(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-07
(45)【発行日】2022-09-15
(54)【発明の名称】デュアルワイヤ溶接トーチのための一対の2ノズルアセンブリ受容器、および一対の2ノズルアセンブリ受容器を有するデュアルワイヤ溶接トーチ
(51)【国際特許分類】
B23K 9/173 20060101AFI20220908BHJP
B23K 9/29 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
B23K9/173 E
B23K9/29 E
B23K9/29 L
(21)【出願番号】P 2021507526
(86)(22)【出願日】2019-08-12
(86)【国際出願番号】 EP2019071545
(87)【国際公開番号】W WO2020035435
(87)【国際公開日】2020-02-20
【審査請求日】2021-04-01
(32)【優先日】2018-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504380611
【氏名又は名称】フロニウス・インテルナツィオナール・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】FRONIUS INTERNATIONAL GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【氏名又は名称】徳山 英浩
(74)【代理人】
【識別番号】100112911
【氏名又は名称】中野 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフガング・グロッサウアー
【審査官】後藤 泰輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-039172(JP,A)
【文献】国際公開第2008/016084(WO,A1)
【文献】特開2013-039624(JP,A)
【文献】特開2006-289381(JP,A)
【文献】特開2001-047245(JP,A)
【文献】英国特許出願公告第01450912(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 9/00-9/013,9/04,9/14-10/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2本の溶融溶接ワイヤ(2、3)用のデュアルワイヤ溶接トーチ(1)のための複数対のノズルアセンブリ受容器(14、15
)であって、
前記デュアルワイヤ溶接トーチ(1)は、
トーチ本体(4)と、
ホースパッケージ(6)のための接続部(5)と、
前記溶接ワイヤ(2、3)をガイドするためのコンタクトチューブ(9、10)を内部に配置可能なノズルアセンブリ(7、8)を収容するための共通のガスノズル(11)と、を有し、
それぞれの対のノズルアセンブリ受容器(14、15)の前記ノズルアセンブリ受容器(14、15)は、
それらが備えられた前記トーチ本体(4)
内のインタフェース(12、13)
内に
収容されて固定
されるためのインサートとして構成され、
前記ノズルアセンブリ受容器(14、15)は
、それぞれ、1つのノズルアセンブリ(7、8)を収容するための1つの開口部(16、17)を有し、それぞれの対の前記ノズルアセンブリ受容器(14、15)の前記開口部(16、17)はそれぞれ互いに0°から20°の間の異なる角度(α)で配置され、前記コンタクトチューブ(9、10)またはそこを走る前記溶接ワイヤ(2、3)の中心軸(a、b)が互いの間にこの角度(α)を有し、
冷却流体を搬送するための少なくとも1つの冷却チャネル(33)が、各ノズルアセンブリ受容器(14、15)内に配置される、
複数対のノズルアセンブリ受容器(14、15
)。
【請求項2】
