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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-08
(45)【発行日】2022-09-16
(54)【発明の名称】筒状織物の製造装置及び製造方法
(51)【国際特許分類】
   D03D 37/00 20060101AFI20220909BHJP
   D03D 1/00 20060101ALI20220909BHJP
   D03D 3/02 20060101ALI20220909BHJP
【FI】
D03D37/00
D03D1/00 A
D03D3/02
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018100562
(22)【出願日】2018-05-25
(65)【公開番号】P2019203231
(43)【公開日】2019-11-28
【審査請求日】2020-03-19
(73)【特許権者】
【識別番号】592029256
【氏名又は名称】福井県
(72)【発明者】
【氏名】川邊 和正
(72)【発明者】
【氏名】川端 清二
(72)【発明者】
【氏名】岩下 美和
(72)【発明者】
【氏名】村上 哲彦
【審査官】▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-102786(JP,U)
【文献】特許第162135(JP,C1)
【文献】実開昭50-088679(JP,U)
【文献】国際公開第80/01173(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03D 1/00-51/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状のガイド部の内側に複数の扁平状もしくはテープ状の経糸を周方向に所定間隔で配列するように送給するとともに当該経糸を開閉口させる経糸送給部と、扁平状もしくはテープ状の緯糸を前記ガイド部に沿うように送給して開口された前記経糸の間に挿入する緯糸送給部と、前記経糸を開閉口させながら前記緯糸を挿入して製織された製織部分を前記ガイド部の中心軸に沿って移送させる移送部とを備えた筒状織物の製造装置であって、前記緯糸送給部は、前記緯糸を給糸する給糸部と、前記給糸部から送り出された前記緯糸を案内するガイドローラと、案内面が前記中心軸と平行になるように設定されているとともに前記ガイドローラにより案内された前記緯糸を前記ガイド部に沿うように案内して開口された前記経糸の間に挿入する挿入ローラと、開閉口する前記経糸の間に配置された複数の移動手段とを備えており、前記移動手段は、前記経糸が開口されて形成された環状空間に沿って配列されており、前記給糸部は、前記移動手段が配列された移動経路を前記移動手段により前記中心軸の周方向に回動するようになっている筒状織物の製造装置。
【請求項2】
前記移動経路は、前記ガイド部の外径に対して2倍~5倍の直径で環状に設定されている請求項1に記載の筒状織物の製造装置。
【請求項3】
前記移動手段は、開閉口する前記経糸の間に配置された搬送ローラを備えており、前記給糸部は、前記搬送ローラに支持されて回動する請求項1又は2に記載の筒状織物の製造装置。
【請求項4】
前記移動経路の内側又は外側には、前記移動経路に沿って前記給糸部を案内する案内部が設けられている請求項1から3のいずれかに記載の筒状織物の製造装置。
【請求項5】
前記案内部は、開閉口する前記経糸の間に配置された案内ローラを備えており、前記給糸部は、前記案内ローラに当接する被案内部材が設けられている請求項4に記載の筒状織物の製造装置。
【請求項6】
前記移動手段を駆動して前記給糸部を移動させる駆動手段を備えている請求項1から5のいずれかに記載の筒状織物の製造装置。
【請求項7】
環状のガイド部に対して周方向に所定間隔で配列された複数の扁平状もしくはテープ状の経糸を開閉口させながら扁平状もしくはテープ状の緯糸を挿入して製織し、製織部分を前記ガイド部の中心軸に沿って移送させて筒状に織成する筒状織物の製造方法であって、開閉口する前記経糸の間に配置された複数の移動手段により前記緯糸を給糸する給糸部を前記中心軸の周方向に回動させ、前記給糸部から送り出された前記緯糸をガイドローラにより案内し、案内面が前記中心軸と平行になるように設定されている挿入ローラにより前記ガイドローラにより案内された前記緯糸を前記ガイド部に沿うように案内して開口された前記経糸の間に前記緯糸を挿入する筒状織物の製造方法。
