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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-08
(45)【発行日】2022-09-16
(54)【発明の名称】搬送台車
(51)【国際特許分類】
   B65G 7/06 20060101AFI20220909BHJP
   B61B 13/08 20060101ALI20220909BHJP
【FI】
B65G7/06 D
B61B13/08 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018120265
(22)【出願日】2018-06-25
(65)【公開番号】P2020001847
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】514222961
【氏名又は名称】株式会社ニシキ
(74)【代理人】
【識別番号】100100170
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 厚司
(72)【発明者】
【氏名】西木 一将
【審査官】山▲崎▼ 歩美
(56)【参考文献】
【文献】特開昭48-040113(JP,A)
【文献】特開2003-246423(JP,A)
【文献】特開平06-064717(JP,A)
【文献】実開昭59-083662(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 7/06
B61B 13/08
B65G 47/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側にフランジ部を有する矩形の枠架台にエア浮上式搬送装置が収容され、前記エア浮上式搬送装置が前記枠架台の内側に設けられた支持部に支持されている重量物搬送装置を備え、
前記 重量物搬送装置が、外側フランジと内側フランジを有する1対の平行に配設された平行架台の間に複数台配置され、
前記重量物搬送装置の枠架台のフランジ部が前記平行架台の内側フランジと重なるように、前記重量物搬送装置が前記平行架台に沿ってスライド可能である搬送台車。
【請求項2】
前記搬送台車が2台平行に配置され、
前記2台の搬送台車の上に台板が平行架台のフランジ部にクランプで着脱可能に固定されている請求項に記載の搬送台車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重量物搬送装置を用いた搬送台車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、重量物の搬送には、エアキャスターと呼ばれるエア浮上式搬送装置が用いられている。エア浮上式搬送装置は、ベース部の下に圧縮空気が供給されるトーラスバックを備え、トーラスバックと床面との間にトーラスバックから流出するエアによってベース部とその上に載置した重量物を浮上させることにより摩擦を低減させて、重量物を小さな力で搬送できるようにしたものである。
【0003】
エア浮上式搬送装置は、床面と重量物の間に直接挿入して重量物を支持して搬送することができる。また、特許文献1に記載のように、パレットの下面の四隅にエアキャスターを取り付けてエアキャスター台車として使用される。さらに、特許文献2に記載のように、昇降機構を有する作業台の下面の四隅にエアキャスターを取り付けて移動可能とした高所作業台として使用されることもある。
【0004】
しかし、エアキャスターのような従来のエア浮上式搬送装置は、重量物や台板に対して固定する手段がなく、床面と重量物の間に挿入するだけであるので、重量物の搬送中、段差や隙間を乗り越えるとき、あるいは傾斜を移動するときに、位置がずれて、重量配分が変化し、重量物が傾いたり、滑り落ちたりすることがあった。平坦な床面を移動するときでも、重量物の荷重がエアキャスターの上面の一部に集中し、重量物が傾き、進行方向が変化する等の問題があった。
【0005】
また、門型リフターを用いて重量物を搬送する場合、門型リフターに備えられた車輪で移動するため、ビルの屋上の防水床等を走行する場合に、車輪の走行経路に鉄板等を敷く必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平6-64717号公報
【文献】特開平6-64898号公報
【文献】特開2007-76789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記従来の問題点に鑑みてなされたもので、重量物の大きさや重量に応じてエア浮上式搬送装置の位置を変えて適正な重量配分をすることができる搬送台車を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明の搬送台車は、
