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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-07
(45)【発行日】2022-09-15
(54)【発明の名称】掴み工具
(51)【国際特許分類】
   H02G 1/04 20060101AFI20220908BHJP
【FI】
H02G1/04
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021527769
(86)(22)【出願日】2020-06-26
(86)【国際出願番号】 JP2020025195
(87)【国際公開番号】W WO2020262604
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2021-12-20
(31)【優先権主張番号】P 2019119214
(32)【優先日】2019-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591083772
【氏名又は名称】株式会社永木精機
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】高田 潤祐
【審査官】木村 励
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/050171(WO,A1)
【文献】登録実用新案第3180307(JP,U)
【文献】特開2004-242477(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/04
B25B 5/04
B25B 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と、
前記本体部に回転可能に支持されたリンク部材と、
前記本体部に設けられた固定側掴み部と、
前記固定側掴み部と対向するように前記リンク部材に設けられ、前記リンク部材の回転により前記固定側掴み部に対して近接又は離間する方向に移動可能な可動側掴み部と、
を備え、
前記固定側掴み部と前記可動側掴み部とにより、線状体を掴んで保持する掴み工具であって、
操作に応じて回転又はスライドすることで、前記可動側掴み部を前記固定側掴み部から離間させる方向の前記リンク部材の回転を規制するように前記リンク部材を直接的又は間接的に押圧することが可能な第1押圧部材と、
前記第1押圧部材が前記リンク部材を直接的又は間接的に押圧している状態で、操作に応じて、前記リンク部材を直接的又は間接的に更に押圧することが可能な第2押圧部材と、
を備え、
前記リンク部材に直接接触して当該リンク部材を押す部材が、前記第2押圧部材の動作によって追加的に進出するストロークは、前記第1押圧部材の回転又はスライドによって進出するストロークよりも小さいことを特徴とする掴み工具。
【請求項2】
請求項1に記載の掴み工具であって、
回転操作可能な操作部を備え、
前記第2押圧部材は、偏心カムであり、
前記第1押圧部材は、前記偏心カムに回転可能に支持される押圧カムであり、
前記操作部の回転操作により、前記押圧カムが前記操作部と一体的に回転して、前記リンク部材を直接的又は間接的に押圧し、
前記操作部を更に回転操作することにより、回転する前記偏心カムにより移動する前記押圧カムが、前記リンク部材を直接的又は間接的に更に押圧することを特徴とする掴み工具。
【請求項3】
請求項2に記載の掴み工具であって、
前記操作部が前記押圧カムに対して相対回転しないように保持する保持部を備え、
前記保持部は、前記押圧カムが前記リンク部材を直接又は間接に押圧するのに伴って発生する押圧反力が所定の大きさを上回ると、当該保持を解除することを特徴とする掴み工具。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載の掴み工具であって、
前記第1押圧部材は、中間部材を介して、前記リンク部材を間接的に押圧し、
前記中間部材と前記第1押圧部材との間に、前記第1押圧部材の押圧力を利用して前記中間部材と前記第1押圧部材とを機械的に結合する噛合い機構が設けられていることを特徴とする掴み工具。
【請求項5】
請求項1から3までの何れか一項に記載の掴み工具であって、
前記第1押圧部材は、前記リンク部材を直接的に押圧し、
前記リンク部材と前記第1押圧部材との間に、前記第1押圧部材の押圧力を利用して前記リンク部材と前記第1押圧部材とを機械的に結合する噛合い機構が設けられていることを特徴とする掴み工具。
【請求項6】
請求項1に記載の掴み工具であって、
前記第1押圧部材は、前記本体部に対して直線状に移動可能であるベース部材に配置されており、
ワンウェイクラッチを備え、
前記ワンウェイクラッチは、前記第1押圧部材が前記リンク部材に近づく方向の前記ベース部材の移動を許容し、反対の方向の移動を阻止するように構成されていることを特徴とする掴み工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掴み工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、線状体を掴んだ状態で保持することで、この線状体に取り付けられる掴み工具が知られている。特許文献1は、この種の掴み工具としての掴線器を開示する。
【0003】
