(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-07
(45)【発行日】2022-09-15
(54)【発明の名称】検出装置及び関連する撮像方法
(51)【国際特許分類】
A61B 8/00 20060101AFI20220908BHJP
【FI】
A61B8/00
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021092312
(22)【出願日】2021-06-01
(62)【分割の表示】P 2017564817の分割
【原出願日】2016-06-16
【審査請求日】2021-06-11
(32)【優先日】2015-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591100596
【氏名又は名称】アンスティチュ ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカル
(73)【特許権者】
【識別番号】518059934
【氏名又は名称】ソルボンヌ・ユニヴェルシテ
【氏名又は名称原語表記】SORBONNE UNIVERSITE
(73)【特許権者】
【識別番号】520053762
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・パリ・シテ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE PARIS CITE
(73)【特許権者】
【識別番号】595040744
【氏名又は名称】サントル・ナショナル・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・シャンティフィク
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE
(73)【特許権者】
【識別番号】515232158
【氏名又は名称】エコール・スーペリウール・ドゥ・フィジック・エ・ドゥ・シミ・アンデュストリエル・ドゥ・ラ・ビル・ドゥ・パリ
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】デフュ,トマ
(72)【発明者】
【氏名】ジェニソン,ジャン-リュック
(72)【発明者】
【氏名】タンテル,ミカエル
(72)【発明者】
【氏名】コーエン,イヴァン
(72)【発明者】
【氏名】ペルノット,マテュー
【審査官】下村 一石
(56)【参考文献】
【文献】特表昭63-502080(JP,A)
【文献】特開2008-200096(JP,A)
【文献】国際公開第2005/055826(WO,A1)
【文献】特開平05-309092(JP,A)
【文献】特開2004-129956(JP,A)
【文献】特開2015-000140(JP,A)
【文献】特開2003-079626(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0251489(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00-8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体(10)の脳の少なくとも2つの部位を撮像する検出装置(12)であって、脳の第1の部位が脳の第2の部位とは異なり、検出装置(12)が、
-ホルダ(121)であって、
-被験体(10)の頭蓋骨の一部の上に固定、特にセメント固定される、フレーム(14)であり、超音波に対して透過である内部分(18)の範囲を定めるフレーム(14)と、
を含むホルダ(121)と、
-着脱式の撮像デバイス(122)であって、
-内部スペース(28)の範囲を定めるプラットフォーム(16)であって、内部スペース(28)が内部分(18)に面する、プラットフォーム(16)と、
-ホルダ(121)にプラットフォーム(16)を一時的に固定及び係止するように適合された固定要素(30)と、
-1つ以上のトランスデューサアレイを含む超音波プローブ(32)と、
-超音波プローブ(32)を保持する移動ステージ(34)であって、移動ステージ(34)が、内部スペース(28)内で超音波プローブ(32)を移動させるように適合され、移動ステージ(34)が、更に、第1の位置であって、脳の第1の部位が超音波プローブ(32)によって撮像される、第1の位置と、第2の位置であって、脳の第2の部位が超音波プローブ(32)によって撮像される、第2の位置との間で移動するように適合される、移動ステージ(34)と、
を含む、着脱式の撮像デバイス(122)と、
を含み、
ホルダ(121)が、超音波に対して透過である窓(20)を更に含み、窓(20)が、内部分(18)に対応するようにフレーム(14)に挿入される、検出装置(12)。
【請求項2】
固定要素(30)及びフレーム(14)が磁気を帯びる、請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
フレーム(14)が第1の形状を有した要素(22、24、26)を更に含み、固定要素(30)が第2の形状を有し、第1の形状及び第2の形状が相補的である、請求項1又は2に記載の検出装置。
【請求項4】
各々のトランスデューサアレイが、直線トランスデューサアレイである、請求項1~3のうちのいずれかに記載の検出装置。
【請求項5】
移動ステージ(34)が可動スクリュー(36)を含む、請求項1~4のうちのいずれかに記載の検出装置。
【請求項6】
命令が、
-ワイヤ又はビーズなどの既知の位置にある物体上の超音波プローブ(32)によって得られた反射超音波信号の振幅、
-ドップラー技術を使用して超音波プローブ(32)によって得られた画像、
-超高感度ドップラー技術を使用して超音波プローブ(32)によって得られた画像、
-参照構造地図、
の要素の少なくとも1つに左右される、請求項1~5のうちのいずれかに記載の検出装置。
【請求項7】
着脱式の撮像デバイス(122)が、連続信号を提供するように適合された少なくとも1つの追加的なセンサを更に含み、各々の追加的なセンサが、電極、埋込電極、加速度センサ、被験体(10)を撮影するように適合されたカメラから選択され、命令が、追加的なセンサからの信号に左右される、請求項6に記載の検出装置。
【請求項8】
移動ステージ(34)が、スクリュー(36)を移動させるように適合されたモータ(38)及び命令によりモータに指令するように適合されたコントローラを更に含む、請求項1~7のうちのいずれかに記載の検出装置。
【請求項9】
着脱式の撮像デバイス(122)が、固有のケーブル(15)を更に含み、ケーブル(15)が、プラットフォーム(16)とコントローラとの間に位置する、請求項1~8のうちのいずれかに記載の検出装置。
