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特許7138146基礎構造物、環状体、鋼製セグメントの連結機構及び基礎構造物の施工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-07
(45)【発行日】2022-09-15
(54)【発明の名称】基礎構造物、環状体、鋼製セグメントの連結機構及び基礎構造物の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/01 20060101AFI20220908BHJP
   E02D 5/38 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
E02D27/01 D
E02D5/38
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020173156
(22)【出願日】2020-10-14
(65)【公開番号】P2021076003
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2021-05-06
(31)【優先権主張番号】P 2019199344
(32)【優先日】2019-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000231110
【氏名又は名称】JFE建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】大場 雄登
(72)【発明者】
【氏名】松岡 馨
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-350867(JP,A)
【文献】特開2000-087348(JP,A)
【文献】特開平10-110597(JP,A)
【文献】特開2000-120080(JP,A)
【文献】特開2004-116079(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/01
E02D 5/38
E21D 11/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面を形成するプレートと、前記プレートの長手方向端部に立設された継手部と、前記プレートの短手方向端部に立設された主桁と、を有し、環状に配置された複数の鋼製セグメントと、隣接する前記鋼製セグメント同士を連結する連結機構と、を有し、帯筋を代替する環状体を軸線方向に複数配置して連結したセグメント構造体と、
前記セグメント構造体の軸線方向に沿って配置された主筋と、
前記セグメント構造体の内側に打設された中詰部と、
を備え、
前記連結機構、または前記連結機構と前記継手部には、コンクリートを流動させる孔が形成されており、
前記連結機構は、
前記継手部に挿通され、隣接する前記鋼製セグメントを連結する連結部と、
隣接する前記鋼製セグメントのそれぞれの前記プレートの内面に立設され、前記連結部が挿通される第2の継手部と、
前記プレート、前記主桁、前記継手部、前記第2の継手部によって囲まれた空間内に設けられ、前記連結部と一体化される充填部と、
を備えることを特徴とする基礎構造物。
【請求項2】
前記連結機構は、前記空間内を仕切るリブを備えることを特徴とする請求項に記載の基礎構造物。
【請求項3】
前記連結部は、前記鋼製セグメントの厚さ方向、短手方向の少なくとも一方にわたって複数設けられていることを特徴とする請求項又はに記載の基礎構造物。
【請求項4】
前記継手部と前記第2の継手部は、互いに平行に配置されていることを特徴とする請求項からまでのいずれか一項に記載の基礎構造物。
【請求項5】
前記充填部は、コンクリートから形成されていることを特徴とする請求項からまでのいずれか一項に記載の基礎構造物。
【請求項6】
前記連結部のピッチ間隔は、設計上帯筋として必要なピッチ間隔以下としたことを特徴とする請求項からまでのいずれか一項に記載の基礎構造物。
【請求項7】
前記連結部の断面積及び強度は、設計上帯筋として必要な断面積及び強度以上としたことを特徴とする請求項からまでのいずれか一項に記載の基礎構造物。
【請求項8】
請求項1からまでのいずれか一項に記載の基礎構造物の前記セグメント構造体を構成することを特徴とする環状体。
【請求項9】
壁面を形成するプレートと、前記プレートの長手方向端部に立設された継手部と、前記プレートの短手方向端部に立設された主桁と、を有する鋼製セグメントの連結機構であって、
前記継手部に挿通され、隣接する前記鋼製セグメントを連結する連結部と、
隣接する前記鋼製セグメントのそれぞれの前記プレートの内面に立設され、前記連結部が挿通される第2の継手部と、
前記プレート、前記主桁、前記継手部、前記第2の継手部によって囲まれた空間内に設けられ、前記連結部と一体化される充填部と、
コンクリートを流動させるための孔と、
を備えることを特徴とする鋼製セグメントの連結機構。
【請求項10】
請求項1から7までのいずれか一項に記載の基礎構造物の施工方法において、
複数の鋼製セグメントを長手方向及び短手方向に連結してセグメント構造体を構築する工程と、
前記セグメント構造体の軸線方向に沿って主筋を構築する工程と、
複数の鋼製セグメントを長手方向に沿って環状に連結して前記セグメント構造体を構成すると共に帯筋を代替する環状体を構築する工程と、
前記セグメント構造体の内側に中詰材を打設する工程と、
を有することを特徴とする基礎構造物の施工方法。
【請求項11】
前記中詰材の打設時に、当該中詰材で隣接する鋼製セグメント同士を一体化させることを特徴とする請求項10に記載の基礎構造物の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基礎構造物、環状体、鋼製セグメントの連結機構及び基礎構造物の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地中に深礎杭等の基礎構造物を構築する際に、鋼材から形成された枠体に円弧状に湾曲させた鋼板を取り付けた鋼製セグメントを用いる施工方法が知られている。鋼製セグメントは、地盤掘削時の土留壁として用いられると共に、コンクリート打設時の型枠として用いられる(例えば、特許文献1参照)。