前記複数対のノズルアセンブリ受容器(14、15)の前記ノズルアセンブリ受容器(14、15)の前記開口部(16、17)の前記角度(α)が、0°、4°、8°、および11.5°である、
請求項1に記載の複数対のノズルアセンブリ受容器(14、15
)。
【請求項3】
前記複数対のノズルアセンブリ受容器(14、15)のそれぞれの対において、ガスディスペンサ(23)は、前記ノズルアセンブリ(7、8)を収容するための2つの開口部(24、25)と、保護ガスを搬送するための複数の孔(26)とを備えており、前記ノズルアセンブリ(7、8)を収容するための前記開口部(24、25)は、前記それぞれの対のノズルアセンブリ受容器(14、15)の前記開口部(
16、17)の互いの角度(α)に応じて配向されている、
請求項1又は2に記載の複数対のノズルアセンブリ受容器(14、15
)。
【請求項4】
2本の溶融溶接ワイヤ(2、3)用のデュアルワイヤ溶接トーチ(1)であって、
ホースパッケージ(6)のための接続部(5)を備えたトーチ本体(4)を有し、
前記溶接ワイヤ(2、3)をガイドするためのコンタクトチューブ(9、10)を内部に配置可能なノズルアセンブリ(7、8)を
それぞれ収容するために2
つのノズルアセンブリ受容器(14、15)を有し、
共通のガスノズル(11)を有し、
冷却液供給用の接続部(18)と冷却液排出用の接続部(19)が前記トーチ本体(4)に配置されており、
前記トーチ本体(4)が、一対の2
つのノズルアセンブリ受容器(14、15)を収容して固定するための、2つのインタフェース(12、13)を有し、
それぞれの対の2
つのノズルアセンブリ受容器(14、15)の前記ノズルアセンブリ受容器(14、15)は、インサートとして構成され
、それぞれ、1つのノズルアセンブリ(7、8)を収容するための1つの開口部(16、17)を有し、
前記開口部(16、17)は互いに0°から20°の間の角度(α)で配置され、前記コンタクトチューブ(9、10)またはそこを走る前記溶接ワイヤ(2、3)の中心軸(a、b)が互いの間にこの角度(α)を有し、
前記2つのノズルアセンブリ受容器(14、15)を交換するだけで、前記コンタクトチューブ(9、10)の互いの間の前記角度(α)は変更可能であり、
前記ノズルアセンブリ受容器(14、15)は
、少なくとも1つの冷却チャネル(33)を有し、
少なくとも1つの冷却チャネル(33)は、それぞれのノズルアセンブリ受容器(14、15)内に提供され、前記ガスノズル(11)に配置された冷却チャネル(20)によって互いに接続される前記冷却液供給用の接続部(18)と、前記トーチ本体(4)中の前記冷却液を排出するための接続部(19)とを備える、
デュアルワイヤ溶接トーチ(1)。
【請求項5】
前記ノズルアセンブリ受容器(14、15)の前記開口部(16、17)
が角度二等分線に対称に、互いに角度(α)で配向される、
請求項4に記載の、デュアルワイヤ溶接トーチ(1)。
【請求項6】
複数対の2
つのノズルアセンブリ受容器(14、15)に
、それぞれ互いに異なる前記開口部(16、17)の角度(α)が提供さ
れる、
請求項4又は5に記載の、デュアルワイヤ溶接トーチ(1)。
【請求項7】
前記ノズルアセンブリ(7、8)がまた
、前記ノズルアセンブリ受容器(14、15)の冷却チャネル(33)に接続可能な少なくとも1つの冷却チャネル(34)を
それぞれ有する、
請求項4-6のいずれか1つに記載の、デュアルワイヤ溶接トーチ(1)。
【請求項8】
前記ノズルアセンブリ受容器(14、15)が、ねじ(21)を使って前記インタフェース(12、13)上に固定され
る、
請求項4-7のいずれか1つに記載の、デュアルワイヤ溶接トーチ(1)。
【請求項9】
前記ノズルアセンブリ(7、8)が、Oリング(22)によって前記ノズルアセンブリ受容器(14、15)に対してシールされる、
請求項4-8のいずれか1つに記載の、デュアルワイヤ溶接トーチ(1)。
【請求項10】
ガスディスペンサ(23)は、前記ノズルアセンブリ(7、8)を収容するための2つの開口部(24、25)と、保護ガスを搬送するための複数の孔(26)とを備えており、前記ノズルアセンブリ(7、8)を収容するための前記開口部(24、25)は、前記ノズルアセンブリ受容器(14、15)の前記開口部(
