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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-07
(45)【発行日】2022-09-15
(54)【発明の名称】疲労管理システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/10 20120101AFI20220908BHJP
   G06Q 50/08 20120101ALI20220908BHJP
【FI】
G06Q50/10
G06Q50/08
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021550740
(86)(22)【出願日】2019-09-30
(86)【国際出願番号】 JP2019038470
(87)【国際公開番号】W WO2021064776
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2021-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 啓太
(72)【発明者】
【氏名】星 暁生
(72)【発明者】
【氏名】須田 峻一
(72)【発明者】
【氏名】兼澤 寛
(72)【発明者】
【氏名】椎名 健
【審査官】大野 朋也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/172277(WO,A1)
【文献】特開2019-049419(JP,A)
【文献】特開2007-206007(JP,A)
【文献】特開2014-163047(JP,A)
【文献】特開2018-031610(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0332153(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械に取り付けられたセンサの出力に基づいて前記建設機械の複数の部位に作用する応力を算出する応力演算部と、
前記応力に基づいて各々の前記部位の累積損傷度を算出する損傷度演算部と、
前記累積損傷度に重み付けがされた疲労インデックス値を各々の前記部位に対して算出するインデックス値演算部と、
を備えることを特徴とする疲労管理システム。
【請求項2】
前記センサは、前記建設機械に作用する力を検出する力センサと、前記建設機械の姿勢を検出する姿勢センサとを含むことを特徴とする請求項1に記載の疲労管理システム。
【請求項3】
異なる複数の前記重み付けがされた疲労インデックス値または前記重み付けのための数値の中から前記部位ごとに一つの前記疲労インデックス値または前記重み付けのための数値を選択するための条件が記憶された記憶部を備え、
前記インデックス値演算部は、前記部位ごとに前記条件に応じた一つの前記疲労インデックス値または前記重み付けのための数値を選択することを特徴とする請求項1に記載の疲労管理システム。
【請求項4】
前記記憶部は、前記条件として各々の前記部位に作用する実際の応力と前記応力演算部によって算出される前記応力との一致度が記憶されるとともに、該一致度のしきい値と、前記累積損傷度の増加にともなって前記疲労インデックス値を増加させる第1のマップと、前記累積損傷度の増加にともなって前記疲労インデックス値を前記第1のマップよりも早期に増加させる第2のマップと、が記憶され、
前記インデックス値演算部は、各々の前記部位について、前記一致度が前記しきい値以上である場合に前記第1のマップを選択し、前記一致度が前記しきい値よりも低い場合に前記第2のマップを選択することを特徴とする請求項3に記載の疲労管理システム。
【請求項5】
前記建設機械の各々の前記部位と前記疲労インデックス値とを関連付けた画像を生成する画像生成部と、前記画像を表示する画像表示装置と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の疲労管理システム。
【請求項6】
複数の前記建設機械とデータ通信を行うサーバと、該サーバに接続された記憶装置と、前記サーバとデータ通信を行う情報端末と、を備え、
前記情報端末は、前記疲労インデックス値の時系列データに基づいて疲労度を比較する比較部を有することを特徴とする請求項1に記載の疲労管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、建設機械の疲労管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から作業内容および作業環境と、稼働中のショベルとの組み合わせの不適合(ミスマッチ)の検出を支援するショベル支援装置に関する発明が知られている(下記特許文献1を参照)。この従来の発明は、稼働中のショベルが、現在の作業内容や作業環境に適合しているか否かを精度よく判別することが可能となるショベル支援装置を提供することを目的としている。
【0003】
上記従来の発明の一観点によると、画像を表示する表示画面と、前記表示画面に画像を表示する処理装置とを有するショベル支援装置が提供される(同文献、請求項1、第0005段落等を参照)。前記処理装置は、評価対象のショベルの部品に蓄積された累積損傷度の評価値の時刻歴を取得する。また、前記処理装置は、累積損傷度の前記評価値を、評価対象の前記ショベルがミスマッチ状態であるか否かを判定するための、稼働時間とともに増加する判定閾値と比較する。そして、前記処理装置は、前記評価値が前記判定閾値を超えている場合に、評価対象の前記ショベルがミスマッチ状態であることを通知する。
【0004】
前記累積損傷度の算出には、記憶装置に格納されている現時点までの稼働情報または累積損傷度等が利用される。累積損傷度は、たとえば、部品の各評価箇所に加わる応力波形を、累積疲労損傷則に基づいて解析することにより求めることができる(同文献、第0024段落等を参照)。具体的には、累積損傷度は、たとえば、以下のように求められている(同文献、第0064段落-第0076段落等を参照)。
【0005】
まず、ショベルによって作業中に繰り返される一連の動作の少なくとも1周期分の測定値を、アタッチメントの姿勢センサ、アタッチメントの荷重センサ、および旋回角センサから取得する。次に、一連の動作の1周期内で、解析すべき複数の時刻(以下、「解析時刻」という。)を抽出する。次に、解析時刻の各々において、解析モデルを用い、ブーム、アーム等の部品の各々に加わっている応力の分布を算出する。
【0006】
次に、各部品の評価点ごとに、1周期の動作期間中に蓄積される損傷度である単周期損傷度を算出する。次に、管理対象のショベルの機体ごと、および部品ごとに、機体の稼働開始時点から現時点までの単周期損傷度の総和である累積損傷度を算出することで、部品の累積損傷度の分布を算出する。次に、求められた累積損傷度が、機体番号等の情報と関連付けられて、記憶装置に記憶される。このようにして、ショベルの機体ごと、および部品の評価箇所ごとに、累積損傷度が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2016-003462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記従来のショベル支援装置において用いられている累積損傷度は、経験則である線形累積損傷則に基づくものであり、1に達したときに物体が疲労破壊に至ると仮定するものである。しかし、累積損傷度は本質的にばらつきを含む値であり、実際には、累積損傷度が1に達する前に物体が疲労破壊に至ったり、累積損傷度が1を超えても物体が疲労破壊に至らなかったりする。そのため、前記従来のショベル支援装置のように、累積損傷度をそのまま用いると、ショベルの部位ごとの点検タイミングを適切に設定することができない。
【0009】
本開示は、建設機械の部位ごとの疲労を従来よりも精度よく管理することが可能な疲労管理システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一態様は、建設機械の一部に取り付けられたセンサの出力に基づいて前記建設機械の複数の部位に作用する応力を算出する応力演算部と、前記応力に基づいて各々の前記部位の累積損傷度を算出する損傷度演算部と、前記累積損傷度に重み付けがされた疲労インデックス値を各々の前記部位に対して算出するインデックス値演算部と、を備えることを特徴とする疲労管理システムである。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、疲労インデックス値を用いることで、建設機械の部位ごとの疲労を従来よりも精度よく管理することが可能な疲労管理システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示に係る疲労管理システムの適用例を示すブロック図。
図2】本開示に係る疲労管理システムの一実施形態を示すブロック図。
図3図2の疲労管理システムの管理対象の一例である油圧ショベルの側面図。
図4図3の油圧ショベルの油圧駆動装置の構成を示すブロック図。
図5A】作業機械の各部位の累積損傷度と疲労インデックス値の関係の一例。
図5B】作業機械の各部位の累積損傷度と疲労インデックス値の関係の一例。
図5C】作業機械の各部位の累積損傷度と疲労インデックス値の関係の一例。
図5D】作業機械の各部位の累積損傷度と疲労インデックス値の関係の一例。
図6A図2の疲労管理システムの疲労インデックス値算出の一例を示すフロー図。
図6B図6Aの疲労インデックス値を算出する処理の一例を示すフロー図。
図6C図6Aの疲労インデックス値を算出する処理の一例を示すフロー図。
図7A図2に示す疲労管理システムのモニタ画像の一例を示す画像図。
図7B図2に示す疲労管理システムのモニタ画像の一例を示す画像図。
図7C図2に示す疲労管理システムのモニタ画像の一例を示す画像図。
図8】建設機械の疲労インデックス値の時系列データの一例を示すグラフ。
図9】複数の建設機械の疲労インデックス値の時系列データの一例を示すグラフ。
