(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-07
(45)【発行日】2022-09-15
(54)【発明の名称】輸液ポンプ用滅菌ポンプモジュール
(51)【国際特許分類】
A61M 5/145 20060101AFI20220908BHJP
A61M 39/18 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
A61M5/145 500
A61M39/18
(21)【出願番号】P 2019564846
(86)(22)【出願日】2018-05-23
(86)【国際出願番号】 EP2018063509
(87)【国際公開番号】W WO2018215542
(87)【国際公開日】2018-11-29
【審査請求日】2021-04-01
(31)【優先権主張番号】102017111299.5
(32)【優先日】2017-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】595141166
【氏名又は名称】ベー.ブラウン メルズンゲン アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】フックス,ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】アルトゥング,ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】シュテーガー,ユルゲン
【審査官】鈴木 洋昭
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第4515591(US,A)
【文献】特開2003-199827(JP,A)
【文献】特開2006-271665(JP,A)
【文献】特表2004-534598(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-0985446(KR,B1)
【文献】国際公開第99/24098(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第2902052(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/145
A61M 39/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
輸液ポンプ(1)との選択的な
又は変更可能な結合に適合された、流体供給ライン(12)から、患者への流体ドレインライン(13)へ流体を送出するための独立したピストン・シリンダユニット(11)を有する輸液ポンプ(1)用ポンプモジュール(2)であって、
該ピストン・シリンダユニット(11)が、前記流体供給ライン(12)および前記流
体ドレインライン(13)に流体的に接続され
又は該流体ドレインラインに接続可能であり、およびシリンダ(14)と、軸方向Lにおいて、
前後に移動可能であるように
配置されたピストン(15)と、該ピストン(15)を該シリンダ(14)に対して滑動可能に密封するピストンシール(20、69)と、によって画定される送出チャンバ(21)を備え、
前記ピストンシール(20、69)は、前記ピストン(15)に沿って延在し、および
該ピストンを取り囲んでいるスリーブ部(73)を備え、該スリーブ部(73)は、該ピ
ストン(15)に対して移動可能であるように、および前記シリンダ(14)の
壁部と該ピストン(15)との間に緩く保持されるように、および前記送出チャンバ(21)から離れて対向している該シリンダ(14)の
端部領域に密封固定されるように形成され、その結果、
前記ピストン(15)の前
又は後
への運動中に前記ピストンシール(20、69)が通る前記シリンダ(14)の
壁部は、環境に対して滅菌的に密封される、輸液ポンプ用のポンプモジュールであって、
前記ピストン・シリンダユニット(11)は、ともに前記ピストン(15)と前記シリンダ(14)との間を密封して、前記送出チャンバ(21)の滅菌性を確保する、近位ピストンシール(70)および遠位ピストンシール(69)を備え、
前記シリンダ(14)には、前記ピストン(15)に対向しているその内側面に、
格納位置
又は休止位置で前記ピストンシール(20、69)を受け入れるための
近位周囲環状溝(68)および遠位周囲環状溝(67)が設けられ、
前記近位周囲環状溝(68)および前記遠位周囲環状溝(67)との互いの長手方向Lにおける距離は、該長手方向Lにおける前記近位ピストンシール(70)と前記遠位ピストンシール(69)の互いの距離に等しいことを特徴とする輸液ポンプ用のポンプモジュール。
【請求項2】
前記ピストンシール(20、69)
に対して前記送出チャンバ(21)の反対側の側部に位置しているピストン移動部(71)は
弾性シーリング要素(72)によって滅菌的に密封され、前記弾性シーリング要素(72)は中に配置され
一方においては該ピストン(15)の近位端に
、他方においては前記シリンダ(14)の近位端に配置されているスリーブ部
を構成し、
前記弾性シーリング要素(72)は前記シリンダ(14)の前記近位端を越えて突出していないことを特徴とする、請求項1に記載のポンプモジュール(2)。
【請求項3】
弾性シーリング要素(72)は、ベローズ(73)としてデザインされ、および
前記軸方向に延び、および
前記シリンダ(14)の内部に配置される軸方向部分を有することを特徴とする、請求項1または2に記載のポンプモジュール(2)。
【請求項4】
弾性シーリング要素(72)は、前記ピストン(15)から離れて対向しているその側
部に、前記シリンダ(14)上でのシーリング構成
又は該シリンダへの接続のための
環状結合部(74)を有し、前記環状結合部(74)は、
前記シリンダ(14)の境界部(
75)によって、該シリンダ(14)に密封接続されること、および/またはその側部が該ピストン(15)に対向している前記弾性シーリング要素(72)は、前記ピストン(15)の前面に
ワンピースで前記ピストン(15)と材料固定的に密封接続され、
前記環状結合部(74)は、
シーリングプレート
として形成されることを特徴とする、請求項1~3の何れか一項に記載のポンプモジュール(2)。
【請求項5】
前記ピストン(15)は、前記輸液ポンプ(1)の駆動機構(26)の対応する結合要
素(
46)と解放可能に結合する結合構造
を備えることを特徴とする、請求項1~4の何れか一項に記載のポンプモジュール(2)。
【請求項6】
前記結合構造
は、弾性シーリング要素(72)の径方向内側に形成され
ることを特徴とする、請求項5に記載のポンプモジュール(2)。
【請求項7】
前記結合構造
は、前記軸方向Lにおいて、前記ピストン(15)の近位前面(76)に導入される止め穴(77)を有し、および
前記駆動機構(26)のピストンロッド(16)のラッチ収容のための内部ラッチ構造(78)を有することを特徴とする、請求項5または6に記載のポンプモジュール(2)。
【請求項8】
前記近位ピストンシール(70)および前記遠位ピストンシール(69)は、互いに面
平行に配置され、および/または前記近位ピストンシール(70)と前記遠位ピストンシ
ール(69)との間の長手方向軸Lの前記方向における距離は、前記シリンダ(14)内
の前記ピストンシリンダユニット(11)/前記ピストン(15)の送出行程よりも大き
いことを特徴とする、請求項1に記載のポンプモジュール(2)。
【請求項9】
前記近位ピストンシール(70)および/または前記遠位ピストンシール(69)は、
2-Kテクノロジーによって、前記ピストン(15)とともにワンピースで形成されることを特徴とする、請求項1または8に記載のポンプモジュール(2)。
【請求項10】
前記シリンダ(14)は、その遠位端に、前記送出チャンバ(21)を前記流体供給ラ
イン(12)および/または前記流体ドレインライン(13)に流体的に接続するために
、少なくとも一つの流路(22、23)がその中に形成されているシリンダヘッド(66
)を有することを特徴とする、請求項1~9の何れか一項に記載のポンプモジュール(2
)。
【請求項11】
前記輸液ポンプ(1)との結合中および該輸液ポンプとの結合が解除されている間の前
記ポンプモジュール(2)を取り扱うために、ハンドル部材(54、55)が、前記シリ
ンダ(14)の遠位に
設けられることを特徴とする、請求項1~10の何れか一項に記載のポンプモジュール(2)。
【請求項12】
前記結合構造は、ベローズ(73)として形成された前記弾性シーリング要素(72)の前記壁部の径方向内側に形成されることを特徴とする、請求項6に記載のポンプモジュール(2)。
【請求項13】