外側にフランジ部を有する矩形の枠架台にエア浮上式搬送装置が収容され、前記エア浮上式搬送装置が前記枠架台の内側に設けられた支持部に支持されている重量物搬送装置を備え、
前記重量物搬送装置が、外側フランジと内側フランジを有する1対の平行に配設された平行架台の間に複数台配置され、
前記重量物搬送装置の枠架台のフランジ部が前記平行架台の内側フランジと重なるように、前記重量物搬送装置が前記平行架台に沿ってスライド可能である。
【0010】
前記搬送台車が2台平行に配置され、
前記2台の搬送台車の上に台板が平行架台の外側フランジにクランプで着脱可能に固定されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の搬送台車によれば、平行架台の間に複数台の重量物搬送装置が配置され、平行架台に沿ってスライド可能であるので、重量物の大きさや重量に応じてエア浮上式搬送装置の位置を変えて適正な重量配分をすることができる。
【0013】
また、重量物の荷重が台板、平行架台により分散されるので、エア浮上式搬送装置の一部に荷重が集中して重量物が傾いたり、滑り落ちたりするのを防止することができる。
【0014】
さらに、重量物の大きさや、搬送経路、設置場所に応じて、1対の平行架台の長さや間隔、平行架台の上の台板の大きさを変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1実施形態による重量物搬送装置の分解斜視図。
図2図1の重量物搬送装置の平面図。
図3図2のIII-III線断面図。
図4】本発明の第2実施形態による搬送台車の分解斜視図。
図5図4の搬送台車の断面図。
図6】4つの重量物搬送装置を用いた搬送台車の平面図。
図7】6つの重量物搬送装置を用いた搬送台車の平面図。
図8図4の搬送台車と重量物を設置する基礎との高さの関係を示す正面図(a)、調整台を設けた搬送台車と重量物を設置する基礎との高さの関係を示す正面図(b)、調整台を設けた搬送台車の平面図(c)、調整台を設けた搬送台車による重量物を搬送する状況を示す正面図(d)。
図9】本発明の第3実施形態による門型リフター装置の斜視図。
図10図9の門型リフター装置のベース部分の拡大図。
図11図10の平面図。
図12図9の門型リフター装置の変形例の斜視図。
図13図12の門型リフター装置による室外機ユニットを搬送する状況を示す正面図(a)及び側面図(b)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を添付図面に従って説明する。
【0017】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る重量物搬送装置1を示す。重量物搬送装置1は、エア浮上式搬送装置2と、枠架台3と、調整板4とからなる。
【0018】
エア浮上式搬送装置2は、エアキャスター、ギャップマスターとも呼ばれ、矩形のベース部5の下面にトーラスバック6を備えている。エア浮上式搬送装置2は、ベース部5の側面に設けられたノズル9から空気をトーラスバック6に供給すると、トーラスバック6が膨らみ、トーラスバック6と床面との間にトーラスバック6の小孔から流出するエアによってベース部5とその上に載置した重量物を浮上させることができる。浮上させる重量物の重量に応じた浮上能力を有するモデルを選定して使用する。
【0019】
枠架台3は、フランジ部3a,3bを外側に向けた4本の溝形鋼を矩形の枠状に接合したもので、内側の四隅にはエア浮上式搬送装置2のベース部5を支持する三角形の支持部7が設けられている。支持部7は、枠架台3の内側面の全周に設けてもよい。枠架台3の内側の寸法は、図2に示すように、エア浮上式搬送装置2を収容できる大きさを有する。枠架台3の高さは、図3に示すように、エア浮上式搬送装置2の実線で示す休止時の高さより大きく、2点鎖線で示す作動時の高さより小さい。枠架台3の上面から支持部7の上面までの高さは、エア浮上式搬送装置2のベース部5の厚さと調整板4の厚さを加えた寸法と等しい。枠架台3には、トラースバッグ6のノズル9及び該ノズル9に接続される図示しない空気管が干渉しないように切欠き9´が形成されている。
【0020】
調整板4は、矩形の木板からなり、枠架台3に収容されたエア浮上式搬送装置2のベース部5の上に載置されている。調整板4は、エア浮上式搬送装置2のベース部5の上面と枠架台3の上面との間の段差を埋めて、調整板4の上面と枠架台3の上面とを面一にすることにより、エア浮上式搬送装置2が作動したときに、ベース部5が上昇するのを防止している。調整板4の4辺の外周端面は、枠架台3の内側面に当たって、枠架台3から外れないようになっている。調整板4は、枠架台3に固定してもよい。
