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特許7138122熱可塑性のフィルムまたはプレートから歯科補助具を作製するための方法
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  • 特許-熱可塑性のフィルムまたはプレートから歯科補助具を作製するための方法 図1
  • 特許-熱可塑性のフィルムまたはプレートから歯科補助具を作製するための方法 図2
  • 特許-熱可塑性のフィルムまたはプレートから歯科補助具を作製するための方法 図3A
  • 特許-熱可塑性のフィルムまたはプレートから歯科補助具を作製するための方法 図3B
  • 特許-熱可塑性のフィルムまたはプレートから歯科補助具を作製するための方法 図4A
  • 特許-熱可塑性のフィルムまたはプレートから歯科補助具を作製するための方法 図4B
  • 特許-熱可塑性のフィルムまたはプレートから歯科補助具を作製するための方法 図4C
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-07
(45)【発行日】2022-09-15
(54)【発明の名称】熱可塑性のフィルムまたはプレートから歯科補助具を作製するための方法
(51)【国際特許分類】
   A61C 7/08 20060101AFI20220908BHJP
【FI】
A61C7/08
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019565237
(86)(22)【出願日】2018-06-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-27
(86)【国際出願番号】 EP2018064586
(87)【国際公開番号】W WO2018220221
(87)【国際公開日】2018-12-06
【審査請求日】2021-01-20
(31)【優先権主張番号】102017209403.6
(32)【優先日】2017-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500058187
【氏名又は名称】シロナ・デンタル・システムズ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】シュミット,クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】フォーノフ,ピーター
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第02957252(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0335404(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102010036107(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第102011113694(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性のフィルムまたはプレートから歯科補助具を作製するための方法であって、
-デジタル三次元作業モデルが、上顎および/または下顎の少なくとも一つの部分の三次元データセットを使用するコンピュータ支援の方法で作成され、
-物理的作業モデルが前記デジタル作業モデルに基づいて作製され、
-前記可塑性のフィルムまたはプレートが、深絞り装置内の物理的な作業モデル上に深絞りされ、
-前記歯科補助具が、切断線に沿って分離することによって、前記深絞りされた可塑性のフィルムまたはプレートから作成される方法であり、
前記物理的な作業モデルを作製する前に前記デジタル作業モデル、前記コンピュータ補助構造で補完ることを特徴とし、
-前記補助構造が隆起部または陥凹部として構成されていて、前記作業モデル内でデジタル切断線モデルに沿って延び、前記補助構造が円形、または、n角形の断面を有し、
-前記デジタル切断線モデル、前記デジタル作業モデル内前記コンピュータ作成
前記コンピュータが、前記歯肉線前記デジタル作業モデル内で切断線モデルとして使用される補助線前記歯肉線と平行に且つ前記歯肉線から固定距離で作成することを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記補助構造が、前記切断線モデル上または前記切断線モデルに隣接するか、または前記切断線モデルまでの第一の距離で配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の作製方法。
【請求項3】
切断線モデルとして使用される歯肉線デジタル作業モデル内で前記コンピュータ決定することを特徴とする、請求項1または2に記載の作製方法。
【請求項4】
前記歯科補助具が機械加工ツールによって、深絞りされた可塑性のフィルムまたはプレートから分離されることを特徴とし、前記ツールが少なくともある程度、前記補助構造を切除するか、または分離中に少なくともある程度、前記補助構造内に達する、請求項1~3のいずれか一項に記載の作製方法。
【請求項5】
深絞り装置およびコンピュータユニットを備える熱可塑性のフィルムまたはプレートから歯科補助具を作製するためのシステムであって、
前記システムが、請求項1~4のいずれか一項に記載の作製方法を実行するように設計されていることを特徴とする、システム。
【請求項6】
前記システムがソフトウェアプログラムを備えることを特徴とし、
-前記ソフトウェアプログラムを前記コンピュータユニットで実行でき、
-前記ソフトウェアプログラムが少なくとも一つのデジタルツールを備え、
-前記デジタルツールが少なくとも一つの入力手段によって動作することができ、
