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特許7138165非紛争採鉱地から供給される金属部品を含む電子部品及びそれを形成する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-07
(45)【発行日】2022-09-15
(54)【発明の名称】非紛争採鉱地から供給される金属部品を含む電子部品及びそれを形成する方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/24 20060101AFI20220908BHJP
【FI】
G01N33/24 A
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020516749
(86)(22)【出願日】2018-09-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-26
(86)【国際出願番号】 US2018051534
(87)【国際公開番号】W WO2019060303
(87)【国際公開日】2019-03-28
【審査請求日】2021-05-14
(31)【優先権主張番号】62/561,245
(32)【優先日】2017-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500047848
【氏名又は名称】キョーセラ・エイブイエックス・コンポーネンツ・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100129458
【弁理士】
【氏名又は名称】梶田 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168066
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 雄太
(72)【発明者】
【氏名】ミルマン,ウィリアム・エイ
(72)【発明者】
【氏名】ロウン,ヤン
【審査官】三木 隆
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-534552(JP,A)
【文献】特開2013-040403(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0242464(US,A1)
【文献】特開2006-295184(JP,A)
【文献】国際公開第2014/136908(WO,A1)
【文献】特開2009-130018(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0324347(US,A1)
【文献】国際公開第2016/205894(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/063570(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第104700097(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0117229(US,A1)
【文献】国際公開第2018/057682(WO,A1)
【文献】特公昭42-012047(JP,B1)
【文献】Martin J.Bauwens,Conflict Minerals Traceability Models in light of Dodd-Frank Section 1502,[online],2011年05月30日,インターネット<URL:https://www.sec.gov/comments/s7-40-10/s74010-255.pdf>,[令和3年5月11日検索]
【文献】Melcher, Frank & Sitnikova, Maria & Graupner, Torsten & Martin, Nicola & Oberthr, Thomas & Henjes-Kunst, Friedhelm & Gbler, E. & Gerdes, Axel & Brtz, H. & Davis, D. & Dewaele, Stijn.,Fingerprinting of conflict minerals: columbite-tantalite ("coltan") ores,SGA News,2008年01月,No.23,Page.1-14
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/24
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属部品を含む電子部品を形成する方法であって、
採鉱地からの未検証の鉱物試料を入手すること;
定量鉱物学的分析によって前記未検証の鉱物試料を分析して、前記未検証の鉱物試料に
関する定量鉱物学的分析中に収集されたデータを、非紛争地域からの1以上の採鉱地から
供給された検証済の鉱物試料に関して収集された定量鉱物学的分析に対応するデータベー
ス中のデータと比較して、前記未検証の鉱物試料が前記非紛争地域からの1以上の採鉱地
から供給されているかどうかを決定すること;及び
前記未検証の鉱物試料が前記非紛争地域からの1以上の採鉱地から供給されていると決
定される場合には、前記非紛争地域から供給されていると決定された前記鉱物試料を前記金属部品に加工すること
を含む上記方法。
【請求項2】
前記未検証の鉱物試料が非紛争地域からの1以上の採鉱地から供給されていると決定で
きない場合には前記未検証の鉱物試料を拒絶することを更に含む、請求項1に記載の方法
【請求項3】
コンゴ民主共和国、アンゴラ、ブルンジ、中央アフリカ共和国、コンゴ共和国、ルワン
ダ、スーダン、タンザニア、ウガンダ、及びザンビアが前記非紛争地域から除かれる、請
求項1に記載の方法。
【請求項4】
定量鉱物学的分析によって前記未検証の鉱物試料を分析することが、前記未検証の鉱物
試料を研磨して、前記未検証の鉱物試料中に存在する粒の内部を露出させることを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記未検証の鉱物試料に関して自動鉱物学的試験を実施することを更に含む、請求項4
に記載の方法。
【請求項6】
自動鉱物学的試験中に得られるデータに基づいて更なる試験のための粒を特定すること
を更に含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記特定された粒に関して電子プローブマイクロアナライザーEPMAを用いた分析を実施することを更に含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記特定された粒に関して、レーザーアブレーション誘導結合プラズマ分光分析(LA
-ICP-MS)を実施することを更に含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記未検証の鉱物試料に関して前記自動鉱物学的試験、EPMAを用いた分析、及びLA-ICP-MS中に収集されたデータが、前記非紛争地域からの1以上の採鉱地から供給された検証済の鉱物試料の1つに関して前記自動鉱物学的試験、EPMAを用いた分析、及びLA-ICP-MS中に収集されたデータと一致した場合に、前記未検証の鉱物試料が前記非紛争地域からの1以上の採鉱地から供給されていると決定する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記未検証の鉱物試料が金属を含み、前記金属が、金、コバルト、銅、スズ、タングス
テン、リチウム、又はこれらの組合せを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記加工工程が、
前記非紛争地域から供給されていると決定された前記鉱物試料から前記金属を分離すること;
前記金属を前記金属部品に形成すること
を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記電子部品がキャパシタである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記キャパシタが、セラミックキャパシタ、固体電解キャパシタ、又は湿式電解キャパ
シタである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記電子部品が、医療用デバイス、フィルタ、インダクタ、活性電極、アンテナ、セン
サ、又はバッテリである、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記金属部品が、フィードスルー、めっき、導電性接着剤又はペースト、リードフレー
ム、端子、ピン、ワイヤ、ろう付け、又はコイルである、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年9月21日の出願日を有する米国仮出願62/561,245(全ての目的のために参照として本明細書中に包含する)の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
紛争資源は、「紛争地域」と呼ばれる地域において見られる天然資源(即ち人間の操作なしに存在している資源)であり、しばしば紛争及び内戦に資金提供するために販売されている。紛争資源の例は紛争鉱物である。紛争鉱物としては、金、スズ、及びタングステン等の金属を挙げることができる。紛争地域において採鉱され得る、及び製造業者がそれらの地理的起源を監視したいと望む、その他の金属には、コバルト及び銅が含まれる。紛争を続けるために紛争鉱物が採鉱されて販売される1つの特定の地域はコンゴ民主共和国(DRC)である。
【0003】
ドッド-フランク・ウォール街改革・消費者保護法が2010年に米国で署名されて成立した。これは米国及び幾つかの外国の企業に、DRC及びその周辺国(例えば、アンゴラ、ブルンジ、中央アフリカ共和国、コンゴ共和国、ルワンダ、スーダン、タンザニア、ウガンダ、及びザンビア)からの紛争鉱物を彼らが彼らの製品中において使用することを報告及び公表することを求めている。同様の法律がヨーロッパにおいて通過したが、これはDRC及び隣接諸国だけではなく全ての国に拡張している。米国紛争鉱物法は、独立した第三者によるサプライチェーン追跡可能性の監査、及び監査結果を公衆及び証券取引委員会に報告することを求めている。監査及び報告の要件に適合し、企業が彼らの製品において紛争鉱物を使用していないことを保証するためには、鉱物の地理的起源(例えばそこから鉱物が供給される1以上の採鉱地)を特定して、それが非紛争(conflict-free)鉱物であることを保証するための正確で信頼できる方法が、紛争の地域において広く行き渡っている材料を含む種々の製品を製造する際に、或いは鉱物が紛争地域からのものであるのか又はそうでないのかについて全体として特定の鉱物の起源を検証する際に、含まれるプロセスにおける第1段階として有用である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
キャパシタ(例えば、固体電解質、湿式電解質、及びセラミックキャパシタ)、医療用デバイス、フィルタ、インダクタ、活性電極、アンテナ、センサ、リチウムバッテリ、再充電可能なバッテリ等の多くの電子部品は、フィードスルー、めっき、導電性接着剤又はペースト、リードフレーム、端子、ピン、ワイヤ、ろう付け、コイル等の金属部品を含み、そのような金属は、紛争が存在する地域から供給されたリスクがあるので、電子部品に含有される金属部品の1種以上が非紛争採鉱地から供給されることを確認することができる、電子部品及びその作製方法に対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施形態によれば、金属部品を含む電子部品を形成する方法であって、採鉱地からの未検証の鉱物試料を入手すること、及び、定量鉱物学的分析によって未検証の鉱物試料を分析して、未検証の鉱物試料に関する定量鉱物学的分析中に収集されたデータを、非紛争地域からの1以上の採鉱地から供給された検証済の鉱物試料に関して収集された定量鉱物学的分析に対応するデータベース中のデータと比較して、未検証の鉱物試料が非紛争地域からの1以上の採鉱地から供給されているかどうかを決定することを含む、上記方法が開示される。更に、未検証の鉱物試料が非紛争地域からの1以上の採鉱地から供給されていると決定される場合には、未検証の鉱物試料を金属部品に加工する。
【0006】
本発明の別の実施形態によれば、金属部品を含む電子部品であって、金属部品が金属を含み、金属は、それから金属が得られる未検証の鉱物試料を定量鉱物学的分析によって分析し、未検証の鉱物試料に関する定量鉱物学的分析中に収集されたデータを、非紛争地域からの1以上の採鉱地から供給された検証済の鉱物試料に関して収集された定量鉱物学的分析に対応するデータベース中のデータと比較して、未検証の鉱物試料が非紛争地域からの1以上の採鉱地から供給されていると決定することによって、非紛争地域からの1以上の採鉱地から供給されていると検証されている、上記電子部品が開示される。
【0007】
本発明の他の特徴及び形態を下記においてより詳細に記載する。
当業者に向けられた、本発明の最良の態様を含む本発明の完全且つ実施可能な開示を、添付の図面を参照しながら本明細書の残りでより詳しく示す。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、鉱物試料の地理的起源を決定するための方法を示すブロック図である。
図2図2は、鉱物試料の地理的起源を決定する際に用いるシステムのブロック図である。
図3図3は、本発明により形成され得る固体電解キャパシタの、一実施形態の概略図である。
図4図4は、本発明により形成され得る湿式電解キャパシタの、分解概略図である。
図5図5は、本発明により形成され得るセラミックキャパシタの、一実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書及び図面において参照記号を繰り返し使用することは、本発明の同じか又は類似の特徴又は構成要素を表すことを意図している。
本議論は代表的な態様のみの説明であり、本発明のより広い形態を限定することは意図していないことが当業者によって理解される。
