(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-07
(45)【発行日】2022-09-15
(54)【発明の名称】切削工具及び連結ねじを保持するための保持部材を有する切削工具本体
(51)【国際特許分類】
B23B 27/16 20060101AFI20220908BHJP
【FI】
B23B27/16 A
(21)【出願番号】P 2019568214
(86)(22)【出願日】2018-06-25
(86)【国際出願番号】 IL2018050696
(87)【国際公開番号】W WO2019016792
(87)【国際公開日】2019-01-24
【審査請求日】2021-04-27
(32)【優先日】2017-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514105826
【氏名又は名称】イスカル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ヘクト ギル
(72)【発明者】
【氏名】シャルマ ラジャット
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】実開昭54-084691(JP,U)
【文献】実開昭59-107323(JP,U)
【文献】米国特許第05976455(US,A)
【文献】特開2004-261937(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 27/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
雌ねじ(78)を有する切削インサート(14)と、前記切削インサート(14)を固定するように構成されて、前記切削インサート(14)が据えられるポケット(16)を備える切削工具本体(12)と、を備え、
前記切削工具本体(12)
は、
機械加工端(18)及び前記機械加工端(18)から延在する工具周面(26)と、
前記工具周面(26)に向けて開口する、貫通した無ねじの工具連結孔(42)と、
連結ねじねじ山(60)を有し、かつ、前記工具連結孔(42)内に配置された連結ねじ(52)であって、前記ポケット(16)に前記切削インサート(14)を固定するように構成された連結ねじ(52)と、を備え、
前記工具周面(26)が前記ポケット(16)を備え、
前記ポケット(16)が、外側を向くポケット基底面(36)と、前記ポケット基底面(36)から延在する第1及び第2支持壁(38、40)と、を備え、
前記切削インサート(14)が、対向するインサート基底面(102)と、前記インサート基底面(102)の間に延在するインサート周面(104)と、を備え、
前記切削工具本体(12)は保持部材(80)をさらに備え、少なくとも前記連結ねじ(52)が前記切削インサート(14)と接触していないとき、前記保持部材(80)は前記連結ねじねじ山(60)と係合し、
前記保持部材(80)が、前記連結ねじ(52)が前記工具連結孔(42)から落下することを防止し、かつ、前記連結ねじ(52)が回転の間に駆動工具(44)から離れるように移動することを防止するように構成されている、切削工具(10)。
【請求項2】
前記保持部材(80)が、前記連結ねじ(52)に、前記連結ねじ(52)又は前記保持部材(80)のいずれかにおいて塑性変形を引き起こすことができる最大保持力(MHF)以下である反力(RF)を連結ねじ回転軸(R)の方向に加え
、好ましくは、RF=MHFであるとき、前記保持部材(80)が、前記連結ねじねじ山(60)のねじ山凹部(62)間を移動又は跳躍し、前記連結ねじ(52)の回転がない軸方向の移動を許容するように構成されている、請求項
1に記載の切削工
具(10)。
【請求項3】
前記連結ねじ(52)が、
前記切削工具(10)の2つの対向する側から
前記駆動工具(44)により前記連結ねじ(52)を回転
させることを可能にする第1及び第
2駆動部材(68、70)を備える
、請求項
1又は2に記載の切削工
具(10)。
【請求項4】
前記保持部材(80)が前記工具連結孔(42)に突出する
、請求項1
~3のいずれか一項に記載の切削工
具(10)。
【請求項5】
前記保持部材(80)が
、弾性的ではなく、弾性部材(94)により前記切削工具に復元力を有して固定されている
、請求項1
~4のいずれか一項に記載の切削工
具(10)。
【請求項6】
前記保持部材(80)が弾性的である
、請求項1
~5のいずれか一項に記載の切削工
具(10)。
【請求項7】
前記保持部材(80、380、580)がU字型又は直線状である
、請求項1
~6のいずれか一項に記載の切削工
具(10)。
【請求項8】
前記保持部材(80、280、380、480、580)の少なくとも一部分が三角形、又は円形の断面を有する
、請求項1
~7のいずれか一項に記載の切削工
具(10)。
【請求項9】
前記保持部材(80、280、380、580)が、交換可能であり、前記工具連結孔(42、242、342、542)と交わる貫通保持孔(88、288、388、588)内に解放可能に
配置されている
、請求項1
~8のいずれか一項に記載の切削工
具(10)。
【請求項10】
前記保持部材(580)が、交換可能であり、前記工具連結孔(542)内の保持凹部(90)内に解放可能に
配置されている
、請求項1
~9のいずれか一項に記載の切削工
具(10)。
【請求項11】
前記切削工具本体(12)が、前記工具周面(26)に対してのみ開口する非貫通係止孔(100)に螺合される係止ねじ(74)を備える
、請求項1
~10のいずれか一項に記載の切削工
具(10)。
【請求項12】
前記連結ねじ(52)が、前記工具周面(26)から外側に向かって突出しない
、請求項1
~11のいずれか一項に記載の切削工
具(10)。
【請求項13】
前記切削工具本体(12)が、2つの連結ねじ(52)及び2つの工具連結孔(42)を備える
、請求項1
~12のいずれか一項に記載の切削工
具(10)。
【請求項14】
前記切削工具本体(212)が、2つの連結ねじ(252)、及び少なくとも非固定位置において両方の連結ねじ(252)と係合する1つの保持部材(280)を備える
、請求項1
~13のいずれか一項に記載の切削工
具(10)。
【請求項15】
固定位置において、前記インサート基底面
(102