16、17)の互いの角度(α)に応じて配向されている、
請求項4-9のいずれか1つに記載の、デュアルワイヤ溶接トーチ(1)。
【請求項11】
工具なしで前記ガスノズル(11)を固定するための枢動可能な固定クリップ(27)が前記トーチ本体(4)に設けられている、
請求項4-10のいずれか1つに記載の、デュアルワイヤ溶接トーチ(1)。
【請求項12】
前記ガスノズル(11)は、ガスノズルベース本体(28)と、そこに取外し可能な方法で連結されるガスノズルマウスピース(29)とを有する、
請求項4-11のいずれか1つに記載の、デュアルワイヤ溶接トーチ(1)。
【請求項13】
前記ガスノズルマウスピース(29)が、ワイヤクリップ(30)を使った取外し可能な方法で前記ガスノズルベース本体(28)に連結される、
請求項12に記載の、デュアルワイヤ溶接トーチ(1)。
【請求項14】
前記ガスノズル(11)に面する前記トーチ本体(4)の端部(31)は実質的に長方形の断面を有し、前記ホースパッケージ(6)の前記接続部(5)に面する前記トーチ本体(4)の端部(32)は実質的に円形の断面を有する、
請求項4-13のいずれか1つに記載の、デュアルワイヤ溶接トーチ(1)。
【請求項15】
前記角度(α)は0°、4°、8°、および11.5°である、
請求項6に記載の、デュアルワイヤ溶接トーチ(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2本の溶融溶接ワイヤ(melting welding wires)用のデュアルワイヤ(dual-wire)溶接トーチのための一対の2ノズルアセンブリ受容器(receptacles)に関するものであって、トーチ本体を有し、ホースパッケージ(hose package)のための接続部を有し、いずれの場合も、溶接ワイヤをガイドするためのコンタクトチューブを内部に配置可能なノズルアセンブリを収容するために、共通のガスノズルを有する。
【0002】
さらに、本発明は、2本の溶融溶接ワイヤのためのデュアルワイヤ溶接トーチに関するものであって、トーチは、トーチ本体を有し、ホースパッケージのための接続部を有し、いずれの場合も、溶接ワイヤをガイドするためのコンタクトチューブを内部に配置可能なノズルアセンブリを収容するための2ノズルアセンブリ受容器を有し、共通のガスノズルを有する。
【0003】
本明細書では、2本の溶融溶接ワイヤのためのデュアルワイヤ溶接トーチに焦点が当てられる。本発明の範囲において、3ワイヤ式またはマルチワイヤ式の溶接トーチへの拡張が考えられる。
【背景技術】
【0004】
このタイプのデュアルワイヤまたはマルチワイヤ溶接トーチは、より高い溶接行程速度を達成し、それにより生産性を向上させるために、溶融出力を増大させた溶接作業に使用される。この場合、2本の電気的に独立した電気アークが、共通の溶融プール内で、2本の別々のコンタクトチューブを介してガイドされた2本の溶接ワイヤの間で燃焼する。同じ材料または異なる材料から作られてもよく、同じまたは異なる直径であってもよい2本の溶接ワイヤのフィードにより、より高い量の添加剤材料の、溶接される2つのワークピース間のギャップへの導入、または溶接されるワークピースへの適用が達成される。
【0005】
例えば、米国特許出願第2012/0055911 A1には、このタイプのデュアルワイヤ溶接トーチが記載されており、特にコンパクトな設計が特色となるはずである。
【0006】
通常、溶接ワイヤをガイドするためのコンタクトチューブは、平行に、または互いに所定の角度で固定的に配置されている。コンタクトチューブの相対的な位置を変えて溶接を行うべき場合は、それに対応してデザインされた溶接トーチを使用しなければならない。
【0007】