【0010】
一般的に言うと、本発明は、金属部品が非紛争採鉱地から供給された金属を含有する上記金属部品(例えば、フィードスルー、めっき、導電性ペースト又は接着剤、リードフレーム、端子、ピン、ワイヤ、ろう付け、コイル等)を含む、キャパシタ(例えば、固体電解キャパシタ又は湿式電解キャパシタ)、医療用デバイス、フィルタ、インダクタ、活性電極、アンテナ、センサ等の電子部品、並びにその形成方法を対象とする。本方法は、採鉱地から未検証の鉱物試料(例えば、純金属に精錬されていない精鉱)を入手すること、及び未検証の鉱物試料を定量鉱物学的分析によって分析すること、及び未検証の鉱物試料の定量鉱物学的分析中に採取されたデータを、非紛争地域からの1以上の採鉱地から供給された検証済の鉱物試料に関して採取された定量鉱物学的分析に対応するデータベース中のデータと比較して、未検証の鉱物試料が非紛争地域からの1以上の採鉱地から供給されているかどうかを決定することを含む。未検証の鉱物試料の分析には、試料に関して自動鉱物学的試験を実施すること、更なる試験のための粒(grains)を特定すること、及び特定された粒に関して電子マイクロプローブ分析及びレーザーアブレーション誘導結合プラズマ分光分析を実施することを含めることができる。未検証の鉱物試料が非紛争地域からの1以上の採鉱地から供給されていると決定される場合には、本方法は、未検証の鉱物試料から得られた金属を電子部品の金属部品に加工することを含み、その金属は、金、コバルト、銅、スズ、タングステン、リチウム、又はこれらの組合せを含むことができる。
【0011】
ここに記載する鉱物測定方法は、地質学的単位、地域、及び更には1つの地域内の特定の採鉱地が、それらの別個の地質学的特徴によって互いから識別されるという事実に基づくことを理解すべきである。例えば、タンタル鉱物の組成における地域的及び局所的変動は、形成条件、地質学的環境(例えば母岩)、及び母ペグマタイトの定置年代を反映している。これらのファクターは、特定の鉱物の存在、並びにそれらの基本的特徴及び詳細な特徴、主要元素及び少量元素の富化度、並びに他の鉱物学的特徴及び地球化学的特徴の有無に影響を与える。
【0012】
具体的には、鉱物試料から得られた金属を用いて電子部品の構成要素を形成する前に、本発明者らは、供給業者から受領した非紛争金属であるとされているもの(例えば、鉱物測定法によってコンフリクトフリーであると独自に確認及び主張されている金属)が、実際に非紛争採鉱地から供給されているかどうかを決定するための方法を開発した。また、供給業者から受領した試料が電子部品の製造業者に認可されている地域内に位置する採鉱地から供給されているかどうかを決定するために、リスク軽減の目的でこの方法を用いて試料を比較することができることも理解すべきである。かかる情報は、外れ試料(outlier sample)(データベース中の認可又は検証済の試料のいずれとも一致させることができない試料)が受領されているかどうかを調べる目的で用いることができる。この方法の概要を図1に示す。
【0013】
図1を見ると、非紛争金属から電子部品の金属部品を形成する方法100は、まず採鉱地から未検証の試料(即ち、コンフリクトフリーであると検証されていない試料)を入手すること(工程101)を含み、この試料は他の当事者によって独自にコンフリクトフリーであると確認又は表示されている場合がある。試料は、試料の起源を確実にするために採鉱地において直接重鉱物が選鉱された精鉱として自己で採取したもので、完全な重鉱物組合せを保つために更なる処理を行う前に試料を採取したものである。次に、工程102において、試料の切片を、約25ミリメートル(mm)の直径を有する研磨エポキシ切片に成形し、これを次に約10ナノメートル(nm)の厚さを有する炭素層で被覆して試験のための試料を調製する。
【0014】
次に、工程103において、研磨した切片を自動鉱物学的分析(AM)によって検査して、試料中に存在する特定の鉱物、並びに研磨した切片中におけるそれぞれの鉱物の存在度及び分布を求める。ここで、同じ採鉱地及び深さから採掘される試料は同じ鉱物を実質的に同じ存在度及び分布で含んでいるはずである。同じ採鉱地及び深さからの試料が実質的に同じ鉱物を実質的に同じ存在度及び分布で含んでいない場合には、供給業者が出荷前に試料に外来の物質を加えた可能性がある。その後、工程104において、試料の研磨した切片から、更なる分析のための粒を選択する。例えば、AM検査で求められた50のタンタル含有粒が更なる分析のために選択される。
【0015】
次に、工程105において、選択された粒に関して電子マイクロプローブ分析(EMPA)を実施する。EMPAの生データによって、50の粒の重量%に基づく主要及び少量(微量)元素が与えられる。
【0016】
金(Au)の場合、主要元素は金(Au)であるが、少量/微量元素としては、銀(Ag)、銅(Cu)、水銀(Hg)、テルル(Te)、アンチモン(Sb)、セレン(Se)、硫黄(S)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、鉛(Pb)、サマリウム(Sm)、バリウム(Ba)、スズ(Sn)、モリブデン(Mo)、ジルコニウム(Zr)、ゲルマニウム(Ge)、鉄(Fe)、及びマンガン(Mn)を挙げることができる。
【0017】
コバルト(Co)の場合、主要元素としては、コバルト(Co)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、ヒ素(As)、硫黄(S)、及び鉄(Fe)を挙げることができ、一方、少量/微量元素としては、亜鉛(Zn)、アンチモン(Sb)、鉛(Pb)、セレン(Se)、タングステン(W)、テルル(Te)、マンガン(Mn)、白金(Pt)、ビスマス(Bi)、マグネシウム(Mg)、及びウラン(U)を挙げることができる。
【0018】
銅(Cu)の場合、主要元素としては、銅(Cu)、鉄(Fe)、硫黄(S)、亜鉛(Zn)、及びアンチモン(Sb)を挙げることができ、一方、少量/微量元素には、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、クロム(Cr)、Mo(モリブデン)、鉛(Pb)、スズ(Sn)、水銀(Hg)、金(Au)、銀(Ag)、ヒ素(As)、カドミウム(Cd)、イリジウム(Ir)、インジウム(In)、セレン(Se)、テルル(Te)、レニウム(Re)、オスミウム(Os)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、タリウム(Tl)、ビスマス(Bi)、バリウム(Ba)、ハフニウム(Hf)、ルビジウム(Rb)、スカンジウム(Sc)、タンタル(Ta)、トリウム(Th)、ウラン(U)、ジルコニウム(Zr)、及び希土類元素(REE)(例えば、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、イットリウム(Y)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu))を含めることができる。
【0019】
スズ(Sn)の場合、主要元素としては、スズ(Sn)、鉄(Fe)、銅(Cu)、鉛(Pb)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、タングステン(W)、及びマンガン(Mn)を挙げることができ、一方、少量/微量元素としては、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、亜鉛(Zn)、スカンジウム(Sc)、ガリウム(Ga)、バナジウム(V)、ウラン(U)、クロム(Cr)、アンチモン(Sb)、ストロンチウム(Sr)、ヒ素(As)、インジウム(In)、ビスマス(Bi)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、及びカルシウム(Ca)を挙げることができる。
【0020】
タングステン(W)の場合、主要元素としては、タングステン(W)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、及びカルシウム(Ca)を挙げることができ、一方、少量/微量元素としては、マグネシウム(Mg)、ハフニウム(Hf)、インジウム(In)、スズ(Sn)、ニオブ(Nb)、亜鉛(Zn)、チタン(Ti)、スカンジウム(Sc)、ジルコニウム(Zr)、タンタル(Ta)、鉛(Pb)、モリブデン(Mo)、コバルト(Co)、バナジウム(V)、ウラン(U)、ヒ素(As)、アルミニウム(Al)、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)、ガリウム(Ga)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、ケイ素(Si)、及び希土類元素(REE)(例えば、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、イットリウム(Y)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu))を挙げることができる。
【0021】
リチウム(Li)の場合、主要元素としては、リチウム(Li)、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、カリウム(K)、リン(P)、及びフッ素(F)を挙げることができ、一方、少量/微量元素としては、ナトリウム(Na)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、チタン(Ti)、及び亜鉛(Zn)を挙げることができる。
【0022】
更に、工程106において、選択された粒に関してレーザーアブレーション誘導結合プラズマ分光分析(LA-ICP-MS)を実施して、粒中に存在する微量/少量元素及び希土類元素をppmで求める。
【0023】
工程107において、工程103、104、及び106からのデータを集めて、コンフリクトフリーであると主張されている採鉱地からの未検証の試料の特徴が、1以上の非紛争採鉱地からの検証済の試料の特徴と実質的に一致するかどうかを求める。そうである場合には、未検証の試料は実際にコンフリクトフリーであると確認されている採鉱地で産出されてそこから供給されているとみなすことができるので、ここで検証された試料を用いて本発明により企図される電子部品の任意の金属部品を形成することができる。
【0024】
種々の工程に関する詳細を下記においてより詳細に記載する。
I.金属を含有する鉱物試料が非紛争採鉱地から産出されているかどうかの決定
A.試料の受領(101)及び調製(102):
まず始めに、採鉱地から鉱物試料を入手する。ここで、鉱物試料は、選鉱前の鉱物(粗鉱)又は精鉱(微粉砕され、それから廃石が除去された粗鉱)である。鉱物試料は、鉱物の代表試料を得るために約25グラム~約125グラム、例えば約50グラム~約100グラムの間で秤量することができる。次に、鉱物試料を、約2.5グラム~約12.5グラムの間、例えば約5グラム~約10グラムの間で秤量することができるより小さな試料に粉砕する。次に、より小さな試料中の粒を、試料マウント上の約25ミリメートル(mm)の直径を有する研磨エポキシ切片に成形して、粒の内部がその後の分析のために露出されるようにして、その後、研磨エポキシ切片を約10ナノメートル(nm)の厚さを有する炭素層で被覆する。
【0025】
B.走査電子顕微鏡検査及び波長分散型X線分光分析又はエネルギー分散型分光分析を用いる自動鉱物学的分析(103)
次に、上記で議論したように試料をマウントして研磨した後、自動鉱物学的分析(AM)によって試料を定量分析して、定量分析によるその鉱物学的組成を求める。マウントされた試料は、波長分散型X線分光計(WDS)又はエネルギー分散型分光計(EDS)と組み合わせた走査電子顕微鏡検査(SEM)ベースの鉱物分析装置を用いて分析する。かかる装置は研磨した切片中における鉱物の割合に関する情報を与える。これは次に、試料を動かすか、又は特定の粒子に関する新たな検査を実施する必要なしに、WDS又はEDSを用いて化学的に特性分析される。(1)色/陰影付けによって試料中の種々の鉱物を識別するAM画像、及び(2)円グラフ又は棒グラフでの種々の鉱物の存在割合に関する情報を得る。AM画像によって、有益な組織及び鉱物学的情報(例えば、単体分離度、鉱物組合せ、粒径、鉱物の連晶、内包物等)が与えられる。
【0026】
かかる自動鉱物学的分析(AM)を実施する機器は、TESCAN ORSAY HOLDING(チェコ共和国)から入手できるTescan Integrated Mineral Analyzer(TIMA)である。TIMAは、鉱業及び選鉱業用に特別に設計された完全自動のハイスループット分析走査電子顕微鏡である。TIMAは、鉱物単体分離分析、プロセスの最適化、再生、並びに貴金属及び希土類に関する研究のために有用である。TIMAは、モード組成、寸法別(size-by-size)の単体分離、鉱物組合せ等を測定し、粒マウント物及び薄片又は研磨切片の複数の試料に関してPGM探査を自動的に実施する。この技術は、非常に速い走査速度でフルスペクトルイメージングを実施する完全統合EDXシステムに基づいている。TIMAにおける画像分析は、SEM後方散乱電子画像及び一連のX線画像と同時に実施される。SEMとEDXのハードウエア統合のレベルによって全自動化されたデータ収集が可能になる。
【0027】
このソフトウエアを用いて、マウントされた試料の研磨面を電子ビームによって走査して、得られる後方散乱電子を集めて電子画像情報を生成させる。次に、試料表面上に露出された全ての鉱物粒を、エネルギー分散型X線分光法を用いて自動分析し、それぞれの粒子に関して特徴的なX線スペクトルを形成する。次に、この情報を較正された標準鉱物参照データベースと比較する。自動鉱物学的分析(AM)ソフトウエアは、個々の鉱物を0.005ミリメートルの空間分解能で自動的に同定して、次にマウントされた試料中に存在するそれぞれの鉱物の存在度(%)を定量する。ここで、試料中の特定の鉱物の存在度(%)は、選鉱試料を調製した具体的な個人、試料を磁気で分離したか又は重力で分離したかなどのような数多くの変数に依存することが留意される。
【0028】