請求項1~
12の何れか一項に記載のポンプモジュール(2)によって特徴付けられる、流体を流体源から患者へ送出する輸液ポンプ(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輸液ポンプ(1)との選択的な/変更可能な結合に適合された、流体供給ラインから、患者への流体ドレインラインへ流体を送出するための独立したピストンシリンダユニットを備えている輸液ポンプ用ポンプモジュールに関し、この場合、該ピストンシリンダユニットは、該流体供給ラインおよび該流体ドレインラインに流体的に接続され、および該シリンダと、軸方向において、平行に/前後に移動可能であるように中に配置されている該ピストンと、該ピストンを該シリンダに対して密封するピストンシールと、によって画定されている送出チャンバを備えている。さらに、本発明は、このようなポンプモジュールを備えている、流体を流体源から患者まで送出する輸液ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
全般的な技術的背景
インフュージョンテクノロジーにおいて、フレキシブルチューブポンプおよびシリンジポンプは、一般的に、流体を患者へ送出するために知られている。投薬精度に関して多くの要求を突き付ける用途の場合、シリンジポンプは、所定の流体送出を容易に実現するため、一般的に使用されている。より多くの量の流体を必要とする用途の場合は、フレキシブルチューブポンプは、該ポンプの送出技術により不連続の送出量を伴うことなく、連続して大量に送出するため適合している。
【0003】
従来技術
輸液ポンプのこのような用途は従来から知られており、この場合、比較的多くの送出量を、高い送出精度と合わせなければならず、このことは、深刻な問題をもたらす。シリンジポンプには、該シリンジポンプによって送出できる流体量が、使用する該シリンジの容積によって制限されるという欠点がある。一方、フレキシブルチューブポンプは、比較的大量の送出量を実現することができるが、該ポンプには、送出精度が低いという欠点がある。特に、小さな供給速度の場合、該ポンプの送出精度は、一般的に用いられている蠕動により、保証されていない。さらに、フレキシブルチューブポンプの駆動部は、通常、比較的大きくかつ重く、および該蠕動駆動によるポンプホースの屈曲により、比較的大量の電力を消費する。
【0004】
本出願人の輸液ポンプは、ピストンシリンダユニットをポンプユニットとして備えたポンプモジュールを用いた、比較的大量の送出量および高精度の送出作業を伴うこのような用途のために特別に開発した。該輸液ポンプは、電動モータと、該電動モータの回転運動を、該シリンダ内で移動可能に設けられた該ピストンの平行/前後運動に変換するための伝動装置とから成る該輸液ポンプの駆動機構によって作動するように構成されている。該駆動機構は、好ましくは、該輸液ポンプの制御/調節ユニットによって制御される。また、該ポンプモジュールは、好ましくは、該制御/調節ユニットに接続され、および必要に応じて、調節された/制御された方法で、ポンプ送出行程の場合には、流体中間貯蔵部としての該ピストンシリンダユニットと、独立した大量の流体への送出ターミナルとの間の接続を妨げるように、および該ピストンシリンダユニットと患者ポートとの間の接続を開くように、また、ポンプ吸入行程の場合には、該ピストンシリンダユニットと、該独立した大量の流体への該送出ターミナルとの間の該接続を開くように、および該ピストンシリンダユニットと、該患者ポートとの間の該接続を遮断するように適合されているバルブ装置も含む。
【0005】
特許文献1(米国特許第3,901,231号明細書)により、静脈内輸液を従来のシリンジから患者へ送出する輸液ポンプが公知になっている。該ポンプは、シリンジストロークの振幅を調整して、ある時間にわたって患者に送出された流体の量を判断するように適合可能になっている。
【0006】
特許文献2(米国特許第3,985,133号明細書)により、ピストンシリンダユニットを備えたポンプモジュールが公知であり、該ポンプモジュールのピストンは、ポンプ駆動部と結合して、流体を流体リザーバから、患者の血流中に注入することができる。同様のポンプモジュールは、特許文献3(米国特許第4,396,385号明細書)により公知であり、この場合、シリンダチャンバは、一方においては、シリンダ上に配置され、他方においては、ピストン上に配置されたカバーによって閉じられている。このポンプモジュールの欠点は、該カバーは、該シリンダから保護されずに突出しており、容易に損傷する可能性があるため、該シリンダチャンバに異物が混入する可能性があるということである。別の欠点は、使用されている回転バルブが、作動に関して比較的複雑であり、およびそれほど信頼できないということである。
【0007】
特に、該ポンプモジュールが、投与すべき液体、具体的には、輸液剤または薬剤との接触の領域において、絶対的に無菌であることが重要である。この種の確立されたピストンポンプには、それらの往復するピストンが、例えば、周囲の空気によって汚染される可能性があり、および病原菌が、送出される該液体に混入する可能性があり、該患者に投与される可能性があるという欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許第3,901,231号明細書
【文献】米国特許第3,985,133号明細書
【文献】米国特許第4,396,385号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
発明の簡単な説明
本発明は、上記の問題に基づいて、前述の欠点をなくすという目的に基づいており、具体的には、公知のシステムと置き換えることができ、特に、大量の送出および高い送出精度を伴う用途において広く適用可能であり、および患者に投与される流体と接触する領域における使用中に、絶対的に無菌でありかつ無菌のままであるポンプモジュールおよび医療用輸液ポンプを提供するという目的に基づいている。具体的には、無菌性が保証される。さらに、該ポンプモジュールは、特に簡単な方法で該ポンプ内に取り付け可能であり、この場合、該ポンプモジュールの該無菌性は、該ポンプモジュールの取扱中、使用中または保管中に危うくならない。好ましくは、サイズは、公知のシステムと比較して小さくなるであろう。さらに、該ポンプモジュールは、充電式バッテリにより、シンプルかつ安価になり、および好ましくは操作可能になるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、ポンプモジュールにより、具体的には、請求項1に記載の特徴を有する、流体を流体源から患者へ送出する医療用輸液ポンプ用の輸液/シリンジポンプモジュールにより、および請求項14に記載の該特徴を有する輸液ポンプによって、本発明に従って解決される。本発明の有利な構成は、従属項の対象である。
【0011】
上記目的は、特に、輸液ポンプに結合することができるピストンシリンダユニット、具体的には、輸液ポンプ(1)との選択的な/変更可能な結合に適合された、流体供給ラインから、患者への流体ドレインラインへ流体を送出するための独立したピストンシリンダユニットを有する輸液ポンプ用ポンプモジュールによって解決され、この場合、該ピストンシリンダユニットは、該流体供給ラインおよび該流体ドレインラインに流体的に接続され、および該シリンダと、軸方向において、具体的には、該ピストンシリンダユニットの該軸方向において、平行に/前後に移動可能であるように中に配置されているピストンと、該ピストンを該シリンダに対して密封するピストンシールとによって画定される送出チャンバを備え、この場合、該ピストンの該前後運動中に該ピストンシールが通る該シリンダの壁部は、環境に対して滅菌的に密封され、具体的には、該ピストンシールは、該ピストンに沿って延在し、かつそれを相対的な移動可能に取り囲んでいるスリーブ部を有し、該スリーブ部は、該ピストンに対して移動可能であるように構成され、および該シリンダの周囲部/壁部と該ピストンとの間で緩く保持され、および該送出チャンバから離れて対向する該シリンダの端部または端部領域において該シリンダに密封して取付けられ、その結果、該ピストンの該前後運動中に該ピストンシールが通る該シリンダの該周囲部/壁部は、該環境に対して滅菌的に密封される。また、上記目的は、本発明による、具体的には、本説明および添付クレームによるポンプモジュールを備えた輸液ポンプによって解決される。従来技術に優るこの発明の利点および効果は、ここでは該ピストンシリンダユニットの形態の該往復するポンプ要素が、特に、患者に投与される該流体と接触する該領域において、該シーリング要素によって病原菌から保護されているということである。それらの領域は、特に、該ピストン行程中に該ピストンシールが通過する該シリンダ壁の部分である。該ピストンシリンダユニットは、好ましくは、作動力を低く保つために、および高い送出精度を実現するために、円滑に作動するユニットである。