特許文献1の掴線器は、固定側掴線部が一体に形成された掴線器本体と、作動部と、可動側掴線部と、を備える。作動部は、掴線器本体に一端側で回動可能に取り付けられている。可動側掴線部は、作動部の一方への回動により、固定側掴線部との間で線状体を掴持する。そして、掴線器は、このような線状体の掴持が解除されることを防止するために、作動部の他方への回動を規制する作動規制部を更に備える。作動規制部は、規制の実行時、固定側掴線部及び可動側掴線部の取り付け面側に進退移動操作可能に設けられて、進出移動操作により先端を作動部に当接させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-242477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の構成において、作動規制部は、作動部の回動面内で進退移動操作可能に設けられたネジ軸を有し、ネジ軸の進出移動操作によりネジ軸先端が前記作動部に当接して作動部の他方向への回動を規制するように構成されている。従って、作動規制部を用いて作動部の回転の規制を行うときには、ネジ軸の回転操作を行う必要がある。そのため、掴線器を線状体に取り付ける作業を行う際、ネジ軸を回転操作することは非常に手間が掛かり、改善の余地があった。
【0006】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、簡単な操作でリンク部材の回転を規制することができる掴み工具を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0008】
本発明の観点によれば、以下の構成の掴み工具が提供される。即ち、この掴み工具は、本体部と、リンク部材と、固定側掴み部と、可動側掴み部と、を備える。前記リンク部材は、前記本体部に回転可能に支持される。前記固定側掴み部は、前記本体部に設けられる。前記可動側掴み部は、前記固定側掴み部と対向するように前記リンク部材に設けられ、前記リンク部材の回転により前記固定側掴み部に対して近接又は離間する方向に移動可能である。前記掴み工具は、前記固定側掴み部と前記可動側掴み部とにより、線状体を掴んで保持する。前記掴み工具は、第1押圧部材と、第2押圧部材と、を備える。前記第1押圧部材は、操作に応じて回転又はスライドすることで、前記可動側掴み部を前記固定側掴み部から離間させる方向の前記リンク部材の回転を規制するように前記リンク部材を直接的又は間接的に押圧することが可能である。前記第2押圧部材は、前記第1押圧部材が前記リンク部材を直接的又は間接的に押圧している状態で、操作に応じて、前記リンク部材を直接的又は間接的に更に押圧することが可能である。前記リンク部材に直接接触して当該リンク部材を押す部材が、前記第2押圧部材の動作によって追加的に進出するストロークは、前記第1押圧部材の回転又はスライドによって進出するストロークよりも小さい。
【0009】
これにより、掴線器が線状体に取り付けられるとき、この掴線器が線状体から外れないように、規制部の簡単な操作でリンク部材の回転を規制することができる。また、先ず第1押圧部材によってリンク部材を素早く押圧し、続いて第2押圧部材によってリンク部材を短いストロークで(強力に)押圧することで、上記の規制を短時間でスムーズに実現することができる。
【0010】
前記の掴み工具においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、この掴み工具は、回転操作可能な操作部を備える。前記第2押圧部材は、偏心カムである。前記第1押圧部材は、前記偏心カムに回転可能に支持される押圧カムである。前記操作部の回転操作により、前記押圧カムが前記操作部と一体的に回転して、前記リンク部材を直接的又は間接的に押圧する。前記操作部を更に回転操作することにより、回転する前記偏心カムにより移動する前記押圧カムが、前記リンク部材を直接的又は間接的に更に押圧する。
【0011】
これにより、操作部を回転させるワンアクションによって、2つの押圧部材によるリンク部材の回転規制を実現することができる。
【0012】
前記の掴み工具においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、この掴み工具は、前記操作部が前記押圧カムに対して相対回転しないように保持する保持部を備える。前記保持部は、前記押圧カムが前記リンク部材を直接又は間接に押圧するのに伴って発生する押圧反力が所定の大きさを上回ると、当該保持を解除する。
【0013】
これにより、第1押圧部材(押圧カム)の回転による押圧と、第2押圧部材による追加的な押圧とを、簡単な構成で自動的に切り換えることができる。
【0014】
前記の掴み工具においては、以下の構成とすることができる。即ち、前記第1押圧部材は、中間部材を介して、前記リンク部材を間接的に押圧する。前記中間部材と前記第1押圧部材との間に、前記第1押圧部材の押圧力を利用して前記中間部材と前記第1押圧部材とを機械的に結合する噛合い機構が設けられている。
【0015】
これにより、既存の掴線器に適用し易い構成を実現できる。また、押圧に伴って、規制を解除する方向に第1押圧部材が動かないように自動的にロックすることができる。
【0016】
前記の掴み工具においては、以下の構成とすることもできる。即ち、前記第1押圧部材は、前記リンク部材を直接的に押圧する。前記リンク部材と前記第1押圧部材との間に、前記第1押圧部材の押圧力を利用して前記リンク部材と前記第1押圧部材とを機械的に結合する噛合い機構が設けられている。
【0017】