英国特許出願GB1 450 912 A、米国特許出願US2008/169336 A1、日本特許出願JP2006 289381 A、日本特許出願JP2010 036241 A、欧州特許出願EP1 077102 A2、または日本特許出願JP2013 039624 Aなどから様々なデュアルワイヤ溶接トーチが知られているが、これらの場合、2つの溶接ワイヤの互いに対する角度の変更は不可能であるか、または比較的大きな出費を伴ってはじめて可能となる。
【発明の概要】
【0008】
本発明の目的は、簡単かつ安価な方法で、コンタクトチューブまたは溶接ワイヤの互いに対する異なる位置合わせでの改造(retrofitting)を可能にする、上述の一対の2ノズルアセンブリ受容器、およびそのような一対の2ノズルアセンブリ受容器を有するデュアルワイヤ溶接トーチを作成することにある。既知のデュアルワイヤ溶接トーチの欠点は、回避されるか、または少なくとも低減されるはずである。
【0009】
本発明に係る目的は、上述した一対のノズルアセンブリ受容器の手段によって達成され、ここで、ノズルアセンブリ受容器は、それらが備えられたトーチ本体内のインタフェース内に収容されて固定されるためのインサートとして構成され、ノズルアセンブリ受容器は、いずれの場合も、それぞれ、ノズルアセンブリを収容するための開口部を有し、これらの開口部は互いに0°から20°の間の角度で配置され、コンタクトチューブまたはそこを走る溶接ワイヤの中心軸が互いにこの角度を有する。このように、様々なノズルアセンブリの対およびそれに属する可能性のあるガスディスペンサを購入して保管することにより、デュアルワイヤ溶接トーチの全ての構成要素を2回または複数回購入することなく、様々な溶接作業のためのデュアルワイヤ溶接トーチのセットが提供され得る。本発明によれば、インサートとして構成されたノズルアセンブリ受容器のみを交換することにより、コンタクトチューブの互いに異なる角度または溶接ワイヤの互いに異なる角度を達成することができる。この交換は、比較的迅速かつ容易に実施することができ、開口部の異なる角度を有する様々なノズルアセンブリ受容器対は非常に安価かつ容易に製造可能である。コンタクトチューブ又は溶接ワイヤが、互いに異なる角度を有する異なる溶接トーチを用意する必要がなくなる。
【0010】
好ましくは、冷却流体を搬送するためのチャネルが、各ノズルアセンブリ受容器内に配置されている。このようにして、ノズルアセンブリ受容器と、そこに配置されたノズルアセンブリおよびコンタクトチューブの最適な冷却が行われ、対応して熱を除去することができる。
【0011】
本発明の目的はまた、上述の一対の2ノズルアセンブリ受容器を有する上述のデュアルワイヤ溶接トーチによっても達成される。これにより達成可能な利点に関して、一対の2ノズルアセンブリ受容器の上術の説明が参照される。
【0012】
ノズルアセンブリ受容器の開口部は、都合よく、角度二等分線に対してある角度を有して互いに対称に配向されている。溶接トーチのこの従来の対称設計では、ノズルアセンブリ受容器は、同一に設計されて製造されてもよく、単にデュアルワイヤ溶接トーチのインタフェースで鏡面反転して配置されてもよい。
【0013】
本発明の特徴によれば、開口部に、互いに異なる角度を有する複数組のノズルアセンブリ受容器が提供され、ここで、角度は好ましくは0°、4°、8°、および11.5°である。このタイプの角度は、様々な溶接用途に特に適していることがわかっている。
【0014】
冷却液供給用の接続部と冷却液排出用の接続部がトーチ本体に配置されており、これらの接続部がガスノズルに配置された冷却チャネルによって互いに接続されている場合、ガスノズル、および挿入され得るデュアルワイヤ溶接トーチの構成部品の最適な冷却が実行されるかもしれない。冷却流体としては、特に冷却水または他の冷却液体を使用してもよい。デュアルワイヤ溶接トーチを冷却するために気体を使用することも同様に考えられる。
【0015】