)のうちの1つが前記ポケット基底面(36)に当接し、前記インサート周面(104)が前記第1及び第
2支持壁(38、40)に当接し、前記連結ねじ(52)が前記雌ねじ(78)に螺合され連結孔面取り部(50)に対して締結されている
、請求項
14に記載の切削工具(10)。
【請求項16】
前記工具連結孔(42)が、前記工具連結孔(42)の中間領域内で半径方向に内側へ延在し
て前記連結ねじ(52)の連結ねじヘッド(58)のための接触場所を画定する連結孔面取り部(50)を有する
、請求項1
~14のいずれか一項に記載の切削工
具(10)。
【請求項17】
前記工具連結孔(42)が、非固定位置において前記連結ねじ(52)の全体が前記工具連結孔(42)内に保持されるような寸法を有する
、請求項1
~15のいずれか一項に記載の切削工
具(10)。
【請求項18】
前記工具連結孔(42)が、前記連結ねじ(52)が非固定位置にあるとき
に前記連結ねじ(52)が前記工具連結孔(42)内に完全に保持されるような寸法を有する
、請求項1
~16のいずれか一項に記載の切削工
具(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の主題は、切削工具に関する。具体的には、本発明は、雌ねじを備える少なくとも1つの切削インサートを有する切削工具に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第7094006号明細書は、旋削工具の2つの対向する側から駆動工具への接近を可能にするスイス型旋削工具を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本願の主題の第1の態様によれば、雌ねじを有する切削インサートを固定するために構成されており、
機械加工端及びこの機械加工端から延在する工具周面と、
上記工具周面に向けて開口する貫通し、無ねじの工具連結孔と、
連結ねじねじ山を有し、上記工具連結孔の中に置かれ、上記切削インサートを固定するように構成されている連結ねじと
を備える切削工具本体であって、
上記切削工具本体は、保持部材をさらに備え、少なくとも上記保持部材が上記切削インサートと接触していないとき、上記保持部材は上記連結ねじねじ山と係合する切削工具本体が提供される。
【0005】
本願の主題の第2の態様によれば、雌ねじを有する切削インサートを固定するために構成されており、
機械加工端及びこの機械加工端から延在する工具周面と、
上記工具周面に向けて開口する貫通し、無ねじの工具連結孔と
を備える切削工具本体であって、
上記切削工具本体の上記工具連結孔は、上記切削インサートの上記雌ねじの中に受け入れ可能な連結ねじねじ山を有する連結ねじを受け入れるように構成されており、
上記切削工具本体は、上記連結ねじねじ山との係合のために構成されている保持部材をさらに含む切削工具本体が、さらに提供される。
【0006】
本願の主題の第3の態様によれば、雌ねじを有する切削インサートを固定するために構成されており、
機械加工端及びこの機械加工端から延在する工具周面と、
上記工具周面に向けて開口する貫通し、無ねじの工具連結孔と
を備える切削工具本体であって、
上記切削工具の上記工具連結孔は、上記切削インサートの上記雌ねじの中に受け入れ可能な連結ねじねじ山を有する連結ねじを受け入れるように構成されており、
上記切削工具本体は、上記切削工具本体の中に存在するあいだ上記連結ねじねじ山との係合を保持するための保持手段をさらに備える切削工具本体がさらに提供される。
【0007】
以下の特徴のいずれも、単独で又は組み合わせて、本願の主題の上記の態様のいずれにも適用してよい。
【0008】
上記保持部材は、上記連結ねじが上記工具連結孔から落下することを防止し、上記連結ねじが回転の間に駆動工具から離れるように移動することを防止するように構成されている。
【0009】
工具周面は、上記切削インサートが据えられるポケットを備え、このポケットは、外側を向くポケット基底面、並びにこのポケット基底面から延在する第1及び第2の支持壁を備える。
【0010】
上記保持部材は、上記連結ねじに、上記連結ねじ又は上記保持部材のいずれかにおいて塑性変形を引き起こすことができる最大保持力MHF以下である反力RFを連結ねじ回転軸Rの方向に加える。
【0011】
RF=MHFであるとき、上記保持部材は、上記連結ねじねじ山のねじ山凹部間を移動又は跳躍し、上記連結ねじの回転がない軸方向の移動を許容するように構成されている。
【0012】
上記連結ねじは、上記切削工具の2つの対向する側から駆動工具により上記連結ねじを回転することを可能にする第1及び第2の駆動部材を備える。
【0013】
上記保持部材は、上記工具連結孔の中へと突出することができる。
【0014】
上記保持部材は、非弾性的であってもよく、弾性部材により上記切削工具に復元力を有して固定されることが可能である。
【0015】
上記保持部材は弾性的であってもよい。
【0016】
上記保持部材は、U字型又は直線状(真っ直ぐ)であってもよい。
【0017】
上記保持部材の少なくとも一部分は、三角形、又は円形の断面を有することができる。
【0018】
上記保持部材は、交換可能であり、工具連結孔と交わる貫通保持孔内に解放可能に置かれることが可能である。
【0019】
上記保持部材は、交換可能であり、工具連結孔内の保持凹部内に解放可能に置かれることが可能である。
【0020】
当該切削工具本体は、工具周面に対してのみ開口する非貫通係止孔に螺合される係止ねじを備えることができる。
【0021】
上記連結ねじは、上記工具周面から外側に向かって突出しない。
【0022】
当該切削工具本体は、2つの連結ねじ及び2つの工具連結孔を備えることができる。
【0023】
当該切削工具本体は、2つの連結ねじ、及び少なくとも非固定位置において両方の連結ねじと係合する1つの保持部材を備えることができる。
【0024】
切削工具は、当該切削工具本体と、上記連結ねじにより当該切削工具本体のポケットに固定された切削インサートとを備える。
【0025】
上記工具周面は、上記切削インサートが据えられるポケットを備え、このポケットは、外側を向くポケット基底面、及びこのポケット基底面から延在する支持壁を備え、
上記切削インサートは、対向するインサート基底面、及びこのインサート基底面から延在するインサート周面を備える。
【0026】