AMの結果として、上記で言及したように、研磨された切片の色分け又は陰影付けされた走査像を観察することによって、試料中に存在する鉱物を求めることができ、次に個々の粒を、下記の工程C及びDにおける更なる詳細な研究及び分析のために選択することができる。更に、AMは、粒径、単体分離度、鉱物組合せ、特定の鉱物の連晶、内包物等に関する情報を与え、これらはそれから試料が入手された地域に応じて独特のものである可能性がある。更に、異なる鉱山からの物質が混入された(例えば、試料にアルミニウムが加えられた)可能性をAMによって明らかにすることができる。更に、鉱物の割合は、採鉱中の地質の変化、異なる程度の鉱石処理等によって同じ採鉱地から採取された試料の間で時間と共に僅かにしか変化しない可能性があることが留意される。しかしながら、鉱物の割合が大きく変化する場合には、供給業者又は第三者は説明を与えなければならない。
【0029】
様々なタイプの情報を、鉱物試料のAM分析中に集めることができる。特に、自動鉱物学的走査(TIMAを使用する)では、試料中の様々な鉱物が種によって陰影付けられている、研磨したマイクロライト試料に関して得ることができる。更に、重量%で、自動鉱物学的走査の際に存在する様々な鉱物を示す扇グラフは、走査の際に存在する鉱物のそれぞれに関し、特定の重量%を示すことができる。
【0030】
C.電子マイクロプローブ分析(104及び105):
次に、マウントされた試料のAM走査像から選択される約25~125の間の粒、例えば約50~約100の粒、例えば50の粒を、電子マイクロプローブ分析(EMPA)を用いて分析する。これは、電子顕微鏡とX線分光計の組合せを用い、X線はエネルギー(EDS)及び/又は波長(WDS)に基づいて検出される。粒は、対象の特定の鉱物に関して存在する粒からランダムに選択されるが、変性しているか又は破壊されている粒はEMPA分析から排除されることを理解すべきである。EMPA(電子プローブ微小分析(EPMA)とも呼ばれる)は、定量分析によって試料の小さな領域の組成を検証するために用いられる分析技術である。かかる分析を実施することができる機器の例は、CAMECA(フランス)から入手できるCAMECA SX100電子マイクロプローブである。マイクロプローブは、15キロボルトの加速電圧及び20ナノアンペアの試料電流において、5マイクロメートルの電子ビームサイズを用いて運転することができる。
【0031】
EMPAは、加速された電子のビームを、一連の電磁レンズを用いて試験片の表面上に集束させる粒子ビーム技術であり、これらのエネルギー電子によって、小さな体積(通常は1~9立方ミクロン)の試料内で特性X線がその表面において生成する。特性X線を特定の波長において検出し、それらの強度を測定して試料内の元素の濃度を求める。それぞれの元素はそれが放射する特定の組のX線を有しているので、水素(H)、ヘリウム(He)、及びリチウム(Li)を除く全ての元素を検出することができる。EMPAは高い空間分解能及び感度を有しており、個々の分析は適度に短時間であり、殆どの場合において1分又は2分しか必要でない。更に、電子マイクロプローブは、走査電子顕微鏡(SEM)と同じように機能させて、試料の高倍率の二次電子像及び後方散乱電子像を得ることができる。EMPAから、主要元素、及び微量/少量元素、又はそれらの酸化物の重量%、並びに試料の進化傾向を求めることができる。
【0032】
帯域性(zonality)のような試料の鉱物学的特徴をEMPAによって求めることもできる。粒の帯域性は、鉱物の地理的起源を示すことができる。例えば、規則的又は不規則な帯域、ある1種の金属に富んでいて別の金属が少ない帯域、又は例えば扇形に帯域分けされた帯域対均質帯域は、試料が特定の地理的起源を有することを示すことができる。粒の変化度、異なる鉱物の内包物の存在、及び他の鉱物との連晶の存在も、試料の地理的起源を示すことができる。
【0033】
更に、EMPAはレーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析のための標準化ツールとして機能させることができる。これについては工程Dにおいて下記でより詳細に議論する。具体的には、EMPAを介して得られる主要元素(例えば、金、コバルト、銅、スズ、タングステン等)は、各試料中に存在し得る微量/少量元素(上記にて論じた)に関するデータを標準化し又は正規化するために、レーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分光分析における内部参照元素として使用される。更に、レーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分光分析(LA-ICP-MS)又は二次イオン質量分光計(SIMS)はリチウム(Li)を検出するのに使用することができ、Li同位体比を検出するマルチコレクター誘導結合質量分光分析(MC-ICP-MS)又は熱イオン化質量分光分析(TIMS)は、代替として、EMPAの代わりに使用できることが理解されよう。
【0034】
D.レーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析(106):
EMPAの後、又は上述のリチウムの検出の場合のような代替の検出方法の後、工程Cにおいて上記で選択されたものと同じ粒を、レーザーアブレーション誘導結合質量分光分析(LA-ICP-MS)によって分析して、試料中に存在する微量/少量元素及びREEをppmで定量的に決定する。LA-ICP-MSは、固体試料に関して直接、高感度の元素及び同位体の分析を実施することを可能にする。LA-ICP-MSは、微細粒子を生成させるために試料表面上にレーザービームを集束させること(レーザーアブレーションとして知られる方法)によって開始される。次に、サンプリングされた塊を分解及びイオン化するために、アブレートされた粒子はICP-MS装置の二次励起源に送られる。プラズマトーチ内で励起されたイオンは、次に元素分析及び同位体分析の両方のために質量分析計の検出器に送られる。かかる分析を実施することができる機器の例は、Agilent Technologies(Santa Clara, California)から入手できるAgilent 7500CE ICP-MS、及びレーザーアブレーションシステムUP 213である。
【0035】
LA-ICP-MSの結果は、約5種の元素から約50種の元素等、例えば約10種の元素から約40種の元素等、数多くの元素の濃度を、百万分率(ppm)で表したものである。次いで選択された少量/微量元素の濃度は、更なる評価に使用される。次いでこれらのデータを正規化し、次いでこれらの正規化されたデータを図表にプロットし、様々な採鉱地からの検証済の非紛争試料に関するREE及び微量/少量元素に関する図表のデータベースと比較する。
【0036】
試料からの図表が、既に試験されてデータベース中に保存されている試料に関する図表に実質的に一致する場合には、その試料の地理的起源(採鉱地)はデータベース試料の地理的起源(採鉱地)と同じであると決定することができる。異なる鉱物は構造への元素の取込の異なる法則のために、REE及び微量/少量元素曲線に対して異なる形状を有しているが、特定の採鉱地に特徴的な鉱物の比例的富化度が概して保持されることを理解すべきである。主要元素及び少量元素の組成は高変動性である可能性があるが、特定のREEパターンにおける鉱石の富化度は、概して同じ地域又は採鉱地からの試料に関して概して同じである可能性がある。更に、鉱脈又は地域スケールで微量元素の間の良好な相関関係が存在する可能性がある。
【0037】
而して、LA-ICP-MSによって検出することができる採鉱地に応じた存在するREEの量(ppm)の変動は、それから試料が入手された特定の採鉱地を決定するためのツールとしてLA-ICP-MS分析を用いることができることを意味しており、ここで、その試料が実際に非紛争採鉱地及び地域からのものであるかどうかを更に決定することができる。言い換えれば、LA-ICP-MSを上記で議論した他の工程と組み合わせて用いて、コンフリクトフリーとして独自に確認されている特定の採鉱地から供給される鉱物が、少なくともREEを持つ金属に関して、実際に主張されている特定の採鉱地から産出されていることを検証することができる。
【0038】
更に、目的の金属がリチウムである場合等の幾つかの場合には、鉱石鉱物は、LA-ICP-MSに関して微量元素を使用可能な量で含んでいなくてもよいこと、したがって例えば、Li/Li比等、同位体比が代わりに利用されてもよいことを理解されたい。
【0039】
E.地質年代分析:
図1には示していないが、地質年代分析を実施して、ウラン-鉛(U-Pb)年代測定法を用いた鉱石精鉱の年代に基づいて、スズ(Sn)鉱石(即ち、スズ石)、タングステン(W)鉱石(即ち、鉄マンガン重石)、及びリチウム(Li)鉱石(即ち、リチア雲母)の地理的起源を識別することもでき、これはスズ及びタンタル鉱石が、高レベルのウラン及び低レベルの鉛を含有する可能性があり、したがってU-Pb放射年代測定に好適だからである。LA-ICP-MSによるin-situ分析を用いて、混合精鉱の試料中の鉱物の年代を得ることができ、確認済の非紛争採鉱地から入手されたデータベース中の種々の試料に関して保存されている年代と比較するためにこの年代を用いることができる。確認済の非紛争採鉱地からの試料と同等の年代を有する試料は、確認済の非紛争採鉱地からのものである可能性がある。
【0040】
ウラン-鉛(U-Pb)年代測定は、最も古く且つ最も精密な放射年代測定法の1つである。これは、約100万年~約45億年前に形成された岩石を、0.1%~1%の範囲の通常の精度で年代測定するために用いることができる。ウラン-鉛年代測定法は、2つの別々の崩壊系列、即ち、44億7千万年の半減期を有する238Uから206Pbまでのウラン系列、及び7億1千万年の半減期を有する235Uから207Pbまでのアクチニウム系列に依拠している。これらのウランから鉛までの崩壊系列は、一連のα(及びβ)崩壊によって起こり、娘核種を有する238Uは合計で8回のα崩壊及び6回のβ崩壊を起こし、これに対して娘核種を有する235Uは7回のα崩壊及び4回のβ崩壊しか起こさない。2つの並列のウラン-鉛崩壊経路(238Uから206Pb及び235Uから207Pb)が存在することにより、U-Pb系全体で複数の年代測定法が導かれる。本明細書に記載されるU-Pb年代測定という用語は、通常は両方の崩壊スキームを合わせて用いることを指す。
【0041】
F.試料が非紛争採鉱地からのものであるかどうかを決定するための解析(107):
上記に記載の工程が完了した後、特定の未検証の鉱物試料に関する各工程からのデータを、データベース中に保存されているデータ(データベース中に保存されているデータは、コンフリクトフリーであると予め検証されている採鉱地からの鉱物試料に関する同じ試験の結果と一致している)と比較する。データは、個々の試料又は試料の比較に関する生データ、計算データ又は標準化データ、表、グラフ、及び図表、AM画像、計算された年代、及び鉱物学的研究文書の形態である。次に、データ処理のために、単変量解析及び多変量解析のような種々の統計法をデータに適用することができる。単変量解析は、試料中の元素分布(例えば分布形状、多峰性等)の特徴付け及び説明のために適用することができ、ウィルコクソン及びコルモゴロフ-スミルノフ検定を用いて兄弟試料(brother sample)を同定することができる。一方で、試料中の元素間の従属関係(例えば、相関、図式解法)を求めるために、多変量解析である教師なし分類法(例えば、階層的ファジィクラスタ解析、主成分解析、コホネンマップ(SOM)、分類木及び回帰木(CART)、及び人工ニューラルネットワーク(ANN))を適用することができる。
【0042】
未検証の試料を検証済の非紛争試料のデータベースと比較する統計的評価の最終結果は、未検証試料とデータベースからの検証済の非紛争試料との一致に相当する最終の数(%)である。一致(高い確実性で一致)又は相関の割合がより高いと、未検証の試料は検証済の試料と同じ非紛争採鉱地からのものである可能性がより高い。例えば、少なくとも50%、例えば約60%~100%、例えば約65%~100%、例えば約70%~100%の未検証の試料と検証済の試料の間の一致率は、未検証の試料と検証済の試料が同じ地域からの同じ非紛争の1以上の採鉱地から産出されていることを示す。かかる決定を行う能力によって、本出願の鉱物源同定ツール及び方法を用いて、それから鉱物試料が受領される特定の採鉱地又は複数の採鉱地を同定し、認可されていない採鉱地又は紛争地域内の採鉱地からの鉱物(例えば、金、コバルト、銅、スズ、タングステン、リチウム等)を調達する危険性を軽減することができる。
【0043】
例えば表1は、未知の試料が4箇所の検証済/公知の採鉱地のうちの1箇所に由来した確率を決定するための、様々な金属試料同士の相関又は類似性を比較するチャートである。具体的には、受領した22の試料を処理して、それぞれの試料中の粒内の元素分布を求め、元素分析情報を求め、コルモゴロフ-スミルノフ検定を用いて、検証済/既知の採鉱地からの種々の試料との相関又は類似度(%)を求めた。50%未満の相関(%)は、未知の試料が既知の採鉱地から供給されていないことを示し、50~60%の間の相関(%)は、未知の試料が既知の採鉱地から供給されている可能性がある(しかしながら、更なる検証を完了しなければならない)ことを示し、60%より高い相関(%)は、未知の試料が既知の採鉱地から供給されていることを示している。
【0044】
下記の表1を参照すると、未知の試料2、4、8、12~18、及び21~22は採鉱地1から供給されており、未知の試料5~7、10、及び20は採鉱地2から供給されており、未知の試料1は採鉱地3から供給されていると決定することができる。
【0045】
【表1】
【0046】
工程108において記載されているように、未検証の試料が、それがそこから産出されていると主張されている採鉱地(例えば、非紛争採鉱地又は認可された採鉱地)からのものであると検証することができない場合には、その試料を返却して、本発明によって意図される電子部品の製造において用いない。一方、未検証試料が、非紛争採鉱地からのものであってそこに由来すると主張されるものであることを検証できる場合、その試料を使用して、本発明により企図されるように且つ工程109に記述されるように、電子部品の金属部品を作製することができる。
【0047】