ノズルアセンブリ受容器は、いずれの場合も少なくとも1つの冷却チャネルを有することが好ましく、この冷却チャネルは、トーチ本体内の、冷却液供給用の接続部と、冷却液排出用の接続部とに接続されてもよい。ノズルアセンブリ受容器もまた、このようにして冷却されてもよい。冷却流体の流れは、例えば、最初にガスノズルを冷却し、その後にノズルアセンブリ受容器を冷却するような方法で実行されてもよい。冷却流体の流れの順序は、対応する任意のものであってもよいし、それぞれの用途に適合したものであってもよい。冷却チャネルが実質的に直列に次々と接続されていることが重要である。ノズルアセンブリ受容器の冷却チャネルをシールするために、対応するOリング等が配置されることが好ましい。
【0016】
ノズルアセンブリがまた、ノズルアセンブリ受容器の冷却チャネルに接続可能な少なくとも1つの冷却チャネルを有する場合、ノズルアセンブリ、およびそこに配置されたコンタクトチューブもある程度は冷却されることが可能で、熱をより良く除去することができる。ノズルアセンブリ、ノズルアセンブリ受容器、およびガスノズルの冷却チャネルは、所望どおりに、互いに直列に接続されており、ここで、冷却流体がデュアルワイヤ溶接トーチのより敏感な構成要素を最初に通って流れるように注意が払われる。
【0017】
ノズルアセンブリ受容器は、ねじを使った簡単な方法でトーチ本体のインタフェースに固定することができる。これにより、シンプルで安価な設計オプションが構成される。また、コンタクトチューブまたは溶接ワイヤの間が異なる角度となるようにデュアルワイヤ溶接トーチを改造するために、対応するように構成されたねじが、比較的迅速に開かれてもよく、再び閉じられてもよい。工具類なしで操作できる例えばクイックロック機構など、他の接続タイプも当然考えられる。
【0018】
有利には、ノズルアセンブリは、Oリングによってノズルアセンブリ受容器に対してシールされている。ノズルアセンブリおよびコンタクトチューブの内部を通常流れる保護ガスの漏洩は、このタイプのOリングによって防ぐことができる。Oリングは、溶接トーチで通常発生する温度に耐える適切な弾性材料から製造される。
【0019】
本発明のさらなる特徴によれば、ガスディスペンサは、ノズルアセンブリを収容するための2つの開口部と、保護ガスを搬送するための複数の孔とを備えており、ノズルアセンブリを収容するための開口部は、ノズルアセンブリ受容器の開口部の互いの角度に応じて配向されている。このタイプのガスディスペンサは、保護ガスを最適に分配するために使用され、ガスノズルの口で均一な保護ガスの流れが得られ、それにより、保護ガスの流れは、デュアルワイヤ溶接トーチの電気アークを取り囲む。一対の2ノズルアセンブリ受容器のように、コンパクトチューブまたは溶接ワイヤの互いに対する所望の角度ごとに別個のガスディスペンサが必要であり、したがって、このガスディスペンサは、互いに対するノズルアセンブリの異なる角度を、それに対応して考慮に入れる。
【0020】
ガスディスペンサは、適切な耐熱プラスチック材料から形成されることが好ましい。
【0021】
工具なしでガスノズルを固定するための枢動可能な固定クリップがトーチ本体に設けられている場合、ガスノズルをトーチ本体から特に簡単かつ迅速に取り外すことができ、ノズルアセンブリ受容器、ノズルアセンブリ、コンパクトチューブ、ガスディスペンサなどの部品を簡単に交換することが可能となる。ロックされた位置では、固定クリップは、トーチ本体からのガスノズルの望ましくない離脱を防止することができるように、対応してラッチされるはずである。
【0022】
ガスノズルは、2つのピースで構成され、ガスノズルのベース本体とガスノズルのマウスピースが取外し可能な方法でそこに連結されてもよい。このようにすれば、電気アークに対面する部分であり、ガスノズルにおいて摩耗が比較的大きい部分であるガスノズルマウスピースを、より頻繁に交換することができ、ガスノズルのベース本体をより長い期間使用することができる。さらに、ガスノズルの2ピース構造により、個々の部品を異なる材料で作成することが可能となる。ガスノズルの冷却は、対応する冷却チャネルによって実行されてもよく、冷却チャネルはガスノズルのベース本体とガスノズルマウスピースとの間の分離面内に配置され、対応するように組み立てられたガスノズルの場合には、両方の部品を冷却することができる。
【0023】