【0012】
本発明の有利な実施形態は、該従属項にクレームされており、および以下に詳細に記載されている。
【0013】
本発明の実施形態によれば、該送出チャンバに対向する該ピストンシールの側に位置するピストン移動、具体的には、ピストン移動全体は、該ピストン移動の内側に配置された弾性シーリング要素によって、該環境に対して滅菌的に密封することができる。具体的には、該シーリング要素は、特に、近位のピストン移動を該環境から滅菌的に密封する膜とすることができ、その弾性の結果として、該シーリング要素は、該ピストンを前後に動かすことによって引き起こされる、該ピストンと該シリンダとの間の相対的位置変化を補償することができる。また、該シーリング要素は、一方においては、該ピストンの該近位端に、および他方においては、該シリンダの該近位端に配設してもよく、および/またはそれに堅固に接続してもよい。この文脈における近位とは、該ポンプの両側部における、該送出チャンバの両側部における遠位を意味する。好適な実施形態において、該シーリング要素は、特に該シリンダ内での該ピストンの該それぞれの位置に関係なく、該シリンダの該近位端を越えて突出しないように、該シリンダおよび該ピストン上に構成されて配置されている。このようにして、該シーリング要素は、該ポンプモジュールの保管中、組立て中および/または使用中の偶発的なダメージを安全に防ぐことができるように保護された方法で、該シリンダ内部に配置されている。このことは、患者に投与される流体と接触する該ポンプモジュールの該領域の該滅菌性を確保することを支援する。
【0014】
本発明の該範囲内で、該シーリング要素は、ベローズとして形成され、および特に該軸方向に延在している壁部を有していてもよい。該壁部は、好ましくは、ダメージから守るために該シリンダ内部に配置することができる。このようなベローズは、スペースをあまり取らず、また、強いられる変形により、該ポンプモジュールの動作中に、比較的少ない負荷を受けるため、該ポンプモジュールを小さくかつロバストに形成することができる。
【0015】
本発明の特にロバストな実施形態は、その該ピストンから離れて対向している側の該シーリング要素が、該シリンダにおける構成を密封するおよび/または該シリンダへの接続を密封するための特に環状の結合部を有することを実現できる。これは、境界部によって該シリンダに接続することができ、具体的には、それをしっかりと接続することができる。該境界部は、例えば、該シリンダの近位端部分、具体的には、該シリンダ壁にフランジを付けることによって形成することができる。別法として、または追加的に、該シーリング要素は、その側部が該ピストンに対向している状態で該ピストンに密封して接続することができる。具体的には、該シーリング要素は、該ピストンの前側に接続することができる。例えば、該シーリング要素は、材料接続によって該ピストンに接続されている。具体的には、該シーリング要素は、例えば、該ピストンおよび該シーリング要素を2Kテクノロジーを用いて製造することにより、該ピストンとともにワンピースで設計することができる。該結合部は、特にシーリングプレートとして形成することができる。
【0016】
特にユーザーフレンドリーな実施形態によれば、該ピストンは、該輸液ポンプの該駆動機構の対応する結合要素との着脱可能な結合のための結合構造を有することができる。特に有利には、該結合構造は、該シーリング要素の径方向内側に、具体的には、ベローズとして形成された該シーリング要素の該壁部の径方向内側に形成することができる。例えば、該結合構造は、該軸方向において、該ピストンの該近位前面に挿入された止り穴、具体的には、中央止り穴を有していてもよい。このことは、該ピストンの、すなわち、該ポンプモジュールの特に短い構造長を可能にする。ポンプモジュールと輸液ポンプの特にシンプルな結合を可能にするために、該結合構造は、該駆動機構のピストンロッドのラッチ挿入用の内部ラッチング構造を有することができる。該ピストンは、該結合構造により、具体的には、該輸液ポンプのピストンロッド上に配置され、または、該ロッド上に配置することができる。該結合要素は、例えば、プラグインカップリングとして形成することができ、および該ポンプモジュールが、意図的に該輸液ポンプ内に配置されるときに、自動的または必然的に該駆動部に接続することができる。該カップリングは、好ましくは、二つの結合要素を一緒に保持するラッチング構造を有し、および具体的には、該二つの結合要素が、オペレータに聞こえるようにおよび/またはオペレータに見えるように係合することを可能にしている。
【0017】
本発明の一つの実施形態は、該ピストンシリンダユニットが、近位ピストンシールおよび遠位ピストンシールを備えていることを特徴とする。これらのシールはともに、該ピストンと該シリンダとの間を密封し、および該送出チャンバの該滅菌性を確保している。特に、該ポンプモジュールが、近位および遠位のピストンシールのみを有し、および該ピストンおよび該シリンダに接続されたシーリング要素は有していないことは本発明の範囲内である。好ましくは、該近位ピストンシールおよび該遠位ピストンシールは、互いに面平行に配置される。別法として、または追加的に、該近位ピストンシールと該遠位ピストンシールとの間の長手方向軸の方向における距離は、該ピストンシリンダユニットの/該シリンダ内の該ピストンの該送出行程よりも大きい。好ましくは、該二つのピストンシール間の距離は、該ピストンポンプの該ストロークよりも(すなわち、該シリンダ内の該ピストンの該ストロークよりも)、少なくとも1mmから3mm、具体的には、2mm以上大きい。このことは、投与される該流体に接触している該領域が常に滅菌状態であることを確実にする。該近位ピストンシールおよび/または該遠位ピストンシールは、例えば、2Kテクノロジーを用いて、該ピストン上に成形されることにより、該ピストンとともにワンピースで形成することができる。該ピストンシールは、基本的に、本発明の範囲内にあるフレキシブルシーリングリップまたはシーリングリップの形態で設計することができる。近位および遠位のピストンシールに関する上述した該実施形態の具体的な利点は、該ピストンシリンダユニットが円滑に作動し、および作用力が低く、そのため、高い送出精度および効率を実現することができるということである。また、該ピストンと、該軸方向における該二つのピストンシール間の該距離は、該シリンダの最大充填レベルよりも長く、このことが、本質的に該シリンダの外部にある周囲空気が該シリンダの内部の媒剤と混ざることを、または、送出される該流体と接触する該ピストンシリンダユニットの領域を汚染することを防ぐと言える。二つのピストンシール/シーリングリップと、ピストン/シリンダ長の組合せは、侵入する病原菌に対する有効なバリアをもたらす。さらなる利点は、二つのピストンシールを備えたこの実施形態は、ポンピングされる該流体および/または空気が、ピストンとシリンダとの間の該シール/シーリングリップに打ち勝つことなく、流体送出中の比較的高い圧力差に耐えることができるということである。そのため、該ピストンは、過剰な圧力に対して密閉するための一つのシール/シーリングリップと、低い圧力に対して密閉する一つのシール/シーリングリップとを有しているとも言える。したがって、該ピストンの低圧運動および高圧運動は、流体スペース/投薬スペース、すなわち、送出される該流体が該シリンダ内に配置されているスペースの滅菌性を確保するように密封されている。このようにして、該ポンプは、医療環境における清潔性に対する高い要件を満たしている。該ピストンは、好ましくは、ほぼリング状のピストンシールを生じる本質的に丸い断面を有している。
【0018】
該ピストンシールの密封効果が著しく損なわれることなく、該ポンプモジュールの比較的長期の保管を可能にする、本発明の特に保管が簡単な実施形態において、その内側面の一つのピストンシールのみが、一つの周囲環状溝のみを有する該ピストンに対向している場合、該ピストンシールを、該シリンダ内の格納/休止位置に受け入れるために、該シリンダには、ピストンシールの数に対応する数の環状溝が設けられている。近位および遠位のピストンシールを備えたピストンの場合、該シリンダは、近位の周囲環状溝および遠位の周囲環状溝を備えた該ピストンに対向するその内側面に設けられ、該長手方向における互いの距離は、該長手方向における該近位ピストンシールと該遠位ピストンシールの距離に等しい。該環状溝は、好ましくは、該ピストンの動作範囲の外側にあるように配置される。
【0019】