図1に記載し、上記に示した解析工程は、図2に示す装置200を用いて実施することができる。装置200はコンピューターシステム202を含む。コンピューターシステム202は、1以上の記憶装置222と連通している1以上のプロセッサー220を含んでいてよい。コンピューターシステム202は、コンピューターシステム202内のコンポーネントのためのローカル通信インターフェース226を含んでいてよい。例えば、ローカル通信インターフェース226は、ローカルデータバス又は任意の関連するアドレスバス又は制御バスであってよい。
【0048】
記憶装置222は、1以上のプロセッサー220によって実行可能なモジュール、及びモジュールのためのデータを含んでいてよい。記憶装置222内には、コンフリクトフリーであると確認又は検証されている採鉱地からの試料に関する従前の分析からのデータベース204内に保存されているデータが保存されている。現在試験している未検証の試料に関するデータを保存するために、試料データ224も記憶装置222内に保存されている。示してはいないが、記憶装置222はまた、1以上のプロセッサーによって実行可能なオペレーティングシステムと一緒に他のアプリケーションに関するデータも保存することができる。
【0049】
他のアプリケーションも記憶装置222内に保存することができ、1以上のプロセッサー220によって実行可能にすることができる。この記載において議論するコンポーネントは、複数の方法の組合せを用いてコンパイルされ、翻訳され、実行される高水準プログラミング言語を用いるソフトウエアの形態で実装することができる。
【0050】
コンピューターシステム202はまた、コンピューティングデバイスによって使用可能なI/O(入力/出力)デバイスへのアクセスも有していてよい。I/Oデバイスの例は、コンピューターシステム202からの出力を表示するのに利用することができるディスプレイスクリーン218である。必要に応じて他の公知のI/Oデバイスをコンピューターシステム202と共に用いることができる。1以上のネットワーキングデバイス206及び同様の通信デバイスをコンピューターシステム202内に含めることができる。更に、自動鉱物学的分析器210、電子顕微鏡212、及びレーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分光光度計214を、ネットワーキングデバイス206に直接接続することができる。ネットワーキングデバイス206は、インターネット、LAN、WAN、又は他のコンピューティングネットワークに接続されている有線又は無線ネットワーキングデバイスであってよい。
【0051】
記憶装置222内に保存されているように示されているコンポーネントは、プロセッサー220によって実行することができる。「実行可能」という用語は、プロセッサーによって実行することができる形態のプログラムファイルを意味し得る。例えば、高水準言語のプログラムを、記憶装置のランダムアクセス部分にロードすることができるフォーマットの機械語にコンパイルして、プロセッサー220によって実行することができ、或いは他の実行可能なプログラムによってソースコードをロードし、翻訳して、プロセッサー220によって実行される命令をメモリー222のランダムアクセス部分中に生成させることができる。実行可能なプログラムは、記憶装置222の任意の部分又はコンポーネントに保存することができる。例えば、記憶装置222は、ランダムアクセスメモリー(RAM)、リードオンリーメモリー(ROM)、フラッシュメモリー、ソリッドステートドライブ、メモリーカード、ハードドライブ、光ディスク、フロッピーディスク、磁気テープ、又は任意の他の記憶コンポーネントであってよい。
【0052】
プロセッサー220は複数のプロセッサーを表すことができ、メモリー222は複数のメモリーユニットを表すことができ、これらは処理回路に並列に操作される。これにより、システム202内のプロセス及びデータに関する並列処理チャネルを与えることができる。ローカルインターフェース226は、任意の複数のプロセッサーと複数のメモリーとの間の通信を容易にするためのネットワークとして用いることができる。ローカルインターフェースは、ロードバランシング、大量データ転送、及び同様のシステムのような、通信を調整するように設計されている更なるシステムを用いることができる。
【0053】
試料が非紛争採鉱地から産出されていると検証されたら、鉱物試料からの金属を利用して、下記のセクションII、III、及びIVにおいてより詳細に記述されるようにキャパシタを、及びセクションVで論じられるように任意のその他の電子部品を形成することができる。
【0054】
II.非紛争採鉱地から供給された金属部品を含む固体電解キャパシタ
金属(例えば、金、コバルト、銅、スズ、タングステン等)を含有する、まだ検証されていない鉱物試料が非紛争採鉱地から供給されたものであることを工程109で検証した後、鉱物試料中の目的の金属を、この試料中のその他の構成要素から分離し、電解キャパシタの1以上の金属部品に形成することができる。ある特定の実施形態では、ここで検証された鉱物試料からの金属を使用して、陽極、誘電体、及び固体電解質も含む固体電解キャパシタの1以上の金属部品を形成することができる。固体電解キャパシタの種々の部品を下記においてより詳細に議論する。
【0055】
A.陽極:
陽極は、次に粉末にして、本発明の固体電解キャパシタにおいて用いるための多孔質陽極体を形成することができるバルブメタルを含むことができる。多孔質陽極体は、通常は、約5,000μF・V/g以上、幾つかの態様においては約10,000μF・V/g以上、幾つかの態様においては約20,000μF・V/g以上のような高い比電荷を有するバルブメタル組成物から形成される。かかる粉末は、通常は、約10,000~約600,000μF・V/g、幾つかの態様においては約40,000~約500,000μF・V/g、幾つかの態様においては約50,000~約400,000μF・V/g、幾つかの態様においては約70,000~約350,000μF・V/g、幾つかの態様においては約150,000~約300,000μF・V/gの比電荷を有する。バルブメタル組成物は、バルブメタル(即ち酸化することができる金属)、又はバルブメタルベースの化合物、例えばタンタル、ニオブ、アルミニウム、ハフニウム、チタン、これらの合金、これらの酸化物、これらの窒化物などを含む。かかるバルブメタル酸化物の例は、Fifeの米国特許6,322,912;Fifeらの米国特許6,391,275;Fifeらの米国特許6,416,730;Fifeの米国特許6,527,937;Kimmelらの米国特許6,576,099;Fifeらの米国特許6,592,740;Kimmelらの米国特許6,639,787;及びKimmelらの米国特許7,220,397;並びにSchnitterの米国特許出願公開2005/0019581;Schnitterらの米国特許出願公開2005/0103638;Thomasらの米国特許出願公開2005/0013765(これらは全て、全ての目的のためにそれらの全部を参照として本明細書中に包含する)に記載されている。
【0056】
陽極を形成するためには、一般にバルブメタル組成物の粉末を用いる。粉末は、球状、角柱状、フレーク状等、並びにこれらの混合物のような任意の種々の形状の粒子を含んでいてよい。特に好適な粉末は、Cabot Corp.(例えば、C255フレーク状粉末、TU4Dフレーク状/球状粉末等)、及びHeraeus(例えばNH175球状粉末)から入手できるタンタル粉末である。必須ではないが、粉末は、熱処理などによる当該技術において公知の任意の技術を用いて凝集させることができる。粉末を陽極の形状に成形する前に、場合によってはそれをバインダー及び/又は潤滑剤と混合して、プレスして陽極体を形成する際に粒子が確実に互いと適度に接着するようにすることもできる。次に、任意の通常の粉末プレス装置を用いて、得られる粉末を圧縮してペレットを形成することができる。例えば、ダイと1以上のパンチを含むシングルステーション式圧縮プレス機であるプレス成形機を用いることができる。或いは、ダイと単一の下方パンチのみを用いるアンビルタイプの圧縮プレス成形機を用いることができる。シングルステーション式圧縮プレス成形機は、シングルアクション、ダブルアクション、浮動ダイ、可動式プラテン、対向ラム、スクリュー、インパクト、ホットプレス、圧印加工、又はサイジングのような種々の能力を有するカムプレス、トグル/ナックルプレス、及び偏心/クランクプレスのような幾つかの基本的タイプで入手可能である。
【0057】
その特定の組成に関係なく、粉末は、陽極リードの周囲に圧縮して、陽極リードアセンブリの少なくとも一部が圧縮された多孔質陽極体から伸長するようにする。1つの特定の態様においては、2以上の部分(例えば上部部分及び下部部分)を有するダイを含むプレス成形機を用いることができる。使用中においては、ダイの複数の部分を互いに隣接して配置して、それらの壁部が実質的に整列してアノードの所望の形状を有するダイキャビティーを形成するようにすることができる。特定量の粉末をダイキャビティー中に装填する前、装填中、及び/又は装填した後に、陽極リードをその中に埋封することができる。ダイは、陽極リードを挿入することができる単一又は複数のスロットを画定していてよい。1つより多い陽極リードを用いる場合には、陽極リードは、焼結接合させるために互いと近接して配置することができるが、これは必須ではない。ダイに粉末を充填してその中に1以上の陽極リードを埋封した後、次にダイキャビティーを閉止してパンチによる圧縮力にかけることができる。通常は、圧縮力は、縦軸に沿って伸長する陽極リードの長さに対して概して平行か又は概して垂直のいずれかの方向に加える。これにより粒子が陽極リードと密に接触して、強い陽極リード/粉末の結合が生成する。
【0058】
バインダ/潤滑剤は、プレス後にペレットを真空下で一定の温度(例えば約150℃~約500℃)において数分間加熱することによって除去することができる。或いは、バインダ/潤滑剤は、ペレットを、Bishopらの米国特許6,197,252(その全部を全ての目的のために参照として本明細書中に包含する)に記載されているような水溶液と接触させることによって除去することもできる。その後、多孔質陽極体33を焼結して多孔質の一体部材を形成する。ペレットは、通常は約1200℃~約2000℃、幾つかの態様においては約1300℃~約1900℃、幾つかの態様においては約1500℃~約1800℃の温度で、約5分~約100分間、幾つかの態様においては約30分~約60分間の時間焼結する。所望の場合には、焼結は、酸素原子の陽極への移動を制限する雰囲気中で行うことができる。例えば、焼結は、真空下、不活性ガス下、水素下などの還元雰囲気中で行うことができる。還元雰囲気は、約10トル~約2000トル、幾つかの態様においては約100トル~約1000トル、幾つかの態様においては約100トル~約930トルの圧力であってよい。水素と他の気体(例えばアルゴン又は窒素)の混合物を用いることもできる。
【0059】
B.誘電体:
構成したら、焼結した陽極体を陽極酸化することによって誘電体層を形成することができる。誘電体は、焼結した陽極を陽極酸化して、誘電体層が陽極体の上及び/又はその中に形成されるようにすることによって形成することができる。例えば、タンタル(Ta)陽極を陽極酸化して五酸化タンタル(Ta)にすることができる。通常は、陽極酸化は、まず、陽極を電解液中に浸漬することなどによって電解液を陽極に施すことによって行われる。電解液は、一般に溶液(例えば水溶液又は非水溶液)などの液体、分散液、溶融体等の形態である。一般に、水(例えば脱イオン水);エーテル(例えば、ジエチルエーテル及びテトラヒドロフラン);アルコール(例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、及びブタノール);トリグリセリド;ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、及びメチルイソブチルケトン);エステル(例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジエチレングリコールエーテルアセテート、及びメトキシプロピルアセテート);アミド(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルカプリル酸/カプリン酸脂肪酸アミド、及びN-アルキルピロリドン);ニトリル(例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、及びベンゾニトリル);スルホキシド又はスルホン(例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)及びスルホラン);などのような溶媒を電解液中において用いる。溶媒は、電解液の約50重量%~約99.9重量%、幾つかの態様においては約75重量%~約99重量%、幾つかの態様においては約80重量%~約95重量%を構成することができる。決して必須ではないが、所望の酸化物の達成を助けるためには、水性溶媒(例えば水)を用いることがしばしば望ましい。実際に、水は、電解液中において用いる1種類以上の溶媒の約50重量%以上、幾つかの態様においては約70重量%以上、幾つかの態様においては約90重量%~約100重量%を構成することができる。
【0060】
