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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-08
(45)【発行日】2022-09-16
(54)【発明の名称】盛土の壁面構造
(51)【国際特許分類】
   E02D 17/18 20060101AFI20220909BHJP
   E02D 29/02 20060101ALI20220909BHJP
【FI】
E02D17/18 Z
E02D29/02 302
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018166896
(22)【出願日】2018-09-06
(65)【公開番号】P2020041267
(43)【公開日】2020-03-19
【審査請求日】2021-06-18
(73)【特許権者】
【識別番号】519210608
【氏名又は名称】山下 喜央
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100094547
【弁理士】
【氏名又は名称】岩根 正敏
(73)【特許権者】
【識別番号】594126735
【氏名又は名称】麻生フオームクリート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 喜央
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-268772(JP,A)
【文献】特開2011-168956(JP,A)
【文献】特開平08-269975(JP,A)
【文献】特開2007-277880(JP,A)
【文献】特開2005-155166(JP,A)
【文献】特開2011-132696(JP,A)
【文献】特開2009-167694(JP,A)
【文献】特開2009-114743(JP,A)
【文献】米国特許第04836718(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 17/18
E02D 29/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
立設した壁面の背後に硬化性を有する盛土材を充填して構築する盛土の前記壁面の構造であって、
間隔を開けて地盤上に立設した複数本の支柱と、隣り合う支柱の間を塞ぐ状態で下段側から積み上げられて前記支柱の背面側に配設された型枠パネルと、隣り合う支柱の間を塞ぐ状態で下段側から積み上げられて前記支柱の表面側に配設された壁面パネルとからなり、
前記型枠パネルと前記壁面パネルとの間が水の通り道となっており、
前記型枠パネルの間の目地部にシーリング材が充填され、
前記積み上げられた型枠パネルの背面側から前記地盤上にかけて遮水シートが配設されている ことを特徴とする盛土の壁面構造。
【請求項2】
上記支柱の高さ方向の適所に、上記充填された盛土材に埋設される支持アンカーが連結されていることを特徴とする請求項1に記載の盛土の壁面構造。
【請求項3】
上記硬化性を有する盛土材が、気泡混合軽量土であることを特徴とする請求項1又は2に記載の盛土の壁面構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、盛土の壁面構造に関するもので、特に、気泡混合軽量土で形成される盛土の壁面構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
FCB工法(Formed Cement Banking Method)とは、原料土(砂質土)とセメント、水および気泡を混合、又は、セメント、水および気泡を混合した気泡混合軽量土(Formed Mixture Light-weight Soil)を用いた軽量盛土工法である。気泡混合軽量土は、軽量で流動性(フレッシュ状態)があり、容易な施工性、優れた経済性から注目されている盛土材である。これらの特徴を生かして、軟弱地盤上のおける道路、橋梁、構造物等の盛土や裏込、急傾斜地盛土等に、該FCB工法は広く適用されている。
【0003】