固定位置において、上記インサート基底面のうちの1つは上記ポケット基底面に当接し、上記インサート周面は上記第1及び第2の支持壁に当接し、上記連結ねじは上記雌ねじに螺合され連結孔面取り部に対して締結される。
【0027】
上記連結孔面取り部は、上記工具連結孔の中間領域内で半径方向に内側へ延在し、上記連結ねじの連結ねじヘッドのための接触場所を画定する。
【0028】
上記工具連結孔は、非固定位置において上記連結ねじの全体がその工具連結孔内に保持されるような寸法を有することができる。
【0029】
当該切削工具本体(12)のポケットに受け入れられる切削インサートの割出し方法又は交換方法であって、
a. 切削インサートの雌ねじ内に螺合可能に受け入れられる少なくとも1つの連結ねじ(52)を、駆動工具を用いて固定位置から非固定位置へ螺合解除する工程と、
b. 交換用の切削インサートを挿入するか、又はすでに固定された切削インサートを割出す工程と、
c. 上記連結ねじを上記非固定位置から固定位置まで螺合する工程であって、この連結ねじは、上記切削インサート内の対応する雌ねじに螺合可能に係合され、少なくともこの連結ねじが非固定位置にあるとき、保持部材は連結ねじねじ山と係合している工程と
を備える。
【0030】
当該方法は、上記連結ねじの非回転の軸方向移動であって、これにより上記保持部材が上記連結ねじに対して調整される移動をさらに備えることができる。
【0031】
上記工具連結孔は、上記連結ねじが非固定位置にあるとき、その連結ねじがその工具連結孔内に完全に保持されるような寸法を有する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
本願の主題のより良い理解のために、及び本願の主題がどのように実際に実施されてもよいのかを示すために、以降、添付の図面への参照がなされることになる。
【0033】
【
図1】
図1は、駆動工具への接近が可能な少なくとも工具第1面及び2つのU字型保持部材を示す、切削工具の第1実施形態の第1等角図である。
【
図2】
図2は、駆動工具への接近が可能な反対側の工具第2面を示す、
図1の切削工具の第2等角図である。
【
図5】
図5は、それぞれの固定位置及び非固定位置にある2つの連結ねじを示す、
図4の線V-Vに沿う断面図である。
【
図6】
図6は、1つの台形型保持部材及び2つの連結ねじを示す切削工具の第2実施形態の組立分解等角図である
【
図7】
図7は、2つの保持部材及び切削工具の底部で開口する保持孔を示す切削工具の第3実施形態の組立分解等角図である。
【
図8】
図8は、2つのOリング形状の保持部材及び対応する保持凹部を示す切削工具の第4実施形態の組立分解等角図である。
【
図9】
図9は、ピン型の直線状の保持部材を示す切削工具の第5実施形態の組立分解等角図である。
【0034】
適切と考えられる場合、対応する又は類似の要素を示すために、参照数字が複数の図にわたって繰り返されることがある(基本の参照数字が、異なる実施形態に対して異なる100番台の数字を加えて繰り返すことを含む)。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下の説明では、本願の主題の種々の態様が記載される。説明のために、特定の構成及び細部が十分詳細に示され、本願の主題の十分な理解が提供される。しかしながら、本明細書に提示される特定の構成及び細部を用いなくても本願の主題を実施することができるということも、当業者には明らかであろう。
【0036】
図1及び
図2に注目されたい。切削工具10は、切削工具本体12と、切削工具本体12に形成されたポケット16に固定された切削インサート14とを備える。切削工具本体12は、対向する機械加工端及びクランプ端18、20を有する(
図4)。機械加工端18は工具前面22を有し、クランプ端20は工具後面24を有する。切削工具本体12は、工具前面22と後面24との間に延在する工具周面26をさらに備える。
【0037】
切削工具10は、細長い形状を有し、この細長い形状に沿ってこの長手方向に延在し機械加工端及びクランプ端18、20を通り工具前面及び後面22、24を通る中心工具軸Aを有する。工具周面26は、工具軸Aの方向に沿って延在する。工具周面26は、対向する工具第1面及び工具第2面28、30を備えることができる。工具周面26は、(例えば、周面26において軸Aに垂直な断面で見て、多角形の(例えば正方形の)周囲構成を形成するように)それぞれ工具第1面28と工具第2面30との間に延在する、対向する工具第3面及び工具第4面32、34をさらに備えることができる。
【0038】
ポケット16は、周面26の外周構成に対して内側へ形成された凹部領域を表すことができる。いくつかの実施形態によれば、ポケット16は、工具第1面28に置かれ(例えば、工具第1面28によって表される外周部分に対して内側へ延在し)、工具前面22及び工具第3面32の両方に対して開口する。ポケット16は、いくつかの実施形態によれば工具第1面28と平行に、工具軸Aに沿って延在するポケット基底面36を備える。ポケット基底面36は半径方向に外側に向き、工具軸Aとは反対側を(そして工具軸Aの一方側へ)向く。ポケット基底面36は、工具第2面30よりも、工具第1面28に近づけて置かれてよい。ポケット基底面36は、工具第2面30とは反対側を向いてよい。ポケット16は、ポケット基底面36から離れるように横断方向に(立ち上がる方向に)延在する第1及び第2の支持壁38、40を備えることができる。いくつかの実施形態によれば、第1及び第2の支持壁38、40は、それらの間に鋭角を形成する。第1及び第2の支持壁38、40は、ポケット基底面36に垂直であることができる。いくつかの実施形態によれば、支持壁38、40及びポケット基底面36のみが切削インサート14に当接する。
【0039】
切削工具本体12は、1以上の貫通工具連結孔42、例えば1つ、2つ、又は3つの連結孔42をさらに備える。いくつかの実施形態によれば、切削工具本体12は、(例えば、基底面36で)ポケット16に、及び(例えば、工具第2面30で)工具周面26に開口する2つの貫通工具連結孔42を備える。各工具連結孔42は、中心の、長手方向連結孔軸B(