上記の施工方法では、基礎構造物の施工位置を掘削し、掘削した立坑内で鋼製セグメントを周方向に連結して環状の土留壁を形成する。次いで、その掘削した立坑地盤をさらに掘削し、既存の土留壁の下側で同様に鋼製セグメントを周方向に連結して新たな環状の土留壁を形成すると共に上下に隣接する土留壁同士を連結する。次いで、立坑地盤をさらに掘削し、新たな環状の土留壁を形成して連結する。これらの工程を繰り返して、所望の深さまで土留壁を形成する。次いで、立坑地盤上に底盤コンクリートを打設する。次いで、鋼製セグメントの土留壁で囲まれた立坑内部に配筋(主筋、帯筋)を施し、コンクリートを打設する。打設されたコンクリートが固化することにより、鉄筋コンクリート製の基礎構造物が完成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平2-112521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、基礎構造物を構築する際に、鋼製セグメントにより形成される土留壁は、使用する鋼材の量が膨大であるにもかかわらず、隣接する鋼製セグメントの継手部分の剛性が低いため、強度設計上仮設部材として扱われ、基礎構造物の完成後は存在しないものとして扱われる。そのため、生産や施工にかかるコストの割には用途が限られており、鋼製セグメントの有効利用が求められている。
【0005】
そこで、本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、基礎構造物の構築にあたり、土留壁やコンクリート型枠を形成する鋼製セグメントを有効利用することができる基礎構造物、環状体、鋼製セグメントの連結機構及び基礎構造物の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明は、基礎構造物であって、壁面を形成するプレートと、前記プレートの長手方向端部に立設された継手部と、前記プレートの短手方向端部に立設された主桁と、を有し、環状に配置された複数の鋼製セグメントと、隣接する前記鋼製セグメント同士を連結する連結機構と、を有し、帯筋を代替する環状体を軸線方向に複数配置して連結したセグメント構造体と、前記セグメント構造体の軸線方向に沿って配置された主筋と、前記セグメント構造体の内側に打設された中詰部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
前記連結機構と前記継手部の少なくとも一方には、孔が形成されていることが好ましい。
【0008】
また、前記連結機構は、前記継手部に挿通され、隣接する前記鋼製セグメントを連結する連結部と、隣接する前記鋼製セグメントのそれぞれの前記プレートの内面に立設され、前記連結部が挿通される第2の継手部と、前記プレート、前記主桁、前記継手部、前記第2の継手部によって囲まれた空間内に設けられ、前記連結部と一体化される充填部と、を備えることが好ましい。
【0009】
また、前記連結機構は、前記空間内を仕切るリブを備えることが好ましい。
【0010】
また、前記連結部は、前記鋼製セグメントの厚さ方向、短手方向の少なくとも一方にわたって複数設けられていることが好ましい。
【0011】
また、前記継手部と前記第2の継手部は、互いに平行に配置されていることが好ましい。
【0012】
また、前記充填部は、コンクリートから形成されていることが好ましい。
【0013】
また、前記連結部のピッチ間隔は、設計上帯筋として必要なピッチ間隔以下としたことが好ましい。
【0014】
また、前記連結部の断面積及び強度は、設計上帯筋として必要な断面積及び強度以上としたことが好ましい。
【0015】
本発明は、環状体であって、上記の基礎構造物の前記セグメント構造体を構成することを特徴とする。
【0016】
本発明は、壁面を形成するプレートと、前記プレートの長手方向端部に立設された継手部と、前記プレートの短手方向端部に立設された主桁と、を有する鋼製セグメントの連結機構であって、前記継手部に挿通され、隣接する前記鋼製セグメントを連結する連結部と、隣接する前記鋼製セグメントのそれぞれの前記プレートの内面に立設され、前記連結部が挿通される第2の継手部と、前記プレート、前記主桁、前記継手部、前記第2の継手部によって囲まれた空間内に設けられ、前記連結部と一体化される充填部と、を備えることを特徴とする。
【0017】
本発明は、基礎構造物の施工方法であって、複数の鋼製セグメントを長手方向及び短手方向に連結してセグメント構造体を構築する工程と、前記セグメント構造体の軸線方向に沿って主筋を構築する工程と、複数の鋼製セグメントを長手方向に沿って環状に連結して前記セグメント構造体を構成すると共に帯筋を代替する環状体を構築する工程と、前記セグメント構造体の内側に中詰材を打設する工程と、を有することを特徴とする。
【0018】
また、前記中詰材の打設時に、当該中詰材で隣接する鋼製セグメント同士を一体化させることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、土留壁やコンクリート型枠を形成する鋼製セグメントを有効利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】基礎構造物を基礎とした橋脚及び床版を示す概略図である。
図2】基礎構造物の平面図である。
図3】鋼製セグメントの平面図である。
図4】鋼製セグメントを内側から見た正面図である。
図5】鋼製セグメントの斜視図である。
図6】連結機構の構成を説明する斜視図である。
図7】基礎構造物の構成を説明する部分断面図である。
図8】従来の基礎構造物の有効断面と、基礎構造物の有効断面とを比較する図である。
図9】実施例における試験体の載荷荷重と変位量との関係を示したグラフである。
図10】変形例における鋼製セグメントの平面図である。
図11】変形例における鋼製セグメントを内側から見た正面図である。
図12】変形例における連結機構の構成を説明する斜視図である。
図13】充填部の大きさの制限について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に示す実施の形態は例示であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の形態をとりうる。
【0022】
本発明に係る基礎構造物は、地上の建築物の基礎となるものであり、例えば、橋脚の基礎(土台)となる。基礎構造物は、鉄筋コンクリート構造物として構築され、地盤に埋設される。なお、本発明に係る基礎構造物が基礎として適用される建築物は、橋脚に限られず、高層ビルや集合住宅等であってもよい。
【0023】