-前記デジタルツールが、デジタル作業モデル内に補助構造を補完するように設計されている、請求項5に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
熱可塑性のフィルムまたはプレートから歯科補助具を作製するための方法であって、ここで可塑性のフィルムまたはプレートは深絞り装置内の物理的な作業モデル上で深絞りされ、歯科補助具は切断線に沿って分離することによって、深絞りされた可塑性のフィルムまたはプレートから作成される。
【背景技術】
【0002】
深絞り装置の歯科補助具を作製するための方法は、WO 2014/082624 A2号から知られていて、ここで上顎および/または下顎の作業モデルは深絞り装置の中に配置され、深絞りフィルムは作業モデル上に配置され、また深絞りされてスプリントにされる。作業モデルは、上顎および/または下顎の生体認証データに基づいてコンピュータ支援の方法で作成される。
【0003】
WO 2010/043419 A1号は、多層歯科スプリントの作製方法を説明する。
【0004】
適切な熱可塑性材料または歯科補助具用に深絞りするフィルムまたはプレートは、例えばDE 10 2011 113 694 A1またはEP 2 417 927 A1から知られている。
【0005】
深絞りによって作成される歯科補助具の作製において特に時間を要する工程は、深絞りされた可塑性のフィルムまたはプレートからの歯科補助具の分離(例えば切り抜き)である。さらに、誤りなくこの工程を実行し、満足のいく結果をもたらすために特別なスキルや経験が必要である。
【0006】
本発明の目的は既知の方法をさらに発展させること、また特に、より信頼性が高くより速い作製方法を提供することである。
【発明の概要】
【0007】
本発明の一つの主題は、熱可塑性のフィルムまたはプレートから歯科補助具を作製するための方法であり、ここでデジタル三次元作業モデルは、上顎および/または下顎の少なくとも一つの部分の三次元データセットを使用するコンピュータ支援の方法で作成され、物理的な作業モデルはデジタル作業モデルに基づいて作製され、可塑性のフィルムまたはプレートは、深絞り装置内部にある物理的な作業モデル上で深絞りされ、歯科補助具は切断線に沿って分離することによって、深絞りされた可塑性のフィルムまたはプレートから作成され、物理的な作業モデルを作製する前にデジタル作業モデルは、自動的におよび/または手動入力手段によって補助構造で補完され、ここで補助構造は隆起部または陥凹部として構成されていて、作業モデル内でデジタル切断線モデルに沿って延び、デジタル切断線モデルはデジタル作業モデル内に自動的におよび/または手動入力手段によって作成される。
【0008】
ここで、「歯科補助具」という用語は、例えばブラキシズムスプリント、矯正スプリント(リテイナーまたはアライナーなど)、マウスガード、漂白スプリントまたはいびきスプリント、スプリントベースの一時的ブリッジなど、上顎および/または下顎の形状に少なくとも部分的に適合されている取り外し可能な可塑性の部品またはスプリントを意味する。
【0009】
歯科補助具(例えば歯科スプリント)は、深絞りとして知られる形成プロセスによって熱可塑性材料から作製される。熱成形、加熱成形または真空深絞りとも呼ばれる深絞りは、熱可塑性材料を形成するためのプロセスである。熱成形プロセスは典型的に、使用されるそれぞれの半製品によって区別され、よって薄めの半製品はフィルムと呼ばれ、約1.5 mmからの厚めの半製品はプレートと呼ばれる。0.5 mm~5 mmの厚さを有する円形ブランクは典型的に、歯科技術で使用され、よって、少なくとも部分的に、また材料の伸張の結果として、深絞りプロセスの結果的製品の材料厚さはより薄い。
【0010】
本発明によってデジタル作業モデルに基づいて、例えばコンピュータ支援製造(CAM)を使用して作製される歯科モデル、いわゆる作業モデルは、形成プロセスのための形状テンプレートとしての役割を果たす。
【0011】
デジタル作業モデルは、上顎および/または下顎の形状、または上顎および/または下顎の少なくとも一つの部分の形状を反映する三次元データセットに基づいて作成され、また本発明によって補助構造で補完される。
【0012】
上顎/下顎の三次元データセットは、患者の口内で印象を取り、その後例えば印象または印象の陽原型を測定することによって、または例えば口腔内カメラを使用して、上顎および/または下顎の直接的な口腔内光学測定によって得られる。
【0013】
三次元データセットに基づくデジタル作業モデルの作成は、自動的におよび/または手動入力手段によって行われる。
【0014】
深絞りされた可塑性のフィルムまたはプレートからの歯科補助具の分離は、ツールを使用して手動で行われる。補助構造は、補助構造に沿った制御された分離を可能にし、経験の浅いユーザーによってさえも、特に単純かつ迅速な方法で実行可能である。本発明による補助構造なしに手動で分離する時に、誤りを処理することによってしばしば必要となるやり直しは結果的に回避される。
【0015】
補助構造が隆起部として構成されている場合、分離は機械加工ツールを補助構造に対して、次に補助構造に沿って案内することによって行われる。それ故に歯科補助具は外向きの鋭い切断端を受け、その結果として、作製された歯科補助具を挿入する時の歯ぐきの損傷のリスクが確実に回避されうる。
【0016】
陥凹部として構成された補助構造を使用する時、ツールのための案内チャネルが提供される。陥凹部の幅は有利なことに、分離に使用されるツールの直径と断面で一致する。ツールは特に有利なことに、外側に向かって減少する直径を有し、凹部の幅は特に有利なことに、ツールの最大直径よりも小さい。
【0017】
補助構造は有利なことに、切断線モデル上または切断線モデルに隣接するか、または切断線モデルまでの第一の距離で配置される。補助構造の幅および設計に応じて、また分離に使用されるツールのタイプに応じて、実際に得られた切断端の位置は、補助構造との関連で変わる。従って、補助構造を位置付ける時に、これを考慮することが有利である。