図5を参照)を有する。図に示される実施形態では、工具連結孔42は、ポケット基底面36及び工具第2面30に開口する。この実施形態については、各連結孔は、連結端20よりも機械加工端18に近い場所で開口する。工具連結孔42は無ねじである。なぜなら、工具連結孔42は雄のねじ山に対応するようには構成されていないからである。工具連結孔42(42A及び42B)は貫通孔であり、これにより、駆動工具44(
図5を参照)が切削工具本体12の2つの対向する側から接近することが可能になる。各工具連結孔42は、小径部46、小径部46よりも大きい直径を有する大径部48を有する。大径部48は、移行連結孔面取り部50を介して小径部46に接続されている。
【0040】
切削工具10は、1以上の連結ねじ52、例えば(各連結孔42に対して1つの連結ねじ52のように)1つ、2つ、又は3つの連結ねじ52をさらに備える。
図5に示される実施形態等の実施形態では、切削工具本体12は、まさに2つの連結ねじ52(52A及び52B)を備えることができ、各々が工具連結孔42内に置かれることが可能である。各連結ねじ52は長手方向に延在する中心の、連結ねじ回転軸Rを有し、この連結ねじ回転軸Rは、(固定位置にある連結ねじを示す)
図5の左側に示される実施形態では、連結孔軸Bと同軸である。一般に受け入れられる製造公差内で、連結ねじ52が(
図5の右側に示されるように非固定位置で)工具連結孔42内に置かれているとき、連結ねじ52は、連結孔軸Bに沿って軸方向にのみ移動することができ、連結ねじ52は、連結ねじ回転軸Rの周りに自由に回転することができる。各連結ねじ52は、対向する第1及び第2のねじ端面54、56を有する。各連結ねじ52は、第1ねじ端面54から延在して、第2ねじ端面56から延在する連結ねじねじ山60に接続する連結ねじヘッド58を有する。連結ねじねじ山60の側面図又は断面(
図5)において、連結ねじねじ山60は、交互のねじ山凹部及びねじ山凸部62、64を有する。連結ねじ52は、連結ねじネック66を備えることができ、この連結ねじネック66は、連結ねじヘッド58を連結ねじねじ山60に接続する。
【0041】
連結ねじヘッド58は、第1ねじ端面54に位置する第1駆動部材68を備えることができる。連結ねじヘッド58は、連結ねじねじ山60とは反対側を向く連結ねじ係止面72を備える(従って係止面72は、回転軸Rに沿ってネック66のねじ山60とは反対側に位置する)。連結ねじ係止面72は、以降でさらに説明されるように、係止ねじ74に当接するように構成されている。連結ねじヘッド58は、連結ねじ係止面72に対向して位置して、連結ねじ係止面72とは反対側を向く連結ねじ当接面76を備える。連結ねじ52は、第2ねじ端面56に位置する第2駆動部材70を備える。第1及び第2の駆動部材68、70は、例えばTORX(商標)、又はALLEN(商標)の標準的な構造を有することができる。第1及び第2の駆動部材68、70は、凹部又は凸部のいずれかであることができる。
【0042】
図1、
図2及び
図5に注目されたい。連結ねじ52は、その全体が、常に工具周面26内に置かれている。換言すれば、例えば、交換用連結ねじ52と交換されているときを除き、連結ねじ52は工具周面26から外側に向かって決して突出しない。これは有利である。なぜなら、いくつかの機械では、切削工具10はその機械内部に固定されており、その間、1つの工具側だけが駆動工具44のために接近可能であるからである。これらの状況では、機械のタイプに応じて、切削工具10は、2つの対向配向で使用、又は機械に固定されることが可能である。なぜなら、連結ねじ52は、第1駆動部材又は第2駆動部材68、70のいずれかを介して回転されることが可能だからである。いくつかの実施形態では、非固定位置では(以降で説明されるように)、連結ねじ52はその全体が工具連結孔42内に置かれている(その後 - 連結ねじ52は、工具連結孔42と同じ長さ又は工具連結孔42よりも小さい長さを有することができる)。これは、インサートが工具軸Aの方向にのみポケットから取り出すことが可能である(すなわち、工具接近が切削工具本体12の - 切削インサート14の反対側の - 1つの側から可能である)状況では、有利である。さらには、いくつかの実施形態によれば、第1及び第2の駆動部材68、70は、連結ねじ52のいずれの側でも使用において等しく適用可能であるために、単一の駆動工具又はキー設計(駆動工具44等)をもたらすように同一の構成であることができる。
【0043】
切削工具本体12は、1以上の保持部材80をさらに備える。保持部材80は、以下により詳細に記載されるように、切削工具本体12内の所望の、結合しない相対的位置に連結ねじ52を保持するための手段を提供する。
図5では、2つの保持部材80(80A及び80B)が示されており、1つ1つが各連結ねじ52に付随するが、後述するように、本発明の保持手段80は、他の形態及び他の連結ねじ52との関係をとることができる。
図5(右側)は、連結ねじ52が非固定位置又は非挿入位置にあるとき、連結ねじ当接面76は、連結孔面取り部50から離間しており、連結ねじ52は切削インサート14と接触しないことを示す。
図5の右側にさらに示されるように、連結ねじ52Bが非固定位置にあるとき、上記保持部材又は保持するための手段80Bは、連結ねじ52Bの連結ねじねじ山60と係合する。換言すれば、保持部材80は、連結ねじねじ山60の少なくとも1つのねじ山凹部62に少なくとも部分的に置かれている。
図5の左側を参照すると、切削インサート14に対して固定位置又は挿入位置にある連結ねじ52Aが見られる。見られるとおり、連結ねじ52Aは、切削インサート14の雌ねじ78に螺合されて、連結孔面取り部50に対して締結され、他方、連結ねじ当接面76だけが連結孔面取り部50と係合する。
【0044】
切削工具本体12は、1以上の保持部材80を受け入れるための1以上の保持孔88をさらに備える。示された実施形態では、2つの保持孔(88A及び88B)があり、各々がそれぞれの保持部材(80A及び80B)を受け入れる。各保持孔88は少なくとも1つの保持部材80(又はその一部分)を受け入れ、その保持部材80(又はその一部分)は、保持部材80(例えば、保持部材80のねじ山接触部分)が略半径方向に、連結ねじ回転軸Rに垂直に移動することができるように、保持孔88の中に保持される。保持孔は、有利に工具軸Aに対して保持角θで延在し、保持角θを形成することができる。多くの実施形態では、保持部材80は連結ねじ52を連結孔軸Bの方向に移動しないように保持するように設計されているので、保持部材80は、連結ねじ回転軸Rの方向に平行な方向には移動する余地はほとんどない。少なくとも非固定位置では、保持部材80は、連結ねじねじ山60と係合する。具体的には、保持部材80の一部分は、連結ねじねじ山60のねじ山凹部62に置かれており、かつ/又は連結ねじねじ山60のねじ山凹部62と係合する。