【請求項10】
移動ステージ(34)が、内部スペース(28)内で超音波プローブ(32)を並進させるように適合された並進ステージである、請求項1~9のうちのいずれかに記載の検出装置。
【請求項11】
移動ステージ(34)が、内部スペース(28)内で軸の周りに超音波プローブ(32)を回転させるように適合された回動ステージである、請求項1~10のうちのいずれかに記載の検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
分野
本発明は、検出装置及びこのような検出装置を使用して被験体の脳の少なくとも2つの部位を撮像する方法に関する。
【0002】
発明の背景
生体内脳活動記録は、複雑な行動及び病変の発現機構を解明するための固有の寄与を神経科学に提供する。理想的には、被験体が覚醒し自由に移動しているときである最も自然な条件において、全体的な脳平衡の2つの主要な側面を形成する神経処理及び代謝性事象を瞬時に捕捉することが所望される。
【0003】
実際には、撮像視野のサイズ、時間解像度、感度、処理及び代謝の可分性と、動物への物理的制約との間の妥協が図られる。電気生理学及び最近の光学技術は、可動動物の神経活性を記録することができるが、サンプリングは、それぞれ、電極のサイズ及び光回折によって制限される。
【0004】
反対に、機能的磁気共鳴画像法は、被験体の固定又は動物の鎮静という代償を払い、感度及び解像度のトレードオフによって、脳の代謝的適応を記録する。
【0005】
超高速ドップラーに基づく機能的超音波撮像は、高い空間時間解像度及び固有の感度で齧歯動物の脳の循環動態及び機能的結合を監視する方法を提供する。
【0006】
頭蓋骨と相互作用する、特に超音波を適用する、いくらかの医療システムが公知である。
【0007】
文献DE 41 31 430 A1は、プローブ用ハンドピースを含むプローブホルダが、保持板とは対照的に、プローブがプローブホルダにおいて必要に応じて旋回することができるように、位置することを開示する。プローブホルダはまた、横方向の取付部を有した誘導片を有する。取付部は、保持板の開放スロットにおいて係合するための、少なくとも1つの平坦な端部を有する。誘導片は、止めナットのネジ込みのための、雄ネジを有する。ナットのダイヤルは、保持板の開口の幅より大きい。誘導片は、開口を有した球状カバーを有する。このようなプローブホルダが、医療超音波診断において使用される。このプローブホルダは、それぞれの患者に合わせることができるように設計され、広範囲の調整、簡単かつ正確で長期間にわたって信頼性の高い調整を提供する。プラスチック製の部品は、コスト効率よく作製され得る。
【0008】
文献US 2011/251489 A1は、超音波監視システム及びTranscranial Dopper(TCD)システムなどの超音波監視システムにおいて使用される構成要素を説明する。構成要素は、解剖学的表面と接触して1つ以上の超音波プローブを設置、位置決め、及び維持するフレームワークシステム、調整可能なプローブ設置システム、並びにプローブ設置システムと超音波プローブの放射面との間の音響伝送インターフェースを提供するインターフェース構成要素を含む。
【0009】
文献DE 94 05 271 U1は、超音波プローブに関する。
【0010】
文献WO 2007/044469 A1は、患者の頭部内の標的に放射線治療をするシステム及び方法に関する。第1の参照座標系が、外部から視認可能で患者の画像にある患者の頭部上の解剖学的標認点に関連して定められる。標的の座標が、第1の参照座標系から第2の参照座標系に変換される。第2の参照座標系は、患者の頭部に取り付けられる外部ロケータデバイスに関連して定められる。システムは、処置キャップ、ロケータデバイス、センサ、超音波トランスデューサ、ホルダ、及び様々なコンピュータ可読媒体を含む。角度が、ロケータデバイスによって選択された外部の位置から標的へ放射線を向けるために算出される。更に、処置キャップは、患者の頭部の周りにフィットするように作製され、一定の位置及び配向でインターフェースユニットを保持する。各々のインターフェースユニットは、放射線源を保持する可動トランスデューサホルダを含み、算出された角度でトランスデューサホルダを回転させることによって、放射線が標的に放出される。
【0011】
文献US 2011/112405 A1は、皮膚科の美容処置並びに撮像システム及び方法を開示する。いくつかの実施形態では、システムは、少なくとも1つの指で起動可能なコントローラを有したハンド棒、及び超音波トランスデューサを有する着脱式のトランスデューサモジュールを含む。いくつかの実施形態では、システムは、ハンド棒に結合されて、着脱式のトランスデューサモジュールを制御するグラフィックユーザインターフェースを有した、制御モジュール、及びハンド棒を制御モジュールに結合するインターフェースを含むことができる。インターフェースは、ハンド棒に電力を提供するか又はハンド棒から制御モジュールへ信号を送信することができる。いくつかの実施形態では、美容処置システムは、患者の顔、頭部、首、及び/又は他の部分の少なくとも一部分に関する美容手順において使用され得る。
【0012】
文献EP 0 409 822 A1は、神経外科補助装置、又は撮像及び/若しくは腫瘍の切除などの開頭開口を通して実行される神経外科手順のための脳外科用アダプタを提案する。脳外科用アダプタは、開頭開口の端部にしっかりと固定及び封止されるように配列されたアダプタフレームと、摺動空間を含み、フレームにフィットして所定の位置に係止されるように配列された、好ましくは回転可能な撮像板と、撮像板の摺動空間に提供されたトランスデューサソケットにフィットする超音波トランスデューサと、を含む。この発明によるアダプタが使用されるとき、超音波トランスデューサは手動で支持される必要がない。アダプタは、閉じられた液体空間を定め、腫瘍の切除などの、神経外科手術を行う器具が提供され得る。撮像は、決定された撮像平面において、この発明による脳外科用アダプタによって実行され、得られる画像は、組織が腫瘍の切除の間に適応することにかかわりなく、正確に決定されて、互いに比較可能である。
【0013】
しかしながら、すべての既に言及したシステムにおいて、可動被験体上への手動の介入なしで、定位座標における1つの位置から別の位置へのプローブの往復移動を保証することは可能ではない。
【0014】
概要
本発明は、覚醒及び可動動物に対する脳の機能的超音波撮像の潜在的可能性の顕在化を可能にすることを目的とする。
【0015】
この目的のために、本明細書は、被験体の脳の少なくとも2つの部位を撮像する検出装置であって、
-ホルダであり、
