(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-08
(45)【発行日】2022-09-16
(54)【発明の名称】プラモデル作成用ニッパー、及び、切断刃
(51)【国際特許分類】
B26B 17/00 20060101AFI20220909BHJP
【FI】
B26B17/00 A
(21)【出願番号】P 2022095545
(22)【出願日】2022-06-14
【審査請求日】2022-06-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517084782
【氏名又は名称】株式会社エトワール
(74)【代理人】
【識別番号】100142804
【氏名又は名称】大上 寛
(72)【発明者】
【氏名】瀧川 久利司
【審査官】山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第211220792(CN,U)
【文献】実開昭54-021891(JP,U)
【文献】米国特許第07966734(US,B2)
【文献】米国特許出願公開第2006/0207101(US,A1)
【文献】実公昭42-014717(JP,Y1)
【文献】実開昭54-024196(JP,U)
【文献】実開昭56-164767(JP,U)
【文献】実開昭61-014974(JP,U)
【文献】実開昭56-139466(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26B 17/00
B26B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラモデルのパーツが接続されるゲート等を切断するために用いられるプラモデル作成用ニッパーであって、
一対の半体部材を連結部において回動可能に接続され、
一方の半体部材に切断刃が着脱可能に設けられ、
他方の半体部材に切断刃に対向する受板部が設けられる、構成とする、
あるいは、
一対の半体部材を連結部において回動可能に接続され、
各半体部材にそれぞれ切断刃が着脱可能に設けられる、構成とする、
プラモデル作成用ニッパーであり、
前記切断刃は、
前記半体部材に形成された刃固定部に固定される被固定部を有し、
前記被固定部は、前記刃固定部に対し固定される固定部材にて押さえ付けられて前記刃固定部に対して固定されるものであり、
前記被固定部は、前記切断刃の刃先部が伸びる方向にスライドして、前記刃固定部に挿入されて固定され、
前記被固定部は、前記切断刃の刃先部が伸びる方向にスライドして、前記刃固定部から外される
ものであり、
前記固定部材は
前記刃固定部に対し固定具にて固定され、
前記切断刃の
前記被固定部には、
前記固定具を緩めて
前記固定部材を
前記刃固定部から外さない状態において、
前記固定具と干渉せずに
前記切断刃をスライドして
前記刃固定部から外すことを可能とするための挿通部が形成される、プラモデル作成用ニッパー。
【請求項2】
前記被固定部は一対の挿入部が形成され、
一対の挿入部の間に
前記挿通部が形成され、
前記挿通部は略U字に構成され、
前記挿通部に
前記固定具が挿通される、
ことを特徴とする請求項
1に記載のプラモデル作成用ニッパー。
【請求項3】
前記刃固定部の底面部には係合凹部が形成され、
前記固定部材には
前記被固定部を押さえ付けた状態で
前記係合凹部に挿入される係合凸部が設けられる、
ことを特徴とする請求項
2に記載のプラモデル作成用ニッパー。
【請求項4】
前記挿通部には、
前記固定部材の
前記係合凸部が挿通される、
ことを特徴とする請求項
3に記載のプラモデル作成用ニッパー。
【請求項5】
前記係合凸部は、互いに平行な二つの壁面を有する軸状に構成され、
前記挿通部の内側端面が壁面に当接する構成とし、
当該当接によって
前記切断刃の固定角度が規定される、
ことを特徴とする請求項
4に記載のプラモデル作成用ニッパー。
【請求項6】
前記固定部材は板状のプレートにて構成され、
前記固定部材の少なくとも一つの側端面は