図1~
図5に示される実施形態の保持部材80は、一体的な、一片(モノリシック)構成を有する。保持部材80は、好ましくは単一材料、例えば鋼鉄から作製されている。保持部材80は、例えば射出成形、プレス成形、3Dプリンティング、押出又は打ち抜き/曲げ加工により製造することができる。保持部材80は好ましくは弾性的であるが、しかしながら保持部材80は、非弾性的であり、弾性的に固定され、切削工具本体12に保持されて、その結果として保持部材80が、以降で説明されるように、少なくとも2つの基本的機能を果たしてもよい。用語「保持すること」又は「保持する」は、非結合の、又は弾性の、関係が、例えば保持部材80と連結ねじ52との間に存在するという意味で使用される。これとは逆に、用語「固定する」又は「固定(された)」は、結合、又は連結、関係が、例えば締結される連結ねじ52と切削インサート14との間に存在するという意味で使用される。
【0045】
図5に注目されたい。保持部材80は、少なくとも以下の2つの機能を有する。
【0046】
保持部材80の第1機能は、連結ねじ52において、外力EFに対する反力RFを生成することである。名称が示唆するとおり、反力RFは、外力EFと大きさが同じで、逆方向を向いている。
【0047】
本願において考察を単純化するために、外力EFは、連結ねじ回転軸Rの方向に、軸方向にのみ定義される。さらには、外力EFは、少なくとも、連結ねじ52に加えられる1以上の外力の成分又は和として定義される。外力EFは、第1方向D1に - ポケット16から離れるように、又は反対の第2方向D2に - ポケット16に向かって(ともに連結ねじ回転軸Rに沿って)向けられることが可能である。例えば、外力EFは、少なくとも、重力、又は駆動工具44(米国特許第3,584,667号明細書によるALLEN(商標)ドライバー又はTORX(商標)ドライバー等)を介して手によって加えられる力の成分であることができる。
【0048】
保持部材80が生成できる反力RFの大きさは、以降で説明されるように、所定の最大保持力MHF以下として定義される。上述のように、反力RFは、種々の当接面構造を有することができ、それゆえ当接/係合面の配向に従って1以上の場所及び/又は方向で力を加えることができる保持部材80によって、連結ねじ52において生成される。それゆえ、説明を単純化するために、本主題は、軸方向(連結ねじ回転軸R)にのみ作用する力に主に焦点を当てる。
【0049】
第1機能の1つの有利点は、単純に、例えば、第1方向D1が床を向くように切削工具10が保持され、それゆえ外力EFのほとんどが重力に等しいときに、連結ねじ52が切削工具本体12から落下するのを防止することである。例えば、
図5の右側に見られるように、保持部材80Bの把持力は、連結ねじ52Bのねじ溝62の側壁上の保持部材80の接触場所によって生成されるD2向きの力を含む(なぜなら、切削インサート14のねじ穴に螺合可能に受け入れられる図示された連結ねじ52Aとは異なり、連結ねじ52Bは、非挿入位置にあり、従って切削インサート14とのねじ接合がなく、保持部材80がなければ重力の下で落下しやすいはずだからである)。それゆえ、上記の議論からもわかるとおり、最大保持力MHFは、常に重力よりも大きい。
【0050】
第1機能の別の有利点は、第1機能が、駆動工具44と連結ねじ52の第1駆動部材又は第2駆動部材68、70との間の初期連結の間に、(連結ねじ52に加えられる保持力を生成するための)適正な取り付け、又は連結を確実にするということである。換言すれば、連結ねじ52の位置は、駆動部材68及び70のうちの適用できる1つと、駆動工具44との間の初期係合を容易にするように、保持部材80によって維持される。
【0051】
第1機能のさらに別の有利点は、第1機能が、駆動工具44により連結ねじ52の回転の間に連結ねじ52に加えられる連結力、又は取り付け力を動的に(適応反力)確実にもするということである。換言すれば、連結ねじ52を回転するためにドライバーが使用されるとき、保持部材80は、少なくとも部分的に、駆動工具44によって連結ねじ52に加えられる外力EF(おそらく絶えず揺らいでいる)を押したり引いたりし(動きの方向に応じて、反力RFを加える)、このことは、連結ねじ52が駆動工具44から離れるように移動する、又は駆動工具44から外れることを防止する。これは、第1及び第2の方向D1、D2の両方に当てはまる。
【0052】
第1機能のなおさらなる有利点は、第1機能が、使用者が連結ねじ52を雌ねじ78に螺合するのを支援するということである。具体的には、駆動工具44が第2駆動部材70と係合する特定の状況において(すなわち、使用者が切削工具10の「インサート側」から連結ねじ52に接近する必要があるとき)、上記保持部材は、連結ねじねじ山60を切削インサート14の雌ねじ78に向かって押す又は付勢する。具体的には、再度
図5の右側を参照すると、保持部材80が存在しなければ、駆動工具44が連結ねじ52を回転し始めるとき、駆動工具は、当然、連結ねじ52を第1方向D1に(インサートから離れるように)押すか、又は連結ねじ52は、その現に位置する軸位置に留まることになろうということがわかる。いずれの場合でも、連結ねじ52は、所望のようには第2方向D2に(インサートに向かって)移動しないであろう。しかしながら、反力RFのおかげで、保持部材80は一時的な/動的な雌ねじとして作用し、それゆえ、連結ねじ52の回転だけで、保持部材80が連結ねじ52を第2方向D2に - 切削インサート14中の雌ねじ78に向かって押し戻すことが可能になることができる。というのも、保持部材80は、軸方向に(第1又は第2の方向D1、D2に)移動する余地をほとんど有しないからである。このことは、使用者に、最小の労力で、又は何の労力もかけずに連結ねじ52を切削インサート14の雌ねじ78に螺合することを可能にする。
【0053】