図1は、基礎構造物1を基礎とした橋脚100及び床版110を示す概略図である。橋脚100に支持されている床版110は、例えば、自動車、電車等の車両が走行し、車両の荷重が直接かかる部分である。なお、以下では、説明の便宜上、基礎構造物1の中心線を軸線xとする。軸線xに沿って基礎構造物1が埋設される方向を埋設方向Aとし、軸線x周りの方向を周方向Cとする。
【0024】
<基礎構造物>
基礎構造物1は、橋脚100の下側に構築されている。基礎構造物1は、例えば、円柱状に形成されている。基礎構造物1は、筒状に形成されたセグメント構造体10と、中詰部(コンクリート部)20と、主筋30と、を備える。
【0025】
セグメント構造体10は、埋設方向Aに沿って延びる軸線xに沿って延在する。セグメント構造体10は、埋設方向A(短手方向)及び周方向C(長手方向)に連続的に連結され、基礎構造物1を構築する際の土留壁を形成すると共に、中詰部20を構築する際のコンクリート型枠を形成する複数の鋼製セグメント40により形成されている。
【0026】
図2は、基礎構造物1の平面図である。基礎構造物1のセグメント構造体10は、軸線xに沿って埋設方向Aに連結された複数のリング体11(環状体)を有する。すなわち、セグメント構造体10の軸線xに沿った方向は、埋設方向Aと一致する。基礎構造物1においてリング体11は、互いに周方向Cに環状に連結された複数の鋼製セグメント40を有しており、基礎構造物1の帯筋を代替する帯筋代替部として機能する。すなわち、リング体11は、埋設方向Aに複数連結されることで基礎構造物1を構成すると共に、各リング体11が基礎構造物1に本来設けられる帯筋の代わりとなる。したがって、帯筋を代替するリング体11は、主筋30に交差する方向(埋設方向Aに直交する基礎構造物1の横断面方向)に沿って環状に配置されている。軸線xに沿って上下方向(埋設方向A)に隣接するリング体11において、上方のリング体11の各鋼製セグメント40と下方のリング体11の各鋼製セグメント40とは、周方向Cにおける端部がそれぞれ周方向Cにずらされて千鳥状に配置されている。周方向Cに連結する鋼製セグメント40の数は、構築する基礎構造物1の大きさ(外径)に基づいて適宜変更される。
【0027】
図3は、リング体11を構成する鋼製セグメント40の平面図である。図4は、鋼製セグメント40を内側から見た正面図である。図5は、鋼製セグメント40の斜視図である。図6は、連結機構50の構成を説明する斜視図である。
【0028】
リング体11は、複数の鋼製セグメント40と、連結機構50と、を備える。
鋼製セグメント40は、鋼材により形成されている。鋼製セグメント40は、プレート41と、主桁42と、継手部43と、リブ(補剛材)44と、を有する。鋼製セグメント40において、プレート41、主桁42及び継手部43により、中詰部20を形成するコンクリートを充填する充填空間Sが画定されている。なお、主桁42、継手部43、リブ44は、いずれもプレート41に溶接によって接合されていてもよいし、一部がプレート41と一体に形成されていてもよい。
【0029】
プレート41は、基礎構造物1、具体的にはセグメント構造体10の外壁面を形成する。プレート41は、平面視矩形状に形成されている。プレート41は、円弧状に湾曲して形成されている。なお、プレート41の曲率は、構築する基礎構造物1の大きさに基づいて決定される。
【0030】
主桁42は、周方向Cに沿って延びるプレート41の2つの端縁(短手方向端縁)にそれぞれ立設されている。主桁42は、プレート41に沿って湾曲して形成されている。主桁42は、プレート41に対して略直角を成しており、プレート41の内面に立設されている。主桁42は、リング体11が上下方向に重ねられた場合、上下方向に隣接する主桁42同士が対向する。一の主桁42は、地上側に位置する縁に設けられている。他の主桁42は、地中側に位置する縁に設けられている。
【0031】
各主桁42には、複数の孔42a,42b,42cが形成されている。
孔42aは、上下に隣接する他の鋼製セグメント40と連結するためのボルト等の連結具(図示せず)が挿通される連結用の孔である。孔42aは、例えば、円形状に形成されており、主桁42の厚さ方向(軸線xに沿った方向)に貫通している。孔42aは、連結具の横断面よりも若干大きな径を有するように形成されている(連結具の最外径+3~6mm程度)が、打設されるコンクリートが通過可能な大きさに形成する必要はない。もちろん、コンクリートに含まれる骨材が孔42aと連結具との間の隙間を通過できるような大きさとなるように孔42aを形成してもよい。なお、孔42aは、円形状に限らず、楕円状、長円状、矩形状に形成してもよく、その形状及び大きさは主桁42の設計強度を満たす範囲内で自由に変更可能である。
孔42aは、プレート41と主桁42との連結側に設けられている。孔42aは、主桁42の周方向Cにおける一端から他端に亘って、その延在方向において所定の間隔をあけて設けられている。軸線xに対向する各主桁42の孔42aは、互いに同軸となるように設けられている。
【0032】
孔42bは、コンクリートを充填する際に充填空間Sから空気を抜く空気抜き用の孔であると共にコンクリートを流動させる孔である。孔42bは、例えば、円形状に形成されており、主桁42の厚さ方向(軸線xに沿った方向)に貫通している。孔42bは、空気だけでなく、コンクリートに含まれる骨材が通過できる大きさとなるように形成されている。なお、孔42bは、円形状に限らず、楕円状、長円状、矩形状に形成してもよく、その形状及び大きさは主桁42の設計強度を満たす範囲内で自由に変更可能である。具体的には、孔42bは、コンクリートの流入性の観点から、最小径はコンクリートに含まれる細骨材の最大サイズである10mmよりも大きく、最大径は主桁42の強度への影響の観点から主桁幅の1/3以下とすることが好ましい。
孔42bは、プレート41と主桁42との連結側に設けられている。孔42a及び孔42bは、軸線xを中心とした同じ仮想円上に形成されている。孔42bは、主桁42の周方向Cにおける一端から他端に亘って、リブ44の両近傍で孔42aと孔42aとの間に形成されている。すなわち、孔42bは、主桁42におけるリブ44との連結位置近傍に形成されている。さらに、孔42bは、主桁42の周方向Cにおける両端部近傍に形成されている。より具体的には、一部の孔42bは、主桁42における継手部43との連結位置と第2の継手部52(後述する)との連結位置とに挟まれた位置に形成されている。軸線xに対向する主桁42における孔42bは、互いに同軸上に設けられている。
【0033】