ここで、気泡混合軽量土は、固化する前は流動性のある材料であるため、コンクリートと同様に型枠が必要となり、また、硬化後の表面を保護することが必要となる。そのため、型枠と表面保護材とをかねて壁面パネルが残存型枠として使用され、該壁面パネルを、背後に立設した支柱、枠体などに固定し、気泡混合軽量土を打設することにより一体化させ、表面を保護する壁体としてそのまま残される工法が採用されている(例えば、特許文献1,2など参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-242189号公報
【文献】特開2002-188148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した従来工法により形成された壁面構造の盛土にあっては、次のような問題点があることが、近年分かってきた。
先ず、残存型枠として用いる壁面パネルの目地部をシーリング材等により防水処理しているが、シーリング材の壁面への接着力不足や経年劣化等により、気泡混合軽量土の硬化体から成る盛土本体の遊水によるノロ漏れが発生し、壁面が局所的に汚されることが生じていた。これは、一時的に清掃しても新たにノロ漏れが発生することから、対策が困難なものであった。
また、型枠をかねた壁面パネルは、硬化した気泡混合軽量土から成る盛土本体に直に接触し、一体化しているため、盛土本体の変形やパネル背面の遊水等の影響を直接受け、壁面パネルに割れ、パネル固定金具の腐食による剥がれ、脱落等が生じ易く、また、壁面パネルに割れ、剥がれ等が生じた場合には、該壁面パネルの張り替えが困難であると共に、その張り替え時に一体化した気泡混合軽量土硬化体に損傷を与えるおそれもあった。
【0006】
本発明は、上述した背景技術が有する問題点に鑑み成されたものであって、その目的は、盛土本体からの遊水、変形等の影響を受け難く、且つ、その壁面の張り替え等のメンテナンス作業が容易に行える盛土の壁面構造を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するため、本発明は、次の[1]~[4]に記載した盛土の壁面構造とした。
[1]立設した壁面の背後に硬化性を有する盛土材を充填して構築する盛土の前記壁面の構造であって、間隔を開けて地盤上に立設した複数本の支柱と、前記支柱の背面側に配設された型枠パネルと、前記支柱の表面側に配設された壁面パネルとから成ることを特徴とする、盛土の壁面構造。
[2]上記硬化性を有する盛土材が、気泡混合軽量土であることを特徴とする、上記[1]に記載の盛土の壁面構造。
[3]上記型枠パネルの背面側に、更に遮水シートが配設されていることを特徴とする、上記[1]又は[2]に記載の盛土の壁面構造。
[4]上記支柱の適所に、上記充填された盛土材に埋設した支持アンカーが連結されていることを特徴とする、上記[1]~[3]のいずれかに記載の盛土の壁面構造。
【発明の効果】
【0008】
上記した本発明に係る盛土の壁面構造によれば、表面保護材と型枠とをかねた一層の壁面パネルから成る壁面構造とは異なり、盛土材は支柱の背面側に配設された型枠パネルとは接するものの、支柱の表面側に配設された壁面パネルとは直に接しない構造となる。そのため、壁面パネルは盛土材の硬化体である盛土本体と一体化することはなく、盛土本体からの遊水、変形等の影響を直接受けることがなくなり、その割れ、剥離等が生じ難いものとなる。また、万一壁面パネルに割れ、剥離等が生じた場合にも、盛土本体と一体化していないためにその張り替えが容易に行えると共に、盛土本体に損傷を与えることもない。また、壁面パネルと型枠パネルとの間が水の通り道となるため、盛土本体からの遊水は壁面パネルの表面側に達することはなく、壁面のノロ漏れによる汚れ等が生じ難いものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の壁面構造を採用した盛土の一例を示した概念的な縦断面図である。
図2図1のA部を拡大して示した図である。
図3】本発明に係る盛土の壁面構造の施工方法の一例を示した概念的な側面図であって、主に支柱の立設工程を示した図である。
図4】本発明に係る盛土の壁面構造の施工方法の一例を示した概念的な側面図であって、主に支柱の立設工程から壁面パネルの配設工程を示した図である。
図5】本発明に係る盛土の壁面構造の施工方法の一例を示した概念的な斜視図であって、主に壁面パネルの配設工程を示した図である。
図6】本発明に係る盛土の壁面構造の施工方法の一例を示した概念的な側面図であって、主に型枠パネルの配設工程から盛土材の打設工程を示した図である。