保持部材80の第2の機能は、外力EFの大きさが最大保持力MHFを超えるときだけ、連結ねじ52が、回転せずに工具連結孔42の中で方向D1又はD2に軸方向に移動することを許容することである。具体的には、この第2の機能は、保持部材80の半径方向の移動によって成し遂げられ、この保持部材80の半径方向の移動は、連結ねじねじ山60に沿ったねじ山凹部62(通常、隣接している)間での保持部材80の跳躍運動として記述することができる。この動きは、場合によってはクリック音を発することができる。換言すれば、保持部材80は、弾性的に降伏し(へこみ)、撓み、又は単に現に位置するねじ山凹部62から(連結ねじ回転軸Rから離れるように外側に向かって)移動し、次のねじ山凹部62に再び入るか又は入り込み(連結ねじ回転軸Rに向かって内側へ移動し)、工具連結孔42内での連結ねじ52の上記非回転の軸方向移動を許容する。この動きは、保持部材80が弾性的であるか、又は弾性的に保持されており、かつ半径方向に(連結ねじ回転軸Rに向かって、又は連結ねじ回転軸Rから離れるように)移動することができるため、可能になる。以降で説明されるように、切削工具本体12は、保持部材80の上記移動(例えば、連結ねじ52に対して半径方向に内側へ及び外側への移動)を許容し、かつその軸方向移動を防止するように設計されている。簡単に言えば、外力EFが大きすぎるとき、連結ねじねじ山60は保持部材80を外側へ押す。保持部材80に対する連結ねじ52のこの非回転の軸方向移動の例は、
図5の右側及び左側の比較において見ることができる。例えば、古い切削インサート14が取り外されて新しい切削インサート14が固定のために配置された後、連結ねじ52Bは、切削インサート組み立てプロセスのこの段階の適切な位置にあることになろう(左側も、
図5の左側に描かれている固定位置の代わりに、この段階の右側と同じ位置状態にあることになろう)。従って、組み立て者は、駆動工具44を連結ねじ52Bに接続し回転させて、方向D2での連結ねじの移動を成し遂げる必要があるだけである。なぜなら、保持部材80は、切削インサート14のインサート連結孔106に対して螺合による係合に至るまで、軸Aに沿った連結ねじの螺合による軸方向移動をもたらすからである。
【0054】
第2の機能の1つの有利点は、連結ねじねじ山60及び/又は保持部材80への損傷(例えば、塑性変形)を防止することである。
【0055】
本発明の主題によれば、上述の利点をもたらす配置構成としては、いくつかの、構造的に明確に異なる実施形態、又は改変形態が存在しうる。
【0056】
実施形態によっては、切削工具本体12(又は412)は、保持孔(1又は複数)88、又は保持凹部(1又は複数)90(
図8)を備える。各保持孔88又は保持凹部90は、上記第1及び第2の機能を実施するためのいくらかの移動の自由度を許容しつつ、それぞれの保持部材80(412)を固定するように構成されている。具体的には、保持孔88及び/又は保持凹部90は、保持部材80(412)が第2の機能に関してこれまでに説明したように移動することを許容する半径方向隙間(ギャップ)92を備える。
【0057】
これに関し、
図1~
図5に注目されたい。これらの図では、第1実施形態に従って、切削工具本体12は2つの貫通保持孔88を備える。各保持孔88(工具連結孔42につながる)は、工具周面26及びそれぞれの工具連結孔42に対して開口することができる。換言すれば、保持孔88は、工具連結孔42に対して開口し、従ってこれと交わる。保持孔88には、ねじ山がない(無ねじである)。各保持孔88は、この実施形態では、1つの保持部材80を収容するとして示されており、それに応じた形とされている。換言すれば、各保持孔88は、保持部材80の外形に対応するように形作られており、保持部材80のための筐体として機能する。第1実施形態によれば、保持部材80はU字型であり、1つの連結ねじ52を保持し、保持部材80の全体は、保持部材80の全体が周面26の外周境界内に受け入れられるように、保持孔88内に受け入れられる。
【0058】
第1実施形態によれば、U字型の保持部材80は、弾性的であり/復元力があり、接続部分84を介して接続された2つの対向する保持アーム82を備える。各保持アーム82は、対向する保持アーム82に向かって傾いている(曲がっている)保持アーム端86を有することができ、保持部材80が保持孔88から出るのを防止することができる(例えば、内側へ傾斜した保持アーム端86は、対向する保持アーム82の間に受け入れられた連結ねじに対して部分的な巻き付き機能をもたらし、この対向する保持アーム82は、外に向かって曲げられていない状態で、上記及び下記のとおり、保持アーム82がねじ山凹部62へ延在する程度に、連結ねじの直径と一致する好ましい広がり距離を有する)。このように、内側へ延在する保持アーム端86を備えることは、有利なことに、より良好な把持をもたらすことができ、連結ねじねじ山60の形状に合わせることができる。
図1~
図5の実施形態等のいくつかの実施形態では、保持孔88は、保持孔88内に配置されているブリッジ89(
図3)を備える。ブリッジ89は、保持孔88が形成されているあいだ残される工具本体12の一部であることができる(例えば、ブリッジ89は、ボア88が機械加工される場所である切削工具本体12の機械加工により除かれない部分である)。
図1の実施形態では、ブリッジ89は、半径方向隙間92を画定するのを助ける切削工具本体のそれぞれのボア側壁から離間した対向端を有する。従って、保持アーム82(及び不随する保持アーム端86)が半径方向隙間92に沿って連結孔42に対する位置へ自由に通過できる間、保持部材80の接続部分84は、ブリッジ89を越える通過からブロックされる。また、保持部材80が、その動作位置にあると、切削工具本体12の周面26に又はその下方に十分に位置決めされるように、ブリッジ89のブロック面はボア88内に十分深いように示されている。また、保持アーム端86がボア88内の動作位置へと挿入されると、保持アーム端86は、ブリッジ89の下方で内側へ曲げられ、その結果、例えば、連結ねじ52が交換される場合に、保持部材80が保持孔88から落下するのを防止する。各保持アーム82は、三角形の断面を有することができる(保持アーム82の三角形状断面は
図5に示される断面に描かれている涙滴形状断面を含み、その涙滴形状の頂点は、連結ねじのねじ山凹部62に進入するように設計されており、丸みを帯びた部分は、連結ねじ52と半径方向隙間92を部分的に画定する孔の隣接する側壁との間の上述の保持アーム62の半径方向調整の中での保持アーム82の最大の拡張又は隔たりの際に、ボア88の受け入れ側壁に入るか又は隣接するように設計されている)。この三角形状は、連結ねじねじ山60の対応するねじ山凹部62に合うためによく適合している(