図10】本開示の疲労管理システムの管理対象の一例であるダンプトラックの側面図。
図11】疲労管理システムのモニタ画像の一例を示す画像図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本開示に係る疲労管理システムの一実施形態を説明する。
【0014】
図1は、本開示に係る疲労管理システムの適用例を示すブロック図である。図2は、本開示に係る疲労管理システムの一実施形態を示すブロック図である。図3は、建設機械の一例である油圧ショベル10の側面図である。図4は、図3に示す油圧ショベル10の油圧駆動装置17の構成の一例を示すブロック図である。
【0015】
詳細については後述するが、本実施形態に係る疲労管理システムSは、次の構成を主な特徴としている。疲労管理システムSは、建設機械の一部に取り付けられたセンサ18(図2参照)の出力に基づいて、その建設機械の複数の部位に作用する応力を算出する応力演算部S1を備えている。また、疲労管理システムSは、応力演算部S1が算出した応力に基づいて、建設機械の各々の部位の累積損傷度を算出する損傷度演算部S2を備えている。さらに、疲労管理システムSは、損傷度演算部S2が算出した累積損傷度に重み付けがされた疲労インデックス値を、建設機械の各々の部位に対して算出するインデックス値演算部S3を備える。
【0016】
疲労管理システムSの管理対象である建設機械は、特に限定はされないが、たとえば、油圧ショベル10である。油圧ショベル10は、たとえば、鉱山で使用される超大型油圧ショベルである。以下では、まず本実施形態の疲労管理システムSの管理対象である油圧ショベル10の構成の一例を説明し、次に本実施形態の疲労管理システムSの各部の構成を詳細に説明する。
【0017】
(油圧ショベル)
油圧ショベル10は、たとえば、図3に示すように、下部走行体11と、上部旋回体12と、キャブ13と、フロント作業機14と、コントローラ15と、を備えている。また、油圧ショベル10は、図2に示すセンサ18、送信機19A、およびモニタ19Bと、図4に示す操作レバー装置13aおよび油圧駆動装置17と、を備えている。以下の説明では、油圧ショベル10の前後方向に平行なX軸、油圧ショベル10の幅方向平行なY軸、油圧ショベル10の高さ方向に平行なZ軸からなる三次元の直交座標系を参照しながら、油圧ショベル10の各部を説明する場合がある。
【0018】
下部走行体11は、たとえば、油圧ショベル10の幅方向(Y方向)に一対のクローラ式の走行装置11aを有している。下部走行体11は、たとえば、油圧駆動装置17によって駆動され、油圧ショベル10を走行させる。
【0019】
上部旋回体12は、下部走行体11の上に旋回可能に取り付けられている。上部旋回体12は、たとえば、図示を省略する油圧モータまたは電動モータによって駆動され、油圧ショベル10の高さ方向(Z方向)に平行な回転軸を中心に、下部走行体11に対して旋回する。上部旋回体12は、たとえば、図示を省略する原動機や、後述する油圧ポンプ、複数の弁等の各種の機器を収容している。
【0020】
キャブ13は、たとえば、油圧ショベル10を操作するオペレータが搭乗する運転席が収容された油圧ショベル10の車室である。キャブ13は、たとえば、上部旋回体12の前側の部分の上部に、フロント作業機14に隣接して設けられている。
【0021】
フロント作業機14は、たとえば、上部旋回体12の前側に設けられ、油圧駆動装置17によって駆動されて掘削作業などの作業を行う。フロント作業機14は、たとえば、ブーム14aと、アーム14bと、バケット14cとを有する。
【0022】
ブーム14aの基端部は、たとえば、油圧ショベル10の幅方向(Y方向)に平行な回転軸を介して、上部旋回体12に連結されている。ブーム14aは、たとえば、アクチュエータによって駆動され、上部旋回体12に取り付けられた回転軸を中心に所定の角度範囲で回動する。ブーム14aを駆動するアクチュエータとしては、たとえば、油圧シリンダ1が用いられる。油圧シリンダ1は、作動油の供給によって駆動される油圧アクチュータである。
【0023】
油圧シリンダ1は、たとえば、シリンダチューブ1aと、ピストン1bと、ロッド1cとを有している。油圧シリンダ1は、たとえば、ロッド1cがシリンダチューブ1aの片側に突出する片ロッド型の油圧シリンダである。ブーム14aを駆動する油圧シリンダ1は、たとえば、ブームシリンダ1Aと称される場合もある。
【0024】
ブームシリンダ1Aにおいて、シリンダチューブ1aの一端は、たとえばブーム14aの中間部に油圧ショベル10の幅方向(Y方向)に平行な回転軸を介して連結されている。また、ピストン1bは、シリンダチューブ1aに収容され、シリンダチューブ1aの内周面に沿ってロッド1cの軸方向に滑動する。ロッド1cの一端は、シリンダチューブ1aの内部でピストン1bに連結されている。ブームシリンダ1Aにおいて、ロッド1cの他端は、シリンダチューブ1aの内部から外部へ延び、たとえば、油圧ショベル10の幅方向(Y方向)に平行な回転軸を介して、上部旋回体12に連結されている。
【0025】
アーム14bの基端部は、たとえば、油圧ショベル10の幅方向(Y方向)に平行な回転軸を介してブーム14aの先端部に連結されている。アーム14bは、たとえば、アクチュエータによって駆動され、ブーム14aに取り付けられた回転軸を中心に所定の角度範囲で回動する。アーム14bを駆動するアクチュエータとしては、たとえば、ブームシリンダ1Aと同様の油圧シリンダ1が用いられる。アーム14bを駆動する油圧シリンダ1は、たとえば、アームシリンダ1Bと称される場合もある。
【0026】
アームシリンダ1Bにおいて、シリンダチューブ1aの一端は、たとえばブーム14aの中間部に油圧ショベル10の幅方向(Y方向)に平行な回転軸を介して連結されている。アームシリンダ1Bにおいて、ピストン1bに連結されたロッド1cの一端と反対側のロッド1cの他端は、油圧ショベル10の幅方向(Y方向)に平行な回転軸を介して、アーム14bの基端部に連結されている。アームシリンダ1Bのロッド1cは、たとえば、ブーム14aの先端よりも、アーム14bの基端側に連結されている。
【0027】
バケット14cの基端部は、たとえば、油圧ショベル10の幅方向(Y方向)に平行な回転軸を介してアーム14bの先端部に連結されている。バケット14cは、たとえば、アクチュエータによって駆動され、アーム14bに取り付けられた回転軸を中心に所定の角度範囲で回動する。バケット14cを駆動するアクチュエータとしては、たとえば、ブームシリンダ1Aと同様の油圧シリンダ1が用いられる。バケット14cを駆動する油圧シリンダ1は、たとえば、バケットシリンダ1Cと称される場合もある。
【0028】
バケットシリンダ1Cにおいて、シリンダチューブ1aの一端は、たとえばアーム14bの基端部に、油圧ショベル10の幅方向(Y方向)に平行な回転軸を介して連結されている。バケットシリンダ1Cにおいて、ピストン1bに連結されたロッド1cの一端と反対側のロッド1cの他端は、たとえば、リンクを介してバケット14cの基端部に連結されている。リンクは、たとえば、油圧ショベル10の幅方向(Y方向)に平行な回転軸を介して、ロッド1cに連結されている。
【0029】
コントローラ15は、たとえば、上部旋回体12に収容され、キャブ13に設けられた操作レバー装置13aの操作に基づくパイロット圧や、油圧ショベル10に搭載されたセンサ18からの信号に基づいて、油圧駆動装置17を制御する。コントローラ15は、たとえば、中央演算処理装置などの演算部15a、RAMやROMなどの記憶部15b、その記憶部15bに記憶されたプログラム、および信号の入出力を行う入出力部を含むコンピュータユニットである。
【0030】
コントローラ15の演算部15a、記憶部15b、プログラム、および入出力部は、疲労管理システムSの応力演算部S1、損傷度演算部S2、およびインデックス値演算部S3を構成する。これら応力演算部S1、損傷度演算部S2、およびインデックス値演算部S3の詳細については、後述する。本実施形態において、疲労管理システムSの応力演算部S1、損傷度演算部S2、およびインデックス値演算部S3は、たとえば、油圧駆動装置17を制御するコントローラ15に設けられるが、コントローラ15とは別に設けることもできる。コントローラ15は、たとえば、コントロールエリアネットワーク(CAN)などのネットワークを介して、センサ18、送信機19A、およびモニタ19Bに接続されている。
【0031】
油圧駆動装置17は、たとえば、油圧シリンダ1と、油圧ポンプ2と、パイロットポンプ3と、ボトム圧センサ4aと、操作圧センサ4bと、作動油タンク5と、エンジン6と、を備えている。また、油圧駆動装置17は、たとえば、方向制御弁V1と、可変絞りV2と、可変絞り制御弁V3と、を備えている。なお、油圧ショベル10は、たとえば、ブームシリンダ1Aとアームシリンダ1Bとバケットシリンダ1Cの三つの油圧シリンダ1を備えている。しかし、各油圧シリンダ1の構成は、同様である。そのため、図2では、一つの油圧シリンダ1を図示し、他の二つの油圧シリンダ1の図示を省略する。
【0032】
油圧シリンダ1は、前述のように、シリンダチューブ1aと、ピストン1bと、ロッド1cを備えている。シリンダチューブ1aの内部は、ピストン1bによって、シリンダチューブ1aの基端側に位置するボトム側油室1eと、シリンダチューブ1aの先端側に位置するロッド側油室1fとに区画されている。
【0033】
油圧シリンダ1は、ボトム側油室1eに作動油が供給されることで、ピストン1bがシリンダチューブ1aの先端側に移動し、ロッド側油室1fから作動油が排出され、ロッド1cが伸長する。また、油圧シリンダ1は、ロッド側油室1fに作動油が供給されることで、ピストン1bがシリンダチューブ1aの基端側に移動し、ボトム側油室1eから作動油が排出され、ロッド1cが収縮する。
【0034】
より具体的には、ブームシリンダ1Aは、ロッド1cを伸長させることで、ブーム14aの基端部に設けられた回転軸を中心にブーム14aを回動させ、ブーム14aの先端を油圧ショベル10の高さ方向(Z方向)の上方側へ移動させる。また、ブームシリンダ1Aは、ロッド1cを収縮させることで、ブーム14aの基端部に設けられた回転軸を中心にブーム14aを回動させ、ブーム14aの先端を油圧ショベル10の高さ方向(Z方向)の下方側へ移動させる。
