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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-08
(45)【発行日】2022-09-16
(54)【発明の名称】空調ユニット
(51)【国際特許分類】
   F24F 1/0007 20190101AFI20220909BHJP
   F24F 13/22 20060101ALI20220909BHJP
   F24F 1/0025 20190101ALI20220909BHJP
   F24F 1/0047 20190101ALI20220909BHJP
   F24F 1/0057 20190101ALI20220909BHJP
   F24F 1/0063 20190101ALI20220909BHJP
   F24F 1/0073 20190101ALI20220909BHJP
   F24F 11/70 20180101ALI20220909BHJP
【FI】
F24F1/0007 321
F24F1/0007 361F
F24F1/0025
F24F1/0047
F24F1/0057
F24F1/0063
F24F1/0073
F24F11/70
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2017526027
(86)(22)【出願日】2015-07-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2017-09-14
(86)【国際出願番号】 GB2015052221
(87)【国際公開番号】W WO2016016659
(87)【国際公開日】2016-02-04
【審査請求日】2018-07-31
【審判番号】
【審判請求日】2021-03-31
(31)【優先権主張番号】1413709.5
(32)【優先日】2014-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】521390279
【氏名又は名称】アルタス エア リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ARTUS AIR LIMITED
【住所又は居所原語表記】8 Fitzroy Street, London W1T 4BJ, United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】100119091
【弁理士】
【氏名又は名称】豊山 おぎ
(72)【発明者】
【氏名】ロジャー・オルセン
【合議体】
【審判長】松下 聡
【審判官】田村 佳孝
【審判官】平城 俊雅
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/111372(WO,A1)
【文献】特開2002-5469(JP,A)
【文献】特開2011-169495(JP,A)
【文献】特開2004-176930(JP,A)
【文献】特開2010-249401(JP,A)
【文献】実開昭48-35562(JP,U)
【文献】特開2013-88013(JP,A)
【文献】特開平8-82438(JP,A)
【文献】特開2005-249328(JP,A)
【文献】特開2000-54994(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 1/00 - 13/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気入口部及び空気出口部を含む主本体部であって、前記空気入口部と前記空気出口部との間に空気流路を画定している主本体部と、
前記空気流路中に配設されているファンと、
前記空気流路中、前記ファンの上流に配設されている熱エレメントとを備え、
前記主本体部は、前記空気出口部が配設されている第1の面を有しており、
前記空気入口部及び前記熱エレメントは、前記第1の面の周囲に配設され、
前記ファンは、前記ファンの回転軸が前記第1の面に対して実質的に垂直になるように向けられ、
前記第1の面は、使用時に温度制御スペースに露出するように構成され、
前記ファンは、空気が環状に広がるパターンで、前記ファンと前記空気出口部との間及び前記ファンから生じる空気の流動先に空気の方向を変化させる部材を設けずに、ファン・ブレードの先端部から温度制御スペースに直接的に排出する旋回気流となるように配されている空調ユニット。
【請求項2】
前記ファンの前記回転軸は、実質的に前記第1の面の中央にある請求項1に記載の空調ユニット。
【請求項3】
前記空気入口部及び熱エレメントは、前記第1の面の前記周囲の少なくとも50%に沿って延在している請求項1又は2に記載の空調ユニット。
【請求項4】
使用時に、前記熱エレメントにおける前記空気流路を通る空気流速が、前記ファンの下流の前記空気流路を通る空気流速の50%未満となるように、前記空気出口部及び前記空気流路が配置されている請求項1から3のいずれか一項に記載の空調ユニット。
【請求項5】
前記ファンが、前記第1の面において約0.8メートル/秒の面速度を与えるように駆動されるときに、前記熱エレメントにおける前記空気流路を通る空気流速が、0.5メートル/秒から1.5メートル/秒の間になるように、前記空調ユニットが構成されている請求項1から3のいずれか一項に記載の空調ユニット。
【請求項6】
前記熱エレメントは、前記主本体部の第1のハウジング部に装着されており、前記ファンは、前記主本体部の第2のハウジング部に装着されており、前記第2のハウジング部は、前記第1のハウジング部に対してヒンジ接続されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の空調ユニット。
【請求項7】
前記第2のハウジング部は、前記ヒンジを介して、前記第1のハウジング部に対して、第1の位置から第2の位置へ回転可能であり、前記ファンは、前記第1の位置において、通常使用のために動作可能であり、前記第2の位置において、メンテナンスのためにアクセス可能である請求項6に記載の空調ユニット。
【請求項8】
使用時に、少なくとも前記熱エレメントの垂直方向下方になるように配置されているドリップ・トレイであって、親水性部材が、前記ドリップ・トレイ中に配設され、前記ドリップ・トレイによって捕捉された凝結物を収集する、ドリップ・トレイと、
前記親水性部材に沿って前記凝結物を汲み出すように配置されているポンプと、をさらに含む請求項1から7のいずれか一項に記載の空調ユニット。
【請求項9】
前記親水性部材に隣接する水分検出器をさらに含み、
前記ポンプは、水分が前記水分検出器によって検出されるときに作動するように配置されている請求項8に記載の空調ユニット。
【請求項10】
前記空調ユニットの前記主本体部は、300mm未満の厚さを有している請求項1から9のいずれか一項に記載の空調ユニット。
【請求項11】
前記熱エレメントは、熱コイルを含む請求項1から10のいずれか一項に記載の空調ユニット。
【請求項12】
第1の取付けの間に前記天井に装着されるように構成されている据え付けフレームであって、接続されることになる前記空調ユニットの付帯設備のための分離可能な接続部を含む、据え付けフレームをさらに含み、
前記主本体部は、第2の取付けの間に、前記据え付けフレームに装着されるように構成されている請求項1から11のいずれか一項に記載の空調ユニット。
【請求項13】
前記空調ユニットは、天井から吊り下げられるように構成されている請求項1から11のいずれか一項に記載の空調ユニット。
【請求項14】
前記主本体部を取り囲むリム部材であって、前記主本体部の前記厚さの60%未満の外側縁部高さを有しているリム部材をさらに含む請求項13に記載の空調ユニット。
【請求項15】
請求項1から12のいずれか一項に記載の前記空調ユニットを含む構造体であって、床と、天井と、前記床と前記天井との間に画定されている温度制御スペースとを含み、前記空調ユニットの前記主本体部は、前記天井の天井空隙中に配設されており、前記第1の面が前記温度制御スペースに露出されるようになっている構造体。
【請求項16】
空気が、前記床の床空隙を介して、前記温度制御スペースの中へ供給されるように、前記構造体が配置されている請求項15に記載の構造体。
【請求項17】
請求項1から11のいずれか一項に記載の前記空調ユニットを含む構造体であって、床と、天井と、垂直方向の壁部と、前記床、前記天井、及び前記壁部の間に画定されている温度制御スペースとを含み、
前記空調ユニットの前記主本体部は、前記垂直方向の壁部中に配設されており、前記第1の面が、垂直方向に向けられ、かつ前記温度制御スペースに露出されるようになっている構造体。
【請求項18】
前記垂直方向の壁部は、前記空調ユニットの前記空気入口部に隣接する空隙を含み、空洞は、前記温度制御スペースに気体連通している請求項17に記載の構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調ユニットに関し、特に、薄型(low profile)で非常に効率的なファン・コイル・ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
ファン・コイル・ユニットは、世界で最も普及している空調ユニットのタイプの1つであり、住宅建物、商業建物及び産業用建物において見られる。ファン・コイル・ユニットは、本質的に、加熱コイル又は冷却コイル及びファンを含むデバイスである。ファン・コイル・ユニットはシンプルであるため、エア・ハンドリング・ユニットを備えるダクト式の冷却加熱システムよりも、据え付けるのに経済的であることが多い。しかし、ファン・コイル・ユニットは、温度制御スペースの中にファンがあるので、騒音が大きい可能性がある。そのうえ、ファン・コイル・ユニット又は「オールエア」システムは、吊り天井の中に据え付けられる場合には、ファン・コイル・ユニットを収容するためのスペースを設けるために、高い階高を必要とする可能性がある。又はファン・コイル・ユニットは、ユニットにアクセスするには吊り天井を取り外す必要があるので、メンテナンスを複雑にする可能性がある。