図3及び
図5に示されるとおり)。第1実施形態によれば、そしてこれまでに記載したように、保持孔88は、有利に、保持部材80の断面図(
図5)において工具軸Aに対して横断方向に配向している。具体的には、保持孔88は、工具軸Aと保持角θを形成することができる。それゆえ、保持アーム82は、同一平面に留まることができ、それゆえ連結ねじねじ山60により良好に対応することができる。換言すれば、保持部材80が平坦な/平面的な表面に置かれている場合、両方の保持アーム82は、その表面に接触することになろう。このような配向はより良好なフィットを可能にし、保持部材80がらせん状の連結ねじねじ山60の中に良好に受け入れられることを確実にする。それゆえ、保持孔88の工具軸Aに対して横断方向の配向により、保持アーム82が、保持アーム82が同一平面に留まりつつ、2つの異なる場所で(通常、連結ねじ回転軸Rの両側で)連結ねじねじ山60凹部と係合することが可能になる。非固定位置において、連結ねじ52に外力が加えられていない間、両方の保持アーム82は連結ねじねじ山60と係合することができる。連結ねじねじ山60の凹部62の基部で測定される最小直径は、弛緩位置での保持アーム82間の最小距離よりも大きいことが可能であり、このことにより、保持部材80が非固定位置で連結ねじ52と係合するときに、保持部材80におけるいくらかの程度の弾性的な予張力が可能になりうる。また、連結ねじねじ山60が(凹部62及び凸部64を画定する)連続した360°螺旋状のねじ山を有し、このねじ山構造が連結ねじネック66(存在する場合)から第2ねじ端面56へ軸方向に連続的に走るという点で、連結ねじねじ山60は、「古典的な」意味で示されている。連結ねじ52外周及び/又は軸方向長さに対してねじ山構造における不連続箇所等の連結ねじ52のねじ山構造に対して変更も可能であるが、ただし、上記の「第1」及び「第2」の機能(例えば、連結ねじ52が切削インサート14の雌ねじ78との螺合による係合にはない間の、保持部材80と連結ねじねじ山構造との十分な接触)を成し遂げるために、連結ねじのねじ山凹部62は、関連する保持部材80に対して適切に位置決めされている。
【0059】
切削工具10は、係止ねじ74を備えることができ、この係止ねじ74は、それぞれの工具連結孔42からの連結ねじ52の意図しない取り外しを防止するように構成されている。それゆえ、連結ねじ52は、決して工具周面26から不注意に突出することがない。例えば、係止ねじ74がなかったとすれば連結ねじ52が全体的に工具連結孔42を退出することができるであろうところまで連結ねじ52が軸方向D1に進行するように、連結ねじ52が押され(保持部材80が少なくとも一時的に解放するようにEF>MHFの場合)、及び/又は連結ねじ52が回される状況では、係止ねじ74は、連結ねじ52の不注意の解放が起きないようにするブロッキング機能をもたらす。いくつかの実施形態によれば、係止ねじ74は、円筒形の係止ねじねじ山98に接続された係止ねじヘッド96を有する。係止ねじヘッド96は、係止ねじねじ山98よりも大きい直径を有する。工具周面26は、雌ねじを備える係止孔100を備えることができる。係止孔100は工具連結孔42に非常に近接して置かれており、係止ねじ74は、係止ねじヘッド96が工具連結孔42、又は両方の工具連結孔42に部分的に重なるように、係止孔100に螺合される。係止ねじ74が締結されるとき、係止ねじヘッド96は工具周面26から突出しない(例えば、係止ねじヘッド96は、周面26に形成された対応する座ぐりされた凹部に受け入れられる)。上述の状況では、係止ねじヘッド96は、連結ねじ係止面72と係合することができ、工具連結孔42からの連結ねじ52の上記意図しない取り外しを予防することができる。また、
図5に示される実施形態では、1つの係止ねじ76が上記の両方の連結ねじ52の意図しない取り外しを防止することを可能にするように、孔42は、共に十分に近接して配置される。また、係止ねじ76がなく、かつ連結ねじが挿入されていない状態である場合、保持部材80の保持能力を超えることができるいくらかの力(EF>MHF)が連結ねじ52に生じないかぎり、保持部材80は、まだ連結ねじ52を保持することができることに留意されたい。
【0060】
切削インサート14は、割出し可能(インデキサブル)であることができる。
図1~
図5に示すように、切削インサート14は、対向するインサート基底面102と、それらの間に延在するインサート周面104とを備える。切削インサート14は、インサート孔軸Cを持つ少なくとも1つのインサート連結孔106、好ましくは利用される連結ねじ52の数と一致するいくつかのインサート連結孔106を有する。また、インサート連結孔106は、突出する連結ねじ52を結合様式で受け入れるための雌ねじ78を有するとして示されている。インサート連結孔106は貫通孔であり、両方のインサート基底面102に対して開口する。インサート連結孔106の雌ねじ78は、連結ねじねじ山60を受け入れるように構成されている。ポケット16内の切削インサート14の据えられた位置、又は非固定位置において、工具連結孔42及びインサート連結孔106は、偏心していてもよい(
図5に示され、連結孔軸Bは、非固定位置においてインサート孔軸Cと同軸ではない)。このような偏心性に関して、保持部材80の上述の第1機能は、有利に、ねじねじ山60連結ねじ52を見えなくする複数の試みに起因して螺合時間を短縮するのを助けることができる(
図5に示されるように、インサートがポケット16内に据えられると、2つのねじ山、具体的にはそれらの間の最初の接触領域は、切削工具の外側からは見ることができない)。
【0061】
固定位置において、インサート基底面102は、ポケット基底面36に当接し、インサート周面104は、それぞれ第1及び第2の支持壁38、40に当接し、連結ねじ52は雌ねじ78に螺合されて、連結孔面取り部50に対して締結される。この位置において、第1実施形態によれば、保持部材80は連結ねじねじ山60と係合せず、連結ねじネック66と係合する。
【0062】
連結ねじねじ山60は、雌ねじ78の材料よりも強度が高い材料から作製されることが可能である。それゆえ、連結ねじ52は、有利なことにほとんど摩耗せず、比較的低い頻度でしか交換を必要としない。
