郭2の開口部を縮小するか又は完全に閉鎖する本発明の方法による、形成された支持構造体4の一実施形態を図によって示す。
【0050】
ステップS102において、内側輪郭2を有する工作物1が、本方法を適用するために準備される。さらに、内側輪郭2は、本発明による方法によりサイズが縮小されるか又は更には完全に閉鎖されるべき開口部を有する。また、開口部は縁部分11によっても画定される。
【0051】
次のステップS103において、複数の基礎ウェブ41が形成される。これは、特に、材料供給装置8を用いて溶融させるべき材料を供給することと、レーザービーム9を用いる後続する溶融とにより、レーザー堆積溶接装置7を用いて溶融させるべき材料を溶融させ、縁部分11において開始して材料を塗布することによって行われる。ここでは、基礎ウェブ41は、所定角度で縁部分11から突出するように形成される。
【0052】
基礎ウェブ41が縁部分11から突出する角度は、支持構造体4の様々な形態によって決めることができる。例えば、開口部を閉鎖するために表面の代わりに屋根縁形状を選択することが有用である場合がある。しかしながら、力の導入及び伝達とともに、あり得る更なる材料塗布の設計もまた、支持構造体4の設計に重要であり、したがって、
図2aに示すように、基礎ウェブ41の変更された角度において考慮することができる。
【0053】
続くステップS104において、形成された基礎ウェブ41、特に隣接する基礎ウェブ
41は、いわゆる接続ウェブ42を用いて接続され、さらに、接続ウェブ42もまた、レーザー堆積溶接装置7によって形成される。結果として得られる構造体は、基礎ウェブ41が接続ウェブ42に接続されているため、それ自体で極めて安定しており、したがって、工作物の内側輪郭2の開口部の閉鎖又は狭まりを更に形成するために、格子形状の支持構造体4として使用することができる。
【0054】
次のステップS105において、工作物1の内側輪郭2の開口部が縮小するか又は完全に閉鎖されるように、追加の溶融材料により、支持構造体4に関連してカバー層5が形成される。
【0055】
有利には、ここで、支持構造体4、又は工作物の内側輪郭2の開口部の閉鎖物を使用して、レーザー堆積溶接プロセスを用いて工作物に更なる構造体を生成することができる。
【0056】
ここで工作物1は、内側輪郭2を有し、内側輪郭2の開口部は、本発明による方法を用いて完全に閉鎖されるべきである。この目的で、本発明による方法を使用して支持構造体4が形成され、支持構造体4は、内側輪郭2の縁部分11に一体的に接合され、開口部に完全にわたる。この支持構造体4により、更なる層、すなわちカバー層5の適用を可能にすることができ、カバー層5を用いて、ここで内側輪郭2の開口部が完全に閉鎖される。
【0057】
しかしながら、別個に適用されるカバー層5の代わりに、更なる溶融材料により支持構造体4の自由空間を充填することも可能である。この目的で、格子状構造体を有する支持構造体4に、比較的微細なメッシュの格子構造を提供することが有利であり、その結果、既存の支持構造体4への塗布時に液体である金属材料が、例えば、あり得る最大の接着力にさらされ、したがって、支持構造体4に付着する。
【0058】
両方の場合に、本発明による方法を用いて、開口部を閉鎖することができ、又は、支持構造体4を形成することにより、開口部の閉鎖を支持することができる。
【0059】
図示する支持構造体4では、基礎ウェブ41は、それらの長手方向が(工作物1の平面図において)工作物1の中心における仮想交差点で実質的に集まるように配置される。いくつかの接続ウェブ42は、(ここで例示する例では、多角形接続ウェブ列を形成するように)一列に並べられ、これらの接続ウェブ列は、基礎ウェブ41の仮想交差点の周囲に同心状に配置される。結果として得られる例示的な構造体は、くもの巣のパターンに似ている。
【0060】
図2bは、例えば、工作物の内側輪郭2の開口部を閉鎖するために使用することができる支持構造体4が、いかに段階的に形成されるかを示す。内側輪郭2の開口部を画定する、工作物の縁部分11に、材料が塗布される。
【0061】
縁部分11から開始して、ここで、一例として、所定数の基礎ウェブ41が形成され、それらは、「成長する」支持構造体4に更なる安定性を与えるために、接続ウェブ42を形成するように接続される。これは、今日まで、既存の支持構造体4に又は縁部分11に、一端を介して一体的に接合されているのみであった基礎ウェブ41に対して、特に決定的である。
【0062】