【0035】
また、アームシリンダ1Bは、ロッド1cを伸長させることで、アーム14bの基端部に設けられた回転軸を中心にアーム14bを回動させ、アーム14bの先端を油圧ショベル10の高さ方向(Z方向)の下方側へ移動させる。また、アームシリンダ1Bは、ロッド1cを収縮させることで、アーム14bの基端部に設けられた回転軸を中心にアーム14bを回動させ、アーム14bの先端を油圧ショベル10の高さ方向(Z方向)の上方側へ移動させる。
【0036】
また、バケットシリンダ1Cは、ロッド1cを伸長させることで、バケット14cの基端部に設けられた回転軸を中心にバケット14cを回動させ、バケット14cの先端を油圧ショベル10の高さ方向(Z方向)の上方側へ移動させる。また、バケットシリンダ1Cは、ロッド1cを収縮させることで、バケット14cの基端部に設けられた回転軸を中心にアーム14bを回動させ、バケット14cの先端を油圧ショベル10の高さ方向(Z方向)の下方側へ移動させる。
【0037】
油圧ポンプ2は、たとえば、斜板式、ラジアルピストン式または斜軸式の可変容量型の油圧ポンプである。油圧ポンプ2は、エンジン6によって回転駆動される。油圧ポンプ2は、たとえば、斜板または斜軸等からなる容量可変部2aと、その容量可変部2aを駆動する容量可変機構2bとを有している。容量可変機構2bは、コントローラ15の指令に基づいて容量可変部2aを駆動する。これにより、容量可変部2aの傾転角が変化し、油圧ポンプ2のポンプ容量を増減することができる。油圧ポンプ2は、吐出管路に圧油を吐出する。吐出管路は、方向制御弁V1よりも上流側で、センタバイパス管路と分岐管路とに分岐する。
【0038】
パイロットポンプ3は、たとえば、固定容量型の油圧ポンプである。パイロットポンプ3も、エンジン6によって回転駆動される。パイロットポンプ3は、作動油タンク5と共にパイロット油圧源を構成する。パイロットポンプ3は、パイロット管路にパイロット圧油を吐出する。パイロット管路は、操作レバー装置13aよりも上流側で、可変絞り制御弁V3側にパイロット圧油を供給するための絞り用パイロット管路が分岐している。
【0039】
方向制御弁V1は、油圧ポンプ2から油圧シリンダ1に供給する圧油を切換え、油圧シリンダ1に対する圧油の供給と排出を制御する。方向制御弁V1は、6ポート3位置の油圧パイロット式方向制御弁により構成されている。方向制御弁V1は、吐出管路を介して油圧ポンプ2と接続され、センタバイパス管路および戻り管路を介して作動油タンク5と接続されている。さらに、方向制御弁V1は、ボトム側管路を介して油圧シリンダ1のボトム側油室1eと接続され、ロッド側管路を介して油圧シリンダ1のロッド側油室1fと接続されている。
【0040】
可変絞りV2は、センタバイパス管路の途中で方向制御弁V1より下流側に設けられている。可変絞りV2は、方向制御弁V1より下流側でセンタバイパス管路の流路面積を可変に絞る。可変絞りV2は、可変絞り制御弁V3から供給されるパイロット圧油によって制御される。可変絞りV2は、可変絞り制御弁V3のパイロット圧が大きくなる程、流路面積が小さくなり、パイロット圧が小さくなる程、流路面積が大きくなる。可変絞り制御弁V3のパイロット圧は、コントローラ15によって可変に制御される。
【0041】
ボトム圧センサ4aは、油圧シリンダ1のボトム側油室1eの圧油の圧力を検出する圧力センサである。ボトム圧センサ4aは、たとえば、ボトム側油室1eまたはボトム側管路の圧力を検出する。ボトム圧センサ4aは、信号線を介してコントローラ15と接続され、検出したボトム側油室1eの圧力に対応する検出信号をコントローラ15に出力する。
【0042】
操作圧センサ4bは、操作レバー装置13aの操作量を検出する圧力センサである。操作圧センサ4bは、たとえば、下げ側パイロット管路に設けられている。操作圧センサ4bは、下げ側パイロット管路の油圧、すなわち、ブーム下げのパイロット圧を検出する。操作圧センサ4bは、信号線を介してコントローラ15と接続され、ブーム下げ操作量に対応するブーム下げのパイロット圧を検出する。操作圧センサ4bは、ブーム下げのパイロット圧に対応する検出信号をコントローラ15に出力する。
【0043】
センサ18は、油圧ショベル10の一部に取り付けられ、物理量を検出してコントローラ15に出力する。より具体的には、センサ18は、たとえば、建設機械である油圧ショベル10に作用する力を検出する力センサと、油圧ショベル10の姿勢を検出する姿勢センサとを含む。図2に示す例において、センサ18は、力センサとして油圧センサ18bを含み、姿勢センサとして、角度センサ18a、角速度センサ18c、加速度センサ18d、傾斜角センサ18e、および、不図示のストロークセンサを含む。ストロークセンサは、ブームシリンダ1A、アームシリンダ1B、およびバケットシリンダ1Cのそれぞれのストロークを検出する。
【0044】
油圧センサ18bは、たとえば、油圧シリンダ1のボトム側油室1eの作動油の圧力を検出する圧力センサである。より具体的には、油圧センサ18bは、ブームシリンダ1Aと、アームシリンダ1Bと、バケットシリンダ1Cのそれぞれのボトム側油室1eの作動油の圧力を検出する圧力センサである。なお、油圧センサ18bは、たとえば、前述のボトム圧センサ4aであってもよい。また、油圧センサ18bは、下部走行体11、上部旋回体12が油圧モータによって駆動される場合には、その油圧モータの作動油の圧力を検出する。
【0045】
角度センサ18aは、たとえば、建設機械の各部の角度を検出するセンサである。具体的には、角度センサ18aは、たとえば、油圧ショベル10の上部旋回体12と、フロント作業機14の各部の角度を検出するセンサである。より詳細には、角度センサ18aは、たとえば、上部旋回体12の回転軸と、ブーム14aの基端部の回転軸と、アーム14bの基端部の回転軸と、およびバケット14cの基端部の回転軸に、それぞれ設けられている。角度センサ18aは、たとえば、下部走行体11に対する上部旋回体12の回転角と、上部旋回体12に対するブーム14aの回転角と、ブーム14aに対するアーム14bの回転角と、アーム14bに対するバケット14cの回転角を検出する。角速度センサ18cは、たとえば、上部旋回体12、ブーム14a、アーム14b、およびバケット14cのそれぞれに取り付けられ、上部旋回体12、ブーム14a、アーム14b、およびバケット14cのそれぞれの角速度を検出する。加速度センサ18dは、たとえば、上部旋回体12、ブーム14a、アーム14b、およびバケット14cのそれぞれに取り付けられ、上部旋回体12、ブーム14a、アーム14b、およびバケット14cのそれぞれの加速度を検出する。傾斜角センサ18eは、たとえば、上部旋回体12、ブーム14a、アーム14b、およびバケット14cのそれぞれに取り付けられ、上部旋回体12、ブーム14a、アーム14b、およびバケット14cのそれぞれの傾斜角を検出する。
【0046】
送信機19Aは、たとえば、コントローラ15に接続され、コントローラ15から出力された疲労インデックス値を送信する。より具体的には、送信機19Aは、たとえば、通信衛星170、基地局180、および回線網190を介して、サーバ140に疲労インデックス値を送信する。また、送信機19Aは、たとえば無線通信によって、情報端末160である顧客端末160Aに疲労インデックス値を送信する。また、送信機19Aは、たとえば、油圧ショベル10の識別情報を送信してもよい。また、油圧ショベル10が、たとえば全地球航法衛星システム(GNSS)などの測位装置を備える場合、送信機19Aは、油圧ショベル10の位置情報を送信してもよい。
【0047】
モニタ19Bは、たとえば、キャブ13内に配置された液晶表示装置や有機EL表示装置などの表示装置である。モニタ19Bは、たとえば、タッチパネルなどの入力装置を含んでもよい。モニタ19Bは、たとえば、コントローラ15から出力された疲労インデックス値と油圧ショベル10の各部品の複数の部位を関連付けた画像を表示する。
【0048】
以上の構成により、油圧ショベル10は、オペレータが操作レバー装置13aを操作すると、パイロットポンプ3からの圧油により方向制御弁V1が動き、油圧ポンプ2の圧油が油圧シリンダ1のボトム側油室1eまたはロッド側油室1fに導かれる。これにより、油圧ショベル10は、前述のように、操作レバー装置13aの操作量に応じて、ブームシリンダ1A、アームシリンダ1B、およびバケットシリンダ1Cのそれぞれのロッド1cを伸縮させ、ブーム14a、アーム14b、およびバケット14cの各部を操作することができる。
【0049】
また、コントローラ15は、操作レバー装置13aからの操作信号に応じて、下部走行体11と上部旋回体12との間の油圧モータまたは電動モータを制御する。これにより、油圧ショベル10は、操作レバー装置13aの操作量に応じて、上部旋回体12を下部走行体11に対して旋回させることができる。
【0050】
(疲労管理システム)
次に、本実施形態の疲労管理システムSの各部の構成を詳細に説明する。本実施形態の疲労管理システムSは、前述の応力演算部S1と、損傷度演算部S2と、インデックス値演算部S3とに加えて、たとえば、サーバ140と、記憶装置150と、情報端末160と、を備えている。
【0051】
本実施形態の疲労管理システムSを構成する応力演算部S1、損傷度演算部S2およびインデックス値演算部S3は、たとえば、図2および図3に示すように、建設機械に搭載されたコントローラ15によって構成することができる。なお、疲労管理システムSを構成する応力演算部S1、損傷度演算部S2およびインデックス値演算部S3は、必ずしも建設機械に搭載する必要はない。たとえば、図1に示すサーバ140および記憶装置150によって、応力演算部S1、損傷度演算部S2およびインデックス値演算部S3を構成することも可能である。
【0052】