図7】本発明に係る盛土の壁面構造の施工方法の一例を示した概念的な斜視図であって、主に型枠パネルの配設工程を示した図である。
図8】本発明に係る盛土の壁面構造の施工方法の一例を示した概念的な斜視図であって、主に盛土材の打設工程を示した図である。
図9】本発明に係る盛土の壁面構造の施工方法の一例を示した概念的な側面図であって、主に硬化した盛土材上方への敷網材の設置工程から支柱への支持アンカーの連結工程を示した図である。
図10】本発明に係る盛土の壁面構造の施工方法の一例を示した概念的な側面図であって、主に支柱の上方への連結工程から盛土材の複数回目の打設工程を示した図である。
図11】本発明に係る盛土の壁面構造の施工方法の一例を示した概念的な側面図であって、主に天端の仕上げ工程を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る盛土の壁面構造の実施形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
図1は、本発明の壁面構造を採用した盛土の一例を示した概念的な縦断面図であり、図2は、図1のA部を拡大して示した図である。
この図示した盛土1は、立設した壁面10の背後に硬化性を有する盛土材50を充填して構築されたものである。なお、図示した盛土1は、地山60と構築した壁面10との間に盛土材50を充填した、いわゆる傾斜地の拡幅盛土を示しているが、本発明は、かかる拡幅盛土に限定されず、構築した両側となる壁面の間に硬化性を有する盛土材を充填し、道路、橋台、自立壁、擁壁等として用いる盛土、また、周囲を構築した壁面で囲み、その内方に硬化性を有する盛土材を充填し、造成地、建物の基礎とした盛土などを、広く対象とするものである。また、充填する盛土材は、盛土全体において同質のものである必要はなく、例えば、下方は合成樹脂発泡体ブロックを盛土材として充填し、上方は現場発泡の硬質発泡ウレタン、気泡混合軽量土などの硬化性を有する盛土材を充填した構成の盛土であっても、本発明の対象となる。
【0012】
壁面10は、間隔を開けて地盤61上に立設した複数本の支柱20と、前記支柱20の背面側(躯体側)に配設された型枠パネル30と、前記支柱20の表面側に配設された壁面パネル40とから成る、重層(2層)構造に形成されている。なお、この重層(2層)構造の壁面構造は、現場発泡の硬質発泡ウレタン、気泡混合軽量土などの硬化性を有する盛土材を充填する部位の壁面において、少なくとも採用されていればよい。
【0013】
支柱20は、下端を地盤61に形成された基礎コンクリート21に埋設され、複数本が等間隔、例えば500mm程度の間隔を開けて並んだ状態に立設されている。各支柱20は、1本の長尺なものであってもよく、上下複数段に分割された分割支柱を接続したものであってもよい。図示した実施形態にかかる支柱20にあっては、2本の分割支柱20A,20Bが、継手金具22によって接続されたものである。
【0014】
支柱20には、鋼材に溶融亜鉛メッキを施したものを用いることができ、これ以外でも、耐蝕性に優れた材料で形成されたものであればよい。また支柱20は、L形鋼、C形鋼(リップ溝形鋼)、H型鋼、角型鋼などを用いることができる。支柱20の上下方向の適所には、必要に応じて充填された盛土材50に埋設された支持アンカー23を連結することができる。
【0015】
支柱20の背面側(躯体側)に配設された型枠パネル30としては、いわゆる「コンパネ」と呼ばれる南洋材、合板などからなる木質のもの、スチール製のもの、セメント系のもの、更には合成樹脂製のものなど、一般に型枠として使用されているものを広く用いることができる。大きさは、人力による施工性を考慮し、3×6判(910mm×1820mm)程度以下の大きさのものが適当であるが、これに限られるものではない。
【0016】
型枠パネル30は、立設された支柱20の背面側(躯体側)において、隣り合う支柱20,20間を塞ぐ状態で下段側から積み上げて配設することができる。型枠パネル30は、スクリューネジ等を用いて直接支柱20の背面側に接触した状態で取り付けてもよく、セパレータ等の取付具を用いて支柱20の背面側に浮いた状態で取り付けてもよい。これらのスクリューネジ、取付具等は、長期の耐蝕性が必要であることから、溶融亜鉛めっきが施されたもの、またはステンレス鋼などを使用する。図2に図示した実施形態にあっては、スクリューネジ31を用いて直接支柱20の背面側に接触した状態で型枠パネル30が取り付けられている。配設した型枠パネル30間の目地部には、シーリング材を充填することができ、また、配設した型枠パネル30の背面側に、必要に応じて更に遮水シート70を配設することができる。