これにより、部品点数の少ない簡素な構成を実現できる。また、押圧に伴って、規制を解除する方向に第1押圧部材が動かないように自動的にロックすることができる。
【0018】
前記の掴み工具においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記第1押圧部材は、前記本体部に対して直線状に移動可能であるベース部材に配置されている。前記掴み工具は、ワンウェイクラッチを備える。前記ワンウェイクラッチは、前記第1押圧部材が前記リンク部材に近づく方向の前記ベース部材の移動を許容し、反対の方向の移動を阻止するように構成されている。
【0019】
これにより、ベース部材の直線的な移動により、第1押圧部材によってリンク部材を素早く押圧することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1実施形態に係る掴線器の斜視図。
図2】掴線器における規制部の分解斜視図。
図3】線状体と垂直な水平方向で掴線器を見た図。
図4図3の状態から連結部材を引っ張り、線状体を掴んだ様子を示す図。
図5図4の状態から操作レバーを回転させて、カム板によりストッパ部材を介してリンク板を押している様子を示す図。
図6図5の状態から操作レバーを更に回転させて、カム板がストッパ部材を強力に押圧する様子を示す図。
図7】第1実施形態の変形例を示す図。
図8】本発明の第2実施形態に係る掴線器を、線状体と垂直な水平方向で見た図。
図9図8の一部拡大図。
図10】掴線器において規制部による規制が行われている状態を示す左側面図。
図11図10の一部拡大正面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。先ず、図1から図3までを参照して、本発明の第1実施形態を説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る掴線器1の斜視図である。図2は、掴線器1における規制部13の分解斜視図である。図3は、線状体3と垂直な水平方向で掴線器1を見た図である。
【0022】
図1に示す掴線器(掴み工具)1は、線状体(電線、ワイヤ等)3を掴むことができる工具である。掴線器1は、例えば、線状体3に関する工事が行われる場合に当該線状体3を引っ張る装置(張線装置)に適用される。この装置の使用時に、掴線器1は、線状体3を掴んで、当該線状体3に取り付けられる。
【0023】
例えば電線工事において、線状体3としての電線は水平方向に張られており、掴線器1は、この線状体3を上下方向で挟み込むために用いられる。以下では、線状体3の長手方向を前後方向と呼び、前後方向及び上下方向の何れにも垂直な方向を左右方向と呼ぶことがある。ただし、この呼び方は便宜的なものであって、各部材の位置関係等を限定するものではない。前後方向、上下方向及び左右方向は、図1から図3まで等に矢印によって示されている。
【0024】
掴線器1は、本体部5と、リンク板(リンク部材)7と、固定側掴線部(固定側掴み部)9と、可動側掴線部(可動側掴み部)11と、規制部13と、を備える。
【0025】
本体部5は、掴線器1を構成する各種の部品が取り付けられるベースとなる部材である。本体部5には、固定側掴線部9が一体的に形成されている。
【0026】
固定側掴線部9は、前後方向に細長く形成されている。図1等に示すように、固定側掴線部9の下面には、線状体3の上部を収容可能な、前後方向に細長く形成された第1溝部25が形成されている。第1溝部25は、下側を開放させるように形成されている。
【0027】
本体部5には、リンク板7が、第1軸線21を中心に回転可能に支持されている。リンク板7は、3角形の板状に形成されている。リンク板7において、第1軸線21に対して前後方向一側に少し離れた位置には、可動側掴線部11が、第2軸線22を中心として回転可能に支持されている。
【0028】
可動側掴線部11は、前後方向に細長い3角形状に形成されている。図1に示すように、可動側掴線部11の上面には、線状体3の下部を収容可能な、前後方向に細長く形成された第2溝部29が形成されている。第2溝部29は、上側を開放させるように形成されている。
【0029】
可動側掴線部11は、固定側掴線部9より下方に配置されている。可動側掴線部11は、第2溝部29の開放部分が、固定側掴線部9の第1溝部25の開放部分と上下方向で対面するように配置されている。
【0030】
リンク板7において、第1軸線21に対して下方に離れた位置には、細長く形成された連結部材17が連結されている。連結部材17の長手方向一端部が、リンク板7の下端部に、第3軸線23を中心に回転可能に支持されている。連結部材17は、その長手方向を概ね前後方向に向けて配置されている。
【0031】
本体部5には、連結部材17を案内するためのガイド部15が一体的に設けられている。図3に示すように、ガイド部15は、固定側掴線部9において第1軸線21から遠い側の端部から、前後方向で当該第1軸線21から遠ざかる側に、かつ斜め下方に延長するように形成されている。図1に示すように、ガイド部15には差込孔が形成されている。連結部材17は、この差込孔に差し込まれた状態で、当該差込孔の案内によって概ね前後方向に移動することができる。
【0032】
この構成で、連結部材17を長手方向に移動させると、リンク板7が第1軸線21を中心として回転する。これに伴って、リンク板7に連結される可動側掴線部11が、固定側掴線部9に対して近接又は離間するように上下方向に移動する。可動側掴線部11が固定側掴線部9に対して近接するように移動することで、固定側掴線部9と可動側掴線部11とによって線状体3を掴んで保持することができる。