【請求項8】
前記移動手段は、前記ガイド部の外径に対して2倍~5倍の直径で環状に配列されており、前記移動手段を駆動して前記給糸部を回動させる請求項7に記載の筒状織物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周方向に所定の間隔で配列された経糸の間に緯糸を挿入して製織する筒状織物の製造装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、環状織機といった筒状織物を製造する装置が実用化されてきている。こうした装置では、環状のゲージリングに経糸を配列して交互に開口させ、開口された空間に緯糸を挿入することで織成動作が行われるようになっている。例えば、特許文献1では、緯糸を挿入するシャトルが走行するシャトル軌道の周縁に固定リードを延長した板状物を多数配列し、板状物のエッジに対してシャトルに設けられた歯車を係合させてマグネットにより走行させる点が記載されている。また、特許文献2では、シャトルを走行させるゲートに不連続のガイドレールを形成し、シャトルに取り付けた車輪をガイドレールに係合させてシャトルを支持するようにした点が記載されている。また、特許文献3では、経糸保持体を2つの群でそれぞれ環状に配列して2つの群の間の空間に緯入れ機構を移動するように構成した点が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭58-126341号公報
【文献】特開平2-293440号公報
【文献】特開2013-87377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、マグネットを用いてシャトルを走行させるようにしているが、シャトルが走行する際に経糸に接触するようになるため、経糸にダメージを与えるおそれがある。例えば、炭素繊維からなる繊維束を開繊したテープヤーンを用いて織成する場合、テープヤーンに接触することで炭素繊維の毛羽立ちや糸切れを生じやすくなり、走行するテープヤーンに対して接触しないように取り扱うことが求められる。
【0005】
特許文献2では、シャトルに取り付けた車輪をガイドレールに係合させて走行させるようにしているが、シャトルを走行させる駆動機構が特許文献1と同じようにマグネット等を用いる場合には、経糸との接触は避けられなくなる。また、特許文献3では、経糸保持体を移動させて緯入れ動作を行うようにしているが、緯入れ機構が経糸保持体よりも外側に配置されており、複雑な機構となって装置が大型化することが避けられてない。
【0006】
そこで、本発明は、経糸にダメージを与えることなく緯入れ動作を行うことができる筒状織物の製造装置及び製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る筒状織物の製造装置は、環状のガイド部の内側に複数の経糸を周方向に所定間隔で配列するように送給するとともに当該経糸を開閉口させる経糸送給部と、緯糸を前記ガイド部に沿うように送給して開口された前記経糸の間に挿入する緯糸送給部と、前記経糸を開閉口させながら前記緯糸を挿入して製織された製織部分を前記ガイド部の中心軸に沿って移送させる移送部とを備えた筒状織物の製造装置であって、前記緯糸送給部は、前記緯糸を給糸する給糸部と、開閉口する前記経糸の間に配置された複数の移動手段とを備えており、前記移動手段は、前記経糸が開口されて形成された環状空間に沿って配列されており、前記給糸部は、前記移動手段が配列された移動経路を前記移動手段により前記中心軸の周方向に回動するようになっている。さらに、前記移動経路は、前記ガイド部の外径に対して2倍~5倍の直径で環状に設定されている。さらに、前記移動手段は、開閉口する前記経糸の間に配置された搬送ローラを備えており、前記給糸部は、前記搬送ローラに支持されて回動する。さらに、前記移動経路の内側又は外側には、前記移動経路に沿って前記給糸部を案内する案内部が設けられている。さらに、前記案内部は、開閉口する前記経糸の間に配置された案内ローラを備えており、前記給糸部は、前記案内ローラに当接する被案内部材が設けられている。さらに、前記移動手段を駆動して前記給糸部を移動させる駆動手段を備えている。
【0008】