電解液はイオン伝導性であり、25℃の温度において求めて約1ミリジーメンス/センチメートル(mS/cm)以上、幾つかの態様においては約30mS/cm以上、幾つかの態様においては約40mS/cm~約100mS/cmのイオン伝導度を有していてよい。電解液のイオン伝導性を増大させるために、溶媒中で解離してイオンを形成することができる化合物を用いることができる。この目的のために好適なイオン性化合物としては、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、ポリリン酸、ホウ酸、ボロン酸等;カルボン酸、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マロン酸、コハク酸、サリチル酸、スルホサリチル酸、アジピン酸、マレイン酸、リンゴ酸、オレイン酸、没食子酸、酒石酸、クエン酸、ギ酸、酢酸、グリコール酸、シュウ酸、プロピオン酸、フタル酸、イソフタル酸、グルタル酸、グルコン酸、乳酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、イタコン酸、トリフルオロ酢酸、バルビツール酸、桂皮酸、安息香酸、4-ヒドロキシ安息香酸、アミノ安息香酸等などの有機酸;スルホン酸、例えばメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、スチレンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、ヒドロキシベンゼンスルホン酸、ドデシルスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等のような有機酸;ポリマー酸、例えばポリ(アクリル)又はポリ(メタクリル)酸、及びそれらのコポリマー(例えば、マレイン酸-アクリル酸、スルホン酸-アクリル酸、及びスチレン-アクリル酸コポリマー)、カラギーナン酸、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸等;などのような酸を挙げることができる。イオン性化合物の濃度は、所望のイオン伝導率を達成するように選択される。例えば、酸(例えばリン酸)は、電解液の約0.01重量%~約5重量%、幾つかの態様においては約0.05重量%~約0.8重量%、幾つかの態様においては約0.1重量%~約0.5重量%を構成することができる。所望の場合には、複数のイオン性化合物のブレンドを電解液中で用いることもできる。
【0061】
電流を電解液に流して、誘電体層を形成する。電圧の値によって誘電体層の厚さが管理される。例えば、電源は、まず、必要な電圧に到達するまで定電流モードに設定することができる。その後、電源を定電位モードに切り替え、所望の誘電体厚さが陽極の表面の上に確実に形成されるようにすることができる。勿論、パルス又はステップ定電位法などの他の公知の方法も用いることができる。電圧は、通常は、約4~約200V、幾つかの態様においては約9~約100Vの範囲である。陽極酸化中は、電解液は昇温温度、例えば約30℃以上、幾つかの態様においては約40℃~約200℃、幾つかの態様においては約50℃~約100℃に維持することができる。陽極酸化は周囲温度以下で行うこともできる。得られる誘電体層は陽極の表面上及びその細孔内に形成することができる。
【0062】
必須ではないが、幾つかの態様においては、誘電体層は、陽極体の外表面上に配される第1の部分と陽極体の内表面上に配される第2の部分を有するという点において、陽極体全体にわたって区別された厚さを有することができる。かかる態様においては、第1の部分は、その厚さが第2の部分の厚さよりも大きくなるように選択的に形成される。しかしながら、誘電体層の厚さは特定の領域内で均一である必要はないことを理解すべきである。外表面に隣接する誘電体層の幾つかの部分は、例えば、実際には内表面における層の幾つかの部分より薄い場合があり、その逆の場合もある。それでもなお、誘電体層は、外表面における層の少なくとも一部が内表面における少なくとも一部よりも大きな厚さを有するように形成することができる。これらの厚さにおける実際の差は特定の用途に応じて変化させることができるが、第2の部分の厚さに対する第1の部分の厚さの比は、通常は約1.2~約40、幾つかの態様においては約1.5~約25、幾つかの態様においては約2~約20である。
【0063】
区別された厚さを有する誘電体層を形成するためには多段階法が一般的に用いられる。このプロセスの各段階において、焼結した陽極体を陽極酸化して誘電体層(例えば五酸化タンタル)を形成する。陽極酸化の第1段階中においては、通常は比較的小さい化成電圧、例えば、約1~約90ボルト、幾つかの態様においては約2~約50ボルト、幾つかの態様においては約5~約20ボルトの範囲の化成電圧を用いて、内部領域に関して所望の誘電体厚さが達成されるのを確実にする。その後、焼結体を次にプロセスの第2段階で陽極酸化して、誘電体の厚さを所望レベルに増加させることができる。これは、一般的には、電解液中において、第1段階中において用いられた電圧より高い電圧、例えば約50~約350ボルト、幾つかの態様においては約60~約300ボルト、幾つかの態様においては約70~約200ボルトの範囲の化成電圧で陽極酸化することにより達成される。第1及び/又は第2段階中においては、電解液は、約15℃~約95℃、幾つかの態様においては約20℃~約90℃、幾つかの態様においては約25℃~約85℃の範囲内の温度に維持することができる。
【0064】
陽極酸化プロセスの第1及び第2段階中において用いられる電解液は同じでも又は異なっていてもよい。しかしながら、通常は、誘電体層の外側部分においてより大きな厚さを得ることをより良好に促進することを助けるために、異なる溶液を用いることが望ましい。例えば、相当量の酸化物皮膜が陽極体の内表面上に形成されないようにするためには、第2段階において用いられる電解液は、第1段階において用いられる電解液よりも低いイオン伝導度を有することが望ましい可能性がある。この点に関し、第1段階中に用いられる電解液には、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、ポリリン酸、ホウ酸、ボロン酸等のような酸性化合物を含ませることができる。かかる電解液は、25℃の温度で求めて、約0.1~約100mS/cm、幾つかの態様においては約0.2~約20mS/cm、幾つかの態様においては約1~約10mS/cmの導電率を有していてよい。第2段階中に用いられる電解液は、通常は弱酸の塩を含ませて、ヒドロニウムイオン濃度が、細孔内での電荷通過の結果として細孔内で増大するようにする。イオン輸送又はイオン拡散は、電荷のバランスを取るために必要に応じて弱酸のアニオンが細孔中に移動するように起こる。その結果、主要導電種(ヒドロニウムイオン)の濃度は、ヒドロニウムイオン、酸アニオン、及び非解離酸の間の平衡が形成される際に減少して、導電不良種が形成される。導電種の濃度の低下は、電解液中での比較的高い電圧降下をもたらし、これにより内部の更なる陽極酸化が妨害され、一方で連続した高導電率の領域におけるより高い化成電圧に対してはより厚い酸化物層が外側に蓄積する。好適な弱酸塩としては、例えば、ホウ酸、ボロン酸、酢酸、シュウ酸、乳酸、アジピン酸などのアンモニウム塩又はアルカリ金属塩(例えばナトリウム、カリウムなど)を挙げることができる。特に好適な塩としては、四ホウ酸ナトリウム及び五ホウ酸アンモニウムが挙げられる。かかる電解液は、通常は、25℃の温度で求めて約0.1~約20mS/cm、幾つかの態様においては約0.5~約10mS/cm、幾つかの態様においては約1~約5mS/cmの導電率を有する。
【0065】
所望の場合には、所望の誘電体厚さを達成するために、陽極酸化の各段階を1回以上繰り返すことができる。更に、陽極体は、第1及び/又は第2段階の後に、電解液を除去するために他の溶媒(例えば水)ですすぐか又は洗浄することもできる。
【0066】
C.固体電解質:
固体電解質が誘電体の上に配され、これは一般にキャパシタのための陰極として機能する。一態様においては、固体電解キャパシタの陰極は、主として二酸化マンガンから形成することができ、一般的にマンガン化と呼ばれるプロセスによって形成することができる。このプロセスにおいては、陽極酸化によって形成された誘電体の上に導電性の対電極被覆を形成する。マンガン化工程は、通常は、陽極酸化されたデバイスを硝酸マンガンの溶液中に浸漬し、含浸されたデバイスを湿潤雰囲気中で加熱して硝酸塩を固体導電性二酸化マンガンに転化させることによって行われる。言い換えれば、二酸化マンガン固体電解質は、硝酸マンガン(Mn(NO)の熱分解によって形成することができる。
【0067】
他の態様においては、固体電解質はまた、1以上の導電性ポリマー層から形成することもできる。例えば、通常はπ共役しており、酸化又は還元の後に例えば少なくとも約1μS/cmの導電率のような導電率を有する導電性ポリマーを固体電解質に含ませることができる。かかるπ共役導電性ポリマーの例としては、例えば、多複素環化合物(例えばポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン等)、ポリアセチレン、ポリ-p-フェニレン、ポリフェノラートなどが挙げられる。好適なポリチオフェンとしては、例えば、ポリチオフェン及びその誘導体、例えばポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDT)を挙げることができる。1つの特定の態様においては、一般式(I)又は式(II)の繰り返し単位、或いは一般式(I)及び(II)の繰り返し単位:
【0068】
【化1】
【0069】
(式中、
Aは、場合によって置換されているC~Cアルキレン基(例えば、メチレン、エチレン、n-プロピレン、n-ブチレン、n-ペンチレン等)であり;
Rは、線状又は分岐で場合によって置換されているC~C18アルキル基(例えば、メチル、エチル、n-若しくはイソプロピル、n-、イソ-、sec-、又はtert-ブチル、n-ペンチル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、1-エチルプロピル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、2,2-ジメチルプロピル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、2-エチルヘキシル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシル、n-ドデシル、n-トリデシル、n-テトラデシル、n-ヘキサデシル、n-オクタデシル等);場合によって置換されているC~C12シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル等);場合によって置換されているC~C14アリール基(例えば、フェニル、ナフチル等);場合によって置換されているC~C18アラルキル基(例えば、ベンジル、o-、m-、p-トリル、2,3-、2,4-、2,5-、2,6-、3,4-、3,5-キシリル、メシチル等);場合によって置換されているC~Cヒドロキシアルキル基、又はヒドロキシ基であり;
xは、0~8、幾つかの態様においては0~2の整数であり、幾つかの態様においてはxは0である)
を有するポリチオフェン誘導体を用いる。基「A」又は「R」に関する置換基の例としては、例えば、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、アルコキシ、ハロゲン、エーテル、チオエーテル、ジスルフィド、スルホキシド、スルホン、スルホネート、アミノ、アルデヒド、ケト、カルボン酸エステル、カルボン酸、カーボネート、カルボキシレート、シアノ、アルキルシラン及びアルコキシシラン基、カルボキシルアミド基などが挙げられる。
【0070】
一般式(I)又は式(II)、或いは一般式(I)及び(II)の繰り返し単位の総数は、通常は2~2,000、幾つかの態様においては2~100である。
特に好適なポリチオフェン誘導体は、「A」が場合によって置換されているC~Cアルキレン基であり、xが0又は1であるものである。1つの特定の態様においては、ポリチオフェン誘導体はPEDTであり、式(II)(式中、「A」はCH-CHであり、「x」は0である)の繰り返し単位を有する。かかるチオフェン誘導体を形成する方法は当該技術において周知であり、例えばMerkerらの米国特許6,987,663(その全部を全ての目的のために参照として本明細書中に包含する)に記載されている。例えば、ポリチオフェン誘導体は、場合によって置換されているチオフェンのようなモノマー前駆体から形成することができる。特に好適なモノマー前駆体は、一般式(III)、(IV):
【0071】
【化2】
【0072】
(式中、A、R、及びxは上記で定義した通りである)
の置換3,4-アルキレンジオキシチオフェン、或いは一般式(III)及び(IV)のチオフェンの混合物である。
【0073】
かかるモノマー前駆体の例としては、例えば場合によって置換されている3,4-エチレンジオキシチオフェンが挙げられる。例えば上記のモノマー前駆体の二量体又は三量体であるこれらのモノマー前駆体の誘導体を用いることもできる。モノマー前駆体のより高分子の誘導体、即ち四量体、五量体等は、本発明において用いるのに好適である。誘導体は、同一か又は異なるモノマー単位で構成することができ、純粋形態、並びに互いとの混合物及び/又はモノマー前駆体との混合物で用いることができる。これらの前駆体の酸化又は還元形態を用いることもできる。
【0074】
所望の導電性ポリマーを製造するためには、上記に記載したようなモノマー前駆体を、通常は酸化剤の存在下で酸化重合にかける。酸化剤は、鉄(III)、銅(II)、クロム(VI)、セリウム(IV)、マンガン(IV)、マンガン(VII)、又はルテニウム(III)カチオンを含む無機又は有機酸の塩のような遷移金属塩であってよい。特に好適な遷移金属塩としては、鉄(III)ハロゲン化物(例えばFeCl)、又は他の無機酸の鉄(III)塩、例えばFe(ClO又はFe(SO、並びに有機酸及び有機基を含む無機酸の鉄(III)塩が挙げられる。有機基を有する無機酸の鉄(III)塩の例としては、例えば、C~C20アルカノールの硫酸モノエステルの鉄(III)塩(例えば硫酸ラウリルの鉄(III)塩)が挙げられる。更に、有機酸の鉄(III)塩の例としては、例えば、C~C20アルカンスルホン酸(例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、又はドデカンスルホン酸)の鉄(III)塩;脂肪族ペルフルオロスルホン酸(例えばトリフルオロメタンスルホン酸、ペルフルオロブタンスルホン酸、又はペルフルオロオクタンスルホン酸)の鉄(III)塩;脂肪族C~C20カルボン酸(例えば2-エチルヘキシルカルボン酸)の鉄(III)塩;脂肪族ペルフルオロカルボン酸(例えばトリフルオロ酢酸又はペルフルオロオクタン酸)の鉄(III)塩;場合によってC~C20アルキル基によって置換されている芳香族スルホン酸(例えばベンゼンスルホン酸、o-トルエンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、又はドデシルベンゼンスルホン酸)の鉄(III)塩;シクロアルカンスルホン酸(例えばカンファースルホン酸)の鉄(III)塩;などが挙げられる。これらの上述の鉄(III)塩の混合物を用いることもできる。鉄(III)-p-トルエンスルホネート、鉄(III)-o-トルエンスルホネート、及びこれらの混合物が、本発明において用いるのに特に好適である。