【0033】
以下では、リンク板7の回転方向のうち、可動側掴線部11を固定側掴線部9に近づける方向を「掴み方向」と呼び、反対の方向を「離し方向」と呼ぶことがある。図3において、掴み方向は反時計回り方向であり、離し方向は時計回り方向である。
【0034】
固定側掴線部9と可動側掴線部11とにより上下方向で挟まれた空間を考えた場合に、この空間の左右方向一側は、本体部5によって塞がれている。また、当該空間の左右方向反対側は、線状体3を出し入れするための開放部となっている。
【0035】
この開放部を閉鎖できるように、板状に形成されたカバー31が本体部5に取り付けられている。カバー31は、固定側掴線部9に、回転軸33を中心として回転可能に支持されている。本実施形態では、回転軸33はボルトの軸部として構成されているが、他の構成としても良い。
【0036】
カバー31には、第1操作孔35と、ガイド孔37と、がそれぞれ貫通状に形成されている。第1操作孔35には、工具等を挿入することができる。ガイド孔37は、円弧状の長孔として形成されている。このガイド孔37には、本体部5に固定されたガイド部材39が差し込まれている。本実施形態では、ガイド部材39はボルトの軸部として構成されているが、他の構成としても良い。ガイド孔37及びガイド部材39は、カバー31の回転可能な角度範囲を定めるものである。
【0037】
この構成で、例えば図1及び図3の状態で第1操作孔35に工具等を差し込み、カバー31を下方に押すことで、図4に示すように当該カバー31を下側へ回転させることができる。従って、固定側掴線部9と可動側掴線部11との間に線状体3が入っている場合に、この線状体3をカバー31によって覆うことができる。
【0038】
本体部5には、支持プレート(支持部材)19が設けられている。図2に示すように、支持プレート19は、本体部5において第1軸線21の近傍の位置に、例えば溶接により固定されている。支持プレート19は、本体部5との接続箇所から、リンク板7から遠ざかる側に、かつ斜め下方に延長するように形成されている。
【0039】
規制部13は、支持プレート19に配置されている。規制部13は、固定側掴線部9と可動側掴線部11とによって線状体3をクランプした状態で、可動側掴線部11の移動を規制することにより、当該クランプの緩みを防止する。図1等に示すように、規制部13は、リンク板7を挟んで、前後方向で連結部材17と反対側に配置されている。
【0040】
規制部13は、図2に示すように、案内溝部材51と、偏心軸(第2押圧部材)53と、カム板(第1押圧部材)43と、ストッパ部材(中間部材)73と、操作レバー55と、を備える。
【0041】
案内溝部材51は、支持プレート19に固定されている。この固定には、図略の締結部材(例えば、ボルト)が用いられる。案内溝部材51には、後述のストッパ部材73のスライド方向を案内するための直線状のスライド溝87が形成されている。
【0042】
偏心軸53は、支持プレート19に取り付けられ、回転可能に支持されている。偏心軸53は、小径の第1軸部61と、大径の第2軸部62と、を有する。第1軸部61と第2軸部62は、その軸方向一端部同士が結合され、互いに一体的に形成されている。第1軸部61と第2軸部62とは、互いに平行であるが、その軸心の間にズレが生じるように配置されている。
【0043】
図2に示すように、支持プレート19及び案内溝部材51には、支持孔67,68がそれぞれ貫通状に形成されている。第1軸部61は、この支持孔67,68に回転可能に挿入されている。本実施形態において、第1軸部61はネジ軸として形成されている。従って、図2に示すようにナット69に第1軸部61を捩じ込むことで、偏心軸53を支持プレート19及び案内溝部材51に取り付けることができる。このように偏心軸53を取り付けた状態で、第2軸部62は、案内溝部材51に隣接して位置する。第1軸部61の軸線、及び、第2軸部62の軸線は、何れも、リンク板7の回転中心である第1軸線21と平行である。
【0044】
カム板43は、基部75と、カム部77と、を備える。基部75とカム部77とは、互いに一体的に形成されている。
【0045】
基部75には、貫通状の軸孔が形成されている。この軸孔に偏心軸53の第2軸部62が挿入されることにより、基部75が回転可能に支持される。これにより、カム板43は、第2軸部62を中心として回転することができる。
【0046】
カム部77は、板状のカムとして形成されている。カム部77は偏心カムとして構成され、この外周部は、角度(図3での反時計回りを正とする)が増加するのに伴って回転中心から遠ざかるような略円弧状に形成されている。カム部77の外周部には、後述のストッパ部材73が対面するように配置される。この構成で、カム板43を時計回りに回転させるのに伴って、カム部77の外周部がストッパ部材73に接触して、回転中心から離れる方向にストッパ部材73を押すことができる。
【0047】
カム部77の外周面には、図2に示すように、複数の凹凸からなる第1爪部81が設けられている。この第1爪部81は、ストッパ部材73に形成された第2爪部82に噛み合うことができる。
【0048】