この場合、ガスノズルマウスピースは、ワイヤクリップによってガスノズルのベース本体に着脱可能に連結されることが好ましい。この手段のおかげで、通常、より早く消耗するガスノズルマウスピースの交換を迅速かつ簡単に実行することができる。
【0024】
ガスノズルに面するトーチ本体の端部は実質的に長方形の断面を有し、ホースパッケージの接続部に面するトーチ本体の端部は実質的に円形の断面を有する。トーチ本体のこの設計は、デュアルワイヤ溶接トーチの動作に関して有利である。デュアルワイヤ溶接トーチの自由端の長方形の断面は、デュアルワイヤ溶接トーチの設計に応じて、溶接中に2つのコンタクトチューブが互いに隣り合って配置されるか、または1つがもう片方の後ろに前後配置されるように、横方向または直立するように配置されていてもよい。このようにして、ワークピース間の広いギャップを橋渡しするための広い溶接シーム(weld seams)を形成してもよいし、より狭く、かつ深い溶接ワイヤを形成してもよい。
【0025】
トーチ本体は、例えばエポキシ樹脂から形成されていてもよい。この材料は、溶接トーチを製造するのに特に適していることが証明されており、十分な耐熱性を有している。当然、他の断熱材料も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本発明は、添付の図面に基づいてより詳細に説明される。
【0027】
【
図1】
図1は、本発明に係るデュアルワイヤ溶接トーチの一実施形態を示す。
【
図2】
図2は、対応するホースパッケージとの連結用に設計された
図1のデュアルワイヤ溶接トーチの端面図である。
【
図3】
図3は、
図1のデュアルワイヤ溶接トーチの分解図である。
【
図4】
図4は、
図1のデュアルワイヤ溶接トーチの前端の一部を通る断面図である。
【
図5】
図5は、デュアルワイヤ溶接トーチの前端の断面図である。
【
図6a】
図6aは、
図1のデュアルワイヤ溶接トーチの発明に係るノズルアセンブリ受容器およびガスディスペンサの様々な実施形態を示す。
【
図6b】
図6bは、
図1のデュアルワイヤ溶接トーチの発明に係るノズルアセンブリ受容器およびガスディスペンサの様々な実施形態を示す。
【
図6c】
図6cは、
図1のデュアルワイヤ溶接トーチの発明に係るノズルアセンブリ受容器およびガスディスペンサの様々な実施形態を示す。
【
図6d】
図6dは、
図1のデュアルワイヤ溶接トーチの発明に係るノズルアセンブリ受容器およびガスディスペンサの様々な実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明に係るデュアルワイヤ溶接トーチ1の一実施形態を
図1に示す。デュアルワイヤ溶接トーチ1は、溶接ワイヤ2、3、および保護ガスおよび可能な制御ライン(図示せず)のための対応する電気供給ラインを含む、ホースパッケージ6のための接続部5を有するトーチ本体4を含む。ホースパッケージ6に面したトーチ本体4の端部32のための接続部5とホースパッケージ6との間の接続は、通常、対応するプラグ接続によって行われ、この接続は、特に迅速かつ簡単に再接続および再離脱することができる。デュアルワイヤ溶接トーチ1は、他方の端部31にガスノズル11を有しており、このガスノズル11は、枢動可能な固定クリップ27によってトーチ本体4に固定されることができる。デュアルワイヤ溶接トーチ1は、2本の溶接ワイヤ2、3を導くための2本のコンパクトチューブ9、10を含んでいる。このようなデュアルワイヤ溶接トーチ1の助けにより、より高い溶融出力で溶接物を製造することができる。図示された例示的な実施形態において、ガスノズル11は、2つのピースで構成され、ガスノズルベース本体28とガスノズルマウスピース29とからなり、これらはワイヤクリップ30を使って互いに接続されている。
【0029】
図2は、対応するホースパッケージ6への接続用に設計された
図1のデュアルワイヤ溶接トーチ1の端部32を示す図である。このデュアルワイヤ溶接トーチの図では、実質的に円形のデュアルワイヤ溶接トーチ1の端部32と、ホースパッケージ6(