前記刃固定部に設けられる側壁に当接し、
前記固定部材の回転が規制される、
ことを特徴とする請求項
5に記載のプラモデル作成用ニッパー。
【請求項7】
切断作業部の閉じ角度を調整するための閉じ角度調整機構が設けられ、
前記切断刃を交換した後において、切断時における
前記切断刃の
前記受板部に対する角度を高精度で調整することを可能とする、
ことを特徴とする請求項
6に記載のプラモデル作成用ニッパー。
【請求項8】
前記受板部は、前記半体部材に対して着脱可能に設けられる、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項
7のいずれか一項に記載のプラモデル作成用ニッパー。
【請求項9】
プラモデルのパーツが接続されるゲート等を切断するために用いられるプラモデル作成用ニッパーに用いられる交換用の切断刃であって、
切断刃は、
ニッパーを構成する半体部材に形成された刃固定部に固定される被固定部を有し、
前記被固定部は、前記刃固定部に対し固定される固定部材にて押さえ付けられて前記刃固定部に対して固定されるものであり、
前記被固定部は、前記切断刃の刃先部が伸びる方向にスライドして、前記刃固定部に挿入されて固定され、
前記被固定部は、前記切断刃の刃先部が伸びる方向にスライドして、前記刃固定部から外されるものであ
り、
前記被固定部は、前記刃固定部に対し固定される固定部材にて押さえ付けられて前記刃固定部に対して固定され、
前記切断刃の
前記被固定部には、
固定具を緩めて
前記固定部材を刃固定部から外さない状態において、
前記固定具と干渉せずに
前記切断刃をスライドして
前記刃固定部から外すことを可能とするための挿通部が形成される
、プラモデル作成用ニッパーに用いられる交換用の切断刃。
【請求項10】
前記被固定部は一対の挿入部が形成され、
一対の挿入部の間に
前記挿通部が形成され、
前記挿通部は略U字に構成され、
前記挿通部に
前記固定具が挿通される、
ことを特徴とする請求項
9に記載のプラモデル作成用ニッパーに用いられる交換用の切断刃。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切断工具であるニッパーに関するものであり、より詳しくは、プラモデルなどの模型のパーツが繋がれるゲートを切断するためのプラモデル作成用ニッパーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に開示されるように、プラモデルのパーツをつないでいるゲート部分をニッパーで切断し、パーツを切り取るためのニッパーが知られている。
【0003】
特許文献1では、一定の長さのゲートを残すことで、パーツの傷つきや、ゲートを長く残しすぎてしまうといった不具合を解消することを課題としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ニッパーによる切断回数が増えるにつれてニッパーの切れ味が悪くなり、切断不良が生じることになり、一回で切断されずに複数回切断をすることや、大きな力を加える必要が生じるなど、作業者の負担が増すことが懸念される。
【0006】
また、切れ味が悪くなると平坦な切断面が形成されず、樹脂に寄りが生じていわゆる白化が発生することになり、パーツの美観を損ねてしまうことが懸念される。さらに、これに伴って、パーツを切り取った後のヤスリ掛けの作業負担も増すことが懸念される。
【0007】
以上の切れ味の問題はニッパーの刃が摩耗することによって生じるものであり、作業者は切れ味が悪くなったニッパーを廃棄して、新たにニッパーを購入する必要があった。
【0008】
新たにニッパーを購入することは、ユーザーに対し経済的な負担を強いることになる。また、刃の部分以外はほとんど摩耗しないといえるにもかかわらず、ニッパーを廃棄するということは、環境負荷をかけることになりエコロジーとは言い難い。
【0009】
さらに、ユーザーには、使い慣れた工具を長期間愛用したいという思いがあるものと考えられ、このようなユーザーの思いに応えられる新規なニッパーが求められていた。
【0010】