孔42cは、複数の主筋30がそれぞれ挿通される複数の主筋用の孔である。孔42cは、例えば、円形状に形成されており、主桁42の厚さ方向(軸線xに沿った方向)に貫通している。孔42cは、主筋の横断面よりも若干大きな径を有するように形成されている。具体的には、孔42cの最小径は、施工性の観点から、主筋30の最外径(公称直径+両側のリブ高さ)+片側1mm(余裕しろ)以上とすることが好ましく、孔42cの最大径は、主筋配置位置の精度の観点から、主筋30の最外径+片側10mm(かぶりの許容誤差±10mm、鉄筋の中心間隔の組み立て施工許容誤差は±20mm)とすることが好ましい。
ただし、孔42cは、打設されるコンクリートが通過可能な大きさに形成する必要はない。もちろん、コンクリートに含まれる骨材が孔42cと主筋との間の隙間を通過できるような大きさとなるように孔42cを形成してもよい。なお、孔42cは、円形状に限らず、楕円状、長円状、矩形状に形成してもよく、その形状及び大きさは主桁42の設計強度を満たす範囲内で自由に変更可能である。
孔42cは、孔42a及び孔42bが形成されている側とは反対の側、つまり、軸線xの側(プレート41との連結部とは反対側)の主桁42の縁部に設けられている。孔42cは、主桁42の周方向Cにおける一端から他端に亘って、所定の間隔をあけて設けられている。軸線xに対向する主桁42における孔42cは、互いに同軸上に設けられている。孔42cと孔42a及び孔42bとは、軸線xを中心とした互いに異なる仮想円上に形成されている。
【0034】
継手部43は、周方向Cにおけるプレート41の各端部において軸線xに沿って延びる端縁(長手方向端縁)に設けられている。継手部43は、周方向Cにおける主桁42の端部において主桁42間を軸線xに沿って延びる。継手部43は、周方向Cにおいて隣接する他の鋼製セグメント40の継手部43と接触すると共に連結される。
継手部43は、プレート41から軸線xに向かって延びるようにプレート41の内面に立設されている。軸線xに沿って延びる継手部43の一端はプレート41に連結されてお
り、他端は主桁42の内側の縁の手前まで延びている。軸線xに向かって延びる継手部43の縁は、それぞれ主桁42に連結されている。
継手部43には、軸線xに沿って所定の間隔をあけて、ボルト等の連結部51(図2参照)を挿通する複数の3つの孔43aが軸線xに沿って二列に形成されている。
【0035】
リブ44は、プレート41の内面において、軸線xに沿って2つの主桁42間を延びるように複数設けられている。リブ44は、鋼製セグメント40の周方向Cにおける各端部に設けられた継手部43の間で所定の間隔をあけて設けられている。リブ44は、プレート41から軸線xに向かって延びるように立設されている。軸線xに沿って延びるリブ44の一端は、プレート41に連結されており、他端は、主桁42の内側の縁の手前まで延びている。軸線xに向かって延びるリブ44の縁は、それぞれ主桁42に連結されている。
主桁42において各リブ44の周方向Cにおける両側にはそれぞれ孔42bが形成されている。孔42bは、リブ44とプレート41とにより形成される角部付近に形成されている。周方向Cにおいて最も外側にある孔42bは、継手部43と第2の継手部52(後述する)との間に形成されている。
【0036】
図6に示すように、連結機構50は、連結部51と、第2の継手部52と、継手リブ53と、充填部54と、を備える。
連結部51は、継手部43及び第2の継手部52に挿通され、周方向C(長手方向)に隣接する鋼製セグメント40同士を連結する。連結部51は、例えば、ボルト51aとナット51bにより構成されている。連結部51は、継手部43に形成された孔43aと第2の継手部52に形成された孔52aに挿通される。
第2の継手部52は、鋼製セグメント40の周方向Cにおける両端部近傍において、各継手部43に対して周方向Cに所定の間隔をあけて、継手部43と互いに平行に設けられている。第2の継手部52は、プレート41の内面に設けられており、当該内面から軸線xに向かって延びるように立設されている。軸線xに沿って延びる第2の継手部52の一端は、プレート41に連結されており、他端は、主桁42の内側の縁の手前まで延びている。軸線xに向かって延びる第2の継手部52の両端縁は、それぞれ主桁42に連結されている。
【0037】
第2の継手部52には、軸線xに沿って所定の間隔をあけて、連結部51のボルト51aを挿通する複数の孔52aが形成されている。孔52aは、例えば、6つ形成されており、鋼製セグメント40の短手方向(埋設方向A)に沿って並んだ3つの孔52aが、鋼製セグメント40の厚さ方向に沿って二列にわたって形成されている。継手部43の孔43aと、第2の継手部52の孔52aとは、周方向Cにおいて互いに対向した位置に設けられている。したがって、双方の孔43a,52aに挿通されるボルト51aも6つ設けられ、これらの6つのボルト51aとナット51bによって隣接する鋼製セグメント40が連結されている。
【0038】
周方向Cに隣接する鋼製セグメント40を連結する場合、計4枚の継手部43,52の孔43a,52aのそれぞれに連結部51のボルト51aが挿通され、第2の継手部52の外側からボルト51aのそれぞれの端部にナット51bを螺合させる。このとき、ナット51bが各第2の継手部52に当接している。これにより、鋼製セグメント40は、周方向Cにおいて互いに連結される。
なお、頭部を有するボルト51aを用いる場合には、ボルト51aの頭部が一方の第2の継手部52に当接し、ナット51bが他方の第2の継手部52に当接すると共に、ボルト51aに螺合される。これにより、鋼製セグメント40は、周方向Cにおいて互いに連結される。
【0039】
継手リブ53は、周方向Cにおいて隣り合う継手部43と第2の継手部52との間に設けられている。継手リブ53は、軸線xに交差するように主桁42に対して平行に設けられている。各継手リブ53は、軸線xに沿って所定の間隔をあけて互いに平行に設けられている。より具体的には、各継手リブ53は、連結部51の各ボルト51a間において、
ボルト51aの軸方向に沿って設けられている。各継手リブ53は、プレート41の内面に設けられており、当該内面から軸線xに向かって延びるように立設されている。各継手リブ53は、軸線xに交差する方向における一端が継手部43に連結され、他端が第2の継手部52に連結されている。
これにより、各継手リブ53は、継手部43と第2の継手部52とによって囲まれた空間V内を仕切っている。
【0040】
充填部54は、プレート41、主桁42、継手部43、第2の継手部52によって囲まれた空間V内に設けられ、連結部51のボルト51aと一体化される。具体的に、充填部54は、コンクリートであり、空間V内に打設されて固化することにより、鋼製セグメント40及び連結機構50と一体化される。ここで、空間Vは継手リブ53によって仕切られており、空間Vは、複数の空間に分割されている。充填部54は、中詰部20を構築する際に打設されるコンクリートが空間V内に充填されることで形成される。