本発明に係る筒状織物の製造方法は、環状のガイド部に対して周方向に所定間隔で配列された複数の経糸を開閉口させながら緯糸を挿入して製織し、製織部分を前記ガイド部の中心軸に沿って移送させて筒状に織成する筒状織物の製造方法であって、開閉口する前記経糸の間に配置された複数の移動手段により前記緯糸を給糸する給糸部を前記中心軸の周方向に回動させて前記緯糸を挿入する。さらに、前記移動手段は、前記ガイド部の外径に対して2倍~5倍の直径で環状に配列されており、前記移動手段を駆動して前記給糸部を回動させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、上記の構成を備えているので、経糸にダメージを与えることなく緯入れ動作を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る筒状織物の製造装置に関する概略構成図である。
図2図1に示す製造装置を中心軸Oに沿う移送方向Aからみた概略構成図である。
図3図1に示す製造装置を中心軸Oと直交する方向からみた概略断面図である。
図4】搬送ローラを用いた移動手段の一例を示す一部拡大図である。
図5】移動手段を移動方向からみた一部拡大図及び経糸Tの挿入方向からみた一部拡大図である。
図6図5に示す移動手段の変形例に関する一部拡大図である。
図7】移動手段の別の変形例に関する一部拡大図である。
図8】移動手段の別の変形例に関する一部拡大図である。
図9】移動手段のさらに別の変形例に関する一部拡大図である。
図10図9に示す移動手段を移動方向からみた一部拡大図である。
図11図9に示す例の変形例に関する一部拡大図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る実施形態について詳しく説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を実施するにあたって好ましい具体例であるから、技術的に種々の限定がなされているが、本発明は、以下の説明において特に発明を限定する旨明記されていない限り、これらの形態に限定されるものではない。
【0012】
図1は、本発明に係る筒状織物の製造装置に関する概略構成図であり、図2は、図1に示す製造装置を中心軸Oに沿う移送方向Aからみた概略構成図であり、図3は、中心軸Oと直交する方向からみた概略断面図である。
【0013】
製造装置1は、環状のガイド部2の内側に複数の経糸Tを周方向に所定間隔で配列するように送給するとともに経糸Tを開閉口させる経糸送給部3と、緯糸Yをガイド部2に沿うように送給して開口された経糸Tの間に挿入する緯糸送給部4と、経糸Tを開閉口させながら緯糸Yを挿入して製織された製織部分Wをガイド部2の中心軸Oに沿って移送させる移送部5とを備えている。
【0014】
この例では、経糸T及び緯糸Yは、炭素繊維等の長繊維を所定の幅に開繊してテープ状に形成したテープヤーンが用いられている。こうしたテープヤーンを用いて筒状織物を織成する場合には、テープヤーンに接触して長繊維が切断又は剥離したり、テープヤーンが搬送中に捩れて変形するといったダメージをできるだけ避けることが求められる。なお、炭素繊維束に樹脂が含浸したプリプレグテープを用いても良い。
【0015】
本実施形態では、経糸Tの糸幅は2mm以上が好ましく、より好ましくは5mm以上である。本実施形態で製造される筒状織物は、産業用資材に好適であり、経糸T及び緯糸Yに使用される繊維束は、炭素繊維束、ガラス繊維束、アラミド繊維束などの強化繊維束が用途に合わせて用いられる。また、土木用途などの産業用資材では太繊度のポリエステル繊維束を用いることが好ましい。これらの強化繊維束は太繊度繊維束で形態が扁平状で、糸幅が2mm以上のものが使用される。
【0016】
環状のガイド部2は、断面形状が円形に形成されており、経糸Tを内側にスムーズに挿入できるようになっている。なお、ガイド部2としては、断面形状が円形以外の楕円形等の形状に形成してもよく、特に限定されない。
【0017】
経糸送給部3は、経糸Tを巻き付けてセットされた給糸部30から送り出された経糸Tを案内するガイドローラ31、及び、ガイドローラ31により案内された経糸Tを開口するヘルド32を備えており、ヘルド32から環状のガイド部2の内側に経糸Tが送給されるようになっている。ヘルド32は、一対のローラで経糸Tを挟持した状態で中心軸Oに沿う方向にモータ等の駆動装置(図示せず)で揺動するようになっており、ヘルド32が上下に位置したときに経糸Tは開口し、ヘルド32がガイド部2と平行する位置になったときには経糸Tは閉口した状態になる。
【0018】
経糸T毎に設けられたガイドローラ31及びヘルド32は、中心軸Oの方向からみて中心軸Oを中心に周方向に配列しており、経糸Tの各送給路は、中心軸Oに向かう方向に設定されている。そして、ガイド部2の内側に送給された経糸Tは、ガイド部2の周方向に所定間隔で配列されている。
【0019】