【0003】
カセット式空調ユニットは、天井装着型のカセットが、帯板(fascia)だけが見えるように天井空隙(ceiling void)の中に装着される、ファン・コイル・ユニットの一形態である。内部ユニットは、冷却コイル又は加熱コイルを組み込み、方向フラップは、2つ、3つ、又は4つの異なる方向に、空気が室内に分配されることを可能にする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の態様から見ると、本発明は、空調ユニットであって、空気入口部及び空気出口部を含む主本体部であって、空気入口部と空気出口部との間に空気流路を画定している主本体部と、空気流路中に配設されているファンと、空気流路中、ファンの上流に配設されている熱エレメントとを備え、主本体部は、前記空気出口部が配設されている第1の面を有しており、空気入口部及び熱エレメントは、第1の面の周囲に配設されている、空調ユニットを提供する。
【0005】
空気入口部及び熱エレメントは、好ましくは、第1の面の周囲だけに配設されている。
【0006】
この配置は、ファンを通る所与の合計エアフローに関して、空気入口部及び熱エレメントがユニット面上の中央/ユニット本体部内の中央にある先行技術の配置と比較して、熱エレメントにおける空気流速が低くなる。より中央の場所においてよりも、第1の面の周囲において、より大きい表面積が利用可能である。
【0007】
空気入口部及び熱エレメントは、好ましくは、第1の面の周囲の少なくとも50%に沿って延在しており、より好ましくは、第1の面の周囲の少なくとも70%に沿って延在している。好適な実施形態では、第1の面の周囲は、電力及び/又は熱エレメントのための流入/流出作動流体などのような建物ユーティリティーへの接続のためのスペースを含んでいてもよい。熱エレメント及び空気入口部は、第1の面の周囲の辺りの、上記のケースでは建物ユーティリティーへの接続に必要とされない利用可能なスペースの全体にわたって延在することが好適である。
【0008】
好ましくは、空気入口部、空気出口部及び空気流路は、使用時に、熱エレメントにおける空気流路を通る空気流速が、ファンの下流の(たとえば、ファンの放出側における)空気流路を通る空気流速の50%未満、好ましくは30%未満となるように、配置されている。これは、ファンによって生じる圧力増加が比較的に小さい場合には、熱エレメントにおける空気流路断面積がファンの放出側における空気流路断面積の少なくとも2倍、好ましくは少なくとも3倍であるということとおおよそ同等である。
【0009】
好適な実施形態では、空調ユニットは、ファンが、第1の面において約0.8メートル/秒の空気放出速度を与えるように駆動されるときに、熱エレメントにおける空気流路を通る空気流速が、0.5メートル/秒から1.5メートル/秒の間、好ましくは、約0.5メートル/秒から0.7メートル/秒になるように、構成され得る。これは、ほとんどのファン・コイル・ユニットにおけるものよりもはるかに低く、ほとんどのファン・コイル・ユニットは、冷却コイルにおいておおよそ2.5メートル/秒の空気速度で動作する。
【0010】
この構成は、上記に説明されている熱エレメントにおいて低減された空気流速を活用しており、熱エレメントの圧力降下を低減させ、かつ、熱エレメントと空気フローとの間の熱転写率を増加させる。したがって、ファンによって行われることが必要な仕事も低減させながら、熱転写効率が増加され得る。
【0011】
主本体部は、第1の面の周囲から延在する1つ又は複数の第2の面を含んでいてもよく、空気入口部は、第2の面の上に配設されていてもよい。
【0012】
1つ又は複数の第2の面は、好ましくは、第1の面に対して概して垂直(たとえば、垂直から約30°以内)になっている。したがって、第1の面が前面である場合、第2の面は、本質的にユニットの側面であってもよい。任意の数の側面が設けられていてもよく、たとえば、主本体部が長方形である場合は、4つの側面が存在することになる。また、他の形状が使用されてもよく、たとえば、三角形の形状を有する空調ユニットは、3つの側面を有することになる。
【0013】
第1の面は、空調ユニットの前面プレートであってもよい。これに関連して、前面プレートは、温度制御スペースに面する空調ユニットの部分である。したがって、好ましくは、第1の面は、使用時に、温度制御スペースに露出されるように構成されている。
【0014】
好適な実施形態では、空調ユニットの第1の面は、好ましくは、600mm未満の幅及び600mm未満の長さを有する長方形である。空調ユニットの主本体部は、好ましくは、概して直方体である。これは、主本体部が標準の天井グリッドの中に都合よく据え付けられることを可能にする。概して直方体形状であれば、第2の面は、長方形の第1の面の側部から離れるように延在し、第1の面の表面に対して概して垂直になっている、直方体の側部であることになる。
【0015】
好ましくは、空調ユニットの主本体部は、300mm未満、より好ましくは250mm未満、最も好ましくは200mm以下の厚さを有している。従来のファン・コイル・ユニットは、そのような厚さを実現することができなかった。しかし、本発明の配置は、これらの小さな厚さが実現されるようになっている。
【0016】
いくつかの実施形態では、熱エレメントは、水冷式コイルなどのようなコイルにわたって流れる空気との熱交換のための熱コイルを含んでいてもよい。これは、冷却専用の(「2管」)コイル構成、又は、冷却加熱用(「4管」)コイル構成のいずれの中に配置されていてもよい。熱エレメントは、コイルと空気との間の熱転写を最大化するために、空気入口部に隣接する熱交換フィンをさらに含むことが可能である。
【0017】
代替的な実施形態では、熱エレメントは、その代わりに、チルド・ビームを流れる空気と熱交換するためのチルド・ビームであってもよい。
【0018】
好ましくは、ファンは、ファンの回転軸が第1の面に対して実質的に垂直になるように向けられている。これは、ユニットの主本体部の厚さ(すなわち、主本体部の前面から後面までの距離)を増加させることなく、比較的に大きい直径のファンが使用されることを可能にする。いくつかの実施形態では、ファンの直径は、200mmよりも大きくなっていてもよい。なお、第1の面の上かつユニットの中央におけるファンの好適な設置は、ファンの周囲にある空気入口部及び熱エレメントのために利用可能なスペースを制限することなく、大きい直径のファンのためのスペースを最大化することができるということに留意されたい。
【0019】
ファンは、好ましくは、プラグ・ファンである。プラグ・ファンは、ファン・コイル・ユニットで通常使用される横流ファン又は遠心ファンよりも圧力降下及び騒音出力が小さい。
【0020】
ファンは、好ましくは、温度制御スペースの中へ直接空気を放出する。これは、ファンが、拡散フィン及び二次ダクティングなどのような、さらなる下流コンポーネントを通して空気を放出する、ほとんどの従来のファン・コイル・ユニットの配置と対照的である。
【0021】
又はファンは、温度制御スペースの中へ放出される空気に、スワール効果(swirl effect)を提供するように構成されていてもよい。すなわち、空気は、環状に広がるパターンで、ファン・ブレードの先端部から真っ直ぐに排出する。同様の効果が、スワール・ディフューザーを使用する従来のユニットでも実現され得るが、これは、空気フローがブレードによって再方向付けされるときに、エネルギー損失を生じさせる。スワール効果は、高誘導の(high induction)空気フローを生じさせる。これは、通風のリスクが少なく、調整されたスペースの中へ低温空気を導入することができるので、望ましい。ブレードによってではなく、スワール効果を提供するファンを使用することは、空気に関する方向の変化を最小化し、エネルギー損失を最小化する。
【0022】
ファンのインペラーは、排出の直前に空気の下向きの速度を増加させるために、それらの先端部に傾斜を含んでいてもよい。これは、好適な高誘導の空気パターンを実現することを助け得る。いくつかの実施形態では、案内羽根が、空気入口部とファンとの間のベンドにおいて、空気ストリームを滑らかにし、摩擦を低減させ、圧力降下を低減させるように空気流路内のファンよりも上流に含まれていてもよい。
【0023】
空調ユニットは、上記の記述のいずれかに詳述されているように、垂直方向に装着されるように、すなわち、第1の面が実質的に垂直方向に延在するように配置されてもよい。そのような構成では、第1の面の周囲が、電力及び/又は熱エレメントのための流入/流出作動流体などのような建物ユーティリティーへの接続のためのスペースを含む場合には、このスペースは、第1の面の実質的に水平方向に延在する上側の周囲側部の上に設けられることなる。熱エレメント及び空気入口部は、第1の面の周囲の辺りの利用可能なスペースの実質的に全体にわたって延在することになる。このスペースは、このケースでは、建物ユーティリティーへの接続に必要とされないスペース、すなわち、実質的に水平方向に延在する下側の周囲側部の辺りのスペース及び第1の面の実質的に垂直方向に延在する周囲側部の辺りのスペースである。そのような配置では、第1の面の実質的に水平方向に延在する下側の周囲側部に沿って延在する熱エレメントの部分は、垂直方向/前面に対して斜めの角度で、好ましくは、おおよそ30度の角度で設けられていてもよい。
【0024】