図1参照)に接続するための接続部5を見ることができる。接続部5には、溶接ワイヤ2、3を運ぶコンタクトチューブ9、10に溶接電流を伝達するための電気接続部、冷却液の供給ラインと排出ライン、制御ライン、保護ガスを伝達するための接続部が含まれている。
【0030】
個々の構成要素は、
図3のデュアルワイヤ溶接トーチ1の分解図から、よりよく見ることができる。この図では、課題のデュアルワイヤ溶接トーチ1の重要な構成要素を見ることができる。従って、ガスノズルに対面する、好ましくは長方形の断面を有する端部31では、トーチ本体4は、2ノズルアセンブリ受容器14、15を収容するための2つのインタフェース12、13を有しており、これらのノズルアセンブリ受容器は、インサートとして交換可能に構成されている。ノズルアセンブリ受容器14、15は、例えばねじ21によってインタフェース12、13に接続されてもよい。ノズルアセンブリ受容器14、15はそれぞれ、ノズルアセンブリ7、8を収容するための開口部16、17を有しており、これらの開口部16、17は、互いに0°から20°の間の角度αにおいて配置されている。ノズルアセンブリ7、8とそれに接続可能なコンタクトチューブ9、10がノズルアセンブリ受容器14、15の対応する開口部16、17内に配置されている場合、コンタクトチューブ9、10、またはそこを走る溶接ワイヤ2、3の中心軸a、bは、この角度αを形成する(
図4参照)。2ノズルアセンブリ受容器14、15の開口部16、17の角度が異なるように構成され得る非対称設計も考えられるが、両方のノズルアセンブリ受容器14、15の開口部16、17が角度二等分線に対して対称的に配向される対称配置が、従来型である。その結果、ノズルアセンブリ受容器14、15は、理論的には同一のものとして製造することができ、単にインタフェース12、13に対して鏡面反転して配置されているだけでもよい。対称的な配置では、ノズルアセンブリ受容器14、15の両方の開口部16、17は、角度二等分線から半分の角度α/2を有する。
【0031】
このように、一対のノズルアセンブリ受容器14、15を単に交換するだけで、コンタクトチューブ9、10またはそこを走る溶接ワイヤ2、3の中心軸が異なる角度αを互いに有する新規なデュアルワイヤ溶接トーチ1を作成することができる。従来からの角度は、0°、4°、8°、および11.5°である。
【0032】
冷却流体の供給のための接続部18と冷却流体の排水のための接続部19の両方が、好ましくは長方形の断面を有するトーチ本体4の端部31に配置されることが好ましい。接続部18、19は、この場合、実質的に互いに上下に位置し、かつ、インタフェース12、13の側方に配置されている。したがって、好ましくは長方形の断面を有するトーチ本体4の端部31は、2つのインタフェース12、13と、冷却流体の接続部18、19のための領域とを有する。ガスノズル11内に配置された冷却チャネル20は、接続部18、19を使って冷却流体を供給され、対応して互いに着脱可能に接続されている。この目的のために、接続部18、19は、対応するシールおよび/または流体ストッパとして知られているもの(図示せず)を有しており、接続部が取り外されるとき、すなわち、ガスノズル11がトーチ本体4から取り外されるときの、冷却流体の流出が防止される。ガスノズル11の最適な冷却は、このようにして実行されてもよい。加えて、ノズルアセンブリ受容器14、15および場合によってはノズルアセンブリ7、8が冷却チャネル33、34を有する場合には、これらの構成要素もまた、最適に冷却され得る(これに関しては
図5を参照)。
【0033】
既に前述したように、ガスノズル11は、2つのピースで構成され、ガスノズルマウスピース29とガスノズルベース本体28とから成り、それらはワイヤクリップ30を介して互いに着脱可能に連結されてもよい。このようにすると、消耗がより早いガスノズルマウスピース29は、ガスノズルベース本体28とは別に交換することができる。ガスノズル11は、枢動可能な固定クリップ27によって工具を用いずにトーチ本体4に連結されることが好ましい。固定クリップ27は、この場合、回転軸Xについて枢動可能なように、好ましくは長方形断面を有するトーチ本体の端部31に固定される。固定のために、ガスノズル11は、両側に対応する突起35を有しており、対応してこの突起35は、固定クリップ27を固定位置に保持する、または囲う。