緯糸送給部4は、緯糸Yをボビンに巻き付けてセットされた給糸部40、給糸部40から送り出された緯糸Yを案内するガイドローラ41、及び、ガイドローラ41により案内された緯糸Yをガイド部2に沿うように案内してガイド部2の内側に近接して開口された経糸Tの間に挿入する挿入ローラ42を備えている。緯糸Yは、転がし取りで一定の張力を加えながら給糸を供給するようになっている。転がし取りで緯糸Yを給糸することで、緯糸Yには捻れや幅収縮が少なくなり、高品質な織物が製織されるようになる。
【0020】
挿入ローラ42は、緯糸Yを捩れることなくガイド部2の周方向に沿うように案内するため、緯糸Yを案内する周面を中心軸Oと平行になるように設定している。特に、緯糸Yが開繊糸のように幅広の糸の場合、緯糸Yをガイド部2の周方向に沿って巻き付けるように案内する際に緯糸Yが捩れやすくなる。そのため、挿入ローラ42の案内面を中心軸Oと平行になるように設定することで、緯糸Yが捩れる、折れ曲る等の変形することなく経糸Tの間に挿入されて経糸Tに密着し、安定して製織することが可能となる。
【0021】
給糸部40は、経糸Tの開口された環状空間に沿って設定された移動経路を中心軸Oの周方向に回動することで、緯糸Yが織り込まれていく。ガイドローラ41及び挿入ローラ42は、給糸部40とともに支持体(図示せず)に載置されて一体となって回動するようになっている。給糸部40を移動経路に沿って移動させる移動手段として、開閉口する経糸Tの間に配置された複数の搬送ローラ60が設けられている。搬送ローラ60は、環状の支持レール61に回動可能に軸支されており、支持レール61は、ガイド部2と同心円状となるように配置されて移動経路を設定するようになっている。
【0022】
搬送ローラ60は、経糸Tの間
に配置されており、経糸Tの開閉口動作による揺動範囲の間に経糸Tに接触しないように配置されている。配置する数は、経糸Tの本数以下の数に設定することができ、移動手段の構成に合わせて複数の経糸T毎に配置してもよく、特に限定されない。
【0023】
支持レール61は、ガイド部2の外径の2倍~5倍の直径に設定することが好ましい。支持レール61の直径がガイド部2の外径の2倍よりも小さいと経糸Tの間の間隔が狭く搬送ローラ60を配置するスペースを確保するのが難しい。また、支持レール61の直径がガイド部2の外径の5倍よりも大きくなると経糸Tの走行距離が長くなり、経糸Tの開閉口動作に必要な張力を一定に保持することが難しくなるため、安定した織成動作を行うことが困難となる。
【0024】
経糸Tの糸幅が2mm以上、より好ましくは5mm以上あることで、ガイド部2の外径2倍以上の位置において、経糸T間の間隔が広くなり、経糸Tの間に配置される搬送ローラ60がより直径の大きなものを配置することが可能となる。
【0025】
例えば、糸幅2mmの場合、ガイド部2の外径2倍の位置では経糸Tの間隔が2mm、ガイド部2の外径5倍の位置では経糸Tの間隔が8mmになる。また、糸幅5mmの場合、ガイド部2の外径2倍の位置では経糸Tの間隔が5mm、ガイド部2の外径5倍の位置では経糸Tの間隔が20mmになる。搬送ローラ60として、緯糸送給部の重量を支えスムーズな回転を行うためには、直径2mm以上のものが好ましいため、経糸Tの間隔を広く設定できる糸幅として2mm以上あることは好ましい。
【0026】
なお、糸幅が広くなるほど、緯糸送給部4を支持する支持レール61はその直径を小さくでき、経糸Tの開閉口における張力をより制御し易くなり、高速かつスムーズな製織が可能となる。
【0027】
図4は、搬送ローラ60を用いた移動手段の一例を示す一部拡大図である。この例では、搬送ローラ60を駆動モータ62により回転駆動して給糸部40を移動させるようにしている。搬送ローラ60は、それぞれ回転軸に従動プーリ60aが取り付けられており、隣り合う搬送ローラ60の従動プーリ60aの間には無端状の伝動ベルト60bが巻架されている。そのため、搬送ローラ60は、連動して同じ方向に回転駆動されるようになっている。駆動モータ62は、経糸Tの開閉口動作による揺動範囲外に配置されており、駆動軸に取り付けられた駆動プーリ62aと1つの搬送ローラ60に連動する従動プーリ62cとの間に駆動ベルト62bが巻架されている。
【0028】