【0017】
支柱20の表面側に配設された壁面パネル40としては、構築された盛土構造物の表面部位の美観、つまり外観を向上させると共に、盛土構造物の表面部位を保護する機能を有するものであればよく、セメント系パネル、合成樹脂系パネル、金属系パネルなどを用いることができる。大きさは、人力による施工性を考慮し、やはり3×6判(910mm×1820mm)程度以下の大きさのものが適当であるが、従来技術のように型枠をかねたものではないため、大型化が容易であり、より大きな壁面パネルを、重機を用いた機械施工によって対応するものとしてもよい。
【0018】
壁面パネル40は、立設された支柱20の表面側において、隣り合う支柱20,20間を塞ぐ状態で下段側から積み上げて配設することができる。また壁面パネル40は、スクリューネジ等を用いて直接支柱20の表面側に接触した状態で取り付けてもよく、取付具を用いて支柱20の表面側に浮いた状態で取り付けてもよい。図2に図示した実施形態にあっては、取付具41によって支柱20の表面側に浮いた状態で壁面パネル40が取り付けられている。配設した壁面パネル40間の目地部には、止水性を考慮してシーリング材を充填することができる。
【0019】
上記した構造の壁面10の背後に充填された硬化性を有する盛土材50としては、コンクリート、現場発泡の硬質発泡ウレタン、気泡混合軽量土などを挙げることができる。これらの中でも、原料土(砂質土)とセメント、水および気泡を混合、又は、セメント、水および気泡を混合した気泡混合軽量土(Formed Mixture Light-weight Soil)は、軽量で流動性(フレッシュ状態)があり、容易な施工性、優れた経済性を有するため、盛土材として好ましく用いられる。図示した実施形態においては、盛土材50として気泡混合軽量土が用いられ、型枠パネル30の背面側のみならず、地盤61から地山60側に至るまで遮水シート70が配設され、その上方に気泡混合軽量土50が充填されている。
【0020】
気泡混合軽量土50の充填は、自重による気泡の潰れを回避するため、複数回に分けて行われ、硬化した気泡混合軽量土50の上方に敷網材71が設置され、高さ方向の適所に敷網材71が埋設された盛土本体が構築される。敷網材71は、盛土本体の補強及びひび割れの抑制を目的に設置されるもので、JIS G3551(φ3.2×100×100mm)にJIS H8641 HDZ35相当の防錆処理を施したものが好ましく使用できる。気泡混合軽量土50の硬化体から成る盛土本体の上面には、遮水シート70が敷設され、その上方に天端コンクリート72が形成されている。また、壁面10の天端には、止水板73が設けられている。
【0021】
次に、上記した本発明に係る壁面構造を有する盛土の施工方法の一例を、図面を示して説明する。
【0022】
先ず、図3(a)に示したように、壁面の構築位置αにおける地盤61上に、均しコンクリート24を形成すると共に差し筋25を配置する。次に、図3(b)に示したように、支柱20を仮設材26を利用して立て付け、その立つ付けた支柱の下端に、図3(c)に示したように、基礎型枠27を設置し、型枠をセパ固定具28で固定する。続いて、図4(a),(b)に示したように、形成した型枠27内にコンクリートを打設し、基礎コンクリート21を形成する。これにより、壁面の構築位置αにおける地盤61上に、下端が基礎コンクリート21に埋設された支柱20を、等間隔、例えば500mm程度の間隔を開けて必要な長さに渡って立設する。なお、立設した支柱20,20間には、その間隔を保持する幅止め固定材29を差し渡して設置することが好ましい。
【0023】
続いて、図4(c)及び図5に示したように、立設した支柱20の表面側に、隣り合う支柱20,20間を塞ぐ状態で壁面パネル40を下段側から並べた状態で配設する。壁面パネル40の支柱20への取り付けは、スクリューネジ、取付具41等を用いて行えばよい。また、配設した壁面パネル40間の目地部には、必要に応じてシーリング材を充填する。
【0024】