【0041】
ここで、隣接する孔43a,52aの間隔は、これらの孔43a,52aに挿通されるボルト51aのピッチ間隔が設計上帯筋として必要なピッチ間隔以下となるように形成する位置が決められる。具体的には、一般的な基礎構造物、言い換えると、セグメント構造体10が基礎構造物の一部として用いることができない場合において、基礎構造物の大きさや必要強度に基づいて設計された、主筋に巻き付けられる帯筋のピッチ間隔以下となるようにボルト51aの間隔も決められる。例えば、設計された帯筋のピッチ間隔が150mmである場合には、鋼製セグメント40を連結するボルト51aの中心間の間隔も150mm以下とする。
また、鋼製セグメント40の高さあたりにおけるボルト51aの断面積の総和が、当該高さあたりにおける帯筋の断面積の総和以上となるように、各ボルト51aの径、数量が選択される。例えば、主筋の所定長さあたりにおける4本のD41(断面積1340mm2)の帯筋の断面積の総和が5360mm2である場合、M33(有効断面積694mm2)の規格のボルト51aを用いる場合には、少なくとも8本以上のボルト51aを用いて鋼製セグメント40を連結する必要がある。
【0042】
また、ボルト51aの強度(降伏応力)が帯筋の強度(降伏応力)以上となるようにボルト51aの材質が選択される。例えば、帯筋にD41(降伏応力345N/mm2)を用いる場合、M33(降伏応力480N/mm2)の規格のボルト51aを用いる場合には、強度上も問題ないといえる。
ボルト51aは、M33よりも大きな規格のボルトを用いてボルト51aの使用本数を減らすことも可能であるが、ボルト51aが大きくなると締め付ける際に必要なトルクも大きくなるため、作業性が低下する。そこで、図6に示すように、セグメントの厚さ方向にボルト51aを複数配置する構造が好ましい。これにより、ボルト51aの締結作業の手間と、必要な締め付けトルクのバランスを考慮してボルト51aの大きさ、使用本数を決定することが可能となる。
なお、鋼製セグメント40の連結部以外の部分では、プレート41と主桁42の断面積の和及び強度が設計上の帯筋の断面積の和及び強度以上となるように厚さや材質が決定される。
【0043】
主筋30は、例えば、鋼材により形成された鉄筋である。主筋30は、軸線xを中心とした所定の仮想円上に設けられている。主筋30は、埋設方向Aに沿って延び、周方向Cに所定の間隔をあけて設けられている。なお、セグメント構造体10において同じ箇所に設けられている主筋30は、軸線xに沿って延びる1本の鉄筋であってもよく、また、所定の長さを有する複数の鉄筋により形成されていてもよい。主筋30は、少なくともセグメント構造体10の地上側の上端から地中側の他端にわたって延びている。主筋30は、各鋼製セグメント40における孔42cに軸線xに沿って挿通されている。主筋30は、セグメント構造体10の内側に打設された中詰部20が固化することにより、鋼製セ
グメント40と一体に形成されている。
【0044】
中詰部20は、リング体11を高さ方向に連結して形成された円筒状のセグメント構造体10の内側に設けられている。基礎構造物1において、鋼製セグメント40の内側は、中詰部20によって埋められており、鋼製セグメント40と一体に形成されている。
【0045】
<基礎構造物の構築方法>
次に、基礎構造物1の構築方法について説明する。基礎構造物1を構築する箇所に、例えば、油圧ジャッキ等によって構成された沈設装置(図示せず)を据え付ける。沈設装置は、環状の基礎構造物1の周方向Cにおいて複数箇所に設けられる。
次いで、沈設装置の内側において鋼製セグメント40を周方向C(長手方向)に連結して環状のリング体11を形成する。リング体11を形成する際には、ボルト51aを継手部43及び第2の継手部52に挿通し、ナット51bにて締結する。さらに、リング体11の上で別のリング体11を形成して両者を連結する。この別のリング体11の上にさらに別のリング体11を形成して両者を連結する。リング体11の内側の地盤をクラムシェル(図示せず)により掘削する。リング体11を地中へ沈設するために必要な深さの掘削が終わると、掘削を止め、沈設装置によってリング体11の上面を地中に向けて押圧して、リング体11を地中に圧入する。
【0046】
次いで、沈設したリング体11の上側でさらに複数の別のリング体11を組み立てる。リング体11の内側の地盤をクラムシェルにより必要な深さだけ掘削し、リング体11を沈設装置によって地中に向けて押圧し、リング体11を地中に沈設する。この作業を所定の深さまで繰り返す。これにより、複数のリング体11が地中において軸線xに沿って連結された筒状のセグメント構造体10が構築される。上下に隣接するリング体11は、鋼製セグメント40の継手部43の位置が互いに周方向Cにずれて、鋼製セグメント40が千鳥状に配置されている。
【0047】
次いで、セグメント構造体10の内側に満たされている地下水を水中ポンプ(図示せず)によって外部に排出する。次いで、地上側のリング体11における各鋼製セグメント40に、軸線xに沿って主筋30を挿入する。高さ方向に亘って圧入によりリング体11を地中に押し込む工法は、軸線xに沿った高さ方向における精度に極めて優れており、上下に重ねられたリング体11における鋼製セグメント40の孔42c同士の整合性は極めて高い。なお、主筋30は、所定の長さの鉄筋を複数本、セグメント構造体10の最上部のリング体11の同じ孔42cから挿入し、適宜、途中で連結してもよい。
【0048】
図7は、基礎構造物1の構成を説明する部分断面図である。図7において基礎構造物1は、左半分から右半分に移るに連れて完成度が高くなるように描画している。セグメント構造体10を設計上の高さにまで構築した後、周方向Cにおいて所定の本数の主筋30(鉄筋)を同じ孔42cに挿通する(図6の右側参照)。セグメント構造体10の高さに1本の主筋30で足りない場合には、複数本の主筋30を挿通して端部同士を溶接等により連結する。
【0049】
全周に亘って、主筋30を設置した後、セグメント構造体10の内側にコンクリートを段階的に打設する。打設されたコンクリートは、プレート41に向かって広がってゆく。徐々に打設されていくコンクリートは、地上に向かって嵩を増していく。コンクリートは、孔42bから充填空間S内の空気を押し出ながら充填空間Sを埋めていく。そのため、基礎構造物1中に空気溜まりが形成されることを確実に防ぐことができる。