【0021】
第1実施形態の重量物搬送装置1は、床面に複数台配置して、図3に示すように、その上に重量物8を載置する。休止時のエア浮上式搬送装置2の厚さは、枠架台3の高さより小さいので、重量物の重量は、枠架台3で支持される。重量物搬送装置1は、枠架台3の外側にフランジ部3aを有しているので、このフランジ部3aを重量物搬送装置2の上に載置される重量物の適宜箇所にブルマンC型クランプ等のクランプ15で着脱可能に固定することができる。
【0022】
重量物搬送装置1のエア浮上式搬送装置2のトーラスバック6に圧縮空気を送給すると、2点鎖線で示すように、トーラスバック6が膨らみ、枠架台3及び重量物8を浮上させる。この状態で、重量物8を横引きし、重量物8を所定の位置に搬送し、据え付けることができる。
【0023】
重量物搬送装置1は、搬送する重量物8に固定することができるので、重量物8の搬送中に、位置がずれて、重量配分が変化し、重量物8が傾いたり、滑り落ちたりすることがなくなる。また、重量物搬送装置1のエア浮上式搬送装置2は、タイヤやローラ等と比べて接地面積が大きいので、床面の走行経路に鉄板等を敷く必要が無く、ビルの屋上の防水養生床でも直接重量物搬送装置1を設置して搬送することができる。
【0024】
<第2実施形態>
図4は、本発明の第2実施形態に係る搬送台車10を示す。搬送台車10は、第1実施形態に係る重量物搬送装置1と、平行架台11と、台板12とからなる。
【0025】
重量物搬送装置1は、第1実施形態に係る重量物搬送装置1の枠架台3にガイド部材13が取り付けられている。ガイド部材13は、矩形の板からなり、枠架台3の対向する1対の溝形鋼の上側のフランジ部3aとウェブ部3cに垂直に固着されている。ガイド部材13は、枠架台3の対向する1対の溝形鋼のそれぞれに、少なくとも2つ設けられている。ガイド部材13の下端と下側のフランジ部3bとの間には、後述する平行架台11のH形鋼の内側フランジ11aが挿通するように、隙間14が形成されている。
【0026】
平行架台11は、平行に配置された所定長さの1対のH形鋼からなり、内側フランジ11aと外側フランジ11bを有する。平行架台11のH形鋼の大きさは、重量物搬送装置1の枠架台3の溝形鋼が100×50の場合、100×100である。
【0027】
台板12は、板厚22又は25mmで、1524×3048mm(5×10フィート)、又は1524×6096mm(5×20フィート)の仮設用の敷鉄板を用いることが好ましい。台板12は、ブルマンC型クランプ等のクランプ15で平行架台11の外側フランジ11bに着脱可能に固定される。
【0028】
第2実施形態の搬送台車10は、搬送する重量物の大きさ及び重量に応じて現場にて組み立てることができる。すなわち、搬送する重量物の大きさに応じた長さの1対の平行架台11を2対用意し、床面に平行に配置する。1対の平行架台11の内側フランジ11a間に、ガイド部材13を有する重量物搬送装置1を、搬送する重量物の重量に応じて複数台挿入する。このとき、重量物搬送装置1の枠架台3のフランジ部3aが平行架台11の内側フランジ11aと重なるようにする。なお、重量物搬送装置1を先に床面に設置して、1対の平行架台11を重量物搬送装置1の枠架台3に両側から差し込むようにしてもよい。
【0029】
1対の平行架台11に複数の重量物搬送装置1を設けた台車ユニット16を平行に2台配置する。2台の台車ユニット16の上に、搬送する重量物の大きさに応じた枚数の台板12を敷接し、図5に示すように、台板12と平行架台11の外側フランジ11bをブルマンC型クランプ等のクランプ15で固定する。
【0030】
図6は、2台の重量物搬送装置1を設けた台車ユニット16を2台設けて、2枚の台板12を固定したものである。図7は、3台の重量物搬送装置1を設けた台車ユニット16を2台設けて、4枚の台板12を固定したものである。
【0031】
第2実施形態の搬送台車10は、エア浮上式搬送装置2を有する重量物搬送装置1を平行架台11に沿ってスライド可能である。このため、重量物の大きさや重量に応じてエア浮上式搬送装置2の位置を変えて適正な重量配分をすることができる。
【0032】
また、重量物の荷重が台板12、平行架台11により分散されるので、エア浮上式搬送装置2の一部に荷重が集中して重量物が傾いたり、滑り落ちたりするのを防止することができる。さらに、重量物の大きさや、搬送経路、設置場所に応じて、1対の平行架台11の長さや間隔、台板12の大きさを自在に変更することができる。
【0033】