本発明の一つの実施形態は、該シリンダが、その遠位端に、該送出チャンバを該流体供給ラインにおよび/または該流体ドレインラインに流体的に接続するように少なくとも一つの流路が形成されているシリンダヘッドを有していることを特徴とする。該シリンダヘッドは、特に、遠位において該送出チャンバを画定することができる。該輸液ポンプに容易に結合できる、本発明の特にユーザーフレンドリーな実施形態は、該輸液ポンプと結合するとき、および該輸液ポンプから取り外すときの該ポンプモジュールの取扱いのために、ハンドル部またはハンドル部材が、該シリンダ上の遠位に、具体的には、そのシリンダヘッド上に設けられていることを実現することができる。
【0020】
本発明の実施形態によれば、該ピストンシリンダユニットには、流入供給ライン/流体供給ラインとしての第一のチューブ部と、患者側の流出供給ライン/流体ドレインラインとしての第二のチューブ部とを設けることができる。少なくとも一方のまたは両方のチューブ部は、例えば、プラスチック部品の場合には射出により、例えば、ワンピースの押し込み式でまたは材料固定式で、該ピストンシリンダユニットに、具体的には、該シリンダヘッドに堅固に接続することができる。
【0021】
該流体供給ラインまたはそれぞれの該第一のチューブ部には、該ピストンシリンダユニットの反対側の端部に、ルアーロック結合部材を設けることができる。これは、特に、ルアーロック内円錐として形成することができる。別法として、または追加的に、該流体ドレインラインまたはそれぞれの該第二のチューブ部には、該ピストンシリンダユニットの反対側の端部に、ルアーロック結合部材を設けることができる。これは、具体的には、ルアーロック外円錐として形成することができる。このことは、該ポンプモジュール、または、それに収容されているそれぞれの流体導管システムと、操作が特に容易である体外ラインまたは導管システムとの接続を可能にする。したがって、本発明は、現存の幅広く使用されている医療技術機器とともに、容易にかつ周知の方法で用いることができる。ルアーロック接続に対する代替例として、該患者に接続されたドリップチャンバを設けることができ、または、該第二のチューブ部は、閉端部を備えたバッグラインとして設計され、および挿入スパイクと接続することができる。くわえて、または別法として、適用の領域における柔軟性、または、該ポンプのコンパクト性を向上させるためのスパイク/注入スパイクの構成も可能である。
【0022】
一つの実施形態によれば、該ポンプモジュールは、調節可能である、すなわち、特に該第一および/または第二のチューブ部内において、選択的に、流体フローを該ピストンシリンダユニットから吐出し、または、該ユニットへの流体フローを遮断するように移動可能である滑動クランプを有することができる。該滑動クランプは、該ポンプモジュールを始動させた後に気泡が形成されないように調節することができる。該滑動クランプは、好ましくは、該ポンプモジュールの残りの部分とは異なる材料で容易に形成できるように、該ポンプモジュールの該ハンドル部または該ハンドル部材上にクリップ式で留めることができる。
【0023】
本発明の有利な実施形態は、スリーブ/リングが、該滑動クランプから離れて対向している該ポンプモジュールまたは該ハンドル部/ハンドル部材の一方の端部に配置されるという点で識別される。このスリーブは、該流体供給ラインおよび/または該流体ドレインラインおよび/または該第一および/または該第二のチューブ部を固定することができ、したがって、輸液ラインと該ポンプモジュールの安全な結合を可能にする。そのため、該スリーブは、該輸液ラインをそこに挿通することができる保持リングとして作用する。
【0024】
該ピストンシリンダユニットは、特に、駆動機構によって、具体的には、例えば、電動モータと、該駆動モータの回転運動を、該シリンダ内で移動可能に設けられた該ピストンの平行運動/前後運動に変換するための伝動装置とから成る、本発明による該輸液ポンプの駆動機構によって作動されるように適合させることができる。また、該駆動機構は、該輸液ポンプの制御/調節ユニットによって制御することができる。さらに、バルブ装置を設けてもよく、例えば、該輸液ポンプは、該制御/調節ユニットに接続されたバルブ装置を有していてもよく、およびポンプ送出行程の場合は、該流体中間貯蔵部としての該ピストンシリンダユニットと、独立した大量の流体への送出ターミナルとの間の接続を(必要に応じて、調節/制御して)妨げるように、ならびに該ピストンシリンダユニットと患者ポートとの間の接続を解放するように、およびポンプ吸入行程の場合には、該ピストンシリンダユニットと、該独立した大量の流体への該送出ターミナルとの間の該接続を開くように、および該ピストンシリンダユニットと該患者ポートとの間の該接続を遮断するように構成することができる。
【0025】
最もシンプルなケースでは、該バルブ装置は、受動的に動作可能なバルブ要素を有し、すなわち、該バルブ装置は、好ましくは、該輸液ポンプに挿入することができる、(使い捨てアイテムとしてデザインされている独立した)該患者ポートへの接続ラインおよび大量の流体への接続ラインに収容される二つの逆止弁を有している。このことには、該バルブ装置を、特に安価に製造することができ、したがって、流体導管システムとともに使い捨てアイテムとして処分することができるという利点がある。
【0026】
別法として、該バルブ装置に、能動的に作動可能なバルブ要素を、密封圧縮のために該二つの接続ラインの弾力的に変形可能な部分に作用することができ、および好ましくは、該輸液ポンプ(または、ポンプモジュール)内に収容される、好ましくは、二つのチューブピンチャー/コンプレッサを装備するように設けてもよい。そのため、具体的には、好ましくは、使い捨て物品としてデザインされている該流体導管システムは、(大きな流体リザーバから中間リザーバへ)流体を供給するための第一の、好ましくは弾性変形可能なチューブ部と、(該中間リザーバから、該患者へ向かう方向に)流体を吐出するための第二の、好ましくは弾性変形可能なチューブ部とを有し、この場合、該二つのチューブ部は、該輸液ポンプへの挿入用の中間液体リザーバと、該第一のチューブ部から該中間液体リザーバに流体を吸入するための該ピストンシリンダユニットへの接続用の中間液体リザーバとを有する。該チューブピンチャー/コンプレッサは、好ましくは、パンチャー/タッパーとして、または、該輸液ポンプ内で移動可能に取付けられている(したがって、該輸液ポンプの一部になっている)シザークランプまたは同様の機械的クランプ装置として構成することができ、およびそれぞれ、該制御/調節ユニットに接続されている駆動部によって作動させることができる。この変形例は、制御された、すなわち、該それぞれの液体/流体ラインおよび安価に製造することができる流体導管システムの安全な開閉を可能にする。ここでの特徴的な形状構成は、該流入口および流出口に配設された該二つのチューブピンチャー/コンプレッサが、少なくとも一方の側が該ホースを確実に締め付けるように、互いに機械的に結合されているということである。該チューブピンチャー/コンプレッサは、流入口と流出口との間が変化したときに、漏れ位置が生じないように別の漏れ位置に結合するように、例えば、ばねによって予圧がかけられている。別法として、該バルブの制御時間は、例えば、カムディスクを介して、または、モータを使用する独立した駆動部により、設定することもできる。
【0027】
該流出口内の該ホース、すなわち、該第二のチューブ部は、該ピストンシリンダユニット/シリンジが引っ込められるときに、例えば、モータ駆動のバルブ制御システムの形態で実装することができる制御ユニットを介して、遮断することができ、好ましくは、押し潰すことができる。さらに、該流入口内の該ホース、すなわち、該第一のチューブ部は、該ピストンシリンダユニット/シリンジが押し出されるときに、遮断することができ、好ましくは、押し潰すことができる。該ピストンシリンダユニット/シリンジを、ピストンポンプのように駆動できることが特徴的である。概して、本発明は、高精度のピストンポンプ/シリンジポンプを用いて、最も幅広い意味において、輸液用途における大量/大容積の流体を送出することを可能にする。該送出は、該ピストンシリンダユニットによって実行されるため、高い精度は、送出レート/流量が非常に正確であるということによるものである。送出量の変更、すなわち、該シリンダチャンバの容積の変更は、厳密に調節することができ、および広範な供給レート範囲にわたって制御することができる。漏洩流は、このデザインによって、本質的に完全に防ぐことができる。ピストンポンプによって通常呈される限定された流量の欠点は、本発明の意義において、該ピストンシリンダユニットが、継続的に交互に充填されて空になり、このことは、該ピストンシリンダユニットへの流入および該ユニットからの流出という本発明による該制御によって可能になっているという点でなくなる。一定の大量の供給量を実現する一つの方法は、本発明による二つのポンプを組み合わせることであり、または、位相シフトによって作動される二つのピストンシリンダユニットおよびそれらに付随する制御ユニットを該ポンプに設けることである。