応力演算部S1は、前述のように、建設機械の一部に取り付けられたセンサ18の出力に基づいて建設機械の複数の部位に作用する応力を算出する。より具体的には、応力演算部S1は、たとえば、油圧ショベル10のブーム14a、アーム14b、およびバケット14cに取り付けられたセンサ18の出力に基づいて、ブーム14a、アーム14b、およびバケット14cのそれぞれの複数の部位に作用する応力を算出する。特に限定されないが、たとえば、各部品に対して数十点から数百点の部位を設定することができる。
【0053】
応力演算部S1による応力の算出方法の一例は、次のとおりである。図2に示すように、応力演算部S1は、たとえば、記憶部15bにあらかじめ記憶された応力演算式を用いて、油圧ショベル10を構成する各々の部品の複数の部位の各々に作用する応力を算出する。応力演算式は、たとえば、センサ18の出力と、油圧ショベル10を構成する部品の複数の部位の各々に作用する応力との関係を示す式である。応力演算式は、たとえば、重回帰式や機械学習を使った回帰式等を用いて、油圧ショベル10を構成する部品の各々の部位についてあらかじめ求め、記憶部15bに記憶させておく。
【0054】
応力演算式の一例を、以下の式(1)~(3)に示す。式(1)~(3)において、σ1、σ2、…は、油圧ショベル10を構成する部品の複数の部位の各々に作用する応力である。また、式(1)~(3)において、s、s2、…は、センサ18の出力であり、M、NおよびAは、各々の部位の特性に基づく定数であり、tは時刻である。このように、あらかじめ応力演算式を求めておくことで、センサ18の出力に基づいて、油圧ショベル10を構成する部品の多数の部位の各々に作用する応力および時刻歴応力波形を、単純な演算によって容易に求めることができる。
【0055】
【数1】
【0056】
【数2】
【0057】
【数3】
【0058】
また、応力演算部S1は、たとえば、図2に示す加速度センサ18dまたはジャイロセンサおよび角度センサ18aで再現された姿勢の油圧ショベル10における各部位の応力を、以下の式(4)に基づいて算出してもよい。
【0059】
【数4】
【0060】
なお、上記の式(4)において、[M]は、質量マトリックスであり、[C]は、減衰マトリックスであり、[K]は剛性マトリックスであり、{u}は変位マトリックスである。{F}は、たとえば、油圧シリンダ1の圧力、上部旋回体12の旋回圧、下部走行体11の油圧モータ圧など、構造物に作用する外力である。
【0061】
損傷度演算部S2は、応力演算部S1によって算出された各々の部位に作用する応力に基づいて各々の部位の累積損傷度Dを算出する。より具体的には、損傷度演算部S2は、油圧ショベル10の各部品の各々の部位に作用する時刻歴応力波形と、応力振幅と繰り返し数のS‐N線図とに基づいて、各部品の各々の部位の累積損傷度Dを算出する。累積損傷度Dは、たとえば、レンジペア法、ピークバレー法、レインフロー法などによる時刻歴応力波形の頻度解析の後に、以下の式(5)に示すマイナー則や、修正マイナー則によって算出することができる。
【0062】
【数5】
【0063】
インデックス値演算部S3は、損傷度演算部S2によって算出された累積損傷度Dに重み付けがされた疲労インデックス値を、油圧ショベル10の各部品の各々の部位に対して算出する。疲労インデックス値は、たとえば、油圧ショベル10の各部品の各々の部位について算出された累積損傷度に対し、各々の油圧ショベル10、各部品および各々の部位についての使用環境、材料特性、およびその他の条件に応じた重み付けを行うことで得られる、疲労度を示す指数であり、たとえば1から増加する整数で表される。
【0064】
図5A図5Dに、油圧ショベル10の各部品の各々の部位における累積損傷度Dから疲労インデックス値を求める例を説明する。この例では、累積損傷度Dの大きさに応じて重み付けの条件がそれぞれ異なるように設定された複数のマップ(A)~(D)を設け、そのマップ(A)~(D)から一つのマップを選択して、その選択されたマップから累積損傷度Dに基づいて疲労インデックス値iを求めるものである。疲労インデックス値iのマップの例を(A)~(D)に示す。図において累積損傷度Dが0.0~0.35未満の範囲を低範囲、0.35~0.65未満の範囲を中範囲、0.65以上を高範囲とし、この場合の疲労インデックス値iは、指数を所定のレベル表示したものでLv.1<Lv.2<Lv.3<Lv.4<Lv.5とする。図5Aのマップ(A)は累積損傷度Dが低範囲にあるときには、累積損傷度Dが増加しても疲労インデックス値は変化せず、一定のLv.1値とし、中範囲にあるときには、累積損傷度Dの増加に応じて疲労インデックス値をLv.2、Lv.3、Lv.4に増加させ、累積損傷度Dが高範囲にあるときには累積損傷度Dが増加しても変化せず、一定のLv.5とする例である。また図5Bのマップ(B)は、累積損傷度Dが低範囲にあるときには、累積損傷度Dの増加に応じて疲労インデックス値iをLv.1、Lv2、Lv.3と増加させ、中範囲にあるときには累積損傷度Dが増加しても疲労インデックス値iは一定のLv4とし、累積損傷度Dが高範囲にあるときには、累積損傷度Dが増加しても疲労インデックス値は変化せず、一定のLv.5とする例である。また図5Cのマップ(C)は、累積損傷度Dが低範囲および中範囲にあるときには、累積損傷度Dが増加しても疲労インデックス値は変化せず、一定のLv.1とし、高範囲では、累積損傷度Dの増加に応じて疲労インデックス値iをLv.2、Lv.3、Lv.4、Lv.5と増加させる例である。また図5Dのマップ(D)は、累積損傷度Dが低範囲~高範囲にかけて累積損傷度Dが0.2~0.25増加する毎に疲労インデックス値iをLv.1、Lv.2、Lv.3、Lv.4、Lv.5と増加させる例であり、さらにマップ(A),(B)は、比較的早期に疲労インデックス値を増加させる例、マップ(C),(D)は累積損傷度Dの増加に応じて疲労インデックス値を増加させる例である。そして前述のように、記憶部15bは、たとえば、異なる複数の重み付けされたマップ(A)から(D)の中から、作業機械である油圧ショベル10の各部品の部位ごとに、マップを選択するための条件が記憶されている。インデックス値演算部S3は、各々の油圧ショベル10の各部品の部位ごとに、記憶部15bに記憶された条件に応じてマップ(A),(B),(C)または(D)のうちのいずれか選択する。そして、インデックス値演算部S3は、損傷度演算部S2によって算出された累積損傷度Dから選択されたマップから疲労インデックス値iを、Lv.1~Lv.5として各々の油圧ショベル10の各部品の各々の部位に対して算出する。以下、この記憶部15bに記憶された条件と、その条件に基づくマップ(A),(B),(C)または(D)の選択について、いくつかの例を説明する。
【0065】
マップ選択の第1の例では、センサ18の検出結果から演算により得られた各部品の各々の部位に作用する応力と、各部品の各々の部位に実際に作用する応力との一致度の条件に応じて、各部品の各部位に対するマップ(A),(B),(C)または(D)を選択する。演算により得られた応力と実際の応力との一致度は、たとえば、油圧ショベル10などの作業機械の作業履歴から経験的に得られたものでもよく、作業機械の各部品の各々の部位にひずみゲージなどの応力センサを取りつけることによって予め実験的に取得された実際の応力と上記演算により得られた応力との比較に基づくものであってもよい。後者の場合、演算による応力と実際の応力との一致度は、たとえば、決定係数Rに基づいて求めることができる。一致度の条件は、たとえば、決定係数Rがしきい値である0.8以上の場合に最高精度とし、決定係数Rが0.8未満の所定のしきい値を設定して、高精度、中精度、および低精度の各条件に分類するなど、決定係数Rに基づいていくつかの条件に分類することが可能である。
【0066】
記憶部15bは、たとえば、重み付けの異なる複数のマップ(A)から(D)の中から作業機械の各部品の部位ごとに一つのマップ(A),(B),(C)または(D)を選択するための条件として、油圧ショベル10の各々の部位に作用する実際の応力と、応力演算部S1によって算出される応力との一致度の条件が記憶されている。より具体的には、記憶部15bは、たとえば、評価点ごとの一致度の条件として、低精度、中精度、高精度、および最高精度の四条件うちの一条件が記憶されている。また、記憶部15bは、一致度のしきい値と、累積損傷度Dの増加にともなって疲労インデックス値iを増加させる第1のマップ(C)および(D)と、累積損傷度Dの増加にともなって疲労インデックス値iを第1のマップ(C)および(D)よりも早期に増加させる第2のマップ(A)および(B)と、が記憶されている。インデックス値演算部S3は、たとえば油圧ショベル10などの作業機械の各部品の各々の部位の疲労インデックス値iの算出時に、記憶部15bに記憶された当該部位についての演算された応力と実際の応力との一致度の条件を参照する。そして、インデックス値演算部S3は、当該部位の一致度が、低精度、中精度、高精度、最高精度の四条件のいずれであるかを判定する。なお、一致度の条件は、たとえば低精度と高精度の二条件の分類であってもよく、低精度、中精度、高精度の三条件であってもよく、五条件以上であってもよい。
【0067】
また、インデックス値演算部S3は、判定した一致度の条件に応じて、作業機械の各部品の各々の部位の累積損傷度の重み付けとして、たとえば図5Aから図5Dに示すいずれかのマップ(A),(B),(C)または(D)を選択する。具体的には、インデックス値演算部S3は、たとえば、作業機械の各々の部位について、一致度がしきい値以上である場合に、第1のマップ(C)または(D)を選択し、一致度がしきい値よりも低い場合に第2のマップ(A)または(B)を選択する。より具体的には、たとえば、一致度を上記四条件に分類した場合、インデックス値演算部S3は、疲労インデックス値の演算時に選択したある部位の一致度の条件が低精度であれば、図5Bに示すマップ(B)を選択する。これにより、当該部位の疲労インデックス値iは、比較的に累積損傷度Dが低い段階から上昇を始める。また、インデックス値演算部S3は、たとえば選択した部位の一致度の条件が、中精度であれば、図5Aに示すマップ(A)を選択し、高精度であれば、図5Dに示すマップ(D)を選択し、より高精度すなわち最高精度であれば、図5Cに示すマップ(C)を選択する。これにより、当該部位の一致度が上昇するほど、累積損傷度の増加にともなう疲労インデックス値iの上昇が緩やかになる。