-被験体の頭蓋骨の一部の上に固定、特にセメント固定される、フレームであり、超音波に対して透過である内部分の範囲を定めるフレームと、
を含むホルダと、
-着脱式の撮像デバイスであり、
-内部スペースの範囲を定めるプラットフォームであり、内部スペースが内部分に面する、プラットフォームと、
-ホルダにプラットフォームを一時的に固定及び係止するように適合された固定要素と、
-1つ以上のトランスデューサアレイを含む超音波プローブと、
-超音波プローブを保持しかつ内部スペース内で超音波プローブを移動させるように適合される移動ステージと、
を含む、着脱式の撮像デバイスと、
を含む検出装置を説明する。
【0016】
検出装置により、非常に簡単に同じ覚醒及び可動被験体のいくらかの位置を撮像することが可能になる。
【0017】
提案される検出装置は、定位座標における特定の脳構造上への超音波プローブを直接位置決めすること、手動の介入なしで被験体が覚醒及び移動している間に全く同じ平面に移動して戻ることを可能にする。提案される検出装置は、固有の記録セッションの間に覚醒動物の異なる脳構造を正確に撮像することを可能にする。
【0018】
有利ではあるが強制的ではない本発明の更なる態様によれば、検出装置は、技術的に許容可能な任意の組み合わせで、以下の特性のうちの1つ又はいくつかを組み込んでもよい。
-脳の第1の部位が、脳の第2の部位とは異なる。
-移動ステージが、脳の第1の部位が超音波プローブによって撮像される第1の位置と脳の第2の部位が超音波プローブによって撮像される第2の位置との間で移動するように適合される。
-ホルダが、超音波に対して透過である窓を更に含み、窓が、内部分に対応するようにフレームに挿入される。
-固定要素及びフレームが、磁気を帯びる。
-フレームが第1の形状を有した要素を更に含み、固定要素が第2の形状を有し、第1の形状及び第2の形状が相補的である。
-各々のトランスデューサアレイが、直線トランスデューサアレイである。
-移動ステージが、可動スクリューを含む。
-移動ステージが、スクリューを移動させるように適合されたモータ及び命令によりモータに指令するように適合されたコントローラを更に含む。
-命令が、以下の要素の少なくとも1つに左右される。
・ワイヤ又はビーズなどの既知の位置にある物体上の超音波プローブによって得られた反射超音波信号の振幅。
・ドップラー技術を使用して超音波プローブによって得られた画像。
・超高感度ドップラー技術を使用して超音波プローブによって得られた画像。
・参照構造地図。
-着脱式の撮像デバイスが、連続信号を提供するように適合された少なくとも1つの追加的なセンサを更に含み、各々の追加的なセンサが、電極、面電極アレイ、埋込電極、電極アレイ、加速度センサ、被験体を撮影するように適合されたカメラから選択され、命令が、追加的なセンサからの信号に左右される。
-命令が、既に定めた項目の組み合わせに左右される。
-着脱式の撮像デバイスが、固有のケーブルを更に含み、コントローラが、超音波プローブから出されるデータを処理するように更に適合され、ケーブルが、プラットフォームとコントローラとの間に位置する。
-移動ステージが、内部スペース内で超音波プローブを並進させるように適合された並進ステージである。
-移動ステージが、内部スペース内で軸の周りに超音波プローブを回転させるように適合された回動ステージである。
【0019】
本明細書はまた、被験体の脳の少なくとも2つの部位を撮像する方法であって、
-ホルダであり、
-被験体の頭蓋骨の一部の上に固定、特にセメント固定される、フレームであり、超音波に対して透過である内部分の範囲を定めるフレームと、
を含むホルダを準備する段階と、
-被験体の頭蓋骨の一部にフレームを固定、特にセメント固定する段階と、
-着脱式の撮像デバイスであり、
-内部スペースの範囲を定めるプラットフォームであり、内部スペースが内部分に面する、プラットフォームと、
-ホルダにプラットフォームを一時的に固定及び係止するように適合された固定要素と、
-1つ以上のトランスデューサアレイを含む超音波プローブと、
-超音波プローブを保持しかつ内部スペース内で超音波プローブを移動させるように適合される移動ステージと、
を含む着脱式の撮像デバイスを準備する段階と、
-固定要素によりホルダにプラットフォームを固定する段階と、
-超音波プローブにより脳の第1の部位を撮像する段階と、
-移動ステージにより超音波プローブを並進させる段階と、
-超音波プローブにより脳の第2の部位を撮像する段階と、
を含む方法に関する。
【0020】
好ましい実施形態によれば、被験体は覚醒している。
【0021】
本発明は、本発明の目的を制限することなく添付図面と対応して実例として示される以下の説明に基づいてより深く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図4】検出装置の一例を使用することによって実行された実験の結果を例示する。
【
図5】検出装置の一例を使用することによって実行された実験の結果を例示する。
【
図6】検出装置の一例を使用することによって実行された実験の結果を例示する。
【
図7】検出装置の一例を使用することによって実行された実験の結果を例示する。
【
図8】検出装置の一例を使用することによって実行された実験の結果を例示する。
【
図9】検出装置の一例を使用することによって実行された実験の結果を例示する。
【
図10】検出装置の一例を使用することによって実行された実験の結果を例示する。
【
図11】検出装置の一例を使用することによって実行された実験の結果を例示する。
【
図12】検出装置の一例を使用することによって実行された実験の結果を例示する。
【
図13】検出装置の一例を使用することによって実行された実験の結果を例示する。
【
図14】検出装置の一例を使用することによって実行された実験の結果を例示する。
【
図15】検出装置の一例を使用することによって実行された実験の結果を例示する。
【
図16】検出装置の一例を使用することによって実行された実験の結果を例示する。
【
図17】検出装置の一例を使用することによって実行された実験の結果を例示する。
【
図18】検出装置の一例を使用することによって実行された実験の結果を例示する。
【
図19】検出装置の一例を使用することによって実行された実験の結果を例示する。
【
図20】検出装置の一例を使用することによって実行された実験の結果を例示する。
【
図21】検出装置の一例を使用することによって実行された実験の結果を例示する。
【
図22】検出装置の一例を使用することによって実行された実験の結果を例示する。
【
図23】検出装置の一例を使用することによって実行された実験の結果を例示する。
【
図24】検出装置の一例を使用することによって実行された実験の結果を例示する。