ストッパ部材73は、可動側掴線部11の移動を規制するために、リンク板7の縁部(被接触部)41に直接的に接触する部材である。ストッパ部材73は、カム部77の外周部と、リンク板7と、の間に挟まれるように配置される。ストッパ部材73は、図2に示すように、細長く形成された板状部材であるスライドベース85の長手方向一端部に固定されている。スライドベース85は、案内溝部材51に形成された前述のスライド溝87に嵌め込まれ、スライド溝87の長手方向に移動可能である。ストッパ部材73は、スライドベース85がスライド溝87に沿ってスライドすることで、リンク板7の縁部41に対して進出/退避することができる。
【0049】
ストッパ部材73には、複数の凹凸からなる第2爪部82が設けられている。この第2爪部82と、カム板43の第1爪部81とにより、両者を機械的に結合させることが可能な噛合い機構が構成されている。
【0050】
カム板43の基部75には、突起部89が一体的に形成されている。突起部89には、回転規制部材としての規制ピン90が固定されている。この規制ピン90が案内溝部材51の適宜の部位に接触することで、カム板43の回転ストロークの一側が規制される。
【0051】
操作レバー55は、細長い板状部材である。操作レバー55の長手方向一端部にはボス部91が形成され、このボス部91には軸孔が貫通状に形成されている。この軸孔には、図2に示すように、偏心軸53の第2軸部62に形成されたフランジ部63が回転不能に固定される。固定方法としては、本実施形態では圧入としているが、キー結合等の他の適宜の方法を用いても良い。
【0052】
操作レバー55の長手方向他端部には、工具等を挿入可能な第2操作孔97が設けられている。掴線器1の使用者は、第2操作孔97に挿入された工具等を用いて、操作レバー55を、偏心軸53を中心として回転操作することができる。
【0053】
操作レバー55のボス部91は、カム板43の基部75と軸方向で対面するように配置される。操作レバー55のボス部91には、1対(2つ)のボールプランジャ(保持部)93が配置されている。図2に示すように、カム板43の基部75において、それぞれのボールプランジャ93と対応する位置に凹部84が形成されている。この凹部84には、ボールプランジャ93においてバネ力で押される図略の鋼球が嵌まり込むことができる。
【0054】
この構成で、偏心軸53を中心として操作レバー55を図4の状態から時計回りに回転させていく場合を考える。以下では、操作レバー55及びカム板43の回転方向に関して、図4の時計回り方向を「規制方向」と呼び、反時計回り方向を「規制解除方向」と呼ぶことがある。
【0055】
操作レバー55を規制方向に回転させていく回転ストロークの当初では、操作レバー55は、カム板43に対して相対回転しないようにボールプランジャ93によって保持されている。従って、カム板43は操作レバー55と結合され、一体的に回転する。ストッパ部材73は、回転するカム板43のカム部77によって押されて、リンク板7に近づく向きにスライドする。やがて、ストッパ部材73は、リンク板7の縁部41に接触して押圧する。
【0056】
カム部77の外周面に形成される第1爪部81は、ノコギリ波の信号波形のような形状となっている。従って、ストッパ部材73がカム部77に接触した状態でカム板43が規制方向に回転しようとするときには、第1爪部81が第2爪部82に対してあまり引っ掛からないが、カム板43が規制解除方向に回転しようとするときには、第1爪部81が第2爪部82に対して強く引っ掛かる。この爪部によるワンウェイクラッチ性により、カム板43が不意に規制解除側に回転してしまうのを防止することができる。
【0057】
上述したとおり、操作レバー55は偏心軸53に固定されている。従って、操作レバー55と一体的に偏心軸53が(第1軸部61を中心に)回転するので、操作レバー55の支軸である第2軸部62の位置が、小さな円弧を描くように変化する。従って、カム板43は、図4の状態から図5の状態となるまで回転する過程で、その回転中心を、偏心軸53の偏心量を半径とする小さな円弧状の軌跡を描くように同時に移動させている。
【0058】
図5には、カム板43がストッパ部材73を介してリンク板7を押している状態が示されている。カム板43がリンク板7を押す反作用として、カム板43には押圧反力が作用する。この押圧反力は、カム部77による押圧力が増大する(言い換えれば、カム板43が規制方向に回転する)のに伴って増大する。押圧反力が所定の大きさを上回ると、ボールプランジャ93の鋼球がカム板43の凹部84から抜けるので、カム板43に対する操作レバー55の結合が解除される。結合が解除される操作レバー55の位置は一定ではないが、今回の説明では、操作レバー55が図5に示す第2操作位置P2となった時点で、ボールプランジャ93による保持が解除されたとする。その後は、カム板43は規制方向に回転しなくなり、操作レバー55だけが単独で規制方向に回転するようになる。
【0059】
操作レバー55が第2操作位置P2を超えて操作され、カム板43に対して操作レバー55が保持されなくなった後も、偏心軸53の第2軸部62の位置は、操作レバー55の回転に伴って引き続き変化する。基部75とストッパ部材73との間でカム部77が突っ張った状態となっているので、第2軸部62の軸心の変化によって、カム部77がストッパ部材73を介してリンク板7を更に押圧する。図5には、この押圧に伴ってカム板43が小さく移動した後の位置が鎖線で示されている。このとき、第2軸部62は、実質的にカム(偏心カム)として機能している。操作レバー55の長さに対して偏心量は十分に小さいので、梃子の原理により、このときの押圧力は極めて強力である。
【0060】