【0068】
すなわち、インデックス値演算部S3は、選択した部位の演算応力と実応力との一致度が最高精度であれば、図5Cに示すマップ(C)のように、累積損傷度Dが上昇して破損のリスクが高まってから、疲労インデックス値iを急上昇させる。また、インデックス値演算部S3は、選択した部位の演算応力と実応力との一致度が高精度であれば、図5Dのマップ(D)に示すように、累積損傷度Dの上昇とともに疲労インデックス値iを徐々に上昇させ、上記一致度がより高精度である場合よりも早期に疲労インデックス値iを上昇させる。また、インデックス値演算部S3は、選択した部位の演算応力と実応力との一致度が中精度であれば、図5Aに示すマップ(A)のように、累積損傷度Dの上昇によって、ある程度、リスクが上昇してから、上記一致度が高精度の場合よりも早期に疲労インデックス値iを上昇させる。また、インデックス値演算部S3は、選択した部位の演算応力と実応力との一致度が低精度であれば、図5Bに示すマップ(B)のように、上記一致度が中精度の場合よりも早期に疲労インデックス値iを上昇させて注意を喚起する。
【0069】
マップの選択の第2の例では、破損が生じるリスクに応じたマップ(A),(B),(C)または(D)を選択する。具体的には、記憶部15bは、たとえば、異なる複数の重み付けの中から作業機械の各部品の部位ごとに一つのマップ(A),(B),(C)または(D)を選択するための条件として、部位ごとの破損が生じるリスクが、最高リスクと、高リスクと、その他の三条件に分類されて記憶されている。インデックス値演算部S3は、たとえば油圧ショベル10などの作業機械の各部品の各々の部位のインデックス値の算出時に、記憶部15bに記憶された各部位のリスクの条件を参照して、当該部位の破損リスクが、最高リスクと、高リスクと、その他のいずれであるかを判定する。なお、破損リスクの条件は、たとえば高リスクとその他の二条件であってもよく、四条件以上であってもよい。
【0070】
また、インデックス値演算部S3は、判定した破損リスクの条件に応じて、作業機械の各部品の各々の部位の累積損傷度Dの重み付けとして、たとえば図5Aから図5Dに示すいずれかのマップ(A),(B),(C)または(D)を選択する。具体的には、たとえば、破損リスクを上記三条件に分類した場合、インデックス値演算部S3は、疲労インデックス値iの演算時に選択したある部位の破損リスクが最高リスクであれば、図5Bに示すマップ(B)を選択する。これにより、当該部位の疲労インデックス値iは、比較的に累積損傷度Dが低い段階から上昇を始める。また、インデックス値演算部S3は、たとえば選択した部位の破損リスクが、高リスクであれば、図5Aに示すマップ(A)を選択し、その他であれば、図5Cまたは図5Dに示すマップ(C)または(D)を選択する。これにより、当該部位の破損リスクが上昇するほど、累積損傷度Dの増加にともなって、疲労インデックス値iが早期に上昇する。
【0071】
マップ選択の第3の例では、各々の部位が破損したときの作業機械への影響度に応じたマップ(A),(B),(C)または(D)を選択する。具体的には、記憶部15bは、たとえば、異なる複数の重み付けの中から作業機械の各部品の部位ごとに一つのマップ(A),(B),(C)または(D)を選択するための条件として、部位ごとの作業機械への影響度が、たとえば作業機械の稼働が停止する影響度大と、作業機械の稼働停止が懸念される影響度中と、その他の三条件に分類されて記憶されている。インデックス値演算部S3は、たとえば油圧ショベル10などの作業機械の各部品の各々の部位の疲労インデックス値iの算出時に、記憶部15bに記憶された各部位の作業機械への影響度の条件を参照して、当該部位の影響度が、影響度大と、影響度中と、その他のいずれであるかを判定する。なお、影響度の分類は、たとえば影響度大とその他の二段階の分類であってもよく、四段階以上の分類であってもよい。
【0072】
また、インデックス値演算部S3は、判定した影響度に応じて、作業機械の各部品の各々の部位の累積損傷度Dの重み付けとして、たとえば図5Aから図5Dに示すいずれかのマップ(A),(B),(C)または(D)を選択する。具体的には、たとえば、影響度を上記三条件に分類した場合、インデックス値演算部S3は、疲労インデックス値iの演算時に選択したある部位の影響度が大であれば、図5Bに示すマップ(B)を選択する。これにより、当該部位の疲労インデックス値は、比較的に累積損傷度が低い段階から上昇を始める。また、インデックス値演算部S3は、たとえば選択した部位の影響度が中であれば、図5Aに示すマップ(A)を選択し、その他であれば、図5Cまたは図5Dに示すマップ(C)または(D)を選択する。これにより、当該部位の破損の影響度が増大するほど、累積損傷度の増加にともなって、疲労インデックス値iが早期に上昇する。
【0073】
マップ選択の第4の例では、各々の部位が破損したときの作業機械の安全に対する影響に応じたマップ(A),(B),(C)または(D)を選択する。具体的には、記憶部15bは、たとえば、異なる複数の重み付けの中から作業機械の各部品の部位ごとに一つのマップ(A),(B),(C)または(D)を選択するための条件として、作業機械の安全に対する影響が、当該部位が安全関連部品や安全関連部位であるか否かの二条件に分類されて記憶されている。インデックス値演算部S3は、たとえば油圧ショベル10などの作業機械の各部品の各々の部位の疲労インデックス値iの算出時に、記憶部15bに記憶された作業機械の安全に対する影響に関する条件を参照して、当該部位が安全関連部品や安全関連部位であるか否かを判定する。
【0074】
また、インデックス値演算部S3は、判定した条件に応じて、作業機械の各部品の各々の部位の累積損傷度Dの重み付けとして、たとえば図5Aから図5Dに示すいずれかのマップ(A),(B),(C)または(D)を選択する。具体的には、たとえば、インデックス値演算部S3は、疲労インデックス値iの演算時に選択したある部位が安全関連部品や安全関連部位であれば、図5A図5Bに示すマップ(A)や(B)を選択し、そうでなければ、図5C図5Dに示すマップ(C)や(D)を選択する。これにより、当該部位の疲労インデックス値iは、当該部位が安全関連部品や安全関連部位であれば、そうでない場合よりも疲労インデックス値iが早期に上昇する。
【0075】
マップ選択の第5の例では、各々の部位を含む部品の交換時間や修理時間に応じたマップ(A),(B),(C)または(D)を選択する。具体的には、記憶部15bは、たとえば、異なる複数の重み付けの中から作業機械の各部品の部位ごとに一つのマップ(A),(B),(C)または(D)を選択するための条件として、部位ごとの交換・修理難度が、たとえば部品の交換や修理に長期間を要し、さらに作業車両が必要となる難度高と、交換や修理に時間を要するが、作業車両を必要としない難度中と、その他の難度低の三条件に分類されて記憶されている。インデックス値演算部S3は、たとえば油圧ショベル10などの作業機械の各部品の各々の部位の疲労インデックス値iの算出時に、記憶部15bに記憶された各部位の交換・修理難度を参照して、当該部位を含む部品の交換・修理難度を判定する。なお、交換・修理難度の分類は、たとえば難度高とその他の二段階の分類であってもよく、四段階以上の分類であってもよい。
【0076】
また、インデックス値演算部S3は、判定した交換・修理難度の条件に応じて、作業機械の各部品の各々の部位の累積損傷度の重み付けとして、たとえば図5Aから図5Dに示すいずれかのマップ(A),(B),(C)または(D)を選択する。具体的には、たとえば、交換・修理難度を上記三条件に分類した場合、インデックス値演算部S3は、疲労インデックス値の演算時に選択したある部位の交換・修理難度が高であれば、図5Bに示すマップ(B)を選択する。これにより、当該部位の疲労インデックス値iは、比較的に累積損傷度が低い段階から上昇を始める。また、インデックス値演算部S3は、たとえば選択した部位の交換・修理難度が中であれば、図5Aに示すマップ(A)を選択し、その他であれば、図5Cまたは図5Dに示すマップ(C)または(D)を選択する。これにより、当該部位の交換・修理難度が上昇するほど、累積損傷度Dの増加にともなって、疲労インデックス値が早期に上昇する。
【0077】
また、上記した以外のマップ選択の例として、たとえば鉱山などの作業現場へのアクセスの良し悪し、ユーザへの心理的な影響、車体の使い方や掘削物の影響などの各条件に応じて、図5Aから図5Dのマップ(A),(B),(C)または(D)を選択するようにしてもよい。
【0078】
サーバ140は、複数の建設機械とデータ通信を行う。サーバ140は、たとえば、複数の油圧ショベル10と、通信衛星170、基地局180、および回線網190などを介して、データ通信を行う。回線網190は、たとえば、インターネット回線を含む通信回線である。また、サーバ140は、たとえば、情報端末160である顧客端末160Aと回線網190を介して、複数の油圧ショベル10とデータ通信を行う。
【0079】
記憶装置150は、たとえば、回線を介してサーバ140に接続されている。記憶装置150は、たとえば、インデックス値データベース150Aと、顧客情報データベース150Bとを含む。インデックス値データベース150Aは、たとえば、複数の建設機械の各々の疲労インデックス値が記憶されている。顧客情報データベース150Bは、たとえば、複数の個客に関する様々な情報が記憶されている。また、記憶装置150は、たとえば前述のように、作業機械である油圧ショベル10の各部分の各々の部位ごとに、図5Aから図5Dに示す複数のマップ(A)から(D)の中から一つのマップを選択するための条件が記憶されていてもよい。
【0080】