本発明は以上の問題に鑑み、主にプラモデルのパーツが接続されるゲートを切断するためプラモデル作成用ニッパーについて、新規な構成を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0012】
本発明の一態様によれば、プラモデルのパーツが接続されるゲート等を切断するために用いられるプラモデル作成用ニッパーであって、一対の半体部材を連結部において回動可能に接続され、一方の半体部材に切断刃が着脱可能に設けられ、他方の半体部材に切断刃に対向する受板部が設けられる、あるいは、各半体部材にそれぞれ切断刃が着脱可能に設けられる、プラモデル作成用ニッパーとする。
【0013】
また、本発明の一態様によれば、切断刃は、半体部材に形成された刃固定部に固定される被固定部を有し、被固定部は、刃固定部に対し固定される固定部材にて押さえ付けられて刃固定部に対して固定される、こととする。
【0014】
また、本発明の一態様によれば、固定部材は刃固定部に対し固定具にて固定され、切断刃の被固定部には、固定具を緩めて固定部材を刃固定部から外さない状態において、固定具と干渉せずに切断刃をスライドして刃固定部から外すことを可能とするための挿通部が形成される、こととする。
【0015】
また、本発明の一態様によれば、被固定部は一対の挿入部が形成され、一対の挿入部の間に挿通部が形成され、挿通部は略U字に構成され、挿通部に固定具が挿通される、こととする。
【0016】
また、本発明の一態様によれば、刃固定部の底面部には係合凹部が形成され、固定部材には被固定部を押さえ付けた状態で係合凹部に挿入される係合凸部が設けられる、こととする。
【0017】
また、本発明の一態様によれば、挿通部には、固定部材の係合凸部が挿通される、こととする。
【0018】
また、本発明の一態様によれば、係合凸部は、互いに平行な二つの壁面を有する軸状に構成され、挿通部の内側端面が壁面に当接する構成とし、当該当接によって切断刃の固定角度が規定される、こととする。
【0019】
また、本発明の一態様によれば、固定部材は板状のプレートにて構成され、固定部材の少なくとも一つの側端面は刃固定部に設けられる側壁に当接し、固定部材の回転が規制される、こととする。
【0020】
また、本発明の一態様によれば、切断作業部の閉じ角度を調整するための閉じ角度調整機構が設けられ、切断刃を交換した後において、切断時における切断刃の受板部に対する角度を高精度で調整することを可能とする、こととする。
【0021】
また、本発明の一態様によれば、受板部は、半体部材に対して着脱可能に設けられる、こととする。
【0022】
また、本発明の一態様によれば、プラモデルのパーツが接続されるゲート等を切断するために用いられるプラモデル作成用ニッパーに用いられる交換用の切断刃であって、切断刃は、ニッパー1を構成する半体部材に形成された刃固定部に固定される被固定部を有し、被固定部は、刃固定部に対し固定される固定部材にて押さえ付けられて刃固定部に対して固定され、切断刃の被固定部には、固定具を緩めて固定部材を刃固定部から外さない状態において、固定具と干渉せずに切断刃をスライドして刃固定部から外すことを可能とするための挿通部が形成される、プラモデル作成用ニッパーに用いられる交換用の切断刃とする。
【0023】
また、本発明の一態様によれば、被固定部は一対の挿入部が形成され、一対の挿入部の間に挿通部が形成され、挿通部は略U字に構成され、挿通部に固定具が挿通される、こととする。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、以下に示すような効果を奏する。
即ち、本発明の一態様によれば、切断刃を交換してニッパーを使い続けることが可能となり、新たにニッパーを購入する必要がなく、環境負荷も抑えたエコロジーな構成が可能となる。また、使い慣れた工具を長期間愛用したいというユーザーの思いに応えることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図2】プラモデル作成においてパーツをつなぐゲートを切断する様子について示す図。