【0063】
切削インサート14の交換方法又は割出し方法は、以下の、(1)(係止ねじ74を適所に保持しながら)連結ねじ52の所望の第1端又は第2端54、56から連結ねじ(1又は複数)52を螺合解除する工程と、(2)ポケット16に、交換用の切削インサート14を挿入する(又は据えられた切削インサート14を割出す)工程と、(3)結合が成し遂げられるまで(例えば、連結ねじ52と連結孔面取り部50との間で強固な接触が成し遂げられるまで)、(ここでも、少なくとも雌ねじ78と連結ねじ52との間で螺合が開始されるまで保持部材80によってもたらされる保持支援によって)連結ねじ(1又は複数)52を切削インサート14内の対応する雌ねじ78に螺合する工程とを備えることができる。また、固定位置又は非固定位置の各々への各連結ねじの進行は、この実施形態では、適切な駆動工具44を用いて実施されるように設計されている(工具本体12のより接近しやすい側におけるように)。
【0064】
図6に注目されたい。第2実施形態によれば、切削工具本体212は、ただ1つの弾性的な/復元力のある保持部材280(又は保持手段280であり、この保持手段280は、保持手段80と同様に、保持部材(1又は複数)80の「第1及び第2の」機能能力に関して上記したようにして連結ねじ(1又は複数)52と保持手段80との間の相対的関係を保持するように機能する)を有する。保持部材280は、2つの連結ねじ252と同時に係合しこれらを保持することができる幅広い、開口した台形形状を有する。具体的には、接続部分284は、各保持アーム282が異なる連結ねじ252と係合するように十分に長い。第2実施形態によれば、切削工具本体212は、2つの保持孔288を有し、それらの各々は、工具第4面234及び各保持孔288が交わるそれぞれの工具連結孔242に対して開口する。各保持アーム282は、異なる保持孔288(工具第4面234に対して開口する)の中に置かれており、円形の断面を有することができる。2つの保持アーム282は、2つの連結ねじ252を収容するために、互いに十分離れている。各連結アームは、1つの連結ねじ252と係合し、そして係合状態にあるとき、上述の「第1」及び「第2」の機能をもたらす。
【0065】
図6は、切削インサート214をさらに示し、切削インサート214は、この実施形態では、切削インサートの各端が切れ刃を有するという点で、割出し可能切削インサートである。例えば、切削インサート214の割出し(又は全体の交換)は、連結ねじ(1又は複数)52を(切削工具本体212のいずれかの側から)螺合解除すること、割出しされた切削インサート214(又は新しい切削インサート214)を挿入すること、次いで連結が成し遂げられるまで、(保持部材280からの保持によってもたらされる支援によって)連結ねじ(1又は複数)52を切削インサート214内の対応する係合領域に螺合することを伴う方法により実施されることが可能である。非挿入状態への連結ねじ退却、又は固定位置への進行は、それぞれ、この実施形態では、適切な工具、例えば駆動工具44を用いて、及び接近の容易さのために切削工具10の所望の側に対して実施されるように設計される。また、
図6では、例えば、
図1の切削工具本体12が全体的に
図6の切削工具本体212に対応するように、加えられた「200」番台の区分とともに共通の末端参照符号が利用される。
【0066】
図7に注目されたい。第3実施形態によれば、切削工具本体312は、2つの弾性的な/復元力のある保持部材380(この実施形態では保持手段380を表す)を有し、その各々は、開口した、台形形状を有する。第3実施形態によれば、切削工具本体312は2つの保持孔388を有し、その各々は、工具第4面334に対して開口し、それぞれの工具連結孔342と交わり、それが工具連結孔342と交わる。各保持部材380は、それぞれの保持孔388内に置かれており、非固定位置において、2つの場所で各連結ねじ352と係合する。
【0067】
図8に注目されたい。第4実施形態によれば、切削工具本体412は、それぞれ切削工具本体412内に置かれている2つの保持凹部90及び2つの弾性的な/復元力のある保持部材480(この実施形態では部材480は保持手段480を与える)を有する。各保持部材480は、隙間(ギャップ)を有する開口したOリングとして形作られることが可能である。各保持凹部90は、各工具連結孔442とともに置かれることが可能であり、ポケット基底面436に対して開口することが可能である。保持凹部90は、保持部材480を適所に保持するように構成されている。
【0068】
図9に注目されたい。第5実施形態によれば、切削工具本体512は、2つの保持孔588及び2つの保持部材580(部材580及び付随する弾性的な構成要素94はこの実施形態の保持手段580/94を表す)を有する。示されるように、各保持部材580は、保持孔588内に置かれており、真っ直ぐな(湾曲していない)ピン形状を有する。各ピン型保持部材580は、それぞれの連結ねじ552とただ1つの場所で(例えば、連結ねじ552の一方側にあるねじ溝領域内で)係合する。各保持部材580は、リジッド(剛性)であってよく、ゴムリング等の可撓性部材94により保持孔588内に保持されることが可能である(この可撓性部材94は、保持部材588が連結ねじ552のねじ溝とのその係合を解き、かつキャッピングねじ552のねじ山構造領域又はネック領域に戻ることも許容しつつ、保持部材588を適所に弾性的に固定するように、保持孔588内に受け入れられる)。あるいは、各保持部材580は、可撓性であってよく、例えば、それぞれの保持孔588に剛性的に取り付けられてよい。
【0069】
また、上記の議論から分かるように、本発明の保持手段は、上記「第1」及び「第2」の機能を成し遂げることにおいて様々な形態をとることができる。上記の保持手段80(例えば、80A、80B)、280、380(例えば、380A、380B)、480(例えば、480A、480B)、580/94(例えば、580A/94A、580B/94B)は、保持手段の上述の「第1」及び「第2」の機能をもたらすのに好適ないくつかの実施形態を表す。さらに、2つの連結ねじセットに関連する保持手段のいくつかは第1及び第2の保持部材、例えば保持部材80A及び80B、を備えるが、保持手段は、ただ1つの連結ねじ52が利用される状況のための保持部材80A等の、ただ1つの保持部材も含む。