図2bの右側の図は、既に明らかに「成長した」支持構造体4を示す。この支持構造体4は、例えば、工作物の内側輪郭2の開口部の縮小/狭まりのために、既に使用することができる。
【0063】
図2a及び
図2bに示す支持構造体4は、図示し又は記載した構造体に限定されない。
反対に、くもの巣状、市松模様又はハニカム状構造体等、異なる形状の構造体を形成することができる。しかしながら、構造体の組合せが意図される目的にかなう場合は、そうした組合せもまた使用することができる。
【0064】
図2cは、工作物の内側輪郭2のトレンチ形状又は長手方向開口部を縮小する(上図)又は完全に閉鎖する(下図)本発明の方法による、形成された支持構造体4の一実施形態を図によって示す。
【0065】
ここで、基礎ウェブ41は、例えば、トレンチ形状又は長手方向開口部の幅方向において縁部分11から形成されるように配置されている。接続ウェブ42は、したがって、トレンチ形状又は長手方向開口部の経路に対応するように設計されている支持構造体4を形成するために、縁部分11に対して本質的に平行であるように、設計されている。
【0066】
ここで、この支持構造体4は、カバー層5内に展開することができ、又は、支持構造体4に別個のカバー層5が適用される。両方とも、トレンチ形状又は長手方向開口部を縮小するか又は完全に閉鎖するために有利に使用することができる。
【0067】
図3は、工作物の外側輪郭3を突出させる本発明による方法のフローチャートを示し、本方法について、
図4a及び
図4bを更に参照して以下に説明する。
【0068】
図4aは、形成された支持構造体4を有する工作物1と、工作物1の外側輪郭3を突出させる、追加的に適用された突出層6との断面を図によって示す。
【0069】
図4bは、工作物の外側輪郭3を突出させる本発明の方法による、形成された支持構造体4の一実施形態を図によって示す。
【0070】
ステップS202において、本方法を使用するために、外側輪郭3を有する工作物1が準備される。外側輪郭3は、縁部分11を更に有し、そこから、本発明による方法を使用して、外側輪郭3を突出させるべきである。
【0071】
次のステップS203において、複数の基礎ウェブ41が形成される。これは、レーザー堆積溶接装置7を用いて、
図1において既に記載したように、溶融させるべき材料を溶融させ、縁部分11において開始して材料を塗布することによって、行われる。ここでは、基礎ウェブ41は、所定角度で縁部分11から突出するように形成される。
【0072】
続くステップS204において、形成された隣接する基礎ウェブ41は、この場合もまた接続ウェブ42を用いて接続され、接続ウェブ42もまた更に、レーザー堆積溶接装置7によって形成される。それらは互いに支持構造体4を形成し、支持構造体4は、
図1において上述したような支持構造体4とは対照的に、縁部分11から内側輪郭の方向に形成されるのではなく、外側輪郭3の方向に形成される。結果として得られる構造体は、ここでは、
図1において既に記載したものと同じ特性を示す。
【0073】
次のステップS205において、工作物1の外側輪郭3が突出するように、更なる溶融材料により、支持構造体4に関連して、突出層6が形成される。
【0074】
有利には、支持構造体4、又は工作物の外側輪郭3の突出部は、ここで、レーザー堆積溶接プロセスを用いて工作物の上に更なる構造体を生成するために使用することができる。
【0075】
上述した特徴の不要な繰返しを避けるために、ここで
図2aを参照し、
図2aは、支持
構造体4の形成の基本的な特徴を記載する。ここでは、
図2aに対する相違は、工作物1の外側輪郭3の突出部であり、この突出部は、外側輪郭3の一部にのみ影響を与える。
【0076】
これはまた、複雑な、非対称の構成要素形状が、構成要素をそれぞれの意図された目的に適合させるために生成されなければならない場合にも、有利である可能性がある。しかしながら、突出部は、工作物1の外側輪郭3全体に対して対称とすることもできる。
【0077】
本発明による方法を用いる支持構造体4の形成により、外側輪郭3の突出部が可能であり、そこでは、自由空間を充填して閉鎖層にすることによって更に形成することができる、又は、更なる層(ここでは、突出層6)の適用を支持する、基部が生成される。
【0078】
図示する突出部では、基礎ウェブ41は、
図2bに示すものと同様な方法で配置され、その結果、それらの長手方向は、本質的に(工作物1の平面図で)工作物1の中心において仮想交差点で集まる。しかしながら、支持構造体4は、