【
図4】(A)は切断刃と刃固定部などについて説明する図。(B)は切断刃と係合凸部の関係などについて示す図。(C)は切断刃を固定した状態について示す図。
【
図5】(A)は切断刃と刃固定部などについて説明する図。(B)はプラモデルのゲートを切断する様子について示す図。
【
図6】(A)は切断刃を固定した状態について示す図。(B)は切断刃をスライドさせる様子について説明する図。
【
図7】(A)は切断刃を固定した状態について示す図。(B)は切断刃をスライドさせる様子について説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1に示すように、本発明に係るプラモデル作成用のニッパー1は、一対の半体部材11A,11Bを連結部3において回動可能に接続して構成されるものであり、連結部3の一側に握持操作部10が構成され、連結部3の他側に切断作業部20が構成される。
【0027】
図2に示すように、本発明に係るプラモデル作成用のニッパー1は、プラモデルのパーツ62とランナー64をつなぐゲート60を切断するために好適に用いられるものであり、ゲート60の切断面に白化を発生させることなく、切れ味を良好に保てる技術を有する。
【0028】
以下詳細に説明すると、
図1に示すように、握持操作部10において、各半体部材11A,11Bは、ステンレススチールなどの金属の湾曲した棒状の部材にて構成される。各半体部材11A,11Bにおいて、ユーザーによって握持されることが想定される領域は、合成樹脂製のグリップ材5にて被覆される。グリップ材5は弾力性を有し、切断時の衝撃がユーザーの手に直接伝わることを和らげるとともに、握持する際に滑り難くすることができる。
【0029】
握持操作部10において、連結部3の近傍には、弾性部材7が配置される。弾性部材7は、例えばコイルばねにて構成され、一端が半体部材11Aの内側面に当接され、他端が半体部材11Bの内側面に係止される。握持操作部10がユーザーによって握持されて力が加えられると、弾性部材7が両半体部材11A,11Bに挟まれて収縮し、弾性反力を生じさせ、握持操作部10が開く方向に付勢される。このようにして、切断作業の際には適度な反力を感じながら力を加えることができ、切断後は握持操作部10が自動で開かれることで、繰り返しの切断作業を容易に行うことができる。
【0030】
なお、半体部材11A,11Bは、所定の開き角度で互いに係止し合う係止部17が設けられ、力を加えない状態における握持操作部10の開き角度が所定の角度に設定される。また、これにより、切断作業部20の開き角度も所定の角度に設定されることになる。
【0031】
握持操作部10において、弾性部材7よりも連結部3から離れた位置には、ストッパー部材9が設けられる。ストッパー部材9は、例えば、先端に平坦な当接部を形成するボルトにて構成され、一方の半体部材11Bの内側面から突出されるようにナット止めされ、他方の半体部材11Aの内側面にボルトの先端が当接される。握持操作部10がユーザーによって握持されて力が加えられると、ストッパー部材9が両半体部材11A,11Bに挟まれることで、両半体部材11A,11Bの回動が規制される。これにより、更に力を加えても両半体部材11A,11Bが回動することがなく、切断作業部20に力が加わりすぎて切断刃22や受板部24が損傷することを防止できる。
【0032】
また、ストッパー部材9は、ナット8を緩めることにより、半体部材11Bからの突出量を調整することができ、これにより、切断作業部20の閉じ角度を調整するための閉じ角度調整機構Kが構成される。この閉じ角度調整機構Kにより、切断刃22の受板部24に対する角度を高精度で調整することができ、最適な切れ味を実現することができる。この構成は、特に、切断刃22を交換可能とする構成において、有効なものとなる。
【0033】
図1及び
図3に示すように、切断作業部20は、一方の半体部材11Aの先端に設けられる切断刃22と、他方の半体部材11Bの先端に設けられる受板部24と、を有して構成される。
【0034】