また、コンクリートは、セグメント構造体10の内側に開口しているプレート41、主桁42、継手部43、第2の継手部52によって囲まれた空間V内にも流れ込むので、コンクリートが固化した後は、充填部54として、連結部51のボルト51aと一体化される。これにより、隣接する鋼製セグメント40同士を一体化し、連結を強固にする。
【0050】
コンクリートをセグメント構造体10の上端にまで打設して中詰部20を形成する。これにより、主筋30及び鋼製セグメント40は、中詰部20を介して互いに一体化され、基礎構造物1が構築される。このとき、主筋30は、基礎構造物1(鉄筋コンクリート構造物)の主筋としての機能を発揮し、鋼製セグメント40が連結機構50によって連結されたリング体11は、基礎構造物1(鉄筋コンクリート構造物)の帯筋としての機能を発揮する。
【0051】
鋼製セグメント40を圧入して基礎構造物1を構築する方法は、例えば、高架道路における橋脚100を補修等する場合に極めて適している。高架道路下では高さ方向の空間が制限されている。リング体11を構築して地中に圧入していく工法では、高さ方向における空間制限を受けることが小さい。なお、主筋30は、複数段のリング体11を地中に沈設する毎に挿通するようにしてもよい。
【0052】
以上のように、基礎構造物1によれば、主筋30は鋼製セグメント40と直接的に係合し、かつ中詰部20を介して一体化されることにより、従来、基礎構造物として利用することができていなかったセグメント構造体10を基礎構造物の一部として利用することができる。
また、リング体11は、鋼製セグメント40を連結機構50にて連結しているので、鋼製セグメント40が連結されたリング体11を鉄筋コンクリート構造物の帯筋に代替して用いることができ、セグメント構造体10の継手部分の強度を大幅に高めることができる。これにより、従来は継手の強度が十分ではないために、基礎の一部として用いることができなかったセグメント構造体10を基礎構造物1の一部として用いることができる。
また、鋼製セグメント40の連結が帯筋代替部の設置となるので、主筋に帯筋を設けるという手間のかかる工程を省くことができ、基礎構造物1の構築にかかる時間を短縮できる。
【0053】
また、連結機構50は、引張力を受けた際の変形量が小さいほど、拘束力が高まり、帯筋としての機能を発揮する。ここで、コンクリートは、プレート41、主桁42、継手部43、第2の継手部52の各部材によって囲まれた空間Vに充填される。この空間Vに充填されたコンクリートは、各部材の拘束により変形が抑制されることとなり、高い強度を発現する。一方で、空間Vに充填されたコンクリートの剛性により、連結機構50の変形量を最小限に抑制することができる。すなわち、コンクリートによって形成される充填部54が連結機構50と一体になることで、引張力が作用した際の連結機構50の変形量を最小限に抑制できる。
また、連結機構50に空間Vを形成してコンクリートを充填し、当該コンクリートを拘束することで、鋼製セグメント40の連結強度を高めることができる。
【0054】
また、基礎構造物1においては、従来の鉄筋を交差させて帯筋を設ける構造に比べて強度がより高まる。また、鋼製セグメント40を用いることにより、従来のように主筋30に対して帯筋を軸線に沿って所定の間隔をあけて組み付ける必要がなくなり、基礎構造物1の構築に要する作業時間を大幅に減じることができる。
【0055】
基礎構造物1により、有効断面をリング体11の外径にまで拡大することができる。図8は、従来の基礎構造物の有効断面と、基礎構造物1の有効断面とを比較する図である。従来の基礎構造物200においては、環状に連結されたセグメント210の内側に配筋構造220が位置していた。配筋構造220は、軸線xに沿って延びかつ周方向に所定の間隔を互いにあけて配置された複数の主筋221と、全主筋221を囲みかつ軸線xに沿って所定の間隔をあけて組み付られた帯筋222とを有する。セグメント210と配筋構造220とは直接的に係合しておらず、基礎の有効径rをセグメント210まで含むことができなかった。そのため、セグメント210の部分を基礎の有効断面としてみなすことができなかった。つまり、従来の基礎構造物200において有効断面は、配筋構造220までしか考慮することができない。
同じ直径(断面)の基礎構造物を構築しようとした場合、従来の基礎構造物200は、セグメント210の分だけ外径が大きくなっており、基礎構造物200としてみなされない部分における材料(セグメント、コンクリート)コストが極めて大きかった。
【0056】
これに対して、基礎構造物1によれば、鋼製セグメント40によるリング体11の外径まで基礎の有効径Rとして考慮することができる。そのため、例えば、従来の基礎構造物200と同じ大きさの有効断面を確保する場合、配筋構造220と同じ直径のセグメント構造体10を形成すればよく、基礎構造物1を構築する場合の材料、施工面積を従来の基
礎構造物200に比べて小さくすることができる。
【0057】
また、基礎構造物1においては、鋼製セグメント40の主桁42及び継手部43も帯筋として考慮することができるので、基礎構造物1全体は、極めて強度の高い基礎として利用することができる。
また、鋼製セグメント40及び連結機構50で本来設けられる帯筋を代替することができるので、基礎構造物1としての強度を下げずに、鋼材の使用量を大幅に削減することができる。
【0058】
また、孔42cは、プレート41から所定の間隔だけ内側の位置で主桁42に確保している。一般的に基礎構造物において主筋の位置は目視で確認することができないため、主筋かぶりを、余裕をもって大きく確保することになる。これに対して、主桁42に主筋30が挿通される孔42cが形成されているので、主筋30の位置は設計上、一義的に決定することができる。そのため、主筋かぶりを小さくすることができ、例えば、同じ建築物に対する基礎構造物であっても、一般的な基礎構造物の直径よりも小さい直径の基礎構造物を構築することができる。
【0059】
また、主桁42には孔42bが形成されている。従来、プレートとリブとにより形成される角部付近に空気溜まりが形成される傾向があった。空気溜まりにより鋼製セグメント40における充填空間Sがコンクリートにより完全に充填されていない場合がある。プレート41とリブ44とがなす角部に対応する主桁42の位置に孔42bが形成されているので、コンクリート打設時にプレート41の側に押しやられた空気は、孔42bを通じて確実に鋼製セグメント40の外側に排出される。これにより、鋼製セグメント40全体を基礎の有効断面として考慮することができる。
【0060】
また、連結機構50においては、中詰部20の形成のために打設したコンクリートを空間Vに導くことで鋼製セグメント40の連結を強固にすることができるので、空間Vに予め充填材を充填しておくことは必要ない。