【0018】
歯肉線は有利なことに、デジタル作業モデル内で自動的におよび/または手動で決定され、切断線モデルとして第一の代替的実施形態に従って使用される。第二の代替的実施形態によると、補助線は歯肉の方向に、および歯肉線と平行に固定距離で作成され、切断線モデルとして使用される。第三の代替的実施形態によると、弓形補助線は歯肉線に隣接して、または歯肉線までのある距離で作成され、切断線モデルとして使用される。
【0019】
多くの用途および/または歯科補助構造について、歯肉線にできるだけ近い切断線のプロファイルが望ましい。歯肉線に厳密に沿って延びる切断線では、例えば歯科補助具が着用された時に歯肉の領域内での圧力ポイントが回避される。特に単純な分離、および該当する場合、第三の代替的実施形態による直線の切断線でさらなる加工が可能である。
【0020】
補助構造は有利なことに、丸型、n角形またはテーパー付きの断面を有する。
【0021】
歯科補助具は有利なことに機械加工ツールによって、深絞りされた可塑性のフィルムまたはプレートから分離され、それによってツールは少なくともある程度、補助構造を切除するか、または分離中に少なくともある程度、補助構造内に達する。
【0022】
本発明は、深絞り装置およびコンピュータユニットを備える熱可塑性のフィルムまたはプレートから歯科補助具を作製するためのシステムにさらに関し、これによって、システムは、上述のタイプの作製方法を実行するように設計されている。
【0023】
システムは有利なことに、ソフトウェアプログラムを備え、それによって、ソフトウェアプログラムをコンピュータユニット上で実行することができ、ソフトウェアプログラムは少なくとも一つのデジタルツールを備え、デジタルツールは少なくとも一つの入力手段によって動作可能であり、デジタルツールはデジタル作業モデルにおける補助構造の補完を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本発明の設計例を図面に示す。図面は以下を示す。
【0025】
図1図1は、本発明による方法の概略図である。
図2図2は、デジタル作業モデルの概略図である。
図3図3A、3Bは、さまざまな実施形態による作業モデルの概略断面図である。
図4図4A図4Cは、さまざまな実施形態による補助構造の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、方法工程S1~S5を含む第一の実施形態による本発明による方法の概略図を示す。
【0027】
第一の方法工程S1において、歯科補助具(この場合は歯科スプリント)に提供される顎領域がデジタルで記録される。この目的のために、下顎または上顎、または少なくとも下顎もしくは上顎の一部の三次元データセットが、例えば口腔内カメラなどの測定装置によって作成され、コンピュータユニットの適切な記憶媒体に保存される。
【0028】
第二の方法工程S2において、デジタル作業モデルは、方法工程S1で作成されたデータセットからコンピュータ支援の方法で作成される。デジタル作業モデルは本質的に、三次元データセットに対応し、さらに隆起部または陥凹部として構成された補助構造を備え、それによって補助構造はコンピュータユニットによって方法工程S2で設計および位置付けられている。
【0029】
第三の方法工程S3において、物理的作業モデルは、例えばミリング装置および/または研磨装置によって、または3Dプリンターを使用することによって、第二の方法工程S2で作成されたデジタル作業モデルに基づいて作製される。
【0030】
第四の方法工程S4において、熱可塑性のフィルムまたはプレートは、深絞り装置によって物理的作業モデル上に深絞りされる。
【0031】
第五の方法工程において、深絞りされた可塑性のフィルムまたはプレートは、ツールによって補助構造に沿って分離される。
【0032】
補助構造が隆起部である場合、隆起部の少なくとも一つの頂点または陵、およびその上で絞られた可塑性のフィルムまたはプレートの一部が、ミリングツールまたは研磨ツールによって除去される。補助構造が陥凹部である場合、ミリングツールまたは研磨ツールは、陥凹部内に少なくとも部分的に案内され、可塑性のフィルムまたはプレートを補助構造に沿って分離する。
【0033】
図2は、下顎の三次元データセット1の概略図を示す。第二の実施形態によると、歯3と歯ぐき4の間の境界線は、切断線2の下書き版として自動的に識別され、補助構造5は、切断線2の下書き版までの固定距離Aで自動的に位置付けられる。補助構造5とともに、三次元データセット1はデジタル作業モデル6を形成する。
【0034】
図3Aに概略的に示す通り、第一の代替的実施形態による補助構造5は、作業モデル6上の隆起部7として構成されている。深絞りプロセスの後、隆起部7およびその上で絞られた可塑性のフィルムまたはプレート8は、例えば研磨またはミリングなどのツール9によって少なくとも部分的に除去される。
【0035】
図3Bに概略的に示す通り、第二の代替的実施形態による補助構造5は、作業モデル6に突き出る陥凹部10として構成されている。深絞りプロセスの後、ツール9を少なくとも部分的に陥凹部10に案内する間、可塑性のフィルムまたはプレート8は、ツール9を使用して陥凹部10に沿って分離される。
【0036】
補助構造の断面の異なる実施形態は図4A図4Cに概説されていて、すなわちテーパー付き、丸み付き、またはn角形である。
【符号の説明】
【0037】
1 三次元データセット
2 切断線
3 歯
4 歯ぐき
5 補助構造
6 デジタル作業モデル
7 隆起部
8 深絞りされた可塑性のフィルムまたはプレート
9 ツール
10 陥凹部
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C