【0028】
本発明による該輸液ポンプの好適な実施形態は、該制御ユニットおよび該駆動部が、該輸液ポンプの収容部に、または該収容部内に配置されていることを特徴とする。該ポンプモジュールは、該ユーザが交換できるように、特に該収容部上に配置することができる。該ポンプモジュールは、好ましくは、特別な工具または装置を用いることなく、該ポンプの内部に配置し、および/または該ポンプから取り外すべきである。本発明による該ポンプモジュールは、特に使い捨て物品として設計することができ、および該ポンプ内での一回だけの使用を対象とすることができる。このことは、滅菌状態に関して特に有利であり、かつユーザーフレンドリーである。例えば、これは、該二つのチューブ部が該送出量開口部と流体的に接続されている使い捨てシリンジの形で実施することができる。このことは、該二つのチューブ部が、該ピストンシリンダユニット、具体的には、使い捨てシリンジに接続するための、変形箇所間の領域の分岐部が設けられている連続流体ラインを構成するような方法で実現することができる。別法として、該ピストンシリンダユニット/該使い捨てシリンジは、それぞれが、対応するチューブ部に流体的に接続されている、二つのフロー開口部と、流出口と、流入口とを有することができる。
【0029】
該ピストンシリンダユニットの該駆動部が、該ピストンの動作の軸内に配設されたリニアドライブ/モータである場合は、特に有利である。該ドライブが、該ドライブから該ピストンに作用する力が、該軸方向において中心に印加されるように配置し、および設計されている場合は、特に好適である。特有な利点は、該ピストンに作用する力を、(集中していない力の導入と比較して)最小限にすることができ、したがって、該ピストンシリンダユニットを作動させるのに、少量のエネルギーのみが必要であるということである。その結果として、該ドライブ、すなわち、該ポンプは小さくすることができ、このことは、重量、コストおよび設置スペースに関する削減をもたらす。さらに、高い精度は、該ピストンの作動力の中心印加によって実現することができる。小さなシリンジをピストンシリンダユニットとして用いることは、リニアドライブを直接該シリンジピストンの該軸に配置できるようにし、それによって、該精度に影響を与える横方向の力が該シリンジピストンに作用しないことが保証される。さらに、該シリンジの小さな断面は、小さな力のみを生じさせて、シンプルで費用効果の高いドライブ、例えば、リニアステッパーモータの利用を可能にする。そのため、該ポンプの構造サイズは、公知の輸液ポンプよりも著しく小さくすることができる。
【0030】
また、本発明による該ポンプは、該制御ユニット用の第二の駆動部、具体的には、リニアドライブ/モータを有することもできる。該ピストンシリンダユニットおよび該制御ユニット用の二つの駆動部は、上述した制御機能が、該二つのチューブ部を潰して閉じることによって実行されるように、制御目的のために一緒に結合することができる。
【0031】
さらなる実施形態によれば、該ポンプは、該ポンプモジュール用のレセプタクルを有していてもよい。これは、例えば、ポンプハウジング内の凹部の形態とすることができ、具体的には、(例えば、該ポンプ上に、具体的には、そのハウジング上に旋回可能に設けられたカバーフラップの形態の)クロージャによって閉じることができる。具体的には、該クロージャは、該レセプタクルを閉じる位置の固定ユニットを介して、該ハウジング部に対して固定することができる。該クロージャ、該レセプタクルおよび該ポンプモジュールは、該クロージャの閉塞(および必要に応じて、固定)は、該ポンプモジュールが、正しい方法で意図されているように配置されて接続された場合にのみ可能であるように、互いに適合させることができる。このようにして、ユーザには、該ポンプの間違いのない設置および使用に関するフィードバックを与えることができ、このことは、有利な方法で患者の安全性を向上させる。さらに、該カバーフラップを閉じることにより、該駆動部を備えた該ピストンシリンダユニットの自動結合を実現することができ、このことは、特にシンプルで安全な操作である。該ポンプのハウジングは、特に、機構および電子装置全体をその上に配置して保持することができる下方ハウジング部と、特に、ディスプレイおよびさまざまなスイッチング素子を有することができる上方ハウジング部とで構成することができる。該ハウジングの内部には、該カバーフラップ用の固定機構がある。
【0032】
該輸液ポンプの一つの実施形態は、該制御ユニットが、モータ駆動の傾斜レバーユニットを有しているということによって特徴付けられている。このことは、第一の傾斜位置において、該ユニットが該第一のチューブ部を潰して、該第二のチューブ部を開き、第二の傾斜位置では、該ユニットは、該第二のチューブ部を潰して、該第一のチューブ部を開くように設計し、および作動させることができる。
【0033】
具体的には、該制御ユニットは、該傾斜レバーユニット上に旋回可能に取付けられた圧力ラムを有することができる。該圧力ラムは、該第一のチューブ部と相互に作用するインレットラムおよび/または該第二のチューブ部と相互に作用するアウトレットラムを含んでいてもよい。少なくとも一方の圧力ラムは、プレストレスユニットを用いて、具体的には、圧縮ばねを用いて、該各チューブ部を開く、具体的には、該チューブ部に非接触の位置に予め圧縮応力を印加することができる。このようにして、該ポンプが作動中でないときに、該圧力ラムが、該対応するチューブ部の該領域内に位置していないことを確保することができる。このことは、特に、本発明による該ポンプモジュールの容易な変更、挿入および取外しを可能にしている。
【0034】
該ポンプの一つの駆動部/複数の駆動部を小さくすることができるため、該ポンプが、電力貯蔵ユニット、具体的には、充電式バッテリを備えること、および該ポンプを直接的な電力供給装置なしで作動させることができることが有利に可能である。該電力貯蔵ユニットは、例えば、USBインタフェースの形態の規格化されたコネクタを介して充電することができる、例えば、標準的なリチウム電池とすることができる。また、これは、ポンプ制御部にデータを読み込むのに、および/または該ポンプ制御部からデータを読み出すのに用いることもできる。
【0035】
要約すると、本発明は、著しく低い電力要件と、低減されたサイズと、低い製造コストとを伴う、シリンジポンプの該精度と、フレキシブルチューブポンプの該送出量または容積リザーバを備えた輸液ポンプシステムを可能にしていると言える。具体的には、本発明は、行程制御式のピストンシステムを有するピストンポンプ用のポンプモジュールを提供する。該ポンプモジュール/ポンプ要素自体は、該輸液剤が配置される該領域内において、特に有利な方法で絶対的な滅菌状態になっている。以下の利点は、特にこの発明を通して実現することができる。
【0036】
・「ワン・フィッツ・オール」:幅広い(ほとんどすべてが公知の)輸液療法を、単一のポンプで実行することができる。
・費用効果が高くかつ小さな輸液ポンプ。
・該ポンプは、任意の場所で(どこでも)、特に、電力供給装置を要することなく(可動、長いバッテリ寿命)使用することができ、このことは、特に屋外での使用、または、発展途上地域での使用に適応させることができる。
・該ポンプは、標準的な輸液ポンプよりも正確な投薬を可能にする。
・特に、使い捨て物品として設計された該ポンプモジュールの該ポンプへの堅固な接続。
・該ポンプモジュールは、異なる種類の輸液ラインと結合することができる。
・該ポンプモジュールおよび該輸液ポンプはともに、非常に使い易く、かつユーザーフレンドリーである。
・該システムは、低い供給レートおよび高い供給レートを、ともに正確な投薬で可能にする。
・該システムは、絶対的に滅菌状態である。
【0037】
該ピストンシリンダユニットの該駆動部は、図示されていない回転モニタを備えることができる。このことは、患者への流体の供給の妨害、例えば、該流出口における障害を検出することを可能にする。このような妨害は、該駆動部の挙動の通常値からの逸脱により、例えば、該モータを遮断または減速させることにより検出することができる。このような回転モニタリングにより、他の必要な高価な圧力センサの使用を不要にすることができる。
【0038】
本発明のさらなる特徴および利点は、図を用いた本発明に関する以下の例示的かつ非限定的な説明から導き出すことができる。それらは、本質的に概略にすぎず、および本発明を理解することのみに役に立つものである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】挿入されたポンプモジュールを備えた、本発明による輸液ポンプの斜視図である。