【0075】
種々の方法を用いて陽極部品上に固体電解質を施すことができる。一態様においては、酸化剤及びモノマー前駆体を順次か又は一緒に施して、重合反応を部品上でin situで起こす。好適な適用技術としては、スクリーン印刷、浸漬、電気泳動被覆、及び噴霧を挙げることができ、これらを用いて導電性ポリマー被覆を形成することができる。一例として、まずモノマー前駆体(例えば3,4-エチレンジオキシチオフェン)を酸化剤と混合して溶液を形成することができる。1つの好適な酸化剤は、鉄(III)トルエンスルホネートであり、Heraeusによって販売されているCLEVIOS(登録商標)Cである。CLEVIOS(登録商標)Cは、これもHeraeusによって販売されているPEDTモノマーの3,4-エチレンジオキシチオフェンであるCLEVIOS(登録商標)Mのための商業的に入手できる触媒である。混合物が形成されたら、次に陽極部品を溶液中に浸漬して、陽極部品の表面上にポリマーが形成されるようにすることができる。或いは、酸化剤及び前駆体を陽極部品に別々に施すことができる。例えば一態様においては、酸化剤を有機溶媒(例えばブタノール)中に溶解し、次に浸漬溶液として陽極部品に施す。次に、陽極部品を乾燥してそれから溶媒を除去することができる。その後、適当なモノマーを含む溶液中に陽極部品を浸漬することができる。
【0076】
酸化剤を含む陽極部品の表面にモノマーが接触するので、それをその上で化学的に重合させることができる。重合は、用いる酸化剤及び所望の反応時間に応じて、約-10℃~約250℃、幾つかの態様においては約0℃~約200℃の温度で行うことができる。上記に記載したような好適な重合技術は、Bilerの米国公開2008/232037により詳細に記載されている。1以上のかかる導電性ポリマー被覆を施すための更に他の方法は、Sakataらの米国特許5,457,862、Sakataらの米国特許5,473,503、Sakataらの米国特許5,729,428、及びKudohらの米国特許5,812,367(これらはそれらの全部を全ての目的のために参照として本明細書中に包含する)に記載されている。
【0077】
in situの適用に加えて、固体電解質はまた、固体導電性ポリマー粒子の分散液の形態で部品に施すこともできる。それらの寸法は変動する可能性があるが、粒子は、通常は陽極部品への接着のために利用できる表面積を増加させるために小さな径を有することが望ましい。陽極体の良好な含浸を可能にするためには、分散液中で用いる粒子は、通常は、約1~約150ナノメートル、幾つかの態様においては約2~約50ナノメートル、幾つかの態様においては約5~約40ナノメートルの平均サイズ(例えば直径)のような小さな寸法を有する。粒子の直径は、超遠心分離、レーザー回折等のような公知の技術を用いて求めることができる。更に、粒子の形状を変化させることができる。例えば1つの特定の態様においては、粒子は球状の形状である。しかしながら、プレート、ロッド、ディスク、バー、チューブ、不規則形状等のような他の形状も本発明によって意図されることを理解すべきである。分散液中の粒子の濃度は、分散液の所望の粘度、及び分散液をキャパシタに施す特定の方法に応じて変化させることができる。しかしながら、通常は粒子は、分散液の約0.1~約10重量%、幾つかの態様においては約0.4~約5重量%、幾つかの態様においては約0.5~約4重量%を構成する。
【0078】
導電性ポリマーを粒状物形態にすることは、荷電した導電性ポリマー(例えばポリチオフェン)を中和する別の対イオンを用いることによって増進させることができる。即ち、固体電解質中で用いる導電性ポリマー(例えばポリチオフェン又はその誘導体)は、通常は中性又は正(カチオン性)である電荷を主ポリマー鎖上に有する。例えば、ポリチオフェン誘導体は、通常は主ポリマー鎖中に正電荷を有する。幾つかの場合においては、ポリマーは構造単位内に正電荷及び負電荷を有する場合があり、正電荷は主鎖上に位置し、負電荷は場合によってスルホネート又はカルボキシレート基のような基「R」の置換基上に位置する。主鎖の正電荷は、基「R」上に場合によって存在するアニオン性基で部分的又は完全に飽和される可能性がある。全体的に見ると、ポリチオフェンは、これらの場合においては、カチオン性、中性、又は更にはアニオン性である可能性がある。しかしながら、これらは全て、ポリチオフェン主鎖が正電荷を有しているのでカチオン性ポリチオフェンとみなされる。
【0079】
対イオンはモノマー又はポリマーアニオンであってよい。ポリマーアニオンは、例えばポリマーカルボン酸(例えばポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸等);ポリマースルホン酸(例えばポリスチレンスルホン酸(PSS)、ポリビニルスルホン酸等);などのアニオンであってよい。酸はまた、ビニルカルボン酸及びビニルスルホン酸と、アクリル酸エステル及びスチレンのような他の重合性モノマーとのコポリマーのようなコポリマーであってもよい。更に、好適なモノマーアニオンとしては、例えば、C~C20アルカンスルホン酸(例えばドデカンスルホン酸);脂肪族ペルフルオロスルホン酸(例えばトリフルオロメタンスルホン酸、ペルフルオロブタンスルホン酸、又はペルフルオロオクタンスルホン酸);脂肪族C~C20カルボン酸(例えば2-エチルヘキシルカルボン酸);脂肪族ペルフルオロカルボン酸(例えばトリフルオロ酢酸又はペルフルオロオクタン酸);場合によってC~C20アルキル基によって置換されている芳香族スルホン酸(例えばベンゼンスルホン酸、o-トルエンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、又はドデシルベンゼンスルホン酸);シクロアルカンスルホン酸(例えばカンファースルホン酸、又はテトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ペルクロレート、ヘキサフルオロアンチモネート、ヘキサフルオロアルセネート、又はヘキサクロロアンチモネート);などのアニオンであってよい。特に好適な対アニオンは、ポリマーカルボン酸又はスルホン酸(例えばポリスチレンスルホン酸(PSS))のようなポリマーアニオンである。かかるポリマーアニオンの分子量は、通常は、約1,000~約2,000,000、幾つかの態様においては約2,000~約500,000の範囲である。
【0080】
用いる場合には、固体電解質の与えられる層中におけるかかる対イオンと導電性ポリマーとの重量比は、通常は約0.5:1~約50:1、幾つかの態様においては約1:1~約30:1、幾つかの態様においては約2:1~約20:1である。上記の重量比に関して言及される導電性ポリマーの重量は、重合中に完全な転化が起こると仮定して、モノマーの投入部分に関するものである。
【0081】
1種類以上の導電性ポリマー及び1種類以上の随意的な対イオンに加えて、分散液にはまた、ポリマー層の接着性を更に高め、また分散液中における粒子の安定性も増加させる1種類以上のバインダーを含ませることもできる。バインダーは、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチレート、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリル酸アミド、ポリメタクリル酸エステル、ポリメタクリル酸アミド、ポリアクリロニトリル、スチレン/アクリル酸エステル、酢酸ビニル/アクリル酸エステル及びエチレン/酢酸ビニルコポリマー、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリスチレン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン、メラミンホルムアルデヒド樹脂、エポキシド樹脂、シリコーン樹脂又はセルロースのような有機的性質のものであってよい。バインダーの接着能力を増大させるために架橋剤を用いることもできる。かかる架橋剤としては、例えば、メラミン化合物、マスクドイソシアネート又は官能性シラン、例えば3-グリシドキシプロピルトリアルコキシシラン、テトラエトキシシラン、及びテトラエトキシシラン加水分解物、或いは架橋性ポリマー、例えばポリウレタン、ポリアクリレート、又はポリオレフィンを挙げることができ、その後の架橋を含めることができる。
【0082】
また、固体電解質の形成、及びそれを陽極部品に施す能力を促進させるために、分散剤を用いることもできる。好適な分散剤としては、脂肪族アルコール(例えば、メタノール、エタノール、i-プロパノール、及びブタノール)、脂肪族ケトン(例えば、アセトン及びメチルエチルケトン)、脂肪族カルボン酸エステル(例えば、酢酸エチル及び酢酸ブチル)、芳香族炭化水素(例えば、トルエン及びキシレン)、脂肪族炭化水素(例えば、ヘキサン、ヘプタン、及びシクロヘキサン)、塩素化炭化水素(例えば、ジクロロメタン及びジクロロエタン)、脂肪族ニトリル(例えばアセトニトリル)、脂肪族スルホキシド及びスルホン(例えば、ジメチルスルホキシド及びスルホラン)、脂肪族カルボン酸アミド(例えば、メチルアセトアミド、ジメチルアセトアミド及びジメチルホルムアミド)、脂肪族及び芳香脂肪族エーテル(例えば、ジエチルエーテル及びアニソール)、水、及び任意の上記の溶媒の混合物のような溶媒が挙げられる。特に好適な分散剤は水である。
【0083】
上述したものに加えて、更に他の成分を分散液中で用いることもできる。例えば、約10ナノメートル~約100マイクロメートル、幾つかの態様においては約50ナノメートル~約50マイクロメートル、幾つかの態様においては約100ナノメートル~約30マイクロメートルの寸法を有する通常のフィラーを用いることができる。かかるフィラーの例としては、炭酸カルシウム、シリケート、シリカ、硫酸カルシウム又はバリウム、水酸化アルミニウム、ガラス繊維又はガラス球、木粉、セルロース粉末、カーボンブラック、導電性ポリマー等が挙げられる。フィラーは、粉末形態で分散液中に導入することができるが、繊維のような他の形態で存在させることもできる。
【0084】
イオン性又は非イオン性界面活性剤のような表面活性物質を分散液中で用いることもできる。更に、有機官能性シラン又はそれらの加水分解物、例えば、3-グリシドキシプロピルトリアルコキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン又はオクチルトリエトキシシランのような接着剤を用いることができる。分散液にはまた、エーテル基含有化合物(例えばテトラヒドロフラン)、ラクトン基含有化合物(例えば、γ-ブチロラクトン又はγ-バレロラクトン)、アミド又はラクタム基含有化合物(例えば、カプロラクタム、N-メチルカプロラクタム、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチルホルムアミド、N-メチルホルムアニリド、N-メチルピロリドン(NMP)、N-オクチルピロリドン、又はピロリドン)、スルホン及びスルホキシド(例えば、スルホラン(テトラメチレンスルホン)又はジメチルスルホキシド(DMSO))、糖又は糖誘導体(例えば、サッカロース、グルコース、フルクトース、又はラクトース)、糖アルコール(例えば、ソルビトール又はマンニトール)、フラン誘導体(例えば、2-フランカルボン酸又は3-フランカルボン酸)、及びアルコール(例えば、エチレングリコール、グリセロール、ジ-又はトリエチレングリコール)のような、導電性を増加させる添加剤を含ませることもできる。
【0085】
ポリマー分散液は、スピン被覆、含浸、流し込み、滴下適用、注入、噴霧、ドクターブレード塗布、ブラシ塗布、又は印刷(例えば、インクジェット、スクリーン、又はパッド印刷)などによる種々の公知の技術を用いて部品に施すことができる。分散液の粘度は、用いる適用技術に応じて変化させることができるが、通常は、約0.1~約100,000mPa・s(100s-1の剪断速度で測定)、幾つかの態様においては約1~約10,000mPa・s、幾つかの態様においては約10~約1,500mPa・s、幾つかの態様においては約100~約1000mPa・sである。施したら、層を乾燥及び洗浄することができる。このようにして1以上の更なる層を形成して所望の厚さを達成することもできる。通常は、この粒子分散液から形成される1以上の層の合計の厚さは、約1~約50μm、幾つかの態様においては約5~約20μmである。また、対イオンと導電性ポリマーとの重量比は、約0.5:1~約50:1、幾つかの態様においては約1:1~約30:1、幾つかの態様においては約2:1~約20:1である。
【0086】
in situ重合によるか、又は導電性ポリマー粒子の分散液を施すことによって固体電解質を施すのに加えて、固体電解質は、in situ重合と導電性ポリマー粒子の分散液の適用の両方を組み合わせた複合プロセスによって施すことができることも理解すべきである。例えば、一態様においては、キャパシタ素子に、複数の層から形成される固体電解質を含ませることができる。より具体的には、固体電解質に、陽極体の上に配されている誘電体と接触している第1の導電性ポリマー層を含ませることができる。第1の層には、酸化剤及びモノマー前駆体のin situ重合によって形成される導電性ポリマー(例えばPEDT)を含ませることができる。固体電解質にはまた、一般に第1の層の上に配されている第2の導電性ポリマー層を含ませることもできる。第2の層は、導電性ポリマー(例えばPEDT)、バインダー、及び随意的な対イオン(例えばPSS)を含む粒子の分散液から形成することができる。かかる分散液を用いる1つの利益は、キャパシタ体の縁部領域中にそれを浸透させて、内側層との良好な電気的接触を達成し、キャパシタ体への接着を増大させることができることである。これによってより機械的に堅牢な部品が与えられ、これによって等価直列抵抗及びリーク電流を減少させることができる。他方において、他の態様においては、固体電解質は単一の導電性ポリマー層であってよい。それが幾つの層を含むかに関係なく、得られる固体電解質は、通常は、約1マイクロメートル(μm)~約200μm、幾つかの態様においては約2μm~約50μm、幾つかの態様においては約5μm~約30μmの合計厚さを有する。更に、固体電解質が内側層及び外側層のような2つの層を含む場合には、内側層は約0.1μm~約100μm、幾つかの態様においては約0.5μm~約20μm、幾つかの態様においては約1μm~約5μmの合計厚さを有していてよく、一方で外側層は約0.2μm~約100μm、幾つかの態様においては約1μm~約40μm、幾つかの態様においては約3μm~約10μmの合計厚さを有していてよい。