1つの好適な実施形態では、熱エレメントは、主本体部の第1のハウジング部に装着されており、ファンは、主本体部の第2のハウジング部に装着されており、第2のハウジング部は、第1のハウジング部に対してヒンジ接続されている。結果として、第2のハウジング部は、ヒンジを介して、第1のハウジング部に対して、第1の位置から第2の位置へ回転可能であってもよく、ファンは、第1の位置において、通常使用のために動作可能であり、第2の位置において、メンテナンスのためにアクセス可能である。好ましくは、第2のハウジング部は、第1の面を含み、使用時に、温度制御スペースに露出されるように構成されている。
【0025】
したがって、空調ユニットは、「セルフ-アクセス」を可能にすることができる。すなわち、たとえば、ファン及びフィルターなど、(たとえば、メンテナンスのために)アクセスを必要とする空調ユニットのコンポーネントには、たとえば、現状では必要とされているように、天井タイルの取り外し及びファン・コイル・ユニットの分解又は取り外しを必要とするよりもむしろ、単純に、第2のハウジング部の掛け金を外し、第2のハウジング部を回転させることによって、到達され得る。回転可能な第2のハウジング部は、天井又は他のサポートに取り付けられているユニットの残りの部分に取り付けられたままになっているため、メンテナンスは、電源又は加熱/冷却供給源を切り離す必要なしに現場で実施され得る。
【0026】
空調ユニットは、ファンの上流の空気流路中に、好ましくは、また、熱エレメントの上流に、空気フィルターを含むことが可能である。
【0027】
フィルターは、第2のハウジング部が第1の位置にあるときには主本体部から取り外されることができないように、また第2のハウジング部が第2の位置にあるときには主本体部から取り外され得るように、好ましくは主本体部中に配置されている。いくつかの配置では、フィルターは、第1のハウジング部の中に解放可能に装着され得る。
【0028】
空調ユニットは、好ましくは、使用時に、少なくとも熱エレメントの垂直方向下方になるように配置されているドリップ・トレイをさらに含む。複数の熱エレメントが設けられる場合、ドリップ・トレイは、垂直方向のエレメントのすべてに重なることになる。したがって、ドリップ・トレイは、冷却モードで動作しているときに熱エレメントの上に形成される凝結物(結露など)を捕捉するように構成されている。たとえば、空調ユニットが垂直方向に装着されるように配置されているときのように、熱エレメントのいずれかが、垂直方向に対して斜めの角度で設けられているときには、ドリップ・トレイは、角度付きの熱エレメントに部分的にだけ重なり、水平方向に延在する下側の第2の面を通る角度付きの熱エレメントへの外気のフローのために自由スペースを残すことが可能である。凝結物は、角度付きの面を下の方へ流れ、ドリップ・トレイの中に収集されることになる。また、ドリップ・トレイ(又は、1つもしくは複数の追加的なドリップ・トレイ)が、熱エレメントに接続する冷却媒体バルブ及び管などのような、空調ユニットのさらなるチルド・コンポーネントの下に設けられてもよい。
【0029】
ドリップ・トレイは、好ましくは、親水性の材料から形成されたチューブなどのような、親水性部材を含んでおり、親水性部材は、ドリップ・トレイ中に配設され、ドリップ・トレイによって捕捉された凝結物を収集する。親水性の材料の使用は、水が材料の中へ引き込まれることを可能にし、空調ユニットの厚さを増加させることになる重力排水の必要性を回避する。その代わりに、その長さに沿って実質的に水平方向になっているドリップ・トレイに沿って、又は、空調ユニットが完全に水平には据え付けられない状況では、わずかに上方に傾斜していてもドリップ・トレイに沿って、凝結物が部材を介してかき出され得る。
【0030】
ドリップ・トレイは、使用時に、凝結物を親水性部材に向けて方向付けするように配置されている傾斜付きの床を有してもよい。これは、ユニットの厚さを著しく増加させることなく、より小さい親水性部材が使用されることを可能にする。好ましくは、ドリップ・トレイは、細長くなっており、傾斜は、トレイの長手方向に対して垂直になっており、すなわち、実質的にドリップ・トレイの長さにわたって連続している細長い親水性部材に向けて凝結物を方向付けするようになっている。好ましくは、ドリップ・トレイは、使用時に、その長手方向において、実質的に水平方向になるように配置されている。空調ユニットは、非常に薄くなっていることが好ましいので、単一の排水場所に凝結物を排出するために、急勾配が、ドリップ・トレイの長さ全体にわたり提供されることはできない。その代わりに、局所的な勾配が、凝結物を親水性部材に方向付けし、親水性部材が凝結物を収集する。
【0031】
空調ユニットは、親水性部材に沿って凝結物を汲み出すように配置されているポンプをさらに含んでもよい。いくつかの実施形態では、水分度検出テープなどのような水分検出器が、親水性部材に隣接して設けられてもよく、次いで、ポンプが、水分水分検出器によって検出されるときに作動するように配置されてもよい。したがって、親水性部材が凝結物で飽和されているときには、吸収されていない水分が検出されることになり、ポンプは、たとえば、所定の時間にわたって作動し、親水性部材によって吸収された水分を排出する。その結果、ポンプが活動している時間を最小化し、ポンプに必要とされるエネルギー及び任意のポンプ騒音を低減させる。ポンプは、稼働しているときに最小騒音を有するように配置されることになる。
【0032】
空調ユニットは、好ましくは、第1の取付け(fix)の間に天井に装着されるように構成されている据え付けフレームであって、接続されることになる空調ユニットの付帯設備(services)のための分離可能な接続部を含む、据え付けフレームをさらに含み、主本体部は、第2の取付けの間に、据え付けフレームに装着されるように構成されている。
【0033】
この配置によって、据え付けフレームは、第1の取付けの間に据え付けられることができ、電力ライン、制御ライン、及び/又は冷却/加熱媒体配管などのような付帯設備は、分離可能な接続部に接続され得る。次いで、その後、第2の取付けの間に、空調ユニットの主本体部が据え付けられ得る。これは、さまざまな付帯設備が、天井の中に据え付けられるときに、単に据え付けフレームに接続されることを必要とするだけなので、ワークフローが最適化され得るということを意味している。これは、異なる業者が異なるときに接続処理を行うという柔軟性を与えるため、空調ユニットが据え付けられるのと同時に付帯設備すべてをフィットさせるよりも効率的である。
【0034】
1つの実施形態では、空調ユニットを据え付ける方法は、据え付けフレームを天井に固定するステップと、据え付けフレームの分離可能な接続部において終端する天井付帯設備を据え付けるステップと、吊り天井を据え付けるステップと、空調ユニットの主本体部を据え付けフレームの上に装着するステップとを含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、空気出口部は、発光デバイスを受け入れるように構成されていてもよい。すなわち、空気出口部は、たとえば、挿入されることになるランプのための照明設備を含んでもよい。その結果、放出空気が、ライトの周りに放出され、空調ユニットが二重機能を提供することを可能にする。空気出口部は、発光デバイスのためのライト・ディフューザーとしての役割を果たすようにさらに配置されていてもよい。
【0036】
いくつかの実施形態では、空調ユニットは、たとえば、ペンダントとして、天井から吊り下げられるように構成されていてもよい。これは、露出された天井を備える、小売店使用(retail use)又はレストランに適し得る。また、オフィス設計においては、吊り天井を取り外し、露出された付帯設備及び吊り下げられたユニットを有することへと向かう動きもある。そのような実施形態では、主本体部は、アクセスを許容するためにヒンジ接続された第2の面を含んでいてもよい。
【0037】
空調ユニットが吊り下げられるように構成されている場合に、ユニットは、主本体部を取り囲むリム部材をさらに含んでいてもよい。好ましくは、リム部材は、主本体部の厚さの60%未満の高さを有する外側縁部を有している。リム部材の裏は、下から見ることが難しいことになり、これは、スリムなユニットの錯覚を与える。
【0038】
リム部材は、ライト、火災検知器、スプリンクラー、及びパブリック・アナウンスメント設備などのような、追加的な付帯設備を含んでいてもよく、したがって、空調ユニットがマルチ・サービス・ユニットとしての役割を果たすことを可能にする。
【0039】
また、発明の実施形態は、空調ユニットを含む構造体であって、床と、天井と、床と天井との間に画定されている温度制御スペースとを含み、空調ユニットの主本体部は、天井の天井空隙中に配されており、第1の面が温度制御スペースに露出されるようになっている構造体を提供するように見られ得る。
【0040】
いくつかの実施形態では、空気が、床の床空隙(floor void)を介して、温度制御スペースの中へ引き込まれるように、構造体が配置されている。
【0041】
本発明の代替的な実施形態は、空調ユニットを含む構造体であって、床と、天井と、垂直方向の壁部と、床、天井及び壁部の間に画定されている温度制御スペースとを含み、空調ユニットの主本体部は、垂直方向の壁部中に配されており、第1の面が、垂直方向になっており、かつ温度制御スペースに露出されるようになっている、構造体を提供するように見られ得る。垂直方向の壁部は、空調ユニットの空気入口部に隣接する空隙を含んでいてもよく、空洞は、温度制御スペースに気体連通している。
【0042】