図3に示すように、半体部材11Aの先端には、切断刃22を固定するための刃固定部12が形成される。刃固定部12は、切断刃22の下面側に当接する底面部12aと、底面部12aから立ち上がって対向する一対の側壁12b,12cと、一対の側壁12b,12cを結ぶように立ち上がり、一対の側壁12b,12cとともに略コ字状の壁を形成する側壁12dと、を有して構成される。刃固定部12において、側壁12dと対向する側には側壁が形成されずに開放端12xとして構成され、詳しくは後述するように、切断刃22をスライドさせて刃固定部12に挿入させる、あるいは、刃固定部12から抜き出すことができるようになっている。
【0035】
図3に示すように、刃固定部12には、切断刃22の被固定部22eを挟み込んで固定するための固定部材14が固定される。固定部材14は板状のプレートにて構成され、板厚方向に貫通する貫通穴14aが形成され、貫通穴14aを介して固定具16の軸部16aが挿入されるとともに、固定具16の軸部16aが底面部12aの固定穴13aに挿入される。なお、本実施例では、固定具16を六角ボルトとし、固定穴13aをネジ穴とするが、この構成に限定されるものではなく、六角レンチ等を使用せずに固定が可能なもので構成されるものとしてもよい。
【0036】
図3及び
図4(A)(B)に示すように、刃固定部12において、側壁12dと対向する側には側壁が形成されずに開放端12xとなっており、開放端12xは受板部24に近づくほど、切断刃22の挿入方向X1において進んだ位置にあるように傾斜して構成される。これにより、刃先部22bの距離22Lを長く取ることができ、切断のための領域を広く確保することができる。
【0037】
図3及び
図4(A)(B)に示すように、固定部材14には、係合凸部14bが突出され、係合凸部14bが底面部12aの係合凹部13bに挿入されることで、固定部材14の回転が規制され、固定具16の緩みを防止できる。なお、例えば、係合凸部14bは平行な二つの壁面を有する軸状に構成され、同じく、底面部12aの係合凹部13bの断面を長穴として、互いに嵌合し合う構成とする他、それぞれの断面を長方形などとしてもよい。
【0038】
図3及び
図4(C)に示すように、固定部材14は略長方形の板状の部材にて構成され、その三辺の側端面がそれぞれ側壁12b,12c,12dに当接するようにしている。これにより、固定部材14の回転が規制され、固定具16の緩みを防止できる。なお、固定部材14の形状は、側端面が刃固定部12の側壁に当接することで固定部材14の回転が規制される構成であればよく、特に長方形に限定されるものではない。
【0039】
図3に示すように、固定部材14において、ニッパーの先端に近い側の端部14cは、徐々に厚みを薄くするように構成されており、ニッパーの先端側において切断刃22と固定部材14の境界部分に大きな段差が形成されないようにしている。
【0040】
図3及び
図4(A)に示すように、切断刃22は、腹部22aと、刃先部22bと、切先部22cと、背部22dと、被固定部22eと、を有して構成される。切断刃22は、刃固定部12に対し着脱可能であり、いわゆる替刃として取り替えることが可能に構成されるものである。切断刃22の厚みH(
図5(A))は、最も厚い箇所で0.8mm~1.0mmというように薄く設定され、プラモデルのゲートを切断する際に優れた切れ味を発揮できるようにしつつ、十分な強度が確保できるような厚みとすることが好ましい。
【0041】
図3及び
図4(A)に示すように、切断刃22の被固定部22eには、切先部22cと反対側が開放される略U字状の挿通部22hが形成されており、この挿通部22hに固定具16の軸部16aや係合凸部14bが挿通されるようになっている。被固定部22eには、間に挿通部22hを配置するようにして二本の挿入部22f,22gが形成されており、挿入部22f,22gの先端が側壁12dに当接することで、刃固定部12に対する切断刃22の位置決めが行われる。
【0042】