【0087】
固体電解質を形成する特定の方法に関係なく、固体電解質は、陽極部品に施したら修復処理(heal)を行うことができる。修復処理は、それぞれの固体電解質層の適用後に行うことができ、或いは複数の層を用いる場合には全ての被覆を施した後に行うことができる。例えば、幾つかの態様においては、固体電解質は、ペレットを、酸の溶液のような電解液中に浸漬し、その後に電流が予め定められたレベルに低下するまで定電圧を溶液に印加することによって修復処理することができる。所望の場合には、かかる修復処理は複数の工程で行うことができる。上記に記載の層の一部又は全部を施した後、所望の場合には得られる部品を次に洗浄して、種々の副生成物、過剰の酸化剤などを除去することができる。更に、幾つかの場合においては、上記に記載の浸漬操作の一部又は全部の後に乾燥を用いることができる。例えば、乾燥は、部品の細孔を開放してそれがその後の浸漬工程中に液体を受容することができるようにするために、酸化剤を施した後、及び/又はペレットを洗浄した後に行うことが望ましい場合がある。
【0088】
D.更なる層:
所望の場合には、キャパシタに、当該技術において公知の他の層を含ませることもできる。例えば、場合によっては誘電体と固体電解質の間に、比較的絶縁性の樹脂材料(天然又は合成)で形成されているもののような保護層を形成することができる。かかる材料は、約10W/cmより高く、幾つかの態様においては約100W/cmより高く、幾つかの態様においては約1,000W/cmより高く、幾つかの態様においては約1×10W/cmより高く、幾つかの態様においては約1×1010W/cmより高い比抵抗を有していてよい。本発明において用いることができる幾つかの樹脂材料としては、ポリウレタン、ポリスチレン、不飽和又は飽和脂肪酸のエステル(例えばグリセリド)などが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、好適な脂肪酸のエステルとしては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、エレオステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アロイリット酸、シェロール酸などのエステルが挙げられるが、これらに限定されない。これらの脂肪酸のエステルは、得られた皮膜を迅速に重合して安定な層にすることを可能にする「乾性油」を形成させるために比較的複雑な組合せで用いる場合に特に有用であることが分かっている。かかる乾性油としては、それぞれ1、2、及び3個のエステル化された脂肪アシル残基を有するグリセロール骨格を有するモノ-、ジ-、及び/又はトリ-グリセリドを挙げることができる。例えば、用いることができる幾つかの好適な乾性油としては、オリーブ油、アマニ油、ヒマシ油、キリ油、大豆油、及びセラックが挙げられるが、これらに限定されない。これら及び他の保護被覆材料は、Fifeらの米国特許第6,674,635(その全部を全ての目的のために参照として本明細書中に包含する)においてより詳細に記載されている。
【0089】
陽極部品にそれぞれ炭素層(例えばグラファイト)及び銀層を施すこともできる。銀被覆は、例えば、キャパシタのためのはんだ付け可能な導体、接触層、及び/又は電荷収集体として機能させることができ、炭素被覆は、銀被覆と固体電解質との接触を制限することができる。かかる被覆は固体電解質の一部又は全部を覆うことができる。
【0090】
E.端子(termination):
特に表面実装用途において用いる場合には、キャパシタに端子を設けることができる。例えば、キャパシタに、キャパシタ素子の陽極が電気的に接続される陽極端子と、キャパシタ素子の陰極が電気的に接続される陰極端子を含ませることができる。導電性金属(例えば、銅、金、タングステン、コバルト、スズ、銀、ニッケル、亜鉛、パラジウム、鉛、アルミニウム、モリブデン、チタン、鉄、ジルコニウム、マグネシウム、及びこれらの合金)のような任意の導電性材料を用いて端子を形成することができる。特に好適な導電性金属としては、例えば、銅、金、タングステン、コバルト、及びスズが含まれ、金、銅、スズ、又はタングステンの供給源は、本明細書に記載される方法を使用して、非紛争地理的領域からのものであることを検証することができる。端子の厚さは、一般的にキャパシタの厚さを最小にするように選択される。例えば、端子の厚さは、約0.05~約1ミリメートル、幾つかの態様においては約0.05~約0.5ミリメートル、及び約0.07~約0.2ミリメートルの範囲であってよい。一つの代表的な導電性材料は、Wieland(ドイツ)から入手できる銅-鉄合金の金属プレートである。所望の場合には、端子の表面は、当該技術において公知なように、最終部品を回路基板へ実装することができるのを確実にするために、金、銅、コバルト、スズ、タングステン等で電気めっきすることができる。一つの特定の態様においては、端子の両方の面を金フラッシュでめっきすることができ、一方で、実装面もスズはんだ層でめっきし、これら金及びスズの供給源は、本明細書に記載される方法を使用して、非紛争地理的領域からのものであることを検証することができる。
【0091】
例えば、図3を参照すると、電解キャパシタ30が、キャパシタ素子33と電気的に接続されている陽極端子62及び陰極端子72を含むものとして示され、ここで、キャパシタ素子33は、上記で議論した多孔質陽極体、誘電体、及び固体電解質の部品を含む。キャパシタ素子33は、上面37、下面39、前面36、及び後面38を有する。陰極端子72はキャパシタ素子33のいずれの表面と電気的に接触させてもよいが、示されている態様における陰極端子72は、導電性接着剤(図示せず)を介して下面39と電気的に接触している。より具体的には、陰極端子72は、キャパシタ素子33の下面39と電気的に接触していて、それと概して平行である第1の部品73を含む。また、陽極端子62は、第2の部品64に対して実質的に垂直に配置されている第1の部品63を含む。第1の部品63は、キャパシタ素子33の下面39と電気的に接触していて、概してそれと平行である。第2の部品64は、陽極リード16を支持する領域51を含む。領域51は、リード16の表面接触及び機械的安定性を更に増大させるために、「U字形」を有していてよい。
【0092】
端子は、当該技術において公知の任意の技術を用いてキャパシタ素子に接続することができる。例えば一実施形態においては、陰極端子72と陽極端子62を画定するリードフレームを与えることができ、このリードフレームは、本明細書に記載される方法により非紛争採鉱地から得られたことが検証される金、コバルト、銅、スズ、又はタングステンから形成することができる。電解キャパシタ素子33をリードフレームに取り付けるためには、まず導電性接着剤(図示せず)を陰極端子72の表面に施すことができる。導電性接着剤には、例えば、樹脂組成物内に含まれる導電性金属粒子を含ませることができる。金属粒子は、銅又は金であってもよく、銅及び金の供給源は、本明細書に記載される方法を使用して非紛争採鉱地からのものであることを検証することができる。樹脂組成物には、熱硬化性樹脂(例えばエポキシ樹脂)、硬化剤(例えば酸無水物)、及びカップリング剤(例えばシランカップリング剤)を含ませることができる。好適な導電性接着剤は、Osakoらの米国特許公開2006/0038304に記載されている。任意の種々の技術を用いて、導電性接着剤を陰極端子72に施すことができる。例えば、それらの実用上及び費用節約上の利益のために印刷技術を用いることができる。
【0093】
一般に、種々の方法を用いて端子をキャパシタに取り付けることができる。例えば、一態様においては、まず陽極端子62の第2の部品64を、図3において示されている位置まで上方向に屈曲させる。その後、キャパシタ素子33の下面39が接着剤90と接触し、陽極リード16が領域51によって受容されるように、陰極端子72上にキャパシタ素子33を配置する。所望の場合には、プラスチックパッド又はテープのような絶縁材料(図示せず)を、キャパシタ素子33の下面39と、陽極端子62の第1の部品63との間に配置して、陽極端子と陰極端子を電気的に絶縁することができる。
【0094】
次に、機械的溶接、レーザー溶接、導電性接着剤等のような当該技術において公知の任意の技術を用いて、陽極リード16を領域51に電気的に接続する。例えば、レーザーを用いて陽極リード16を陽極端子62に溶接することができる。レーザーは、一般に誘導放出によって光子を放出することができるレーザー媒体、及びレーザー媒体の元素を励起するエネルギー源を含む共振器を含む。好適なレーザーの1つのタイプは、レーザー媒体が、ネオジム(Nd)がドープされたアルミニウム・イットリウム・ガーネット(YAG)から構成されるものである。励起された粒子はネオジムイオン:Nd3+である。エネルギー源によってレーザー媒体に連続エネルギーを与えて連続レーザービームを放出させるか、或いは放出エネルギーを与えてパルスレーザービームを放出させることができる。陽極リード16を陽極端子62に電気的に接続したら、次に導電性接着剤を硬化させることができる。例えば、ヒートプレスを用いて熱及び圧力を加えて、電解キャパシタ素子33が接着剤によって陰極端子72に適切に接着するのを確実にすることができる。
【0095】
F.ケーシング:
キャパシタ素子は、一般に、陽極端子及び陰極端子の少なくとも一部が回路基板上にマウントするために露出されるようにケーシング内に封入する。例えば、図3において示されるように、キャパシタ素子33は、陽極端子62の一部及び陰極端子72の一部が露出されるように樹脂ケーシング28内に封入する。ケーシングは、通常は熱硬化性樹脂から形成される。かかる樹脂の例としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂、尿素-ホルムアルデヒド樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂はまた特に好適である。光開始剤、粘度調整剤、懸濁助剤、顔料、応力低減剤、非導電性フィラー、安定剤等のような更に他の添加剤を用いることもできる。例えば、非導電性フィラーとしては、無機酸化物粒子、例えばシリカ、アルミナ、ジルコニア、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化銅、ゼオライト、シリケート、クレイ(例えばスメクタイトクレイ)等、及び複合材料(例えばアルミナ被覆シリカ粒子)、並びにこれらの混合物を挙げることができる。
【0096】
III.非紛争採鉱地から供給されるメタルを含む湿式電解キャパシタ:
また、上記で議論するキャパシタ及びそれを形成する方法は具体的に固体電解質キャパシタに言及しているが、本発明はまた、湿式電解キャパシタのようなバルブメタルを含む任意の他のタイプの電解キャパシタも意図していることも理解すべきである。本発明によって意図される湿式電解キャパシタには、陽極酸化焼結多孔質ペレットから形成される陽極、陰極、及び流体状作用電解質を含ませることができる。ペレットはプレスされたバルブメタル粉末から形成することができ、ペレットは、本発明の固体電解質キャパシタに関して上記に概して記載したように、誘電体層が陽極上及び/又は陽極内に形成されるように陽極酸化することができる。湿式電解キャパシタはまた、陽極及び陰極と電気連通している作用電解質も含む。電解質は陽極内に含浸させることができる流体であるか、或いはそれは製造の後期段階においてキャパシタに加えることができる。流体状電解質は、陽極上の誘電体を概して均一に湿潤させる。種々の好適な電解質が、Evansらの米国特許5,369,547及び6,594,140に記載されている。通常は、電解質は、任意の公知の導電率計(例えば、Oakton Con Series 11)を用いて約23℃の温度で測定して約0.1~約20ジーメンス/cm(S/cm)、幾つかの態様においては約0.2~約15S/cm、幾つかの態様においては約0.5~約10S/cmの導電率を有するという点でイオン伝導性である。流体状電解質は、一般に溶液(例えば水溶液又は非水溶液)、コロイド懸濁液、ゲル等のような液体の形態である。例えば、電解質は、酸(例えば、硫酸、リン酸、又は硝酸)、塩基(例えば水酸化カリウム)、又は塩(例えば硝酸塩のようなアンモニウム塩)、並びに、有機溶媒中に溶解している塩(例えばグリコールベースの溶液中に溶解しているアンモニウム塩)のような当該技術において公知の任意の他の好適な電解質であってよい。種々の他の電解質が、Evansらの米国特許5,369,547及び6,594,140に記載されている。
【0097】
更に、湿式電解キャパシタの陰極は、通常は金属基材(これはまた、場合によってはキャパシタのためのケーシングとして機能させることもできる)を含む。基材は、タンタル、ニオブ、アルミニウム、ニッケル、ハフニウム、チタン、銅、銀、鋼(例えばステンレス)、それらの合金、それらの複合体(例えば導電性酸化物で被覆されている金属)等のような種々の異なる金属から形成することができ、例えば銅の供給源は、本明細書に記載される方法を使用して、非紛争採鉱地からのものであることを検証することができる。基材の幾何形状は、一般に、箔、シート、スクリーン、容器、缶等の形態のように、当業者に周知なように変化させることができる。金属基材は、キャパシタのためのケーシングの全部又は一部を形成していてよく、或いは単純にケーシングに施すことができる。それとは関係なく、基材は、概して円筒形、D字形、長方形、三角形、角柱形等のような種々の形状を有していてよい。所望の場合には、基材の表面を粗面化して、その表面積を増加させ、材料をそれに接着させることができる程度を増加させることができる。例えば、一態様においては、表面に腐食性物質(例えば塩酸)の溶液を施すことなどによって、基材の表面を化学エッチングすることができる。また、機械的粗面化を用いることもできる。例えば、その表面の少なくとも一部に対して研磨媒体(例えば砂)の流れを吹き付けることによって、基材の表面を研磨剤吹付け加工することができる。