図5は、移動手段を移動方向からみた一部拡大図(図5(a))及び経糸Tの挿入方向からみた一部拡大図(図5(b))である。搬送ローラ60は、経糸Tの間に配置されて、支持レール61に立設した軸支部材61aに回転可能に軸支されている。経糸Tは、開閉口動作の際に軸支部材61aの間を揺動するため、経糸Tは搬送ローラ60に影響を受けることなくスムーズに開閉口動作を行うことができる。駆動プーリ62aと連動する従動プーリ62cの回転軸には別の従動プーリ62dが取り付けられており、従動プーリ62dは、搬送ローラ60の従動プーリ60aとは反対側に回転軸に取り付けられた従動プーリ60cとの間に伝動ベルト62eが巻架されている。そのため、駆動モータ62を回転駆動することで、駆動ベルト62b、駆動プーリ62c及び62d、伝動ベルト62eを介して従動プーリ60cとともに1つの搬送ローラ60が回転駆動されるようになる。そして、1つの搬送ローラ60が回転駆動されることで、伝動ベルト60bを介して他の搬送ローラ60が連動して回転駆動されるようになる。駆動モータ62は、所定数の搬送ローラ毎に配置しておき、複数の駆動モータ62を同期して回転駆動することで、搬送ローラ60全体を一斉に回転駆動して移動動作を行うようにすることもできる。
【0029】
給糸部40は、緯糸Yを巻き付けたボビンの回転軸が支持体40aに軸支されており、支持体40aの底部には、搬送ローラ60に接触する当接部40bが形成されている。給糸部40は、複数の搬送ローラ60上に移動可能に載置した状態に設定されており、搬送ローラ60全体が一斉回転することで当接部40bが移動方向に押し出されるようになって、給糸部40が所定の移動速度により移動するようになる。
【0030】
図6は、図5に示す移動手段の変形例に関する一部拡大図である。この例では、支持体40aの底部には、複数の車輪40cが回転可能に取り付けられている。給糸部40は、複数の車輪40cを介して搬送ローラ60に接触しており、搬送ローラ60全体が一斉回転することで車輪40cが移動方向に押し出されるように回転する。車輪40cと搬送ローラ60の接触面について、共に摩擦抵抗が高くなる表面状態にすることで、搬送ローラ60の回転により給糸部40がスムーズに移動するようになる。
【0031】
なお、給糸部40がガイド部2の周囲をスムーズに回動するように、搬送ローラ60及び車輪40cの形状を適宜変更することも可能で、例えば円錐台状に形成して搬送面を内側に傾斜した状態とすることもできる。
【0032】
図7及び図8は、移動手段の別の変形例に関する一部拡大図である。図7に示す例では、搬送ローラ60は、車輪40cが嵌合する溝部60dが外周面に形成されており、車輪40cが溝部60d内を移動することで、脱輪を防止して移動動作を確実に行うことができる。図8に示す例では、図7に示す例において、給糸部40は、支持体40aの内側面に内方に向かって突出する延設部40dが形成されており、延設部40dの底部には、移動補助手段として補助車輪40eが回転可能に取り付けられている。補助車輪40eは、軸支部材61aの内側に立設する複数の接触部材63が配置されており、給糸部40の移動の際に補助車輪40eは接触部材63の上面に接触した状態で移動するようになる。そのため、給糸部40は内側において接触部材63により支持された状態で移動するようになるため、安定した移動動作を行うことができる。
【0033】
図9は、移動手段のさらに別の変形例に関する一部拡大図であり、図10は、図9に示す移動手段を移動方向からみた一部拡大図である。この例では、給糸部40の外側面に外方に向かって被案内部43を延設し、被案内部43を内側及び外側に所定間隔で配置された複数対の案内ローラ70で挟持して移動させるようにしている。
【0034】
給糸部40は、緯糸Yを巻き付けたボビンの回転軸が支持体40aに軸支されており、支持体40aの底部には、搬送ローラ60に接触する当接部40bが形成されている。搬送ローラ60は、経糸Tの間に配置された軸支部材63の上部に回転可能に軸支されており、当接部40bは搬送ローラ60上に移動可能に載置されている。支持体40aの両端部から外方に向かって延設された被案内部43には、案内ローラ70の間に配置されるサイド部材43aが下方に向かって垂設されている。案内ローラ70は、内側に配列された案内ローラ70及び外側に配列された案内ローラ70が搬送ローラ60の移動経路と同心円状に配置されており、内側及び外側の案内ローラ70の間に案内経路が環状に形成されている。案内ローラ70は、軸支部材71aに軸支されて回転軸が上下方向に沿うように配置されており、サイド部材43aは、案内経路に沿うように湾曲成形されているので、内側及び外側の案内ローラ70の間に移動可能に挟持されたサイド部材43aは、案内経路をスムーズに移動するようになっている。
【0035】