【
図2】部分的に切開したポンプハウジングを備えた、挿入されたポンプモジュールを有する、本発明による輸液ポンプの斜視図である。
【
図3】接続されたホースを備えた、本発明によるポンプモジュールの斜視図である。
【
図4】該ポンプモジュールを該ポンプに挿入しているときの本発明による輸液ポンプおよびポンプモジュールの斜視図である。
【
図5】一体化された滑動クランプを備えたポンプモジュールの詳細図である。
【
図6】ドリップチャンバがポンプモジュールに接続された状態の該ポンプモジュールを示す図である。
【
図7】スパイクがポンプモジュールに接続された状態の該ポンプモジュールを示す図である。
【
図8】ルアーロック内円錐がポンプモジュールに接続された状態の該ポンプモジュールを示す図である。
【
図9】
図7のスパイクが、本発明による該輸液ポンプに挿入された状態の該ポンプモジュールを示す図である。
【
図10】該軸方向における該ピストンシリンダユニットの断面図である。
【
図11】本発明による該ポンプモジュールの実施形態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1は、挿入されたポンプモジュール2を備えた、本発明による輸液ポンプ1の実施形態例を示す。該ポンプ1は、好ましくは、ハウジング蓋5およびカバーフラップ6を備えた下方ハウジング部4から本質的に成るハウジング3を有している。該下方ハウジング部4と該ハウジング蓋5は、例えば、該図には図示されていないラッチ接続部またはねじを介して互いに接続可能であり、組立てられたときに該ハウジング3を形成する。該下方ハウジング部4は、ハウジング底部7を有している。該ハウジング蓋5の中または上には、以下に記載されているポンプ1のユニット/要素が配置されている。すなわち、
・表示素子8
・操作要素9、および
・ディスプレイ10。
【0041】
該ポンプモジュール2は、
図3に単独で概略的に図示されている。該ポンプモジュール2のより詳細な実施形態を、
図5に見出すことができる。
図6から
図8も該ポンプモジュール2を示している。該ポンプモジュールは、ピストンシリンダユニット11と、第一の弾性変形可能なチューブ部12と、第二の弾性変形可能なチューブ部13とを有している。該ポンプモジュール2は、使い捨て物品(シングルユース商品、使い捨て商品)としてデザインされている。該チューブ部12、13は、具体的には、PVCチューブとしてデザインすることができる。
【0042】
該ピストンシリンダユニット11は、具体的には、プラスチックから成っていてもよい、および/または射出成型部として形成することができるシリンダ14と、中で往復動可能であり、および具体的には、プラスチックから成っていてもよく、および/または射出成型部として形成することができるピストン15とを有している。該ピストン15は、ピストンロッド16上にまたは該ロッドに配置され、および少なくとも該軸方向の定位置に固定されている。該シリンダ14は、底部壁17と、周辺壁18と、蓋壁部19とを有している。該ピストンロッド16は、該シリンダ14から抜け出して、該軸方向Lの該蓋壁部19に形成された開口部を貫通して突出している。該ピストン15は、該ピストンシリンダユニット11が、流体スペース/投薬スペース21を有するように、好ましくは、両側部に配置されたシール20によって、該周辺壁18に対して密封されている。該底部壁17には、流入穴22および流出穴23が形成されている。該流体スペース21は、該流入穴22を介して該第一のチューブ部12に、および該流出穴23を介して該第二のチューブ部13に流体的に接続されている。該チューブ部12、13は、具体的には、該シリンダ14上に成形することができる。具体的には、それらのチューブ部は、一般的な輸液チューブのように形成することができる。
図3の該実施形態において、該第一のチューブ部12には、該ピストンシリンダユニット11から離れて対向しているその端部に、インレットルアーロック接続部24が設けられ、該インレットルアーロック接続部24は、この場合、
図8の場合のように、ルアーロック内円錐として形成されている。
図3の該実施形態および
図6から
図9の該実施形態において、該第二のチューブ部13には、該ピストンシリンダユニット11から離れて対向しているその端部に、アウトレットルアーロック接続部25が設けられ、該ルアーロック接続部25は、この場合、ルアーロック外円錐として形成されている。したがって、該ポンプモジュール2は、一般的な輸液ユニットに容易に接続することができる。
【0043】
図2および
図5は、該ポンプ1が、ここでは、リニアモータ26の形態の該ピストンシリンダユニット11用の(該ポンプ内の)駆動部26を有していることを示している。該モータ26は、該ピストン15の往復駆動用の力を、捩じれ/横方向の力を伴うことなく中心に伝えることができるように、該ピストンロッド16の(該ピストンシリンダユニット11の)該長手方向軸Lに一致している。該駆動部26は、該下方ハウジング部4への適切な位置に固定された中間壁部27に取付けられている。該ピストンロッド16は、それの上に配置された、またはそれの上に形成されている結合要素46によって、およびそれと係合するように形成されたカウンタ要素47によって該駆動部26に接続することができる。そのため、該結合要素47は、該ドライブ/リニアモータ26用のレセプタクルとして作用する。
【0044】
図2はさらに、該ポンプ1が、該チューブ部12、13を一緒に少なくとも制御可能に潰すための(該ポンプ内の)制御ユニット28を有することを示している。該制御ユニット28は、該第一のチューブ部12および該第二のチューブ部13に操作可能に接続することができ、および別の中間壁部29を介して該下方ハウジング部4に配置されている。該制御ユニットは、傾斜レバー31と、二つの圧力ラム(バルブ装置)32、33がその上に旋回可能に設けられている、(駆動/調節)ドライブ30、ここではリニアモータ30によって駆動されるモータ駆動の傾斜レバーユニットを有している。該傾斜レバー31は、
図2の図面の平面に直交し、かつ該図には図示されていない傾斜軸周りに旋回することができるように、キャリア34を介して該リニアモータ30に接続され、および傾斜ベアリング35に取付けられている。該圧力ラム32、33は、旋回ベアリング36、37によって、傾斜レバー31の横方向アーム38に旋回可能に取付けられ、および直線状に位置決め可能になるように、該下方ハウジング部4上に案内されている。それらは、圧力ばね39、40の張力が、それらのラムを該二つのチューブ部12、13から離すように、該圧力ばね39、40によって、予め圧縮応力がかけられている。
【0045】
図2は、該圧力ラム32、33が、該チューブ部12、13に直交して配置されていることを示している。それらのラムはさらに、該チューブ部12、13に直交する方向において、直線状に位置決め可能になっている。該圧力ラム32、33は、該第一のチューブ部12を一緒に潰すように、および該第二のチューブ部13を、
図2に示す第一の傾斜位置で解放するように形成されて配置され、および設けられている。どの図にも図示されていない第二の傾斜位置では、該流入チューブ側の該圧力ラム32は、
図2に示す位置から該第一のチューブ部12から離れて配置され、すなわち、該モータ26の方向において、ある程度、ずらされているが、該ドレインチューブ部側の該圧力ラム33は、該第二のチューブ部の方向においてずらされ、およびそれを一緒に潰す。この位置では、該第一のチューブ部12は、もはや該圧力ラム32によって潰されず、およびそのフロー断面は解放されている。該リニアモータ30は、該第一のチューブ部が潰される、
図2に示す状況においては、突出されている。該第二のチューブ部13が潰される、上述したおよび図示されていない機能位置においては、該モータは引っ込められている。往復動して該モータ30を突出させ、および引込めることにより、該傾斜レバー31は、そのベアリング35周りの傾斜運動に刺激され、このことが、該圧力ラム32、33の説明したシフトを引き起こす。
【0046】
図1、
図2、
図4および
図9は、該カバーフラップ6が、開いた位置(
図4および
図9)と、閉じた位置(
図1および
図2)の間で旋回可能であるように、該下方ハウジング部4上に設けられていることを示している。該カバーフラップ6は、ロッキング機構41によって、該ハウジング3に固定することができ、およびこの目的のために、該機構41と相互に作用するラッチピン42を有している。また、該フラップには、該第二のチューブ部13と相互に作用し、および該カバーフラップ6が閉じられるときに、該フラップが、エアセンサ44に対して目的通りに確実に配置する位置決めピン43も設けられている。該ポンプの該駆動部26、28は、USBポート49を介して充電することができる充電式バッテリ48によって動力が供給される。