壁面パネル40を必要高さまで積み上げて配設した後、図6(a)及び図7に示したように、立設した支柱20の裏面側(躯体側)に、隣り合う支柱20,20間を塞ぐ状態で型枠パネル30を下段側から並べた状態で配設する。型枠パネル30の支柱20への取り付けは、壁面パネル40の場合と同様にスクリューネジ、取付具31等を用いて行えばよい。また、配設した型枠パネル30間の目地部には、必要に応じてシーリング材を充填する。これにより、支柱20を挟んで、表面側に壁面パネル40から成る壁面が、裏面側に型枠パネル30から成る壁面がそれぞれ形成され、重層(2層)構造の壁面10となる。
【0025】
続いて、図6(b)に示したように、配設した型枠パネル30の背面側から地盤61上にかけて、更には図示は省略したが地山60の表面にいたるまで、遮水シート70を配設し、図6(c)及び図8に示したように、配設した遮水シート70上に、盛土材50である気泡混合軽量土を所定高さまで打設する。一回の打設高さは、自重による気泡の潰れを考慮し、50~100cm程度が適当である。
【0026】
打設した気泡混合軽量土50が硬化した後、図9(a)に示したように、その上方に敷網材71を敷設し、続いて、図9(b)に示したように、敷設した敷網材71上に、盛土材50である気泡混合軽量土をまた所定高さまで打設する。これにより、敷網材71が高さ方向の適所に埋設された盛土本体を構築することができる。
【0027】
次に、図9(c)に示したように、型枠パネル30、遮水シート70等の上方への追加設置を行うと共に、硬化した気泡混合軽量土50の上方に敷網材71を敷設し、更に、支持アンカー23を支柱20に連結する。続いて、その上方に盛土材50である気泡混合軽量土をまた所定高さまで打設する。これにより、敷網材71の他、支柱20を支える支持アンカー23が高さ方向の適所に埋設された盛土本体を構築できる。
【0028】
続いて、図10(a)に示したように、支柱20を継手金具22によって上方に継ぎ足し、その表面側に壁面パネル40を、背面側に型枠パネル30を配設し、気泡混合軽量土50を打設する等の上記した工程を繰り返し、図10(b)に示したように、盛土本体を段階的に構築していく。
【0029】
支柱20の天端までの気泡混合軽量土50の打設が完了し、設計高さの盛土本体を構築した後、図11に示したように、支柱20を挟んで、表面側に壁面パネル40から成る壁面が、裏面側に型枠パネル30から成る壁面がそれぞれ形成された重層(2層)構造の壁面10の上端に、止水板73を取り付けることにより塞ぎ、また、構築した盛土本体の上面に遮水シート70を敷設し、その上方にコンクリートを打設することにより天端コンクリート72を構築する。これにより、盛土1が完成する。
【0030】
上記した本発明に係る盛土の壁面10の構造によれば、盛土材50は支柱10の背面側に配設された型枠パネル30とは接するものの、支柱10の表面側に配設された壁面パネル40とは直に接しない構造となる。そのため、壁面パネル40は盛土材50の硬化体である盛土本体と一体化することはなく、盛土本体からの遊水、変形等の影響を直接受けることがなくなり、その割れ、剥離等が生じ難いものとなる。
また、万一壁面パネル40に割れ、剥離等が生じた場合にも、盛土本体と一体化していないためにその張り替えが容易に行えると共に、盛土本体に損傷を与えることもない。また、壁面パネル40と型枠パネル30との間が水の通り道となるため、盛土本体からの遊水は壁面パネル40の表面側に達することはなく、壁面のノロ漏れによる汚れが生じ難いものとなる。
【0031】
以上、本発明に係る盛土の壁面構造の実施形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明によれば、盛土本体からの遊水、変形等の影響を受け難く、且つ、その壁面の張り替え等のメンテナンス作業が容易に行える壁面構造となるので、傾斜地の拡幅盛土、道路、橋台、自立壁、擁壁等として用いる盛土、また、造成地、建物の基礎となる盛土の壁面構造として、広く適用できるものとなる。
【符号の説明】
【0033】
1 盛土
10 壁面
20 支柱
20A,20B 分割支柱
21 基礎コンクリート
22 継手金具
23 支持アンカー
24 均しコンクリート
25 差し筋
26 仮設材
27 基礎型枠
28 配筋
29 幅止め固定材
30 型枠パネル
31 スクリューネジ
40 壁面パネル
41 取付具
50 盛土材(気泡混合軽量土)
60 地山
61 地盤
70 遮水シート
71 敷網材
72 天端コンクリート
73 止水板
α 壁面の構築位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11