【0098】
また、導電性被覆を金属基材の表面(例えば内部表面)上に配して、キャパシタのための電気化学活性材料として機能させることもできる。任意の数の層を被覆中で用いることができる。被覆中において用いる材料は変化させることができる。例えば、導電性被覆は、貴金属(例えば、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、オスミウム、イリジウム、白金、金等であり、例えば金の供給源は、本明細書に記載される方法を使用して非紛争採鉱地からのものであることを検証することができる)、酸化物(例えば酸化ルテニウム)、炭素質材料、導電性ポリマー等を含有してもよい。例えば、一態様においては、通常はπ共役しており、酸化又は還元の後に導電性を有する1種類以上の導電性ポリマーを被覆に含ませることができる。かかるπ共役導電性ポリマーの例としては、例えば、多複素環化合物(例えばポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン等)、ポリアセチレン、ポリ-p-フェニレン、ポリフェノラートなどが挙げられる。特に良好な機械的堅牢性及び電気的性能を有するという点で、置換ポリチオフェンが導電性ポリマーとして用いるのに特に好適である。
【0099】
図4に示されるように、湿式電解キャパシタ10の陽極208は、第1のケーシング部材14及び第2のケーシング部材15で形成されているケーシング12内に配置することができる。第1のケーシング部材14は、周囲の側壁20に接合されていて、縁部22まで伸長している外装壁(face wall)18を有していてよい。第2のケーシング部材15は、同様に、周囲の縁部26を有する第2の外装壁24を含んでいてよい。示されている態様においては、第2のケーシング部材15は、而してケーシング10のための蓋として機能するプレートの形態である。ケーシング部材14及び15は、それらが互いに接触している縁部22及び26を溶接(例えばレーザー溶接)することによって、一緒に気密封止することができる。更に、金のろう付けを使用して、ケーシング部材14及び15の気密封止を容易にすることができ、金の供給源は、本明細書に記載される方法を使用して、非紛争採鉱地からのものであることを検証することができる。ケーシング部材14及び/又は15は、上記に記載の金属基材と類似のものにして、導電性ポリマー被覆(図示せず)をその内表面上に堆積させることができるようにすることができる。或いは、別の金属基材をケーシング部材14及び/又は16に隣接して配置して、導電性ポリマー被覆を施すことができる。
【0100】
示してはいないが、陽極208と導電性ポリマーが被覆された陰極とを互いから絶縁することを助ける1以上のセパレーターを、陽極と陰極との間(例えば、陽極208と第1のケーシング部材14との間、陽極208と第2のケーシング部材15との間、或いは陽極208と両方のケーシング部材14及び15との間)で用いることができる。この目的のために好適な材料の例としては、例えば多孔質ポリマー材料(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等)、多孔質無機材料(例えば、ガラス繊維マット、多孔質ガラス紙等)、イオン交換樹脂材料等が挙げられる。特定の例としては、イオン性ペルフッ素化スルホン酸ポリマー膜(例えば、E.I. DuPont de Nemours & Co.からのNafion(登録商標))、スルホン化フルオロカーボンポリマー膜、ポリベンズイミダゾール(PBI)膜、及びポリエーテルエーテルケトン(PEEK)膜が挙げられる。セパレーターは、陽極と陰極との間の直接接触を阻止するが、電解質から電極へのイオン流の流れを可能にする。
【0101】
ケーシング12から陽極線220を電気的に絶縁するフィードスルーを用いることもできる。フィードスルーはケーシング12内からその外側へ伸長させることができ、その箇所においてケーシング部材14の周囲の側壁20内に孔34を与えることができる。フィードスルーは、例えば一定の内径の内部の円筒形の内腔を有するフェルールを含むガラス/金属封止(GTMS)であってよい。而して、絶縁性のガラスによって、内腔とそれを通る陽極線220との間の気密封止を与えることができる。組み立てて封止(例えば溶接)した後、場合によっては充填ポートを通して電解質をケーシング中に導入することができる。充填は、充填ポートが電解質の貯留槽中まで延びるようにキャパシタを真空チャンバー内に配置することによって行うことができる。チャンバーを排気すると、キャパシタ内部の圧力が減少する。真空を解放すると、キャパシタ内部の圧力が再び平衡になって、電解質が充填ポートを通してキャパシタ中に吸い込まれる。
【0102】
IV.非紛争採鉱地から供給された金属部品を含むセラミックキャパシタ
上で論じたキャパシタ及びその形成方法は、固体電解キャパシタ又は湿式電解キャパシタに言及するが、本発明は、金、コバルト、銅、スズ、タングステン、又はこれらの組合せから形成された様々な層及び端子を含み得るセラミックキャパシタ等、金属部品を含む任意のその他のタイプのキャパシタも企図することも理解されるべきである。図5に示されるように、多層セラミックキャパシタは、多層化端子を備える。そのような多層化端子における少なくとも1層は、追加の制御されたESRがそれぞれのキャパシタデバイスに提供されるように、抵抗材料を含む。図5は、多層セラミックキャパシタ300aを示す。セラミックキャパシタ300aは、それぞれが少なくとも1つの第1の電極素子302を形成する、複数の第1の導電層を含む。複数の第2の電極素子304は、第1の電極素子302の選択されたものに対向する。内部電極素子302及び304は、誘電体材料306の本体内で積層状に配置構成される。そのような積層された配置構成は或いは、セラミックキャパシタ300aのデバイス本体を形成するために、複数の誘電体層306が間に差し挟まれて加圧される第1及び第2の導電体層の配置構成であると述べることができる。図5に開示されたキャパシタの実施形態によれば、第1及び第2の端子は多数の層を含み、その少なくとも1つは抵抗材料に該当する。例えば、多層化端子312及び314はそれぞれ、公知の端子作製方法のいずれかを通してキャパシタ本体300aに接着させた内層308と、その表面にめっきされた外層310とを含む。そのような実施形態では、そのような内層308が、二酸化ルテニウム(RuO)とガラスフリット又は任意のその他の適切な材料との約50-50のミックスであってもよい。或いは、内層308は、有機抵抗材料を含んでいてもよい。そのような内層308は、傑出した熱膨張特性と同様に、強力な接着結合を誘電体306に提供すると考えられる。そのような材料により、全てのキャパシタに固有の熱衝撃問題(即ち、連続的な加熱及び冷却が、セラミック本体300aからの端子312及び314の分離をもたらす状況)を低減させ得る。内層308にめっきされ且つ内層308を完全に包封する外層310は、スズ、タングステン、コバルト、銅、金、又は同様のもの等の金属を含んでいてもよく、そのような金属の供給源は、本明細書に記載される方法を使用して非紛争採鉱地からのものであることを検証することができる。
【0103】
そのようなセラミックキャパシタは、高い動作周波数で有用なキャパシタンス値を維持しながら、低インダクタンス及び制御された等価直列抵抗(ESR)を示すことが可能である。例えば、典型的なキャパシタのインピーダンスZは、その共鳴周波数に近付くにつれ減少し、その時点でインピーダンスはキャパシタのESRに等しくなる。開示された技術のある特定の実施形態の性能は、典型的なキャパシタの性能曲線にほぼ従うが、共鳴時のそのインピーダンス(したがって、そのESR)は従来の多層キャパシタ性能よりも明らかに高いままである点が、異なっている。この増大したESRは、そのRF信号放出を最小限に抑える際に、及び電子デバイス内の隣接する機能ステージのインピーダンスを一致させる際に、デバイスを支援する。
【0104】
V.非紛争採鉱地から供給された金属部品を含むその他の電子部品
上記セクションは、金属部品を含むキャパシタの形成に焦点を当てるが、本発明は電子部品としてのキャパシタに限定されず、金、コバルト、銅、スズ、タングステン、又はリチウムを含有する任意のその他の電子部品も本明細書に記載される方法により作製することができ、その結果、電子部品は非紛争採鉱地から供給された1種以上の金属を含有することが確実になることを、理解されるべきである。例えば電子部品は、医療用デバイス、フィルタ、インダクタ、活性電極、アンテナ、センサ、バッテリ等であってもよく、金属部品は、フィードスルー、めっき、導電性接着剤又はペースト、リードフレーム、端子、ピン、ワイヤ、ろう付け、コイル等であってもよい。
【0105】
本発明のこれら及び他の修正及び変更は、当業者によって、本発明の精神及び範囲から
逸脱することなく実施することができる。更に、種々の態様の複数の形態は、全体的又は
部分的の両方で交換することができることを理解すべきである。更に、当業者であれば、
上記の記載はほんの一例にすぎず、添付の特許請求の範囲において更に記載される発明を
限定することは意図しないことを認識するであろう。
以下に、出願時の特許請求の範囲の記載を示す。
[請求項1]
金属部品を含む電子部品を形成する方法であって、
採鉱地からの未検証の鉱物試料を入手すること;
定量鉱物学的分析によって前記未検証の鉱物試料を分析して、前記未検証の鉱物試料に
関する定量鉱物学的分析中に収集されたデータを、非紛争地域からの1以上の採鉱地から
供給された検証済の鉱物試料に関して収集された定量鉱物学的分析に対応するデータベー
ス中のデータと比較して、前記未検証の鉱物試料が前記非紛争地域からの1以上の採鉱地
から供給されているかどうかを決定すること;及び
前記未検証の鉱物試料が前記非紛争地域からの1以上の採鉱地から供給されていると決
定される場合には、前記未検証の鉱物試料を前記金属部品に加工すること
を含む上記方法。
[請求項2]
前記未検証の鉱物試料が非紛争地域からの1以上の採鉱地から供給されていると決定で
きない場合には前記未検証の鉱物試料を拒絶することを更に含む、請求項1に記載の方法

[請求項3]
コンゴ民主共和国、アンゴラ、ブルンジ、中央アフリカ共和国、コンゴ共和国、ルワン
ダ、スーダン、タンザニア、ウガンダ、及びザンビアが前記非紛争地域から除かれる、請
求項1に記載の方法。
[請求項4]
定量鉱物学的分析によって前記未検証の鉱物試料を分析することが、前記未検証の鉱物
試料を研磨して、前記未検証の鉱物試料中に存在する粒の内部を露出させることを含む、
請求項1に記載の方法。
[請求項5]
前記未検証の鉱物試料に関して自動鉱物学的試験を実施することを更に含む、請求項4
に記載の方法。
[請求項6]
自動鉱物学的試験中に得られるデータに基づいて更なる試験のための粒を特定すること
を更に含む、請求項5に記載の方法。
[請求項7]
前記特定された粒に関して電子マイクロプローブ分析(EMPA)を実施することを更
に含む、請求項6に記載の方法。
[請求項8]
前記特定された粒に関して、レーザーアブレーション誘導結合プラズマ分光分析(LA
-ICP-MS)を実施することを更に含む、請求項7に記載の方法。
[請求項9]
前記未検証の鉱物試料に関して前記自動鉱物学的試験、EMPA、及びLA-ICP-
MS中に収集されたデータが、前記非紛争地域からの1以上の採鉱地から供給された検証
済の鉱物試料の1つに関して前記自動鉱物学的試験、EMPA、及びLA-ICP-MS
中に収集されたデータと実質的に一致した場合に、前記未検証の鉱物試料が前記非紛争地
域からの1以上の採鉱地から供給されていると決定する、請求項8に記載の方法。
[請求項10]
前記未検証の鉱物試料が金属を含み、前記金属が、金、コバルト、銅、スズ、タングス
テン、リチウム、又はこれらの組合せを含む、請求項1に記載の方法。
[請求項11]
前記未検証の鉱物試料を前記金属部品に加工することが、
前記未検証の鉱物試料から前記金属を分離すること;
前記金属を前記金属部品に形成すること
を含む、請求項10に記載の方法。
[請求項12]
前記電子部品がキャパシタである、請求項1に記載の方法。
[請求項13]
前記キャパシタが、セラミックキャパシタ、固体電解キャパシタ、又は湿式電解キャパ
シタである、請求項12に記載の方法。
[請求項14]
前記電子部品が、医療用デバイス、フィルタ、インダクタ、活性電極、アンテナ、セン
サ、又はバッテリである、請求項1に記載の方法。
[請求項15]
前記金属部品が、フィードスルー、めっき、導電性接着剤又はペースト、リードフレー
ム、端子、ピン、ワイヤ、ろう付け、又はコイルである、請求項1に記載の方法。
[請求項16]
金属部品を含む電子部品であって、前記金属部品が金属を含み、前記金属は、それから
前記金属が得られる未検証の鉱物試料を定量鉱物学的分析によって分析し、前記未検証の
鉱物試料に関する前記定量鉱物学的分析中に収集されたデータを、非紛争地域からの1以
上の採鉱地から供給された検証済の鉱物試料に関して収集された定量鉱物学的分析に対応
するデータベース中のデータと比較して、前記未検証の鉱物試料が前記非紛争地域からの
1以上の採鉱地から供給されていると決定することによって、非紛争地域からの1以上の
採鉱地から供給されていると検証されている、上記電子部品。
[請求項17]
前記金属が、金、コバルト、銅、スズ、タングステン、リチウム、又はこれらの組合せ
を含む、請求項16に記載の電子部品。
[請求項18]
前記電子部品がキャパシタである、請求項16に記載の電子部品。
[請求項19]
前記キャパシタが、セラミックキャパシタ、固体電解キャパシタ、又は湿式電解キャパ
シタである、請求項18に記載の電子部品。
[請求項20]
前記電子部品が、医療用デバイス、フィルタ、インダクタ、活性電極、アンテナ、セン
サ、又はバッテリである、請求項16に記載の電子部品。
[請求項21]
前記金属部品が、フィードスルー、めっき、導電性接着剤又はペースト、リードフレー
ム、端子、ピン、ワイヤ、ろう付け、又はコイルである、請求項16に記載の電子部品。
図1
図2
図3
図4
図5