【0047】
該ポンプ1を使用するために、オペレータは、まず、例えば、この目的のために設けられた穴に、特別なキーを横方向に挿入して、それを用いて該フラップ6を解除することにより、該ポンプ1の該カバーフラップ6を開く。例えば、輸液装置は、
図1から
図4ならびに
図8から、該ポンプモジュール2の該ルアーロック接続部24に接続することができる。さらに、該ポンプモジュール2には、ドリップチャンバ50(
図6)が、または、注入スパイク63(
図7および
図9)が備えられ、これらは、使い捨てとしてデザインされた輸液ラインの構成要素とすることもできる。該二つのチューブ部12、13を含む該輸液ラインが、気泡が無い状態で、該流出口のルアーロック接続部25/該ドリップチャンバ50/該注入スパイク63まで充填された後、該第一のチューブ部12(
図3)または該第二のチューブ部13(
図5から
図9)は、滑動クランプ45を用いて、流体を密封して閉じられる。次に、該オペレータは、該ピストンロッド16の該結合要素46が、該駆動部26の該カウンタ要素47に可聴的におよび/または目で分かるように係合して、該ピストンシリンダユニット11が該駆動部26に接続されるまで、該ポンプモジュール2を、該ポンプ1の指定されたレセプタクルに押し込む。その後、該カバーフラップ6は閉じられる。該上方ハウジング部5に配設された該ロッキング機構41は、該フラップ6の確かなロッキングを確実にする。同時に、該第二のチューブ部13は、該エアセンサに関して、目的通りに配置され、例えば、該第二のチューブ部は、該センサに押し付けられる。このことは、輸液中に存在するまたは導入されるいかなる気泡も検出されて、それに応じて情報が伝達される。
【0048】
ここで、該オペレータは、該表示要素8および該操作要素9を介して、所望の供給量を入力する。それらは、ディスプレイ10を介して入力も実行できるように、一つの実施形態に従って、タッチスクリーンとして設計することができるディスプレイ10を介して表示される(携帯電話またはタブレット内のアプリケーションを介しての操作も可能であり、該操作も本発明の範囲内にある)。認可の直後、該ポンプ1は始動する。該リニアモータ30は、
図2に示す位置から引っ込められ、アウトレットラム33が該第二のチューブ部13を流体的に密封してクランプする。同時に、インレットラム32が、該第一のチューブ部12を開く。次いで、該ピストン15用の該リニアモータ26が、
図2に示す位置から後へ移動して、該第一のチューブ部12を介して輸液溶液を該ピストンシリンダユニット11の該流体チャンバ21内に吸引する。設定された投薬量に達するとすぐに、該リニアモータ30は、
図2に示す前方位置まで戻り、該インレットラム32が、該第一のチューブ部12を流体的に密封して閉じる。同時に、該アウトレットラム33が、該第二のチューブ部13を開く。そして、該リニアモータ26は、止め部まで、
図2に示す該位置まで前方へ移動し、および該流体チャンバ21内に存在する該輸液流体を、該第二のチューブ部13内に押し込む。このプロセスは、該指定された投薬量に達するまで続く。該輸液が終了すると、該カバーフラップ6が、該特別なキーによって再び開かれる。また、該特別なキーは、駆動部26とピストンロッド16の結合を解除するのにも用いることができる。この時点で、該ポンプモジュール2は、該ポンプ1の該ハウジング3から取り外すことができる。
【0049】
該ポンプモジュールの詳細な構造は、
図5を見れば分かる。
【0050】
該蓋壁部19の領域内に配設された(または、それの上に形成された)環状の丸縁52は、好ましくは、該ピストンロッド16と一体化して設計された制限プレート53のための軸方向止め具を表している。したがって、該ピストンシリンダユニット11の最大行程は、該制限プレート53によって決められ、および該シリンダ14からの該ピストン15の抜けは、フォームフィッティングによって防止される。該シリンダ14の該底部壁17に対向している該ピストンロッド16の端部側には、好ましくは、該ピストン15が、円滑に作動するピストンとして構成され/形成され/取付けられている。さらに、該ピストンは、好ましくは、特定のスリーブ長を有するピストンスリーブとして、または、二つの軸方向に離間されたピストンプレート(図示せず)備えた二重ピストンとしてデザインされている。その遠位端において、およびその近位端において(または、それぞれの遠位ピストンプレートおよび近位ピストンプレートにおいて)、該ピストンは、移動可能なシーリングリップとしてデザインされたシール20を有している。
図5は、好適な実施形態例において、それらのシール20が、周囲方向において、リングシールとして連続的にデザインされ、それにより、低圧および高圧の運動が確保されることを示している。該ピストン15の該遠位および近位のシール20の間の該長手方向Lに沿った距離は、図示されている該実施形態例においては、該ピストンシリンダユニット11の該ピストン行程を越えている。このことは、該流体スペース/投薬スペース21のシリンダ壁部のみが該一方の遠位シール20に接触し、したがって、その滅菌性が確保されることを保証する。好ましくは、該ピストン15の該遠位および近位のシール20の間の該長手方向Lに沿った距離と、該ピストン行程との間の超過分は、少なくとも2mmである。
【0051】
該ポンプモジュール2は、ハンドルプレート54も有している。該プレートは、T字状の断面プロファイルを有し、このことが、ある種のハンドルストリップまたはハンドル領域55をもたらし、それによって、該ポンプモジュール2は、握るのが容易であり、およびハウジング3に挿入することができ、または、該ハウジングから取り外すことができる。具体的には、該ハンドルストリップ55は、該シリンダの長手方向軸Lに対して横方向に、好ましくは、該軸に直角に、およびさらに好ましくは、該チューブ部12、13に平行に延びているように、該ピストンシリンダユニット11の該遠位端に設けられている。該ハンドルストリップ/プレート54には、該第一のチューブ部12に対向している/該チューブ部に配置されたその端部に、スリーブまたは小穴56が設けられ、該スリーブは、該ハンドルストリップ/プレートに対して横方向に突出し、およびその長手方向軸は、該ハンドルストリップ/プレートに平行に延びている。該スリーブ/小穴56は、好ましくは、該ハンドルストリップ/プレート54と一体化してデザインされ、および該スリーブを通って案内される輸液ライン(例えば、該チューブ部12)を固定するように作用する。このようにして、該スリーブは、該輸液ラインが中にある、該輸液ラインが、その導入後に挿入される円形の中空部分を画定している。該ハンドルストリップ/プレート54は、該第二のチューブ部13の側部に対向している/配置されたその端部において、該滑動クランプ45に機械的に結合されている。この目的のために、ラッチ突起57を備えた移動止めカムまたはフレキシブル舌部が、該ハンドルストリップ/プレート54に取付けられ/形成され、それに対して、挿入シュートが該滑動クランプ45に形成されている。該移動止めカム57は、例えば、該カムを所定の位置で該ハンドルストリップ/プレート54に結合するために、該滑動クランプ45の該挿入シュートまたはその周辺壁において、対応するカウンタ小穴/オフセット/凹部に係合する矩形状または球状の突出要素である。この接続は、該移動止めカム57に該カウンタ小穴をスナップ式で嵌めることにより実現されるフォームクロージャである。
【0052】
該滑動クランプ45は、硬い部分またはフレーム58と、該硬い部分またはフレーム58に支持された移動可能な部分またはスライダ59とを有している。該スライダ59および該フレーム58にはともに、それぞれ、第一の滑動位置において、適合して配置されているスルーホール/開口部が形成され、および該スライダおよび該フレームは、第二の滑動位置において、互いにシフトされる。該ポンプ1が送出しない、または、該ポンプモジュール2が該ハウジング3に挿入されていない該第二の滑動位置/状態において、該スライダおよび該フレームは、気泡がないことが保証されるように、該第一のチューブ部13をクランプする。該第一の/別の滑動位置においては、該硬い部分58によって形成された前記第一の開口部60と、該滑動クランプ45の該移動可能な部分59によって形成された他方の第二の開口部61が、互いに同一平面上にある(重なる)ように、該移動可能な部分59が該硬い部分58に対して移動され、それによって、該二つのスルーホール/開口部を通って案内される該第二のチューブ部13を流れる流体フローが吐出される。