この配置では、垂直方向に装着された空調ユニットが、壁部の中に据え付けられ得る。空調ユニットは、薄型であるため、部屋の中のスペースを過度に制限することなく、壁部の中に据え付けることができる。この構成は、SER(Small Equipment Room)又はSCR(Sub Comms Room)などのような小さいコンピューター室に、とりわけよく適し得る。
【0043】
上記に説明されている凝結物除去機構は、それ自体で新規でかつ独創性があると考えられる。したがって、別の態様から見ると、本発明は、空調ユニットのための凝結物除去システムであって、親水性部材と、親水性部材に沿って凝結物を汲み出すように配置されているポンプと、凝結物を収集し、使用時に、親水性部材に向けて凝結物を方向付けするためのドリップ・トレイと、親水性部材に隣接して配置されている湿度検出器であって、ポンプは、湿度が湿度検出器によって検出されるときに作動するように配置されている、湿度検出器とを含む、凝結物除去システムを提供する。
【0044】
親水性部材の使用は、凝結物が材料の中へ引き込まれることを可能にし、上記に説明されている利点を提供する。
【0045】
ドリップ・トレイは、上記に説明されているような傾斜付きの床を有し、使用時に、凝結物を親水性部材に向けて方向付けすることが可能である。
【0046】
凝結物除去システムは、上記に説明されているタイプの空気調和システムと有利に組み合わせられ得るが、他の空気調和システムにも利点を提供する。これは、凝結物除去システムを収容するために必要とされる深さ/高さがこの態様のシステムによって低減されるからである。したがって、いずれの空調ユニットもより薄型になるように再設計されることができ、凝結物除去システムは、スペースが限られているときにも含まれ得る。空調ユニットが「ウェット」モードを有することを可能にすることは、ユニットが動作し得る温度及び湿度の範囲を増加させるため、重要な利点であり得る。それに加えて、凝結物除去システムは、親水性の材料を使用するため、凝結物を集める点においてより効果的であり得る。これは、滴り、漏れ又は溢れのリスクを低減させる。
【0047】
また、回転可能な第2のハウジング部の使用は、それ自体で、新規でかつ独創的であると考えられる。したがって、さらなる別の態様から見ると、本発明は、空調ユニットであって、第1のハウジング部に装着されている熱エレメントと、第2のハウジング部に装着されているファンであって、第2のハウジング部は、第1のハウジング部に対してヒンジ接続されている、ファンとを含み、第2のハウジング部は、ヒンジを介して、第1のハウジング部に対して、第1の位置から第2の位置へ回転可能であり、ファンは、第1の位置において動作可能であり、第2の位置において、メンテナンスのためにアクセス可能である、空調ユニットを提供する。好ましくは、第2のハウジング部は、第1の面を含み、使用時に、温度制御スペースに露出されるように構成されている。
【0048】
有利なことには、この空調ユニットは、上記に説明されているように、「セルフ-アクセス」を可能にしている。
【0049】
この態様又は先行する態様のユニットは、第1の態様自身の特徴の有無にかかわらず、本発明の第1の態様に関連して上記に説明されている特徴のいずれか又はすべてと、一緒に又は単独のいずれかで、組み合わせられ得る。
【0050】
ここで、本発明の特定の好適な実施形態が、単なる例として、添付の図面を参照し、より詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1】空調ユニットからの空気フローを図示した建物を通る横断面図である。
図2図1の空調ユニットの主本体部の平面断面図である。
図3A図2の中の切断線A-Aに沿って視た図1の空調ユニットの主本体部の断面図である。
図3B図2の中の切断線B-Bに沿って視た図1の空調ユニットの主本体部の断面図である。
図4図1の空調ユニットの熱コイルの概略平面図である。
図5図1の空調ユニットの冷却液体媒体又は加熱液体媒体を供給するための一次配管構成を示す図である。
図6図1の空調ユニットの凝結物除去システムを示す図である。
図7図6の凝結物除去システムを通る縦断面図である。
図8図7の凝結物除去システムを通る横断面図である。
図9図1の空調ユニットの据え付けフレームの断面図である。
図10図1の空調ユニットの据え付けフレームの平面図である。
図11】天井の中へ据え付けられている図1の空調ユニットを示す図である。
図12】メンテナンス位置にある図1の空調ユニットを示す図である。
図13図1の空調ユニットを組み込む例示的な天井レイアウトを示す図である。
図14図1の空調ユニットを組み込む例示的な天井レイアウトを示す図である。
図15】代替的な空調ユニットの断面図である。
図16】別の代替的な空調ユニットの断面図である。
図17】さらなる空調ユニットの斜視図である。
図18】一層さらなる代替的な空調ユニットの断面図である。
図19図18の空調ユニットを組み込む例示的な天井レイアウトを示す図である。
図20】別の空調ユニットの断面図である。
図21図20の空調ユニットの斜視図である。
図22】さらなる別の空調ユニットの断面図である。
図23図22の空調ユニットの下から見た図である。
図24A】垂直方向に装着されるように配置されている、さらなる別の代替的な空調ユニットを通る正面断面図である。
図24B図24Aの空調ユニットの側断面図である。
図24C図24Aの空調ユニットの平面断面図であり、その中の凝結物除去システムの詳細を示す図である。
図25図24の空調ユニットを組み込む例示的なコンピューター室レイアウトを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
図1は、例示的な建物を通る断面を示しており、空調ユニット2を通る空気フローを図示している。本明細書での詳細な説明は、建物の中でのそのような空調ユニットの使用に焦点を当てているが、そのような空調ユニットは、高さが低いため、長距離バス及び客車などのような輸送用途に等しく適切であり得るということに留意されたい。建物は、外気供給を提供するために、床プレナム4を使用し、また、空気抽出のために天井プレナム6を使用する。外気は、床プレナム4から、上げ床12の中に形成された床出口部10を介して、温度制御スペース8に進入する。空気は、スペース8の中を循環し、図1に示されているように、天井開口部16を介して、たとえば、照明設備などを介して、天井プレナム6の中へ、吊り天井14を通して、最終的に抽出される。
【0053】
この配置は、たとえば、排煙管路が必要とされる場合など、いくつかのプロジェクトに適していない可能性があるが、1つの例示的な構成を図示することが意図されている。建物の中核内の空気供給部からプレナム4、6の境界への20メートルから30メートルの想定される進行距離に基づいて、200mmの深さが、供給及び抽出プレナム4、6のそれぞれに適切である。
【0054】
天井空隙6の浅さは、配管、ケーブル及び他の付帯設備の慎重な調整を必要とすることになる。図示されているように、空調ユニット2のための付帯設備18は、天井空隙6内の空調ユニット2へ及び天井空隙6の中の空調ユニット2から提供される。そのような付帯設備18は、たとえば、冷水又は加熱水などの冷却/加熱液体媒体、空調ユニット2に供給される電力及び制御、並びに空調ユニット2からの凝結水及び戻り冷却剤を含む。
【0055】
空調ユニット2は、200mmの高さしかないが、たとえば、ファン・コイル・ユニット、チルド・ビーム、チルド天井、VAVボックスなどの、従来の空気調和システムと同じ快適性品質標準を実現するように設計されている。それにより、典型的に、建物のそれぞれの階の高さについて、300mmを節減することが可能となる。高さが45メートルに制限されている建物(階高3.7mでおおよそ12階)に関して、これは、同じ全体的な建物高さの中に、1つのフロアを追加することになる。
【0056】
そのうえ、空調ユニット2は、アクセス可能な天井を必要とせず、その代わりに、上記に説明された幅の狭い200mmの天井空隙6にフィットすることが可能である。また、従来のファン・コイルシステムと比較すると、二次的ダクトワークがなく、また、潜在的に遥かに少ない一次的ダクトワークしかない。
【0057】
下記に説明されるように、空調ユニット2のためのダクトワーク及び配管が、第1の取付けの一部として据え付けられ得て、次いで、吊り天井14が据え付けられる前又は後に、ファン28及びコイル26を含む空調ユニット2の主本体部3が、第2の取付けの間に据え付けられ得る。試運転、メンテナンス、さらにはユニット交換が、天井14が据え付けられた後に実施され得る。
【0058】
図2は、図1に示されている空調ユニット2の主本体部3の平面断面図を示している。図3A及び図3Bは、切断線A-A及び切断線B-Bに沿って見た主本体部3の断面図を示している。
【0059】
空調ユニット2は、前面、後面及び4つの側面を有する主本体部3によって画定されている。主本体部3の前面及び後面は、互いに対して概して平行であり、側面は、前面及び後面に対して概して垂直である。適切な固定手段1は、ねじ山付きのロッドを含むことが可能であり、適切な固定手段1は、好ましくは、空調ユニット2を適切に据え付けるために設けられている。据え付けられているときに、前面は、温度制御スペース8に露出されている。
【0060】
前面は、約600mm×600mmの寸法を有する実質的に正方形であり、それは、標準天井グリッドにフィットするようにサイズ決めされている(しかし、当然のことながら、他の形状及び/又は寸法も利用され得る)。ユニットは、前面と後面との間に約200mmの高さを有している。
【0061】