また、固定具16の軸部16aの係合凸部14bが挿通部22hに挿通されることで、切断刃22がスライドする際に係合凸部14bによって切断刃22に移動方向を二点でガイドすることができ、切断刃22をまっすぐに引き抜くことが可能となる。仮に、固定具16の軸部16aと係合凸部14bのいずれか一つであるとガイドが一点となり、切断刃22の水平面内における回転を規制することができず、不測の回転により手指を傷つけてしまうことが懸念される。本実施例の構成によれば、より安全性の高い構成が実現される。
【0043】
図5(A)に示すように、切断刃22の被固定部22eには、均一な厚みを有する下面部22mが形成される。一方で、刃固定部12の底面部12aには、下面部22mに対応する水平部12mが形成される。また、切断刃22の挿入部22f,22gは水平部12mに当接される。
【0044】
図5(A)に示すように、刃固定部12の底面部12aの深さDは、切断刃22の被固定部22eの厚みHよりも深く構成され、これにより、切断刃22の被固定部22eが刃固定部12に収容される。そして、切断刃22の被固定部22e(下面部22m)が底面部12aに載置された状態で、切断刃22の被固定部22e(挿入部22f,22g)の上面は平坦な被押圧面22kを構成する。この平坦な被押圧面22kを固定部材14で上から押さえつつ、固定具16を締結することで、
図5(B)に示すように、切断刃22が刃固定部12に固定される。
【0045】
図6(A)及び
図7(A)に示すように、固定具16を締結することで、切断刃22は固定部材14により上から押さえつけらえて固定され、プラモデルの制作時において図示せぬゲートなどの切断に使用される。
【0046】
そして、切断刃22の切れ味が悪くなった場合には、
図6(B)及び
図7(B)に示すように、切断刃22の交換をすることができる。具体的には、固定具16を緩めて固定部材14による切断刃22の押圧を弱めることで、切断刃22をスライドさせて刃固定部12から抜き出すことができる。
図7(B)では、固定部材14と切断刃22の間に隙間Dが形成されることで、切断刃22がスライドできる様子を示している。
【0047】
ここで、切断刃22の挿通部22hが略U字状であるため、固定具16を取り外すことなく緩めるだけで切断刃22を抜き出せる。また、新しい未使用の切断刃22を装着する際も、固定具16により固定部材14を仮止めした状態で切断刃22を挿入することができる。このようにして、刃固定部12の交換作業を容易に行うことができる。
【0048】
なお、被固定部22eに形成される挿通部22hの形状や、挿入部22f,22gの本数や形状については特に限定されるものではなく、例えば、挿入部22fのみを有する構成としてもよく、切断刃22を交換する際に固定具16と被固定部22eの干渉が生じない構成であればよい。
【0049】
また、固定具16を取り外すことなく切断刃22の交換作業が行えるため、小さな部品である固定具16や固定部材14が脱落してしまうことや、脱落により紛失してしまうことや、さらには、固定具16や固定部材14の穴の位置を合わせて再取り付けを行う手間が発生することなどを防ぐことができ、取り扱いのしやすい構成が実現できる。
【0050】
特に、切断刃22は鋭利な部分である刃先部22bを有するため、切断刃22と同時に固定具16や固定部材14を同時に取り扱うことは手指を損傷するなどのリスクをも伴うことになるが、固定具16や固定部材14を仮固定することができるため、切断刃22の取り扱いにのみ注意を払えばよいことになり、安全性にも優れた設計が実現できる。
【0051】
図5(B)に示すように、受板部24は、切断刃22の刃先部22bに対向する平坦な受面24aを有する。例えば、プラモデルのパーツと繋がれるゲート60が切断される際には、受面24aにてゲート60の一側が支えられつつ、ゲート60の反対側から切断刃22の刃先部22bが切り込み、刃先部22bが受面24aに到達することでゲート60が完全に切断される。
【0052】
なお、受板部24は、半体部材11B(
図3)と一体的に形成されることとする他、半体部材11B(
図3)に固定される別部材にて構成されることとしてもよい。また、受板部24を半体部材11B(