【
図25】検出装置の一例を使用することによって実行された実験の結果を例示する。
【
図26】検出装置の一例を使用することによって実行された実験の結果を例示する。
【
図27】検出装置の一例を使用することによって実行された実験の結果を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
【0024】
被験体10は、マウスである。
【0025】
より一般的には、被験体10は、少なくとも1つの特定の部位が分析される動物である。
【0026】
分析される特定の部位は、例えば、検討される生物学的問題の種類に左右される。
【0027】
例示としては、生物学的問題が記憶であるときは、部位は海馬の特定の部位である。
【0028】
本明細書の残りの部分では、例示的な目的のみのために、マウスが癲癇を患っており、分析される部位が脳の部位であるとする。加えて、脳の第1の部位及び第1の部位とは異なる脳の第2の部位が撮像されるとする。
【0029】
このために、被験体10は頭部11を有し、検出装置12が被験体10の頭部11上に維持される。
【0030】
検出装置12は、被験体10の脳の部位における少なくとも1つの物理値を検出するように適合された装置である。
【0031】
検出装置12は、ホルダ121及び着脱式の撮像デバイス122を含む。
【0032】
ホルダ121は、フレーム14、窓20、並びに3つの要素22、24、及び26を含む。
【0033】
フレーム14は、被験体10の頭蓋骨上にセメント固定される。
【0034】
図1に例示されるフレーム14は、多角形状を有する。
【0035】
形状は、この特定の場合には矩形である。
【0036】
ラット又はマウスなどの、小さいと考えられる動物では、フレーム14の長さは、動物の脳の長さに等しい。例えば、被験体10がマウスであるときは長さは1センチメートルであり、又は被験体10がラットであるときは長さは2センチメートルである。
【0037】
ヒトなどの、大きいと考えられる動物では、フレーム14の長さは、動物の脳の長さの一部分に等しい。例えば、フレームの長さは10センチメートルより小さい。より一般的には、フレーム14の長さは、動物の脳の長さの最小値及び10センチメートルに等しい。
【0038】
フレーム14は、プレキシガラス製である。
【0039】
フレーム14は、内部分18の範囲を定める。
【0040】
内部分18は、ポリメチルペンテン(TPX)製であり、超音波に対してほぼ透過である。
【0041】
【0042】
窓20は、超音波に対して透過である。
【0043】
窓20が内部分18に対応するように、窓20はフレーム14に挿入される。
【0044】
この場合には、フレーム14は、窓20の保持を確実にするために窓20の一部分が挿入される凹部を有する。
【0045】
窓20は、ポリメチルペンテン製である。
【0046】
3つの要素22、24、及び26は、第1の形状を有する。
【0047】
図1の例では、各々の3つの要素22、24、及び26は、同じ第1の形状を有する。
【0048】
各々の3つの要素22、24、及び26の第1の形状は、円形の基礎を有した円筒状である。
【0049】
着脱式の撮像デバイス122は、ケーブル15、内部スペース28の範囲を定めるプラットフォーム16、固定要素30、超音波プローブ32、及び移動ステージ34を含む。
【0050】
ケーブル15は、超音波プローブ32からコントローラへデータを運ぶように適合される。
【0051】
図1の特定の例では、ケーブル15は、可撓性ケーブルである。可撓性ケーブルは、厳密に25mmより小さい直径を有した曲線を得ることを可能にするケーブルと考えるべきである。
【0052】
内部スペース28は、内部分18に面している。
【0053】
固定要素30は、ホルダ121にプラットフォーム16を着脱可能に固定するように適合される。言い換えると、固定要素30は、ホルダ121にプラットフォーム16を一時的に固定及び係止するように適合される。
【0054】
固定要素30は第2の形状を有し、第1の形状及び第2の形状は相補的である。
【0055】
第1の形状及び第2の形状が相補的であることにより、固定要素30並びに3つの要素22、24及び26がホルダ121にプラットフォーム16を確実に着脱可能に固定するように協働することが可能となる。
【0056】
代替的実施形態では、固定要素30及びフレーム14は、磁気を帯びる。
【0057】
図1の特定の例によれば、超音波プローブ12は、トランスデューサの直線アレイを含む。
【0058】
移動ステージ34は、超音波プローブ12を保持する。
【0059】
図1の場合には、移動ステージ34は、並進ステージである。
【0060】
並進ステージは、内部スペース28内で超音波プローブ12を並進させるように適合される。
【0061】
より正確には、並進ステージは、フレーム14の長手方向に沿って超音波プローブ12を並進させるように適合される。
【0062】
図1の特定の例によれば、移動ステージ34は、脳の第1の部位が超音波プローブ32によって撮像される第1の位置と脳の第2の部位が超音波プローブ32によって撮像される第2の位置との間で移動するように適合される。
【0063】
並進ステージ34は、可動スクリュー36、モータ38、及び
図1に例示されないコントローラを含む。
【0064】
モータ38は、スクリュー36を移動させるように適合される。
【0065】
例えば、モータ38は、サーボモータである。
【0066】
代替的に、モータ38は、ステッピングモータである。
【0067】
コントローラは、命令によりモータ38に指令するように適合される。
【0068】
特定の実施形態では、命令は、超音波の検出に左右される。
【0069】
例えば、命令は、検出される反射超音波の大きさに左右される。
【0070】
より一般的に、命令は、以下の要素の少なくとも1つに左右される。
-ワイヤ又はビーズなどの既知の位置にある物体上の超音波プローブ32によって得られた反射超音波信号の振幅。
-ドップラー技術を使用して超音波プローブ32によって得られた画像。
-超高感度ドップラー技術を使用して、すなわち1つのドップラー画像を推定するために1秒につき250個より多い超音波フレームを使用して、超音波プローブ32によって得られた画像。
-参照構造地図。
【0071】
代替的に、着脱式の撮像デバイス122は、電極を更に含む。
【0072】
例えば、電極は、埋込電極である。
【0073】
このような場合には、命令は、電極による超音波の検出に左右される。
【0074】
より一般的には、着脱式の撮像デバイスは、連続信号を提供するように適合された少なくとも1つの追加的なセンサを更に含み、各々の追加的なセンサは、電極、埋込電極、加速度センサ、被験体10を撮影するように適合されたカメラから選択され、命令が、追加的なセンサからの信号に左右される。