前面は、空気出口部22を有するファシア・プレート20を含み、空気出口部22を通して、調整された空気が、温度制御スペース8の中へ直接的に吹き込まれる。すなわち、二次的ダクトワークは存在していない。空気出口部22は、ファシア・プレートの中の穿孔からなることが可能であり、この出口部22において、ファシア・プレート20は、好ましくは少なくとも50%穿孔されている。側面は、空気入口部24を含み、空気入口部24を通して、空気が、空調ユニット2の中へ引き込まれる。空気入口部24は、通常は、通常動作の間には見ることができず、したがって、単に開口部からなるものであってもよいが、望まれる場合には、フィルター30などが、大きい破片がユニット2に進入することを防止するために使用されてもよい。
【0062】
空気入口部24と空気出口部22との間には、空気流路が存在しており、この空気流路を通して、空気が流れ、調整される。この配置では、空気流路は、ファン・プレート27aによって画定されており、ファン・プレート27aは、ファン28の中へ流入する空気を、ファン28によって放出される空気から分離している。
【0063】
主本体部3の中には、空気を駆動するように空気流路及びファン28の中の空気を加熱及び/又は冷却する1つ又は複数の熱エレメント26が設けられる。熱エレメント26は、ファン28の上流に設けられている。また、主本体部3の中には、複数の空気フィルター30が設けられ得る。空気フィルター30は、熱エレメント28の上流に配設されている。空気フィルター30及び熱エレメント26は、それぞれの空気入口部24に隣接して設けられている。空気フィルター30は、好ましくは、それらの上側縁部及び側方縁部において、それぞれの空気フィルター・ガイド30aによって保持されている。空気フィルター30は、それらの下側縁部において、クリップによって、適切な位置に保持されている。
【0064】
空気入口部24は、空調ユニット2の4つの側部のうちの3つに設けられている。熱エレメント26にわたる空気流速を最小化するために、空気入口面積を最大化することが望ましい。しかし、付帯設備18がユニットに進入するために、いくらかのスペースが残されなければならない。したがって、入口部24が側部のうちの約3つ半を超えてカバーすることは可能ではない(空調ユニット2の周囲の約90%未満)。しかし、空調ユニット2は、当然のことながら、より少ない数の入口部24で依然として動作する。たとえば、空気入口部24は、2つの側部のみに、すなわち、空調ユニット2の周囲の少なくとも50%に沿って設けられ得る。
【0065】
邪魔板29aが、空調ユニットの第4の面に設けられており、邪魔板29aは、ファン制御ユニット29及び凝結ポンプ52の周りを包んでおり、空気が引き込まれることを防止しており、空気は、熱エレメント26をバイパスすることになる。
【0066】
空調ユニット2の周囲の辺りに空気入口部24を設けることによって、入口面積が最大化され得る。この空調ユニット2では、熱エレメント26にわたって進行する空気は、おおよそ0.6~1.0メートル/秒で進行する。これは、熱エレメント26における空気速度が約2.5メートル/秒である従来のファン・コイル・ユニットにおけるものよりも著しく低い。これは、熱エレメント26への又は熱エレメント26からの熱転写を改善し、熱エレメント26の圧力降下を低減させ、より小さいファン28が使用されることを可能にし、したがって、空調ユニット2が、空気が比較的に高い速度で中心に引き込まれることになる従来のファン・コイル・ユニットよりも薄く作製されることを可能にする。
【0067】
動作中に、空気は、空気入口部24を通って、空気流路中へ、実質的に水平方向に空気調和機2に進入する。空気は、空気フィルター30の1つを通って、熱エレメント26の領域にわたって、実質的に水平方向に進み続ける。次いで、空気は、ファン28の中へ垂直方向下向きに引き込まれ、空調ユニット2から、空気出口部22を介して温度制御スペース8の中へ、直接的に放出される。
【0068】
空調ユニット2は、空気ストリームを滑らかにし、摩擦を低減させるために、ファン28へのアプローチにおいて案内羽根(図示せず)を含んでもよい。図2に示されている配置は、プレナムを介する90度ベンドと同等である。案内羽根をこの場所に据え付けることは、このベンドに関する圧力降下を、プレナム配置(すなわち、案内羽根なし)に関する圧力降下の50%まで低減させることが可能である。
【0069】
ファン28は、プラグ・ファンであり、ファン・コイル・ユニットの中で通常使用される横流ファンよりも低い圧力降下及び騒音を有する公知の性質を有している。ファンは、モーター(図示せず)によって駆動され、モーターは、DCモーターであってもよく、良好なエネルギー性能及び可変速度能力を与えるものであってもよい。
【0070】
ファン28のブレードは、環状に広がるパターンで出口部から放出される空気を導くように配置されている。ブレードは、排出の直前に傾斜を含んでもよく、空気の下向きの速度を増加させ、所望の空気パターンを実現するものであってもよい。
【0071】
この構成の効率を図示するために、1つの例示的で非限定的な具体例をここで説明する。25Paにおいて0.23m/s、70%ファン効率、及び90%モーター効率の選択に基づいて、ファン電力消費は、約9Wであることになる。25mの床面積とすれば、これは、0.36W/mのファン・エネルギー消費である。これは、ファン・コイル・ユニット・ファン・エネルギーに関する通常の「経験則」の概念設計ステージ許容度の5W/mよりもはるかに低い。
【0072】
英国建築規則Part Lには、空気の単位流量(リットル/秒)当たりの電力(ワット)として計算される最小のファン電力(SFP)を達成すべきとする要求が示されている。ファン・コイル・ユニット及び他のターミナル・ユニットに関して、Part Lのエネルギー計算から推論される必要SFPは、0.3以下である。上記の数値を使用すると、SFPは、0.039である。これは、繰り返しになるが、要件よりもはるかに良好である。
【0073】
代替的な配置では、混流ファンが使用されてもよく、すなわち、湾曲したブレードを中心に有しており、周囲において垂直方向のブレードに変化している。そのようなファンは、幅の狭い空調ユニット2(たとえば、200mmの高さを有する)の中へフィットしながらも、低い騒音及び低いエネルギー消費の条件を満たすことが可能である。
【0074】
ファン28のブレードは、空調ユニット2が、スワール・ディフューザーと同様に、旋回空気フロー・パターンを提供することになるように設計されている。空気は、環状に広がるパターンで、ファン・ブレードの先端部から真っ直ぐに排出する。これは、最小の方向の変化、したがって、最小エネルギー損失に関して、高誘導の空気フローが実現され得るということ意味している。
【0075】
空調ユニット2の中のファン28からの振動を最小化し、騒音を最小化することが望ましい。これは、高品質のバランスの取れたファン28を使用することによって、及び、ファンが支持されているポイントにおいて振動防止マウント27bを使用することによって、実現され得る。たとえば、ファン28は、ファン・プレート27によって支持されており、振動防止マウント27bを介して接続されている。
【0076】
空調ユニット2の前面は、穿孔されているファシア・プレート20を含み、出口部22において少なくとも50%の開口部を備えている。これは、空気フローの性質を変更することなく空気が通過するために十分である。
【0077】
ファン28からの空気フロー・パターンは、隣接する天井からのコアンダ効果に依存しないので、空調ユニット2は、(下記に説明されるように)ペンダント式に装着され得、天井の中に装着されるユニット2と同じ空気フロー・パターンを有することになる。また、このファン配置は、空気フローが、低温空気ダンピング(cold air dumping)なしに、ほとんどゼロに低減され得るということを意味している。低温空気ダンピングは、低温空気の流れ(典型的に、天井の下に水平方向に流れ、コアンダ効果に起因して天井に付着する)が、天井から引き離され、それによって、占有されているスペースの中へ降下し(ダンピング)、コールド・ドラフトのリスクを結果として伴うという現象である。
【0078】
空調ユニットは、主本体部3の側部の周りに画定されている空気入口部24をさらに含む。
【0079】
上記に説明されているように、熱エレメント26は、空調ユニット2の3つの周囲側部に沿って設けられている。この空調ユニット2では、熱エレメント26は、熱転写を最大化するための熱コイル26b及び熱交換フィン26aを含む。コイル26bは、入口管18aを介して、加熱水又は冷水を受け入れ、そして加熱水又は冷水は、再生されるために、戻り管18bを介して戻される前に、コイル26aを通してポンプ送られる。凝結ポンプ52が、切換バルブ及び制御バルブ32a及び32bの下に又は隣接して位置されており、凝結水を凝結物戻り配管18c”の中へポンプ送りされてもよい。
【0080】
図4及び図5は、それぞれ、熱コイル26b及び対応するHVACインフラストラクチャーを概略的に示している。本空調ユニット2は、単一のコイル26bを使用しており、単一のコイル26bは、必要に応じて、加熱管18a”、18b”から冷却管18a’、18b’への切換をするバルブ32a、32bを有している。これは、回路に複雑さを加えるが、コイル26bを通して空気を駆動するときに、エネルギー損失を低減させる。
【0081】
図4は、冷却水が低温入口管18a’を介して供給される冷却配置を示している。コイル26bにおいて熱転写を最大化するために、逆流熱交換器が使用されている。1つの例示的で非限定的な具体例が、ここで説明される。14℃のフロー水が、配管の下流セットに進入し、水平方向にコイルを通過し、15.5℃まで加熱され、次いで、配管の上流セットを介して戻り、17℃で低温戻り管18b’に戻る。冷却モードでは(図4に示されているように)、逆流熱交換器は、(入口管18a’からの)最も低温の水が、冷却コイル26bを(半径方向内側に)離れる空気に隣接しており、(戻り管18b’への)温かい方の水が、冷却コイル26bに(半径方向外側に)進入する空気に隣接しているということを意味している。これは、熱交換プロセスの最も効率的な使用となり、また、可能な限り低い空気調和機放出温度を与える。