図3)に対し着脱可能とし、交換可能とすることとしてもよい。この場合、例えば、受板部24は、切断刃22において刃先部22bを受面24aに変更した構成とすることが考えられる。さらに、受板部24に代えて別の切断刃が取り付けられる構成とし、いわゆる両刃のニッパーが構成される構成としてもよい。
【0053】
以上のようにして本発明を実施することができる。
即ち、
図1乃至
図7に示すように、
プラモデルのパーツが接続されるゲート等を切断するために用いられるニッパーであって、
一対の半体部材11A,11Bを連結部3において回動可能に接続されるニッパーであり、
一方の半体部材11Aに切断刃22が着脱可能に設けられ、
他方の半体部材11Bに切断刃22に対向する受板部24が設けられる、
あるいは、
各半体部材11A,11Bにそれぞれ切断刃22が着脱可能に設けられる、
こととする。
【0054】
これにより、切断刃22を交換してニッパーを使い続けることが可能となり、新たにニッパーを購入する必要がなく、環境負荷も抑えたエコロジーな構成が可能となる。また、使い慣れた工具を長期間愛用したいというユーザーの思いに応えることもできる。
【0055】
また、
図3に示すように、
切断刃22は、
半体部材11Aに形成された刃固定部12に固定される被固定部22eを有し、
被固定部22eは、刃固定部12に対し固定される固定部材14にて押さえ付けられて刃固定部12に対して固定される、
こととする。
【0056】
これにより、固定部材14にて被固定部22eを押さえ付けることにより、切断刃22を確実に固定することができる。
【0057】
また、
図3及び
図4(A)(B)に示すように、
固定部材14は刃固定部12に対し固定具16にて固定され、
切断刃22の被固定部22eには、
固定具16を緩めて固定部材14を刃固定部12から外さない状態において、
固定具16と干渉せずに切断刃22をスライドして刃固定部12から外すことを可能とするための挿通部22hが形成される、
こととする。
【0058】
これにより、固定具16を取り外すことなく切断刃22の交換作業が行えるため、小さな部品である固定具16や固定部材14が脱落してしまうことや、脱落により紛失してしまうことや、さらには、固定具16や固定部材14の穴の位置を合わせて再取り付けを行う手間が発生することなどを防ぐことができ、取り扱いのしやすい構成が実現できる。
【0059】
また、
図4(B)(C)に示すように、
被固定部22eは一対の挿入部22f,22gが形成され、
一対の挿入部22f,22gの間に挿通部22hが形成され、
挿通部22hは略U字に構成され、
挿通部22hに固定具16が挿通される、
こととする。
【0060】
これにより、挿入部22f,22gの間を固定具16と通過させるようにして、切断刃22をスライドして刃固定部12から外すことができる。
【0061】
また、
図3及び
図4(A)(B)に示すように、
刃固定部12の底面部12aには係合凹部13bが形成され、
固定部材14には被固定部22eを押さえ付けた状態で係合凹部13bに挿入される係合凸部14bが設けられる、
こととする。
【0062】
これにより、係合凸部14bが底面部12aの係合凹部13bに挿入されることで、固定部材14の回転が規制され、固定具16の緩みを防止できる。
【0063】
また、
図4(B)に示すように、
挿通部22hには、固定部材14の係合凸部14bが挿通される、
こととする。
【0064】
これにより、切断刃22がスライドする際に係合凸部14bによって切断刃22に移動方向を二点でガイドすることができ、切断刃22をまっすぐに引き抜くことが可能となる。
【0065】
また、
図4(B)に示すように、
係合凸部14bは、互いに平行な二つの壁面14x,14xを有する軸状に構成され、
挿通部22hの内側端面22m,22mが壁面14x,14xに当接する構成とし、
当該当接によって切断刃22の固定角度が規定される、
こととする。
【0066】
これにより、切断刃22の水平面内の固定角度を係合凸部14bによって規定することができ、切断刃22の固定角度がずれることによって切れ味が悪くなるといった不具合を防ぐことができる。