【0053】
該輸液ポンプ1を、輸液のすべての用途に、すなわち、大量の送出量を伴う用途、および高精度要件を伴う用途に用いることができるという本発明による該利点は、すべての輸液セットを該ポンプに接続することができるという事実によってさらに強化される。
図6は、該第一のチューブ部12とドリップチャンバ50の結合を実施例として示している。このようにして、該ポンプモジュール2とドリップチャンバ50を結合し、その後、このユニットを該ハウジング3に挿入することが可能である。したがって、一般に、すべての輸液システムの一部である該ドリップチャンバ50は、該ポンプモジュール2の下流に直接、配置することができ、このことは、該輸液システム全体のコンパクト性を必要に応じて向上させる。該ドリップチャンバは、投与される液体の液滴の生成を調節するように、および気泡の生成を防ぐように作用する。
図11は、該滑動クランプ45が、該ピストンシリンダユニット11上に直接配置されておらず、独立して配置されている点が異なる、非常に似た実施形態を示す。
【0054】
図7は、異なる輸液セットを有するさらなる実施形態を示す。したがって、該輸液ラインは、ここでは、該ポンプモジュール2の下流のスパイク62を示す。このスパイク62は、外部の輸液容器と、該輸液ラインとの間に信頼性の高い接続をもたらす接続部材である。該スパイク62は、注射スパイク63と、保持シート64に分けることができる。これらの間にスパイク止め65が形成され、このことは、該スパイク62の安全な配置を可能にする。
【0055】
図8において、該第一のチューブ部12には、
図3の場合と同様に、該インレットルアーロック接続部/ルアーロック内円錐24が設けられている。該滑動クランプ45は、該第二のチューブ部13を流れるフローを可能にするような状態になっている。流れが可能になっているこの状態で、該ポンプモジュール2は、
図2および
図9に示すように、該ハウジング3に挿入される。
図9は、該スパイク62が該第一のチューブ部12に接続されている該実施形態を示す。
【0056】
図10は、該軸方向に沿って切り取った図における、該ポンプモジュール2の該ピストンシリンダユニット11の実施形態を示す。該ユニットは、その遠位端にシリンダヘッド66が設けられているシリンダ14を備えている。その箇所には、流入路22/流入穴22と、流出路23/流出穴23が形成され、これらの各々は、それぞれ該流体供給ライン12または該流体ドレインライン13を結合するための接続ノズル79、80に流体的に結合されている。ハンドル部55を備えた該ハンドル部材54が、該シリンダヘッド66上に配置され、ここでは形成されている。これは、特に、該ピストンシリンダユニット11を該輸液ポンプ1に挿入するときに、該ピストンシリンダユニットを取り扱うのに用いられる。
【0057】
該シリンダ14の内部には、該ピストン15を、該軸方向Lにおいて、平行に/前後に動かすことができるように、該ピストンが配置されている。周囲遠位環状溝67と周囲近位環状溝68が、該シリンダ14の該壁部に形成されている。これらは、それぞれ、遠位ピストンシール69または近位ピストンシール70を受け入れるように作用する。該ピストンシール69、70は、ここでは、例えば、該2-Kテクノロジーを用いて、該ピストン15上のフレキシブルシーリングリップとして形成されている。該長手方向軸Lの該方向(軸方向)における該環状溝67、68間の距離は、該ピストンシール69、70が休止または保管位置にある場合に、該二つのピストンシール69、70を、該シリンダ14の該壁部による大きなプレテンションおよび負荷を伴うことなく、対応する該環状溝67、68に受け入れて支持することができるように、この方向における該ピストンシール69、70間の距離に等しくなっている。このことは、使用中に、それらが良好に密封していることを確保する。さらに、この実施形態例における該フレキシブルピストンシール69、70間の該距離は、該ピストンポンプの該行程よりも、すなわち、該シリンダ14内の該ピストン15の該行程よりも、約2mm大きい。このことが、該輸液溶液と接触する領域が常に絶対的に滅菌状態であることを確保する。
【0058】
該ピストンシリンダユニット11内には、該ユニットが、該流体供給ライン12および該流体ドレインライン13に流体的に接続されるように、送出チャンバ21が形成され、前記送出チャンバ21は、該シリンダ14の該壁部と、該シリンダ内に配置された該ピストンと、該遠位ピストンシール67とによって画定され、このことが、該ピストンを該シリンダから密封する。該送出チャンバ21の反対側の、該ピストンシール67の該側部に位置しているピストン移動部71は、中に配置された弾性シーリング要素72によって、該環境に対して滅菌的に密封されている。該シーリング要素72は、一方においては、該ピストンの該近位端に、また他方においては、該シリンダの該近位端に配置され、および該シリンダ14の近位端を越えて突出していない。また、該シーリング要素72は、該シリンダ14および近位環状結合部74の内側の該軸方向に本質的に延びているベローズ73を備えたポット状膜の形態を有している。該ベローズ73は、その遠位側が、該ピストン14の前側で該ピストン14に対向している状態で密封して接続され、ここでは、材料固定的に接続されている。該リング状結合部74は、該端部側において、境界部75または各境界縁部75によって、該シリンダ14に堅固かつ流体密封的に接続されている。該ピストン15には、
図5に示す該実施形態とは違って、その近位前面76に、中心止り穴77の形態のピストンロッド収容部77が設けられ、該穴は、該ピストン15の該近位前面76で該軸方向Lに導入され、および該駆動機構のピストンロッド16のラッチ収容のための、ここでは、固定リング78の形態の内部ラッチ構造78を有している。
【0059】
使用する場合、オペレータは、気泡が無い状態で輸液溶液が充填されている該ポンプモジュール2の該ピストンシリンダユニット11を、該輸液ポンプ1の意図するデバイスに挿入する。該ピストンロッド16は、ピストン15の該ピストンロッド収容部77に挿入されて、該ラッチ構造78に係止する。該オペレータは、該輸液ポンプ1上で特定の供給量を設定して、該システムを始動させる。該ピストンロッド16は、この時点で、例えば、10mmの行程で該ピストン15を前後に動かして、該輸液溶液を該患者へ送出する。該ピストンシール69、70のより大きな距離、例えば、12mmの距離は、それらのシール間にある領域が常時、滅菌状態であることを確保している。また、該シーリング要素72は、シリンダ14の該近位領域も滅菌状態に保持する。
【符号の説明】
【0060】
1 輸液ポンプ
2 ポンプモジュール
3 ハウジング
4 下方ハウジング部
5 ハウジング蓋
6 カバーフラップ
7 ハウジング底部
8 表示素子
9 操作要素
10 ディスプレイ
11 ピストンシリンダユニット
12 流体供給ライン、第一のチューブ部
13 流体ドレインライン、第二のチューブ部
14 シリンダ
15 ピストン
16 ピストンロッド
17 底部壁
18 周辺壁
19 蓋壁
20 シール
21 流体スペース/投薬スペース/送出チャンバ
22 流入穴、流入路
23 流出穴、流出路
24 インレットルアーロック接続部、ルアーロック内円錐
25 アウトレットルアーロック接続部、ルアーロック外円錐
26 駆動部、リニアモータ
27 中間壁部
28 制御ユニット
29 中間壁部
30 駆動部、リニアモータ
31 傾斜レバー
32 圧力ラム
33 圧力ラム
34 キャリア
35 傾斜ベアリング
36 旋回ベアリング
37 旋回ベアリング
38 横方向アーム
39 圧縮ばね
40 圧縮ばね
41 ロッキング機構
42 ラッチピン
43 位置決めピン
44 エアセンサ
45 滑動クランプ
46 結合要素
47 カウンタ要素
48 アキュムレータ
49 USBインタフェース
50 ドリップチャンバ
51 スパイク
52 環状の丸縁
53 制限プレート
54 ハンドルプレート、ハンドル部材
55 ハンドル領域、ハンドル部
56 スリーブ
57 移動止めカム
58 該滑動クランプの硬い部分
59 該滑動クランプの移動可能な部分
60 該滑動クランプの第一の開口部
61 該滑動クランプの第二の開口部
62 スパイク
63 注射スパイク
64 保持シート
65 スパイク止め部
66 シリンダヘッド
67 環状溝
68 環状溝
69 遠位ピストンシール
70 近位ピストンシール
71 ピストン移動部
72 シーリング要素
73 ベローズ
74 結合部
75 境界部、境界エッジ
76 前面
77 ピストンロッド収容部、止り穴
78 ラッチ構造、固定リング
79 接続ノズル
80 接続ノズル
L 長手方向、軸方向