【0082】
代替的な配置では、切換バルブ32a、32b及び加熱媒体入口管及び戻り管18a”、18b”は、コイル26bが冷却専用コイル26を設けるように省略されてもよい。そのような配置では、別個の加熱ユニットが、必要なときに加熱するために、建物の周囲に設けられ得る。
【0083】
さらに代替的な配置では、別個の加熱コイルが、冷却専用コイル26bに隣接して設けられていてもよい。これは、従来の冷却加熱(「4管」)ファン・コイル・ユニットと同じ構成である。しかし、これは、コイル圧力降下を増加させ、それによって、エネルギー使用を増加させ、全体的な空調ユニット効率を減少させるという不利益を有している。
【0084】
本配置は、2列のコイル26bであり、それは、空調ユニット2の3つの側部のそれぞれの上の3つの部分に分割されている。これは、単に、例示的なものであり、他の数の部分及び/又は列も使用され得るものであり、例えば空気入口部24及び対応するコイル26aの部分が、2つの側部だけに設けられていてもよい。また、1列又は3列のコイル26aも、負荷に応じて適当となる。
【0085】
図5は、複数の空調ユニット2に冷却媒体又は加熱媒体を供給するためのHVACインフラストラクチャーを示している。インフラストラクチャーにおいて、空調ユニット2のための冷却システム36は、一般的に、加熱システム34から独立している。最初に、冷却システム36が説明される。
【0086】
冷却システム36は、冷却塔などのような凝結器38及びチラー40を含む。空調ユニット2のための冷却媒体(たとえば、水)は、チラー40によって冷却され、熱は、凝結器38によって消散される。
【0087】
従来のファン・コイルの動作温度は、約6℃のフロー及び約10℃から12℃の戻りの領域にある。しかし、これらの温度は、室内条件の大部分の下で凝結(結露)を生じさせることになり、したがって、凝結物除去システムが含まれなければならない。
【0088】
代替的なアプローチは、凝結を回避するために、より高い水温を使用することであり、典型的には、10℃から12℃のフロー及び14℃から16℃の戻りを使用することである。これらの温度は、室内条件の大部分の下で、凝結を生じさせない(しかし、凝結物除去システムは、典型的には、依然として含まれている)。
【0089】
本空調ユニット2は、14℃のフロー及び17℃の戻りの温度を伴う、冷蔵されていない低エネルギー源を使用して稼働させるオプションを有するよう選択されたが、他の動作温度も使用され得る。
【0090】
1つのモードの動作の間に、冷却媒体は、チラー40を使用してフロー温度まで冷却される。別のモードの動作では、凝結器38(冷却塔)からの水が、冷蔵された供給源として直接的に使用され得る。英国では、直接的に冷却するために、冷却塔38からの凝結器水を使用して、1年のうちのかなりの部分にわたって、そのような配置を稼働させることが可能である。14℃の設計フロー温度を冷却塔から直接的に提供するために、大気湿球温度は、塔サイズに基づいて、11℃以下でなければならず、湿球温度とフロー温度との間に3℃の差を与えることになる。ロンドンでは、たとえば、大気湿球温度は、1年の時間の少なくとも50%で11℃を下回っている。
【0091】
したがって、冬には、冷却塔38からの水は、冷却塔フロー・バルブ及びリターン・バルブ42a、42bをそれぞれの冷却回路システム・フロー・バルブ及びリターン・バルブ44a、44bに接続することによって、空調ユニット2に直接的に接続され得る。夏には、冷却塔38は、例えば30℃のフロー及び35℃の戻りの凝結器水温度でチラー40に接続することになる。及びチラー40は、所望の温度で冷水を発生させることになる。
【0092】
また、低エネルギー冷却水の他の供給源も使用されてもよく、例えば冷却塔40は、例えば河川水及び/もしくは地下水を使用することによって交換又は補完されてもよい。
【0093】
水冷式チラー40が、たとえば、35℃/30℃の温度で動作する高い室温において、冷却オプションとして使用される場合には、冷蔵回路が、冷却塔フロー・バルブ及びリターン・バルブ42a、42bをそれぞれの加熱回路システム・フロー・バルブ及びリターン・バルブ46a、46bに接続することによって、冷却塔38から加熱システム34へ凝結器水を提供するように配置され得る。これは、熱回収のために使用され、加熱を必要とする空調ユニット2に対してフリーヒーティングを提供することが可能である。
【0094】
上記に説明されているように、比較的に高い動作温度が使用され、凝結を最小化する場合でも、凝結物除去システム50を含むことが依然として一般的である(しかし、これは、望まれる場合には、省略され得る)。そして、凝結物除去システム50の使用は、空調ユニット2が、望まれる場合には、より低い温度で動作することを可能にする。またそれは、ユニット2が、混合モード建物の中で、すなわち、自然換気が1年の一時期に使用される場所で、使用されるということを意味している。(封止されたファサード(facade)を備える完全に空調される建物では、湿度は、凝結を回避するために40%RHなどのような低い数値に維持されることが可能である。これは、自然換気される建物では可能ではなく、最大で100%RHの湿度が起こる可能性があり、それは、空調ユニット冷却コイルなどのような低温表面の上での凝結を生じさせることになる。)
【0095】
図6は、空調ユニット2に関する凝結物除去システム50を示している。図7は、凝結物除去システム50を通る縦断面を示しており、図8は、凝結物除去システム50を通る横断面を示している。
【0096】
空調ユニット2の浅さに起因して、重力排水は、実現可能でない可能性がある。重力排水が可能でなく、凝結物除去が必要とされるときには、それは、ポンプで排出されなければならない。凝結物除去システムは、凝結ポンプ52及びドリップ・トレイ54を含み、ドリップ・トレイ54は、例えばプラスチック、アルミニウム、又は他の適切な材料から作製され、冷却コイル26bの一部分及び/又は冷却水制御バルブ32a、32bなどのような、ユニット2の1つ又は複数の冷却エレメントの下に設けられている。凝結ポンプ52は、好ましくは、可変の幾何学形状タイプのものであり、汚水槽又はフロート・スイッチを必要としない。汚水槽を必要とし、十分な量が蓄積された後にのみ凝結物をポンプ送りする遠心ポンプとは対照的に、ポンプ52は、ゆっくりと稼働し、ドリップ・トレイ54の中に収集するときに凝結物を除去することになる。
【0097】
親水性の凝結物収集部材56(たとえば、親水性のコーティングを備える管の形態)が設けられており、それは、好ましくは、ドリップ・トレイ54の長さにわたって続いている。親水性のコーティングは、水がコーティングを通過することを可能にするが、空気がコーティングを通過することを可能にしない。これは、部材56が、その長さに沿って任意のポイントにおいて凝結物を収集することになるということ意味している。
【0098】
また、湿度センサー58、例えば感湿導体が設けられており、それも、好ましくは、ドリップ・トレイ54の長さにわたって続いている。閾値湿度レベルを上回る湿度が検出された場合には、ポンプ52が作動する。また、凝結物制御システム50は、例えば不具合が起きた場合など、凝結物が蓄積した場合に、冷水供給及びファン28のスイッチを切るためのオーバーライドを有していてもよい。
【0099】
この凝結物制御システム50を使用することによって、すべての凝結物は、親水性部材56によって捕捉され、次いで、ポンプ52によって空調ユニット2から排出される。
【0100】
空調ユニット2は、第1の取付け及び第2の取付けに対応する、2つの段階において据え付けられるように設計されている。最初に、据え付けフレーム60が、第1の取付けのときに据え付けられる。据え付けフレーム60は、図9の断面及び図10の平面に示されている。次いで、空調ユニット2の主本体部3は、図11に示されている第2の取付けに据え付けられる。
【0101】
据え付けフレーム60は、リジッド本体部分62は、第1の取付けの間に天井の下端(soffit)に装着されるように構成されたリジッド本体部分62を含んでいる。リジッド本体部分62は、高くなった部分64をさらに含み、高くなった部分64は、好ましくは、本体部分62の角部に隣接しており、たとえば、雌ねじ付きの貫通穴を介して、寸切ボルト66を受け入れるように構成されている。寸切ボルト66は、第2の取付けの間に、空調ユニット2の主本体部3を据え付けフレームに装着するための手段を、フレーム60に提供する。
【0102】
据え付けフレーム60は、据え付けフレーム60に取り付けられることになる、冷却/加熱媒体管の入口及び出口18a、18bなどのような、特定の付帯設備18のための流体接続ポイント68をさらに含んでいてもよい。図10は、1対の管を図示している。先に記述したように、4管システムが存在する場合には、2対が存在し得る。また、据え付けフレーム60の中には、それが第2の取付けの間に据え付けられるときに、据え付けフレーム60の流体接続ポイント68を空調ユニット2の主本体部3に連結するためのフレキシブル接続部70が設けられ得る。接続ポイント68は、遮断バルブ69をそれぞれ含むべきであり、より大きいネットワークへの付帯設備を閉鎖することなく、個々の空調ユニット2の主本体部3が取り外されることを可能にする。
【0103】
また、同様に、据え付けフレーム60は、据え付けフレーム60に取り付けられることになる、電力ケーブル及び制御ケーブルなどのような、他の付帯設備18のための電気的な接続ポイント72を含むことが可能である。電気的な接続ポイント72は、ヒューズ付きスイッチ(fused spur)及びインターフェース・ボックスをそれぞれ含むことが可能である。