このときの大きな押圧力/押圧反力により、第1爪部81と第2爪部82とが機械的に強く結合する。これにより、例えばストッパ部材73に多少の振動が加わった場合でも爪の噛合いが解除されないので、カム板43が規制解除方向に回転しないように実質的にロックすることができる。
【0061】
このように、規制部13は、リンク板7の第1軸線21まわりの回転について第1動作及び第2動作を行うことができるように構成されている。第1動作は、カム板43の回転によるカム作用でストッパ部材73を押し出して、ストッパ部材73をリンク板7の縁部41に、ある程度の力で押圧するものである。第2動作は、第1動作が行われた状態で、偏心軸53のカム作用により、カム板43及びストッパ部材73を介して縁部41を強力に押圧するものである。
【0062】
ここで、リンク板7に直接接触して当該リンク板7を押す部材であるストッパ部材73に着目する。第2動作(偏心軸53の回転)に伴ってストッパ部材73が追加的に進出するストローク(図5の状態から図6の状態までのストローク)は、それまでの第1動作(カム板43の回転)によってストッパ部材73が進出するストローク(図4の状態から図5の状態までのストローク)よりも小さくなっている。更に言えば、第1動作と第2動作とで、操作レバー55の単位操作角度あたりでストッパ部材73が進出するストロークが異なっている。
【0063】
次に、このように構成される掴線器1を線状体3に取り付ける作業と、取り外す作業と、について説明する。
【0064】
まず、規制部13の操作レバー55を必要に応じて回転させて、図3に示す第1操作位置P1付近に位置させる。この状態では、規制部13が機能せず、離し方向のリンク板7の回転が許容されている。こうして、可動側掴線部11を固定側掴線部9から十分に離れた状態にする。
【0065】
続いて、掴線器1を線状体3の所定部位に運び、固定側掴線部9と可動側掴線部11との間に線状体3を通す。言い換えれば、固定側掴線部9の第1溝部25に線状体3の上部を収容して、掴線器1を線状体3の所定部位に吊り下げられた状態にする。
【0066】
この状態で、カバー31の第1操作孔35に工具等を差し込んで、カバー31を、回転軸33を中心として下方に回転させる。カバー31が回転すると、固定側掴線部9と可動側掴線部11との間の開放部分にカバー31が被さる。これにより、掴線器1が線状体3から脱落することを防止することができる。
【0067】
次に、連結部材17に、図3に示す白抜き矢印方向に引っ張る力を加える。例えば、掴線器1が張線装置に適用されている場合には、連結部材17に形成される連結孔99が、当該張線装置に連結される。張線装置が操作されると、連結部材17の連結孔99に白抜き矢印方向の力が加わることになる。
【0068】
このように連結部材17が引っ張られると、当該連結部材17に連結されたリンク板7が、掴み方向に回転する。このリンク板7の回転により、図4に示すように、線状体3が固定側掴線部9と可動側掴線部11とにより挟み込まれる。
【0069】
連結部材17を引っ張る力が失われない限り、掴線器1が線状体3を固定側掴線部9と可動側掴線部11とにより掴んで保持した状態が維持される。この結果、線状体3に対する掴線器1の機械的な固定が実現される。
【0070】
上述のとおり、連結部材17が図3の白抜き矢印方向に引っ張られた状態が保たれるのであれば、掴線器1が線状体3に強固に取り付けられた状態が保持される。しかし、何らかの理由により上述の引張り力が十分に得られない状態が生じると、リンク板7が離し方向に回転して、掴線器1が線状体3から予期せず外れる可能性がある。
【0071】
この点、本実施形態では、所定の操作を行うことで、掴線器1が線状体3から外れないように、リンク板7の離し方向への回転を規制部13により規制することができる。具体的には、規制部13の操作レバー55を、図4の第1操作位置P1から規制方向に回転させる。このときの動作については先に詳細に説明したので、ここでは簡単に説明する。
【0072】
当初はカム板43と操作レバー55とがボールプランジャ93によって結合されているので、操作レバー55の回転に伴って、カム板43が、偏心軸53の第2軸部62を中心として回転する(これと同時に、第2軸部62の位置も、操作レバー55の回転に応じて移動する)。ストッパ部材73は、カム部77に押されてスライドし、やがてリンク板7の縁部41に接触して押圧する。これにより、リンク板7の離し方向への回転が規制される。また、第1爪部81が第2爪部82と係合するので、ストッパ部材73に対するカム板43の回転位置が保持される。
【0073】
操作レバー55の操作位置が適宜の位置(例えば、図5の第2操作位置P2付近)になると、ボールプランジャ93の保持力を上述の押圧反力が上回るので、ボールプランジャ93による操作レバー55とカム板43との結合状態が解除される。これ以降、操作レバー55は単独で回転する。操作レバー55の回転に伴って第2軸部62の位置が引き続き移動するので、カム板43のカム部77は、ストッパ部材73を介してリンク板7の縁部41を強力に押圧する。図5には、第2軸部62の移動に伴ってカム板43が移動した後の位置が鎖線で示されている。この押圧の結果、第1爪部81と第2爪部82との機械的な結合が強固になるので、カム板43が規制解除方向に予期せず回転することは確実に防止される。
【0074】
操作レバー55の回転は、当該操作レバー55が単独で回転する状態になってから規制方向に更に十分な角度だけ回転させた位置(例えば、図6に示す第3操作位置P3)で停止させれば良い。以上で規制のための操作が完了し、この状態では、掴線器1が線状体3に強固に取り付けられた状態を確実に維持することができる。