【0075】
一実施形態によれば、命令は、既に定めた項目の組み合わせに左右される。
【0076】
好ましくは、命令は、既に定めた項目の組み合わせに左右される。
【0077】
表現「項目の組み合わせ」とは、特定の関心の平面に超音波プローブ32を移動させるために追加的なセンサから来る情報を考慮に入れることが可能であることを意味する。これにより、特定のプロトコルにより2次元撮像のトレードオフを得ることが可能となる。
【0078】
例えば、追加的なセンサが電極及びカメラである場合に、一方で電極が移動を指示する信号を提供し、他方でカメラが被験体10が移動しないことを示す場合には、被験体10の脳における決定と結びつけられた部位が特定の関心対象である。
【0079】
代替的に、両方の追加的なセンサが被験体10が入眠していることを示すときは、被験体10の脳の別の部位を撮像することが関心対象となり得る。
【0080】
別の例によれば、被験体10が物体と相互作用していることをカメラが示す場合には、嗅球又は感覚皮質を撮像することが所望され得る。
【0081】
検出装置12の操作が、被験体10の脳の少なくとも2つの部位を撮像する方法を実行する例に関連して、ここで説明される。
【0082】
撮像する方法は、ホルダ121を準備する段階を含む。
【0083】
撮像する方法は、セメント固定する段階を更に含む。
【0084】
セメント固定する段階で、フレーム14が、被験体10の頭蓋骨の一部にセメント固定される。
【0085】
図4~7で特に見ることができるように、頭頂間骨及び前頭骨が、フレーム14をセメント固定するために使用され得る被験体10の頭蓋骨の一部である。
【0086】
セメント固定する段階は、歯科用セメントによって実行される。
【0087】
フレーム14は、撮像される脳の部位に関連付けて検出装置12の位置を決定する絶対フレームを構成する。
【0088】
撮像する方法はまた、着脱式の撮像デバイス122を準備する段階を含む。
【0089】
撮像する方法は、固定要素30を使用することによってホルダ121にプラットフォーム16を固定する段階を更に含む。
【0090】
撮像する方法はまた、超音波プローブ32により脳の第1の部位を撮像する段階を含む。
【0091】
撮像する方法はまた、並進ステージにより超音波プローブ12を並進させる段階を含む。
【0092】
並進は、超音波プローブ12が第1の位置から第2の位置へ移ることを可能にする。第1の位置において、超音波プローブ12は第1の部位を撮像することができ、第2の位置において、超音波プローブは第2の部位を撮像することができる。
【0093】
撮像する方法はまた、超音波プローブ32により脳の第2の部位を撮像する段階を含む。
【0094】
好ましくは、第2の部位は、第1の部位と異なる。
【0095】
このような方法は、同じ覚醒及び可動被験体上のいくらかの位置を撮像するために非常に簡単に使用され得る点で、非常に有用である。
【0096】
言い換えると、検出装置を提案することで、脳の3次元撮像を達成することが可能になる。
【0097】
【0098】
図2では、移動ステージ34は、フレーム14の長手方向に対して垂直な方向に超音波プローブ12を並進させるように適合される。
【0099】
図3では、移動ステージ34は、軸に沿って超音波プローブ12を回転させるように適合される。
【0100】
上で考えられた実施形態及び代替的実施形態は、本発明の更なる実施形態を生成するために組み合わせられ得る。
【0101】
実験セクション
図の解説
実行された実験が、
図4~27に、特に示される。
【0102】
全般に、
図4~13は、覚醒/可動EEG-f超音波手順及び取得プロトコルを示す。
【0103】
図4~8は、外科手順及びプローブ設定を示す。特に、窓境界が、点線で示される。人工頭蓋骨、取付ナット、プローブホルダ、モータ、及びプローブを見ることができる。これらの図はまた、海馬の定位電極及びEEGコネクタを追加した手術結果並びにモータ付並進ステージを備えた動物、並びに人工器官を通した生のmfUSビューを示す。
【0104】
図9~11は、迷路実験のための「バーストモード」取得を示す。
【0105】
迷路、水報酬位置、及び頭上カメラの概略図。挿入された、赤い縦線として示した冠状撮像平面における地図側面図。右:上から下へEEG-行動記録チャート、海馬の局所フィールド電位(LFP)、シータの帯域を示した短時間フーリエ変換時間-周波数分析(6~9Hz)、及びその帯域の力。下のトレースは、迷路に沿った位置を示し、最下部の赤い縦線は、f超音波画像のタイミングを指示する。海馬のシータは、作業の間に変調を呈し、時間参照値として使用した迷路中央の踏破に対応する(点線)最高速時にピークに達した。高速で取得した冠状超音波画像は、例えば参照値周辺で5回連続平均化した(n=25)。バースト時間を増加させるために、ほとんどの腹側部位は、取得されなかった。
【0106】
図12及び
図13は、発作記録のための「連続モード」取得を示す。
【0107】
自発的な全身性欠神発作は、両側EEGから記録され、f超音波画像トリガマークが、EEGより下に示される。挿入された図に指示される冠状平面は、それぞれ10分間連続して取得される。各々の色は、冠状平面に対応する。
【0108】
各々の
図9~13のために、ベースラインに対する超音波画像の変化が、ボンフェローニ(Bonferroni)補正によりp<10
-2の所で示されるパキノス(Paxinos)の地図からの重ね合わせ。
【0109】
一般に、
図14~20は、自然の事象の循環動態の捕捉を示す。
【0110】
図14~16のために、正中線交差上で、様々な時間差(-2~+5秒)で各々の画素毎のLFPシータ帯域の力と超音波信号との間の迷路実験相互相関(
図14参照)を1時間でn=20取得した。広範囲にわたる過潅流が、腹側視床における低潅流と共に、-1秒と+3秒との間で発生した。循環動態信号の領域変動は、地図レイアウト上に指示された画素の空間的平均化によって、得られた(平均+/-sdエンベロープ)。平均シータ力(紫)及び軌道(緑)。縦の点線は、参照正中線交差時間を示す(
図15参照)。ピアソンのRの値及びピークの遅延(
図16参照)は、左右の背側視床、海馬、及び一次感覚皮質間で近い反応を示す。
【0111】
図17~20は、連続した冠状平面に対する、時間差0の、mfUS画像と発作との間の癲癇実験相互相関図である(
図17参照)。感覚皮質は、一方の半球上でいくらかの過潅流斑を示し、他方の半球上で何も示さなかった。尾側視床もまた、有意に過潅流であった。低潅流は、CPu及びいくつかの皮質部位で見られた。地図レイアウト上に色マークされた部位の平均化は、CPuにおける両側のゆらぎを示した(