【0104】
フレキシブル管及びケーブルは、好ましくは、空調ユニットが「セルフ-アクセス」モードで開いているときに、それらが空調ユニットの主本体部を通して下から手でアクセスされるように、十分に短くなるように位置付けされている。
【0105】
以下のシーケンスが、据え付けに関して推奨される。
第1の取付け
・ 天井スラブの下側の準備(すなわち、水平になり、乾燥し、及びクリーンになるようにする)。
・ 天井グリッド及びコンポーネントを設定すること。
・ 据え付けフレーム60を天井スラブに固定すること(又は、吊り下げ天井グリッドに関して正しく設定する)。
・ 据え付けフレーム60の上の流体接続ポイント68において終端する付帯設備配管の据え付け。
・ 据え付けフレーム60の上の電気的な接続ポイント72において終端する、電力ケーブル及び制御ケーブルの据え付け。
・ 他の付帯設備(空調ユニット2のためのものではないもの)に関する電力及びケーブリング及び配管の据え付け。
第2の取付け
・ 天井グリッドの据え付け。
・ ライト及び他の主な天井コンポーネントの据え付け。
・ 天井タイルの据え付け。
・ 据え付けフレーム60の上への空調ユニット2の主本体部3の装着。
【0106】
典型的な吊り下げ天井の中に多くのコンポーネントが存在しており、いくつかは、他のものよりも多いアクセスを必要とする。典型的に、冷水(CHW)及び低温の温水(LTHW)の配管、スプリンクラー配管、ケーブル・トレイ、並びにケーブルは、第1の取付けアイテムとして据え付けられることになり、主要な設備・機器が存在するまで、比較的に変化させられないままであることになる。これらのコンポーネントは、据え付けられると、アクセスを必要とする可能性が低い。
【0107】
天井が上げられた後の試運転のために、又は、後でメンテナンスをするために、典型的にアクセスを必要とするコンポーネントは、ランプ、煙検出器、及びHVACコンポーネント、たとえば、バランシング・ダンパー、バランシング・バルブ、ファン・コイル・フィルター、及び制御ボックスなどを含む。これらのコンポーネントは、アクセス・パネル又はフルアクセス可能な天井のいずれかによって、従来の据え付けにおいてアクセスされる。逆に、本明細書で説明されている空調ユニット2は、図12に示されているように、セルフ-アクセスを提供するように配置されている。
【0108】
空調ユニット2の主本体部3は、2つのハウジング部76、78から構成されている。第1のハウジング部76は、例えば据え付けフレーム60を介して、天井に装着されている。第2のハウジング部78は、ヒンジを介して第1のハウジング部76に取り付けられており、それが(図2にあるような)動作位置から(図12に示されている)メンテナンス位置へ回転し得るようになっている。メンテナンス位置へと移動するときに、主本体部2の前面を含む第2のハウジング部78は、空調ユニット2のコンポーネントへのアクセスを提供するために熱的に制御されるスペース8の中へ回動(スイング)する。
【0109】
熱エレメント26は、第1のハウジング部76中に装着されている。これは、メンテナンスが空調ユニット2に対して実施されているときに、冷却/加熱媒体供給は、切断される必要がないということ意味している。
【0110】
ファン28、ファン・プレート27及びモーターは、第2のハウジング部78内に装着されており、第2のハウジング部78がメンテナンス位置への移動時に、第2のハウジング部78とともに下へ回動(スイング)するようになっている。これは、メンテナンスを実施する作業員が(はしごを使用するとき)、現場でメンテナンスされ得る従来のファン・コイル・ユニットでよくあったように、作業員の頭の上でユニット2に対して作業するのではなく、作業員の前の目の高さで作業することを可能にする。この作業位置は、より安全であり、より快適である。
【0111】
ファン28は、ファン制御ボックス29を含んでいてもよく、ファン制御ボックス29も、第2のハウジング部78の上に装着されていてもよい。そして、ファン制御ボックス29のディスプレイは、メンテナンス又は試運転を行う作業員によって容易に読み取られるように配置され得る。繰り返しになるが、これは、作業するときに作業員が上向きに見ることを必要とするのではなく、目の高さで容易に読み取られ得る。
【0112】
メンテナンス位置では、空調ユニット2のさまざまな電動バルブ(たとえば、切換バルブ32a、32b及び遮断バルブ69など)は、ファンが第2のハウジング部78とともに邪魔にならない場所へ移動しているので、容易にアクセス可能である。凝結ポンプ52及びドリップ・トレイ54は、また、第1のハウジング部76に装着されており、同様に容易にアクセス可能である。
【0113】
フィルター30は、メンテナンス位置においてクリーニング又は取り換えるために、それらが垂直方向下向きにスライドすることができるように位置決めされている。
【0114】
図11に示されているように、空調ユニット2は、必要な場合には、天井から切り離されて降ろされ得る。これを行うために、第2のハウジング部78は、メンテナンス位置へと下方にスイングし、電力、冷却/加熱媒体、及び凝結物への接続が(バルブ69を介して)遮断され、フレキシブル接続70が切断され、4角の固定ボルト68が、第1のハウジング部76から外され、それを据え付けフレーム60から切り離される。次いで、空調ユニット2全体が、天井から慎重に降ろされ得る。
【0115】
図13及び図14は、空調ユニット2を組み込む例示的な天井レイアウトを示している。
【0116】
図13のレイアウトでは、照明設備16は、9m当たり1つの照明設備16を提供するように配置されており、空調ユニット2は、24m当たり1つの空調ユニット2を提供するように配置されている。
【0117】
図14のレイアウトでは、照明設備16は、図13のレイアウトのものと同じ照明密度を提供するように配置されているが、空調ユニット2は、7.2m当たり1つの空調ユニット2を提供するように配置されている。そのうえ、より大きい密度の空調ユニット2が、建物の周囲(図14の右手側)に提供され、構造荷重(fabric load)を考慮している(外部条件)。
【0118】
図15から図25は、図1から図14を参照して上記に説明されている空調ユニット2のさまざまな代替的な配置を図示している。下記に説明されている差を除いて、以下の代替的な空調ユニットの構成は、上記に説明されている空調ユニット2のものと同じである。
【0119】
図15は、空調ユニット102を示しており、空調ユニット102の主本体部103は、図1から図14に示されている第1の空調ユニット2の主本体部3と同じである。
【0120】
図15では、空調ユニット102は、おおよそ500mmのより従来式の天井深さを有する天井の中に据え付けられている。これの主な利点は、それが、図1から図14に示されている空調ユニット2によって使用されているようなプレナム床供給部4を使用するのではなく、ダクト式の外気供給部118aの使用を可能にするということである。
【0121】
図16は、空調ユニット202を示しており、熱エレメント226は、チルド・ビーム226からなる。チルド・ビーム226の使用は、非常に大きい領域の熱エレメントを提供する。これは、空気フローと熱エレメント226との間の熱伝導を増加させ、また、熱エレメント226の圧力降下を低減させる。
【0122】
この構成は、図15のものと同様に、より厚いユニット202を必要とするが、その結果、ダクト式の外気供給部218aの使用を可能にする。
【0123】
この配置では、空気入口部224は、依然として、空調ユニット202の側面に、その周囲の辺りに配置されている。空気は、空気入口部224を介して空調ユニット202の中へ水平方向に引き込まれ、次いで、空気フィルター230を通して垂直方向下向きに、次いで、ファン228によって、チルド・ビーム226を通して引き込まれる。次いで、それは、ファン228によって、温度制御スペース8の中へ、スワール・パターンで放出される。
【0124】
冷却コイル26bの代わりにチルド・ビーム226が使用される場合に、特定の修正が、凝結物除去システムに対して行われ得る。この空調ユニット202では、凝結物がファン228の中へ落下することを防止するように凝結物シールド254aがファン228の上に設けられている。凝結物トレイ254は、チルド・ビーム226の垂直方向下方に、すなわち、前面の裏にわたってチルド・ビーム226からの凝結物を収集するように配置されている。凝結物シールド254aは、ファン228の中へ落下することになる凝結物を、凝結物トレイ254の中へ導くように配置されている。
【0125】
上記のように、親水性部材が、凝結物を収集するために凝結物トレイ254の中に設けられ、凝結ポンプ252が、親水性部材に沿って、空調ユニット202から凝結物を汲み出すために使用される。
【0126】
図17は、ペンダント・サスペンションの構成を示しており、空調ユニット302の主本体部303は、天井から吊り下げられている。これは、露出された天井を備える、リテール使用、又はレストランに適当であり得る。また、オフィス設計においては、吊り下げ式天井を取り外し、露出された付帯設備及び吊り下げられたユニットを有することへと向かう動きもある。
【0127】
この構成では、主本体部303の側面は、穿孔されているファシア・パネル325を含み、ファシア・パネル325は、主本体部303の前面の周囲の辺りでのフィルターへのアクセスを可能にするようにヒンジ接続され得る。
【0128】