【0075】
掴線器1を線状体3から取り外す場合の作業は、上記の手順を逆に行えば良いので、説明を省略する。なお、第3操作位置P3から規制解除方向に操作レバー55を回転させていくと、例えば第2操作位置P2付近で、ボールプランジャ93によって操作レバー55に対してカム板43が結合され、その後はカム板43が操作レバー55に対して一体的に回転するようになる。
【0076】
このように、本実施形態では、ストッパ部材73をリンク板7の縁部41に、ある程度の力で押圧する第1動作、及び、カム板43及びストッパ部材73によって縁部41を強力に押圧してロックする第2動作を、操作レバー55を回転させるワンアクションで実現することができる。これにより、操作の容易化を実現することができる。
【0077】
掴線器1の構成は、図7に示すように、ストッパ部材73とほぼ同じ大きさの突起41xをリンク板7に形成して、この突起41xにカム部77が直接接触するように変更することもできる。この場合、カム板43が、リンク板7に直接接触して当該リンク板7を押す部材となる。第2爪部82は、当該突起41xに形成される。突起41xは、リンク板7の縁部41の役割を実質的に有している。
【0078】
以上に説明したように、本実施形態の掴線器1は、本体部5と、リンク板7と、固定側掴線部9と、可動側掴線部11と、を備える。リンク板7は、本体部5に回転可能に支持される。固定側掴線部9は、本体部5に設けられる。可動側掴線部11は、固定側掴線部9と対向するようにリンク板7に設けられる。可動側掴線部11は、リンク板7の回転により固定側掴線部9に対して近接又は離間する方向に移動可能である。固定側掴線部9と可動側掴線部11とにより、線状体3を掴んで保持する。掴線器1は、カム板43と、偏心軸53と、を備える。カム板43は、操作レバー55の操作に応じて、可動側掴線部11を固定側掴線部9から離間させる方向のリンク板7の回転を規制するように、リンク板7を間接的に(即ち、ストッパ部材73を介して)押圧することが可能である。偏心軸53は、カム板43がリンク板7を上記のように間接的に押圧している状態で、操作レバー55の操作に応じて、リンク板7を間接的に更に押圧することが可能である。ストッパ部材73(即ち、リンク板7に直接接触して当該リンク板7を押す部材)が、偏心軸53の動作によって追加的に進出するストロークは、カム板43の回転によってストッパ部材73が進出するストロークよりも小さい
【0079】
これにより、掴線器1が線状体3に取り付けられるとき、この掴線器1が線状体3から外れないように、規制部13の簡単な操作でリンク板7の回転を規制することができる。また、先ずカム板43によってリンク板7を素早く押圧し、続いて偏心軸53によってリンク板7を短いストロークで(強力に)押圧することで、上記の規制を短時間でスムーズに実現することができる。
【0080】
本実施形態の掴線器1は、回転操作可能な操作レバー55を備える。偏心軸53は、偏心カムとして機能する。カム板43は、偏心軸53に回転可能に支持される押圧カムである。操作レバー55の回転操作により、カム板43が操作レバー55と一体的に回転して、リンク板7を間接的に(即ち、ストッパ部材73を介して)押圧する。操作レバー55を更に回転操作することにより、回転する偏心軸53により移動するカム板43が、リンク板7を間接的に更に押圧する。
【0081】
これにより、操作レバー55を回転させるワンアクションによって、カム板43及び偏心軸53によるリンク板7の回転規制を実現することができる。
【0082】
本実施形態の掴線器1は、操作レバー55がカム板43に対して相対回転しないように保持するボールプランジャ93を備える。ボールプランジャ93は、カム板43がリンク板7を間接的に(即ち、ストッパ部材73を介して)押圧するのに伴って発生する押圧反力が所定の大きさを上回ると、保持を解除する。
【0083】
これにより、カム板43の回転による押圧と、偏心軸53による追加的な押圧とを、簡単な構成で自動的に切り換えることができる。
【0084】
本実施形態の掴線器1において、カム板43は、ストッパ部材73を介して、リンク板7を間接的に押圧する。ストッパ部材73とカム板43との間に、カム板43の押圧力を利用してストッパ部材73とカム板43とを機械的に結合する、第1爪部81と第2爪部82からなる噛合い機構が設けられている。
【0085】
これにより、図7のようにリンク板7を複雑な形状とする必要がないので、既存の構成の掴線器1に本発明を適用することが容易になる。また、押圧に伴って、規制を解除する方向にカム板43が動かないように自動的にロックすることができる。
【0086】
ただし、図7に示すように、カム板43が、リンク板7を直接的に押圧する構成とすることもできる。この場合、リンク板7とカム板43との間に、カム板43の押圧力を利用してリンク板7とカム板43とを機械的に結合する、第1爪部81と第2爪部82からなる噛合い機構が設けられている。
【0087】
この構成では、部品点数の少ない簡素な構成を実現できる。また、この構成においても、押圧に伴って、規制を解除する方向にカム板43が動かないように自動的にロックすることができる。
【0088】
次に、図8から図11までを参照して、本発明の第2実施形態を説明する。図8は、本発明の第2実施形態に係る掴線器1xを、線状体3と垂直な水平方向で見た図である。図9は、図8の一部拡大図である。なお、本実施形態の説明においては、前述の実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0089】