図18参照)。反対に、発作がEEGに関して両側性である多くの場合で、皮質は過渡的に両側か又は片側の共活性化を示した。発作を起こしている皮質及び視床の同期振動が、尾側平面に見られた(
図19参照)。有意な部位の平均は、CPuにおける低潅流及び安定した海馬潅流に対して、感覚皮質及び視床における過潅流を一貫して示した(
図20参照)。
【0112】
図14及び
図17のために、有意な画素は、ボンフェローニ(Bonferron)補正によりp<10
-2で示される。
【0113】
図21~24は、走行及び発作に対する記録手順の影響を示す。
【0114】
図21及び
図22上で、mfUS-EEG(青)と紐なしの、手術のない対照ラット(赤)との間の迷路実験比較分布が、迷路で移動した累積距離は36~44%低減するが最高速度は緩やかに1~13%低減することを示す。
【0115】
図23及び
図24上で、遺伝性欠損ラット(GAERS、青)は、EEGのみの記録(赤)と比較して、等価の発作時間及び発作継続時間分布を示す。
【0116】
図25~27は、小型超音波プローブ(
図25参照)、マイクロモータ(
図26参照)の写真である。プローブホルダ(
図27参照)は、頭部上へ固定される板(右)及び並進ステージ(左)で構成される。
【0117】
表
実行された実験はまた、以下の表に示される。
【0118】
【表1】
EEG-mfUS及び手術のない、紐なしの、対照ラットに対する、作業の開始からの、時間の経過とともに移動した累積距離。2つのグループは、約60%の実行割合で、有意に異なった。
【0119】
【表2】
EEG-mfUS及び手術のない、紐なしの、対照ラットに対する、連続した5分の時間窓での迷路の端から端までの歩行間の最高速度。2つのグループは、最初の15分間、87%~93%の範囲の実行割合で、僅かに、有意に異なった。15分後、2つのグループ間の違いは、有意ではない、1%に減少した。
【0120】
【表3】
開頭されたEEG-mfUSラットと頭蓋窓のない対照との間の、癲癇のラットのEEG発作パターンの比較。発作時間は、記録セッション全体にわたる発作を呈した時間の割合を計数する。すべての検出された発作の継続時間もまた、比較された。発作パターンの両方の指標は、2つのグループ間の非有意な違いを示し、発作活性に対する実験手順の最小の影響を支持した。
【0121】
経験の設定の一般的な提示
我々は、この一般的な方法論的フレームの詳細を下に提示し(
図4~13参照)、次いで、第1に、空間ナビゲーション作業における脳部位コミュニケーションに関与していることが知られている、シータリズムの機能的相関を捜査するための、及び第2に、臨床的影響力のある質問のままである、欠神発作がどのように開始して全身に広がるかなどの、自発的な全身性癲癇発作の神経及び代謝症状を探査するための、2つの個別修正された適用を例示する(
図14~20参照)。
【0122】
この実験的な研究において、我々は、後の長期記録セッションから、撮像のために動物を準備するための外科手順を分離した(
図4~8参照)。頭頂骨及び前頭骨の開頭(15mmAPx14mmML)により、硬膜を露出させた。頭蓋内定位電極を窓の端部上に埋め込み、定着し、それらのコネクタを頭部の後部に固定した。最後に、ポリマー人工器官を、頭蓋骨の代わりに封止した。高コントラストが、優れた超音波透明度、機械的抵抗性、並びに水及び気体に対する低透過性を提供する、厚さ125μmのポリメチルペンテンフィルムによって得られた。したがって、我々は、より広く及び深い視界で、皮質及び深層構造への観察的アクセスを達成し、従来の頭蓋薄層化手順における感度を改善した。
【0123】
プローブホルダのための取付点として使用される3つのナットを、鼻より上で頭頂間骨に対して横方向に封止し、動物に回復期間を与えた。超音波記録は、頭部に定着した調整可能な軽量ホルダ上に載置された小型超音波プローブ(半径18mm、高さ25mm)を使用した(18g、
図25~27参照)。デバイスを、プローブと人工頭蓋骨との間の接触ゲルにより、軽いイソフルラン麻酔の下、頭部に固定した。ホルダは、実験者と動物との間の直接的な相互作用なしで連続的な平面を探査するようにモータ付であり、安定性を最大にするために係止することができる。
【0124】
動物の準備
すべての動物は2010年のEuropean Communities Council Directive(2010/63/EU)に従って人道的取り扱いを受け、研究は組織化された地域の実験動物委員会の承認を得た。10~12週の成体Sprague Dawleyラット及び8~16週のGAERS(ストラスブール産のGenetic Absence Epilepsy Rat)に、外科的開頭及び超音波透明度の高い人工器官の埋込を行った。麻酔を、2%イソフルランによって誘導してケタミン/キシラジン(80/10mg/kg)によって維持し、体温を、暖房毛布(Bioseb、フランス)によって36.5度に維持した。矢状皮膚切開を、頭蓋骨を露出させるために後頭部にわたり行った。穿孔して硬膜から骨を緩やかに遠ざけることによって、頭頂骨及び前頭骨弁を取外した。開口により、ブレグマ+6からブレグマ-8mmまで、最大幅14mmで、嗅球と小脳との間の脳を露出した。ポリメチルペンテンのプラスチックシートを、アクリル樹脂(GC Unifast TRAD)によって所定の位置に封止し、残りのスペースを、生理食塩水で満たした。我々は、広い視界を提供する人工器官アプローチを選択し、薄層化骨アプローチと比較して、1~2ヵ月にわたり撮像条件を延長した。脳損傷を防ぐために、特別な取り扱いを、硬膜を断裂させないように行った。電極埋込を含む、外科手順は、概して4~6時間かかった。動物は迅速に回復し、伝統的な1週間の安静期間後、動物をデータ取得のために使用した。記録セッションの前にプローブを取り付けるために、ラットに、2%のイソフルランによって20~25分間軽く麻酔をかけ、目覚めた後30分間回復のために放置した。
【0125】
電極
手製の海馬内シータ電極束を、25μm絶縁タングステンワイヤで構成し、小型コネクタにはんだ付けした。4~6つの導体終端を、1mmの間隔を置いて配置し、長さ3mm、厚さ50μmの束を形成するように接着した。束を、ブレグマに対してmmでAP=-4、ML=+/-2.5、DV=-1.5~-4.5の定位座標の背側海馬に降下させた。海馬のシータリズムを、連続した海馬層の記録部位全体の位相反転、時間/周波数分解、並びに探査及びナビゲーションの期間との一致によって確認した。小脳より上に配置された2つの硬膜外スクリューを、参照及びグランドとして使用した。欠神癲癇記録は、ブレグマに対してmmでS1BF=AP-3、L+/-5、DV-1.75及びS1Lp=AP+1、L+/-6、DV-2である、一次体性感覚皮質に埋め込まれた4つの双極電極を使用した。