外側に配列された案内ローラ70の軸支部材71aには、下部に従動プーリ70bが取り付けられており、隣り合う軸支部材71aの従動プーリ70bには伝動ベルト71が巻架されている。そのため、外側の案内ローラ70は、伝動ベルト71を介して連動して回転するようになる。外側の案内ローラ70の1つの軸支部材71aには、駆動プーリ72cが取り付けられており、駆動プーリ72cは、駆動モータ72の駆動プーリ72aと駆動ベルト72bを介して連動するようになっている。
【0036】
駆動モータ72を回転駆動することで、駆動ベルト72bを介して1つの案内ローラ70が回転駆動されるようになり、1つの案内ローラ70に回転動作により伝動ベルト71を介して他の案内ローラ70が連動して回転駆動されるようになる。外側の案内ローラ70が一斉に回転駆動されることで、案内ローラ70に挟持されたサイド部材43aが移動するようになり、それに伴って給糸部40が所定の速度で移動経路に沿って移動動作を行うようになる。
【0037】
駆動モータ72は、所定数の案内ローラ毎に配置しておき、複数の駆動モータ72を同期して回転駆動することで、案内ローラ70全体を一斉に回転駆動して移動動作を行うようにすることができる。
【0038】
図9及び図10で説明した例では、外側の案内ローラ70を回転駆動するようにしているが、内側の案内ローラ70を回転駆動するようにすることもできる。また、案内ローラ70全体を移動経路の内側に配置して給糸部40を案内動作するようにすることもできる。また、搬送ローラ60上に当接部40bを載置して給糸部40を移動させるようにしているが、当接部40bの底部に車輪を取り付けて移動動作をスムーズに行うようにすることもでき、公知の移動手段を必要に応じて適宜採用すればよい。
【0039】
図11は、図9に示す例の変形例に関する一部拡大図である。この例では、緯糸送給部4は、図9に示す例と同様に、給糸部40の外側面に外方に向かって被案内部43を延設し、案内ローラ70の間に配置され案内経路に沿うように湾曲に形成されたサイド部材43aが取り付けられている。案内ローラ70は、サイド部材43aの内側に配列された案内ローラ70及び外側に配列された案内ローラ70が一対となり、搬送ローラ60の移動経路と同心円状に30度毎に配置されている。そして、案内ローラ70は、それぞれ外側の案内ローラ70を駆動モータ72の回転駆動により駆動プーリ72aと駆動ベルト72bを介して伝動し回転するようになっている。
【0040】
移送部5は、ニップローラ50及び巻取ローラ51を備えており、ニップローラ50は、ガイド部2において織成された筒状の製織部分Wを移送方向Aに移送させながら2つに折り畳んだ状態に圧接していき、巻取ローラ51は、圧接されてシート状に形成された筒状織物を巻き取っていく。
【0041】
以上説明したように、環状のガイド部2に対して周方向に所定間隔で配列された複数の経糸Tを開閉口させながら緯糸Yを挿入して製織し、製織部分をガイド部2の中心軸Oに沿って移送させて筒状に織成する場合に、開閉口する経糸Tの間に配置された複数の搬送ローラ等の移動手段を用いて緯糸Yを給糸する給糸部40を中心軸Oの周方向に回動させて緯糸Yを挿入するようにしているので、経糸Tにダメージを与えることなく緯入れ動作を行うことができる。
【実施例
【0042】
[実施例1] 図1に示す製造装置において、図11に示す緯糸送給部を組み込んだ筒状織物の製造装置により筒状織物を製造した。環状のガイド部2の内径を直径450mm(内周の長さ約1414mm)に設定した。製造に用いた経糸T及び緯糸Yは以下の通りである。経糸T;炭素繊維束;T700SC-50C-12K(東レ株式会社製、幅約5mm)、本数250本緯糸Y;炭素繊維束;T700SC-50C-12K(東レ株式会社製、幅約5mm)
【0043】
経糸Tは、ガイド部2の内側に送給されて周方向に等間隔で挿入されるように配置した。案内ローラ70が回転することにより、緯糸送給部4はガイド部2の周囲を回転移動し、緯糸Yが給糸部40から解じょされてガイド部2に送給されるようになる。緯糸Yの挿入速度は、60本/分とした。製織部分の中心軸方向の移送速度は約300mm/分とし、筒状織物(周長約1414mm)を連続織成した。
【0044】
製造された筒状織物は、経糸T及び緯糸Yに幅収縮がなく、また捻れが発生することは見られなかった。高品質の筒状織物を安定して製造することが確認できた。
【符号の説明】
【0045】
1・・・筒状織物の製造装置、2・・・ガイド部、3・・・経糸送給部、4・・・緯糸送給部、40・・・給糸部、43・・・被案内部、60・・・搬送ローラ、70・・・案内ローラ、5・・・移送部
図1
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図11