【実施例
【0061】
本発明の効果を確認するために、連結機構により連結した鋼製セグメントの試験体を用いた弾塑性FEMによる引張解析実験を実施したので、以下に説明する。
主桁間高さ600mmの鋼製セグメントが周方向及び高さ方向に複数連結された従来の基礎構造物において、当該基礎構造物の軸方向(高さ方向)に沿ってD41の帯筋(断面積1340mm2、降伏応力345N/mm2)が150mmピッチで配置される区間を対象とし、対応する上記実施の形態の基礎構造物1を想定して、試験体を3つ用意した。試験体として連結される鋼製セグメントは、プレートが湾曲されておらず、長手方向が直線状に延び、その長さが通常の鋼製セグメントの半分の長さのものを用いた。
【0062】
試験体No.1は、連結機構50にて半分の長さの鋼製セグメント40同士を連結した高剛性の継手構造を有している。すなわち、試験体No.1は、連結部51にて継手部43及び第2の継手部52を連結すると共に、プレート41、主桁42、継手部43、第2の継手部52によって囲まれた空間Vを継手リブ53で仕切り、空間V内にコンクリートを打設して固化させたものである。なお、連結部51として合計8本(セグメントの厚さ方向に2個、高さ方向に4組)のM33規格(有効断面積694mm2、降伏応力480N/mm2)のボルトを用いて半分の長さの鋼製セグメント40を連結した。ここで、ボルトを8本用いたのは、D41の帯筋4本の断面積の総和が5360mm2となるため、ボルトの有効断面積の総和が5360mm2以上となるためには、少なくともM33のボルトが8本(有効断面積の総和が5552mm2)以上必要となるからである。
【0063】
試験体No.2は、連結機構50にて半分の長さの鋼製セグメント40同士を連結した高剛性の継手構造を有している。すなわち、試験体No.2は、連結部51にて継手部43及び第2の継手部52を連結すると共に、プレート41、主桁42、継手部43、第2の継手部52によって囲まれた空間Vを継手リブ53で仕切る。ただし、空間V内にコンクリートを打設しない。なお、連結部51として合計8本(セグメントの厚さ方向に2個、高さ方向に4組)のM33規格(有効断面積694mm2、降伏応力480N/mm2)のボルトを用いて半分の長さの鋼製セグメント40を連結した。ここで、ボルトを8本用いたのは、D41の帯筋4本の断面積の総和が5360mm2となるため、ボルトの有効断面積の総和が5360mm2以上となるためには、少なくともM33のボルトが8本(有効断面積の総和が5552mm2)以上必要となるからである。
【0064】
試験体No.3は、連結機構50を用いることなく、半分の長さの鋼製セグメント40同士を連結した従来の一般的な継手構造を有している。すなわち、試験体No.3は、継手部43同士を単にボルトで連結したものである。なお、鋼製セグメント40の連結に際しては、合計8本(セグメントの厚さ方向に2個、高さ方向に4組)のM33規格(有効断面積694mm2、降伏応力480N/mm2)のボルトを用いて半分の長さの鋼製セグメントを連結した。
【0065】
鋼製セグメントの連結後、当該鋼製セグメントを長手方向両端側から引っ張り、FEM解析により変形量を確認した。図9は、試験体No.1~No.3の載荷荷重と変位量との関係を示したグラフである。
図9に示すように、鋼製セグメント40の連結に連結機構50を用いた試験体No.1は、同じ載荷荷重に対する変位量が最も小さく、降伏荷重も4本の帯筋より遥かに大きいことから、高い剛性を有していることがわかる。また、試験体No.1は、4本の帯筋を用いた場合よりも変位量が小さくなることから、試験体No.1の構造を有するリング体を帯筋の代わりとして用いることができる。
連結機構50から充填部54(コンクリートの充填)を省いた試験体No.2が試験体No.1に次いで変位量が小さく、降伏荷重も4本の帯筋より遥かに大きいことから、高い剛性を有していることがわかる。また、試験体No.2は、4本の帯筋を用いた場合よりも変位量が大きくなる載荷荷重があるものの、4本の帯筋にほぼ近い剛性を有している。
一方で、単に継手部43をボルトで連結した試験体No.3においては、その変位量が帯筋よりも遥かに大きく、試験体No.3の構造を有するリング体を帯筋の代わりとして到底用いることはできない。
【0066】
<変形例>
次に、基礎構造物の変形例について説明する。本変形例と上記の実施の形態との相違点は、図10図12に示すように、継手部43と連結機構50の構成部材の少なくとも一つに孔を形成し、空間Vに充填されるコンクリートの充填性を高めたものである。したがって、以下では特徴的な部分について説明し、上記実施の形態と同じ構成には同一符号を付して説明を省略する。
【0067】
鋼製セグメント40における継手部43には、孔43aとは別に、その埋設方向A(長手方向)に沿って複数の孔43bが形成されている。孔43bは、コンクリートを充填する際に隣接する鋼製セグメント40の空間V同士を連通する孔であり、コンクリートを互いの空間V内に流動させる孔である。したがって、隣接する鋼製セグメント40において対向する継手部43の孔43b同士が同心上に形成されていることが好ましい。孔43bは、例えば、円形状に形成されており、継手部43の厚さ方向に貫通している。孔43bは、コンクリートに含まれる骨材が通過できる大きさとなるように形成されている。なお、孔43bは、円形状に限らず、楕円状、長円状、矩形状に形成してもよく、その形状及び大きさは継手部43の設計強度を満たす範囲内で自由に変更可能である。具体的には、孔43bは、コンクリートの流入性の観点から、最小径はコンクリートに含まれる細骨材の最大サイズである10mmよりも大きく、最大径は継手部43の強度への影響の観点から継手部の幅(基礎の軸直角方向)の1/3以下とすることが好ましい。
孔43bは、例えば、孔43aを継手部43の長手方向から挟み込むように6個形成されている。なお、孔43bの数は限定されるものではなく、継手部43の設計強度を満たす範囲内で自由に変更可能である。
【0068】
連結機構50における第2の継手部52には、孔52aとは別に、その埋設方向A(長手方向)に沿って複数の孔52bが形成されている。孔52bは、コンクリートを充填する際に空間Vの内外を連通する孔であり、コンクリートを互いの空間Vの内外に流動させる孔である。孔43bは、例えば、円形状に形成されており、第2の継手部52の厚さ方向に貫通している。孔52bは、コンクリートに含まれる骨材が通過できる大きさとなるように形成されている。なお、孔52bは、円形状に限らず、楕円状、長円状、矩形状に形成してもよく、その形状及び大きさは第2の継手部52の設計強度を満たす範囲内で自由に変更可能である。具体的には、孔52bは、コンクリートの流入性の観点から、最小径はコンクリートに含まれる細骨材の最大サイズである10mmよりも大きく、最大径は第2の継手部52の強度への影響の観点から第2の継手部52の幅(基礎の軸直角方向)の1/3以下とすることが好ましい。