【0034】
流れる保護ガスおよび流れ得る冷却流体の両方のための所望のシール気密性を達成するために、Oリング22が、様々な構成要素、特にノズルアセンブリ7、8に配置されている。
【0035】
保護ガスを最適に分散させるために、ノズルアセンブリ7、8を収容するための2つの開口部24、25を有するガスディスペンサ23を提供してもよい。好ましくは適切な耐熱性プラスチック材料から形成されたガスディスペンサ23は、保護ガスの分散のための対応する孔26を有する。2つの開口部24、25は、ノズルアセンブリ受容器14、15に対応して互いに角度αで配向されている。したがって、ガスディスペンサ23を使用するときは、これもまた提供されてもよく、適切な場合は、様々な角度αで固定されてもよい。
【0036】
図4は、デュアルワイヤ溶接トーチ1の前端部31の一部を通る断面図である。このデュアルワイヤ溶接トーチ1の端部の断面図では、ある角度で配置されたノズルアセンブリ受容器14、15の開口部16、17が対応して見えるようになっている。
【0037】
図5は、デュアルワイヤ溶接トーチ1の前端部31の断面図である。この断面図において、ノズルアセンブリ受容器14内にあり得る冷却チャネル33およびノズルアセンブリ7内にあり得る冷却チャネル34が見える。好ましい設計の一態様によれば、ノズルアセンブリ受容器14内の冷却チャネル33は、好ましくは対向して配置され、本質的に穴(bore)として構成されたフィード36およびリターン37を有する。フィード36とリターン37は、ノズルアセンブリ受容器14の開口部16内の周方向チャネル38によって互いに接続されている。ノズルアセンブリ受容器14の開口部16内に配置されたノズルアセンブリ7は、冷却流体を搬送するためのこの周方向チャネル38に対応する溝39を有し、溝27がノズルアセンブリ7内の冷却チャネル34を形成している。ノズルアセンブリ受容器15とノズルアセンブリ8は、同様に構成されている。冷却流体は、例えば接続部18からガスノズル11内の冷却チャネル20を通り、その後、ノズルアセンブリ受容器15及びノズルアセンブリ8内の冷却チャネル33を通り、その後、ノズルアセンブリ受容器14及びノズルアセンブリ7内の冷却チャネル33を通り、最後に冷却流体はトーチ本体4の端部の接続部19を通って戻る。したがって、ここでは、好ましくは、最も高温の構成要素が最初に冷却され、その後、さらなる構成要素が冷却されるというように、直列的に冷却されると言える。多くの場合、最も高温の構成要素は、溶接方向から見て前方にあるノズルアセンブリ受容器である。用途によっては、当然ガスノズル11も最も高温の構成要素であり得る。
【0038】
図6A~
図6Dは、本発明に係るノズルアセンブリ受容器14、15およびガスディスペンサ23の様々な実施形態を示し、ノズルアセンブリ受容器14、15の開口部16、17の互いに対する様々な角度αが示されている。ここでは、デュアルワイヤ溶接トーチ1の様々な設計が図示されている。
図6Aの変形例では、ノズルアセンブリ受容器14、15およびガスディスペンサ23は、2つのコンタクトチューブ9、10が互いに平行に配置されるように、すなわち0°の角度を形成するように構成されている。
図6Bの変形例では、コンタクトチューブ9、10またはその中の溶接ワイヤ2、3が4°の角度を形成するように配置されている。
図6Cの変形例では、コンタクトチューブ9、10はα=8°の角度を形成し、
図6Dの変形例ではα=11.5°の角度を形成する。しかし、ノズルアセンブリ受容器14、15およびあり得るガスディスペンサ23の対応する製造および成形によって、さらなる角度が実現されてもよく、これは、溶接トーチ1を使用して実行される特定の溶接方法に有利であるかもしれない。