【0067】
また、
図3に示すように、
固定部材14は板状のプレートにて構成され、
固定部材14の少なくとも一つの側端面は刃固定部12に設けられる側壁に当接し、
固定部材14の回転が規制される、
こととする。
【0068】
これにより、固定部材14の回転が規制され、固定具16の緩みを防止できる。
【0069】
また、
図3に示される受板部24は、半体部材11Bに対して着脱可能に設けられる、
こととする。
【0070】
これにより、例えば、受板部24が損傷して切れ味が悪くなった場合には、受板部24を交換することが可能となり、ニッパーを交換することなく使い続けることができる。
【0071】
また、
図1に示すように、切断作業部20の閉じ角度を調整するための閉じ角度調整機構Kが設けられ、切断刃22を交換した後において、切断時における切断刃22の受板部24に対する角度を高精度で調整することを可能とする、こととする。
【0072】
これにより、切断刃22を交換した後において、ゲートを切り抜く際の切断刃22の受板部24に対する角度を高精度で微調整することができ、所望の切れ味を実現することができる。特に、切断刃22を交換可能とする構成では、ユーザーによる取り付け状態にばらつきが生じ、ゲートの切れ味や切断面の白化の発生に影響することが懸念される。そこで、閉じ角度調整機構Kを設けることで、切断刃22と受板部24が閉じ切った際のいわゆる当たり具合を調整可能とし、ユーザーに優れた使い勝手を提供することができる。この技術は、電線や金属ワイヤーなどを切断するときに使用される一般的なニッパーとは違い、ゲートの切断面の美観が極めて重要なプラモデル作成分野における特有の課題を解決するものであり、単に切断刃22の交換を可能とする技術とは一線を画するものである。
【0073】
また、
図1乃至
図7に示すように、
プラモデルのパーツが接続されるゲート等を切断するために用いられるプラモデル作成用ニッパーに用いられる交換用の切断刃22であって、
切断刃22は、
ニッパー1を構成する半体部材11Aに形成された刃固定部12に固定される被固定部22eを有し、
被固定部22eは、刃固定部12に対し固定される固定部材14にて押さえ付けられて刃固定部12に対して固定され、
切断刃22の被固定部22eには、
固定具16を緩めて固定部材14を刃固定部12から外さない状態において、
固定具16と干渉せずに切断刃22をスライドして刃固定部12から外すことを可能とするための挿通部22hが形成される、こととする。
【0074】
また、
図4(B)(C)に示すように、
被固定部22eは一対の挿入部22f,22gが形成され、
一対の挿入部22f,22gの間に挿通部22hが形成され、
挿通部22hは略U字に構成され、
挿通部22hに固定具16が挿通される、こととする。
【符号の説明】
【0075】
1 ニッパー
3 連結軸
5 グリップ材
7 弾性部材
9 ストッパー部材
10 握持操作部
11A 半体部材
11B 半体部材
12 刃固定部
12a 底面部
12b 側壁
12c 側壁
12d 側壁
12m 水平部
12n 傾斜部
13a 固定穴
13b 係合凹部
14 固定部材
14a 貫通穴
14b 係合凸部
16 固定具
20 切断作業部
22 切断刃
22a 腹部
22b 刃先部
22c 切先部
22d 背部
22e 被固定部
22f 挿入部
22g 挿入部
22h 挿通部
22k 被押圧面
22m 平部
24 受板
24a 受面
60 ゲート
【要約】
【課題】 主にプラモデルのパーツが接続されるゲートを切断するためプラモデル作成用ニッパーについて、新規な構成を提案するものである。
【解決手段】プラモデルのパーツが接続されるゲート等を切断するために用いられるニッパーであって、一対の半体部材11A,11Bを連結部3において回動可能に接続されるニッパーであり、一方の半体部材11Aに切断刃22が着脱可能に設けられ、他方の半体部材11Bに切断刃22に対向する受板部24が設けられる、あるいは、各半体部材11A,11Bにそれぞれ切断刃22が着脱可能に設けられる、こととする。
【選択図】
図1