孔52bは、例えば、孔52aを第2の継手部52の長手方向から挟み込むように6個形成されている。なお、孔52bの数は限定されるものではなく、第2の継手部52の設計強度を満たす範囲内で自由に変更可能である。また、孔52bは、孔43bに対して周方向Cに沿って対向する位置に形成されていることが好ましいが、孔52bがこの位置に限定されるものではない。
【0069】
連結機構50における継手リブ53には、そのほぼ中央位置に孔53bが形成されている。孔53bは、コンクリートを充填する際に空間V内で継手リブ53に仕切られた空間同士を連通する孔であり、コンクリートを互いの空間に流動させる孔である。孔53bは、例えば、円形状に形成されており、継手リブ53の厚さ方向に貫通している。孔53bは、コンクリートに含まれる骨材が通過できる大きさとなるように形成されている。なお、孔53bは、円形状に限らず、楕円状、長円状、矩形状に形成してもよく、その形状及び大きさは継手リブ53の設計強度を満たす範囲内で自由に変更可能である。具体的には、孔53bは、コンクリートの流入性の観点から、最小径はコンクリートに含まれる細骨材の最大サイズである10mmよりも大きく、最大径は継手リブ53の強度への影響の観点から継手リブ53の幅(基礎の軸直角方向)の1/3以下とすることが好ましい。
孔53bは、例えば、継手リブ53の中央近傍に1個形成されている。なお、孔53bの数は限定されるものではなく、継手リブ53の設計強度を満たす範囲内で自由に変更可能である。また、各継手リブ53に形成された孔53bは、互いに埋設方向Aに沿って対向する位置に形成されていることが好ましいが、孔53bがこの位置に限定されるものではない。
【0070】
以上の変形例によれば、上記の実施の形態の作用効果を奏することは勿論のこと、コンクリートは、孔42b,43b,52b,53bを介して空間Vの内外で流動しやすくなり、空間V内へのコンクリートの充填をより密にすることができる。また、空気が抜けやすくなるので、空間V内等の隅角部の空気だまりを防ぎ、コンクリート充填不良による欠損部が発生することを防ぐことができる。これにより、コンクリートの拘束をより強化することで、高い強度を発現することができ、また空間V内に充填されたコンクリートの剛性で連結機構50の変形量をより小さく抑えることができるようになる。すなわち、コンクリートによって形成される充填部54が連結機構50とより強固に一体になることで、引張力が作用した際の連結機構50の変形量をより小さく抑えることができる。ここで、コンクリートが空間Vに充填されることにより形成される充填部54を有する連結機構50は、一つの構造体として機能するので、各孔43b,52b,53bの形成が強度に与える影響はかなり小さく、孔43b,52b,53bを形成しても強度上問題となることはない。
【0071】
また、図13に示すように、充填部54の体積を増やすため、継手部43と第2の継手部52との間隔を広げ、空間Vの容量を拡大してもよい。この場合、継手部43と第2の継手部52との間隔が広がることにより、連結部51を形成するボルト51aも長くする必要がある。
ここで、ボルト51aは、強度の観点から曲げ加工をせず、直線状のものを用いることが一般的である。そのため、直線状のボルト51aを継手部43及び第2の継手部52に挿通するためには、継手部43と第2の継手部52を互いに平行に配置する必要があり、プレート41とボルト51aとが干渉しない範囲内で継手部43と第2の継手部52の間隔を決めることが必要となる。つまり、リング体11の曲率(リング体11の径)によってボルト51aの許容長さも変わり、空間Vの体積も変わる。また、帯筋代替部となるリング体11の一部である主桁42との連続性の観点から、基礎構造物1を横断面視した際に、ボルト51aが主桁42の内周縁から内側にはみ出さないようにすることが好ましい。
これらの点に鑑みると、継手部43と第2の継手部52との間隔は、鋼製セグメント40の高さ(軸線x方向の長さ)以下とすることが好ましい。
これにより、充填部54を形成する空間Vを適切な容量で形成することができ、上記の孔42b,43b,52b,53bによって空間Vへのコンクリートの充填性を大幅に高めることにより、連結機構50の強度を大幅に向上させることができ、帯筋代替部としてのリング体11の強度、ひいては基礎構造物1の強度を大幅に高めることができる。
【0072】
<その他>
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題及び効果の少なくとも一部を奏するように、上記実施の形態の各構成を適宜選択的に組み合わせてもよい。また、例えば、上記実施の形態における各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的使用態様によって適宜変更され得る。
また、上記の実施の形態において、鋼製セグメント40の主桁42に設けられている孔42cは、一の仮想円上に設けられていたが、主桁42に他の仮想円を想定し、さらに孔42cを設けてもよい。この場合、主筋30は、軸線xを中心として二重に設けられている。
また、鋼製セグメント40の主桁42自体に主筋30が予め取り付けられていてもよい。高さ方向において隣接する鋼製セグメント40におけるこれらの主筋30は、高さ方向において互いに連結する際に互いに接合すればよい。
また、空間V内へのコンクリートの充填性を高める各孔42b,43b,52b,53bは、上記の変形例のように全ての孔を形成する必要はなく、いずれか一つの孔だけでも良いし、いくつかの孔を組み合わせて形成してもよい。
【符号の説明】
【0073】
1 基礎構造物
10 セグメント構造体
11 リング体(帯筋代替部)
20 中詰部
30 主筋
40 鋼製セグメント
41 プレート
42 主桁
42a,42b,42c 孔
43 継手部
43a,43b 孔
44 リブ
50 連結機構
51 連結部
52 第2の継手部
52a,52b 孔
53 継手リブ
53b 孔
54 充填部
A 埋設方向
C 周方向
S,V 空間
x 軸線
図1
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