情報端末160は、サーバ140とデータ通信を行う。情報端末160は、たとえば、顧客端末160Aと、サービス員、顧客、販売者等が使用する情報端末160Bとを含む。顧客端末160Aは、たとえば、油圧ショベル10を使用する現場に配置され、無線通信によって複数の油圧ショベル10とデータ通信を行い、無線通信または有線通信によって回線網190を介してサーバ140とデータ通信を行う。また、情報端末160Bは、たとえば、サービス員、顧客、および販売者が使用するデスクトップコンピュータ、ノートブックコンピュータ、または携帯情報端末であり、有線通信または無線通信によって、サーバ140とデータ通信を行う。
【0081】
本実施形態の疲労管理システムSは、たとえば、建設機械の各々の部位と疲労インデックス値とを関連付けた画像を生成する画像生成部と、その画像を表示する画像表示装置と、を備えている。画像生成部は、たとえば、インデックス値演算部S3の一部であってもよい。すなわち、インデックス値演算部S3は、たとえば、油圧ショベル10の各部品の各々の部位と、その各々の部位の疲労インデックス値とを関連付けた画像を生成する画像生成部としても機能する。この場合、モニタ19Bを画像表示装置として用いることができる。なお、情報端末160が画像生成部および画像表示装置を備えてもよく、サーバ140が画像生成部を備え、情報端末160が画像表示装置を備えてもよい。
【0082】
また、本実施形態の疲労管理システムSは、前述のように、複数の建設機械とデータ通信を行うサーバ140と、そのサーバ140に接続された記憶装置150と、サーバ140とデータ通信を行う情報端末160と、を備えている。この場合、情報端末160は、疲労インデックス値の時系列データに基づいて疲労度を比較する比較部を有してもよい。
【0083】
以下、図6Aから図9を参照して、本実施形態の疲労管理システムSの作用を説明する。図6Aは、図2に示す疲労管理システムSによる疲労インデックス値の算出の流れの一例を示すフロー図である。
【0084】
疲労管理システムSは、たとえば、オペレータが油圧ショベル10を始動させると、疲労インデックス値iの算出を開始する。まず、応力演算部S1は、センサ18から取得したデータのうち、未演算のデータの有無の判定P1を行う。具体的には、判定P1において、応力演算部S1は、センサ18から取得されたデータを検索し、過去に処理をしていない新規のデータが存在する場合(YES)、データを読み込む処理P2を行う。一方、判定P1において、過去に処理をしていない新規のデータが存在しない場合(NO)、応力演算部S1は、一定時間待機する処理P3を行った後、判定P1に戻る。
【0085】
応力演算部S1は、処理P2においてデータを読み込むと、油圧ショベル10の各部品の複数の部位に対応する複数の評価点の中から、応力が演算されていない未演算の評価点を一点選択する処理P4を行う。処理P4において、すべての評価点には個別の番号が割り振られており、応力演算部S1は、番号の小さい未演算の評価点から一点ずつ昇順に選択する。
【0086】
処理P4の終了後、応力演算部S1は、たとえば前記式(1)から(3)のような演算式とセンサ18から取得したデータを用い、選択された評価点における時系列の応力波形、すなわち、時刻歴応力波形を算出する処理P5を行う。その後、損傷度演算部S2は、前述のように、応力演算部S1が算出した時刻歴応力波形に基づいて、選択された評価点における累積損傷度を算出する処理P6を行う。さらに、インデックス値演算部S3は、前述のように、損傷度演算部S2が算出した累積損傷度Dを用いて、選択された評価点の疲労インデックス値iを算出する処理P7を行う。
【0087】
図6Bは、図6Aに示す疲労インデックス値を算出する処理P7の一例を示すフロー図である。図6Bに示すように、インデックス値演算部S3は、作業機械である油圧ショベル10の各部分の各々の部位の一つに対応する選択された評価点について、第1判定処理P71を実行する。この第1判定処理P71において、インデックス値演算部S3は、選択された評価点について、記憶装置150に記憶された異なる複数のマップ(A)から(D)の中から一つのマップ(A),(B),(C)または(D)を選択するための条件を判定する。
【0088】
具体的には、たとえば、前述のマップの選択の第1の例のように、センサ18の検出結果から演算により得られた作業機械である油圧ショベル10の各部品の各部位に作用する応力と、各部品の各部位に実際に作用する応力との一致度の条件に応じて、部位ごとにマップ(A),(B),(C)または(D)を選択する場合を想定する。この場合、インデックス値演算部S3は、第1判定処理P71において、たとえば、選択した評価点について、あらかじめ記憶装置150に記憶された当該評価点の一致度の条件を参照し、当該評価点の一致度の条件が高精度であるか否かを判定する。
【0089】
この第1判定処理P71において、インデックス値演算部S3は、選択した評価点の一致度の条件が高精度でないと判定すると(NO)、図5Aまたは図5Bに示す第2のマップ(A)または(B)を選択する処理P72を実行する。また、第1判定処理P71において、インデックス値演算部S3は、選択した評価点の一致度が高精度であると判定すると(YES)、図5Cまたは図5Dに示す第1のマップ(C)または(D)を選択する処理P72を実行する。その後、疲労インデックス値算出処理P74において、インデックス値演算部S3は、選択したマップから累積損傷度Dに基づいて、選択した評価点の疲労インデックス値を算出する。
【0090】
図6Cは、図6Aに示す疲労インデックス値iを算出する処理P7の他の一例を示すフロー図である。図6Bに示す例では、インデックス値演算部S3は、第1判定処理P71により、各評価点の演算による応力と実際の応力との一致度の条件に応じて、一致度が高精度である場合と、そうではない場合の二条件に分類した。しかし、図6Cに示す例では、インデックス値演算部S3は、第1判定処理P71と第2判定処理P75とを実行することで、前述のように、各評価点の演算による応力と実際の応力との一致度の三条件を判定することも可能である。
【0091】
具体的には、図6Cに示す例では、インデックス値演算部S3は、図6Bに示す例と同様に第1判定処理P71を実行し、選択した評価点の一致度の条件が高精度または最高精度ではないと判定すると(NO)、図5Aまたは図5Bに示す第2のマップ(A)または(B)を選択する処理P72を実行する。また、第1判定処理P71において、インデックス値演算部S3は、選択した評価点の一致度の条件が高精度または最高精度であると判定すると(YES)、さらに第2判定処理P75を実行する。第2判定処理P75において、インデックス値演算部S3は、選択した評価点の一致度の条件が最高精度であるか否かを判定し、最高精度ではないと判定すると(NO)、図5Dに示す第1のマップ(D)を選択する処理P76を実行し、最高精度であると判定すると(YES)、図5Cに示す第1のマップ(C)を選択する処理P77を実行する。その後、インデックス値算出処理P74において、インデックス値演算部S3は、選択したマップから累積損傷度Dに基づいて、選択した評価点の疲労インデックス値iを算出する。
【0092】
図示は省略するが、第1判定処理P71、処理P72から処理74、第2判定処理P75処理76および処理77に加えて、新たな条件の判定処理と、その判定処理に基づいてマップを選択する新たな選択処理を追加してもよい。これにより、前述のように、各評価点の演算による応力と実際の応力との一致度の四条件以上を判定することも可能である。また、インデックス値演算部S3は、インデックス値を算出する処理P7において、図6Bおよび図6Cに示すような処理フローにより、各評価点の演算による応力と実際の応力との一致度以外の条件によって、マップ(A),(B),(C)または(D)を選択してもよい。
【0093】
具体的には、インデックス値演算部S3は、図6Bに示すフローの第1判定処理P71において、前述のマップの選択の第2の例のように作業機械である油圧ショベル10の各部品の各部位の破損リスクが高いか否かを判定してもよく、前述のマップの選択の第4の例のように各部位の安全に対する影響が大きいか否かを判定してもよい。また、インデックス値演算部S3は、前述マップの選択の第3の例のように、図6Cに示すフローの第1判定処理P71において、作業機械の稼働への影響度が大きいか否かを判定し、第2判定処理P75において作業機械への稼働への影響が小さいか否かを判定してもよい。また、インデックス値演算部S3は、前述のマップの選択の第5の例のように、図6Cに示すフローの第1判定処理P71において、交換・修理難度が中または低であるか否かを判定し、第2判定処理P75において交換・修理難度が低であるか否かを判定してもよい。これらの場合も、インデックス値演算部S3は、その後、各評価点に対する重み付けを選択する処理P72、処理P73、処理76または処理77を実行し、疲労インデックス値算出処理P74において、選択したマップから累積損傷度Dに基づいて、選択した評価点の疲労インデックス値を算出する。
【0094】
次に、図6Aに示す判定P8おいて、疲労管理システムSは、たとえば、応力演算部S1、損傷度演算部S2またはインデックス値演算部S3によって、すべての評価点に対して、応力、累積損傷度、または疲労インデックス値が算出されたか否かの判定を行う。判定P8の結果、すべての評価点の演算が終了していない場合(NO)、処理P4へ戻る。一方、判定P8の結果、すべての評価点の演算が終了している場合(YES)、インデックス値演算部S3は、たとえば、疲労インデックス値が、記憶部15bに記憶された各評価点のしきい値を超えているか否かの判定P9を行う。
【0095】
この判定P9において、インデックス値演算部S3は、すべての評価点の各々の疲労インデックス値を、各評価点のしきい値と比較してもよいし、あらかじめ選定された複数の評価点の各々の疲労インデックス値を、選定された各評価点のしきい値と比較してもよい。判定P9の結果、いずれかの評価点において、疲労インデックス値がしきい値を超えていた場合、たとえば、インデックス値演算部S3は、その評価点に対応する部位の点検を推奨する警報を、送信機19Aを介して情報端末160に送信したり、モニタ19Bに表示させたりすることができる。
【0096】