【0126】
動物の行動
迷路実験のための動物を、手術の前に訓練した。動物を、制御された水分制限プロトコル(通常重量の85%と90%との間の重量)の下で配置し、水分補充のために長い矩形の迷路のあちこちを走るように訓練した。高さ5cmの横壁を有した迷路(225×20cm)を、地面より上50cmに配置した。水滴を、迷路の2つの終端壁から出ている2つの小さい管を通して分配した(
図9~11参照)。動物が迷路を踏破するたびに、一滴分の水滴を、一組の電子制御された電磁弁を開くことによって、交互の水管において分配した。日々の訓練を、30分間続けた。ラットが、60回の踏破基準に到達して高速で確実に迷路を踏破するために約2セッションを必要としたが、少なくとももう2日間強化した。日々の記録セッションを、動物のやる気に応じて、20~30分間続けた。「バーストモード」における取得は超音波エコーからの画像再構成のために40秒を必要とするので、我々は、すべての走行を捕捉することができるというわけではなかった。取得した走行の数は、動物の能力及びセッション内の動物の自発的な走行のタイミングに応じ、すべての走行の1/4から1/2の範囲であった。ここで分析したデータを、8日にわたって行った12セッションにおいて記録した。癲癇の動物は、カバーを除去した普通の籠において記録した。
【0127】
小型超音波プローブ
超音波プローブは、15MHZの中心周波数で動作する128つのトランスデューサ(空間ピッチ0.11mm)で作られた直線アレイであり、撮像平面において典型的な100×100μm解像度を可能にする(Vermon、ツール、フランス)。このプローブは、8mmの高低焦点距離及び400μmの高低焦点幅を有した音響レンズを有する。活動部は、直径18.5mm及び長さ25mmの成形樹脂に組み込まれる。150cmのケーブル長及び12gのプローブ重量により、動物の移動の自由及び移動の快適さが確実になる。
【0128】
プローブホルダ
ホルダを、軽量性及び剛性のためにプレキシガラスを機械加工した2つの部分で作製した。第1に、可動部の並進を可能にする、U字形の側溝を有した基板を、3つのスクリューにより動物の頭部に取り付けた。第2に、2つの摺動側端部を呈する可動部を、基部に嵌入した。プローブを、可動部の中央開口を通して取り付けた。直線サーボモータ(Robotshop.com、VS-19)を、可動部に固定して基板に定着した。直線サーボモータを、USBポート経由で超音波スキャナに接続したカスタムメイドの電子機器によって制御した。ホルダ重量は18gであり、全体サイズは、幅41mm、長さ34mm、高さ16mmであった。
【0129】
超音波取得
脈管画像を、超高速複合ドップラーイメージング(Ultrafast Compound Doppler Imaging)技術を介して得た。プローブを、24GbRAMメモリを介した完全にプログラム可能なGPUに基づく超高速超音波スキャナ(Supersonic Imagine、エクサンプロヴァンス、フランス)によって駆動した。「バーストモード」において、我々は、12秒の総取得時間のあいだに500Hzのレートの、6000フレームの取得シーケンスを使用した。動物が水を飲み終えたときに、手動のトリガを与えて、次の走行のために所定の位置で向きを変えた。「連続モード」において、我々は、200ミリ秒のあいだに1kHzのフレームレートで200個の超音波画像を取得し、3秒毎に繰り返した。「バーストモード」及び「連続モード」の両方において、各々のフレームは、複合平面波(Compound Plane Wave)フレームであり、すなわち、ビーム形成された複雑な同相/直交画像のコヒーレント加算を、特定の傾斜角を有する一組の連続した平面波による媒質の照射から得た。この複合平面波撮像技術によって、非常に少ない超音波放射により視界全体における良好な品質の合焦を事後に再生成することが可能となる。フレームレート、解像度、及び撮像速度間のトレードオフを考慮に入れて、5つの5度離れた角度(-10度から+10度まで)の照射を使用した平面波複合(Plane Wave Compounding)を選択した。結果として、平面波伝送のパルス繰り返し周波数(PRF)は、8kHzに等しかった。組織クラッタから血液信号を判別するために、超高速複合ドップラー(Ultrafast Compound Doppler)フレームスタックを、時間次元に沿って4次バターワースフィルタ(カットオフ周波数50Hz)を使用してハイパスフィルタし、同相/直交フレームスタックにおける高周波数を通過させて、超高速パワードップラーf超音波(Power Doppler fUltrasound)画像を構築するために各々の画素におけるエネルギーを次いで計算した。籠又は迷路の壁などの固い表面にプローブを衝突させる動物によって生じる、アーチファクトエコーをいくつかのフレームが示すときに、記録に組み入れる前にそれらのフレームを廃棄した。
【0130】
EEG取得
頭蓋内電極信号を、高入力インピーダンス、1HzでのDC-カット、1000の利得、16チャンネルアンプによって取り込み、超音波スキャナからの同期信号と共に、20kHzでデジタル化した(Xcell、Dipsi、カンカル、フランス)。Labview(National Instruments、Austin、TX、米国)に基づくカスタムメイドのソフトウェアにより、記録ステージに向けられたカメラから映像を同時に取得した。
【0131】
分析
データを、カスタムメイドのソフトウェアによって、オフライン処理のために超音波及び映像-EEGから収集した。再生及び分析ソフトウェアを、Labviewによって実施した。信号を、モダリティ全体で同期した。
【0132】
動物の位置を、暗い背景上の明るい動物を識別する画像画素強度に関する閾値を適用することによって検出した。累積距離及び最大踏破速度を、0.5秒の時定数によって平滑化した軌道を使用して、計算した。
【0133】
超音波画像を、すべての非走行又は非発作時間に対する平均値によって正規化し、したがって、ベースラインに対する百分率で脈管エコーに相対的な変化をもたせた。パキノス(Paxinos)の地図を重畳し、主な標識として皮質を使用した。画像上の統計的有意性は、多数の画素上で複数の試験を行うように、ボンフェローニ(Bonferroni)補正を使用した。
【0134】
EEGを、海馬のシータのために通過帯域6~9Hzでフィルタした。シータの力を、特徴的な幅5秒の摺動窓上に統合されたEEG信号の2乗として、計算した。EEG電極が5Hzより上のレートで少なくとも3秒の棘徐波を示すときは癲癇発作を検出し、3秒の棘徐波間隔は連続的な発作を判別した。
【0135】