本実施形態の掴線器1xは、リンク板7の回転を規制するための構成に関して、第1実施形態の掴線器1と相違する。具体的に説明すると、本実施形態の掴線器1xの規制部13は、ベース部材101と、ワンウェイクラッチ103と、押圧片(第1押圧部材)105と、ネジ軸(第2押圧部材)107と、操作摘み109と、を備える。
【0090】
ベース部材101は、公知のスライド機構を介して支持プレート19に取り付けられている。このベース部材101は、本体部5に対し、上述の第1実施形態のストッパ部材73のスライド方向と概ね同様の方向に、直線的に移動可能となっている。
【0091】
ベース部材101には、押圧片(第1押圧部材)105が配置されている。押圧片105は、リンク板7の縁部41に直接的に接触して押圧することができる。押圧片105は、ベース部材101に対して捩じ込まれたネジ軸107の先端に取り付けられている。ネジ軸107は、その軸方向がベース部材101のスライド方向と一致するように設けられている。押圧片105にはバネ106が取り付けられている。これにより、押圧片105によるリンク板7への押圧を安定させることができる。
【0092】
ネジ軸107の端部には、操作摘み109が固定されている。操作摘み109を回転させる操作により、押圧片105をネジ送り移動させることができる。
【0093】
スライド機構の部分には、ワンウェイクラッチ103が配置されている。ワンウェイクラッチ103は、押圧片105がリンク板7の縁部41に対して近接する方向に移動することを許容し、かつ、押圧片105が縁部41に対して離間する方向に移動することを阻止するように構成されている。
【0094】
この構成で、リンク板7の規制を行うには、先ず、ベース部材101を下から押すことによりスライド移動させる。ベース部材101の代わりに、操作摘み109を下から押しても良い。この結果、押圧片105がリンク板7の縁部41に接触し、弱い力で押圧した状態となる。ベース部材101の部分にワンウェイクラッチ103が取り付けられているので、押圧片105がリンク板7を押圧するのに伴う押圧反力が押圧片105に加わっても、ベース部材101が戻ることはない。この状態で操作摘み109を回転させることにより、押圧片105がネジ送りされる。この結果、押圧片105が、リンク板7の縁部41を強力に押圧する。
【0095】
本実施形態では、リンク板7の回転を規制するための押圧片105の移動ストロークのうち大部分を、ベース部材101のスライド移動によって実現している。従って、例えば押圧片105の移動ストロークの全部をネジ送りによって行う構成と比較して、操作摘み109の回転量を大幅に少なくでき、作業を短時間でスムーズに行うことができる。
【0096】
ワンウェイクラッチ103は、所定の操作によって、押圧片105が縁部41から離れる方向の移動を許容できる状態とすることもできる。リンク板7の離し方向への回転を許容したい場合は、ワンウェイクラッチ103を上記の状態とすれば良い。
【0097】
以上に説明したように、本実施形態の掴線器(掴み工具)1xにおいて、押圧片105は、本体部5に対して直線状に移動可能であるベース部材101に配置されている。掴線器1xは、ワンウェイクラッチ103を備える。ワンウェイクラッチ103は、押圧片105がリンク板7に近づく方向のベース部材101の移動を許容し、反対の方向の移動を阻止するように構成されている。
【0098】
これにより、ベース部材101の直線的な移動により、押圧片105によってリンク板7を素早く押圧することができる。
【0099】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0100】
ボールプランジャ93の数は、2つとすることに限定されず、例えば1つ又は3つ以上とすることができる。
【0101】
操作レバー55(又は偏心軸53)の回転位置を分かり易く示す目印が、例えば偏心軸53に付されても良い。
【0102】
スライド溝87は、案内溝部材51の代わりに、支持プレート19に形成しても良い。この場合、案内溝部材51を省略することができる。
【0103】
第2実施形態で、押圧片105の進出を、ワンウェイクラッチ103及びネジ軸107の組合せに代えて、例えばワンウェイクラッチ103とカムの組合せにより実現することもできる。
【0104】
固定側掴線部9は、本体部5と一体的に構成される代わりに、本体部5とは別の部品として構成されても良い。
【0105】
線状体3は、電線及びワイヤに限定されず、他の長尺状の部材とすることもできる。
【0106】
上述の教示を考慮すれば、本発明が多くの変更形態及び変形形態をとり得ることは明らかである。従って、本発明が、添付の特許請求の範囲内において、本明細書に記載された以外の方法で実施され得ることを理解されたい。
【符号の説明】
【0107】
1,1x 掴線器(掴み工具)
3 線状体
5 本体部
7 リンク板(リンク部材)
9 固定側掴線部(固定側掴み部)
11 可動側掴線部(可動側掴み部)
43 カム板(第1押圧部材、押圧カム)
53 偏心軸(第2押圧部材、偏心カム)
55 操作レバー(操作部)
73 ストッパ部材(中間部材)
93 ボールプランジャ(保持部)
101 ベース部材
103 ワンウェイクラッチ
105 押圧片(第1押圧部材)
107 ネジ軸(第2押圧部材)
109 操作摘み(操作部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11