判定P9の終了後、インデックス値演算部S3は、たとえば、すべての評価点の疲労インデックス値をモニタ19Bおよび記憶部15bに出力する処理P10を行って、判定P1へ戻る。判定P1から処理P10は、たとえば、油圧ショベル10の起動スイッチがオンにされてからオフにされるまで、繰り返し行うことができる。
【0097】
以上のように、本実施形態の疲労管理システムSは、応力演算部S1と、損傷度演算部S2と、インデックス値演算部S3と、を備えている。応力演算部S1は、建設機械の一部に取り付けられたセンサ18の出力に基づいて建設機械の複数の部位に作用する応力を算出する。損傷度演算部S2は、疲労管理システムSが算出した応力に基づいて各々の部位の累積損傷度を算出する。インデックス値演算部S3は、累積損傷度に重み付けがされた疲労インデックス値を各々の部位に対して算出する。
【0098】
この構成により、疲労管理システムSは、たとえば、各々の建設機械、その建設機械の各部品、および、その各部品の複数の部位の各々に特有の条件に応じて、建設機械の部位ごとの疲労を、従来よりも精度よく管理することが可能になる。
【0099】
より具体的には、前記従来のショベル支援装置において直接的に用いられている累積損傷度は、経験則である線形累積損傷則に基づくものであり、1に達したときに物体が疲労破壊に至ると仮定するものである。しかし、累積損傷度は本質的にばらつきを含む値であり、実際には、累積損傷度が1に達する前に物体が疲労破壊に至ったり、累積損傷度が1を超えても物体が疲労破壊に至らなかったりする。そのため、前記従来のショベル支援装置のように、累積損傷度をそのまま用いると、ショベルの部位ごとの疲労の対策が不十分になったり、逆に過剰な対策によって無駄が生じたりするおそれがある。
【0100】
これに対し、本実施形態の疲労管理システムSは、インデックス値演算部S3によって累積損傷度に重み付けがされた疲労インデックス値を、各々の部位に対して算出する。これにより、たとえば、各々の油圧ショベル10、その油圧ショベル10の上部旋回体12、ブーム14a、アーム14b、バケット14c、およびこれらの部品の複数の部位の各々に特有の条件に応じて、各々の部位の疲労を管理することができる。
【0101】
より詳細には、たとえば、油圧ショベル10の各部品のうち、破壊を生じるリスクが高い部品やその部品の特定の部位の疲労インデックス値が、他の部品や他の部位の疲労インデックス値よりも高くなるように、累積損傷度に重み付けをすることができる。そのため、インデックス値演算部S3によって算出された疲労インデックス値を用いることで、破壊を生じるリスクが高い部品および特定の部位の疲労を、より高精度かつ安全に管理することができる。
【0102】
また、本実施形態の疲労管理システムSは、たとえば、僻地の鉱山などのアクセスが困難な現場では、アクセスが容易な現場よりも疲労インデックス値が大きくなるように、インデックス値演算部S3による累積損傷度の重み付けを設定することも可能である。これにより、アクセスが困難な現場では、アクセスが容易な現場よりも早い時期に建設機械の点検を要請することが可能になり、現場の環境に応じた精度の高い建設機械の疲労管理が可能になる。
【0103】
また、本実施形態の疲労管理システムSは、たとえば、建設機械において、交換や修理に時間のかかる部品や、メンテナンスが困難な部位において、他の部品や部位よりも疲労インデックス値が大きくなるように、インデックス値演算部S3による累積損傷度の重み付けを設定することも可能である。これにより、建設機械の各部品の特性や各部位のメンテナンスの容易性に応じた精度の高い建設機械の疲労管理が可能になる。
【0104】
また、本実施形態の疲労管理システムSにおいて、センサ18は、建設機械に作用する力を検出する力センサと、建設機械の姿勢を検出する姿勢センサとを含む。このような力センサや姿勢センサは、建設機械の複数の部位に作用する応力を算出する目的とは異なる目的で従来から建設機械に取り付けられている。そのため、たとえばひずみゲージなど、応力を算出するためだけのセンサを建設機械に取り付ける必要がなくなる。
【0105】
また、本実施形態の疲労管理システムSは、異なる複数のマップ(A)から(D)の中から油圧ショベル10の各部品の部位ごとに一つのマップ(A),(B),(C)または(D)を選択するための条件が記憶された記憶部15bまたは記憶装置150を備えている。そして、インデックス値演算部S3は、油圧ショベル10の各部品の部位ごとに、記憶装置150に記憶された条件に応じた一つのマップ(A),(B),(C)または(D)を選択する。この構成により、油圧ショベル10の各部品の部位ごとの条件に応じて、累積損傷度の増加にともなう疲労インデックス値の増加の仕方を異ならせることができ、各部品および各部位の疲労をそれぞれの条件に応じてより精度よく管理することが可能になる。
【0106】
また、本実施形態の疲労管理システムSにおいて、記憶部15bまたは記憶装置150は、マップ(A),(B),(C)または(D)を選択するための条件として油圧ショベル10の各々の部位に作用する実際の応力と応力演算部S1によって算出される応力との一致度が記憶されている。また、記憶部15bまたは記憶装置150は、その一致度のしきい値と、累積損傷度の増加にともなって疲労インデックス値を増加させる第1のマップ(C)または(D)と、累積損傷度の増加にともなって疲労インデックス値を第1のマップ(C)または(D)よりも早期に増加させる第2のマップ(A)または(B)と、が記憶されている。そして、インデックス値演算部S3は、油圧ショベル10の各々の部位について、前記一致度が前記しきい値以上である場合に第1のマップ(C)または(D)を選択し、前記一致度が前記しきい値よりも低い場合に第2マップ(A)または(B)を選択する。
【0107】
この構成により、前記一致度が前記しきい値以上である場合、すなわち、インデックス値演算部S3による応力の演算が高精度である部位の累積損傷度に対する疲労インデックス値の増加を、前記一致度が前記しきい値より低い場合、すなわち、インデックス値演算部S3による応力の演算が高精度ではない部位の累積損傷度に対する疲労インデックス値の増加よりも緩やかにすることができる。換言すると、応力演算部S1による応力の演算精度が所定のしきい値よりも低い部位では、他の部位よりも累積損傷度に対して疲労インデックス値が早期に増加することで、その部位の疲労に対する注意が喚起される。したがって、油圧ショベル10の部位ごとの疲労を従来よりも精度よく管理することが可能になり、疲労管理システムSの安全性をより向上させることができる。
また、上記では式(5)により演算された累積損傷度Dに基づき、上記の条件で選択されたマップ(A)~(D)に基づいて疲労インデックス値を求めるものだが、次の式(6)により演算で求めることもできる。
【0108】
疲労インデックス値の計算式の一例を、以下の式(6)に示す。式(6)において、i、i2、…は、各部品の各々の部位の疲労インデックス値である。aは、任意の係数である。wa1、wa2、…およびwb1、wb2、…およびb、b2、…は、油圧ショベル10の各部品の各々の部位に特有の重み付けのための数値である。d、d2、…は、式(5)により求められる各部品の各々の部位の累積損傷度である。
【0109】
【数6】
【0110】
各々の油圧ショベル10、各部品および各々の部位についての使用環境、材料特性、およびその他の条件に応じた重み付けwa1、wa2、…およびwb1、wb2、…およびb、b2、…は、たとえば、式(6)のような演算式とともに、記憶部15bに記憶される。これらの重み付けは、たとえば、疲労管理システムSのユーザや販売者が、個別の要求や環境に応じて、モニタ19Bの入力装置や、情報端末160の入力装置に情報を入力することで、任意に変更可能である。重み付けの考え方については、上述と同様の考え方により設定することができ、例えば上述のマップ(A)~(D)を累積損傷度dと重み付けwおよびwとの関係を予め設定した重み付けマップとして作成し、上記と同様の条件で選択するようにしても良い。そしてインデックス値演算部S3は、たとえば、式(6)に示すような演算式を用い、損傷度演算部S2によって算出された累積損傷度d、d2、…から、疲労インデックス値i、i2、…を算出する。この場合の疲労インデックス値iは、上限のない指数である。
【0111】
また、本実施形態の疲労管理システムSは、たとえば、建設機械である油圧ショベル10の各々の部位と疲労インデックス値とを関連付けた画像を生成する画像生成部として機能するインデックス値演算部S3を備えている。さらに、本実施形態の疲労管理システムSは、画像生成部で生成された画像を表示する画像表示装置としてのモニタ19Bを備えている。この構成により、たとえば図7Aから図7Cに示すように、疲労インデックス値を視覚的に示すことができる。
【0112】
図7Aから図7Cは、図2に示す疲労管理システムSにおいて、図2に示すモニタ19Bに表示された画像Gの一例を示す画像図である。図7Aに示す例において、モニタ19Bは、油圧ショベル10のアーム14bの複数の部位の各々と、疲労インデックス値を関連付けた画像Gを表示している。画像Gでは、アーム14bの複数の部位の中から、たとえば、任意の点aから点jまでの10点が選択されている。疲労インデックス値は、たとえば、アーム14bの点aから点jまでの部位の各々に対して、レベルLv.1からレベルLv.5までの5段階の「インデックス」として表示される。レベルLv.1は、疲労インデックス値が5段階で最も小さく、レベルLv.5は、疲労インデックス値が5段階で最も大きい。
【0113】
図7Aに示す例において、画像Gは、アーム14bの画像と、アーム14bの点aから点jまでの部位から引き出された引き出し線と、その引き出し線の先端に表示されて各部位を示す文字を含む円を表示している。この円は、たとえば、インデックスのレベルに応じた直径と色で表示される。具体的には、たとえば、インデックスのレベルが高く疲労インデックス値が高い場合には、各部位に対応する円の直径が大きく表示され、インデックスのレベルが低く疲労インデックス値が低い場合には、各部位に対応する円の直径が小さく表示される。また、たとえば、インデックスのレベルが高く疲労インデックス値が高い場合には、各部位に対応する円および表のセルが濃色になり、インデックスのレベルが低く疲労インデックス値が低い場合には、各部位に対応する円および表のセルが淡色になる。これにより、油圧ショベル10の各部品の各々の部位の疲労インデックス値を視覚的に示すことができる。