図8は、第2実施形態の搬送台車10を用いて重量物8を基礎Bの上に設置する状況を示す。図8(a)に示すように、基礎Bの高さが搬送台車10より高い場合は、搬送台車10の重量物搬送装置1のエア浮上式搬送装置2をオフしたときの台板12の上面と、基礎Bの高さの高低差Hを解消するために、図8(b)に示すように、台板12の上に高低差Hと同じ厚さの調整台17を設置し、この調整台17の上に重量物8を載置する。調整台17は、図8(c)に示すように、重量物8を支持する部分に設置する。調整台17に重量物8を載せて、搬送台車10のエア浮上式搬送装置2をオンすると、図8(d)に示すように、トーラスバッグ6が膨らんだ分の高さH1だけ調整台17が基礎Bより高くなる。重量物8を載せた搬送台車10を横引きし、基礎Bに到達すると、エア浮上式搬送装置2をオフする。これにより、調整台17と基礎Bが同じレベルになるので、重量物8をチルローラ等で横引きし、基礎Bの上に設置することができる。
【0034】
<第3実施形態>
図9は、本発明の第3実施形態に係る門型リフター装置20を示す。門型リフター装置20は、第1実施形態に係る重量物搬送装置1と、ベース部材21a,21bと、門型リフター22とからなる。
【0035】
重量物搬送装置1は、第1実施形態に係る重量物搬送装置1と同じで、4台床面に配置されている。
【0036】
ベース部材21a,21bは、実施例では300×300のH形鋼からなる山留材であり、第1ベース部材21aと第2ベース部材21bからなる。第1ベース部材21aは、2台の重量物搬送装置1の間に架け渡され、第2ベース部材21bは、他の2台の重量物搬送装置1の間に架け渡されている。2つのベース部材21a,21bは互いに平行であり、図10図11に示すように、重量物搬送装置1の枠架台3のフランジ部3aにブルマンC型クランプ等のクランプ15により着脱可能に固定されている。
【0037】
図9に戻ると、門型リフター22は、昇降可能な垂直の1対のブーム23と、該1対のブーム23の上端に架け渡されたビーム24とからなる。1対のブーム23の下端はそれぞれ第1ベース部材21aと第2ベース部材21bに固定されている。
【0038】
第3実施形態の門型リフター装置20は、門型リフター22が固定される第1ベース部材21aと第2ベース部材21bにエア浮上式搬送装置2を有する重量物搬送装置1がクランプ15で着脱可能であるので、第1ベース部材21aと第2ベース部材21bの長さを変えるだけで、積載能力が異なる門型リフター22を固定することができる。また、重量物搬送装置1はエア浮上式搬送装置2を有するので、横引き搬送時に、搬送経路に鉄板を敷く必要がなく、ビル屋上の防水床等の上を容易に移動させることができる。
【0039】
図12は、図8に示す門型リフター装置20の変形例であり、第1ベース部材21aと第2ベース部材21bの間に、門型リフター装置22が2基固定されたものである。2基の門型リフター22は、スペーサ25により、かさ上げされている。2基の門型リフター22のビーム24間には、3本の天井ビーム26が架け渡されて、ビーム24のフランジに、ブルマンC型クランプ等のクランプ15により着脱可能に固定されている。
【0040】
図13は、図12の門型リフター装置20を用いて、12基の室外機ユニット27を吊り上げて搬送する状況を示す。12基の室外機ユニット27は、6基の室外機ユニット27を受ける2本の1次鋼材と、他の6基の室外機ユニットを受ける2本の1次鋼材28と、これらの4本の1次鋼材28を受ける4本の2次鋼材29を有する。各2次鋼材29の中央を、中央の天井ビーム26からチェーンブロック30又はナイロンスリング31で吊り、各2次鋼材の両端を、両側の天井ビーム26からチェーンブロック30又はナイロンスリング31で吊ることにより、12点吊りした状態で、横引きすることができた。
【0041】
本発明の前記実施形態は、特許請求の範囲に記載の発明の範囲内において修正し、変更することができる。例えば、第1実施形態の枠架台3は溝形鋼を使用したが、外側フランジを有するものであれば、山形(アングル)鋼でもよい。
【符号の説明】
【0042】
1…重量物搬送装置
2…エア浮上式搬送装置
3…枠架台
3a…フランジ部
3b…フランジ部
3c…ウェブ部
4…調整板
5…ベース部
6…トーラスバック
7…支持部
8…重量物
9…ノズル
10…搬送台車
11…平行架台
11a…内側フランジ
11b…外側フランジ
12…台板
13…ガイド部材
14…隙間
15…クランプ
16…台車ユニット
17…調整台
20…門型リフター装置
21a…第1ベース部材
21b…第2ベース部材
22…門型リフター
23…ブーム
24…ビーム
25…スペーサ
26…天井ビーム
27…室外機ユニット
28…1次鋼材
29…2次鋼材
30…チェーンブロック
31…ナイロンスリング
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13