図1に示すように縁部分11から内側輪郭の方向に形成されるのではなく、外側輪郭3の方向に形成される。いくつかの接続ウェブ42が一列に並べられ、これらの接続ウェブ列は、基礎ウェブ41の仮想交差点の周囲に同心状に配置される。
【0079】
しかしながら、この場合もまた、支持構造体4は、図示し又は記載した構造体に限定されないことが明確に示唆されるべきである。反対に、突出部において、くもの巣状、又は市松模様、又はハニカム状構造体等、様々な形状を有する構造体もまた形成することができる。しかしながら、構造体の組合せが、例えば、使用の目的で有用である場合、そうした組合せもまた使用することができる。
【0080】
図5は、支持構造体4を形成するために溶融材料のドット状塗布の本発明による方法のフローチャートを示し、本方法について、
図6を更に参照して以下に説明する。
【0081】
図6は、縁部分11に対する支持構造体の傾斜角度αと、材料供給装置8のノズル及びレーザービーム9の設定角度βとを含む、工作物1及び支持構造体4の断面を図によって示す。
【0082】
本発明の方法のうちの1つによる支持構造体4の形成のために、ステップS302において溶融させるべき材料が、材料供給装置8によって、工作物1の縁部分11において、又は既に形成された支持構造体4において、所定場所に供給される。
【0083】
続くステップS303において、レーザー堆積溶接装置7のレーザービーム9がオンにされ、所定の場所に向けられる。その結果、所定の場所に向けられた材料(この場合、金属粉末)は溶融し、それにより、縁部分11に又は既に形成された支持構造体4にドット状に塗布される。
【0084】
次のステップS304において、レーザービーム9は、所定のレーザー時間の後、再度オフにされ、その結果、既に溶融した材料に更なる熱は導入されない。
【0085】
後続するステップS305において、溶融させるべき材料(この場合、金属粉末)は、所定の冷却時間、所定場所まで誘導され続け、その結果、液体金属は冷却し、比較的迅速に凝固する。溶融材料の冷却は、溶融させるべき材料を所定場所に輸送するために使用される輸送ガスによって補助される。
【0086】
塗布された材料の表面に対して、金属粉末の連続供給によってもまた影響を与えることができる。
【0087】
記載した方法を用いて、自己支持型支持構造体4内に、基礎ウェブ41及び接続ウェブ42を形成することができる。そして、このように形成された支持構造体4は、形成されている支持構造体4を支持する補助構造体を使用する必要なしに、工作物の内側輪郭2の開口部の縮小若しくは完全な閉鎖のために、又は、工作物の外側輪郭3の突出部のために、有利に使用することができる。
【0088】
それぞれの使用の場合に対して使用すべき構造体に応じて、基礎ウェブ41及び接続ウェブ42を形成するために、所定角度βで、供給された材料を溶融させるために、材料供給装置8及びレーザービーム9を設定することが有用である可能性がある。これらの角度は、±0度~10度の範囲のより小さい角度βとすることができ、又は、±25度~±45度以上の範囲のより大きい設定角度βとすることもできる。
【0089】
さらに、工作物1又は限られた作業空間の特別な構造的特徴により、形成すべき構造体(支持構造体4)に関連して、材料供給装置8とレーザー堆積溶接装置7のレーザービーム9との位置を変更しなければならないという事実に至る可能性もある。これにより、例えば、工作物1自体、又は作業領域の近くの境界との衝突を防止することができる。
【0090】
縁部分11に対して基礎ウェブ41の傾斜を提供することも有利である場合があり、そこでは、傾斜は、数度(例えば、3度~7度)の非常に小さい角度α、又は著しく大きい角度α(例えば、最大60度又は75度)を有するように提供される。これは、工作物1の構造的特徴に関して必要である場合があり、又は、支持構造体4の安定性の改善等の理由で有利な場合がある。ここで、縁部分11に関する基礎ウェブ41の設計は、(
図6に示すような)正の角度αに限定されず、基礎ウェブ41が内側輪郭2の断面内に設計されるように、負の角度αを有することもできる。
【0091】
本発明の例及び実施形態並びにその利点について、添付図面を参照して詳細に上述した。
【符号の説明】
【0092】
1 工作物
2 工作物の内側輪郭
3 工作物の外側輪郭
4 支持構造体
5 カバー層
6 突出層
7 レーザー堆積溶接装置
8 材料供給装置
9 レーザービーム
11 縁部分
41 基礎ウェブ
42 接続ウェブ
α 傾斜角度
β 設定角度