【0114】
図7Bに示す例において、モニタ19Bは、油圧ショベル10の上部旋回体12を構成する構造体の複数の部位の各々と、疲労インデックス値を関連付けた画像Gを表示している。また、図7Cに示す例において、モニタ19Bは、油圧ショベル10の下部走行体11を構成する構造体の複数の部位の各々と、疲労インデックス値を関連付けた画像Gを表示している。これらの例においても、図7Aに示す例と同様に、油圧ショベル10の各部品の各々の部位の疲労インデックス値を視覚的に示すことができる。なお、これらの例ではアーム14b、上部旋回体12および下部走行体11の構造体、において予め定めた10箇所について表示する例を示したが、予め設定された所定の疲労インデックス値を超えた任意の個所について同様に疲労インデックス値を表示するようにしても良い。
【0115】
また、本実施形態の疲労管理システムSは、複数の建設機械とデータ通信を行うサーバ140と、そのサーバ140に接続された記憶装置150と、サーバ140とデータ通信を行う情報端末160と、を備えている。この情報端末160は、たとえば、疲労インデックス値の時系列データに基づいて疲労度を比較する比較部を有している。この構成により、たとえば、建設機械の特定の部位の疲労度とそのしきい値を比較して、建設機械の特定の部位の疲労度をより精度よく管理することができる。また、複数の建設機械の間で、疲労度を比較することができる。
【0116】
図8は、特定の建設機械の疲労インデックス値の時系列データの一例を示すグラフである。より具体的には、図8は、たとえば、複数の油圧ショベル10のうちの一台であるA号機のブーム14aの図7Aに示すe点の疲労インデックス値の時系列データである。このように、疲労インデックス値の時系列データによりe点の疲労度の推移を把握することができ、e点の疲労度が所定のしきい値に達した時点で、たとえば点検を推奨する警報を発するなど、適切な対応を取ることが可能になる。
【0117】
図9は、複数の建設機械の疲労インデックス値の時系列データの一例を示すグラフである。より具体的には、図9は、たとえば、複数の油圧ショベル10のうち、A号機からD号機までの4台の油圧ショベル10のそれぞれのブーム14aにおける図7Aに示すe点の疲労インデックス値の時系列データである。図9に示す例において、情報端末160の比較部は、A号機からD号機までの4台の油圧ショベル10の疲労インデックス値の時系列データに基づいて、各油圧ショベル10の疲労度を比較する。これにより、B号機の疲労度が最も高く、C号機の疲労度が最も低いことが分かる。これにより、たとえば、疲労度の高い油圧ショベル10を負荷の低い作業に配置し、疲労度の低い油圧ショベル10を負荷の高い作業に配置するなど、各油圧ショベル10の疲労度に応じた適切な作業計画を立てることが可能になる。なお、図8図9において用いる疲労インデックス値は、指数として求めた疲労インデックス値である。
【0118】
以上説明したように、本実施形態によれば、疲労インデックス値を用いることで、建設機械の部位ごとの疲労を従来よりも精度よく管理することが可能な疲労管理システムSを提供することができる。なお、本実施形態の疲労管理システムSの管理対象である建設機械は、油圧ショベル10に限定されない。
【0119】
図10は、疲労管理システムSの管理対象である建設機械の他の例を示すダンプトラック20の側面図である。ダンプトラック20は、たとえば、鉱山で採掘した砕石物等の運搬対象物を運搬する大型の運搬車両である。ダンプトラック20は、たとえば、車体フレーム21と、左右の前輪22Fと、左右の後輪22Rと、左右の前輪側サスペンション装置23Fと、左右の後輪側サスペンション装置23Rと、荷台24と、左右のホイストシリンダ25と、キャブ26と、走行駆動装置27と、建屋28と、を有している。
【0120】
車体フレーム21は、たとえば、前輪22F、後輪22R、前輪側サスペンション装置23F、後輪側サスペンション装置23R、荷台24、ホイストシリンダ25、キャブ26、走行駆動装置27、および建屋28を支持する枠状の構造体である。
【0121】
左右の前輪22Fは、車体フレーム21の前部に回転可能に支持された操舵輪である。左右の後輪22Rは、車体フレーム21の後部に回転可能支持された駆動輪である。左右の前輪側サスペンション装置23Fは、車体フレーム21の前部に取り付けられ、左右の前輪22Fを弾性的に支持している。
【0122】
左右の後輪側サスペンション装置23Rは、車体フレーム21の後部に設けられ、左右の後輪22Rを弾性的に支持している。左右の後輪側サスペンション装置23Rの上端は、車体フレーム21の後部に設けられた左右のブラケット21bに取り付けられている。左右の後輪側サスペンション装置23Rの下端は、走行駆動装置27のアクスルハウジング27aに取り付けられている。
【0123】
荷台24は、車体フレーム21の上に傾動可能に取り付けられ、たとえばダンプトラック20の前後方向における長さが10メートルを超えるような大型の容器であり、採掘された大量の砕石等を積載する。荷台24は、たとえば、底部の後方側の部分が車体フレーム21の左右のブラケット21bに連結ピン21pを介して連結され、底部の前方側の部分がホイストシリンダ25の上端に連結されている。
【0124】
左右のホイストシリンダ25は、下端が車体フレーム21に回動可能に連結され、上端が荷台24に回動可能に連結されている。ホイストシリンダ8は、たとえば油圧シリンダである。これにより、荷台24は、ホイストシリンダ25が伸長すると、連結ピン21pを中心に回動して、前部が上方に位置し、後部が下方に位置する排出位置に傾動する。またこの状態からホイストシリンダ25が収縮すると、荷台24は、連結ピン21pを中心に逆方向に回動して、図10に示す積載位置に戻る。
【0125】
走行駆動装置27は、左右の後輪22Rに接続されてこれらを回転駆動する。走行駆動装置27は、たとえば、アクスルハウジング27aと、ブラケット27bとを有している。アクスルハウジング27aは、たとえば、図示を省略する走行モータおよび減速装置等を収容して左右に延びる円筒状に設けられている。ブラケット27bは、たとえば、アクスルハウジング27aから前方に突出するように設けられている。ブラケット27bの前端部は、車体フレーム21のマウント部材21mに対して回動可能に取り付けられている。
【0126】
建屋28は、車体フレーム21の前部に機械室を画定する。建屋28は、その内部に図示を省略するエンジン、油圧ポンプ等を収容している。キャブ26は、建屋28の上部に位置する平坦なフロアの上に設けられている。キャブ26は、ボックス状に設けられオペレータが搭乗する運転室を画定する。図示を省略するが、キャブ26内には、オペレータが着座する運転席、ステアリングホイール、操作ペダル等が設けられている。
【0127】
ダンプトラック20は、たとえば、図2に示す油圧ショベル10のコントローラ15と同様のコントローラを備えている。ダンプトラック20のコントローラは、たとえば、応力演算部S1と、損傷度演算部S2と、インデックス値演算部S3とを構成する。また、ダンプトラック20は、そのダンプトラック20の姿勢を検出する姿勢センサを備えている。姿勢センサは、たとえば、加速度センサなどによって構成することができる。
【0128】
また、ダンプトラック20の前輪側サスペンション装置23Fおよび後輪側サスペンション装置23Rのシリンダには、油圧ショベル10の油圧センサ18bと同様の油圧センサが設けられている。ダンプトラック20の油圧センサは、たとえば、前輪側サスペンション装置23Fおよび後輪側サスペンション装置23Rに作用する力を検出する力センサである。また、ダンプトラック20は、たとえば、図2に示す前述の油圧ショベル10と同様に、送信機19Aおよびモニタ19Bを備えている。
【0129】
したがって、本実施形態の疲労管理システムSによれば、前述の油圧ショベル10と同様に、ダンプトラック20についても、各部品の部位ごとの疲労を従来よりも精度よく管理することができる。
【0130】
より詳細には、疲労管理システムSは、前述のように、応力演算部S1と、損傷度演算部S2と、インデックス値演算部S3と、を備えている。この構成により、疲労管理システムSは、前述の油圧ショベル10と同様に、たとえば、各々のダンプトラック20、そのダンプトラック20の各部品、および、その各部品の複数の部位の各々に特有の条件に応じて、ダンプトラック20の部位ごとの疲労を、従来よりも精度よく管理することが可能になる。
【0131】
図11は、本実施形態の疲労管理システムSのモニタ画像の一例を示す画像図である。図11に示す例において、モニタ19Bは、ダンプトラック20の車体フレーム21の複数の部位の各々と、疲労インデックス値を関連付けた画像Gを表示している。本実施形態の疲労管理システムSにおいても、図7Aから図7Cに示す例と同様に、ダンプトラック20の各部品の各々の部位の疲労インデックス値を視覚的に示すことができる。
【0132】
以上、図面を用いて本開示に係る疲労管理システムの実施形態を詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本開示に含まれるものである。
【符号の説明】
【0133】
1 油圧シリンダ
10 油圧ショベル(建設機械)
15b 記憶部
18 センサ
18a 角度センサ(姿勢センサ)
18b 油圧センサ(力センサ、圧力センサ)
18c 角速度センサ(姿勢センサ)
18d 加速度センサ(姿勢センサ)
18e 傾斜角センサ(姿勢センサ)
19B モニタ(画像表示装置)
20 ダンプトラック(建設機械)
140 サーバ
150 記憶装置
160 情報端末(比較部)
G 画像
S 疲労管理システム
S1 応力演算部
S2 損傷度演算部
S3 インデックス値演算部(画像生成部)
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10
図11