EEGとmfUS画素強度との間のピアソンのR相関係数の計算は、迷路実験に対するシータの力曲線に基づいた。癲癇実験では、画素強度は、発作状態の作用(1発作中、0発作外)と相関していた。統計的試験を、スチューデントのt分布を使用してピアソンのR係数に行った。
【0136】
すべての統計は、平均+/-標準偏差であった。
【0137】
第1の実験
我々は、第1に、エピソード記憶及び空間ナビゲーション作業における脳内部位間処理のために提案された主要な機構である海馬のシータリズムの期間中に脳に広がるネットワークが活動する方法を検討するために、直線迷路に沿って歩行するラットから記録をした。健康なSprague Dawleyラットが、長さ2.25m、幅0.2mの水報酬のための直線軌道上で走行した(n=8)。単一の撮像平面は、背側海馬、体性感覚部位を有する皮質、及び視床を含んだ。動物が迷路を踏破する際の循環動態を時間的に分解するために、我々は「バーストモード」超音波シーケンスを使用して(
図9~11参照)、12秒間500HzでfUS複合フレームを取得した。動物が向きを変えるときに取得をトリガし、40秒経過するデータの収集を後に続けた。予想したように、海馬のシータは、移動と一貫して関連していた。時間の経過とともに移動した距離は、紐なしの、手術のない、対照ラットよりも少なかった(56%~64%)(p<10
-6、
図21~24、表1及び表2参照)。更に、最高速度は、最初の15分間が僅かに遅いだけであり、その後に非有意な1%低減する違いがあった。一連の軌道踏破試行を分析するために、我々は、ラットが迷路の中間を踏破したときに各々の試行参照時間をセットすることによって、それらの試行を整列した。
【0138】
この実験では、単一画素の変動は-30%から+60%の範囲であった(
図9~11参照)が、脳部位平均は-10から+20%に達した(
図15参照)。予想したように、シータ帯域の海馬内EEG力は、正中線との交差と一致した、動物の最高速度でピークに達し、3.2+/-0.3秒の中央高さシータピーク幅を有した(n=8)。作業の間の機能的活性化を定量化するために、我々は、様々な時間差に対する、シータ帯域の力と画素強度との間のピアソンの相関係数のマップを計算した(
図14参照)。解剖学的部位全体の画素の平均化は、体性感覚皮質、背側視床、及び海馬における過潅流並びに腹側視床における低潅流を明らかにした。これらの相関は、f超音波信号の経時変化と一貫した(
図15参照)。充血は、海馬シータのピークの後0.7~1.5秒でピークに達し、作業が示唆する認知負荷に血流を適合する信号伝達鎖に対応した。我々が左右の半球皮質間に観察した偶発的な非対称は、機能的優位性と相関する可能性がある。全体として(
図16参照)、我々のデータは、組織的な視床抑制による、ナビゲーション作業前後の短い時間窓における海馬と広範囲にわたる皮質との組み合わせられた活性化のパターンを明らかにした。このパターンは、エピソード記憶動作に関係した海馬-皮質相互作用の間の視床抑制を説明した調節プロトコルの間の自発的な活性との関連で、静止した動物の観察と一致する。この移動作業において、背側視床は、腹側視床の抑制と同時に活性化した。
【0139】
第2の実験
第2の実験において、我々は、過剰同期発作活性の間の神経代謝共役の不均一な変化を検討するために、癲癇のラットの脳を走査した。自発的な全身性欠神発作を、ストラスブールのGenetic Absence Epilepsy Rats(GAERS、n=12)における両側の皮質の電極から記録した。我々は、発作に費やす相対時間及び発作継続期間を定量化して、EEGのみとEEG-mfUS条件との間の非有意な違いを見いだした(
図16及び
図17並びに表3参照)。超音波取得の「連続モード」を使用して(
図16参照)、その後2.8秒の処理が行われる1つの複合mfUS画像を生成するための200ミリ秒を交互に繰り返した。複数の撮像平面を、各々10分~15分間走査した。
【0140】
この実験では、我々はまた、-30%から+60%の範囲のそれぞれの画素変化を見いだした(
図12及び
図13参照)が、発作に関連する部位に対する平均化は、-10%から+20%の変化を明らかにした(
図18及び
図19参照)。我々は、前後軸に沿って構造全体にわたる相関の特有のパターンを見いだした。体性感覚皮質及び視床における過潅流が、尾状核被殻(CPu)における低潅流及び海馬における無変動と同時に存在した。欠神発作は新皮質を通じて全身に広がるが、脈管変化は空間区画を示し、前頭側の一次感覚皮質潅流における側性化が動物の半分[6/12のラット]で観察された。更に、mfUSの感度は、類似の両側皮質のEEGプロファイルを有した連続的な発作が特有の両側又は片側潅流経路を表示することができることを明らかにした(
図18参照)。発作に結びついた皮質及び視床部位の動態の比較(
図19参照)は、潅流パターンにおける同期振動を明らかにした。したがって、我々が解剖学的構造全体に観察した反応(
図20参照)は、皮質とCPuとの間の電子写真-循環動態反転共役を見いだしたEEG-fMRI実験に、及び発作開始前後の血流のゆらぎを指示する時間分解EEG-NIRS実験に対応した。これらの2つの技術の最高の時間及び空間解像度によって、mfUSは、自然に発生する発作における静的及び一時的な成分による、電子写真活性と潅流との間の皮質の脱共役を更に指し示した。
【0141】
結論
我々は、繰り返し長期間にわたり、覚醒、可動ラットの脳の電子写真活性と共に深さ全体にわたる脳の循環動態を捕捉する新規な実験器具を開発した。2つの実例において、我々は、この器具を認知及び病理学的質問に適用する方法を例示した。
【0142】
したがって、全体的な脳平衡を支配する代謝と神経電気活性との間の相互作用の観察に、有意な進展が見られた。現在の平面毎の撮像は、海馬-前頭葉前部皮質相互作用などの、質問を検討するために適切に配向された平面を選択しなければならないが、同期複数の平面取得が、将来のマトリックス型プローブにより可能になるであろう。同期複数の平面取得が開発されると、超音波撮像は、健康な被験体における複雑な行動の作業及び神経血管病変を含む、広範囲のプロトコルに適用可能になる。
【0143】
f超音波の潜在的可能性を顕在化するために、我々は、覚醒及び可動ラット(mfUS)に対する技術の拡大のための概念の実証をここで開発した。更に、このような条件で、我々は、EEGによる神経活性の同時監視と高い空間時間解像度及び感度での脳の循環動態の記録を組み合わせる可能性を例示する。我々は、一組の技術的進歩に頼る統合された実験設定を開発した:超音波透過性頭蓋骨人工器官、軽量超音波プローブ、モータ付頭部載置プローブホルダ、電極埋込手順、並びにこれらの多モード信号の同期取得、再生、及び分析のためのソフトウェア環境。