空調ユニットの主本体部303の内部構造は、図1から図14に示されている空調ユニット2の主本体部3のものから変化させられていない。とりわけ、上記に説明されているように、空気は、環状に広がるパターンで、ファン・ブレードの先端部から真っ直ぐに排出する。空気フロー・パターンは、隣接する天井からのコアンダ効果に依存しないので、空調ユニット302は、天井に装着されているユニット2と同じ空気フロー・パターンを依然として実現しながら、ペンダント式に装着され得る。
【0129】
図18は、本明細書で説明されているいずれの空調ユニットにも組み込まれ得る修正例を図示している。
【0130】
この配置では、ファン・プレート427の傾斜面が、LED供給源480からの強い光を跳ね返すためのディフューザーとして、下のスペースの中に拡散照明効果を作り出すために使用される。空調ユニットの下側を完全にカバーする、穿孔プレート22は、この配置では存在しておらず、プレートは中実であり、ファンをカバーしてLED供給源480を支持するために必要とされる最小まで幅が低減されている。空調ユニット302の露出されたペンダント・バージョンに適用されるときの一体型照明の利点は、ユニット302が、点灯されていない吊り下げられた形状としてではなく、照明設備として認識され得るということである。
【0131】
図19は、この空調ユニット402を組み込むさらなる例示的な天井レイアウトを示している。所望の照明密度を提供するために、9m当たり1つの空調ユニット402が設けられている。しかし、空調ユニット402はそういうものとして認識されないので、これは、視覚的に目立たない。
【0132】
図20及び図21は、図17に示されているペンダント式空調ユニット302の変形例である空調ユニット502を図示している。
【0133】
空調ユニット502の主本体部503は、天井から吊り下げられている。空調ユニット502は、リム部材582をさらに含む。リム部材は、下向きに方向付けされたライト584及び/又は上向きに方向付けされたライト586を含むことが可能である。
【0134】
空調ユニット502は、スリム型(slim profile)で比較的に幅の広いユニット502を有することによって、視覚的に魅力的になるように配置されている。その意図は、視覚的な深さ、すなわち、リム部材582のサイド・パネル588の高さが、空調ユニット502の幅の約10%となるということである。図20において見ることができるように、リム部材582の後面は、傾斜したバック・パネルが下から見難くなるように傾斜が付けられている。この例では、リム部材582のサイド・パネル588は、約100mmの高さを有しており、リム部材582は、200mmの幅を有している。これは、約1000mm×1000mm×100mmの見掛けの寸法を有する空調ユニット502を結果として生じさせる。
【0135】
サイド・パネル588及びファシア・プレート520は、好ましくは、ステンレス鋼などのような高品質の仕上げを有している。「クリーン」な見た目を提供するために、リム部材582のバック・パネルは、目に見えない上側において、リム部材582を通して主本体部503の空気入口部524の中へ空気が引き込まれることを可能にするために、穿孔されている空気入口部590を含んでいてもよい。
【0136】
図22及び図23は、マルチ・サービス空調ユニット602を図示しており、マルチ・サービス空調ユニット602は、図20及び図21に示されているペンダント式空調ユニット502の変形例である。
【0137】
単一のユニットの中に必要とされるMEPコンポーネントのすべてを組み込むマルチ・サービス・ユニット602をオフィスの中で使用する傾向が存在している。マルチ・サービス空調ユニット602は、リム部材682を有しており、リム部材682は、ライティング684、並びに、煙検出器もしくは熱検出器、スプリンクラー、パブリック・アナウンスメント/ボイス・アラーム・ラウドスピーカー、及び/又はPIR検出器などのような、さまざまな他の付帯設備692を提供する。
【0138】
図24Aから図24Cは、垂直方向の空調ユニットを示している。空調ユニットは、凝結物除去システム50が、熱エレメントの下方に垂直方向に間隔を置いて配置されたドリップ・トレイと、斜めの角度で設けられたコイルとを提供するように修正されているということを除いて、図1から図4に示されている空調ユニット2と同じである。
【0139】
コイル26は、さらに、3つの側部に設けられている。コイル26は、凝結物がこの3つのコイルのそれぞれから収集され得るように配置されている。ユニットの上部は、ファン制御、制御バルブ、及び凝結ポンプを含んでいる。この部分の下方に、上側の小さいドリップ・トレイが、親水性のドレン管の支流とともに設けられていてもよい。
【0140】
実質的に垂直方向に延在する2つのサイド・コイル26は、図1から図4に示されている空調ユニット2におけるものと同じサイズ及び負荷を有している。実質的に水平方向に延在する、3つのコイルのうちの最も下のものは、それとは対照的に、長さ及び高さがより小さくなっており、また、図24Bにおいて最も明確に見られるように、垂直方向からおおよそ30度の角度でフィットしている。空気フローは、フィルター30の幅全体にわたって、空調ユニットの下側表面に進入し、これは、圧力降下が低いままになることを可能にする。空気は、図24Bの中の矢印によって示されているように、コイルの下方のドリップ・トレイの側部へ通り、コイルを通り、次いで、ユニットの中へ上昇する。コイルは、垂直方向からおおよそ30度に角度を付けられており、ドリップ・トレイによってカバーされていない領域において、空気がユニットの中へある角度で流れることを可能にする。図24Cにおいて見られるように、ドリップ・トレイ54は、(垂直方向に突き出ている側壁部を除いて)実質的に平面状であり、ドリップ・トレイ54は、角度付きのコイル26の幅全体にわたって延在する細長い中央部分と、垂直方向に延在するサイド・コイル26の下に全体的に置かれるように、中央部分の端部から突き出ている端部部分とを有している。角度付きのコイル26の面の上で形成される凝結物は、角度付きのコイルの面を下の方へ流れ、ドリップ・トレイの中へ入ることになり、その中央部分によって捕捉されることになる。垂直方向に延在するサイド・コイルの面の上で形成するいずれの凝結物も、端部部分によって収集されることになる。ここでは、30度の角度が、角度付きのコイル26に関して述べられているが、さまざまな代替的な斜めの角度が、所望の効果を提供することになる。
【0141】
サイド・コイルと角度付きの下側コイルとの間の冷却コイル配管接続部は、入り組んでいる。垂直方向に延在するサイド・コイルの上流面の管は、水平方向の角度付きのコイルの上流面の管に接続されており、次いで、反対側の垂直方向に延在するサイド・コイルの上流面に戻る。同じことが、下流管にも当てはまる。これは、配管接続配置を、図1から図4の配置に示されているものと同じになるように維持している。
【0142】
親水性のドレン管の支流が、ユニットの上部における凝結ポンプから下の方へ流れ、下側トレイから凝結物を除去する。代替的な配置では、重力配置が、その代わりに、2つのドリップ・トレイから凝結物を除去するために使用され得る。
【0143】
空隙は、戻り空気経路を可能にするために、ユニットの上方、下方、又は側部に設けられてもよい。外気は、別々の手段によって、ダクトに通され、又は供給され得る。
【0144】
角度付きのコイル及び代替的な凝結物収集配置を可能にしつつも、上記に説明されている実施形態に関して述べられている任意の適応例又は代替例が、図24Aから図24Cを参照して説明されている垂直方向の配置に適用され得るということが認識されるべきである。
【0145】
垂直方向の空調ユニットは、ホテルもしくはコンファレンス・センターのファンクション・ルーム、住宅建物、オフィス、又は学校の中で使用され得る。垂直方向の空調ユニットは、窓の下枠の下方に位置付けされ得、地下交通の駅/プラットフォームにおいて、また、コンピューター室を冷却するために、さらに使用され得る。
【0146】
1つのオプションは、天井ベースの空調ユニット2と同様に、200mm深さのゾーンを使用するということである。0.2m/秒及び600×600ディフューザーに基づく場合には、面速度は、いくつかの用途では高すぎる0.55m/sの面速度になることになる。しかし、ユニット702の深さが250~300mmまで増加し、ディフューザー・プレート723が使用される場合には、面速度は、0.25m/sまで低減され得る。また、供給温度が、18℃に設定された場合には、ユニット702は、ディフューザーの近くの居住者に関して許容可能な快適性を与えるということが知られている変位ディフューザー(displacement diffuser)の供給条件を再現することになる。
【0147】
垂直方向の空調ユニット702のアレイが壁部の中に据え付けられる場合には、たとえば、単一の列のラック794を伴う、SER(Small Equipment Room)又はSCR(Sub Comms Room)などのような小さいコンピューター室を冷却するために必要とされる冷却負荷を実現することが可能である。この配置は、図25に示されている。
【0148】
図示されている例では、1.5kWの従来の冷却負荷をそれぞれ備える3つのコンピューター・ラック794を有しており、負荷及び冷却能力は、以下のようになる。
負荷
3ラック@1.5kW=4.5kW
必要とされるレジリエンス(Resilience):N+1
冷却能力
冷却負荷:10ユニット@1.9kW=19kW
レジリエンス:2ユニット@1.9kW=N+2
【0149】
冷却能力は、標準ラックの要件をはるかに超えており、6.3kWの高密度のラックが、それぞれ収容され得る。
【0150】
機器及び配管のすべては、冷却壁部の中に収容されており、電気機器の上には配管はまったく走っていない。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24A
図24B
図24C
図25